薄膜の成膜方法
【課題】基板上への薄膜の成膜速度を上げ、かつトレンチやビアホールの底面に効率よく薄膜を成膜できる薄膜の形成方法を提供すること。
【解決手段】本発明の成膜方法は、開口幅又は開口径が3μm以下で、かつ、アスペクト比が1以上の段差であるトレンチ又はビアホールを有する基板上に薄膜を成膜する成膜方法であり、真空排気可能な処理室に、基板を支持する第1の電極と、前記基板に対向するように配置されターゲットを支持する第2の電極と、前記第2の電極の外側に配置されて当該第2の電極の内側にカスプ磁界を形成する複数のマグネットと、を備え、
前記処理室にNeを含む処理ガスを導入し、前記第1の電極と前記第2の電極の少なくとも一方にプラズマ形成用の高周波電力を供給すると共に、前記第2の電極上にカスプ磁場を生成してプラズマを発生させ、ターゲット物質をトレンチ又はビアホールを有する基板上に成膜する。
【解決手段】本発明の成膜方法は、開口幅又は開口径が3μm以下で、かつ、アスペクト比が1以上の段差であるトレンチ又はビアホールを有する基板上に薄膜を成膜する成膜方法であり、真空排気可能な処理室に、基板を支持する第1の電極と、前記基板に対向するように配置されターゲットを支持する第2の電極と、前記第2の電極の外側に配置されて当該第2の電極の内側にカスプ磁界を形成する複数のマグネットと、を備え、
前記処理室にNeを含む処理ガスを導入し、前記第1の電極と前記第2の電極の少なくとも一方にプラズマ形成用の高周波電力を供給すると共に、前記第2の電極上にカスプ磁場を生成してプラズマを発生させ、ターゲット物質をトレンチ又はビアホールを有する基板上に成膜する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路デバイス等における薄膜の成膜方法に係り、特に、開口幅又は開口径が3μm以下で、かつ、アスペクト比が1以上の段差であるトレンチやビアホールを有する基板上に薄膜を成膜する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高いイオン集中、より良いターゲット利用効率、高い成膜速度、そして、成膜の厚みが均一性が得られるプラズマ・スパッタ処理装置が提案されている。
図15は、従来のプラズマ・スパッタ処理装置の一例を示す断面図である。図15記載のプラズマ・スパッタ処理装置は、反応容器100の内部空間の少なくとも一部を介して平行に互いに向かい合う上部電極101と下部電極123を備えてなる反応容器100と上部電極101に固定されたターゲットプレート107とを備え、スパッタ工程によって処理される必要のある基板127は下部電極123の上に搭載されており、HF領域またはVHF領域で動作する1つの第1のrf電源118とMF領域で動作する他のrf電源1220が上部電極101に接続されている。図15のプラズマ・スパッタ処理装置によれば、イオン密度とイオンエネルギの独立した制御とターゲット材料の均一なエッチング速度とを伴って、基板127の全表面にわたる平面において均一に分散された大きな面積の高密度プラズマを作り出すことができ、かつ低いアスペクト比を有するプラズマ源を実現することができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2000−156374号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、市場の進化により特許文献1の技術に比べより高成膜効率、高カバレッジ率を求められるようになってきている。
【0005】
一方、図15記載のプラズマ・スパッタ処理装置において、上部電極101に印加する電力を上げると、電源から電極までの間の経路にかかる電圧が大きくなるために耐圧性能を上げる必要があり構造が複雑になり、耐圧性能の高い素材や構造はより高価である場合が多いために原価があがることや、また設計を十分に検討しないと電極にかかる電圧が大きいために異常放電を発生させやすくなるという問題があり、本発明者の知りうる範囲でこの点を解消するものは未だ知られていない。
また、昨今の省エネブームもあり、印加する電力を維持したまま薄膜の成膜速度を上げることや、ボトムカバレッジ率を上げることは非常に有用である。
そこで、本発明は、上記の事情に鑑み、開口幅又は開口径が3μm以下で、かつ、アスペクト比が1以上の段差であるトレンチやビアホールを有する基板上に薄膜を成膜するに際し適用する。その際、本発明は、カソード電極として機能する上部電極に同じ電力を印加してもトレンチやビアホール底面への薄膜の成膜速度を増加することができる薄膜の成膜方法をを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成すべく成された本発明の構成は以下の通りである。
【0007】
即ち、開口幅又は開口径が3μm以下で、かつ、アスペクト比が1以上の段差であるトレンチ又はビアホールを有する基板上に薄膜を成膜する成膜方法であって、
真空排気可能な処理室に、基板を支持する第1の電極と、前記基板に対向するように配置されターゲットを支持する第2の電極と、前記第2の電極の外側に配置されて当該第2の電極の内側にカスプ磁界を形成する複数のマグネットと、を備え、
前記処理室にNeを含む処理ガスを導入し、前記第1の電極と前記第2の電極の少なくとも一方にプラズマ形成用の高周波電力を供給すると共に、前記第2の電極上にカスプ磁場を生成してプラズマを発生させ、ターゲット物質をトレンチ又はビアホールを有する基板上に成膜することを特徴とする薄膜の成膜方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る薄膜の成膜方法は、、開口幅又は開口径が3μm以下で、かつ、アスペクト比が1以上の段差であるトレンチやビアホールを有する基板上に薄膜を成膜するに際して適用される。ArよりNeの方が軽い為に、ターゲットからスパッタされた金属粒子がNeと衝突しても金属粒子の進行方向を大きく変えられることが少なく基板に付着する確立が高くなる。そのため、Neガスを添加することでカソード電極として機能する第2の電極に同じ電力を印加しても基板上への薄膜の成膜速度が増加する。その結果、1枚の基板にかかる時間が短くなることで装置の処理能力が向上する。
【0009】
また、ArよりNeの方が軽い為に、ターゲットからスパッタされた金属粒子がNeと衝突してよりイオン化される。そのため、開口幅又は開口径が3μm以下で、かつ、アスペクト比が1以上の段差であるトレンチやビアホールを有する基板上に薄膜を成膜するに際には、Neガスを添加することでカソード電極として機能する上部電極に同じ電力を印加してもトレンチやビアホール底面への薄膜の成膜速度が増加する。その結果、1枚の基板にかかる時間が短くなることで装置の処理能力が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る薄膜の成膜方法を実施するプラズマ処理装置を例示する模式図である。
【図2】プラズマ処理装置の上壁(外側)における構造とその内側の構造を示す概略図である。
【図3】基板の断面形状を示す概略図である。
【図4】プラズマ処理装置のマグネットの磁場を示すトッププレートの部分断面図である。
【図5】マグネットの配列(I)を示すトッププレートの1/4領域の平面図である。
【図6】マグネットの配列(II)を示すトッププレートの1/4領域の平面図である。
【図7】マグネットとトッププレートとから構成される磁石機構により発生するカスプ磁場を示す概念図である。
【図8】本発明に係る薄膜の成膜方法における成膜状況を示す概略説明図である。
【図9】マグネットによる磁場と高周波電源による電界との関係を示した上面図である。
【図10】チタン(Ti)の成膜速度のNe添加率依存性を示す図である。
【図11】銅(Cu)の成膜速度のカソード電極の電力依存性を示す図である。
【図12】チタン(Ti)の成膜速度のN2添加率依存性を示す図である。
【図13】銅(Cu)のボトムカバレッジ率のアノード電力依存性を示す図である。
【図14】チタン(Ti)のボトムカバレッジ率のアスペクト比依存性を示す図である。
【図15】従来のプラズマ・スパッタ処理装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0012】
まず、図1から図3を参照して、本発明に係る薄膜の成膜方法を実施するプラズマ処理装置の構成について説明する。図1は、本発明に係る薄膜の成膜方法を実施するプラズマ処理装置を例示する模式図である。図2は、プラズマ処理装置の上壁(外側)における構造とその内側の構造を示す概略図である。図3は、基板の断面形状を示す概略図である。
【0013】
図1及び図2に示すように、本実施形態では、基板17上に薄膜を成膜するプラズマ処理装置として、例えば、マグネトロンスパッタリング装置を例示している。本実施形態のスパッタリング処理装置は、処理室として真空排気可能な反応容器10を備え、反応容器10内に基板17を支持するアノード電極15(第1の電極15)と、基板17に対向するように配され、不図示のターゲットを支持するカソード電極11(第2の電極11)と、を備えている。このスパッタリング処理は、反応容器10内の処理室に処理ガスを導入し、カソード電極11及びアノード電極15に高周波電源19、高周波電源8から異なる電力を印可すると共に、カソード電極11にカスプ磁場を形成する。これにより、スパッタリング装置は、処理室にプラズマを発生させ、基板17上にターゲット物質の薄膜を成膜する。
【0014】
反応容器10の排気ポート18には、不図示のコンダクタンスバルブ等を介して排気ポンプ等の排気装置が接続されている。また、反応容器10には、処理ガス(プロセスガス)の導入手段として、流量制御器やバルブなどを備えたガス導入系25が接続され、このガス導入系25から処理ガスが所定の流量で導入される(図4参照)。
【0015】
本実施形態の処理ガスとしては、Ne含む混合ガスを用いることができる。反応性スパッタリングを行う場合には、Ne含む混合ガスと酸素及び窒素からなる反応性ガスとの混合ガスを用いることができる。反応性ガスは、酸素及び窒素からなるガス群より選択された少なくとも1種から選択して用いられる。
【0016】
この反応容器10は、トッププレート11と円筒型側壁12とボトムプレート13から構成されている。円筒型側壁12の下側部分12bとボトムプレート13は、例えば、ステンレス鋼またはアルミニウム(Al)等の金属によって形成されている。円筒型側壁12の上側部分12aは、セラミック(誘電体物質)によって形成されている。トッププレート11は平板円形形状を呈し、例えば、Al等の非磁性金属によって形成されている。
【0017】
トッププレート11は、円筒型側壁12の上側部分12aの上に搭載されているので、反応容器10の他の部分から電気的に絶縁されている。トッププレート11は、プラズマを生成するときにカソード電極として機能する。カソード電極11は、整合回路20を介して可変電圧を印可可能な高周波電源19に接続されている。カソード電極11には、高周波電源19から必要な高周波電力が給電される。カソード電極11の上(背面)には、複数のマグネット6で構成された磁石機構が配置されている。この磁石機構を設けることによって、プラズマを高密度で形成することができる。この磁石機構は、典型的には、極性の異なる磁石を四角形の頂点毎に配置した構造の回路であり、カスプ磁場(Cusp Field)を生成する。磁石機構の詳細については、後述する。
【0018】
カソード電極11の前面(下面)に支持されるターゲットの材料としては、例えばタンタル(Ta)、銅(Cu)やチタン(Ti)等の単一組成のものを用いることができ、GeSbTeやNiFeの様な2以上の組成からなる複合組成のものも用いることができる。ターゲット材料のうち、TaやCuは非磁性材料であり、一方、NiFeは磁性材料である。
【0019】
なお、円筒型側壁12の上側部分12aと下側部分12bの直径は同じである。当該直径の値は重要な問題ではなく、40cmから60cmの間で変わり得る。円筒型側壁12のセラミック部分12aの高さは同様にまた重要ではなく、1cmから5cmの範囲に存在する。円筒型側壁12の下側部分12bとボトムプレート13は接地線14を介して電気的に接地されている。トッププレート11の直径は、円筒型側壁12の直径に相当する。
【0020】
反応容器10の内部空間には、ボトムプレート13上に取り付けられたアノード電極15として機能する基板ホルダ15が配されている。この基板ホルダ15は、例えば整合回路9を介して可変電圧を印可可能な高周波電源8に接続されている。この高周波電源8は反応容器10の外側に配置されている。
【0021】
反応容器10内での処理対象となる基板17は、静電吸着保持装置等の不図示の基板保持機構により基板ホルダ15上に保持される。基板ホルダ15は、ボトムプレート13に平行に配置され、絶縁体16によって反応容器10から電気的に絶縁されている。基板ホルダ15は、例えば、円板状の保持テーブルであって、静電吸着用電極等の不図示の保持機構を備えている。基板ホルダ15は、その上面(表面)に基板17を載置し、保持機構により基板17はその処理面を上方へ臨ませて保持される。
【0022】
なお、基板ホルダ15は、モータ等の不図示の回転機構により、基板17の面内方向に回転可能に形成してもよい。また、基板ホルダ15には、ヒータ等の不図示の加熱機構を内蔵していることが好ましい。本実施形態の基板温度は、例えば、マイナス90℃からプラス900℃の温度範囲で設定することができる。
【0023】
基板17としては、例えば、半導体ウエハが挙げられ、基板のみの状態もしくはトレイに搭載された状態で、基板ホルダ15に保持される。基板17は、図3に示すように、開口幅又は開口径が3μm以下で、かつ、アスペクト比(深さ/開口幅又は開口径)が1以上の凹状段差であるトレンチ31やビアホール32を有している。以下、トレンチ31やビアホール32を単に段差と呼ぶこともある。トレンチ31やビアホール32は、底部33及び内側壁34を有している。基板17としては、シリコンウエハなどの単結晶半導体基板、多結晶シリコン膜、微結晶シリコン膜やアモルファスシリコン膜などの非単結晶シリコン膜を持ったガラス基板、GaAsなどの化合物半導体基板を用いることができる。また、基板17は、各種素子、例えば、トランジスタ、コンデンサー、光電変換素子が設けられたものであってもよい。
【0024】
次に、図4から図7を参照して、トッププレート11上に配置した磁石機構について詳細に説明する。図4は、プラズマ処理装置のマグネットの磁場を示すトッププレートの部分断面図である。図5は、マグネットの配列(I)を示すトッププレートの1/4領域の平面図である。図6は、マグネットの配列(II)を示すトッププレートの1/4領域の平面図である。図7は、図5に示すマグネットとトッププレートとから構成される磁石機構により発生するカスプ磁場を示す概念図である。
【0025】
図4から図7に示すように、複数のマグネット21がトッププレート21の上に配置され、さらにトッププレート11の外側表面に固定されている。マグネット21は対称的な位置関係で配置されるので、図5及び図6では、トッププレート11の1/4の領域だけが平面図の状態で示される。
【0026】
マグネット21は、トッププレート11の内側にカスプ磁場23を生成するように、トッププレート11の外側表面の上に配置される。この場合、厳密に述べると、カスプ磁場23は、4つのマグネット21で決められるポイント・カスプ(point−cusp)磁界と呼ばれる。ここで、本明細書において、「ポイント・カスプ磁場」とは、図7に示すように隣接する4つのマグネット6により閉じたカスプ磁場を形成することをいう。
【0027】
ポイント・カスプ磁場を形成するためのただ1つの要求は、各々隣り合うマグネットがトッププレート11に向かう極で反対の極性を持たなければならないということである。このことは反応容器10の内側に向かうマグネットの極性が交互に変化するということを意味する。例えば、図5に示すように、トッププレート11の上で点線によって描かれた四角形22の各々の角部分(コーナー)に配置される。図5及び図6においてNとSはマグネット21の磁気的極性を意味する。いかなる2つの隣り合うマグネットの間隔(距離)は重要なことではなく、マグネットの強さとトッププレート11の直径に依存して2cmから10cmの範囲で変えることができる。
【0028】
図4に示すように、マグネット21の配列は、トッププレート11の下側で、ポイント・カスプ磁場23を、2つの隣り合う当該磁場23の間に作られるカスプ23aと共に、作る。符号23bは磁束線を示している。磁極から出た磁束線23bは直接に最も近い反対の磁極に向かって曲がる。こうして、ポイント・カスプ磁場23が形成される。トッププレート11の内側表面の近くの空間において生成されたポイント・カスプ磁場23は、ループを作るように閉じられた磁束線23bを形成する。トッププレート11の内側表面の近傍において、多くの磁束ループが形成され、その結果として磁界のカスプ23aが形成される。トッププレート11上のマグネット21によって形成された配列構造に依存してトッププレート11の下側のプラズマの均一性が変化する。
【0029】
マグネット21の形状は、好ましくは、断面の形状がそれぞれ四角と円である立方体または円柱体である。マグネット21の各々はトッププレート11の外側表面上に形成された穴11aの中に配置される。例えば、トッププレート11の厚みはおよそ20mmであり、穴11aの深さはおよそ17mmである。したがって、マグネット21の底の面は反応容器10の内部空間に接近している。
【0030】
マグネット21の断面形状は円形または四角形である。もしマグネット21の断面形状が円形であるならば、その直径は10mmから40mmの範囲の中に含まれる。直径の値は重要ではない。もしマグネット21の断面形状が四角であるならば、円形断面形状を有するマグネットのそれらに相当する寸法が選択される。マグネット21の高さは同様にまた重要ではなく、3mmから10mmの範囲内にある。マグネット21の磁気的強さはトッププレート11の下側におよそ50ガウス(Gauss)から500ガウスの磁界の強さを持つように選択される。
【0031】
加えて図4に示すように、円形ガス通路24がトッププレート11の内部に形成される。円形ガス通路24はガス導入系25を通してガス供給源(図示されず)に結合されており、トッププレート11の内側表面に複数のガス導入孔26を有している。ガス供給源によって供給される処理ガス(プロセスガス)は円形ガス通路24とガス導入孔26を通して反応容器10の内部空間に導入される。処理ガスは第1に円形ガス通路24に供給され、それからいくつかのガス導入孔26を通して反応容器10の処理室に導入される。
【0032】
反応容器10の内部圧力は、ガスの流速を調整すること、およびガス排気ポート18に配置された良く知られた可変オリフィス(図示されず)を調整することによって制御される。反応容器10の内部圧力(処理室の圧力)は、例えば、0.2Paから27Paの範囲で変化される。本実施形態では、後述する本発明に係る薄膜の成膜方法において、第2工程の処理室の圧力が第1工程の処理室の圧力よりも低く設定される。なお、処理室の具体的な設定圧力については、本発明に係る薄膜の成膜方法の説明において詳述する。
【0033】
本実施形態では、カソード電極11に給電する高周波電源19の周波数は、およそ10MHzから300MHzの範囲にある。一方、アノード電極15に給電する高周波電源8の周波数は、およそ1MHzから15MHzの範囲にある。
【0034】
さらに、本実施形態では、後述する本発明に係る薄膜の成膜方法において、第2工程のカソード電力に対するアノード電力の比が、第1工程のカソード電力に対するアノード電力の比よりも大きくなるように設定される。なお、具体的な電力比の設定については、本発明に係る薄膜の成膜方法において詳述する。なお、アノード電極15は接地した状態で使用しても構わない。
【0035】
次に、前述のプラズマ源を備えた反応容器10におけるプラズマ発生の機構を説明する。図4において、高周波電流19aが高周波電源19からカソード電極11に給電されるとき、高周波電力の静電的結合の機構によってプラズマが生成される。その時、プラズマにおける電子はカソード電極11上に配置されるマグネット21によって作られたポイント・カスプ磁場23の存在に基づきサイクロトロン回転を受ける。このことは電子の通過路の長さを増大させ、それによってプロセスガスのより高いイオン化割合をもたらす。加えて、電子とイオンのカソード電極11の衝突がポイント・カスプ磁場23によって部分的に抑圧される。それ故に、磁場23の存在はプラズマ密度の増大という結果をもたらす。
【0036】
一般的に磁界が存在しない場合、2つの平行プレートの間に静電的結合の機構によって生成されたプラズマは、より高い半径方向の均一性を持つ。磁界が存在する場合においては、このプラズマ均一性は変化する。カソード電極11上に配置されたマグネット21はカソード電極11の下側にポイント・カスプ磁場23を形成する。カソード電極11に平行に存在する磁場23の強さが最大である場所においてプラズマ密度は最大である。同様にトッププレートに平行に存在する磁場23の強さが最小であるところの場所ではプラズマ密度は低い。それ故に、カソード電極11の近傍においてプラズマ密度は最大と最小となる。しかしながら、プラズマ密度のこれらの最大と最小は互いに接近しているので、下流側におけるカソード電極11からより短い距離において拡散がプラズマの均一性を作る。さらに、マグネット21は交互に反対の極性となるように配置されているので、ポイント・カスプ磁場23の磁束線23bはカソード電極11の内側表面から近い距離で曲がる。それ故に、カソード電極11からより近い距離において磁界がない環境が得られる。
【0037】
均一なプラズマ密度を得る目的で、前述された構成とは異なる他のマグネット21の配列を見出だすこともできる。例えば、カソード電極11の中心部付近の2つの隣り合うマグネットの間の間隔を周辺部付近の隣り合う2つのマグネットの間隔よりも大きくすることができるし、あるいは、中央部におけるマグネットを取り除くこともできる。ここで、マグネット21はカソード電極11の周縁部分に接近した所のみに帯状に(バンドとして)配置されている。半径r1はカソード電極(トッププレート)11の半径であり、半径r2はマグネットが配置されていない円形領域の半径である。これらの配列によって、トッププレート11の中心部付近のマグネット21の個数は周縁部に近い部分の個数よりも少なくなる。すなわち、トッププレート11の中心部およびその周縁の磁束密度は、その周縁部に近い部分の磁束密度よりも低くなる。
【0038】
次に、再び図1から図3及び図8を参照して、上記のプラズマ処理装置の作用と共に、本発明に係る薄膜の成膜方法について説明する。図8は、本発明に係る薄膜の成膜方法における成膜状況を示す概略説明図である。なお、カソード電極11に支持するターゲットとしてチタニウム(Ti)又は銅(Cu)を用い、反応容器10内に処理ガスとして、Ar(アルゴン)とNe(ネオン)との混合ガスを導入した。
【0039】
本発明に係る薄膜の成膜方法の特徴点は、処理ガスとして、Ar(アルゴン)とNe(ネオン)との混合ガスを用いた点である。まず、処理ガスとして、Ar(アルゴン)とNe(ネオン)との混合ガスを用いた理由を説明する。
【0040】
図10は、チタン(Ti)の成膜速度のNe添加率依存性を示す図である。カソード電極11に支持するターゲットとしてチタン(Ti)を用い、開口幅又は開口径が3μm以下で、かつ、アスペクト比が1以上の段差であるトレンチやビアホールを有する基板上に、処理ガスがArのみの場合とNeを添加した場合の薄膜の成膜速度を比較した。この図から、Neガスの添加が増えると薄膜の成膜速度が増えていることがわかる。この時、いずれも処理室の圧力は14Pa、カソード電極に印加した電力は3200Wである。なお、軽い希ガスのヘリウムを添加すると、軽すぎる為にスパッタ率が小さくなり、成膜速度は遅くなる。またクリプトンやキセノンのように重い希ガスを添加した場合は、金属粒子と衝突した時の散乱が大きくなり、成膜速度が遅くなる。
【0041】
図11は、銅(Cu)の成膜速度のカソード電極の電力依存性を示す図である。カソード電極11に支持するターゲットとして銅(Cu)を用い、開口幅又は開口径が3μm以下で、かつ、アスペクト比が1以上の段差であるトレンチやビアホールを有する基板上に、処理ガスがArのみの場合とNeを添加した場合の薄膜の成膜速度を比較した。この図から、Neガスを用いると薄膜の成膜速度が増えることがわかる。この時、いずれも処理室の圧力は8Pa、カソード電極に印加した電力は4000Wである。なお、本発明の成膜方法では、カソード電圧にかかる電圧は200V以下であり、すなわちイオンエネルギーも200eV以下になる。200eV以下の範囲では希ガスの種類によるスパッタ率の差は見られないので、この範囲ではスパッタ率と成膜速度は無関係である。
【0042】
図12は、チタン(Ti)の成膜速度のN2添加率依存性を示す図である。カソード電極11に支持するターゲットとしてチタン(Ti)を用い、開口幅又は開口径が3μm以下で、かつ、アスペクト比が1以上の段差であるトレンチやビアホールを有する基板上に、処理ガスがArとN2の場合とNeとN2の場合の薄膜の成膜速度を比較した。この図から、Neガスを用いると薄膜の成膜速度が増えることがわかる。この時、いずれも処理室の圧力は7Pa、カソード電極に印加した電力は5000Wである。尚、本発明の成膜方法では、カソード電圧にかかる電圧は200V以下であり、すなわちイオンエネルギーも200eV以下になる。200eV以下の範囲では希ガスの種類によるスパッタ率の差は見られないので、この範囲ではスパッタ率と成膜速度は無関係である。
【0043】
図13は、銅(Cu)のボトムカバレッジ率のアノード電力依存性を示す図である。カソード電極11に支持するターゲットとして銅(Cu)を用い、開口幅又は開口径が3μm以下で、かつ、アスペクト比が1以上の段差であるトレンチやビアホールを有する基板上に、処理ガスがArのみの場合とNeを添加した場合のトレンチやビアホールのボトムカバレッジ率を比較した。この図から、Neガスを用いるとトレンチやビアホールのボトムカバレッジ率が増えることがわかる。この時、いずれも処理室の圧力は8Pa、カソード電極に印加した電力は4000Wである。尚、本発明の成膜方法では、カソード電圧にかかる電圧は200V以下であり、すなわちイオンエネルギーも200eV以下になる。200eV以下の範囲では希ガスの種類によるスパッタ率の差は見られないので、この範囲ではスパッタ率と成膜速度は無関係である。
【0044】
図14は、チタン(Ti)のボトムカバレッジ率のアスペクト比依存性を示す図である。カソード電極11に支持するターゲットとしてチタン(Ti)を用い、開口幅又は開口径が3μm以下で、かつ、アスペクト比が1以上の段差であるトレンチやビアホールを有する基板上に、処理ガスがArのみの場合とNeを添加した場合のトレンチやビアホールのボトムカバレッジ率を比較した。この図から、Neガスを用いるとトレンチやビアホールのボトムカバレッジ率が増えることがわかる。この時、いずれも処理室の圧力は14Pa、カソード電極に印加した電力は3200Wである。
【0045】
上記の通り、図10から図14により、カソード電極11に支持するターゲットとしてチタニウム(Ti)又は銅(Cu)を用い、反応容器10内に処理ガスとして、Ar(アルゴン)とNe(ネオン)との混合ガスを導入した場合、同じ電力を印加してもトレンチやビアホール底面への薄膜の成膜速度が増加することを見いだした。
【0046】
処理ガスとして、Ar(アルゴン)とNe(ネオン)との混合ガスを導入した理由を更に、説明する。Neは、Arよりも重量が軽い為に、ターゲットからスパッタされた金属粒子がNeと衝突してよりイオン化されたためと考えられる。特に本発明においては、第2の電極であるカソード電極の内側にポイントカスプ磁界を形成する複数のマグネットが配置されている。このため、もともと高密度プラズマが発生する機構を有しているが、処理ガスとして、Ar(アルゴン)とNe(ネオン)との混合ガスを処理室内に導入することにより、NeはArより重量が軽い為に、ターゲットからスパッタされた金属粒子がNeと衝突してよりイオン化されたためと考えられる。
【0047】
次に、本発明の薄膜の成膜方法について説明する。本発明に係る薄膜の成膜方法は、まず、反応容器10内を排気系により所定の真空度まで排気する。基板ホルダ15に内蔵された不図示のヒータに電力供給し、基板ホルダ15を設定温度に加熱する。
【0048】
次に、反応容器10の側壁に配設された不図示のゲートバルブを開け、基板搬送経路を開放する。この状態で、ロボットアーム等の不図示の搬送アームを用いて、基板17を基板ホルダ15の上面へと搬送する。そして、不図示の保持機構により基板ホルダ15に基板8を保持する。上記搬送アームを後退させた後、ゲートバルブを閉じる。
【0049】
基板17の表面温度が所定の温度(例えば、900℃)に到達するまで加熱時間をおいた後、ガス導入系25より所定の流量の処理ガスを導入する。また、不図示の排気系のコンダクタンスバルブ等により反応容器1の内部を任意の圧力に調整する。
【0050】
この処理ガスの導入下において、上記第2の電極11、第1の電極15に高周波電源19、高周波電源8から異なる電力を印可すると共に、カソード電極11(第2の電極11)にカスプ磁場を生成してプラズマを発生させる。このプラズマを発生により、開口幅又は開口径3μm以下で、かつ、アスペクト比が1以上の段差であるトレンチ31又はビアホール32を有する基板17の上にターゲット物質の薄膜を成膜する。
【0051】
このように、本発明に係る薄膜の成膜方法は、開口幅又は開口径が3μm以下で、かつ、アスペクト比が1以上の段差であるトレンチ31やビアホール32を有する基板17上に薄膜を成膜するに際して適用する。
【0052】
上記の電力比の条件下において、カソード電極11(第2の電極11)に給電する高周波電源19の電力は300Wから10000Wの範囲で選択して設定し、アノード電極15(第1の電極15)に給電する高周波電源8の電力は0Wから2000Wの範囲で選択して設定する。具体的には、基板17の径(サイズ)が12インチの場合、カソード電力は300Wから10000Wの範囲で設定し、アノード電力は0Wから2000Wで設定することが望ましい。
【0053】
なお、アノード電力の下限(0W)から分かるように、アノード電極15(第1の電極)は接地した状態で使用しても構わない。
【0054】
所定の膜厚を堆積後、高周波電源8、高周波電源19からの電力供給を停止する。さらに、ガス導入系25からの処理ガスの導入を停止し、排気系のコンダクタンスバルブ等を開放して反応容器10の内部を排気する。
【0055】
次に、ゲートバルブを開けて基板搬送経路を開放し、搬送アームを挿入して基板17を保持し、搬送アームを後退させて反応容器10から基板17を搬出する。最後に、ゲートバルブを閉じて、全工程を終了する。なお、そのまま、リフロー工程等の次工程に移行してもよい。
【0056】
このように本発明に係る薄膜の成膜方法では、ターゲットから飛来するターゲット粒子で基板17上に成膜をしつつ、基板17を載置したアノード電極15にバイアスを印加する。これにより、アノード電極15とカソード電極11との間で発生したプアズマ中の希ガス(アルゴンとネオンの混合ガス)イオンをアノード電極15に引き込み、基板17をターゲットとして再スパッタ(エッチング)する。したがって、ECRプラズマCVDで発生する程の膜質の変化はない。
【0057】
本実施形態では、アルゴンとネオンの混合ガスを用いているため、膜質を維持することが可能である。さらに、カソード電極11の高周波電源19の周波数を10MHz〜300MHzの範囲としている。そのため、第1工程では高イオン化率下で成膜しうるので、トレンチ31又はビアホール32(段差)の底部33に多くの膜を付け、かつ内側壁34には殆ど膜が付かない。
【0058】
以上説明したように、本発明によれば、開口幅または開口径が3μm以下で、アスペクト比1以上、特に1.5以上の高アスペクト比のトレンチ31又はビアホール32の底部33と内側壁34の双方に、十分な膜厚でバリヤー膜を成膜できる。その結果、次工程のAlリフローを実施したときに、トレンチ31又はビアホール32内にボイドを生じることなく、極めて平坦なAl膜を成膜できる。したがって、CMP(Chmical Mechanical Polishing)処理のような平坦化処理を省略することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、例示したマグネトロンスパッタリング装置のみならず、ドライエッチング装置、プラズマアッシャ装置、CVD装置および液晶ディスプレイ製造装置等のプラズマ処理装置に応用して適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
8、19 高周波電源
10 反応容器
11 第2の電極(トッププレート)
15 第1の電極(基本ホルダー)
17 基板
31 トレンチ
32 ビアホール
33 底部
34 内側壁
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路デバイス等における薄膜の成膜方法に係り、特に、開口幅又は開口径が3μm以下で、かつ、アスペクト比が1以上の段差であるトレンチやビアホールを有する基板上に薄膜を成膜する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高いイオン集中、より良いターゲット利用効率、高い成膜速度、そして、成膜の厚みが均一性が得られるプラズマ・スパッタ処理装置が提案されている。
図15は、従来のプラズマ・スパッタ処理装置の一例を示す断面図である。図15記載のプラズマ・スパッタ処理装置は、反応容器100の内部空間の少なくとも一部を介して平行に互いに向かい合う上部電極101と下部電極123を備えてなる反応容器100と上部電極101に固定されたターゲットプレート107とを備え、スパッタ工程によって処理される必要のある基板127は下部電極123の上に搭載されており、HF領域またはVHF領域で動作する1つの第1のrf電源118とMF領域で動作する他のrf電源1220が上部電極101に接続されている。図15のプラズマ・スパッタ処理装置によれば、イオン密度とイオンエネルギの独立した制御とターゲット材料の均一なエッチング速度とを伴って、基板127の全表面にわたる平面において均一に分散された大きな面積の高密度プラズマを作り出すことができ、かつ低いアスペクト比を有するプラズマ源を実現することができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2000−156374号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、市場の進化により特許文献1の技術に比べより高成膜効率、高カバレッジ率を求められるようになってきている。
【0005】
一方、図15記載のプラズマ・スパッタ処理装置において、上部電極101に印加する電力を上げると、電源から電極までの間の経路にかかる電圧が大きくなるために耐圧性能を上げる必要があり構造が複雑になり、耐圧性能の高い素材や構造はより高価である場合が多いために原価があがることや、また設計を十分に検討しないと電極にかかる電圧が大きいために異常放電を発生させやすくなるという問題があり、本発明者の知りうる範囲でこの点を解消するものは未だ知られていない。
また、昨今の省エネブームもあり、印加する電力を維持したまま薄膜の成膜速度を上げることや、ボトムカバレッジ率を上げることは非常に有用である。
そこで、本発明は、上記の事情に鑑み、開口幅又は開口径が3μm以下で、かつ、アスペクト比が1以上の段差であるトレンチやビアホールを有する基板上に薄膜を成膜するに際し適用する。その際、本発明は、カソード電極として機能する上部電極に同じ電力を印加してもトレンチやビアホール底面への薄膜の成膜速度を増加することができる薄膜の成膜方法をを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成すべく成された本発明の構成は以下の通りである。
【0007】
即ち、開口幅又は開口径が3μm以下で、かつ、アスペクト比が1以上の段差であるトレンチ又はビアホールを有する基板上に薄膜を成膜する成膜方法であって、
真空排気可能な処理室に、基板を支持する第1の電極と、前記基板に対向するように配置されターゲットを支持する第2の電極と、前記第2の電極の外側に配置されて当該第2の電極の内側にカスプ磁界を形成する複数のマグネットと、を備え、
前記処理室にNeを含む処理ガスを導入し、前記第1の電極と前記第2の電極の少なくとも一方にプラズマ形成用の高周波電力を供給すると共に、前記第2の電極上にカスプ磁場を生成してプラズマを発生させ、ターゲット物質をトレンチ又はビアホールを有する基板上に成膜することを特徴とする薄膜の成膜方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る薄膜の成膜方法は、、開口幅又は開口径が3μm以下で、かつ、アスペクト比が1以上の段差であるトレンチやビアホールを有する基板上に薄膜を成膜するに際して適用される。ArよりNeの方が軽い為に、ターゲットからスパッタされた金属粒子がNeと衝突しても金属粒子の進行方向を大きく変えられることが少なく基板に付着する確立が高くなる。そのため、Neガスを添加することでカソード電極として機能する第2の電極に同じ電力を印加しても基板上への薄膜の成膜速度が増加する。その結果、1枚の基板にかかる時間が短くなることで装置の処理能力が向上する。
【0009】
また、ArよりNeの方が軽い為に、ターゲットからスパッタされた金属粒子がNeと衝突してよりイオン化される。そのため、開口幅又は開口径が3μm以下で、かつ、アスペクト比が1以上の段差であるトレンチやビアホールを有する基板上に薄膜を成膜するに際には、Neガスを添加することでカソード電極として機能する上部電極に同じ電力を印加してもトレンチやビアホール底面への薄膜の成膜速度が増加する。その結果、1枚の基板にかかる時間が短くなることで装置の処理能力が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る薄膜の成膜方法を実施するプラズマ処理装置を例示する模式図である。
【図2】プラズマ処理装置の上壁(外側)における構造とその内側の構造を示す概略図である。
【図3】基板の断面形状を示す概略図である。
【図4】プラズマ処理装置のマグネットの磁場を示すトッププレートの部分断面図である。
【図5】マグネットの配列(I)を示すトッププレートの1/4領域の平面図である。
【図6】マグネットの配列(II)を示すトッププレートの1/4領域の平面図である。
【図7】マグネットとトッププレートとから構成される磁石機構により発生するカスプ磁場を示す概念図である。
【図8】本発明に係る薄膜の成膜方法における成膜状況を示す概略説明図である。
【図9】マグネットによる磁場と高周波電源による電界との関係を示した上面図である。
【図10】チタン(Ti)の成膜速度のNe添加率依存性を示す図である。
【図11】銅(Cu)の成膜速度のカソード電極の電力依存性を示す図である。
【図12】チタン(Ti)の成膜速度のN2添加率依存性を示す図である。
【図13】銅(Cu)のボトムカバレッジ率のアノード電力依存性を示す図である。
【図14】チタン(Ti)のボトムカバレッジ率のアスペクト比依存性を示す図である。
【図15】従来のプラズマ・スパッタ処理装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0012】
まず、図1から図3を参照して、本発明に係る薄膜の成膜方法を実施するプラズマ処理装置の構成について説明する。図1は、本発明に係る薄膜の成膜方法を実施するプラズマ処理装置を例示する模式図である。図2は、プラズマ処理装置の上壁(外側)における構造とその内側の構造を示す概略図である。図3は、基板の断面形状を示す概略図である。
【0013】
図1及び図2に示すように、本実施形態では、基板17上に薄膜を成膜するプラズマ処理装置として、例えば、マグネトロンスパッタリング装置を例示している。本実施形態のスパッタリング処理装置は、処理室として真空排気可能な反応容器10を備え、反応容器10内に基板17を支持するアノード電極15(第1の電極15)と、基板17に対向するように配され、不図示のターゲットを支持するカソード電極11(第2の電極11)と、を備えている。このスパッタリング処理は、反応容器10内の処理室に処理ガスを導入し、カソード電極11及びアノード電極15に高周波電源19、高周波電源8から異なる電力を印可すると共に、カソード電極11にカスプ磁場を形成する。これにより、スパッタリング装置は、処理室にプラズマを発生させ、基板17上にターゲット物質の薄膜を成膜する。
【0014】
反応容器10の排気ポート18には、不図示のコンダクタンスバルブ等を介して排気ポンプ等の排気装置が接続されている。また、反応容器10には、処理ガス(プロセスガス)の導入手段として、流量制御器やバルブなどを備えたガス導入系25が接続され、このガス導入系25から処理ガスが所定の流量で導入される(図4参照)。
【0015】
本実施形態の処理ガスとしては、Ne含む混合ガスを用いることができる。反応性スパッタリングを行う場合には、Ne含む混合ガスと酸素及び窒素からなる反応性ガスとの混合ガスを用いることができる。反応性ガスは、酸素及び窒素からなるガス群より選択された少なくとも1種から選択して用いられる。
【0016】
この反応容器10は、トッププレート11と円筒型側壁12とボトムプレート13から構成されている。円筒型側壁12の下側部分12bとボトムプレート13は、例えば、ステンレス鋼またはアルミニウム(Al)等の金属によって形成されている。円筒型側壁12の上側部分12aは、セラミック(誘電体物質)によって形成されている。トッププレート11は平板円形形状を呈し、例えば、Al等の非磁性金属によって形成されている。
【0017】
トッププレート11は、円筒型側壁12の上側部分12aの上に搭載されているので、反応容器10の他の部分から電気的に絶縁されている。トッププレート11は、プラズマを生成するときにカソード電極として機能する。カソード電極11は、整合回路20を介して可変電圧を印可可能な高周波電源19に接続されている。カソード電極11には、高周波電源19から必要な高周波電力が給電される。カソード電極11の上(背面)には、複数のマグネット6で構成された磁石機構が配置されている。この磁石機構を設けることによって、プラズマを高密度で形成することができる。この磁石機構は、典型的には、極性の異なる磁石を四角形の頂点毎に配置した構造の回路であり、カスプ磁場(Cusp Field)を生成する。磁石機構の詳細については、後述する。
【0018】
カソード電極11の前面(下面)に支持されるターゲットの材料としては、例えばタンタル(Ta)、銅(Cu)やチタン(Ti)等の単一組成のものを用いることができ、GeSbTeやNiFeの様な2以上の組成からなる複合組成のものも用いることができる。ターゲット材料のうち、TaやCuは非磁性材料であり、一方、NiFeは磁性材料である。
【0019】
なお、円筒型側壁12の上側部分12aと下側部分12bの直径は同じである。当該直径の値は重要な問題ではなく、40cmから60cmの間で変わり得る。円筒型側壁12のセラミック部分12aの高さは同様にまた重要ではなく、1cmから5cmの範囲に存在する。円筒型側壁12の下側部分12bとボトムプレート13は接地線14を介して電気的に接地されている。トッププレート11の直径は、円筒型側壁12の直径に相当する。
【0020】
反応容器10の内部空間には、ボトムプレート13上に取り付けられたアノード電極15として機能する基板ホルダ15が配されている。この基板ホルダ15は、例えば整合回路9を介して可変電圧を印可可能な高周波電源8に接続されている。この高周波電源8は反応容器10の外側に配置されている。
【0021】
反応容器10内での処理対象となる基板17は、静電吸着保持装置等の不図示の基板保持機構により基板ホルダ15上に保持される。基板ホルダ15は、ボトムプレート13に平行に配置され、絶縁体16によって反応容器10から電気的に絶縁されている。基板ホルダ15は、例えば、円板状の保持テーブルであって、静電吸着用電極等の不図示の保持機構を備えている。基板ホルダ15は、その上面(表面)に基板17を載置し、保持機構により基板17はその処理面を上方へ臨ませて保持される。
【0022】
なお、基板ホルダ15は、モータ等の不図示の回転機構により、基板17の面内方向に回転可能に形成してもよい。また、基板ホルダ15には、ヒータ等の不図示の加熱機構を内蔵していることが好ましい。本実施形態の基板温度は、例えば、マイナス90℃からプラス900℃の温度範囲で設定することができる。
【0023】
基板17としては、例えば、半導体ウエハが挙げられ、基板のみの状態もしくはトレイに搭載された状態で、基板ホルダ15に保持される。基板17は、図3に示すように、開口幅又は開口径が3μm以下で、かつ、アスペクト比(深さ/開口幅又は開口径)が1以上の凹状段差であるトレンチ31やビアホール32を有している。以下、トレンチ31やビアホール32を単に段差と呼ぶこともある。トレンチ31やビアホール32は、底部33及び内側壁34を有している。基板17としては、シリコンウエハなどの単結晶半導体基板、多結晶シリコン膜、微結晶シリコン膜やアモルファスシリコン膜などの非単結晶シリコン膜を持ったガラス基板、GaAsなどの化合物半導体基板を用いることができる。また、基板17は、各種素子、例えば、トランジスタ、コンデンサー、光電変換素子が設けられたものであってもよい。
【0024】
次に、図4から図7を参照して、トッププレート11上に配置した磁石機構について詳細に説明する。図4は、プラズマ処理装置のマグネットの磁場を示すトッププレートの部分断面図である。図5は、マグネットの配列(I)を示すトッププレートの1/4領域の平面図である。図6は、マグネットの配列(II)を示すトッププレートの1/4領域の平面図である。図7は、図5に示すマグネットとトッププレートとから構成される磁石機構により発生するカスプ磁場を示す概念図である。
【0025】
図4から図7に示すように、複数のマグネット21がトッププレート21の上に配置され、さらにトッププレート11の外側表面に固定されている。マグネット21は対称的な位置関係で配置されるので、図5及び図6では、トッププレート11の1/4の領域だけが平面図の状態で示される。
【0026】
マグネット21は、トッププレート11の内側にカスプ磁場23を生成するように、トッププレート11の外側表面の上に配置される。この場合、厳密に述べると、カスプ磁場23は、4つのマグネット21で決められるポイント・カスプ(point−cusp)磁界と呼ばれる。ここで、本明細書において、「ポイント・カスプ磁場」とは、図7に示すように隣接する4つのマグネット6により閉じたカスプ磁場を形成することをいう。
【0027】
ポイント・カスプ磁場を形成するためのただ1つの要求は、各々隣り合うマグネットがトッププレート11に向かう極で反対の極性を持たなければならないということである。このことは反応容器10の内側に向かうマグネットの極性が交互に変化するということを意味する。例えば、図5に示すように、トッププレート11の上で点線によって描かれた四角形22の各々の角部分(コーナー)に配置される。図5及び図6においてNとSはマグネット21の磁気的極性を意味する。いかなる2つの隣り合うマグネットの間隔(距離)は重要なことではなく、マグネットの強さとトッププレート11の直径に依存して2cmから10cmの範囲で変えることができる。
【0028】
図4に示すように、マグネット21の配列は、トッププレート11の下側で、ポイント・カスプ磁場23を、2つの隣り合う当該磁場23の間に作られるカスプ23aと共に、作る。符号23bは磁束線を示している。磁極から出た磁束線23bは直接に最も近い反対の磁極に向かって曲がる。こうして、ポイント・カスプ磁場23が形成される。トッププレート11の内側表面の近くの空間において生成されたポイント・カスプ磁場23は、ループを作るように閉じられた磁束線23bを形成する。トッププレート11の内側表面の近傍において、多くの磁束ループが形成され、その結果として磁界のカスプ23aが形成される。トッププレート11上のマグネット21によって形成された配列構造に依存してトッププレート11の下側のプラズマの均一性が変化する。
【0029】
マグネット21の形状は、好ましくは、断面の形状がそれぞれ四角と円である立方体または円柱体である。マグネット21の各々はトッププレート11の外側表面上に形成された穴11aの中に配置される。例えば、トッププレート11の厚みはおよそ20mmであり、穴11aの深さはおよそ17mmである。したがって、マグネット21の底の面は反応容器10の内部空間に接近している。
【0030】
マグネット21の断面形状は円形または四角形である。もしマグネット21の断面形状が円形であるならば、その直径は10mmから40mmの範囲の中に含まれる。直径の値は重要ではない。もしマグネット21の断面形状が四角であるならば、円形断面形状を有するマグネットのそれらに相当する寸法が選択される。マグネット21の高さは同様にまた重要ではなく、3mmから10mmの範囲内にある。マグネット21の磁気的強さはトッププレート11の下側におよそ50ガウス(Gauss)から500ガウスの磁界の強さを持つように選択される。
【0031】
加えて図4に示すように、円形ガス通路24がトッププレート11の内部に形成される。円形ガス通路24はガス導入系25を通してガス供給源(図示されず)に結合されており、トッププレート11の内側表面に複数のガス導入孔26を有している。ガス供給源によって供給される処理ガス(プロセスガス)は円形ガス通路24とガス導入孔26を通して反応容器10の内部空間に導入される。処理ガスは第1に円形ガス通路24に供給され、それからいくつかのガス導入孔26を通して反応容器10の処理室に導入される。
【0032】
反応容器10の内部圧力は、ガスの流速を調整すること、およびガス排気ポート18に配置された良く知られた可変オリフィス(図示されず)を調整することによって制御される。反応容器10の内部圧力(処理室の圧力)は、例えば、0.2Paから27Paの範囲で変化される。本実施形態では、後述する本発明に係る薄膜の成膜方法において、第2工程の処理室の圧力が第1工程の処理室の圧力よりも低く設定される。なお、処理室の具体的な設定圧力については、本発明に係る薄膜の成膜方法の説明において詳述する。
【0033】
本実施形態では、カソード電極11に給電する高周波電源19の周波数は、およそ10MHzから300MHzの範囲にある。一方、アノード電極15に給電する高周波電源8の周波数は、およそ1MHzから15MHzの範囲にある。
【0034】
さらに、本実施形態では、後述する本発明に係る薄膜の成膜方法において、第2工程のカソード電力に対するアノード電力の比が、第1工程のカソード電力に対するアノード電力の比よりも大きくなるように設定される。なお、具体的な電力比の設定については、本発明に係る薄膜の成膜方法において詳述する。なお、アノード電極15は接地した状態で使用しても構わない。
【0035】
次に、前述のプラズマ源を備えた反応容器10におけるプラズマ発生の機構を説明する。図4において、高周波電流19aが高周波電源19からカソード電極11に給電されるとき、高周波電力の静電的結合の機構によってプラズマが生成される。その時、プラズマにおける電子はカソード電極11上に配置されるマグネット21によって作られたポイント・カスプ磁場23の存在に基づきサイクロトロン回転を受ける。このことは電子の通過路の長さを増大させ、それによってプロセスガスのより高いイオン化割合をもたらす。加えて、電子とイオンのカソード電極11の衝突がポイント・カスプ磁場23によって部分的に抑圧される。それ故に、磁場23の存在はプラズマ密度の増大という結果をもたらす。
【0036】
一般的に磁界が存在しない場合、2つの平行プレートの間に静電的結合の機構によって生成されたプラズマは、より高い半径方向の均一性を持つ。磁界が存在する場合においては、このプラズマ均一性は変化する。カソード電極11上に配置されたマグネット21はカソード電極11の下側にポイント・カスプ磁場23を形成する。カソード電極11に平行に存在する磁場23の強さが最大である場所においてプラズマ密度は最大である。同様にトッププレートに平行に存在する磁場23の強さが最小であるところの場所ではプラズマ密度は低い。それ故に、カソード電極11の近傍においてプラズマ密度は最大と最小となる。しかしながら、プラズマ密度のこれらの最大と最小は互いに接近しているので、下流側におけるカソード電極11からより短い距離において拡散がプラズマの均一性を作る。さらに、マグネット21は交互に反対の極性となるように配置されているので、ポイント・カスプ磁場23の磁束線23bはカソード電極11の内側表面から近い距離で曲がる。それ故に、カソード電極11からより近い距離において磁界がない環境が得られる。
【0037】
均一なプラズマ密度を得る目的で、前述された構成とは異なる他のマグネット21の配列を見出だすこともできる。例えば、カソード電極11の中心部付近の2つの隣り合うマグネットの間の間隔を周辺部付近の隣り合う2つのマグネットの間隔よりも大きくすることができるし、あるいは、中央部におけるマグネットを取り除くこともできる。ここで、マグネット21はカソード電極11の周縁部分に接近した所のみに帯状に(バンドとして)配置されている。半径r1はカソード電極(トッププレート)11の半径であり、半径r2はマグネットが配置されていない円形領域の半径である。これらの配列によって、トッププレート11の中心部付近のマグネット21の個数は周縁部に近い部分の個数よりも少なくなる。すなわち、トッププレート11の中心部およびその周縁の磁束密度は、その周縁部に近い部分の磁束密度よりも低くなる。
【0038】
次に、再び図1から図3及び図8を参照して、上記のプラズマ処理装置の作用と共に、本発明に係る薄膜の成膜方法について説明する。図8は、本発明に係る薄膜の成膜方法における成膜状況を示す概略説明図である。なお、カソード電極11に支持するターゲットとしてチタニウム(Ti)又は銅(Cu)を用い、反応容器10内に処理ガスとして、Ar(アルゴン)とNe(ネオン)との混合ガスを導入した。
【0039】
本発明に係る薄膜の成膜方法の特徴点は、処理ガスとして、Ar(アルゴン)とNe(ネオン)との混合ガスを用いた点である。まず、処理ガスとして、Ar(アルゴン)とNe(ネオン)との混合ガスを用いた理由を説明する。
【0040】
図10は、チタン(Ti)の成膜速度のNe添加率依存性を示す図である。カソード電極11に支持するターゲットとしてチタン(Ti)を用い、開口幅又は開口径が3μm以下で、かつ、アスペクト比が1以上の段差であるトレンチやビアホールを有する基板上に、処理ガスがArのみの場合とNeを添加した場合の薄膜の成膜速度を比較した。この図から、Neガスの添加が増えると薄膜の成膜速度が増えていることがわかる。この時、いずれも処理室の圧力は14Pa、カソード電極に印加した電力は3200Wである。なお、軽い希ガスのヘリウムを添加すると、軽すぎる為にスパッタ率が小さくなり、成膜速度は遅くなる。またクリプトンやキセノンのように重い希ガスを添加した場合は、金属粒子と衝突した時の散乱が大きくなり、成膜速度が遅くなる。
【0041】
図11は、銅(Cu)の成膜速度のカソード電極の電力依存性を示す図である。カソード電極11に支持するターゲットとして銅(Cu)を用い、開口幅又は開口径が3μm以下で、かつ、アスペクト比が1以上の段差であるトレンチやビアホールを有する基板上に、処理ガスがArのみの場合とNeを添加した場合の薄膜の成膜速度を比較した。この図から、Neガスを用いると薄膜の成膜速度が増えることがわかる。この時、いずれも処理室の圧力は8Pa、カソード電極に印加した電力は4000Wである。なお、本発明の成膜方法では、カソード電圧にかかる電圧は200V以下であり、すなわちイオンエネルギーも200eV以下になる。200eV以下の範囲では希ガスの種類によるスパッタ率の差は見られないので、この範囲ではスパッタ率と成膜速度は無関係である。
【0042】
図12は、チタン(Ti)の成膜速度のN2添加率依存性を示す図である。カソード電極11に支持するターゲットとしてチタン(Ti)を用い、開口幅又は開口径が3μm以下で、かつ、アスペクト比が1以上の段差であるトレンチやビアホールを有する基板上に、処理ガスがArとN2の場合とNeとN2の場合の薄膜の成膜速度を比較した。この図から、Neガスを用いると薄膜の成膜速度が増えることがわかる。この時、いずれも処理室の圧力は7Pa、カソード電極に印加した電力は5000Wである。尚、本発明の成膜方法では、カソード電圧にかかる電圧は200V以下であり、すなわちイオンエネルギーも200eV以下になる。200eV以下の範囲では希ガスの種類によるスパッタ率の差は見られないので、この範囲ではスパッタ率と成膜速度は無関係である。
【0043】
図13は、銅(Cu)のボトムカバレッジ率のアノード電力依存性を示す図である。カソード電極11に支持するターゲットとして銅(Cu)を用い、開口幅又は開口径が3μm以下で、かつ、アスペクト比が1以上の段差であるトレンチやビアホールを有する基板上に、処理ガスがArのみの場合とNeを添加した場合のトレンチやビアホールのボトムカバレッジ率を比較した。この図から、Neガスを用いるとトレンチやビアホールのボトムカバレッジ率が増えることがわかる。この時、いずれも処理室の圧力は8Pa、カソード電極に印加した電力は4000Wである。尚、本発明の成膜方法では、カソード電圧にかかる電圧は200V以下であり、すなわちイオンエネルギーも200eV以下になる。200eV以下の範囲では希ガスの種類によるスパッタ率の差は見られないので、この範囲ではスパッタ率と成膜速度は無関係である。
【0044】
図14は、チタン(Ti)のボトムカバレッジ率のアスペクト比依存性を示す図である。カソード電極11に支持するターゲットとしてチタン(Ti)を用い、開口幅又は開口径が3μm以下で、かつ、アスペクト比が1以上の段差であるトレンチやビアホールを有する基板上に、処理ガスがArのみの場合とNeを添加した場合のトレンチやビアホールのボトムカバレッジ率を比較した。この図から、Neガスを用いるとトレンチやビアホールのボトムカバレッジ率が増えることがわかる。この時、いずれも処理室の圧力は14Pa、カソード電極に印加した電力は3200Wである。
【0045】
上記の通り、図10から図14により、カソード電極11に支持するターゲットとしてチタニウム(Ti)又は銅(Cu)を用い、反応容器10内に処理ガスとして、Ar(アルゴン)とNe(ネオン)との混合ガスを導入した場合、同じ電力を印加してもトレンチやビアホール底面への薄膜の成膜速度が増加することを見いだした。
【0046】
処理ガスとして、Ar(アルゴン)とNe(ネオン)との混合ガスを導入した理由を更に、説明する。Neは、Arよりも重量が軽い為に、ターゲットからスパッタされた金属粒子がNeと衝突してよりイオン化されたためと考えられる。特に本発明においては、第2の電極であるカソード電極の内側にポイントカスプ磁界を形成する複数のマグネットが配置されている。このため、もともと高密度プラズマが発生する機構を有しているが、処理ガスとして、Ar(アルゴン)とNe(ネオン)との混合ガスを処理室内に導入することにより、NeはArより重量が軽い為に、ターゲットからスパッタされた金属粒子がNeと衝突してよりイオン化されたためと考えられる。
【0047】
次に、本発明の薄膜の成膜方法について説明する。本発明に係る薄膜の成膜方法は、まず、反応容器10内を排気系により所定の真空度まで排気する。基板ホルダ15に内蔵された不図示のヒータに電力供給し、基板ホルダ15を設定温度に加熱する。
【0048】
次に、反応容器10の側壁に配設された不図示のゲートバルブを開け、基板搬送経路を開放する。この状態で、ロボットアーム等の不図示の搬送アームを用いて、基板17を基板ホルダ15の上面へと搬送する。そして、不図示の保持機構により基板ホルダ15に基板8を保持する。上記搬送アームを後退させた後、ゲートバルブを閉じる。
【0049】
基板17の表面温度が所定の温度(例えば、900℃)に到達するまで加熱時間をおいた後、ガス導入系25より所定の流量の処理ガスを導入する。また、不図示の排気系のコンダクタンスバルブ等により反応容器1の内部を任意の圧力に調整する。
【0050】
この処理ガスの導入下において、上記第2の電極11、第1の電極15に高周波電源19、高周波電源8から異なる電力を印可すると共に、カソード電極11(第2の電極11)にカスプ磁場を生成してプラズマを発生させる。このプラズマを発生により、開口幅又は開口径3μm以下で、かつ、アスペクト比が1以上の段差であるトレンチ31又はビアホール32を有する基板17の上にターゲット物質の薄膜を成膜する。
【0051】
このように、本発明に係る薄膜の成膜方法は、開口幅又は開口径が3μm以下で、かつ、アスペクト比が1以上の段差であるトレンチ31やビアホール32を有する基板17上に薄膜を成膜するに際して適用する。
【0052】
上記の電力比の条件下において、カソード電極11(第2の電極11)に給電する高周波電源19の電力は300Wから10000Wの範囲で選択して設定し、アノード電極15(第1の電極15)に給電する高周波電源8の電力は0Wから2000Wの範囲で選択して設定する。具体的には、基板17の径(サイズ)が12インチの場合、カソード電力は300Wから10000Wの範囲で設定し、アノード電力は0Wから2000Wで設定することが望ましい。
【0053】
なお、アノード電力の下限(0W)から分かるように、アノード電極15(第1の電極)は接地した状態で使用しても構わない。
【0054】
所定の膜厚を堆積後、高周波電源8、高周波電源19からの電力供給を停止する。さらに、ガス導入系25からの処理ガスの導入を停止し、排気系のコンダクタンスバルブ等を開放して反応容器10の内部を排気する。
【0055】
次に、ゲートバルブを開けて基板搬送経路を開放し、搬送アームを挿入して基板17を保持し、搬送アームを後退させて反応容器10から基板17を搬出する。最後に、ゲートバルブを閉じて、全工程を終了する。なお、そのまま、リフロー工程等の次工程に移行してもよい。
【0056】
このように本発明に係る薄膜の成膜方法では、ターゲットから飛来するターゲット粒子で基板17上に成膜をしつつ、基板17を載置したアノード電極15にバイアスを印加する。これにより、アノード電極15とカソード電極11との間で発生したプアズマ中の希ガス(アルゴンとネオンの混合ガス)イオンをアノード電極15に引き込み、基板17をターゲットとして再スパッタ(エッチング)する。したがって、ECRプラズマCVDで発生する程の膜質の変化はない。
【0057】
本実施形態では、アルゴンとネオンの混合ガスを用いているため、膜質を維持することが可能である。さらに、カソード電極11の高周波電源19の周波数を10MHz〜300MHzの範囲としている。そのため、第1工程では高イオン化率下で成膜しうるので、トレンチ31又はビアホール32(段差)の底部33に多くの膜を付け、かつ内側壁34には殆ど膜が付かない。
【0058】
以上説明したように、本発明によれば、開口幅または開口径が3μm以下で、アスペクト比1以上、特に1.5以上の高アスペクト比のトレンチ31又はビアホール32の底部33と内側壁34の双方に、十分な膜厚でバリヤー膜を成膜できる。その結果、次工程のAlリフローを実施したときに、トレンチ31又はビアホール32内にボイドを生じることなく、極めて平坦なAl膜を成膜できる。したがって、CMP(Chmical Mechanical Polishing)処理のような平坦化処理を省略することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、例示したマグネトロンスパッタリング装置のみならず、ドライエッチング装置、プラズマアッシャ装置、CVD装置および液晶ディスプレイ製造装置等のプラズマ処理装置に応用して適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
8、19 高周波電源
10 反応容器
11 第2の電極(トッププレート)
15 第1の電極(基本ホルダー)
17 基板
31 トレンチ
32 ビアホール
33 底部
34 内側壁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口幅又は開口径が3μm以下で、かつ、アスペクト比が1以上の段差であるトレンチ又はビアホールを有する基板上に薄膜を成膜する成膜方法であって、
真空排気可能な処理室に、基板を支持する第1の電極と、前記基板に対向するように配置されターゲットを支持する第2の電極と、前記第2の電極の外側に配置されて当該第2の電極の内側にカスプ磁界を形成する複数のマグネットと、を備え、
前記処理室にNeを含む処理ガスを導入し、前記第1の電極と前記第2の電極の少なくとも一方にプラズマ形成用の高周波電力を供給すると共に、前記第2の電極上にカスプ磁場を生成してプラズマを発生させ、ターゲット物質をトレンチ又はビアホールを有する基板上に成膜することを特徴とする薄膜の成膜方法。
【請求項2】
前記処理室の圧力は2Paから27Paの範囲で選択して設定することを特徴とする請求項1に記載の薄膜の成膜方法。
【請求項3】
前記第2電極の高周波電源の周波数は10MHzから300MHzの範囲にあることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄膜の成膜方法。
【請求項4】
前記第2の電極の高周波電源の電力を300Wから10000Wの範囲で選択して設定し、前記第1電極の高周波電源の電力を0Wから2000Wの範囲で選択して設定することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の薄膜の成膜方法。
【請求項5】
前記第2電極は、導電性を有する単一組成または複合組成の材料で構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の薄膜の成膜方法。
【請求項6】
前記処理ガスは、Neを含む希ガスと反応性ガスとの混合ガスであり、反応性ガスは酸素及び窒素からなるガス群より選択された少なくとも1種であることを特徴とする請求項5に記載の薄膜の成膜方法。
【請求項7】
前記マグネットが、碁盤目状に複数連なる四角形の各角部に対応する位置に配置されており、しかも前記各四角形の辺方向に隣接するマグネットの極性が反対の極性となっていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の薄膜の成膜方法。
【請求項8】
前記第1の電極がアノード電極であり、前記第2の電極がカソード電極であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の薄膜の形成方法。
【請求項1】
開口幅又は開口径が3μm以下で、かつ、アスペクト比が1以上の段差であるトレンチ又はビアホールを有する基板上に薄膜を成膜する成膜方法であって、
真空排気可能な処理室に、基板を支持する第1の電極と、前記基板に対向するように配置されターゲットを支持する第2の電極と、前記第2の電極の外側に配置されて当該第2の電極の内側にカスプ磁界を形成する複数のマグネットと、を備え、
前記処理室にNeを含む処理ガスを導入し、前記第1の電極と前記第2の電極の少なくとも一方にプラズマ形成用の高周波電力を供給すると共に、前記第2の電極上にカスプ磁場を生成してプラズマを発生させ、ターゲット物質をトレンチ又はビアホールを有する基板上に成膜することを特徴とする薄膜の成膜方法。
【請求項2】
前記処理室の圧力は2Paから27Paの範囲で選択して設定することを特徴とする請求項1に記載の薄膜の成膜方法。
【請求項3】
前記第2電極の高周波電源の周波数は10MHzから300MHzの範囲にあることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄膜の成膜方法。
【請求項4】
前記第2の電極の高周波電源の電力を300Wから10000Wの範囲で選択して設定し、前記第1電極の高周波電源の電力を0Wから2000Wの範囲で選択して設定することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の薄膜の成膜方法。
【請求項5】
前記第2電極は、導電性を有する単一組成または複合組成の材料で構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の薄膜の成膜方法。
【請求項6】
前記処理ガスは、Neを含む希ガスと反応性ガスとの混合ガスであり、反応性ガスは酸素及び窒素からなるガス群より選択された少なくとも1種であることを特徴とする請求項5に記載の薄膜の成膜方法。
【請求項7】
前記マグネットが、碁盤目状に複数連なる四角形の各角部に対応する位置に配置されており、しかも前記各四角形の辺方向に隣接するマグネットの極性が反対の極性となっていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の薄膜の成膜方法。
【請求項8】
前記第1の電極がアノード電極であり、前記第2の電極がカソード電極であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の薄膜の形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−197463(P2012−197463A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158515(P2009−158515)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】
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