説明

異方導電性フィルム及びそれを用いた電子機器

【課題】
本発明によれば、異方導電性フィルム中に有機溶剤をある一定量含有させることにより、保存性を維持しつつ低温速硬化が可能な異方導電性フィルムを提供することができる。
【解決手段】
本願発明は、(A)反応性エラストマー、(B)エポキシ樹脂、(C)潜在性硬化剤、および(D)導電性粒子を必須成分とする異方導電性フィルムであって、当該異方導電性フィルム中の有機溶媒含有量が0.1〜5重量%であることを特徴とする異方導電性フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方導電性フィルム及びそれを用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ(LCD)とテープキャリアパッケージ(TCP)との接続、TCPと印刷回路基板(PCB)との接続等の微細な回路接続の必要性が増大してきている。その接続方法には、接着性樹脂中に導電性粒子を分散させたフィルム状の異方導電性フィルムを使用する方法が用いられている。
【0003】
この方法は、接続したい部材間に異方導電性フィルムのフィルムを挟み加熱加圧することにより、面方向の隣接端子間では電気的絶縁性を保ちつつ、上下端子間では電気的に導通させるものである。
【0004】
異方導電性フィルム中の接着剤樹脂は、熱可塑性樹脂タイプのものと熱硬化性樹脂タイプのものに分類される。最近では、これらのうち、熱可塑性樹脂タイプのものよりも信頼性に優れた熱硬化性樹脂タイプのものが広く用いられつつある(特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開平05−021094
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記背景技術は次の点で課題があった。低温で速硬化性を実現しようとすると保存性が低下し、逆に保存性を向上させると低温で速硬化性が実現できないという課題を生じていた。本発明によれば、保存性を維持しつつ低温速硬化性を実現させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は、(A)反応性エラストマー、(B)エポキシ樹脂、(C)潜在性硬化剤、および(D)導電性粒子を必須成分とする異方導電性フィルムであって、当該異方導電性フィルム中の有機溶媒含有量が0.1〜5重量%であることを特徴とする異方導電性フィルムである。
【発明の効果】
【0008】
従来の異方導電性フィルムは有機溶媒を乾燥工程においてほとんど揮発させて製品化しており、そのフィルム中の有機溶媒量は0.1%未満であった。乾燥条件が若干変動することにより、有機溶媒の量も変動することは知られていたが、それは有機溶媒量が0.1%未満の範囲であった。本願発明のようにある一定量含有させることにより保存性を維持しつつ低温速硬化性を実現させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、(A)反応性エラストマー、(B)エポキシ樹脂、(C)潜在性硬化剤、および(D)導電性粒子を必須成分とする異方導電性フィルムであって、当該異方導電性フィルム中の有機溶媒含有量が0.1〜5重量%であることを特徴とする異方導電性フィルムに関するものである。なお下記は例示であり、本発明は何ら下記に限定されるものではない。以下に本発明の異方導電フィルムの各成分について詳細に説明する。
【0010】
本発明で用いる(A)反応性エラストマーを含むことにより、フィルム形成を確実に行うことができる。反応性とは、異方導電フィルム中の他の樹脂成分と反応する官能基を有することを示す。また反応性エラストマーとすることにより、異方導電性接着剤を確実にフィルム化し、シート状にすることができる。また、硬化後の樹脂の弾性率を下げ接着力を向上させ、接続時の残留応力を小さくすることができる。このため、接続信頼性を向上することができる。
【0011】
反応性エラストマーの材料は、特に限定するものではないが、フィルム形成性があるもの、たとえば、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリブタジエン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−メタクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリ酢酸ビニル樹脂、ナイロン、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体などを用いることができ、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0012】
反応性エラストマーの配合量は特に限定されないが、エポキシ樹脂とマイクロカプセル化イミダゾール誘導体エポキシ化合物の合計100部に対して10部以上300部以下であることが好ましい。配合量が上限値以下であると、異方導電性フィルムの流動性が向上し、接続信頼性が向上する。また、各種被着体との濡れ性が向上し、密着性が向上する。また配合量が下限値以上であると、異方導電性フィルムとした時の製膜性が向上する。また、硬化物の弾性率が高くなるため、各種被着体に対する密着性が向上したり、熱衝撃試験後の接続信頼性が向上したりするメリットがある。
【0013】
また、反応性エラストマーとして、ニトリル基、エポキシ基、水酸基を有する樹脂を用いることができる。このような樹脂として、たとえばアクリルゴムを用いることができる。アクリルゴムとしては、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルまたはアクリロニトリルのうち少なくともひとつをモノマー成分とした重合体または共重合体があげられ、中でもグリシジルエーテル基を含有するグリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレートを含む共重合体系アクリルゴムが好適に用いられる。
【0014】
アクリルゴムは、具体的には、たとえば、下記一般式(1)で示される化合物とすることができる。
【0015】
【化1】

【0016】
ただし、上記一般式(1)において、R1は、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基のいずれかを示し、R2は、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基のいずれかを示す。また、R1とR2とが同じ基であっても異なる基であってもよい。また、上記一般式(1)において、Xは40mol%以上98.5mol%以下、Yは1mol%以上50mol%以下、Zは0.5mol%以上10mol%以下である。また、上記一般式(1)に示したアクリルゴムの分子量は、たとえば、10000以上1500000以下である。上記一般式(1)に示したアクリルゴムを用いることにより、密着性および接続信頼性をさらに向上させることができる。
【0017】
本発明で用いられる(B)エポキシ樹脂は、1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有するものであれば、特に限定されるものではない。たとえば、グリシジルエステル型エポキシ樹脂グリシジルアミン型エポキシ樹脂またはナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂とすることができる。こうすることにより、短時間硬化を確実に得ることができる。また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等を用いてもよい。エポキシ樹脂は、これらに限定されるものではなく、単独でも混合して用いても差し支えない。耐湿信頼性の点から、エポキシ樹脂中のイオン性不純物であるNaイオンやClイオンが極力少ない方が好ましく、硬化性の点からエポキシ当量を、たとえば100g/eq以上500g/eq以下とすることができる。
【0018】
(B)エポキシ樹脂の配合量は、マイクロカプセル化イミダゾール誘導体エポキシ化合物100重量部に対して50重量部以上2000重量部以下であることが好ましい。配合量が上限値以下であると異方導電性フィルムとした時の硬化性が向上する。また、配合量が下限値以上であると耐熱性および耐湿性が向上し、異方導電性フィルムとした時の接続信頼性が向上する。
【0019】
ここで、ナフタレン骨格を有するナフタレン系エポキシ樹脂は、1分子内に少なくとも1個以上のナフタレン環を含んだ骨格を有しており、ナフトール系、ナフタレンジオール系等がある。ナフタレン系エポキシ樹脂を用いることにより、異方導電性フィルムの硬化物のガラス転移温度Tgを向上させることができる。また、硬化物の高温域での線膨張係数を低下させることができる。ナフタレン系エポキシ樹脂の添加量は、異方導電性フィルム中のエポキシ樹脂成分全体に対してたとえば5重量%以上80重量%以下、好ましくは10重量%以上50重量%以下とすることができる。こうすることにより、フィルム形成性や硬化反応性を向上させることができる。
【0020】
本発明で用いる(C)潜在性硬化剤とは、エポキシ樹脂と硬化剤の混合物において、一定温度条件下で特性が変わることなく長時間貯蔵可能で、例えば所定の温度に加熱した場合等に速やかに硬化させる機能をもつような硬化剤のことである。このような潜在性硬化剤はひとつには硬化剤をポリウレタン系、ポリエステル系の高分子物質等で被覆してマイクロカプセル化することによって得られる。この場合には可使時間が延長されるために好ましい。
【0021】
前記硬化剤の具体例としては、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミンの塩、ジシアンジアミド等が挙げられる。これらは、単独または混合して使用することができ、分解促進剤、抑制剤等を混合して用いてもよい。
【0022】
本発明で用いる(D)導電性粒子の組成は限定されるものではない。導電粒子の粒径や材質、配合量は接続したい回路のピッチやパターン、回路端子の厚みや材質等に応じて適宜選択することができる。たとえば、金属粒子や高分子核材に金属被覆をした粒子を用いることができる。
【0023】
金属粒子としては、金、銀、亜鉛、錫、半田、インジウム、パラジウム等の単体もしくは2種以上を組み合わせてもよい。
【0024】
また、高分子核材に金属被覆をした粒子としては、高分子核材に、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体などのポリマーの中から1種あるいは2種以上組み合わせたもの、金属薄膜皮膜に、金、ニッケル、銀、銅、亜鉛、錫、インジウム、パラジウム、アルミニウムなどの中から1種あるいは2種以上組み合わせてよい。
【0025】
金属薄膜皮膜の厚さに特に制限はないが、たとえば0.01μm以上1μm以下とすることができる。金属薄膜皮膜の厚さが薄すぎると異方導電性フィルムとした場合接続が不安定になり、厚すぎると凝集が生じるため、異方導電性フィルムとした場合絶縁不良を起こす可能性がある。また、金属薄膜皮膜は、高分子核材の表面に均一に被覆されていることが好ましい。均一に被覆することにより、皮膜のむらや欠けをなくし、電気的接続性を向上させることができる。
【0026】
本発明で用いる(D)導電性粒子の配合量は、(A)反応性エラストマー、(B)エポキシ樹脂、(C)潜在性硬化剤の合計に対してたとえば0.05体積%以上5体積%以下とすることができる。配合量が上限値以下だと、異方導電性フィルム中の導電性粒子絶対量が適量になるため、被着体接続端子間の絶縁性が向上する。また、配合量が下限値以上だと、異方導電性フィルム中の導電性粒子絶対量が適量となり、被着体接続端子上の導電性粒子が向上し、接続抵抗値が低下する。
【0027】
本発明の異方導電性フィルムには、必要に応じてカップリング剤を適量添加してもよい。カップリング剤を添加することにより、異方導電性フィルムの接着界面の接着性を改質することができる。また、異方導電性フィルムの耐熱性、耐湿性を向上することができる。
【0028】
カップリング剤としては特に限定するものではないが、シランカップリング剤を好適に使用することができ、たとえば、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられるが、1種あるいは2種以上混合してもよい。
【0029】
さらに、本発明に係る異方導電性接着剤には、樹脂の相溶性、安定性、作業性等の各種特性向上のため、各種添加剤、たとえば、非反応性希釈剤、反応性希釈剤、揺変性付与剤、増粘剤、無機充填剤等を適宜添加してもよい。
【0030】
本発明に使用することのできる溶媒の例をそのSP値とともに以下に列挙する。なお、SP値(溶解度パラメータ)とは、物質の極性を示す指標である。
ジメチルシロキサン(5.5)、ジクロロジフルオロメタン(5.5)、ネオペンタン(6.3)、ジイソプロピルエーテル(6.9)、1−ニトロオクタン(7.0)、n−ペンタン(7.0)、n−ヘキサン(7.3)、ジエチルエーテル(7.4)、n−オクタン(7.6)、酢酸イソアミル(7.8)、ジイソブチルケトン(7.8)、シクロヘキサン(8.2)、酢酸イソブチル(8.3)、酢酸イソプロピル(8.4)、メチルイソプロピルケトン(8.5)、酢酸ブチル(8.5)、四塩化炭素(8.6)、プロピルベンゼン(8.6)メチルプロピルケトン(8.7)、エチルベンゼン(8.8)、キシレン(8.8)、p−クロロトルエン(8.8)、トルエン(8.9)、酢酸エチル(9.1)、テトラヒドロフラン(9.1)、ベンゼン(9.2)、トリクロロエチル(9.2)、スチレン(9.3)、メチルエチルケトン(9.3)、クロロホルム(9.3)、塩化メチレン(9.7)、アセトン(9.9)、シクロヘキサノン(9.9)、二硫化炭素(10.0)、酢酸(10.1)、m−クレゾール(10.2)、アニリン(10.3)、1−オクタノール(10.3)、シクロペンタノン(10.4)、エチレングリコールモノエチルエーテル(10.5)、t−ブチルアルコール(10.6)、ピリジン(10.7)、n−ヘキサノール(10.7)、1−ペンタノール(10.9)、シクロヘキサノール(11.4)、n−ブタノール(11.4)、イソプロピルアルコール(11.5)、アセトニトリル(11.9)、ジメチルホルムアミド(12.0)、ベンジルアルコール(12.1)、ジエチレングリコール(12.1)、ニトロメタン(12.7)、エタノール(12.7)、メタノール(14.5)、エチレングリコール(14.6)、グリセロール(16.5)、ホルムアミド(19.2)などを用いることができ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0031】
本発明において、異方導電性フィルム中の有機溶媒のSP値は、好ましくは7以上、より好ましくは8以上であり、好ましくは11以下、より好ましくは10以下である。有機溶媒のSP値がこの範囲であると、成分(C)潜在性硬化剤の被覆樹脂を効率的に膨潤させることができ、その結果、硬化性を適度に向上させることができる。
【0032】
本発明において、異方導電性フィルム中の有機溶媒含有量は、好ましくは0.3〜3重量%である。下限値以上だと硬化性が向上し、上限値以下だと保存性が向上する。
【0033】
従来の異方導電性フィルムは有機溶媒を乾燥工程においてほとんど揮発させて製品化しており、そのフィルム中の有機溶媒量は0.1%未満であった。乾燥条件は常に一定ではないため、異方導電性フィルム中の有機溶媒の量が変動することはあったものの、それは有機溶媒量が0.1%未満の範囲であり、本願発明のようにある一定量以上の有機溶媒をフィルム中に含有させることはなされていなかった。その理由として、有機溶媒を異方導電性フィルム中に多く含有させるとフィルムにタックが生じ、作業性が低下することに加えて、潜在性硬化剤を不必要に活性化させるために保存性をも低下させると考えられてきたからである。本願発明者らは、特に特定のSP値を有する有機溶媒を一定量フィルム中に含有させることにより、保存性を維持しつつ低温速硬化性を実現できることに着目し、本願発明を完成させた。
【0034】
本発明における有機溶媒量は異方導電性フィルムを製造する中間段階のものではなく、最終製品における量である。
【0035】
本発明に係る異方導電性フィルムは、たとえば以下のようにして得られる。まず原料樹脂を均一に分散させ得られた樹脂ワニスを、離型処理を施したポリエチレンテレフタレート上に乾燥後の厚さが45μmになるように塗布し、乾燥する。このときの乾燥温度、乾燥時間を変えることによって、有機溶媒量の調節を行うことができる。その後、乾燥物を、たとえば幅2.0mmに切断して異方導電性フィルムが得られる。
【実施例】
【0036】
(実施例1)
表1に示したように、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(酢酸エチル20%溶液)を150重量部、ポリビニルブチラール樹脂(酢酸エチル20%溶液)50重量部、上記一般式(1)で示されるエポキシ基含有アクリルゴム(酢酸エチル20%溶液、上記一般式(1)中のR=CH、R=CH、分子量700,000)50重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を20重量部、マイクロカプセル化-2-メチルイミダゾール誘導体エポキシ化合物を30重量部、ニッケル/金メッキ被覆ベンゾグアナミン樹脂粒子を2重量部、シランカップリング剤を5重量部、をトルエン350重量部、酢酸エチル150重量部中に均一に分散させた。また、得られた樹脂ワニスを、離型処理を施したポリエチレンテレフタレート上に乾燥後の厚さが45μmになるように塗布し、乾燥した。乾燥は、塗布面を、庫内温度60℃、風速15m/minの乾燥機中に360秒間曝して行った。乾燥物を幅2.0mmに切断して異方導電性フィルムを得た。
【0037】
(異方導電性フィルム中の有機溶媒の測定方法)
異方導電性樹脂試料約5mgをパージ&トラップ(日本分析化学 JHS−100A型)の試料管に入れ、流速50ml/minのヘリウムガスで揮発分を追い出しながら、200℃×15分で試料を加熱した。この時発生した揮発分を−80℃でトラップし、試料加熱終了後トラップした成分をGC/MS(GC:ヒューレットパッカード HP−5890型ガスクロマトグラフ、MS:ヒューレットパッカード HP−5970B型質量検出器)に導入した。クロマトグラム中の各ピークの帰属は、それぞれのマススペクトルに基づいて行った。なお、検出成分の定量については、既知濃度の標準サンプルのアセトン希釈溶液を0.5μl注入し、試料と同様に測定しピーク面積値を用いて定量を行った。
【0038】
(評価サンプルの作製)
評価用のサンプルを次のように予め作製した。銅箔/ポリイミド=25/75μmに0.5μmの錫メッキを施したTCP(ピッチ0.30mm、端子数60本)と、0.8mm厚4層板(FR−4)内層、外層銅箔18μmフラッシュ金メッキPCB(ピッチ0.30mm、端子数60本)とを、各実験例で得られた異方導電性フィルムで接合した。
【0039】
(接着強度)
3MPaにて170℃まで15秒間で昇温する条件で圧着し、引っ張り速度50mm/分で90度剥離試験によって評価を行った。サンプル作製直後の接着力を測定した。
【0040】
(接続信頼性)
3MPaにて170℃まで15秒間で昇温する条件で圧着し、サンプル作製直後および温度85℃、湿度85%、500時間放置処理後(HH処理後)の接続抵抗を測定した。接続抵抗が2.0Ω未満である場合を○(導通良好)、2.0Ω以上5.0Ω未満である場合を△、5.0Ω以上である場合を×(導通不良)とした。
【0041】
(保存性)
異方導電性フィルムを40℃の雰囲気中に3日間放置後、3MPaにて170℃まで15秒間で昇温する条件で圧着し、接続抵抗を測定した。接続抵抗が2.0Ω未満である場合を○(導通良好)、2.0Ω以上5.0Ω未満である場合を△、5.0Ω以上である場合を×(導通不良)とした。
【0042】
(作業性)
製品をリールから引き出す際に、樹脂のべたつきが強く、基材からの逆転写や浮きが起きるものを×、起きないものを○とした。
【0043】
(実施例2〜5、比較例1)
実施例1の溶剤及び乾燥条件を表1のように変えて実験を行った。結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
表1において、用いた原料を以下に示す。
(1)ビスフェノールA型フェノキシ樹脂、インケム社製PKHC(酢酸エチル20%溶液)
(2)ポリビニルブチラール樹脂、積水化学社製BX−1(酢酸エチル20%溶液)
(3)エポキシ基含有アクリルゴム(酢酸エチル20%溶液、上記一般式(1)中のR=CH、R=CH、分子量700,000)
(4)ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン社製エピコート828
(5)マイクロカプセル化-2-メチルイミダゾール誘導体エポキシ化合物、旭化成ケミカルズ社製HX−3941HP
(6)ニッケル/金メッキ被覆ベンゾグアナミン樹脂粒子、日本化学工業社製20GNR4.6−EH
(7)シランカップリング剤、信越化学社製KBM―403E
【0046】
表1より、実施例1〜6では、接着強度、保存性、作業性に優れる異方導電性フィルムが得られることがわかった。
比較例1は、従来製品であり、有機溶媒量が0.03%と低いものである。保存性、作業性には問題がなかったものの、接着強度が低く、またHH処理後の接続信頼性で不良が発生した。更に有機溶媒量が5.0%のサンプルを作製し評価したところ、実施例3の有機溶媒量2.0%の結果よりも劣るものの、接着強度、接続信頼性、保存性、作業性のいずれにおいても問題のない結果であった。
【0047】
(電子機器への使用例)
また、実験例1〜6に係る異方導電性フィルムを用いてPCBとTCPを接続し、表示装置部材を得た。異方導電性フィルムの接着条件は、3MPaにて170℃まで15秒間で昇温する条件とした。得られた表示装置部材に、電源、バックライトなどの周辺部材を設けて液晶表示装置を得た。
【0048】
得られた液晶表示装置においては、PCBとTCPとの良好な接着性が得られた。これより、実験例1〜6に係る異方導電性フィルムは、入力用の異方導電性フィルムとして好適に利用できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、異方導電性フィルム及びそれを用いた電子機器に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)反応性エラストマー、
(B)エポキシ樹脂、
(C)潜在性硬化剤、および
(D)導電性粒子
を必須成分とする異方導電性フィルムであって、
当該異方導電性フィルム中の有機溶媒含有量が0.1〜5重量%であることを特徴とする異方導電性フィルム。
【請求項2】
前記(C)潜在性硬化剤がマイクロカプセル化イミダゾール誘導体エポキシ化合物である請求項1記載の異方導電性フィルム。
【請求項3】
前記有機溶媒のSP値が7〜11であることを特徴とする請求項1または2記載の異方導電性フィルム。
【請求項4】
複数の部材が接着剤により電気的に接合されてなる電子機器において、前記接着剤が請求項1乃至3のいずれかに記載の異方導電性フィルムであることを特徴とする電子機器。

【公開番号】特開2006−252980(P2006−252980A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−68536(P2005−68536)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】