説明

熱硬化性樹脂組成物、これを用いた光半導体素子搭載用基板及びその製造方法並びに光半導体装置

【課題】硬化後の可視光から近紫外光の反射率が高く、光反射用部材を形成するための熱硬化性樹脂組成物において、貯蔵安定性の更なる改善を図ること。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(C)硬化触媒を含有する熱硬化性樹脂組成物。硬化触媒が、下記一般式(1)で表されるオニウム塩を含む。
【化1】


[式(1)中、Xは、脂肪族4級ホスホニウムイオン等から選ばれるカチオンを示し、Yは、テトラフルオロホウ酸イオン等から選ばれるアニオンを示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光反射部材を形成するために用いられる熱硬化性樹脂組成物、これを用いた光半導体素子搭載用基板及びその製造方法並びに光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、光半導体装置は、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)などの光半導体素子と蛍光体を組み合わせて構成される。光半導体装置は高エネルギー効率、長寿命などの利点を有することから、近年、屋外用ディスプレイ、携帯液晶バックライト、車載用途などにおいてその需要が拡大している。
【0003】
光半導体素子搭載用基板を構成する光反射部材は、硬化後の光反射特性に優れた熱硬化性樹脂組成物によって形成することができる。光反射部材は、光反射とともに、電極間の絶縁維持、支持体等の機能を兼ね備える場合が多い。
【0004】
ところで、光半導体装置の用途拡大に対応して高輝度化が進むのに伴って、LEDの発熱量増大によるジャンクション温度の上昇又は直接的な光エネルギーの増大に起因する材料の熱劣化及び光劣化の問題が顕在化する傾向にある。
【0005】
そこで、例えば特許文献1には、エポキシ樹脂及び硬化剤を含有し、耐熱試験後の光反射特性に優れる熱硬化性樹脂組成物及びこれを用いた光半導体素子搭載用基板が開示されている。
【特許文献1】特開2006−140207号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、光反射部材を形成するために用いられる従来の熱硬化性樹脂組成物は、光学特性やトランスファー成形性の点ではある程度優れたものもあるものの、貯蔵安定性については必ずしも十分ではなかった。例えば、保管時に吸湿して硬化性が著しく低下したり、保管時の熱硬化反応の進行により、当該樹脂組成物が流動性を失うに至らないまでも、トランスファー成形のために金型内に溶融した樹脂組成物を注入する際の溶融粘度が上昇して、所定の形状を得るために必要な樹脂流動距離が著しく不足してしまったりする場合があった。そこで、実用に供されるにあたって、熱硬化性樹脂組成物の品質や保管条件を厳密に管理しなければならないという問題があった
【0007】
本発明は係る事情に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、硬化後の可視光から近紫外光の反射率が高く、光反射用部材を形成するための熱硬化性樹脂組成物において、貯蔵安定性の更なる改善を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(C)硬化触媒を含有する熱硬化性樹脂組成物に関する。硬化触媒は、下記一般式(1)で表されるオニウム塩を含む。本発明に係る熱硬化性樹脂組成物の硬化後の波長800nm〜350nmにおける光反射率は70%以上である。
【0009】
【化1】

【0010】
式(1)中、Xは、脂肪族4級ホスホニウムイオン、芳香族4級ホスホニウムイオン、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデカン−7−エンのオニウムイオン及びイミダゾール誘導体のオニウムイオンから選ばれるカチオンを示し、Yは、テトラフルオロホウ酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ビストリフルオロメチルスルホニルイミド酸イオン、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)炭素酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ハロゲン化酢酸イオン、カルボン酸イオン及びハロゲンイオンから選ばれるアニオンを示す。
【0011】
上記本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、十分に優れた貯蔵安定性を有する。
【0012】
オニウム塩は、下記一般式(2)で表されるホスホニウム塩であることが特に好ましい。これにより、溶融混錬時の安定性が更に向上するとともに、より優れた成形性が得られる。
【0013】
【化2】

【0014】
式(2)中、R、R、R及びRはそれぞれ独立にアリール基、アラルキル基又は炭素原子数1〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を示し、アリール基及びアラルキル基はヒドロキシ基又はアルコキシ基で置換されていてもよい。
【0015】
硬化触媒は、25℃〜250℃において固体の塩であることが好ましい。
【0016】
硬化触媒の含有率が、エポキシ樹脂及び硬化剤の合計量に対して0.001質量%〜5質量%であることが好ましい。
【0017】
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、下記一般式(3)又は(4)で表される金属化合物を更に含有していてもよい。
【0018】
【化3】

【0019】
式(3)中、Mは亜鉛、チタン、アルミニウム、バリウム、ホウ素、ケイ素及びジルコニウムから選ばれる金属又は半金属元素を示し、Rは、置換基を有していてもよい炭素数2〜50のアシレート基、置換基を有していてもよい炭素数2〜50のアルコキシ基、又はキレート基を示し、mはMの結合価数を示し、同一分子中の複数のRは同一でも異なっていてもよい。
【0020】
【化4】

【0021】
式(4)中、nは正の整数を示し、Rは、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、置換基を有していてもよいエチル基、置換基を有していてもよいプロピル基、置換基を有していてもよいイソプロピル基、置換基を有していてもよいフェニル基又は置換基を有していてもよいグリシドキシプロピル基を示し、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルコキシ基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、フェニル基、グリシドキシプロピル基、3−アミノプロピル基、アミノフェニル基、アミノフェノキシプロピル基、キレート基、又はアシレート基を示し、同一分子中の複数のR及びRは同一でも異なっていてもよい。
【0022】
これら金属化合物の含有率は、エポキシ樹脂及び硬化剤の合計量に対して0.001質量%〜5質量%であることが好ましい。
【0023】
エポキシ樹脂が2以上のエポキシ基を有する化合物であり、硬化剤が酸無水物基を有する化合物であってもよい。
【0024】
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、(E)アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム及び無機中空粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種の白色顔料を更に含有することが好ましい。白色顔料の中心粒径は好ましくは0.1μm〜50μmである。白色顔料の含有率は、当該熱硬化性樹脂組成物全体に対して10体積%〜85体積%であることが好ましい。
【0025】
別の側面において、本発明は、底面及び内周側面から構成される凹部を有するとともに、該内周側面を形成する樹脂成形品を有し、該底面が光半導体素子搭載領域である光半導体素子搭載用基板に関する。本発明に係る光半導体素子搭載用基板において、前記樹脂成形品は、上記本発明に係る熱硬化性樹脂組成物から形成することのできるものである。
【0026】
更に別の側面において、本発明は、底面及び内周側面から構成される凹部を有するとともに、該内周側面を形成する樹脂成形品を有し、該底面が光半導体素子搭載領域である光半導体素子搭載用基板の製造方法に関する。本発明に係る製造方法は、上記本発明に係る熱硬化性樹脂組成物をトランスファー成形することにより前記樹脂成形品を形成する工程を備える。
【0027】
更に別の側面において、本発明は光半導体装置に関する。本発明に係る光半導体装置は、上記本発明に係る光半導体素子搭載用基板と、当該光半導体素子搭載用基板の光半導体素子搭載領域に搭載された光半導体素子と、光半導体素子を当該光半導体素子搭載用基板の凹部内で覆う封止樹脂層と、を備える。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、硬化後の可視光から近紫外光の反射率が高く、十分に優れた貯蔵安定性を有する、光反射用部材を形成するための熱硬化性樹脂組成物が提供される。また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、硬化後に着色し難く、高い温度環境で使用しても黄変色等の劣化が少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0030】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤及び硬化触媒を含有し、硬化後の可視光から近紫外光の波長領域における反射率が高く、光反射部材を形成するために用いられる。この熱硬化性樹脂組成物は、これらの混合物を、その流動性を維持しながら30℃〜150℃で連続的に溶融混練する工程を備える方法によって得ることのできる混錬物である。硬化反応を実質的に進行させることなく混合物を溶融混錬することが好ましい。
【0031】
熱硬化性樹脂組成物の120℃におけるゲルタイムは2000秒〜100000秒であることが好ましい。この程度のゲルタイムを有する熱硬化性樹脂組成物であれば、通常、混合物の流動性を維持しながら30℃〜150℃での溶融混錬により得ることが可能である。
【0032】
また、熱硬化性樹脂組成物の180℃におけるゲルタイムは10秒〜2000秒であることが好ましい。これにより、トランスファー成形等の方法により、熱硬化性樹脂組成物の硬化物である樹脂成形品を良好な成形性で形成することができる。
【0033】
これらゲルタイムは、例えば、JSR型キュラストメータを用いる方法、又は、攪拌棒で混ぜながら熱硬化性樹脂組成物をホットプレート上で所定の温度に加熱し、樹脂組成物が流動性を失うまで時間をゲルタイムとして測定する方法によって測定することができる。後述の実施例では後者を選択した。
【0034】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、優れた貯蔵安定性を有する。貯蔵安定性とは、例えば熱硬化性樹脂組成物を製造した後、−5℃以上10℃以下の環境下に所定時間保管されたときに、スパイラルフローの初期値からの変動が小さいことであると言い換えることができる。スパイラルフローはトランスファー成形時の流動性を評価する指標として用いることができる。
【0035】
スパイラルフローの初期値に対する保持率は、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは70%以上である。例えば、熱硬化性樹脂組成物を溶融混錬によって製造した後、720時間、10℃以下の環境下で720時間に保管したときに、スパイラルフローの初期値(製造直後の値)に対する保持率が50%未満であると、光半導体素子搭載用基板の凹部を形成するための金型中に、溶融粘度の上昇によって熱硬化性樹脂組成物が流入できなくなり、光半導体素子搭載用基板の製造が困難となる傾向がある。スパイラルフローの保持率が初期値に対して70%を超えると、製造後の長期保管がより容易になるため、特に粘度上昇にともなう樹脂組成物の廃棄によるロスが低減でき、実用上優れている。
【0036】
熱硬化性樹脂組成物のスパイラルフローは、特に制限はないが、成形温度100℃〜200℃、成形圧力0.5〜20MPa、60〜120秒の条件で50cm以上であることが好ましく、80cm以上であることがより好ましく、100cm以上であることがさらに好ましくい。スパイラルフローが50cm未満であると、光半導体素子搭載用基板の凹部を形成するための金型中に、溶融粘度の上昇によって熱硬化性樹脂組成物が流入できなくなり、光半導体素子搭載用基板の製造が困難となる傾向がある。スパイラルフローが100cmを超えると、成形用金型の設計における自由度が高く、一度の成形で複数個の光半導体素子搭載用基板の製造することが容易になり、特に優れた生産性が得られる。
【0037】
熱硬化性樹脂組成物を構成するエポキシ樹脂及び硬化剤として、それぞれ複数種類用いることができる。
【0038】
エポキシ樹脂は、電子部品封止用エポキシ樹脂成形材料において一般に使用されている、2以上のエポキシ基を有するものであってもよい。例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂及びオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂をはじめとする、フェノール類とアルデヒド類とから形成されるノボラック樹脂をエポキシ化したノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS及びアルキル置換ビスフェノール等のジグリシジルエーテル、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、並びに、オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂及び脂環族エポキシ樹脂から1種又は複数種のエポキシ樹脂が選択される。
【0039】
これらのうち比較的着色の少ないものが好ましい。具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジグリシジルイソシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレート、並びに、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸から選ばれるジカルボン酸から誘導されるジカルボン酸ジグリシジルエステルが好ましい。同様の観点から、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ナジック酸及びメチルナジック酸から選ばれるジカルボン酸のジグリシジルエステル、並びに、芳香環が水素化された脂環式構造を有する核水素化トリメリット酸又は核水素化ピロメリット酸のグリシジルエステルも好ましい。
【0040】
また、シラン化合物を有機溶媒、有機塩基及び水の存在下に加熱して、加水分解縮合させることにより得られる、主鎖としてのシリコーン骨格とエポキシ基とを有するポリオルガノシロキサンも好ましい。
【0041】
硬化剤は、電子部品封止用エポキシ樹脂成形材料で一般に使用されているものであってよく、エポキシ樹脂と反応して硬化物を形成可能なものであれば、特に制限なく用いることができるが、比較的着色のない硬化剤が好ましい。例えば、酸無水物系硬化剤、イソシアヌル酸誘導体、及びフェノール系硬化剤が好適である。
【0042】
酸無水物系硬化剤としては、酸無水物基を有する化合物が用いられる。酸無水物系硬化剤は、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、無水グルタル酸、無水ジメチルグルタル酸、無水ジエチルグルタル酸、無水コハク酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸及びメチルテトラヒドロ無水フタル酸から選ばれる。これらは単独で用いても2種類以上併用してもよい。
【0043】
イソシアヌル酸誘導体は、例えば、1,3,5−トリス(1−カルボキシメチル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート及び1,3−ビス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレートから選ばれる。これらは単独で用いても2種類以上併用してもよい。
【0044】
これらのなかでも、硬化剤は、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水グルタル酸、無水ジメチルグルタル酸、無水ジエチルグルタル酸及び1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレートからなる群より選ばれる1種以上であることが特に好ましい。
【0045】
硬化剤の分子量は100〜400程度が好ましい。また、無色又は淡黄色の硬化剤が好ましい。
【0046】
硬化剤は、ポリイミド樹脂の原料として一般的に使用される酸無水物を含んでもよい。例えば、無水トリメリット酸及び無水ピロメリット酸のような、芳香環を有する酸無水物の芳香環の不飽和結合のすべてを水素化させた水素化無水トリメリット酸及び水素化無水ピロメリット酸も硬化剤として好適である。
【0047】
熱硬化性樹脂組成物において、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して、当該エポキシ基と反応する硬化剤中の活性基(例えば酸無水物基又は水酸基)の比率が0.5〜0.9当量であることが好ましく、0.7〜0.8当量であることがより好ましい。活性基が0.5当量未満であると、熱硬化性樹脂組成物(エポキシ樹脂組成物)の硬化速度が小さくなる傾向がある。また、得られる硬化体のガラス転移温度が低くなったり、充分な弾性率が得られなくなったりする場合もある。一方、上記活性基の比率が0.9当量を超えると硬化後の樹脂成形品の強度が低下する傾向がある。
【0048】
硬化触媒は、好ましくは、25℃〜250℃において固体(好ましくは塩)である。言い換えると、硬化触媒は25℃〜250℃の融点を有することが好ましい。硬化触媒が混練装置内で固体であると、エポキシ樹脂と硬化剤の反応効率が低下するため、混練装置内での増粘又は硬化を特に効果的に防ぐことができる。硬化触媒の融点が25℃未満であると、溶融混練の際に硬化触媒がエポキシ樹脂や硬化剤と相溶し、反応効率が向上して混練装置内での熱硬化性樹脂組成物の増粘又は硬化を招きやすくなる傾向がある。硬化触媒の融点が250℃を超えると、熱硬化性樹脂組成物をトランスファー成形により成形するときに、硬化時間が長くなる傾向がある。硬化時間が長くなると、光半導体素子搭載用基板の製造工程が長時間化してしまう場合がある。同様の観点から、硬化触媒はより好ましくは50℃〜250℃、更に好ましくは80℃〜230℃の温度域で固体である。言い換えると、硬化触媒の融点はより好ましくは50℃〜250℃、更に好ましくは80℃〜230℃である。
【0049】
硬化触媒は、下記一般式(1)で表されるオニウム塩を含むことが好ましい。これらオニウム塩を用いることにより、優れた貯蔵安定性が得られる。
【0050】
【化5】

【0051】
式(1)中、Xは、脂肪族4級ホスホニウムイオン、芳香族4級ホスホニウムイオン、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデカン−7−エンのオニウムイオン及びイミダゾール誘導体のオニウムイオンから選ばれるカチオンを示し、Yは、テトラフルオロホウ酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ビストリフルオロメチルスルホニルイミド酸イオン、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)炭素酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、カルボン酸イオン及びハロゲンイオンから選ばれるアニオンを示す。
【0052】
上記オニウム塩は、下記一般式(2)で表されるホスホニウム塩であることが特に好ましい。
【0053】
【化6】

【0054】
式(2)中、R、R、R及びRはそれぞれ独立にアリール基、アラルキル基又は炭素原子数1〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を示し、アリール基及びアラルキル基はヒドロキシ基又はアルコキシ基で置換されていてもよい。
【0055】
硬化触媒の含有率は、エポキシ樹脂及び硬化剤の合計量に対して0.001質量%〜5質量%であることが好ましい。
【0056】
以上挙げた化合物の中でも、硬化触媒は、テトラエチルホスホニウム4フッ化ホウ素、テトラn−ブチルホスホニウム4フッ化ホウ素、トリメチルn−ドデシルホスホニウム4フッ化ホウ素、トリメチルn−ヘキサデシルホスホニウム4フッ化ホウ素、トリエチルn−ヘキサデシルホスホニウム4フッ化ホウ素、トリエチルn−ドデシルホスホニウム4フッ化ホウ素、トリブチルn−オクチルホスホニウム4フッ化ホウ素、トリブチルn−デシルホスホニウム4フッ化ホウ素、トリブチルn−ドデシルホスホニウム4フッ化ホウ素、トリブチルn−ヘキサデシルホスホニウム4フッ化ホウ素、トリフェニルn−ブチルホスホニウム4フッ化ホウ素、トリフェニルn−ドデシルホスホニウム4フッ化ホウ素、トリフェニルn−ヘキサデシルホスホニウム4フッ化ホウ素、テトラn−オクチルホスホニウム4フッ化ホウ素、トリオクチルn−ドデシルホスホニウム4フッ化ホウ素、トリオクチルn−ヘキサデシルホスホニウム4フッ化ホウ素、トリプロピルn−ドデシルホスホニウム4 フッ化ホウ素、トリプロピルn−ヘキサデシルホスホニウム4フッ化ホウ素、トリス(ヒドロキシプロピル)n−オクチルホスホニウム4フッ化ホウ素、トリス(ヒドロキシプロピル)n−ドデシルホスホニウム4フッ化ホウ素、トリス(ヒドロキシプロピル)n−テトラデシルホスホニウム4フッ化ホウ素及びトリス(ヒドロキシプロピル)n−ヘキサデシルホスホニウム4フッ化ホウ素からなる群より選ばれる少なくとも1種のホスホニウム塩を含むことが好ましい。さらにこれらの中でも、硬化後の着色性が少なく、さらに貯蔵安定性にも優れる点から、テトラ−n−ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート及びテトラ−n−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレートが好ましい。
【0057】
硬化触媒は上記のようなオニウム塩を含むことが好ましいが、その場合にこれら以外のエポキシ樹脂用硬化触媒を更に含んでいてもよい。その他の硬化触媒としては、例えば、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデカン−7−エン、トリエチレンジアミン、トリ−2,4,6−ジメチルアミノメチルフェノール等の3級アミン類、2−エチル−4メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート等の4級ホスホニウム塩、4級アンモニウム塩、有機金属塩類及びこれらの誘導体が挙げられる。これらは単独で使用してもよく又は併用してもよい。これらの硬化促進剤の中では、3級アミン類及びイミダゾール類が好ましい。
【0058】
熱硬化性樹脂組成物における硬化触媒の含有率は、エポキシ樹脂及び硬化剤の合計量に対して0.001質量%〜5質量%であることが好ましい。硬化触媒の含有率が0.001質量%未満であると、硬化促進効果が小さくなる傾向があり、5質量%を超えると、得られる樹脂成形体に変色が見られる場合がある。同様の観点から、硬化触媒の含有率は0.01〜3.0質量%であることがより好ましい。
【0059】
熱硬化性樹脂組成物は、金属アルコキサイド、金属キレート及び金属アシレートからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物を更に含有することが好ましい。これら金属化合物によって硬化触媒を活性化させることができる。この金属化合物は、好ましくは、下記一般式(3)又は(4)で表される化合物である。
【0060】
【化7】

【0061】
式(3)中、Mは亜鉛、チタン、アルミニウム、バリウム、ホウ素、ケイ素及びジルコニウムから選ばれる金属又は半金属元素を示し、Rは、置換基を有していてもよい炭素数2〜50のアシレート基、置換基を有していてもよい炭素数2〜50のアルコキシ基、又はキレート基を示し、mはMの結合価数を示し、同一分子中の複数のRは同一でも異なっていてもよい。
【0062】
【化8】

【0063】
式(4)中、nは正の整数を示し、Rは、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、置換基を有していてもよいエチル基、置換基を有していてもよいプロピル基、置換基を有していてもよいイソプロピル基、置換基を有していてもよいフェニル基又は置換基を有していてもよいグリシドキシプロピル基を示し、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルコキシ基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、フェニル基、グリシドキシプロピル基、3−アミノプロピル基、アミノフェニル基、アミノフェノキシプロピル基、キレート基、又はアシレート基を示し、同一分子中の複数のR及びRは同一でも異なっていてもよい。
【0064】
これら金属化合物の含有率は、エポキシ樹脂及び硬化剤の合計量に対して0.001質量%〜5質量%であることが好ましい。金属化合物の含有率が0.001質量%未満であると、硬化促進効果が小さくなる傾向があり、5.0質量%を超えると硬化阻害が起きる場合や、トランスファー成形時の金型からの離型性が低下する場合がある。同様の観点から、金属化合物の含有率は0.001質量%〜3.0質量%であることがより好ましい。
【0065】
熱硬化性樹脂組成物は、高い反射率を達成するために、白色顔料を含有することが好ましい。白色顔料は、公知のものを特に制限なく使用することができる。白色顔料は、例えば、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン及び酸化ジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である。白色顔料は無機中空粒子であってもよい。 無機中空粒子は、例えば、珪酸ソーダガラス、アルミ珪酸ガラス、硼珪酸ソーダガラス又はシラスを含む。白色顔料の中心粒径は0.1〜50μmの範囲にあることが好ましい。この中心粒径が0.1μm未満であると粒子が凝集しやすいために分散性が低下する傾向があり、50μmを超えると硬化物の反射特性が低下する可能性がある。
【0066】
熱硬化性樹脂組成物は、白色顔料以外の無機充填材を更に含有していてもよい。無機充填剤の配合によって成形性を調整することができる。無機充填材は、特に限定されないが、例えば、シリカ、酸化アンチモン、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム及び炭酸バリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である。熱伝導性、光反射特性、成型性及び難燃性の点からは、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムから選ばれる2種類以上の組み合わせが好ましい。
【0067】
無機充填材の中心粒径は、特に限定されないが、白色顔料とのパッキングが効率良くなるように1〜100μmの範囲にあることが好ましい。
【0068】
樹脂材料と白色顔料及び無機充填剤との濡れ性向上のために、カップリング剤の利用が有効である。白色顔料及び無機充填剤を予めカップリング剤で処理しておくことが好ましい。
【0069】
白色顔料及びこれ以外の無機充填材の合計量は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、10体積%〜85体積%の範囲にあることが好ましい、この量が10体積%未満であると硬化物の光反射特性が低下する傾向があり、85体積%を超えると樹脂組成物の成型性が低下する傾向がある。樹脂組成物の成形性が低下すると基板の作製が困難となる。
【0070】
熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂及び硬化剤と無機充填材及び白色顔料との接着性を向上させる観点から、カップリング剤を含有することが好ましい。カップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、シランカップリング剤及びチタネート系カップリング剤等がある。シランカップリング剤としては、エポキシシラン系、アミノシラン系、カチオニックシラン系、ビニルシラン系、アクリルシラン系、メルカプトシラン系及びこれらの組み合わせがある。任意の付着量で多々用いられる。カップリング剤の量、種類及び処理条件は特に限定されない。カップリング剤の配合量は熱硬化性樹脂組成物全体に対して5質量%以下が好ましい。
【0071】
熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、酸化防止剤、離型剤及びイオン捕捉剤等の添加剤を含有してもよい。
【0072】
熱硬化前の熱硬化性樹脂組成物は、加圧成形により室温(15〜30℃)においてタブレットを形成可能であることが好ましい。加圧成形は、例えば、室温(25℃)において、5〜50MPa、1〜5秒程度の条件下で成形を行うことができればよい。
【0073】
熱硬化性樹脂組成物の熱硬化によって形成される硬化物の光反射率は、波長350nm〜800nmにおいて好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。この光反射率が70%未満であると、光反射部材による光半導体装置の輝度向上の効果が低下する傾向がある。
【0074】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、上記各成分の混合物を溶融混錬し、混錬物を冷却及び粉砕する方法によって製造することができる。溶融混錬の手段や条件等は特に限定されない。加熱、溶融、混合及び分散を工程を行なうことが可能な混錬装置が用いることができる。混錬装置は、例えば押出機、ニーダー、ロール及びエクストルーダーから選ばれる。この混錬装置に原材料を一定量供給しながら、混合物を混錬装置内で連続的に溶融混練する。
【0075】
溶融混練工程では、エポキシ樹脂、硬化剤及び硬化触媒を主として含む熱硬化樹脂成分を熱エネルギーによって融解し、熱硬化反応が実質的に進行しないように温度条件を管理しながら混合物が混錬される。溶融混練の条件は、成分の種類や配合量により適宜決定すればよく、特に制限はない。溶融混錬の条件は、第1に各種原材料の分散性向上、第2に加熱、溶融した樹脂成分と無機充填剤との濡れ性向上及び第3に硬化反応の制御に留意して設定される。
【0076】
溶融混錬の温度及び時間は、好ましくは30℃〜150℃で2〜40分間、より好ましくは60℃〜140℃で2〜20分間である。
【0077】
溶融混練の温度が30℃未満であると、各成分を溶融混練させることが困難であり、分散性も低下する傾向にあり、150℃を超えると、樹脂組成物の高分子量化が進行し、樹脂組成物が装置内で硬化してしまう可能性がある。
【0078】
また、溶融混練の時間が2分未満であると、トランスファー成形時に樹脂バリが発生しやすくなる傾向がある。樹脂バリが発生すると、光半導体素子搭載領域の開口部に樹脂汚れが発生し、光半導体素子を搭載する際の障害になったり、光半導体素子と金属配線とをボンディングワイヤなど公知の方法により電気的に接続する際の障害になったりする可能性がある。一方、混練時間の時間が40分を超えると、樹脂組成物の高分子化が装置内で進行する可能性がある。
【0079】
原材料として用いられるエポキシ樹脂、硬化剤及び硬化触媒等の原材料は、粉末状であることが好ましい。この場合、必要に応じて、溶融混錬の前に粉末状の各原材料を予備混合(乾式混合)して混合粉を得てもよい。粉末状の各原材料を、混合機能の高い混合機、例えば、高速羽攪拌混合機、ヘンシェルミキサ、レディゲミキサを使用して混合することが分散性向上に有効である。混合機は、高分散性を得られるものであればよく、これらに制限されるものではない。
【0080】
粉末状の原材料を用いる場合、それらの粒度を細かくすることにより、高い分散性で各原材料が混合された混合物を容易に得ることができる。場合によっては、予め微粉砕をして原材料の粒度を小さくしてもよい。
【0081】
混合の際、加熱により樹脂材料(エポキシ樹脂、硬化剤及び硬化触媒等)を溶融状態としながらこれらを無機充填剤と強力に混合することにより、樹脂材料と無機充填剤との良好な濡れ性を得ることができる。例えば、樹脂材料を軟化点付近まで加熱された樹脂材料を無機充填剤と混合し、圧縮、摩擦、剪断力等を与えて充填剤表面に樹脂材料がコーティングされた状態とするのがよい。各種原材料を配合し混合した後、加熱機構の付属した高速羽攪拌混合機や、ヘンシェルミキサ、レディゲミキサに混合物を投入して混合状態としながら、材料温度を樹脂材料の軟化点付近に加熱してやれば、混練と同程度の材料の均一分散と無機充填剤との濡れを得ることが可能である。
【0082】
この際、予め硬化触媒を分離しておくことにより、加熱されたときの硬化反応を抑制し、長時間の混合を行ったときの過反応によるゲル化を防止することができる。
【0083】
粉末状の原材料の加熱方法として、高周波加熱方法を採用することにより、粉末状の原材料の内部も同時に均一に素早く加熱することができるようになる。
【0084】
予備混合後の混合物を、高周波加熱装置を利用して加熱してもよい。この場合は、より濡れ性を向上させるために、高周波加熱処理後の混合物に対して機械的に圧縮力等を与えることが望ましい。具体的には圧縮ロールを使用するが、同様な効果を得ることができるものであれば、他の機械設備を使用しても差し支えない。
【0085】
予め硬化触媒が混合されている場合、特に硬化反応の進行の抑制に留意が必要である。このため、混合加熱後の製品特性を満足した状態で混合物を取り出したならば、直ちに、冷却を行い混合物の温度を下げて硬化反応の進行を防止することが重要である。混合物の温度を下げる方法としては、冷却ロールを用いる方法がある。
【0086】
エポキシ樹脂の硬化反応の制御は、前述の混合加熱時の材料温度と加熱時間及び硬化促進剤の種類と使用量の組み合わせに大きく影響される。各種の熱硬化性光反射用樹脂組成物により組成が異なり、さらに要求される流動性、成形性等も変わるため一概に論ずることはできないが、諸特性を満足するように混合物加熱時の材料温度と時間を調整してやればよい。
【0087】
図1は光半導体装置の一実施形態を示す斜視図であり、図2は図1のII−II線に沿う断面図である。図1、2に示す光半導体装置1は、底面S1及び内周側面S2から構成される凹部11を有する光半導体素子搭載用基板10と、光半導体素子搭載領域である底面S1に搭載された光半導体素子20と、光半導体素子20を凹部11内で覆う封止樹脂層30とから主として構成される。
【0088】
光半導体素子搭載用基板10は、板状の金属配線12と、金属配線12上に設けられたNi/Agめっき13及びリフレクター15を有する。Ni/Agめっき13は底面S1を構成している。リフレクター15は、底面S1(Ni/Agめっき13)が露出する開口を形成する内周側面S2を有する。リフレクター15は、上述の実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物を成形して形成される樹脂成形品である。
【0089】
光半導体素子20は、ボンディングワイヤ21を介して金属配線12及びNi/Agめっき13と電気的に接続されている。金属配線12は、光半導体素子20の底部に接している部分とボンディングワイヤ21が接続されている部分とに分割されている。これら二つの部分の間には絶縁層16が介在している。絶縁層16は、上述の実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物によって形成されていてもよい。
【0090】
封止樹脂層30は、透明樹脂層31と、透明樹脂層31内に分散した波長変換手段である蛍光体32とを含む。封止樹脂層30は、蛍光体を含有する公知の透明封止樹脂組成物を用いて形成することができる。
【0091】
光半導体装置1は、例えば、上述の実施形態に係る光反射用熱硬化性樹脂組成物をトランスファー成形により成形して金属配線12上にリフレクター15としての樹脂成形品を形成する工程と、金属配線12上に電気めっきによりNi/Agめっき13を形成する工程と、光半導体素子20を半導体搭載領域(底面S1)に搭載する工程と、封止樹脂層30を形成する工程とを備える方法によって製造することができる。トランスファー成形の後、形成された樹脂成形品をアフターキュアすることなく、光半導体素子20の搭載等を行うことができる。
【0092】
金属配線12は、例えば、金属箔からの打ち抜き及びエッチング等の公知の方法により形成することができる。金属配線12を所定形状の金型に配置し、金型の樹脂注入口から熱硬化性樹脂組成物を注入し、これを好ましくは金型温度170〜200℃、成形圧力0.5〜20MPaで60〜120秒の条件で熱硬化させた後、金型を外す方法により、リフレクター15として樹脂成形品が得ることができる。
【0093】
本発明に係る光半導体素子搭載用基板及び光半導体素子は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形が可能である。例えば、図3の断面図に示されるように、光半導体素子20がはんだバンプ22を介して金属配線12及びNi/Agめっき13と電気的に接続されていてもよい。また、図4に示されるように、金属配線を用いるのに代えて、リード40を用いてもよい。図4に示す実施形態に係る光半導体装置1においては、光半導体素子(LED素子)20がダイボンド材42によって半導体素子搭載用基板10に接着されている。光半導体素子搭載用基板は2以上の凹部を有していてもよい。
【実施例】
【0094】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0095】
熱硬化性樹脂組成物の作製
(実施例1〜8、参考例1〜8)
表1及び表2に示す配合表に従って各材料を配合し、高速羽攪拌機(カワタ社製、SMP−2)を用い回転数3000min−1で10分間乾式混合した。得られた混合物を、2軸混練押出機(栗本鉄工所社製、KEX−50)を用い、機内最低温度50℃、機内最高温度130℃の条件で溶融混練した。いずれの混合物も、装置内で硬化することなく流動性を維持した状態で溶融混錬することができた。得られた混練物(光反射部材用熱硬化性樹脂組成物)について以下の評価を行った。なお、表中の各成分の配合量の単位は、重量部であり、空欄は配合なしを意味する。
【0096】
熱硬化性樹脂組成物の評価
(光反射性試験)
各熱硬化性樹脂組成物を、成形型温度180℃、成型圧力6.9MPa、キュア時間90秒の条件でトランスファー成型し、その後150℃で2時間ポストキュアすることにより、厚み1.0mmのテストピースとしての樹脂成形品を作製した。このテストピースの波長400nmにおける光反射率を、積分球型分光光度計、V−750型(日本分光株式会社製)を用いて測定した。そして、下記の評価基準に基づいて光反射特性を評価した。評価結果を表1及び表2に示す。
光反射率の評価基準
A:光波長400nmにおいて光反射率80%以上
B:光波長400nmにおいて光反射率70%以上80%未満
C:光波長400nmにおいて光反射率70%未満
【0097】
(ゲルタイム)
120℃又は180℃に設定したホットプレート上で加熱しながら、熱硬化性樹脂組成物1gをステンレス製スパチュラで攪拌し、熱硬化反応が進行して攪拌不可能となるまでに流動性が失われるまでの時間をゲルタイムとして測定した。評価結果を表1及び表2に示す。
【0098】
(スパイラルフロー)
EMMI−1−66の規格に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、熱硬化性樹脂組成物を上記条件で成形し、そのときの流動距離(cm)を求めた。求めた結果を表1及び表2に示す。
【0099】
【表1】

【0100】
【表2】

【0101】
(A)エポキシ樹脂
1:トリグリシジルイソシアヌレート(エポキシ当量100、日産化学社製、商品名TEPIS−S)
(B)硬化剤
2:ヘキサヒドロ無水フタル酸(和光純薬社製)
(C)硬化触媒
3:テトラ−n−ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート(日本化学工業社製、商品名PX−4FB 融点100℃)
4:テトラ−n−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート(日本化学工業社製、商品名PX−4PB 融点230℃)
5:テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート(東京化成工業社製)
6:1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセンテトラフェニルボレート(サンアプロ社製、商品名U−CAT 5002、融点130℃)
7:テトラ−n−ブチルホスホニウム−0,0−ジエチルホスホロジチオエート(日本化学工業社製、商品名PX−4ET、融点25℃以下)
8:テトラ−n−ブチルホスホニウムジメチルホスフェート(日本化学工業社製、商品名PX−4MD、融点25℃以下)
9:テトラ−n−ブチルホスホニウムアセテート、融点25℃以下)
10:テトラ−n−ブチルホスホニウムオクチレート、融点25℃以下)
11:トリフェニルホスフィン(東京化成工業社製、融点50℃)
(カップリング剤)
12:γ−グリシジドキシトリメトキシシラン(東レダウコーニング社製、商品名A−187)
(無機充填剤)
13:溶融シリカ(電気化学工業社製、商品名FB−301)
(白色顔料)
14:中空粒子(住友3M社製、商品名S60−HS)
15:アルミナ(アドマテックス社製、商品名AO−25R)
【0102】
実施例の熱硬化性樹脂組成物は、最高温度130℃の溶融混錬中によって得ることが可能であり、また、その硬化物の光反射特性が十分に優れていた。さらに、実施例の熱硬化性樹脂組成物は、適度なスパイラルフローを維持していることから、トランスファー成形時の流動性にも優れることは明らかである。
【0103】
さらに、表1及び表2に示すように、実施例の熱硬化性樹脂組成物は、光反射特性に優れ、貯蔵安定性にも優れていることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】光半導体装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】光半導体装置の一実施形態を示す断面図である。
【図4】光半導体装置の一実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0105】
1…光半導体装置、10…光半導体素子搭載用基板、11…凹部、12…金属配線、15…リフレクター、16…絶縁層、20…光半導体素子、21…ボンディングワイヤ、22…はんだバンプ、30…封止樹脂層、31…透明樹脂層、32…蛍光体、40…リード、42…ダイボンド材、S1…底面(光半導体素子搭載領域)、S2…内周側面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(C)硬化触媒を含有する熱硬化性樹脂組成物において、
前記硬化触媒が、下記一般式(1)で表されるオニウム塩を含み、
硬化後の波長800nm〜350nmにおける光反射率が70%以上であり、
光反射部材を形成するために用いられる、
熱硬化性樹脂組成物。
【化1】


[式(1)中、
は、脂肪族4級ホスホニウムイオン、芳香族4級ホスホニウムイオン、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデカン−7−エンのオニウムイオン及びイミダゾール誘導体のオニウムイオンから選ばれるカチオンを示し、
は、テトラフルオロホウ酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ビストリフルオロメチルスルホニルイミド酸イオン、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)炭素酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ハロゲン化酢酸イオン、カルボン酸イオン及びハロゲンイオンから選ばれるアニオンを示す。]
【請求項2】
前記オニウム塩が、下記一般式(2)で表されるホスホニウム塩である、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【化2】


[式(2)中、R、R、R及びRはそれぞれ独立にアリール基、アラルキル基又は炭素原子数1〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を示し、前記アリール基及び前記アラルキル基はヒドロキシ基又はアルコキシ基で置換されていてもよい。]
【請求項3】
前記硬化触媒が、25℃〜250℃において固体の塩である、請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記硬化触媒の含有率が、前記エポキシ樹脂及び前記硬化剤の合計量に対して0.001質量%〜5質量%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
下記一般式(3)又は(4)で表される金属化合物を更に含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【化3】


[式(3)中、
Mは亜鉛、チタン、アルミニウム、バリウム、ホウ素、ケイ素及びジルコニウムから選ばれる金属又は半金属元素を示し、
は、置換基を有していてもよい炭素数2〜50のアシレート基、置換基を有していてもよい炭素数2〜50のアルコキシ基、又はキレート基を示し、mはMの結合価数を示し、同一分子中の複数のRは同一でも異なっていてもよい。]
【化4】


[式(4)中、
nは正の整数を示し、
は、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、置換基を有していてもよいエチル基、置換基を有していてもよいプロピル基、置換基を有していてもよいイソプロピル基、置換基を有していてもよいフェニル基又は置換基を有していてもよいグリシドキシプロピル基を示し、
、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルコキシ基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、フェニル基、グリシドキシプロピル基、3−アミノプロピル基、アミノフェニル基、アミノフェノキシプロピル基、キレート基、又はアシレート基を示し、同一分子中の複数のR及びRは同一でも異なっていてもよい。]
【請求項6】
前記金属化合物の含有率が、前記エポキシ樹脂及び前記硬化剤の合計量に対して0.001質量%〜5質量%である、請求項5に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記エポキシ樹脂が2以上のエポキシ基を有する化合物であり、前記硬化剤が酸無水物基を有する化合物である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
(E)アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム及び無機中空粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種の白色顔料を更に含有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
前記白色顔料の中心粒径が0.1μm〜50μmである、請求項8に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
前記白色顔料の含有率が、当該熱硬化性樹脂組成物全体に対して10体積%〜85体積%である、請求項8又は9に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
底面及び内周側面から構成される凹部を有するとともに、該内周側面を形成する樹脂成形品を有し、該底面が光半導体素子搭載領域である光半導体素子搭載用基板であって、
前記樹脂成形品が、請求項1〜10のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物から形成することのできるものである、光半導体素子搭載用基板。
【請求項12】
底面及び内周側面から構成される凹部を有するとともに、該内周側面を形成する樹脂成形品を有し、該底面が光半導体素子搭載領域である光半導体素子搭載用基板の製造方法であって、
請求項1〜10のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物をトランスファー成形することにより前記樹脂成形品を形成する工程を備える、製造方法。
【請求項13】
請求項11に記載の光半導体素子搭載用基板と、
当該光半導体素子搭載用基板の光半導体素子搭載領域に搭載された光半導体素子と、
前記光半導体素子を当該光半導体素子搭載用基板の凹部内で覆う封止樹脂層と、
を備える光半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−47741(P2010−47741A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320024(P2008−320024)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】