説明

洗浄基板の液切り装置

【課題】基板上に滞留した洗浄液を一定方向に流し去ることにより液切り効果を向上させることが可能となる洗浄基板の液切り装置を提供する。
【解決手段】基板30上に滞留する洗浄液90を排除する液切りローラー20は、基板30を搬送する搬送ローラー40により洗浄工程を経て搬入されてきた基板30を、接触して上下から挟み込んで配備され、且つ、基板30上に滞留する洗浄液90が一方向に流出するよう、基板30の進行方向に対し直角を除く任意の角度で設置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄基板の液切りに係り、詳しくは、基板上に滞留した洗浄液を一定方法に流し去ることにより液切り効果を向上させることが可能となる洗浄基板の液切り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ用のガラス基板等の洗浄工程において、例えば搬送ローラーにより搬入された被洗浄物は、洗浄液と回転ブラシによる洗浄工程で洗浄されると、つぎに、表面に滞留した洗浄液を除去するための液切り工程に入り、洗浄液が取り除かれるとリンス工程に入り、表面がリンスされた後、乾燥工程へと搬送される。
【0003】
この液切り工程では、液切りエア−ナイフ、または押さえローラーを用いて、表面に滞留した洗浄液を除去している。ところが、フラットパネルディスプレイ用のガラス基板が大型化するにつれて、基板搬送ローラー上のガラス基板が自重と洗浄液の重さにより撓み、凹部を形成し、洗浄液が不均一に滞留するようになった。
【0004】
図3は、大型ガラス基板上の洗浄液の滞留を示す模式図である。図3において、大型ガラス基板30が、基板搬送ローラー40により搬送されて洗浄工程から液切り工程に入る際、自重と洗浄液の重さにより撓み、凹部を形成し、洗浄液90が中央部分に向けて不均一に滞留している。
【0005】
このため液切りエア−ナイフにおいては、従来のガス噴出量では表面に処理ムラが発生しやすくなるという問題を生じ、このためガス噴出量を多くすると、飛散した洗浄液90が再付着してシミを発生させる、またガス量も多くなるという問題を生じた。また、回転駆動機構を有する押さえローラー(図示せず)においては、大型ガラス基板30の搬送方向に対し直角に設置されているため、洗浄液90は押さえローラーに沿って大型ガラス基板30の両側から緩やかに流れ落ち、洗浄時に洗浄液90に取り込まれた異物が基板表面に残留する問題を生じた。
【0006】
特許文献1には、液切りローラーが遊転可能に取り付けられた回転軸にローラーを固着して、そのローラーの両端にローラーよりも径の大きい円盤をそれぞれ配設し、搬送ローラーにより基板を搬送していくと、円盤が基板の端縁に乗り上がり、ローラーと基板の表面との間が微少な距離だけ離間するように保たれ、基板が移動し続けると、基板の表面上に付着した現像液はそのローラーにより拭うようにして塞き止められる基板の液切り装置
についての記載がある。
【特許文献1】特開平8−294678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、基板上に滞留した洗浄液を一定方向に流し去ることにより液切り効果を向上させることが可能となる洗浄基板の液切り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の洗浄基板の液切り装置は、基板の洗浄工程に用いられる洗浄基板の液切り装置であって、基板上に滞留する洗浄液を排除する液切りローラーは、基板を搬送する搬送ローラーにより洗浄工程を経て搬入されてきた基板を、接触して上下から挟み込んで配備され、液切りローラーは、さらに基板上に滞留する洗浄液が一方向に流出するよう、基板の進行方向に対し直角を除く任意の角度で設置されることを特徴とする。
【0009】
本発明の洗浄基板の液切り装置の液切りローラーは、駆動機構の無いローラー受けに設置され、基板に接触した接触摩擦により、基板の搬送方向に沿って回転することを特徴とする。
【0010】
本発明の洗浄基板の液切り装置の液切りローラーは、ポリビニルアルコール(PVA)スポンジと回転軸とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、液切りローラーが基板に直角を除く任意の角度で、上下から接触して基板を挟み込んで配備されることにより、基板上に滞留した洗浄液を一定方向に流し去ることが可能となり、処理ムラやシミの発生、洗浄後の異物の残留が無くなるため、液切り効果の一層向上した洗浄基板の液切り装置を提供することができる。また、液切りエア−ナイフに用いられるガス、または、回転駆動機構を有する押さえローラーを駆動する電力が不要となり、ユーティリティーの省力化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。図1は、本発明の洗浄基板の液切り装置を配備した洗浄システムの構成を示すシステム構成図である。図1において、洗浄システム100は、洗浄装置50、洗浄基板の液切り装置10、及びリンス装置70有している。洗浄装置50は、大型ガラス基板30を搬送する基板搬送ローラー40と洗浄液90を噴射する洗浄液ノズル65と回転ブラシ60とを有している。洗浄基板の液切り装置10は、液切りローラー20と基板搬送ローラー40とを有している。リンス装置70は、リンス液噴射ノズル80と基板搬送ローラー40とを有している。
【0013】
大型ガラス基板30が、矢印方向から基板搬送ローラー40により洗浄装置50に搬入されると、洗浄液ノズル65は洗浄液90を噴射し、回転ブラシ60は洗浄液90を十分含んだ大型ガラス基板30の表面をブラシ洗浄する。ブラシ洗浄が終了すると、大型ガラス基板30は、基板搬送ローラー40により洗浄基板の液切り装置10に搬入される。
【0014】
洗浄基板の液切り装置10に搬入された大型ガラス基板30は、液切りブラシ20により表面の洗浄液90が除去され、リンス装置70に搬入される。リンス装置70に搬入された大型ガラス基板30は、リンス液噴射ノズル80から噴射されるリンス液により表面がリンスされる。その後図示されないエア又は窒素ガスにより表面が乾燥され、乾燥が終了すると全洗浄工程が終了となり、次の工程へと搬出される。つぎに、洗浄基板の液切り装置10について、詳しく説明する。
【0015】
図2は、本発明の洗浄基板の液切り装置の液切りローラーの構成を示す構成図である。図2aにおいて、液切りローラー20−1は、両端に回転軸22−1、23−1を有し、回転軸22−1、23−1の端には、ローラー24−1、25−1を有している。また液切りローラー20−1は、大型ガラス基板30の上面に接触し、基板の進行方向に対し直角を除く任意の角度でローラー受け26−1、27−1に設置されている。
【0016】
また、図2bにおいて、液切りローラー20−2は、両端に回転軸22−2、23−2を有し、回転軸22−2、23−2の端には、ローラー24−2、25−2を有し、大型ガラス基板30の下面に接触し、液切りローラー20−1に並列してローラー受け26−2、27−2に設置されている。
【0017】
洗浄装置50においてブラシ洗浄が終了した大型ガラス基板30は、矢印で示される方向から基板搬送ローラー40により搬入され、液切りローラー20−1、20−2ローラーに接触して挟み込まれる。基板搬送ローラー40は引き続き大型ガラス基板30の搬送を継続するため、液切りローラー20−1、20−2は、大型ガラス基板30との接触摩擦により回転を始める。
【0018】
これにより液切りローラー20−1、20−2は、大型ガラス基板30の表面に滞留している相当量の洗浄液90を塞き止め、破線矢印で示される一方向に一気に流し去る。これにより洗浄液90に含まれる洗浄後の異物は、液切りローラー20−1、20−2に絡まることなく勢い良く流される。この異物を含む洗浄液90は、洗浄基板の液切り装置10の底部の貯留槽(図示されず)に蓄えられた後、廃液処理される。
【0019】
このように、異物を含んだ洗浄液90は液切りローラー20−1、20−2に塞き止められ、相当量の水量となって一方向に流れる。これにより、異物が基板表面に付着して残留することはなく、洗浄液90と一緒に流れ落ちるためローラーは清浄に保たれ、処理ムラやシミの発生が無くなる。また液切りローラー20−1、20−2は、大型ガラス基板30が送り込まれることにより接触摩擦で回転するため、駆動のための電力を必要とせず、省力化が可能となる。液切りローラー20−1、20−2は、ポリビニルアルコール(PVA)スポンジ以外に、同等の機能のものであれば、特に制限されるものではない。
【0020】
以上説明したように本発明によれば、液切りローラーを、基板に直角を除く任意の角度で上下から接触して基板を挟み込んで配備されることにより、基板上に滞留した洗浄液を一定方向に流し去ることが可能となり、処理ムラやシミの発生、洗浄後の異物の残留が無くなるため、液切り効果の一層向上した洗浄基板の液切り装置を提供することができる。また、液切りエア−ナイフに用いられるガス、または、回転駆動機構を有する押さえローラーを駆動する電力が不要となり、ユーティリティーの省力化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の洗浄基板の液切り装置を配備した洗浄システムの構成を示すシステム構成図。
【図2】本発明の洗浄基板の液切り装置の液切りローラーの構成を示す構成図。
【図3】大型ガラス基板上の洗浄液の滞留を示す模式図。
【符号の説明】
【0022】
10 洗浄基板の液切り装置
20−1、2 液切りローラー
22−1、2 回転軸
23−1、2 回転軸
24−1、2 ローラー
25−1、2 ローラー
26−1、2 ローラー受け
27−1、2 ローラー受け
30 大型ガラス基板
40 基板搬送ローラー
50 洗浄装置
60 回転ブラシ
65 洗浄液のズル
70 リンス装置
80 リンス液噴射ノズル
90 洗浄液
100 洗浄システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の洗浄工程に用いられる洗浄基板の液切り装置であって、
前記基板上に滞留する洗浄液を排除する液切りローラーは、前記基板を搬送する搬送ローラーにより洗浄工程を経て搬入されてきた前記基板を、接触して上下から挟み込んで配備され、
前記液切りローラーは、さらに前記基板上に滞留する洗浄液が一方向に流出するよう、前記基板の進行方向に対し直角を除く任意の角度で設置されることを特徴とする洗浄基板の液切り装置。
【請求項2】
前記液切りローラーは、駆動機構の無いローラー受けに設置され、前記基板に前記接触した接触摩擦により、前記基板の前記搬送方向に沿って回転することを特徴とする請求項1に記載の洗浄基板の液切り装置。
【請求項3】
前記液切りローラーは、ポリビニルアルコール(PVA)スポンジと回転軸とを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の洗浄基板の液切り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−142786(P2010−142786A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−326024(P2008−326024)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000219004)島田理化工業株式会社 (205)
【Fターム(参考)】