説明

欠陥検出装置及び欠陥検出方法

【課題】互いに同一であるべき画素同士のグレイレベル差を所定の検出閾値と比べて画素同士の違いを検出する欠陥検査において、グレイレベル差を検出し又は検出閾値を決定する際に、検査画像に含まれるノイズ成分による影響を低減する。
【解決手段】同一の単位パターン51〜55が繰り返し現れる検査画像61内のある検査画素71に欠陥が存在するか否かを判定する際に、この検査画素71、及びこの検査画素が含まれる単位パターン51と異なる他の複数の単位パターン52〜55内においてこの検査画素71にそれぞれ対応する画素72〜75のうちの少なくとも3つの画素の画素値のうちのいずれかを基準画素値として選択して、この基準画素値と検査画素71の画素値とを比較することにより、この検査画素71が欠陥候補か否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繰り返しパターンが形成された試料の表面を撮像して得た検査画像において、互いに同一であるべき画素同士のグレイレベル差を所定の検出閾値と比べてこのような画素同士の違いを検出することにより、前記試料の表面に存在する欠陥を検出する欠陥検査装置及び欠陥検査方法に関する。より詳しくはこのような欠陥検査において、前記グレイレベル差を検出する技術や検出閾値を決定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハや、フォトマスク用基板、並びに液晶表示パネルなどの半導体装置等の製造は多数の工数から成り立っており、最終及び途中の工程での欠陥の発生具合を検査して製造工程にフィードバックすることが歩留まり向上の上からも重要である。製造工程の途中で欠陥を検出するために、半導体ウエハ、フォトマスク用基板、液晶表示パネル用基板、液晶デバイス用基板などの試料の表面に形成されたパターンを撮像し、これにより得られた画像を検査することにより試料表面に存在する欠陥を検出するパターン欠陥検査が広く行われている(例えば、下記特許文献1)。
以下の説明では、半導体ウエハ上に形成されたパターンの欠陥を検査する半導体ウエハ用欠陥検査装置を例として説明する。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、半導体メモリ用フォトマスク用基板や、液晶デバイス用基板、液晶表示パネル用基板などの半導体装置を検査する欠陥検査装置にも広く適用可能である。
【0003】
図1は、検査対象(試料)となる半導体ウエハ(以下、「ウエハ」と記す)上のダイ(チップ)の配列を示す図である。ウエハ2上には、複数のダイ3がX方向とY方向にそれぞれ繰返しマトリクス状に配列されている。各ダイには同じパターンが形成されるので、これらのダイを撮像した画像同士は本来同一となるはずであり、各ダイの撮像画像の対応する部分同士の画素値は本来同様の値となる。
【0004】
したがって、2つのダイを撮像して各画素の画素値(グレイレベル値)を取得し、2つのダイの撮像画像内の本来同一となるべき対応箇所同士の画素値の差分(グレイレベル差信号)を検出すると、両方のダイに欠陥がない場合に比べて一方のダイに欠陥がある場合にグレイレベル差信号が大きくなる。
したがって2つのダイを撮像した一方の画像を検査画像とし他方の画像を基準画像として、これら画像間の対応する画素同士のグレイレベル差を検出し、このグレイレベル差を所定の検出閾値と比較して、この検出閾値を超えるグレイレベル差を検出することによりダイ上に存在する欠陥を検出できる(ダイトゥダイ比較)。
また、1つのダイ内にメモリセルのような繰り返しパターンが形成されている場合には、この繰り返しパターン内の本来同一となるべき対応箇所を撮像した画像同士のグレイレベル差を検出しても欠陥を検出できる(セルトゥセル比較)。
【0005】
なお、ダイトゥダイ比較では、隣り合う2つのダイ同士を撮像した画像を比較するのが一般的である(シングルティテクション)。これではどちらのダイに欠陥があるか分からない。したがって、更に異なる側に隣接するダイとの比較を行い、再び同じ部分のグレイレベル差が所定の検出閾値より大きくなった場合にそのダイに欠陥があると判定する(ダブルディテクション)。セルトゥセル比較でも同様である。
【0006】
また半導体装置等を撮像した撮像画像においては、撮像された半導体装置等の表面の各領域がそれぞれどのような表面状態にあるかに応じて、その領域を撮像した画像のノイズレベルが異なる。例えば、ポリシリコンやアルミなどの材料で領域の表面が形成されている場合の表面は平滑でないので撮像画像にノイズ成分が多くなる。したがって欠陥検出のための上記の検出閾値として単一の値を使用すると、ノイズレベルの高い領域で疑似欠陥を大量に発生させるか、またはノイズレベルの低い領域にて検出感度を高められないという問題を生じる。このため、検出閾値の決定に際して、撮像画像の各画素をその属性に応じて複数のグループに分類分けし、グループ毎にそれぞれ適合させた検出閾値を用いる手法が考案されている(例えば下記特許文献2や特許文献3)。
【0007】
【特許文献1】特開2004−177397号公報
【特許文献2】特開2000−171404号公報
【特許文献3】特開2000−323541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のパターン欠陥検査は、連続するダイ又はセルの同一箇所に欠陥が続けて発生する確率が非常に小さいという知見に基づき、対比される検査画像の画素、及びこれと比較される基準画像の画素のどちらか一方が正常な値であることを前提している。このため、従来のパターン欠陥検査においては、どの画素とどの画素とが比較されるのかが固定されていた。
しかしながら、上述の通り撮像画像にはノイズ成分が含まれているため、基準画像のある画素の部分において、実際には欠陥が存在しなくてもその画素のグレイレベル値が正常な値とならない場合があり得る。ある画素の画素値が正常でない場合には、予め欠陥検査にてこの画素と比較されることが決まっている画素については、適正に欠陥検査を行うことができない。
【0009】
また、撮像画像の各画素の属性に応じて各画素を分類分けして各グループ毎に検出閾値を決定する上記の検出閾値決定方法では、分類分けされる画素に欠陥が存在する可能性を捨象することができない。このため、各グループ毎に最適な検出閾値を決定しようとしても、欠陥のために適切に分類分けされていない画素によりノイズが生じることを考慮せざるを得ず、検出感度を高めることができないといった問題があった。
【0010】
上記問題点に鑑み、本発明は、繰り返しパターンが形成された試料の表面を撮像して得た検査画像において、互いに同一であるべき画素同士のグレイレベル差を所定の検出閾値と比べてこのような画素同士の違いを検出することにより、前記試料の表面に存在する欠陥を検出する欠陥検査において、グレイレベル差を検出し又は検出閾値を決定する際に、検査画像に含まれるノイズ成分による影響を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明では、同一の単位パターンが繰り返し現れる検査画像内のある検査画素に欠陥が存在するか否かを判定する際に、この検査画素、及びこの検査画素が含まれる単位パターンと異なる他の複数の単位パターン内においてこの検査画素にそれぞれ対応する画素のうちの少なくとも3つの画素の画素値のうちのいずれかを基準画素値として選択して、この基準画素値と検査画素の画素値とを比較することにより、この検査画素が欠陥候補か否かを判定する。
【0012】
従来の欠陥検査では、従来のパターン欠陥検査においては、欠陥検査の際に比較される画素が固定されていたために、正常でない画素と比較される画素については適正に欠陥検出を行うことができなかったのに対し、本発明では、検査画素を、少なくとも3つの画素の画素値のうちから選択した画素と比較するので、検査画素の画素値に対して従来より適正な基準値を対比させて欠陥有無を判定することが可能となる。このような基準画素値としては、上記の少なくとも3つの画素の画素値のうち、最大値と最小値を除いたもののなかから画素値を選択したり、または中間値を選択することによって、より適正な値を選択することが可能となる。
【0013】
検査画像内の各検査画素についてそれぞれ選択された基準画素値は、それぞれの元の検査画素の画素値よりも、欠陥やノイズがない場合の正常な画素値を示す可能性が高い。したがって、本発明ではこのように選択した基準画素値に応じて各検査画素を分類分けして各グループ毎に検出閾値を決定することにより、適正に分類分けされる検査画素の割合を高めることによって、より高く検出感度を設定することを可能とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によって、互いに同一であるべき画素同士のグレイレベル差を所定の検出閾値と比べて画素同士の違いを検出する欠陥検査において、グレイレベル差を検出し又は検出閾値を決定する際に、検査画像に含まれるノイズ成分による影響を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付する図面を参照して本発明の実施例を説明する。図2は、本発明の実施例による欠陥検査装置のブロック図である。欠陥検査装置1には、3次元方向に移動可能なステージ11が設けられており、ステージ11の上面には試料台(チャックステージ)12が設けられている。この試料台12の上に検査対象となる試料であるウエハ2を載置して固定する。
【0016】
試料台12の上方には、ウエハ2の表面の光学像を撮像するための撮像部14が設けられる。撮像部14としては、1次元又は2次元のCCDカメラ好適にはTDIカメラなどのイメージセンサが使用され、その受光面に結像されたウエハ2の表面の光学像を電気信号に変換する。本構成例では撮像部14として1次元のTDIカメラを使用する。ステージ11の移動により撮像部14とウエハ2とを相対的に移動させることによって、ウエハ2に対して撮像部14をX方向又はY方向に走査させてウエハ2の表面の2次元画像を得る。なお、撮像部14によるウエハ2の表面の画像の撮像には、明視野照明光学系及び暗視野照明光学系のどちらを使用してもよい。撮像部14から出力される画像信号は、多値のディジタル信号(グレイレベル信号)に変換された後に画像メモリ21に記憶される。
【0017】
欠陥検査装置1は、画像メモリ21に記憶された撮像画像の各画素毎に対して、後述する基準画素値を画像メモリ21に記憶された画素値(グレイレベル値)の中から選択する基準画素値選択部22と、各画素に対してそれぞれ得られた基準画素値を配列して構成される基準画像31を記憶する作業メモリ30と、撮像画像の各画素のグレイレベル値とこれに対応してそれぞれ選択された基準画素値との間のグレイレベル差を検出して撮像画像と基準画像との差画像32を生成する差分検出部23と、を備える。差分検出部23により生成される差画像32は作業メモリ30に一時記憶される。
【0018】
また欠陥検査装置1は、画像メモリ21に記憶された撮像画像の各画素を、それぞれの画素について選択された基準画素値に応じて複数のグループへ分類分けし、各画素がいずれのグループへ帰属するかを示すグループ情報テーブル33を生成する検査画素分類部24を備える。検査画素分類部24により生成されるグループ情報テーブル33は作業メモリ30に一時記憶される。
さらに欠陥検査装置1は、検査画素分類部24によって画素が分類分けされる各グループ毎に、それぞれのグループに分類分けされた画素について差分検出部23が各々検出したグレイレベル差に対して後述する所定の統計処理を行うことにより、所定の検出閾値を決定する検出閾値決定部25と、ある画素について検出されたグレイレベル差と、この画素が属するグループについて決定された検出閾値とを比較し、グレイレベル差が検出閾値を超えるとき、この画素に欠陥候補があると判定する欠陥検出部26と、を備える。欠陥検出部26は、検出した欠陥候補の位置等の所定の情報を含む欠陥情報を検出した欠陥毎に作成して出力する。
【0019】
以下、図3に示すフローチャートを参照して、本発明の実施例による欠陥検査装置1の動作をさらに詳しく説明する。図3は、本発明の実施例による欠陥検査方法のフローチャートである。
ステップS10において、1次元TDIカメラのようなラインセンサである撮像部14のライン方向をY方向に向けた状態で、ウエハ2に対して撮像部14をX方向に走査させることによってウエハ2の表面の2次元画像を得る。図1に示すように同じパターンの複数のダイ3が繰り返し形成されたウエハ2の表面を撮像すると、1つのダイ3の撮像画像に対応する単位パターンが複数回繰り返して現れる撮像画像が得られる。図4は、ウエハ2を撮像部14で撮像した場合の2次元画像の模式図である。
【0020】
撮像部14により撮像される撮像画像には、ウエハ2上に繰り返し複数形成されるダイ3のパターンに対応して、実質的に同一の単位パターン51、52、53、54、55、…が形成されている。図4において、各単位パターン51〜55、…が各々1つのダイ3のパターンを表している。
撮像部14の受光面の幅は有限であるから、ウエハ2の全面の2次元画像を得るには、撮像部14とウエハ2をX方向へ相対移動させる走査を、撮像部14とウエハ2との相対位置をY方向へずらしながら複数回繰り返す。1回の走査によって得られる画像は撮像部14の受光素子のライン数に対応するピクセル数の幅WIを有する細長い帯状の画像41〜46となる。この帯状の画像41〜46は「スワス」と呼ばれる。
【0021】
欠陥検出処理を行う際には、処理速度を向上させるために撮像画像を所定サイズの部分画像に分割して、複数の部分画像に対してそれぞれ並列に欠陥検出処理を実行することがある。このような撮像画像を分割した所定サイズの部分画像を「ロジカルフレーム」と呼ぶ。本実施例でも、欠陥検査装置1がロジカルフレーム毎に欠陥検出処理を行うものとし、図3に示すフローチャートも1つのロジカルフレームについて行う欠陥検出処理を示す。図4においてスワス42内の1つの単位パターン51から切り出されるロジカルフレームを参照符号61で示す。また単位パターン51におけるロジカルフレーム61の位置に対応する、他の単位パターン52〜55内の位置をそれぞれ61a〜61dにて示す。図5は、ロジカルフレーム61の説明図である。図示する例では、ロジカルフレーム61は、X方向のピクセル数がPXであり、Y方向のピクセル数がPYである矩形領域である。
【0022】
図3のステップS11では、ロジカルフレーム61内において欠陥検出を行うために必要な長さΔLのスワス画像が得られたか否かが判定される。後述するように、本実施例による欠陥検査方法では、ある単位パターン51に含まれるロジカルフレーム61について欠陥検出を行うとき、ロジカルフレーム61内の画素と、また単位パターン51におけるロジカルフレーム61の位置に対応する、他の(m−1)個(mは3以上の整数:この実施例ではm=5)の単位パターン52〜55内の領域61a〜61d内の画素を使用する。したがって欠陥検出を行うために必要な長さΔLは、
ΔL=PD×(m−1)+PX
により与えられる。ここにPDは単位パターン51〜55の繰り返しピッチ画素数であり、PXはロジカルフレームのX方向画素数である。
ステップS11において、長さΔLのスワス画像がまだ取り込まれていないと判定したときは処理をS10に戻して次の画像を取り込み、長さΔLのスワス画像が取り込み済みの場合には、処理をステップS12に進める。
【0023】
ステップS12では、ロジカルフレーム61内の各画素について、以下の選択方法に従ってそれぞれ「基準画素値」が選択される。図6は、図3に示す基準画素値選択ステップS12のフローチャートである。
図6において、ステップS31〜ステップS34からなるループは、ロジカルフレーム61に含まれる全ての画素についてそれぞれ1回ずつ実行される。図6のフローチャートについて以下に行う説明において、1回のループにおいて対象となる画素を、「検査対象画素」と示す。
【0024】
図7は、図4に示す1つの単位パターン51に含まれる検査対象画素と複数の他の単位パターン52〜55にそれぞれ含まれる検査対象画素に対応する画素を示す図である。図示の例において単位パターン51に含まれる検査対象画素を参照符号71にて示し、単位パターン51内の検査対象画素71の位置にそれぞれ対応する、他の単位パターン52〜55内の画素をそれぞれ参照符号72〜75で示す。
ステップS32では、基準画素値選択部22は、画像メモリ21に記憶されている画像の中から、検査対象画素71の画素値と、他の単位パターン52〜55内の上記の画素72〜75の画素値をそれぞれ取り出す。
【0025】
ステップS33では、基準画素値選択部22は、これら取り出した画素71〜75のうちいずれかの画素値を基準画素値として選択する。
基準画素値は、後段のステップにおいて検査対象画素71が通常取りうる画素値の基準値として使用する。したがって、基準画素値選択部22は、画素71〜75の画素値のうち異常値でない値を基準画素値として選択する必要がある。
ある実施例では、基準画素値選択部22は、画素71〜75を画素値順に並べて、中間の順位にある画素の画素値を基準画素値として選択する。例えば、画素71〜75の画素値がそれぞれ「100」、「93」、「105」、「99」及び「95」であったときには、5つの画素値のうち中間の順位にある画素74の値「99」が基準画素値として選択される。
【0026】
他の実施例では、基準画素値選択部22は、画素71〜75の画素値のうち、最大値と最小値を除いたものから任意のものを選択する。
さらに他の実施例では、他の実施例では、基準画素値選択部22は、画素71〜75の画素値のうち、上下限値を超えた値を除いたものから任意のものを選択する。
【0027】
本実施例では、単位パターン51に含まれる検査対象画素71に対する基準画素値を選択するm個の画素の候補の中に対象検査画素71自身も含めた。しかし他の実施例では、基準画素値を選択するm個の候補として対象検査画素71自身を含めずに、単位パターン51内の検査対象画素71の位置にそれぞれ対応する、他のm個(mは3以上の整数)の単位パターン内の画素を候補として使用してもよい。
【0028】
基準画素値選択部22は、PXピクセル×PYピクセルのロジカルフレーム61に含まれる全ての画素についてそれぞれ選択された基準画素値を、作業メモリ30に一時記憶する。本実施例では、基準画素値選択部22は、ロジカルフレーム61内の各画素に対してそれぞれ選択された基準画素値を配列して基準画像31として作業メモリ30に記憶する。図8は、基準画像31の説明図である。
図示の基準画像31の例では、ロジカルフレーム61内の座標(x,y)(x=1〜PX,y=1〜PY)の画素について選択された基準画素値が、基準画像31内の座標(x,y)(x=1〜PX,y=1〜PY)に配置される。
【0029】
図3のループS13〜S15では、差分検出部23は、ロジカルフレーム61に含まれる全ての画素について、それぞれ画素と、その画素についてステップS12で選択された基準画素値との間のグレイレベル差ΔGLを検出する。差分検出部23は、各画素についてそれぞれ検出したグレイレベル差ΔGLを配列して差画像32として、作業メモリ30に記憶する。差画像32はロジカルフレーム61と基準画像31との差画像になる。
【0030】
ステップS16では、検査画素分類部24は、ロジカルフレーム61に含まれる各画素を、それぞれの画素について選択された基準画素値に応じてn個(nは2以上の整数)のグループgi(iはグループ番号:i=1〜n)へ分類分けし、各画素がどのグループ番号のグループに属するかを示すグループ情報テーブル33を生成する。
【0031】
例えば、検査画素分類部24は、ある画素について選択された基準画素値が「0」〜「63」であるときにはその画素はグループg1(グループ番号1)に属すると決定し、基準画素値が「64」〜「127」であるときにはその画素はグループg2(グループ番号2)に属すると決定し、基準画素値が「128」〜「191」であるときにはその画素はグループg3(グループ番号3)に属すると決定し、基準画素値が「192」〜「255」であるときにはその画素はグループg4(グループ番号4)に属すると決定する。そしてその画素の座標(x,y)に対応する、グループ情報テーブル33の位置であるx行目かつy列目の要素に、その画素が帰属するグループの番号iを記憶する。図8に示す基準画像31に基づいて作成されるグループ情報テーブル33の例を図9に示す。
【0032】
図3のループS17〜S19では、検出閾値決定部25が、各グループgi(i=1〜n)毎に、各グループに属する画素の欠陥検出に使用する検出閾値Thi(i=1〜n)を決定する。図10は、図3に示す検出閾値決定ステップS18のフローチャートであり、図11は、図10に示す検出閾値決定ルーチンS18の説明図である。
【0033】
検出閾値決定ステップS18では、あるグループgi(iは、1〜nのうちのいずれかの整数)に属する画素の欠陥検出に用いる検出閾値Thiを決定する。
ステップS40では、検出閾値決定部25は、グループ情報テーブル33を参照して、ロジカルフレーム61に含まれる画素の中からグループgiに帰属する画素を選択する。このとき例えば図9に示すグループ情報テーブル33が生成されている場合には、検出閾値決定部25は、グループ情報テーブル33の中からグループ番号iを記憶している要素を検索し、その行及び列を特定することにより、そのグループgiに属する画素の座標を特定する。
【0034】
検出閾値決定部25は、ロジカルフレーム61に含まれるグループgiに属する画素の全てを選択してもよく、またこのような画素の数が多すぎる場合には、ロジカルフレーム61に含まれるグループgiに属する画素の一部をサンプルとして選択してもよい。そして検出閾値決定部25は、選択した画素についてそれぞれ検出されたグレイレベル差ΔGLを差画像32から入力する。
【0035】
以下、検出閾値決定部25は、ステップS40で入力したグレイレベル差ΔGLに所定の統計処理を行うことにより検出閾値Thiを決定する。なお以下のステップS41〜S45に示す統計処理はあくまで一例であり、本発明に使用する統計処理はこれに限定されるものではない。
【0036】
ステップS41において検出閾値決定部25は、入力したグレイレベル差のヒストグラムを、図11の(A)に示すように作成する。ステップS42において検出閾値決定部25は、このヒストグラムからグレイレベル差の累積頻度を算出する。
ステップS43において、グレイレベル差がある所定の分布に従うと仮定した上でグレイレベル差に対して累積頻度が直線関係となるように、ステップS42で算出した累積頻度を変換する。このとき、グレイレベル差が正規分布、ポアソン分布、又はχ二乗分布などのある分布に従うと仮定して累積頻度を変換する。この変換累積頻度を図11の(B)に示す。
【0037】
ステップS44では、ステップS43で変換した変換累積頻度に応じて、グレイレベル差と変換累積頻度との関係を示す近似直線(y=ax+b)を導出する(図11の(C)参照)。
ステップS45では、近似直線のパラメータa、b及び感度設定パラメータ(固定値)から検出閾値Thiを決定する。
【0038】
ここでは、グレイレベル差と変換累積頻度の近似直線において、固定の感度設定パラメータとしてVOPとHOを設定しておき、累積確率(p)に相当する累積頻度P1(pにサンプル数を乗じて求める。)になる直線上の点を求め、その点から縦軸方向にVOP、横軸方向にHO移動したグレイレベル差を検出閾値Thiとする。従って、検出閾値Thiは、所定の計算式、
Thi=(P1−b+VOP)/a+HO …(1)
により算出される。なお、近似直線のパラメータa、b、及びVOPやHOなどの感度設定パラメータとして、各グループ固有の値を使用してもよい。
【0039】
図3のループS20〜S24では、欠陥検出部26が、ロジカルフレーム61に含まれる全ての画素について、各画素についてそれぞれステップS14で検出したグレイレベル差ΔGLと、その画素が属するグループgi(i=1〜n)について決定した検出閾値Thiとを比較する(ステップS21)。比較の結果、グレイレベル差ΔGLが検出閾値Thiを超える場合には、欠陥検出部26はその画素を欠陥候補として検出し(ステップS22)、検出した欠陥についてその検出箇所等の情報を含む所定のフォーマットの欠陥情報を作成する。一方でグレイレベル差ΔGLが検出閾値Thiを超えない場合には、欠陥検出部26はその画素が正常であると判定する(ステップS23)。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、繰り返しパターンが形成された試料の表面を撮像して得た検査画像において、互いに同一であるべき画素同士のグレイレベル差を所定の検出閾値と比べてこのような画素同士の違いを検出することにより、前記試料の表面に存在する欠陥を検出する欠陥検査装置及び欠陥検査方法に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】半導体ウエハ上のダイの配列を示す図である。
【図2】本発明の実施例による欠陥検査装置のブロック図である。
【図3】本発明の実施例による欠陥検査方法のフローチャートである。
【図4】図2に示す欠陥検査装置が欠陥検査に使用する画像の説明図である。
【図5】ロジカルフレームの説明図である。
【図6】図3に示す基準画素値選択ステップのフローチャートである。
【図7】図4に示す1つの単位パターンに含まれる検査対象画素と複数の他の単位パターンにそれぞれ含まれる検査対象画素に対応する画素を示す図である。
【図8】基準画像を示す図である。
【図9】グループ情報テーブルを示す図である。
【図10】図3に示す検出閾値決定ステップのフローチャートである。
【図11】図10に示す検出閾値決定ルーチンの説明図である。
【符号の説明】
【0042】
1 欠陥検査装置
2 ウエハ
14 撮像部
21 画像メモリ
22 基準画素値選択部
23 差分検出部
24 検査画素分類部
25 検出閾値決定部
26 欠陥検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰り返しパターンが形成された試料の表面を撮像して得た検査画像を検査することにより、前記試料の表面に存在する欠陥を検出する欠陥検出装置であって、
前記検査画像を記憶するためのメモリと、
前記メモリに記憶される前記検査画像を構成する画素である検査画素毎に、基準画素値を選択する基準画素値選択部と、
前記検査画素の画素値と該検査画素について選択された前記基準画素値との差分を検出する差分検出部と、
前記検査画素について検出された前記差分が所定の検出閾値を超えるとき、該検査画素が示す箇所に欠陥候補が存在すると判定する欠陥検出処理を行う欠陥検出部と、を備え、
前記基準画素値選択部は、前記繰り返しパターンに対応して前記検査画像に繰り返し現れる単位パターンのいずれかに含まれる検査画素のいずれかである対象検査画素に対する前記基準画素値を選択するとき、該対象検査画素、及び該対象検査画素が含まれる前記単位パターンとは異なる複数の他の単位パターン内の前記対象検査画素にそれぞれ対応する画素のうち、少なくとも3つの画素の画素値から、前記基準画素値を選択することを特徴とする欠陥検出装置。
【請求項2】
前記検査画素を、該検査画素について選択された前記基準画素値に応じて複数のグループへ分類分けする検査画素分類部と、
前記複数のグループ毎に、各グループに分類分けされた検査画素について検出された前記差分に所定の統計処理を行うことにより前記所定の検出閾値を決定する検出閾値決定部と、を備え、
前記欠陥検出部は、前記検査画素について検出された前記差分と、前記検査画素が属するグループについて決定された前記検出閾値とを比較して前記欠陥検出処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の欠陥検出装置。
【請求項3】
前記基準画素値選択部は、前記メモリに記憶されている画素の画素値から、前記基準画素値を選択することを特徴とする請求項1又は2に記載の欠陥検出装置。
【請求項4】
前記基準画素値選択部は、前記少なくとも3つの画素の画素値のうち、最大値と最小値を除いた画素値のうちいずれかを前記基準画素値として選択することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の欠陥検出装置。
【請求項5】
前記基準画素値選択部は、前記少なくとも3つの画素の画素値のうちの中間値を前記基準画素値として選択することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の欠陥検出装置。
【請求項6】
繰り返しパターンが形成された試料の表面を撮像して得られた検査画像を検査することにより、前記試料の表面に存在する欠陥を検出する欠陥検出方法であって、
前記検査画像を所定のメモリに記憶する画像記憶ステップと、
前記所定のメモリに記憶される前記検査画像を構成する画素である検査画素毎に、基準画素値を選択する基準画素値選択ステップと、
前記検査画素の画素値と該検査画素について選択された前記基準画素値との差分を検出する差分検出ステップと、
前記検査画素について検出された前記差分が所定の検出閾値を超えるとき、該検査画素が示す箇所に欠陥候補が存在すると判定する欠陥検出処理を行う欠陥検出ステップと、を含み、
前記基準画素値選択ステップにて、前記繰り返しパターンに対応して前記検査画像に繰り返し現れる単位パターンのいずれかに含まれる検査画素のいずれかである対象検査画素に対する前記基準画素値を選択するとき、該対象検査画素、及び該対象検査画素が含まれる前記単位パターンとは異なる複数の他の単位パターン内の前記対象検査画素にそれぞれ対応する画素のうち、少なくとも3つの画素の画素値から、前記基準画素値を選択することを特徴とする欠陥検出方法。
【請求項7】
前記検査画素を、該検査画素について選択された前記基準画素値に応じて複数のグループへ分類分けするステップと、
前記複数のグループ毎に、各グループに分類分けされた検査画素について検出された前記差分に所定の統計処理を行うことにより前記所定の検出閾値を決定するステップと、を含み、
前記欠陥検出ステップは、前記検査画素について検出された前記差分と、前記検査画素が属するグループについて決定された前記検出閾値とを比較して前記欠陥検出処理を行うことを特徴とする請求項6に記載の欠陥検出方法。
【請求項8】
前記基準画素値選択ステップにて、前記所定のメモリに記憶されている画素の画素値から、前記基準画素値を選択することを特徴とする請求項6又は7に記載の欠陥検出方法。
【請求項9】
前記基準画素値選択ステップにて、前記少なくとも3つの画素の画素値のうち、最大値と最小値を除いた画素値のうちいずれかを前記基準画素値として選択することを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の欠陥検出方法。
【請求項10】
前記基準画素値選択ステップにて、前記少なくとも3つの画素の画素値のうちの中間値を前記基準画素値として選択することを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の欠陥検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−97923(P2009−97923A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−268102(P2007−268102)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(000151494)株式会社東京精密 (592)
【Fターム(参考)】