説明

窒化物半導体装置及びその製造方法

【課題】窒化物半導体装置において、半絶縁性SiC基板と比較して安価に入手することができる導電性SiC基板を使用してコストを低く抑えながら、良好な出力特性及び高周波特性が得られるようにする。
【解決手段】窒化物半導体装置を、導電性SiC基板1上に形成された窒化物半導体積層構造2と、窒化物半導体積層構造2の活性領域の下方の領域に形成されたアモルファスカーボン層3とを備えるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばガリウムナイトライド(GaN;窒化ガリウム)系電界効果トランジスタなどの窒化物半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、GaNはバンドギャップが広いという特徴を有するため、GaN系半導体装置に高耐圧・高速デバイスとしての応用が期待されている。
現在、例えばGaN−HEMTでは、基板としてシリコンカーバイド(SiC)を用いた場合に最も良好な出力特性が得られている。これは、SiCの優れた熱伝導特性によるものである。
【0003】
例えば、特許文献1では、熱伝導特性に優れ、安価な導電性SiC基板を用い、導電性SiC基板と窒化物半導体層群との間にAlN等の絶縁性に優れたAl含有窒化物半導体下地層を設けることで、出力特性及び高周波特性に優れたGaN系半導体装置を実現することが提案されている。
また、例えば特許文献2では、導電性SiC基板とGaNキャリア走行層との間に高抵抗のAlGaNバッファ層を設けるとともに、ウェハ表面から導電性SiC基板に達するビアホールを形成することで、高周波特性、高出力特性及び大電力特性を持つGaN系半導体装置を実現することが提案されている。
【特許文献1】特開2002−359255号公報
【特許文献2】特開2004−363563号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1及び特許文献2に記載されているように導電性SiC基板を用いる場合、GaN系半導体装置の活性領域の直下に導電性SiC基板があるため、絶縁性基板を用いる場合と比較して容量成分が付加されてしまい、高周波特性に悪影響を及ぼしてしまう。
このため、高周波動作GaN系半導体装置において、寄生容量を低減し、良好な高周波特性が得られるようにすべく、半絶縁性SiC基板を用いることが考えられる。
【0005】
しかしながら、高周波デバイスの基板として使用される半絶縁性SiC基板は、絶縁性の制御が困難である等の理由により価格が非常に高い。これは、GaN−HEMTの普及の阻害要因となる可能性がある。
そこで、窒化物半導体装置及びその製造方法において、半絶縁性SiC基板と比較して安価に入手することができる導電性SiC基板を使用してコストを低く抑えながら、良好な出力特性及び高周波特性が得られるようにしたい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、本窒化物半導体装置は、導電性SiC基板上に形成された窒化物半導体積層構造と、窒化物半導体積層構造の活性領域の下方の領域に形成されたアモルファスカーボン層とを備えることを要件とする。
本窒化物半導体装置の製造方法は、導電性SiC基板上に窒化物半導体積層構造を形成し、前記窒化物半導体積層構造の活性領域の下方の領域に位置する導電性SiC基板を除去し、導電性SiC基板を除去した領域にアモルファスカーボン層を形成することを要件とする。
【発明の効果】
【0007】
したがって、本窒化物半導体装置及びその製造方法によれば、半絶縁性SiC基板と比較して安価に入手することができる導電性SiC基板を使用してコストを低く抑えながら、良好な出力特性及び高周波特性が得られるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面により、本実施形態にかかる窒化物半導体装置及びその製造方法について説明する。
[第1実施形態]
まず、第1実施形態にかかる窒化物半導体装置及びその製造方法について、図1〜図4を参照しながら説明する。
【0009】
本実施形態にかかる窒化物半導体装置は、例えばガリウムナイトライド(GaN;窒化ガリウム)系電界効果トランジスタ[GaN系半導体デバイス;GaN系電子デバイス;ここではGaN−HEMT(High electron mobility transistor)]であり、例えば図1に示すように、導電性SiC基板1上に形成された窒化物半導体積層構造2と、窒化物半導体積層構造2の活性領域の下方の領域に窒化物半導体積層構造2の裏面に接するように形成された(ここでは窒化物半導体積層構造2の活性領域となる領域に対応する位置に導電性SiC基板1に代えて形成された)ダイヤモンドライクカーボン層(DLC層;アモルファスカーボン層)3とを備える。そして、窒化物半導体積層構造2の表面上に、ソース電極4、ドレイン電極5、ゲート電極6が形成されており、表面がパッシベーション膜(ここではSiNパッシベーション膜)7で覆われている。
【0010】
本GaN系電界効果トランジスタは、図1に示すように、導電性SiC基板1を用い、導電性SiC基板1上に窒化物半導体積層構造2を形成してGaN系電界効果トランジスタ(ここではGaN−HEMT)を作製後、GaN系電界効果トランジスタの所望の領域の導電性SiC基板1(ここでは活性領域に対応する位置に形成れている導電性SiC基板1;窒化物半導体積層構造2の活性領域の下方の領域に位置する導電性SiC基板1)を除去した後、GaN系電界効果トランジスタの裏面側[活性領域を挟んで表面電極(ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極)の反対側]が被覆されるように導電性SiC基板1を除去した領域にDLC膜(DLC層)3を形成して作製される。なお、具体的な製造方法については後述する。
【0011】
このように、GaN系電界効果トランジスタの活性領域に対応する位置の導電性SiC基板1はDLC層3に代えられており、DLC層3は絶縁層(絶縁膜)であるため、寄生容量を低減することができ、これにより、良好な高周波特性が得られる。また、DLC層3は熱伝導特性も優れているため、SiC基板上に作製した場合と同等の熱放射特性が期待でき、これにより、良好な出力特性が得られる。
【0012】
なお、GaN系電界効果トランジスタの活性領域以外の領域に対応する位置(ここではソース電極が設けられている領域に対応する位置;ソース電極の直下の領域)の導電性SiC基板1は残されているため、これにより、デバイスの強度は保持される。
本実施形態では、窒化物半導体積層構造2は、図1に示すように、導電性SiC基板1上に、バッファ層(核形成層;例えばAlN層など)8、i−GaN電子走行層9、i−AlGaN層10、n−AlGaN電子供給層11、n−GaN層12を順に積層させた構造[バッファ層8上にGaN系半導体層を積層させた構造(GaN系半導体積層構造);GaN−HEMT構造]になっている。なお、n−GaN層12は設けなくても良い。また、窒化物半導体積層構造(GaN系半導体積層構造を含む)2はこのような構造に限られるものではない。
【0013】
DLC層3は、結晶構造として、ダイヤモンド結合(SP3結合)とグラファイト結合(SP2結合)の両方の結合を有するアモルファス構造を有する。このため、ダイヤモンドとグラファイトの中間の特性を持ち、また、その特性はSP3/SP2の含有比によって変化する。本窒化物半導体装置(GaN系電界効果トランジスタ)で必要とする電気絶縁性や高熱伝導性は、ダイヤモンド結合に由来するものであるため、SP3結合の含有率が50%以上、好適には70%以上のDLC層を用いるのが望ましい。
【0014】
ところで、GaN系半導体デバイスの高周波特性を向上させるためには、ソースインダクタンスの低減及び放熱に有効なビア配線構造を形成するのが好ましい。
例えば、絶縁性SiC基板を用いる場合、基板裏面側からビアホールエッチングを行ない、ビア内部に配線金属を形成することになる。
しかしながら、SiC基板をエッチングする場合、ドライエッチングレートは、面内分布もあり、ビア径によっても変わるため、アスペクト比の高いエッチングの制御は困難である。また、ビア内部に形成される配線金属の膜厚が薄くなったり、配線が断線したりすることがある。
【0015】
そこで、例えば上記特許文献2では、導電性SiC基板を用い、基板にビアホールを設けることなく、ウェハ表面から導電性SiC基板に達するまでエッチングするだけで容易にビアホールを形成できるようにしている。
しかしながら、例えば上記特許文献1や上記特許文献2に記載されているように、高周波特性を向上させるために、絶縁性に優れたAl含有窒化物半導体下地層や高抵抗バッファ層を設ける場合、寄生容量を低減し、高周波特性の劣化を確実に抑制するために、下地層やバッファ層の厚さを非常に厚く(例えば20μm程度)することが必要になる。このように下地層やバッファ層の厚さが非常に厚くなっていると、エッチングのアスペクト比が大きくなるため、エッチングの制御が難しい。また、ビアホールの内部に形成する配線金属の膜厚が不均一になったり、断線したりすることもある。
【0016】
これに対し、本窒化物半導体装置(GaN系電界効果トランジスタ)では、図1に示すように、GaN系電界効果トランジスタの活性領域以外の領域に対応する位置(ここではソース電極が設けられている領域に対応する位置;ソース電極の直下の領域)に残されている導電性SiC基板1によって、表面配線(ここではAuめっき)13と裏面配線(Auめっき)14とを接続する接続配線15の一部を構成している。
【0017】
つまり、本GaN系電界効果トランジスタでは、図1に示すように、GaN系電界効果トランジスタの活性領域以外の領域に対応する位置(ここではソース電極が設けられている領域に対応する位置;ソース電極の直下の領域)に導電性SiC基板1を残し、窒化物半導体積層構造2の表面側から導電性SiC基板1に達するまでビアホールエッチングを行ない、ビアホール16の内部に配線金属(ここではNiめっき)17を形成することで、表面配線13と裏面配線14とが、ビアホール16の内部に形成された配線金属17と導電性SiC基板1とを介して電気的に接続されるようにしている。なお、図1中、符号19,21,25,28はシードメタルを示しており、符号24はメタルマスクとして用いられたNiめっきを示している。
【0018】
これにより、高アスペクト比のエッチングを行なわなくても良くなり、表面配線13と裏面配線14とを接続する接続配線15を容易に形成できるようになる。また、高アスペクト比のビアホールの内部に配線金属を形成する必要がないため、配線金属の膜厚が不均一になったり、断線したりするのを防止できることになる。
次に、本実施形態にかかる窒化物半導体装置(GaN系電界効果トランジスタ)の製造方法について、図2〜図4を参照しながら説明する。
[基本デバイス構造の作製プロセス]
まず、GaN系電界効果トランジスタの基本デバイス構造(ここではGaN−HEMT構造)を、以下のようにして作製する。
【0019】
図2(A)に示すように、導電性SiC基板1上に、例えばMOVPE法(organometallic vapor phase epitaxy;有機金属気相成長法)を用いて、核形成のためのバッファ層8(例えば100nm以下)、i−GaN電子走行層9(例えば3μm)、i−AlGaN層10(例えば5nm)、n−AlGaN電子供給層11(例えば30nm;Siドーピング濃度5×1018cm-3)、n−GaN層12(例えば10nm;Siドーピング濃度5×1018cm-3)を順次堆積させて、窒化物半導体積層構造(GaN系半導体積層構造を含む;GaN−HEMT構造)2を形成する。なお、n−GaN層12は設けなくても良い。また、窒化物半導体積層構造2は、高アスペクト比のエッチングを行なわなくても良い程度の厚さになっている。
【0020】
次いで、例えばフォトリソグラフィを用いて、ソース電極/ドレイン電極形成予定領域にそれぞれ開口部を有するマスクを設け、例えば塩素系ガスを用いたドライエッチングによって、図2(A)に示すように、ソース電極/ドレイン電極形成予定領域に形成されているn−GaN層12を除去する。なお、n−GaN層12が少し残るようにしても良いし、n−AlGaN電子供給層11が少し削られるようにしても良い。
【0021】
次に、例えば蒸着法及びリフトオフ法を用いて、例えばTi/Alを積層させ、さらに窒素雰囲気中にて所望の温度(例えば600℃)で熱処理を行なって、オーミック接触(オーミックコンタクト)を確立して、図2(A)に示すように、n−AlGaN電子供給層11上にソース電極4及びドレイン電極5を形成する。
そして、図2(A)に示すように、例えばPECVD法(Plasma Enhanced chemical vapor deposition;プラズマ化学気相成長法)によって、表面側の全面にパッシベーション膜(ここではSiNパッシベーション膜)7を形成する。
【0022】
その後、例えばフォトリソグラフィを用いて、ゲート電極形成予定領域に開口部を有するマスクを設け、エッチングによって、ゲート電極形成領域に形成されているパッシベーション膜を除去し、例えば蒸着法及びリフトオフ法を用いて、例えばNi/Auを積層させて、図2(A)に示すように、n−GaN層12上にゲート電極6を形成する。
そして、図2(A)に示すように、例えばPECVD法によって、少なくともゲート電極6を覆うようにパッシベーション膜(ここではSiNパッシベーション膜)7を形成する。
【0023】
このようにして、図2(A)に示すように、GaN系電界効果トランジスタの基本デバイス構造18が作製される。
なお、GaN系電界効果トランジスタの基本デバイス構造の製造方法はこれに限られるものではない。
[表面配線形成プロセス]
次に、上述のようにして作製した基本デバイス構造に対して、以下のようにして、表面配線13、及び、表面配線13と裏面配線14とを接続するための接続配線15の一部(表面配線側の部分;ビア配線;導電性SiC基板1と表面配線13とを接続する接続配線)を形成する(表面配線及び接続配線の一部の形成プロセス)。
【0024】
まず、例えばフォトリソグラフィによって、ビアホール形成予定領域[導電性SiC基板1の所望の領域(ここでは窒化物半導体積層構造2の活性領域に対応する位置に形成されている導電性SiC基板1)を除去する場合、その所望の領域以外の領域]に開口部を有するレジストパターン(マスクパターン)を、ソース電極(ソース電極パッド)4の表面上に形成されているSiNパッシベーション膜7上にパターニングした後、例えばSF6/CHF3ガスを用いてドライエッチングを行なって、図2(B)に示すように、ビアホール形成予定領域に形成されているSiNパッシベーション膜7を除去する。ここでは、例えば、SF6/CHF3ガスの流量比を2:30とし、アンテナパワー500W/バイアスパワー50Wとし、SiNのエッチングレートを0.24μm/minとしている。
【0025】
次いで、レジストを剥離した後、ビアホール形成予定領域に形成されているソース電極4及び窒化物半導体積層構造2を加工して、導電性SiC基板1に達するビアホール(コンタクトホール)16を形成するために、例えば厚さ10μmのレジストを用いてパターニングを行なう。
そして、図2(C)に示すように、ソース電極4を構成する金属(ここではTi/Al)の一部を、例えばイオンミリングによって除去する。ここでは、ミリングレートは、例えばTi:15nm/min,Al:28nm/minとしている。
【0026】
次いで、窒化物半導体積層構造2を導電性SiC基板1との界面までエッチングする。つまり、図2(C)に示すように、n−AlGaN層11、i−AlGaN層10、i−GaN層9、バッファ層8を、例えばICP(Inductively Coupled Plasma)ドライエッチング装置で、例えばCl2ガスを用いて、ドライエッチングして除去する。ここでは、アンテナパワー100W/バイアスパワー20Wとし、GaNのエッチングレートは0.2μm/minとしている。これにより、導電性SiC基板1に達するビアホール16が形成される。
【0027】
次に、レジストを剥離した後、接続配線15の一部(ビア配線)を構成する配線金属(ビア配線金属)17であるニッケル(Ni)を電気めっきするために、図2(D)に示すように、シードメタル19[ここではTi(10nm)/Cu(200nm)又はTi(10nm)/Ni(100nm)]を例えばスパッタによってウェハ全面に形成する。
次いで、図2(E)に示すように、接続配線形成予定領域以外の領域にレジスト20(例えば厚さ3μm)が残るようにパターニングを行なった後、Ni(例えば厚さ3.2μm)を電気めっきしてNiめっき17を形成する。ここでは、Niめっき17は、例えば、50〜60℃の温浴槽中で行ない、めっきレートは0.5μm/minとしている。
【0028】
次に、レジスト20を剥離した後、図2(F)に示すように、Niめっき17のシードメタル19を、例えばイオンミリングによって除去する。ここでは、ミリングレートは、Ti:15nm/min,Cu:53nm/min,Ni:25nm/minとしている。
このようにして、ビアホール16内にビアホール16を埋め込むようにビア配線を構成するNiめっき17が形成される。このビア配線を構成するNiめっき17はソース電極4に電気的に接続されている。
【0029】
続いて、表面配線13を構成する配線金属である金(Au)を電気めっきするために、図3(A)に示すように、シードメタル21[ここではTi(10nm)/Pt(50nm)/Au(200nm)]を例えばスパッタによってウェハ全面に形成する。
そして、図3(B)に示すように、表面配線形成予定領域以外の領域にレジスト22(例えば厚さ1μm)が残るようにパターニングを行なった後、Au(例えば厚さ1μm)を電気めっきして、表面配線13を構成するAuめっきを形成する。ここでは、Auめっき13は、例えば、55〜65℃のAuめっき槽で行ない、めっきレートは0.5μm/minとしている。
【0030】
その後、レジスト22を剥離した後、図3(C)に示すように、Auめっき13のシードメタル21を、例えばイオンミリングによって除去する。ここでは、ミリングレートは、Ti:15nm/min,Pt:30nm/min,Au:50nm/minとしている。
このようにして、ビア配線を構成するNiめっき17に接続されるように表面配線13を構成するAuめっきが形成される。つまり、表面配線13、及び、表面配線13と裏面配線14とを接続するための接続配線15の表面配線側の部分(ビア配線;導電性SiC基板1と表面配線13とを接続する接続配線)が形成される。
[裏面加工プロセス]
次に、上述のようにして表面配線13及び接続配線15の一部(ビア配線)が形成された基本デバイス構造18に対して、以下のようにして、導電性SiC基板1の所望の領域(ここでは活性領域の直下の領域;窒化物半導体積層構造2の活性領域に対応する位置に形成されている導電性SiC基板1)を除去する加工を行なう。ここでは、GaN系電界効果トランジスタ(基本デバイス構造)の活性領域以外の領域に対応する位置(ここではソース電極が設けられている領域に対応する位置;ソース電極の直下の領域)に導電性SiC基板1が残るように、導電性SiC基板1のエッチングを行なう(導電性SiC基板のエッチングプロセス;SiCエッチング工程)。
【0031】
つまり、まず、上述のようにして表面配線13及び接続配線15の一部(ビア配線)が形成された基本デバイス構造18の表面(デバイス表面)に表面保護膜(図示せず)を塗布し、図3(D)に示すように、この表面上に裏面加工用の支持基板23を貼り付ける。なお、支持基板23の接着にはワックスなどを用いれば良い。また、表面保護膜を形成せずに、デバイス表面にそのまま支持基板23を貼り付けても良い。
【0032】
次いで、図3(D)に示すように、導電性SiC基板1の裏面を研磨して、例えば400μmの厚さの導電性SiC基板1を例えば100μm程度まで薄くする。
次に、図3(E),(F)に示すように、導電性SiC基板1のエッチングに用いるメタルマスク24[ここではニッケル(Ni)めっき]を形成する。
つまり、まず、図3(E)に示すように、メタルマスク24となるNiを電気めっきするためのシードメタル25[Ti(10nm)/Cu(200nm)又はTi(10nm/Ni(100nm)]を、例えばスパッタによって導電性SiC基板1の裏面全面に形成する。
【0033】
次いで、図3(F)に示すように、GaN系電界効果トランジスタ(基本デバイス構造)の活性領域に対応する位置にレジスト26(例えば厚さ3μm)が残るようにパターニングを行なった後、Ni(例えば厚さ3μm)を電気めっきして、メタルマスク24としてのNiめっきを形成する。ここでは、Niめっき24は、例えば、50〜60℃の温浴槽中で行ない、めっきレートは0.5μm/minとしている。
【0034】
次に、レジスト26を剥離した後、Niめっき24のシードメタル25を、例えばイオンミリングによって除去する。ここでは、ミリングレートは、Ti:15nm/min,Cu:53nm/min,Ni:25nm/minとしている。
このようにして、メタルマスク24が形成される。
次に、このようにして形成されたメタルマスク24を用い、例えばSF6/O2混合ガスを用いて導電性SiC基板1をバッファ層8に達するまでドライエッチングして、図4(A)に示すように、GaN系電界効果トランジスタ(基本デバイス構造)の活性領域に対応する位置に形成されている導電性SiC基板1を除去する。ここでは、例えば、アンテナパワー900W/バイアスパワー150Wとし、SiCのエッチングレートを0.75μm/minとしている。
【0035】
なお、この導電性SiC基板1のエッチングの際に、メタルマスク24としてのNiめっきも同時にエッチングされ、膜厚が減少する[図4(A)参照]。
ここで、GaN系電界効果トランジスタ(基本デバイス構造)の活性領域に対応する位置に形成されている導電性SiC基板1を除去しているのは、この活性領域に対応する位置に形成されている導電性SiC基板1がGaN系電界効果トランジスタの特性に影響を与えるからである。一方、GaN系電界効果トランジスタの活性領域以外の領域(GaN系電界効果トランジスタの特性に影響を与えない領域)に対応する位置に形成されている導電性SiC基板1は残して、デバイスの強度を保持している。
【0036】
本実施形態では、上述のようにして形成されたビア配線としてのNiめっき17(表面配線13と裏面配線14とを接続するための接続配線15の表面配線側の部分)と、GaN系電界効果トランジスタ(基本デバイス構造)の活性領域以外の領域に対応する位置(ここではソース電極が設けられている領域に対応する位置;ソース電極の直下の領域)に残されている導電性SiC基板1とが電気的に接続されており、後述するように、導電性SiC基板1は裏面配線14に電気的に接続されている。つまり、導電性SiC基板1によって、表面配線13と裏面配線14とを接続するための接続配線15の裏面配線側の部分が構成される。
[DLC層(アモルファスカーボン層)形成プロセス]
次に、上述のようにしてGaN系電界効果トランジスタの活性領域に対応する位置に形成されている導電性SiC基板1を除去された基本デバイス構造18に対して、以下のようにして、導電性SiC基板1を除去した領域のバッファ層8の表面上にDLC層(アモルファスカーボン層)3を形成する(DLC成膜工程;アモルファスカーボン層形成工程)。
【0037】
本実施形態では、例えばプラズマイオン注入・成膜法(Plasma-Based Ion Implantation and Deposition;PBII&D法)によって、図4(B)に示すように、ウェハ全面にDLC層(DLC膜)3を形成する。
ここで、PBII&D装置は、パルスプラズマ生成用のパルスRF電源と、イオン注入用の高電圧パルス電源とを備える。そして、PBII&D法では、C22やC78などのガスを用い、試料に高周波パルスを印加して外形に沿って周囲にプラズマを発生させ、そのプラズマ中又はアフターグロープラズマ中にプラズマイオン注入を行なう。この高周波パルスの印加と高電圧パルスの印加を繰り返し行なうことによって、連続的にイオンの加速注入をしていくのが特徴である。このように堆積中の膜に繰り返しイオン注入を行ない、ヒートスパイク効果を与えることによって応力を低減することが可能となり、数10μm程度の厚膜の形成が可能となる。また、高周波プラズマのduty比を小さくすることによって低温プロセスも可能となる。
【0038】
ここでは、高周波(パルス電圧20kV,パルス幅10μs)によってC22プラズマを励起し、そのプラズマ中に上述のようにして加工された基本デバイス構造18を浸漬する。
続いて、負の高電圧パルス(パルス電圧−20kV,パルス幅5μs)を印加して基本デバイス構造18(試料)の表面(導電性SiC基板1の裏面側)にDLC膜を成膜する。
【0039】
以後、これを繰り返し、所望の膜厚のDLC膜3を堆積させる。
ここでは、高電圧パルスのdutyを所望の値(好ましくは10%以下)に調節し、プロセス温度を200℃以下にしている。
このようにして、図4(B)に示すように、基本デバイス構造18の導電性SiC基板1を除去した領域、即ち、GaN系電界効果トランジスタ(基本デバイス構造)の活性領域に対応する位置のバッファ層8の表面上に、DLC層3が形成される。
【0040】
なお、DLC膜3を堆積させる前に、密着性を向上させるために、ArやCH4などによる表面調整、N2やCH4などのイオン注入などを行なっても良い。
また、DLC層3を形成する方法(又は装置)としては、例えば、イオン化蒸着法、高周波プラズマ法、アークイオンプレーティング法、UBMスパッタリング法、プラズマイオン注入法(PBII&D法)などが挙げられる。本窒化物半導体装置(GaN系電界効果トランジスタ)においてDLC層3を形成する方法(又は装置)としては特に限定はないが、上述のように、膜の特性として低膜応力、電気絶縁性、高熱伝導性が得られ、かつ、低温プロセスが可能であるPBII&D法を用いるのが好ましい。なお、成膜の低温化は、GaN系電子デバイスの特性変化や裏面加工時に支持基板を貼り合わせる接着剤の変性などの観点で重要である。
[裏面配線形成プロセス]
次に、上述のようにして基本デバイス構造18の裏面側に形成されたDLC層3上に、裏面配線(裏面電極)14を形成する。
【0041】
まず、図4(C)に示すように、ビア配線としてのNiめっき17に接続された導電性SiC基板1の表面を覆っているDLC層3をエッチングしてコンタクトホール27を形成する。
次に、裏面配線14を構成する配線金属である金(Au)を電気めっきするために、図4(D)に示すように、シードメタル28[ここではTi(10nm)/Pt(50nm)/Au(200nm)]を例えばスパッタによってウェハ全面に形成した後、Au(例えば厚さ1μm)を電気めっきして、裏面配線14を構成するAuめっきを形成する。ここでは、Auめっき14は、例えば、55〜65℃のAuめっき槽で行ない、めっきレートは0.5μm/minとしている。
【0042】
このようにして、DLC層3上に裏面配線14を構成するAuめっきが形成される。つまり、接続配線15を構成する導電性SiC基板1に電気的に接続されるように裏面配線14が形成される。
[仕上げ工程]
最後に、仕上げ工程として、支持基板23を剥離し、表面保護膜(図示せず)を除去する。
【0043】
これにより、図4(E)に示すように、本窒化物半導体装置(GaN系電界効果トランジスタ)が完成する。
したがって、本実施形態にかかる窒化物半導体装置(GaN系電界効果トランジスタ)及びその製造方法によれば、半絶縁性SiC基板と比較して安価に入手することができる導電性SiC基板1を使用してコストを低く抑えながら、良好な出力特性及び高周波特性が得られるという利点がある。つまり、安価な導電性SiC基板1を用いながら、GaN系電界効果トランジスタの活性領域に対応する位置に導電性SiC基板1に代えてDLC層3を形成することで、良好な出力特性を有し、高周波動作するデバイスを実現することが可能となる。また、DLC層3を用いているため、熱安定性の向上も見込まれる。
【0044】
さらに、導電性SiC基板1を、表面配線13と裏面配線14とを接続する接続配線15の一部として利用しているため、プロセス工程数を削減できるという利点もある。
また、本窒化物半導体装置(GaN系電界効果トランジスタ)は、上述のように、一般的な方法によって導電性SiC基板1上に作製される窒化物半導体装置(GaN系電界効果トランジスタ)を加工することによって製造することができるため、一般的な方法によって導電性SiC基板1上に作製される窒化物半導体装置(GaN系電界効果トランジスタ)の半導体積層構造(エピ構造)を変更することなく、そのまま使用することができるという利点もある。
【0045】
なお、本実施形態では、ソース電極4が設けられている領域に対応する位置の導電性SiC基板1を残し、これに接続されるようにビア配線を形成しているが、これに限られるものではない。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態にかかる窒化物半導体装置及びその製造方法について、図5,図6を参照しながら説明する。
【0046】
本実施形態にかかる窒化物半導体装置(GaN系電界効果トランジスタ)は、上述の第1実施形態のものに対し、図5に示すように、窒化物半導体積層構造(GaN系半導体積層構造を含む)2とDLC層(アモルファスカーボン層)3との間の中間層としてアモルファスSiC層30が設けられている点が異なる。
つまり、本窒化物半導体装置(GaN系電界効果トランジスタ)は、図5に示すように、窒化物半導体積層構造(GaN系半導体積層構造を含む;GaN−HEMT構造)2とDLC層(アモルファスカーボン層)3との間にアモルファスSiC層30を備える。なお、図5では、上述の第1実施形態のもの(図1参照)と同一のものには同一の符号を付している。
【0047】
なお、その他の構成は上述の第1実施形態のもの(図1参照)と同一であるため、ここでは説明を省略する。
次に、本実施形態にかかる窒化物半導体装置(GaN系電界効果トランジスタ)の製造方法について、図6を参照しながら説明する。
まず、基本デバイス構造(ここではGaN−HEMT構造)18を作製し、導電性SiC基板1をエッチングする工程までは、上述の第1実施形態[図2(A)〜(F)、図3(A)〜(F)、図4(A)参照]と同じである。
【0048】
本実施形態では、GaN系電界効果トランジスタ(基本デバイス構造)の活性領域に対応する位置に形成されている導電性SiC基板1をエッチングによって除去した後[図4(A)参照]、DLC膜(DLC層)3を堆積させる前に、密着性を向上させるために、図6(A)に示すように、中間層としてのアモルファスSiC層30を、例えばスパッタリング法によってウェハ全面に形成する。
【0049】
次いで、図6(B)に示すように、アモルファスSiC層30上の表面全体にDLC膜3を成膜する。なお、DLC成膜プロセスは、上述の第1実施形態[図4(B)参照]と同じである。
次に、図6(C)に示すように、ビア配線としてのNiめっき17に接続された導電性SiC基板1の表面を覆っているDLC層3及びアモルファスSiC層30をエッチングしてコンタクトホール31を形成する。
【0050】
そして、図6(D)に示すように、DLC層3上に裏面配線14を構成するAuめっきを形成する。つまり、接続配線15を構成する導電性SiC基板1に電気的に接続されるように裏面配線14を形成する。なお、裏面配線形成プロセスは、上述の第1実施形態[図4(C),(D)参照]と同じである。
最後に、上述の第1実施形態と同様に、仕上げ工程として、支持基板23を剥離し、表面保護膜(図示せず)を除去する。
【0051】
これにより、図6(E)に示すように、本窒化物半導体装置(GaN系電界効果トランジスタ)が完成する。
したがって、本実施形態にかかる窒化物半導体装置(GaN系電界効果トランジスタ)及びその製造方法によれば、上述の第1実施形態と同様に、半絶縁性SiC基板と比較して安価に入手することができる導電性SiC基板1を使用してコストを低く抑えながら、良好な出力特性及び高周波特性が得られるという利点がある。つまり、安価な導電性SiC基板1を用いながら、GaN系電界効果トランジスタの活性領域に対応する位置に導電性SiC基板に代えてDLC層を形成することで、良好な出力特性を有し、高周波動作するデバイスを実現することが可能となる。
【0052】
特に、DLC層3を形成する前にアモルファスSiC層30を形成しているため、DLC膜3を堆積させる際の密着性を向上させることができる。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態にかかる窒化物半導体装置及びその製造方法について、図7,図8を参照しながら説明する。
【0053】
本実施形態にかかる窒化物半導体装置(GaN系電界効果トランジスタ)は、上述の第1実施形態のものに対し、図7に示すように、窒化物半導体積層構造(GaN系半導体積層構造を含む;GaN−HEMT構造)2とDLC層(アモルファスカーボン層)3との間に半絶縁性SiC層40を備える点が異なる。なお、図7では、上述の第1実施形態のもの(図1参照)と同一のものには同一の符号を付している。
【0054】
なお、その他の構成は上述の第1実施形態のもの(図1参照)と同一であるため、ここでは説明を省略する。
次に、本実施形態にかかる窒化物半導体装置(GaN系電界効果トランジスタ)の製造方法について、図8を参照しながら説明する。
まず、上述の第1実施形態の基本デバイス構造作製プロセスにおいて、図8(A)に示すように、導電性SiC基板1上に、半絶縁性SiC層40を形成した後、バッファ層8からn−GaN層12までの各層を積層させて窒化物半導体積層構造(GaN系半導体積層構造を含む;GaN−HEMT構造)2を形成する。なお、半絶縁性SiC層40及び窒化物半導体積層構造2は、高アスペクト比のエッチングを行なわなくても良い程度の厚さになっている。また、基本デバイス構造作製プロセスのその他の工程は上述の第1実施形態[図2(A)参照]と同じである。
【0055】
本実施形態では、図8(A)に示すように、導電性SiC基板1上に、半絶縁性SiC層(例えば厚さ0.5μm)40をエピタキシャル成長させて形成した後、バッファ層8からn−GaN層12までの各層を積層させて窒化物半導体積層構造2を形成するようにしている。
次いで、上述の第1実施形態の表面配線形成プロセス[図2(B)〜(F),図3(A)〜(C)参照]において、図8(B)に示すように、窒化物半導体積層構造2を導電性SiC基板1との界面までエッチングする際に、半絶縁性SiC層40までをエッチングして除去する。ここでは、レジストが残っている限り、GaN/SiC界面よりも数ミクロン深い領域までエッチングして、半絶縁性SiC層40を完全に除去する。なお、表面配線形成プロセスのその他の工程は上述の第1実施形態[図2(B)〜(F),図3(A)〜(C)参照]と同じである。
【0056】
次に、上述の第1実施形態の裏面加工プロセス[図3(D)〜(F),図4(A)参照]において、図8(C)に示すように、導電性SiC基板1を半絶縁性SiC層40に達するまでドライエッチングして、GaN系電界効果トランジスタ(基本デバイス構造)の活性領域に対応する位置に形成されている導電性SiC基板1を除去する。この際、半絶縁性SiC層40も多少エッチングする。これにより、導電性SiC基板1が残らないようにオーバーエッチングすることが可能となり、導電性SiC基板1が残存することによる寄生容量の増加を防ぐことができる。なお。裏面加工プロセスのその他の工程は上述の第1実施形態[図3(D)〜(F),図4(A)参照]と同じである。
【0057】
なお、本実施形態では、導電性SiC基板1を除去した領域の半絶縁性SiC層40の表面上にDLC層(アモルファスカーボン層)3を形成することになり、半絶縁性SiC層40はDLC膜3を堆積させる際の密着性が良いため、上述の第2実施形態のように、アモルファスSiC層を形成する必要がない。
その後、上述の第1実施形態[図4(B)〜(D)参照]と同様のプロセスを経て、図8(D)に示すように、本窒化物半導体装置(GaN系電界効果トランジスタ)が完成する。
【0058】
したがって、本実施形態にかかる窒化物半導体装置(GaN系電界効果トランジスタ)及びその製造方法によれば、上述の第1実施形態と同様に、半絶縁性SiC基板と比較して安価に入手することができる導電性SiC基板1を使用してコストを低く抑えながら、良好な出力特性及び高周波特性が得られるという利点がある。つまり、安価な導電性SiC基板1を用いながら、GaN系電界効果トランジスタの活性領域に対応する位置に導電性SiC基板1に代えてDLC層3を形成することで、良好な出力特性を有し、高周波動作するデバイスを実現することが可能となる。
[第4実施形態]
次に、第4実施形態にかかる窒化物半導体装置及びその製造方法について、図9,10を参照しながら説明する。
【0059】
本実施形態にかかる窒化物半導体装置(GaN系電界効果トランジスタ)は、上述の第1実施形態のものに対し、図9に示すように、表面配線と裏面配線とを接続する接続配線(ビア配線を含む)を備えない点が異なり、GaN系電界効果トランジスタの活性領域以外の領域に対応する位置に残される導電性SiC基板1の位置が異なる。つまり、本発明は、表面配線と裏面配線とを接続する接続配線(ビア配線を含む)を備えない窒化物半導体装置(GaN系電界効果トランジスタ)にも適用することができる。
【0060】
本窒化物半導体装置(GaN系電界効果トランジスタ)は、図9に示すように、導電性SiC基板1上に形成された窒化物半導体積層構造(GaN系半導体積層構造を含む;GaN−HEMT構造)2と、窒化物半導体積層構造2の活性領域の下方の領域に窒化物半導体積層構造2の裏面に接するように形成された(ここでは窒化物半導体積層構造2の活性領域となる領域に対応する位置に導電性SiC基板1に代えて形成された)ダイヤモンドライクカーボン層(DLC層;アモルファスカーボン層)3とを備える。そして、窒化物半導体積層構造2の表面上に、ソース電極4、ドレイン電極5、ゲート電極6が形成されており、表面がパッシベーション膜(ここではSiNパッシベーション膜)7で覆われている。なお、図9では、上述の第1実施形態のもの(図1参照)と同一のものには同一の符号を付している。
【0061】
本実施形態では、GaN系電界効果トランジスタの活性領域以外の領域に対応する位置に(ここでは活性領域に対応する領域を挟んで両側の位置に;ソース電極及びドレイン電極に対して外側の位置に)導電性SiC基板1を残すことで、デバイスの強度が保持されるようにしている。
なお、その他の構成は上述の第1実施形態(図1参照)のものと同一であるため、ここでは説明を省略する。
【0062】
次に、本実施形態にかかる窒化物半導体装置(GaN系電界効果トランジスタ)の製造方法について、図10を参照しながら説明する。
まず、上述の第1実施形態[図2(A)参照]と同様に、基本デバイス構造(ここではGaN−HEMT構造)18を作製する。そして、図示していないが、基本デバイス構造18の表面上に表面配線13を形成する。なお、本実施形態では、上述の第1実施形態のビア配線形成工程は行なわない。
【0063】
次に、上述の第1実施形態の裏面加工プロセス[図3(D)〜(F),図4(A)参照]と同様に、基本デバイス構造18の表面に表面保護膜(図示せず)を塗布し、図10(A)に示すように、この表面上に裏面加工用の支持基板23を貼り付け、導電性SiC基板1の裏面を研磨して薄くし、メタルマスク24となるNiを電気めっきするためのシードメタル25[Ti(10nm)/Cu(200nm)又はTi(10nm/Ni(100nm)]を導電性SiC基板1の裏面全面に形成する。
【0064】
次いで、図10(B)に示すように、GaN系電界効果トランジスタ(基本デバイス構造)の活性領域に対応する位置にレジスト26(例えば厚さ3μm)が残るようにパターニングを行なった後、Ni(例えば厚さ3μm)を電気めっきする。
次に、レジスト26を剥離した後、Niめっき24のシードメタル25を例えばイオンミリングによって除去する。
【0065】
このようにして、メタルマスク24が形成される。
次に、このようにして形成されたメタルマスク24を用い、導電性SiC基板1をバッファ層8に達するまでドライエッチングして、図10(C)に示すように、GaN系電界効果トランジスタ(基本デバイス構造)の活性領域に対応する位置に形成されている導電性SiC基板1を除去する。
【0066】
なお、この導電性SiC基板1のエッチングの際に、メタルマスク24としてのNiめっきも同時にエッチングされ、膜厚が減少する[図10(C)参照]。
ここで、GaN系電界効果トランジスタ(基本デバイス構造)の活性領域に対応する位置に形成されている導電性SiC基板1(導電性SiC基板1の所望の領域)を除去しているのは、この活性領域に対応する位置に形成されている導電性SiC基板1がGaN系電界効果トランジスタの特性に影響を与えるからである。一方、GaN系電界効果トランジスタ(基本デバイス構造)の活性領域以外の領域(GaN系電界効果トランジスタの特性に影響を与えない領域)に対応する位置に形成されている導電性SiC基板1は残して、デバイスの強度を保持している。
【0067】
次に、上述の第1実施形態[図4(B)参照]と同様に、図10(D)に示すように、導電性SiC基板1を除去した領域のバッファ層8の表面上にDLC層(アモルファスカーボン層)3を形成する(DLC成膜工程;アモルファスカーボン層形成工程)。つまり、例えばプラズマイオン注入・成膜法(Plasma-Based Ion Implantation and Deposition;PBII&D法)によって、ウェハ全面にDLC層(DLC膜)3を形成する。
【0068】
なお、本実施形態では、上述の第1実施形態の裏面配線形成プロセス[図4(C),(D)参照]は行なわない。
最後に、上述の第1実施形態と同様に、仕上げ工程として、支持基板23を剥離し、表面保護膜(図示せず)を除去する。
これにより、図10(E)に示すように、本窒化物半導体装置(GaN系電界効果トランジスタ)が完成する。
【0069】
したがって、本実施形態にかかる窒化物半導体装置(GaN系電界効果トランジスタ)及びその製造方法によれば、上述の第1実施形態と同様に、半絶縁性SiC基板と比較して安価に入手することができる導電性SiC基板1を使用してコストを低く抑えながら、良好な出力特性及び高周波特性が得られるという利点がある。つまり、安価な導電性SiC基板1を用いながら、GaN系電界効果トランジスタの活性領域に対応する位置に導電性SiC基板1に代えてDLC層3を形成することで、良好な出力特性を有し、高周波動作するデバイスを実現することが可能となる。
【0070】
なお、本実施形態では、上述の第1実施形態の変形例として説明しているが、これに限られるものではなく、上述の第2実施形態や第3実施形態の変形例として構成することもできる。
[その他]
なお、本発明は、上述した各実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる窒化物半導体装置(GaN系電界効果トランジスタ)の構成を示す模式的断面図である。
【図2】(A)〜(F)は、本発明の第1実施形態にかかる窒化物半導体装置(GaN系電界効果トランジスタ)の製造方法を説明するための模式的断面図である。
【図3】(A)〜(F)は、本発明の第1実施形態にかかる窒化物半導体装置(GaN系電界効果トランジスタ)の製造方法を説明するための模式的断面図である。
【図4】(A)〜(E)は、本発明の第1実施形態にかかる窒化物半導体装置(GaN系電界効果トランジスタ)の製造方法を説明するための模式的断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態にかかる窒化物半導体装置(GaN系電界効果トランジスタ)の構成を示す模式的断面図である。
【図6】(A)〜(E)は、本発明の第2実施形態にかかる窒化物半導体装置(GaN系電界効果トランジスタ)の製造方法を説明するための模式的断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態にかかる窒化物半導体装置(GaN系電界効果トランジスタ)の構成を示す模式的断面図である。
【図8】(A)〜(D)は、本発明の第3実施形態にかかる窒化物半導体装置(GaN系電界効果トランジスタ)の製造方法を説明するための模式的断面図である。
【図9】本発明の第4実施形態にかかる窒化物半導体装置(GaN系電界効果トランジスタ)の構成を示す模式的断面図である。
【図10】(A)〜(E)は、本発明の第4実施形態にかかる窒化物半導体装置(GaN系電界効果トランジスタ)の製造方法を説明するための模式的断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1 導電性SiC基板
2 窒化物半導体積層構造
3 ダイヤモンドライクカーボン層(DLC層;アモルファスカーボン層)
4 ソース電極
5 ドレイン電極
6 ゲート電極
7 パッシベーション膜
8 バッファ層
9 i−GaN電子走行層
10 i−AlGaN層
11 n−AlGaN電子供給層
12 n−GaN層
13 表面配線
14 裏面配線
15 接続配線
16 ビアホール
17 配線金属(Niめっき)
18 基本デバイス構造
19 シードメタル
20 レジスト
21 シードメタル
22 レジスト
23 支持基板
24 メタルマスク
25 シードメタル
26 レジスト
27 コンタクトホール
28 シードメタル
30 アモルファスSiC層
31 コンタクトホール
40 半絶縁性SiC層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性SiC基板上に形成された窒化物半導体積層構造と、
前記窒化物半導体積層構造の活性領域の下方の領域に形成されたアモルファスカーボン層とを備えることを特徴とする窒化物半導体装置。
【請求項2】
前記導電性SiC基板は、表面配線と裏面配線とを接続する接続配線の一部を構成することを特徴とする、請求項1記載の窒化物半導体装置。
【請求項3】
前記窒化物半導体積層構造と前記アモルファスカーボン層との間に、アモルファスSiC層を備えることを特徴とする、請求項1又は2記載の窒化物半導体装置。
【請求項4】
前記窒化物半導体積層構造と前記アモルファスカーボン層との間に、半絶縁性SiC層を備えることを特徴とする、請求項1又は2記載の窒化物半導体装置。
【請求項5】
前記アモルファスカーボン層は、ダイヤモンドライクカーボン層であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項6】
導電性SiC基板上に窒化物半導体積層構造を形成し、
前記窒化物半導体積層構造の活性領域の下方の領域に位置する前記導電性SiC基板を除去し、
前記導電性SiC基板を除去した領域にアモルファスカーボン層を形成することを特徴とする窒化物半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−164301(P2009−164301A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−341177(P2007−341177)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、総務省、「無線アクセス用ミリ波帯無線伝送システムの実現のための基盤技術の研究開発」のうち、「高出力GaN系HEMTの超高周波化技術」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】