説明

車載ナビゲーション装置およびプログラム

【課題】 ETCゲート区間内でドライバーが車両を後退させてしまうことを防ぐ。
【解決手段】 車載ナビゲーション装置が、自車両がETCゲート区間内におり、かつドライバーがバック走行を行おうとしていることを検出したとき、ドライバーに対して警告をするための処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ETCゲート区間内での車両の後退を防ぐための車載ナビゲーション装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、有料道路での料金収受を効率化するための技術として、ETCシステム(自動料金収受システム)が広く普及している。図3に、ETCシステムの概略を示すため、ETCゲート50およびETCゲート50に進入する車両60の斜視図を示す。有料道路の出口や入口にあるETCゲート50に車両60が進入すると、車両60に搭載されたETC車載器61が、路上アンテナ51を介して図示しないETC路上機と無線通信する。そして、その無線通信において課金情報のやりとりが成功すると、ETC路上機はETCゲート50の通路を塞ぐ遮断機52を上げる。これによって、ETCゲート50が開いた状態となり、車両60はETCゲート50を通過することが可能となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、ETC車載器、ETC路上機等のトラブルなどにより、ETCゲートがうまく開かないというケースが発生することは避けられない。このようなケースにおいては、車両を後退させると後続車と衝突するなど危険があるので、ドライバーはその場で自車両を停車して係員の指示に従うという取り決めになっている。しかし、ドライバーが混乱してしまう等の原因により、ドライバーが車両を後退させてしまうケースが相次いでおり、道路公団もパンフレットやポスターにより「誤って進入した場合後続車の追突事故の原因となりますので、お車は絶対にバックさせないでください」といった注意を呼びかけている。
【0004】
本発明は上記点に鑑み、ETCゲート区間内でドライバーが車両を後退させてしまうことを防ぐための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、自車両がETCゲート区間内にいることを判定する判定手段と、ドライバーがバック走行を行おうとしていることを検出する検出手段と、前記判定手段の判定および前記検出手段の検出に基づいて、ドライバーに対して警告をするための処理を行う警告処理手段と、を備えた車載ナビゲーション装置である。
【0006】
このようになっているので、自車両がETCゲート区間内におり、かつドライバーがバック走行を行おうとしていることに基づいて、ドライバーに対して警告が行われるので、ETCゲート区間内でドライバーが車両を後退させてしまうことを、事前の警告によりある程度防ぐことができる。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、自車両がETCゲート区間内にいることを判定する判定手段、ドライバーが後退操作を行おうとしていることを検出する検出手段、および前記判定手段の判定および前記検出手段の検出に基づいて、ドライバーに対して警告をするための処理を行う警告処理手段として、コンピュータを作動させるプログラムである。このように、本発明の特徴は、プログラムとしても捉えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1に、本実施形態に係る車両内システムの構成を示す、この車両内システムは、車載ナビゲーション装置1、シフトECU2、およびETC車載器3を有している。
【0009】
シフトECU2は、車両のシフトポジションやドライブレンジを検出し、その検出した情報を車載ナビゲーション装置1に出力するようになっている。例えば、シフト位置がバックになっている場合、ドライブポジションがRとなっている場合には、オンのREV信号を車載ナビゲーション装置1に出力する。また例えば、シフト位置がバックになっていない場合、ドライブポジションがRとなっていない場合には、オフのREV信号を車載ナビゲーション装置1に出力する。
【0010】
ETC車載器3は、有料道路の入口や出口の料金所にあるETCゲートに自車両が進入したとき、ETCゲートに設置されたETC路上機と無線通信して課金情報をやりとりするための装置である。このETC車載器3とETC路上機との課金情報のやりとりが成功すると、ETC路上機は、ETCゲートの通路を塞ぐ遮断機を上げて、ETCゲートを車両が通過することができるようにする。本実施形態においては、このETC車載器3は、ETC路上機と通信しているとき、通信している旨の信号を車載ナビゲーション装置1に出力し、また、およびETC路上機との通信が失敗したとき、通信が失敗した旨の信号を車載ナビゲーション装置1に出力するようになっている。
【0011】
また、車載ナビゲーション装置1は、図1に概略的に示す通り、位置検出器11、操作スイッチ群12、画像表示装置13、スピーカ14、RAM16、ROM17、外部記憶媒体18、CPU19、を有している。
【0012】
位置検出器11は、いずれも周知の図示しない地磁気センサ、ジャイロスコープ、車速センサ、およびGPS受信機等のセンサを有しており、これらセンサの個々の性質に基づいた、車両の現在位置や向きを特定するための情報をCPU19に出力する。
【0013】
操作スイッチ群12は、車両用ナビゲーション装置1に設けられた複数のメカニカルスイッチ、画像表示装置13の表示面に重ねて設けられたタッチパネル等の入力装置から成り、ユーザによるメカニカルスイッチの押下、タッチパネルのタッチに基づいた信号をCPU19に出力する。
【0014】
画像表示装置13は、CPU19から出力された映像信号に基づいた映像をユーザに表示する。表示映像としては、例えば現在地を中心とする地図等がある。
【0015】
外部記憶媒体18は、HDD等の不揮発性の記憶媒体であり、CPU19が読み出して実行するプログラム、経路案内用の地図データ等を記憶している。
【0016】
CPU(コンピュータに相当する)19は、ROM17および外部記憶媒体18から読み出した車両用ナビゲーション装置1の動作のためのプログラムを実行し、その実行の際にはRAM16、ROM17、および外部記憶媒体18から情報を読み出し、RAM16および外部記憶媒体18に対して情報の書き込みを行い、シフトECU2、ETC車載器3、位置検出器11、操作スイッチ群12、画像表示装置13およびスピーカ14と信号の授受を行う。
【0017】
CPU19がプログラムを実行することによって行う具体的な処理としては、現在位置特定処理、案内経路探索処理、経路案内処理等がある。
【0018】
現在位置特定処理は、位置検出器11からの信号に基づいて、周知のマップマッチング等の技術を用いて車両の現在位置や向きを特定する処理である。
【0019】
案内経路探索処理は、操作スイッチ群12からユーザによる目的地の入力を受け付け、現在位置から当該目的地までの最適な案内経路を算出する処理である。
【0020】
経路案内処理は、外部記憶媒体18から地図データを読み出し、算出された案内経路、目的施設、経由施設および現在位置等をこの地図データの示す地図上に重ねた画像を、画像表示装置13に出力し、案内交差点の手前に自車両が到達した等の必要時に、右折、左折等を指示する案内音声信号をスピーカ14に出力する処理である。
【0021】
また、本実施形態においては、CPU19は、図2に示すバック警告用プログラム100を常時実行している。CPU19は、このバック警告用プログラム100の実行において、まずステップ110で、ETC車載器3がETC路上機と通信してからの自車両の走行距離が基準距離以下であるか否かを判定する。これは、ETC車載器3から、ETC路上機と通信している旨の信号を受けた時点以降、位置検出器11の車速センサからの信号に基づいて累積した走行距離が、基準距離(例えば所定の100メートル等)以下であるか否かで判定する。基準距離以下である場合、続いてステップ130を実行し、基準距離を超えている場合、続いてステップ120を実行する。
【0022】
ステップ120では、自車両の現在位置が料金所から基準範囲内にいるか否かを判定する。ここでいう料金所とは、有料道路の入口や出口にある料金所をいう。ここで、自車両の現在位置としては、上述の現在位置特定処理によって特定した現在位置を用い、料金所の位置としては、地図データに記載される料金所の緯度、経度データを用いる。また、基準範囲としては、例えば料金所から道路に沿った所定の範囲(例えば料金所の手前100メートルから料金所の先50メートルまで等)や、料金所を中心とする所定の半径内(例えば50メートル)の範囲を用いる。基準範囲内にいる場合、続いてステップ130を実行し、基準範囲内にいない場合、続いてステップ110を実行する。
【0023】
ステップ130では、シフトECU2からオンのREV信号を受けているか否かを判定し、受けている場合、続いてステップ140を実行し、受けていない場合、続いてステップ110を実行する。
【0024】
ステップ140では、ドライバーに対して車両を後退させてはいけない旨の警告をするための処理として、「車をバックさせると危険です」という音声をスピーカ14に出力し、また、「車をバックさせると危険です」という文字列を画像表示装置13に表示させる。
【0025】
ステップ150では、シフトECU2からオフのREV信号を受けているか否かを判定し、受けている場合、続いてステップ110を実行し、受けていない場合、続いてステップ140を実行する。
【0026】
以上のようなバック警告用プログラム100をCPU19が実行することで、車載ナビゲーション装置1は、自車両がETCゲート区間内におり(ステップ110、120参照)、かつドライバーがバック走行を行おうとしているとき(ステップ130、150参照)繰り返しドライバーに対して警告をするための処理を行う(ステップ140参照)。このようになっているので、ETCゲート区間内でドライバーが車両を後退させてしまうことを、事前の警告によりある程度防ぐことができる。
【0027】
また車載ナビゲーション装置1は、ETC車載器3がETC路上機と通信してからの自車両の走行距離が基準距離以下であるという条件(ステップ110参照)が満たされた場合のみならず、自車両の現在位置が料金所から基準範囲内にいるという条件(ステップ120参照)が満たされた場合にも、自車両がETCゲート区間内にいると判定するので、故障等によってETC車載器3の通信機能が不全となった場合でも、自車両がETCゲート区間内にいることを検知することができる。
【0028】
なお、上記の実施形態において、車載ナビゲーション装置1のCPU19が、バック警告用プログラム100のステップ110および120を実行することで、判定手段として機能し、またステップ130および150を実行することで、検出手段として機能し、またステップ140を実行することで、警告処理手段として機能する。
【0029】
(他の実施形態)
なお、上記の実施形態においては、(1)ETC車載器3がETC路上機と通信してからの自車両の走行距離が基準距離以下であるという条件、および、(2)自車両の現在位置が料金所から基準範囲内にいるという条件の、2つの条件が満たされているかを判定し、それらのうちの1つでも満たされていれば、警告のための処理を行うようになっているが、必ずしもこのようになっておらずともよい。例えば、上記(1)(2)のうち、(1)の条件が満たされているかの判定のみ行い、満たされていれば、警告のための処理を行うようになっていてもよい。また例えば、上記(1)(2)のうち、(2)の条件が満たされているかの判定のみ行い、満たされていれば、警告のための処理を行うようになっていてもよい。
【0030】
また、上記(1)の条件に代えて(3)ETC車載器3がETC路上機と通信してからの経過時間が基準時間(例えば所定の1分)以下であるという条件が満たされているか否かの判定を行い、その条件が満たされたことに基づいて、警告のための処理を行うようになっていてもよい。
【0031】
また、上記(1)の条件に代えて(4)ETC車載器3とETC路上機との通信が不可となったという条件が満たされているか否かの判定を行い、その条件が満たされたことに基づいて、警告のための処理を行うようになっていてもよい。なお、通信が不可となったか否かの判定は、ETC車載器3からETC路上機との通信が失敗した旨の信号を受けたか否かで判定するようになっていればよい。
【0032】
また、上記(1)の条件に代えて(5)ETC車載器3とETC路上機との通信の結果、ETCゲートの通過が不可となったという条件が満たされているか否かの判定を行い、その条件が満たされたことに基づいて、警告のための処理を行うようになっていてもよい。なお、ETCゲートの通過が不可となったか否かの判定は、ETC路上機からゲート通過不可の信号を受信した旨の信号をETC車載器3から受けたか否かで判定するようになっていればよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態に係る車載ナビゲーション装置1の構成を示す図である。
【図2】CPU19の実行するバック警告用プログラム100のフローチャートである。
【図3】ETCゲート50およびETCゲート50に進入する車両60の斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
1…車載ナビゲーション装置、2…シフトECU、3…ETC車載器、
11…位置検出器、12…操作スイッチ群、13…画像表示装置、14…スピーカ、
16…RAM、17…ROM、18…外部記憶媒体、19…CPU、
50…ETCゲート、51…路上アンテナ、52…遮断機、60…車両、
61…ETC車載器、100…バック警告用プログラム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両がETCゲート区間内にいることを判定する判定手段と、
ドライバーがバック走行を行おうとしていることを検出する検出手段と、
前記判定手段の判定および前記検出手段の検出に基づいて、ドライバーに対して警告をするための処理を行う警告処理手段と、を備えた車載ナビゲーション装置。
【請求項2】
自車両がETCゲート区間内にいることを判定する判定手段、
ドライバーが後退操作を行おうとしていることを検出する検出手段、および
前記判定手段の判定および前記検出手段の検出に基づいて、ドライバーに対して警告をするための処理を行う警告処理手段として、コンピュータを作動させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−185093(P2006−185093A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−376988(P2004−376988)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】