説明

車両用表示装置

【課題】運転者からの視認性が悪化した状態においても、有用な画像情報を表示して、運転の支援を行うことが可能な車両用表示装置を提供する。
【解決手段】車両に搭載され、乗員に各種の画像情報を表示する表示手段と、車両の現在位置を特定する位置特定手段と、車両の走行方向を特定する走行方向特定手段と、車両の走行時に該車両の乗員が視認することが可能と予想される該車両の周囲の風景が撮影された車両周囲画像を予め記憶する車両周囲画像記憶手段と、車両周囲画像を表示手段に表示するための、予め定められた車両周囲画像表示条件が成立したか否かを判定する車両周囲画像表示条件判定手段と、車両周囲画像表示条件が成立したと判定したときに、車両周囲画像記憶手段から車両の現在位置および走行方向に対応した車両周囲画像を読み出して、運転支援画像として表示手段に表示する表示制御手段と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の運転に際し特に注意が必要な交差点やカーブ等の特定地域において、道路側に設置されたカメラやセンサ等を有する路側設備から、当該特定地域の道路およびその道路に存在する車両や歩行者等に関する詳細な情報を路車間通信を介して取得し、この取得した情報に基づいて種々の運転支援情報を車載モニタに表示する予防安全システムの開発が進められている。例えば、交差点等の特定地域において、道路側に設けられた路側カメラによる撮像画像のデータを路車間通信で取得し、この取得したデータに基づいて、表示装置の表示画像をナビゲーション画像から路側カメラによる撮像画像に切り替えて表示することで、車両の運転者の周辺状況に対する認識を支援する運転支援画像表示システムが考案されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、走行中の状況に応じて必要な情報を、安全かつ確実に車両の乗員に認識させるために、ヘッドアップディスプレイを用いて、必要な情報を車両のフロントガラスに表示して、乗員が視認できるようにする車両用情報表示システムが考案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−021234号公報
【特許文献2】特開2005−199992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の例では、例えば悪天候により、運転者からの視認性が悪化している場合に関しては、路側カメラの画像も視認性が悪化しているため、運転者に対して有用な情報を提供できないという問題がある。
【0006】
また、特許文献2の例においても、悪天候による運転者からの視認性が悪化したときの、画像情報表示については、開示・示唆ともない。
【0007】
上記問題点を背景として、本発明の課題は、運転者からの視認性が悪化した状態においても、有用な画像情報を表示して、運転の支援を行うことが可能な車両用表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0008】
上記課題を解決するための車両用表示装置は、車両に搭載され、乗員に各種の画像情報を表示する表示手段と、車両の現在位置を特定する位置特定手段と、車両の走行方向を特定する走行方向特定手段と、車両の走行時に該車両の乗員が視認することが可能と予想される該車両の周囲の風景が撮影された車両周囲画像を予め記憶する車両周囲画像記憶手段と、車両周囲画像を表示手段に表示するための、予め定められた車両周囲画像表示条件が成立したか否かを判定する車両周囲画像表示条件判定手段と、車両周囲画像表示条件が成立したと判定したときに、車両周囲画像記憶手段から車両の現在位置および走行方向に対応した車両周囲画像を読み出して、運転支援画像として表示手段に表示する表示制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
近年、例えばグーグル社のストリートビューのように、インターネット上で世界の各地点の3D画像を見ることができるサービスも開始されている。この3D画像を入手できれば、3Dの360°パノラマ画像を入手できる(ストリートビュー紹介サイト:http://www.westboundi.com/)。これらの3D画像は、予め車両等で撮影したものを利用している。本発明では、このように事前に撮影された画像を取得して表示する。
【0010】
好天時の運転であれば、運転者(乗員)は前方視界を確認できるので、一般的な状況ではこのような運転支援画像は不要と思われる。車両を停止させて、行きたいポイントを探す場合においては、通常のパソコン上での検索と差異がないので運転支援画像を用いる必要性は低い。また、前方にトラック等の大型車が走行していた場合、さらにその前方の情報を入手したいとの要求はあると考えるが、ストリートビューの場合は過去の画像のため、このような場合には有用性は低いと思われる。しかし、霧や雨、雪といった悪天候時に、「もし好天であった場合にどのように見えているのか」といった場合には有用である。他にも、積雪により路側帯が不明な場合にも有用と考えられる。上記構成によって、例えば車両前方の視認性が悪化したときに、視認性の悪化を補って運転支援を行うことが可能となる。
【0011】
また、本発明の車両用表示装置は、車両の外部から、車両周囲画像を取得する車両周囲画像取得手段を備え、車両周囲画像記憶手段は、取得した車両周囲画像を記憶する。
【0012】
上記構成によって、車両用表示装置が現在走行中の地点・走行方向に対応した車両周囲画像を記憶していない場合でも、外部から対応する車両周囲画像をできるので、運転支援を行うことが可能となる。
【0013】
また、本発明の車両用表示装置は、車両の周囲の状態を取得する車両周囲状態取得手段と、取得した車両周囲状態に基づいて、該車両の周囲が悪天候であるか否かを判定する天候判定手段と、を備え、車両周囲画像表示条件判定手段は、天候判定手段が車両の周囲が悪天候であると判定したときに車両周囲画像表示条件が成立したと判定する。
【0014】
上記構成によって、視認性が悪化する悪天候時に車両が走行しているときに、表示手段に例えば好天候時に撮影しておいた車両周囲画像を取得・表示することで、視認性の悪化を補って運転支援を行うことが可能となる。
【0015】
また、本発明の車両用表示装置における車両周囲状態取得手段は、車両の周囲の天候情報を取得する天候情報取得手段を含み、天候判定手段は、取得した天候情報と車両の現在位置とに基づいて、該車両の周囲が悪天候であるか否かを判定する。
【0016】
車両の周囲の天候情報は、例えばTVやラジオ等の放送局、インターネットから取得可能である。上記構成によって、車両の周囲が悪天候のときに、乗員の操作を必要とすることなく、運転支援を行うことが可能となる。
【0017】
また、本発明の車両用表示装置における車両周囲状態取得手段は、車両のワイパの動作状態を検出するワイパ状態検出手段を含み、天候判定手段は、ワイパの動作状態に基づいて、車両の周囲が悪天候であるか否かを判定する。
【0018】
雨天時においては、ワイパを作動させて前方の視界を確保する。上記構成によっても、新たな機材を追加することなく、車両の周囲が悪天候であるか否かを判定することができる。
【0019】
また、本発明の車両用表示装置における車両周囲状態取得手段は、車両の灯火の動作状態を検出する灯火状態検出手段を含み、天候判定手段は、灯火の動作状態に基づいて、車両の周囲が悪天候であるか否かを判定する。
【0020】
上記構成によっても、新たな機材を追加することなく、車両の周囲が悪天候であるか否かを判定することができる。
【0021】
また、本発明の車両用表示装置における前方状態検出手段は、車両の走行方向前方の画像を撮影する撮影手段を含み、天候判定手段は、撮影した車両の走行方向前方の画像に基づいて、車両の周囲が悪天候であるか否かを判定する。
【0022】
近年、前方を走行する車両に適切な車間距離を保ちつつ追従走行するシステムや、道路上のレーンマーカを検出し車線に沿って走行することを支援する車線追従制御装置(レーンキープサポートシステムともいう)等が普及しつつある。これらのシステムでは、車両の前方を撮影するための撮影手段を搭載している。上記構成によって、他のシステムの撮影手段を用いることで、比較的低コストで車両の周囲が悪天候であるか否かを判定することができる。
【0023】
また、本発明の車両用表示装置は、乗員が操作入力を行う操作入力手段と、乗員の操作入力を検出する操作入力検出手段と、を備え、車両周囲画像表示条件判定手段は、操作入力検出手段が乗員による予め定められた操作を検出したときに車両周囲画像表示条件が成立したと判定する。
【0024】
上記構成によって、車両の周囲の状況によらず、乗員の判断すなわち操作入力を優先して、運転支援画像を表示して運転支援を行うことが可能となる。
【0025】
また、本発明の車両用表示装置は、電子地図データを記憶する地図データ記憶手段を備え、表示制御手段は、車両周囲画像表示条件判定手段が車両周囲画像表示条件が成立しないと判定したときに、表示手段に予め定められた範囲の電子地図データを表示する。
【0026】
表示手段に電子地図データを表示し、その地図上に車両の現在位置したり、目的地までの案内経路を探索・案内する車両用ナビゲーション装置が広く普及している。上記構成によって、車両用ナビゲーション装置に本発明の構成を組み込んで、表示手段その他のハードウェアを共用することができ、装置コストの上昇を抑制することが可能となる。
【0027】
また、本発明の車両用表示装置は、表示手段としてヘッドアップディスプレイを用い、該ヘッドアップディスプレイにより運転支援画像が虚像として車両の乗員に視認され、該運転支援画像を該車両の前方の風景と重畳して表示する。
【0028】
表示された情報を視認する際における運転者の視線の移動を低減するために、各種情報が示された画像を車両のフロントガラスに反射させ、その画像が虚像として車両の乗員に視認されるように表示する技術、いわゆるヘッドアップディスプレイ(HUD)が普及しつつある。上記構成によって、運転者の視界を妨げることなく、必要な情報(運転支援画像)を、安全かつ確実に運転者に視認させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】車両用表示装置のシステム構成図。
【図2】車両用ナビゲーション装置の構成を示すブロック図。
【図3】車両周囲画像の記憶例を示す図。
【図4】表示制御処理を説明するフロー図。
【図5】表示器における運転支援画像の表示例を示す図。
【図6】ヘッドアップディスプレイの構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の車両用表示装置について、車両用表示装置を車両用ナビゲーション装置に適用した例を挙げて、図面を用いて説明する。図1に、車両用表示装置の構成図を示す。本構成では、車両110に搭載された車両用ナビゲーション装置(以下、ナビゲーション装置と略称)100と、車外のデータサーバ200とを含んでいるが、データサーバ200を含まない構成としてもよい。そして、ナビゲーション装置100に記憶されている車両周囲画像を読み出す、あるいはデータサーバ200から車両周囲画像を取得することで、ナビゲーション装置100の表示器10(詳細は後述)に運転支援画像を表示する。
【0031】
図2を用いて、ナビゲーション装置100の構成について説明する。ナビゲーション装置100は、位置検出器1,地図データ入力器6,操作スイッチ群7,リモートコントロール(以下リモコンと称する)センサ11,音声案内などを行う音声合成回路24,スピーカ15,メモリ9,表示器10,送受信機13,ハードディスク装置(HDD)21,LAN(Local Area Network) I/F(インターフェース)26,これらの接続された制御回路8,リモコン端末12等を備えている。
【0032】
位置検出器1は、周知の地磁気センサ2,車両110の回転角速度を検出するジャイロスコープ3,車両110の走行距離を検出する距離センサ4,およびGPS衛星からの電波に基づいて車両110の位置を検出するGPS受信機5を有している。これらのセンサ2,3,4,5は各々が性質の異なる誤差を持っているため、複数のセンサにより各々補完しながら使用するように構成されている。なお、精度によっては前述したうちの一部のセンサで構成してもよく、さらに、ステアリングの回転センサ(図示せず)や各転動輪の車輪センサ例えば車速センサ23等を用いてもよい。なお、位置検出器1が本発明の位置特定手段,走行方向特定手段に相当する。
【0033】
操作スイッチ群7は、例えば表示器10と一体になった周知のタッチパネル22もしくはメカニカルなスイッチが用いられる。メカニカルスイッチの他に、マウスやカーソル等のポインティングデバイスを用いてもよい。
【0034】
また、マイク31および音声認識ユニット30を用いて種々の指示を入力することも可能である。これは、マイク31から入力された音声信号を、音声認識ユニット30において周知の隠れマルコフモデル等の音声認識技術により処理を行い、その結果に応じた操作コマンドに変換するものである。これら、本発明の操作入力手段に相当する、操作スイッチ群7,リモコン端末12,タッチパネル22,およびマイク31により、種々の指示を入力することが可能である。
【0035】
制御回路8は通常のコンピュータとして構成されており、周知のCPU81,ROM82,RAM83,入出力回路であるI/O84,A/D変換部86,描画部87,時計IC88,画像処理部89およびこれらの構成を接続するバスライン85が備えられている。CPU81は、HDD21に記憶されたナビプログラム21pおよびデータにより制御を行う。なお、制御回路8が本発明の位置特定手段,走行方向特定手段,車両周囲画像表示条件判定手段,表示制御手段,車両周囲画像取得手段,天候判定手段,操作入力検出手段に相当する。
【0036】
A/D変換部86は周知のA/D(アナログ/デジタル)変換回路を含み、例えば位置検出器1などから制御回路8に入力されるアナログデータをCPU81で演算可能なデジタルデータに変換するものである。
【0037】
描画部87は、HDD21等に記憶された道路地図データ21m(後述),表示用のデータや表示色のデータから表示器10に表示させるための表示画面データを生成する。
【0038】
時計IC88はリアルタイムクロックICとも呼ばれ、CPU81からの要求に応じて時計・カレンダーのデータを送出あるいは設定するものである。CPU81は時計IC88から日時情報を取得する。なお、GPS受信機5で受信したGPS信号に含まれる日時情報を取得してもよい。また、CPU81に含まれるリアルタイムカウンタを基にして日時情報を取得してもよい。
【0039】
画像処理部89は、公知のパターン認識などの技術によってカメラ34によって撮影された画像の解析を行う画像処理回路を含んで構成される。画像処理部89では、例えば、カメラ34により撮影された画像信号に一般的な2値化処理を施すことにより、ピクセル毎のデジタル多値画像データに変換する。そして、得られた多値画像データから、一般的な画像処理手法を用いて所望の画像部分を抽出する。
【0040】
HDD21には、ナビプログラム21pの他に位置検出の精度向上のためのいわゆるマップマッチング用データ、道路の接続を表した道路データ(すなわち電子地図データ)を含む道路地図データベースである道路地図データ21mが記憶される。道路地図データ21mは、表示用となる所定の地図画像情報を記憶するとともに、リンク情報やノード情報等を含む道路網情報を記憶する。リンク情報は、各道路を構成する所定の区間情報であって、位置座標,距離,所要時間,幅員,車線数,制限速度等がリンク属性に含まれる。また、ノード情報は、交差点(分岐路)等を規定する情報であって、位置座標,右左折車線数,接続先道路リンク,距離コスト等から構成される。また、リンク間接続情報には、通行の可不可を示すデータなどが設定されている。なお、道路地図データ21mが本発明の地図データ記憶手段に相当する。
【0041】
HDD21には経路案内の補助情報や娯楽情報、その他にユーザが独自にデータを書き込むことができ、ユーザデータ21uとして記憶される。また、ナビゲーション装置100の動作に必要なデータや各種情報はデータベース21dとしても記憶される。
【0042】
ナビプログラム21p,道路地図データ21m,ユーザデータ21u,およびデータベース21dは、地図データ入力器6を介して記憶媒体20からそのデータの追加・更新を行うことが可能である。記憶媒体20は、そのデータ量からCD−ROMやDVDを用いるのが一般的であるが、例えばメモリカード等の他の媒体を用いてもよい。また、外部ネットワークを介してデータをダウンロードする構成を用いてもよい。
【0043】
また、データベース21dには、車両周囲画像が記憶されている。車両周囲画像は、記憶媒体20から、予めデータベース21dに登録しておくことができる。また、データサーバ200から取得して記憶することもできる(詳細は後述)。図3に、データベース21dにおける車両周囲画像の記憶例を示す。地点(上述のリンクを用いてもよい)毎に、例えば好天候時の昼間に、その地点において走行中の車両110から乗員が視認することが可能と予想される車両100の周囲の所定方向の風景を撮影し、撮影した画像画像を撮影した地点とを関連付けて、車両周囲画像として記憶する。図3の例では、地点Aにおいては、東,南,西,北の4方向の車両周囲画像が記憶されている。方向はさらに細かくしてもよく、全周囲を撮影したものを車両周囲画像としてもよい。なお、データベース21dが本発明の車両周囲画像記憶手段に相当する。
【0044】
図2に戻り、メモリ9はEEPROM(Electrically Erasable & Programmable Read Only Memory:電気的消去・プログラム可能・読出し専用メモリ)やフラッシュメモリ等の書き換え可能なデバイスによって構成され、ナビゲーション装置100の動作に必要な情報およびデータが記憶されている。なお、メモリ9は、ナビゲーション装置100がオフ状態になっても記憶内容が保持されるようになっている。
【0045】
表示器10は周知のカラー液晶表示器で構成され、ドット・マトリックスLCD(Liquid Crystal Display)およびLCD表示制御を行うための図示しないドライバ回路を含んで構成されている。ドライバ回路は、例えば、周知のアクティブマトリックス駆動方式が用いられ、制御回路8(描画部87)から送られる表示指令および表示画面データに基づいて表示を行う。また、表示器10として有機EL(ElectroLuminescence:電界発光)表示器,プラズマ表示器を用いてもよい。表示器10は、例えば図1のように、車両110のセンターコンソール付近に取り付けられる。なお、表示器10が本発明の表示手段に相当する。
【0046】
送受信機13はデータサーバ200との通信を行うためのものである。また、送受信機13が、例えば道路に沿って設けられた送信機(図示せず)から出力される光ビーコン、または電波ビーコンによってVICS(Vehicle Information and Communication System:道路交通情報通信システム,登録商標)センタ14から道路交通情報を受信、あるいはFM多重放送を受信するための機能も備えていてもよい。なお、送受信機13が本発明の車両周囲画像取得手段,車両周囲状態取得手段,天候情報取得手段に相当する。
【0047】
スピーカ15は周知の音声合成回路24に接続され、ナビプログラム21pの指令によってメモリ9あるいはHDD21に記憶されるデジタル音声データが音声合成回路24においてアナログ音声に変換されたものが送出される。
【0048】
車速センサ23は周知のロータリエンコーダ等の回転検出部を含み、例えば車輪取り付け部付近に設置されて車輪の回転を検出してパルス信号として制御回路8に送るものである。制御回路8では、その車輪の回転数を車両110の速度に換算して、車両110の現在位置から所定の場所までの予想到達時間を算出したり、車両110の走行区間毎の平均車速を算出する。
【0049】
LAN I/F26は車内LAN27を介して他の車載機器やセンサとのデータの遣り取りを行うためのインターフェース回路である。また、LAN I/F26を介して車速センサ23等のセンサ・スイッチからのデータ取り込みを行ってもよい。
【0050】
このような構成を持つことにより、ナビゲーション装置100は、制御回路8のCPU81によりナビプログラム21pが起動されると、ユーザが操作スイッチ群7,タッチパネル22,リモコン端末12の操作、あるいはマイク31からの音声入力によって、表示器10上に表示されるメニュー(図示せず)から目的地経路を表示器10に表示させるための経路案内処理を選択した場合、次のような処理を実施する。
【0051】
すなわち、まず、ユーザは目的地を探索する。目的地の探索方法は、例えば、地図上の任意の地点を指定する方法,目的地の所在する地域から探索する方法,目的地の電話番号から探索する方法,五十音表から目的地の名称を入力して探索する方法,あるいはユーザがよく利用する施設としてメモリ9に記憶されているものから探索する方法などがある。目的地が設定されると、位置検出器1により車両の現在位置が求められ、現在位置を出発地として目的地までの最適な案内経路を求める処理が行われる。そして、表示器10の画面上の道路地図に案内経路を重ねて表示し、ユーザに適切な経路を案内する。このような自動的に最適な案内経路を設定する手法は、ダイクストラ法等の手法が知られている。また、表示器10およびスピーカ15の少なくとも一方によって、操作時のガイダンスや動作状態に応じたメッセージの報知を行う。
【0052】
ワイパスイッチ25はワイパ(図示せず)の駆動指示を行うためのもので、例えばステアリングコラムからハンドル左脇に延設されたにレバースイッチとして取り付けられている。ワイパスイッチ25では、例えば、OFF,INT(間欠動作),Lo(低速動作),Hi(高速動作)の4つの動作モードを選択することができ、その動作モードに応じてワイパ駆動装置(図示せず)がワイパの動作制御を行う。なお、ワイパスイッチ25が本発明の車両周囲状態取得手段,ワイパ状態検出手段に相当する。
【0053】
ライトスイッチ33は、例えば、ステアリングコラムからハンドル右脇に延設されたレバースイッチの先端に取り付けられたロータリスイッチであり、オフ(消灯)、テール(テールランプ点灯)、ヘッド(ヘッドランプ点灯)、オート(車両110の周囲の明暗を検出してテールランプおよびヘッドランプを自動点灯または自動消灯)の4ポジションで切り替え可能となっている。なお、ライトスイッチ33が本発明の車両周囲状態取得手段,灯火状態検出手段に相当する。
【0054】
カメラ34は、周知のCCDカメラ等により構成され、少なくとも車両110の走行方向前方を撮影可能なように取り付けられている。なお、カメラ34が本発明の車両周囲状態取得手段,前方状態検出手段,撮影手段に相当する。
【0055】
図1に戻り、データサーバ200は、周知のCPUを含む制御回路,HDDおよび周辺回路等を含むサーバ本体201,ディスプレイ202,キーボード203等の入力手段,ナビゲーション装置100との通信を行う通信装置204,データベース21dと同様の構成で車両周囲画像を記憶するデータベース205とを含んで構成される。
【0056】
データサーバ200は、車両が道路を走行した際に、その車両の走行時に該車両の乗員が視認することが可能と予想される該車両の周囲の風景を撮影し、撮影した画像画像を撮影した地点とを関連付けて、車両周囲画像としてデータベース205に記憶する。
【0057】
図4を用いて、ナビゲーション装置100における表示制御処理について説明する。なお、本処理はナビプログラム21pに含まれ、ナビプログラム21pの他の処理とともに繰り返し実行される。まず、車両周囲画像表示条件が成立したか否かを判定する。
【0058】
上記判定のうち、天候判定に必要な情報(天候情報)を取得して、車両110の周囲が悪天候か否かを判定する(S11)。天候判定では、以下のうち、1つあるいは複数の組合せを用いて判定を行う。
・ワイパスイッチ25の状態を天候情報として取得し、ワイパスイッチ25が動作中である(OFFでない)ときに、悪天候であると判定する。
・ライトスイッチ33の状態を天候情報として取得し、ライトスイッチ33がOFF動作中でなくライトが点灯中であるときに、悪天候であると判定する。このとき、時計IC88等から日時情報を取得して、昼間/夜間の判定を行い、昼間にライトが点灯中であるときに、悪天候であると判定するようにしてもよい。
・カメラ34で撮影した画像を画像処理部89で画像処理し、データベース21d等に予め記憶されている雨天等の悪天候時の基準データと比較して、双方の類似度が予め定められた割合を上回るときに、悪天候であると判定する。
・VICSセンタ14から交通情報を取得し、その交通情報に含まれる天候情報を抽出し、車両110の走行中の地域が雨天等であれば(すなわち晴天でないとき)、悪天候であると判定する。
【0059】
上述の他に、フォグランプが点灯しているか否かを判定し、フォグランプが点灯しているときを悪天候であると判定してもよい。また、日時情報を取得して夜間であるか否かを判定し、夜間を悪天候であると判定してもよい。また、車両の周囲の明るさ(照度)を検出する周知の照度センサを用い、照度が予め定められた値を下回るときに悪天候であると判定してもよい。
【0060】
車両110の周囲が悪天候であると判定されたとき(S12:Yes)、ステップS13へ進む(後述)。一方、車両110の周囲が悪天候でないと判定されたとき(S12:No)、操作スイッチ群7,リモコン端末12,タッチパネル22,およびマイク31により入力された乗員の操作(スイッチ操作情報)を取得する(S18)。そして、スイッチ操作情報に車両周囲画像(すなわち運転支援画像)の表示を要求する旨の内容が含まれているとき(S19:Yes)、ステップS13へ進む(後述)。
【0061】
一方、スイッチ操作情報に車両周囲画像の表示を要求する旨の内容が含まれていないとき(S19:No)、表示器10の表示内容を変更せず、例えば表示器10に車両110の現在位置を含む地図情報を表示する(S22)。
【0062】
ステップS13では、位置検出器1から車両110の現在位置情報を取得し、地図データ21mとに基づいて車両110の現在位置を特定する。そして、ジャイロスコープ3の状態あるいは車両110の走行履歴(すなわち現在位置の変化)から、車両110の走行方向を特定する(S14)。
【0063】
そして、データベース21dを検索し、特定した車両110の走行方向に対応する車両周囲画像が記憶されているかを判定する(S15)。データベース21dに該当する車両周囲画像が記憶されていないとき(S16:No)、データサーバ200から車両周囲画像を取得する(S20)。すなわち、データサーバ200に、車両110の現在位置情報を含む車両周囲画像要求信号を送信する。データサーバ200は、車両周囲画像要求信号を受信すると、車両110の現在位置情報に基づいてデータベース205を検索し、車両110の現在位置に対応する車両周囲画像をナビゲーション装置100に送信する。データサーバ200から取得した車両周囲画像は、データベース21dに現在位置と関連付けて記憶する(S21)。車両110の現在位置の走行方向に対応する車両周囲画像のみを取得してもよい。
【0064】
データベース21dに該当する車両周囲画像が記憶されているき(S16:Yes)、あるいはステップS21でデータサーバ200から車両周囲画像を取得した後、特定した車両110の走行方向に対応する車両周囲画像を運転支援画像として表示器10に表示する(S17)。
【0065】
図5に、表示器10における運転支援画像の表示例を示す。まず、図5(a),図5(b)に、図4のステップS22で実行される地図情報表示の例で、ナビゲーション装置100の通常動作時の表示例を示す。図5(a)では、乗員の操作によって例えば車両110の現在位置周辺等の所望の範囲の地図が表示され、図5(b)では、地図上に乗員の操作によって設定された案内経路が表示されている。
【0066】
図5(c),図5(d),図5(e)に、図4のステップS17で実行される、好天時において車両前方に見ることが可能であると予測される風景の画像を運転支援画像として表示する例を示す。図5(c)では、運転支援画像とともに、画面右下に地図も表示しているが、地図の表示位置や、運転支援画像と地図の表示領域の大きさの比率には、特に制約はない。また、運転支援画像のみを表示してもよい。
【0067】
図5(d)では、図5(c)の表示内容に加えて、運転支援画像に標識が重畳表示されている。これは、前方の交差点に一時停止線があるためであるが、地図データ21mには、交差点情報として交差点の位置,信号機の有無,いずれが優先道路か,一時停止線の有無,標識設置場所等の情報も記憶されている。よって、ナビプログラム21pの処理において、車両110が一時停止線のある交差点に接近していると判断したとき、その旨(標識画像)を地図上ではなく運転支援画像に重畳して表示する。
【0068】
図5(e)では、図5(c)の表示内容に加えて、運転支援画像に経路案内情報(左折の矢印)が重畳表示されている。一般的な経路案内では地図上に経路案内情報が表示されるが、運転支援画像が表示されているときには、経路案内情報を地図上ではなく運転支援画像に重畳して表示する。
【0069】
図5の表示は乗員の操作スイッチ群7等の操作により、切替可能となっている。また、乗員が図5(a)〜(e)のうちからいずれか1つを選択し、デフォルト表示画面として設定可能な構成としてもよい。
【0070】
上述の例では、車両110のセンターコンソールに取り付けられた表示器10を用いているが、この表示器10の代わりにヘッドアップディスプレイ(HUD)を用いて運転支援画像を表示してもよい。
【0071】
図6に、HUD35の構成を示す。HUD35(ウインドシールドディスプレイともいう)は、表示コントローラ等の周辺回路(図示せず)を含み、制御回路8に接続され、制御回路8からの表示指令に基づいて車両110のウインドシールド111に運転支援画像を表示する。
【0072】
HUD35は、インストルメントパネル36の内部に組み付けられていて、運転支援画像等の画像を映し出す液晶パネル35aと、その液晶パネル35aに光を照射するバックライト35bとを備えている。バックライト35bから照射された光は、液晶パネル35aを透過してウインドシールド111に入射し、運転席に着座したドライバDRの目に向けて反射される。これにより、ウインドシールド111に投影された運転支援画像が虚像VDとしてドライバDRの目に捉えられる。また、虚像VDは、無限遠の点に結像するようにウインドシールド111に投影される。これにより、運転支援画像を車両110の前方の風景と重畳して表示することが可能となる。なお、透過型の液晶パネル35aを用いたHUD15に代えて、例えば反射型の液晶パネルを用いたHUDを使用してもよい。
【0073】
ウインドシールド111に投影される運転支援画像すなわち虚像VDの領域は、運転に支障のない、例えばウインドシールド111の上部のような予め定められた領域とされる。乗員の操作スイッチ群7等の操作により、表示領域の位置や大きさを変更可能としてもよい。
【0074】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 位置検出器(位置特定手段,走行方向特定手段)
7 操作スイッチ群(操作入力手段)
8 制御回路(車両周囲画像記憶手段,車両周囲画像表示条件判定手段,表示制御手段,車両周囲画像取得手段,天候判定手段)
10 表示器(表示手段)
12 リモコン端末(操作入力手段)
13 送受信機(車両周囲画像取得手段)
21d データベース(車両周囲画像記憶手段)
21m 道路地図データ(地図データ記憶手段)
22 タッチパネル(操作入力手段)
25 ワイパスイッチ(車両周囲状態取得手段,ワイパ状態検出手段)
31 マイク(操作入力手段)
33 ライトスイッチ(車両周囲状態取得手段,灯火状態検出手段)
34 カメラ(車両周囲状態取得手段,撮影手段)
35 ヘッドアップディスプレイ(HUD:表示手段)
100 ナビゲーション装置
110 車両
200 データサーバ
205 データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、乗員に各種の画像情報を表示する表示手段と、
前記車両の現在位置を特定する位置特定手段と、
前記車両の走行方向を特定する走行方向特定手段と、
前記車両の走行時に該車両の乗員が視認することが可能と予想される該車両の周囲の風景が撮影された車両周囲画像を予め記憶する車両周囲画像記憶手段と、
前記車両周囲画像を前記表示手段に表示するための、予め定められた車両周囲画像表示条件が成立したか否かを判定する車両周囲画像表示条件判定手段と、
前記車両周囲画像表示条件が成立したと判定したときに、前記車両周囲画像記憶手段から前記車両の現在位置および走行方向に対応した車両周囲画像を読み出して、運転支援画像として前記表示手段に表示する表示制御手段と、
を備えることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記車両の外部から、前記車両周囲画像を取得する車両周囲画像取得手段を備え、
前記車両周囲画像記憶手段は、取得した前記車両周囲画像を記憶する請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記車両の周囲の状態を取得する車両周囲状態取得手段と、
取得した前記車両周囲状態に基づいて、該車両の周囲が悪天候であるか否かを判定する天候判定手段と、を備え、
前記車両周囲画像表示条件判定手段は、前記天候判定手段が前記車両の周囲が悪天候であると判定したときに前記車両周囲画像表示条件が成立したと判定する請求項1または請求項2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記車両周囲状態取得手段は、前記車両の周囲の天候情報を取得する天候情報取得手段を含み、
前記天候判定手段は、取得した前記天候情報と前記車両の現在位置とに基づいて、該車両の周囲が悪天候であるか否かを判定する請求項3に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記車両周囲状態取得手段は、前記車両のワイパの動作状態を検出するワイパ状態検出手段を含み、
前記天候判定手段は、前記ワイパの動作状態に基づいて、前記車両の周囲が悪天候であるか否かを判定する請求項3または請求項4に記載の車両用表示装置。
【請求項6】
前記車両周囲状態取得手段は、前記車両の灯火の動作状態を検出する灯火状態検出手段を含み、
前記天候判定手段は、前記灯火の動作状態に基づいて、前記車両の周囲が悪天候であるか否かを判定する請求項3ないし請求項5のいずれか1項に記載の車両用表示装置。
【請求項7】
前記車両周囲状態取得手段は、前記車両の走行方向前方の画像を撮影する撮影手段を含み、
前記天候判定手段は、撮影した前記車両の走行方向前方の画像に基づいて、前記車両の周囲が悪天候であるか否かを判定する請求項3ないし請求項6のいずれか1項に記載の車両用表示装置。
【請求項8】
乗員が操作入力を行う操作入力手段と、
前記乗員の操作入力を検出する操作入力検出手段と、を備え、
前記車両周囲画像表示条件判定手段は、前記操作入力検出手段が前記乗員による予め定められた操作を検出したときに前記車両周囲画像表示条件が成立したと判定する請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の車両用表示装置。
【請求項9】
電子地図データを記憶する地図データ記憶手段を備え、
前記表示制御手段は、前記車両周囲画像表示条件判定手段が前記車両周囲画像表示条件が成立しないと判定したときに、前記表示手段に予め定められた範囲の電子地図データを表示する請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の車両用表示装置。
【請求項10】
前記表示手段としてヘッドアップディスプレイを用い、該ヘッドアップディスプレイにより前記運転支援画像が虚像として前記車両の乗員に視認され、該運転支援画像を該車両の前方の風景と重畳して表示する請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の車両用表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−257253(P2010−257253A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106889(P2009−106889)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】