説明

熱硬化性光反射用樹脂組成物、これを用いた光半導体素子搭載用基板及びその製造方法、並びに光半導体装置

【課題】光半導体素子搭載用基板に必要とされる光学特性及び耐熱着色性等の各種特性に優れるとともに、トランスファー成形法等による成形加工性に優れる熱硬化性光反射用樹脂組成物、及びそのような樹脂組成物を使用して、信頼性の高い光半導体導体素子搭載用基板及び光半導体装置、並びにそれらを効率良く製造する方法を提供すること。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化触媒、(D)無機充填剤、(E)白色顔料、(F)添加剤及び(G)離型剤を含む熱硬化性光反射用樹脂組成物であって、 樹脂組成物をトランスファー成形して成形金型から離型することで得られる成形品の離型面における表面自由エネルギーが30mJ/m以下であり、樹脂組成物の硬化後の光波長400nmにおける光拡散反射率が80%以上である熱硬化性光反射用樹脂組成物を調製し、使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体素子と蛍光体等の波長変換手段とを組み合わせた光半導体装置に用いる熱硬化性光反射用樹脂組成物、これを用いた光半導体素子搭載用基板及びその製造方法、並びに光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)等の光半導体素子と蛍光体を組み合わせた光半導体装置は、高エネルギー効率及び長寿命等の利点から、屋外用ディスプレイ、携帯液晶バックライト、及び車載用途等様々な用途に適用され、その需要が拡大しつつある。これに伴って、LEDデバイスの高輝度化が進み、素子の発熱量増大によるジャンクション温度の上昇、又は直接的な光エネルギーの増大による素子材料の劣化が問題視され、近年、熱劣化及び光劣化に対して耐性を有する素子材料の開発が課題となっている。
【0003】
特許文献1では、耐熱試験後においても良好な光反射特性を示す光半導体素子搭載用基板を開示している。特許文献1に代表されるように、基板材料として用いられる従来の熱硬化性光反射用樹脂組成物では、基板製造時に成形金型からの円滑な離型を目的として、樹脂組成物中に離型剤を内部添加していることが多い。しかし、離型剤として使用される化合物は、多くの場合、熱硬化性光反射用樹脂組成物を構成するエポキシ樹脂及び硬化剤等のベース樹脂と相溶しないことが多い。そのため、離型剤を含む樹脂組成物を用いて基板を成形した場合、離型剤の分散不基板具合等に起因して外観不良が生じ易く、さらに連続成形を行うことが困難な傾向がある。特に、LEDパッケージの製造では、光半導体素子搭載領域となる凹部を設けた形状を有する成形金型を使用するため、金型内に充填された樹脂の流動挙動はその位置によって大きく変動することになる。このような流動変動は、離型剤の分散不具合と相まって、パッケージ破壊、又はパッケージの外観不良を助長する一因となる。
【0004】
また、離型剤及び必要に応じて離型剤と併用される分散剤は、熱に対して不安定な有機化合物である場合が多い。そのため、そのような化合物を含有する樹脂組成物は、高温条件下での長期使用、例えば、基板の製造工程で高温加熱下に曝された場合又は光半導体装置として使用された場合等に、着色するか又は光拡散反射率が低下し、十分な光学特性及び信頼性を得ることが困難となる傾向がある。そのため、離型性等の各種成形特性に優れるとともに、光学特性及び耐熱着色性に優れる熱硬化性光反射用樹脂組成物の開発が望まれている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−140207号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、光半導体素子搭載用基板に必要とされる光学特性及び耐熱着色性等の各種特性に優れるとともに、成形加工時の離型性に優れる熱硬化性光反射用樹脂組成物を提供することを目的とする。また、そのような樹脂組成物を使用して、信頼性の高い光半導体導体素子搭載用基板及び光半導体装置、並びにそれらを効率良く製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、優れた光学特性及び耐熱着色性を示す一方で、離型性に優れ、光半導体素子搭載用基板の成形を好適に実施可能となる熱硬化性光反射用樹脂組成物について鋭意検討した結果、所期の目的を達成し得る樹脂組成物の特性及びその構成を見出した。具体的には、本発明者らは樹脂組成物を用いたトランスファー成形時の成形品及び金型の各離型面における表面自由エネルギーが離型性の指標となること、また、そのような自由エネルギーの制御に特定の化合物が有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下に記載の事項をその特徴とする。
(1)(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化触媒、(D)無機充填剤、(E)白色顔料、(F)添加剤及び(G)離型剤を含む熱硬化性光反射用樹脂組成物であって、 上記樹脂組成物をトランスファー成形して成形金型から離型することで得られる成形品の離型面における表面自由エネルギーが30mJ/m以下であり、上記樹脂組成物の硬化後の光波長400nmにおける光拡散反射率が80%以上であることを特徴とする熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【0009】
(2)上記離型後の上記成形金型の離型面における表面自由エネルギーが30mJ/m以下であることを特徴とする上記(1)に記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【0010】
(3)上記トランスファー成形におけるせん断離型力が10ショット以内に200KPa以下になることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【0011】
(4)上記(G)離型剤が、下記一般式(1-1)に示す構造を有する金属石鹸を含むことを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【化1】

(式中、
は、炭素数3〜50のアルキル基、アリール基、アルコキシ基又はエポキシ基を有する1価の有機基、炭素数3〜50のカルボキシル基を有する1価の有機基、及び炭素数3〜500のポリアルキレンエーテル基から選ばれる置換基であり、
は、第3周期の金属元素、IIA族のアルカリ土類金属元素、IVB族、IIB族、VIII族、IB族、IIIA族、IIIB、及びIVA族に属する金属元素から選ばれる金属元素であり、
qは、1〜4の整数である)
【0012】
(5)上記一般式(1-1)において、Mが、マグネシウム、カルシウム、バリウム、アルミニウム、スズ、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛から選ばれる金属元素であることを特徴とする上記(4)に記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【0013】
(6)上記一般式(1-1)において、Rが、炭素数10〜50のアルキル基であることを特徴とする上記(4)又は(5)に記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【0014】
(7)上記金属石鹸が、ステアリン酸亜鉛又はステアリン酸アルミニウムであることを特徴とする上記(4)に記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【0015】
(8)上記(F)添加剤が、下記一般式(I)及び(II)で示される構造ユニットを有する化合物を含むことを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【化2】

【0016】
(式中、Rは、炭素数1〜10のアルキレン基である)
【化3】

【0017】
(式中、RおよびRは、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、エポキシ基を有する1価の有機基、炭素数1〜10のカルボキシル基を有する1価の有機基又は炭素数3〜500のポリアルキレンエーテル基である)
【0018】
(9)上記化合物の数平均分子量Mnが、2000〜20000であることを特徴とする上記(8)に記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【0019】
(10)上記化合物の分散度(Mw/Mn)が、1〜3であることを特徴とする上記(8)又は(9)に記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【0020】
(11)上記化合物において、上記式(I)で示される構造ユニットと上記式(II)で示される構造ユニットとの重量比(I)/(II)が、3/7〜7/3であることを特徴とする上記(8)〜(10)のいずれかに記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【0021】
(12)上記(A)エポキシ樹脂100重量部に対して、上記(F)添加剤として使用する上記化合物の配合量が1〜50重量部であることを特徴とする上記(1)〜(11)のいずれかに記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【0022】
(13)上記化合物が、上記式(I)−(II)−(I)で示されるトリブロック共重合体であることを特徴とする上記(8)〜(12)のいずれかに記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【0023】
(14)上記トリブロック共重合体が、下式(III)で示される化合物であることを特徴とする上記(13)に記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【化4】

【0024】
(式中、lは1〜200の整数であり、m+mは2〜400の整数であり、Rは、炭素数1〜10のアルキレン基であり、RおよびRは、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、エポキシ基を有する1価の有機基、炭素数1〜10のカルボキシル基を有する1価の有機基及び炭素数3〜500のポリアルキレンエーテル基から選ばれ、Rは炭素数1〜10の2価の炭化水素基である)
【0025】
(15)上記(G)離型剤及び上記(F)添加剤の少なくとも一方が、上記(A)エポキシ樹脂の一部又は全量と予備混合されることを特徴とする上記(1)〜(14)のいずかに記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【0026】
(16)上記(D)無機充填剤が、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、及び炭酸バリウムからなる群の中から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記(1)〜(15)のいずれかに記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【0027】
(17)上記(E)白色顔料が、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、及び無機中空粒子からなる群の中から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記(1)〜(16)のいずれかに記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【0028】
(18)上記(E)白色顔料の中心粒径が、0.1〜50μmの範囲にあることを特徴とする上記(1)〜(17)のいずれかに記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【0029】
(19)上記(D)無機充填剤と上記(E)白色顔料との合計配合量が、樹脂組成物全体に対して、10体積%〜85体積%の範囲であることを特徴とする上記(1)〜(18)のいずれかに記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【0030】
(20)光半導体素子搭載領域となる凹部が1つ以上形成されている光半導体素子搭載用基板であって、少なくとも上記凹部の内周側面が上記(1)〜(19)のいずれかに記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物から構成されていることを特徴とする光半導体素子搭載用基板。
【0031】
(21)光半導体素子搭載領域となる凹部が1つ以上形成されている光半導体素子搭載用基板の製造方法であって、少なくとも上記凹部の内周側面を上記(1)〜(19)のいずれかに記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物を成形加工することにより形成することを特徴とする光半導体搭載用基板の製造方法。
【0032】
(22)上記(20)に記載の光半導体素子搭載用基板と、上記基板における上記凹部底面に搭載された光半導体素子と、上記光半導体素子を覆うように上記凹部内に形成された蛍光体含有透明封止樹脂層とを少なくとも備えることを特徴とする光半導体装置。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、トランスファー成形時の成形品及び金型の各離型面の自由エネルギーが所定の値になるように樹脂組成物を調整することによって、離型性等の各種成形特性に優れた熱硬化性光反射用樹脂組成物を提供することができる。そのような本発明による熱硬化性光反射用樹脂組成物は、熱硬化後の波長800nm〜350nmにおける反射率が80%以上となり光学特性に優れるとともに、高温条件下での長期使用に耐え得る十分な耐熱着色性を示す。したがって、本発明による樹脂組成物を使用することによって、各種特性に優れた光半導体素子搭載用基板を従来法よりも効率良く製造することができる。また、そのような基板を使用することによって信頼性の高い光半導体装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明の熱硬化性光反射用樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化触媒、(D)無機充填剤、(E)白色顔料、(F)添加剤及び(G)離型剤を主成分とするものであり、樹脂組成物をトランスファー成形して成形金型から離型することで得られる成形品の離型面における表面自由エネルギーが30mJ/m以下であり、樹脂組成物の硬化後の光波長400nmにおける光拡散反射率が80%以上であることを特徴とする。ここで「離型面における表面自由エネルギー」とは、トランスファー成形における離型性の良否を判断する指標となり得るものであり、後詳述する「せん断離型力測定用金型」を用いて樹脂組成物をトランスファー成形した時の成形品及び金型の離型面において測定される自由エネルギーの値を意図している。本発明では、成形品の離型面における表面自由エネルギーだけでなく、離型後の金型の離型面における表面自由エネルギーも30mJ/m以下となることが好ましい。
本発明では(G)離型剤として好適な化合物、及びそのような化合物を乳化分散させる分散剤又は離型助剤として機能する特定の添加剤を適切に選択することによって、所定の表面自由エネルギー値を実現することができる。以下、熱硬化性光反射用樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
【0035】
本発明で使用可能な(A)エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂成形材料として一般に使用されているものであってよい。例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂などをはじめとするフェノール類とアルデヒド類のノボラック樹脂をエポキシ化したもの; ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、アルキル置換ビスフェノールなどのジグリシジルエーテル; ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸などのポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂; オレフィン結合を過酢酸などの過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂; 及び脂環族エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは、適宜何種類でも併用することができる。
【0036】
また、本発明で使用するエポキシ樹脂は、無色又は例えば淡黄色の比較的着色していないものが好ましい。そのような樹脂の具体例として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジグリシジルイソシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレートが挙げられる。
【0037】
本発明で使用可能な(B)硬化剤は、特に限定されるものではなく、エポキシ樹脂と反応可能な化合物であればよいが、その分子量は、100〜400程度のものが好ましい。また、硬化剤は無色又は例えば淡黄色の比較的着色していないものが好ましい。そのような硬化剤の具体例として、酸無水物硬化剤、イソシアヌル酸誘導体、フェノール系硬化剤などが挙げられる。
【0038】
酸無水物系硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、無水グルタル酸、無水ジメチルグルタル酸、無水ジエチルグルタル酸、無水コハク酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸などが挙げられる。これら化合物を単独で使用しても、2種以上併用してもよい。
イソシアヌル酸誘導体としては、1,3,5−トリス(1−カルボキシメチル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート、1,3−ビス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられる。これらは単独で使用しても、2種以上併用してもよい。
フェノール系硬化剤としては、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノールなどのフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレンなどのナフトール類と、ホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒドなどのアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂; フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルとから合成されるフェノール・アラルキル樹脂; ビフェニレン型フェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂などのアラルキル型フェノール樹脂; フェノール類及び/又はナフトール類とジシクロペンタジエンとの共重合によって合成される、ジシクロベンタジエン型フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型ナフトールノボラック樹脂などのジシクロペンタジエン型フェノール樹脂; トリフェニルメタン型フェノール樹脂; テルペン変性フェノール樹脂; パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂; メラミン変性フェノール樹脂; シクロペンタジエン変性フェノール樹脂; およびこれら2種以上を共重合して得られるフェノール樹脂などが挙げられる。
【0039】
先に例示した硬化剤の中では、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水グルタル酸、無水ジメチルグルタル酸、無水ジエチルグルタル酸、又は1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレートなどを用いることが好ましい。
【0040】
本発明による熱硬化性光反射樹脂組成物において、(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤との配合比は、(A)エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して、当該エポキシ基と反応可能な(B)硬化剤中の活性基(酸無水物基や水酸基)が0.5〜1.2当量となるような割合であることが好ましい。0.6〜1.0当量となるような割合であることがより好ましい。上記活性基が0.5当量未満の場合には、エポキシ樹脂組成物の硬化速度が遅くなるとともに、得られる硬化物のガラス転移温度が低くなり、充分な弾性率が得られない場合がある。また、上記活性基が1.2当量を超える場合には、硬化後の強度が減少する場合がある。
【0041】
本発明で使用可能な(C)硬化触媒(硬化促進剤)は、公知の化合物であってよく、特に制限はない。例えば、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、トリ−2,4,6−ジメチルアミノメチルフェノールなどの3級アミン類; 2−エチル−4メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類; トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−テトラフルオロボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−テトラフェニルボレートなどのリン化合物; 4級アンモニウム塩; 有機金属塩類及びこれらの誘導体などが挙げられる。これらは単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。これら硬化触媒の中では、3級アミン類、イミダゾール類、又はリン化合物を用いることが好ましい。
【0042】
(C)硬化触媒の含有率は、(A)エポキシ樹脂に対して、0.01〜8.0重量%であることが好ましく、0.1〜3.0重量%であることがより好ましい。硬化触媒の含有率が、0.01重量%未満では、十分な硬化促進効果を得られない場合がある。また硬化触媒の含有率が8.0重量%を超えると、得られる成形体に変色が見られる場合がある。
【0043】
本発明で使用可能な(D)無機充填材は、特に制限はなく、例えば、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムからなる群の中から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。樹脂組成物の成型性、及び難燃性の観点から、シリカ、水酸化アルミニウム、及び水酸化マグネシウムのうちの少なくとも2種を組み合わせて用いることが好ましい。また、特に限定するものではないが、(E)白色顔料とのパッキング効率を考慮すると、(D)無機充填材として使用する化合物の中心粒径は1〜100μmの範囲であることが好ましい。
【0044】
本発明で使用可能な(E)白色顔料は、公知の化合物であってよく、特に制限はない。例えば、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、無機中空粒子などが挙げられ、これらは単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。熱伝導性、及び光反射特性の観点からは、アルミナを用いることが好ましい。
【0045】
無機中空粒子としては、例えば、珪酸ソーダガラス、アルミ珪酸ガラス、硼珪酸ソーダガラス、シラスなどが挙げられる。白色顔料の中心粒径は、0.1〜50μmの範囲にあることが好ましい。この中心粒径が0.1μm未満であると粒子が凝集しやすく分散性が悪くなる傾向があり、50μmを超えると硬化物の光反射特性が十分に得られない恐れがある。
【0046】
本発明による熱硬化性光反射樹脂組成物において、(D)無機充填材と(E)白色顔料との合計配合量は、特に制限されるものではないが、樹脂組成物全体に対して、10〜85体積%の範囲であることが好ましい、それらの合計配合量が10体積%未満であると硬化物の光反射特性が十分に得られない恐れがあり、85体積%を超えると樹脂組成物の成型性が悪くなり、基板の作製が困難となる可能性がある。
【0047】
本発明で使用する(F)添加剤は、少なくとも(G)離型剤を乳化分散させる分散剤又は離型助剤として機能する化合物を含む。下式(I)及び(II)で示される各々の構造ユニットを含む、ポリオルガノシロキサン部位を有する化合物は、離型剤の乳化分散を補助するとともに、それ自身が離型助剤として機能するため好適である。
【化5】

【0048】
なお、式(I)におけるRは、炭素数1〜10のアルキレン基であればよく、特に限定するものではないが、シリコーンドメインの分散性の観点からRはプロピレン基であることが好ましい。一方、式(II)におけるR及びRは、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、エポキシ基を有する1価の有機基、炭素数1〜10のカルボキシル基を有する1価の有機基、及び炭素数3〜500のポリアルキレンエーテル基からなる群から選択される。R及びRは、それぞれ独立して選択され、互いに同じ基であっても、異なる基であってもよい。特に限定するものではないが、シリコーンドメインの分散性の観点からは、R及びRの少なくとも一方が、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、特にメチル基であることが好ましい。R及びRの少なくとも一方がポリアルキレンエーテル基である場合、(F)添加剤として使用する化合物は、下式(IV)で示される構造ユニットを含むことが好ましい。
【0049】
【化6】

【0050】
(式中、n及びnは、20以下の整数であることが好ましく、どちらか一方が0であってもよい。)
【0051】
本明細書において「シリコーンドメインの分散性」とは、(F)添加剤として使用するポリオルガノシロキサン部位を有する化合物と、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤からなるベース樹脂との間で形成されるミクロ相分離構造におけるシロキサン成分(シリコーンドメイン)間の距離、配置、及び分布の度合いを意味する。なお「ミクロ相分離構造」とは、ミクロスケールからサブナノスケールの島成分(ドメイン)が海島構造に相分離した状態を示す。本発明では、上記化合物のシリコーンドメインがベース樹脂に対して優れた分散性を示すことに起因して、離型剤の分散性を改善することができる。そのため、本発明では、樹脂成分中にシリコーンドメイン部をより微細に分散させる、すなわち、シリコーンドメインの分散性を高めることが重要である。
【0052】
一方、「離型剤の分散性」とは、(G)離型剤が(F)添加剤を介して、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤からなるベース樹脂中に乳化分散される際の分散度合いを意味する。したがって「シリコーンドメインの分散性」と「離型剤の分散性」とは、それぞれ区別して考慮されるべきものである。「シリコーンドメインの分散性」及び「離型剤の分散性」は、それぞれ走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡等を用いて具体的な分散度合いを観察することが可能である。また、光散乱法等の周知の方法を用いて、その分散度合いを定量的に数値化することも可能である。
【0053】
(F)添加剤として使用する上記化合物において、式(I)及び(II)で示される各構造ユニットの重量比は、好ましくは(I)/(II)が3/7〜7/3、より好ましくは4/6〜6/4、最も好ましくは5/5である。この範囲を超えて式(I)の構造ユニットが多く存在すると流動性が大きく低下する傾向にある。一方、式(II)の構造ユニットが多く存在すると接着性が低下する傾向にある。化合物の数平均分子量Mnが6000程度の場合、式(I)及び(II)で示される各構造ユニットの重量比が等しければ、それらは、通常、白色固形である。一方、同じくMnが6000程度の場合であっても、式(I)の構造ユニットが式(II)の構造ユニットよりも多く存在する場合には、化合物は液状である。このように各構造ユニットの重量比によって化合物の特性が変化するため、本発明では各種分散性、流動性、被着体に対する接着性、及び弾性率等のバランスを考慮して、適切な重量比を有する化合物を選択することが好ましい。なお、化合物における構造ユニット(I)及び(II)の重量比は、H−NMRを測定し、各構造ユニットに由来のプロトンの積分値から算出することが可能である。
【0054】
本発明の一実施態様において、(F)添加剤として使用する化合物の数平均分子量(Mn)は、金属等の被着体に対する接着性の観点からは2000以上が好ましく、流動性の低下を抑制する観点からは20000以下であることが好ましい。樹脂組成物の弾性率を適切に調整する観点から、Mnは、2000〜20000が好ましく、3000〜15000がより好ましく、5000〜10000が特に好ましい。
【0055】
なお、本発明で使用する用語「数平均分子量(Mn)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法に従って標準ポリスチレンによる検量線を用いて測定した値を示している。より具体的には、本発明で記載したMnは、GPCにポンプ(株式会社日立製作所製、L−6200型)、カラム(TSKgel−G5000HXL及びTSKgel−G2000HXL、いずれも東ソー株式会社製、商品名)、及び検出器(株式会社日立製作所製、L−3300RI型)を使用し、溶離液としてテトラヒドロフランを使用し、温度30℃、流量1.0ml/minの条件で測定した値である。
【0056】
本発明の一実施態様において、(F)添加剤として使用する化合物は、先に示した式(II)の構造ユニットを介在して(I)の構造ユニットが両末端に存在するトリブロック共重合体であることが好ましい。すなわち、各構造ユニット間に結合基を介して式(I)−(II)−(I)として示される形式のトリブロック共重合体であることが好ましい。そのようなトリブロック共重合体の中でも、本発明では(F)添加剤として、下式(III)で示される化合物を好適に使用することができる。
【化7】

【0057】
式(III)において、1は1〜200の整数であり、m+mは2〜400の整数であり、Rは、炭素数1〜10のアルキレン基であり、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、エポキシ基を有する1価の有機基、炭素数1〜10のカルボキシル基を有する1価の有機基、及び炭素数3〜500のポリアルキレンエーテル基からなる群から選ばれ、Rは炭素数1〜10の2価の炭化水素基である。樹脂組成物に対する分散性の観点から、式(III)で示される化合物におけるR〜Rの炭素数は、各々単一である必要はなく、先に記載した範囲内で分布を持たせることが好ましい。
【0058】
先に記載したように、上記化合物によって離型剤の分散性を効果的に改善するためには、シリコーンドメインの分散性を向上させることが重要である。そのため、上記化合物の分散度、すなわち、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は、1〜3であることが好ましい。化合物の分散度は1〜2.5の範囲がより好ましく、1〜2の範囲がさらに好ましい。ここで、Mw及びMnは、先に説明したように、GPC法に従って標準ポリスチレンによる検量線を用いて測定した値である。分散度は、高分子化合物の分子量分布の度合いを示すパラメータであり、その数値が1に近いほど、分子量分布が狭いことを意味する。本発明では、分散度が1に近い化合物を使用することによって、エポキシ樹脂や硬化剤等の樹脂成分中にそのような化合物を偏在することなく均一に存在させることができる。その結果、樹脂成分中にシリコーンドメイン部が微細に分散したミクロ相分離構造が得られる。但し、分散度が1付近の化合物を使用した場合であっても、化合物のMnが大きくなるに従って凝集し易くなる傾向がある。そのため、化合物は上述の範囲の分散度を有する一方で、先に説明したように適切なMnを有することが好ましい。具体的には、接着性、流動性及び弾性率等の観点と併せて、化合物のMnは2000〜20000の範囲であることが好ましい。
【0059】
本発明で使用する上記化合物の一実施形態として、例えば、両末端又は側鎖を水酸基変性したポリシロキサン化合物とカプロラクトン化合物との開環縮合によって得られる化合物が挙げられる。このような化合物を調製するためのエステル化反応については、公知の方法を適用することができる。両末端を水酸基変性したポリシロキサン化合物とカプロラクトン化合物とのエステル化反応によって得られる化合物の分散度は、原料として使用する各化合物が分子量分布を持たない場合、1付近となる傾向があるため、本発明で使用する添加剤として好適である。
【0060】
このような化合物は市販品と入手することも可能である。例えば、カプロラクトン及びポリジメチルシロキサンに由来する構造ユニットを有する化合物として、ワッカー社製の商品名「SLM446200」のシリーズが挙げられ、本発明において好適に使用することができる。また、旭化成ワッカーシリコーン社の開発材、開発品番「SLJ1661」及び「SLJ1731〜1734」のシリーズも好適である。
【0061】
本発明による熱硬化性光反射用樹脂組成物の一実施形態において、(F)添加剤として使用する上記化合物の配合量は、(A)エポキシ樹脂100重量部に対して、1〜50重量部であることが好ましく、2〜30重量部であることがより好ましく、5〜20重量部であることが特に好ましい。上記化合物の配合量が1重量部未満となると、シリコーンドメインおよび離型剤の分散効果を発現しにくくなる。一方、50重量部を超える配合量では、樹脂組成物の流動性及び難燃性が低下する傾向がある。
【0062】
本発明で使用する(G)離型剤は、表面自由エネルギーの値を適切に調整することができれば特に限定されない。但し、本発明で使用する(G)離型剤は、使用する(F)分散剤、特に(F)分散剤として好適な化合物として先に説明した化合物との相性を考慮して選択することが好ましい。また、本発明で使用する(G)離型剤は、樹脂組成物の熱硬化反応過程や混練時のBステージ化過程(オリゴマー化又は高分子量化)等の化学反応を伴う工程において、予期しない副反応の反応触媒として作用しない化合物であることが好ましい。
【0063】
本発明の一実施形態では、(G)離型剤として、下記一般式(1-1)で示される構造を有し、一般に金属石鹸を呼ばれる化合物を使用することが好ましい。
【化8】

【0064】
式(1-1)においてMは、第3周期の金属元素、IIA族のアルカリ土類金属元素、IVB族、IIB族、VIII族、IB族、IIIA族、IIIB、及びIVA族に属する金属元素からなる群の中から選ばれる少なくとも1種の金属元素であってよい。中でも、好ましい金属元素として、マグネシウム、カルシウム、バリウム、アルミニウム、スズ、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛が挙げられる。化学的又は物理的な安定性の観点から、アルミニウム、スズ、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛から選択される金属元素がより好ましく、最も好ましくは亜鉛である。
【0065】
式(1-1)においてRは、炭素数3〜50のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、エポキシ基を有する1価の有機基、炭素数3〜50のカルボキシル基を有する1価の有機基又は炭素数3〜500のポリアルキレンエーテル基からなる群の中から選ばれる少なくとも1種の置換基であってよい。効果的に離型性を向上させ、かつ表面自由エネルギーを減少させるの観点から、Rは、炭素数10〜50のアルキル基であることが好ましい。すなわち、本発明において金属石鹸は、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びモンタン酸等の脂肪酸の金属塩であることが好ましい。好ましい金属石鹸の具体例として、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウムが挙げられる。金属石鹸は、後述する周知の方法に従って製造することもできるが、市販品として入手することもできる。例えば、先に挙げたステアリン酸亜鉛及びステアリン酸アルミニウムは、それぞれ日本油脂株式会社製の「ジンクステアレート」(商品名)及び「アルミニウムステアレート300」(商品名)として入手することができる。
【0066】
金属石鹸の製造方法は周知であり、製造方法は、有機酸のアルカリ金属塩水溶液と上記一般式(1-1)のMの金属塩とを用いる湿式法によって製造する場合、又は原料である脂肪酸と上記一般式(1-1)のMの金属とを直接反応させる乾式法によって製造する場合とに大別される。本発明では、いずれの製造方法も適用できるが、本質的な問題として、遊離脂肪酸や水分に留意する必要がある。具体的には、室温(0〜35℃)の条件下で、金属石鹸における遊離脂肪酸の含有量は20重量%以下であることが好ましい。金属石鹸中の遊離脂肪酸の含有量は、より好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下、最も好ましくは0.5重量%以下である。金属石鹸中の遊離脂肪酸の含有量が20重量%よりも多い場合には、樹脂組成物の硬化速度が遅くなる場合がある。また、光反射率や耐熱着色性が低下するといった不具合が生じる恐れがある。また、室温(0〜35℃)の条件下で、金属石鹸における水分含有量は10重量%以下であることが好ましい。水分含有量は、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下、最も好ましくは0.5重量%以下である。金属石鹸中の水分含有量が10重量%よりも多い場合には、樹脂組成物の硬化によって得られる成形品の耐リフロー性が悪化する場合がある。また、光反射率や耐熱着色性が低下するといった不具合が生じる恐れがある。
【0067】
金属石鹸は、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤等のベース樹脂に対する分散性の観点から、その融点が100℃以上、200℃未満であることが好ましい。本発明で使用する金属石鹸の融点は、より好ましくは100℃以上、150℃未満であり、特に好ましくは110℃以上、135℃未満である。融点が200℃以上の金属石鹸を使用した場合、トランスファー成形温度においてそれらが固体として存在するためベース樹脂に対する分散性が悪い。そのため、トランスファー成形加工時に樹脂組成物中に金属石鹸が固形のまま偏在し、離型不良が発生しやすい傾向がある。一方、融点が100℃未満の金属石鹸を使用した場合には、ミキシングロールミルや二軸押出混練時に、樹脂組成物の粘度低下を招き、混練性を十分に確保できなくなる傾向がある。
【0068】
また、本発明における一実施形態では、(G)離型剤として、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステル、脂肪族ポリエーテル、非酸化型ポリオレフィン、及びカルボキシル基を有する酸化型ポリオレフィンからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を使用する。このような化合物の中でも光半導体素子搭載用基板への適用を考慮して、無色又は淡黄色程度の比較的着色の少ない化合物を選択することが好ましい。
【0069】
例えば、脂肪族カルボン酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びモンタン酸等の炭素数が10〜50の1価の有機酸が挙げられ、それらは市販品として入手可能である。例えば、本発明で使用可能なものとして、クラリアントジャパン株式会社製の商品名「ヘキストワックスE」、及び商品名「Licowax SW」が挙げられる。
脂肪族カルボン酸エステルとしては、モンタン酸エステルやステアリン酸エステル等の炭素数が10〜50の1価の有機酸と、炭素数が10〜50の1価のアルコールとから得られるエステル化合物が挙げられる。例えば、市販品として入手可能なものとして、クラリアントジャパン株式会社製の商品名「Licowax KST」が挙げられる。
脂肪族ポリエーテルとしては、下記一般式(V)で示される構造を有し、炭素数3〜500のポリアルキレンエーテル化合物が挙げられる。例えば、市販品として入手可能なものとして、東洋ペトロライト株式会社製の商品名「ユニトックス420」、及び商品名「ユニトックス480」が挙げられる。
【0070】
【化9】

【0071】
(式中、q1は、≦20の範囲にあることが好ましく、0であっても良い。Rは水素、メチル基、炭素数2〜10の有機基である。)
【0072】
酸化型又は非酸化型のポリオレフィンの一例としては、ヘキスト株式会社製の商品名「H4」や「PE」又は「PED」シリーズとして市販されている、数平均分子量が500〜10000の低分子量ポリエチレンが挙げられる。
【0073】
本発明では、離型剤として例示した上述の化合物に限らず、電子部品封止用エポキシ樹脂成形材料の分野で一般に使用される化合物を使用してもよい。特に制限するものではないが、例えば、カルナバワックス、シリコーン系ワックス等を使用してもよい。本発明では、離型剤として作用する化合物を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
(G)離型剤の添加量としては、(A)エポキシ樹脂100重量部に対して、0.01〜8重量部であることが好ましく、より好ましくは、0.1〜3重量部である。(G)離型剤の添加量が0.01重量部未満の場合、金型離型性の付与効果が不十分となる可能性がある。一方、離型剤の配合量が8重量部を超えると、リードフレーム等の基板に対する接着性が低下する場合がある。
【0075】
以上説明したように、本発明による硬化性光反射用樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化触媒、(D)無機充填剤、(E)白色顔料、(F)添加剤及び(G)離型剤を必須成分とするが、本発明では、必要に応じて、各種添加剤を追加してもよい。例えば、本発明による熱硬化性光反射用樹脂組成物の一実施形態では、樹脂と無機充填剤及び白色顔料との界面接着性を向上させる観点から、必要に応じてカップリング剤等を添加してもよい。カップリング剤としては、特に制限はないが、例えば、シランカップリング剤、及びチタネート系カップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、エポキシシラン系、アミノシラン系、カチオニックシラン系、ビニルシラン系、アクリルシラン系、メルカプトシラン系等の公知の化合物であってよく、これらの複合系であってもよい。カップリング剤の使用量は、無機充填材に対する表面被覆量を考慮して適宜調整することが可能である。本発明において使用するカップリング剤の種類及びその処理方法は、特に制限はない。本発明の一実施形態では、カップリング剤の配合量を樹脂組成物に対して5重量%以下とすることが好ましい。その他、樹脂組成物の構成成分として、酸化防止剤、離型剤、イオン捕捉剤などの各種添加剤を追加して使用してもよい。
【0076】
なお、本発明による熱硬化性光反射用樹脂組成物は、光半導体素子搭載用基板材料としての用途を考慮して優れた光学特性を示すことが望ましい。具体的には、樹脂組成物の熱硬化後の光拡散反射率(光反射率ともいう)が、波長350〜800nmにおいて80%以上となることが望まれる。硬化後の光反射率が80%未満であると、光半導体装置の輝度向上に十分に寄与できない傾向がある。本発明では樹脂組成物の光反射率が90%以上となることが好ましい。
【0077】
また、耐熱着色性の観点からは、硬化後の成形品を150℃の環境下に少なくとも72時間にわたって放置する耐熱性試験の後でも、波長350〜800nmにおいて80%以上の光反射率を保持することが望まれる。特に、長期耐熱着色性の観点からは、硬化後の成形品を150℃の環境下に500時間にわたって放置する耐熱性試験の後でも、波長350〜800nmにおいて80%以上の光反射率を保持することが望ましい。上述の各耐熱性試験後の測定時に、波長400nmにおける光反射率が85%以上となることがより好ましく、90%以上となることがさらに好ましい。このような樹脂組成物の光反射特性は、樹脂組成物を構成する各種成分の配合量を適切に調整することによって実現することができる。特に限定するものではないが、(G)離型剤として金属石鹸を使用した場合には、従来の離型剤と比較して、金属石鹸は熱分解温度が高く、又ベース樹脂に対して酸化防止剤として作用することに起因して、優れた耐熱着色性を実現することができる。
【0078】
また、本発明による熱硬化性光反射用樹脂組成物は、成形時の離型性を良好にする観点から、樹脂組成物をトランスファー成形して成形金型から離型することで得られる成形品の離型面における表面自由エネルギーが30mJ/m以下となるように調整されることが好ましい。成形品の離型面における表面自由エネルギーが、より好ましくは25mJ/m以下、さらに好ましくは20mJ/m以下となるように樹脂組成物を調整することが望ましい。通常、成形金型を用いる成形加工時には、樹脂組成物中の離型剤が滲み出し、金型表面及び成形品の各離型面をコーティングすることによって、離型性が向上することになる。そのような観点から、本発明では、10ショット(10回)以上、好ましくは20ショット(20回)程度、トランスファー成形法による連続成形を行い、毎ショット成形の度に測定を実施した場合に、トランスファー成形後の金型表面及び成形品の各離型面における表面自由エネルギーが、少なくとも10ショット以内に各々30mJ/m以下となることが好ましい。各々の表面自由エネルギーが、より好ましくは25mJ/m以下、さらに好ましくは20mJ/m以下となるように樹脂組成物を調整することが望ましい。成形品の離型面における表面自由エネルギーが30mJ/mよりも大きい場合は、離型剤が成形品の内部に存在する状態となるため十分な離型性が得られない傾向がある。一方、金型表面の表面自由エネルギーが30mJ/mよりも大きい場合は、成形品からの離型剤の滲み出しが不十分となり金型表面に十分量の離型剤が存在せず、金型表面が熱によって酸化され酸化膜が形成され、その結果、十分な離型性が得られない傾向がある。
【0079】
ここで、本発明における「表面自由エネルギー」とは、成形品表面又は金型表面に存在する物質表面の物理化学的な性質を示すパラメータであり、本発明ではトランスファー成形時の離型性の良否を判断する指標となる。表面自由エネルギーは、特に限定されるものではないが、静的接触角法(液滴法:固体表面に表面自由エネルギーが既知の液滴を滴下)、動的接触角法、滑落法、又は極小接触角法等の周知の方法に従って測定を行い、得られた測定値をFowkes法、Zisman法、Owens and Wendt法、又はVan Oss法といった周知の方法に従って解析することによって評価することができる。本発明で記載する「表面自由エネルギー」の値は、実施例で後述されるように、液滴法による測定を行い、その測定値をVan Oss法に従って解析することによって得たものである。
【0080】
さらに本発明による熱硬化性光反射用樹脂組成物は、成形加工時の離型性の観点から、トランスファー成形法等による成形加工時のせん断離型力が10ショット以内に200KPa以下、より好ましくは1ショット目から200KPa以下となることが望まれる。ここで「せん断離型力」とは、熱硬化性光反射用樹脂組成物を用いて光半導体搭載用基板を製造する際の成形品と成形用金型との離型性の程度を表す指標となる。本発明における「せん断離型力」とは、縦50mm×横35mm×厚さ0.4mmのクロムめっきステンレス板の上に、直径20mmの円板を、金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件で成形した後に、直ちに該ステンレス板を引き抜き、その時に測定される最大引き抜き力を示している。
【0081】
離型剤を含む樹脂組成物を使用してトランスファー成形を実施した場合、樹脂組成物中の離型剤の染み出しによって金型表面がコーティングされ離型性が改善されることになる。したがって、本発明では、上述の条件下で10ショット(10回)以上、好ましくは20ショット(20回)程度、トランスファー成形法による連続成形を行い、毎ショット成形の度にせん断離型力の測定を実施した場合に、少なくとも熱硬化性光反射用樹脂組成物のせん断離型力が10ショット以内に200KPa以下となるように各種構成成分の配合量を調整することを意図している。
【0082】
樹脂組成物のせん断離型力が200KPaを超えると、成形加工時に金型から成形品が離型できなくなるか、又は離型できたとしても成形品に外観不良及び破損といった不具合が生じる傾向がある。離型性等の各種成形性の観点から、樹脂組成物のせん断離型力は、少なくとも200KPa以下である必要があるが、150Kpa以下であることが好ましく、100Kpa以下であることがより好ましく、50KPa以下であることがさらに好ましい。このような樹脂組成物を使用して光半導体搭載用基板の成形加工を行うことによって、ゲートブレイク等の離型不良を低減することが可能となる。
【0083】
従来の代表的な樹脂組成物の中には10ショット以内にせん断離型力が200KPa以下となるものもある。しかし、そのような従来の樹脂組成物は離型剤の分散性が乏しいため、連続成形を行うことが困難な傾向がある。実際のところ、成形を繰り返す度にせん断離型力が上昇し、例えば、100ショット程度の連続成形を繰り返す前に金型から成形品を離型するのが困難となり、成形品に外観不良及び破損といった不具合が見られる。これに対し、本発明による樹脂組成物では、離型剤の分散性を改善するとともにそれ自身が離型助剤として機能する、ポリオルガノシロキサン部位を含有する特定の化合物を使用することによって、100ショット程度の連続成形を行った場合であっても、200KPa以下のせん断離型力を維持することが可能であり、生産性に優れた成形加工を実現することができる。
【0084】
このような観点において、本発明による樹脂組成物は、連続成形可能なショット数が、少なくとも100ショット以上であることが好ましく、さらに好ましくは150ショット以上、特に好ましくは200ショット以上であることが望ましい。連続成形可能なショット数が100ショットよりも少ない場合には、離型不能となった後にトランスファー成形金型の掃除、及び洗浄が必要となり、その頻度が増加することで生産性が低下することになる。なお、本発明における「連続成形可能」とは、トランスファー成形時のせん断離型力が200KPa以下となる状態を意味する。すなわち、「連続成形可能なショット数が100以上である」とは、100ショット以上のトランスファー成形を実施した場合であっても、せん断離型力が200KPa以下となる状態を維持し続けることを意味する。
【0085】
本発明による熱硬化性光反射用樹脂組成物は、先に例示した各種成分を均一に分散混合することによって調製することができ、混合手段や条件などは特に制限されない。一般的な調製方法として、ミキシングロール、押出機、ニーダー、ロール、エクストルーダーなどの装置を用いて各種成分を混練し、次いで得られた混練物を冷却及び粉砕する方法が挙げられる。混練形式についても特に限定されないが、溶融混練とすることが好ましい。溶融混練時の条件は、使用する各種成分の種類や配合量によって適宜決定すればよく、特に制限はない。
【0086】
本発明の一実施形態では、樹脂組成物の溶融混練は、例えば15〜100℃の温度範囲で5〜40分間にわたって実施することが好ましく、20〜100℃の温度範囲で10〜30分間にわたって実施することがより好ましい。溶融混練の温度が15℃未満であると、各種成分を十分に溶融混練することが困難であり、分散性が低下する傾向がある。一方、溶融混練を100℃よりも高温で実施すると、樹脂組成物の高分子量化が進行し、基板などの成形品を成形する前に樹脂組成物が硬化してしまう恐れがある。また、溶融混練の時間が5分未満であると、基板などの成形時に金型から樹脂が染み出し、バリが発生しやすい傾向があり、40分よりも長いと、樹脂組成物の高分子化が進行し、成形前に樹脂組成物が硬化してしまう恐れがある。
【0087】
本発明の一実施形態では、樹脂組成物を調製する時に(G)離型剤及び(F)添加剤として使用する化合物の少なくとも一方を(A)エポキシ樹脂の一部又は全部と予備混合することが好ましい。このような予備混合を実施することによって、ベース樹脂に対する離型剤の分散性をさらに高めることができる。その結果、離型剤の分散不具合に起因する金型及びパッケージ汚れの発生をより効果的に抑制することが可能となる。
【0088】
なお、(A)エポキシ樹脂の全量と(G)離型剤及び/又は(F)添加剤として使用する化合物との間で予備混合を実施しても差し支えないが、(A)エポキシ樹脂の一部との予備混合であっても十分な効果が得られる。その場合、予備混合に用いる(A)エポキシ樹脂の量は、成分全量の10〜50重量%とすることが好ましい。
【0089】
また、予備混合は、(A)エポキシ樹脂と、(G)離型剤及び(F)添加剤のいずれか一方との間で実施するだけでも分散性向上の効果が得られる。しかし、効果をより高めるためには、(A)エポキシ樹脂と(G)離型剤及び(F)添加剤の両者との3成分間で実施することが好ましい。
【0090】
上述の3成分間で予備混合を実施する場合、添加順序の制限は特にない。例えば、全ての成分を同時に添加混合しても、又は(G)離型剤及び(F)添加剤のいずれか一方とエポキシ樹脂とを添加混合した後に他方の成分を添加混合してもよい。
【0091】
予備混合の方法は、特に制限されるものではなく、(G)離型剤及び/又は(F)添加剤として使用する化合物を(A)エポキシ樹脂中に分散させることが可能であればよい。例えば、室温〜220℃の温度条件下で、0.5〜20時間にわたって成分を攪拌する方法等が挙げられる。分散性及び効率性の観点からは、100〜200℃、より好ましくは150〜170℃の温度条件下、攪拌時間を1〜10時間、より好ましくは3〜6時間とすることが好ましい。
【0092】
本発明による光半導体素子搭載用基板は、先に説明した本発明による熱硬化性光反射用樹脂組成物を用いて構成することを特徴とする。具体的には、光半導体素子搭載領域となる1つ以上の凹部を有し、少なくとも上記凹部の内周側面が本発明の熱硬化性光反射用樹脂組成物から構成される基板が挙げられる。図1は、本発明の光半導体素子搭載用基板の一実施形態を示すものであり、(a)は斜視図、(b)はIb−Ib線に沿った断面図である。図1に示したように、本発明の光半導体素子搭載用基板110は、リフレクター103と、Ni/Agメッキ104及び金属配線105を含む配線パターン(リードフレーム)とが一体化され、光半導体素子搭載領域となる凹部200が形成された構造を有し、少なくとも上記凹部の内周側面は本発明の熱硬化性光反射用樹脂組成物から構成されていることを特徴とする。
【0093】
本発明の光半導体素子搭載用基板の製造方法は、特に限定されないが、例えば、本発明の熱硬化性光反射用樹脂組成物又はそのタブレット成型体をトランスファー成形によって製造することができる。より具体的には、以下の手順に従って製造することが可能である。最初に光半導体素子搭載用基板は、金属箔から打ち抜きやエッチングなどの公知の方法によって金属配線を形成する。次に、該金属配線を所定形状の金型に配置し、金型の樹脂注入口から本発明の熱硬化性光反射用樹脂組成物(タブレット成型体の溶融物)を注入する。次に、注入した樹脂組成物を、好ましくは金型温度170〜190℃、成形圧力2〜8MPaで60〜120秒にわたって硬化させた後に金型を外し、アフターキュア温度120℃〜180℃で1〜3時間にわたって熱硬化させる。そして、熱硬化性光反射用樹脂組成物の硬化物から構成されるリフレクターに周囲を囲まれ、光半導体素子搭載領域となる凹部の所定位置に、Ni/銀メッキを施す。
【0094】
本発明による光半導体装置は、先に説明した本発明による光半導体素子搭載用基板と、光半導体素子搭載用基板の凹部底面に搭載される光半導体素子と、光半導体素子を覆うように凹部内に形成される蛍光体含有透明封止樹脂層とを少なくとも備えることを特徴とする。図2(a)及び(b)は、それぞれ本発明による光半導体装置の一実施形態を示す側面断面図である。より具体的には、図2に示した光半導体装置では、本発明の光半導体素子搭載用基板110の光半導体素子搭載領域となる凹部(図1の参照符号200)の底部所定位置に光半導体素子100が搭載され、該光半導体素子100と金属配線105とがボンディングワイヤ102やはんだバンプ107などの公知の方法によりNi/銀メッキ104を介して電気的に接続され、該光半導体素子100が公知の蛍光体106を含む透明封止樹脂101により覆われている。図3は、本発明による光半導体装置の別の実施形態を示す側面断面図である。図中、参照符号300はLED素子、301はワイヤボンド、302は透明封止樹脂、303はリフレクター、304はリード、305は蛍光体、306はダイボンド材、307はメタル基板を示しており、リフレクター303の少なくとも凹部表面が本発明による熱硬化性光反射用樹脂組成物から構成されている。
【実施例】
【0095】
以下、本発明を実施例により詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1〜5及び比較例1〜9)
1.熱硬化性光反射用樹脂組成物の調製
各実施例及び各比較例において使用した原料は以下の通りである。
*1:トリグリシジルイソシアヌレート(日産化学株式会社製、商品名「TEPIC−S」、エポキシ当量100)
*2:ヘキサヒドロ無水フタル酸(和光純薬株式会社製)
*3:日本化学工業株式会社製、商品名「PX−4ET」
*4:トリメトキシエポキシシラン(東レダウコーニング株式会社製、商品名「A−187」)
*5:溶融シリカ(電気化学工業株式会社製、商品名「FB−301」)
*6:中空粒子(住友3M株式会社製、商品名「S60−HS」)
*7:アルミナ(アドマテックス株式会社製、商品名「AO−25R」)
【0096】
*8:シリコーン含有ブロック共重合体(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製の開発材、品番「SLJ−1661−02」)。この化合物の詳細は、以下のとおりである。
構成ユニット成分(重量%):ポリカプロラクトンユニット(MPCL)/ポリジメチルシロキサンユニット(MPDMs)=50/50
ユニット数比(m/n):0.69。なお、m/nのmは、前述の一般式(III)におけるmとmの総和である。
数平均分子量(Mn):6179
分散度(Mw/Mn):1.5。なお、Mn及びMwは、GPCにポンプ(株式会社日立製作所製、L−6200型)、カラム(TSKgel−G5000HXL及びTSKgel−G2000HXL、いずれも東ソー株式会社製、商品名)、及び検出器(株式会社日立製作所製、L−3300RI型)を使用し、溶離液としてテトラヒドロフランを使用し、温度30℃、流量1.0ml/minの条件で測定した値を参照した。
【0097】
*9:コアシェル型の微粒子添加剤(三菱レイヨン株式会社製、商品名「S2001」)。
この添加剤は、コア部がアクリロニトリル/スチレン/ジメチルシロキサン/アクリル酸アルキルの共重合体、及びシェル部がポリメチルメタクリレートから構成される化合物であり、平均粒径が0.3μmである。
【0098】
*10:コアシェル型の微粒子添加剤(三菱レイヨン株式会社製、商品名「KS5535」)。
この添加剤は、コア部がアクリゴム、及びシェル部がポリメチルメタクリレートから構成される化合物であり、平均粒径が0.3μmである。
【0099】
*11:コアシェル型の微粒子添加剤(三菱レイヨン株式会社製、商品名「SRK200」。
この添加剤は、コア部がアクリロニトリル/スチレン/ジメチルシロキサン/アクリル酸アルキル共重合体、及びシェル部がアクリロニトリルから構成される化合物であり、平均粒径が0.3μmである。
【0100】
*12:日本油脂株式会社製、商品名「ジンクステアレート」
*13:日本油脂株式会社製、商品名「アルミニウムステアレート300」
*14:モンタン酸エステル系ワックス(クラリアントジャパン株式会社製、商品名「LICOWAX E」)
*15:アルキルポリエーテル系ワックス(東洋ペトロライト株式会社製、商品名「ユニトックス420」)
*16:カルナバワックス(東亜化成株式会社製、商品名「カルナバワックス」)
*17:シリコーン系ワックス(信越化学工業株式会社製、商品名「KF910」(主鎖がシロキサンからなるポリアルキルシロキサン化合物))
【0101】
上述の各種原料を下記表1及び表2に示す配合割合に従って配合し、ミキサーによって十分に混練し、次いでミキシングロールによって所定条件下で溶融混練することによって混練物を得た。さらに得られた混練物を冷却し、それらを粉砕することによって、実施例1〜5及び比較例1〜9の熱硬化性光反射用樹脂組成物を各々調製した。なお、各表に示した各原料の配合量の単位は全て重量部であり、「−」の記載部分は該当する原料の配合がないことを意味している。
【0102】
2.熱硬化性光反射用樹脂組成物の評価
先に調製した実施例1〜5及び比較例1〜9の各熱硬化性光反射用樹脂組成物について、以下に示す各種特性試験を実施した。その結果を下記表1及び2に示す。
【0103】
(光反射率)
先に調製した各熱硬化性光反射用樹脂組成物を、成形金型温度180℃、成型圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件でトランスファー成形した後、150℃で2時間にわたって後硬化することによって、厚み1.0mmの試験片を作製した。次いで、積分球型分光光度計V−750型(日本分光株式会社製)を用いて、波長400nmにおける各試験片の光反射率を測定し、これを初期光反射率とした。また、作製した試験片を150℃のオーブン中に入れ、72時間及び500時間にわたってそれぞれ熱処理を行った後、先と同様にして光反射率の測定を実施し、これを熱処理後の光反射率とした。このような熱処理後の光反射率は、樹脂組成物の耐熱着色性を評価する指標となる。特に、500時間熱処理後に測定される光反射率は長期耐熱着色性を評価する指標となる。各測定結果を表1及び表2に示す。
【0104】
なお、光半導体素子搭載用基板への適用を想定した場合、各測定で得られた光反射率の値は以下のように評価される。
【0105】
初期光反射率の評価基準:
優:光波長400nmにおいて光反射率90%以上
良:光波長400nmにおいて光反射率80%以上、90%未満
可:光波長400nmにおいて光反射率70%以上、80%未満
不可:光波長400nmにおいて光反射率70%未満
【0106】
熱処理後光反射率の評価基準:
優:光波長400nmにおいて光反射率90%以上
良:光波長400nmにおいて光反射率80%以上、90%未満
可:光波長400nmにおいて光反射率70%以上、80%未満
不可:光波長400nmにおいて光反射率70%未満
【0107】
<離型性の評価>
(せん断離型力)
せん断離型力測定用金型として、直径20mm、厚さ2mmの円板状の成形品を成形するための凹部と樹脂注入口を備えた上金型及び下金型から構成される金型を使用した。このせん断離型力測定用金型に、縦50mm×横35mm×厚さ0.4mmのクロムめっきステンレス板を挿入し、このステンレス板上に各実施例及び各比較例で調製した樹脂組成物を成形し、成形後、直ちにステンレス板を引き抜き、その際の最大引き抜き力をプッシュプルゲージ(株式会社今田製作所製、型名「SH」)を用いて測定した。成形条件は、成形金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒とした。
【0108】
せん断離型力測定用金型を模式的に示す側面断面図を図4に示す。図中、参照符号400はせん断離型力測定用金型、410は上金型、412は樹脂注入口、414は成形する円板の形状を有する凹部、416は下金型、420はステンレス板を示す。実際に使用した金型の寸法は、図4中に記載した数値を参照されたい。
【0109】
上述の方法に従って測定した最初の測定値を1ショット目のせん断離型力として定義する。また、このような測定を同一のステンレス板を用いて連続して繰り返し、2ショット目以降の引き抜き力についても同様に測定し、1ショット目から起算して10ショット以内にその引き抜き力が200KPa以下となるか否かを検討した。さらに、引き抜き力が200KPa以下となる場合を離型可能であると判断し、連続成形可能なショット数を評価した。その結果を表1及び表2に示す。
【0110】
(表面自由エネルギー)
先に説明したせん断離型力測定用金型に縦50mm×横35mm×厚さ0.4mmのクロムめっきステンレス板を挿入し、このステンレス板上に各実施例及び各比較例で調製した樹脂組成物を成形し、成形後、直ちにステンレス板を引き抜いた。成形条件は、成形金型温度180℃、成型圧力6.9MPa、硬化時間90秒とした。
【0111】
次に、引き抜いたステンレス板及び離型して得た成形品をそれぞれ25℃になるまで冷却放置した後、25℃下でステンレス板及び成形品の各離型面における接触角を液適法に従い測定した。液体試料(液滴試料)としては、表面自由エネルギーが既知の超純粋水を1.0μL、アセトアミド1.0μL、グリセリン1.0μLを用いた。表面自由エネルギーの測定箇所を説明する模式的断面図を図4(b)に示す。図中、参照部号420はステンレス板、420aは測定を行うステンレス板の離型面、430は成形品、430aは測定を行う成形品の離型面を示す。このような測定部位接触角の測定には、協和界面科学社製の固液界面解析システム「DROP MASTER 500」(商品名)を用いた。上述の測定で得た数値から、Van Oss法の酸−塩基モデルを適用して解析を行い、表面自由エネルギーの数値を得た。10ショット目の成形後に測定して得られた値を表1及び表2に示す。
【0112】
(熱時硬度)
各実施例及び各比較例で調製した樹脂組成物を、所定の形状を有する金型を用い、成形金型温度180℃、成型圧力6.9MPa、及び硬化時間90秒の成形条件下で成形し、直径50mm×厚さ3mmの円板を成形した。成形後、直ちにショアD型硬度計を用いて円板の硬度を測定した。その結果を表1及び表2に示す。
【0113】
(スパイラルフロー)
スパイラルフローの評価方法「EMMI−1−66」に準じ、スパイラルフロー測定用金型を用いて、先に調製した各熱硬化性光反射用樹脂組成物を所定の条件下で成形し、その際の樹脂組成物の流動距離(cm)を測定した。その結果を表1及び表2に示す。
【0114】
【表1】

【0115】
【表2】

【0116】
【表3】

【0117】
表1及び表2から明らかなように、本発明の熱硬化性光反射用樹脂組成物によれば、トランスファー成形時の成形品及び成形金型の各離型面における表面自由エネルギーがいずれも30mJ/m以下となり、連続可能成形数が100回以上となり、優れた離型性が実現できる。また、本発明によれば、添加剤として使用したポリオルガノシロキサン部位を有する特定の化合物が離型性の改善に有効であることが分かる。実際に、実施例1〜5の樹脂組成物の硬化物を破壊し、その破断面を電子顕微鏡で観察したところ、明確な界面は確認できなかった。一方、比較例1〜9の樹脂組成物の硬化物について同様に観察したところ、明らかな界面が観察された。特に、比較例3〜5で使用した添加剤は、実施例1〜5で使用した添加剤と比較して溶解性が低く、溶媒中では粒子として存在し、微粒子間で凝集しやすい傾向が見られた。これらのことから、本発明によれば添加剤として使用した特定の化合物が離型剤の分散性を高めていることが分かる。また、実施例1〜5による本発明の樹脂組成物は、成形性に優れるだけでなく、初期及び熱処理後の光反射率が高く、近紫外域において優れた光反射特性を示し、耐熱着色性にも優れていることも分かる。
【0118】
さらに本発明の樹脂組成物は、特定の添加剤及び離型剤の使用によってトランスファー成形時に金型内での溶融樹脂流動性が低下することなく適度な流動性を維持する一方で、優れた金型離型性を達成することができため、成形性が飛躍的に向上していることが分かる。このような樹脂組成物を使用することによって、金型成形時の外部離型剤の使用量又はその使用頻度を減少することが可能となるため、トランスファー成形による基板の生産性を向上させることができる。
【0119】
以上から明らかなように、本発明の熱硬化性光反射用樹脂組成物を使用することにより、基板実装後の耐熱着色性等の信頼性に優れる光半導体搭載用基板及び光半導体装置、またそれらを効率良く製造する製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明による光半導体搭載用基板の一実施形態を示す図であり、(a)は斜視図、(b)はIb−Ib線に沿った断面図である。
【図2】本発明による光半導体装置の一実施形態を示す図であり、(a)及び(b)はそれぞれ側面断面図である。
【図3】本発明による光半導体装置の一実施形態を示す側面断面図である。
【図4】本発明において離型性を評価する方法を説明するための模式図であって、(a)はせん断離型力測定用金型の構造を模式的に示す側面断面図、(b)は自由エネルギーの測定を行う離型面を模式的に示す側面断面図である。
【符号の説明】
【0121】
100 光半導体素子
101 透明封止樹脂
102 ボンディングワイヤ
103 熱硬化性反射用樹脂(リフレクター)
104 Ni/Agめっき
105 金属配線
106 蛍光体
107 はんだバンプ
110 光半導体素子搭載用基板
200 光半導体素子搭載領域
300 LED素子
301 ワイヤボンド
302 透明封止樹脂
303 リフレクター
304 リード
305 蛍光体
306 ダイボンド材
307 メタル基板
400 せん断離型力測定用金型
410 上金型
412 樹脂注入口
414 凹部
416 下金型
420 ステンレス板
420a ステンレス板の離型面(測定面)
430 成形品
430a 成形品の離型面(測定面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化触媒、(D)無機充填剤、(E)白色顔料、(F)添加剤及び(G)離型剤を含む熱硬化性光反射用樹脂組成物であって、前記樹脂組成物をトランスファー成形して成形金型から離型することで得られる成形品の離型面における表面自由エネルギーが30mJ/m以下であり、前記樹脂組成物の硬化後の光波長400nmにおける光拡散反射率が80%以上であることを特徴とする熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【請求項2】
前記離型後の前記成形金型の離型面における表面自由エネルギーが30mJ/m以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【請求項3】
前記トランスファー成形におけるせん断離型力が10ショット以内に200KPa以下になることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【請求項4】
前記(G)離型剤が、下記一般式(1-1)に示す構造を有する金属石鹸を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【化1】

(式中、
は、炭素数3〜50のアルキル基、アリール基、アルコキシ基又はエポキシ基を有する1価の有機基、炭素数3〜50のカルボキシル基を有する1価の有機基、及び炭素数3〜500のポリアルキレンエーテル基から選ばれる置換基であり、
は、第3周期の金属元素、IIA族のアルカリ土類金属元素、IVB族、IIB族、VIII族、IB族、IIIA族、IIIB、及びIVA族に属する金属元素から選ばれる金属元素であり、
qは、1〜4の整数である)
【請求項5】
前記一般式(1-1)において、Mが、マグネシウム、カルシウム、バリウム、アルミニウム、スズ、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛から選ばれる金属元素であることを特徴とする請求項4に記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【請求項6】
前記一般式(1-1)において、Rが、炭素数10〜50のアルキル基であることを特徴とする請求項4又は5に記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【請求項7】
前記金属石鹸が、ステアリン酸亜鉛又はステアリン酸アルミニウムであることを特徴とする請求項4に記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【請求項8】
前記(F)添加剤が、下記一般式(I)及び(II)で示される構造ユニットを有する化合物を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【化2】

(式中、Rは、炭素数1〜10のアルキレン基である)
【化3】

(式中、RおよびRは、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、エポキシ基を有する1価の有機基、炭素数1〜10のカルボキシル基を有する1価の有機基又は炭素数3〜500のポリアルキレンエーテル基である)
【請求項9】
前記化合物の数平均分子量Mnが、2000〜20000であることを特徴とする請求項8に記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【請求項10】
前記化合物の分散度(Mw/Mn)が、1〜3であることを特徴とする請求項8又は9に記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【請求項11】
前記化合物において、前記式(I)で示される構造ユニットと前記式(II)で示される構造ユニットとの重量比(I)/(II)が、3/7〜7/3であることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【請求項12】
前記(A)エポキシ樹脂100重量部に対して、前記(F)添加剤として使用する前記化合物の配合量が1〜50重量部であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【請求項13】
前記化合物が、前記式(I)−(II)−(I)で示されるトリブロック共重合体であることを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【請求項14】
前記トリブロック共重合体が、下式(III)で示される化合物であることを特徴とする請求項13に記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【化4】

(式中、lは1〜200の整数であり、m+mは2〜400の整数であり、Rは、炭素数1〜10のアルキレン基であり、RおよびRは、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、エポキシ基を有する1価の有機基、炭素数1〜10のカルボキシル基を有する1価の有機基及び炭素数3〜500のポリアルキレンエーテル基から選ばれ、Rは炭素数1〜10の2価の炭化水素基である)
【請求項15】
前記(G)離型剤及び前記(F)添加剤の少なくとも一方が、前記(A)エポキシ樹脂の一部又は全量と予備混合されることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【請求項16】
前記(D)無機充填剤が、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、及び炭酸バリウムからなる群の中から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【請求項17】
前記(E)白色顔料が、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、及び無機中空粒子からなる群の中から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【請求項18】
前記(E)白色顔料の中心粒径が、0.1〜50μmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【請求項19】
前記(D)無機充填剤と前記(E)白色顔料との合計配合量が、樹脂組成物全体に対して、10体積%〜85体積%の範囲であることを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【請求項20】
光半導体素子搭載領域となる凹部が1つ以上形成されている光半導体素子搭載用基板であって、少なくとも前記凹部の内周側面が請求項1〜19のいずれかに記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物から構成されていることを特徴とする光半導体素子搭載用基板。
【請求項21】
光半導体素子搭載領域となる凹部が1つ以上形成されている光半導体素子搭載用基板の製造方法であって、少なくとも前記凹部の内周側面を請求項1〜19のいずれかに記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物を成形加工することにより形成することを特徴とする光半導体搭載用基板の製造方法。
【請求項22】
請求項20に記載の光半導体素子搭載用基板と、前記基板における前記凹部底面に搭載された光半導体素子と、前記光半導体素子を覆うように前記凹部内に形成された蛍光体含有透明封止樹脂層とを少なくとも備えることを特徴とする光半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−149845(P2009−149845A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246255(P2008−246255)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】