説明

車両の操舵制御装置

【課題】停車時、及び、走行時の必要なときに確実にブレーキ力を発生して車両の停車状態維持、及び、自動ブレーキ走行を行う。
【解決手段】操舵制御装置23は、平坦路において、補助ブレーキスイッチ39がONされた時、或いは、補助ブレーキスイッチ39がOFFでパーキングブレーキ非作動でエンジン非稼働時には補助ブレーキが作動し、前輪をトーアウト、後輪をトーインとする。坂道においては、補助ブレーキスイッチ39がONされた時、或いは、補助ブレーキスイッチ39がOFFでパーキングブレーキ非作動で停車時には、前輪若しくは後輪駆動車においては非駆動輪を対象として、4輪駆動車においては後輪を対象として補助ブレーキが作動される。そして、補助ブレーキスイッチ39がOFFされた時、パーキングブレーキが作動された時、アクセルペダルが踏み込まれた時には補助ブレーキが解除される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左輪と右輪とを独立して操舵自在な車両の操舵制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両においては、左輪と右輪とを独立して操舵できる様々な構造の操舵制御装置(例えば、ステアバイワイヤ機構の操舵制御装置や可変トー角機構を備えた操舵制御装置等)が提案され、実用化されている。
【0003】
こうした左輪と右輪とを独立して操舵自在な車両の操舵制御装置では、車両停止時には車輪を操舵中立位置に戻すように制御するものが一般的である。例えば、特開平7−291168号公報には、車速が0まで低下すると電動モータへの通電を停止する一方、車両が停止状態から再始動して発進する際には、電動モータに通電を行うと共に、後輪の現在の舵角を最初の目標舵角に設定する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平7−291138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両は停車時においては、ブレーキをかけておくことが望ましいため、パーキングブレーキをかけるのが一般的である。その一方で、特に、寒冷地等では、ブレーキの固着を避けるために、駐車場所に平地を選び、敢えてパーキングブレーキを使用しないで停車する場合もある。上述の特許文献1に開示されるような従来の操舵制御装置では、あくまでも車両走行時の操舵角を、その時の走行状況に適用させて設定しようとするものであり、ブレーキ力の発生については考慮されていなかった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、停車時、及び、走行時の必要なときに確実にブレーキ力を発生して車両の停車状態維持、及び、自動ブレーキ走行を行うことができる車両の操舵制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、左輪と右輪とを独立して操舵自在な独立操舵手段と、ブレーキを付加する予め設定しておいたブレーキ付加条件が成立するか否かを判定するブレーキ付加判定手段と、上記ブレーキ付加条件が成立する際、前輪と後輪の少なくとも一方を、車両の移動を規制する予め設定した操舵関係に左右輪の少なくとも一方を操舵する操舵制御手段とを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明による車両の操舵制御装置によれば、停車時、及び、走行時の必要なときに確実にブレーキ力を発生して車両の停車状態維持、及び、自動ブレーキ走行を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1〜図7は本発明の実施の一形態を示し、図1はステアバイワイヤ方式による操舵機構を備えた車両の構成図、図2は補助ブレーキに関する操舵制御プログラムのフローチャート、図3は補助ブレーキ作動制御処理ルーチンのフローチャート、図4は補助ブレーキ解除制御処理ルーチンのフローチャート、図5は坂道発進時補助ブレーキ作動制御処理ルーチンのフローチャート、図6は坂道発進補助ブレーキ作動制御ルーチンのフローチャート、図7は補助ブレーキ作動時の前後輪の説明図である。
【0009】
図1において、符号1は車両を示し、この車両1のエンジン2による駆動力は、エンジン2後方の自動変速装置(トルクコンバータ等も含んで図示)3を介してセンタデファレンシャル装置4に伝達される。
【0010】
センタデファレンシャル装置4に伝達された駆動力は、リヤドライブ軸5、プロペラシャフト6、ドライブピニオン軸部7を介して後輪終減速装置8に入力される一方、フロントドライブ軸9を介して前輪終減速装置10に入力される。
【0011】
後輪終減速装置8に入力された駆動力は、後輪左ドライブ軸11rlを経て左後輪12rlに伝達される一方、後輪右ドライブ軸11rrを経て右後輪12rrに伝達される。また、前輪終減速装置10に入力された駆動力は、前輪左ドライブ軸11flを経て左前輪12flに伝達される一方、前輪右ドライブ軸11frを経て右前輪12frに伝達される。
【0012】
また、符号15は独立操舵手段としての操舵装置を示し、本実施形態における操舵装置15としては、個々の車輪12fl,12fr,12rl,12rrの操舵角(車輪角)を独立して制御可能な四輪操舵機構が採用されている。この四輪操舵機構は、例えば、車輪12fl,12fr,12rl,12rrとハンドル16とが機械的に分離したステアバイワイヤ機構であり、ハンドル角と、左右前後の各車輪12fl,12fr,12rl,12rrの操舵角との関係を任意に設定することができる。
【0013】
すなわち、ドライバによって回転操作されるハンドル16は、操舵入力軸17の一端に固設され、操舵入力軸17の他端は、動力伝達機構18に接続されており、この動力伝達機構18には、モータ19の出力軸が接続されている。これにより、モータ19において発生した動力は、動力伝達機構18及び操舵入力軸17を介し、操舵反力としてハンドル16に伝達される。
【0014】
個々の車輪12fl,12fr,12rl,12rrには、それぞれの車輪の操舵角を調整する操舵アクチュエータ20fl,20fr,20rl,20rrが車輪単位で設けられている。
【0015】
これにより、左右前輪12fl,12frの操舵角は、前輪側に設けられた一対の操舵アクチュエータ20fl,20frにより、それぞれ独立して調整される。
【0016】
また、左右後輪12rl,12rrの操舵角は、後輪側に設けられた一対の操舵アクチュエータ20rl,20rrにより、それぞれ独立して調整される。
【0017】
個々の操舵アクチュエータ20fl,20fr,20rl,20rrには、駆動ロッド21fl,21fr,21rl,21rrが挿通されており、それぞれの操舵アクチュエータ20fl,20fr,20rl,20rrの内部に設けられたモータのロータ(図示せず)の回転に応じて、駆動ロッド21fl,21fr,21rl,21rrが、車幅方向、すなわち、左右方向に伸縮可能となっている。
【0018】
各駆動ロッド21fl,21fr,21rl,21rrの端部は、各車輪12fl,12fr,12rl,12rrと連結されたタイロッド22fl,22fr,22rl,22rrに接続されており、駆動ロッド21fl,21fr,21rl,21rrに連動してタイロッド22fl,22fr,22rl,22rrが移動することにより、車輪12fl,12fr,12rl,12rrが操舵される。
【0019】
左前輪12flと右後輪12rrとは、それぞれの駆動ロッド12fl,12rrが伸張することにより、右方向に操舵され、駆動ロッド12fl,12rrが収縮することにより、左方向に操舵される。これに対して、右前輪12flと左後輪12rlとは、伸縮方向に対する操舵方向が前述の左前輪12flと右後輪12rrの場合とは逆になっている。
【0020】
各操舵アクチュエータ20fl,20fr,20rl,20rrは、操舵制御装置23により制御される。
【0021】
操舵制御装置23には、車速センサ31で検出した車速Vが入力され、操舵入力軸17に取り付けられて、ハンドル16の中立位置からの回転角をハンドル角θHとして検出するハンドル角センサ32からのハンドル角θHが入力される。また、操舵制御装置23には、各操舵アクチュエータ20fl,20fr,20rl,20rrにそれぞれ取り付けられて、それぞれのモータのロータの回転角度を検出することにより各車輪12fl,12fr,12rl,12rrの操舵角を検出する操舵角センサ33fl,33fr,33rl,33rrからの操舵角が入力される。更に、操舵制御装置23には、路面の傾斜を検出して出力する坂道検出手段としての傾斜センサ34からの信号が入力され、エンジン2の稼働・非稼働の信号がエンジン制御装置35から入力される。また、操舵制御装置23には、ドライバにより操作されるパーキングブレーキの作動・非作動の信号がパーキングブレーキスイッチ36から入力され、アクセルペダルのON−OFF信号がアクセルペダルスイッチ37から入力され、セレクトレバー(図示せず)により設定されているレンジ位置がレンジ位置スイッチ38により入力される。更に、車両1には、後述する操舵制御によるブレーキ制御(補助ブレーキ)の作動・解除をドライバに選択せしめる補助ブレーキスイッチ39(すなわち、スイッチ手段)が設けられており、この補助ブレーキスイッチ39による選択信号が操舵制御装置23に入力される。
【0022】
そして、操舵制御装置23は、ハンドル角θHに応じてモータ19を制御することにより、ハンドル16に与えられる操舵反力を制御する。これとともに、操舵制御装置23は、各操舵アクチュエータ20fl,20fr,20rl,20rrを制御することにより、各車輪12fl,12fr,12rl,12rrの操舵角をそれぞれ制御する。例えば、操舵制御装置23は、通常、ハンドル角θHに基づいて、左右の前輪12fl,12frの操舵角を互いに正相に設定するとともに、左右の後輪12rl,12rrの操舵角も互いに正相に設定する。尚、本実施の形態において、正相は、操舵角が進行方向を基準に対応することであり、逆相は、車輪角が進行方向を基準に逆向きに対応することであるが、車輪角の対応は厳密に一致している必要はない。また、左方向への操舵を正の値と定義する。
【0023】
また、操舵制御装置23は、後述する操舵制御プログラムに従って、ブレーキを付加する予め設定しておいた様々なブレーキ付加条件が成立する際、前輪と後輪の少なくとも一方を、車両の移動を規制する予め設定した操舵関係に左右輪の少なくとも一方を操舵する。具体的には、操舵制御装置23は、各輪の操舵角度を独立して設定することで補助ブレーキとして付加するものであり、例えば、左右逆相に操舵し、又は、平坦路では一方の車輪のみを操舵(例えば、フル操舵)する。また、この補助ブレーキは、予め設定しておいた条件となった際に解除される。すなわち、操舵制御装置23は、ブレーキ付加判定手段、操舵制御手段としての機能を有している。
【0024】
以下、本発明の実施の形態による補助ブレーキに関する操舵制御を、図2の補助ブレーキに関する操舵制御プログラムのフローチャートで説明する。このプログラムは所定時間毎に実行され、まず、ステップ(以下、「S」と略称)101で、制御に必要なパラメータを読み込む。
【0025】
次いで、S102に進み、傾斜センサ34からの入力信号により、予め設定しておいた傾斜を有する坂道か否かを判定し、坂道ではないと判定した場合はS103に進み、坂道と判定した場合はS106に進む。
【0026】
S102で坂道ではないと判定してS103に進むと、補助ブレーキ作動フラグF(補助ブレーキが作動の場合にセットされ(F=1)、非作動の場合にクリアされる(F=0)フラグ)が参照される。
【0027】
そして、補助ブレーキ作動フラグFがクリアされており、補助ブレーキが非作動状態の場合は、S104に進み、後述する補助ブレーキ作動制御処理を実行してプログラムを抜ける。
【0028】
逆に、補助ブレーキ作動フラグFがセットされており、補助ブレーキが作動状態の場合は、S105に進み、後述する補助ブレーキ解除制御処理を実行してプログラムを抜ける。
【0029】
一方、上述のS102で坂道と判定してS106に進むと、補助ブレーキ作動フラグFが参照される。
【0030】
そして、補助ブレーキ作動フラグFがクリアされており、補助ブレーキが非作動状態の場合は、S107に進み、後述する坂道発進時補助ブレーキ作動制御処理を実行してプログラムを抜ける。
【0031】
逆に、補助ブレーキ作動フラグFがセットされており、補助ブレーキが作動状態の場合は、S105に進み、後述する補助ブレーキ解除制御処理を実行してプログラムを抜ける。
【0032】
上述のS104で実行される補助ブレーキ作動制御処理を、図3の補助ブレーキ作動制御処理ルーチンのフローチャートで説明する。
【0033】
まず、S201で補助ブレーキスイッチ39からの信号が判定され、補助ブレーキスイッチ39からの信号がONであり、ドライバにより補助ブレーキ作動の操作が行われた場合には、S202に進み、補助ブレーキを作動させ、S203に進んで、補助ブレーキ作動フラグFをセットし(F=1)、ルーチンを抜ける。
【0034】
ここで、補助ブレーキは、図7(a)に示すように、車両の移動を規制する予め設定した操舵関係として、前輪側がトーアウトに設定され、後輪側がトーインに設定される。このときの付加される操舵角δfl,δfr,δrl,δrrは、各操舵アクチュエータ20fl,20fr,20rl,20rrが付加可能な最大舵角とし、45°以上付加可能な場合は、45°とする。
【0035】
また、車両1が走行中の場合であって、ドライバにより操舵が行われている際は、舵角制御に余裕が残っている車輪を操舵することで、車両1の操縦性を確保する。例えば、図7(b)に示すように、車両1が左旋回中の場合は、旋回外側前輪である右前輪12frに舵角制御に余裕が残るため、この右前輪12frをドライバの操舵に応じて操舵することで、車両1の操縦性を確保するのである。
【0036】
一方、上述のS201で補助ブレーキスイッチ39からの信号がOFFと判定された場合は、S204に進み、パーキングブレーキスイッチ36からON信号が入力されているか否か判定される。この判定の結果、パーキングブレーキスイッチ36からON信号が入力されている場合は、S205に進み、補助ブレーキを非作動とし、S206に進んで、補助ブレーキ作動フラグFをクリアし(F=0)、ルーチンを抜ける。
【0037】
すなわち、パーキングブレーキが作動されている場合は、補助ブレーキは不要と判断するのである。
【0038】
上述のS204でパーキングブレーキスイッチ36からON信号が入力されていない場合は、S207に進み、エンジン制御装置35からエンジン2が稼働中の信号が入力されているか否か判定する。この判定の結果、エンジン稼働中の場合は、S208に進み、補助ブレーキを非作動とし、S209に進んで、補助ブレーキ作動フラグFをクリアし(F=0)、ルーチンを抜ける。逆に、エンジン2が非稼働中の場合は、S210に進み、前述のS202の如く、補助ブレーキを作動させ、S211に進んで、補助ブレーキ作動フラグFをセットし(F=1)、ルーチンを抜ける。
【0039】
すなわち、この場合では、補助ブレーキスイッチ39がOFFで、パーキングブレーキが作動されておらず、また、エンジン2も停止された状況であるので、停車状態を維持するためにブレーキを付加した方が望ましいと判定し、自動的に補助ブレーキをかけるのである。
【0040】
次に、上述のS105で実行される補助ブレーキ解除制御処理を、図4の補助ブレーキ解除制御処理ルーチンのフローチャートで説明する。
【0041】
まず、S301で補助ブレーキスイッチ39からの信号が判定され、補助ブレーキスイッチ39からの信号がOFFの場合には、S302に進み、補助ブレーキを解除させ、S303に進んで、補助ブレーキ作動フラグFをクリアし(F=0)、ルーチンを抜ける。
【0042】
また、上述のS301で補助ブレーキスイッチ39からの信号がONと判定された場合は、S304に進み、パーキングブレーキスイッチ36からON信号が入力されているか否か判定される。この判定の結果、パーキングブレーキスイッチ36からON信号が入力されている場合は、S305に進み、補助ブレーキを解除し、S306に進んで、補助ブレーキ作動フラグFをクリアし(F=0)、ルーチンを抜ける。
【0043】
すなわち、パーキングブレーキが作動されている場合は、補助ブレーキは不要と判断するのである。
【0044】
上述のS304でパーキングブレーキスイッチ36からON信号が入力されていない場合は、S307に進み、レンジ位置スイッチ38からの出力信号を参照して、セレクトレバーにより設定されているレンジ位置がパーキングの位置か否か判定する。
【0045】
この判定の結果、レンジ位置がパーキングの位置の場合は、S308に進み、現在の補助ブレーキを非解除として、S309に進み、補助ブレーキ作動フラグFをセットし(F=1)、ルーチンを抜ける。
【0046】
また、レンジ位置がパーキングの位置以外の場合は、S310に進み、アクセルペダルスイッチ37がONでアクセルペダルが踏み込まれたか否か判定する。この判定の結果、アクセルペダルスイッチ37がONでアクセルペダルが踏み込まれたと判定した場合は、S311に進み、補助ブレーキを解除し、S312に進んで、補助ブレーキ作動フラグFをクリアし(F=0)、ルーチンを抜ける。
【0047】
また、アクセルペダルスイッチ37がOFFの場合は、S313に進み、現在の補助ブレーキを非解除として、S314に進み、補助ブレーキ作動フラグFをセットし(F=1)、ルーチンを抜ける。
【0048】
すなわち、レンジ位置がパーキングの位置以外の場合にアクセルペダルが踏み込まれた場合、換言すれば、ドライバの発進操作を検出した場合には、補助ブレーキを自動的に解除し、ドライバに無用な操作を要求しないようになっている。
【0049】
次に、上述のS107で実行される坂道発進時補助ブレーキ作動制御処理を、図5の坂道発進時補助ブレーキ作動制御処理ルーチンのフローチャートで説明する。
【0050】
まず、S401で補助ブレーキスイッチ39からの信号が判定され、補助ブレーキスイッチ39からの信号がONであり、ドライバにより補助ブレーキ作動の操作が行われた場合には、S402に進み、後述する坂道発進補助ブレーキ作動制御を実行させて、前輪と後輪の少なくとも一方を、車両の移動を規制する予め設定した操舵関係に左右輪の少なくとも一方を操舵させ、S403に進んで、補助ブレーキ作動フラグFをセットし(F=1)、ルーチンを抜ける。
【0051】
ここで、S402における坂道発進補助ブレーキ作動制御は、前輪若しくは後輪駆動車においては、非駆動輪を対象として補助ブレーキが作動され、4輪駆動車においては、後輪を対象として補助ブレーキが作動される。このように補助ブレーキを付加することにより、坂道発進において、よりスムーズな駆動力の車輪への伝達が行われ、発進性能が良好に保たれるようになっている。尚、坂道発進補助ブレーキ作動制御については、後述の図6のフローチャートで説明する。
【0052】
一方、上述のS401で補助ブレーキスイッチ39からの信号がOFFと判定された場合は、S404に進み、パーキングブレーキスイッチ36からON信号が入力されているか否か判定される。この判定の結果、パーキングブレーキスイッチ36からON信号が入力されている場合は、S405に進み、補助ブレーキを非作動とし、S406に進んで、補助ブレーキ作動フラグFをクリアし(F=0)、ルーチンを抜ける。
【0053】
すなわち、パーキングブレーキが作動されている場合は、補助ブレーキは不要と判断するのである。
【0054】
上述のS404でパーキングブレーキスイッチ36からON信号が入力されていない場合は、S407に進み、車速センサ31からの信号により、車両1が停車中か否か判定する。この判定の結果、車両1が停車中の場合は、ドライバの坂道発進を支援すべくS408に進み、前述のS402の如く、坂道発進補助ブレーキ作動制御を実行させ、S409に進んで、補助ブレーキ作動フラグFをセットし(F=1)、ルーチンを抜ける。逆に、車両1が走行中の場合は、S410に進み、補助ブレーキを非作動とし、S411に進んで、補助ブレーキ作動フラグFをクリアし(F=0)、ルーチンを抜ける。
【0055】
次に、上述のS402、及び、S408で実行される坂道発進補助ブレーキ作動制御を、図6の坂道発進補助ブレーキ作動制御ルーチンのフローチャートで説明する。
【0056】
まず、S501で予め設定しておいた初期設定舵角(例えば、30°)を対象とする車輪(すなわち、前輪若しくは後輪駆動車においては非駆動輪、4輪駆動車においては後輪)に出力する。
【0057】
そして、S502に進み、車速センサ31からの信号により、車両1のずり下がりが検出されたか否か判定し、ずり下がりが検出された場合は、S503に進んで、対象車輪に対する付加舵角を一定舵角(例えば、5°)増加させる処理を行い、このずり下がりが無くなるまで、S502、S503を繰り返し、ずり下がりが検出されなくなった場合は、そのままルーチンを抜ける。
【0058】
このように本発明の実施の形態によれば、車両1が停車時、及び、走行時に、ブレーキを付加する予め設定しておいた様々なブレーキ付加条件が成立する際、前輪と後輪の少なくとも一方を左右逆相に操舵し、補助ブレーキとして付加する。また、この補助ブレーキは、予め設定しておいた条件となった際に解除される。このため、停車時、及び、走行時の必要なときに確実にブレーキ力を発生して車両の停車状態維持、及び、自動ブレーキ走行を行うことが可能となる。
【0059】
尚、本実施の形態では、車輪を逆相に操舵する構成を示したが、駆動力が発生していない状態での平坦路においては片側の車輪のみをフルに操舵させる構成としても良い。尚、平坦路の判定は、ナビゲーション装置や、車両に作用する上下力等の公知の技術を用いて判定することができる。
【0060】
また、ステアバイワイヤ機構による独立操舵機構を例に説明しているが、他に、トー角を可変自在なアライメント可変機構においても適用できることは云うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】ステアバイワイヤ方式による操舵機構を備えた車両の構成図
【図2】補助ブレーキに関する操舵制御プログラムのフローチャート
【図3】補助ブレーキ作動制御処理ルーチンのフローチャート
【図4】補助ブレーキ解除制御処理ルーチンのフローチャート
【図5】坂道発進時補助ブレーキ作動制御処理ルーチンのフローチャート
【図6】坂道発進補助ブレーキ作動制御ルーチンのフローチャート
【図7】補助ブレーキ作動時の前後輪の説明図
【符号の説明】
【0062】
1 車両
12fl,12fr,12rl,12rr 車輪
15 操舵装置(独立操舵手段)
23 操舵制御装置(ブレーキ付加判定手段、操舵制御手段)
31 車速センサ
32 ハンドル角センサ
34 傾斜センサ(坂道検出手段)
35 エンジン制御装置
36 パーキングブレーキスイッチ
37 アクセルペダルスイッチ
38 レンジ位置スイッチ
39 補助ブレーキスイッチ(スイッチ手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左輪と右輪とを独立して操舵自在な独立操舵手段と、
ブレーキを付加する予め設定しておいたブレーキ付加条件が成立するか否かを判定するブレーキ付加判定手段と、
上記ブレーキ付加条件が成立する際、前輪と後輪の少なくとも一方を、車両の移動を規制する予め設定した操舵関係に左右輪の少なくとも一方を操舵する操舵制御手段と、
を備えたことを特徴とする車両の操舵制御装置。
【請求項2】
上記操舵制御手段は、前輪と後輪の少なくとも一方を左右逆相に操舵させることを特徴とする請求項1記載の車両の操舵制御装置。
【請求項3】
上記ブレーキ付加判定手段は、ドライバが操作するスイッチ手段の切替で判定することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両の操舵制御装置。
【請求項4】
上記ブレーキ付加判定手段は、パーキングブレーキが非作動で、且つ、エンジンが非稼働の場合に上記ブレーキ付加条件が成立したと判定することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載の車両の操舵制御装置。
【請求項5】
坂道であることを検出する坂道検出手段を有し、
上記ブレーキ付加判定手段は、パーキングブレーキが非作動で、且つ、坂道での停車の場合に上記ブレーキ付加条件が成立したと判定することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載の車両の操舵制御装置。
【請求項6】
上記操舵制御手段は、坂道では前輪と後輪のどちらか一方を左右逆相に操舵させることを特徴とする請求項5記載の車両の操舵制御装置。
【請求項7】
上記操舵制御手段は、坂道で上記ブレーキ付加条件が成立して操舵制御を実行する場合、車両のずり下がりを検出した際は、付加する操舵角を増加させることを特徴とする請求項5又は請求項6記載の車両の操舵制御装置。
【請求項8】
上記ブレーキ付加判定手段は、上記ブレーキ付加条件が成立している際に、パーキングブレーキが作動された場合は、上記ブレーキ付加条件成立の判定を解除することを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか一つに記載の車両の操舵制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−290507(P2007−290507A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−119766(P2006−119766)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】