説明

車両用周辺監視装置

【課題】車両周辺の障害物をより適切に監視することが可能な車両用周辺監視装置を提供すること。
【解決手段】自車両前方に延在する所定前方領域内の障害物を監視する前方監視手段と、所定前方領域に比して自車両の側方側に延在する所定前側方領域内の障害物を監視する前側方監視手段と、自車両の走行環境を検知する走行環境検知手段と、を備え、走行環境検知手段により、高速道路を含む所定道路を自車両が走行中であることが検知された際に、前側方監視手段による監視を抑制する車両用周辺監視装置であって、走行環境検知手段により、所定道路のうち合流部を含む所定領域を自車両が走行中であることが検知された場合には、前側方監視手段による監視の抑制程度を緩和することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両周辺の障害物を監視する車両用周辺監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レーダーやカメラ等の監視手段を用いて、先行車両や停止車両、歩行者等の障害物の存在を監視し、車間距離制御や衝突予測制御等を行なう技術が実用化されている。
【0003】
こうした技術の応用例として、遠距離用のレーダー装置と近距離用のレーダー装置とを選択的に使用する周辺監視装置についての発明が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、高速走行時に遠距離用のレーダー装置を選択し、低速走行時に近距離用のレーダー装置を選択している。
【特許文献1】特開2005−165752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の装置では、高速道路や自動車専用道路を走行している際には遠距離用のレーダー装置が選択される可能性が高いものとなるが、この結果、高速道路や自動車専用道路の合流部や料金所等において側方からの車両の割り込み等を検知するのが遅れる場合がある。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、車両周辺の障害物をより適切に監視することが可能な車両用周辺監視装置を提供することを、主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の第1の態様は、自車両前方に延在する所定前方領域内の障害物を監視する前方監視手段と、所定前方領域に比して自車両の側方側に延在する所定前側方領域内の障害物を監視する前側方監視手段と、自車両の走行環境を検知する走行環境検知手段と、を備え、走行環境検知手段により、高速道路を含む所定道路を自車両が走行中であることが検知された際に、前側方監視手段による監視を抑制する車両用周辺監視装置であって、走行環境検知手段により、所定道路のうち合流部を含む所定領域を自車両が走行中であることが検知された場合には、前側方監視手段による監視の抑制程度を緩和することを特徴とするものである。
【0007】
この本発明第1の態様によれば、自車両が高速道路を含む所定道路を走行している場合には、合流部を含む所定領域を走行している場合を除き前側方監視手段による監視を抑制するため、前側方監視手段の電力消費や発熱、障害物等の不要な誤検出を抑制しつつ、車両周辺の障害物をより適切に監視することができる。
【0008】
本発明の第1の態様において、所定道路は、自動車専用道路を更に含んでよい。
【0009】
また、本発明の第1の態様において、所定領域は、所定道路の料金所を中心とする領域を更に含んでよい。
【0010】
また、本発明の第1の態様において、走行環境検知手段により所定領域を自車両が走行中であることが検知された場合において、走行環境検知手段により合流部側の車線を自車両が走行していることが検知された場合には、走行環境検知手段により合流部側の車線を自車両が走行していないことが検知された場合に比して、前側方監視手段による監視の抑制程度を大きく緩和することを特徴とするものとしてよい。
【0011】
また、本発明の第1の態様において、走行環境検知手段により、所定道路を自車両が走行中であることが検知された際であっても、前方監視手段による監視を維持することを特徴とすることが望ましい。
【0012】
また、本発明の第1の態様において、所定前側方領域に比して自車両の後方側に延在する所定後側方領域内の障害物を監視する後側方監視手段を備え、走行環境検知手段により、所定道路を自車両が走行中であることが検知された際において、後側方監視手段により、自車両の後方から所定相対速度以上で接近する障害物が検知された場合には、前側方監視手段による監視の抑制程度を緩和することを特徴とするものとしてよい。
【0013】
本発明の第2の態様は、車両前方に延在する所定前方領域内の障害物を監視する前方監視手段と、所定前方領域に比して自車両の側方側に延在する所定前側方領域内の障害物を監視する前側方監視手段と、車速を取得する車速取得手段と、車両の走行環境を検知する走行環境検知手段と、を備え、車速取得手段により所定車速以上の車速が取得された際に、前側方監視手段による監視を抑制する車両用周辺監視装置であって、走行環境検知手段により、高速道路を含む所定道路の、合流部を含む所定領域を自車両が走行中であることが検知された場合には、前側方監視手段による監視の抑制程度を緩和することを特徴とするものである。
【0014】
本発明の第3の態様は、自車両前方に延在する所定前方領域内の障害物を監視する前方監視手段と、所定前方領域に比して自車両の側方側に延在する所定前側方領域内の障害物を監視する前側方監視手段と、自車両の走行環境を検知する走行環境検知手段と、を備え、走行環境検知手段により、高速道路を含む所定道路を自車両が走行中であることが検知された際に、前記前側方監視手段による監視を抑制する、車両用周辺監視装置である。
【0015】
本発明の第4の態様は、自車両の前側方に存在する障害物を監視する前側方監視手段と、自車両の走行環境を検知する走行環境検知手段と、を備え、走行環境検知手段により、高速道路を含む所定道路を自車両が走行中であることが検知された際に、前側方監視手段による監視を抑制する車両用周辺監視装置であって、走行環境検知手段により、所定道路のうち合流部、及び/又は料金所を中心とする領域を含む所定領域を自車両が走行中であることが検知された場合には、前側方監視手段による監視の抑制程度を緩和することを特徴とする、車両用周辺監視装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、車両周辺の障害物をより適切に監視することが可能な車両用周辺監視装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【実施例】
【0018】
[第1実施例]
以下、本発明の第1実施例に係る車両用周辺監視装置1について説明する。図1は、車両用周辺監視装置1の全体構成の一例を示す図である。車両用周辺監視装置1は、主要な構成として、前方レーダー10と、前側方レーダー20A、20Bと、周辺監視装置用ECU(Electronic Control Unit)30と、ナビゲーション装置40と、ETC車載機50と、を備える。なお、本装置の出力を利用して制御を行なうものとして、PCS(PreCrush Safety)用ECU60、及びACC(Adaptive Cruise Control)用ECU70を図示する。なお、図中の実線矢印は、有線又は無線通信による主要な情報の流れを示す。
【0019】
前方レーダー10及び前側方レーダー20A、20Bは、例えば、ミリ波レーダー装置であり、出力したミリ波の反射波が帰ってくるまでの時間、反射波の角度、及び周波数変化を利用して物体(障害物)の距離、方位、速度を検出するための装置である。各レーダーは、このような検出を定期的に行なって、検出した物体に関する情報を、通信回線等を介して周辺監視装置用ECU30に出力する。周辺監視装置用ECU30では、各レーダーから受信した情報に基づいて障害物を監視する。各レーダーの作動に用いられる電力は、例えば、クランクシャフトにベルトを介して連結されたオルタネータの発電する高電圧の電力が、DC/DCコンバータを介して低電圧(例えば、12[V]等)の電力に変換された後、補機駆動用バッテリに一時的に蓄電されて用いられる。
【0020】
なお、物体の距離等を検出する手段としては、ミリ波レーダー装置の他に、レーザーレーダーや赤外線レーダー、音波レーダー(ソナー)、ステレオカメラ装置等が考えられる。
【0021】
図2は、前方レーダー10及び前側方レーダー20A、20Bの検出領域の一例を示す図である。前方レーダー10は、例えばフロントグリル裏に配設され、自車両前方を検出領域(特許請求の範囲における所定前方領域に相当)とする。前側方レーダー20Aは、例えばフロントバンパーの右側部に形成された穴部に配設され、自車両の右斜め前方を検出領域(特許請求の範囲における所定前側方領域の一部に相当)とする。前側方レーダー20Bは、例えばフロントバンパーの左側部に形成された穴部に配設され、自車両の左斜め前方を検出領域(特許請求の範囲における所定前側方領域の一部に相当)とする。
【0022】
図2に示す如く、前方レーダー10は、主として自車両の前方に存在する障害物(先行車両(自車両の前方を走行する車両であって、自車両と同一車線を同方向に走行する車両)を含む)を監視するためのものであり、前側方レーダー20A・20Bは、主として側方から自車両前方に進入してくる障害物(例えば、割り込み車両や歩行者、自転車等)を監視するためのものである。
【0023】
周辺監視装置用ECU30は、例えば、CPUを中心としてROMやRAM等がバスを介して相互に接続されたコンピューターユニットであり、その他、ハードディスクやDVD(Digital Versatile Disk)等の記憶媒体やI/Oポート、タイマー、カウンター等を備える。ROMには、CPUが実行するプログラムやデータが格納されている。周辺監視装置用ECU30は、前方レーダー10及び前側方レーダー20A、20Bの出力制御やオンオフ制御を行なうと共に、前方レーダー10及び前側方レーダー20A、20Bのいずれかが所定閾値以上の強度の反射波を検知した際には、障害物が存在するものと判断し、多重通信線等を介してPCS用ECU60及びACC用ECU70に障害物の位置及び相対速度を出力する。なお、上記多重通信線を介した通信、及び後述する周辺監視装置用ECU30とナビゲーション装置40との間の通信は、CAN(Controller Area Network)やBEAN、AVC−LAN、FlexRay等の適切な通信プロトコルを用いて行なわれる。
【0024】
PCS用ECU60は、例えば周辺監視装置用ECU30と同様のハードウエア構成を有するコンピューターユニットである。PCS用ECU60は、例えば自車両に対して所定速度以上の相対速度で接近する障害物が、車両と所定距離以内の範囲に進入した場合に、当該障害物との衝突が不可避であると判断して、種々のプリクラッシュセーフティ制御(衝突予測制御)を行なう。プリクラッシュセーフティ制御としては、例えば、乗員姿勢を適正なものにするためのシートベルト自動巻取り制御や、プリクラッシュ用エアバッグの展開制御(多段式エアバッグの1次展開を含んでよい)、ブレーキ制御、ステアリング制御による障害物回避、ブザー吹鳴等が考えられる。
【0025】
ACC用ECU70は、例えば周辺監視装置用ECU30と同様のハードウエア構成を有するコンピューターユニットである。ACC用ECU70は、障害物として検知された先行車両との車間距離を、予め設定された目標車間距離に維持して走行するように、スロットルモータや変速機等の制御を行なう。目標車間距離は、例えば、ユーザーによるハードスイッチやGUI(Graphical User Interface)の操作、音声入力等によって設定される。
【0026】
このように、各レーダーが検出した障害物に関する情報は、衝突予測に基づく安全制御や、運転負荷を軽減するための車間距離制御等に用いられる。特に、前方レーダー10と前側方レーダー20A、20Bとを併用することにより、車両前方の障害物と側方から進入してくる(飛び出してくる)障害物との双方を監視することができ、漏れの少ない車両周辺監視が実現される。
【0027】
ところが、ミリ波レーダー装置を複数(本実施例では3個)備える場合、その個数に応じて電力消費が増大するという問題が生じ得る。ミリ波レーダー装置の電力消費は、車両のエネルギー消費を考慮する上で無視できない程度に大きいものであるため、その電力消費の増大は、エネルギー消費を抑制する観点から何らかの抑制策が望まれる。更に、ミリ波レーダー装置の発熱も、特に渋滞時には無視できないものである。
【0028】
また、ミリ波レーダー装置を複数備える場合、車両周辺における種々のノイズ要素により障害物等を誤検出する頻度が高くなるという問題が生じ得る。障害物等の誤検出も、車間距離制御におけるハンチングや、衝突予測制御におけるシートベルト自動巻取り制御又はプリクラッシュ用エアバッグの不要な作動を招くため、抑制すべき問題点である。
【0029】
これらの問題は、ミリ波レーダー装置の代替手段として、レーザーレーダーや赤外線レーダー、音波レーダー(ソナー)、ステレオカメラ装置等を用いる場合においても、程度の差こそあれ、同様に生じ得る。
【0030】
そこで、本実施例の車両用周辺監視装置1では、高速道路や自動車専用道路(以下、これらを所定道路と総称する)を自車両が走行しているか否かを検知し、所定道路を自車両が走行している場合には、原則として前側方レーダー20A、20Bの作動を停止することとした。こうした道路においては、交差点や歩行者が原則として存在しないため、側方から車両前方に進入してくる障害物の存在確率も低いと考えられるからである。こうすることにより、ミリ波レーダー装置の消費電力を減少させ、発熱を抑制すると共に、障害物等の不要な誤検出を抑制することができる。なお、所定道路は、高速道路のみを指すものとしてもよい。また、この際に、前方レーダー10による監視は継続することが望ましい。車間距離制御や前方監視に基づくプリクラッシュセーフティ制御の継続性を維持するためである。
【0031】
ところが、所定道路においても、合流部や料金所付近を走行しているとき等、側方から車両前方に進入してくる障害物の存在確率が高くなる場面が存在する。合流部においては必然的に自車両前方に割り込んでくる車両が存在するし、料金所の数が車線数と異なるような場合にも車線変更を行なう車両が存在するからである。こうした場面において前側方レーダー20A、20Bの作動を停止したままであると、折角これらのレーダー装置を備えた意義が減殺されることとなる。なお、ここでいう「合流部」とは、一般道から高速道路等への合流部の他、インターチェンジ等における高速道路のある路線から他の路線への合流部や、パーキングエリア・サービスエリアから本線への合流部、ランプウェイ区間等、凡そ所定道路において支線から本線へ車両が合流することがあり得る全ての部分を含んでよい。
【0032】
そこで、合流部や料金所付近の所定領域においては、前側方レーダー20A、20Bを作動させることとした。なお、当該作動は、所定道路以外の一般道等を車両が走行している場合と同出力、同感度で行なってもよいし、出力及び/又は感度を若干変更してもよい。
【0033】
所定領域は、例えば、合流部の開始地点の所定距離(例えば、百数十[m]〜数[km])手前から、合流部の終了地点までの領域と定めることができる(図3(A)参照)。また、料金所の前後の所定距離(例えば、百数十[m]〜数[km])以内の領域と定めることができる(図3(B)参照)。なお、当該所定距離は、合流部と料金所とで異なる距離を用いてもよい。
【0034】
このような制御により、所定道路においては、前側方レーダー20A、20Bの作動が必要とされる場面にのみこれらを作動させ、それ以外の場面では停止することとなる。従って、側方から道路に進入する障害物の存在確率に応じて適切に前側方レーダー20A、20Bを作動させることができる。すなわち、車両周辺の障害物をより適切に監視することができる。
【0035】
なお、所定道路や所定領域を車両が走行しているか否かの検知は、ナビゲーション装置40及びETC車載機50の機能を用いて実現される。以下、ナビゲーション装置40及びETC車載機50の機能について述べる。
【0036】
ナビゲーション装置40は、主要な構成として、GPS受信機42と、基準局電波受信機44と、メモリ46と、ナビゲーションコンピューター48と、を備える。
【0037】
GPS受信機42は、GPS衛星から衛星の軌道と時刻のデータを含む電波信号を受信する。当該受信されたデータは、ナビゲーションコンピューター48に送信され、自車両の現在位置の特定に用いられる。基準局電波受信機44は、DGPS(Diffrential GPS;相対測位方式)やRTK-GPS(Real Time Kinematic GPS;干渉測位方式)に用いられる基準局からの電波を受信する。
【0038】
メモリ46は、例えば、ハードディスクやDVD、CD−ROM等の記憶媒体が用いられ、地図情報が記憶されている。当該地図情報は、ノード、及びノードを接続するリンクにより道路形状が表現されている。また、各リンクに付随して、道路種別(高速道路、自動車専用道路、一般道等の別)に関する情報が記憶されており、更に、高速道路や自動車専用道路における合流部の開始地点及び終了地点の座標、料金所の座標が記憶されている。
【0039】
ナビゲーションコンピューター48は、GPS受信機42が受信する衛星からの電波信号、及び基準局電波受信機44が受信する基準局からの電波信号に基づいて、前述したDGPSやRTK-GPS等の方式に基づく補正演算を行ない、自車両の現在位置(緯度、経度、高度)を取得する。DGPSやRTK-GPS等の方式を用いることにより、GPS測位の精度が向上し、より精緻な制御を行なうことが可能となる。なお、DGPSやRTK-GPS等の方式を用いない場合、基準局電波受信機44は不要となるが、GPS測位の精度が若干低下することとなる。そして、このように特定される自車両の現在位置から、ユーザーにより入力された目的地に至るまでの推奨経路を生成し、液晶ディスプレイ装置やスピーカー用いた既知の経路案内を行なう。
【0040】
更に、ナビゲーションコンピューター48は、自車両の現在位置と地図情報に記憶された情報とを比較し、自車両が所定道路や所定領域を車両が走行しているか否かを判定し、当該判定結果を周辺監視装置用ECU30に出力する。
【0041】
ETC車載機50は、専用アンテナ、或いはナビゲーション装置40と共用されるアンテナにより、有料道路の料金所に備えられたETC路側機との間で料金収受に関する情報を送受信する。ETC車載器50は、ICチップを搭載した決済用ETCカードが挿入されることによって、ETC路側機と通行料金支払いに必要な情報を無線通信する。また、ETC車載器50は、有料道路への自車の進入時には入口料金所のIDや車種等を記録し、有料道路からの退出時には出口料金所のIDや車種等を記録するとともに有料道路代金を精算する等の処理を行なう。また、ETC車載器50は、ETCの利用状況(有料道路を走行中であるか否か、どの料金所を通過したか等)を逐次周辺監視装置用ECU30に出力している。ETCの利用状況は、自車両が高速道路を走行しているか否か、及び料金所付近を走行しているか否かを検知するための補助情報として(特にGPS精度が十分でない場合に実効がある)、周辺監視装置用ECU30により用いられる。
【0042】
図4は、車両用周辺監視装置1により実行される、特徴的な処理の流れを示すフローチャートである。本フローは、例えば所定時間毎に繰り返し実行される。
【0043】
まず、ナビゲーション装置40において、自車両の現在位置を特定する(S100)。
【0044】
そして、自車両が所定道路を走行しているか否かを判定し(S110)、自車両が所定道路を走行していない場合には、前側方レーダー20A、20Bを作動させる(S130)。
【0045】
一方、自車両が所定道路を走行している場合は、続いて自車両が所定領域を走行しているか否かを判定し(S120)、自車両が所定領域を走行していない場合は、前側方レーダー20A、20Bを停止させる(S140)。また、自車両が所定領域を走行している場合は、前側方レーダー20A、20Bを作動させる(S130)。
【0046】
本実施例の車両用周辺監視装置1によれば、自車両が高速道路を含む所定道路を走行している場合には、合流部や料金所付近の所定領域を走行している場合を除き前側方レーダー20A、20Bを停止させるため、前側方レーダー20A、20Bの電力消費や発熱、障害物等の不要な誤検出を抑制しつつ、車両周辺の障害物をより適切に監視することができる。
【0047】
[第2実施例]
以下、本発明の第2実施例に係る車両用周辺監視装置2について説明する。図5は、車両用周辺監視装置2の全体構成の一例を示す図である。図示する如く、車両用周辺監視装置2は、車両用周辺監視装置1が備える構成に加え、後側方レーダー20C、20Dを更に備える構成となっており、重複部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0048】
後側方レーダー20C、20Dは、例えば、前方レーダー10や前側方レーダー20A、20Bと同様のミリ波レーダー装置であり、レーザーレーダーや赤外線レーダー、音波レーダー(ソナー)、ステレオカメラ装置等による置換が可能である。
【0049】
図6は、前方レーダー10、前側方レーダー20A、20B、及び後側方レーダー20C、20Dの検出領域の一例を示す図である。後側方レーダー20Cは、例えばリアバンパーの右側部に形成された穴部に配設され、自車両の右斜め後方を検出領域(特許請求の範囲における所定後側方領域の一部に相当)とする。後側方レーダー20Dは、例えばリアバンパーの左側部に形成された穴部に配設され、自車両の左斜め後方を検出領域(特許請求の範囲における所定後側方領域の一部に相当)とする。後側方レーダー20C、20Dも、周辺監視装置用ECU30により出力制御やオンオフ制御がなされる。図6に示す如く、後側方レーダー20C、20Dは、主として後方から自車両を追い越す車両の存在を監視するためのものである。
【0050】
本実施の車両用周辺監視装置2は、第1実施例の車両用周辺監視装置1が実行する制御内容を、基本的な制御内容とする。但し、自車両が所定道路を走行している場合において、自車両が所定領域を走行している場合に加え、自車両の後方から所定相対速度以上で接近する障害物が検知された場合にも、前側方レーダー20A、20Bを作動させることとした。これは、自車両の後方から所定相対速度以上で接近する障害物、すなわち自車両を追い越そうとしている車両が存在するときには、当該車両が自車両の前方に割り込んでくる可能性が高いことに基づく。従って、このような場合にも前側方レーダー20A、20Bを作動させることにより、当該車両が自車両の前方に割り込んできた際の監視を速やかに開始することができるのである。
【0051】
これにより、第1実施例と同様、所定道路においては、前側方レーダー20A、20Bの作動が必要とされる場面にのみこれらを作動させ、それ以外の場面では停止することとなる。従って、側方から道路に進入する障害物の存在確率に応じて適切に前側方レーダー20A、20Bを作動させることができる。すなわち、車両周辺の障害物をより適切に監視することができる。
【0052】
更に、自車両の後方から接近する障害物の相対速度に応じて段階的に前側方レーダー20A、20Bを作動させることも可能である。例えば、相対速度が上記所定相対速度を若干上回る程度の場合は、狭い検出領域をもって前側方レーダー20A、20Bを作動させ、相対速度が上記所定相対速度をかなり上回る場合は、より広い検出領域をもって前側方レーダー20A、20Bを作動させるのである。
【0053】
なお、後側方レーダー20C、20Dの電力消費や発熱が問題となるが、通常の場合、後方から接近する障害物と自車両との相対速度は、前方や前側方の障害物と自車両との相対速度に比して十分に小さいものであるため、出力するミリ波の強度を小さくして検出可能距離を短くしても差し支えないのである。従って、所定道路において常時前側方レーダー20A、20Bを作動させる場合と比較すると、電力消費や発熱を抑制することができると考えられる。
【0054】
図7は、車両用周辺監視装置2により実行される、特徴的な処理の流れを示すフローチャートである。本フローは、例えば所定時間毎に繰り返し実行される。なお、図4との重複部分については同一のステップ番号を付して説明を省略する。
【0055】
本実施例において、自車両が所定道路を走行している場合は、続いて自車両が所定領域を走行しているか否かを判定し(S120)、自車両が所定領域を走行していない場合、更に自車両の後方から所定相対速度以上で接近する障害物が検知されたか否かを判定する(S125)。
【0056】
自車両の後方から所定相対速度以上で接近する障害物が検知されなかった場合は、前側方レーダー20A、20Bを停止させる(S140)。また、当該障害物が検知された場合は、前側方レーダー20A、20Bを作動させる(S130)。
【0057】
本実施例の車両用周辺監視装置2によれば、自車両が高速道路を含む所定道路を走行している場合には、合流部や料金所付近の所定領域を走行している場合や自車両を追い越そうとしている車両が接近している場合を除き、前側方レーダー20A、20Bを停止させるため、前側方レーダー20A、20Bの電力消費や発熱、障害物等の不要な誤検出を抑制しつつ、車両周辺の障害物を適切に監視することができる。
[第3実施例]
以下、本発明の第3実施例に係る車両用周辺監視装置3について説明する。図8は、車両用周辺監視装置3の全体構成の一例を示す図である。図示する如く、車両用周辺監視装置3は、車両用周辺監視装置1が備える構成に加え、車速センサー25を更に備える構成となっており、重複部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0058】
車速センサー25は、例えば、各輪に取り付けられた車輪速センサーとスキッドコントロールコンピューターからなり、車輪速センサーが出力する車輪速パルス信号をスキッドコントロールコンピューターが車速矩形波パルス信号(車速信号;以下車速Vと称する)に変換して周辺監視装置用ECU30に出力する。
【0059】
本実施の車両用周辺監視装置3は、第1実施例の車両用周辺監視装置1が実行する制御内容と比較して、所定道路を走行している場合ではなく、車速Vが所定車速V1以上である場合に、原則として前側方レーダー20A、20Bの作動を停止することとした。これは、自車両が高速走行している場合は、高速道路や自動車専用道路を走行している可能性が高いこと、及び、割り込み車両や歩行者の飛び出し等が発生しやすい箇所では高速で走行することが比較的困難であろうことに基づく。
【0060】
但し、車速Vが所定車速V1以上である場合であっても、第1実施例と同様に定義される所定領域を走行している場合には、前側方レーダー20A、20Bを作動させるものとした。
【0061】
これにより、高速走行中においては、前側方レーダー20A、20Bの作動が必要とされる場面にのみこれらを作動させ、それ以外の場面では停止することとなる。従って、側方から道路に進入する障害物の存在確率に応じて適切に前側方レーダー20A、20Bを作動させることができる。すなわち、車両周辺の障害物をより適切に監視することができる。
【0062】
図9は、車両用周辺監視装置3により実行される、特徴的な処理の流れを示すフローチャートである。本フローは、例えば所定時間毎に繰り返し実行される。なお、図4との重複部分については同一のステップ番号を付して説明を省略する。
【0063】
本実施例においては、自車両の現在位置を特定(S100)した後、車速Vが所定車速V1以上であるか否かを判定し(S115)、車速Vが所定車速V1未満である場合には、前側方レーダー20A、20Bを作動させる(S130)。
【0064】
一方、車速Vが所定車速V1以上である場合は、続いて自車両が所定領域を走行しているか否かを判定し(S120)、自車両が所定領域を走行していない場合は、前側方レーダー20A、20Bを停止させる(S140)。また、自車両が所定領域を走行している場合は、前側方レーダー20A、20Bを作動させる(S130)。
【0065】
本実施例の車両用周辺監視装置3によれば、自車両が高速走行している場合には、合流部や料金所付近の所定領域を走行している場合を除き前側方レーダー20A、20Bを停止させるため、前側方レーダー20A、20Bの電力消費や発熱、障害物等の不要な誤検出を抑制しつつ、車両周辺の障害物を適切に監視することができる。
【0066】
なお、本実施例の車両用周辺監視装置3においても、第2実施例の如く後側方レーダー20C、20Dを備える構成としてよいのは勿論である。
【0067】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【0068】
例えば、第1実施例及び第2実施例では所定道路を走行中に、第3実施例では高速走行中に、夫々原則として前側方レーダー20A、20Bを「停止する」ものとしたが、「抑制された状態で作動させる」と置換してもよい。
【0069】
前側方レーダー20A、20Bを「抑制された状態で作動させる」とは、例えば、(1)出力するミリ波の強度を小さくする(すなわち出力を小さくする)、(2)障害物であると検知する際の閾値を大きくする(すなわち感度を低くする)、(3)出力を小さくすると共に感度を低くする、等が考えられる。(1)の場合、所定道路を又は高速で走行している際には(以下同じ)、消費電力や発熱を抑制することができ、(2)の場合、障害物等の不要な誤検出を抑制することができ、(3)の場合、消費電力や発熱、障害物等の不要な誤検出を抑制することができる。
【0070】
更に、前側方レーダー20A、20Bを「抑制された状態で作動させる」ための具体的手法の他の例として、前側方レーダー20A、20Bによる検出周期を変更することにより、前側方レーダー20A、20Bの作動を抑制(又は促進)するものとしてもよい。例えば、所定道路を走行している時や高速走行している時(合流部・料金所付近を走行している時や後方から自車両に接近する車両が存在する時を除く)にはX[sec]周期で障害物等の検出を行なうが、それ以外の時には上記X[sec]よりも短いY[sec]周期で障害物等の検出を行なうことが考えられる。このような制御によっても、前側方レーダー20A、20Bの消費電力や発熱、障害物等の不要な誤検出を抑制しつつ、車両周辺の障害物をより適切に監視することができる。また、検出周期の変更を上記の出力値や感度の変更と組み合わせてもよいのは勿論である。
【0071】
また、全ての実施例について、自車両の走行車線を認識する手段(道路を撮像するカメラやGPS、またその組み合わせ)を備え、合流部付近の所定領域を走行している場合において、合流部側の車線を走行している場合には、合流部側でない車線を走行している場合に比して、前側方レーダー20A、20Bの出力及び/又は感度を大きくするものとしてもよい。合流部側の車線を走行している場合は、そうでない場合に比して、自車両の前方に車両が割り込んでくる可能性が高いからである。これにより、車両周辺の障害物をより適切に監視することができる。
【0072】
また、前方レーダー10、及び前側方レーダー20A、20Bは、夫々別体として構成しないものとすることも可能である。例えば、前側方レーダー20A、20Bの検出領域を車両前方にまで至らせるものとし、所定警戒領域を通過する際には検出領域を側方側にシフトすることが考えられる。この際の検出領域を可変にする機構としては、例えば首振り式のレーダー装置等を備えるものとすればよい。
【0073】
また、制御主体として本装置専用の周辺監視装置用ECU30を備えるものとして説明したが、ナビゲーションコンピューター48、PCS用ECU60、ACC用ECU70等の他のECU類が本装置の制御主体となる(周辺監視装置用ECU30が他のECUに統合される)ものとしてもよい。
【0074】
また、前方レーダー10を備えず、前側方レーダー20A、20Bによる前側方の監視のみを行なうものとしても構わない。
【0075】
また、ETC車載機50を備えず、ナビゲーション装置40のみにより所定道路や所定領域を走行しているか否かを判定するものとしても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、自動車製造業や自動車部品製造業等に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】車両用周辺監視装置1の全体構成の一例を示す図である。
【図2】前方レーダー10及び前側方レーダー20A、20Bの検出領域の一例を示す図である。
【図3】所定領域の具体例を示す図である。
【図4】車両用周辺監視装置1により実行される、特徴的な処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】車両用周辺監視装置2の全体構成の一例を示す図である。
【図6】前方レーダー10、前側方レーダー20A、20B、及び後側方レーダー20C、20Dの検出領域の一例を示す図である。
【図7】車両用周辺監視装置2により実行される、特徴的な処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】車両用周辺監視装置3の全体構成の一例を示す図である。
【図9】車両用周辺監視装置3により実行される、特徴的な処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0078】
1、2、3 車両用周辺監視装置
10 前方レーダー
20A、20B 前側方レーダー
20C、20D 後側方レーダー
25 車速センサー
30 周辺監視装置用ECU
40 ナビゲーション装置
42 GPS受信機
44 基準局電波受信機
46 メモリ
48 ナビゲーションコンピューター
50 ETC車載機
60 PCS用ECU
70 ACC用ECU


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両前方に延在する所定前方領域内の障害物を監視する前方監視手段と、
前記所定前方領域に比して自車両の側方側に延在する所定前側方領域内の障害物を監視する前側方監視手段と、
自車両の走行環境を検知する走行環境検知手段と、を備え、
該走行環境検知手段により、高速道路を含む所定道路を自車両が走行中であることが検知された際に、前記前側方監視手段による監視を抑制する車両用周辺監視装置であって、
前記走行環境検知手段により、前記所定道路のうち合流部を含む所定領域を自車両が走行中であることが検知された場合には、前記前側方監視手段による監視の抑制程度を緩和することを特徴とする、
車両用周辺監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用周辺監視装置であって、
前記所定道路は、自動車専用道路を更に含む、
車両用周辺監視装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用周辺監視装置であって、
前記所定領域は、前記所定道路の料金所を中心とする領域を更に含む、
車両用周辺監視装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の車両用周辺監視装置であって、
前記走行環境検知手段により前記所定領域を自車両が走行中であることが検知された場合において、
前記走行環境検知手段により前記合流部側の車線を自車両が走行していることが検知された場合には、前記走行環境検知手段により前記合流部側の車線を自車両が走行していないことが検知された場合に比して、前記前側方監視手段による監視の抑制程度を大きく緩和することを特徴とする、
車両用周辺監視装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の車両用周辺監視装置であって、
前記走行環境検知手段により、前記所定道路を自車両が走行中であることが検知された際であっても、前記前方監視手段による監視を維持することを特徴とする、
車両用周辺監視装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の車両用周辺監視装置であって、
前記所定前側方領域に比して自車両の後方側に延在する所定後側方領域内の障害物を監視する後側方監視手段を備え、
前記走行環境検知手段により、前記所定道路を自車両が走行中であることが検知された際において、
前記後側方監視手段により、自車両の後方から所定相対速度以上で接近する障害物が検知された場合には、前記前側方監視手段による監視の抑制程度を緩和することを特徴とする、
車両用周辺監視装置。
【請求項7】
車両前方に延在する所定前方領域内の障害物を監視する前方監視手段と、
前記所定前方領域に比して自車両の側方側に延在する所定前側方領域内の障害物を監視する前側方監視手段と、
車速を取得する車速取得手段と、
車両の走行環境を検知する走行環境検知手段と、を備え、
前記車速取得手段により所定車速以上の車速が取得された際に、前記前側方監視手段による監視を抑制する車両用周辺監視装置であって、
前記走行環境検知手段により、高速道路を含む所定道路の、合流部を含む所定領域を自車両が走行中であることが検知された場合には、前記前側方監視手段による監視の抑制程度を緩和することを特徴とする、車両用周辺監視装置。
【請求項8】
自車両前方に延在する所定前方領域内の障害物を監視する前方監視手段と、
前記所定前方領域に比して自車両の側方側に延在する所定前側方領域内の障害物を監視する前側方監視手段と、
自車両の走行環境を検知する走行環境検知手段と、を備え、
該走行環境検知手段により、高速道路を含む所定道路を自車両が走行中であることが検知された際に、前記前側方監視手段による監視を抑制する、
車両用周辺監視装置。
【請求項9】
自車両の前側方に存在する障害物を監視する前側方監視手段と、
自車両の走行環境を検知する走行環境検知手段と、を備え、
該走行環境検知手段により、高速道路を含む所定道路を自車両が走行中であることが検知された際に、前記前側方監視手段による監視を抑制する車両用周辺監視装置であって、
前記走行環境検知手段により、前記所定道路のうち合流部、及び/又は料金所を中心とする領域を含む所定領域を自車両が走行中であることが検知された場合には、前記前側方監視手段による監視の抑制程度を緩和することを特徴とする、
車両用周辺監視装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−152387(P2008−152387A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−337500(P2006−337500)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】