説明

柱壁部材、柱壁構造、柱壁構造を有する建物、及び柱壁部材製造方法

【課題】プレキャストコンクリート製の柱部と壁部との接合作業の手間を低減すると共に、柱部と壁部との接合強度を確保することを目的とする。
【解決手段】柱壁部材12は、プレキャストコンクリート製の柱部24と、プレキャストコンクリート製の壁部26と、を備えており、柱部24に壁部26が一体化されている。この柱壁部材12は、工場において製造されるため、柱部24と壁部26とにまたがって配筋された横鉄筋46の定着性が向上するなど、柱部24と壁部26との接合強度を確保し易い。従って、現場で柱部24と壁部26とを接合する場合と比較して、せん断力の相互伝達が良好となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
柱壁部材、及び柱壁部材を用いた柱壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からプレキャストコンクリート製の壁部材が知られている(例えば、特許文献1)。この壁部材は上下の鉄骨梁の間に配置されており、当該壁部材の上面及び下面から突出された縦鉄筋を上下の鉄鋼梁のフランジ部に貫通させてナットで締め付けることにより、上下の鉄骨梁に接合されている。また、特許文献2には、PC鋼材によって上下のプレキャストコンクリート製の梁に圧着接合されたプレキャストコンクリート製の壁部材が提案されている。この壁部材は、柱との間に隙間を空けて配置され、この隙間にモルタルやコンクリート等を充填することにより、柱と接合されている。更に、特許文献3には、壁部材の上部及び下部に梁型を一体化させたプレキャストコンクリート製の壁部材が提案されている。この壁部材は、柱に隣接配置され、PC鋼材によって柱と圧着接合されている。このようにプレキャスト化された壁部材で壁を構築すると、現場での型枠工事やコンクリート工事がなくなり、有利である。
【0003】
しかしながら、特許文献2、3の壁部材は、現場において柱と接合作業を行う必要があり、施工の手間がかかるだけでなく、壁部材と柱との充分な接合強度を確保できないことが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−311922号公報
【特許文献2】特開2005−90107号公報
【特許文献3】実開平6−67619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の事実を考慮し、プレキャストコンクリート製の柱部と壁部との接合作業の手間を低減すると共に、柱部と壁部との接合強度を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の柱壁部材は、プレキャストコンクリート製の柱部と、前記柱部と一体化されたプレキャストコンクリートの壁部と、少なくとも前記柱部に形成され、上下方向へ縦鋼材が貫通される貫通孔と、を備えている。
【0007】
上記の構成によれば、柱壁部材は、プレキャストコンクリート製の柱部と、プレキャストコンクリート製の壁部と、を備えている。柱部と壁部とは一体化されており、少なくとも柱部に、上下方向へ縦鋼材が貫通される貫通孔が形成されている。
【0008】
ここで、柱部と壁部とを一体化し、プレキャストコンクリート製としたことにより、現場における柱部と壁部の接合作業が不要になるため、施工性が向上する。更に、工場において柱壁部材を製造するため、例えば、柱部と壁部とにまたがって配筋された横鉄筋の定着性が向上するなど、柱部と壁部との接合強度を確保し易く、品質が向上された柱壁部材を製造することができる。従って、現場で壁部と柱部とを接合する場合と比較して、せん断力の相互伝達が良好となる。
【0009】
請求項2に記載の柱壁構造は、請求項1に記載の柱壁部材を複数段積み上げ、前記貫通孔のそれぞれに前記縦鋼材を貫通させて前記柱壁部材を接合している。
【0010】
上記の構成によれば、柱壁部材を複数段積み上げ、積み上げられた柱壁部材の貫通孔のそれぞれに縦鋼材が貫通されて、隣接する柱壁部材が接合されている。
【0011】
このように複数の柱壁部材を積み上げて柱及び壁を構築することで、柱壁部材の高さを小さくすることが可能となり、柱壁部材の幅に対する高さの割合(アスペクト比)を小さくすることが可能となり、柱壁部材の安定性を向上させることができる。また、柱壁部材の小型化が可能となるため、揚重、運搬等が容易となり、施工性が向上する。
【0012】
請求項3に記載の柱壁構造は、請求項2に記載の柱壁構造において、前記縦鋼材がPC鋼材からなり、前記柱壁部材の貫通孔のそれぞれに前記PC鋼材を貫通させ、該PC鋼材を緊張させて前記柱壁部材を圧着接合している。
【0013】
上記の構成によれば、縦鉄筋がPC鋼材とされている。このPC鋼材を、積み上げられた柱壁部材の貫通孔のそれぞれに貫通させ、当該PC鋼材を緊張させることにより、柱壁部材が圧着接合されている。
【0014】
このように緊張させたPC鋼材によって、複数段の柱壁部材を圧着接合したことにより、各柱壁部材にプレストレスが導入されて増強されると共に、隣接する柱壁部材の接合強度が大きくなる。従って、柱壁部材の剛性、耐力を大きくすることができる。なお、PC鋼材としては、ボンド型、アフターボンド型及びアンボンド型を適用可能である。
【0015】
請求項4に記載の柱壁構造は、請求項2又は請求項3に記載の柱壁構造において、2つの前記柱壁部材が対向して配置され、一方の前記柱部の側面に設けられた壁部と、他方の前記柱部の側面に設けられ、一方の前記壁部の端面に対面される端面を有する壁部とを接合している。
【0016】
上記の構成によれば、2つの柱壁部材が対向して配置されている。ここで、一方の柱部の側面に設けられた壁部と、他方の柱部の側面に設けられ、一方の柱部の端面に対面される端面を有する壁部と、が接合されている。即ち、2つの柱壁部材が、各々の柱部の側面に設けられた壁部の端面同士を対面させて配置され、これらの壁部同士が接合されている。
【0017】
このように2つの柱壁部材を接合して柱及び壁を構築することで、柱壁部材の小型化が可能となるため、揚重、運搬等が容易となり、施工性が向上する。
【0018】
請求項5に記載の柱壁構造は、請求項4に記載の柱壁構造において、対面する一方の前記壁部の端面に設けられた挿入部に、他方の前記壁部の端面に設けられた収納部に収納された中空管が該収納部から引き出され、前記挿入部に挿入されて定着結合されている。
【0019】
上記の構成によれば、対面する一方の壁部の端面に挿入部が設けられている。また、対面する他方の壁部の端面に収納部が設けられている。収納部には中空管が収納されており、この中空管が収納部から引き出され、挿入部に挿入されて定着結合されている。
【0020】
ここで、中空管を収納部に収納可能としたことで、壁部の端面同士が対面される際に中空管が障害とならない。即ち、壁部の端面から突出しないように中空管を収納部に収納することにより、壁部の端面同士を対面させる際に、例えば、一方の柱壁部材に対して、他方の柱壁部材を相対的に上下方向へ移動したり、横方向へ移動したりして壁部の端面同士を対面させることができる。従って柱壁部材の移動方向に制約がなくなり、施工の自由度が向上する。
【0021】
また、挿入部と中空管とが定着結合されることで、壁部と壁部との接合部には、施工誤差を吸収する程度の隙間(例えば5〜25mm)のみを設ければ良く、従来のような大掛かりな型枠工事やコンクリート工事が不要となり、施工性の向上、工期の短縮化を図ることができる。
【0022】
請求項6に記載の柱壁構造は、請求項4に記載の柱壁構造において、対面する一方の前記壁部の端面に設けられた挿入部に、他方の前記壁部から突出された横鉄筋が挿入されて定着結合されている。
【0023】
上記の構成によれば、対面する一方の壁部の端面に挿入部が設けられており、この挿入部に、対面する他方の壁部の端面から突出された横鉄筋が挿入されて定着結合されている。
【0024】
ここで、挿入部が設けられた壁部に対して、横鉄筋が突出された壁部を相対的に横方向に移動することにより、挿入部に横鉄筋が挿入され、挿入部と横鉄筋とが定着結合される。従って、壁部と壁部との接合部には、施工誤差を吸収する程度の隙間(例えば5〜25mm)のみを設ければ良く、従来のような大掛かりな型枠工事やコンクリート工事が不要となり、施工性の向上、工期の短縮化を図ることができる。
【0025】
請求項7に記載の柱壁構造は、請求項4に記載の柱壁構造において、対面する前記壁部の端面に挿入部が設けられ、前記挿入部の各々に鉄筋が挿入されて定着結合されている。
【0026】
上記の構成によれば、対面する壁部の端面に挿入部がそれぞれ設けられている。これらの挿入部の各々には鉄筋が挿入されて、挿入部と鉄筋とが定着結合されている。
【0027】
ここで、対面する壁部に設けられた一方の挿入部に、鉄筋が挿入される。そして、一方の壁部に対して、他方の壁部を相対的に横方向へ移動することにより、他方の壁部の挿入部にも鉄筋が挿入され、これらの挿入部と鉄筋とが定着結合される。従って、壁部と壁部との接合部には、施工誤差を吸収する程度の隙間(例えば5〜25mm)のみを設ければ良く、従来のような大掛かりな型枠工事やコンクリート工事が不要となり、施工性の向上、工期の短縮化を図ることができる。
【0028】
請求項8に記載の柱壁構造は、請求項2〜7の何れか1項に記載の柱壁構造において、上下方向に隣接する前記柱壁部材の前記壁部同士の間に隙間を設け、該壁部同士を鋼材ダンパで連結している。
【0029】
上記の構成によれば、上下方向に隣接する柱壁部材の壁部同士の間に隙間が設けられており、これらの壁部同士が鋼材ダンパで連結されている。このように鋼材ダンパを設けたことで、隣接する柱壁部材が相対変位したときに、当該鋼材ダンパが変形して振動エネルギーを吸収する。従って、建物の振動が低減され、居住性能、耐震性能を向上させることができる。
【0030】
請求項9に記載の柱壁構造は、請求項8に記載に柱壁構造において、前記鋼材ダンパが、前記隙間に立てられた鋼板又はダボ鉄筋である。
【0031】
上記の構成によれば、鋼材ダンパが、壁部同士の間に立てられた鋼板又はダボ鉄筋とされている。隣接する柱壁部材が相対変位したときに、これらの鉄板又はダボ鉄筋が変形することで、振動エネルギーが吸収される。従って、建物の振動が低減され、居住性能、耐震性能を向上させることができる。
【0032】
請求項10に記載の建物は、請求項2〜9の何れか1項に記載の柱壁構造を有している。
【0033】
上記の構成によれば、請求項2〜9の何れか1項に記載の柱壁構造を有することで、施工性が向上された建物を構築することができる。
【0034】
請求項11に記載の柱壁部材製造方法は、枠状に組まれた型枠のコンクリート打設空間を、柱部に壁部を一体化させた第1柱壁部材を成形する平面視にてL型の第1打設空間と、柱部に壁部を一体化させた第1柱壁部材を成形する平面視にてL型の第2打設空間とに、前記第1打設空間で成形される壁部の壁面と前記第2打設空間で成形される壁部の壁面とが向かい合うように仕切部材で仕切り、前記第1打設空間及び前記第2打設空間にコンクリートを打設する。
【0035】
上記の構成によれば、枠状に組まれた型枠のコンクリート打設空間を仕切部材で仕切り、平面視にてL型の第1打設空間及び第2打設空間を設ける。第1打設空間では、柱部に壁部を一体化させた第1柱壁部材が成形され、第2打設空間では、柱部に壁部を一体化させた第2柱壁部材が成形される。また、第1打設空間と第2打設空間は、第1打設空間で成形される壁部の壁面と、第2打設空間で成形される壁部の壁面とが向き合うように仕切部材で仕切られる。そして、これらの第1打設空間及び第2打設空間にコンクリートを打設して、第1柱壁部材及び第2柱壁部材を製造する。
【0036】
このように、コンクリート打設空間を、第1打設空間の壁部の壁面と第2打設空間の壁部の壁面とが向き合うように仕切部材で仕切ったことで、コンクリート打設空間の有効利用を図ることができ、製造コストを削減することができる。即ち、第1打設空間、及び第2打設空間を平面視にてL型に仕切り、これらの第1打設空間及び第2打設空間を組み合わせることにより、一度のコンクリート打設により第1柱壁部材、第2柱壁部材を1つの型枠内で製造できるため、製造効率が向上する。
【0037】
請求項12に記載の柱壁部材製造方法は、枠状に組まれた型枠のコンクリート打設空間を、柱部に壁部を一体化させた第1柱壁部材を成形する平面視にてL型の第1打設空間と、柱部の両側に壁部を一体化させた第2柱壁部材を成形する平面視にてT型の第2打設空間とに、前記第1打設空間で成形される壁部の壁面と前記第2打設空間で成形される一方の壁部の壁面とが向かい合うように仕切部材で仕切り、前記第1打設空間及び前記第2打設空間にコンクリートを打設する。
【0038】
上記の構成によれば、枠状に組まれた型枠のコンクリート打設空間を仕切部材で仕切り、平面視にてL型の第1打設空間、及び平面視にてT型の第2打設空間を設ける。第1打設空間では、柱部に壁部を一体化させた第1柱壁部材が成形され、第2打設空間では、柱部の両側に壁部を一体化させた第2柱壁部材が成形される。また、第1打設空間と第2打設空間は、第1打設空間で成形される壁部の壁面と、第2打設空間で成形される一方の壁部の壁面とが向き合うように仕切部材で仕切られる。そして、これらの第1打設空間及び第2打設空間にコンクリートを打設して、第1柱壁部材及び第2柱壁部材を製造する。
【0039】
このように、コンクリート打設空間を、第1打設空間の壁部の壁面と第2打設空間の壁部の壁面とが組み合うように仕切部材で仕切ったことで、コンクリート打設空間の有効利用を図ることができ、製造コストを削減することができる。即ち、第1打設空間、及び第2打設空間をそれぞれ平面視にてL型、T型に仕切り、これらの第1打設空間及び第2打設空間を組み合わせることにより、一度のコンクリート打設により第1柱壁部材、第2柱壁部材を1つの型枠内で製造できるため、製造効率が向上する。
【発明の効果】
【0040】
本発明は、上記の構成としたので、プレキャストコンクリート製の柱部と壁部との接合作業の手間を低減すると共に、柱部と壁部との接合強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る柱壁構造を示す概略正面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る柱壁部材、梁部材を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る柱壁構造を示す正面図である。
【図4】(A)及び(B)は、本発明の第1の実施形態に係る柱壁構造の変形例を示す正面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る柱壁構造の変形例を示す正面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る柱壁部材を示す斜視図である。
【図7】(A)及び(B)は、本発明の第2の実施形態に係る壁部の接合部を示す拡大平面図である。
【図8】(A)及び(B)は、本発明の第2の実施形態に係る柱壁構造の施工手順の例を示す、柱壁構造の正面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る柱壁構造を示す正面図である。
【図10】(A)及び(B)は、本発明の第2の実施形態に係る壁部の接合部の変形例を示す拡大正面図である。
【図11】(A)及び(B)は、本発明の第2の実施形態に係る壁部の変形例を示す拡大側面図である。
【図12】(A)及び(B)は、本発明の第2の実施形態に係る壁部の接合部の変形例を示す拡大平面図である。
【図13】(A)及び(B)は、本発明の第2の実施形態に係る壁部の接合部の変形例を示す拡大平面図である。
【図14】本発明の第3の実施形態に係る柱壁構造を示す斜視図である。
【図15】本発明の第3の実施形態に係る柱壁構造を示す正面図である。
【図16】本発明の第3の実施形態に係る柱壁構造の変形例を示す正面図である。
【図17】本発明の実施形態に係る柱壁構造の変形例を示す正面図である。
【図18】本発明の実施形態に係る柱壁部材の変形例を示す概略斜視図である。
【図19】本発明の実施形態に係る柱壁部材の変形例を示す概略斜視図である。
【図20】(A)は本発明の実施形態に係る型枠を示す平面図であり、(B)は図20(A)の1−1線断面図であり、(C)は図20(A)の2−2線断面図である。
【図21】本発明の実施形態に柱壁部材製造法で製造された柱壁部材を示す斜視図である。
【図22】本発明の実施形態に柱壁部材製造法で製造された柱壁部材を示す斜視図である。
【図23】は本発明の実施形態に係る型枠の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を参照しながら本発明の第1の実施形態に係る柱壁構造10について説明する。図1は柱壁構造10の概略構成を示す正面図であり、図2は、柱壁部材12及び梁部材20の拡大斜視図である。
【0043】
図1に示すように、柱壁構造10は、複数(図1では5つ)の柱壁部材12を備えている。これらの柱壁部材12は複数段に積み上げられて接合されており、建物14の柱16及び壁18が構成されている。また、壁18の上方及び下方に配置された梁部材20によって、建物14の梁22が構成されている。
【0044】
次に、梁部材20の構成について説明する。
【0045】
図2に示すように、梁部材20は、プレキャストコンクリート(以下、「PCa」という)製の2つの仕口部48と、仕口部48の間に設けられたPCa製の梁部50を備えている。仕口部48と梁部50とは、工場において一体的に製造されており、平面視にてI形に形成されている。また、梁部材20には、仕口部48及び梁部50にまたがって横鉄筋60(図3参照)が配筋されている。
【0046】
図2及び図3に示すように、仕口部48の下面48Bには、その四隅に埋設された4つのシース管52(図3参照)によって挿入孔が形成されている。このシース管52には、仕口部48に上下方向へ配筋された柱鉄筋30(縦鋼材)の一端が下面48Bから突出しないように挿入されている。この柱鉄筋30の他端は、仕口部48の上面48Aから突出されており、仕口部48の上に積み上げられる柱部24に埋設されたシース管28に挿入され、定着結合される。また、シース管28に貫通された柱鉄筋30は、柱壁部材12の上に積み上げられる梁部材20の仕口部48に埋設されたシース管52に挿入されて定着結合される。この仕口部48の側面48Cには、シース管52の内部に通じる注入孔66が形成されており、この注入孔66からシース管52の内部に硬化材34が注入される。また、仕口部48の上面48Aには、その外周に沿って4つのコッター54が形成されている。これらのコッター54には、隣接する柱壁部材12の柱部24との接合時に硬化材34が充填され、せん断力を伝達する。
なお、コッター54は必ずしも必要ではなく、柱鉄筋30のだぼ効果、又は隣接する柱壁部材12界面の摩擦力によって、せん断力が伝達できる場合は当然に省略可能である。また、図3においては、柱部24のフープ筋を省略している。
【0047】
仕口部48の側面48Dから延出された梁部50の下面50Bには、当該下面50Bに埋設された複数のシース管56によって挿入孔が形成されている。シース管56には、梁部50に上下方向へ配筋された壁鉄筋40(縦鋼材)の一端が下面50Bから突出しないように挿入されている。この壁鉄筋40の他端は、梁部50の上面50Aから突出されており、梁部50の上に積み上げられる壁部26のシース管38に挿入され、定着結合される。シース管38に貫通された壁鉄筋40は、柱壁部材12の上に積み上げられる梁部50の下面50Bに埋設されたシース管56に挿入され、定着結合される。また、梁部50の側面50Cには、シース管56の内部に通じる注入孔68が形成されており、この注入孔68からシース管56の内部に硬化材34が注入される。また、梁部50の上面50Aには、水平方向に間を空けて4つのコッター58が形成されている。このコッター58には、隣接する柱壁部材12の壁部26との接合時に硬化材34が充填され、せん断力を伝達する。
なお、コッター58は必ずしも必要ではなく、壁鉄筋40のだぼ効果、又は隣接する柱壁部材12界面の摩擦力によって、せん断力が伝達できる場合は当然に省略可能である。
【0048】
次に、柱壁部材12の構成について説明する。
【0049】
図2及び図3に示すように、柱壁部材12は、PCa製の2つの柱部24と、柱部24の間に設けられたPCa製の壁部26を備えている。柱部24と壁部26とは、工場において一体的に製造されており、平面視にてI形に成形されている。また、柱壁部材12には、柱部24及び壁部26にまたがって横鉄筋46(図3参照)が配筋されている。
【0050】
柱部24の四隅には、シース管28がそれぞれ埋設されており、シース管28によって上下方向へ延びる貫通孔が形成されている。これらの貫通孔に上下方向へ貫通された柱鉄筋30によって、隣接する柱部24同士又は隣接する柱部24と仕口部48がせん断力を伝達可能に接合され、柱16(図1参照)となる。柱部の側面24Cには、シース管28の内部(貫通孔)に通じる注入孔36が形成されており、この注入孔36から硬化材34が注入され、シース管28と柱鉄筋30とが定着結合される。なお、シース管28は、柱部24の上面24A及び下面24Bから突出しないように埋設されている。
【0051】
柱部24の上面24Aには、その外周に沿って4つのコッター32が設けられており、また、図示を省略するが柱部24の下面24Bにもその外周に沿って4つのコッターが設けられている。これらのコッターには、隣接する仕口部48又は壁部26との接合時に硬化材34が充填され、せん断力を伝達する。
なお、コッター32は必ずしも必要ではなく、柱鉄筋30のだぼ効果、又は隣接する柱壁部材12、梁部材20界面の摩擦力によって、せん断力が伝達できる場合は当然に省略可能である。
【0052】
柱部24の側面24Dから延出された壁部26には、複数のシース管38が埋設されており、このシース管38によって上下方向へ延びる貫通孔が形成されている。この貫通孔に上下方向へ貫通される壁鉄筋40によって、隣接する壁部26が接合され、壁18(図1参照)となる。なお、壁部26の側面26Cには、シース管38の内部(貫通孔)に通じる注入孔44が形成されており、この注入孔44から硬化材34が注入され、シース管38と壁鉄筋40とが定着結合される。
なお、柱部24と同様に、シース管38は壁部26の上面26A及び下面26Bから突出しないように埋設されており、また、壁部26の上面26A及び下面26Bには、水平方向に間を空けて4つのコッター42が形成されている。
なお、コッター42は必ずしも必要ではなく、壁鉄筋40のだぼ効果、又は隣接する柱壁部材12界面の摩擦力によって、せん断力が伝達できる場合は当然に省略可能である。
【0053】
次に、柱壁構造10の施工方法の例について説明する。
【0054】
先ず、図2に示すように、梁部材20の上方から柱壁部材12を降ろして、仕口部48の上面48Aから突出された柱鉄筋30を柱部24のシース管28に貫通させると共に、梁部50の上面50Aから突出された壁鉄筋40を壁部26のシース管38に貫通させ、梁部材20の上に柱壁部材12を載置する。この際、梁部材20と柱壁部材12との間にスペーサ62を配置し、梁部材20と柱壁部材12との間に20mm程度の目地空間64を形成する。この目地空間64により、梁部材20、柱壁部材12の製造誤差が吸収されると共に、スペーサ62の高さを調整することで、柱壁部材12の水平レベルが調整される。なお、スペーサ62(目地空間64)は省略可能であるが、上記した施工性の観点から設置することが望ましい。
【0055】
次に、図示を省略するが、目地空間64の周縁部にエアホース等の簡易な型枠を仮設し、目地空間64を密封する。次に、柱壁部材12の柱部24の側面24C、及び壁部26の側面26Cに設けられた注入孔36、44から硬化材34を注入し、各シース管28、38、及び目地空間64に硬化材34を充填する。この際、各コッター32、42、54、58にも硬化材34が充填される。なお、エアホース等で目地空間64を密封する際に、目地空間64の周縁部に注入孔を設けておき、この注入孔から目地空間64に硬化材34を注入しても良い。
これらのシース管28、38に充填された硬化材34によって、柱鉄筋30、壁鉄筋40がそれぞれシース管28、38に定着結合される。次に、硬化材34が硬化した後に、エアホース等の型枠を撤去する。なお、硬化材34としては、モルタル、エポキシ樹脂等が用いられる。
【0056】
次に、上記と同様の手順により、柱壁部材12の上にスペーサ62を介して新たな柱壁部材12を積み上げ、各シース管28、38、及び目地空間64に硬化材34を充填する。これの作業を繰り返し、柱壁部材12を複数段(図1及び図3に示す構成では、5段)積み上げる。
【0057】
次に、更に、最上段(図1及び図3に示す構成では、5段目)の柱壁部材12の上から梁部材20を降ろして、柱壁部材12の上に梁部材20を載置する。この際、梁部材20の仕口部48及び梁部50の下面48B、50Bに埋設されたシース管52、56に、柱鉄筋30、壁鉄筋40の一端をそれぞれ挿入する。次に、仕口部48及び梁部50の側面48C、50Cに形成された注入孔66、68から硬化材34を注入し、シース管52、56に硬化材34を充填する。これにより、各シース管52、56に柱鉄筋30、壁鉄筋40が定着結合されると共に、シース管52、58を介して、隣り合う梁部材20の柱鉄筋30同士、及び壁鉄筋40同士が接続される。
【0058】
次に、第1の実施形態に係る柱壁構造10の作用及び効果について説明する。
【0059】
PCa製の柱壁部材12は、柱部24に壁部26が一体化されている。このため、現場における柱部24と壁部26の接合作業が不要になり、施工性が向上する。また、工場において柱壁部材12を製造するため、柱部24と壁部26とにまたがって配筋された横鉄筋46の定着性が増すなど、柱部24と壁部26との接合強度を確保し易く、品質が向上された柱壁部材12を製造することができる。従って、現場で柱部24と壁部26を接合する場合と比較して、せん断力の相互伝達が良好となる。
【0060】
また、本実施形態では、複数の柱壁部材12を積み上げて壁18を構築したことで、各柱壁部材12の高さを小さくすることが可能となり、即ち、柱壁部材12の幅に対する高さの割合(アスペクト比)を小さくすることが可能となり、柱壁部材の安定性を向上させることができる。
ここで、従来(例えば、特許文献1)のように、一つのPCa製の壁部材で壁18を構築する場合、壁部材のアスペクト比が大きくなり、設置する際に壁部材の傾きを防止する必要があった。これに対して、本実施形態では、一つ当たりの柱壁部材12のアスペクト比を小さくすることが可能であるため、従来と比較して柱壁部材12の安定性が増す。従って、柱壁部材12の傾きを防止する手間を低減することができる。また、柱壁部材12の小型化が可能であるため、揚重、運搬等が容易となり、施工性が向上する。
【0061】
更に、各柱壁部材12に埋設されたシース管28、38に柱鉄筋30、壁鉄筋40を貫通させ、これらのシース管28、38に硬化材34を充填して、シース管28、38と柱鉄筋30、壁鉄筋40とを定着結合したことにより、接合作業が単純化されると共に、隣接する柱壁部材12同士の接合強度が大きくなり、柱16及び壁18の剛性、耐力を確保することができる。また、柱部24の上面24A、下面24B、及び壁部26の上面26A、下面26Bにコッター32、42をそれぞれ設け、硬化材34を充填したことにより、接合部におけるせん断力の伝達効率を向上させることができる。
なお、上述の通り、コッター32、42は必ずしも必要ではなく、柱鉄筋30、壁鉄筋40のだぼ効果、又は隣接する柱壁部材12界面の摩擦力によって、せん断力が伝達できる場合は当然に省略可能である。
【0062】
更にまた、PCa製の梁部材20は、仕口部48に梁部50が一体化されている。このため、柱壁部材12と同様に、現場における仕口部48と梁部50の接合作業が不要になるため、施工性が向上する。また、工場において梁部材20を製造するため、仕口部48と梁部50とにまたがって配筋された横鉄筋60の定着性が増すなど、仕口部48と梁部50の接合強度を確保し易く、品質が向上された梁部材20を製造することができる。従って、現場で仕口部48と梁部50を接合する場合と比較して、せん断力の相互伝達が良好となる。
なお、上述の通り、コッター54、58は必ずしも必要ではなく、柱鉄筋30、壁鉄筋40のだぼ効果、又は隣接する柱壁部材12界面の摩擦力によって、せん断力が伝達できる場合は当然に省略可能である。
【0063】
次に、第1の実施形態に係る柱壁構造10の変形例について説明する。
【0064】
第1の実施形態では、仕口部48の上面48A、及び梁部50の上面50Aから柱鉄筋30、壁鉄筋40が突出された梁部材20の上に、柱壁部材12を積み上げ、柱部24のシース管28及び壁部26のシース管38に柱鉄筋30、壁鉄筋40を貫通させたが(以下、「順刺し工法」という)、本変形例ではいわゆる逆刺し工法を用いる。
【0065】
具体的には、図4(A)及び図4(B)に示すように、梁部材21の仕口部48の上面48Aには、その四隅に埋設されたシース管52により、挿入孔が形成されている。シース管52には、仕口部48に上下方向へ配筋された柱鉄筋30の一端が、上面48Aが突出しないように挿入されている。この柱鉄筋30の他端は、仕口部48の下面48Bから突出されており、柱部24の上面24Aからシース管28に貫通される。
【0066】
仕口部48と同様に、梁部50の上面50Aには、その四隅に埋設されたシース管56により、挿入孔が形成されている。シース管56には、梁部50に上下方向へ配筋された壁鉄筋40の一端が上面50Aから突出しないように挿入されている。この壁鉄筋40の他端は、梁部50の下面50Bから突出されており、壁部26の上面26Aからシース管38に貫通される。なお、柱壁部材12は、第1の実施形態と同様の構成とされている。
【0067】
次に、本変形例の施工方法の例について説明する。
【0068】
図4(A)に示すように、先ず、梁部材21の上に柱壁部材12を複数段積み上げる。ここで、第1の実施形態(図3参照)と異なり、梁部材21の仕口部48の上面48A及び梁部50の上面50Aから柱鉄筋30、壁鉄筋40が突出されていないため、これらの柱鉄筋30及び壁鉄筋40が障害とならず、柱壁部材12を横方向又は水平方向(矢印A方向)に移動させて、梁部材21又は柱壁部材12の上に載置することができる。なお、柱壁部材12はスペーサ62を介して、梁部材21又は柱壁部材12の上に載置される。
【0069】
次に、図4(B)及び図5に示すように、複数段(図4(B)に示す構成では、5段)の柱壁部材12を積み上げた後、最上段(5段目)の柱壁部材12の上方から梁部材21を降ろして、柱壁部材12の上に梁部材21を載置する。この際、梁部材21の仕口部48の下面48B、及び梁部50の下面50Bから突出された柱鉄筋30、壁鉄筋40を、柱部24及び壁部26に埋設されたシース管28、38に貫通させると共に、下方に位置する梁部材21の仕口部48の上面48A及び梁部50の上面50Aの埋設されたシース管52、56に挿入する。
【0070】
次に、図5に示すように、スペーサ62によって形成された目地空間64の周縁部に、エアホース等の簡易な型枠を仮設し、目地空間64、各シース管28、38、及びシース管52、56に硬化材34を充填する。各シース管28、38に充填された硬化材34によって、シース管28と柱鉄筋30、及びシース管38と壁鉄筋40がそれぞれ定着結合されると共に、シース管52、56を介して、隣接する梁部材21の柱鉄筋30同士、壁鉄筋40同士が接続される。
【0071】
次に、本変形例の作用及び効果について説明する。
【0072】
柱壁部材12を複数段積み上げた後に、各シース管28、38に柱鉄筋30、壁鉄筋40を貫通させたことにより、柱壁部材12を設置するときに、柱鉄筋30、壁鉄筋40が障害とならず、柱壁部材12を横方向又は水平方向(矢印A方向)へ移動させて設置することができる。従って、柱壁部材12の移動方向の自由度が増し、施工性が向上する。なお、柱壁部材12を横方向又は水平方向(矢印A方向)へ移動させるのではなく、柱壁部材12を上方から降ろして設置できることは勿論である。
【0073】
次に、第2の実施形態に係る柱壁構造70について説明する。なお、第1の実施形態と同じ構成のものは同符号を付すると共に適宜省略して説明する。
【0074】
図6に示すように、柱壁構造70は、複数の柱壁部材72を備えている。柱壁部材72は、PCa製の柱部74と、柱部74の側面74Dから延出されたPCa製の壁部76と、柱部74の壁部76と反対側の側面74Eから突出されたPCa製の壁部78と、を備えている。これらの柱部74及び壁部76、78は、工場において一体的に製造されている。
【0075】
柱壁部材72には、柱部74及び壁部76、78にまたがって横鉄筋80が配筋されている。壁部78の端面78Dには、当該端面78Dに埋設された8つのシース管82(図8参照)、又は機械式継手のような中空管によって、挿入部としての挿入孔84(図7参照)が形成されている。シース管82には、柱壁部材72に配筋された横鉄筋80の一端が、壁部78の端面78Dから突出しないように挿入されている。この横鉄筋80の他端は、壁部76の端面76Dから突出されている。
【0076】
図7(A)及び図7(B)に示すように、2つの柱壁部材72は、壁部76の端面76Dと壁部78の端面78Dとを対面させて配置され、これらの壁部76と壁部78とが接合されることにより、壁18(図1参照)の一部が構成される。この際、壁部78の端面78Dに埋設されたシース管82に、壁部76の端面76Dから突出された横鉄筋80が挿入され、シース管82に充填される硬化材34によってシース管82と横鉄筋80とが定着結合される。これにより、隣接する柱壁部材72の横鉄筋80同士が接続される。なお、図示を省略するが、壁部78の側面78Cには、シース管82の内部に通じる注入孔が形成されており、この注入孔からシース管82の内部に硬化材34が注入される。
【0077】
次に、第2の実施形態に係る柱壁構造70の施工方法の例について説明する。なお、説明の便宜上、図8及び図9において、左側に配置された柱壁部材72を柱壁部材72Aとし、右側に配置された柱壁部材72を柱壁部材72Bとする。
【0078】
図8(A)〜図8(C)に示すように、先ず、梁部材21又は梁部材21の上に積み上げられた柱壁部材72Aの上に、柱壁部材72Aを載置する。なお、下方に位置する梁部材21の仕口部48には、梁部材51が接合されている。
【0079】
次に、柱壁部材72Aに対して、柱壁部材72Bを相対的に横方向又は水平方向(矢印B方向)に移動させ、柱壁部材72Aの壁部78の端面78Dと、柱壁部材72Bの壁部76の端面76Dとを対面させると共に、端面78Dに埋設されたシース管82(挿入孔84)に端面76Dから突出された横鉄筋80を挿入する。この際、端面78Dと端面76Dとの間に20mm程度の目地空間86(図7(B)参照)が形成される。この目地空間86により、柱壁部材72A、72Bの製造誤差が吸収可能となり、施工性が向上する。なお、目地空間86は省略可能であるが、上記した施工性の観点から設けることが望ましい。
【0080】
次に、目地空間86の周縁部にエアホース等の簡易な型枠を仮設し、上方を除いて目地空間86を塞ぐ。次に、壁部78の側面78C側から硬化材34を注入し、シース管82に硬化材34を充填して、シース管82に挿入された横鉄筋80を当該シース管82に定着結合させる。これにより、シース管82を介して柱壁部材72A、72Bの横鉄筋80同士が接続される。更に、上方から目地空間86に硬化材34を充填して、柱壁部材72Aの壁部78と柱壁部材72Bの壁部76とを接合する。これらの作業を繰り返して、梁部材21の上に、柱壁部材72A、72Bを複数段(図8(B)に示す構成では、5段)積み上げる。
【0081】
次に、最上段(5段目)の柱壁部材12の上方から梁部材21を降ろして、柱壁部材72A、72Bの上に梁部材21を載置する。この際、梁部材21の仕口部48の下面48B及び梁部50の下面50Bから突出された柱鉄筋30、壁鉄筋40を、柱壁部材72A、72Bの柱部24及び壁部26に埋設されたシース管28、38に貫通させると共に、梁部材21の仕口部48の上面48A及び梁部50の上面50Aの埋設されたシース管52、56に挿入する。
【0082】
次に、スペーサ62によって形成された目地空間64の周縁部に、エアホース等の簡易な型枠を仮設し、目地空間64、各シース管28、38、及びシース管52、56に硬化材34を充填する。各シース管28、38に充填された硬化材34によって、シース管28と柱鉄筋30、及びシース管38と壁鉄筋40がそれぞれ定着結合されると共に、シース管52、56を介して、隣接する梁部材21の柱鉄筋30同士、壁鉄筋40同士がそれぞれ接続される。
【0083】
次に、第2の実施形態に係る柱壁構造70の作用及び効果について説明する。
【0084】
2つの柱壁部材72を対向して配置し、即ち、一方の柱壁部材72の壁部78の端面78Dと、他方の柱壁部材72の壁部76の端面76Dとを対面させて配置し、壁部78と壁部76とを接合して壁18(図1参照)の一部を構築したことにより、柱壁部材72の小型化が可能となる。従って、柱壁部材72の揚重、運搬等が容易となり、施工性が向上する。
【0085】
また、挿入孔84(シース管82)が設けられた壁部78に対して、横鉄筋80が突出された壁部76を相対的に横方向又は水平方向(矢印B方向)へ移動することにより、挿入孔84に横鉄筋80を挿入して、シース管82と横鉄筋80とを定着結合する。これにより、壁部78の端面78Dと壁部76の端面76Dとの間に目地空間86のような施工誤差を吸収する程度の隙間(例えば5〜25mm、本実施形態では20mm)のみを設けるだけで壁部78と壁部76とを接合することが可能となり、従来のような大掛かりな型枠工事やコンクリート工事が不要となり、施工性の向上、工期の短縮化を図ることができる。
【0086】
次に、第2の実施形態に係る柱壁構造70の変形例について説明する。なお、図10は、壁部76と壁部78との接合部の拡大側面図である。
【0087】
図10(A)及び図11に示すように、壁部78の端面78Dには、シース管90(収納部)が埋設されている。このシース管90には、壁部78に配筋された横鉄筋80の一端が端面78Dから突出しないように挿入されると共に、機械式継手92(中空管)が収納されている。円筒形の機械式継手92は、横鉄筋80が挿入された状態でシース管90に収納されており、横鉄筋80に沿ってスライド可能とされている。なお、機械式継手92には、内周壁にネジが切られたねじ込み式の機械式継手を用いても良い。
【0088】
壁部78の端面78Dに対面される壁部76の端面76Dには、当該端面76Dに埋設されたシース管94によって、挿入孔96(挿入部)が形成されている。シース管94には、柱部76に配筋された横鉄筋80の一端が端面76Dから突出しないように挿入されている。このシース管94には、シース管90から引き出された機械式継手92が挿入可能な位置に埋設されている。
【0089】
これらの壁部78と壁部76とは、端面78Dと端面76Dとを対面させて配置される。この際、端面78Dと端面76Dとの間には、20mm程度の目地空間86が形成される。また、壁部76の端面76D、及び壁部78の端面78Dには、溝部98、100がそれぞれ形成されており、この溝部98、100によって、シース管90とシース管94との間に目地空間86よりも広い空間(60mm程度)が形成される。この空間に手やパイプレンチ等の把持具を入れて、シース管90から機械式継手92を引き出し易いように構成されている。また、図示を省略するが、壁部78、76の側面には、各シース管90、94に内部に通じる注入孔が形成されており、この注入孔からシース管90、94に硬化材34が注入される。
【0090】
次に、本変形例の施工方法の例について説明する。
【0091】
先ず、2つの柱壁部材72を、壁部78の端面78Dと壁部76の端面76Dとが対面するように配置する。次に、溝部98、100によって形成された空間に、手やパイプレンチ等を入れてシース管90に収納された機械式継手92を把持すると共にこれを引き出して、端面76Dに埋設されたシース管94に向かって移動させる。この結果、機械式継手92が横鉄筋80に沿ってスライド(矢印C方向)されてシース管94に挿入されると共に当該機械式継手92にシース管94内の横鉄筋80が挿入される。次に、機械式継手92の周面に形成された注入孔(不図示)から、機械式継手92の内部に硬化材34を充填し、壁部78の横鉄筋80と壁部76の横鉄筋80とを定着結合し、接続する。
【0092】
次に、目地空間86及び溝部98、100の周縁部にエアホース等の簡易な型枠を仮設し、上方を除いて目地空間64及び溝部98、100を塞ぐ。次に、各シース管90、94、及び目地空間86、溝部98、100に硬化材34を充填する。これにより、壁部78と壁部76とがせん断力を伝達可能に接合される。
【0093】
次に、本変形例の作用及び効果について説明する。
【0094】
シース管90に収納された機械式継手92を横鉄筋80に沿ってスライドさせることにより、壁部78の横鉄筋80と壁部76の横鉄筋80とが接続される。また、壁部78の端面78Dから突出しないように機械式継手92をシース管90に収納することで、壁部78の端面78Dと壁部76の端面76Dとを対面させるときに、機械式継手92が障害とならず、壁部78に対して相対的に壁部76を上下方向へ移動させたり、又は横方向へ移動させたりして、端面78Dと端面76Dとを対面させることができる。更に、壁部78と壁部76との接合部には、施工誤差を吸収する程度の隙間(例えば5〜25mm、本実施形態では20mm)のみを設ければ良く、従来のような大掛かりな型枠工事やコンクリート工事が不要となる。従って、施工性の向上、工期の短縮化を図ることができる。
【0095】
また、壁部78の横鉄筋80と壁部76の横鉄筋80とを機械式継手92で接続したことにより、横鉄筋80同士を簡単に、且つ確実に接続することができる。更に、壁部78の端面78D及び壁部76の端面76Dに溝部98、100を設けたことで、機械式継手92を容易に把持することができる。
【0096】
なお、図12(A)及び図12(B)に示す平面図ように、後端部に紐102が取り付けられた機械式継手92をシース管90に収納し、この紐102を引っ張る(矢印D方向)ことにより、機械式継手92をシース管94に向って移動させても良い。
【0097】
また、図13(A)及び図13(B)に示すように、シース管90及びシース管94の各々に鉄筋104を挿入し、この鉄筋104とシース管90、94とを定着結合することにより、壁部78の横鉄筋80と壁部76の横鉄筋80とを接続しても良い。具体的には、シース管90又はシース管94に鉄筋104を挿入し、当該鉄筋104を壁部78の端面又は壁部76の端面から突出させる。そして、壁部78に対して壁部76を相対的に横方向又は水平方向へ移動することにより、シース管90によって形成された挿入孔84及びシース管94によって形成された挿入孔96に鉄筋104がそれぞれ挿入される。この際、横鉄筋80と鉄筋104との軸線が略一致するように、鉄筋104が各挿入孔84、96に挿入される。これらの挿入孔84、96には硬化材34が充填され、シース管90、94と鉄筋104とが定着結合される。これにより、壁部78の横鉄筋80と壁部76の横鉄筋80とが接続される。
【0098】
次に、第3の実施形態に係る柱壁構造110について説明する。なお、第1の実施形態と同じ構成のものは同符号を付すると共に適宜省略して説明する。
【0099】
図14及び図15に示すように、柱壁構造110は、柱壁部材112と、柱壁部材114を備えている。柱壁部材112は、PCa製の2つの柱部116と、柱部116の間に設けられたPCa製の壁部118と、を備えており、柱部116と壁部118とは、工場において一体的に製造されており、平面視にてI形に形成されている。
【0100】
壁部118は柱部116よりも高さが低く、柱部116の上面116Aと壁部118の上面118Aとの間に段差が形成されている。この段差により、柱壁部材114との間に隙間が形成される。また、壁部118の上面118Aには、鋼材ダンパとしての鋼板120が固定される固定部122が設けられている。固定部122は溝状の穴とされており、鋼板120の下部が挿入可能とされている。固定部122は、スペーサ124を介して固定部122内に配置され、固定部122に充填される硬化材34(図15参照)によって、鋼板120の下部が固定部122に固定される。硬化材34は、鋼板120の下部に形成された複数の貫通孔120Aにも充填され、鋼板120の下部が強固に固定部122に固定される。鋼板120の材料としては、普通鋼や、低降伏点鋼が用いられる。
【0101】
壁部118の下面118Bには、複数のシース管134(図15参照)が埋設されている。このシース管134には壁鉄筋40が挿入され、隣接する柱壁部材112と柱壁部材12とが接合される。
【0102】
柱壁部材112の柱部116の上には、スペーサ62を介して柱壁部材114が載置される。柱壁部材114は、PCa製の2つの柱部126と、柱部126の間に設けられたPCa製の壁部128と、を備えている。壁部128は柱部126よりも高さが低く、柱部126の下面126Bと壁部128の下面128Bとの間に段差が形成されている。これにより、柱部126を柱壁部材112の柱部116の上に載置したときに、壁部128と壁部118との間に隙間が形成される。
【0103】
壁部128の下面128Bには、鋼板120が固定される固定部132が設けられている。固定部132は溝状の穴とされており、鋼板120の上部が挿入可能とされている。固定部132に挿入された鋼板120の上部は、固定部132に充填される硬化材34(図15参照)によって、固定部132に固定される。硬化材34は、鋼板120の上部に形成された複数の貫通孔120Bにも充填され、鋼板120の上部が強固に固定部132に固定される。これにより、柱壁部材112の壁部118と柱壁部材114の壁部128とが鋼板120によって連結される。また、壁部128の上面128Aには、複数のシース管136が埋設されている。このシース管136に壁鉄筋40が挿入される。
【0104】
次に、第3の実施形態に係る柱壁構造110の作用及び効果について説明する。
【0105】
上下方向に隣接する柱壁部材112の壁部118と柱壁部材114の壁部128とが鋼板120で連結されている。これにより、地震時に壁部118と壁部128とが横方向(矢印E方向)へ相対変位したときに、鋼板120がせん断変形してこれに抵抗し、耐震性能を発揮する。また、鋼板120が降伏するように設計することで、鋼材の履歴エネルギーにより、振動エネルギーが吸収され、制震機能を発揮する。従って、建物14の振動が低減され、居住性能、耐震性能が向上する。なお、鋼板120に低降伏点鋼等を用いることで、振動エネルギー吸収容量を高めることができる。
【0106】
なお、本実施形態では、固定部122、132を溝状の穴としたがこれに限らない。固定部122、132は、鋼板120をせん断力伝達可能に固定できれば良く、ボルトやエポキシ樹脂等の接着剤により、鋼板120を壁部118の上面118A及び壁部128の下面128Bに固定しても良い。
【0107】
また、鋼板120に替えて、図16に示すように、ダボ鉄筋138(鋼材ダンパ)で壁部118と壁部128とを連結しても良い。ダボ鉄筋138の一端は壁部118に埋設されたシース管38に挿入され、他端は壁部128に埋設されたシース管38に挿入される。シース管38には壁鉄筋40の一端がそれぞれ挿入されており、これらのシース管38に充填される硬化材34によって、ダボ鉄筋138及び壁鉄筋40とシース管38とが定着結合される。これにより、壁部118と壁部128とがダボ鉄筋138によって連結される。
【0108】
ここで、地震時に壁部118と壁部128とが横方向(矢印E方向)へ相対変位したときに、ダボ鉄筋138が変形し、振動エネルギーが吸収される。従って、建物14の振動が低減され、居住性能、耐震性能が向上する。なお、ダボ鉄筋138に低降伏点鋼等を用いることで、振動エネルギー吸収容量を高めることができる。
【0109】
なお、上記第1〜第3の実施形態では、積み上げられた柱壁部材12、又は柱壁部材112、114を柱鉄筋30、壁鉄筋40で接合したが、図17に示すようにPC鋼材140(縦鋼材)で圧着接合しても良い。
【0110】
具体的には、上下の梁部材142A、142Bの間に柱壁部材12が複数段積み上げられている。梁部材142A、142Bの仕口部144及び梁部146には、シース管148、150をそれぞれ埋設されている。これらのシース管148、150、及び積み上げられた各柱壁部材12の柱部24及び壁部26に埋設されたシース管28、38(貫通孔)に、PC鋼材140が上下方向に貫通されている。PC鋼材140は、図示せぬ油圧ジャッキ等によって緊張された状態で、PC鋼材140の軸方向両端部に取り付けられるナット152により、梁部材142Aの上部、及び梁部材142Bの下部に固定される。これにより、梁部材142A、142B及び積み上げられた各柱壁部材12が圧着接合される。なお、各シース管28、38、148、150には硬化材34が充填される。
【0111】
このように、緊張させたPC鋼材140によって、積み上げられた柱壁部材12を圧着接合することにより、各柱壁部材12にプレストレスが導入されて増強されると共に、隣接する柱壁部材12の接合強度が大きくなる。従って、隣接する柱壁部材12間のせん断力の伝達効率が向上する。なお、PC鋼材140による圧着接合では、ボンド型のみならず、アフターボンド型及びアンボンド型も適用可能である。更に、梁部材142Aの上層に柱壁部材12を連続させる場合は、下層のPC鋼材140と上層の柱壁部材12に貫通されるPC鋼材140を相互にカプラーなどで連結すれば良い。
【0112】
また、柱壁部材12、112、114は、柱部と壁部との組み合せにより、種々の形状に構成することができる。例えば、図18(A)〜図18(E)に示す柱壁部材12の概略図のように、柱部24に1つの壁部26を一体化させたり(図18(B))、柱部24に略直角に張り出す2つの壁部26を一体化させたり(図18(C))、2つの柱部24の間に壁部26を設け、この壁部26と略直角に張り出す壁部26を一方の柱部24に設けても良い(図18(D))。また、柱部24の間に、壁部26及び梁部50を設け、これらの柱部24、壁部26、梁部50を一体化させても良い(図18(E))。なお、図18に示す構成では、図が煩雑となるため、柱部24等に埋設されるシース管28等を省略している。更には、図19に示すように、柱部156に壁部158を一体化させた1つの柱壁部材154で、柱16及び壁18(図1参照)を構成しても良い。この場合、柱壁部材154と上下の梁160とは、順刺し工法、逆刺し工法、PC圧着工法、従来の型枠工法等により、適宜接合すれば良い。
【0113】
次に、本発明の実施形態に係る柱壁部材製造方法の例について説明する。なお、上記第1〜3の実施形態に係る柱壁部材は、以下の柱壁部材製造方法によって製造されたものに限定されない。
【0114】
図20〜図22に示すように、柱壁部材製造方法では、1つの型枠170で、柱壁部材172(第2柱壁部材)と2つの柱壁部材174(第1柱壁部材)を製造する。図22に示すように、柱壁部材172は柱部178、及び2つの壁部180を備えており、柱部178の対向する側面のそれぞれに壁部180が一体化され、平面視にてT型に成形されている。また、柱壁部材172には、柱部178及び2つの壁部180にまたがって横鉄筋80が配筋されている。横鉄筋80の一端は、一方の壁部180の端面に埋設されたシース管94に挿入されており、横鉄筋80の他端は、他方の壁部180の端面に埋設されたシース管94に挿入されている。また、柱部178には、当該柱部178に埋設されたシース管28によって、柱鉄筋が上下方向へ貫通される貫通孔が形成されている。
【0115】
柱壁部材174は、柱部184と壁部186を備えており、柱部184の側面に壁部186が一体化され、平面視にてL型に成形されている。柱壁部材172には、柱部184、壁部186にまたがって横鉄筋80が配筋されている。横鉄筋80の一端は、壁部186の端面に埋設されたシース管90に挿入されている。また、柱部184には、当該柱部184に埋設されたシース管28によって、柱鉄筋が上下方向へ貫通される貫通孔が形成されている。
【0116】
柱壁部材172と柱壁部材174とは、壁部180の端面と壁部186の端面とを対面させて配置され、シース管90、94の各々に挿入された鉄筋104によって、横鉄筋80同士が接続される。これらのシース管90、94、及び壁部180の端面と壁部186の端面との間に形成される目地空間には、図示せぬ硬化材が充填されて壁部180と壁部186とが接合される。
【0117】
図20(A)〜図20(C)に示すように、鋼製の型枠170は、底板188、及び当該底板188の四辺に沿って立てられる4つの側板190A、190B、190C、190Dを備えている。対向する側板190A、190Bは、底板188の長辺に沿って立てられ、対向する側板190C、190Dは底板188の短辺に沿って立てられる。これらの側板190A〜190Dを枠状に組むことにより、型枠170の内部にコンクリートが打節される打設空間192(コンクリート打設空間)が形成される。打設空間192は、型枠170の内部に配置される壁仕切板194(仕切部材)及び柱仕切板196(仕切部材)によって、柱壁部材172が製造される平面視にてT型の打設空間192A(第2打設空間)と、柱壁部材174が製造される平面視にてL型の2つの打設空間192B(第1打設空間)に仕切られる。
【0118】
2枚の壁仕切板194は、側板170A、170Bと略平行に配置されると共に、型枠170の短手方向(矢印Y方向)中央に、型枠170の長手方向(矢印X方向)に間を空けて配置される。この壁仕切板194によって、打設空間192が型枠170の短手方向(矢印Y方向)に仕切られ、壁部180、186の壁面180A、186A(図21参照)が成形される。
【0119】
4枚の柱仕切板196は、側板170C、170Dと略平行に配置されると共に、各壁仕切板194の長手方向一端と側板170Aとの間、又は壁仕切板194の長手方向他端と側板170Bとの間に配置される。即ち、柱仕切板196は、各壁仕切板194の長手方向の両端部から互い違いに延出され、側板170C、170Dに至る。この柱仕切板196によって、打設空間192が型枠170の長手方向(X方向)に仕切られ、柱部178、184の側面178A、184A(図21参照)と壁部180、186の端面180B、186Bが成形される。
【0120】
上記のように型枠170内に配置された壁仕切板194及び柱仕切板196によって打設空間192A及び打設空間192Bが区画される。これにより、打設空間192Aで製造される壁部180の壁面180Aと打設空間192Bで製造される壁部186の壁面186Aとが向かい合うように仕切られる。
【0121】
打設空間192Aの柱部178が製造される位置には4本のシース管28が立てられる。これらのシース管28の周囲には複数のせん断補強筋200が配筋される。また、壁部180の端面180Bを成形する柱仕切板196には、横鉄筋80の一端が挿入されたシース管94が接着剤等により固定される。また、打設空間192Bの柱部184が製造される位置には4本のシース管28が立てられる。これらのシース管28の周囲には複数のせん断補強筋200が配筋される。また、壁部186の端面186Bを成形する柱仕切板196には、横鉄筋80の一端が挿入されたシース管94が接着剤等により固定される。
【0122】
このように、打設空間192Aで製造される壁部180の壁面180Aと打設空間192Bで製造される壁部186の壁面186Aとが向かい合うように、即ち、壁部180と壁部186とが対向するように、壁仕切板194及び柱仕切板196で型枠170内の打設空間192を仕切る。これにより、打設空間192の有効利用を図ることができ、製造コストを削減することができる。即ち、打設空間192A、及び打設空間192Bをそれぞれ平面視にてT型、L型に仕切り、これらの打設空間192A、192Bを組み合わせることにより、一度のコンクリート打設により複数の柱壁部材172、174を1つの型枠170内で製造できるため、製造効率が向上する。
【0123】
なお、上記の実施形態では、平面視にてT型の柱壁部材172と平面視にてL型の柱壁部材174を型枠170内で製造したがこれに限らない。例えば、図23に示すように、製造される柱壁部材174の壁部186の壁面186A同士が向かい合うように、打設空間202を壁仕切板194及び柱仕切板196で仕切って、平面視にてL型の打設空間202A(第1打設空間)、打設空間202B(第2打設空間)を形成しても良い。これにより、打設空間202の有効利用を図ることができ、製造コストを削減することができる。即ち、打設空間202A、及び打設空間202Bを平面視にてL型に仕切り、これらの打設空間202A、202Bを組み合わせることにより、一度のコンクリート打設により複数の柱壁部材174を1つの型枠170内で製造できるため、製造効率が向上する。
【0124】
また、上記の打設空間192A、192B、202A、202Bを適宜組み合せて、複数の柱壁部材172、174を製造しても良い。更に、打設空間192に設置する横鉄筋80、シース管28、及びせん断補強筋200等は、柱壁部材172、174に求められる強度に応じて配置すれば良い。また、本実施形態と同様の製造方法により、仕口部と梁部とが一体化された梁部材を製造することもできる。また、本実施形態では、鋼製の型枠170を用いたがこれに限らず、木製の型枠等、種々の型枠を用いることができる。
【0125】
また、第1〜第4の実施形態では、シース管28、38等を用いて柱壁部材12の柱部24及び壁部26に貫通孔を形成する例を示したが、貫通孔には柱鉄筋30、壁鉄筋40等を貫通させることができれば良く、シース管以外の管材を用いて貫通孔を形成しても良い。また、貫通孔は少なくとも柱部24にあれば良く、壁部26の貫通孔(シース管38)は適宜省略可能である。
【0126】
同様に、第2の実施形態では、シース管90、94を用いて壁部の端面に挿入孔84、96を形成したが、挿入孔84、96には横鉄筋80、鉄筋104、機械式継手92等を挿入できれば良く、シース管以外の管材を用いて挿入孔84、96を形成しても良い。また、例えば、挿入孔を形成する位置に、発泡ウレタン等の円柱状の部材を配置しておき、コンクリートが硬化した後にこの円柱状の部材を取り出すことによって貫通孔を形成してもよい。また、穿孔により挿入孔84、96を形成してもよい。
【0127】
更に、第1〜第3の実施形態に係る柱壁部材12、72、112、114等は、鉄筋コンクリート造に限らず、鉄骨鉄筋コンクリート造、プレストレスコンクリート造、であっても良い。また、説明の都合上、各柱壁部材12、72、112、114等に設けられるせん断補強筋等を省略して説明したが、せん断補強筋等は、各柱壁部材に求められる強度に応じて適宜設ければよい。また、柱壁構造10、70、110は、建物14の一部に用いても、全てに用いても良い。
【0128】
以上、本発明の第1〜第4の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、第1〜第4の実施形態を組み合わせて用いてもよいし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0129】
10 柱壁構造
12 柱壁部材
14 建物
24 柱部
26 壁部
28 シース管(貫通孔)
30 柱鉄筋(縦鋼材)
38 シース管(貫通孔)
40 壁鉄筋(縦鋼材)
70 柱壁構造
72 柱壁部材
74 柱部
76 壁部
76D 端面(壁部の端面)
78 壁部
78D 端面(壁部の端面)
80 横鉄筋
84 挿入孔(挿入部)
92 機械式継手(中空管)
96 挿入孔(挿入部)
104 鉄筋
110 柱壁構造
112 柱壁部材
114 柱壁部材
116 柱部
118 壁部
120 鋼板(鋼材ダンパ)
126 柱部
128 壁部
138 ダボ鉄筋(鋼材ダンパ)
140 PC鋼材
154 柱壁部材
156 柱部
158 壁部
170 型枠
172 柱部
172 柱壁部材
174 柱壁部材
178 柱部
180 壁部
184 柱部
186 壁部
192 打設空間(コンクリート打設空間)
192A 打設空間(第2打設空間)
192B 打設空間(第1打設空間)
194 壁仕切板(仕切部材)
196 柱仕切板(仕切部材)
202 打設空間(コンクリート打設空間)
202A 打設空間(第1打設空間)
202B 打設空間(第1打設空間)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレキャストコンクリート製の柱部と、
前記柱部と一体化されたプレキャストコンクリートの壁部と、
少なくとも前記柱部に形成され、上下方向へ縦鋼材が貫通される貫通孔と、
を備える柱壁部材。
【請求項2】
請求項1に記載の柱壁部材を複数段積み上げ、前記貫通孔のそれぞれに前記縦鋼材を貫通させて前記柱壁部材を接合した柱壁構造。
【請求項3】
前記縦鋼材がPC鋼材からなり、
前記柱壁部材の貫通孔のそれぞれに前記PC鋼材を貫通させ、該PC鋼材を緊張させて前記柱壁部材を圧着接合した請求項2に記載の柱壁構造。
【請求項4】
2つの前記柱壁部材が対向して配置され、一方の前記柱部の側面に設けられた壁部と、他方の前記柱部の側面に設けられ、一方の前記壁部の端面に対面される端面を有する壁部とを接合した請求項2又は請求項3に記載の柱壁構造。
【請求項5】
対面する一方の前記壁部の端面に設けられた挿入部に、他方の前記壁部の端面に設けられた収納部に収納された中空管が該収納部から引き出され、前記挿入部に挿入されて定着結合された請求項4に記載の柱壁構造。
【請求項6】
対面する一方の前記壁部の端面に設けられた挿入部に、他方の前記壁部から突出された横鉄筋が挿入されて定着結合された請求項4に記載の柱壁構造。
【請求項7】
対面する前記壁部の端面に挿入部が設けられ、前記挿入部の各々に鉄筋が挿入されて定着結合された請求項4に記載の柱壁構造。
【請求項8】
上下方向に隣接する前記柱壁部材の前記壁部同士の間に隙間を設け、該壁部同士を鋼材ダンパで連結した請求項2〜7の何れか1項に記載の柱壁構造。
【請求項9】
前記鋼材ダンパが、前記隙間に立てられた鋼板又はダボ鉄筋である請求項8に記載に柱壁構造。
【請求項10】
請求項2〜9の何れか1項に記載の柱壁構造を有する建物。
【請求項11】
枠状に組まれた型枠のコンクリート打設空間を、柱部に壁部を一体化させた第1柱壁部材を成形する平面視にてL型の第1打設空間と、柱部に壁部を一体化させた第1柱壁部材を成形する平面視にてL型の第2打設空間とに、前記第1打設空間で成形される壁部の壁面と前記第2打設空間で成形される壁部の壁面とが向かい合うように仕切部材で仕切り、前記第1打設空間及び前記第2打設空間にコンクリートを打設する柱壁部材製造方法。
【請求項12】
枠状に組まれた型枠のコンクリート打設空間を、柱部に壁部を一体化させた第1柱壁部材を成形する平面視にてL型の第1打設空間と、柱部の両側に壁部を一体化させた第2柱壁部材を成形する平面視にてT型の第2打設空間とに、前記第1打設空間で成形される壁部の壁面と前記第2打設空間で成形される一方の壁部の壁面とが向かい合うように仕切部材で仕切り、前記第1打設空間及び前記第2打設空間にコンクリートを打設する柱壁部材製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2010−156183(P2010−156183A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155(P2009−155)
【出願日】平成21年1月5日(2009.1.5)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】