説明

被処理基板の除電方法及び基板処理装置

【課題】被処理基板へのパーティクルの付着や被処理基板へのダメージを防止することができる被処理基板の除電方法を提供する。
【解決手段】基板処理装置10は、ウエハWを収容するチャンバ11と、該チャンバ11内に配置されてウエハWを載置する載置台12とを備え、該載置台12は、載置されたウエハWの裏面に接触して当該ウエハWを静電吸着する静電チャック21と、該静電チャック21からウエハWの裏面に向けて伝熱ガスを噴出する外周部伝熱ガス供給系25を有し、裏面に負の電荷が蓄積され且つ表面に正の電荷が蓄積されているウエハWを除電する際、まず、プラズマP中の電子によってウエハWの表面の正の電荷を中和し、その後、外周部伝熱ガス供給系25からウエハWに向けてイオン化ガスを供給し、イオン化ガス中の陽イオンによってウエハWの裏面の負の電荷を中和する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理基板の除電方法及び基板処理装置に関し、特に、帯電した被処理基板の表面だけでなく裏面も除電する被処理基板の除電方法及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被処理基板としての半導体デバイス用のウエハ(以下、単に「ウエハ」という。)に所定のプラズマ処理、例えば、プラズマエッチング処理を施す基板処理装置においてウエハにパーティクルが付着するのを防止する様々な手法が提案されている。
【0003】
従来、付着を防止すべきパーティクルの粒径は約100nm以上であったため、該パーティクルの挙動を重力や基板処理装置内における気流を用いて制御していたが、近年、半導体デバイスの小型化が進む中、ウエハにおける回路パターンをより微細に形成する必要が生じている。これに伴い、従来、問題にならなかった小さな粒径のパーティクル、例えば、粒径が30nm〜80nmのパーティクルの挙動を管理、制御する必要性が生じている。
【0004】
ところで、パーティクルの付着では、パーティクルの粒径が小さくなるに従い、重力による付着や慣性力による付着よりも静電気力(クーロン力)による付着が支配的となり、基板処理装置では粒径が30nm〜80nmのパーティクルが静電気力によってウエハや該基板処理装置の構成要素、例えば、収容室(チャンバ)の内壁に付着する。
【0005】
図8は、パーティクルの粒径及びその付着力の関係を示す図である。図8において、縦軸は、付着力(付着速度:Deposition Velocity)(cm/s)を示し、横軸は粒径(nm)を示す。パーティクルの粒径が小さくなるに伴い、付着力において静電気力が支配的になっていることが分かる。したがって、ウエハ等へのパーティクル付着を防止するためには、パーティクルやウエハを帯電させないこと、または、帯電したパーティクルやウエハを除電することが有効である。
【0006】
なお、静電気は、ウエハ等へのパーティクルの付着の原因となるだけでなく、半導体デバイスの故障を招く原因となる場合がある。すなわち、半導体デバイスは、1000V前後の静電気によって故障又は破損する場合がある。ウエハを静電吸着するために静電チャック(ESC)を採用する基板処理装置においては、静電吸着の時間が長いとウエハが帯電し、該帯電したウエハが他のパーツに電荷を放出する際に該ウエハがダメージを受けたり、該ウエハに放電痕が残る等して歩留まりが低下することもある。したがって、帯電したウエハを除電すると、パーティクルの付着を防止できるだけでなく、ウエハがダメージを受けることも防止できる。
【0007】
静電気力によってチャンバの内壁に付着しているパーティクルを除去する技術として特許文献1に記載の技術が知られている。この技術では、イオン流を発生させる除電器をチャンバ(特許文献1では「エアロック室」)内に配置している。
【0008】
ここで、除電器は、チャンバにイオン流を放出し、チャンバの内壁に静電気力によって付着しているパーティクルを、イオン流に含まれるイオンによって除電(静電気除去)し、該内壁から離脱させる。そして、チャンバ内の気体を排気装置によって外部に排出することにより、チャンバ内からパーティクルを排出、除去している。
【0009】
また、帯電したウエハを除電する技術として、チャンバ内においてプラズマを発生させ、該プラズマ中の電子や陽イオンをウエハに接触させて該ウエハに蓄積した電荷を中和する技術も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−353086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ウエハを静電チャックによって静電吸着する際、静電チャック内の電極板に正電圧を印加すると、ウエハWの静電チャック側の面(以下「裏面」という。)には負の電荷が蓄積される一方、ウエハの静電チャック側の面とは反対の面(以下、「表面」という。)には正の電荷が蓄積される。
【0012】
上述した特許文献1に記載の技術やプラズマを用いた除電方法では、イオン流やプラズマがウエハの表面にのみ接触可能なので、ウエハの表面に蓄積された正の電荷を中和することはできるが、ウエハの裏面は静電チャックと接触しているため、イオン流やプラズマはウエハの裏面に接触することができず、ウエハの裏面に蓄積された負の電荷を中和することができない。すなわち、ウエハの裏面を除電することができない。その結果、ウエハを搬出する際等に、ウエハへのパーティクルの付着やウエハへのダメージを防止することができない。
【0013】
本発明の目的は、被処理基板へのパーティクルの付着や被処理基板へのダメージを防止することができる被処理基板の除電方法及び基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、請求項1記載の被処理基板の除電方法は、被処理基板を収容する収容室と、該収容室内に配置されて前記被処理基板を載置する載置台とを備え、前記載置台は、前記載置された被処理基板の裏面に接触して当該被処理基板を静電吸着する静電吸着部と、該静電吸着部から前記被処理基板に向けて伝熱ガスを噴出する伝熱ガス供給部を有する基板処理装置における被処理基板の除電方法であって、前記伝熱ガス供給部が前記被処理基板に向けてイオン化ガスを供給するイオン化ガス供給ステップを有することを特徴とする。
【0015】
請求項2記載の被処理基板の除電方法は、請求項1記載の被処理基板の除電方法において、前記載置台は、前記被処理基板を前記静電吸着部から離間させる離間装置を有し、前記イオン化ガス供給ステップでは、前記離間装置が前記被処理基板を前記静電吸着部から離間させることを特徴とする。
【0016】
請求項3記載の被処理基板の除電方法は、請求項1又は2記載の被処理基板の除電方法において、前記伝熱ガス供給部は、前記被処理基板に向けて開口する複数の噴出口からなり、前記イオン化ガス供給ステップでは、前記複数の噴出口が前記イオン化ガスを供給することを特徴とする。
【0017】
請求項4記載の被処理基板の除電方法は、請求項3記載の被処理基板の除電方法において、前記イオン化ガス供給ステップでは、前記被処理基板の前記静電吸着部側の面近傍の圧力を、前記被処理基板の前記静電吸着部側の面とは反対側の面近傍の圧力よりも低く設定することを特徴とする。
【0018】
請求項5記載の被処理基板の除電方法は、請求項4記載の被処理基板の除電方法において、前記イオン化ガス供給ステップでは、前記複数の噴出口の一部が前記イオン化ガスを供給し、前記複数の噴出口の他の一部が前記被処理基板の前記静電吸着部側の面近傍のガスを吸引することを特徴とする。
【0019】
請求項6記載の被処理基板の除電方法は、請求項5記載の被処理基板の除電方法において、前記静電吸着部は円板状であり、前記複数の噴出口は前記円板の表面において分散して配置され、前記イオン化ガス供給ステップでは、前記円板の表面の外周部に配置された前記噴出口の群が前記イオン化ガスを供給し、前記円板の表面の中央部に配置された前記噴出口の群が前記被処理基板の前記静電吸着部側の面近傍のガスを吸引することを特徴とする。
【0020】
請求項7記載の被処理基板の除電方法は、請求項5記載の被処理基板の除電方法において、前記静電吸着部は円板状であり、前記複数の噴出口は前記円板の表面において分散して配置され、前記イオン化ガス供給ステップでは、前記円板の表面の中央部に配置された前記噴出口の群が前記イオン化ガスを供給し、前記円板の表面の外周部に配置された前記噴出口の群が前記被処理基板の前記静電吸着部側の面近傍のガスを吸引することを特徴とする。
【0021】
請求項8記載の被処理基板の除電方法は、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の被処理基板の除電方法において、前記伝熱ガス供給部は前記静電吸着部を貫通する貫通穴からなり、前記イオン化ガスは該貫通穴を介して供給されることを特徴とする。
【0022】
上記目的を達成するために、請求項9記載の被処理基板の除電方法は、被処理基板を収容する収容室と、該収容室内に配置されて前記被処理基板を載置する載置台とを備え、前記載置台は、前記載置された被処理基板の裏面に接触して当該被処理基板を静電吸着する静電吸着部と、該静電吸着部から前記被処理基板に向けて伝熱ガスを噴出する伝熱ガス供給部と、前記被処理基板を前記静電吸着部から離間させる離間装置とを有する基板処理装置における被処理基板の除電方法であって、前記伝熱ガス供給部が前記被処理基板に向けて所定のガスを供給する所定ガス供給ステップを有し、前記基板処理装置は、前記収容室内に向けて軟X線又はUV光を照射する照射装置をさらに備え、前記所定ガス供給ステップでは、前記離間装置が前記被処理基板を前記静電吸着部から離間させるとともに、前記照射装置が、前記軟X線又は前記UV光を前記被処理基板及び前記静電吸着部の間の空間に向けて照射することを特徴とする。
【0023】
上記目的を達成するために、請求項10記載の基板処理装置は、被処理基板を収容する収容室と、該収容室内に配置されて前記被処理基板を載置する載置台とを備え、前記載置台は、前記載置された被処理基板の裏面に接触して当該被処理基板を静電吸着する静電吸着部と、該静電吸着部から前記被処理基板に向けて伝熱ガスを噴出する伝熱ガス供給部を有する基板処理装置において、前記伝熱ガス供給部が前記被処理基板に向けてイオン化ガスを供給することを特徴とする。
【0024】
上記目的を達成するために、請求項11記載の基板処理装置は、被処理基板を収容する収容室と、該収容室内に配置されて前記被処理基板を載置する載置台とを備え、前記載置台は、前記載置された被処理基板の裏面に接触して当該被処理基板を静電吸着する静電吸着部と、該静電吸着部から前記被処理基板に向けて伝熱ガスを噴出する伝熱ガス供給部と、前記被処理基板を前記静電吸着部から離間させる離間装置とを有する基板処理装置において、前記収容室内に向けて軟X線又はUV光を照射する照射装置をさらに備え、前記伝熱ガス供給部が前記被処理基板に向けて所定のガスを供給し、前記被処理基板に向けての前記所定のガスの供給の際、前記離間装置が前記被処理基板を前記静電吸着部から離間させるとともに、前記照射装置が、前記軟X線又は前記UV光を前記被処理基板及び前記静電吸着部の間の空間に向けて照射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
請求項1記載の被処理基板の除電方法及び請求項10記載の基板処理装置によれば、静電吸着部から被処理基板に向けてイオン化ガスが供給されるので、該供給されたイオン化されたガスは被処理基板の静電吸着部側の面と接触する。したがって、収容室にイオン流を放出する方法やプラズマを用いた除電方法を併用することにより、被処理基板の静電吸着部側の面とは反対側の面に蓄積された電荷だけでなく、被処理基板の静電吸着部側の面に蓄積された電荷を中和することができる。その結果、被処理基板を確実に除電することができ、もって、被処理基板へのパーティクルの付着や被処理基板へのダメージを防止することができる。
【0026】
請求項2記載の被処理基板の除電方法によれば、被処理基板が静電吸着部から離間されるので、被処理基板及び静電吸着部の間に空間が生じ、静電吸着部から被処理基板に向けて供給されたイオン化ガスは該空間において拡散するので、イオン化ガスを被処理基板の静電吸着部側の面の殆どの部分に接触させることができ、もって、被処理基板の静電吸着部側の面に蓄積された電荷の殆どを中和することができる。
【0027】
請求項3記載の被処理基板の除電方法によれば、被処理基板に向けて開口する複数の噴出口からイオン化ガスが供給されるので、イオン化ガスを被処理基板の静電吸着部側の面へ満遍なく接触させることができ、もって、被処理基板の静電吸着部側の面に蓄積された電荷を確実に中和することができる。
【0028】
請求項4記載の被処理基板の除電方法によれば、被処理基板の静電吸着部側の面近傍の圧力が、被処理基板の静電吸着部側とは反対側の面近傍の圧力よりも低く設定されるので、被処理基板は静電吸着部へ向けて押さえ込まれる。これにより、被処理基板が静電吸着部から跳ね上がって破損するのを防止することができる。
【0029】
請求項5記載の被処理基板の除電方法によれば、複数の噴出口の一部がイオン化ガスを供給し、複数の噴出口の他の一部が被処理基板の静電吸着部側の面近傍のガスを吸引するので、被処理基板の静電吸着部側の面近傍の圧力を低くすることができ、もって、被処理基板の跳ね上がりを確実に防止することができる。
【0030】
請求項6記載の被処理基板の除電方法によれば、複数の噴出口は円板の表面において分散して配置され、該円板の表面の外周部に配置された噴出口の群からイオン化ガスが供給され、同中央部に配置された噴出口の群から被処理基板の静電吸着部側の面近傍のガスが吸引される。これにより、外周部に対向する部分において圧力が高まるため、被処理基板及び静電吸着部の間の空間に向けて外部からガスが進入するのを防止することができ、もって、イオン化ガスが希釈されるのを防止することができる。その結果、被処理基板の静電吸着部側の面に蓄積された電荷の中和を効率良く行うことができる。
【0031】
請求項7記載の被処理基板の除電方法によれば、円板の表面の中央部に配置された噴出口の群からイオン化ガスが供給され、同外周部に配置された噴出口の群から被処理基板の静電吸着部側の面近傍のガスが吸引される。これにより、被処理基板及び静電吸着部の間の空間においてイオン化ガスを放射状に拡散させることができ、もって、該空間においてイオン化ガスの濃度を均一にすることができる。その結果、被処理基板の静電吸着部側の面に蓄積された電荷の中和を均一に行うことができる。
【0032】
請求項8記載の被処理基板の除電方法によれば、伝熱ガス供給部は静電吸着部を貫通する貫通穴からなり、イオン化ガスは該貫通穴を介して供給されるので、イオン化ガスを供給する際、被処理基板だけでなく静電吸着部も除電することができる。
【0033】
請求項9記載の被処理基板の除電方法及び請求項11記載の基板処理装置によれば、被処理基板及び静電吸着部の間の空間において、静電吸着部から被処理基板に向けて供給された所定のガスに軟X線又はUV光が照射される。所定のガスに軟X線又はUV光が照射されると、所定のガスはイオン化され、該イオン化されたガスは被処理基板の静電吸着部側の面と接触する。したがって、収容室にイオン流を放出する方法やプラズマを用いた除電方法を併用することにより、被処理基板の静電吸着部側の面とは反対側の面に蓄積された電荷だけでなく、被処理基板の静電吸着部側の面に蓄積された電荷を中和することができる。その結果、被処理基板を確実に除電することができ、もって、被処理基板へのパーティクルの付着や被処理基板へのダメージを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る被処理基板の除電方法を実行する基板処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図2】図1における静電チャックの平面図であり、図2(A)は静電チャックにおける伝熱ガス噴出口の配置の様子を示し、図2(B)は図3のウエハ除電処理におけるイオン化ガスの流れを示し、図2(C)は図3のウエハ除電処理の第2の変形例におけるイオン化ガスの流れを示し、図2(D)は図3のウエハ除電処理の第3の変形例におけるイオン化ガスの流れを示す。
【図3】本実施の形態に係る被処理基板の除電方法としてのウエハ除電処理を示す工程図である。
【図4】図3のウエハ除電処理の第1の変形例を示す工程図である。
【図5】図3のウエハ除電処理の変形例を示す工程図であり、図5(A)は第2の変形例を示し、図5(B)は第3の変形例を示す。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る被処理基板の除電方法を実行する基板処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図7】本実施の形態に係る被処理基板の除電方法としてのウエハ除電処理を示す工程図である。
【図8】パーティクルの粒径及びその付着力の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0036】
まず、本発明の第1の実施の形態に係る被処理基板の除電方法について説明する。
【0037】
図1は、本実施の形態に係る被処理基板の除電方法を実行する基板処理装置の構成を概略的に示す断面図である。この基板処理装置はウエハにドライエッチング処理を施すように構成されている。
【0038】
図1において、基板処理装置10は、例えば、直径が300mmのウエハW(被処理基板)を収容するチャンバ11(収容室)を有し、該チャンバ11内にはウエハWを載置する円柱状のサセプタ12(載置台)が配置されている。
【0039】
チャンバ11は下部において、該チャンバ11内のガスを排出する排気管13へ接続される。排気管13にはTMP(Turbo Molecular Pump)14及びDP(Dry Pump)15が接続され、これらのポンプはチャンバ11内を真空引きして減圧する。具体的には、DP15はチャンバ11内を大気圧から中真空状態(例えば、1.3×10Pa(0.1Torr)以下)まで減圧し、TMP14はDP15と協働してチャンバ11内を中真空状態より低い圧力である高真空状態(例えば、1.3×10−3Pa(1.0×10−5Torr)以下)まで減圧する。なお、チャンバ11内の圧力はAPCバルブ(図示しない)によって制御される。
【0040】
チャンバ11内のサセプタ12には第1の高周波電源16が第1の整合器17を介して接続され、且つ第2の高周波電源18が第2の整合器19を介して接続されており、第1の高周波電源16は比較的低い周波数のプラズマ引き込み用の高周波電圧(以下、「バイアス電圧」という。)をサセプタ12に印加し、第2の高周波電源18は比較的高い周波数のプラズマ生成用の高周波電圧(以下、「プラズマ生成用電圧」という。)をサセプタ12に印加する。これにより、サセプタ12は電極として機能する。また、第1の整合器17及び第2の整合器19は、サセプタ12からの高周波電圧の反射を低減する。
【0041】
サセプタ12の上部には、静電電極板20を内部に有する静電チャック21(静電吸着部)が配置されている。静電チャック21は或る直径を有する下部円板状部材の上に、該下部円板状部材より直径の小さい上部円板状部材を重ねた形状を呈する。なお、静電チャック21はセラミックスで構成されている。
【0042】
静電チャック21では、静電電極板20に第1の直流電源22が接続されている。静電電極板20へウエハWを接触させて載置したときに、静電電極板20に正の直流電圧を印加して正電位を発生させると、該正電位によって負の電荷がウエハWの静電チャック21側の面(以下、「裏面」という。)に誘導される。ここで、静電チャック21はセラミックスで構成されているために、ウエハWの裏面における負の電荷は静電チャック21へ移動せず、そのまま裏面に留まり、ウエハWの裏面には負電位が発生する。その結果、静電電極板20及びウエハWの裏面の間に電位差が生じ、該電位差に起因するクーロン力又はジョンソン・ラーベック力により、ウエハWは静電チャック21における上部円板状部材の上において吸着保持される。
【0043】
また、静電チャック21には、吸着保持されたウエハWを囲うように、リング状部材であるフォーカスリング23が載置される。フォーカスリング23は、導電体、例えば、ウエハWを構成する材料と同じ単結晶シリコンによって構成される。フォーカスリング23は導電体からなるので、プラズマの分布域をウエハW上だけでなく該フォーカスリング23上まで拡大してウエハWの周縁部上におけるプラズマの密度を該ウエハWの中央部上におけるプラズマの密度と同程度に維持する。これにより、ウエハWの全面に施されるドライエッチング処理の均一性を維持することができる。
【0044】
静電チャック21における上部円板状部材の上面のウエハWが吸着保持される部分(以下、「吸着面」という。)には、載置台12に載置されるウエハWに向けて開口する複数の伝熱ガス噴出口24が分散して配置されている(図2(A))。これら複数の伝熱ガス噴出口24のうち、吸着面の外周部に配置された伝熱ガス噴出口24の群は外周部伝熱ガス供給系25に接続され、吸着面の中央部に配置された伝熱ガス噴出口24の群は中央部伝熱ガス供給系26に接続される。
【0045】
外周部伝熱ガス供給系25は載置台12内に配置され且つ静電チャック21を厚み方向に貫通する複数のガス供給穴からなり、該外周部伝熱ガス供給系25はイオン化装置27を介してチャンバ11の外部に配置される伝熱ガス供給装置28に接続される。中央部伝熱ガス供給系26も載置台12内に配置され且つ静電チャック21を厚み方向に貫通する複数のガス供給穴からなり、該中央部伝熱ガス供給系26はバルブ29を介して伝熱ガス供給装置28に接続されるとともに、バルブ30を介して排気管13へ接続される。これらの外周部伝熱ガス供給系25及び中央部伝熱ガス供給系26は伝熱ガス供給部を構成する。
【0046】
伝熱ガス供給装置28は伝熱ガス、例えば、ヘリウム(He)ガスを伝熱ガス供給部へ供給し、該伝熱ガス供給部は、静電チャック21に静電吸着されたウエハWの裏面に向けて伝熱ガスを噴出する。該噴出された伝熱ガスはウエハW及び吸着面の隙間を満たし、ウエハWから静電チャック21(載置台12)への伝熱特性を改善する。
【0047】
また、載置台12は静電チャック21の吸着面から突出自在な複数のリフターピン31(離間装置)を有する。これら複数のリフターピン31は、静電チャック21がウエハWの静電吸着を終了した後、吸着面から突出してウエハWを静電チャック21から離間させて持ち上げる。
【0048】
チャンバ11の天井部には、サセプタ12と対向するようにシャワーヘッド32が配置されている。シャワーヘッド32の内部にはバッファ室33が設けられ、このバッファ室33には処理ガス導入管34が接続されている。また、シャワーヘッド32には第2の直流電源35が接続されており、シャワーヘッド32に負の直流電圧が印加される。シャワーヘッド32のバッファ室33は多数のガス穴36を介してチャンバ11内部と連通する。
【0049】
基板処理装置10では、処理ガス導入管34からバッファ室33へ供給された処理ガスがガス穴36を介してチャンバ11内部へ導入され、該導入された処理ガスは、第2の高周波電源18からサセプタ12を介してチャンバ11内部へ印加されたプラズマ生成用電圧によって励起されてプラズマとなる。プラズマ中の陽イオンは、第1の高周波電源16がサセプタ12に印加するバイアス電圧によってウエハWへ引きこまれ、該ウエハWにドライエッチング処理を施す。
【0050】
また、基板処理装置10では、ドライエッチング処理の間、第2の直流電源35がシャワーヘッド32に負の直流電圧を印加する。このとき、シャワーヘッド32にはプラズマ中の陽イオンが引き込まれる。引き込まれた陽イオンはシャワーヘッド32における構成原子中の電子にエネルギーを付与し、付与されたエネルギーが或る値を超えたとき、構成原子中の電子が二次電子としてシャワーヘッド32から放出される。これにより、チャンバ11内部における電子密度が調整される。
【0051】
上述した基板処理装置10の各構成部品の動作は、基板処理装置10が備える制御部(図示しない)のCPUが所定のプログラムに応じて制御する。
【0052】
基板処理装置10においてウエハWにドライエッチング処理を施す間、ウエハWは静電チャック21によって静電吸着されたままなので、ウエハWの裏面には負の電荷が留まり続ける。また、その反作用としてウエハWの裏面とは反対側の面(以下、「表面」という。)には正の電荷が誘導されて該表面に留まり続ける。その結果、ウエハWの裏面には負の電荷が蓄積され、ウエハWの表面には正の電荷が蓄積される。
【0053】
ウエハWの表面や裏面に蓄積された電荷は、例えば、プラズマエッチング処理が終了した後、リフターピン31によって静電チャック21からウエハWが持ち上げられると、静電気力によってチャンバ11内部に浮遊する微細なパーティクルを引きつけ、また、基板処理装置10の他の構成要素やウエハWを搬送するアームとウエハWとの間で異常放電を生じさせることがある。
【0054】
本実施の形態に係る被処理基板の除電方法は、これに対応して、プラズマやイオン化ガスを用いてウエハWの表面や裏面に蓄積された電荷を中和する(除電する)。
【0055】
基板処理装置10のイオン化装置27は、伝熱ガス供給装置28によって供給されるガスを、コロナ放電やUV照射、軟X線照射等の各種方法によってイオン化し、イオン化ガスを生成させる。具体的には、例えば、窒素ガスに軟X線を照射することにより、窒素原子から電子が飛び出した陽イオンと、陽イオンと同量の陰イオンとを含むガスを生成する。イオン化ガスの原料ガスとしては、窒素ガスの他にドライエア、アルゴンガス等の不活性ガス、酸素ガスが該当し、これらのガスから1種又は複数種のガスを選択して原料ガスとして用いることができる。イオン化装置27によって生成されたイオン化ガスは外周部伝熱ガス供給系25によって静電チャック21上のウエハWに向けて噴出される。
【0056】
以下、本実施の形態に係る被処理基板の除電方法としてのウエハ除電処理について説明する。
【0057】
図3は、本実施の形態に係る被処理基板の除電方法としてのウエハ除電処理を示す工程図である。
【0058】
本処理では、まず、プラズマエッチング処理中に帯電したウエハWの静電吸着を終了する(図3(A))。このとき、ウエハWの裏面には負の電荷が蓄積され、ウエハWの表面には正の電荷が蓄積されている。
【0059】
次いで、チャンバ11内部においてプラズマPを生じさせる。このとき、プラズマP中の電子(図中「e」で示す。)はウエハWの表面の正電位によって該表面へ引きつけられる。これらの引きつけられた電子はウエハWの表面に蓄積された正の電荷を中和する(図3(B))。
【0060】
次いで、外周部伝熱ガス供給系25からウエハWの裏面に向けてイオン化ガスを噴出する(イオン化ガス供給ステップ)。このとき、バルブ29を閉弁するとともにバルブ30を開弁する。バルブ29が閉弁されると中央部伝熱ガス供給系26へは伝熱ガス供給装置28からガスが供給されない。また、バルブ30が開弁されると中央部伝熱ガス供給系26は排気管13を介してTMP14と連通する。したがって、中央部伝熱ガス供給系26は伝熱ガス噴出口24からウエハWの裏面近傍のガスを吸引する吸引系として機能する。その結果、ウエハW及び静電チャック21の間の空間Sにおいて外周部伝熱ガス供給系25から中央部伝熱ガス供給系26へ向かうイオン化ガスの流れFが生じる(図3(C)、図2(B))。これにより、空間Sの全域にイオン化ガスが行き渡り、ウエハWの裏面の殆どの部分と接触する。そして、図3(C)中のD部の拡大図である図3(D)に示すように、ウエハWの裏面と接触するイオン化ガス中の陽イオン(図中「○」で示す。)は、ウエハWの裏面に蓄積された負の電荷を中和する。なお、蓄積された負の電荷を完全に中和するためには、伝熱ガス噴出口24から継続してイオン化ガスを噴出して空間Sにおいて陽イオンが減少するのを防止するのが好ましい。
【0061】
また、外周部伝熱ガス供給系25からイオン化ガスを噴出する際、該イオン化ガスの噴出によって空間Sの圧力(被処理基板の静電吸着部側の面近傍の圧力)がウエハWの表面近傍の圧力より高まり、その結果、ウエハWが跳ね上がる虞がある。そこで、本処理では、外周部伝熱ガス供給系25からのイオン化ガスの噴出量よりも中央部伝熱ガス供給系26によるガスの吸引量が多くなるようにバルブ30の開弁量やTMP14の回転数を調整し、空間Sの圧力をウエハWの表面近傍の圧力よりも低く設定する。
【0062】
次いで、ウエハWをリフターピン31によって静電チャック21から持ち上げ、チャンバ11内部に搬送アーム37を進入させ、該搬送アーム37によって除電されたウエハWをチャンバ11の外へ搬出し(図3(E))、本処理を終了する。
【0063】
図3のウエハ除電処理によれば、プラズマPによってウエハWの表面に蓄積された正の電荷が中和された後、外周部伝熱ガス供給系25からウエハWの裏面に向けてイオン化ガスが噴出されるので、該噴出されたイオン化ガス中の陽イオンはウエハWの裏面と接触する。これにより、ウエハWの表面に蓄積された正の電荷だけでなく、ウエハWの裏面に蓄積された負の電荷も中和することができる。その結果、ウエハWを確実に除電することができ、もって、ウエハWへのパーティクルの付着や異常放電によるウエハWへのダメージを防止することができる。
【0064】
また、上述した図3のウエハ除電処理では、ウエハWの裏面に向けて開口する複数の伝熱ガス噴出口24からイオン化ガスが噴出されるので、イオン化ガスをウエハWの裏面へ満遍なく接触させることができる。
【0065】
上述した図3のウエハ除電処理では、外周部伝熱ガス供給系25からのイオン化ガスの噴出量よりも中央部伝熱ガス供給系26によるガスの吸引量が多いので、空間Sの圧力がウエハWの表面近傍の圧力よりも低く設定され、ウエハWは静電チャック21へ向けて押さえ込まれる。これにより、ウエハWが静電チャック21から跳ね上がって破損するのを防止することができる。
【0066】
また、上述した図3のウエハ除電処理では、外周部伝熱ガス供給系25からイオン化ガスが噴出され、中央部伝熱ガス供給系26からウエハWの裏面近傍のガスが吸引される。これにより、空間Sの吸着面の外周部に対向する部分において圧力が高まるため、空間Sに向けて外部からガスが進入するのを防止することができ、もって、イオン化ガスが希釈されるのを防止することができる。その結果、ウエハWの裏面に蓄積された負の電荷の中和を効率良く行うことができる。
【0067】
上述した基板処理装置10では、ウエハWの静電吸着によってウエハWだけでなく静電チャック21も帯電することがあるが、外周部伝熱ガス供給系25及び中央部伝熱ガス供給系26は静電チャック21を厚み方向に貫通する複数のガス供給穴からなり、イオン化ガスは該ガス供給穴を通じて噴出されるので、イオン化ガスを噴出する際、ウエハWだけでなく静電チャック21も除電することができる。
【0068】
上述した図3のウエハ除電処理では、ウエハWが除電される際、該ウエハWは静電チャック21から離間しないが、ウエハWが除電される間に亘り、リフターピン31によってウエハWを静電チャック21から離間させてもよい(図4(A)乃至図4(D))。これにより、ウエハW及び静電チャック21の間に生じる空間S’を大きくすることができ、空間S’におけるイオン化ガスの流れに対するコンダクタンスを大きくすることができる。その結果、静電チャック21からウエハWに向けて噴出されたイオン化ガスは該空間S’において拡散するので、イオン化ガスをウエハWの裏面の殆どの部分に接触させることができる。
【0069】
上述した図3のウエハ除電処理では、外周部伝熱ガス供給系25からイオン化ガスが噴出され、中央部伝熱ガス供給系26からウエハWの裏面近傍のガスが吸引されたが、伝熱ガス供給部の構成を変更して中央部伝熱ガス供給系26からイオン化ガスを噴出し、外周部伝熱ガス供給系25からウエハWの裏面近傍のガスを吸引してもよい(図5(A))。これにより、空間Sにおいてイオン化ガスを中央部から外周部へ向けて放射状に拡散させることができ(図2(C))、もって、該空間Sにおいてイオン化ガスの濃度を均一にすることができる。その結果、ウエハWの裏面に蓄積された負の電荷の中和を均一に行うことができる。
【0070】
また、吸着面において一方の縁近傍の伝熱ガス噴出口24の群24aからイオン化ガスを噴出し、他方の縁近傍の伝熱ガス噴出口24の群24bからガスを吸引してもよい(図5(B)、図2(D))。これにより、空間Sにおいてイオン化ガスの一様な流れを形成することができ、ウエハWの裏面に蓄積された負の電荷の中和を一様に行うことができる。
【0071】
また、上述した除電処理では、ウエハWの表面に蓄積された正の電荷を中和する際にプラズマPを用いたが、除電器を用いてチャンバ11内部へイオン流を放出することによって該電荷を中和してもよい。
【0072】
本実施の形態では、ウエハWの表面に正の電荷が蓄積され、ウエハWの裏面に負の電荷が蓄積されたが、静電電極板20に負の直流電圧を印加してウエハWを静電吸着した場合、ウエハWの表面には負の電荷が蓄積され、ウエハWの裏面には正の電荷が蓄積される。しかしながら、ウエハWの表面における負の電荷はプラズマP中の陽イオンによって中和可能であり、ウエハWの裏面における正の電荷はイオン化ガス中の陰イオンよって中和可能である。したがって、この場合も、上述した図3のウエハ除電処理によってウエハWを除電することができる。
【0073】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る被処理基板の除電方法について説明する。
【0074】
本実施の形態は、その構成や作用が上述した第1の実施の形態と基本的に同じであり、イオン化装置を用いない点で上述した第1の実施の形態と異なる。したがって、重複した構成、作用については説明を省略し、以下に異なる構成、作用についての説明を行う。
【0075】
図6は、本実施の形態に係る被処理基板の除電方法を実行する基板処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
【0076】
図6において、基板処理装置40はチャンバ11の側壁に配置された軟X線照射装置41を備え、該軟X線照射装置41はリフターピン31によって持ち上げられたウエハW及び静電チャック21の間の空間である空間S”に向けて軟X線Lを照射する。
【0077】
図7は、本実施の形態に係る被処理基板の除電方法としてのウエハ除電処理を示す工程図である。
【0078】
本処理でも、まず、プラズマエッチング処理中に帯電したウエハWをリフターピン31によって静電チャック21から持ち上げ、プラズマP中の電子によってウエハWの表面に蓄積された正の電荷を中和する。
【0079】
次いで、外周部伝熱ガス供給系25からウエハWの裏面に向けて不活性ガス、例えば、窒素ガス(所定のガス)(図中「○」で示す。)を噴出するとともに(所定ガス供給ステップ)、中央部伝熱ガス供給系26をTMP14と連通させて中央部伝熱ガス供給系26をウエハWの裏面近傍のガスを吸引する吸引系として機能させる。その結果、空間S”において外周部伝熱ガス供給系25から中央部伝熱ガス供給系26へ向かう窒素ガスの流れF’が生じる(図7(A))。
【0080】
次いで、空間S”に向けて軟X線照射装置41から軟X線Lを照射し、空間S”中の窒素ガスをイオン化してイオン化ガスを生成する。このとき、イオン化ガス中の陽イオン(図中「○」で示す。)は流れF’によって空間Sの全域に行き渡り、ウエハWの裏面の殆どの部分と接触し、ウエハWの裏面に蓄積された負の電荷を中和する(図7(B))。
【0081】
また、図3のウエハ除電処理と同様に、外周部伝熱ガス供給系25からのイオン化ガスの噴出量よりも中央部伝熱ガス供給系26によるガスの吸引量を多くし、空間S”の圧力をウエハWの表面近傍の圧力よりも低く設定する。
【0082】
次いで、チャンバ11内部に搬送アーム37を進入させ、該搬送アーム37によって除電されたウエハWをチャンバ11の外へ搬出し(図7(C))、本処理を終了する。
【0083】
図7のウエハ除電処理によれば、プラズマPによってウエハWの表面に蓄積された正の電荷が中和された後、空間Sにおいて、外周部伝熱ガス供給系25からウエハWの裏面に向けて噴出された窒素ガスに軟X線Lが照射される。窒素ガスに軟X線Lが照射されると、窒素ガスからイオン化ガスが生成され、該イオン化ガス中の陽イオンはウエハWの裏面と接触する。その結果、上述した第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0084】
また、イオン化ガスを生成する際、軟X線LをウエハWに向けて照射するとウエハWに成膜された各種膜が損傷するおそれがあるが、図7のウエハ除電処理では、ウエハW及び静電チャック21の間の空間である空間Sに向けて軟X線Lを照射するのみなので、ウエハWに成膜された各種膜が損傷するのを防止することができる。
【0085】
上述した図7のウエハ除電処理では、イオン化ガスを生成するためのガスとして窒素ガスを用いたが、イオン化ガスの原料ガスとしてはこの他にドライエア、アルゴンガス等の不活性ガス、酸素ガスを用いることができる。なお、ウエハWの表面には負の電荷が蓄積され、ウエハWの裏面には正の電荷が蓄積された場合においてもウエハWを除電することができるのは第1の実施の形態と同じである。
【0086】
上述した基板処理装置40は軟X線照射装置41を備えたが、該基板処理装置40は軟X線照射装置41の代わりに空間Sに向けてUV光を照射するUV光照射装置を備えてもよい。空間Sの窒素ガスにUV光を照射すると、該窒素ガスからイオン化ガスが生成される。したがって。この場合も上述した第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0087】
上述した各実施の形態において、プラズマエッチング処理が施される基板は半導体デバイス用のウエハに限られず、LCD(Liquid Crystal Display)等を含むFPD(Flat Panel Display)等に用いる各種基板や、フォトマスク、CD基板、プリント基板等であってもよい。
【0088】
また、本発明の目的は、上述した各実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記憶した記憶媒体を、システム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても達成される。
【0089】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が上述した各実施の形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード及び該プログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0090】
また、プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW等の光ディスク、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。または、プログラムコードをネットワークを介してダウンロードしてもよい。
【0091】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、上述した各実施の形態の機能が実現されるだけではなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって上述した各実施の形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0092】
さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その拡張機能を拡張ボードや拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって上述した各実施の形態の機能が実現される場合も含まれる。
【符号の説明】
【0093】
L 軟X線
S 空間
W ウエハ
10,40 基板処理装置
11 チャンバ
12 載置台
21 静電チャック
24 伝熱ガス噴出口
25 外周部伝熱ガス供給系
26 中央部伝熱ガス供給系
27 イオン化装置
28 伝熱ガス供給装置
31 リフターピン
41 軟X線照射装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板を収容する収容室と、該収容室内に配置されて前記被処理基板を載置する載置台とを備え、前記載置台は、前記載置された被処理基板の裏面に接触して当該被処理基板を静電吸着する静電吸着部と、該静電吸着部から前記被処理基板に向けて伝熱ガスを噴出する伝熱ガス供給部を有する基板処理装置における被処理基板の除電方法であって、
前記伝熱ガス供給部が前記被処理基板に向けてイオン化ガスを供給するイオン化ガス供給ステップを有することを特徴とする被処理基板の除電方法。
【請求項2】
前記載置台は、前記被処理基板を前記静電吸着部から離間させる離間装置を有し、
前記イオン化ガス供給ステップでは、前記離間装置が前記被処理基板を前記静電吸着部から離間させることを特徴とする請求項1記載の被処理基板の除電方法。
【請求項3】
前記伝熱ガス供給部は、前記被処理基板に向けて開口する複数の噴出口からなり、
前記イオン化ガス供給ステップでは、前記複数の噴出口が前記イオン化ガスを供給することを特徴とする請求項1又は2記載の被処理基板の除電方法。
【請求項4】
前記イオン化ガス供給ステップでは、前記被処理基板の前記静電吸着部側の面近傍の圧力を、前記被処理基板の前記静電吸着部側の面とは反対側の面近傍の圧力よりも低く設定することを特徴とする請求項3記載の被処理基板の除電方法。
【請求項5】
前記イオン化ガス供給ステップでは、前記複数の噴出口の一部が前記イオン化ガスを供給し、前記複数の噴出口の他の一部が前記被処理基板の前記静電吸着部側の面近傍のガスを吸引することを特徴とする請求項4記載の被処理基板の除電方法。
【請求項6】
前記静電吸着部は円板状であり、前記複数の噴出口は前記円板の表面において分散して配置され、
前記イオン化ガス供給ステップでは、前記円板の表面の外周部に配置された前記噴出口の群が前記イオン化ガスを供給し、前記円板の表面の中央部に配置された前記噴出口の群が前記被処理基板の前記静電吸着部側の面近傍のガスを吸引することを特徴とする請求項5記載の被処理基板の除電方法。
【請求項7】
前記静電吸着部は円板状であり、前記複数の噴出口は前記円板の表面において分散して配置され、
前記イオン化ガス供給ステップでは、前記円板の表面の中央部に配置された前記噴出口の群が前記イオン化ガスを供給し、前記円板の表面の外周部に配置された前記噴出口の群が前記被処理基板の前記静電吸着部側の面近傍のガスを吸引することを特徴とする請求項5記載の被処理基板の除電方法。
【請求項8】
前記伝熱ガス供給部は前記静電吸着部を貫通する貫通穴からなり、前記イオン化ガスは該貫通穴を介して供給されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の被処理基板の除電方法。
【請求項9】
被処理基板を収容する収容室と、該収容室内に配置されて前記被処理基板を載置する載置台とを備え、前記載置台は、前記載置された被処理基板の裏面に接触して当該被処理基板を静電吸着する静電吸着部と、該静電吸着部から前記被処理基板に向けて伝熱ガスを噴出する伝熱ガス供給部と、前記被処理基板を前記静電吸着部から離間させる離間装置とを有する基板処理装置における被処理基板の除電方法であって、
前記伝熱ガス供給部が前記被処理基板に向けて所定のガスを供給する所定ガス供給ステップを有し、
前記基板処理装置は、前記収容室内に向けて軟X線又はUV光を照射する照射装置をさらに備え、
前記所定ガス供給ステップでは、前記離間装置が前記被処理基板を前記静電吸着部から離間させるとともに、前記照射装置が、前記軟X線又は前記UV光を前記被処理基板及び前記静電吸着部の間の空間に向けて照射することを特徴とする被処理基板の除電方法。
【請求項10】
被処理基板を収容する収容室と、該収容室内に配置されて前記被処理基板を載置する載置台とを備え、前記載置台は、前記載置された被処理基板の裏面に接触して当該被処理基板を静電吸着する静電吸着部と、該静電吸着部から前記被処理基板に向けて伝熱ガスを噴出する伝熱ガス供給部を有する基板処理装置において、
前記伝熱ガス供給部が前記被処理基板に向けてイオン化ガスを供給することを特徴とする基板処理装置。
【請求項11】
被処理基板を収容する収容室と、該収容室内に配置されて前記被処理基板を載置する載置台とを備え、前記載置台は、前記載置された被処理基板の裏面に接触して当該被処理基板を静電吸着する静電吸着部と、該静電吸着部から前記被処理基板に向けて伝熱ガスを噴出する伝熱ガス供給部と、前記被処理基板を前記静電吸着部から離間させる離間装置とを有する基板処理装置において、
前記収容室内に向けて軟X線又はUV光を照射する照射装置をさらに備え、
前記伝熱ガス供給部が前記被処理基板に向けて所定のガスを供給し、
前記被処理基板に向けての前記所定のガスの供給の際、前記離間装置が前記被処理基板を前記静電吸着部から離間させるとともに、前記照射装置が、前記軟X線又は前記UV光を前記被処理基板及び前記静電吸着部の間の空間に向けて照射することを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−199239(P2010−199239A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41231(P2009−41231)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】