説明

貫通電流防止回路および車両用モータ駆動回路

【課題】半導体スイッチング素子の実動作に応じて貫通電流を防止することで動作信頼性を向上する。
【解決手段】下アーム側のIGBT(BTU2)に流れる通電電流を測定するときに、トランジスタQ2がIGBT(BTU2)の通電電流を直列抵抗R1およびR2の印加電圧によってセンシングする。そしてトランジスタQ3がトランジスタQ2の出力信号をレベルシフトする。そして、トランジスタQ4がトランジスタQ3のエミッタ電圧に応じてIGBT(BTU1)を強制的にオフ制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに異電位の2つの電源ノード間に直列接続された一方および他方の半導体スイッチング素子について貫通電流を防止する貫通電流防止回路およびこの貫通電流防止回路を適用した車両用モータ駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の貫通電流防止回路が例えば特許文献1に開示されている。この特許文献1記載の例えば図1に示される技術思想によれば、正側半導体素子および負側半導体素子(本発明の一方および他方の半導体スイッチング素子)が、正側ゲート駆動回路および負側ゲート駆動回路により駆動されている。
【0003】
AND回路の出力が正側半導体素子、負側半導体素子をオン駆動する駆動信号となり、正側ゲート駆動回路、負側ゲート駆動回路に入力されるようになっている。負側ゲートフィードバック信号が負側ゲート駆動回路からNOT回路およびOR回路を介してAND回路に与えられている。正側ゲートフィードバック信号が正側ゲート駆動回路からNOR回路およびOR回路を介してAND回路に与えられている。特許文献1の他の形態においても、フィードバック制御はロジック回路を適用して行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−165462号公報(図1、図3〜図6、図8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の技術思想では、半導体素子をロジック回路(例えばAND回路、NOT回路、OR回路などの組み合わせ回路)のロジック変化に基づいてスイッチングしているため、半導体素子が実際にどのような動作をしていたとしても、半導体素子の入力信号のみに基づいてしか通電電流を遮断することができず信頼性に劣るものとなっている。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、半導体スイッチング素子の実動作に応じて貫通電流を防止することで動作信頼性を向上した貫通電流防止回路およびこの貫通電流防止回路を適用した車両用モータ駆動回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、一方の半導体スイッチング素子に流れる通電電流が第1所定レベル未満のときには、一方および他方の半導体スイッチング素子をオンオフ強制制御することなく通常駆動しているため、半導体スイッチング素子に流れる電流がノイズ程度の微小電流のときには通常駆動動作を継続することができる。
【0008】
また、一方の半導体スイッチング素子に流れる通電電流が第1所定レベル以上で且つ第2所定レベル以下のときには、一方の半導体スイッチング素子をオンオフ強制制御することなく通常駆動し、他方の半導体スイッチング素子を強制的にオフ制御しているため、他方の半導体スイッチング素子の通電電流を遮断することができ半導体スイッチング素子の実動作に応じて貫通電流を防止することができる。
【0009】
また、一方の半導体スイッチング素子に流れる通電電流が第2所定レベルを超えるときには、一方および他方の半導体スイッチング素子を強制的にオフ制御するため、特に一方の半導体スイッチング素子に大電流が流れようとしても、一方および他方の半導体スイッチング素子に流れる通電電流を共に遮断することができ、半導体スイッチング素子の実動作に応じて強制遮断することができ貫通電流を防止できる。これにより、動作信頼性を向上できる。
【0010】
また、特許文献1記載の構成では、ロジック回路を複数介在してフィードバック処理しているため、遅延時間が大きくなってしまうが、請求項2記載の発明によれば、センシングトランジスタは半導体スイッチング素子の通電電流をセンシングし、レベルシフトトランジスタはセンシングトランジスタの出力信号をレベルシフトし、オフ制御トランジスタは、レベルシフトトランジスタの出力信号により半導体スイッチング素子を強制的にオフ制御しているため、主として3つのトランジスタの動作のみで半導体スイッチング素子を強制的にオフ制御することができる。これにより、動作遅延時間を少なくすることができ、貫通電流の流れる時間を短縮できる。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、一方および他方の半導体スイッチング素子はICチップの中央領域に配置されているため、当該半導体スイッチング素子が発生する熱を効率よく分散させることができる。しかも、オフ制御トランジスタはスイッチング素子の配置領域に近接設置されているため、当該オフ制御トランジスタおよび半導体スイッチング素子間の接続配線による遅延時間を極力抑制できる。
【0012】
請求項4記載の発明によれば、オフ制御トランジスタの動作を制御する動作制御トランジスタを当該オフ制御トランジスタよりも低駆動能力のもので構成しているため、ICチップ内に占める占有領域を極力抑制できる。オフ制御トランジスタは少なくとも一方および他方の何れかの半導体スイッチング素子の1つに対応して1つのトランジスタにより構成されているため、ICチップ内に占める占有領域を抑制できる。
【0013】
請求項5記載の発明に示すように、電気自動車又はハイブリッド自動車などの車両用モータ駆動回路において、半導体スイッチング素子を駆動するときの貫通電流防止回路として適用すると良い。すると、2つの電源ノード間に高電圧が印加されたとしても貫通電流を極力防止することができ動作信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態について駆動回路の詳細構成例を概略的に示す電気的構成図
【図2】モータ駆動回路を概略的に示す電気的構成図
【図3】(a)はICチップ内の各素子の相対的な配置関係を示す配置図、(b)は各相の半導体スイッチング素子に係る電気的接続関係の説明図
【図4】(a)は通電電流に基いて強制制御するか否かの関係を示す説明図、(b)は駆動電流対時間の関係を表す関係図
【図5】本発明の第2実施形態について示す図1(b)相当図
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明の車両用モータ駆動回路を、ハイブリッド自動車の車輪駆動用モータの駆動回路に適用した場合の第1実施形態について図1ないし図4を参照しながら説明する。
【0016】
図2は、モータ駆動回路の主構成を示している。尚、図2にはモータ駆動回路の詳細回路の記載は省略しており当該詳細構成は後述する。この図2に示すように、ハイブリッド自動車のモータ駆動回路1は制御回路2に接続されている。この制御回路2は、PWM信号などの入力信号が入力される回路であり当該入力信号に応じてモータ駆動回路1を制御する。
【0017】
駆動回路1は、例えばU相、V相、W相の3相モータ3を駆動するように構成されている。U相、V相、W相の各相にそれぞれ対応して電源電圧ノードN1−N2間に2つの半導体スイッチング素子(BTU1、BTU2)、(BTV1、BTV2)、(BTW1、BTW2)がそれぞれ直列接続され、これらの2つの半導体スイッチング素子が並列接続されている。
【0018】
具体的には、U相においては、電源電圧ノードN1−N2間に上アーム側のIGBT(BTU1)および下アーム側のIGBT(BTU2)が直列接続されている。V相においては、電源電圧ノードN1−N2間に上アーム側のIGBT(BTV1)および下アーム側のIGBT(BTV2)が直列接続されている。W相においては、電源電圧ノードN1−N2間に上アーム側のIGBT(BTW1)および下アーム側のIGBT(BTW2)が直列接続されている。これらのIGBT(BTU1、BTU2、BTV1、BTV2、BTW1、BTW2)には、それぞれ、フリーホイールダイオード(DU1、DU2、DV1、DV2、DW1、DW2)が逆並列接続されている。
【0019】
図1(a)および図1(b)は、各相のIGBTを駆動制御する駆動制御回路のうち強制的にオフ制御する回路構成を中心として示している。尚、この駆動制御回路は、U相、V相、W相の各相に設けられるが、図1(a)および図1(b)ではU相のみを図示している。これは、他のV相、W相の駆動制御回路は、U相の駆動制御回路と同一であり、その記述を省略している。
【0020】
図1(a)は、主に下アーム側のIGBTの通電電流に応じて下アーム側のIGBTを強制的にオフ制御する駆動制御回路を主として示しており、図1(b)は、主に上アーム側のIGBTの通電電流に応じて上アーム側のIGBTをオンオフ制御する駆動制御回路を主として示している。回路上では、これらの図1(a)および図1(b)の回路構成が組み合わされてU相の駆動制御回路を構成するが、図示が煩雑となるため別図に記している。
【0021】
図1(a)および図1(b)に示すように、上アームおよび下アーム側のIGBT(BTU1、BTU2)を共にマルチエミッタタイプのトランジスタで構成した場合について説明する。
【0022】
各IGBT(BTU1)のゲートには、制御回路2の制御出力端子OUTU1から抵抗RU1を介して制御信号が与えられており、当該制御信号に応じてIGBT(BTU1)がオンオフする。各IGBT(BTU2)のゲートには、制御回路2の制御出力端子OUTU2から抵抗RU2を介して制御信号が与えられており、当該制御信号に応じてIGBT(BTU2)がオンオフする。
【0023】
IGBT(BTU1)のコレクタは電源ノードN1に接続されており、この電源ノードN1には電位Vccが与えられている。電圧Vccは自動車の車輪モータ駆動用の電圧であるため、数百V(例えば600Vまたは1200Vなど)に設定されている。IGBT(BTU1)の第1エミッタはIGBT(BTU2)のコレクタに共通接続されており、この共通接続ノードN2はU相出力となっている。
【0024】
IGBT(BTU2)の第1エミッタはグランドノードN3に接続されている。また、IGBT(BTU2)の第2エミッタとグランドノードN3との間には抵抗R1および抵抗R2が直列接続されている。尚、第1エミッタ電流と第2エミッタ電流との比は約10000:1となるように調整されている。
【0025】
IGBT(BTU2)のゲートとグランドとの間には、NPN形のトランジスタQ1のコレクターエミッタ間が接続されている。トランジスタQ1のベースと抵抗R1およびR2の共通接続ノードN4との間には、抵抗R3が接続されており、抵抗R1およびR2の分圧電圧に応じた電流が抵抗R3を通じてトランジスタQ1のベース−エミッタ間に与えられる。トランジスタQ1は、IGBT(BTU2)のゲートを駆動制御する。
【0026】
IGBT(BTU2)の第2エミッタと抵抗R1との共通接続ノードN5は、抵抗R4を通じてNPN形のトランジスタQ2のベースに接続されている。このトランジスタQ2のエミッタはグランドに接続されている。トランジスタQ2のコレクタにはツェナーダイオードD1のアノードが接続されており、当該ダイオードD1のカソードは抵抗R5を介して制御回路2の制御出力端子OUTU1に接続されている。
【0027】
ダイオードD1のカソードと抵抗R5との間の共通接続ノードN6は、PNP形のトランジスタQ3のベースに接続されている。このトランジスタQ3のエミッタは抵抗R6を介して制御回路2の制御出力端子OUTU1に接続されている。トランジスタQ3のコレクタは抵抗R7を通じてグランドに接続されている。トランジスタQ3のエミッタQ3と抵抗R6との共通接続ノードN7は、NOTゲートA1の入力に接続されている。
【0028】
IGBT(BTU1)のゲート(制御端子)とノードN2との間には、NPN形のトランジスタQ4、Q5のコレクタ−エミッタ間が並列接続されている。トランジスタQ4のベースにはNOTゲートA1の出力が与えられている。
【0029】
IGBT(BTU1)の第1エミッタとは別に設けられた第2エミッタは分圧抵抗R8およびR9を介してノードN2に接続されている。抵抗R10がトランジスタQ5のベースと抵抗R8およびR9の共通接続ノードN8との間に接続されており、抵抗R1及び抵抗R2の分圧電圧に応じて電流がトランジスタQ2のベース−エミッタ間に与えられる。このような構成により、トランジスタQ4、Q5は、IGBT(BTU1)のゲートを駆動制御する。
【0030】
このような回路を主として、IGBT(BTU2)のコレクタ−エミッタ間の通電電流に応じてIGBT(BTU1)の強制的なオフ制御を行っているが、この動作の詳細は後述する。なお、トランジスタQ2はセンシングトランジスタとして機能し、トランジスタQ3はレベルシフトトランジスタとして機能し、トランジスタQ4は、オフ制御トランジスタとして機能する。
【0031】
図1(b)は、IGBT(BTU1)の通電電流に応じてIGBT(BTU2)を強制的にオフ制御する駆動制御回路を主として示している。
図1(b)に示すように、IGBT(BTU1)と抵抗R8との間の共通接続ノードN9は、抵抗R11を通じてNPN形のトランジスタQ6のベースに接続されている。このトランジスタQ6のエミッタはノードN2に接続されており、トランジスタQ6のコレクタはツェナーダイオードD2のアノードに接続されている。
【0032】
ツェナーダイオードD2のカソードは、抵抗R12を通じて制御回路2の制御出力端子OUTU1に接続されている。また、ツェナーダイオードD2のカソードは、PNP形のトランジスタQ7のベースに接続されている。トランジスタQ7のエミッタは、抵抗R13を通じて制御回路2の制御出力端子OUTU1に接続されている。
【0033】
トランジスタQ7のコレクタは抵抗R14を通じてツェナーダイオードD3のカソードに接続されている。ツェナーダイオードD3のアノードは、NPN形のトランジスタQ8のベースに接続されている。前述したNPN形のトランジスタQ1とトランジスタQ8のコレクタおよびエミッタはそれぞれ互いに共通接続されており、IGBT(BTU2)のゲートおよびグランドノード間に接続されている。
【0034】
このような回路を主として、IGBT(BTU1)のコレクタ−エミッタ間の通電電流に応じてIGBT(BTU2)の強制的なオフ制御を行っているが、この動作の詳細は後述する。なお、トランジスタQ6はセンシングトランジスタとして機能し、トランジスタQ7はレベルシフトトランジスタとして機能し、トランジスタQ8は、オフ制御トランジスタとして機能する。本実施形態において、U相の貫通電流防止回路Zは、トランジスタQ1〜Q8を主として抵抗RU1、RU2、抵抗R1〜R14などを組み合わせて構成されている。
【0035】
図3には、上記回路構成のうち特にIGBTおよびそのゲート駆動用トランジスタ(Q1、Q8、Q4、Q5)のICチップ内における配置を模式的に示している。
IGBT(BTU1、BTU2)には大電流を流す必要があり、IGBT(BTU1、BTU2)のゲート容量も大きくなる。図1(a)および図1(b)に示すように、トランジスタQ4、Q5はIGBT(BTU1)のゲートを駆動し、トランジスタQ1、Q8はIGBT(BTU2)のゲートを駆動するため、一般のトランジスタよりも電流駆動能力の高いトランジスタが要求される。
【0036】
なお、トランジスタQ1、Q4、Q5、Q8としては、IGBT(BTU1、BTU2)をそれぞれ瞬時にオフ制御する必要があるため、スイッチング速度が高速でしかも電流駆動能力の高いバイポーラトランジスタを適用すると良い。
【0037】
トランジスタ(Q4、Q5、Q1、Q8)はICチップ4内でも他のトランジスタ(例えば、Q2、Q3、Q6、Q7)よりも大きなスペースが必要とされる。
本実施形態では、前述の駆動回路1の構成要件のうち、大電流の流れるIGBT(BTU1、BTU2)がICチップ4の例えば縦方向に対して中央領域に配置されている。これらのIGBT(BTU1、BTU2)は、縦方向に長く横方向に短い半導体領域SU1、SU2にそれぞれ設けられており、これらの半導体領域SU1、SU2内では図示しないがほぼ横方向にコレクタ領域−エミッタ領域が設けられている。
【0038】
半導体領域SU1、SU2は平面的にV字形状に構成されている。半導体領域SU1の上方にはフリーホイールダイオードDU1が形成される半導体領域SU3が設けられており、半導体領域SU2の上方にはフリーホイールダイオードDU2が形成される半導体領域SU4が設けられている。
【0039】
図3(a)に示すように、ICチップ4の横方向左端に位置すると共に半導体領域SU1の横方向左脇にノードN1の端子が設けられており、半導体領域SU3およびSU4(又はSU1およびSU2)間にはICチップ4の縦上側の端部にノードN2の端子が設けられている。したがって、ノードN1およびN2の端子間には半導体領域SU1が形成されている。
【0040】
また、半導体領域SU2の横方向右脇にはグランドノードN3となる端子が設けられている。したがって、ノードN2およびN3の端子間には半導体領域SU2が形成されている。また、トランジスタ(Q4、Q5)を使用したIGBT(BTU1)のゲート駆動回路とトランジスタ(Q1、Q8)を使用したIGBT(BTU2)のゲート駆動回路との形成領域SU5が半導体領域SU1およびSU2の縦下方に位置して当該領域SU1およびSU2の脇に近接配置されている。
【0041】
この場合、トランジスタ(Q4、Q5)をIGBT(BTU1)の脇に近接配置し、トランジスタ(Q1、Q8)をIGBT(BTU2)の脇に近接配置すると良い。すると、トランジスタ(Q4、Q5)とIGBT(BTU1)との間の結線やトランジスタ(Q1、Q8)とIGBT(BTU2)との間の結線を短く構成することができ、駆動制御信号の遅延時間を短縮できる。
【0042】
図3(b)は、配置関係を考慮したIGBTおよびフリーホイールダイオードの電気的結線関係図を示している。この図3(b)に示すように、U相、V相、W相のIGBTおよびフリーホイールダイオードは同一形となっており、対称形に接続することができるため、この電気的結線関係を考慮して図3(a)のように配置すると良い。
【0043】
すなわち、U相の半導体領域SU1およびSU2と同様に、縦方向のほぼ中央領域に位置してV相の半導体領域SV1およびSV2、W相の半導体領域SW1およびSW2を並設すると良い。
【0044】
図3(a)に示すように、V相の半導体領域SV1およびSV2、並びに、W相の半導体領域SW1およびSW2は、それぞれ、V字形状に設けられている。半導体領域SU2およびSV2はグランドノードN3の端子を挟んで構成されている。また、半導体領域SV1およびSW1は電源ノードN1の端子を挟んで構成されている。ICチップ4の他端部において半導体領域SW2の横方向脇にはグランドノードN3の端子が設けられている。
【0045】
半導体領域SV1の縦上方向にはフリーホイールダイオードDV1の形成領域として半導体領域SV3が設けられており、半導体領域SV2の縦上方向にはフリーホイールダイオードDV2の形成領域として半導体領域SU4が設けられている。また、半導体領域SV2の縦下方向にはV相のIGBT(BTV2)やその周辺のゲート駆動回路が形成されている。また、半導体領域SV1の縦下方向にはV相のIGBT(BTV1)やその周辺のゲート駆動回路が形成されている。
【0046】
同様に、半導体領域SW1の縦上方向にはフリーホイールダイオードDW1の形成領域として半導体領域SW3が設けられており、半導体領域SW2の縦上方向にはフリーホイールダイオードDW2の形成領域として半導体領域SW4が設けられている。また、半導体領域SW2の縦下方向にはV相のIGBT(BTW2)やその周辺のゲート駆動回路が形成されている。また、半導体領域SW1の縦下方向にはV相のIGBT(BTW1)やその周辺のゲート駆動回路が形成されている。
【0047】
上記構成の基本的動作について図4を参照しながら説明する。本実施形態では、電源ノードN1およびグランドノードN3間の印加電圧Vccが約600V、1200Vと高電圧であるため、特に上アーム側のIGBTおよび下アーム側のIGBT間に通電する貫通電流が大きくなると動作信頼性を損なう虞がある。そこで、一のアーム側のIGBTの実動作電流量に応じて他のアーム側(又は両アーム)のIGBTに流れる電流を強制制御/非強制制御し、また、当該IGBTに流れる電流を素早く遮断する回路構成としている。
【0048】
図4(a)および図4(b)は、一のアーム側のIGBTに流れる電流に基づく他のアーム側(一および他アーム)のIGBTのゲート強制制御/非強制制御動作について概略的に示している。
【0049】
これらの図4(a)および図4(b)に示すように、一のアーム側のIGBTの通電電流が第1所定レベルI1未満のときに両アームのIGBTの通電電流を非強制制御状態とし、制御回路2の制御信号に基づく制御が行われる。これは、IGBTの通電電流がノイズ程度の微小電流の場合を想定しており、当該微小電流のときには通常動作を継続することを表している。
【0050】
また、一のアーム側のIGBTの通電電流が第1所定レベルI1以上で且つ第2所定レベルI2以下であるときには、当該一のアーム側のIGBTには通常駆動時の電流が流れているものと見做し、同相の他のアームのIGBTを強制オフ制御する。これは、一のアーム側のIGBTがオンしているため、同相の他のアーム側のIGBTを強制的にオフ制御することで貫通電流を防止するためである。
【0051】
また、一のアーム側のIGBTの通電電流が第2所定レベルI2を超えるときには、両アームのIGBTに大電流が流れるものであると見做し、両アームのIGBTを強制オフ制御する。すると、IGBTの実動作電流に応じて強制遮断することができ貫通電流を極力防止することができる。
【0052】
具体的な回路構成の動作について図1(a)および図1(b)を参照して説明する。
まず、図1(a)を参照して、下アーム側のIGBT(BTU2)の通電電流に基いて上アーム側のIGBT(BTU1)、下アーム側のIGBT(BTU2)を強制的にオフ制御する場合の動作を説明する。
【0053】
制御回路2の出力端子OUTU2の出力レベルが「L」でありIGBT(BTU2)のコレクタ−エミッタ間に電流がほとんど流れない場合など、IGBT(BTU2)の第1エミッタ電流が流れない場合を考慮する。
【0054】
IGBT(BTU2)のコレクタ−第1エミッタ間の電流がある所定レベル未満のときには、IGBT(BTU2)の第2エミッタ電流が所定レベルI1(第1所定レベルに相当)未満となる。このときには、抵抗R1およびR2には電流はほとんど流れることはなく、トランジスタQ1およびQ2はオフする。トランジスタQ2がオフすることで、ノードN6およびN7の電圧がほぼ同一となり、トランジスタQ3にベース電流が流れることがなくなり、トランジスタQ3がオフする。したがって、制御回路2の出力端子OUTU1の出力レベル「H」「L」がそのままIGBT(BTU1)のゲートに印加されることになりIGBT(BTU1)は通常動作する。
【0055】
制御回路2の出力端子OUTU2の出力レベルが「H」でありIGBT(BTU2)がオンし通常の動作電流が流れた場合を考慮する。IGBT(BTU2)にモータ3の駆動電流が流れたときには、IGBT(BTU2)のコレクタ−エミッタ間には通常駆動時の電流が流れる。図4(a)および図4(b)に示すように、IGBT(BTU2)の第2エミッタ電流が所定レベルI1(第1所定レベル)以上で所定レベルI2(第2所定レベルに相当)以下となる。
【0056】
トランジスタQ1が抵抗R1およびR2の分圧電圧に応じてオンオフし、トランジスタQ2が抵抗R1およびR2の直列抵抗値に比例した電圧に応じてオンオフする。このため、抵抗R1およびR2の抵抗値が適切に設定されることで、モータ3の通常駆動電流がIGBT(BTU2)に流れるとトランジスタQ1がオフしトランジスタQ2がオンするようになる。トランジスタQ1がオフするため、制御回路2の出力端子OUTU2から出力される制御信号はIGBT(BTU2)のゲートに与えられることになりIGBT(BTU2)は通常動作し続ける。
【0057】
トランジスタQ2がオンすると、抵抗R5およびツェナーダイオードD1に電流が流れることになり、ノードN6の電圧が下がる。ノードN7およびN6間の電圧がトランジスタQ3のエミッタ−ベース間電圧VfとなるとトランジスタQ3がオンし、電流が抵抗R6およびR7を通じて流れる。
【0058】
ノードN7の電圧が低下し、NOTゲートA1の入力が「L」レベルとなると、NOTゲートA1は「H」レベルを出力し、トランジスタQ4はオンする。すると、IGBT(BTU1)のゲート電圧をノードN2の電圧とほぼ一致させることができ、IGBT(BTU1)を強制的にオフ制御できる。
【0059】
回路上では、抵抗R4の抵抗値が抵抗R1やR2の抵抗値に比較して低く設定されている場合には、直列抵抗R1およびR2に印加される電圧がトランジスタQ2のベース−エミッタ間電圧Vfとほぼ等しくなるときにトランジスタQ2がオンする。このため、IGBT(BTU2)の第2エミッタ電流の所定レベルI1(図4(a)および図4(b)参照)は、(トランジスタQ2のベース−エミッタ間電圧Vf)/(抵抗R1およびR2の抵抗値の合計値)にほぼ一致する。
【0060】
次に、IGBT(BTU2)がオンした状態で何らかの異常に伴う大電流がIGBT(BTU2)に流れた場合について考慮する。IGBT(BTU2)のコレクタ−エミッタ間に大電流が流れると、IGBT(BTU2)の第2エミッタ電流も増加し所定レベルI2を超える電流値となる。すると、抵抗R1およびR2にも大電流が流れるようになり、トランジスタQ1およびQ2が共にオンするようになる。トランジスタQ2がオンすると、前述と同様の作用に伴いIGBT(BTU1)がオフする。また、トランジスタQ1がオンすると、IGBT(BTU2)のゲート電圧を強制的にグランド電位にするため、IGBT(BTU2)を強制的にオフ制御できる。
【0061】
回路上では、抵抗R3の抵抗値が低く設定されている場合には、抵抗R2の印加電圧がトランジスタQ1のベース−エミッタ間電圧Vfとほぼ等しくなるときにトランジスタQ1がオンする。このため、図4(a)および図4(b)に示される第2所定レベルI2は、(トランジスタQ1のベース−エミッタ間電圧Vf)/(抵抗R2の抵抗値)にほぼ一致する。
【0062】
次に、図1(b)を参照して、上アーム側のIGBT(BTU1)の通電電流に基いて下アーム側のIGBT(BTU2)、上アーム側のIGBT(BTU1)を強制的にオフ制御する場合の動作を説明する。
【0063】
制御回路2の出力端子OUTU1の出力レベルが「L」でありIGBT(BTU1)のコレクタ−エミッタ間に電流がほとんど流れない場合など、IGBT(BTU1)の第1エミッタ電流が流れない場合を考慮する。
【0064】
IGBT(BTU1)のコレクタ−第1エミッタ間の電流がある所定レベル未満のときには、IGBT(BTU1)の第2エミッタ電流が所定レベルI3(第1所定レベルに相当)未満となる。このときには、電流が抵抗R8およびR9にはほとんど流れることはなく、トランジスタQ5およびQ6は共にオフする。トランジスタQ6がオフすることで、トランジスタQ7のエミッタ−ベース間の電圧がほぼ同一電圧となり、トランジスタQ7はオフする。したがって、トランジスタQ8にはベース電流がほとんど流れることはなく、トランジスタQ8はオフする。したがって、制御回路2の出力端子OUTU2の出力レベル「H」「L」がそのままIGBT(BTU2)のゲートに印加されることになりIGBT(BTU2)は通常動作する。
【0065】
制御回路2の出力端子OUTU1の出力レベルが「H」でありIGBT(BTU1)がオンし通常の動作電流が流れた場合を考慮する。IGBT(BTU1)にモータ3の駆動電流が流れたときには、IGBT(BTU1)のコレクタ−エミッタ間には通常駆動時の電流が流れる。IGBT(BTU1)の第2エミッタ電流が所定レベルI3(第1所定レベル)以上で所定レベルI4(第2所定レベルに相当)以下となる場合を考慮する。
【0066】
抵抗R8およびR9の分圧電圧に応じてトランジスタQ5がオンオフし、抵抗R8よびR9の直列抵抗値に比例した電圧に応じてトランジスタQ6がオンオフする。このため、抵抗R5およびR6の抵抗値が適切に設定されることで、モータ3の通常駆動電流がIGBT(BTU1)に流れるとトランジスタQ5がオフしトランジスタQ6がオンするようになる。トランジスタQ5がオフするため、制御回路2の出力端子OUTU1から出力される制御信号はIGBT(BTU1)のゲートに与えられることになりIGBT(BTU1)は通常動作し続ける。
【0067】
トランジスタQ6がオンすると、抵抗R12およびツェナーダイオードD2に電流が流れることになり、トランジスタQ7のベース電流が流れ、トランジスタQ7のエミッタ−ベース間電圧がほぼVfとなりトランジスタQ7がオンする。トランジスタQ7がオンすると、抵抗R13およびR14を通じてトランジスタQ8にベース電流が流れるようになり、トランジスタQ8がオンする。トランジスタQ8がオンすると、IGBT(BTU2)のゲート電圧をグランド電圧とほぼ一致させることができ、IGBT(BTU2)を強制的にオフ制御することができる。
【0068】
回路上では、抵抗R11の抵抗値が抵抗R8およびR9に比較して低く設定されている場合には、直列抵抗R8およびR9に印加される電圧がトランジスタQ6のベース−エミッタ間電圧Vfとほぼ等しくなるときにトランジスタQ6がオンする。このため、IGBT(BTU1)の第2エミッタ電流の所定レベルI3は、(トランジスタQ6のベース−エミッタ間電圧Vf)/(抵抗R8およびR9の抵抗値の合計値)にほぼ一致する。
【0069】
また、IGBT(BTU1)がオンした状態で何らかの異常に伴う大電流がIGBT(BTU1)に流れた場合について考慮する。IGBT(BTU1)のコレクタ−エミッタ間に大電流が流れると、IGBT(BTU1)の第2エミッタ電流も増加し、所定レベルI4を超える電流値となる。すると、抵抗R8およびR9にも大電流が流れるようになり、トランジスタQ5およびQ6が共にオンするようになる。トランジスタQ6がオンすると、前述と同様の作用に伴いIGBT(BTU2)がオフする。また、トランジスタQ5がオンすると、IGBT(BTU1)のゲート電圧を強制的にノードN2の電圧と一致させるため、IGBT(BTU1)を強制的にオフ制御できる。
【0070】
回路上では、抵抗R10の抵抗値が低く設定されている場合には、抵抗R9の印加電圧がトランジスタQ5のベース−エミッタ間電圧Vfとほぼ等しくなるときにトランジスタQ5がオンする。このため、図4(a)および図4(b)に示される第2所定レベルに相当するIGBT(BTU1)の第2エミッタ電流の所定レベルI4は、(トランジスタQ5のベース−エミッタ間電圧Vf)/(抵抗R9の抵抗値)にほぼ一致する。
【0071】
このようにして、上アーム側のIGBT(BTU1)のエミッタ電流に応じて下アーム側のIGBT(BTU2)(両アームのIGBT)を強制制御可能としていると共に、下アーム側のIGBT(BTU2)の電流に応じて上アーム側のIGBT(BTU1)(両アームのIGBT)を強制制御可能としている。
【0072】
本実施形態によれば、例えば下アーム側のIGBT(BTU2)に流れる通電電流が所定レベルI1未満のときには、下アーム側および上アーム側のIGBT(BTU2、BTU1)をオンオフ強制制御することなく通常駆動しているため、IGBT(BTU2)に流れる通電電流がノイズ程度の微小電流のときには通常駆動動作を継続できる。
【0073】
また、例えば下アーム側のIGBT(BTU2)に流れる通電電流が所定レベルI1以上で且つ所定レベルI2以下のときには、IGBT(BTU2)をオンオフ強制制御することなく通常駆動し、上アーム側のIGBT(BTU1)を強制的にオフ制御しているため、IGBT(BTU1)の通電電流を遮断することができ半導体スイッチング素子の実動作に応じて貫通電流を防止することができる。
【0074】
また、例えば下アーム側のIGBT(BTU2)に流れる通電電流が所定レベルI2を超えるときには、IGBT(BTU1、BTU2)を強制的にオフ制御するため、特にIGBT(BTU2)に何らかの異常で大電流が流れようとしても、IGBT(BTU1、BTU2)の通電電流を共に遮断することができ、半導体スイッチング素子の実動作に応じて強制遮断することができ貫通電流を防止できる。これにより、動作信頼性を向上できる。
【0075】
また、例えば下アーム側のIGBT(BTU2)に流れる通電電流を測定するときに、トランジスタQ2がIGBT(BTU2)の通電電流をセンシングし、トランジスタQ3がトランジスタQ2の出力信号をレベルシフトし、トランジスタQ4がトランジスタQ3の出力信号に応じてIGBT(BTU1)を強制的にオフ制御しているため、主として3つのトランジスタの動作のみでIGBT(BTU1)を強制的にオフ制御することができる。これにより、動作遅延時間を少なくすることができ、貫通電流が流れないようにすることができる。
【0076】
IGBT(BTU1、BTU2、BTV1、BTV2、BTW1、BTW2)はICチップ4の中央領域に配置されているため、当該IGBTが発生する熱を効率よく分散させることができる。しかも、トランジスタQ4およびQ5はIGBT(BTU1)に近接配置されており、トランジスタQ1およびQ8はIGBT(BTU2)に近接配置されているため、当該トランジスタおよびIGBT間の接続配線による遅延時間を極力抑制できる。
【0077】
また、本実施形態では、ハイブリッド自動車の車輪駆動モータ3の駆動回路1の貫通電流防止回路Zとして適用しているため、特に2つの電源ノードN1−N3間に高電圧が印加されたとしても、貫通電流を極力防止することができ動作信頼性を向上できる。
【0078】
(第2実施形態)
図5は、本発明の第2実施形態を示すもので、前述実施形態と異なるところは、レベルシフトトランジスタの出力信号によりオフ制御トランジスタが半導体スイッチング素子をオフ制御するときに、オフ制御トランジスタよりも低駆動能力でオフ制御トランジスタの動作を制御する動作制御トランジスタを設け、オフ制御トランジスタは少なくとも一方および他方の何れかの半導体スイッチング素子の1つに対応して1つのトランジスタにより構成されているところにある。前述実施形態と同一部分については同一符号を付して説明を省略し、以下、異なる部分について説明する。
【0079】
図5は、図1(b)に代わる貫通電流防止回路の一部を概略的に示している。この図5に示すように、図1(b)に示されるトランジスタQ8に代えて、抵抗R15、トランジスタQ9(動作制御トランジスタに相当)、電流源Ia、ダイオードD4を組み合わせた駆動回路を設けている。
【0080】
この駆動回路では、ツェナーダイオードD3のアノードとグランドとの間に抵抗R15が接続されており、この共通接続ノードN10がPNP形のバイポーラトランジスタQ9のベースに接続されている。トランジスタQ9のコレクタはグランドに接続されており、トランジスタQ9のエミッタはダイオードD4のアノードに接続されると共に電流源Iaの供給端子に接続されている。そして、ダイオードD4のカソードはノードN4、抵抗R3を通じてトランジスタQ1のベース(制御端子)に接続されている。この構成により、電流源IaからトランジスタQ1のベースに電流が印加されるようになっている。
【0081】
図1(a)や図1(b)に示すトランジスタ(Q1、Q4、Q5、Q8)は、IGBT(BTU1、BTU2)をそれぞれ瞬時にオフ制御する必要があるため、スイッチング速度が高速でしかも電流駆動能力の高いバイポーラトランジスタを適用すると良い。
【0082】
すると、IGBT(BTU1、BTU2)のオン時に蓄積されたゲート電荷を瞬時に放出でき、IGBT(BTU1、BTU2)を瞬時にオフ制御できるため望ましい。しかし、このような電流駆動能力の高いトランジスタを半導体集積回路としてICチップ4内に構成すると、図3(a)に示したようにICチップ4内に占める占有領域が拡大してしまう。
【0083】
そこで本実施形態では、トランジスタQ8を削減し、代わりに、トランジスタQ8よりも電流駆動能力の低いトランジスタQ9を別途設け、トランジスタQ1のベース(制御端子)を駆動している。トランジスタQ9は、低電流駆動能力のもので構成しているため、たとえ電流源IaやダイオードD4、抵抗R15を別途設けたとしても、前述実施形態に示した構成と比較してICチップ4内の占有領域を抑制できる。
【0084】
本実施形態によれば、トランジスタQ1の動作を制御する動作制御トランジスタQ9をトランジスタQ1よりも低電流駆動能力のもので構成しているため、ICチップ4内の占有領域を極力抑制できる。IGBT(BTU2)に対応して1つのトランジスタQ1により駆動するように構成されているため、オフ制御トランジスタを1つで構成することができ、ICチップ4内に占められる占有領域を抑制できる。
【0085】
尚、本実施形態に示された構成を上アーム側のIGBT(BTU1)の駆動回路に適用できることは言うまでもない。すなわち、トランジスタQ4、Q5のうちトランジスタQ4を削減することができ、ICチップ4内の占有領域をさらに抑制できる。
【0086】
(他の実施形態)
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、例えば、以下に示す変形又は拡張が可能である。
【0087】
ハイブリッド自動車の車輪駆動モータ3の駆動回路1に適用したが、電気自動車用などに適用しても良い。特に数百V以上の電源電圧で駆動する大電力用の自動車用モータの駆動回路に適用すると好適である。
【0088】
半導体スイッチング素子として、IGBT(BTU1、BTU2、BTV1、BTV2、BTW1、BTW2)によるバイポーラトランジスタを適用した実施形態を示したが、他の半導体スイッチング素子(例えば、MOSFETなどのMOSトランジスタ)を適用しても良い。
【0089】
オフ制御トランジスタとしてNPN形のバイポーラトランジスタ(Q4、Q8)を適用した実施形態を示したが、前述同様にこれに代えてMOSトランジスタを適用しても良い。センシングトランジスタとしてNPN形のバイポーラトランジスタ(Q2、Q6)を適用した実施形態を示したが、前述同様にこれに代えてMOSトランジスタを適用しても良い。レベルシフトトランジスタとしてNPN形のバイポーラトランジスタ(Q3、Q7)を適用した実施形態を示したが、前述同様にこれに代えてMOSトランジスタを適用しても良い。他のトランジスタ(Q1、Q5)も同様である。貫通電流防止回路Zの回路構成要素は、本発明の要旨を変更しない程度で必要に応じて回路構成を変更しても良いし、他の回路構成を付加しても良いし、必要に応じて回路構成要素を削除して構成しても良い。
【符号の説明】
【0090】
図面中、1は駆動回路、2は制御回路、OUTU1、OUTU2は制御出力端子、BTU1、BTU2、BTV1、BTV2、BTW1、BTW2はIGBT(半導体スイッチング素子)、Q2、Q6はNPN形のバイポーラトランジスタ(センシングトランジスタ)、Q3、Q7はPNP形のバイポーラトランジスタ(レベルシフトトランジスタ)、Q4、Q8はNPN形のバイポーラトランジスタ(オフ制御トランジスタ)、Q9はPNP形のバイポーラトランジスタ(動作制御トランジスタ)、Zは貫通電流防止回路を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異電位の2つの電源ノード間に直列接続された一方および他方の半導体スイッチング素子について前記2つの電源ノード間に流れる貫通電流を防止する貫通電流防止回路において、
前記一方の半導体スイッチング素子に流れる通電電流が第1所定レベル未満のときには、前記一方および他方の半導体スイッチング素子をオンオフ強制制御することなく通常駆動可能とし、
前記一方の半導体スイッチング素子に流れる通電電流が第1所定レベル以上で且つ当該第1所定レベルを超えて設定される第2所定レベル以下のときには、前記一方の半導体スイッチング素子をオンオフ強制制御することなく通常駆動可能とし、前記他方の半導体スイッチング素子を強制的にオフ制御し、
前記一方の半導体スイッチング素子に流れる通電電流が第2所定レベルを超えるときには、前記一方および他方の半導体スイッチング素子を共に強制的にオフ制御するように構成されていることを特徴とする貫通電流防止回路。
【請求項2】
前記半導体スイッチング素子の通電電流をセンシングし当該センシング結果を出力するセンシングトランジスタと、
前記センシングトランジスタの出力信号をレベルシフトするレベルシフトトランジスタと、
前記レベルシフトトランジスタの出力信号により前記半導体スイッチング素子をオフ制御するオフ制御トランジスタとを備えたことを特徴とする請求項1記載の貫通電流防止回路。
【請求項3】
前記一方および他方の半導体スイッチング素子はICチップの中央領域に配置され、
前記オフ制御トランジスタは前記半導体スイッチング素子の配置領域に近接設置されていることを特徴とする請求項2記載の貫通電流防止回路。
【請求項4】
前記レベルシフトトランジスタの出力信号により前記オフ制御トランジスタが前記半導体スイッチング素子をオフ制御するときに、前記オフ制御トランジスタよりも低駆動能力で前記オフ制御トランジスタの動作を制御する動作制御トランジスタを設け、
前記オフ制御トランジスタは少なくとも前記一方および他方の何れかの半導体スイッチング素子の1つに対応して1つのトランジスタにより構成されていることを特徴とする請求項2または3記載の貫通電流防止回路。
【請求項5】
電気自動車又はハイブリッド自動車などの車両用モータの制御を半導体スイッチング素子にて行なう車両用モータ駆動回路において、前記半導体スイッチング素子を駆動するときの貫通電流防止回路として、請求項1ないし4に記載の貫通電流防止回路が適用されていることを特徴とする車両用モータ駆動回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−166576(P2011−166576A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28827(P2010−28827)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】