説明

車両搭載用発電装置

【課題】エンジンの駆動力によって発電を行う車両搭載用発電装置において、エンジンを制御する構成を簡単にすることを目的とする。
【解決手段】操作部32は、ユーザの操作に基づく運転操作情報を制御部12に出力する。制御部12は、運転操作情報および車両の走行状態に基づいて、車両駆動回路28を制御すると共にエンジン出力目標値を決定する。そして、記憶部34に記憶されたエンジン出力・制御電圧テーブルを参照し、エンジン出力目標値に対応付けられた制御電圧Vaの値を求める。制御部12は、制御電圧Vaがエンジン出力・制御電圧テーブルに基づいて求められた値となるよう、電圧調整回路24を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの駆動力によって発電を行う車両搭載用発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリーズハイブリッド自動車につき広く研究開発が行われている。シリーズハイブリッド自動車は、エンジンのトルクによってジェネレータを駆動して発電を行い、発電電力によって走行用モータを駆動して車両を走行させる。ジェネレータによる発電電力のうち車両の走行に用いられない電力、および走行用モータによる回生電力は、繰り返して充放電が可能な二次電池に供給される。二次電池に充電された電力は、走行制御に応じて走行用モータに供給され、走行電力として用いられる。シリーズハイブリッド自動車によれば、回生電力を走行電力に用いると共に、走行電力の不足分をエンジンによる発電電力によって補うことができる。
【0003】
特許文献1には、シリーズハイブリッド自動車について記載されている。このシリーズハイブリッド自動車においては、ジェネレータが出力する交流発電電圧を整流する整流器が設けられている。整流器が出力する直流電圧は、昇圧チョッパ回路によって電圧値が調整された後、二次電池(バッテリ)に印加される。特許文献1には、昇圧チョッパ回路の制御によりバッテリの電圧制御を行う旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−245322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シリーズハイブリッド自動車では、走行用モータの回転状態、二次電池の充電状態等に応じてエンジンを制御する。エンジンの制御は、エンジンに供給される燃料の流量を調整するスロットルの制御によって行われる。しかし、スロットルの制御は機械的な制御であるため、制御機構が複雑になるという問題があった。
【0006】
また、シリーズハイブリッド自動車のエンジンおよびジェネレータを走行状態に応じて適切に制御する方法は、従来技術において十分に確立されていない。
【0007】
本発明は、このような課題に対してなされたものである。すなわち、エンジンの駆動力によって発電を行う車両搭載用発電装置において、エンジンを制御する構成を簡単にすることを目的とする。
【0008】
また、車両搭載用発電装置において、エンジンおよびジェネレータを走行状態に応じて適切に制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、燃料の燃焼によりトルクを発生するエンジンと、前記エンジンとの間でトルクを作用し合うジェネレータと、前記ジェネレータが接続され、車両を電力駆動する車両駆動部との間で電力を授受し、当該車両駆動部との間で授受される電力を調整する電力調整部と、前記車両の制御状態に応じて前記エンジンの目標駆動状態を決定する目標駆動状態決定部と、を備え、前記電力調整部は、前記ジェネレータが発生した交流電力を直流電力に変換し、その直流電力を前記車両駆動部に至る電力経路に出力する変換回路と、前記変換回路と前記車両駆動部との間の電力経路に伝送される直流伝送電圧を調整する電圧調整回路と、を備え、 前記電圧調整回路は、前記目標駆動状態に応じて前記直流伝送電圧を調整することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る車両搭載用発電装置においては、前記電圧調整回路は、繰り返して充放電が可能な蓄電手段と、前記直流伝送電圧と前記蓄電手段の出力電圧との間の電圧変換を行う昇降圧コンバータ回路と、を備えることが好適である。
【0011】
また、本発明に係る車両搭載用発電装置においては、直流電力を交流電力に変換する逆方向変換回路を備え、前記逆方向変換回路は、前記直流伝送電圧に基づく直流電力を交流電力に変換し、その交流電力を前記ジェネレータに至る電力経路に出力し、前記ジェネレータに前記エンジンの始動を行わせることが好適である。
【0012】
また、本発明は、燃料の燃焼によりトルクを発生するエンジンと、前記エンジンとの間でトルクを作用し合うジェネレータと、前記ジェネレータが接続され、車両を電力駆動する車両駆動部との間で電力を授受し、当該車両駆動部との間で授受される電力を調整する電力調整部と、を備え、前記電力調整部は、前記ジェネレータが発生した交流電力を直流電力に変換し、その直流電力を前記車両駆動部に至る電力経路に出力する変換回路と、前記変換回路と前記車両駆動部との間の電力経路に伝送される直流伝送電圧を調整する電圧調整回路と、を備え、前記ジェネレータは、回転数対トルク特性におけるジェネレータ動作範囲であって、前記直流伝送電圧が一定であるという条件下で、前記ジェネレータの回転数の増加に対し前記ジェネレータに与えられるトルクが増加する、ジェネレータ動作範囲で動作し、前記エンジンは、回転数対トルク特性におけるエンジン動作範囲が、前記ジェネレータ動作範囲と重なるよう、回転数対トルク特性が設定されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る車両搭載用発電装置においては、発電電力目標値に対応する、前記ジェネレータに与えられるトルクおよび前記ジェネレータの回転数と、前記ジェネレータ動作範囲と前記エンジン動作範囲との重複範囲における、 前記エンジンおよび前記ジェネレータの各回転数対トルク特性と、前記重複範囲における前記エンジンの最適燃料消費率特性と、に基づいて、前記エンジンおよび前記ジェネレータの動作条件を決定し、当該動作条件に基づいて前記エンジンおよび前記ジェネレータを制御する制御部、
を備えることが好適である。
【0014】
また、本発明は、燃料の燃焼によりトルクを発生するエンジンと、前記エンジンとの間でトルクを作用し合うジェネレータと、前記ジェネレータが接続され、車両を電力駆動する車両駆動部との間で電力を授受し、当該車両駆動部との間で授受される電力を調整する電力調整部と、前記電力調整部を制御する制御部と、を備え、前記電力調整部は、前記ジェネレータが発生した交流電力を直流電力に変換し、その直流電力を前記車両駆動部に至る電力経路に出力する変換回路と、前記変換回路と前記車両駆動部との間の電力経路に伝送される直流伝送電圧を調整する電圧調整回路と、を備え、前記制御部は、前記直流伝送電圧を媒介変数とした、前記ジェネレータについての回転数対トルク特性に基づいて、前記ジェネレータの回転数検出値と、前記ジェネレータに与えられるトルクの目標値と、前記直流伝送電圧の目標値とを、を対応付ける対応付け手段と、前記対応付け手段による対応付け関係に基づいて前記直流伝送電圧の目標値を決定し、その目標値に基づいて前記電圧調整回路を制御する電圧調整回路制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る車両搭載用発電装置においては、前記エンジンの停止制御を行うための回転数目標値を決定する回転数目標値決定手段と、前記回転数検出値と、前記回転数目標値との差異に基づく比例積分演算に基づいて、前記ジェネレータに与えられるトルクの目標値を決定するトルク目標値決定手段と、を備え、前記電圧調整回路制御手段は、前記回転数検出値と、前記トルク目標値決定手段によって決定された目標値と、に基づいて、前記直流伝送電圧の目標値を決定することが好適である。
【0016】
また、本発明は、燃料の燃焼によりトルクを発生するエンジンと、前記エンジンとの間でトルクを作用し合うジェネレータと、前記ジェネレータが接続され、車両を電力駆動する車両駆動部との間で電力を授受し、当該車両駆動部との間で授受される電力を調整する電力調整部と、を備え、前記電力調整部は、前記ジェネレータが発生した交流電力を直流電力に変換し、その直流電力を前記車両駆動部に至る電力経路に出力する変換回路と、前記変換回路と前記車両駆動部との間の電力経路に伝送される直流伝送電圧を調整する電圧調整回路と、を備え、前記電圧調整回路は、前記ジェネレータが発電を行わないときは、前記電力調整部と前記車両駆動部との間で授受されるべき電力に基づいて前記直流伝送電圧を調整し、前記ジェネレータが発電を行うときは、前記ジェネレータが発電すべき電力に基づいて前記直流伝送電圧を調整することを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、燃料の燃焼によりトルクを発生するエンジンと、前記エンジンとの間でトルクを作用し合うジェネレータと、前記ジェネレータが接続され、車両を電力駆動する車両駆動部との間で電力を授受し、当該車両駆動部との間で授受される電力を調整する電力調整部と、を備え、前記電力調整部は、前記ジェネレータが発生した交流電力を直流電力に変換し、その直流電力を前記車両駆動部に至る電力経路に出力する変換回路と、前記変換回路と前記車両駆動部との間の電力経路に伝送される直流伝送電圧を調整する電圧調整回路と、を備え、前記電圧調整回路は、前記車両駆動部に至る電力経路に電圧を与える蓄電手段と、前記ジェネレータから前記変換回路を介して出力される電圧を昇圧し、昇圧された電圧を前記直流伝送電圧として、前記車両駆動部に至る電力経路および前記蓄電手段に与えるコンバータ回路と、を備え、 前記直流伝送電圧を当該昇圧動作に伴って調整することを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、燃料の燃焼によりトルクを発生するエンジンと、前記エンジンとの間でトルクを作用し合うジェネレータと、前記ジェネレータが接続され、車両を電力駆動する車両駆動部との間で電力を授受し、当該車両駆動部との間で授受される電力を調整する電力調整部と、を備え、前記電力調整部は、前記ジェネレータが発生した交流電力を直流電力に変換し、その直流電力を前記車両駆動部に至る電力経路に出力する変換回路と、前記変換回路と前記車両駆動部との間の電力経路に伝送される直流伝送電圧を調整する電圧調整回路と、を備え、前記電圧調整回路は、前記車両駆動部に至る電力経路に電圧を与える蓄電手段と、前記ジェネレータから前記変換回路を介して出力される電圧を降圧し、降圧された電圧を前記車両駆動部に至る電力経路および前記蓄電手段に与えるコンバータ回路と、を備え、前記ジェネレータから前記変換回路を介して出力される電圧を前記直流伝送電圧として、当該直流伝送電圧を当該降圧動作に伴って調整することを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る車両搭載用発電装置においては、前記ジェネレータの回転振動を抑制するための前記直流伝送電圧の目標値を、振動抑制目標値として決定する振動抑制目標値決定手段と、前記車両の走行状態および運転操作に応じた前記直流伝送電圧の目標値を、走行制御目標値として決定する走行制御目標値決定手段と、前記振動抑制目標値および走行制御目標値に基づいて、前記直流伝送電圧の目標値を振動抑制/走行制御目標値として決定する振動抑制/走行制御目標値決定手段と、を備え、前記コンバータ回路は、前記直流伝送電圧が、前記振動抑制/走行制御目標値に達するよう動作することが好適である。
【0020】
また、本発明に係る車両搭載用発電装置においては、前記振動抑制目標値決定手段は、前記直流伝送電圧を媒介変数とした、前記ジェネレータについての回転数対トルク特性に基づいて、前記ジェネレータの回転数検出値と、前記ジェネレータに与えられるトルクの目標値と、前記直流伝送電圧の目標値とを、を対応付ける対応付け手段と、前記ジェネレータの回転振動を抑制するための、前記ジェネレータに与えられるトルクの目標値を決定するトルク目標値決定手段と、を備え、前記ジェネレータの回転数検出値と、前記トルク目標値決定手段によって決定された目標値と、前記対応付け手段による対応付け関係と、に基づいて前記振動抑制目標値を決定することが好適である。
【0021】
また、本発明に係る車両搭載用発電装置においては、前記ジェネレータは、回転数対トルク特性におけるジェネレータ動作範囲であって、前記直流伝送電圧が一定であるという条件下で、前記ジェネレータの回転数の増加に対し前記ジェネレータに与えられるトルクが増加する、ジェネレータ動作範囲で動作し、前記エンジンは、回転数対トルク特性におけるエンジン動作範囲が、前記ジェネレータ動作範囲と重なるよう、回転数対トルク特性が設定され、前記走行制御目標値決定手段は、 前記車両の走行状態および運転操作に応じた発電電力目標値を決定する発電電力目標値決定手段を備え、前記発電電力目標値に対応する、前記ジェネレータに与えられるトルクおよび前記ジェネレータの回転数と、前記ジェネレータ動作範囲と前記エンジン動作範囲との重複範囲における、 前記エンジンおよび前記ジェネレータの各回転数対トルク特性と、前記重複範囲における前記エンジンの最適燃料消費率特性と、に基づいて、前記走行制御目標値を決定することが好適である。
【0022】
本発明において、前記直流伝送電圧は、ジェネレータの回転状態を制御する制御電圧としての意義を有する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、エンジンの駆動力によって発電を行う車両搭載用発電装置において、エンジンを制御する構成を簡単にすることができる。また、エンジンおよびジェネレータを走行状態に応じて適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施形態に係るシリーズハイブリッド車両駆動システムの構成を示す図である。
【図2】整流回路および昇降圧コンバータ回路の構成を示す図である。
【図3】エンジン出力・制御電圧テーブルの内容をグラフを以て示す図である。
【図4】第2実施形態に係るシリーズハイブリッド車両駆動システムの構成を示す図である。
【図5】インバータ回路および昇降圧コンバータ回路の構成を示す図である。
【図6】車両駆動回路の構成例を示す図である。
【図7】発電制御テーブルの構成を示す図である。
【図8】モータジェネレータの回転数対トルク特性の例を示す図である。
【図9】エンジンおよびモータジェネレータの各回転数対トルク特性とを重ねて示す図である。
【図10】制御電圧演算ユニットの構成を示す図である。
【図11】電圧決定テーブルの構成を示す図である。
【図12】電圧決定テーブルを作成するための回転数対トルク特性の例を示す図である。
【図13】エンジン停止回転制御を実行するための制御電圧演算ユニットの構成を示す図である。
【図14】エンジン停止回転制御を実行した場合の回転数の時間変化を示す図である。
【図15】第3実施形態に係るシリーズハイブリッド車両駆動システムの構成を示す図である。
【図16】第4実施形態に係るシリーズハイブリッド車両駆動システムの構成を示す図である。
【図17】第3実施形態に用いられるジェネレータの回転数対トルク特性の例を示す図である。
【図18】スイッチング制御ユニットの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に本発明の第1実施形態に係るシリーズハイブリッド車両駆動システムの構成を示す。このシリーズハイブリッド車両駆動システムは、走行用モータ30に電力を供給し、または走行用モータ30から発電電力を回収する車両駆動回路28を備える。また、エンジン16によってモータジェネレータ20を駆動して発電を行い、二次電池26の充放電制御を行うと共に、車両駆動回路28に対する電力供給および電力回収を行う発電ユニット10を備える。シリーズハイブリッド車両駆動システムは、さらに、車両の走行制御に応じて車両駆動回路28および発電ユニット10を制御する制御部12、ならびに、制御部12の制御に用いられる操作部32および記憶部34を備える。
【0026】
車両駆動回路28は、制御部12の制御に応じて、発電ユニット10から出力される直流電力を交流電力に変換し、その交流電力を走行用モータ30に出力する。また、車両駆動回路28は、制御部12の制御に応じて、走行用モータ30から出力される交流電力を直流電力に変換し、その直流電力を発電ユニット10に出力する。さらに、車両駆動回路28は、制御部12の制御に応じて、走行用モータ30と発電ユニット10との間で授受される電力の大きさを調整する。このような機能を有する回路として、車両駆動回路28は、直流電圧を昇圧または降圧する昇降圧コンバータ回路、交流直流変換を行うインバータ回路等を備えていてもよい。
【0027】
制御部12は、車両を加速するときは、発電ユニット10から走行用モータ30へと電力が供給されるよう発電ユニット10および車両駆動回路28を制御する。また、制御部12は、車両を回生制動するときは、走行用モータ30から発電ユニット10へと発電電力が供給されるよう、車両駆動回路28および発電ユニット10を制御する。この制御は、走行用モータ30の電力入出力端子の端子間電圧を調整することで行われる。
【0028】
発電ユニット10の構成およびその動作について説明する。二次電池26から車両駆動回路28に電力を供給することができるときは、エンジン16およびモータジェネレータ20は、車両の走行中に停止していてもよい。エンジン16およびモータジェネレータ20は、次のような制御によって、車両の走行開始時または車両の走行時に回転を開始する。
【0029】
スタータ14は、制御部12の制御に基づいてエンジン16のシャフトを回転させ、エンジン16の始動を行う。エンジン16の始動の際には、点火タイミング、排気バルブおよび吸気バルブの開閉タイミング等のエンジン16に対する制御が制御部12によって行われる。エンジン16は、その出力に応じて燃料供給管18から燃料を吸引する。ここで、エンジン16の出力とは、シャフトの単位時間当たりの回転数にトルクおよび所定の比例定数を乗じた値をいう。なお、スタータ14は、エンジン16を始動する前の段階において、ピストンの位置がエンジン16の始動に適した位置となるよう、エンジン16のシャフトを回転させ、その回転角を予め調整してもよい。
【0030】
エンジン16のシャフトは、モータジェネレータ20のシャフトに接続されている。これによって、エンジン16およびモータジェネレータ20はトルクを作用し合う。モータジェネレータ20は、エンジン16のトルクによって発電を行い、発電によって生じた交流電力を交流直流変換回路22に出力する。モータジェネレータ20は、単相交流電力を発生するものであっても、多相交流電力を発生するものであってもよい。ここでは、例として3相交流電力を発生するものを採り上げる。
【0031】
交流直流変換回路22は、モータジェネレータ20から出力された交流電力を直流電力に変換し、その直流電力を電圧調整回路24に出力する。交流直流変換回路22には、交流端子22u,22vおよび22wの端子間電圧と、直流端子22aおよび直流端子22bの端子間電圧との間に、一方が増加すれば他方も増加し、一方が減少すれば他方も減少する関係があるものを用いる。
【0032】
このような交流直流変換回路22を用いることで、電圧調整回路24の交流直流変換回路22側の調整出力端子24aおよび24bの端子間電圧の増減に応じて、交流直流変換回路22の交流端子22u,22vおよび22wの端子間電圧、すなわち、モータジェネレータ20の電力入出力端子20u,20vおよび20wの端子間電圧も増減し、モータジェネレータ20の発電電力も増減する。これによって、電圧調整回路24の調整出力端子24aおよび24bの端子間電圧の増減に応じて、モータジェネレータ20から交流直流変換回路22を介して電圧調整回路24に供給される発電電力が制御される。
【0033】
このような機能を有する交流直流変換回路22としては、図2に示すような整流回路36を用いてもよい。整流回路36は、スイッチング素子として6個のダイオード38を備える。
【0034】
整流回路36には、上下のダイオード38の組が、交流端子22u,22vおよび22wに対応して設けられる。上下のダイオード38の組においては、上側のダイオード38のアノード端子が下側のダイオード38のカソード端子に接続される。また、各組の上側のダイオード38のカソード端子は直流端子22aに接続され、各組の下側のダイオード38のアソード端子は直流端子22bに接続される。ダイオード38は、アノード端子の電位がカソード端子の電位よりも高くなるよう電圧が印加されたときに導通する。これによって、整流回路36は、3相交流電力を直流電力に変換する。すなわち、交流端子22u,22vおよび22wの端子間電圧が、直流端子22aおよび22bの端子間電圧を超える期間では、整流回路36は、各ダイオード38の整流作用により、交流端子22u,22vおよび22wに印加される3相交流電圧を直流電圧に変換し、直流端子22aおよび22bから出力する。
【0035】
本実施形態に係るシリーズハイブリッド車両駆動システムは、交流直流変換回路22および電圧調整回路24が、モータジェネレータ20と走行用モータ30との間で授受される電力を調整する電力調整部として機能する。これによって、モータジェネレータ20の発電電力、およびモータジェネレータ20からエンジン16に与えられる反作用トルクが調整され、エンジン16の出力が制御される。エンジン16に対するこのような制御は次のように行われる。
【0036】
電圧調整回路24は、制御部12の制御に基づいて二次電池26の出力電圧を昇圧し、交流直流変換回路22側の調整出力端子24aと調整出力端子24bとの間、および車両駆動回路28側の調整出力端子24cと調整出力端子24dとの間に制御電圧Vaを出力する。そして、制御部12の制御に基づいて制御電圧Vaを調整する。
【0037】
電圧調整回路24は、エンジン16の出力を増加させるときは、制御電圧Vaを増加させる。制御電圧Vaが増加することにより、モータジェネレータ20の電力入出力端子20u,20vおよび20wの端子間電圧が増加し、モータジェネレータ20のステータ巻線に流れる負荷電流が減少する。これによって、モータジェネレータ20のシャフトに作用する反作用電磁力が減少してエンジン16のシャフトに対する反作用トルクが減少し、エンジン16の出力は増加する。
【0038】
一方、電圧調整回路24は、エンジン16の出力を減少させるときは、制御電圧Vaを減少させる。制御電圧Vaが減少することにより、モータジェネレータ20の電力入出力端子20u,20vおよび20wの端子間電圧が減少し、モータジェネレータ20のステータ巻線に流れる負荷電流が増加する。これによって、モータジェネレータ20のシャフトに作用する反作用電磁力が増加してエンジン16のシャフトに対する反作用トルクが増加し、エンジン16の出力は減少する。
【0039】
本実施形態に係るシリーズハイブリッド車両駆動システムでは、電圧調整回路24によって制御電圧Vaを調整することにより、モータジェネレータ20の発電電力、すなわち負荷電力が制御され、エンジン16の出力が制御される。したがって、エンジン16の燃料供給管18にスロットルを設けなくとも、エンジン16の出力を制御することができる。
【0040】
制御電圧Vaの調整に基づくエンジン16の出力制御の具体例につき説明する。シリーズハイブリッド車両駆動システムは、イグニッションキー、アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトポジションレバー等を含む操作部32を備える。操作部32は、ユーザの操作に基づいて運転操作情報を制御部12に出力する。また、シリーズハイブリッド車両駆動システムは、車両の走行状態を示す走行情報を取得し、制御部12に与える図示しない手段を備える。走行情報は、例えば、車両の速度、走行用モータ30の回転数、車両駆動回路28内部の電圧、電流等の情報を含む。
【0041】
さらに、シリーズハイブリッド車両駆動システムは、エンジン16がモータジェネレータ20に対して出力すべきエンジン出力の目標値と、制御電圧Vaとを対応付けたエンジン出力・制御電圧テーブルを記憶する記憶部34を備える。図3にエンジン出力・制御電圧テーブルの内容をグラフを以て示す。横軸は制御電圧Vaを示し、縦軸はエンジン出力目標値を示す。
【0042】
制御部12は、運転操作情報および走行情報に基づいて、車両駆動回路28を制御すると共にエンジン出力目標値を決定する。そして、記憶部34に記憶されたエンジン出力・制御電圧テーブルを参照し、エンジン出力目標値に対応付けられた制御電圧Vaの値を求める。制御部12は、制御電圧Vaがエンジン出力・制御電圧テーブルに基づいて求められた値となるよう、電圧調整回路24を制御する。
【0043】
電圧調整回路24としては、図2に示すような昇降圧コンバータ回路40を用いてもよい。昇降圧コンバータ回路40は、スイッチング素子として2個のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を備える。スイッチング素子には、IGBTの他、サイリスタ、トライアック、一般的なバイポーラトランジスタ、電界効果トランジスタ等を用いてもよい。電圧調整回路24に接続される二次電池26には、リチウムイオン電池、ニッケルカドミウム電池等の他、キャパシタ等の他のエネルギー蓄電装置を用いてもよい。このキャパシタとしては、電気二重層キャパシタを用いることが好適である。
【0044】
上IGBT44のエミッタ端子は、下IGBT46のコレクタ端子に接続される。下IGBT46のエミッタ端子は、二次電池26の負極に接続される。上IGBT44のコレクタ端子とエミッタ端子との間には、エミッタ端子側がアノード端子となるようダイオード48が接続される。下IGBT46のコレクタ端子とエミッタ端子との間には、エミッタ端子側がアノード端子となるようダイオード48が接続される。
【0045】
上IGBT44のコレクタ端子と下IGBT46のエミッタ端子との間には出力コンデンサ50が接続される。上IGBT44のコレクタ端子は、調整出力端子24aおよび24cに接続され、下IGBT46のエミッタ端子は、二次電池26の負極に接続される。さらに、二次電池26の負極は、調整出力端子24bおよび24dに接続される。
【0046】
制御部12は、次のような原理に基づき、上IGBT44および下IGBT46のスイッチング制御を行い、電圧の昇降圧制御を行う。
【0047】
上IGBT44をオフにし、下IGBT46をオンにすると、インダクタ42を介して二次電池26の正極から下IGBT46のコレクタ端子に電流が流入する。この状態において下IGBT46をオフとするとインダクタ42に流れる電流が遮断され、インダクタ42に誘導起電力が発生する。
【0048】
二次電池26の出力電圧に誘導起電力を加えた電圧が、出力コンデンサ50の端子間電圧より大きい場合には、ダイオード48が導通する。これによって、出力コンデンサ50が充電される。したがって、二次電池26の出力電圧よりも大きい電圧によって出力コンデンサ50が充電され、出力コンデンサ50の端子間電圧が調整出力端子24aと調整出力端子24bとの間、および調整出力端子24cと調整出力端子24dとの間から出力される。
【0049】
二次電池26の出力電圧に誘導起電力を加えた電圧が、出力コンデンサ50の端子間電圧より小さい場合には、ダイオード48が遮断状態となる。このとき、上IGBT44をオンにすることにより、出力コンデンサ50から上IGBT44、インダクタ42を介して二次電池26の正極へと至る電流が流れる。これによって、出力コンデンサ50に蓄積されている電荷が放電され、調整出力端子24aと調整出力端子24bとの間の制御電圧Va、および調整出力端子24cと調整出力端子24dとの間の制御電圧Vaが低下すると共に、二次電池26が充電される。
【0050】
二次電池26の出力電圧に誘導起電力を加えた電圧が、出力コンデンサ50の端子間電圧と等しいときは、上IGBT44およびダイオード48のいずれにも電流は流れず、出力コンデンサ50の端子間電圧は維持され、調整出力端子24aと調整出力端子24bとの間の制御電圧Va、および調整出力端子24cと調整出力端子24dとの間の制御電圧Vaは一定に維持される。
【0051】
このような回路動作によれば、二次電池26の出力電圧にインダクタ42の誘導起電力を加えた電圧に近づくよう制御電圧Vaが調整される。インダクタ42の誘導起電力は、下IGBT46をオフにする直前においてインダクタ42に流れる電流の大きさに基づいて定まる。この電流は、下IGBT46をオンにする時間を長くすることで大きくなり、下IGBT46をオンにする時間を短くすることで小さくなる。また、上記のように、制御電圧Vaを調整するためには、下IGBT46のオフ時に上IGBT44をオンにする必要がある。そこで、制御部12は、上IGBT44と下IGBT46を交互にオンオフ制御することで制御電圧Vaを調整する。
【0052】
次に、車両駆動回路28による走行用モータ30の制御、および電圧調整回路24による二次電池26の充放電制御について説明する。車両駆動回路28は、制御電圧Vaが電圧調整回路24によって調整されるという条件の下、電圧調整回路24と走行用モータ30との間で授受される電力を制御する。すなわち、車両を加速する場合には、電圧調整回路24から走行用モータ30に電力を供給する。そして、車両を減速する場合には、走行用モータ30から電圧調整回路24に電力を供給する。
【0053】
電圧調整回路24は、車両駆動回路28に供給すべき電力がモータジェネレータ20の発電電力を超えるときは、二次電池26から車両駆動回路28に電力を供給する。また、車両駆動回路28に供給すべき電力がモータジェネレータ20の発電電力以下であるときは、モータジェネレータ20の発電電力のうち車両駆動回路28に供給されない電力を二次電池26に供給し、二次電池26を充電する。さらに、電圧調整回路24は、車両駆動回路28から走行用モータ30の発電電力が供給されているときは、その電力を二次電池26に供給し、二次電池26を充電する。
【0054】
上述のように、第1実施形態に係るシリーズハイブリッド車両駆動システムでは、スタータ14によってエンジン16を始動する。ここで、モータジェネレータ20に対する電力供給回路を設けることにより、モータジェネレータ20をエンジン16の駆動手段として用いることができ、モータジェネレータ20にスタータ14と同様の機能を持たせることができる。そこで、次に説明する第2実施形態では、交流直流変換回路22として電圧調整回路24からモータジェネレータ20へと電力をすることができるものを用いる。そして、第1実施形態に係るシリーズハイブリッド車両駆動システムで用いられていたスタータ14を省略し、エンジン16の始動をモータジェネレータ20によって行う。
【0055】
第2実施形態に係るシリーズハイブリッド車両駆動システムについて図4を参照して説明する。図1のシリーズハイブリッド車両駆動システムの構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0056】
交流直流変換回路22としては、図5に示すようなインバータ回路52を用いてもよい。上述の整流回路36は、交流電力から直流電力への変換を行う変換回路である。これに対し、インバータ回路52は、直流電力から交流電力への変換および交流電力から直流電力への変換を行う双方向変換回路である。インバータ回路52は、スイッチング素子として6個のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を備える。スイッチング素子には、IGBTの他、サイリスタ、トライアック、一般的なバイポーラトランジスタ、電界効果トランジスタ等を用いてもよい。
【0057】
上IGBT54のエミッタ端子は、下IGBT56のコレクタ端子に接続される。上IGBT54のコレクタ端子は直流端子22aに接続され、下IGBT56のエミッタ端子は直流端子22bに接続される。上IGBT54と下IGBT56との接続点には、交流端子22uが接続される。
【0058】
また、インバータ回路52は、交流端子22vに対応する上IGBT58および下IGBT60を備える。インバータ回路52は、さらに、交流端子22wに対応する上IGBT62および下IGBT64を備える。組をなす上下のIGBTは、上IGBT54および下IGBT56と同様に、直流端子22aおよび22b、ならびに交流端子22vおよび22wに接続される。すなわち、上IGBTのエミッタ端子は、それと組をなす下IGBTのコレクタ端子に接続される。上IGBTのコレクタ端子は直流端子22aに接続され、下IGBTのエミッタ端子は、直流端子22bに接続される。組をなす上下のIGBTの接続点には、IGBTの組に対応する交流端子が接続される。各IGBTのコレクタ端子とエミッタ端子との間には、エミッタ端子側をアノード端子として、ダイオード66が接続される。
【0059】
各IGBTは、ゲート端子に与えられる信号に基づき、制御部12によってオンオフ制御される。総てのIGBTがオフであるとき、インバータ回路52は、3相交流電力を直流電力に変換する整流回路として機能する。すなわち、交流端子22u,22vおよび22wの端子間電圧が、直流端子22aおよび22bの端子間電圧を超える期間では、インバータ回路52は、各ダイオード66の整流作用により、交流端子22u、22vおよび22wに印加される3相交流電圧を直流電圧に変換し、直流端子22aおよび22bから出力する。
【0060】
また、インバータ回路52は、各IGBTを所定のタイミングでオンオフ制御することにより、直流端子22aおよび22bに印加された直流電圧を3相交流電圧に変換し、交流端子22u、22vおよび22wに出力する。
【0061】
第2実施形態に係るシリーズハイブリッド車両駆動システムの動作について説明する。初期状態として、エンジン16およびモータジェネレータ20は停止しているものする。このとき、交流直流変換回路22が備えるIGBTはオフとなっている。
【0062】
交流直流変換回路22は、IGBTのスイッチング制御により、電圧調整回路24から出力された制御電圧Vaを3相交流電圧に変換し、モータジェネレータ20に出力する。これによって、モータジェネレータ20はエンジン16のシャフトにトルクを与える。エンジン16は、モータジェネレータ20から与えられたトルクによって始動する。エンジン16が始動した後の発電ユニット10の動作は、第1実施形態と同様である。
【0063】
このような構成によれば、発電ユニット10にエンジン16を始動するためのスタータを設けなくともよい。これによって、シリーズハイブリッド車両駆動システムの構成が簡略化される。
【0064】
本実施形態では、モータジェネレータ20によってエンジン16を始動するのに必要な電力が、モータジェネレータ20から電力調整回路24へと供給される発電電力の最大値よりも小さい場合が多い。この場合、インバータ回路52を非対称インバータ回路としてもよい。非対称インバータ回路とは、各IGBTの許容電流値をダイオード66の許容電流値よりも小さくしたものである。
【0065】
なお、第1および第2の実施形態においては、エンジン16の燃料供給管18にスロットルを用いない構成とした。しかし、エンジン16が吸入する燃料の流量を制限するために、弁の開き具合を2段階または3段階で調整可能とした簡易なスロットルを燃料供給管18に設けてもよい。あるいは、エンジン16を燃料消費率が最適となる状態で運転するために、スロットルを残してもよい。また、第1および第2実施形態に係る発電ユニット10は、電気自動車の電力供給装置に付加的に搭載され、走行用モータ30に補助的に電力を供給する、いわゆるEVレンジエクステンダとして用いてもよい。
【0066】
また、第1および第2の実施形態においては、電圧調整回路24として、調整出力端子24aと調整出力端子24bとの間、および調整出力端子24cと調整出力端子24dとの間に同一値の制御電圧Vaを出力するものについて説明した。電圧調整回路24としては、調整出力端子24aと調整出力端子24bとの間、および調整出力端子24cと調整出力端子24dとの間に互いに異なる値の電圧を出力するものを用いてもよい。
【0067】
なお、図1および図4のシリーズハイブリッド車両駆動システムにおける車両駆動回路28には、図5のインバータ回路52と同様の回路を用いてもよい。その場合の回路構成を電圧調整回路24および走行用モータ30と共に図6に示す。図1および図4に示す構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。インバータ回路68は、スイッチング素子として6個のIGBTを備える。スイッチング素子には、IGBTの他、サイリスタ、トライアック、一般的なバイポーラトランジスタ、電界効果トランジスタ等を用いてもよい。後述の実施形態において用いられるIGBTについても同様である。
【0068】
インバータ回路68は、走行用モータ30のU相電力伝送線に対応する上IGBT70および下IGBT72、走行用モータ30のV相電力伝送線に対応する上IGBT74および下IGBT76、さらに、走行用モータ30のW相電力伝送線に対応する上IGBT78および下IGBT80を備える。組をなす上下のIGBTにおける上IGBTのエミッタ端子は、それと組をなす下IGBTのコレクタ端子に接続される。各組の上IGBTのコレクタ端子は調整出力端子24cに接続され、各組の下IGBTのエミッタ端子は、調整出力端子24dに接続される。組をなす上下のIGBTの接続点には、IGBTの組に対応する相の電力伝送線が接続される。各IGBTのコレクタ端子とエミッタ端子との間には、エミッタ端子側をアノード端子としてダイオード66が接続される。
【0069】
各IGBTは、ゲート端子に与えられる信号に基づき、制御部12によってオンオフ制御される。総てのIGBTがオフであるとき、インバータ回路68は、3相交流電力を直流電力に変換する整流回路として機能する。すなわち、インバータ回路68は、走行用モータ30の交流発電電圧を直流電圧に整流し、電圧調整回路24に出力する。また、インバータ回路68は、各IGBTを所定のタイミングでオンオフ制御することにより、調整出力端子24cと24dとの間の直流電圧を3相交流電圧に変換し走行用モータ30に出力する。
【0070】
また、図1および図4のシリーズハイブリッド車両駆動システムは、EVモードまたはHVモードのいずれかが選択され、選択されたモードによって車両の駆動が行われる構成としてもよい。ここで、EVモードとは、モータジェネレータ20による発電を行わず、専ら二次電池26の電力によって車両を駆動する走行モードをいう。また、HVモードとは、モータジェネレータ20の発電電力および二次電池26の電力の両者によって車両を駆動するモードをいう。モードの選択は、二次電池26の充電電荷量の検出結果に応じて制御部12が行ってもよい。また、二次電池26の充電電荷量が十分であるという条件の下、ユーザによる操作部32の操作を通じて、制御部12の動作をEVモードまたはHVモードのいずれかに設定する構成としてもよい。
【0071】
EVモードおよびHVモードのいずれのモードにおいても、車両駆動回路28は、制御部12の制御に基づいて、電圧調整回路24と走行用モータ30との間で授受される電力を制御する。ただし、制御電圧Vaの目標値を設定する処理はEVモードとHVモードとで異なる。
【0072】
まず、EVモードの場合について説明する。制御部12は、車両を加速するときは、電圧調整回路24から走行用モータ30に電力を供給することが可能となるよう、制御電圧Vaの目標値を加速制御電圧値として決定する。そして、制御電圧Vaが加速制御電圧値となるよう電圧調整回路24を制御する。制御部12は、電圧調整回路24から走行用モータ30に電力が供給されるよう車両駆動回路28を制御する。
【0073】
制御部12は、車両を回生制動するときは、走行用モータ30から電圧調整回路24に電力を供給することが可能となるよう、制御電圧Vaの目標値を回生制御電圧値として決定する。そして、制御電圧Vaが回生制御電圧値となるよう電圧調整回路24を制御する。制御部12は、走行用モータ30から電圧調整回路24に電力が供給されるよう車両駆動回路28を制御する。このように、EVモードにおいては、制御電圧Vaの目標値は、電圧調整回路24と走行用モータ30との間で授受される電力に応じて決定される。なお、車両駆動回路28が、電圧の昇降圧機能を有している場合には、制御電圧Vaの目標値を一定としてもよい。
【0074】
一方、HVモードにおいては、制御電圧Vaの目標値については、先に目標下限値が設定され、この目標下限値を下回らないという条件の下、モータジェネレータ20の発電制御に応じて制御電圧Vaの目標値が決定される。この目標下限値は、電圧調整回路24と走行用モータ30との間で電力が授受されるための最小の値として定められる。目標下限値は、走行状態、操作部32から出力された運転操作情報等に応じて決定してもよい。例えば、走行用モータ30が発生すべきトルクが大きい程、目標下限値は大きい値に設定される。
【0075】
制御部12は、車両の走行状態、二次電池26の充電電荷量の検出値、操作部32から出力された運転操作情報等に基づいて、モータジェネレータ20の発電電力目標値を決定する。制御部12は、発電電力目標値に基づいて制御電圧Vaの目標値を決定する。そして、決定された目標値が目標下限値以上であるときは、制御電圧Vaがその目標値となるよう、電圧調整回路24を制御する。他方、制御部12は、決定された目標値が下限値未満であるときは、制御電圧Vaが目標下限値となるよう、電圧調整回路24を制御する。
【0076】
このような制御によれば、HVモードにおいては、走行用モータ30の制御に影響を与えないという条件の下で、モータジェネレータ20の制御を優先して制御電圧Vaの目標値が決定される。これによって、エンジン16、モータジェネレータ20および走行用モータ30のそれぞれの制御に適した制御電圧Vaの目標値を容易に決定することができる。
【0077】
次に、図1および図4に示されたシリーズハイブリッド車両駆動システムにおいて用いられる発電制御について説明する。この発電制御においては、記憶部34に記憶された図7に示すような発電制御テーブルが用いられる。発電制御テーブルは、発電電力目標値に対し、エンジン16からモータジェネレータ20に与えられるトルク、モータジェネレータ20の回転数、エンジン16のスロットル開度、ジェネレータ制御電圧(制御電圧Va)の各目標値を対応付けたものである。なお、ジェネレータ制御電圧は、上述の制御電圧Vaと同一の電圧を指す。
【0078】
発電制御テーブルは、後述のように、エンジン16およびモータジェネレータ20が、それぞれの回転数対トルク特性が所定の条件を満足するよう構成されていることを前提とした上で、エンジン16の燃料消費率が最適化されるよう作成されている。
【0079】
制御部12は、車両の走行状態、および操作部32から出力された運転操作情報に基づいて、モータジェネレータ20に対する発電電力目標値を求める。そして、発電制御テーブルを参照することで、その発電電力目標値に対応するトルク、回転数、スロットル開度およびジェネレータ制御電圧の各目標値を取得する。制御部12は、エンジン16からモータジェネレータ20に与えられるトルク、モータジェネレータ20の回転数、エンジン16のスロットルの開度、およびジェネレータ制御電圧が、各目標値に達するよう、電圧調整回路24およびエンジン16のスロットルを制御する。
【0080】
エンジン16およびモータジェネレータ20のそれぞれの回転数対トルク特性に基づき発電制御テーブルを作成する手法について説明する。図8(a)にモータジェネレータ20の回転数対トルク特性の例を示す。横軸は回転数を示し、縦軸はエンジン16から与えられるトルクを示す。この図には、ジェネレータ制御電圧をVa1〜Va10で一定にした場合のそれぞれにつき、回転数とトルクとの関係が示されている。すなわち、ジェネレータ制御電圧は媒介変数である。ジェネレータ制御電圧Va1〜Va10には、Va1<Va2<・・・<Va10の関係がある。
【0081】
ジェネレータ制御電圧が一定であるという条件の下では、エンジン16からモータジェネレータ20に与えられるトルクには上限が生じる。すなわち、回転数を増加させる場合、回転数の増加と共にトルクは増加し、トルクが上限に達した後は、回転数の増加と共にトルクが減少する。本実施形態においては、回転数の増加と共にトルクが増加する範囲でモータジェネレータ20を動作させる。モータジェネレータ20については、図8(a)の破線で示されるように、車両の走行時においてトルクおよび回転数が取り得る範囲としてジェネレータ動作範囲Gが定められている。ただし、図8(a)の破線で示された範囲において、回転数の増加と共にトルクが減少する特性曲線上の値は、発電制御において用いられない。
【0082】
また、図8(b)にエンジン16の回転数対トルク特性を示す。この図は、スロットル開度を媒介変数として、回転数とトルクとの一般的な関係を示したものである。スロットル開度をT1〜T9で一定にした場合のそれぞれにつき、回転数とトルクとの関係が破線を以て示されている。ただし、T1<T2<・・・<T9の関係がある。図8(b)の実線Optで示された曲線は、エンジン16の燃料消費率が最小となることを示す最適燃費線である。エンジン16については、図8(b)の一点鎖線で示されるように、車両の走行時においてトルクおよび回転数が取り得る範囲としてエンジン動作範囲Eが定められている。
【0083】
本実施形態においては、エンジン16およびモータジェネレータ20は、エンジン動作範囲Eおよびジェネレータ動作範囲Gが重なるよう構成されている。この場合において、エンジン16およびモータジェネレータ20の各回転数対トルク特性を重ねたものを図9に示す。図7の発電制御テーブルは、エンジン動作範囲Eおよびジェネレータ動作範囲Gが重ねられた回転数対トルク特性に基づき、次のようにして作成される。
【0084】
発電制御テーブルおける回転数およびトルクの各目標値は、図9に示す回転数対トルク特性において、T=P/(N×π/30)(Pは一定値)で表される反比例曲線と最適燃費線Optとの交点の座標として定められている。ここで、Tはトルク、Pは発電電力目標値、Nは回転数である。すなわち、T=P/(N×π/30)で表される反比例曲線と最適燃費線との交点の座標は、その発電電力目標値Pに対応する回転数およびトルクの各目標値を示す。また、発電制御テーブルおけるスロットル開度およびジェネレータ制御電圧の各目標値は、このようにして求められた交点座標における媒介変数の値から求められる。
【0085】
発電制御テーブルを用いた制御によれば、発電電力目標値を与えることで、エンジン16の燃料消費率を最小にすることが可能なトルク、回転数、スロットル開度およびジェネレータ制御電圧の各目標値が取得され、各目標値を用いてエンジン16の燃料消費率を最小にする制御を実行することができる。
【0086】
なお、上記では、エンジン16の回転数とモータジェネレータ20の回転数とが同一であるものとしてエンジン動作範囲Eおよびジェネレータ動作範囲Gを重ねた例を示した。エンジン16とモータジェネレータ20との間に、所定の回転比率を以てトルクを伝達するトルク伝達機構が備えられている場合には、いずれか一方の動作範囲における回転数を、その回転比率によって他方の回転数に換算した上で、他方の動作範囲に重ねることとすればよい。
【0087】
次に、図1および図4に示されたシリーズハイブリッド車両駆動システムにおいて用いられる回転状態制御について説明する。この回転状態制御では、制御部12の内部に構成された図10に示す制御電圧演算ユニット82が用いられる。制御電圧演算ユニット82は、モータジェネレータ20の回転数の検出値Ngと、モータジェネレータ20の回転数の目標値N*との差異に対する比例積分演算によってトルク目標値Tpを求める。そして、モータジェネレータ20のトルク目標値Tpと回転数検出値Ngとに基づいてジェネレータ制御電圧の目標値V*を求める。制御部12は、ジェネレータ制御電圧が目標値V*に達するよう電圧調整回路24を制御する。
【0088】
制御電圧演算ユニット82は、加算器84、比例積分器86、およびテーブル参照部88を備える。加算器84は、モータジェネレータ20の回転数検出値Ngの極性を反転した値と、モータジェネレータ20の回転数目標値N*とを加算し、これらの値の差異を指令値eとして求め、比例積分器86に出力する。比例積分器86は、指令値eに対する比例積分演算に基づいてトルク目標値Tpを求める。テーブル参照部88は、記憶部34に記憶されている電圧決定テーブルを参照し、モータジェネレータ20のトルク回転数検出値Ngおよびトルク目標値N*に対応するジェネレータ制御電圧の目標値を制御電圧目標値V*として取得し、その制御電圧目標値V*を出力する。
【0089】
図11に電圧決定テーブルを示す。電圧決定テーブルは、回転数検出値およびトルク目標値に対し制御電圧目標値を対応付けたものである。電圧決定テーブルは、モータジェネレータ20の回転数対トルク特性に基づいて作成されている。すなわち、図12に示す回転数対トルク特性におけるジェネレータ動作範囲においては、1つの回転数検出値および1つのトルク目標値に対し、1つの制御電圧目標値が決定される。例えば、回転数対トルク特性において回転数検出値を示す直線A、およびトルク目標値を示す直線Bを引いた場合、これらの直線の交点を通る回転数対トルク特性曲線に対応するジェネレータ制御電圧が、その回転数検出値およびトルク目標値に対する制御電圧目標値となる。図12の例では、制御電圧目標値はVa5である。このように、電圧決定テーブルは、回転数対トルク特性に基づいて制御電圧目標値を求めることで作成されている。
【0090】
制御電圧演算ユニット82による回転状態制御によれば、モータジェネレータ20について固有の回転数対トルク特性に応じて、モータジェネレータ20の回転状態を制御することができる。
【0091】
ここで説明した回転状態制御はエンジン停止回転制御に用いてもよい。図13にエンジン停止回転制御を実行するための制御電圧演算ユニット90の構成を示す。図10に示す構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。この制御電圧演算ユニット90は、図10の制御電圧演算ユニット82に対し、モータジェネレータ20の回転数目標値を決定する回転数目標値決定部92を設けたものである。回転数目標値決定部92は、エンジン停止回転制御が開始された時以後の経過時間に応じて値が変化する回転数目標値N*を出力する。制御電圧演算ユニット90は、回転数検出値Ngと回転数目標値N*との差異に対する比例積分演算によってトルク目標値Tpを求め、そのトルク目標値Tpと回転数検出値Ngとに基づいて制御電圧目標値V*を求める。制御部12は、ジェネレータ制御電圧が制御電圧目標値V*に達するよう電圧調整回路24を制御する。
【0092】
図14に、エンジン停止回転制御を実行した場合の回転数の時間変化を実線で示し、エンジン停止回転制御を実行しない場合の回転数の時間変化を破線で示す。横軸はエンジン停止回転制御が開始された時を基準とした時間を示し、縦軸は回転数を示す。エンジン停止回転制御を実行しない場合、エンジンシャフトにクランク振動が生じて回転数が変動する。このクランク振動は乗り心地に影響を及ぼすことがある。そこで、エンジン停止回転制御を実行することで、回転数の変動を抑制し乗り心地をより良好にすることができる。また、エンジン停止回転制御が開始されてからエンジンシャフトが停止するまでの時間を短縮することができる。
【0093】
図15に第3実施形態に係るシリーズハイブリッド車両駆動システムの構成を示す。図1、図2、図4および図6に示される構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。ここで、上述のモータジェネレータ20に対応するジェネレータ94は、回転子94r、3相のジェネレータ界磁巻線94u、94vおよび94wを以て表し、走行用モータ30は、回転子30r、3相のモータ界磁巻線30u、30vおよび30wを以て表す。
【0094】
交流直流変換回路としては、図2に示される回路と同様の整流回路36が用いられる。電圧調整回路としては、昇圧片方向コンバータ回路96が用いられる。また、車両駆動回路としては、図6に示される回路と同様のインバータ回路68が用いられる。
【0095】
ジェネレータ界磁巻線94u、94vおよび94wは、中性点において一端が共通に接続される。ジェネレータ界磁巻線94u、94vおよび94wのそれぞれの他端は、整流回路36における、各相に対応する上下のダイオード38の組の接続点に接続される。モータ界磁巻線30u、30vおよび30wは、中性点において一端が共通に接続される。モータ界磁巻線30u、30vおよび30wのそれぞれの他端は、インバータ回路68における、各相に対応する上下のIGBTの組の接続点に接続される。
【0096】
昇圧片方向コンバータ回路96は、IGBT98、ダイオード100、出力コンデンサ102、および二次電池26を備える。IGBT98のコレクタ端子は、整流回路36の上側の各ダイオード38のカソード端子に接続され、エミッタ端子は、整流回路36の下側の各ダイオード38のアノード端子に接続される。ダイオード100のアノード端子は、IGBT98のコレクタ端子に接続され、カソード端子は出力コンデンサ102の一端に接続される。出力コンデンサ102の他端は、IGBT98のエミッタ端子に接続される。二次電池26の正極は、ダイオード100のカソード端子に接続され、負極はIGBT98のエミッタ端子に接続される。
【0097】
ジェネレータ94は、各ジェネレータ巻線に発生する発電電圧が二次電池26の出力電圧よりも小さくなるよう動作する。IGBT98は、制御部12によってスイッチング制御される。IGBT98がオンであるときは、ジェネレータ界磁巻線に発生した発電電圧に基づいて、ジェネレータ界磁巻線から整流回路36を介してIGBT98に電流が流れる。また、IGBT98には、コレクタ端子からエミッタ端子に向かう方向に電流が流れる。このときIGBT98がオフになることにより、ジェネレータ界磁巻線に発生した誘導起電力が発電電圧に加わり、この電圧がIGBT98のコレクタ端子とエミッタ端子との間に現れる。これによって、出力コンデンサ102、二次電池26、およびインバータ回路68には、発電電圧に誘導起電力が加えられた電圧がダイオード100を介して印加される。
【0098】
このような構成によれば、IGBT98のスイッチングタイミングを調整することで、IGBT98のコレクタ端子とエミッタ端子との間の電圧がジェネレータ制御電圧Vaとして制御される。これによって、エンジン16およびジェネレータ94の制御を行うことができる。また、インバータ回路68には、二次電池26によって電圧が印加されているため、ジェネレータ制御電圧Vaが変動した場合であっても、インバータ回路68に印加される電圧の変動は小さい。これによって、インバータ回路68に印加される電圧からジェネレータ制御電圧Vaを独立させて制御することができ、エンジン16およびジェネレータ94の制御を容易に行うことができる。
【0099】
図16に第4実施形態に係るシリーズハイブリッド車両駆動システムの構成を示す。図15に示される構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0100】
本実施形態は、第3実施形態における昇圧片方向コンバータ回路96を降圧片方向コンバータ回路104に置き換えたものである。降圧片方向コンバータ回路104は、高圧側コンデンサ106、IGBT108、ダイオード110、降圧インダクタ112、低圧側コンデンサ114および二次電池26を備える。高圧側コンデンサ106は、整流回路36の上側の各ダイオード38のカソード端子と、整流回路36の下側の各ダイオード38のアノード端子との間に接続される。IGBT108のコレクタ端子は、整流回路36の上側の各ダイオード38のカソード端子に接続され、エミッタ端子は、ダイオード110のカソード端子に接続される。また、ダイオード110のアノード端子は、整流回路36の下側の各ダイオード38のアノード端子に接続される。降圧インダクタ112の一端は、IGBT108とダイオード110との接続点に接続され、その他端は二次電池26の正極に接続される。二次電池26の負極は、ダイオード110のアノード端子に接続される。低圧側コンデンサ114は、二次電池26の正極と負極との間に接続される。
【0101】
ジェネレータ94は、各ジェネレータ巻線に発生する発電電圧が二次電池26の出力電圧よりも大きくなるよう動作する。IGBT108は、制御部12によってスイッチング制御される。IGBT108がオンであるときには、ジェネレータ界磁巻線から整流回路36、およびIGBT108を介して降圧インダクタ112に電流が流れる。このときIGBT108がオフとなることにより、降圧インダクタ112に誘導起電力が現れる。これによって、二次電池26、低圧側コンデンサ114、およびインバータ回路68に、ダイオード110を介して降圧インダクタ112の誘導起電力が印加される。他方、IGBT108がオフになることにより、高圧側コンデンサ106の端子間には、ジェネレータ界磁巻線の誘導起電力および発電電圧がインバータ制御電圧Vaとして印加される。
【0102】
このような構成によれば、IGBT108のスイッチングタイミングを調整することで、高圧側コンデンサ106の端子間電圧がジェネレータ制御電圧Vaとして制御される。これによって、エンジン16およびジェネレータ94の制御を行うことができる。また、インバータ回路68には、二次電池26によって電圧が印加されているため、ジェネレータ制御電圧Vaが変動した場合であっても、インバータ回路68に印加される電圧Vaの変動は小さい。これによって、インバータ回路68に印加される電圧からジェネレータ制御電圧を独立させて制御することができ、エンジン16およびジェネレータ94の制御を容易に行うことができる。
【0103】
第3および第4実施形態に用いられるジェネレータ94の相違について説明する。上述のように第3実施形態におけるジェネレータ94は、各ジェネレータ巻線に発生する発電電圧が二次電池26の出力電圧よりも小さくなるよう動作し、第4実施形態におけるジェネレータ94は、各ジェネレータ巻線に発生する発電電圧が二次電池26の出力電圧よりも大きくなるよう動作する。したがって、第3実施形態と第4実施形態とでは回転数対トルク特性が異なるジェネレータ94が用いられる。
【0104】
図17(a)に第3実施形態に用いられるジェネレータ94の回転数対トルク特性を例示する。VaA、VaBおよびVaCは、媒介変数としてのジェネレータ制御電圧であり、VaA<VaB<VaC<VBattの関係がある。ここで、VBattは二次電池26の電圧である。また、図17(b)に第4実施形態に用いられるジェネレータ94の回転数対トルク特性を例示する。
【0105】
次に、第3および第4実施形態に用いられるジェネレータ制振制御について説明する。この制御では、ジェネレータ94の回転振動を抑制する。ジェネレータ振動はエンジン本体の振動に起因していることがあり、ジェネレータ振動を抑制することでエンジン本体の振動が抑制され、乗り心地が向上することが多い。図18にジェネレータ制振制御を実行するスイッチング制御ユニット116の構成を示す。図15に示す構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。スイッチング制御ユニット116は、トルク目標値決定部118、発電制御テーブル参照部120、加算器122、電力目標値決定部124、電圧決定テーブル参照部126、キャリア信号生成器128およびPWM変調器130を備え、制御部12の内部に構成される。なお、ここでは、第3実施形態の回路構成を示しているが、本制御は第4実施形態の回路構成に対しても用いることができる。また、エンジン16およびジェネレータ94は、回転数対トルク特性におけるエンジン動作範囲、およびジェネレータ動作範囲が重なるよう構成されているものとする。
【0106】
トルク目標値決定部118は、ジェネレータ94の回転数検出値Ngに基づいて、回転子94rの回転振動を抑制するためのトルク目標値Tsを求める。この演算は、回転数検出値を用いる周知の制御技術によって行われる。電圧決定テーブル参照部126は、トルク目標値決定部118によって求められたトルク目標値Ts、およびジェネレータ94の回転数検出値Ngを取得する。そして、記憶部34に記憶された図11に示す電圧決定テーブルを参照することによって制御電圧目標値を取得し、この制御電圧目標値を振動抑制目標値Vs*として加算器122に出力する。
【0107】
他方、電力目標値決定部124は、走行状態、および運転操作情報に基づいて、ジェネレータ94の発電電力目標値P*を求める。発電制御テーブル参照部120は、電力目標値決定部124によって求められた発電電力目標値P*を取得する。そして、記憶部34に記憶された図7に示す発電制御テーブルを参照することによって制御電圧目標値を取得し、この制御電圧目標値を走行制御目標値Vp*として加算器122に出力する。加算器122は、振動抑制目標値Vs*および走行制御目標値Vp*を加算した値を、振動抑制/走行目標値Vsp*としてPWM変調器130に出力する。
【0108】
キャリア信号生成器128からは、三角波形、のこぎり波形等の時間波形を有するキャリア信号が出力される。PWM変調器130は、キャリア信号および振動抑制/走行目標値Vsp*とに基づいてPWM変調信号を生成する。このPWM変調信号は、キャリア信号の1周期のうち、キャリア信号の値が振動抑制/走行目標値Vsp*以上となる時間長に応じてデューティ比が定まる矩形波信号である。PWM変調器130は、PWM変調信号が示すデューティ比でIGBT108をオンオフ制御する。これによって、昇圧片方向コンバータ回路96は、ジェネレータ制御電圧Vaが振動抑制/走行目標値Vsp*に達するよう制御される。
【0109】
ジェネレータ制振制御によれば、回転子94rの回転振動を抑制するためのトルク目標値が求められ、このトルク目標値に基づいてジェネレータ制御電圧が制御される。これによって、車両の乗り心地を向上させることができる。
【符号の説明】
【0110】
10 発電ユニット、12 制御部、14 スタータ、16 エンジン、18 燃料供給管、20 モータジェネレータ、20u,20v,20w 電力入出力端子、22 交流直流変換回路、22a,22b 直流端子、22u,22v,22w 交流端子、24 電圧調整回路、24a,24b,24c,24d 調整出力端子、26 二次電池、28 車両駆動回路、30 走行用モータ、32 操作部、34 記憶部、36 整流回路、38,48,66 ダイオード、40 昇降圧コンバータ回路、42 インダクタ、44,54,58,62 上IGBT、46,56,60,64 下IGBT、50 出力コンデンサ、52,68 インバータ回路、70,74,78 上IGBT、72,76,80 下IGBT、82,90 制御電圧演算ユニット、84,122 加算器、86 比例積分器、88 テーブル参照部、92 回転数目標値決定部、94 ジェネレータ、94r,30r 回転子、94u,94v,94w ジェネレータ界磁巻線、30u,30v,30w モータ界磁巻線、96 昇圧片方向コンバータ回路、98,108 IGBT、100,110 ダイオード、102 出力コンデンサ、104 降圧片方向コンバータ回路、106 高圧側コンデンサ、112 降圧インダクタ、114 低圧側コンデンサ、116 スイッチング制御ユニット、118 トルク目標値決定部、120 発電制御テーブル参照部、124 電力目標値決定部、126 電圧決定テーブル参照部、128 キャリア信号生成器、130 PWM変調器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料の燃焼によりトルクを発生するエンジンと、
前記エンジンとの間でトルクを作用し合うジェネレータと、
前記ジェネレータが接続され、車両を電力駆動する車両駆動部との間で電力を授受し、当該車両駆動部との間で授受される電力を調整する電力調整部と、
前記車両の制御状態に応じて前記エンジンの目標駆動状態を決定する目標駆動状態決定部と、
を備え、
前記電力調整部は、
前記ジェネレータが発生した交流電力を直流電力に変換し、その直流電力を前記車両駆動部に至る電力経路に出力する変換回路と、
前記変換回路と前記車両駆動部との間の電力経路に伝送される直流伝送電圧を調整する電圧調整回路と、
を備え、
前記電圧調整回路は、
前記目標駆動状態に応じて前記直流伝送電圧を調整することを特徴とする車両搭載用発電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両搭載用発電装置において、
前記電圧調整回路は、
繰り返して充放電が可能な蓄電手段と、
前記直流伝送電圧と前記蓄電手段の出力電圧との間の電圧変換を行う昇降圧コンバータ回路と、
を備えることを特徴とする車両搭載用発電装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両搭載用発電装置において、
直流電力を交流電力に変換する逆方向変換回路を備え、
前記逆方向変換回路は、
前記直流伝送電圧に基づく直流電力を交流電力に変換し、その交流電力を前記ジェネレータに至る電力経路に出力し、前記ジェネレータに前記エンジンの始動を行わせることを特徴とする車両搭載用発電装置。
【請求項4】
燃料の燃焼によりトルクを発生するエンジンと、
前記エンジンとの間でトルクを作用し合うジェネレータと、
前記ジェネレータが接続され、車両を電力駆動する車両駆動部との間で電力を授受し、当該車両駆動部との間で授受される電力を調整する電力調整部と、
を備え、
前記電力調整部は、
前記ジェネレータが発生した交流電力を直流電力に変換し、その直流電力を前記車両駆動部に至る電力経路に出力する変換回路と、
前記変換回路と前記車両駆動部との間の電力経路に伝送される直流伝送電圧を調整する電圧調整回路と、
を備え、
前記ジェネレータは、
回転数対トルク特性におけるジェネレータ動作範囲であって、前記直流伝送電圧が一定であるという条件下で、前記ジェネレータの回転数の増加に対し前記ジェネレータに与えられるトルクが増加する、ジェネレータ動作範囲で動作し、
前記エンジンは、
回転数対トルク特性におけるエンジン動作範囲が、前記ジェネレータ動作範囲と重なるよう、回転数対トルク特性が設定されていることを特徴とする車両搭載用発電装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両搭載用発電装置において、
発電電力目標値に対応する、前記ジェネレータに与えられるトルクおよび前記ジェネレータの回転数と、
前記ジェネレータ動作範囲と前記エンジン動作範囲との重複範囲における、 前記エンジンおよび前記ジェネレータの各回転数対トルク特性と、
前記重複範囲における前記エンジンの最適燃料消費率特性と、に基づいて、前記エンジンおよび前記ジェネレータの動作条件を決定し、当該動作条件に基づいて前記エンジンおよび前記ジェネレータを制御する制御部、
を備えることを特徴とする車両搭載用発電装置。
【請求項6】
燃料の燃焼によりトルクを発生するエンジンと、
前記エンジンとの間でトルクを作用し合うジェネレータと、
前記ジェネレータが接続され、車両を電力駆動する車両駆動部との間で電力を授受し、当該車両駆動部との間で授受される電力を調整する電力調整部と、
前記電力調整部を制御する制御部と、
を備え、
前記電力調整部は、
前記ジェネレータが発生した交流電力を直流電力に変換し、その直流電力を前記車両駆動部に至る電力経路に出力する変換回路と、
前記変換回路と前記車両駆動部との間の電力経路に伝送される直流伝送電圧を調整する電圧調整回路と、
を備え、
前記制御部は、
前記直流伝送電圧を媒介変数とした、前記ジェネレータについての回転数対トルク特性に基づいて、前記ジェネレータの回転数検出値と、前記ジェネレータに与えられるトルクの目標値と、前記直流伝送電圧の目標値とを、を対応付ける対応付け手段と、
前記対応付け手段による対応付け関係に基づいて前記直流伝送電圧の目標値を決定し、その目標値に基づいて前記電圧調整回路を制御する電圧調整回路制御手段と、
を備えることを特徴とする車両搭載用発電装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車両搭載用発電装置において、
前記エンジンの停止制御を行うための回転数目標値を決定する回転数目標値決定手段と、
前記回転数検出値と、前記回転数目標値との差異に基づく比例積分演算に基づいて、前記ジェネレータに与えられるトルクの目標値を決定するトルク目標値決定手段と、
を備え、
前記電圧調整回路制御手段は、
前記回転数検出値と、前記トルク目標値決定手段によって決定された目標値と、に基づいて、前記直流伝送電圧の目標値を決定することを特徴とする車両搭載用発電装置。
【請求項8】
燃料の燃焼によりトルクを発生するエンジンと、
前記エンジンとの間でトルクを作用し合うジェネレータと、
前記ジェネレータが接続され、車両を電力駆動する車両駆動部との間で電力を授受し、当該車両駆動部との間で授受される電力を調整する電力調整部と、
を備え、
前記電力調整部は、
前記ジェネレータが発生した交流電力を直流電力に変換し、その直流電力を前記車両駆動部に至る電力経路に出力する変換回路と、
前記変換回路と前記車両駆動部との間の電力経路に伝送される直流伝送電圧を調整する電圧調整回路と、
を備え、
前記電圧調整回路は、
前記ジェネレータが発電を行わないときは、前記電力調整部と前記車両駆動部との間で授受されるべき電力に基づいて前記直流伝送電圧を調整し、前記ジェネレータが発電を行うときは、前記ジェネレータが発電すべき電力に基づいて前記直流伝送電圧を調整することを特徴とする車両搭載用発電装置。
【請求項9】
燃料の燃焼によりトルクを発生するエンジンと、
前記エンジンとの間でトルクを作用し合うジェネレータと、
前記ジェネレータが接続され、車両を電力駆動する車両駆動部との間で電力を授受し、当該車両駆動部との間で授受される電力を調整する電力調整部と、
を備え、
前記電力調整部は、
前記ジェネレータが発生した交流電力を直流電力に変換し、その直流電力を前記車両駆動部に至る電力経路に出力する変換回路と、
前記変換回路と前記車両駆動部との間の電力経路に伝送される直流伝送電圧を調整する電圧調整回路と、
を備え、
前記電圧調整回路は、
前記車両駆動部に至る電力経路に電圧を与える蓄電手段と、
前記ジェネレータから前記変換回路を介して出力される電圧を昇圧し、昇圧された電圧を前記直流伝送電圧として、前記車両駆動部に至る電力経路および前記蓄電手段に与えるコンバータ回路と、
を備え、
前記直流伝送電圧を当該昇圧動作に伴って調整することを特徴とする車両搭載用発電装置。
【請求項10】
燃料の燃焼によりトルクを発生するエンジンと、
前記エンジンとの間でトルクを作用し合うジェネレータと、
前記ジェネレータが接続され、車両を電力駆動する車両駆動部との間で電力を授受し、当該車両駆動部との間で授受される電力を調整する電力調整部と、
を備え、
前記電力調整部は、
前記ジェネレータが発生した交流電力を直流電力に変換し、その直流電力を前記車両駆動部に至る電力経路に出力する変換回路と、
前記変換回路と前記車両駆動部との間の電力経路に伝送される直流伝送電圧を調整する電圧調整回路と、
を備え、
前記電圧調整回路は、
前記車両駆動部に至る電力経路に電圧を与える蓄電手段と、
前記ジェネレータから前記変換回路を介して出力される電圧を降圧し、降圧された電圧を前記車両駆動部に至る電力経路および前記蓄電手段に与えるコンバータ回路と、
を備え、
前記ジェネレータから前記変換回路を介して出力される電圧を前記直流伝送電圧として、当該直流伝送電圧を当該降圧動作に伴って調整することを特徴とする車両搭載用発電装置。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載の車両搭載用発電装置において、
前記ジェネレータの回転振動を抑制するための前記直流伝送電圧の目標値を、振動抑制目標値として決定する振動抑制目標値決定手段と、
前記車両の走行状態および運転操作に応じた前記直流伝送電圧の目標値を、走行制御目標値として決定する走行制御目標値決定手段と、
前記振動抑制目標値および走行制御目標値に基づいて、前記直流伝送電圧の目標値を振動抑制/走行制御目標値として決定する振動抑制/走行制御目標値決定手段と、
を備え、
前記コンバータ回路は、
前記直流伝送電圧が、前記振動抑制/走行制御目標値に達するよう動作することを特徴とする車両搭載用発電装置。
【請求項12】
請求項11に記載の車両搭載用発電装置において、
前記振動抑制目標値決定手段は、
前記直流伝送電圧を媒介変数とした、前記ジェネレータについての回転数対トルク特性に基づいて、前記ジェネレータの回転数検出値と、前記ジェネレータに与えられるトルクの目標値と、前記直流伝送電圧の目標値とを、を対応付ける対応付け手段と、
前記ジェネレータの回転振動を抑制するための、前記ジェネレータに与えられるトルクの目標値を決定するトルク目標値決定手段と、を備え、
前記ジェネレータの回転数検出値と、前記トルク目標値決定手段によって決定された目標値と、前記対応付け手段による対応付け関係と、に基づいて前記振動抑制目標値を決定することを特徴とする車両搭載用発電装置。
【請求項13】
請求項11または請求項12に記載の車両搭載用発電装置において、
前記ジェネレータは、
回転数対トルク特性におけるジェネレータ動作範囲であって、前記直流伝送電圧が一定であるという条件下で、前記ジェネレータの回転数の増加に対し前記ジェネレータに与えられるトルクが増加する、ジェネレータ動作範囲で動作し、
前記エンジンは、
回転数対トルク特性におけるエンジン動作範囲が、前記ジェネレータ動作範囲と重なるよう、回転数対トルク特性が設定され、
前記走行制御目標値決定手段は、
前記車両の走行状態および運転操作に応じた発電電力目標値を決定する発電電力目標値決定手段を備え、
前記発電電力目標値に対応する、前記ジェネレータに与えられるトルクおよび前記ジェネレータの回転数と、
前記ジェネレータ動作範囲と前記エンジン動作範囲との重複範囲における、 前記エンジンおよび前記ジェネレータの各回転数対トルク特性と、
前記重複範囲における前記エンジンの最適燃料消費率特性と、に基づいて、前記走行制御目標値を決定することを特徴とする車両搭載用発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−162178(P2011−162178A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2700(P2011−2700)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】