説明

車両の飲酒運転防止装置

【課題】車両乗車時のアルコール検査を受ける人物の成り済ましを防止して、より確実に飲酒運転を防止する。
【解決手段】車両乗車時に撮像した運転者の画像と車両走行中に撮像した運転者の画像とを比較部16で判定し、両画像が不一致であると判定された場合に、走行規制部17により車速を所定速度以下に減速する等して、車両の走行動作を規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の飲酒運転防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
酒気帯びや飲酒運転は重大な交通事故の原因となるため、従来より、飲酒運転防止のための様々な技術が提案されている。
【0003】
例えば、運転者の呼気からアルコールが検出されたときに自動車のキースイッチをロックしてスタータモータの始動を不可能にする技術(特許文献1参照)や、アルコール検出器を使って乗車前に運転者の呼気を調べることで、アルコールが検出されたら運転用のキーをキー格納庫から取り出せないようにする技術(特許文献2参照)が知られている。
【特許文献1】特開平8−150853号公報
【特許文献2】特開2004−164197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の飲酒運転防止装置では、車両乗車時に行うアルコール検査の際に、飲酒状態の運転者の代わりに同乗者がアルコール検査を受け、アルコール検査をパスした後で飲酒状態の運転者と運転を代わるといった成り済ましを容易に行うことができるため、確実に飲酒運転を防止することが困難であるといった問題があった。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両乗車時のアルコール検査を受ける人物の成り済ましを防止して、より確実に飲酒運転を防止することができるようにした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するため、本発明の車両の飲酒運転防止装置では、車両乗車時にアルコール検査を受けた人物と車両走行中の運転者とが同一人物であるか否かを判定して、不一致の場合には車両の走行動作を規制するようにした。
【0007】
すなわち、請求項1の発明は、運転者のアルコール濃度を検査するアルコール検知手段と、
車両乗車時及び車両走行中に運転者を撮像する撮像手段と、
車両乗車時における前記アルコール検知手段でのアルコール検査中に前記撮像手段で撮像された運転者の画像を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された車両乗車時の運転者の画像と、車両走行中に前記撮像手段で撮像した運転者の画像とを比較する比較手段と、
前記比較手段により車両乗車時の運転者の画像と車両走行中の運転者の画像とが不一致であると判定された場合に、車両の走行動作を規制する走行規制手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1において、
前記アルコール検知手段は、車両走行中に運転者のアルコール濃度を再検査するように構成され、
前記走行規制手段は、前記比較手段により車両乗車時の運転者と車両走行中の運転者が同一人物であると判定されたときでも、前記アルコール検知手段による再検査時に所定値以上のアルコール濃度が検知された場合には、車両の走行動作を規制するように構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、
前記走行規制手段は、車速を所定速度以下に減速するように構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のうち何れか1項において、
前記走行規制手段は、車両停止後に、車両の変速機構をPレンジ又はNレンジにシフトチェンジするか、又はブレーキを固定するように構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項5の発明は、請求項4において、
前記走行規制手段は、車両の変速機構のシフトチェンジを禁止するように構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1乃至5のうち何れか1項において、
車両周辺の外気温度を検出する外気温検出手段を備え、
車両周辺の外気温度を検出する外気温検出手段を備え、
車両乗車時に前記アルコール検知手段で検知したアルコール濃度が所定値以上であるときにエンジンの始動を禁止する一方、前記外気温検出手段で検出した外気温度が所定温度以下であるときは、該アルコール検知手段で所定値以上のアルコール濃度が検知された場合でもエンジンの始動のみを許可することを特徴とするものである。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1乃至6のうち何れか1項において、
車両乗車時における前記アルコール検知手段でのアルコール検査中に前記撮像手段で撮像された運転者の画像中に含まれる人物の人数を判定する画像判定手段を備え、
前記画像判定手段により車両乗車時の運転者の画像中に複数の人物が含まれていると判定された場合に、該アルコール検知手段による検査結果を無効とすることを特徴とするものである。
【0014】
請求項8の発明は、請求項1乃至7のうち何れか1項において、
前記撮像手段は、運転者の虹彩情報を取得するように構成され、
前記比較手段は、車両乗車時に前記撮像手段で取得した運転者の虹彩情報と、車両走行中に該撮像手段で取得した運転者の虹彩情報とを比較するように構成されていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項9の発明は、請求項1乃至8のうち何れか1項において、
前記走行規制手段による車両の走行動作の規制中に所定の警報動作を行う警報手段を備えたことを特徴とするものである。
【0016】
請求項10の発明は、請求項1乃至9のうち何れか1項において、
前記走行規制手段による車両の走行動作の規制中に、予め登録された所定機関に対して通報動作を行う通報手段を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明によれば、車両乗車時にアルコール検査を受けた運転者の画像と車両走行中の運転者の画像とを比較して、その画像に撮像されている人物が別人であると判定された場合に車両の走行動作を規制するようにしたから、例えば、車両乗車時のアルコール検査の際に、飲酒状態の運転者の代わりに同乗者がアルコール検査を受け、その検査をパスした後で飲酒状態の運転者と運転を代わるといった成り済ましが行われたとしても、車両走行中に運転者が交代したことを確認できるため、車両の走行動作を規制して確実に飲酒運転を防止することができる。
【0018】
請求項2に係る発明によれば、車両走行中にアルコール濃度の再検査を行い、車両乗車時の運転者と車両走行中の運転者が同一人物であると判定されたときでも、再検査時に所定値以上のアルコール濃度が検知された場合に、車両の走行動作を規制するようにしたから、例えば、車両乗車時のアルコール検査時には飲酒していなかった運転者が、運転中に飲酒をすることで飲酒運転状態となった場合でも、車両走行中に飲酒運転を検知することができ、確実に飲酒運転を防止することができる。なお、アルコール検知手段としてハンドルに取り付けたセンサ等で運転者の汗の成分中に含まれるアルコール濃度を検知するようにすれば、車両走行に支障をきたすことなくアルコール検査を行うことができて好ましい。
【0019】
請求項3に係る発明によれば、走行規制手段により車速が所定速度以下に減速されるから、飲酒運転による速度超過や前方不注意等に起因する重大事故を未然に防止する上で有利となる。
【0020】
請求項4に係る発明によれば、走行規制手段により車両停止後に車両の変速機構をPレンジ又はNレンジにシフトチェンジするか、又はブレーキを固定するようにしたから、例えば、信号待ち等で車両を停止させたときにシフトレバーをPレンジ又はNレンジにシフトチェンジしたり、ブレーキを固定する等して、それ以上飲酒運転ができないように走行動作を規制すれば、飲酒運転による重大事故を未然に防ぐことができる。
【0021】
請求項5に係る発明によれば、走行規制手段により車両の変速機構のシフトチェンジを禁止するようにしたから、例えば、車両走行中ではレンジを固定してエンジンブレーキで徐々に減速したり、車両停止状態ではシフトレバーをPレンジやNレンジに固定したままにする等、それ以上飲酒運転ができないように走行動作を規制すれば、飲酒運転による重大事故を未然に防ぐことができる。
【0022】
請求項6に係る発明によれば、車両乗車時に行うアルコール検査の際に所定値以上のアルコール濃度が検知されたとしても、車両周辺の外気温度が所定温度以下であるときは、エンジンの始動のみを許可するようにしている。例えば、寒冷地等において飲酒状態の運転者が車内で休憩を取りたい場合にもエンジンの始動を禁止してしまうと、車内の暖房運転を行うことができないこととなり好ましくない。そこで、車両周辺の外気温度が所定温度以下の場合には、エンジンの始動のみを許可して暖房運転を可能として寒さ対策を行うようにしている。もちろん、この場合でも、許可するのはエンジンの始動のみであり、アクセルペダルの作動等の車両の走行動作は規制されていることは言うまでもない。
【0023】
請求項7に係る発明によれば、画像判定手段により、車両乗車時に撮像した運転者の画像中に複数の人物が含まれていると判定された場合に、アルコール検知手段による検査結果を無効として車両の走行動作を規制するようにしている。例えば、飲酒状態の運転者に成り済まして飲酒をしていない同乗者がアルコール検査を受け、その同乗者とともに飲酒状態の運転者が一緒に撮像された場合には、アルコール検査は正常にパスしており且つ車両乗車時に撮像した画像中に運転者が含まれることとなるため、エンジンの始動が許可されてしまうおそれがあるが、画像中に複数の人物が含まれていればその検査結果を無効するようにすれば、再検査が必要となり、確実に飲酒運転を防止することができる。
【0024】
請求項8に係る発明によれば、車両乗車時にアルコール検査を受けた運転者の虹彩情報と車両走行中の運転者の虹彩情報とを比較して、その画像に撮像されている人物が別人であると判定された場合に車両の走行動作を規制するようにしたから、高精度な判定を行うことができて、より確実に運転者の成り済ましを防止できる。
【0025】
請求項9に係る発明によれば、車両の走行動作の規制中に所定の警報動作を行うようにしたから、運転者に対してブザーやアラーム等を鳴らしたりモニタ画面に警報表示を行う等して飲酒運転状態であることを警告して注意を促すことができるとともに、外部にもその車両が飲酒運転状態であることを知らせることが可能となり、飲酒運転による重大事故の発生を未然に防ぐ上で有利となる。
【0026】
請求項10に係る発明によれば、車両の走行動作の規制中に、予め登録された所定機関に対して通報動作を行うようにしたから、例えば、飲酒運転状態であることを確認した後、予め登録しておいた所定機関(警察や自宅等)に対して電話等で通報することができ、飲酒運転による重大事故の発生を未然に防ぐ上で有利となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0028】
図1は、本発明の実施形態に係る飲酒運転防止装置を搭載した車両の構成を示す側面図である。図1に示すように、この飲酒運転防止装置10は、アルコール検知部11と、撮像部12と、制御ユニット25とを備えている。
【0029】
図2は、ハンドルに埋設されたアルコール検知部の構成を示す側面断面図である。図2に示すように、アルコール検知部11は、運転者がハンドル5を握って車両Wを運転している状態で、運転者から採取された汗の成分中に含まれるアルコール濃度を検知するセンサ素子で構成されている。このアルコール検知部11は、ハンドル本体5aを一部凹状に切り欠いて形成した段差部5b内に配置され、ハンドル本体5aの表面が通気性を有するハンドル表皮5cにより覆われることで、ハンドル5の適宜箇所に埋設されている。
【0030】
そして、アルコール検知部11で検知されたアルコール濃度の情報は、信号ライン11aを介して運転者の飲酒状態を判定する飲酒判定部13に送信される(図3参照)。
【0031】
前記撮像部12は、車両乗車時及び車両走行中に運転者の顔の画像を撮影するものであり、ルームミラー6の上方に配置されている。この撮像部12で撮像された画像は記憶部14に記憶される。
【0032】
前記制御ユニット25は、詳しくは後述するが、アルコール検知部11や撮像部12で取得した情報に基づいて、エンジンの始動や速度制限等の各種制御を行うものである。
【0033】
図3は、本実施形態に係る車両の飲酒運転防止装置のシステム構成を示すブロック図である。図3に示すように、記憶部14は、車両乗車時におけるアルコール検知部11でのアルコール検査中に撮像部12で撮像された運転者の画像を記憶するものである。
【0034】
画像判定部15は、記憶部14に記憶された運転者の画像中に含まれる人物の人数を判定するものである。この画像判定部15により車両乗車時の運転者の画像中に複数の人物が含まれていると判定された場合には、アルコール検知部11による検査結果が無効とされる。
【0035】
比較部16は、記憶部14に記憶された車両乗車時の運転者の画像と、車両走行中に撮像部12で撮像した運転者の画像とを比較するものである。なお、撮像部12で運転者の顔の画像を撮像してその画像を比較する他にも、運転者の虹彩情報を取得して、この虹彩情報を比較部16で比較して同一人物であるかを判定するようにすれば、より高精度な判定を行うことが可能となる。
【0036】
前記制御ユニット25は、飲酒判定部13での判定結果、比較部16での比較結果、及び外気温検出部18からの情報に基づいて、走行規制部17、エンジン始動部19、警報部20、及び通報部21の動作を制御するものである。具体的に、アルコール濃度が所定値以上であれば運転者が飲酒状態であると判定して、エンジン始動部19に対して始動禁止信号を送信してエンジンが始動しないようにする。
【0037】
また、飲酒判定部13で飲酒状態でないと判定されても、比較部16で車両乗車時の運転者の画像と車両走行中の運転者の画像とが不一致であると判定された場合には、車両乗車時にアルコール検査を受ける人物が成り済ましを行ったと判断して、走行規制部17に対して走行規制信号を送信する。
【0038】
具体的に、走行規制部17では、車速を所定速度以下に減速するように制御したり、信号待ち等の車両停止後にシフトレバーをPレンジやNレンジにシフトチェンジしたり、ブレーキを固定するように制御する。このように走行動作を規制すれば、飲酒運転による速度超過や前方不注意等に起因する重大事故を未然に防止することができる。
【0039】
また、飲酒判定部13における飲酒判定及び比較部16における人物確認をパスした場合でも、車両走行中にアルコール検知部11でアルコール濃度を再検査したときに、所定値以上のアルコール濃度が検知された場合には、同様に走行規制部17に対して走行規制信号を送信する。
【0040】
ここで、走行規制部17による車両の走行動作の規制中には、制御ユニット25から警報部20に対して制御信号が送信され、警報部20においてブザーやアラーム等を鳴らしたりモニタ画面に警報表示を行う等して、運転者に対して飲酒運転状態であることを警告して注意を促す。さらに、制御ユニット25から通報部21に対して制御信号が送信され、通報部21において予め登録しておいた所定機関(警察や自宅等)に対して電話等で通報する。
【0041】
なお、本実施形態では、アルコール検知部11をハンドル5に埋設しておき、運転者の汗の成分中に含まれるアルコール濃度を検査するようにしたが、この形態に限定するものではなく、例えば、運転者の呼気を採取して、呼気中に含まれるアルコール濃度を検査するようにしても構わない。
【0042】
−飲酒運転防止装置の動作手順−
図4は、本発明の実施形態に係る飲酒運転防止装置の動作手順を示すフローチャート図である。図4に示すように、まず、ステップS101で、運転者の飲酒検査を行う。具体的には、運転席に座った運転者がハンドル5を握った状態で、ハンドル5に埋設されたアルコール検知部11により運転者の汗の成分中に含まれるアルコール濃度を測定して、続くステップS102に進む。
【0043】
ステップS102では、運転者のデータを記録する。具体的には、運転席に座った運転者がハンドル5を握って飲酒検査を受けている状態の運転者の顔の画像を撮像部12で撮像して画像データを取得し、続くステップS103に進む。
【0044】
ステップS103では、撮像部12で撮像した画像データに写っている人物が1人か否かを画像判定部15で判定する。ステップS103での判定が「YES」の場合には、飲酒検査が正常に行われたと判断してステップS104に分岐する。ステップS103での判定が「NO」の場合には、複数人が運転者として認識されており、どの人物が本当の運転者か判断できないため、検査結果を無効とし、ステップS101に戻って再度飲酒検査をやり直す。
【0045】
ステップS104では、飲酒判定が行われる。具体的には、アルコール検知部11で測定したアルコール濃度が所定値以上か否かを飲酒判定部13で判定する。ステップS104での判定が「YES」の場合には、運転者が飲酒状態であると判断して、ステップS114に分岐する。ステップS104での判定が「NO」の場合には、運転者が飲酒していないため運転しても良いと判断して、ステップS105に分岐する。
【0046】
ステップS105では、エンジンの始動許可を与えて、続くステップS106に進む。ステップS106では、シフトレバーの変速許可を与えて、続くステップS107に進む。ここで、ステップS106までが運転者が車両に乗り込んでからエンジンを始動させる前までの動作手順であり、ステップS107以降は、本発明の特徴部分である、車両走行中の運転者の飲酒状態を検査するための動作手順である。
【0047】
ステップS107では、エンジン始動後、車両走行中の運転者の顔の画像を撮像部12で撮像するとともに、アルコール検知部11でアルコール濃度を再検査し、続くステップS108に進む。
【0048】
ステップS108では、エンジン始動前の飲酒検査時の運転者と、車両走行中に撮像した運転者とが同一人物であるか否かを比較部16で判定する。ステップS108での判定が「YES」の場合には、ステップS109に分岐する。ステップS108での判定が「NO」の場合には、エンジン始動後に飲酒検査を受けた運転者が入れ替わっていると判断して、ステップS110に分岐する。
【0049】
ステップS109では、車両走行中の運転者のアルコール濃度が所定値以上か否かを飲酒判定部13で判定する。ステップS109での判定が「YES」の場合には、エンジン始動前の検査では飲酒をしていなかった運転者が、車両走行中に飲酒したために飲酒運転状態になったと判断して、ステップS110に分岐する。ステップS109での判定が「NO」の場合には、運転者は飲酒運転状態ではないと判断して、ステップS107に戻り、再び車両走行中の飲酒検査を行う。なお、この車両走行中の飲酒検査は、所定時間毎に行うようにすれば、運転者の飲酒状態を細かく監視できるため効果的である。
【0050】
ステップS110では、運転者が飲酒運転状態であるため、走行規制部17でブレーキ操作等により速度制限処理を行って車両速度を減速させ、続くステップS111に進む。なお、この速度制限処理ではシフトレバーを1速又は2速のシフトレンジに固定するようにし、エンジンブレーキにより減速させるようにしてもよい。
【0051】
ステップS111では、例えば、信号待ち等で車両が停止中であるか否かを判定する。ステップS111での判定が「YES」の場合には、ステップS112に分岐する。ステップS111での判定が「NO」の場合には、ステップS110に分岐して、速度制限処理のみを引き続き行う。
【0052】
ステップS112では、停止状態の車両のシフト操作を禁止して、続くステップS113に進む。なお、ステップS112では、シフトレバーをPレンジやNレンジにシフトチェンジした後、シフトレバーを固定するようにしている。
【0053】
ステップS113では、通報部21で予め登録されている所定機関、例えば、警察や自宅等に運転者が飲酒運転状態であることを通報するか、又は警報部20で運転者に対してブザーやアラームを鳴らしたりモニタ画面に警報表示を行う等して飲酒運転状態であることを警告して、処理を終了する。
【0054】
次に、エンジン始動前のステップS104の飲酒判定で「YES」と判定された場合にステップS114に分岐した後の処理について説明する。
【0055】
ステップS114では、車両周辺の外気温度が所定温度範囲内か否かを外気温検出部18で判定する。ステップS114での判定が「YES」の場合には、処理を終了する。ステップS114での判定が「NO」の場合には、寒冷地等で外気温度が低い環境下であると判断して、続くステップS115に分岐する。
【0056】
ステップS115では、エンジンの始動許可を与えて、続くステップS116に進む。ステップS116では、ブレーキをON状態として、続くステップS117に進む。ステップS117では、シフトチェンジを禁止して、処理を終了する。
【0057】
なお、このステップS114からステップS117までの処理は、以下のような理由で設けたものである。例えば、運転者が飲酒しているからといって、一律にエンジンの始動を禁止するように制御すると、酔いが覚めるまで車内で休憩しようとした場合、寒冷地等の外気温度が低い環境下では、エアコンの暖房を作動させることができずに運転者の体温が低下する等、健康を害するおそれがある。そこで、運転者が飲酒していたとしても、エンジンの始動のみを許可することで、エアコンの暖房を作動させることができるようになり、外気温度が低い環境下においても運転者が車内で休憩することができる。もちろん、運転は許可しないのであるから、ステップS116でブレーキをON状態とし、ステップS117でシフトチェンジも禁止するようにして、車両走行ができないように制御している。
【0058】
以上のように、本発明の実施形態に係る車両の飲酒運転防止装置によれば、車両乗車時にアルコール検査を受けた運転者の画像と車両走行中の運転者の画像とを比較して、その画像に撮像されている人物が別人であると判定された場合に車両の走行動作を規制するようにしたから、例えば、車両乗車時のアルコール検査の際に、運転者の代わりに同乗者がアルコール検査を受け、その検査をパスした後で飲酒状態の運転者と運転を代わるといった成り済ましが行われたとしても、車両走行中に運転者が交代したことを確認できるため、車両の走行動作を規制して確実に飲酒運転を防止することができる。
【0059】
また、車両乗車時の運転者と車両走行中の運転者が同一人物であると判定されたときでも、再検査時に所定値以上のアルコール濃度が検知された場合に、車両の走行動作を規制するようにしたから、例えば、車両乗車時のアルコール検査時には飲酒していなかった運転者が、運転中に飲酒をすることで飲酒運転状態となった場合でも、車両の走行動作を規制して確実に飲酒運転を防止することができる。なお、ハンドル5に取り付けたアルコール検知部11で運転者の汗の成分中に含まれるアルコール濃度を検知するようにすれば、車両走行に支障をきたすことなく、アルコール検査を行うことができて好ましい。
【0060】
さらに、車両乗車時に行うアルコール検査の際に所定値以上のアルコール濃度が検知されたとしても、車両周辺の外気温度が所定温度以下であるときは、エンジンの始動のみを許可するようにしている。例えば、寒冷地等において飲酒状態の運転者が車内で休憩を取りたい場合にもエンジンの始動を禁止してしまうと、車内の暖房運転を行うことができないこととなり好ましくない。そこで、車両周辺の外気温度が所定温度以下の場合には、エンジンの始動のみを許可するようにして暖房運転を行うことができるようにして寒さ対策を行うようにしている。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上説明したように、本発明は、車両乗車時のアルコール検査を受ける人物の成り済ましを防止して、より確実に飲酒運転を防止することができるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施形態に係る車両の飲酒運転防止装置を搭載した車両の構成を示す側面図である。
【図2】ハンドルに設けられたアルコール検知センサの構成を示す側面断面図である。
【図3】本実施形態に係る飲酒運転防止装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図4】本実施形態に係る飲酒運転防止装置の動作手順を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0063】
10 飲酒運転防止装置
11 アルコール検知部
12 撮像部
13 飲酒判定部
14 記憶部
15 画像判定部
16 比較部
17 走行規制部
18 外気温検出部
20 警報部
21 通報部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者のアルコール濃度を検査するアルコール検知手段と、
車両乗車時及び車両走行中に運転者を撮像する撮像手段と、
車両乗車時における前記アルコール検知手段でのアルコール検査中に前記撮像手段で撮像された運転者の画像を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された車両乗車時の運転者の画像と、車両走行中に前記撮像手段で撮像した運転者の画像とを比較する比較手段と、
前記比較手段により車両乗車時の運転者の画像と車両走行中の運転者の画像とが不一致であると判定された場合に、車両の走行動作を規制する走行規制手段とを備えていることを特徴とする車両の飲酒運転防止装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記アルコール検知手段は、車両走行中に運転者のアルコール濃度を再検査するように構成され、
前記走行規制手段は、前記比較手段により車両乗車時の運転者と車両走行中の運転者が同一人物であると判定されたときでも、前記アルコール検知手段による再検査時に所定値以上のアルコール濃度が検知された場合には、車両の走行動作を規制するように構成されていることを特徴とする車両の飲酒運転防止装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記走行規制手段は、車速を所定速度以下に減速するように構成されていることを特徴とする車両の飲酒運転防止装置。
【請求項4】
請求項1又は2において、
前記走行規制手段は、車両停止後に、車両の変速機構をPレンジ又はNレンジにシフトチェンジするか、又はブレーキを固定するように構成されていることを特徴とする車両の飲酒運転防止装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のうち何れか1項において、
前記走行規制手段は、車両の変速機構のシフトチェンジを禁止するように構成されていることを特徴とする車両の飲酒運転防止装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のうち何れか1項において、
車両周辺の外気温度を検出する外気温検出手段を備え、
車両乗車時に前記アルコール検知手段で検知したアルコール濃度が所定値以上であるときにエンジンの始動を禁止する一方、前記外気温検出手段で検出した外気温度が所定温度以下であるときは、該アルコール検知手段で所定値以上のアルコール濃度が検知された場合でもエンジンの始動のみを許可することを特徴とする車両の飲酒運転防止装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のうち何れか1項において、
車両乗車時における前記アルコール検知手段でのアルコール検査中に前記撮像手段で撮像された運転者の画像中に含まれる人物の人数を判定する画像判定手段を備え、
前記画像判定手段により車両乗車時の運転者の画像中に複数の人物が含まれていると判定された場合に、該アルコール検知手段による検査結果を無効とすることを特徴とする車両の飲酒運転防止装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のうち何れか1項において、
前記撮像手段は、運転者の虹彩情報を取得するように構成され、
前記比較手段は、車両乗車時に前記撮像手段で取得した運転者の虹彩情報と、車両走行中に該撮像手段で取得した運転者の虹彩情報とを比較するように構成されていることを特徴とする車両の飲酒運転防止装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のうち何れか1項において、
前記走行規制手段による車両の走行動作の規制中に所定の警報動作を行う警報手段を備えたことを特徴とする車両の飲酒運転防止装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のうち何れか1項において、
前記走行規制手段による車両の走行動作の規制中に、予め登録された所定機関に対して通報動作を行う通報手段を備えたことを特徴とする車両の飲酒運転防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−265443(P2008−265443A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−109019(P2007−109019)
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】