説明

車両の制御装置および制御方法

【課題】自動変速機の出力軸に車両前後方向に摺動可能に結合される推進軸を備えた車両において、車両停止時に自動変速機に対する推進軸の摺動量の急激な変化によって発生する異音を抑制する。
【解決手段】ECUは、Dポジションでの前進1速走行中(S100にてYES)に、アクセルオフ状態で減速中であると(S102にてYES)、減速度ΔVを算出し(S104)、減速度ΔVに基づいてプロペラシャフトの入力トルクダウン制御条件(トルクダウン開始車速VS、トルクダウン時間T、前進1速段を形成するC1クラッチの油圧ダウン量ΔP)を設定し(S106)、車速Vがトルクダウン開始車速VSよりも低下すると(S108にてYES)、トルクダウン時間Tが経過するまで、C1クラッチのに供給される油圧の目標指令圧P(C1)を、油圧ダウン量ΔPに応じて低下させる(S110)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機を備えた車両の制御に関し、特に、自動変速機の出力軸にスプライン結合されたプロペラシャフトを備えた車両の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の自動変速機は、摩擦係合要素の係合および解放の組合せによって複数の変速段が形成されるように構成されている。自動変速機の入力軸に入力された駆動源の動力は、これらの摩擦係合要素によって設定された変速比に応じて増減されて、出力軸に出力される。ところが、自動変速機の状態などによっては、駆動源からの動力が捩りトルクとして動力伝達系の内部に保留される場合がある。このような捩りトルクを迅速に解消する技術が、たとえば、特開平9−49565号公報(特許文献1)に開示されている。
【0003】
特開平9−49565号公報に開示された自動変速機の制御装置は、入力軸から出力軸に至る動力伝達系における変速比を、複数の摩擦係合装置の係合および解放の組合せによって変更し、かつ出力軸が回転しない状態で動力伝達系に捩りトルクが内部保留される摩擦係合装置の係合および解放の組合せを備えた自動変速機の制御装置において、動力伝達系に捩りトルクが内部保留されたことが検出された場合に、いずれかの摩擦係合装置の係合状態を変えることにより、内部保留された捩りトルクを解放する。
【0004】
特開平9−49565号公報に開示された自動変速機の制御装置によると、捩りトルクが内部保留された場合には、いずれかの摩擦係合装置の係合状態を変える。たとえば、摩擦係合装置の係合および解放の組合せを変更したり、いずれかの摩擦係合装置の油圧を低下させて滑らせたりする。これにより、動力伝達系における回転部材の相対回転を生じさせ、捩りトルクを解放することができる。
【特許文献1】特開平9−49565号公報
【特許文献2】特開平5−321803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、たとえばFR車両(Front engine Rear drive)においては、車体前部にエンジンおよび自動変速機を配置し、車両前後方向に設けられた推進軸(プロペラシャフト)を介して後輪を回転させる。エンジンおよび自動変速機は一般的に弾性部材を介在させて車両に搭載されるため、車速の変動(加速や減速)時には、エンジンおよび自動変速機に作用する慣性力により弾性部材が変形し、エンジンおよび自動変速機は車体に対して車両前後方向に相対的に移動する。この移動を吸収するために、FR車両においては、一般的に、自動変速機の出力軸とプロペラシャフトとが車両前後方向にスライド可能なようにスプライン結合されている。
【0006】
したがって、走行している車両を停止させる場合、自動変速機の出力軸とプロペラシャフトとのスプライン結合部のスライド量は、減速開始に伴なって増加し、減速度(慣性力)の低下に伴なって減少する。このスライド量が車両停止後においても残存していると、たとえばブレーキをオフ(プロペラシャフトの固定を解除)した時点で、スライド量が急激に0に変化して異音(以下「クランクノイズ」ともいう)が生じてしまう場合がある。しかしながら、特開平9−49565号公報あるいは特開平5−321803号公報においては、このようなクランクノイズの抑制については何ら考慮されていない。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、自動変速機の出力軸に車両前後方向に摺動可能に結合される推進軸を備えた車両において、車両停止時に自動変速機に対する推進軸の摺動量の急激な変化によって発生する異音を抑制することができる制御装置および制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明に係る制御装置は、駆動源の回転を変速して出力軸に出力する自動変速機と、出力軸に車両前後方向に摺動可能に結合され、出力軸の回転を駆動輪に伝達する推進軸とを備えた車両を制御する。この制御装置は、推進軸の摺動に関連する予め定められた減速条件が成立したか否かを判断するための減速判断手段と、車速が予め設定されたトルクダウン開始車速よりも低下したか否かを判断するための開始判断手段と、減速判断手段によって予め定められた減速条件が成立したと判断された場合で、かつ開始判断手段によってトルクダウン開始車速よりも車速が低下したと判断された場合、出力軸から推進軸へ入力される入力トルクを低下させるように、駆動源および自動変速機の少なくともいずれかを制御するためのトルクダウン制御手段とを含む。
【0009】
第2の発明に係る制御装置は、第1の発明の構成に加えて、減速判断手段によって予め定められた減速条件が成立したと判断された場合、車両の減速度を算出するための算出手段と、算出手段によって算出された減速度に基づいて、トルクダウン開始車速を設定するための設定手段とをさらに含む。トルクダウン制御手段は、設定手段によって設定されたトルクダウン開始車速よりも車速が低下したと開始判断手段によって判断された場合に、入力トルクを低下させる。
【0010】
第3の発明に係る制御装置においては、第2の発明の構成に加えて、設定手段は、算出された減速度が第1の減速度である場合に第1のトルクダウン開始車速を設定し、算出された減速度が第1の減速度よりも小さい第2の減速度である場合に第1のトルクダウン開始車速よりも低い第2のトルクダウン開始車速を設定する。
【0011】
第4の発明に係る制御装置においては、第2または3の発明の構成に加えて、設定手段は、トルクダウン開始車速に加えて、算出された減速度に基づいてトルクダウン時間を設定する。トルクダウン制御手段は、設定されたトルクダウン開始車速よりも車速が低下したと判断された時点から、設定手段によって設定されたトルクダウン時間が経過するまで、入力トルクを低下させる。
【0012】
第5の発明に係る制御装置においては、第4の発明の構成に加えて、設定手段は、トルクダウン時間を、設定されたトルクダウン開始車速と算出された減速度とから求まる車両停止予測時間よりも短くなるように設定する。
【0013】
第6の発明に係る制御装置においては、第4の発明の構成に加えて、設定手段は、算出された減速度が第1の減速度である場合に第1のトルクダウン時間を設定し、算出された減速度が第1の減速度よりも小さい第2の減速度である場合に第1のトルクダウン時間よりも長い第2のトルクダウン時間を設定する。
【0014】
第7の発明に係る制御装置においては、第4の発明の構成に加えて、設定手段は、トルクダウン開始車速およびトルクダウン時間に加えて、算出された減速度に基づいてトルクダウン量を設定する。トルクダウン制御手段は、設定手段によって設定されたトルクダウン量に応じて入力トルクを低下させる。
【0015】
第8の発明に係る制御装置においては、第7の発明の構成に加えて、設定手段は、トルクダウン時間が第1のトルクダウン時間である場合は、第1のトルクダウン量に設定し、トルクダウン時間が第1のトルクダウン時間よりも長い第2のトルクダウン時間である場合は、第1のトルクダウン量よりも少ない第2のトルクダウン量に設定する。
【0016】
第9の発明に係る制御装置においては、第1〜8のいずれかの発明の構成に加えて、予め定められた減速条件は、自動変速機において前進走行状態における最低速側の変速段が形成され、かつ車両の運転者による加速要求がない状態で車両が減速しているという条件である。
【0017】
第10の発明に係る制御装置においては、第1〜9のいずれかの発明の構成に加えて、
駆動源は、内燃機関であり、自動変速機には、油圧によって係合および解放される摩擦係合要素が備えられる。トルクダウン制御手段は、内燃機関のアイドル回転数を低下させる制御、および摩擦係合要素の作動油圧を低下させる制御の少なくともいずれかを行なうことにより、入力トルクを低下させる。
【0018】
第11〜20の発明に係る制御方法は、それぞれ第1〜10の発明に係る制御装置と同様の要件を備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、推進軸の摺動に関連する予め定められた減速条件が成立した場合において、車速が予め設定されたトルクダウン開始車速よりも低下した場合、出力軸から推進軸へ入力される入力トルクが低下される。これにより、自動変速機に対する推進軸の摺動量が車両減速中(車両停止前)に小さくなり、車両停止時に残存している摺動量が低減される。そのため、車両停止時に自動変速機に対する推進軸の摺動量の急激な変化によって発生する異音を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0021】
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る制御装置を搭載した車両について説明する。この車両は、FR(Front engine Rear drive)車両である。なお、自動変速機の出力軸に車両前後方向に摺動可能に結合されるプロペラフャフトを備えた車両であれば、FR以外の車両であってもよい。
【0022】
車両は、エンジン1000と、オートマチックトランスミッション2000と、トルクコンバータ2100と、オートマチックトランスミッション2000の一部を構成するプラネタリギヤユニット3000と、オートマチックトランスミッション2000の一部を構成する油圧回路4000と、プロペラシャフト5000と、デファレンシャルギヤ6000と、後輪7000と、ECU(Electronic Control Unit)8000とを含む。本実
施の形態に係る制御装置は、たとえばECU8000のROM(Read Only Memory)に記録されたプログラムを実行することによって実現される。
【0023】
エンジン1000は、インジェクタ(図示せず)から噴射された燃料と空気との混合気を、シリンダの燃焼室内で燃焼させる内燃機関である。燃焼によってシリンダ内のピストンが押し下げられて、クランクシャフトが回転させられる。エンジン1000の駆動力によって、オルタネータおよびエアコンディショナーなどの補機が駆動される。なお、エンジン1000の代わりにもしくは加えて、動力源にモータを用いるようにしてもよい。
【0024】
オートマチックトランスミッション2000は、トルクコンバータ2100を経由してエンジン1000に連結される。
【0025】
オートマチックトランスミッション2000は、所望のギヤ段を形成することによって、クランクシャフトの回転数を所望の回転数に変速して出力軸3004に出力する。出力軸3004に出力された駆動力は、プロペラシャフト5000およびデファレンシャルギヤ6000を経由して、左右の後輪7000に伝達される。
【0026】
エンジン1000、トルクコンバータ2100およびオートマチックトランスミッション2000は、これらの振動等を吸収する弾性部材1010,1020を介在させて車体に搭載される。プロペラシャフト5000は、マウンティングブラケット(図示せず)により車体に固定されている。
【0027】
オートマチックトランスミッション2000の出力軸3004とプロペラシャフト5000とは、車両前後方向にスライド可能なようにスプライン結合されている。すなわち、出力軸3004の車両後方側の端部の外周には出力軸3004の回転軸方向(車両前後方向)に沿った外周スプラインが形成され、この外周スプラインに、プロペラシャフト5000の車両前方側の端部に形成された内周スプラインが嵌合されている。
【0028】
ECU8000には、車速センサ8002と、シフトレバー8004のポジションスイッチ8006と、アクセルペダル8008のアクセル開度センサ8010と、ブレーキペダル8012の踏力センサ8014と、電子スロットルバルブ8016のスロットル開度センサ8018と、エンジン回転数センサ8020と、入力軸回転数センサ8022と、出力軸回転数センサ8024とがハーネスなどを経由して接続されている。
【0029】
車速センサ8002は、ドライブシャフト6100の回転数から車速Vを検出する。ポジションスイッチ8006は、シフトレバー8004の位置(シフトポジション)SPを検出する。アクセル開度センサ8010は、アクセルペダル8008の開度(アクセル開度)ACCを検出する。踏力センサ8014は、ブレーキペダル8012の踏力(運転者がブレーキペダル8012を踏む力)を検出する。スロットル開度センサ8018は、電子スロットルバルブ8016の開度(スロットル開度)THを検出する。エンジン回転数センサ8020は、エンジン1000のクランクシャフトの回転数(エンジン回転数)NEを検出する。入力軸回転数センサ8022は、オートマチックトランスミッション2000の入力軸回転数(トルクコンバータ2100のタービン回転数)NTを検出する。出力軸回転数センサ8024は、オートマチックトランスミッション2000の出力軸の回転数(出力軸回転数)NOUTを検出する。これらの各センサは、検出結果を表わす信号をECU8000に送信する。
【0030】
ECU8000は、車速センサ8002、ポジションスイッチ8006、アクセル開度センサ8010、踏力センサ8014、スロットル開度センサ8018、エンジン回転数センサ8020、入力軸回転数センサ8022、出力軸回転数センサ8024などから送られてきた信号、ROMに記憶されたマップおよびプログラムに基づいて、車両が所望の走行状態となるように、機器類を制御する。
【0031】
本実施の形態において、ECU8000は、シフトレバー8004がD(ドライブ)ポジションであることによって、オートマチックトランスミッション2000のシフトレンジにD(ドライブ)レンジが選択された場合、前進1速〜8速ギヤ段のうちのいずれかのギヤ段が形成されるように、オートマチックトランスミッション2000を制御する。前進1速〜8速ギヤ段のうちのいずれかのギヤ段が形成されることによって、オートマチックトランスミッション2000は後輪7000に駆動力を伝達し得る。なお、Dレンジにおいて、8速ギヤ段よりも高速のギヤ段を形成可能であるようにしてもよい。形成するギヤ段は、車速とアクセル開度とをパラメータとして実験等によって予め作成された変速線図に基づいて決定される。
【0032】
なお、本実施の形態においては、ECU8000が1つのユニットとして説明するが、ECU8000を2つ以上のユニットに分割するようにしてもよい。たとえば、ECU8000がエンジン1000を制御するエンジンECUと、オートマチックトランスミッション2000を制御するECT(Electronic Controlled Transmission)_ECUとを含むようにし、エンジンECUとECT_ECUとが互いに信号を送受信可能であるように構成するようにしてもよい。
【0033】
図2を参照して、プラネタリギヤユニット3000について説明する。プラネタリギヤユニット3000は、クランクシャフトに連結された入力軸2102を有するトルクコンバータ2100に接続されている。
【0034】
プラネタリギヤユニット3000は、フロントプラネタリ3100と、リアプラネタリ3200と、C1クラッチ3301と、C2クラッチ3302と、C3クラッチ3303と、C4クラッチ3304と、B1ブレーキ3311と、B2ブレーキ3312と、ワンウェイクラッチ(F)3320とを含む。
【0035】
フロントプラネタリ3100は、ダブルピニオン型の遊星歯車機構である。フロントプラネタリ3100は、第1サンギヤ(S1)3102と、1対の第1ピニオンギヤ(P1)3104と、キャリア(CA)3106と、リングギヤ(R)3108とを含む。
【0036】
第1ピニオンギヤ(P1)3104は、第1サンギヤ(S1)3102および第1リングギヤ(R)3108と噛合っている。第1キャリア(CA)3106は、第1ピニオンギヤ(P1)3104が公転および自転可能であるように支持している。
【0037】
第1サンギヤ(S1)3102は、回転不能であるようにギヤケース3400に固定される。第1キャリア(CA)3106は、プラネタリギヤユニット3000の入力軸3002に連結される。
【0038】
リアプラネタリ3200は、ラビニヨ型の遊星歯車機構である。リアプラネタリ3200は、第2サンギヤ(S2)3202と、第2ピニオンギヤ(P2)3204と、リアキャリア(RCA)3206と、リアリングギヤ(RR)3208と、第3サンギヤ(S3)3210と、第3ピニオンギヤ(P3)3212とを含む。
【0039】
第2ピニオンギヤ(P2)3204は、第2サンギヤ(S2)3202、リアリングギヤ(RR)3208および第3ピニオンギヤ(P3)3212と噛合っている。第3ピニオンギヤ(P3)3212は、第2ピニオンギヤ(P2)3204に加えて、第3サンギヤ(S3)3210と噛合っている。
【0040】
リアキャリア(RCA)3206は、第2ピニオンギヤ(P2)3204および第3ピニオンギヤ(P3)3212が公転および自転可能であるように支持している。リアキャリア(RCA)3206は、ワンウェイクラッチ(F)3320に連結される。リアキャリア(RCA)3206は、1速ギヤ段の駆動時(エンジン1000から出力された駆動力を用いた走行時)に回転不能となる。リアリングギヤ(RR)3208は、プラネタリギヤユニット3000の出力軸3004に連結される。
【0041】
ワンウェイクラッチ(F)3320は、B2ブレーキ3312と並列に設けられる。すなわち、ワンウェイクラッチ(F)3320のアウターレースはギヤケース3400に固定され、インナーレースはリアキャリア(RCA)3206に連結される。
【0042】
図3に、各変速ギヤ段と、各クラッチおよび各ブレーキの作動状態との関係を表した作動表を示す。この作動表に示された組合せで各ブレーキおよび各クラッチを作動させることによって、前進1速〜8速のギヤ段と、後進1速および2速のギヤ段が形成される。
【0043】
図3に示すように、C1クラッチ3301は、前進1速〜5速のギヤ段を形成する際に係合される。たとえば、C1クラッチ3301を係合させ、他のクラッチおよびブレーキを解放させることによって、前進1速のギヤ段が形成される。なお、C1クラッチ3301に加えてB2ブレーキを係合させることによって、前進1速のギヤ段での走行時にエンジンブレーキを作用させることができる。
【0044】
図4を参照して、油圧回路4000の要部について説明する。なお、油圧回路4000は、以下に説明するものに限られない。
【0045】
油圧回路4000は、オイルポンプ4004と、プライマリレギュレータバルブ4006と、マニュアルバルブ4100と、ソレノイドモジュレータバルブ4200と、SL1リニアソレノイド(以下、SL(1)と記載する)4210と、SL2リニアソレノイド(以下、SL(2)と記載する)4220と、SL3リニアソレノイド(以下、SL(3)と記載する)4230と、SL4リニアソレノイド(以下、SL(4)と記載する)4240と、SL5リニアソレノイド(以下、SL(5)と記載する)4250と、SLTリニアソレノイド(以下、SLTと記載する)4300と、B2コントロールバルブ4500とを含む。
【0046】
オイルポンプ4004は、エンジン1000のクランクシャフトに連結されている。クランクシャフトが回転することによって、オイルポンプ4004が駆動し、油圧を発生する。
【0047】
オイルポンプ4004で発生した油圧は、プライマリレギュレータバルブ4006によって調圧され、ライン圧が生成される。プライマリレギュレータバルブ4006は、SLT4300によって調圧されたスロットル圧をパイロット圧として作動する。ライン圧は、ライン圧油路4010を経由してマニュアルバルブ4100に供給される。
【0048】
マニュアルバルブ4100は、ドレンポート4105を含む。ドレンポート4105から、Dレンジ圧油路4102およびRレンジ圧油路4104の油圧が排出される。
【0049】
マニュアルバルブ4100のスプールがDポジションにある場合、ライン圧油路4010とDレンジ圧油路4102とが連通させられ、Dレンジ圧油路4102に油圧が供給される。このとき、Rレンジ圧油路4104とドレンポート4105とが連通させられ、Rレンジ圧油路4104のRレンジ圧がドレンポート4105から排出される。
【0050】
マニュアルバルブ4100のスプールがRポジションにある場合、ライン圧油路4010とRレンジ圧油路4104とが連通させられ、Rレンジ圧油路4104に油圧が供給される。このとき、Dレンジ圧油路4102とドレンポート4105とが連通させられ、Dレンジ圧油路4102のDレンジ圧がドレンポート4105から排出される。
【0051】
マニュアルバルブ4100のスプールがNポジションにある場合、Dレンジ圧油路4102およびRレンジ圧油路4104の両方と、ドレンポート4105とが連通させられ、Dレンジ圧油路4102のDレンジ圧およびRレンジ圧油路4104のRレンジ圧がドレンポート4105から排出される。
【0052】
B2コントロールバルブ4500は、Dレンジ圧油路4102およびRレンジ圧油路4104のいずれか一方からの油圧を選択的に、B2ブレーキ3312に供給する。B2コントロールバルブ4500に、Dレンジ圧油路4102およびRレンジ圧油路4104が接続されている。B2コントロールバルブ4500は、SLUソレノイドバルブ(図示せず)から供給された油圧とスプリングの付勢力とによって制御される。
【0053】
SLUソレノイドバルブがオンの場合、B2コントロールバルブ4500は、図4において左側の状態となる。この場合、B2ブレーキ3312には、SLUソレノイドバルブから供給された油圧をパイロット圧として、Dレンジ圧を調圧した油圧が供給される。なお、Dレンジ圧油路4102に供給された油圧は、最終的には、C1クラッチ3301、C2クラッチ3302およびC3クラッチ3303に供給される。
【0054】
SLUソレノイドバルブがオフの場合、B2コントロールバルブ4500は、図4において右側の状態となる。この場合、B2ブレーキ3312には、Rレンジ圧油路4104のRレンジ圧が供給される。
【0055】
SL(1)4210、SL(2)4220、SL(3)4230、SL(4)4240、SL(5)4250は、ノーマルクローズ型のリニアソレノイドバルブである。これらのリニアソレノイドバルブの出力油圧POUTは、駆動信号としてECU8000からそれぞれのリニアソレノイドバルブに出力される駆動電流Iによって制御される。すなわち、これらのリニアソレノイドバルブは、非通電時に出力油圧が最小(「0」)になり、ECU8000からの各駆動電流Iの増大に伴ない出力油圧が増大する。
【0056】
SL(1)4210の出力油圧POUT(C1)は、C1クラッチ3301に供給され、SL(2)4220の出力油圧POUT(C2)は、C2クラッチ3302に供給され、SL(3)4230の出力油圧POUT(C3)は、C3クラッチ3303に供給され、SL(4)4240の出力油圧POUT(C4)は、C4クラッチ3304に供給され、SL(5)4250の出力油圧POUT(B1)は、B1ブレーキ3311に供給される。
【0057】
ECU8000は、入力トルク(タービントルク)などに基づいて、出力油圧POUT(C1)の目標指令圧P(C1)、出力油圧POUT(C2)の目標指令圧P(C2)、出力油圧POUT(C3)の目標指令圧P(C3)、出力油圧POUT(C4)の目標指令圧P(C4)、出力油圧POUT(B1)の目標指令圧P(B1)をそれぞれ算出する。
【0058】
ECU8000は、目標指令圧P(C1)に応じた駆動電流I(C1)、目標指令圧P(C2)に応じた駆動電流I(C2)、目標指令圧P(C3)に応じた駆動電流I(C3)、目標指令圧P(C4)に応じた駆動電流I(C4)、目標指令圧P(B1)に応じた駆動電流I(B1)を、それぞれSL(1)4210、SL(2)4220、SL(3)4230、SL(4)4240、SL(5)4250に出力する。
【0059】
ソレノイドモジュレータバルブ4200は、ライン圧を元圧とし、SLT4300に供給する油圧(ソレノイドモジュレータ圧)を一定の圧力に調圧する。
【0060】
SLT4300は、アクセル開度センサ8010によって検出されたアクセル開度ACCなどに基づいたECU8000からの駆動電流I(T)に応じて、ソレノイドモジュレータ圧を調圧し、スロットル圧を生成する。スロットル圧は、SLT油路4302を経由して、プライマリレギュレータバルブ4006に供給される。スロットル圧は、プライマリレギュレータバルブ4006のパイロット圧として利用される。
【0061】
以上のような構造を有する車両において、走行している車両を減速して停止させる場合、減速開始に伴なってエンジン1000やオートマチックトランスミッション2000に車両前方への慣性力が作用する。この慣性力の一部が弾性部材1010,1020に吸収されて弾性部材1010,1020が変形すると、オートマチックトランスミッション2000が車体に固定されているプロペラシャフト5000に対して車両前方に移動する。
【0062】
なお、以下の説明においては、弾性部材1010,1020が変形していない状態(初期状態)を基準とするオートマチックトランスミッション2000の移動量を、スライド量Sとも記載する。
【0063】
すなわち、このスライド量Sは、弾性部材1010,1020が初期状態であると0であり、減速度の増加(すなわち、オートマチックトランスミッション2000に作用する車両前方への慣性力の増加)に伴なって増加する。このとき、弾性部材1010,1020が変形し、内部に弾性エネルギが蓄えられる。
【0064】
そして、スライド量Sは、減速度の低下(すなわち、オートマチックトランスミッション2000に作用する車両前方への慣性力の低下)に伴なって、弾性部材1010,1020の弾性力(弾性エネルギ)により減少される。
【0065】
しかしながら、弾性部材1010,1020の弾性力よりも大きな摺動抵抗が出力軸3004とプロペラシャフト5000とのスプライン結合部に作用していると、弾性部材1010,1020が初期状態に戻らずに、車両停止後においてもスライド量Sが残存してしまう場合がある。
【0066】
このように、車両停止後においてもスライド量Sが残存している状態において、運転者がブレーキペダル8012の踏み込みを止めると、ブレーキ力によるプロペラシャフト5000の固定が解除されて、スプライン結合部に作用していた摺動抵抗が低下し、オートマチックトランスミッション2000が急激にプロペラシャフト5000の方向に移動(スライド量Sが0に変化)して、異音(以下「クランクノイズ」ともいう)が生じてしまう場合がある。
【0067】
本実施の形態に係る制御装置は、このようなクランクノイズを低減するために、車両の減速時に所定条件が成立した場合、出力軸3004からプロペラシャフト5000へ入力されるトルク(以下「入力トルクTrq」ともいう)を低減することにより、車両の減速中(車両停止前)にスライド量Sを低減する点に特徴を有する。
【0068】
図5に、本実施の形態に係る車両の制御装置であるECU8000の機能ブロック図を示す。ECU8000は、入力インターフェイス8100と、演算処理部8200と、記憶部8300と、出力インターフェイス8400とを含む。
【0069】
入力インターフェイス8100は、ポジションスイッチ8006からのシフトポジションSP、車速センサ8002からの車速V、アクセル開度センサ8010からのアクセル開度ACC、入力軸回転数センサ8022からの入力軸回転数NT、出力軸回転数センサ8024からの出力軸回転数NOUTを受信して、演算処理部8200に送信する。
【0070】
記憶部8300には、各種情報、プログラム、しきい値、マップ等が記憶され、必要に応じて演算処理部8200からデータが読み出されたり、格納されたりする。
【0071】
演算処理部8200は、スライド予測部8210と、減速度算出部8220と、トルクダウン制御条件設定部8230と、トルクダウン制御部8240とを含む。
【0072】
スライド予測部8210は、車両が停止する可能性が高い状態で車両を走行させている場合において、車両が被駆動動状態か否かに基づいて、車両停止時にクランクノイズを生じさせる程度のスライド量Sが残存するか否かを予測する。たとえば、スライド予測部8210は、車両がDポジションでの前進1速走行中である場合において、アクセルオフ状態で減速中であるときに、車両が被駆動動状態であると判断して、車両停止時にクランクノイズを生じさせる程度のスライド量Sが残存すると予測する。
【0073】
減速度算出部8220は、スライド予測部8210によって車両停止時にクランクノイズを生じさせる程度のスライド量Sが残存すると予測された場合、車両の減速度(車速Vの単位時間あたりの減少量)ΔVを算出する。
【0074】
トルクダウン制御条件設定部8230は、減速度算出部8220によって算出された減速度ΔVに基づいて、出力軸3004からプロペラシャフト5000へ入力される入力トルクTrqを低下させるトルクダウン制御条件(トルクダウン開始車速VS、トルクダウン時間T、トルクダウン量ΔTrq)を設定する。なお、トルクダウン制御条件の設定手法については後に詳述する。
【0075】
トルクダウン制御部8240は、トルクダウン制御条件設定部8230によって設定されたトルクダウン制御条件に基づいて、入力トルクTrqを低下させるトルクダウン制御信号を出力する。
【0076】
トルクダウン制御部8240は、C1クラッチ3301を滑らせることによってトルクダウンを行なう。トルクダウン制御部8240は、トルクダウン制御条件に基づいて、前進1速を形成するC1クラッチ3301の油圧(SL(1)4210の出力油圧POUT(C1))を低下させる目標指令圧P(C1)をSL(1)4210に出力する。
【0077】
本実施の形態において、スライド予測部8210と、減速度算出部8220と、トルクダウン制御条件設定部8230と、トルクダウン制御部8240とは、いずれも演算処理部8200であるCPUが記憶部8300に記憶されたプログラムを実行することにより実現される、ソフトウェアとして機能するものとして説明するが、ハードウェアにより実現されるようにしてもよい。なお、このようなプログラムは記憶媒体に記録されて車両に搭載される。
【0078】
以下、図6を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECU8000で実行されるプログラムの制御構造について説明する。なお、このプログラムは、予め定められたサイクルタイムで繰り返し実行される。
【0079】
ステップ(以下、ステップをSと略す)100にて、ECU8000は、Dポジションでの前進1速走行中であるか否かを判断する。Dポジションでの前進1速走行中であると(S100にてYES)、処理はS102に移される。そうでないと(S100にてNO)、この処理は終了する。
【0080】
S102にて、ECU8000は、アクセルオフ状態で減速中であるか否かを判断する。アクセルオフ状態で減速中であると(S102にてYES)、処理はS104に移される。そうでないと(S102にてNO)、この処理は終了する。
【0081】
S104にて、ECU8000は、減速度ΔVを算出する。S106にて、ECU8000は、減速度ΔVに基づいて、プロペラシャフト5000の入力トルクダウン制御条件を設定する。ECU8000は、入力トルクダウン制御条件として、トルクダウン開始車速VS、トルクダウン時間T、トルクダウン量ΔTrqを設定する。
【0082】
本実施の形態においては、前進1速段を形成するC1クラッチ3301を滑らせることによって、出力軸3004からプロペラシャフト5000へ入力される入力トルクTrqを低減させる。そのため、本処理において、ECU8000は、トルクダウン量ΔTrqに応じた、C1クラッチ3301の油圧ダウン量ΔPを設定する。なお、トルクダウン開始車速VS、トルクダウン時間T、油圧ダウン量ΔPの具体的な設定手法については、後に詳述する。
【0083】
S108にて、ECU8000は、車速Vがトルクダウン開始車速VSよりも低下したか否かを判断する。車速Vがトルクダウン開始車速VSよりも低下すると(S108にてYES)、処理はS110に移される。そうでないと(S108にてNO)、処理はS104に戻される。
【0084】
S110にて、ECU8000は、トルクダウン時間Tが経過するまで、C1クラッチ3301のに供給される油圧(SL(1)4210の出力油圧POUT(C1))の目標指令圧P(C1)を、油圧ダウン量ΔPに応じて低下させる。
【0085】
図7を参照して、入力トルクダウン制御条件(トルクダウン開始車速VS、トルクダウン時間T、油圧ダウン量ΔP)の設定処理(図6のS106の処理)、およびトルクダウン制御態様の一例について説明する。
【0086】
図7(A)に、減速度ΔV(α)で減速した場合のトルクダウン開始車速VS(α)と、減速度ΔV(β)(<ΔV(α))で減速した場合のトルクダウン開始車速VS(β)とを示す。図7(B)に、減速度ΔV(α)で減速した場合のトルクダウン時間T(α)および油圧ダウン量ΔP(α)を示し、図7(C)に、減速度ΔV(β)で減速した場合のトルクダウン時間T(β)および油圧ダウン量ΔP(β)を示す。
【0087】
図7(A)に示すように、ECU8000は、減速度ΔV(α)ではトルクダウン開始車速VS(α)を設定し、減速度ΔV(α)よりもよりも小さい減速度ΔV(β)では、減速度ΔV(α)でのトルクダウン開始車速VS(α)よりも低いトルクダウン開始車速VS(β)を設定する。
【0088】
そして、ECU8000は、図7(B)に示すように、減速度ΔV(α)でのトルクダウン時間T(α)を、トルクダウン開始車速VS(α)と減速度ΔV(α)とから求まる車両停止予測時間TS(α)よりも短くなるように設定する。車両停止前にトルクダウンによるスライド量Sの低減を完了させるためである。
【0089】
また、ECU8000は、図7(C)に示すように、減速度ΔV(β)でのトルクダウン時間T(β)を、トルクダウン開始車速VS(β)と減速度ΔV(β)とから求まる車両停止予測時間TS(β)よりも短くなるように設定する。上述したように、車両停止前にトルクダウンによるスライド量Sの低減を完了させるためである。
【0090】
さらに、車両停止予測時間TS(β)は車両停止予測時間TS(α)よりも長いことを考慮して、トルクダウン時間T(β)をトルクダウン時間T(α)よりも長く設定する。
【0091】
さらに、ECU8000は、図7(B)および図7(C)に示すように、トルクダウン時間Tを、時間T1、時間T2、時間T3に分割し、時間T1で目標指令圧P(C1)を油圧ダウン量ΔPだけ徐々に減少させ、時間T2では油圧ダウン量ΔPを維持し、時間T3で油圧ダウン量ΔPだけ徐々に増加させる。
【0092】
この際、トルクダウン時間T(α)よりもトルクダウン時間T(β)が長いことを考慮して、油圧ダウン量ΔP(α)よりも油圧ダウン量ΔP(β)が小さな値に設定される。
【0093】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る制御装置であるECU8000の動作について、図8を参照しつつ説明する。
【0094】
Dポジションでの前進3速段での走行中に、車両を停止させるために、運転者がアクセルをオフしかつブレーキをオンして車両を減速させている場合を想定する。
【0095】
従来においては、プロペラシャフト5000へ入力される入力トルクTrqが大きくスプライン結合部に大きな摺動抵抗が作用していたため、図8の一点鎖線に示すように、車両が停止した時刻t(4)以降においてもスライド量Sが残存していた。そのため、時刻t(5)にてブレーキをオフした瞬間にスライド量Sが急激に0まで低下し、クランクノイズが発生していた。なお、残存しているスライド量Sが大きいほど、クランクノイズは大きくなる。
【0096】
そこで、本実施の形態においては、時刻t(1)にて、1速にダウンシフトされると(S100にてYES、S102にてYES)、減速度ΔVに基づいてトルクダウン制御条件(トルクダウン開始車速VS、トルクダウン時間T、油圧ダウン量ΔP)が設定される(S104、S106)。
【0097】
時刻t(2)にて、車速Vがトルクダウン開始車速VSまで低下すると(S108にてYES)、時刻t(2)からトルクダウン時間Tが経過する時刻t(3)まで、C1クラッチ3301の目標指令圧P(C1)が油圧ダウン量ΔPに応じて低下される(S110)。これにより、C1クラッチ3301が滑り出し、入力軸3002から出力軸3004へ伝達されるトルクが低下する。
【0098】
そのため、図8に示すように、出力軸3004からプロペラシャフト5000へ入力される入力トルクTrqが低減される。これにより、出力軸3004とプロペラシャフト5000とのスプライン結合部の摺動抵抗が低減され、車両が停止する時刻t(4)より以前に、スライド量Sを0に低減することができる。そのため、時刻t(5)にてブレーキをオフしても、クランクノイズが発生することはない。
【0099】
以上のように、本実施の形態に係る制御装置によれば、車両の減速時に所定条件が成立した場合、前進1速で係合されるC1クラッチを滑らせて、プロペラシャフトへ入力されるトルクを低減させる。これにより、オートマチックトランスミッションの出力軸とプロペラシャフトとのスプライン結合部におけるスライド量が車両の減速中(車両停止前)に小さくなり、車両停止時に残存しているスライド量が低減される。そのため、クランクノイズの発生を抑制することができる。
【0100】
なお、本実施の形態においては、C1クラッチ3301を滑らせることによってトルクダウンを行なう場合について説明したが、エンジン1000のアイドル回転数を低下させることによってトルクダウンを行なうようにしてもよい。
【0101】
この場合には、ECU8000が、図9に示すようなトルクダウン制御条件(トルクダウン開始車速VS、トルクダウン時間T、アイドル回転数ダウン量ΔNE)を設定し、設定されたトルクダウン制御条件に基づいて、アイドル回転数を低下させる制御信号をインジェクタあるいは電子スロットルバルブ8016に出力するようにすればよい。なお、図9に示したトルクダウン制御条件は、C1クラッチ3301の油圧の関する値をアイドル回転数に関する値に変更した点以外は、前述の図7と同様の条件である。
【0102】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】車両のパワートレーンを示す概略構成図である。
【図2】オートマチックトランスミッションのプラネタリギヤユニットを示すスケルトン図である。
【図3】オートマチックトランスミッションの作動表を示す図である。
【図4】オートマチックトランスミッションの油圧回路を示す図である。
【図5】ECUの機能ブロック図である。
【図6】ECUが実行するプログラムの制御構造を示す図である。
【図7】ECUが設定する入力トルクダウン制御条件を示す図(その1)である。
【図8】ECUがトルクダウン制御を実行した場合のプロペラシャフトのスライド量のタイミングチャートである。
【図9】ECUが設定する入力トルクダウン制御条件を示す図(その2)である。
【符号の説明】
【0104】
1000 エンジン、1010,1020 弾性部材、2000 オートマチックトランスミッション、2100 トルクコンバータ、2102 入力軸、3000 プラネタリギヤユニット、3002 入力軸、3004 出力軸、3100 フロントプラネタリ、3200 リアプラネタリ、3301 C1クラッチ、3302 C2クラッチ、3303 C3クラッチ、3304 C4クラッチ、3311 B1ブレーキ、3312 B2ブレーキ、3400 ギヤケース、4000 油圧回路、4004 オイルポンプ、4006 プライマリレギュレータバルブ、4010 ライン圧油路、4100 マニュアルバルブ、4102 Dレンジ圧油路、4104 Rレンジ圧油路、4105 ドレンポート、4200 ソレノイドモジュレータバルブ、4302 SLT油路、4500 コントロールバルブ、5000 プロペラシャフト、6000 デファレンシャルギヤ、6100 ドライブシャフト、7000 後輪、8000 ECU、8002 車速センサ、8004 シフトレバー、8006 ポジションスイッチ、8008 アクセルペダル、8010 アクセル開度センサ、8012 ブレーキペダル、8014 踏力センサ、8016 電子スロットルバルブ、8018 スロットル開度センサ、8020 エンジン回転数センサ、8022 入力軸回転数センサ、8024 出力軸回転数センサ、8100 入力インターフェイス、8200 演算処理部、8210 スライド予測部、8220 減速度算出部、8230 トルクダウン制御条件設定部、8240 トルクダウン制御部、8300 記憶部、8400 出力インターフェイス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源の回転を変速して出力軸に出力する自動変速機と、前記出力軸に車両前後方向に摺動可能に結合され、前記出力軸の回転を駆動輪に伝達する推進軸とを備えた車両の制御装置であって、
前記推進軸の摺動に関連する予め定められた減速条件が成立したか否かを判断するための減速判断手段と、
車速が予め設定されたトルクダウン開始車速よりも低下したか否かを判断するための開始判断手段と、
前記減速判断手段によって前記予め定められた減速条件が成立したと判断された場合で、かつ前記開始判断手段によって前記トルクダウン開始車速よりも車速が低下したと判断された場合、前記出力軸から前記推進軸へ入力される入力トルクを低下させるように、前記駆動源および前記自動変速機の少なくともいずれかを制御するためのトルクダウン制御手段とを含む、車両の制御装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記減速判断手段によって前記予め定められた減速条件が成立したと判断された場合、前記車両の減速度を算出するための算出手段と、
前記算出手段によって算出された減速度に基づいて、前記トルクダウン開始車速を設定するための設定手段とをさらに含み、
前記トルクダウン制御手段は、前記設定手段によって設定されたトルクダウン開始車速よりも車速が低下したと前記開始判断手段によって判断された場合に、前記入力トルクを低下させる、請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記設定手段は、前記算出された減速度が第1の減速度である場合に第1のトルクダウン開始車速を設定し、前記算出された減速度が前記第1の減速度よりも小さい第2の減速度である場合に前記第1のトルクダウン開始車速よりも低い第2のトルクダウン開始車速を設定する、請求項2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記設定手段は、前記トルクダウン開始車速に加えて、前記算出された減速度に基づいてトルクダウン時間を設定し、
前記トルクダウン制御手段は、前記設定されたトルクダウン開始車速よりも車速が低下したと判断された時点から、前記設定手段によって設定された前記トルクダウン時間が経過するまで、前記入力トルクを低下させる、請求項2または3に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記設定手段は、前記トルクダウン時間を、前記設定されたトルクダウン開始車速と前記算出された減速度とから求まる車両停止予測時間よりも短くなるように設定する、請求項4に記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記設定手段は、前記算出された減速度が第1の減速度である場合に第1のトルクダウン時間を設定し、前記算出された減速度が前記第1の減速度よりも小さい第2の減速度である場合に前記第1のトルクダウン時間よりも長い第2のトルクダウン時間を設定する、請求項4に記載の車両の制御装置。
【請求項7】
前記設定手段は、前記トルクダウン開始車速および前記トルクダウン時間に加えて、前記算出された減速度に基づいてトルクダウン量を設定し、
前記トルクダウン制御手段は、前記設定手段によって設定された前記トルクダウン量に応じて前記入力トルクを低下させる、請求項4に記載の車両の制御装置。
【請求項8】
前記設定手段は、前記トルクダウン時間が第1のトルクダウン時間である場合は、第1のトルクダウン量に設定し、前記トルクダウン時間が前記第1のトルクダウン時間よりも長い第2のトルクダウン時間である場合は、前記第1のトルクダウン量よりも少ない第2のトルクダウン量に設定する、請求項7に記載の車両の制御装置。
【請求項9】
前記予め定められた減速条件は、前記自動変速機において前進走行状態における最低速側の変速段が形成され、かつ前記車両の運転者による加速要求がない状態で前記車両が減速しているという条件である、請求項1〜8のいずれかに記載の車両の制御装置。
【請求項10】
前記駆動源は、内燃機関であり、前記自動変速機には、油圧によって係合および解放される摩擦係合要素が備えられ、
前記トルクダウン制御手段は、前記内燃機関のアイドル回転数を低下させる制御、および前記摩擦係合要素の作動油圧を低下させる制御の少なくともいずれかを行なうことにより、前記入力トルクを低下させる、請求項1〜9のいずれかに記載の車両の制御装置。
【請求項11】
駆動源の回転を変速して出力軸に出力する自動変速機と、前記出力軸に車両前後方向に摺動可能に結合され、前記出力軸の回転を駆動輪に伝達する推進軸とを備えた車両を制御する制御装置が行なう制御方法であって、
前記推進軸の摺動に関連する予め定められた減速条件が成立したか否かを判断する減速判断ステップと、
車速が予め設定されたトルクダウン開始車速よりも低下したか否かを判断する開始判断ステップと、
前記減速判断ステップで前記予め定められた減速条件が成立したと判断された場合で、かつ前記開始判断ステップで前記トルクダウン開始車速よりも車速が低下したと判断された場合、前記出力軸から前記推進軸へ入力される入力トルクを低下させるように、前記駆動源および前記自動変速機の少なくともいずれかを制御するトルクダウン制御ステップとを含む、車両の制御方法。
【請求項12】
前記制御方法は、
前記減速判断ステップで前記予め定められた減速条件が成立したと判断された場合、前記車両の減速度を算出する算出ステップと、
前記算出ステップで算出された減速度に基づいて、前記トルクダウン開始車速を設定する設定ステップとをさらに含み、
前記トルクダウン制御ステップは、前記設定ステップで設定されたトルクダウン開始車速よりも車速が低下したと前記開始判断ステップで判断された場合に、前記入力トルクを低下させる、請求項11に記載の車両の制御方法。
【請求項13】
前記設定ステップは、前記算出された減速度が第1の減速度である場合に第1のトルクダウン開始車速を設定し、前記算出された減速度が前記第1の減速度よりも小さい第2の減速度である場合に前記第1のトルクダウン開始車速よりも低い第2のトルクダウン開始車速を設定する、請求項12に記載の車両の制御方法。
【請求項14】
前記設定ステップは、前記トルクダウン開始車速に加えて、前記算出された減速度に基づいてトルクダウン時間を設定し、
前記トルクダウン制御ステップは、前記設定されたトルクダウン開始車速よりも車速が低下したと判断された時点から、前記設定ステップで設定された前記トルクダウン時間が経過するまで、前記入力トルクを低下させる、請求項12または13に記載の車両の制御方法。
【請求項15】
前記設定ステップは、前記トルクダウン時間を、前記設定されたトルクダウン開始車速と前記算出された減速度とから求まる車両停止予測時間よりも短くなるように設定する、請求項14に記載の車両の制御方法。
【請求項16】
前記設定ステップは、前記算出された減速度が第1の減速度である場合に第1のトルクダウン時間を設定し、前記算出された減速度が前記第1の減速度よりも小さい第2の減速度である場合に前記第1のトルクダウン時間よりも長い第2のトルクダウン時間を設定する、請求項14に記載の車両の制御方法。
【請求項17】
前記設定ステップは、前記トルクダウン開始車速および前記トルクダウン時間に加えて、前記算出された減速度に基づいてトルクダウン量を設定し、
前記トルクダウン制御ステップは、前記設定ステップで設定された前記トルクダウン量に応じて前記入力トルクを低下させる、請求項14に記載の車両の制御方法。
【請求項18】
前記設定ステップは、前記トルクダウン時間が第1のトルクダウン時間である場合は、第1のトルクダウン量に設定し、前記トルクダウン時間が前記第1のトルクダウン時間よりも長い第2のトルクダウン時間である場合は、前記第1のトルクダウン量よりも少ない第2のトルクダウン量に設定する、請求項17に記載の車両の制御方法。
【請求項19】
前記予め定められた減速条件は、前記自動変速機において前進走行状態における最低速側の変速段が形成され、かつ前記車両の運転者による加速要求がない状態で前記車両が減速しているという条件である、請求項11〜18のいずれかに記載の車両の制御方法。
【請求項20】
前記駆動源は、内燃機関であり、前記自動変速機には、油圧によって係合および解放される摩擦係合要素が備えられ、
前記トルクダウン制御ステップは、前記内燃機関のアイドル回転数を低下させる制御、および前記摩擦係合要素の作動油圧を低下させる制御の少なくともいずれかを行なうことにより、前記入力トルクを低下させる、請求項11〜19のいずれかに記載の車両の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−286272(P2009−286272A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−141089(P2008−141089)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】