説明

車両用接触回避支援装置

【課題】レーンキープアシスト手段によって車両が操舵制御されているときには、接触回避支援処理が過剰に作動しないようにする。
【解決手段】接触回避ECU20は、レーンキープアシスト部96によって車両10が操舵制御されているときは、車両10が自車線302を逸脱する可能性がきわめて低いことを考慮し、レーダ80によって検出された車両前方の対向車11との相対位置に基づき得られる接触余裕値Laの閾値Laを、レーンキープアシスト部96によって車両10が制御されていないときの第1閾値Lth1より小さい第2閾値Lth2に置き換えて、対向車11に対する当該車両10の接触回避支援を行うようにしたので、接触回避支援処理が過剰に作動する状況を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用接触回避支援装置に関し、特に、自車と自車前方の障害物との位置関係に応じて、前記障害物に対する自車の接触回避支援を行う車両用接触回避支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自車から自車前方の障害物(停止車両あるいは歩行者)までの相対距離(車間距離)と相対速度をレーダにより検出するとともに、それぞれ白線で道路上に表示された車道中央線と左側端近傍の車両通行帯最外側線との間を走行路としてCCDカメラにより検出し、自車前方の障害物が前記走行路内に位置するときに、自車の接触回避支援を行う車両の安全装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−57182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に提案された技術は、自車前方の障害物が、駐車車両あるいは歩行者等の停止物体であって、かつこれらの停止物体が、自車の推定進行路上に存在しない場合には、安全確保動作を制限しようとする発明であり、車両のレーンキープ機能(車線維持機能)との関連性については考慮されていない。
【0005】
例えば、左側交通対面通行道路で直進している自車の前方に、見通しの良い左カーブ路が存在し、カーブ路の進入口あるいはカーブ路上で、対向車線を走行する対向車をレーダにより捕捉した場合、自車及び対向車ともに、単に道路(カーブ路)形状に沿って走行しているにも拘わらず、自車の接触回避支援装置が、前記対向車(障害物)と自車との接触(衝突)の可能性が高いと判断してしまい、換言すれば、接触余裕値が小さいと判断してしまい、接触回避支援制御を作動させるという、接触回避支援制御が過剰に作動する状況に至る場合がある。
【0006】
この発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、自車がレーンキープ機能及び接触回避支援機能を有する車両である場合、このレーンキープ機能と接触回避支援との的確な協調制御を可能とする車両用接触回避支援装置を提供することを目的とする。
【0007】
また、この発明は、自車が、左側交通対面通行道路(又は右側交通対面通行道路)で直進している自車の前方に、例えば見通しの良い左カーブ路(上記右側交通対面通行道路の場合には、見通しの良い右カーブ路)が存在し、カーブ路の進入口、あるいはカーブ路上で、対向車線を走行する対向車をレーダにより捕捉した場合であっても、接触回避支援処理が過剰に作動しないようにする車両用接触回避支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る車両用接触回避支援装置は、車両と該車両前方の障害物との位置関係に応じて、前記障害物に対する前記車両の接触回避の支援を行う車両用接触回避支援装置において、以下の特徴1〜6を備える。
【0009】
1.前記車両と該車両前方の前記障害物との相対位置を検出する相対位置検出手段と、前記相対位置検出手段によって検出された車両前方の前記障害物との相対位置に基づき得られる接触余裕値が第1閾値より小さい場合に、前記障害物に対する当該車両の接触回避支援を行う接触回避支援手段と、前記車両が走行する走行路両側の白線を認識し、認識した前記両側の白線内に前記車両を位置させる制御を行うレーンキープアシスト手段と、を備え、前記接触回避支援手段は、前記レーンキープアシスト手段によって前記車両が制御されているときは、前記第1閾値を該第1閾値より小さい第2閾値に置き換えて、前記障害物に対する当該車両の接触回避支援を行うことを特徴とする。
【0010】
ここで、接触余裕値は、自車前方の障害物と自車との接触の可能性を判断するパラメータであり、接触余裕値が大きい程、接触の可能性が低くなり、逆に、接触余裕値が小さい程、接触の可能性が高くなるように設定される。接触余裕値としては、接触余裕時間TTC(Time To Contact)や障害物と自車との距離(車間距離等)とすることができる。
【0011】
上記の特徴1を備える発明によれば、接触回避支援手段は、レーンキープアシスト手段によって車両が制御されているときは、車両が車線を逸脱する可能性がきわめて低いことを考慮し、相対位置検出手段によって検出された車両前方の障害物との相対位置に基づき得られる接触余裕値と大小比較する閾値を、レーンキープアシスト手段によって車両が制御されていないときの第1閾値より小さい第2閾値に置き換えて、前記障害物に対する当該車両の接触回避支援を行うようにしたので、接触回避支援処理が過剰に作動する状況を防止することができる。
【0012】
結果として、自車がレーンキープ機能と接触回避支援機能を有する車両である場合、このレーンキープ機能と接触回避支援との的確な協調制御を行うことができる。
【0013】
2.上記の特徴1を備える発明において、前記接触回避支援手段は、前記レーンキープアシスト手段によって前記車両が制御されているときであっても、該レーンキープアシスト手段により認識した前記両側の白線内、すなわち自車が走行する車線内に、前記相対位置検出手段が前記障害物を検出したときには、前記第2閾値を前記第1閾値にもどし、前記レーンキープアシスト手段によって前記車両を制御していないときと同じタイミングで接触回避支援制御を開始するようにしたので、接触回避支援制御が必要なときには、該接触回避支援制御が行われて、接触回避支援制御が遅れてしまうことを防止することができる。
【0014】
3.上記の特徴1を備える発明において、さらに、前記車両前方の道路形状を推定する道路形状推定手段を備え、前記接触回避支援手段は、前記レーンキープアシスト手段によって前記車両が制御されていて、かつ前記道路形状推定手段により前方の道路がカーブ路であると推定されたとき、前記レーンキープアシスト手段によって前記車両を制御していないときよりも遅いタイミングで接触回避支援制御を開始するようにしたので、自車が、左側交通道路(又は右側交通道路)で直進等している自車の前方に、例えば見通しの良い左カーブ路(上記右側交通道路の場合には、見通しの良い右カーブ路)が存在し、カーブ路の進入口、あるいはカーブ路上で、対向車線を走行する対向車を相対位置検出手段により捕捉した場合、接触回避支援処理が過剰に作動しないようにすることができる。
【0015】
4.上記の特徴1を備える発明において、さらに、前記相対位置検出手段によって検出された障害物が、対向車であるか否かを判断する対向車判断手段を備え、前記接触回避支援手段は、前記レーンキープアシスト手段によって前記車両が制御されていて、かつ前記対向車判断手段により前記障害物が前記対向車であると判断したとき、前記レーンキープアシスト手段によって前記車両を制御していないときよりも遅いタイミングで接触回避支援制御を開始するようにしたので、接触回避支援処理が過剰に作動しないようにすることができる。
【0016】
5.上記の特徴1〜4のいずれかを備える発明において、前記接触回避支援手段は、前記相対位置検出手段によって検出された前記障害物との前記相対位置に基づいて、自動ブレーキ制御を行う自動ブレーキ制御手段とすることができる。
【0017】
6.上記の特徴1〜4のいずれかを備える発明において、前記接触回避支援手段は、前記相対位置検出手段によって検出された前記障害物との前記相対位置に基づいて、該車両の操舵を、前記障害物との接触を回避する方向に操舵アシスト制御する操舵アシスト制御手段とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、接触回避支援手段は、レーンキープアシスト手段によって車両が制御されているときは、車両が車線を逸脱する可能性がきわめて低いことを考慮し、相対位置検出手段によって検出された車両前方の障害物との相対位置に基づき得られる接触余裕値の閾値を、レーンキープアシスト手段によって車両が制御されていないときの第1閾値より小さい第2閾値に置き換えて、前記障害物に対する当該車両の接触回避支援を行うようにしたので、接触回避支援処理が過剰に作動する状況を回避することができる。
【0019】
結果として、自車がレーンキープ機能と接触回避支援機能を有する車両である場合、このレーンキープ機能と接触回避支援との的確な協調制御を行うことができる。
【0020】
特に、左側交通対面通行状況下で直進車両である自車が左カーブ路に進入しようとする場合、あるいは右側交通対面通行状況下で直進車両である自車が右カーブ路に進入しようとする場合、対向車との相対距離が比較的短い距離として検出される場合があるが、このような場合に、接触回避支援制御が過剰に作動しないようにすることができる。
【0021】
もちろん、接触余裕値が第1閾値より小さい第2閾値以下となった場合には、接触回避支援制御が作動するので、確実に回避支援を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の一実施形態に係る車両用接触回避支援装置が組み込まれた車両の模式的ブロック構成図である。
【図2】レーダにより検出される横距離等の相対位置説明図である。
【図3】車両用接触回避支援装置が組み込まれた車両の接触回避支援動作の説明に供されるフローチャートである。
【図4】車両用接触回避支援装置が組み込まれた車両の接触回避支援動作の説明図である。
【図5】レーンキープアシスト制御によりカーブ路を走行中の車両の接触回避支援制御開始条件変更前の説明図である。
【図6】レーンキープアシスト制御によりカーブ路を走行中の車両の接触回避支援制御開始条件変更前後の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0024】
図1は、この発明のー実施形態に係る車両用接触回避支援装置が組み込まれた車両10(自車ともいう。)の模式的ブロック構成図である。
【0025】
車両10は、CPUがメモリに格納されたプログラムを実行することで実現される各種機能部(各種機能手段)を有する接触回避ECU(電子制御ユニット)20(主に接触回避支援手段等として機能する。)を備え、この接触回避ECU20の機能部である操舵アシスト制御部90(操舵アシスト制御手段)及び自動ブレーキ制御部92(自動ブレーキ制御手段)により、それぞれ操舵アシスト制御(レーンキープ操舵アシスト制御又は接触回避操舵アシスト制御)及び自動ブレーキ制御が実行される。
【0026】
また、車両10は、接触回避ECU20の機能部であるレーンキープアシスト部96(車線維持支援手段又はレーンキープアシスト手段という。)を有し、該レーンキープアシスト部96は、運転者によりレーンキープアシストシステムスイッチ(LKASスイッチ)82がオン状態とされたとき、自車10が車線に沿って走行するよう操舵アシスト制御部90を通じて車両10の操舵を適切に制御するレーンキープ操舵アシスト制御が実行される。なお、レーンキープアシストシステムは、LKAS(Lane Keep Assist System)と呼ばれる。
【0027】
また、車両10は、4輪の車輪22{前輪右輪(FRW)22R、前輪左輪(FLW)22L}、車輪24{後輪右輪(RRW)24R、後輪左輪(RLW)24L}を有し、4輪の車輪22、24には、それぞれ車輪速度センサ61〜64が取り付けられ、この車輪速度センサ61〜64から各車輪速度Vwが接触回避ECU20に取り込まれる。接触回避ECU20は、これら4つの車輪速度Vwの平均値を車両10の速度である車速Vsとして常に更新する。
【0028】
また、4輪の車輪22、24には、それぞれ制動力を発生するディスクブレーキ等により構成されるブレーキアクチュエータ51〜54が設けられている。ブレーキアクチュエータ51〜54の各制動力(制動油圧)は、油圧制御装置44内の4つの圧力調整器(不図示)によりそれぞれ独立に制御される。
【0029】
油圧制御装置44は、踏込量センサ42により検出されるブレーキペダル40の踏込量θbに応じた制動油圧を発生するとともに、接触回避ECU20を構成する自動ブレーキ制御部92から出力されるブレーキペダル40に依存しない制動力指令値Fb(いわゆるブレーキバイワイヤによる制動力指令値)に応じて上記の4つの圧力調整器(不図示)がそれぞれ制動油圧を発生し、ブレーキアクチュエータ51〜54に出力する構成とされている。
【0030】
なお、運転者によるブレーキペダル40の踏み込み操作に基づき踏込量センサ42から踏込量θbが入力され、かつ自動ブレーキ制御部92から制動力指令値Fbが入力された場合、油圧制御装置44は、両者のうち何れか大きい方に合わせて制動油圧を発生させる。
【0031】
従って、車両10の旋回時{例えば、車両10がスリップし、後述する操向ハンドル70の操作が検出されない(例えば、後述する操舵角速度dθs/dtがゼロ値)にも拘わらず転舵しているとき、又は操向ハンドル70の操作により操舵(転舵)しているときのいずれの場合も含む。}にブレーキアクチュエータ51〜54に伝達される制動油圧を制動力指令値Fbにより独立に制御すれば、左右の車輪22L、24L、22R、24Rの制動力に差を発生させて車両10のヨーモーメントを任意かつ的確に制御し、旋回時におけるアンダーステアの発生の回避及びオーバーステアやスピンの発生を回避して、車両の挙動を安定させることができる。また、制動時(ブレーキペダル40を踏んでいない自動ブレーキ時又はブレーキペダル40を踏んでいるとき)にも、各ブレーキアクチュエータ51〜54に伝達される制動油圧を独立に制御すれば、車輪22、24のロックを抑制するアンチロックブレーキ制御を行うことができる。
【0032】
一方、この実施形態において、4輪の車輪22、24中、前輪22(22R、22L)には、エンジン34からトランスミッション(T/M)36を通じて駆動力が伝達される。後輪24(24R、24L)は、車両10の走行によって回転する従動輪として機能する。
【0033】
エンジン34は、該エンジン34に設けられたスロットルバルブ33のスロットル開度を調整するスロットルアクチュエータ32を通じて回転数(エンジン回転数)が制御される。
【0034】
スロットルバルブ33のスロットル開度は、操作量センサ28により検出されるアクセルペダル26の操作角度(アクセル角度、操作量)θaに応じてエンジンECU30、及びスロットルアクチュエータ32を通じて調整される。
【0035】
車両10の操舵装置88は、基本的には、運転者により回転操作(操舵)される操向ハンドル70(ステアリングホイール)と、操向ハンドル70の操舵角θsを検出する操舵角センサ72と、電動パワーステアリング装置(EPS装置)を構成するステアリングアクチュエータ76と、前輪22(前輪左右輪)を操舵するラックアンドピニオン機構を有する操舵機構74とから構成される。
【0036】
この場合、操舵装置88は、運転者による操向ハンドル70の回転が、ステアリングシャフト及び連結軸を通じて操舵機構74を構成するピニオンに伝達され、ピニオンの回転によりラックが往復動し、ラックの往復動がタイロッドを通じて前輪22に伝達されることで、車両10の転舵が実行される通常の構成を有している。
【0037】
車両10の転舵が実行される際に、運転者による前記の操向ハンドル70の回転に伴う操舵角θsが、ステアリングアクチュエータ76に入力されることでステアリングアクチュエータ76の駆動力、すなわち操向ハンドル70の操作に依存する操舵アシストカが操舵機構74の前記ラックを通じて前輪22に伝達される。
【0038】
その一方、接触回避ECU20を構成する操舵アシスト制御部90から出力される操舵アシスト指令値Fs{ここでは、ステアバイワイヤによる操舵アシスト指令値で、回避操舵アシスト指令値Fsk又はレーンキープ(車線維持)操舵アシスト指令値Fsk}がステアリングアクチュエータ76に入力されることで、操舵アシスト指令値Fsに応じた操舵アシストトルク(ステアトルク)が操舵機構74に出力される。なお、操舵アシストは、ステアバイワイヤによる処理に限らず、操舵機構74のギヤ比を変える処理、前記EPS装置のアシスト値を変える処理としてもよい。
【0039】
なお、回避操舵アシスト力を発生させる場合に、回避操舵アシスト指令値Fseをステアリングアクチュエータ76に出力するとき、併せてあるいは独立に自動ブレーキ制御部92からブレーキペダル40に依存しない制動力指令値Fbを油圧制御装置44に出力しブレーキアクチュエータ51〜54に伝達される制動油圧を独立に制御し、左右の車輪22L、24L、22R、24Rの制動力に差を発生させて車両10にヨーモーメントを発生させることで回避操舵アシスト力を発生させるようにしてもよい。
【0040】
操舵機構74は、操舵アシスト指令値Fsに応じた操舵アシストトルクに対応する操舵アシストカを前輪22に出力することで、前輪22は、その操舵アシスト力に応じた転舵量だけ前輪22を転舵させることができる。
【0041】
操舵アシスト指令値Fs中、回避操舵アシスト指令値Fskは、基本的には、車両10の前方の障害物との接触を回避しようとする際に運転者の操向ハンドル70の回転操作を契機とし、回避操舵が十分でないと判断したときに、これをアシストするように発生する。
【0042】
一方、操舵アシスト指令値Fs中、レーンキープ操舵アシスト指令値Fskは、運転者によりレーンキープアシストシステムスイッチ82がオン状態とされたとき、自車10が車線を逸脱せずに車線に沿って走行するように操舵アシストトルクを発生する。
【0043】
また、車両10には、フロントグリル部等にレーダ80が設けられている。レーダ80は、車両10の前方に向けてミリ波等の電磁波を送信波として送信し、その反射波に基づいて障害物(例えば、前走車等)の大きさを検出するとともに障害物の車両10(自車)からの方向を検出し、同時に障害物と自車との間の相対距離L(障害物が車両である場合には、車間距離)、障害物と自車との相対速度Vr等を検出する相対位置検出手段等として動作する。なお、障害物との相対位置を検出する相対位置検出手段として、上記のミリ波レーダに代えて、レーザレーダあるいはステレオカメラ等を採用することができる。
【0044】
レーダ80により検出される相対位置等の内容について、図2を参照して説明する。なお、この実施形態では、障害物は、道路200上を矢印方向に走行する車両10(自車)の前方を走行している車両12(他車又は前走車)とするが、停止している障害物でも同様にこの発明を適用することができる。
【0045】
公知のように、レーダ80は、まず、車両10(自車であって、図2中、位置を変えて2箇所に描いている。)から前方の車両12までの相対距離Lを検出することができる。また、前方の車両12の車幅Woを検出することができる。なお、自車10の車幅Wmは、予め接触回避ECU20及びレーダ80の中のメモリ(記憶部)に記憶されている。次に、車両10の車両12に対する相対速度Vrを検出することができる。さらに、検出した車両10から前方の車両12までの相対距離Lと相対速度Vrとから接触余裕値としての接触余裕時間TTCを、TTC=L/Vrとして算出することができる。
【0046】
この場合、接触回避ECU20は、車両10(自車)自身の車幅Wmと、レーダ80により検出した前方の車両12の車幅Woと、所定の余裕幅(余裕横距離)αとから、例えば、車両10(自車)が、前方の車両12との接触を回避して追い越す際に必要な目標横回避距離Dtを、次の(1)式により算出する。
Dt=(Wo/2)+α+(Wm/2) …(1)
【0047】
車両10(自車)が前方の車両12との接触を回避して追い越すために最も横回避距離(横距離又はオフセットという。)Dが大きくなるのは、自車中心軸線10c上に前方の車両12の他車中心軸線12cが重なる場合、つまり車両10(自車)の真正面に前方の車両12が存在する場合である。
【0048】
車両10(自車)の真正面に前方の車両12が存在する場合でも、道路200上、車両10が同一の進路を走行していている他の車両12等に追いついたとき、その車両10がその進路を変えて前方の車両12の側方を通過し、その車両12の前方に出る追越しの際に、車両10が上記の目標横回避距離Dtだけ車幅方向(横方向)に移動すれば、余裕幅αに相当する横距離を残して、前方の車両12の側方をすり抜けることができる。なお、自車中心軸線10cと前方の車両12の他車中心軸線12cとの間の車幅方向の距離(偏差)を上述したように、オフセット(オフセット量)Dともいう。
【0049】
再び、図1において、車両10には、CMOSカメラ79(ビデオカメラ、撮像部、又は撮像手段ともいう。)とナビゲーションシステム81(道路形状推定部又は道路形状推定手段ともいう。)が搭載されている。
【0050】
CMOSカメラ79は、バックミラーの前のフロントウィンドシールドの内側に取り付けられており、レーンキープアシストシステムスイッチ82がオン状態とされているとき、前方の路面にある両側の白線(車線)を映像として捉え、レーンキープアシスト部96は、白線の特徴を持った線を抽出し、これまでに蓄積した車線との連続性を整合することで車線を認識し、自車線の両側の白線の、例えば中央を自車10が走行するように操舵アシスト制御部90からレーンキープ操舵アシスト指令値Fskをステアリングアクチュエータ76に出力する。なお、この実施形態において、レーンキープアシスト部96は、車速Vsが概ね65[km/h]〜100[km/h]の範囲で作動するようになっている。
【0051】
ナビゲーションシステム81は、GPS装置により車両10の自車位置を検出するとともに、道路地図情報を記憶しており、車両10の前方の道路地図情報に基づいて、車両10の走行中の道路の前方何メートル先にカーブ路が存在するか等の各種カーブ関連情報Ic(カーブ路有無情報、そのカーブ路が右カーブ路か左カーブ路のカーブ曲り方向情報、カーブ路走行中であることを示すカーブ路走行中情報、及びカーブ半径等)を常に接触回避ECU20に出力する。
【0052】
車両10には、さらに、車両10に発生しているヨーレートYrを検出するヨーレートセンサ83と、車両10に発生している横G(横加速度)を検出する横Gセンサ84も設けられている。
【0053】
この発明の一実施形態に係る車両用接触回避支援装置が組み込まれた車両10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作について説明する。
【0054】
ここで、まず、自動ブレーキ制御部92による自動ブレーキ制御の作動条件の例と、操舵アシスト制御部90による接触回避操舵アシスト制御(回避操舵アシスト制御)の作動条件の例について定性的に説明する。
【0055】
自動ブレーキ制御部92による自動ブレーキ制御の作動条件は、基本的には、車両10の前方の障害物に対する接触余裕値としての接触余裕時間TTC(TTC=L/Vr)に基づき判断される。車両10前方の障害物(前走車も含む。)との相対距離Lに基づき判断してもよい。
【0056】
接触余裕時間TTCが小さいほど、障害物との接触可能性が高くなるので、接触余裕時間TTCが、予め定めた閾値時間{通常モード時(通常モード走行時)には閾値時間Tth1(第1閾値)、LKASモード時(LKASモード走行時)には閾値時間Tth1(第1閾値)より短い閾値時間Tth2(第2閾値)(Tth2<Tth1)}より小さいとき、接触を回避するために、自動ブレーキ制御及び(又は)操向ハンドル70が操作されている場合には回避操舵アシスト制御が作動される。
【0057】
具体的に、自動ブレーキ制御部92は、必要な減速度を発生するために、ブレーキアクチュエータ51〜54に対する適切な制動力を付与する制動力指令値Fbを算出し、油圧制御装置44に出力する。これにより制動力指令値Fbに応じた制動油圧が油圧制御装置44で発生され、発生された制動油圧によりブレーキアクチュエータ51〜54を通じて車輪22、24に対して制動力が加えられる。
【0058】
なお、自動ブレーキ制御部92は、アクセルペダル26の操作量θaからアクセルペダル26が踏まれていると判断した場合には、同時にスロットルアクチュエータ32を制御し、スロットルバルブ33を所定量閉方向に操作(スロットルバイワイヤ)させるようにしてもよい(図1中、接触回避ECU20からスロットルアクチュエータ32へ向かう点線の矢線参照)。
【0059】
この実施形態において、図2に示すように、自動ブレーキ制御領域Bca(自車前方の車幅方向の第1領域)は、車両10の前方の車幅方向の長さに設定される。すなわち、車両10(自車)の車幅Wmと同等の領域に設定される(Bca≒Wm)。車両10の前方の車両12が、この自動ブレーキ制御領域Bcaに入っているかどうかがレーダ80により検出され、入っていた場合には、自動ブレーキ制御フラグfbがオン(fb→ON)状態にされる。換言すれば、前方の車両12の他車中心軸線12cと自車中心軸線10cとのオフセットD(偏差、ずれ量、横距離)が車幅Wmの半分以下{D≦(Wm/2)}であるときに自動ブレーキ制御フラグfbがオン(fb→ON)状態にされる。
【0060】
図2中、下側に描いた車両10の自動ブレーキ制御フラグfbはオン状態となり、上側に描いた車両10の自動ブレーキ制御フラグfbはオフ状態になる。
【0061】
この実施形態において、自動ブレーキ制御部92は、自動ブレーキ制御フラグfbがオン状態(fb=ON)になっている場合に、上記の接触余裕時間TTCが閾値(通常モード時には閾値Tth1、LKASモード時には閾値Tth2)より小さい場合であって、かつ操向ハンドル70の操作が検出されなかったとき、例えば、操舵角センサ72から出力される操舵角θsの時間変化値、すなわち操舵角速度dθs/dt(時間微分値)がdθs/dt≒0であって、かつ操向ハンドル70が中点位置にあるとき、実際に自動ブレーキ制御が作動する。このとき、自動ブレーキ制御部92は、制動力指令値Fbを発生する(Fb>0)。
【0062】
一方、操舵アシスト制御部90による回避操舵アシスト制御の作動条件は、基本的には、上記の接触余裕時間TTCに加えて、操舵角センサ72より得られる中点(車両10が所定時間直線走行しているとみなしたときの操舵角θ)からの操舵角θs、この操舵角θsを時間微分した操舵角速度dθs/dt、横Gセンサ84で検出される横G、及びヨーレートセンサ83で検出されるヨーレート(実ヨーレート)Yrを考慮して判定される。
【0063】
操舵角θs、操舵角速度dθs/dt、横G、及びヨーレートYr等を変数として、運転者の回避操舵操作状況判断値SEが、予め定めた関数であるSE=SE(θs,dθs/dt,横G,Yr)として数値化され(SEが大きい値である程、運転者によりより大きく回避操舵操作がなされていると判断されるものとする。)、この値が、回避操舵アシスト制御が必要な値(閾値Thse)あるいはこれを下回る値になっていると判定した場合、回避操舵アシスト制御が作動する。
【0064】
この場合、操舵角θsと車速Vsに応じて算出される基準ヨーレートYsがアシストヨーレートYaに変更される。
【0065】
アシストヨーレートYaを算出する際、上述した目標横回避距離Dtと、横距離D(自車中心軸線10cに対する他車中心軸線12cとの間のずれ量)との差に所定ゲインを乗算してアシスト横加速度を算出する。さらにこのアシスト横加速度を車速Vsで除算してアシストヨーレートYaを算出する。
【0066】
操舵アシスト制御部90は、このようにして算出したアシストヨーレートYaを発生させる回避操舵アシスト指令値Fseをステアリングアクチュエータ76に出力する。
【0067】
これによりステアリングアクチュエータ76から回避操舵アシスト指令値Fseに応じた操舵アシストトルクが操舵機構74に加えられることで、車両10の旋回挙動が前記アシストヨーレートYaにより制御されアシストされる。
【0068】
この実施形態において、回避操舵アシスト制御領域は、車幅方向(道路200の幅方向)上、上述した自動ブレーキ制御領域Bcaと同等の領域に設定しているが、これより少し広い領域に設定してもよい。
【0069】
車両10の前方の車両12が、回避操舵アシスト制御領域に入っているかどうかは、レーダ80により検出され、入っていた場合には、操舵アシストフラグfs(このフラグは、回避操舵アシスト指令値Fseを発生するか否かのフラグ)がオン(fs→ON)状態にされる。
【0070】
操舵アシストフラグfsがオン状態になっているときに、上記の運転者の回避操舵操作状況判断値SEを判定し、この回避操舵操作状況判断値SEの値が、回避操舵アシスト制御が必要な値である閾値Thseあるいはこれを下回る値になっていると判定した場合に(SE<Thse)、回避操舵アシスト制御が作動し、回避操舵アシスト指令値Fseを発生する(Fse>0)。
【0071】
なお、操舵アシストフラグfsがオン状態になっている場合であっても、上記の回避操作状況SEの値から、操舵アシスト操作が必要ではないと判定したとき、回避操舵アシスト指令値Fseが発生されない(Fse=0)。
【0072】
次に、この実施形態に係る接触回避支援装置が搭載された車両10の接触回避ECU20による動作を図3のフローチャートを参照して説明する。
【0073】
ステップS1において、接触回避ECU20は、自車10がレーンキープアシスト(車線維持支援)システムモード(LKASモード)で走行しているかどうかをLKASスイッチ82の状態(オン状態かオフ状態)により判定する。
【0074】
LKASスイッチ82がオン状態であってレーンキープアシスト部96によるLKASモードで走行しているとき、ステップS1の判断が肯定的とされる。
【0075】
LKASスイッチ82がオフ状態であってステップS1の判断が否定的とされた場合には、通常モードとされ、ステップS2に示すように、自動ブレーキ制御及び回避操舵アシスト制御の開始条件が、デフォルト値、例えば、図4に示す第1閾値(第1閾値距離)Lth1に設定される。
【0076】
その一方、ステップS1の判断が肯定的とされた場合には、LKASモードとされ、ステップS3に示すように、自動ブレーキ制御及び回避操舵アシスト制御の開始条件が、例えば、図4に示す第2閾値(第2閾値距離)Lth2に設定される。
【0077】
次いで、ステップS4において、道路200上を走行中の車両10は、レーダ80により車両10(自車)の前方の車両12の相対位置(相対距離L、車幅Wo、相対速度Vr、接触余裕時間TTC)を検出する。このとき、接触回避ECU20は、目標横回避距離Dtを算出する。なお、相対位置の検出処理は、msオーダーでタイマ割り込みにより常に行われる。
【0078】
ステップS5において、車両12が自動ブレーキ制御領域Bca又は回避操舵アシスト制御領域内に位置するかどうかを判定し、いずれの制御領域外である場合には、ステップS6において、自動ブレーキ制御フラグfb及び操舵アシストフラグfsをともにオフとして(fb→OFF、fs→OFF)、自動ブレーキ制御及び回避操舵アシスト制御を実行しない。
【0079】
その一方、ステップS5において、車両10(自車)の前方に位置する車両12が自動ブレーキ制御領域Bca又は回避操舵アシスト制御領域内に位置していた場合には、ステップS7において、自動ブレーキ制御フラグfb及び操舵アシストフラグfsをともにオンとして(fb→ON、fs→ON)、上述した接触余裕時間TTC及び回避操舵操作状況判断値SEに応じて自動ブレーキ制御及び回避操舵アシスト制御を実行する。
【0080】
図4を参照して自動ブレーキ制御及び操舵アシスト制御のLKASモード時と通常モード時との間の差異を定性的に説明すると、レーダ80により車両10(自車)の前方の車両12の相対位置(相対距離L、車幅Wo、相対速度Vr、接触余裕時間TTC)を検出した場合に、車両10と前方の車両12との間の相対距離L(図2参照)が、第1閾値Lth1(図4参照)より離れているとき、通常モード時及びLKASモード時ともに、フラグfb(fs)は、OFF(fb=OFF、fs=OFF)とされ(例えば、図4の時点t0〜t1間)、自動ブレーキ制御及び回避操舵アシスト制御が実行されることがない。
【0081】
通常モード時において、相対位置が、第1閾値Lth1より短くなった場合に、フラグfb(fs)がON(fb=ON、fs=ON)とされ、自動ブレーキ制御及び回避操舵アシスト制御が待機状態とされる(時点t1〜t3)。
【0082】
その一方、LKASモード時には、検出した相対位置が、第1閾値Lth1より短い第2閾値Lth2となった場合に、フラグfb(fs)がONとされ、自動ブレーキ制御及び回避操舵アシスト制御が待機状態とされる。
【0083】
実際上、通常モード時には、時点t1以降において、車両10の車両12に対する接触余裕時間TTCが閾値Tth1より小さくなった場合には自動ブレーキ制御及び(又は)回避操舵アシスト制御が実行される(例えば、図4の時点t1bで示す時点参照)。その一方、LKASモード時には、接触余裕時間TTCが閾値Tth2より小さくなった場合には自動ブレーキ制御及び(又は)回避操舵アシスト制御が実行される(例えば、図4の時点t2bで示す時点参照)。
【0084】
ここで、LKASモードと通常モードとで、制御開始条件を変更する理由について説明する。
【0085】
自車10の自動ブレーキ制御及び又は回避操舵アシスト制御(以下、自動ブレーキ制御等という。)を行う、例えば接触余裕値La(距離)の閾値が、図5に示すように、接触回避支援範囲280において第1閾値Lth1(第1閾値距離)に設定されている場合、走行中の自車10が、直線路310(位置x1〜位置x2までの間)とカーブ路312(位置x2〜位置x4までの間)とを有する道路300の自車線302中、カーブ路進入口の位置x2に位置するときに、対向車11が反対車線304の位置x3近傍に存在することとなったとき、接触余裕値Laが第1閾値Lth1より小さいので(La≦Lth1)自動ブレーキ制御部92による自動ブレーキ制御が作動する可能性がある。
【0086】
このように、自車10及び対向車11が、それぞれ自車線302内(道路中央の白線316と縁側の白線314との間)及び対向車線304内(道路中央の白線316と縁側の白線318との間)を道路形状に沿って正常に走行している(自車10は、LKASモードで走行しているものとする。)にも拘わらず、レーダ80による相対位置及び相対速度情報のみにより接触可能性を判断している場合、過剰作動が起こる可能性がある。
【0087】
そこで、LKASモードで自車10が走行中である場合、ステップS3で説明したように、自動ブレーキ制御等の開始条件が変更される。
【0088】
実際上、LKASモードで走行中には、自車10が自車線302を逸脱して走行する可能性はほとんどない。そこで、LKASモード時には、対向車線304を走行している対向車11等への回避支援制御の過剰作動を防止するために、図6に示すように、接触回避支援範囲280から、より狭い範囲の接触回避支援範囲282に設定を変更し、自車10の自動ブレーキ制御を行う接触余裕値Laの第1閾値Lth1を、該第1閾値Lth1より小さい第2閾値Lth2に設定を変更する。
【0089】
このように設定を変更することで、走行中の自車10が、直線路310とカーブ路312とを有する道路300の自車線302中、カーブ路進入口の位置x2に位置するときに、対向車11が反対車線の位置x3近傍に存在しても、対向車11は、接触回避支援範囲282内に位置することにはならないので自動ブレーキ制御部92による自動ブレーキ制御の作動が防止(回避)され、レーダ80による相対位置及び相対速度情報のみにより接触可能性を判断している場合であっても、過剰作動が起こることがない。
【0090】
実際上、図5に示した広くて長い接触回避支援範囲280から、図6に示した狭くて短い接触回避支援範囲282への設定の変更は、車速Vsが遅くなるほど狭くて短い接触回避支援範囲とすることが好ましい。
【0091】
以上説明したように、この実施形態に係る車両用接触回避支援装置は、車両10と該車両10の前方の障害物、例えば、車両12(前走車あるいは先行車ともいう。)や対向車11等との位置関係に応じて、前記障害物に対する車両10の接触回避の支援を行う。この支援を行う際に、相対位置検出手段としてのレーダ80は、車両10と該車両前方の前記障害物との相対位置Lを検出する。
【0092】
そして、接触回避支援手段としての自動ブレーキ制御部92は、基本的には、換言すれば、LKASシステムのレーンキープアシスト部96が作動していないときには、レーダ80によって検出された車両前方の前記障害物との相対位置に基づき得られる接触余裕値Laが第1閾値Lth1より小さい場合に、前記障害物に対する当該車両10の接触回避支援を行う。
【0093】
その一方、LKASシステムのレーンキープアシスト部96が作動しているとき、CMOSカメラ79及びレーンキープアシスト部96は、車両10が走行する走行路両側の白線314、316を認識し、認識した両側の白線314、316内に車両10を位置させる制御を行う。
【0094】
この場合、接触回避支援手段としての自動ブレーキ制御部92は、レーンキープアシスト部96が作動し、このレーンキープアシスト部96によって車両10が制御されているときは、第1閾値Lth1を、該第1閾値Lth1より小さい第2閾値Lth2に置き換えて、前記障害物である車両12や対向車11に対する当該車両10の接触回避支援を行うようにする。
【0095】
実際上、車両10がレーンキープアシスト部96によって制御されているときは、車両10が車線(両側の白線316、314により形成される自車線302)に沿うよう操舵機構74の動きを適切に制御している。
【0096】
このため、接触余裕値Laの閾値を、レーンキープアシスト部96によって車両10が制御されていないときの第1閾値Lth1より小さい第2閾値Lth2に置き換えて、前記障害物である車両12及び対向車11に対する車両10の接触回避支援を行うようにすることで、接触回避支援処理が過剰に作動する状況を防止することができる。
【0097】
結果として、車両10は、レーンキープ機能と接触回避支援機能に関し、的確な協調制御を行うことができる。
【0098】
この場合、好ましくは、接触回避ECU20は、レーンキープアシスト部96によって車両10が制御されているときであっても、CMOSカメラ79を通じてレーンキープアシスト部96により認識した両側の白線314、316内、すなわち自車が走行する車線である自車線302内に、相対位置検出手段としてのレーダ80が前記障害物としての車両12等を検出したときには、第2閾値Lth2を第1閾値Lth1にもどし、レーンキープアシスト部96によって車両10を制御していないときと同じタイミングで接触回避支援制御を開始するようにする。このようにすれば、接触回避支援制御が必要なときに支援制御が遅れてしまうことを防止できる。
【0099】
より好ましくは、レーンキープアシスト部96によって車両10が制御されているとき、車両前方の道路形状を推定する道路形状推定手段としてのナビゲーションシステム81により前方の道路がカーブ路312であると推定されたとき、レーンキープアシスト部96によって車両10を制御していないときよりも遅いタイミング、換言すれば、第1閾値Lth1を、第2閾値Lth2に設定変更して接触回避支援制御を開始することで、自車10が、図5、図6に示したような左側交通対面通行道路(又は右側交通対面通行道路)で直線路310を直進している自車10の前方に、例えば見通しの良い左カーブ路312(上記右側交通対面通行道路の場合には、見通しの良い右カーブ路)が存在し、カーブ路312の進入口、あるいはカーブ路312上で、対向車線304を走行する対向車11をレーダ80等の相対位置検出手段により捕捉した場合、接触回避支援処理が過剰に作動しないようにすることができる。
【0100】
同様に、レーダ80によって検出された障害物が、白線316の外側、すなわち自車線302の外側の対向車線304に存在する対向車11であるか否かを判断する対向車判断手段としてのCMOSカメラ79を備えることが好ましい。この場合においても、レーンキープアシスト部96によって車両10が制御されていて、かつ対向車判断手段としてのCMOSカメラ79により前記障害物が対向車11であると判断したとき、レーンキープアシスト部96によって車両10を制御していないときよりも遅いタイミング、換言すれば、第1閾値Lth1を、第2閾値Lth2に設定して接触回避支援制御を開始することで、自車10がカーブ路ではなく直線両側交通路を走行している場合においても、接触回避支援処理が過剰に作動しないようにすることができる。
【0101】
接触回避支援手段は、上述したレーダ80によって検出された前記障害物との前記相対位置に基づいて、自動ブレーキ制御を行う自動ブレーキ制御部92に限らず、レーダ80によって検出された前記障害物との前記相対位置に基づいて、車両10の操舵を、前記障害物との接触を回避する方向に操舵アシスト制御する操舵アシスト制御部90にも適用することができる。
【0102】
なお、この発明は、上述の実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0103】
10…車両 20…接触回避ECU
22、24…車輪 79…CMOSカメラ
80…レーダ 81…ナビゲーションシステム
83…レーンキープアシストシステムスイッチ(LKASスイッチ)
90…操舵アシスト制御部 92…自動ブレーキ制御部
96…レーンキープアシスト部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両と該車両前方の障害物との位置関係に応じて、前記障害物に対する前記車両の接触回避の支援を行う車両用接触回避支援装置において、
前記車両と該車両前方の前記障害物との相対位置を検出する相対位置検出手段と、
前記相対位置検出手段によって検出された車両前方の前記障害物との相対位置に基づき得られる接触余裕値が第1閾値より小さい場合に、前記障害物に対する当該車両の接触回避支援を行う接触回避支援手段と、
前記車両が走行する走行路両側の白線を認識し、認識した前記両側の白線内に前記車両を位置させる制御を行うレーンキープアシスト手段と、を備え、
前記接触回避支援手段は、
前記レーンキープアシスト手段によって前記車両が制御されているときは、前記第1閾値を該第1閾値より小さい第2閾値に置き換えて、前記障害物に対する当該車両の接触回避支援を行う
ことを特徴とする車両用接触回避支援装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用接触回避支援装置において、
前記接触回避支援手段は、
前記レーンキープアシスト手段によって前記車両が制御されているときであっても、該レーンキープアシスト手段により認識した前記両側の白線内に、前記相対位置検出手段が前記障害物を検出したときには、前記第2閾値を前記第1閾値にもどし、前記レーンキープアシスト手段によって前記車両を制御していないときと同じタイミングで接触回避支援制御を開始する
ことを特徴とする車両用接触回避支援装置。
【請求項3】
請求項1記載の車両用接触回避支援装置において、
さらに、前記車両前方の道路形状を推定する道路形状推定手段を備え、
前記接触回避支援手段は、
前記レーンキープアシスト手段によって前記車両が制御されていて、かつ前記道路形状推定手段により前方の道路がカーブ路であると推定されたとき、前記レーンキープアシスト手段によって前記車両を制御していないときよりも遅いタイミングで接触回避支援制御を開始する
ことを特徴とする車両用接触回避支援装置。
【請求項4】
請求項1記載の車両用接触回避支援装置において、
さらに、前記相対位置検出手段によって検出された障害物が、対向車であるか否かを判断する対向車判断手段を備え、
前記接触回避支援手段は、
前記レーンキープアシスト手段によって前記車両が制御されていて、かつ前記対向車判断手段により前記障害物が前記対向車であると判断したとき、前記レーンキープアシスト手段によって前記車両を制御していないときよりも遅いタイミングで接触回避支援制御を開始する。
ことを特徴とする車両用接触回避支援装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用接触回避支援装置において、
前記接触回避支援手段は、
前記相対位置検出手段によって検出された前記障害物との前記相対位置に基づいて、自動ブレーキ制御を行う自動ブレーキ制御手段を有する
ことを特徴とする車両用接触回避支援装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用接触回避支援装置において、
前記接触回避支援手段は、
前記相対位置検出手段によって検出された前記障害物との前記相対位置に基づいて、該車両の操舵を、前記障害物との接触を回避する方向に操舵アシスト制御する操舵アシスト制御手段を有する
ことを特徴とする車両用接触回避支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−51570(P2011−51570A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205045(P2009−205045)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】