説明

車両用走行制御システム

【課題】交通流に合わせるためにドライバがアクセル操作により加速した後、再び道路形状に応じた車速まで減速することに伴い、ドライバに与える違和感を抑制する。
【解決手段】車両用走行制御システムは、ナビゲーション装置から制限車速情報を取得して、自車走行レーンにおける制限車速を決定する制限車速走行手段5と、先行車の状態を検出する先行車検出手段3とを有する。さらに、ドライバが設定した設定車速および先行車との車間に応じて設定される追従車速のうちいずれか小さい車速を選択してクルーズコントロール車速を決定するクルーズコントロール車速決定手段5と、クルーズコントロール車速および制限車速のうち小さい車速を目標車速として自車の走行を制御する走行制御手段5を備える。そして、走行車速変更手段5は、制限車速で走行中にドライバによる加速操作が検出された場合、目標車速を制限車速からクルーズコントロール車速へ変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車速を制御する車両用走行制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーション装置から得られる制限車速情報と道路形状に応じた車速情報の最小値と、設定車速とを比較し、低い値の車速で車両が走行するように加減速を制御する定速走行制御装置が知られている(たとえば特許文献1)。
【特許文献1】特許第3024478号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、道路形状に応じた車速が設定車速より小さい時に自車両周辺の車両が道路形状に応じた車速よりも速く走行している場合、交通流に合わせるためにドライバがアクセル操作により加速しても、アクセル操作が終了すると道路形状に応じた車速まで減速するので、ドライバに違和感を与えるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明による車両用走行制御システムは、ナビゲーション装置から制限車速情報を取得して、自車走行レーンにおける制限車速を決定する制限車速決定手段と、先行車の状態を検出する先行車検出手段と、ドライバが設定した設定車速および先行車との状態に応じて設定される追従車速のうちいずれか小さい車速を選択することによりクルーズコントロール車速を決定するクルーズコントロール車速決定手段と、クルーズコントロール車速および制限車速のうち小さい車速を目標車速として自車の走行を制御する走行制御手段と、走行制御手段により制限車速で走行している時にドライバによる加速操作が検出された場合、目標車速を前記制限車速からクルーズコントロール車速へ設定変更する走行車速変更手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、制限車速で走行中にドライバによる加速操作を検出した場合、制限車速からクルーズコントロール車速へ変更することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図面を参照して、本発明による車両用走行制御装置の実施の形態を説明する。図1は、本発明による車両用走行制御装置を搭載した車両の全体構成を示す図である。車両100は、ナビゲーション装置1、車輪速センサ2、レーザレーダ3、スイッチ4、走行制御装置5、車速制御装置6、およびスピーカ7を備える。
【0007】
ナビゲーション装置1は、経路探索や経路案内を行う装置であり、車両の位置情報(X,Y)を検出するためのGPS(Global Positioning System)受信機、地図情報を記憶した記憶媒体、および地図情報に対応した地図を表示するためのモニタ等を備えている。記憶媒体は、走行路上に設定されたノード点の座標を示すノード点情報を保持している。ここで、ノード点は、車両が走行し得る走行経路を点として示すものである。すなわち、ノード点の並んだノード列は、車両が走行する直線または曲線の走行経路を示すものになる。
【0008】
車輪速センサ2は、車両100の車輪速Vwを検出する。レーザレーダ3は、たとえば車両100の前方グリルもしくはバンパ部等に取り付けられ、自車両前方にレーザ光を送出し、自車両前方に存在する先行車両(先行車)に反射して戻ってくる反射光を受光することにより、先行車の有無、先行車との間の車間距離L、および相対速度(車速差)Vdを検出する。スイッチ4は、後述する追従制御に関してドライバが各種の操作入力を行うためのスイッチである。ドライバによるスイッチ4の操作で設定されたアクセル操作情報、システムのセット操作情報、車速セット操作情報等の各種の情報が走行制御装置5へ出力される。スピーカ7は、後述するように、走行制御装置5からの指令に応じて、車両100の車速の制限車速制御から追従制御への遷移、および追従制御から制限車速制御への復帰を、たとえば音声や警告音等でドライバに報知する。
【0009】
走行制御装置5は、制限車速制御、追従制御、およびカーブ減速制御を行って車速制御装置6へ制御信号を出力する装置である。追従制御とは、レーザレーダ3により先行車が検出されているときに、先行車との車間距離が目標値となるように車間距離を制御することである。なお、追従制御では、先行車が検出されない場合には自車速Vが予め設定された車速(以下、設定車速という)となるように車速が制御される。カーブ減速制御とは、自車両前方のカーブ形状に合わせて自車速Vを適正速度に制御することである。
【0010】
走行制御装置5は、制限車速制御を行う際には、ナビゲーション装置1から出力される制限車速情報を読み込んで、自車走行レーンにおける制限車速VLを判断する。追従制御においては、走行制御装置5は、スイッチ4からの出力信号に基づき、ドライバが設定した車速を設定車速VSとする。さらに、走行制御装置5は、レーザレーダ3からの信号に基づき、先行車の状態、すなわち、先行車との車間距離L、および速度差Vdを読み込んで、追従車速VFを算出する。なお、本明細書においては、設定車速VSおよび追従車速VFのうちの小さいほうの車速をクルーズコントロール車速VCと呼ぶ。
【0011】
カーブ減速制御では、走行制御装置5は、ナビゲーション装置1から得られる車両の位置(自車位置)の情報と、自車位置前方の道路の各ノード点の座標および各ノード点までの距離を読み込む。読み込んだ各ノード点の座標に基づいて、走行制御装置5は、各ノード点における道路の曲率半径を演算して、各ノード点において、所定の横加速度で旋回走行するための各ノード点旋回車速を演算する。そして、走行制御装置5は、自車速V、各ノード点までの距離、および各ノード点旋回車速に基づいて、各ノード点目標減速速度を演算する。
【0012】
各ノード点目標減速速度を演算すると、走行制御装置5は、演算された各ノード点目標減速速度の中から最大の減速度が演算されたノード点を目標ノード点として選択する。そして、走行制御装置5は、各ノード点までの距離に基づいて、目標ノード点到達時に演算された当該ノード点のノード点旋回車速となるためのカーブ車速VRを演算する。
【0013】
走行制御装置5は、スイッチ4の操作によるシステムセット操作を検出した際に、上記した各速度情報を用いて目標車速VOを演算する。この時、走行制御装置5は、レーザレーダ3からの信号に基づいて、先行車の存在を検出した場合は、以下の式(1)を用いて目標車速VOを演算する。すなわち走行制御装置5は、クルーズコントロール車速VCおよび制限車速VLのうち小さい車速を目標車速VOとする。先行車の存在を検出しない場合は、走行制御装置5は、以下の式(2)を用いて目標車速VOを演算する。すなわち、設定車速VSおよびカーブ車速VRのうちの小さい車速(カーブ走行時車速)と、制限車速VLとのうち小さい速度を目標車速VOとする。なお、先行車の有無に関わらず、式(3)を用いて目標車速VOを演算してもよい。
VO=min(VS,VF,VL) ・・・(1)
VO=min(VS,VR,VL) ・・・(2)
VO=min(VS,VF,VR,VL) ・・・(3)
【0014】
(1.システムセット時に先行車が存在する場合)
走行制御装置5は、上記の式(1)を用いて目標車速VOを演算する。たとえば図2に示すように、VS>VF>VLの関係が成立している場合、走行制御装置5は、目標車速VOを制限車速VL(VO=VL)とし、制限車速制御によって自車速Vを制御する。制限車速制御により自車速Vを制御しているときに、ドライバによる加速操作を検出すると、走行制御装置5は、制限車速制御から追従制御に遷移して自車速Vを制御する。すなわち、走行制御装置5は、スイッチ4から入力した操作信号により、所定時間(たとえば5秒)、および所定距離内において、アクセルが所定開度(たとえば5%)以上であることを検出すると、以下の式(4)を用いて目標車速VOを演算する。この時、走行制御装置5は、スピーカ7に指令して、音声もしくは警告音等により制限車速制御から追従制御に遷移したことをドライバに報知させる。なお、ナビゲーション装置1の備えるモニタ等にメッセージ等を表示するようにしてもよい。また、スピーカ7から音により報知するとともに、ナビゲーション装置1のモニタにメッセージ等を表示してもよい。
VO=min(VS,VF) ・・・(4)
【0015】
上記式(4)を用いて演算された目標車速VOで自車速Vを制御しているとき、走行制御装置5は、ナビゲーション装置1から入力した情報に基づいて、制限車速区間の変更、道路種別の変更、およびリンク種別の変更のいずれかを検出すると、追従制御から制限車速制御に遷移して自車速Vを制御する。すなわち、走行制御装置5は、上記式(1)を用いて目標車速VOを演算する。この時、走行制御装置5は、スピーカ7に指令して、音声もしくは警告音等により追従制御から制限車速制御に遷移したことをドライバに報知させる。なお、ナビゲーション装置1の備えるモニタ等にメッセージ等を表示するようにしてもよい。また、スピーカ7から音により報知するとともに、ナビゲーション装置1のモニタにメッセージ等を表示してもよい。
【0016】
(1−1.システムセット時に存在した先行車が存在しなくなった場合)
走行制御装置5は、目標車速VOを上記式(1)で演算している場合に、レーザレーダ3からの信号に基づいて、先行車を検出しなくなると、上記式(2)を用いて目標車速VOを演算する。上記式(4)を用いて演算された目標車速VOで自車速Vを制御しているとき、走行制御装置5は、レーザレーダ3からの信号に基づいて、先行車を検出しなくなると、以下の式(5)を用いて目標車速VOを演算する。すなわち、走行制御装置5は、追従制御からカーブ減速制御に遷移して自車速Vを制御する。このとき、走行制御装置5は、スピーカ7に指令して、音声もしくは警告音等により追従制御からカーブ減速制御に遷移したことをドライバに報知させる。なお、ナビゲーション装置1の備えるモニタ等にメッセージ等を表示するようにしてもよい。また、スピーカ7から音により報知するとともに、ナビゲーション装置1のモニタにメッセージ等を表示してもよい。
VO=min(VS,VR) ・・・(5)
【0017】
上記式(5)を用いて演算された目標車速VOで自車速Vを制御しているとき、走行制御装置5は、ナビゲーション装置1から入力した情報に基づいて、制限車速区間の変更、道路種別の変更、およびリンク種別の変更のいずれかを検出すると、カーブ減速制御から制限車速制御に遷移して自車速Vを制御する。すなわち、走行制御装置5は、レーザレーダ3からの信号に基づいて、先行車が存在しないことを検出した場合は上記式(2)を用いて目標車速VOを演算し、先行車が存在することを検出した場合は上記式(1)を用いて目標車速VOを演算する。制限車速制御に遷移した場合、走行制御装置5は、スピーカ7に指令して、音声もしくは警告音等により追従制御から制限車速制御に遷移したことをドライバに報知させる。なお、ナビゲーション装置1の備えるモニタ等にメッセージ等を表示するようにしてもよい。また、スピーカ7から音により報知するとともに、ナビゲーション装置1のモニタにメッセージ等を表示してもよい。
【0018】
(2.システムセット時に先行車が存在しない場合)
走行制御装置5は、上記の式(2)を用いて目標車速VOを演算する。制限車速制御により自車速Vを制御しているときに、ドライバによる加速操作を検出すると、走行制御装置5は、制限車速制御から追従制御に遷移して自車速Vを制御する。すなわち、走行制御装置5は、スイッチ4から入力した操作信号により、所定時間(たとえば5秒)、および所定距離内において、アクセルが所定開度(たとえば5%)以上であることを検出すると、以下の式(5)を用いて目標車速VOを演算する。このとき、走行制御装置5は、スピーカ7に指令して、音声もしくは警告音等により追従制御からカーブ減速制御に遷移したことをドライバに報知させる。なお、ナビゲーション装置1の備えるモニタ等にメッセージ等を表示するようにしてもよい。また、スピーカ7から音により報知するとともに、ナビゲーション装置1のモニタにメッセージ等を表示してもよい。上記式(5)を用いて演算された目標車速VOで自車速Vを制御しているとき、走行制御装置5は、上述した場合と同様に、制限車速区間の変更、道路種別の変更、およびリンク種別の変更のいずれかを検出すると、上記式(2)を用いて目標車速VOを演算する。
【0019】
(2−1.システムセット時には存在しなかった先行車が自車両前方に割り込んだ場合)
走行制御装置5は、目標車速VOを上記式(2)で演算している場合に、レーザレーダ3からの信号に基づいて、先行車を検出すると、上記式(1)を用いて目標車速VOを演算する。上記式(5)を用いて演算された目標車速VOで自車速Vを制御しているとき、走行制御装置5は、レーザレーダ3からの信号に基づいて、先行車を検出すると、上記式(4)を用いて目標車速VOを演算する。すなわち、走行制御装置5は、カーブ減速制御から追従制御に遷移して自車速Vを制御する。このとき、走行制御装置5は、スピーカ7に指令して、音声もしくは警告音等により追従制御からカーブ減速制御に遷移したことをドライバに報知させる。なお、ナビゲーション装置1の備えるモニタ等にメッセージ等を表示するようにしてもよい。また、スピーカ7から音により報知するとともに、ナビゲーション装置1のモニタにメッセージ等を表示してもよい。
【0020】
上記式(4)を用いて演算された目標車速VOで自車速Vを制御しているとき、走行制御装置5は、上述したように、制限車速区間の変更、道路種別の変更、およびリンク種別の変更のいずれかを検出すると、追従制御から制限車速制御に遷移して自車速Vを制御する。すなわち、走行制御装置5は、レーザレーダ3からの信号に基づいて、先行車が存在しないことを検出した場合は上記式(2)を用いて目標車速VOを演算し、先行車が存在することを検出した場合は上記式(1)を用いて目標車速VOを演算する。この時、走行制御装置5は、スピーカ7に指令して、音声もしくは警告音等により追従制御から制限車速制御に遷移したことをドライバに報知させる。なお、ナビゲーション装置1の備えるモニタ等にメッセージ等を表示するようにしてもよい。また、スピーカ7から音により報知するとともに、ナビゲーション装置1のモニタにメッセージ等を表示してもよい。
【0021】
走行制御装置5は、自車速Vが上述のようにして算出された目標車速VOとなるように目標減速度、もしくは目標加速度(以下、目標加減速度と呼ぶ)を演算して、必要なエンジントルクやブレーキトルクを算出し、それぞれに応じて駆動指令値や制動指令値を算出する。そして、走行制御装置5は、算出した駆動指令値や制動指令値を車速制御装置6へ出力する。
【0022】
車速制御装置6は、車両100の加減速を行うブレーキ制御装置であり、たとえばエンジントルクアクチュエータとブレーキ液圧アクチュエータとを備えている。エンジントルクアクチュエータは、たとえばスロットルバルブなどのように駆動輪の駆動トルクを制御するためのアクチュエータであり、走行制御装置5で算出された駆動指令値に基づいてスロットル開度を変更する。これにより、走行制御装置5で演算された目標加速度を得るために必要なエンジントルクが得られる。
【0023】
ブレーキ液圧アクチュエータは、ブレーキ液圧を発生させるマスターシリンダと、各車輪に設けられた油圧ブレーキの油圧シリンダ(ホイールシリンダ)との間に設けられて、各ホイールシリンダの液圧を任意の制動液圧に制御するアクチュエータである。ブレーキ液圧アクチュエータは、走行制御装置5から出力される制動指令値に基づいて、ホイールシリンダの液圧を制御する。これにより、走行制御装置5で演算された目標減速度を得るのに必要なブレーキトルクが得られる。車速制御装置6、すなわちエンジントルクアクチュエータおよびブレーキ液圧アクチュエータが、走行制御装置5から出力される各指令値に基づいて制御されることで、自車速Vが目標車速VOとなるように制御される。
【0024】
図3は、車速制御装置6への制駆動指令値を演算する際の処理手順を示すフローチャートである。図3に示す処理は車両100の走行中、所定のサンプリング時間毎に走行制御装置5で実行される。
ステップS1において、各センサ等からのデータを読み込む。具体的には、スイッチ4の操作信号に基づいて、ドライバが設定したシステムセット情報、設定車速VSおよび車間距離の設定状態を読み込み、レーザレーダ3から先行車との間の車間距離Lを読み込み、車輪速センサ2から車輪速Vwを読み込む。また、ナビゲーション装置1から自車位置(X,Y)、自車両前方の道路のノード点情報((X(n),Y(n),L(n))、および制限車速情報を読み込む。そして、上述したように制限車速VL、カーブ車速VR、および追従車速VFを演算してステップS2へ進む。
【0025】
ステップS2において、ステップS1で取得した各種データに基づいて目標車速VOを算出してステップS3へ進む。なお、ステップS2に詳細については後述する。ステップS3においては、ステップS2で算出した目標車速VOから駆動指令値や制動指令値を演算し、演算した駆動指令値や制動指令値を車速制御装置6へ出力してリターンする。
【0026】
図4は、目標車速VOを演算する際の処理手順を示すフローチャートである。図4に示す処理は車両100の走行中、所定のサンプリング時間毎に走行制御装置5で実行される。
ステップS101においては、レーザレーダ3からの信号に基づいて、先行車の有無を判定する。先行車が存在しないことを検出した場合は、ステップS101が肯定判定されてステップS102へ進む。先行車が存在することを検出した場合は、ステップS101が否定判定されて、後述するステップS109へ進む。
【0027】
ステップS102においては、式(2)を用いて目標車速VOを算出してステップS103へ進む。ステップS103において、ドライバによる加速操作の有無を判定する。スイッチ4からの操作信号に基づいて、加速操作を検出するとステップS103が肯定判定されてステップS104へ進む。ステップS104においては、式(5)を用いて目標車速VO(=min(VS,VR))を算出してステップS105へ進む。
【0028】
ドライバの加速操作を検出しない場合は、ステップS103が否定判定されて、ステップS105へ進む。ステップS105では、制限車速VLに変更があるか否かを判定する。制限車速VLに変更がない場合、すなわちナビゲーション装置1から入力した情報に基づいて、制限車速区間の変更、道路種別の変更、およびリンク種別の変更を検出しない場合、ステップS105が肯定判定されてステップS106へ進む。制限車速VLに変更がある場合、すなわち制限車速区間の変更、道路種別の変更、およびリンク種別の変更のいずれかを検出した場合、ステップS105が否定判定されてステップS101へ戻る。
【0029】
ステップS106においては、ステップS101と同様に、レーザレーダ3からの信号に基づいて、先行車の有無を判定する。先行車が存在することを検出した場合は、ステップS106が肯定判定されてステップS107へ進む。先行車が存在しないことを検出した場合は、ステップS106が否定判定されて処理を終了する。
【0030】
ステップS107においては、目標車速VOがステップS104で算出された車速(=min(VS,VR))であるか否かを判定する。目標車速VOがmin(VS,VR)の場合、ステップS107が肯定判定されてステップS108へ進む。目標車速VOがステップS102で算出された車速(=min(VS,VR,VL))の場合、ステップS107が否定判定されて処理を終了する。ステップS108では、式(4)を用いて目標車速VO(=min(VS,VF))を算出して処理を終了する。
【0031】
一方、ステップS101において先行車の存在を検出した場合はステップS109へ進み、式(1)を用いて目標車速VOを算出してステップS110へ進む。ステップS110では、ステップS103と同様に、ドライバによる加速操作の有無を判定する。スイッチ4からの操作信号に基づいて、加速操作を検出するとステップS110が肯定判定されてステップS111へ進む。ステップS111においては、式(4)を用いて目標車速VO(=min(VS,VF))を算出してステップS112へ進む。ドライバの加速操作を検出しない場合は、ステップS110が否定判定されて、ステップS112へ進む。
【0032】
ステップS112においては、ステップS105と同様に、制限車速VLに変更があるか否かを判定する。制限車速VLに変更がない場合、すなわちナビゲーション装置1から入力した情報に基づいて、制限車速区間の変更、道路種別の変更、およびリンク種別の変更を検出しない場合、ステップS112が肯定判定されてステップS113へ進む。制限車速VLに変更がある場合、すなわち制限車速区間の変更、道路種別の変更、およびリンク種別の変更のいずれかを検出した場合、ステップS112が否定判定されてステップS101へ戻る。
【0033】
ステップS113においては、ステップS106と同様に、レーザレーダ3からの信号に基づいて、先行車の有無を判定する。先行車の存在を検出しない場合は、ステップS113が肯定判定されてステップS114へ進む。先行車の存在を検出した場合は、ステップS113が否定判定されてリターンする。
【0034】
ステップS114においては、目標車速VOがステップS111で算出された車速(=min(VS,VF))であるか否かを判定する。目標車速VOがmin(VS,VF)の場合、ステップS114が肯定判定されてステップS115へ進む。目標車速VOがステップS109で算出された車速(=min(VS,VF,VL))の場合、ステップS114が否定判定されて処理を終了する。ステップS115では、式(5)を用いて目標車速VO(=min(VS,VR))を算出して処理を終了する。
【0035】
以上で説明した実施の形態の車両用走行制御装置によれば、以下の作用効果が得られる。
(1)走行制御装置5は、目標車速VOを制限車速VLに設定している時に、スイッチ4からの操作信号により加速操作を検出した場合は、目標車速VOをクルーズコントロール車速VC(追従車速VFおよび設定車速VSのいずれか小さい車速)に変更するようにした。したがって、車両100が制限車速VLで走行中にドライバの加速意思に応じた車速に変更できるので、ドライバの操作負担を軽減できる。
【0036】
さらに加えて、ナビゲーション装置1の制限車速情報が古い場合や、ナビゲーション装置1が認識する自車位置が走行レーンと異なる場合に、制限車速情報が実際の制限車速よりも低速になる時がある。このような場合、ドライバのアクセル操作による加速に応じて、走行制御装置5は車速を追従制御に遷移させるので、ドライバのアクセル操作終了後に再び制限車速VLに減速することがなくなり、ドライバが違和感を抱くことがなくなる。
【0037】
(2)走行制御装置5は、先行車の存在を検出していない場合は、カーブ走行時車速(設定車速VS、およびカーブ車速VRのうち小さい車速)と制限車速VLのうち小さい車速を目標車速VOとして算出する。そして、走行制御装置5は、制限車速VLがカーブ走行時車速よりも小さいときにドライバによる加速操作を検出した場合は、目標車速VOを制限車速VLからカーブ走行時車速に変更するようにした。したがって、車両100がカーブを制限車速VLで走行中であってもドライバの加速意思に応じた車速に変更できるので、ドライバの操作負担を軽減できる。
【0038】
(3)走行制御装置5は、システム設定時にレーザレーダ3により先行車の存在が検出されている場合は、カーブ車速VRを考慮せず、制限車速VL、およびクルーズコントロール車速VC(設定車速VSおよび追従車速VFのうちの小さい車速)のうち小さい車速を目標車速VOに設定するようにした。したがって、先行車がカーブ車速VRよりも高速でカーブに進入した場合にカーブ車速VRよりも追従制御を優先することができるので、ドライバが先行車に置いていかれたように感じる(置いていかれ感)ことを低減できる。
【0039】
(4)走行制御装置5は、スピーカ7により音声もしくは警告音等により、目標車速VOが変更されたことをドライバに報知するようにした。したがって、ドライバは走行制御装置5が制限車速制御を行わなくなったことを知ることができるので、万が一、自車速Vが制限車速よりも高速になった場合に、ドライバは車速調整をスムーズに行うことができる。
【0040】
(5)走行制御装置5は、レーザレーダ3が検出していた先行車の存在を検出しなくなると、設定車速VSおよびカーブ車速VRのうち小さいほうの車速を目標車速VOとするようにした。したがって、先行車の走行レーンが変更された場合であっても、ドライバの加速意思に応じた車速に変更できるので、ドライバの操作負担を軽減できる。
【0041】
(6)走行制御装置5は、ナビゲーション装置1からの入力した情報に基づいて、制限車速区間の変更、道路種別の変更、およびリンク種別の変更のいずれかを検出すると、制限車速VLを目標車速VOとするようにした。したがって、制限車速区間や道路が変わると、ナビゲーション装置1の制限車速情報と、実際の制限車速が一致する可能性があるので、追従制御から制限車速制御に自動的に遷移することにより、ドライバが制限車速制御に再度設定するための操作負担を低減できる。
【0042】
(7)走行制御装置5は、スピーカ7により音声もしくは警告音等により、制限車速制御に復帰したことをドライバに報知するようにした。したがって、ドライバは、走行制御装置5が制限車速制御に復帰したことを認識できる、すなわち制限車速区間や道路が変わったことに応じて制限車速制御への設定操作が必要ないことを認識できるので、利便性が向上する。
【0043】
以上で説明した実施の形態を次のように変形できる。
走行制御装置5は、クルーズコントロール車速VCとカーブ車速VRとに基づいてカーブ走行時車速を算出する際に、各車速に重み付けをして計算するようにしてもよい。この場合、走行制御装置5は、重み係数をa(<1)として、以下の式(6)を用いて目標車速VOを算出する。この結果、目標車速VOがクルーズコントロール車速VCを超えない範囲で、先行車との車間距離を縮めすぎることがなくなるので、ドライバが感じる置いていかれ感を和らげることができる。さらに、置いていかれ感を和らげられるので、ドライバはアクセル操作の必要がなくなるので、アクセル操作に伴う煩わしさを低減できる。
VO=a×VC+(1−a)×VR ・・・(6)
【0044】
特許請求の範囲の構成要素と実施の形態の構成要素との対応関係は次の通りである。すなわち、レーザレーダ3が先行車検出手段を、走行制御装置5が制限車速決定手段、クルーズコントロール車速決定手段、走行制御手段、走行車速変更手段、第1算出手段および第2算出手段を、スピーカ7が報知手段をそれぞれ構成する。なお、以上の説明はあくまで一例であり、発明を解釈する上で、上記の実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係に何ら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明による車両用走行制御装置を搭載した車両の全体構成を示す図
【図2】各種車速の大小関係の一例を示す図
【図3】制駆動指令値を演算する際の処理手順を示すフローチャート
【図4】目標車速VOを演算する際の処理手順を示すフローチャート
【符号の説明】
【0046】
3・・・レーザレーダ 5・・・走行制御装置 7・・・スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナビゲーション装置から制限車速情報を取得して、自車走行レーンにおける制限車速を決定する制限車速決定手段と、
先行車の状態を検出する先行車検出手段と、
ドライバが設定した車速(以下、設定車速)、および前記先行車との状態に応じて設定される車速(以下、追従車速)のうちいずれか小さい車速を選択することによりクルーズコントロール車速を決定するクルーズコントロール車速決定手段と、
前記クルーズコントロール車速および前記制限車速のうち小さい車速を目標車速として自車の走行を制御する走行制御手段と、
前記走行制御手段により前記制限車速で走行している時にドライバによる加速操作が検出された場合、前記目標車速を前記制限車速から前記クルーズコントロール車速へ設定変更する走行車速変更手段とを備えることを特徴とする車両用走行制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用走行制御システムにおいて、
前記先行車検出手段により先行車が検出されていない場合、前記設定車速および道路のカーブ形状に対応したカーブ車速に基づいて、カーブ走行時車速を算出する第1算出手段と、
前記制限車速および前記算出されたカーブ走行時車速のうち小さい車速を目標車速として算出する第2算出手段とを更に備え、
前記走行車速変更手段は、前記制限車速が前記カーブ走行時車速よりも小さいときにドライバによる加速操作が検出された場合、前記目標車速を前記制限車速から前記カーブ走行時車速に設定変更することを特徴とする車両用走行制御システム。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用走行制御システムにおいて、
前記走行車速変更手段は、前記先行車検出手段により前記先行車の存在が検出された場合、前記クルーズコントロール車速および前記制限車速のうち小さい車速を前記目標車速に設定変更することを特徴とする車両用走行制御システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の車両用走行制御システムにおいて、
ドライバによる加速操作が検出された場合に、音および表示の少なくともいずれか一方により目標車速の変更を報知する報知手段をさらに備えることを特徴とする車両用走行制御システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の車両用走行制御システムにおいて、
前記先行車検出手段が検出していた前記先行車を検出しなくなったとき、前記走行車速変更手段は、前記設定車速および道路のカーブ形状に対応したカーブ車速のうち小さい車速を前記目標車速として設定変更することを特徴とする車両用走行制御システム。
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれか一項に記載の車両用走行制御システムにおいて、
前記走行車速変更手段は、制限車速区間の変更、道路種別の変更およびリンク種別の変更のいずれかが検出された場合に、前記クルーズコントロール車速および前記カーブ走行時車速のいずれかから前記制限車速へ変更することを特徴とする車両用走行制御システム。
【請求項7】
請求項6に記載の車両用走行制御システムにおいて、
音および表示の少なくともいずれか一方により前記制限車速への変更を報知する報知手段をさらに備えることを特徴とする車両用走行制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−208661(P2009−208661A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54543(P2008−54543)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】