説明

波長可変干渉フィルター、光モジュール、および電子機器

【課題】基板に生じる撓みを低減して分解能を向上させた波長可変干渉フィルター、光モジュール、及び電子機器を提供する。
【解決手段】エタロン5(波長可変干渉フィルター)は、固定基板51と、固定基板51に対向する可動基板52と、固定基板51に設けられた固定反射膜56と、可動基板52に設けられ、固定反射膜56とギャップを介して対向する可動反射膜57と、固定基板51に設けられた固定電極541と、可動基板52に設けられ、固定電極541と対向する可動電極542と、を備え、可動電極542の固定電極541側の面には可動絶縁膜544が積層され、可動電極542は圧縮応力を有し、可動絶縁膜544は引張応力を有して構成された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光から所望の目的波長の光を選択して出射する波長可変干渉フィルター、この波長可変干渉フィルターを備えた光モジュール、及びこの光モジュールを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の反射膜間で光を多重干渉させて、所望の波長の光を出射させる波長可変干渉フィルターが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の光学フィルター装置(波長可変干渉フィルター)は、対向配置された第一基板、および第二基板を有し、第一基板の第二基板に対向する面には光学反射膜、第二基板の第一基板に対向する面にはミラー層が設けられている。
また、第一基板において、第一基板の表面の外周に沿って酸化膜が形成され、この酸化膜に支持されたダイヤフラム上に光学反射膜が形成されている。すなわち、第一基板とダイヤフラムとの間には空隙が形成される。そして、第一基板とダイヤフラムの表面にはそれぞれ電極が設けられ、これらの電極間の間に電圧を印加すると、静電引力によりダイヤフラムが第一基板側に撓み、光学反射膜およびミラー層間のギャップ寸法が変化する。これにより、波長可変干渉フィルターは電極間の電圧を制御することで、入射光から、ミラー間のギャップ寸法に応じた波長の光を取り出すことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−76749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載のような波長可変干渉フィルターでは、電極をダイヤフラムに設けている。電極としては、通常、膜状の電極が用いられるが、このような電極を成膜すると、膜の面方向(ダイヤフラムの基板表面に沿う方向)に内部応力が作用する。この内部応力の方向や大きさは、成膜方法や膜材質などにより決定される。そして、内部応力が膜中心部に向かう方向に作用している場合、圧縮応力となり、内部応力が電極の膜中心部から外側に作用している場合は引張応力となる。ここで、ダイヤフラムに形成される電極に圧縮応力が作用する場合、ダイヤフラムは、第一基板に向かって撓み、ダイヤフラムに形成される電極に引張応力が作用する場合、ダイヤフラムは、第一基板から離れる方向に撓む。
【0005】
このように、電極の内部応力により、ダイヤフラムが撓んでしまうと、光学反射膜もダイヤフラムの撓みに応じて撓み、電極間に駆動電圧を印加していない初期状態において、光学反射膜およびミラー層を平行に維持できなくなる場合があり、波長可変干渉フィルターの分解能が低下するという課題がある。
【0006】
本発明は上記のような課題に鑑みて、基板に生じる撓みを低減させた波長可変干渉フィルター、光モジュール、及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の波長可変干渉フィルターは、第一基板と、前記第一基板に対向する第二基板と、前記第一基板の前記第二基板に対向する面に設けられた第一反射膜と、前記第二基板の前記第一基板に対向する面に設けられ、前記第一反射膜とギャップを介して対向する第二反射膜と、前記第一基板の前記第二基板に対向する面に設けられた第一電極と、前記第二基板の前記第一基板に対向する面に設けられ、前記第一電極に対してギャップを介して対向する第二電極と、前記第一電極上に積層された絶縁膜と、を備え、前記第一電極の前記第一基板の基板表面に沿う面方向に対する内部応力の方向と、前記絶縁膜の前記面方向に対する内部応力の方向が逆であることを特徴とする。
【0008】
この発明では、第一基板に設けられる第一電極の内部応力の方向と、第一電極に積層された絶縁膜の内部応力の方向とが逆向きであるため、双方の内部応力を互いに打ち消しあうことができる。
具体的には、第一基板には、第一電極の圧縮応力により第二基板側に撓ませようとする力が作用し、絶縁膜の引張応力により第二基板から離れる側に撓ませようとする力と作用する。したがって、それぞれ力が反対方向に作用するため、これらの力が互いに打ち消しあって、第一基板を撓ませようとする力が低減される。これにより、第一基板の撓みが低減されるので、第一基板上に設けられた第一反射膜の撓みも低減することができ、第一反射膜および第二反射膜の平行精度が向上し、波長可変干渉フィルターの分解能を向上させることができる。
また、波長可変干渉フィルターの製造時では、第一電極および第二電極の間に駆動電圧を印加していない初期状態で、第一反射膜および第二反射膜のギャップの寸法を設定値(初期ギャップ寸法)に設定する。この際、第一基板に撓みがある場合、ギャップ寸法を正確に初期ギャップ寸法に設定することができないという問題がある。これに対して、本願発明では、第一基板の撓みが低減されるため、第一反射膜および第二反射膜のギャップを精度良く初期ギャップ寸法に合わせ込むことができる。
【0009】
本発明の波長可変干渉フィルターでは、前記第一電極の内部応力、膜厚寸法、および面積の積の絶対値と、前記絶縁膜の内部応力、膜厚寸法、および面積の積の絶対値とが、同値であることが好ましい。
【0010】
ここで、基板に形成された膜の内部応力が基板に及ぼす力は、膜の内部応力の大きさと、膜厚寸法と、膜の面積の積に比例する。
ここで、第一電極の圧縮応力の大きさ、膜厚寸法、および面積の積の絶対値と、絶縁膜の引張応力の大きさ、膜厚寸法、および面積の積の絶対値が同一であれば、第一電極が第一基板に及ぼす力と、絶縁膜が第一基板に及ぼす力とが釣り合い、第一電極の内部応力に起因する第一基板の撓みが防止される。これにより、第一反射膜および第二反射膜が平行に維持され、波長可変干渉フィルターの分解能をより向上させることができる。
【0011】
本発明の波長可変干渉フィルターでは、前記絶縁膜は、high−k材料の膜であることが好ましい。
【0012】
一般に、high−k材料は比誘電率が高く、絶縁耐圧に優れている。比誘電率が高いため、第一電極と第二電極との間に働く静電吸引力を向上させることができる。このように、静電吸引力と絶縁耐圧との両方を向上させることができる。
【0013】
本発明の波長可変干渉フィルターでは、前記絶縁膜は、複数の層で形成されることが好ましい。
【0014】
この発明では、絶縁膜を、特性の異なる複数の層で形成することができるため、性能がより優れた絶縁膜を形成することができる。例えば、上述したhigh−k材料であっても、種類によって比誘電率は高いが絶縁耐圧が若干低いというものも存在する。したがって、このような材料からなる膜と、絶縁耐圧の優れた材料からなる膜とを積層することにより、静電吸引力と絶縁耐圧の両方を優れたものにすることができる。また、絶縁膜として一般的に使用されているSiO膜は絶縁耐圧に優れ、価格も安価であるので、このSiO膜と比誘電率の高いhigh−k材料からなる膜とを積層させてもよい。このように、層の組み合わせを変えることによって、絶縁膜の性能を調整することができる。
【0015】
本発明の光モジュールは、上述のような波長可変干渉フィルターと、前記波長可変干渉フィルターを透過した光を検出する検出部と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
この発明では、上述したように、波長可変干渉フィルターは、第一電極の内部応力による第一基板や第一反射膜の撓みが低減されるため、第一反射膜および第二反射膜の平行精度が向上し、高分解能を実現できる。したがって、このような波長可変干渉フィルターを備えた光モジュールでは、高い分解能で取り出された所望波長の光を検出部で受光させることができ、所望波長の光の光量を正確に検出することができる。
【0017】
本発明の電子機器は、上述のような光モジュールを備えたことを特徴とする。
ここで、電子機器としては、上記のような光モジュールにより検出された光の光量に基づいて、干渉フィルターに入射した光の色度や明るさなどを分析する光測定器、ガスの吸収波長を検出してガスの種類を検査するガス検出装置、受光した光からその波長の光に含まれるデータを取得する光通信装置などを例示することができる。
本発明では、上述したように、光モジュールにより、所望波長の光の正確な光量を検出することができるため、電子機器は、このような正確なデータに基づいて、正確な光分析処理を実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る第一実施形態の測色装置の概略構成を示す図である。
【図2】第一実施形態の波長可変干渉フィルターであるエタロンの概略構成を示す平面図である。
【図3】第一実施形態のエタロンの概略構成を示す断面図である。
【図4】第一実施形態のエタロンの固定基板の製造工程を示す図である。
【図5】第一実施形態のエタロンの可動基板の製造工程を示す図である。
【図6】本発明に係る第二実施形態のエタロンの概略構成を示す断面図である。
【図7】本発明に係る他の実施形態の電子機器の一例であるガス検出装置を示す概略図である。
【図8】前記ガス検出装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明に係る他の実施形態の電子機器の一例である食物分析装置を示す概略図である。
【図10】本発明に係る他の実施形態の電子機器の一例である分光カメラを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔第一実施形態〕
以下、本発明に係る第一実施形態について、図面に基づいて説明する。
〔1.測色装置の全体構成〕
図1は、本発明に係る実施形態の測色装置(電子機器)の概略構成を示す図である。
この測色装置1は、本発明の電子機器であり、図1に示すように、被検査対象Aに光を射出する光源装置2と、本発明の光モジュールである測色センサー3と、測色装置1の全体動作を制御する制御装置4とを備えている。そして、この測色装置1は、光源装置2から射出される光を被検査対象Aにて反射させ、反射された検査対象光を測色センサー3にて受光し、測色センサー3から出力される検出信号に基づいて、検査対象光の色度、すなわち被検査対象Aの色を分析して測定する装置である。
【0020】
〔2.光源装置の構成〕
光源装置2は、光源21、複数のレンズ22(図1には1つのみ記載)を備え、被検査対象Aに対して白色光を射出する。複数のレンズ22には、コリメーターレンズが含まれていてもよく、この場合、光源装置2は、光源21から射出された白色光をコリメーターレンズにより平行光とし、図示しない投射レンズから被検査対象Aに向かって射出する。
なお、本実施形態では、光源装置2を備える測色装置1を例示するが、例えば被検査対象Aが液晶パネルなどの発光部材である場合、光源装置2が設けられない構成としてもよい。
【0021】
〔3.測色センサーの構成〕
測色センサー3は、本発明の光モジュールを構成する。この測色センサー3は、図1に示すように、本発明の波長可変干渉フィルターを構成するエタロン5と、エタロン5を透過する光を受光して検出する検出部31と、エタロン5で透過させる光の波長を可変する電圧制御部6と、を備えている。また、測色センサー3は、エタロン5に対向する位置に、被検査対象Aで反射された反射光(検査対象光)を、内部に導光する図示しない入射光学レンズを備えている。そして、この測色センサー3は、エタロン5により、入射光学レンズから入射した検査対象光のうち、所定波長の光のみを分光し、分光した光を検出部31にて受光する。
検出部31は、複数の光電交換素子により構成されており、受光量に応じた電気信号を生成する。そして、検出部31は、制御装置4に接続されており、生成した電気信号を受光信号として制御装置4に出力する。
【0022】
(3−1.エタロンの構成)
図2は、本発明の波長可変干渉フィルターを構成するエタロン5の概略構成を示す平面図であり、図3は、エタロン5の概略構成を示す断面図である。
エタロン5は、図2に示すように、平面正方形状の板状の光学部材であり、一辺が例えば10mmに形成されている。このエタロン5は、図3に示すように、本発明の第二基板である固定基板51、および本発明の第一基板である可動基板52を備えている。これらの2枚の基板51,52は、それぞれ例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラスなどの各種ガラスや、水晶などにより形成されている。そして、これらの2つの基板51,52は、後述の接合部513,523が、例えば常温活性化接合やプラズマ重合膜を用いたシロキサン接合などにより、接合されることで、一体的に構成されている。
【0023】
固定基板51には、本発明の第二反射膜を構成する固定反射膜56が設けられ、可動基板52には、本発明の第一反射膜を構成する可動反射膜57が設けられている。ここで、固定反射膜56は、固定基板51の可動基板52に対向する面に固定され、可動反射膜57は、可動基板52の固定基板51に対向する面に固定されている。また、これらの固定反射膜56および可動反射膜57は、ギャップを介して対向配置されている。
さらに、固定基板51と可動基板52との間には、固定反射膜56および可動反射膜57の間のギャップの寸法を調整するための静電アクチュエーター54が設けられている。この静電アクチュエーター54は、固定基板51側に設けられる本発明の第二電極としての固定電極541と、可動基板52側に設けられる本発明の第一電極としての可動電極542とを備えている。
【0024】
(3−1−1.固定基板の構成)
固定基板51は、厚みが例えば500μmに形成されるガラス基材を加工することで形成される。具体的には、図3に示すように、固定基板51には、エッチングにより電極形成溝511および反射膜固定部512が形成されている。この固定基板51は、可動基板52に対して厚み寸法が大きく形成されており、固定電極541および可動電極542間に電圧を印加した際の静電引力や、固定電極541の内部応力による固定基板51の撓みはない。
【0025】
電極形成溝511は、図2に示すようなエタロン5を厚み方向から見た平面視(以降、エタロン平面視と称す)において、平面中心点を中心とした円形に形成されている。反射膜固定部512は、前記平面視において、電極形成溝511の中心部から可動基板52側に突出して形成される。
また、固定基板51には、電極形成溝511から、固定基板51の外周縁の頂点方向(例えば図2における右下方向)に向かって延出する引出形成溝が設けられている。
【0026】
そして、固定基板51の電極形成溝511の溝底部である電極形成面511Aには、リング状の固定電極541が形成されている。この固定電極541は、導電性を有し、後述する可動基板52の可動電極542との間で電圧を印加することで、固定電極541および可動電極542間に静電引力を発生させることが可能なものであれば、特に限定されないが、本実施形態では、ITO膜を用いる。
また、この固定電極541の外周縁から、引出形成溝(図2では、右下方向)に沿って伸びる固定引出電極541Aが設けられている。この固定引出電極541Aの先端には、固定電極パッド541Bが形成され、この固定電極パッド541Bが電圧制御部6に接続されている。この固定引出電極541Aは、固定電極541の成膜時に同時に形成されるものであり、固定電極541と同様、ITO膜で構成されている。
【0027】
また、固定電極541上には、固定電極541および可動電極542の間の放電を防止するための固定絶縁膜543が積層されている。この固定絶縁膜543は、例えばSiO等の絶縁性を有する部材により構成され、固定電極541の可動基板52に対向する面を覆っている。固定絶縁膜543の膜厚寸法としては、特に限定はされず、必要な絶縁耐圧に応じて設定されていればよい。
【0028】
反射膜固定部512は、上述したように、電極形成溝511と同軸上で、電極形成溝511よりも小さい径寸法となる円柱状に形成されている。なお、本実施形態では、図3に示すように、反射膜固定部512の可動基板52に対向する反射膜固定面512Aが、電極形成面511Aよりも可動基板52に近接して形成される例を示すが、これに限らない。電極形成面511Aおよび反射膜固定面512Aの高さ位置は、反射膜固定面512Aに固定される固定反射膜56、および可動基板52に形成される可動反射膜57の間のギャップの寸法、固定電極541および可動基板52に形成される後述の可動電極542の間の寸法、固定反射膜56や可動反射膜57の厚み寸法により適宜設定される。例えば反射膜56,57として、誘電体多層膜を用い、その厚み寸法が増大する場合、電極形成面511Aと反射膜固定面512Aとが同一面に形成される構成や、電極形成面511Aの中心部に、円柱凹溝上の反射膜固定溝が形成され、この反射膜固定溝の底面に反射膜固定面512Aが形成される構成などとしてもよい。
ただし、固定電極541および可動電極542の間に作用する静電引力は、固定電極541および可動電極542の距離の二乗に反比例する。したがって、これら固定電極541および可動電極542の距離が近接するほど、印加電圧に対する静電引力も増大し、ギャップの変動量も大きくなる。特に、本実施形態のエタロン5のように、ギャップの可変寸法が微小な場合(例えば250nm〜450nm)、ギャップの制御が困難となる。したがって、上記のように、反射膜固定溝を形成する場合であっても、電極形成溝511の深さ寸法をある程度確保する方が好ましく、本実施形態では、例えば、1μmに形成されることが好ましい。
【0029】
また、反射膜固定部512の反射膜固定面512Aは、エタロン5を透過させる波長域をも考慮して、溝深さが設計されることが好ましい。例えば、固定反射膜56および可動反射膜57の間のギャップの初期値(固定電極541および可動電極542間に電圧が印加されていない状態のギャップの寸法)が450nmに設定され、固定電極541および可動電極542間に電圧を印加することにより、ギャップが例えば250nmになるまで可動反射膜57を変位させることが可能な設定とする場合、固定反射膜56および可動反射膜57の膜厚および反射膜固定面512Aや電極形成面511Aの高さ寸法は、ギャップGを250nm〜450nmの間で変位可能な値に設定されていればよい。
【0030】
そして、反射膜固定面512Aには、円形状に形成される固定反射膜56が固定されている。この固定反射膜56としては、金属の単層膜により形成されるものであってもよく、誘電体多層膜により形成されるものであってもよく、さらには、誘電体多層膜上にAg合金が形成される構成などとしてもよい。金属単層膜としては、例えばAg合金の単層膜を用いることができ、誘電体多層膜の場合は、例えば高屈折層をTiO、低屈折層をSiOとした誘電体多層膜を用いることができる。ここで、Ag合金の単層など金属単層により固定反射膜56を形成する場合、エタロン5で分光可能な波長域として可視光全域をカバーできる反射膜を形成することが可能となる。また、誘電体多層膜により固定反射膜56を形成する場合、エタロン5で分光可能な波長域がAg合金単層膜よりも狭いが、分光された光の透過率が大きく、透過率の半値幅も狭く分解能を良好にできる。
【0031】
さらに、固定基板51は、可動基板52に対向する上面とは反対側の下面において、固定反射膜56に対応する位置に図示略の反射防止膜(AR)が形成されている。この反射防止膜は、低屈折率膜および高屈折率膜を交互に積層することで形成され、固定基板51の表面での可視光の反射率を低下させ、透過率を増大させる。
【0032】
(3−1−2.可動基板の構成)
可動基板52は、厚みが例えば200μmに形成されるガラス基材をエッチングにより加工することで形成される。
具体的には、可動基板52は、図2に示すような平面視において、基板中心点を中心とした円形の可動部521と、可動部521と同軸であり可動部521を保持する保持部522と、を備えている。
【0033】
可動部521は、保持部522よりも厚み寸法が大きく形成され、例えば、本実施形態では、可動基板52の厚み寸法と同一寸法である200μmに形成されている。また、可動部521は、反射膜固定部512に平行な可動面521Aを備え、この可動面521Aに、固定反射膜56とギャップを介して対向する可動反射膜57が固定されている。
ここで、この可動反射膜57は、上述した固定反射膜56と同一の構成の反射膜が用いられる。
【0034】
さらに、可動部521は、可動面521Aとは反対側の上面において、可動反射膜57に対応する位置に図示略の反射防止膜(AR)が形成されている。この反射防止膜は、固定基板51に形成される反射防止膜と同様の構成を有し、低屈折率膜および高屈折率膜を交互に積層することで形成される。
【0035】
保持部522は、可動部521の周囲を囲うダイヤフラムであり、例えば厚み寸法が50μmに形成され、可動部521よりも厚み方向に対する剛性が小さく形成されている。このため、保持部522は可動部521よりも撓みやすく、僅かな静電引力により固定基板51側に撓ませることが可能となる。この際、可動部521は、保持部522よりも厚み寸法が大きく、剛性が大きくなるため、静電引力により可動基板52を撓ませる力が作用した場合でも、可動部521の撓みはほぼなく、可動部521に形成された可動反射膜57の撓みも防止できる。
そして、この保持部522の固定基板51に対向する面には、固定電極541と、約1μmの隙間を介して対向する、リング状の可動電極542が形成され、可動電極542の固定電極541側には、可動絶縁膜544が積層されている。
【0036】
可動電極542は、面方向に沿って作用する内部応力の方向が、可動電極542の外周縁から中心部に向かう圧縮方向である、圧縮応力を有している。また、可動絶縁膜544は、内部応力の方向が、膜中心部から可動絶縁膜544の外周縁に向かう引張方向である、引張応力を有している。
【0037】
より具体的には、可動電極542は、金属酸化物の膜をスパッタリングにより成膜することで形成される膜であり、例えば、本実施形態では、厚み寸法が0.1μmであるITO(Indium Tin Oxide)により形成されている。ITO膜をスパッタリングにより成膜した場合、膜応力は300−500MPa程度である。このような金属酸化物により構成された可動電極542は、ガラスにより形成される可動基板52との密着性が良好となり、可動基板52と可動電極542との剥離が防止される。また、金属酸化物により形成された膜は、例えばスパッタリングにより成膜された際に、後処理等されていない状態で圧縮応力を有する膜となる。
スパッタリングにより成膜された際に圧縮応力を示すその他の金属酸化物膜としては、例えば、IZO、ICO、IGO、IXO、IWO等が挙げられる。さらに、可動電極542として、金属酸化物に限られず、例えば導電性を付与したDLCなどを用いてもよい。
【0038】
また、可動絶縁膜544は、Alのような比誘電率が7.8以上と高いhigh−k材料を原子層堆積(ALD)法により形成される膜であり、可動電極542の固定基板51に対向する面を覆っている。引張応力を有するhigh−k材料としては、例えば、SiON、Al、Ta、HfSiN、HfSiON、HfO、HfAlOが挙げられる。可動絶縁膜544は、上述した材料の単層で形成されてもよいし、複数の層で形成されていてもよい。本実施形態では、可動絶縁膜544として、0.1μmのHfAlOが単層で形成されている。
【0039】
ここで、可動基板52に成膜された可動電極542の内部応力がσ1、膜厚寸法がt1、膜の面積がS1であり、可動絶縁膜544の内部応力がσ2、膜厚寸法がt2、膜の面積がS2である場合、可動電極542が可動基板52を撓ませようとする力(曲げモーメント)Fは、下記式(1)により示される。
【0040】
[数1]
F∝(σ1×t1×S1)+(σ2×t2×S2) …(1)
【0041】
上記式(1)において、力Fが「0」となる場合に、可動電極542の内部応力による可動基板52の撓みが防止される。ここで、可動電極542の内部応力は圧縮応力であるため、内部応力σ1は正の値となり、可動絶縁膜544の内部応力は引張応力であるため、内部応力σ2は負の値となる。したがって、F=0となる場合、下記式(2)が成立する。
【0042】
[数2]
1×t1×S1|=|σ2×t2×S2| …(2)
【0043】
本実施形態では、可動電極542と可動絶縁膜544は、上記式(2)の関係を満たしており、これにより、可動電極542の内部応力による可動基板52の撓みが防止されている。
【0044】
ここで、ITO膜上に原子層堆積(ALD)法でhigh−k材料であるAl、HfO2、HfAlOを絶縁膜として形成した場合の特性と、絶縁膜として一般的に用いられている二酸化ケイ素(SiO)の特性を以下の表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
絶縁膜としてSiOを使用した場合、膜応力が圧縮応力であるため、可動電極542の圧縮応力と相重なってダイヤフラムはさらに撓み、反射膜間のギャップ精度が悪化する。また、絶縁耐圧には優れているものの、比誘電率が低いため、静電吸引力が弱くなってしまう。
一方、high−k材料であるAl、HfO2、HfAlOは、比誘電率が高く、絶縁耐圧にも優れているため、絶縁耐圧と静電吸引力とを両立させることができる。また、膜応力が引張応力であるため、ITO膜で形成された可動電極542の膜応力(300−500MPa)を相殺することが可能となり、ダイヤフラムの撓みを防止することができる。
【0047】
なお、可動絶縁膜544は、単層でもよいし、複数の層でもよく、ダイヤフラムの撓み量、絶縁耐圧、静電吸引力に応じて任意に選択したり、組み合わせたりすることができる。例えば、可動電極542としてITO膜を0.1μm形成後、SiO膜を0.05μm形成し、さらにHfO2膜を0.05μm形成することで、応力を相殺することができる。また、絶縁耐圧の高いSiO膜と比誘電率の高いHfO2膜を積層することで、絶縁耐圧と静電吸引力に優れた可動絶縁膜544とすることができる。なお、HfO2膜の代わりに、Al膜やHfAlO膜を積層してもよい。
【0048】
また、可動電極542の外周縁の一部からは、可動引出電極542Aが外周方向に向かって形成されている。具体的には、可動引出電極542Aは、エタロン平面視において、固定基板51に形成される引出形成溝とは反対の方向に延びて設けられている。また、可動引出電極542Aは、先端部には、可動電極パッド542Bが形成され、電圧制御部6に接続されている。
この可動引出電極542Aは、可動電極542の成膜時に同時に形成されるものであり、可動電極542と同様の構成を有している。可動引出電極542Aは、可動基板52の可動部521と同等の厚み寸法を有する部分に成膜されているため、静電引力により可動基板52を撓ませる力が作用した場合でも、可動引出電極542Aが成膜された部分の撓みはない。
【0049】
(3−2.電圧制御手段の構成)
電圧制御部6は、制御装置4からの入力される制御信号に基づいて、静電アクチュエーター54の固定電極541および可動電極542に印加する電圧を制御する。
【0050】
〔4.制御装置の構成〕
制御装置4は、測色装置1の全体動作を制御する。
この制御装置4としては、例えば汎用パーソナルコンピューターや、携帯情報端末、その他、測色専用コンピューターなどを用いることができる。
そして、制御装置4は、図1に示すように、光源制御部41、測色センサー制御部42、および測色処理部43などを備えて構成されている。
光源制御部41は、光源装置2に接続されている。そして、光源制御部41は、例えば利用者の設定入力に基づいて、光源装置2に所定の制御信号を出力し、光源装置2から所定の明るさの白色光を射出させる。
測色センサー制御部42は、測色センサー3に接続されている。そして、測色センサー制御部42は、例えば利用者の設定入力に基づいて、測色センサー3にて受光させる光の波長を設定し、この波長の光の受光量を検出する旨の制御信号を測色センサー3に出力する。これにより、測色センサー3の電圧制御部6は、制御信号に基づいて、利用者が所望する光の波長のみを透過させるよう、静電アクチュエーター54への印加電圧を設定する。
測色処理部43は、検出部31により検出された受光量から、被検査対象Aの色度を分析する。
【0051】
〔5.エタロンの製造方法〕
次に、上記エタロン5の製造方法について、図面に基づいて説明する。
(5−1.固定基板の製造)
まず、固定基板51の製造素材である厚み寸法が500μmの石英ガラス基板を用意し、この石英ガラス基板の表面粗さRaが1nm以下となるまで両面を精密研磨する。そして、固定基板51の可動基板52に対向する面に電極形成溝511形成用のレジストを塗布して、塗布されたレジストをフォトリソグラフィ法により露光・現像して、電極形成溝511が形成される箇所をパターニングする。そして、ウェットエッチングにより、反射膜固定面512Aの深さ寸法(例えば1μm)まで固定基板51をエッチングする。そして、反射膜固定面512Aにレジストを形成して、さらにエッチング処理(例えば0.5μm)をすることで、図4(A)に示すように、電極形成溝511を形成する。
【0052】
次に、固定基板51の可動基板52に対向する側の面全体に、スパッタリングによるITO膜を厚み寸法が0.1μmとなるように成膜する。そして、ITO膜の上にレジストを塗布し、フォトリソグラフィ法と、エッチングによるパターン形成とを行う。これにより、固定電極541と固定引出電極541Aと固定電極パッド541Bとが形成される。
そして、固定電極541の可動基板52側の面に、固定電極541のみが露出したメタルマスクまたはシリコンマスクをアライメントして貼り合わせ、原子層堆積(ALD)法により固定絶縁膜543を成膜し、マスクを除去する。固定絶縁膜543としては、前述したように、high−k材料を使用する。これにより、図4(B)に示すように、固定電極541の可動基板52側の面に固定絶縁膜543が形成される。
【0053】
次に、固定基板51の可動基板52と対向する側の面全体に、固定反射膜56をスパッタリングまたは蒸着法により成膜し、反射膜固定面512Aに固定反射膜56が形成される領域のみを被覆するパターンのレジストを形成し、エッチングによるパターン形成を行う。さらにレジストを除去することで、図4(C)に示すように、反射膜固定面512Aに固定反射膜56が形成される。
【0054】
この後、固定基板51に、接合部513が形成される領域だけが露出するメタルマスクまたはシリコンマスクをアライメントして固定基板51に貼り合わせ、ポリオルガノシロキサンを用いたプラズマ重合膜をプラズマCVD法により厚み寸法が100nmとなるように成膜し、マスクを除去する。以上により、図4(D)に示すように、接合部513が形成される。
そして、サンドブラスト法または切削法により、電極を取り出すための切欠部を形成する。以上により図4(E)に示すような固定基板51が形成される。
【0055】
(5−2.可動基板の製造)
可動基板52の形成では、予め可動電極542と可動絶縁膜544の成膜条件を設定して、その成膜条件で成膜した際の内部応力を測定する。例えば、本実施形態では、可動電極542をスパッタリングにより成膜する。この場合、可動電極542の成膜条件を、例えば成膜対象基板(可動基板52)の温度を250度、真空チャンバー内圧力を0.5Pa、ターゲットに印加する電力を200Wとし、この成膜条件でスパッタリングにより成膜された可動電極542の内部応力を測定する。また、可動絶縁膜544の成膜条件は、例えば熱CVD装置において、成膜対象基板の温度を250度として真空引きを行い、原料ガスを一定時間導入した後、パージにより余剰ガスを除去し、次にOガスを一定時間導入、このサイクルを繰り返し行う原子層堆積(ALD)法により成膜される。尚、原料ガスとしては、HfOの場合はTEMAH(テトラキス(N−エチルメチルアミノ)ハフニウム)、Alの場合は、TMA(トリメチルアルミニウム)、HfAlOの場合は、TEMAHとO、TMAとOを繰り返し交互に導入すればよい。このような方法で成膜された可動絶縁膜544の内部応力を測定する。
そして、シミュレーションにより、上記式(2)を満たす可動電極542および可動絶縁膜544の厚み寸法を決定する。ここでは、シミュレーションにより、可動電極542の厚み寸法が0.1μm、可動絶縁膜544の厚み寸法が0.1μmと決定されたものとする。
【0056】
この後、可動基板52の製造素材である厚み寸法が200μmの石英ガラス基板を用意し、図5(A)に示すように、このガラス基板の表面粗さRaが1nm以下となるまで両面を精密研磨する。
そして、このガラス基板の両面に、Cr膜(厚み寸法50nm)とAu膜(厚み寸法500nm)をスパッタリングにより成膜し、固定基板51とは反対側の面に保持部522および固定基板51の固定電極パッド541B上の空間を形成するためのパターンを形成し、これらに対応する領域のCr/Au膜を除去する。このとき、Au膜をヨウ素とヨウ化カリウムとの混合液によりエッチングし、Cr膜を硝酸セリウムアンモニウム水溶液でエッチングする。そして、ガラス基板をフッ酸水溶液に浸すことで、保持部522および固定基板51の固定電極パッド541B上の空間を170μmエッチングし、ガラス基板の両面に残ったCr/Au膜を剥離する。これにより、図5(B)に示すように、可動部521と厚さ30μmの保持部522が形成される。
【0057】
この後、ガラス基板(可動基板52)の固定基板51に対向する側の面に、設定した成膜条件で、スパッタリングにより、厚み寸法が0.1μmとなるようにITO膜を成膜する。そして、ITO膜の上にレジストを塗布し、フォトリソグラフィ法と、エッチングによるパターン形成とを行い、レジストを除去する。これにより、図5(C)に示すように、可動電極542と可動引出電極542A(図示しない。)と可動電極パッド542Bとが形成される。
そして、可動電極542の固定基板51側の面に、可動電極542のみが露出したメタルマスクまたはシリコンマスクをアライメントして貼り合わせ、原子層堆積(ALD)法により可動絶縁膜544を成膜し、マスクを除去する。可動絶縁膜544としては、前述したhigh−k材料を使用する。これにより、図5(D)に示すように、可動電極542の固定基板51側の面に可動絶縁膜544が形成される。このように成膜された可動電極542および可動絶縁膜544は、上記式(2)の条件を満たすため、可動電極542の内部応力が可動基板52に及ぼす力Fは「0」となり、可動基板52の撓みが防止される。
【0058】
この後、固定基板51の固定反射膜56と同様に、フォトリソグラフィ法およびエッチングによるパターン形成によりリフトオフ処理を行い、図5(E)に示すように、可動部521の可動面521Aに可動反射膜57を成膜する。
さらに、固定基板51の接合部513と同様に、可動基板52の接合部523に、ポリオルガノシロキサンを用いたプラズマ重合膜をプラズマCVD法により厚み寸法が100nmとなるように成膜し、図5(F)に示すように、接合部523を成膜する。
そして、固定基板51の固定電極パッド541Bに対向するガラスの薄膜を、機械的または化学的に除去する。以上により図5(G)に示すように、可動電極542の内部応力による撓みがない可動基板52が形成される。
【0059】
(5−3.固定基板及び可動基板の接合)
固定基板51及び可動基板52の接合では、まず、固定基板51の接合部513及び可動基板52の接合部523をそれぞれ活性化させる表面活性化工程を実施する。この表面活性化工程では、接合部513や接合部523の表面の分子結合が切断し、終端化されていない結合手を生じさせる。具体的には、Oプラズマ処理またはUV処理を行う。Oプラズマ処理の場合、O流量30cc/分、圧力27Pa、RFパワー200Wの条件で30秒間実施する。また、UV処理の場合、UV光源としてエキシマUV(波長172nm)を用いて3分間処理を行う。
プラズマ重合膜に活性化エネルギーを付与した後、2つの基板のアライメントを行い、固定接合部513および可動接合部523を重ね合わせて荷重をかけることにより、基板同士を接合させる。
この時、可動電極542の内部応力による可動基板52の撓みがないため、可動面521Aおよび可動反射膜57にも撓みが生じない。したがって、固定反射膜56および可動反射膜57を平行に維持することができ、加圧接合時に加える圧力を制御することで、所望の初期ギャップを精度よく設定することができる。
【0060】
〔6.第一実施形態の作用効果〕
上述したように、上記実施形態のエタロン5は、可動基板52上に成膜される可動電極542が圧縮応力を有し、可動絶縁膜544が引張応力を有している。このため、可動電極542の圧縮応力が可動基板52に及ぼす力と、可動絶縁膜544の引張応力が可動基板52に及ぼす力とが互いに打ち消しあい、可動基板52を撓ませる力が低減される。このため、可動基板52の撓みが防止され、可動反射膜57の撓みも防止される。したがって、可動反射膜57と固定反射膜56との平行精度を良好に維持でき、エタロン5の分解能を向上させることができる。
【0061】
そして、可動電極542および可動絶縁膜544は、上述した式(2)に基づいて、各内部応力、厚み寸法、および面積が設定されている。
このため、可動電極542の圧縮応力が可動基板52に及ぼす力および可動絶縁膜544の引張応力が可動基板52に及ぼす力を釣り合わせることができ、より確実に可動基板52の撓みを防止でき、可動反射膜57の撓みを防止することができる。
【0062】
また、可動絶縁膜544を形成する材料として、high−k材料を用いている。high−k材料は比誘電率が高いことから静電吸引力を向上させることができるとともに、絶縁耐圧にも優れている。したがって、所望のギャップ寸法に精度よく合わせることができ、エタロン5の分解能を向上させることができる。
【0063】
また、エタロン5の製造時、固定基板51および可動基板52を接合させる接合工程においては、プラズマ重合膜に紫外線を照射することでプラズマ重合膜表面を活性化させ、固定基板51と可動基板52を重ね合わせ、厚み方向に沿って所定の圧力で加圧することで接合する。この時、例えば可動反射膜57の内部応力により可動基板52や可動反射膜57に撓みが生じている場合、固定反射膜56と可動反射膜57の初期ギャップ寸法が一様とならず、所望の設定値に合わせ込むことが困難となる。また、静電引力により可動基板52を撓ませるエタロン5では、初期ギャップ以上のギャップに設定することができないため、初期ギャップの設定値が誤っている場合、所望の波長域の光を分光させることができない不都合が生じる。したがって、可動基板52や可動反射膜57に撓みがある場合、分解能が低下するだけではなく、所望の波長域の光を分光可能なエタロン5を製造するためには、初期ギャップを大きく設定する必要があり、静電引力により可動基板52を可動させる際の駆動電圧も大きくなり、消費電力も増大する。
これに対して、上記実施形態のエタロン5では、上述のように、可動電極542による可動基板52の撓みが防止され、可動反射膜57および固定反射膜56を平行に維持することができるため、反射膜56,57間の初期ギャップを一様に揃えることができる。したがって、所望のギャップ寸法に精度よく合わせ込むことができる。この場合、所望のギャップ寸法以上にギャップを設定する必要がなくなるので、エタロン5を駆動させるための電圧値も小さくすることができ、省電力化を図ることができる。
【0064】
本実施形態の可動基板52は、可動反射膜57が形成される可動部521と、可動部521よりも厚み寸法が小さく形成されて厚み方向に対する剛性が小さい保持部522とを備え、保持部522に可動電極542が形成されている。
このように、可動部521および保持部522を設ける構成では、例えば保持部522が設けられない平行平板状の可動基板等に比べて、小さい駆動電圧で保持部522を撓ませ、可動部521を移動させることができ、省電力化を図ることができる。また、可動部521に比べて、保持部522が撓みやすくなっているため、可動基板52に静電引力が加わった際、保持部522が大きく撓み、可動部521の撓みが防止される。これにより、可動基板52を固定基板51側に撓ませた場合でも、可動部521の可動面521Aの撓みを防止することができ、可動反射膜57の撓みを防止することができる。
したがって、可動基板52を固定基板51側に撓ませた場合であっても、反射膜56,57の平行精度を維持することができ、エタロン5の分解能の低下を防止できる。
【0065】
そして、可動電極542の固定電極541側の面を可動絶縁膜544が覆っていることで、固定電極541および可動電極542間の放電を防止することができる。このため、固定電極541および可動電極542間に駆動電圧を印加した際、その電圧値に応じた電荷が各電極541,542に保持され、固定反射膜56および可動反射膜57間のギャップの寸法を精度よく制御することができる。
【0066】
〔第二実施形態〕
次に、本発明の第二実施形態を図6に基づいて説明する。なお、以降の説明において、上記第一実施形態と同様の構成については、同符号を付し、その説明を省略または簡略する。
図6に示すように、第二実施形態のエタロン5の可動絶縁膜544は、第一の層545と第二の層546の2層で構成されている。第一の層545および第二の層546が有する膜応力の合計は、可動電極542の圧縮応力を打ち消すための引張応力を有して構成されている。すなわち、上記式(2)において、σ2を第一の層545および第二の層546が有する膜応力の合計とし、t2を第一の層545および第二の層546の膜厚寸法の合計とした場合に、上記式(2)の関係を満たしている。
また、第一の層545は絶縁耐圧に優れたSiO膜で形成され、第二の層546は比誘電率の高いHfO2膜で形成されている。
【0067】
(第二実施形態の作用効果)
上記第二実施形態のエタロン5では、可動電極542の内部応力が可動基板52に及ぼす力と、第一の層545および第二の層546の内部応力の合計が可動基板52に及ぼす力とが互いに打ち消しあい、可動基板52を撓ませる力が低減される。このため、可動基板52の撓みが防止され、可動反射膜57の撓みも防止される。したがって、可動反射膜57と固定反射膜56との平行精度を良好に維持でき、エタロン5の分解能を向上させることができる。
また、可動絶縁膜544が、絶縁耐圧に優れたSiO膜と比誘電率の高いHfO2膜とで構成されているため、絶縁耐圧と静電吸引力に優れた可動絶縁膜544とすることができる。
【0068】
〔他の実施の形態〕
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0069】
例えば、上記実施形態では、可動電極542が圧縮応力を有し、可動絶縁膜544が引張応力を有する構成を例示したが、可動電極542が引張応力を有し、可動絶縁膜544が圧縮応力を有する構成であってもよい。
可動電極542として、ガラスである可動基板52と良密着性のITOを形成することが好ましいが、例えば、スパッタリングによる成膜後にアニール処理を実施することで、引張応力を有するITOの可動電極542を形成することができる。また、スパッタリングによる成膜は、圧縮応力を有する膜が形成されやすく、蒸着法による成膜は、引張応力を有する膜が形成されやすい。したがって、所定の蒸着条件で、蒸着法により成膜することで、引張応力を有するITOの可動電極542を形成してもよい。
このように、可動電極542が引張応力を有する場合、可動絶縁膜544を圧縮応力を有する構成とすることで、各層の内部応力による可動基板52に与える力が打ち消し合い、可動基板52の撓みを低減させることが可能となる。
【0070】
また、上記第二実施形態では、可動絶縁膜544を2層で構成したが、3層以上の複数の層で構成してもよい。この場合、複数の層が有する膜応力の合計が、可動電極542の圧縮応力を打ち消すための引張応力を有していればよい。さらに、絶縁耐圧が高く、比誘電率が高くなる膜の組み合わせを用いることで、絶縁耐圧と静電吸引力に優れた可動絶縁膜544とすることができる。
【0071】
また、上記実施形態では、固定電極541の可動電極542側の面に固定絶縁膜543を形成したが、固定絶縁膜543を設けない構成としてもよい。
さらに、可動基板52を第一基板とし、固定基板51を第二基板としたが、例えば、固定基板51を第一基板として、固定電極541が圧縮応力を有し、固定絶縁膜543が引張応力を有する構成としてもよい。この場合、厚み寸法が薄い固定基板51を用いた場合であっても、固定電極541の内部応力に起因した基板の撓みを防止することができる。
そして、固定基板51および可動基板52の双方に可動部が設けられ、これらの可動部がそれぞれ厚み方向に対して変位可能な構成などとしてもよく、この場合、固定電極541および可動電極542の双方が、圧縮応力を有し、それぞれの絶縁膜543,544が引張応力を有する積層構造としてもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、可動基板52には、ダイヤフラム状の保持部522が形成される例を示したがこれに限定されない。
保持部522としては、可動部521を固定基板51に対して進退移動可能に保持する構成であればよく、例えば、複数の架橋部により構成されていてもよい。この場合、これらの架橋部の全部、または、可動基板52の中心点に対して対象となる位置に設けられる架橋部に可動電極542を形成する。これにより、架橋部の撓みバランスを良好にでき、可動反射膜57を固定反射膜56に対して平行に維持した状態で、可動部521を移動させることができる。
【0073】
また、上記実施形態では、対向する固定反射膜56と可動反射膜57との間の寸法が、対向する固定電極541と可動電極542との寸法より小さい構造のエタロン5について説明したが、固定反射膜と可動反射膜との間の寸法が、固定電極と可動電極との寸法より大きい構造の光フィルターであっても、本実施形態と同様の効果を奏する。
【0074】
本発明の電子機器として、測色装置1を例示したが、その他、様々な分野により本発明の波長可変干渉フィルター、光モジュール、電子機器を用いることができる。
例えば、特定物質の存在を検出するための光ベースのシステムとして用いることができる。このようなシステムとしては、例えば、本発明の波長可変干渉フィルターを用いた分光計測方式を採用して特定ガスを高感度検出する車載用ガス漏れ検出器や、呼気検査用の光音響希ガス検出器などのガス検出装置を例示できる。
このようなガス検出装置の一例を以下に図面に基づいて説明する。
【0075】
図7は、波長可変干渉フィルターを備えたガス検出装置の一例を示す概略図である。
図8は、図7のガス検出装置の制御系の構成を示すブロック図である。
このガス検出装置100は、図7に示すように、センサーチップ110と、吸引口120A、吸引流路120B、排出流路120C、および排出口120Dを備えた流路120と、本体部130と、を備えて構成されている。
本体部130は、流路120を着脱可能な開口を有するセンサー部カバー131、排出手段133、筐体134、光学部135、フィルター136、エタロン5(波長可変干渉フィルター)、および受光素子137(受光部)等を含む検出部(光モジュール)と、検出された信号を処理し、検出部を制御する制御部138、電力を供給する電力供給部139等から構成されている。また、光学部135は、光を射出する光源135Aと、光源135Aから入射された光をセンサーチップ110側に反射し、センサーチップ側から入射された光を受光素子137側に透過するビームスプリッタ―135Bと、レンズ135C,135D,135Eと、により構成されている。
また、図8に示すように、ガス検出装置100の表面には、操作パネル140、表示部141、外部とのインターフェイスのための接続部142、電力供給部139が設けられている。電力供給部139が二次電池の場合には、充電のための接続部143を備えてもよい。
さらに、ガス検出装置100の制御部138は、図8に示すように、CPU等により構成された信号処理部144、光源135Aを制御するための光源ドライバー回路145、エタロン5を制御するための電圧制御部146、受光素子137からの信号を受信する受光回路147、センサーチップ110のコードを読み取り、センサーチップ110の有無を検出するセンサーチップ検出器148からの信号を受信するセンサーチップ検出回路149、および排出手段133を制御する排出ドライバー回路150などを備えている。
【0076】
次に、上記のようなガス検出装置100の動作について、以下に説明する。
本体部130の上部のセンサー部カバー131の内部には、センサーチップ検出器148が設けられており、このセンサーチップ検出器148でセンサーチップ110の有無が検出される。信号処理部144は、センサーチップ検出器148からの検出信号を検出すると、センサーチップ110が装着された状態であると判断し、表示部141へ検出動作を実施可能な旨を表示させる表示信号を出す。
【0077】
そして、例えば利用者により操作パネル140が操作され、操作パネル140から検出処理を開始する旨の指示信号が信号処理部144へ出力されると、まず、信号処理部144は、光源ドライバー回路145に光源作動の信号を出力して光源135Aを作動させる。光源135Aが駆動されると、光源135Aから単一波長で直線偏光の安定したレーザー光を射出される。また、光源135Aには、温度センサーや光量センサーが内蔵されており、その情報が信号処理部144へ出力される。そして、信号処理部144は、光源135Aから入力された温度や光量に基づいて、光源135Aが安定動作していると判断すると、排出ドライバー回路150を制御して排出手段133を作動させる。これにより、検出すべき標的物質(ガス分子)を含んだ気体試料が、吸引口120Aから、吸引流路120B、センサーチップ110内、排出流路120C、排出口120Dへと誘導される。
【0078】
また、センサーチップ110は、金属ナノ構造体が複数組み込まれ、局在表面プラズモン共鳴を利用したセンサーである。このようなセンサーチップ110では、レーザー光により金属ナノ構造体間で増強電場が形成され、この増強電場内にガス分子が入り込むと、分子振動の情報を含んだラマン散乱光、およびレイリー散乱光が発生する。
これらのレイリー散乱光やラマン散乱光は、光学部135を通ってフィルター136に入射し、フィルター136によりレイリー散乱光が分離され、ラマン散乱光がエタロン5に入射する。そして、信号処理部144は、電圧制御部146を制御し、エタロン5に印加する電圧を調整し、検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光をエタロン5で分光させる。この後、分光した光が受光素子137で受光されると、受光量に応じた受光信号が受光回路147を介して信号処理部144に出力される。
信号処理部144は、上記のようにして得られた検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光のスペクトルデータと、ROMに格納されているデータとを比較し、目的のガス分子か否かを判定し、物質の特定をする。また、信号処理部144は、表示部141にその結果情報を表示させたり、接続部142から外部へ出力したりする。
【0079】
なお、上記図7,8において、ラマン散乱光をエタロン5により分光して分光されたラマン散乱光からガス検出を行うガス検出装置100を例示したが、ガス検出装置として、ガス固有の吸光度を検出することでガス種別を特定するガス検出装置として用いてもよい。この場合、センサー内部にガスを流入させ、入射光のうちガスにて吸収された光を検出するガスセンサーを本発明の光モジュールとして用いる。そして、このようなガスセンサーによりセンサー内に流入されたガスを分析、判別するガス検出装置を本発明の電子機器とする。このような構成でも、本発明の波長可変干渉フィルターを用いてガスの成分を検出することができる。
【0080】
また、特定物質の存在を検出するためのシステムとして、上記のようなガスの検出に限られず、近赤外線分光による糖類の非侵襲的測定装置や、食物や生体、鉱物等の情報の非侵襲的測定装置等の、物質成分分析装置を例示できる。
以下に、上記物質成分分析装置の一例として、食物分析装置を説明する。
【0081】
図9は、エタロン5を利用した電子機器の一例である食物分析装置の概略構成を示す図である。
この食物分析装置200は、図9に示すように、検出器210(光モジュール)と、制御部220と、表示部230と、を備えている。検出器210は、光を射出する光源211と、測定対象物からの光が導入される撮像レンズ212と、撮像レンズ212から導入された光を分光するエタロン5(波長可変干渉フィルター)と、分光された光を検出する撮像部213(受光部)と、を備えている。
また、制御部220は、光源211の点灯・消灯制御、点灯時の明るさ制御を実施する光源制御部221と、エタロン5を制御する電圧制御部222と、撮像部213を制御し、撮像部213で撮像された分光画像を取得する検出制御部223と、信号処理部224と、記憶部225と、を備えている。
【0082】
この食物分析装置200は、システムを駆動させると、光源制御部221により光源211が制御されて、光源211から測定対象物に光が照射される。そして、測定対象物で反射された光は、撮像レンズ212を通ってエタロン5に入射する。エタロン5は電圧制御部222の制御により所望の波長を分光可能な電圧が印加されており、分光された光が、例えばCCDカメラ等により構成される撮像部213で撮像される。また、撮像された光は分光画像として、記憶部225に蓄積される。また、信号処理部224は、電圧制御部222を制御してエタロン5に印加する電圧値を変化させ、各波長に対する分光画像を取得する。
【0083】
そして、信号処理部224は、記憶部225に蓄積された各画像における各画素のデータを演算処理し、各画素におけるスペクトルを求める。また、記憶部225には、例えばスペクトルに対する食物の成分に関する情報が記憶されており、信号処理部224は、求めたスペクトルのデータを、記憶部225に記憶された食物に関する情報を基に分析し、検出対象に含まれる食物成分、およびその含有量を求める。また、得られた食物成分および含有量から、食物カロリーや鮮度等をも算出することができる。さらに、画像内のスペクトル分布を分析することで、検査対象の食物の中で鮮度が低下している部分の抽出等をも実施することができ、さらには、食物内に含まれる異物等の検出をも実施することができる。
そして、信号処理部224は、上述のようにした得られた検査対象の食物の成分や含有量、カロリーや鮮度等の情報を表示部230に表示させる処理をする。
【0084】
また、図9において、食物分析装置200の例を示すが、略同様の構成により、上述したようなその他の情報の非侵襲的測定装置としても利用することができる。例えば、血液等の体液成分の測定、分析等、生体成分を分析する生体分析装置として用いることができる。このような生体分析装置としては、例えば血液等の体液成分を測定する装置として、エチルアルコールを検知する装置とすれば、運転者の飲酒状態を検出する酒気帯び運転防止装置として用いることができる、また、このような生体分析装置を備えた電子内視鏡システムとしても用いることができる。
さらには、鉱物の成分分析を実施する鉱物分析装置としても用いることができる。
【0085】
さらには、本発明の波長可変干渉フィルター、光モジュール、電子機器としては、以下のような装置に適用することができる。
例えば、各波長の光の強度を経時的に変化させることで、各波長の光でデータを伝送させることも可能であり、この場合、光モジュールに設けられた波長可変干渉フィルターにより特定波長の光を分光し、受光部で受光させることで、特定波長の光により伝送されるデータを抽出することができ、このようなデータ抽出用光モジュールを備えた電子機器により、各波長の光のデータを処理することで、光通信を実施することもできる。
【0086】
また、電子機器としては、本発明の波長可変干渉フィルターにより光を分光することで、分光画像を撮像する分光カメラ、分光分析機などにも適用できる。このような分光カメラの一例として、波長可変干渉フィルターを内蔵した赤外線カメラが挙げられる。
図10は、分光カメラの概略構成を示す模式図である。分光カメラ300は、図10に示すように、カメラ本体310と、撮像レンズユニット320と、撮像部330とを備えている。
カメラ本体310は、利用者により把持、操作される部分である。
撮像レンズユニット320は、カメラ本体310に設けられ、入射した画像光を撮像部330に導光する。また、この撮像レンズユニット320は、図10に示すように、対物レンズ321、結像レンズ322、及びこれらのレンズ間に設けられたエタロン5を備えて構成されている。
撮像部330は、受光素子により構成され、撮像レンズユニット320により導光された画像光を撮像する。
このような分光カメラ300では、エタロン5により撮像対象となる波長の光を透過させることで、所望波長の光の分光画像を撮像することができる。
【0087】
さらには、本発明の波長可変干渉フィルターをバンドパスフィルターとして用いてもよく、例えば、発光素子が射出する所定波長域の光のうち、所定の波長を中心とした狭帯域の光のみを波長可変干渉フィルターで分光して透過させる光学式レーザー装置としても用いることができる。
また、本発明の波長可変干渉フィルターを生体認証装置として用いてもよく、例えば、近赤外領域や可視領域の光を用いた、血管や指紋、網膜、虹彩などの認証装置にも適用できる。
【0088】
さらには、光モジュールおよび電子機器を、濃度検出装置として用いることができる。この場合、波長可変干渉フィルターにより、物質から射出された赤外エネルギー(赤外光)を分光して分析し、サンプル中の被検体濃度を測定する。
【0089】
上記に示すように、本発明の波長可変干渉フィルター、光モジュール、および電子機器は、入射光から所定の光を分光するいかなる装置にも適用することができる。そして、本発明の波長可変干渉フィルターは、上述のように、1デバイスで複数の波長を分光させることができるため、複数の波長のスペクトルの測定、複数の成分に対する検出を精度よく実施することができる。したがって、複数デバイスにより所望の波長を取り出す従来の装置に比べて、光モジュールや電子機器の小型化を促進でき、例えば、携帯用や車載用の光学デバイスとして好適に用いることができる。
【0090】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更できる。
【符号の説明】
【0091】
1…電子機器としての測色装置、3…光モジュールとしての測色センサー、5…波長可変干渉フィルターとしてのエタロン、31…検出部、43…測色処理部、51…第二基板としての固定基板、52…第一基板としての可動基板、56…第二反射膜としての固定反射膜、57…第一反射膜としての可動反射膜、521…可動部、522…保持部、541…第二電極としての固定電極、542…第一電極としての可動電極、543…固定絶縁膜、544…可動絶縁膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一基板と、
前記第一基板に対向する第二基板と、
前記第一基板の前記第二基板に対向する面に設けられた第一反射膜と、
前記第二基板の前記第一基板に対向する面に設けられ、前記第一反射膜とギャップを介して対向する第二反射膜と、
前記第一基板の前記第二基板に対向する面に設けられた第一電極と、
前記第二基板の前記第一基板に対向する面に設けられ、前記第一電極に対してギャップを介して対向する第二電極と、
前記第一電極上に積層された絶縁膜と、を備え、
前記第一電極の前記第一基板の基板表面に沿う面方向に対する内部応力の方向と、前記絶縁膜の前記面方向に対する内部応力の方向が逆である
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項2】
請求項1に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記第一電極の内部応力、膜厚寸法、および面積の積の絶対値と、前記絶縁膜の内部応力、膜厚寸法、および面積の積の絶対値とが、同値である
ことを特徴とした波長可変干渉フィルター。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記絶縁膜は、high−k材料の膜である
ことを特徴とした波長可変干渉フィルター。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記絶縁膜は、複数の層で形成される
ことを特徴とした波長可変干渉フィルター。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の波長可変干渉フィルターと、
前記波長可変干渉フィルターを透過した光を検出する検出部と、を備えた
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項6】
請求項5に記載の光モジュールを備えた
ことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−173314(P2012−173314A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31847(P2011−31847)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】