説明

車線逸脱防止装置及びその方法

【課題】コンプライアンスステアによるトー角変化を抑制して、自車両の走行車線からの逸脱を防止するために必要な目標ヨーモーメントを適切に得る。
【解決手段】車線逸脱防止装置は、走行車線に対する車両の逸脱傾向を判定する車線逸脱傾向判定手段(ステップS3、ステップS4)と、車線逸脱傾向判定手段が逸脱傾向があると判定した場合に、車輪の制動力を制御して、左右輪に制動力差を発生させることで車両にヨーモーメントを付与する制動力制御手段(ステップS13、ステップS14)と、車輪に制動力を発生させる際に生じるコンプライアンスステアによるトー角変化を基に、制動力制御手段が車輪に発生させる制動力を補正するコンプライアンスステア用補正手段(ステップS10)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両が走行車線から逸脱しそうになったときに、その逸脱を防止する車線逸脱防止装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車線逸脱防止制御として、自車両が走行車線を逸脱する可能性がある場合に、左右輪に制動力差を発生させるものがある(例えば特許文献1参照)。これにより、自車両に目標のヨーモーメントを付与し、自車両が走行車線から逸脱するのを防止している。
【特許文献1】特開2000−33860号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、車輪に制動力を発生させた際に生じるコンプライアンスステアによりトー角が変化する。このようなことから、従来の車線逸脱防止制御のように、左右輪に制動力差を発生させると、コンプライアンスステアによりトー角が変化してしまう。これでは、トー角変化に起因して車両にヨーモーメントが発生してしまい、自車両の走行車線からの逸脱を防止するために必要なヨーモーメントが過小又は過大となってしまう。
本発明の課題は、コンプライアンスステアによるトー角変化を抑制して、自車両の走行車線からの逸脱を防止するために必要な目標ヨーモーメントを適切に得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するために、本発明は、走行車線に対して車両が逸脱傾向ありと判定した場合に、車輪の制動力を制御して、左輪と右輪との間に制動力差を発生させることで車両にヨーモーメントを付与するものであり、車輪に制動力を発生させる際に生じるコンプライアンスステアによるトー角変化を基に、車輪に発生させる制動力を補正する。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、コンプライアンスステアによる車輪のトー角変化にかかわらず、自車両の走行車線からの逸脱を防止するために必要なヨーモーメントを適切に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態という。)を図面を参照しながら詳細に説明する。
(構成)
実施形態は、本発明に係る車線逸脱防止装置を搭載した後輪駆動車両である。この車両は、自動変速機とコンベンショナルディファレンシャルギヤとを搭載している。そして、この車両は、前後輪とも左右輪の制動力を独立制御可能な制動装置を搭載している。
【0007】
図1は、本実施形態を示す概略構成図である。
図中の符号1はブレーキペダル、2はブースタ、3はマスタシリンダ、4はリザーバである。通常は、運転者によるブレーキペダル1の踏込み量に応じて、マスタシリンダ3で昇圧された制動流体圧を各車輪5FL〜5RRの各ホイールシリンダ6FL〜6RRに供給する。また、マスタシリンダ3と各ホイールシリンダ6FL〜6RRとの間には制動流体圧制御部7を介装している。
【0008】
制動流体圧制御部7は、例えばアンチスキッド制御やトラクション制御に用いられる制動流体圧制御部を利用したものである。制動流体圧制御部7は、各ホイールシリンダ6FL〜6RRの制動流体圧を個別に制御する。そして、制動流体圧制御部7は、単独でその制動流体圧を制御できる。また、制動流体圧制御部7は、後述する制駆動力コントロールユニット8から制動流体圧指令値が入力された場合には、その制動流体圧指令値に応じて制動流体圧を制御することもできる。例えば、液圧供給系にアクチュエータを含んで制動流体圧制御部7を構成している。アクチュエータとしては、各ホイールシリンダ液圧を任意の制動液圧に制御可能な比例ソレノイド弁が挙げられる。
【0009】
また、この車両は、駆動トルクコントロールユニット12を搭載している。駆動トルクコントロールユニット12は、エンジン9の運転状態、自動変速機10の選択変速比及びスロットルバルブ11のスロットル開度を制御することにより、駆動輪である後輪5RL,5RRへの駆動トルクを制御する。駆動トルクコントロールユニット12は、燃料噴射量や点火時期を制御したり、同時にスロットル開度を制御したりすることで、エンジン9の運転状態を制御する。駆動トルクコントロールユニット12は、単独で後輪5RL,5RRの駆動トルクを制御することもできる。また、駆動トルクコントロールユニット12は、制駆動力コントロールユニット8から駆動トルク指令値が入力された場合には、その駆動トルク指令値に応じて駆動輪トルクを制御することもできる。駆動トルクコントロールユニット12は、制御に使用した駆動トルクTwの値を制駆動力コントロールユニット8に出力する。
【0010】
また、この車両は、画像処理機能付きの撮像部13を搭載している。撮像部13は、走行車線内における自車両の位置を検出する。例えば、CCD(ChargeCoupled Device)カメラからなる単眼カメラで撮像するように撮像部13を構成している。車両前部に撮像部13を設置している。
撮像部13は、自車両前方の撮像画像から例えば白線等のレーンマーカを検出する。撮像部13は、その検出したレーンマーカを基に、走行車線を検出する。さらに、撮像部13は、検出した走行車線を基に、自車両の走行車線と自車両の前後方向軸とのなす角(ヨー角)φ、走行車線中央からの横変位X及び走行車線曲率β等を算出する。撮像部13は、算出したこれらヨー角φ、横変位X及び走行車線曲率β等を制駆動力コントロールユニット8に出力する。
【0011】
なお、本発明においては画像処理以外の検出手段でレーンマーカを検出するものであっても良い。例えば、車両前方に取り付けられた複数の赤外線センサによりレーンマーカを検出し、その検出結果に基づいて走行車線を検出しても良い。
また、本発明は走行車線を白線に基づいて決定する構成に限定されるものではない。すなわち、走行車線を認識させるための白線(レーンマーカ)が走路上にない場合、画像処理や各種センサによって得られる道路形状や周囲環境等の情報から、自車両が走行に適した走路範囲や、運転者が自車両を走行させるべき走路範囲を推測し、走行車線として決定しても良い。例えば、走路上に白線がなく、道路の両側ががけになっている場合には、走路のアスファルト部分を走行車線として決定する。また、ガードレールや縁石等がある場合は、その情報を考慮して走行車線を決定すれば良い。また、走行車線曲率βを後述のステアリングホイール21の操舵角δを基に算出しても良い。
【0012】
また、この車両は、ナビゲーション装置14を搭載している。ナビゲーション装置14は、自車両に発生する前後加速度Yg或いは横加速度Xg、又は自車両に発生するヨーレイトφ´(=dφ/dt)を検出する。ナビゲーション装置14は、検出した前後加速度Yg、横加速度Xg及びヨーレイトφ´を、道路情報とともに、制駆動力コントロールユニット8に出力する。道路情報としては、車線数、一般道路又は高速道路等の道路種別を示す道路種別情報がある。なお、専用のセンサにより各値を検出するようにしても良い。すなわち、加速度センサにより前後加速度Yg及び横加速度Xgを検出する。また、ヨーレイトセンサによりヨーレイトφ´を検出する。
【0013】
また、この車両は、レーダ16を搭載している。レーダ16は、レーザ光を前方に掃射して先行障害物からの反射光を受光することで、自車両と前方障害物との間の距離等を検出する。このレーダ16による検出結果は、追従走行制御(クルーズコントロール)や追突速度低減ブレーキ装置等における処理のために使用される。レーダ16は、前方障害物の位置の情報を制駆動力コントロールユニット8に出力する。
【0014】
また、この車両は、サスペンションストロークセンサ23FL〜23RRを搭載している。サスペンションストロークセンサ23FL〜23RRは、サスペンションストロークStを検出する。サスペンションストロークセンサ23FL〜23RRは、検出したサスペンションストロークStを制駆動力コントロールユニット8に出力する。また、この車両は、3軸センサ15を搭載している。3軸センサ15は、道路勾配Slを検出する。3軸センサ15は、検出した道路勾配Slを制駆動力コントロールユニット8に出力する。
【0015】
また、この車両は、マスタシリンダ3の出力圧、すなわちマスタシリンダ液圧Pmf,Pmrを検出するマスタシリンダ圧センサ17、アクセルペダルの踏込み量、すなわちアクセル開度θtを検出するアクセル開度センサ18、ステアリングホイール21の操舵角(ステアリング舵角)δを検出する操舵角センサ19、運転者による方向指示器(ターンシグナルスイッチ)の操作を検出する方向指示スイッチ20、及び各車輪5FL〜5RRの回転速度、所謂車輪速度Vwi(i=fl,fr,rl,rr)を検出する車輪速度センサ22FL〜22RRを搭載している。これらセンサ等は、検出した検出信号を制駆動力コントロールユニット8に出力する。
【0016】
なお、検出した車両の走行状態データに左右の方向性がある場合には、いずれも右方向を正方向とする。すなわち、ヨーレイトφ´、横加速度Xg及びヨー角φは、右旋回時に正値となり、横変位Xは、走行車線中央から右方にずれているときに正値となる。また、前後加速度Ygは、加速時に正値となり、減速時に負値となる。
【0017】
次に、制駆動力コントロールユニット8で行う演算処理を説明する。
図2は、制駆動力コントロールユニット8で行う演算処理手順を示す。例えば10msec.毎の所定サンプリング時間ΔT毎にタイマ割込によって演算処理を実行する。なお、演算処理によって得た情報を随時記憶装置に更新記憶すると共に、必要な情報を随時記憶装置から読み出す。
【0018】
図2に示すように、処理を開始すると、先ずステップS1において、前記各センサやコントローラ、コントロールユニットから各種データを読み込む。具体的には、ナビゲーション装置14が得た前後加速度Yg、横加速度Xg、ヨーレイトφ´及び道路情報、各センサが検出した、各車輪速度Vwi、操舵角δ、アクセル開度θt、マスタシリンダ液圧Pmf,Pmr及び方向スイッチ信号、駆動トルクコントロールユニット12からの駆動トルクTw、撮像部13からヨー角φ、横変位X及び走行車線曲率β、サスペンションストロークセンサ23FL〜23RRから得たサスペンションストロークSt、並びに3軸センサ15から得た道路勾配Slを読み込む。
【0019】
続いてステップS2において、車速Vを算出する。具体的には、前記ステップS1で読み込んだ車輪速度Vwiを基に、下記(1)式により車速Vを算出する。
前輪駆動の場合
V=(Vwrl+Vwrr)/2
後輪駆動の場合
V=(Vwfl+Vwfr)/2
・・・(1)
ここで、Vwfl,Vwfrは左右前輪それぞれの車輪速度であり、Vwrl,Vwrrは左右後輪それぞれの車輪速度である。すなわち、この(1)式では、従動輪の車輪速の平均値として車速Vを算出している。なお、本実施形態では、後輪駆動車両なので、後者の式、すなわち前輪の車輪速度により車速Vを算出する。
【0020】
また、このように算出した車速Vは好ましくは通常走行時に用いる。例えば、ABS(Anti-lock Brake System)制御等が作動している場合、そのABS制御内で推定している推定車体速度を前記車速Vとして用いるようにする。また、ナビゲーション装置14でナビゲーション情報に利用している値を車速Vとして用いることもできる。また、AT軸出力を基に、車速を算出することもできる。この場合、下記(2)式により車速Vを算出する。
V=(2π・R)・W・(60/1000) ・・・(2)
ここで、Rは、車輪半径とデフギアの比(車輪半径/デフギア)である。Wは、AT出力軸回転数(rpm)である。
【0021】
続いてステップS3において、車線逸脱傾向を判定する。図3は、この判定処理の処理手順を示す。また、図4には、この処理で用いる値の定義を示している。
図3に示すように、先ずステップS41において、所定時間T後の車両重心横位置の推定横変位Xsを算出する。具体的には、前記ステップS1で得たヨー角φ、走行車線曲率β及び現在の車両の横変位X0、及び前記ステップS2で得た車速Vを用いて、下記(3)式により推定横変位Xsを算出する。
Xs=Tt・V・(φ+Tt・V・β)+X0 ・・・(3)
ここで、Ttは前方注視距離算出用の車頭時間である。この車頭時間Ttに自車速Vを乗じると前方注視点距離になる。また、車頭時間Tt後の走行車線中央からの横変位推定値が将来の推定横変位Xsとなる。この(3)式によれば、例えばヨー角φが大きくなるほど、推定横変位Xsは大きくなる。
【0022】
続いてステップS42において、逸脱判定をする。具体的には、推定横変位Xsと所定の逸脱傾向判定用しきい値Xとを比較する。ここで、逸脱傾向判定用しきい値Xは、一般的に車両が車線逸脱傾向にあると把握できる値である。逸脱傾向判定用しきい値Xは、例えば実験値等である。また、走行路の境界線の位置を示す値として、下記(4)式により逸脱傾向判定用しきい値Xを算出できる。
=(L−H)/2 ・・・(4)
ここで、Lは車線幅である。Hは車両の幅である。車線幅Lについては、撮像部13が撮像画像を処理して得ている。また、ナビゲーション装置14から車両の位置を得たり、ナビゲーション装置14の地図データから車線幅Lを得たりしても良い。
【0023】
なお、図4において、逸脱傾向判定用しきい値Xは、自車両の走行車線内に設定されているが、本発明はこれに限らず、走行車線の外側に設定されていても良い。また、自車両が走行車線から逸脱する前に逸脱傾向ありと判定することに限らず、例えば車輪の少なくとも1つが車線から逸脱した後に逸脱傾向ありと判定しても良い。この場合、そのような判定を得るように逸脱傾向判定用しきい値Xを設定する。
【0024】
このステップS42において、推定横変位Xsが逸脱傾向判定用しきい値X以上の場合(|Xs|≧X)、車線逸脱傾向ありと判定する。また、推定横変位Xsが逸脱傾向判定用しきい値X未満の場合(|Xs|<X)、車線逸脱傾向なしと判定する。
続いてステップS43において、逸脱判断フラグFoutを設定する。すなわち、前記ステップS42において、車線逸脱傾向ありと判定した場合(|Xs|≧X)、逸脱判断フラグFoutをONにする(Fout=ON)。また、前記ステップS42において、車線逸脱傾向なしと判定した場合(|Xs|<X)、逸脱判断フラグFoutをOFFにする(Fout=OFF)。
【0025】
このステップS42及びステップS43の処理により、例えば自車両が車線中央から離れていき、推定横変位Xsが逸脱傾向判定用しきい値X以上になったとき(|Xs|≧X)、逸脱判断フラグFoutがONになる(Fout=ON)。また、自車両(Fout=ONの状態の自車両)が車線中央側に復帰していき、推定横変位Xsが逸脱傾向判定用しきい値X未満になったとき(|Xs|<X)、逸脱判断フラグFoutがOFFになる(Fout=OFF)。例えば、車線逸脱傾向がある場合に、後述する逸脱防止のための制動制御を実施したり、運転者自身が車線逸脱を回避する操作をしたりすれば、逸脱判断フラグFoutがONからOFFになる。
【0026】
続いてステップS44において、横変位Xを基に逸脱方向Doutを判定する。具体的には、車線中央から左方向に横変位している場合、その方向を逸脱方向Doutにする(Dout=left)。また、車線中央から右方向に横変位している場合、その方向を逸脱方向Doutにする(Dout=right)。
続いてステップS4において、運転者の車線変更の意思を判定する。具体的には、前記ステップS1で得た方向スイッチ信号及び操舵角δを基に、次のように運転者の車線変更の意思を判定する。
【0027】
方向スイッチ信号が示す方向(ウインカ点灯側)と、前記ステップS3で得た逸脱方向Doutが示す方向とが同じ場合、運転者が意識的に車線変更していると判定し、逸脱判断フラグFoutをOFFに変更する(Fout=OFF)。すなわち、車線逸脱傾向なしとの判定結果に変更する。また、方向スイッチ信号が示す方向(ウインカ点灯側)と、前記ステップS3で得た逸脱方向Doutが示す方向とが異なる場合、逸脱判断フラグFoutを維持し、逸脱判断フラグFoutをONのままにする(Fout=ON)。すなわち、車線逸脱傾向ありとの判定結果を維持する。
【0028】
また、方向指示スイッチ20が操作されていない場合には、操舵角δを基に運転者の車線変更の意思を判定する。具体的には、運転者が逸脱方向に操舵している場合において、その操舵角δとその操舵角の変化量(単位時間当たりの変化量)Δδとの両方が設定値以上のときには、運転者が意識的に車線変更していると判定し、逸脱判断フラグFoutをOFFに変更する(Fout=OFF)。なお、操舵トルクを基に運転者の意思を判定しても良い。
このように、逸脱判断フラグFoutがONである場合において運転者が意識的に車線変更していないときには、逸脱判断フラグFoutをONに維持している。
【0029】
続いてステップS5において、前記ステップS4で設定(維持)した逸脱判断フラグFoutがONの場合、車線逸脱回避のための警報として、音出力又は表示出力をする。
なお、後述するように、逸脱判断フラグFoutがONの場合、車線逸脱防止制御として自車両へのヨーモーメント付与を開始するから、この自車両へのヨーモーメント付与と同時に該警報出力がされる。しかし、警報の出力タイミングは、これに限定されるものではなく、例えば車両へのヨーモーメント付与の開始タイミングよりも早くても良い。
【0030】
続いてステップS6において、車線逸脱防止制御として自車両の減速制御を行うか否かを判定する。本実施形態の車線逸脱防止制御では、自車両が車線逸脱してしまうのを防止する目的で、減速制御により自車両を減速させている。このステップS6では、その減速制御を行うか否かを判定する。具体的には、前記ステップS3で算出した推定横変位Xsから横変位限界距離Xを減じて得た減算値(|Xs|−X)が減速制御判定用しきい値Xβ以上か否かを判定する。
【0031】
ここで、減速制御判定用しきい値Xβは、走行車線曲率βに応じて設定される値である。図5は、走行車線曲率βと減速制御判定用しきい値Xβとの関係の一例を示す。同図に示すように、走行車線曲率βが小さい場合、減速制御判定用しきい値Xβはある一定の大きい値となる。また、走行車線曲率βがある値より大きくなると、走行車線曲率βが増加するのに対して減速制御判定用しきい値Xβは減少する。そして、走行車線曲率βがさらに大きくなると、減速制御判定用しきい値Xβはある一定の小さい値となる。さらに、車速Vが大きくなるほど、減速制御判定用しきい値Xβを小さくするようにしても良い。
【0032】
このステップS6では、前記減算値(|Xs|−X)が減速制御判定用しきい値Xβ以上の場合(|Xs|−X≧Xβ)、減速制御を行うと決定するとともに、減速制御作動判断フラグFgsをONに設定する(Fgs=ON)。また、前記減算値(|Xs|−X)が減速制御判定用しきい値Xβ未満の場合(|Xs|−X<Xβ)、減速制御を行わない決定をするとともに、減速制御作動判断フラグFgsをOFFに設定する(Fgs=OFF)。
【0033】
なお、前記ステップS3において推定横変位Xsが逸脱傾向判定用しきい値X以上の場合(|Xs|≧X)、逸脱判断フラグFoutをONに設定することと、前記減算値(|Xs|−X)が減速制御判定用しきい値Xβ以上の場合、減速制御作動判断フラグFgsをONに設定することとの関係から、逸脱判断フラグFoutをONに設定するとしても、その設定は、減速制御作動判断フラグFgsをONに設定した後になる。すなわち、後述する逸脱判断フラグFoutがONになった場合に実施する自車両へのヨーモーメント付与との関係では、自車両の減速制御を実施した後、自車両にヨーモーメントを付与するようになる。
【0034】
続いてステップS7において、車線逸脱防止制御として自車両に付与する目標ヨーモーメントMsを算出する。目標ヨーモーメントMsは、自車両が車線逸脱してしまうのを十分に防止できるヨーモーメントである。具体的には、前記ステップS3で得た推定横変位Xs及び横変位限界距離Xを用いて、下記(5)式により目標ヨーモーメントMsを算出する。
Ms=K1・K2・(|Xs|−X) ・・・(5)
【0035】
ここで、K1は車両諸元から決まる比例ゲインである。K2は車速Vに応じて変動するゲインである。図6はゲインK2の例を示す。同図に示すように、低速域では、ゲインK2は、ある一定の大きい値となる。また、車速Vがある値よりも大きくなると、車速Vの増加に対してゲインK2は減少する。そして、その後ある車速Vに達するとゲインK2はある一定の小さい値となる。
この(5)式によれば、推定横変位Xsと横変位限界距離Xとの差分が大きくなるほど、目標ヨーモーメントMsは大きくなる。また、逸脱判断フラグFoutがONの場合に目標ヨーモーメントMsを算出する。また、逸脱判断フラグFoutがOFFの場合、目標ヨーモーメントMsを零に設定する。
【0036】
続いてステップS8において、目標ヨーモーメントMsを発生させるための目標制動液圧を算出する。本実施形態の車線逸脱防止制御では、左右輪に制動力差を発生させて自車両にヨーモーメントを付与している。このステップS8では、その制動力差を発生させる目標制動液圧差を算出する。具体的には、前記ステップS7で算出した目標ヨーモーメントMsを用いて、下記(6)式により目標制動液圧差ΔPを算出する。
ΔP=Kgb・Ms ・・・(6)
ここで、Kgbは、車両諸元から決まる比例ゲインである。
【0037】
続いてステップS9において、車線逸脱防止制御として行う減速制御の減速度を算出する。このステップS9では、その減速度を実現するために左右両輪で発生させる制動力を算出する。具体的には、そのような制動力を左右両輪に発生させるための目標制動液圧Pgf,Pgrを算出する。前輪用の目標制動液圧Pgfについては、前記ステップS3で算出した推定横変位Xs及び横変位限界距離X、並びに前記ステップS6で得た減速制御判定用しきい値Xβを用いて、下記(7)式により算出する。
Pgf=Kgv・Kgx・(|Xs|−X−Xβ) ・・・(7)
【0038】
ここで、Kgv,Kgxはそれぞれ、車速V及び横変化量dxを基に設定する、制動力を制動液圧に換算するための換算係数である。図7は換算係数Kgvの例を示す。同図に示すように、換算係数Kgvは、低速域で大きい値になる。また、換算係数Kgvは、車速Vがある値になると、車速Vの増加とともに増加する。また、その後ある車速Vに達すると、換算係数Kgvは、ある一定の大きい値になる。そして、前輪用の目標制動液圧Pgfを基に、前後配分を考慮した後輪用の目標制動液圧Pgrを算出する。
【0039】
続いてステップS10において、コンプライアンスステアの特性に応じて第1液圧前後配分比Hを算出する。一般的にはコンプライアンスステアは次のように定義される。
車輪に制動力が加わると、その制動力が車輪と車体とを繋ぐリンク機構に伝わり、リンク機構のブッシュが撓むことになる。その結果、車輪にトー変化が生じることになる。このトー変化を積極的に利用し、制御することがコンプライアンスステアになる。このコンプライアンスステアには、トー角が外側(トーアウト方向)に向くようにする(車輪の前側が開くようにする)トーアウト制御と、トー角が内側(トーイン方向)に向くようにする(車輪の後側が開くようにする)トーイン制御とがある。一般的には、車両諸元からコンプライアンスステアが決まる。なお、一般的に、二輪駆動車では、前輪がトーアウト方向のトー角を有しており、四輪駆動車では、前輪がトーイン方向のトー角を有している。また、二輪駆動車及び四輪駆動車の何れにおいても、後輪はトーイン方向のトー角を有している。
【0040】
本実施形態では、車線逸脱防止制御として自車両にヨーモーメントを付与するために、左右輪に制動力差を発生させている。すなわち、左右輪のうち逸脱回避側の車輪に制動力を発生させることで、自車両にヨーモーメントを付与している。例えば、走行車線の右側に車線逸脱傾向がある場合、逸脱回避側の車輪となる左輪に制動力を発生させる(左輪の制動力を右輪の制動力よりも大きくしている)。このようなことから、車線逸脱防止制御中に、逸脱回避側の車輪にコンプライアンスステアによるトー角変化が発生する。このようなことから、このステップS10では、車線逸脱防止制御中のコンプライアンスステアによるトー角変化を考慮して、第1液圧前後配分比Hを算出する。具体的には、下記(8)式及び(9)式により、コンプライアンスステアに応じて第1液圧前後配分比Hを算出する。
(1)前輪のコンプライアンスステアCsがトーイン方向(トーイン制御)の場合
=MAPin(Cs) ・・・(8)
(2)前輪のコンプライアンスステアCsがトーアウト方向(トーアウト制御)の場合
=MAPout(Cs) ・・・(9)
ここで、前輪(逸脱回避側の前輪)のコンプライアンスステアCsに着目して、第1液圧前後配分比Hを算出している。
【0041】
図8は、コンプライアンスステアCsと第1液圧前後配分比Hとの関係を示すマップの一例を示す。同図に示すように、トーイン方向のコンプライアンスステアCs(トーイン制御)であれば、第1液圧前後配分比H(=MAPin(Cs))は正値となる。また、トーアウト方向のコンプライアンスステアCs(トーアウト制御)であれば、第1液圧前後配分比H(=MAPout(Cs))は負値となる。この図8によれば、コンプライアンスステア(コンプライアンスステアの特性)Csがトーイン傾向が強くなるほど、第1液圧前後配分比Hは正値でより大きい値になる。すなわち、同じ制動力でも、トーイン方向に変化し易いほど、第1液圧前後配分比Hは正値でより大きい値になる。また、コンプライアンスステア(コンプライアンスステアの特性)Csがトーアウト傾向が強くなるほど、第1液圧前後配分比Hは負値でより小さい値になる(絶対値で大きくなる)。すなわち、同じ制動力でも、トーアウト方向に変化し易いほど、第1液圧前後配分比Hは負でより小さい値になる(絶対値で大きくなる)。この図8に示すようなマップを基に、車両諸元から決まるコンプライアンスステア(コンプライアンスステアの特性)Csに応じた第1液圧前後配分比Hを得る。例えば、その車両のコンプライアンスステアCsがトーアウト方向(トーアウト制御)であれば、前記(9)式を用いて、該コンプライアンスステアCsに対応する第1液圧前後配分比Hを得る。
【0042】
また、制動力に応じてコンプライアンスステア量(コンプライアンスステアによるトー角変化量)が変化する。このようなことから、マップ等に制動力とコンプライアンスステア量とを対応付けておき、制動力を基に、コンプライアンスステア量を得ることもできる。そして、そのようにして得たコンプライアンスステア量に対応する第1液圧前後配分比Hを得る。図9は、制動力とコンプライアンスステア量との関係を示すマップの一例を示す。車両諸元から、制動力とコンプライアンスステア量との関係として同図に示すようなマップを得ることができるものとする。コンプライアンスステアの特性がトー角が出易い傾向のものであれば、制動力の増加に対してコンプライアンスステア量の増加割合が高くなる。同図で言えば、コンプライアンスステアの特性は、点線、実線及び一点鎖線の順番で、トー角が出易くなっていく。この結果、トー角が出易いトーイン制御であれば、制動力の増加に対してトーイン方向へのトー角の変化割合が高くなる。また、トー角が出易いトーアウト制御であれば、制動力の増加に対してトーアウト方向へのトー角の変化割合が高くなる。
【0043】
この図9を用いることで、自車両の車両諸元の制動力とコンプライアンスステア量との関係から、制動力に対応するコンプライアンスステア量を得ることができる。ここで、コンプライアンスステア量を得るための制動力値は、例えば前記ステップS8で目標ヨーモーメントMsを発生させるために算出した目標制動液圧相当から得られる値である。そして、そのようにして得たコンプライアンスステア量を基に、第1液圧前後配分比Hを得る。例えば、図9のコンプライアンスステア量をゲインKとして定義するとともに、そのゲインKを所定の値(第1液圧前後配分比Hの基準値H)に乗算して、第1液圧前後配分比Hを得る(H=K・H)。これにより、制動力に応じた第1液圧前後配分比Hを、コンプライアンスステア特性に合致させて得ることができる。
【0044】
続いてステップS11において、サスペンションストロークにより液圧前後配分比を算出する。
一般的には、いわゆるロールステア等の方策により、サスペンションストロークStに応じてトー角が変化する。このようなことから、このステップS11では、サスペンションストロークStを考慮して、液圧前後配分比の算出を行う。具体的には、前記ステップS10で算出した第1液圧前後配分比Hに乗じるゲインGtをサスペンションストロークStに応じて変化させる。すなわち、前記ステップS10で算出した第1液圧前後配分比Hを、サスペンションストロークStにより補正する。次の手順により、ゲインGtを算出する。
【0045】
先ず、サスペンションストロークStとトー角との関係により、下記(10)式により、前記ステップS1で読み込んだサスペンションストロークStを基に、トー角変化量ΔTdを算出する。
ΔTd=MAPsp(St) ・・・(10)
ここで、MAPsp(St)は、サスペンションストロークStとトー角変化量ΔTdとの関係を基に予め得ているマップである。サスペンションストロークStは、前左右輪それぞれで得た平均値であったり、走行シーンに応じて左右輪の何れかから選択した値であったりする。
【0046】
図10は、サスペンションストロークStとトー角変化量ΔTdとの関係を示すマップの一例を示す。同図に示す実線の特性は、トーアウト制御のコンプライアンスステアのものであり、その反対の特性となる点線の特性は、トーイン制御のコンプライアンスステアのものである。同図中、サスペンションストロークStが零となる場合は、サスペンションに入力が無い状態(車重のみの状態)を示す。
【0047】
同図に示すように、トーアウト制御のコンプライアンスステアの場合(実線の特性)、サスペンションストロークStが伸び側で増加すると、トーイン方向へのトー角変化量ΔTdが増加する。また、サスペンションストロークStが沈み側で増加すると、トーアウト方向へのトー角変化量ΔTdが増加する。また、トーイン制御のコンプライアンスステアの場合(点線の特性)、サスペンションストロークStが伸び側で増加すると、トーアウト方向へのトー角変化量ΔTdが増加する。また、サスペンションストロークStが沈み側で増加すると、トーイン方向へのトー角変化量ΔTdが増加する。
【0048】
そして、前記(10)式により算出したトー角変化量ΔTdを用いて、下記(11)式によりゲインGtを算出する。
Gt=MAPtd(ΔTd) ・・・(11)
ここで、MAPtd(ΔTd)は、トー角変化量ΔTdとゲインGtとの関係を基に予め得ているマップである。
図11は、トー角変化量ΔTdとゲインGtとの関係を示すマップの一例を示す。同図(a)は、トーアウト制御のコンプライアンスステアのものであり、同図(b)は、トーイン制御のコンプライアンスステアのものである。
【0049】
同図(a)に示すように、トーアウト制御のコンプライアンスステアの場合、トーイン方向へのトー角変化量が増加すると、すなわち、サスペンションストロークStが伸び側で増加すると、ゲインGtも増加する。そして、トーイン方向へのトー角変化量がある値以上になると、トーイン方向へのトー角変化量にかかわらずゲインGtは一定値(リミット値)になる。また、トーアウト方向へのトー角変化量が増加すると、すなわち、サスペンションストロークStが沈み側で増加すると、ゲインGtも増加する。そして、トーアウト方向へのトー角変化量がある値以上になると、トーアウト方向へのトー角変化量にかかわらずゲインGtは一定値(リミット値)になる。ここで、トーアウト方向へのトー角変化量(サスペンションストロークStの沈み量)に対応して得られるゲインGtのリミット値は、トーイン方向へのトー角変化量(サスペンションストロークStの伸び量)に対応して得られるゲインGtのリミット値よりも小さくなる。
【0050】
また、同図(b)に示すように、トーイン制御のコンプライアンスステアの場合、トーアウト方向へのトー角変化量が増加すると、すなわち、サスペンションストロークStが伸び側で増加すると、ゲインGtも増加する。そして、トーアウト方向へのトー角変化量がある値以上になると、トーアウト方向へのトー角変化量にかかわらずゲインGtは一定値(リミット値)になる。また、トーイン方向へのトー角変化量が増加すると、すなわち、サスペンションストロークStが沈み側で増加すると、ゲインGtも増加する。そして、トーイン方向へのトー角変化量がある値以上になると、トーイン方向へのトー角変化量にかかわらずゲインGtは一定値(リミット値)になる。ここで、トーイン方向へのトー角変化量(サスペンションストロークStの沈み量)に対応して得られるゲインGtのリミット値は、トーアウト方向へのトー角変化量(サスペンションストロークStの伸び量)に対応して得られるゲインGtのリミット値よりも小さくなる。すなわち、ゲインGtのリミット値の関係が、トーアウト制御のコンプライアンスステアの場合と反対になる。
【0051】
続いてステップS12において、前記ステップS1で読み込んだ道路勾配Slを基に、第2液圧前後配分比Hを算出する。具体的には、道路勾配Sl(上り勾配、下り勾配)に応じて、下記(12)式又は(13)式により第2液圧前後配分比Hを算出する。
(1)Sl>0(上り勾配の場合)
=MAPslu(Sl) ・・・(12)
(2)Sl<0(下り勾配の場合)
=MAPsld(Sl) ・・・(13)
ここで、MAPslu(Sl)、MAPsld(Sl)は、道路勾配Slと第2液圧前後配分比Hとの関係を基に予め得ているマップである。
【0052】
図12は、道路勾配Slと第2液圧前後配分比Hとの関係を示すマップの一例である。同図に示すように、上りの道路勾配Slが大きくなると、第2液圧前後配分比Hも増加する。そして、上りの道路勾配Slがある値以上になると、上りの道路勾配Slにかかわらず第2液圧前後配分比Hは一定値(リミット値)になる。この上りの道路勾配Slと第2液圧前後配分比Hとの関係は、前記(12)式のMAPslu(Sl)に相当する。また、下りの道路勾配Slが大きくなると、第2液圧前後配分比Hは減少する。そして、下りの道路勾配Slがある値以上になると、下りの道路勾配Slにかかわらず第2液圧前後配分比Hは一定値(リミット値)になる。この下りの道路勾配Slと第2液圧前後配分比Hとの関係は、前記(13)式のMAPsld(Sl)に相当する。また、同図に示すように、概略として、上りの道路勾配Slであれば、第2液圧前後配分比Hは正値を示し、下りの道路勾配Slであれば、第2液圧前後配分比Hは負値を示す。
【0053】
続いてステップS13において、最終的な液圧前後配分比を算出する。具体的には、前記ステップS10〜ステップS12で算出した液圧前後配分比H,H及びゲインGtを用いて、下記(16)式により最終的な液圧前後配分比Hを算出する。
H=Gt・H+H ・・・(14)
続いてステップS14において、各車輪の目標制動液圧を算出する。すなわち、車線逸脱防止の制動制御の有無(逸脱判断フラグFout及び減速制御作動判断フラグFgsの状態)に応じて、最終的な制動液圧を算出する。具体的には次のように算出する。
【0054】
(1)逸脱判断フラグFoutがONであり(車線逸脱傾向があるとの判定結果を得ており)、その逸脱方向Doutがleftの場合で(Dout=left)、かつ減速制御作動判断フラグFgsがOFFの場合、すなわち右旋回となるように自車両にヨーモーメントを付与する場合、下記(15)式により各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)を算出する。
Psfl=0
Psfr=ΔP+ΔP・H
Psrl=0
Psrr=ΔP−ΔP・H
・・・(15)
【0055】
ここで、液圧前後配分比Hは、第1液圧前後配分比Hと第2液圧前後配分比Hとの加算値である。第1液圧前後配分比Hに着目すると、第1液圧前後配分比Hは、トーイン方向のコンプライアンスステアCsの場合には正値になり、トーアウト方向のコンプライアンスステアCsの場合には負値になる(前記図8参照)。よって、前記(15)式によれば、トーイン方向のコンプライアンスステアCsの場合には、旋回内側の右前後輪では、右前輪側の目標制動液圧Psfrが大きくなる。一方、トーアウト方向のコンプライアンスステアCsの場合には、右後輪側の目標制動液圧Psrrの方が大きくなる。
【0056】
また、制動力とコンプライアンスステア量との関係を考慮すれば(前記図9参照)、トーイン方向のコンプライアンスステアCsの場合には、制動力が大きくなるほど(ヨーモーメントが大きくなるほど)、右前輪側の目標制動液圧Psfrがより大きくなる。また、トーアウト方向のコンプライアンスステアCsの場合には、制動力が大きくなるほど(ヨーモーメントが大きくなるほど)、右後輪側の目標制動液圧Psfrがより大きくなる。
【0057】
(2)逸脱判断フラグFoutがONであり(車線逸脱傾向があるとの判定結果を得ており)、その逸脱方向Doutがrightの場合で(Dout=right)、かつ減速制御作動判断フラグFgsがOFFの場合、すなわち左旋回となるように自車両にヨーモーメントを付与する場合、下記(16)式により各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)を算出する。
Psfl=ΔP+ΔP・H
Psfr=0
Psrl=ΔP−ΔP・H
Psrr=0
・・・(16)
【0058】
この(16)式によれば、トーイン方向のコンプライアンスステアCsの場合には、旋回内側の左前後輪では、左前輪側の目標制動液圧Psfrが大きくなる。一方、トーアウト方向のコンプライアンスステアCsの場合には、左後輪側の目標制動液圧Psrrが大きくなる。また、制動力とコンプライアンスステア量との関係を考慮すれば(前記図9参照)、トーイン方向のコンプライアンスステアCsの場合には、制動力が大きくなるほど(ヨーモーメントが大きくなるほど)、左前輪側の目標制動液圧Psfrがより大きくなる。また、トーアウト方向のコンプライアンスステアCsの場合には、制動力が大きくなるほど(ヨーモーメントが大きくなるほど)、左後輪側の目標制動液圧Psfrがより大きくなる。
【0059】
(3)逸脱判断フラグFoutがONであり、その逸脱方向Doutがleftの場合で(Dout=left)、かつ減速制御作動判断フラグFgsがONの場合、すなわち右旋回となるように自車両にヨーモーメントを付与しつつも、自車両を減速させる場合、下記(17)式により各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)を算出する。
Psfl=Pgf/2
Psfr=Pgf/2+ΔP+ΔP・H
Psrl=Pgr/2
Psrr=Pgr/2+ΔP−ΔP・H
・・・(17)
【0060】
(4)逸脱判断フラグFoutがONであり、その逸脱方向Doutがrightの場合で(Dout=right)、かつ減速制御作動判断フラグFgsがONの場合、すなわち左旋回となるように自車両にヨーモーメントを付与しつつも、自車両を減速させる場合、下記(18)式により各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)を算出する。
Psfl=Pgf/2+ΔP+ΔP・H
Psfr=Pgf/2
Psrl=Pgr/2+ΔP−ΔP・H
Psrr=Pgr/2
・・・(18)
【0061】
(5)逸脱判断フラグFoutがOFFの場合、すなわち車線逸脱傾向がないとの判定結果を得た場合には、各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)は零になる。しかし、運転者がブレーキ操作をしていれば、そのブレーキ操作の操作量に応じた制動液圧Pmf,Pmrにより、下記(19)式及び(20)式により各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)を算出する。
Psfl=Psfr=Pmf ・・・(19)
Psrl=Psrr=Pmr ・・・(20)
ここで、Pmfは前輪用の制動液圧である。また、Pmrは後輪用の制動液圧であり、例えば、前後配分を考慮して前輪用の制動液圧Pmfを基に算出した値である。
【0062】
(6)運転者によるブレーキ操作している場合において、逸脱判断フラグFoutや減速制御作動判断フラグFgsがONになったときには、運転者によるブレーキ操作の操作量に応じた制動液圧Pmf,Pmrを加えて、各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)を算出する。例えば、運転者によるブレーキ操作している場合において、逸脱判断フラグFoutがONとなり、その逸脱方向Doutがleftの場合で(Dout=left)、かつ減速制御作動判断フラグFgsがOFFの場合には、下記(21)式により各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)を算出する。
Psfl=Pmf
Psfr=Pmf+ΔP+ΔP・H
Psrl=Pmr
Psrr=Pmr+ΔP−ΔP・H
・・・(21)
【0063】
以上のように、運転者によるブレーキ操作状態、並びに逸脱判断フラグFout及び減速制御作動判断フラグFgsの状態に応じて、各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)を算出する。そして、制駆動力コントロールユニット8は、このようにして算出した各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)を制動流体圧指令値として、制動流体圧制御部7に出力する。
【0064】
(動作及び作用)
動作及び作用は次のようになる。
車両走行中、各種データを読み込むとともに(前記ステップS1)、車速Vを算出する(前記ステップS2)。続いて、将来の推定横変位(逸脱推定値)Xsを算出し、算出した推定横変位Xsを基に、車線逸脱傾向の判定(逸脱判断フラグFoutの設定)を行う(前記ステップS3)。そして、その車線逸脱傾向の判定結果(逸脱判断フラグFout)を運転者の車線変更の意思を基に修正する(前記ステップS4)。そして、車線逸脱傾向の判定結果を基に、警報出力を行う(前記ステップS5)。
【0065】
また、車線逸脱防止制御として自車両に付与する目標ヨーモーメントMsを算出し、算出した目標ヨーモーメントMsを基に、目標制動液圧差ΔPを算出する(前記ステップS7、ステップS8)。一方、推定横変位Xsから逸脱傾向判定用しきい値Xを減じて得た減算値(|Xs|−X)と減速制御判定用しきい値Xβとの比較結果を基に、減速制御作動判断フラグFgsを設定する(前記ステップS6)。さらに、車線逸脱防止制御として実施する減速制御の減速度(目標制動液圧Pgf)を算出する(前記ステップS9)。
【0066】
一方、コンプライアンスステアを基に、第1液圧前後配分比Hを算出するとともに、サスペンションストロークStを基に、第1液圧前後配分比Hの補正値となるゲインGtを算出する(前記ステップS10、ステップS11)。また、道路勾配Slを基に、第2液圧前後配分比Hを算出する(前記ステップS12)。そして、算出した液圧前後配分比H,H及びゲインGtを用いて、最終的な液圧前後配分比Hを算出する(前記ステップS13)。
【0067】
続いて、車線逸脱防止のための制動制御の有無(逸脱判断フラグFout及び減速制御作動判断フラグFgsの状態)に応じて、各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)を算出する(前記ステップS14)。このとき、液圧前後配分比Hを用いて、各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)を算出する。そして、算出した各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)を制動流体圧指令値として、制動流体圧制御部7に出力する。これにより、車線逸脱傾向に応じたヨーモーメントを自車両に付与できる。そして、場合により、自車両を減速させることができる。
【0068】
ここで、前述のように、車線逸脱防止制御では、車線逸脱回避側(旋回内側)に位置する前後輪に制動力を発生させることで、自車両にヨーモーメントを付与している。そして、前後輪の制動力配分、すなわち制動液圧配分を液圧前後配分比Hにより決定している(前記(15)式〜(18)式)。ここで、液圧前後配分比Hが正値であれば、前輪側の制動液圧が増加し、後輪側の制動液圧が減少する。そして、液圧前後配分比Hが大きくなるほど、その傾向が強くなる。また、液圧前後配分比Hが負値であれば、後輪側の制動液圧が増加し、前輪側の制動液圧が減少する。そして、液圧前後配分比Hが大きくなるほど、その傾向が強くなる。
【0069】
そして、このような液圧前後配分比Hを、第1液圧前後配分比Hと第2液圧前後配分比Hとの加算値として得ている。第1液圧前後配分比Hは、前輪がトーイン方向のコンプライアンスステアCsであれば、正値となる。そして、そのトーイン傾向が強くなるほど、第1液圧前後配分比Hは正値でより大きい値になる(前記図8参照)。また、第1液圧前後配分比Hは、前輪がトーアウト方向のコンプライアンスステアCsであれば、負値となる。そして、そのトーアウト傾向が強くなるほど、第1液圧前後配分比Hは負値でより小さい値になる(前記図8参照)。よって、前輪がトーイン方向のコンプライアンスステアCsであれば、液圧前後配分比Hが大きくなる。すなわち、前輪側の制動液圧が増加し、後輪側の制動液圧が減少する。そして、そのトーイン傾向が強くなるほど、その増加及び減少の度合いが大きくなる。また、前輪がトーアウト方向のコンプライアンスステアCsであれば、液圧前後配分比Hが小さくなる。すなわち、前輪側の制動液圧が減少し、後輪側の制動液圧が増加する。そして、そのトーアウト傾向が強くなるほど、その減少及び増加の度合いが大きくなる。これにより、コンプライアンスステアCsによる前輪のトー角変化により発生する自車両のヨーモーメントを抑制することができる。例えば、前輪がトーアウト方向のコンプライアンスステアCsであれば、前輪の制動力の発生を抑制することで、トーアウト方向への前輪のトー角変化が抑制され、その結果として、該トー角変化に起因するヨーモーメントを抑制することができる。
【0070】
また、制動力に応じた第1液圧前後配分比Hを、コンプライアンスステア特性に合致させて得ている(前記図9参照)。ここでいう制動力は、目標ヨーモーメントMsを発生させるための制動力(目標制動液圧相当)、すなわち車線逸脱傾向に応じた制動力である。これにより、車線逸脱傾向が高く、制動力を大きくする場合には、前述のような前輪及び後輪の制動液圧の増加及び減少の度合いを大きくすることができる。例えば、前輪がトーアウト方向のコンプライアンスステアCsの場合、制動力が大きくなるほど、前輪側の制動液圧の減少度合いと後輪側の制動液圧が増加度合いとをともに大きくする。これにより、制動力にかかわらず、トーアウト方向への前輪のトー角変化を適切に抑制できる。
【0071】
また、サスペンションストロークとの関係では、第1液圧前後配分比HにゲインGtを乗じ、そのゲインGtをサスペンションストロークStに応じて変化させている(前記ステップS11参照)。これにより、サスペンションストロークによる車輪のトー角変化を基に、車両にヨーモーメントを付与するための制動力を補正し、所望のヨーモーメントを得ている。例えば、前輪がトーアウト方向のコンプライアンスステアである場合に、スペンションが伸びると(ストロークStの伸び量が多くなると)、トーイン方向へのトー角変化になる。これは、前輪がトーアウト方向のコンプライアンスステアである場合にトーイン方向へのトー角変化になるということは、前輪で横力を得る(前輪で分担するヨーモーメントを得る)ことができない状態にあると言える。このようなことから、前輪がトーアウト方向のコンプライアンスステアである場合にトーイン方向へのトー角変化になったときに、ゲインGtを大きくすることで(前記図11(a)参照)、後輪で横力を稼ぐことで、車両全体で所望のヨーモーメント(目標ヨーモーメント)を得ることができる。また、前輪がトーアウト方向のコンプライアンスステアである場合に、スペンションが沈むと(ストロークStの沈み量が多くなると)、トーアウト方向へのトー角変化になる。このような場合に、トーイン方向へのトー角変化のときよりも小さいがゲインGtを大きくすることで(前記図11(a)参照)、トーアウト方向への前輪のトー角変化を抑制しつつも、所望のヨーモーメント(目標ヨーモーメント)を得ることができるようになる。
【0072】
また、道路勾配との関係では、上りの道路勾配Slが大きくなると第2液圧前後配分比Hを増加させている。また、下りの道路勾配Slが大きくなると第2液圧前後配分比Hを減少させている(前記図12参照)。よって、上りの道路勾配Slであれば、液圧前後配分比Hが大きくなる。すなわち、前輪側の制動液圧が増加し、後輪側の制動液圧が減少する。そして、上りの道路勾配Slが大きくなるほど、その増加及び減少の度合いが大きくなる。また、下りの道路勾配Slであれば、液圧前後配分比Hが小さくなる。すなわち、前輪側の制動液圧が減少し、後輪側の制動液圧が増加する。そして、下りの道路勾配Slが大きくなるほど、その減少及び増加の度合いが大きくなる。これにより、道路勾配による前輪のトー角変化により自車両に発生するヨーモーメントを抑制できる。例えば、下り勾配の場合には、前輪の制動力の発生を抑制することで、前輪のトー角変化を抑制し、その結果として、該トー角変化に起因するヨーモーメントを抑制できる。
【0073】
なお、この実施形態を次のような構成により実現することもできる。
すなわち、この実施形態では、コンプライアンスステアに応じて液圧前後配分比を変化させている。これに対して、前後輪全体の制動液圧を変化させることもできる。すなわち、液圧前後配分比を考慮することなく、前輪又は後輪、或いは前後輪両方の制動液圧を大きくする、又は小さくする。なお、ここでいう車輪は自車両へのヨーモーメント付与により旋回内側に位置する車輪である。
【0074】
これにより、車線逸脱防止制御で自車両に付与するヨーモーメントを大きく補正するのと同等な作用、又は小さく補正するのと同等な作用により、コンプライアンスステアによるトー角変化により自車両に発生するヨーモーメントを相殺できる。例えば、前輪又は後輪、或いは前後輪両方の制動液圧を大きくすることで、コンプライアンスステアによるトー角変化により車線逸脱方向に発生するヨーモーメントを相殺できる。
【0075】
また、この実施形態では、制動液圧を制御して、制動力を制御している。これに対して、他の機械的構造又は電気的(例えば電動モータ)に制動力を制御することもできる。
また、この実施形態では、図8〜図12等により各種のマップやテーブルを具体的に説明している。しかし、マップやテーブルは、車両諸元等の他の条件により決まるものであるから、マップやテーブルを、本発明の効果を得ることができる限りにおいて、他の特性(極端な例では反対の特性)にすることもできる。
【0076】
なお、この実施形態では、制駆動力コントロールユニット8のステップS3及びステップS4の処理は、走行車線に対する車両の逸脱傾向を判定する車線逸脱傾向判定手段を実現している。また、制駆動力コントロールユニット8のステップS13及びステップS14の処理は、前記車線逸脱傾向判定手段が逸脱傾向ありと判定した場合に、車輪の制動力を制御して、左輪と右輪との間に制動力差を発生させることで車両にヨーモーメントを付与する制動力制御手段を実現している。また、制駆動力コントロールユニット8のステップS10の処理は、車輪に制動力を発生させる際に生じるコンプライアンスステアによるトー角変化を基に、前記制動力制御手段が車輪に発生させる制動力を補正するコンプライアンスステア用補正手段を実現している。
【0077】
また、この実施形態では、走行車線に対して車両が逸脱傾向にある場合、左輪と右輪との間に制動力差を発生させることで車線逸脱防止用のヨーモーメントを車両に付与しており、前記左輪と右輪との間に制動力差を発生させる車輪の制動力を、車輪に制動力を発生させる際のコンプライアンスステアによるトー角変化に起因して車両に発生するヨーモーメントを抑制可能に設定する車線逸脱防止方法を実現している。
【0078】
(効果)
本実施形態の効果は次のようになる。
(1)走行車線に対して自車両が逸脱傾向ありと判定した場合に、車輪の制動力を制御して、左右輪に制動力差を発生させることで自車両にヨーモーメントを付与するものであり、車輪に制動力を発生させる際に生じるコンプライアンスステアによるトー角変化を基に、車輪に発生させる制動力を補正している。これにより、コンプライアンスステアによるトー角変化にかかわらず、自車両の走行車線からの逸脱を防止するために必要なヨーモーメントを得ることができる。
【0079】
(2)コンプライアンスステアによるトー角変化により自車両に発生するヨーモーメントを抑制する方向に制動力を補正している。これにより、自車両の走行車線からの逸脱を防止するために必要なヨーモーメントを適切に得ることができる。
(3)前後それぞれの左右輪で制動力差を発生させることで自車両にヨーモーメントを付与しており、液圧前後配分比を変化させて、制動力を補正している。これにより、発生させる制動力の絶対量を維持することで所望のヨーモーメント(目標ヨーモーメント)を得ることを実現しつつ、コンプライアンスステアによるトー角変化により自車両に発生するヨーモーメントを抑制できる。
【0080】
(4)サスペンションストロークによる車輪のトー角変化を基に、自車両にヨーモーメントを付与するための制動力を補正している。これにより、自車両の走行車線からの逸脱を防止するために必要なヨーモーメントを適切に得ることができる。
(5)走行路の路面勾配による車輪のトー角変化を基に、制動力を補正している。具体的には、走行路の路面勾配による車輪のトー角変化により車両に発生するヨーモーメントを抑制する方向に制動力を補正している。これにより、自車両の走行車線からの逸脱を防止するために必要なヨーモーメントを適切に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の車線逸脱防止装置を搭載した車両の実施形態を示す概略構成図である。
【図2】前記車線逸脱防止装置を構成するコントロールユニットの処理内容を示すフローチャートである。
【図3】前記コントロールユニットによる車線逸脱傾向の判定の処理内容を示すフローチャートである。
【図4】推定横変位Xsや逸脱判定用しきい値X等の説明に使用した図である。
【図5】走行車線曲率βと減速制御判定用しきい値Xβとの関係を示す特性図である。
【図6】車速VとゲインK2との関係を示す特性図である。
【図7】車速VとゲインKgvとの関係を示す特性図である。
【図8】コンプライアンスステアCsと第1液圧前後配分比Hとの関係を示す特性図である。
【図9】制動力とコンプライアンスステア量(トー角変化量)との関係を示す特性図である。
【図10】サスペンションストロークStとトー角変化量ΔTdとの関係を示す特性図である。
【図11】トー角変化量ΔTdとゲインGtとの関係を示す特性図である。
【図12】道路勾配Slと第2液圧前後配分比Hとの関係を示す特性図である。
【符号の説明】
【0082】
6FL〜6RR ホイールシリンダ、7 制動流体圧制御部、8 制駆動力コントロールユニット、9 エンジン、12 駆動トルクコントロールユニット、13 撮像部、14 ナビゲーション装置、15 3軸センサ、16 レーダ、17 マスタシリンダ圧センサ、18 アクセル開度センサ、19 操舵角センサ、22FL〜22RR 車輪速度センサ、23FL〜23RR サスペンションストロークセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車線に対する車両の逸脱傾向を判定する車線逸脱傾向判定手段と、
前記車線逸脱傾向判定手段が逸脱傾向ありと判定した場合に、車輪の制動力を制御して、左輪と右輪との間に制動力差を発生させることで車両にヨーモーメントを付与する制動力制御手段と、
車輪に制動力を発生させる際に生じるコンプライアンスステアによるトー角変化を基に、前記制動力制御手段が車輪に発生させる制動力を補正するコンプライアンスステア用補正手段と、
を備えることを特徴とする車線逸脱防止装置。
【請求項2】
前記コンプライアンスステア用補正手段は、前記コンプライアンスステアによるトー角変化により車両に発生するヨーモーメントを抑制する方向に制動力を補正することを特徴とする請求項1に記載の車線逸脱防止装置。
【請求項3】
前記制動力制御手段は、前後それぞれの左輪と右輪との間で制動力差を発生させることで車両にヨーモーメントを付与しており、
前記コンプライアンスステア用補正手段は、前後輪の制動力配分を変化させて、前記制動力の補正をすることを特徴とする請求項1又は2に記載の車線逸脱防止装置。
【請求項4】
車輪のサスペンションストロークを検出するサスペンションストローク検出手段と、前記サスペンションストローク検出手段が検出したサスペンションストロークによる車輪のトー角変化を基に、前記車輪の制動力を補正するサスペンションストローク用補正手段を備えることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の車線逸脱防止装置。
【請求項5】
車両の走行路の路面勾配を検出する路面勾配検出手段と、前記路面勾配検出手段が検出した路面勾配による車輪のトー角変化を基に、前記車輪の制動力を補正する路面勾配用補正手段を備えることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の車線逸脱防止装置。
【請求項6】
走行車線に対して車両が逸脱傾向にある場合、左輪と右輪との間に制動力差を発生させることで車線逸脱防止用のヨーモーメントを車両に付与しており、
前記左輪と右輪との間に制動力差を発生させる車輪の制動力を、車輪に制動力を発生させる際のコンプライアンスステアによるトー角変化に起因して車両に発生するヨーモーメントを抑制可能に設定することを特徴とする車線逸脱防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−214742(P2009−214742A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−61417(P2008−61417)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】