説明

被測定物の振れ測定装置及び方法

【課題】段取り作業の効率化を図ると共に、測定精度を向上させることにある。
【解決手段】モータ1により水平回転駆動される回転テーブル2上にその中心軸に直交する回転平面上で互いに直交するX方向及びY方向に移動可能な移動調整テーブル4を載せ、その上に被測定物10を支持する複数個のジャッキ3が搭載テーブルを載せて構成された回転部と、複数のアームを鉛直方向に移動可能に、且つ水平方向に移動可能にそれぞれ支持し、これら各アームの先端部に被測定物の面や円弧面を計測する測定器8を取付けて構成された測定器移動部と、回転テーブル2の回転軸線上で互いに交差するスリット状の複数のレーザ光を照射するレーザ発生器9と、被測定物の予定角度位置での面の高さや円弧面における半径方向の長さの測定値がそれぞれ取込まれ、被測定物の傾き量や回転テーブルの中心に対する被測定物の中心の偏心量を求める演算処理部20と備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量のある大形の円筒体や円推体などの被測定物の外周や平面の変位(振れと称する)を高精度で計測する振れ測定装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばガスタービンのホイールのような2t前後の重量で、しかも形状の大きな被測定物の外周や面上の変位を測定するには、回転テーブルを備えた振れ測定装置で行っている。この振れ測定装置は、水平に設置された石定盤と、この石定盤上に載置した回転テーブルと、石定盤に固定した測定器とから構成され、ホイールを回転テーブル上に載置した状態で、回転テーブルを回転させながら測定器によりホイールのインロウ部(円弧面)及び上下ボルト締め付け面の振れを測定し、最終的にホイールのインロウ部の真円度や上下ボルト締め付け面の平面度を測定する。
【0003】
このような振れ測定装置において、ホイールは回転テーブルへ例えばクレーンを用いて載置する据付作業(以下、段取り作業と呼ぶ)が行われるが、このときのホイールの中心と回転テーブルの回転中心との心合わせや、回転テーブルに対してホイールの測定面を水平にすることが重要である。
【0004】
因みに、この種の装置としては、軽い円筒状のワークにおける芯出し装置が知られている。この芯出し装置は円筒状ワークの芯出しを自動的に行うもので、円筒状のワークの上下2個所で測定子により外径の変化を測定すると共に、中央1個所で同じく外径の微小変化を測定することによってワークの傾き及び偏心を求め、この検出結果に基づいて自動的に芯出しを行えるようにしたものである(特許文献1参照)。
【0005】
また、他の円筒状ワークの自動芯出し装置として、軸心を中心に水平回転可能なターンテーブルと、このターンテーブル上に等間隔で配置された円筒状ワークを保持するための4個のチャックと、各チャックを上記ターンテーブルの回転中心に対して放射方向に移動させる第1の送りネジ機構と、相互に隣接する上記チャック間にそれぞれ配置され、上記ワークの端面と接触する4個のジャッキと、各ジャッキを昇降させる第2の送りネジ機構と、上記ワークの外周面と接触して測定する2個の測定子を有する測定部とを備え、上記測定子は上記ワークの軸方向に所定の距離だけ離れた位置に置かれ、かつ一方の測定子は上記ワークの軸方向における中央部まで移動可能にしたものである(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開昭60−99543号公報
【特許文献2】実開昭60−80303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前述した従来の被測定物の振れ測定装置は、重量物で形状の大きなホイールをクレーンにより回転テーブルへ据付けなければならないため、回転テーブルに載置されるホイールの位置精度(偏芯量)を数mm以内にすることは困難である。
【0007】
また、クレーンを用いて回転テーブル上に移載する場合、ホイールの中心と回転テーブルの中心との差を測定し、ずれ分を木槌などでホイールを叩いて回転テーブルの中心付近へ動かす作業を何回も繰り返すことを行っているため、その段取り作業に大幅な時間がかかり、効率化が求められている。
【0008】
さらに、測定値を精度良く取るには測定精度の良い(分解能の良い)測定器を使用する必要があるが、測定精度の良い測定器は測定できる測定範囲が狭く、測定範囲が広い測定器は測定精度がラフな測定となる。このため、測定器の測定範囲が小さいと被測定物の測定できる範囲内に測定器をセットするのは容易な作業ではなく、また測定器からの測定値を見ながら設定位置を調整するなど時間の掛かる作業となっており、効率化が求められている。
【0009】
また、ホイールの中心と回転テーブルの回転中心との差(偏芯量)を測定器で測定できる範囲以下(例えば、測定器で測定できる範囲の半分以下)にしないと、振れ測定時に測定器の測定範囲をオーバーし、ホイールの円弧面全周を測定することは困難となる。
【0010】
さらに、面測定時の水平具合も同様である。例えば、測定精度の高い測定器であるテコ式のゲージでは、測定分解能は0.2ミクロン、測定範囲は±0.3mmと狭くなっており、該偏芯量が0.6mm以上あると、ホイールの円弧面全周を測定できなくなる。
【0011】
本発明は、従来の被測定物を回転テーブルに移載する際の問題を解消して、段取り作業の効率化を図ることができると共に、測定精度を向上させることができる被測定物の振れ測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記の目的を達成するため、次のような被測定物の振れ測定装置及び方法により段取り作業の効率化と被測定物の振れを測定精度の向上を図るものである。
【0013】
本発明は、円筒形状や円推形状の被測定物の平面や外周円弧面等を計測する振れ測定装置において、ベース上に水平回転可能に設けられ、モータにより回転駆動される回転テーブルと、この回転テーブル上に載置され、該回転テーブルの中心軸に直交する回転平面上で互いに直交するX方向及びY方向に移動可能な移動調整テーブルと、この移動調整テーブル上に被測定物を支持する複数個の上下移動器具がほぼ等間隔でかつほぼ同一半径位置に設けられた搭載テーブルとを有する回転部と、この回転部の近傍に垂直に取付けられた支持架台に複数のアームを上下移動機構により鉛直方向に移動可能に、且つ前後移動機構により水平方向に移動可能にそれぞれ支持し、これら各アームの先端部に前記被測定物の平面や円弧面等を計測する測定器を取付けて構成された測定器移動部と、前記搭載テーブルへの被測定物の移載時や被測定物への測定器の位置合せ時の目印として前記回転テーブルの回転軸線上で互いに交差するスリット状の複数のレーザ光を照射するレーザ光発生器と、前記測定器により測定された前記被測定物の予定角度位置での面の高さや円弧面における半径方向の長さの測定値がそれぞれ取込まれ、演算処理により前記被測定物の傾き量や前記回転テーブルの中心に対する前記被測定物の中心の偏心量を求める演算処理装置とを備え、前記演算処理装置により求められた前記被測定物の面の傾き量に対しては前記搭載テーブルに有する上下移動器具を上下移動させ、前記被測定物の中心の偏心量に対しては前記移動調整テーブルをX方向及びY方向に移動させて調整するものである。
【0014】
また、本発明は、モータにより水平回転駆動される回転テーブル上に該回転テーブルの中心軸に直交する回転平面上で互いに直交するX方向及びY方向に移動可能な移動調整テーブルを載せ、その上に被測定物を支持する複数個の上下移動器具がほぼ等間隔でかつほぼ同一半径位置に設けられた搭載テーブルを載せて構成された回転部と、この回転部の近傍に垂直に取付けられた支持架台に複数のアームを上下移動機構により鉛直方向に移動可能に、且つ前後移動機構により水平方向に移動可能にそれぞれ支持し、これら各アームの先端部に前記被測定物の平面や外周円弧面を計測する測定器が取付けて構成された測定器移動部と、前記搭載テーブルへの被測定物の移載時や被測定物への測定器の位置合せ時の目印として前記回転テーブルの回転軸線上で互いに交差するスリット状のレーザ光を照射するレーザ光発生器とを備えて、被測定物の振れを測定する方法において、予め前記搭載テーブルに有する複数の上下移動器具を同一高さに調整し、これら上下移動器具の上に前記レーザ発生器より照射されるスリット状のレーザ光を目印に前記被測定物の中心が位置するように被測定物を支持させて移載するステップと、前記アームを上下移動機構及び前後移動機構によりそれぞれ移動調整して前記被測定物に測定器を接触させるステップと、前記回転テーブルを回転させながら前記測定器により予定角度毎に前記被測定物の平面や外周円弧面を測定するステップと、前記測定器により測定された測定値に基づき前記搭載テーブル上での被測定物の測定面の傾き量や被測定物の中心と前記回転テーブルの回転中心との偏心量を求めるステップと、求められた被測定物の測定面の傾き量は前記移動器具を上下方向に移動させて水平状態に調整し、偏心量については移動調整テーブルをX方向及びY方向に移動調整し、前記回転テーブルの回転中心に被測定物の中心を合せるステップとからなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、段取り作業の効率化を図ることができると共に、測定精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0017】
図1は本発明による被測定物の振れ測定装置に係る第1の実施形態の構成を示す斜視図であり、図2は同装置の側面図である。
【0018】
図1及び図2において、1は石定盤100上にベース101を介して据付けられたパルスモータで、このパルスモータ1の回転軸に回転テーブル2の中心部が水平回転自在に連結されている。
【0019】
この回転テーブル2の上面にパルスモータ1の回転軸と直交する回転面上で互いに直交する方向、すなわちX−Y方向にそれぞれ移動可能な移動調整テーブル4が設けられ、この移動調整テーブル4の上面に被測定物10を支持し且つ120度の間隔をあけて設けられたスライド板3aを介して径方向にそれぞれ連動してスライド移動可能な3個の上下移動調整器具、例えばジャッキ3が設けられた搭載テーブル102が載せられている。
【0020】
上記移動調整テーブル4は互いに直交する方向、つまりX方向とY方向にスライド移動可能な傾斜面を有する2枚の円板の傾斜面を突合せ、各円板を調整ネジ4aによりX方向とY方向にそれぞれ移動可能な構成にしたものである。
【0021】
ここで、ジャッキ3はその送り量を、また移動調整テーブル4はX方向とY方向の移動量をそれぞれに有するスケールなどに表示できるようになっている。
【0022】
一方、5はベース101近傍の石定盤100上に垂直に取付けられた支持架台で、この支持架台5は一対のガイドフレーム5a,5bを備えている。そして、これらのガイドフレーム5a,5bにはそれぞれをガイドとして複数個の移動体6が上下方向に移動可能に設けている。
【0023】
また、これらの移動体6には搭載テーブル102の上方を水平方向に移動可能なアーム7がそれぞれ保持され、各アーム7の先端部に移動調整器11を介して被測定物10の円弧面や平面の変位を測定する接触式の測定器8がそれぞれ取付けられている。
【0024】
上記測定器8としては、測定精度の高いテコ式ゲージなどの測定器と、測定精度は低いが測定範囲の広いダイヤルゲージなどの測定器が用いられ、ここではテコ式ゲージなどの測定器を一方のガイドフレーム5a側、ダイヤルゲージなどの測定器を他方のガイドフレーム5b側に分けて配置している。
【0025】
また、各移動体6には駆動源として2台のパルスモータが内蔵され、ガイドフレーム5a,5bの内面に取付けられたラックと一方のパルスモータにより回転するピニオンからなる上下移動機構により移動体6が任意の上下方向位置に移動し、また各アーム7に対してもその長手方向に取付けられたラックと他方のパルスモータにより回転するピニオンからなる前後移動機構により任意の水平方向位置に移動できるようになっている。
【0026】
さらに、上記移動調整器11は、図3に示すように任意の送りが可能で、且つ送り量の表示機能を有するマイクロメータなどからなり、微調整用の垂直移動部11a及びこの垂直移動部11aに対して直交する微調整用の水平移動部11bを備え、つまみ11cの操作により垂直移動部11aが鉛直方向に移動し、つまみ11dの操作により水平移動部11bが水平方向に移動し、これら双方の移動調整により水平移動部11bの端部に回動可能に支持された測定器8を被測定物10に接触させた状態で測定範囲の中央位置に移動調整するものである。
【0027】
従って、各測定器8は、移動体6の上下方向の移動と各アームの水平方向の移動及びマイクロメータなどの移動調整器11により、搭載テーブル102上に載置された被測定物10の測定指定位置への位置決めが可能となる。
【0028】
また、9a,9bはそれぞれ支持架台5の上部と、この支持架台5とは90度異なる位置に直立して設けられた破線で示す支柱とに取付けられ、回転テーブル2の回転中心(又はパルスモータ1の回転軸)を仮想した位置の被測定物10(又は搭載テーブル102)の上面に直交するスリット状のレーザ光を照射する2台のレーザ光発生器である。
【0029】
図4は本発明による振れ測定装置を備えた位置決め装置の演算処理装置の一例を示すブロック図である。
【0030】
図4において、20は演算処理装置の中で制御の中心を担う演算処理部、21は演算処理部20に対して各種の操作指示を与える操作部、22は測定器8で測定した値や演算処理部20で演算処理された値などを表示する表示部である。また、23は図1及び図2のパルスモータ1内に設けられ、回転テーブル2の回転角度検出信号を演算処理部20に与える回転角度検出器、24は操作部21から演算処理部20に対して初期設定がなされるとパルスモータ1に原点復帰指示を与える指示部である。
【0031】
なお、演算処理部20にはパルスモータ(X),(Y)からのフィードバック信号が入力されるようになっている。
【0032】
次に上記のように構成された被測定物の振れ測定装置の作用について図5乃至図12を参照しながら説明する。
【0033】
まず、搭載テーブル102の上面に有する3個のジャッキ3を被測定物10の大きさに応じた位置にスライド板3aを介して半径方向に移動すると共に、高さが全て同じ高さになるように図5の(a)〜(d)に示すような手順により調整する。
【0034】
図5において、(a)に示すように搭載テーブル102の上面に有する3個のジャッキ3の上に調整用プレート200を載せ、(b)に示す状態にする。次いで、上下移動機構及び水平移動機構により移動体6及びアーム7を鉛直及び水平方向に移動させてアーム7の先端部に移動調整器11を介して取付けられた測定器8を(c)に示すようにジャッキ3に対応する位置のプレート200の上面に接触させた状態でアーム7を固定し、マイクロメータなどの移動調整器11により各ジャッキ3における高さを順次測定し、ジャッキ3の高さを揃える。
【0035】
各ジャッキ3の高さが0.1mm以下に揃ったら、(d)に示すように移動調整器11をロックし、ゲージにて各ジャッキ位置の高さを精密に測定し、ジャッキ高さをより精密に揃える。
【0036】
このように各ジャッキ3の高さを全て同じ高さに調整した後、プレート200を取外し、図6に示すように各ジャッキ3の上に図示しないクレーンにより被測定物(ここでは、一例としてガスタービンのホイール)10を載置する。
【0037】
この状態で操作部21から演算処理部20が初期設定されると、指示部24よりパルスモータ1に原点復帰指示が出され、回転角度検出器23の角度の初期設定が行われる。
【0038】
次に2台のレーザ光発生器9a,9bからスリット状のレーザ光をそれぞれ発生させると、これらレーザ光は回転テーブル2の回転中心の軸線上で互いに交差する2方向からホイール10の上面に照射され、ホイール10上に交差したスリット光の目印が表示される。
【0039】
そして、この目印の位置にホイール10の中心がくるようにクレーンを操作してホイール10を搭載テーブル102に載置する。
【0040】
まず、ホイール10の面の傾き(高さ方向の変位)を測定する場合について述べる。
【0041】
上下移動機構のパルスモータに駆動指令を与えて測定器8がホイール10に緩衝しない高さ位置にまで移動体6を上昇させる。
【0042】
この状態で操作部21から演算処理部20を通してパルスモータ1に駆動指令が出されると、このパルスモータ1の駆動により回転テーブル2が回転し、搭載テーブル102を測定開始点(初期設定角度0)から見て最初のジャッキ3のある位置(角度)まで回転させる。
【0043】
次に、ホイール10の面の傾きを測定するため、上下移動機構により移動体6を下降させ、ダイヤルゲージなどの測定精度が低く測定範囲が広い測定器8をホイール10の所定の位置(ジャッキ3で支持している角度位置)の面を測定できるようにアーム7の高さ方向の位置を調整し、その後、前後移動機構によりアーム7を水平方向に移動させて当該測定器8をホイール10の測定位置へ調整する。
【0044】
このように測定器8をホイール10の測定位置に調整した後、アーム7の先端部と測定器8との間に存在する図3に示すようなマイクロメータなどの移動調整器11において、まず測定器8をホイール10の面に当てながら、測定器8からの測定値を演算処理装置の表示部22にて確認し、つまみ11cを回して垂直移動部11aを鉛直方向に移動させ、また、つまみ11dを回して水平移動部11bを水平方向に移動させ、これら双方の移動調整により測定器8が測定できる測定範囲の中央になる位置に調整し、測定器8でホイール10の面を測定できる状態にする。
【0045】
ここで、傾き調整量を求めるために、上下移動機構及び移動調整器11により調整した移動体6の高さ位置を操作部21より演算処理部20に入力する。
【0046】
そして、測定器8によりホイール10の指定した位置の面が測定されると、その測定値は演算処理部20に取込まれる。その後、上下移動機構により移動体6を測定器8がホイール10と干渉しない位置まで上昇させる。
【0047】
このような作業を3箇所のジャッキ3の位置に対応するホイール10の面について繰返し行う。
【0048】
演算処理部20では3箇所での移動体6の各高さ位置と、測定器8によって計測した値から高さ方向の違い(傾き)が出るため、各ジャッキ3での調整量が求められる。そして、この演算処理部20で求めた調整量分だけ各ジャッキ3を上下方向に動かして傾きを調整する。
【0049】
このような調整を行うことで、傾きの変位量が測定精度の高い測定器での測定が可能な範囲に調整されるので、次にテコ式ゲージなどの測定範囲が狭く測定精度が高い測定器8に切替えて前述同様の測定が行われ、さらにジャッキ3の高さを微調整してホイール10の傾き調整が完了する。
【0050】
このように調整量分だけ各ジャッキ3により被測定物(ここではホイール)10の傾きを調整しているのは、被測定物の形状や加工精度によりその測定面が水平でなく傾きを持つ平面を測定することになるためである。
【0051】
次に、回転テーブル2の回転中心(A)とホイール10の中心(B)とを合せる場合について述べる。
【0052】
ここでは、ホイール10の径方向について複数個所、例えば4個所(0,90,180,270度の位置)の外周円弧面を測定する作業を行うものとする。
【0053】
まず、上下移動機構のパルスモータに駆動指令を与えて移動体6を上昇させ、測定器8をホイール10に緩衝しない高さ位置に移動させる。
【0054】
この状態で操作部21から演算処理部20を通してパルスモータ1に駆動指令が出されると、このパルスモータ1の駆動により回転テーブル2が回転し、搭載テーブル102を最初の測定開始点の外周円弧面を測定するホイール10の位置(0度の角度)まで回転させる。このときの回転テーブル2の向きは図7に示すように+X軸方向である。
【0055】
次に、ホイール10の外周円弧面を測定するため、上下移動機構により移動体6を下降させ、回転テーブル2の向きが+X軸方向としたときのホイール10の外周円弧面をダイヤルゲージなどの測定器8で測定できるように前後移動機構によりアーム7を水平方向に移動させ、高さ方向の位置を上下移動機構により移動体6を下降させて調整し、当該測定器8をホイール10の指定位置へ調整する。
【0056】
ここで、前後移動機構により調整したアーム7の水平方向の移動位置を操作部21から演算処理部20に入力する。そして、測定器8によりホイール10の指定した位置の円弧面を測定し、このとき得られた測定値を+dXとして操作部21より演算処理部20に入力する。
【0057】
その後、前後移動機構によりアーム7を測定器8がホイール10と干渉しない位置まで後退させ、パルスモータ1により回転テーブル2を時計回り方向に回転させて、ホイール10の円弧面を次に測定する位置(90度)まで搭載テーブル102を回転させる。このときの回転テーブル2の向きは図8に示すように+Y軸方向である。
【0058】
前後移動機構により調整したアーム7の水平方向の移動位置を操作部21より演算処理部20に入力する。そして、測定器8によりホイール10の指定した位置の円弧面を測定し、このとき得られた測定値を+dYとして演算処理部20に入力する。
【0059】
このような作業は、回転テーブル2の向きを最初の位置から、時計回り方向に180°回転させた図9に示す−X軸方向としたとき、図10に示すように最初の位置から270°回転させ、−Y軸方向したときも前述同様に行われる。
【0060】
演算処理部20では、前後移動機構により予め指定された各角度で水平移動したアーム7の位置と測定器8で測定された値とから図11に示すように回転テーブル2の指定した位置でのホイール10の外周円弧面の測定値が求められ、その測定値をフーリエ展開することで、ホイール10の中心と回転テーブル2の中心との偏心量を求めることができる。
【0061】
ここで、その詳細について述べる。
【0062】
いま、テ−ブルの回転中心Aを(0、0)とし、被測定物10の中心Bのずれを(x0、y0)とすると、中心のズレが被測定物10の半径に比べて小さい時(被測定物10の半径をRとする。)、テーブルの回転角度θでの被測定物10の外周上の位置は、
x=cos(θ)・cos(θ)・x0+sin(θ)・cos(θ)・y0
+cos(θ)・R …(1)
y=sin(θ)・cos(θ)・x0+sin(θ)・sin(θ)・y0
+sin(θ)・R …(2)
となる。測定した測定点に対して、回転中心位置(0、0)と外周上の位置(x、y)との距離から最小二乗法を用いて、被測定物10の中心ずれ量(x0,y0)を求める。
【0063】
このようにしてホイール10の中心と回転テーブルの中心の偏心量が求められると、この中心の偏心量を基に移動調整テーブル4の2枚の円板のX方向及びY方向の移動調整量を求める。すなわち、X方向調整量={(+dX)−(−dX)}/2、Y方向調整量={(+dY)−(−dY)}/2を求め、この移動調整テーブル4を中心ずれ量に応じた分だけ2枚の円板を調整ネジ4aによりX方向及びY方向に互いに傾斜面に沿ってスライド移動させることにより、回転テーブル2の回転中心に被測定物10の中心を合せることができる。
【0064】
このような調整を行うことで、測定精度の高い測定器での測定が可能な範囲になるので、次にテコ式ゲージなどの測定範囲が狭く測定精度が高い測定器8に切替えて前述同様に図7〜図11に示すような手順で測定し、図12に示すようにX,Y軸方向の微調整が完了する。
【0065】
このように各軸方向での測定を行い、X,Y軸を微調整することにより、±0.05mm程度にまでホイール位置を調整することができる。
【0066】
以上の作業を行うことにより、ホイール10の面の傾きが調整され、またホイール10の中心が回転テーブル2の中心に合せられることで回転テーブル2上へのホイール10の据付けが完了し、本来の被測定物の振れ測定の作業に入る。
【0067】
この振れ測定作業について簡単に述べると次の通りである。
【0068】
まず、レーザ光発生器9から回転テーブル2の回転軸に合うスリット状のレーザ光をホイール10に照射し、ホイール10上に表示されるスリット光による直線を測定位置として支持架台5の左右一対のガイドフレーム5a,5bに上下方向に移動可能に設けられた複数個の移動体6及び各移動体6に水平方向に移動可能に保持されたアーム7を上下移動機構及び前後移動機構により移動させて、各アーム7の先端部に移動調整器11を介して取付けられた測定器8をそれぞれ設定する。
【0069】
このような状態で操作部21から演算処理部20に計測開始指示を出すと、この演算処理部20が起動され、指示部24を通してパルスモータ1を動作させて自動計測を開始する。この場合、ホイール10は、操作部21より演算処理部20に予め指定した回転回数分だけ各測定器8により測定される。
【0070】
そして、演算処理部20では各測定器8により測定されたデータを取込むと、これらの測定データをもとに演算処理を実行し、ホイール10の振れ、真円度、平行度などを求め、その結果を表示部21に表示する。
【0071】
このように本実施形態では、石定盤100上にパルスモータ1により回転駆動される回転テーブル2を水平回転可能に設け、この回転テーブル2上に被測定物を支持する3個のジャッキ3が120度の間隔をあけて同一半径位置に設けられた搭載テーブル102及びこの搭載テーブル102を回転テーブル2との間に設けられ、回転テーブル2の中心軸に直交する回転平面上で互いに直交する方向、つまりX方向及びY方向に移動可能な移動調整テーブル4を載せて被測定物の回転機構部を構成し、この回転機構部の近傍の石定盤100上に一対の支持フレーム5a,5bを有する支持架台5を垂直に取付けると共に、一対の支持フレーム5a,5bをガイドして上下移動機構により鉛直方向に移動可能に複数の移動体6をそれぞれ設け、これら各移動体6に前後移動機構により水平方向に移動可能にアーム7を保持させて設け、且つこのアーム7の先端部に被測定物の振れを測定する測定器8を取付けて測定器移動機構部を構成し、且つ前記回転機構部の搭載テーブル102への被測定物の移載時や被測定物への測定器の位置合せ時に回転テーブル2の回転中心の軸線上で互いに交差するスリット状のレーザ光をそれぞれ照射する2個のレーザ発生器を設けたものである。
【0072】
従って、このような構成の振れ測定装置によれば、回転テーブル2の回転中心の軸線上で互いに交差するスリット状のレーザ光を目印にクレーンにより被測定物10をその中心が位置するように載置テーブル102上に載置し、移動体6及びアーム7を上下移動機構及び前後移動機構によりそれぞれ移動調整して被測定物10に測定器8を接触させると共に、回転テーブル2を回転させて予定角度毎に被測定物10の面や外周円弧面を測定して搭載テーブル102上での被測定物10の測定面の傾きと、被測定物10の中心と回転テーブル2の回転中心との偏心量を求め、傾き調整量はジャッキ3により調整し、偏心量については移動調整テーブル4の2枚の円板をX方向及びY方向に移動調整することで、回転テーブル2の回転中心に被測定物10の中心を合せるようにしたので、段取り作業時の作業効率を大幅に向上させることができる。
【0073】
しかも、被測定物10の一周での測定をしなくても被測定物10の外周円弧面の一部を測定することにより、被測定物10の中心と回転テーブル2の回転中心とのずれを求めることができ、測定器8の位置調整作業や回転テーブル2の測定位置への回転指示などする必要がなくなり、作業性の向上を図ることができる。
【0074】
また、被測定物10の面や外周円弧面の変位を測定する測定器8とアーム7の先端部との間にマイクロメータなどの移動調整器11を操作して、測定器8を被測定物10の測定位置に微調整できるので、測定器8を被測定物10に容易に位置決めすることができる。
【0075】
さらに、支持架台5の一対の支持フレーム5a,5bをガイドして上下移動機構により鉛直方向に移動可能に設けられた複数の移動体6に前後移動機構により水平方向に移動可能に保持されたアーム7の先端部に取付けられる測定器8として、測定精度は低いが測定範囲が広い測定器8を用いて測定し、その後測定精度が高いが測定範囲の狭い測定器9に切替えて測定することで、測定器8を測定する位置で止めたり、測定位置に合せるために測定器8の位置を調整したりするなど、測定途中での人手による調整作業が不要となり、段取り作業時の測定器の位置調整作業を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明による被測定物の振れ測定装置の第1の実施形態を示す斜視図。
【図2】同実施形態の側面図。
【図3】同実施形態における移動調整器の詳細を示す側面図。
【図4】同実施形態における演算処理装置の一例を示すブロック図。
【図5】同実施形態において、搭載テーブルに設けられた3個のジャッキを同一高さに調整する方法の説明図。
【図6】同じく搭載テーブル上にホイールを移載するときを説明するための斜視図。
【図7】同じく回転テーブルが初期位置(0度)状態でのホイールの円弧面の測定を説明するための図。
【図8】同じく回転テーブルが90度状態でのホイールの円弧面の測定を説明するための図。
【図9】同じく回転テーブルが180度状態でのホイールの円弧面の測定を説明するための図。
【図10】同じく回転テーブルが270度状態でのホイールの円弧面の測定を説明するための図。図1の振れ測定装置の作用を説明するための図。
【図11】同じく回転テーブルの中心にホイール中心を合せるに必要なX方向及びY方向の調整量を説明するための図。
【図12】同じく回転テーブルの中心にホイール中心を粗調整により合せた状態を説明するための図。
【符号の説明】
【0077】
1…パルスモータ、2…回転テーブル、3…ジャッキ、3a…スライド板、4…移動調整テーブル、4a…調整ネジ、5…支持架台、5a,5b…支持フレーム、6…移動体、7…アーム、8…測定器、9a,9b…レーザ光発生器、10…被測定物、11…マイクロメータなどの移動調整器、20…演算処理部、21…操作部、22…表示部、23…回転角度検出器、24…指示部、100…石定盤、101…ベース、102…搭載テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状や円推形状の被測定物の平面や外周円弧面等を計測する振れ測定装置において、
ベース上に水平回転可能に設けられ、モータにより回転駆動される回転テーブルと、この回転テーブル上に載置され、該回転テーブルの中心軸に直交する回転平面上で互いに直交するX方向及びY方向に移動可能な移動調整テーブルと、この移動調整テーブル上に被測定物を支持する複数個の上下移動器具がほぼ等間隔でかつほぼ同一半径位置に設けられた搭載テーブルとを有する回転部と、
この回転部の近傍に垂直に取付けられた支持架台に複数のアームを上下移動機構により鉛直方向に移動可能に、且つ前後移動機構により水平方向に移動可能にそれぞれ支持し、これら各アームの先端部に前記被測定物の平面や円弧面等を計測する測定器を取付けて構成された測定器移動部と、
前記搭載テーブルへの被測定物の移載時や被測定物への測定器の位置合せ時の目印として前記回転テーブルの回転軸線上で互いに交差するスリット状の複数のレーザ光を照射するレーザ光発生器と、
前記測定器により測定された前記被測定物の予定角度位置での面の高さや円弧面における半径方向の長さの測定値がそれぞれ取込まれ、演算処理により前記被測定物の傾き量や前記回転テーブルの中心に対する前記被測定物の中心の偏心量を求める演算処理装置と、
を備え、前記演算処理装置により求められた前記被測定物の面の傾き量に対しては前記搭載テーブルに有する上下移動器具を上下移動させ、前記被測定物の中心の偏心量に対しては前記移動調整テーブルをX方向及びY方向に移動させて調整することを特徴とする被測定物の振れ測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の被測定物の振れ測定装置において、
前記測定器移動部は、支持フレームを有する支持架台と、前記支持フレームをガイドして上下移動機構により鉛直方向に移動可能に設けられた複数の移動体と、これら各移動体に前後移動機構により水平方向に移動可能に保持されたアームと、各アームの先端部にそれぞれ取付けられ、前記被測定物の面の高さや円弧面における半径方向の長さを測定する複数の測定器とから構成されていることを特徴とする被測定物の振れ測定装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の被測定物の振れ測定装置において、
前記アームの先端部と前記測定器との間にマイクロメータなどの移動調整器を取付け、この移動調整器の微調整により前記測定器を前記被測定物の測定面に位置決め可能にしたことを特徴とする被測定物の振れ測定装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の被測定物の振れ測定装置において、
前記各アームの先端部に取付けられる測定器として、測定精度が低く測定範囲が広い測定器と測定精度が高く測定範囲が狭い測定器の2種類を用い、これらを切替えて被測定物の面や円弧面を測定するようにしたことを特徴とする被測定物の振れ測定装置。
【請求項5】
請求項1記載の被測定物の振れ測定装置において、
前記演算処理装置は、被測定物の中心を回転テーブルの回転中心に合せるとき、前記測定器により測定された被測定物の円弧面の測定値に基づいて被測定物の中心と回転テーブルの回転中心とのずれを補正する前記移動調整テーブルのX方向及びY方向の移動調整補正量を求めることを特徴とする被測定物の振れ測定装置。
【請求項6】
請求項1記載の被測定物の振れ測定装置において、
前記演算処理装置は、被測定物の面の傾きを補正するとき、前記測定器により測定された被測定物の面の測定値に基づいて前記各上下移動器具の上下移動調整補正量を求めることを特徴とする被測定物の振れ測定装置。
【請求項7】
モータにより水平回転駆動される回転テーブル上に該回転テーブルの中心軸に直交する回転平面上で互いに直交するX方向及びY方向に移動可能な移動調整テーブルを載せ、その上に被測定物を支持する複数個の上下移動器具がほぼ等間隔でかつほぼ同一半径位置に設けられた搭載テーブルを載せて構成された回転部と、この回転部の近傍に垂直に取付けられた支持架台に複数のアームを上下移動機構により鉛直方向に移動可能に、且つ前後移動機構により水平方向に移動可能にそれぞれ支持し、これら各アームの先端部に前記被測定物の平面や外周円弧面を計測する測定器が取付けて構成された測定器移動部と、前記搭載テーブルへの被測定物の移載時や被測定物への測定器の位置合せ時の目印として前記回転テーブルの回転軸線上で互いに交差するスリット状のレーザ光を照射するレーザ光発生器とを備えて、被測定物の振れを測定する方法において、
予め前記搭載テーブルに有する複数の上下移動器具を同一高さに調整し、これら上下移動器具の上に前記レーザ発生器より照射されるスリット状のレーザ光を目印に前記被測定物の中心が位置するように被測定物を支持させて移載するステップと、
前記アームを上下移動機構及び前後移動機構によりそれぞれ移動調整して前記被測定物に測定器を接触させるステップと、
前記回転テーブルを回転させながら前記測定器により予定角度毎に前記被測定物の平面や外周円弧面を測定するステップと、
前記測定器により測定された測定値に基づき前記搭載テーブル上での被測定物の測定面の傾き量や被測定物の中心と前記回転テーブルの回転中心との偏心量を求めるステップと、
求められた被測定物の測定面の傾き量は前記移動器具を上下方向に移動させて水平状態に調整し、偏心量については移動調整テーブルをX方向及びY方向に移動調整し、前記回転テーブルの回転中心に被測定物の中心を合せるステップと
からなることを特徴とする被測定物の振れ測定方法。
【請求項8】
請求項7記載の被測定物の振れ測定方法において、
前記各アームの先端部に取付けられる測定器として、測定精度は低いが測定範囲が広い測定器と測定精度が高いが測定範囲の狭い測定器の2種類を用い、
被測定物の面や円弧面を測定するとき、まず測定精度は低いが測定範囲の広い測定器により被測定物の面や円弧面を測定して、被測定物の傾きと回転テーブルの中心に対する被測定物の中心とのずれを調整し、次いで測定精度が高いが測定範囲の狭い測定器に切替えて連続的に被測定物の面や円弧面を測定し、被測定物の傾きと回転テーブルの中心に対する被測定物の中心とのずれを微調整することを特徴とする被測定物の振れ測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−194739(P2006−194739A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−6489(P2005−6489)
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】