説明

軸振れ計測装置

【課題】 回転軸体の軸線方向および/または当該方向に直角な方向における軸振れ量を非接触にて簡単に測定できる軸振れ計測装置を提供する。
【解決手段】 被計測対象である回転軸体の軸線方向および径方向の軸振れ量をこれらのそれぞれに対応する前記回転軸体の回転方向における光反射距離の変化として検出可能な反射パターンを有する平行ターゲット体および鍔状の直立ターゲット体をそれぞれ当該回転軸体の外周面に設けるとともにこれに外嵌設置しておき、前記回転軸体の回転中に発光部からの光線をいずれか一方の反射パターンに照射してそこを走査することで反射する反射光を光誘導手段を用いて他方の反射パターンに誘導して照射し、そこからの前記2つの反射パターンにてそれぞれ反射した反射光を受光・演算表示部で受光し、受光時間の変化から前記回転軸体の軸線方向および径方向の軸振れを計測する軸振れ計測装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被計測対象である回転軸体の軸線方向および径方向における軸振れ(振動)量を光学的に非接触にて計測可能な軸振れ計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、水や蒸気の保有するエネルギーを利用してタービンを回転させて発電を行なう発電タービンプラントなどでは、高効率であるとともに、高い運用性および安全性が要求される。特に高速回転するタービンに軸ねじれ、軸たわみ、軸振れなどの変形が生じた場合には、非常に危険な事態を引き起こしかねず、前記のような安全性などを確保するためにも、タービンなどの回転軸体の軸振れなどを定量的に把握し、異常が認められた場合には所定の対策を確実に講じることが重要であり、そのために簡単かつ高い精度にてこれらを計測可能な計測装置や計測方法が望まれている。これらのうち、軸振れの測定技術については、従来より、多くの提案がなされてきているところである。
【0003】
被計測対象である回転軸体の軸振れ計測技術としては、例えば特許文献1において提案されている。この提案は、回転軸を中心として回転する回転体と、直角に折り返された隣り合う反射面を挟角側に有するとともに、該折り返し側が前記回転軸と同軸平行状態となるように前記回転体に設けられた反射鏡と、前記反射鏡に任意の入射方向から光ビームを照射する検出用照射器と、前記光ビームにおける前記反射面から反射された反射光ビームを検出する検出素子とを備えた軸振れ計測装置に関するものである。この計測装置を使用すれば、検出用照射器により反射鏡へ照射する光ビームとその反射鏡からの反射光ビームとが回転体の回転角にかかわらず常に平行となるため、従来のように検出用照射器による光ビームの入射角を考慮しながら位置検出器を配置させた状態での調整が不要となり、光ビームの入射角に依存せずに各構成部脳位置関係が決まって調整が楽になる利点がある。
【0004】
また、従来の回転軸体のたわみ測定技術は、例えば特許文献2において提案されている。特許文献1記載の技術は、回転軸体の曲げモーメント測定装置に関するものであり、回転軸体の曲げモーメントを求めるために、当該回転軸体の外周面に取り付けられた円板とその端面に対向して設けられ、当該円板までの距離を測定する距離測定器とを備えており、前記回転軸体の回転中にこれにたが生じたことによる前記距離の変化から当該円板の傾き角(前記回転軸体のたわみ角)を求めるようにしたものである。なお、本明細書では、以下、用語「軸振れ」を「軸のたわみ」をも含む意味で使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−339620号公報
【特許文献2】特開昭57−12337号公報
【特許文献3】特開2000−205977号公報
【特許文献4】特開2002−333376号公報
【特許文献5】特開2006−84462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1記載の技術では、回転軸体において軸線方向に生じた軸振れを計測することが困難であるばかりでなく、ある程度のサイズの反射鏡を用いる必要があるので、回転軸体の外周面に設置する反射鏡の数に制限があり、結果として高い精度で軸振れ量を計測するのは困難である。また、特許文献2記載のたわみ計測技術では、直接距離測定器によって回転軸体外周面の円板までの距離を測定するので、回転軸体の軸線方向に直角な方向に軸振れを生じる場合には、当該軸振れを検出するのは困難である。また、回転軸体の軸たわみ角が小さい場合には距離測定器によって非常に微小な距離を測定しなければならず、そのため当該測定器に高い測定精度が必要とされ、結果として距離測定器が高額になってしまうという問題がある。
【0007】
また、特許文献3〜5などで提案されているトルク計測装置は、回転軸体に加えられるトルクを測定するには良好な方法であるが、そもそも回転中に生じる回転軸体の軸振れ量を測定することを想定したものではなく、当該軸振れ量を測定できない。
【0008】
本発明は、前記問題を解決すべくなされたものであり、簡単に回転軸体の軸線方向および当該方向に直角な径方向における軸振れ量を非接触にて測定できる軸振れ計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の軸振れ計測装置は、光反射性部分および光非反射性部分が所定の方向に交互に配置されて当該配置方向に幅変化部の列がそれぞれ形成されてなる2つの反射パターンのうちの一方を被計測対象である回転軸体の外周面にその周方向に前記配置方向を一致させて形成するとともに、他方を前記回転軸体の径方向に平行に設けた環状の被照射面に当該回転軸体よりも大径の同心円に前記配置方向を一致させて形成し、いずれか一方の反射パターンの幅変化部に照射された発光部からの光線が前記回転軸体の回転により当該幅変化部上を走査することで断続的に反射される反射光を光誘導手段によって導いて他方の反射パターンの幅変化部に照射し、その上を走査させることでさらに分断されて反射される点滅反射光を受光・演算表示部で受光するようにしておき、前記回転軸体の軸振れに伴う当該点滅反射光の受光時間の変化から求めた前記各幅変化部上の光線の走査位置の距離変化に基づいて前記回転軸体の軸線方向および径方向における軸振れ量を求めるようにしたことを特徴とする。
【0010】
光反射性部分および光非反射性部分は、それぞれ前記配置方向に一定の長さを有する適宜の平面形状に形成することができる。例えば、両部分はともに略三角形、略矩形などの所定の面積の平面形状を有する領域として形成されていてもよく、いずれか一方は前記配置方向に直交する方向に常識的な範囲の線幅を有する線状に形成されていてもよい。これら両部分は、前記配置方向に均等な間隔で交互に配置されているのが好ましい。また、光反射性部分と光非反射性部分との境界線は直線または曲線のいずれであってもよい。
【0011】
前記幅変化部は、前記の光反射性部分若しくは光非反射性部分またはこれら両部分を組合せた領域において配置方向に直交する方向(配置方向が円周に沿っており円状に配置される場合にはその径方向または法線方向)の位置(距離)に応じて前記各部分または前記領域の当該配置方向における幅(距離)が一定の割合で変化するように構成された部分を指す。すなわち、一方向における距離の変化が決定されれば他の方向における距離の変化が互いに1対1で求まるように構成された部分であり、本明細書では以下、用語「幅変化部」をこの意味で使用する。
【0012】
これら両部分がいずれも所定の面積を有する領域として形成されている場合、いずれか一方は少なくとも幅変化部として形成することができる。この場合、光反射性部分が幅変化部として形成されるのが好ましく、略三角形の平面形状を有する幅変化部として形成されるのがより好ましい。また、前記の光反射性部分または光反射性部分が線状である場合には、所定の領域を有する光反射性部分または光非反射性部分を中間にして前記配置方向両側からこれを線状の光非反射性部分または光反射性部分で挟み込むように組み合わせた領域を幅変化部として形成することができる。
【0013】
前記回転軸体において前記2つの反射パターンの設置位置とは異なる位置に、さらに光反射性部分および光非反射性部分が交互に配置された反射パターンをこれら両部分のいずれかと同様に形成し、別途設けた光誘導手段によって光線を誘導して当該反射パターンと前記2つの反射パターンのいずれか一方との間で授受を行なうようにしてもよい。この場合、前記の光反射性部分と光非反射性部分とは、前記回転軸体の軸線方向に平行な境界線若しくは径方向に放射状にもうけられる境界線、または前記各方向と鋭角をなすように設けられた境界線で区画されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、回転軸体に所定の方向に配置した2つの反射パターンがそれぞれ備える交互に配設された光反射性および光非反射性の幅変化部は、当該回転軸体の軸線方向および径方向の軸振れ量とこれらの回転方向における幅とが1対1に対応するように構成されているため、回転軸体の回転中に生じた軸振れにより前記幅変化部の幅が変化することで、回転軸体の軸線方向および径方向の軸振れ量を簡単に求めることができる。
【0015】
また、発光部からの光線を照射した一方の反射パターンからの反射光を他方の反射パターンに誘導して照射し、そこから当該反射光を分断するように反射される反射光を1つの受光・演算表示部にて受光して所定の演算を行なうこととしたので、演算プログラムを作製するのみでよく、反射パターンごとにそこからの反射光を受光する受光部などの機器を設ける必要がなく、機器構成を簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の軸振れ計測装置の一実施形態を示す図である。
【図2】本発明の軸振れ計測装置におけるターゲット体の変形例を示す斜視図である。
【図3】図1に示す軸振れ計測装置における各ターゲット体の反射パターンの配置とこれに対応して光線照射により受光部からの電気パルス信号の波形を示す図である。
【図4】本発明の軸振れ計測装置のさらに別の実施形態を示す図である。
【図5】図4に示す軸振れ計測装置における各ターゲット体の反射パターンの配置とこれに対応して光線照射により受光部からの電気パルス信号の波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の軸振れ計測装置の実施形態について詳細に説明する。また、以下では、反射パターンがそれぞれ被照射面に形成された帯状および鍔状のターゲット体を用いた実施形態を示すが、本発明はこのようなターゲット体を用いた実施形態に限定されない。なお、以下では、説明の便宜上、帯状のターゲット体を「平行ターゲット体」と、また鍔状のターゲット体を「直立ターゲット体」と呼ぶこととする。また、以下の各図では、同一または共通の各部については同一の符号を用いて示しており、重複した説明は以下では省略する。
【0018】
[実施形態1]
図1は、本発明の軸振れ計測装置の実施形態の一例を示す図である。この図に示す実施形態の軸振れ計測装置1は、被計測対象である回転軸体10の外周面に設けられた平行ターゲット体20と、該平行ターゲット体20の設置位置に近接した位置に当該回転軸体10の径方向に延設された直立ターゲット体25と、回転軸体10の周囲に配置された発光部3と、光誘導手段13,14、16,17と、受光・演算表示部4とを備えている。なお、回転軸体10は、不図示の駆動源からの回転駆動作用により図中の矢印方向Rに回転可能とされている。
【0019】
平行ターゲット体20は、回転軸体10の外周面に沿った被照射面(表面)を備えており、その全面に回転軸体10の周方向に光反射性部分21および光非反射性部分22が交互に配置されて列をなす帯状の反射パターン20が形成されている。反射性部分21および非反射性部分22は、それぞれ帯状の反射パターン20の長さ方向(両部分の配置方向)両側の平行な両側縁と、これら両側縁のそれぞれに対して略直角な直線状の境界線(長辺に相当)と、この長辺に相当する境界線と鋭角をなし、かつ当該境界線と前記一方の側縁とを結ぶ直線状の境界線(斜辺に相当)とで画定された同形、同サイズの略直角三角形の平面形状の幅変化部として形成されている。なお、以下では、幅変化部としての光反射性部分を「光反射性幅変化部」または単に「反射性幅変化部」といい、幅変化部としての光非反射性部分を「光非反射性幅変化部」または単に「非反射性幅変化部」ということとする。反射パターン20は、これら各幅変化部21、22をそれぞれ斜辺に相当する境界線を共通にして反対向きに組み合わせたものを1単位とし、当該単位を隣り合うもの同士長辺に相当する境界線を共通にして連続的に繰り返し配列することで形成されている。これにより、反射性幅変化部21(または非反射性幅変化部22)は、回転軸体10の周方向に均等な間隔で配置されることになる。
【0020】
本実施形態では、反射性幅変化部21および非反射性幅変化部22の平面形状をそれぞれ略直角三角形として説明するが、これらの幅変化部は隣り合うもの同士所定の境界線を共通にして一定の配設方向に交互に配設可能であれば、このような平面形状に限定されない。例えば、各幅変化部は二等辺三角形などを含む山形形状の略三角形や略台形などの平面形状とすることもできる。また、この斜辺および長辺に相当する境界線を例えば2次関数的または指数関数的な曲線状としてもよい。また、反射性幅変化部21、21、・・・と非反射性幅変化部22、22、・・・の平面形状とは互いに同形、同サイズである必要はなく、例えば一方を略三角形状とし、他方を略台形形状としたり、他方を同じ略台形形状であっても上辺および下辺の長さを適宜変更したものとすることもできる。また、帯状の反射パターンの全面を反射性または非反射性とし、当該面の実質的に幅方向に非反射性または反射性の境界線を規則的に設け、2つの境界線とこれらで囲まれた領域とを組合せて略直角三角形や略台形の平面形状の幅変化部を形成するようにしてもよい。
【0021】
反射性幅変化部21には、例えば通常のミラーのほか、可とう性のある反射シート、所定形状に塗布して得られる反射性塗料の塗膜などを使用できる。また、非反射性幅変化部22には光を反射しない材質の板状体やシート状体の他、所定形状に塗布して得られる非反射性塗料の塗膜などを使用できる。これら反射性幅変化部21および非反射性幅変化部22の素材を適宜裁断、塗布するなどして所定の基材の片面に適宜組み合わせて配置することで、平行ターゲット体20を形成することができる。また、回転軸体10が光沢のある金属材料などで形成され、外周面が光反射性を備えている場合には、透明なシート状の基材の片面に前記した素材からなる非反射性幅変化部22、22、・・・のみを図1のように配列して平行ターゲット体20を作製し、これを当該回転軸体10の外周面に周方向に巻回するように設けることにより、平行ターゲット体20の表面に反射パターンを形成するようにしてもよい。この場合、隣り合う非反射性幅変化部22,22間に形成されるこれらと略同形の回転軸体10の外周面の部分を反射性幅変化部21として使用することができる。またこれとは反対に、回転軸体10が光反射性を有しない材質で形成されている場合には、前記とは逆に反射性幅変化部21、21、・・・を表面に配設した透明なシート状基材を作製、使用することができる。
【0022】
このようにして得られた帯状の平行ターゲット体20は、その幅方向(平行ターゲット体20の幅方向)を各単位の長辺が回転軸体10の軸線方向に略平行となるように、また短辺(平行ターゲット体20の長さ方向)が当該方向に直交する回転軸体10の円周方向に略平行となるように回転軸体10の外周面に設けられる。これにより、回転軸体10の軸線方向の軸振れの変化と反射パターン上の反射性幅変化部の幅の変化とが1対1に対応するようになる。なお、反射性幅変化部21、21、・・・および非反射性幅変化部22、22、・・・からなる反射パターンを平行ターゲット体20の表面(被照射面)に形成する場合には、前記シート状基材の厚さを適宜設定して平行ターゲット体20の全体の厚さを決定することができる。
【0023】
直立ターゲット体25は、回転軸体10に外嵌される鍔状を呈しており、当該回転軸体10において平行ターゲット体20に近接した位置に設置されている。この鍔状体において、回転軸体10の軸線方向に互いに反対方向を向いた2つの表面のうちの一面は光反射性の被照射面とされ、当該面上には回転軸体10と軸心を共通にする大径の同心円に沿って平行ターゲット体20の非反射性幅変化部22と同様に略直角三角形の平面形状を有する非反射性幅変化部26が短辺に相当する境界線の両端が接するように繰り返し連続して配置形成されている。光反射性の被照射面27にこのように非反射性幅変化部26を配置することで、当該幅変化部26の長辺の範囲ではその配置方向に非反射性幅変化部26と反射性幅変化部27とが交互にかつそれぞれ均等な間隔で現れる反射パターン25が形成されることになる。なお、この直立ターゲット体25においても、略直角三角形の平面形状を有する反射性幅変化部を別途用意し、前記した反射パターン20と同様にこれら2種類の幅変化部を所定の方向に交互に配置形成してもよいことはいうまでもない。ここで、個々の非反射性幅変化部のサイズについては前記反射パターン20における反射性幅変化部21と略同等ないしはそれよりも短辺に相当する境界線の線分長さを小さく設定するのが好ましい。
【0024】
この直立ターゲット体25を回転軸体10に嵌装するに当たっては、回転軸体10の軸線方向に反射パターン20の反射性および非反射性幅変化部21,22は互い違いとなるように、回転軸体10の回転方向にそれぞれの非反射性幅変化部26(および隣り合う非反射性幅変化部26、26で挟まれる反射性幅変化部27)の位置を調整する。これにより、例えば平行ターゲット体20の反射パターン20の所定位置に光線を照射し、そこからの反射光を直立ターゲット体の反射パターン25の所定方向に照射した場合にそこから反射する反射光は、当該反射パターンにおける各非反射性幅変化部26では光の反射がないことからこの入射光を分断するように点滅状態となる。
【0025】
前記の平行ターゲット体と直立ターゲット体とは、図1に示すようにこれらをそれぞれ回転軸体10に個別に設置してもよいが、これらのターゲット体を組み合わせて一体化したターゲット体(以下、複合ターゲット体という。)として構成してもよい。このような複合ターゲット体として、被計測対象である回転軸体に外嵌可能な光透過性の樹脂成形体などを好適に使用できる。このような光透過性の樹脂成形体を用いる場合、その断面を略直角三角形とし、直交する2つの面にそれぞれ図1に示したような2つの反射パターンを配置することができる。図2は、このような光透過性の樹脂成形体からなる鍔状の複合ターゲット体の一例においてその一部を示す斜視図である。この図に示す複合ターゲット体35は、略直角三角形の断面を有し、底面36が被計測対象である回転軸体の外周面に接し、底面36と略直角(好適には直角)をなす側面37が当該回転軸体10の径方向に平行に配置されるようになっている。
【0026】
底面36には、図1における平行ターゲット体20と同様に略直角三角形の平面形状を有する反射性幅変化部21、21、・・・と非反射性幅変化部22、22、・・・とが図面に向って手前側から奥側に交互に配置された反射パターン20が設けられている。また、側面37にも、底面36の反射パターンにおける各幅変化部と同形、同サイズの非反射性幅変化部26、26、・・・および反射性幅変化部27、27、・・・が交互に図面に向って手前側から奥側に配置された反射パターン25が設けられている。これにより、各反射パターン20、25において反射性幅変化部21、27および非反射性幅変化部22、26は、それぞれの配置方向に均等な間隔で配置されることになる。これら2面の反射パターン20、25の配置方向に直交する方向の幅はこれらの面の同方向における長さの全体を最大としてその範囲内で適宜設定できる。また、これら2つの反射パターン20、25は互いに略同等の長さに設定してもよく、異なった長さに設定してもよい。さらにこれら2つの反射パターン20、25は、図2ではいずれか一端寄りに設けられているが、このような位置に制限されず、さらに中央寄りないし他端寄りに平行移動して設けることができる。
【0027】
底面36における反射パターンと側面37におけるそれとは、予め複合ターゲット体を作製する際に、回転軸体10の軸線方向においてこれらの反射性幅変化部が互い違いになるように配置しておく。これにより、これらのうちのいずれか一方の反射パターンから反射した反射光は他方の反射パターンにおいて非反射性幅変化部によって分断されるようになる。なお、このような樹脂成形体の素材としては、それが光透過性を有していれば特に制限されないが、例えばクリヤ樹脂などが挙げられる。
【0028】
発光部3としては、連続発光可能な光源を有するものが使用される。この光源としては、各種のレーザー、発光ダイオードまたはランプのほか、これらの1種とレンズ、スリット、ピンホールなどとを適宜組み合わせたものなどを使用できる。好ましくは、これらの光源のうち、指向性のある光線を出射可能な各種レーザーを用いるのがよい。
【0029】
この発光部3には、図1に示すように、その光線出射口に接続可能な光ファイバーケーブルなどの光伝送手段11を用いることができる。このような光伝送手段11を設けることで、発光部3を被計測対象である回転軸体10の周囲の任意の位置に設置できる利点がある。図1ではまた、光伝送手段11の直後の光線L1の光路上にレンズ12を設置し、各ターゲット体への照射前に光線L1を平行光に整えている。この光伝送手段11を使用しない構成とすることもできるが、その場合には、発光部3を最初に光線L1を照射する2つのターゲット体の一方の被照射面に略垂直に照射するような位置に設置しておく。
【0030】
本実施形態における受光・演算表示部4は、受光部5と、これとは別体の演算表示部6と、これらを電気的に接続する信号線7とを備えた構成とされている。これら各部は、公知の外形形状の中から適宜選択でき、特に制限されない。なお、受光部5と演算表示部6とを組み合わせて一体化することができる。
【0031】
受光部5としては、これに向って進行してきた光線(図1の場合、平行ターゲット体20からの反射光L2)を受光可能であり、光電変換により受光エネルギーに応じた所定の大きさの電気信号を出力可能な受光(光電変換)素子、またはこれらを含んだ受光機器などが好適に使用できる。ここで、受光素子の具体例としては、例えばフォトダイオード、フォトトランジスタ、フォトマルチメータなどが挙げられる。また、受光機器の具体例としてはCCDカメラなどの撮像装置などが挙げられる。受光部5は、図1に示すように1本の光線のみを受光可能な構成であってもよく、必要であれば、1つの受光部5に前記受光素子を複数組み込んでさらに複数条の光線を受光可能な構成であってもよい。
【0032】
演算表示部6は、受光部5から出力される1つまたは2つ以上の電気信号の入力を連続的に受けて、回転軸体10に生じる軸線方向における軸振れ量を演算し表示するように構成されている。さらに、回転速度(周期)などの他の情報を演算、表示可能なものであってもよい。このような構成(構造)としては、CPUや記憶装置を含む公知の構成などが挙げられる。電気信号の入力から前記各演算に至る一連の演算制御は、前記記憶部(不図示)に予め格納された設定プログラムの実行によって行なわれる。また、この記憶部には受光部5からの電気信号に異常がある結果、軸振れ量の計測結果に異常値が含まれる場合に当該異常値を廃棄するように実行されるプログラムも含めることができる。
【0033】
本実施形態における光誘導手段13は、必須の構成である2つのハーフミラー13、14と、必須ではなく必要に応じて使用可能な2つの反射ミラー16,17とから構成されている。ハーフミラー13は、光伝送手段11およびレンズ12を経て進行する発光部3からの光線を回転軸体10上の平行ターゲット体20の反射パターンの所定の照射位置に照射される光線L1の光路上に当該光路に対して斜め45°の角度に、平行ターゲット体20からレンズ12に向けて光線L1の光路上を逆行する反射光L2を略直角に反射するように配置されている。
【0034】
また、ハーフミラー14は直立ターゲット体25に向う反射光L2の光路上に斜め45°に設けられ、光線L2と同一の光路上を当該直立ターゲット体25から逆行する反射光の光路を略直角に屈曲させ、当該光線を受光部5に誘導するように構成されている。なお、光線L1およびL2は、それぞれこれらの光路上に設けられた集光レンズ15、18によって平行ターゲット体20および直立ターゲット体25の直前において集光され、各ターゲット体20、25上の反射パターンの所定の照射位置にピンポイントにて照射するようになっている。なお、反射光L2を直立ターゲット体の反射パターン25の所定位置に照射するよう誘導し、またそこからの点滅反射光L4をハーフミラー14に誘導するのに反射ミラー16、17が反射光L2の光路上に設置されている。なお、ハーフミラー13からの反射光L2の進行方向および位置と直立ターゲット体25の反射パターン上の所定の照射位置との関係によっては、これらの反射ミラー16,17の設置を省略することができる。
【0035】
光誘導手段13におけるハーフミラー13、14は、例えば図2に示すように、光線L1、L2、L4を出入射可能な開口を備えたケース8内に収容することができる。また、このケース8内には、光線L1およびL2の集光レンズ15、18を併せて収容することができる。また、必要な場合には、さらに図1に示した反射ミラー16、17をハーフミラー13、14からの光路上にそれぞれ挿入し、ハーフミラー13、14からの反射光L2の光路を適宜変更することができる。
【0036】
次に、図1に示す実施形態の軸振れ計測装置を用いた軸振れの計測原理について説明する。発光部3から連続的に出射された光線L1は、回転軸体10とともに回転運動する平行ターゲット体20の被照射面上における反射パターンの所定位置に照射される。この照射位置は、反射パターン20の幅方向略中間領域とされるのが好ましい。平行ターゲット体20に対する光線の入射角は特に制限されないが、約0°(略垂直に入射)に設定するのがよく、より好ましくは0°(垂直に入射)に設定するのがよい。これにより、集光レンズ15を通過した光線L1を平行ターゲット体20の被照射面における所定の照射位置にピンスポットで照射できるので、結果として後述する受光部5に到達する反射光L2の光線径をも小径とすることができ、誤差が生じにくいという利点がある。なお、この光線の入射角を約0°に設定せず、鋭角となる任意の角度に設定した場合には、当該入射角の大きさに応じて反射光を受光可能な位置に受光・演算表示部4(受光部、演算表示部が別体の場合には、受光部)の設置位置を変更する必要が生じるだけではなく、この状態での計測では、回転軸体10の軸線方向および径方向の両方向における軸振れ量成分の合成値が得られることになるので、演算表示部6の記憶部に別途、当該合成値を前記各方向における軸振れ量成分に分解する演算プラグラムを格納しておき、当該合成値から前記各方向の軸振れ量を求める必要が生じる。
【0037】
平行ターゲット体の反射パターン20に照射された光線L1の走査線上では、反射性幅変化部21と非反射性幅変化部22とに交互に光線L1が照射される。光線L1が反射性幅変化部21上を照射する間は、そこから略垂直に反射光L2が反射するが、非反射性幅変化部22上を照射する間は反射しないため、反射光L2は断続的となる。この反射光L2は、光線L1の入射角が0°の場合、反射パターン20に入射した光線L1の光路を逆行し、光誘導手段であるハーフミラー13に到達する。
【0038】
ハーフミラー13でその光路を直角に変更され、ハーフミラー14をそのまま通過した反射光L2は、さらに反射ミラー16、17によってその光路が変更され、直立ターゲット体25の被照射面における反射パターンの所定位置に照射される。この所定位置は、当該反射パターンの径方向略中間領域とされるのが好ましい。この反射パターン25に断続的に入射される反射光L2の走査線上では、反射性幅変化部27および非反射性幅変化部26に交互に当該入射光が照射され、非反射性幅変化部26では光は反射しないので、そこでは入射光を分断するように反射性幅変化部27からのみ反射光(この反射光を以下では「点滅反射光」という。)L4が反射することになる。この点滅反射光L4は、入射光L2の光路を逆行し、反射ミラー17、16を経てハーフミラー14に誘導され、そこで受光部5に向けて光路が変更される。
【0039】
受光部5では、点滅反射光を受光したタイミングで、その光量に比例した電気パルス信号を生成し、信号線7を介して演算表示部6に出力する。演算表示部6では、回転軸体10の回転中に受光部5から点滅反射光L4の受光と不受光とに対応した電気パルス信号の入力を連続的に受け、当該信号から受光時間または不受光時間のそれぞれを順次求める。なお、演算表示部6では、さらに回転軸体10の回転数信号の入力を受けるようにし、そのばらつきから回転軸体10の回転速度が一定であるか否か(所定の回転速度の範囲内にあるか否か)を判定するようにしてもよい。なお、本明細書では以下、回転軸体の「回転」は、一定速度での回転を指すものとする。
【0040】
図3は、図1に示す軸振れ計測装置を例にとり、当該装置の平行ターゲット体20および直立ターゲット体25のそれぞれの反射パターン上における光線の走査線の位置(図中、(a)、(b)参照)と、点滅反射光L4を受光した受光部から出力される電気信号の波形との関係を示している(図中、(e)参照)。また、発光部3からの光線および平行ターゲット体20の反射パターンからの反射光を受光部で受光したと仮定した場合に受光部5から出力される電気信号の波形も併せてこの図に示している(図中、(c)、(d)参照)。この図の(a)における符号21aは、三角形状の反射性幅変化部21の斜辺に沿ってこれに平行に細帯状に非反射性部を設けたものであり、回転軸体10の回転運動の基準点などとして、また回転速度や角速度を求めるのに用いることができるものである。
【0041】
例えば、回転軸体10を停止状態または低速回転させている状態で、発光部3から光線を出射させ、それぞれのターゲット体反射パターン20、25の所定の位置に光線を照射し、各反射パターンにおける反射性幅変化部21、27を当該光線の走査線との交点の位置(ここでは、各反射パターンの幅方向いずれか一端からの距離で示している)x(またはx)およびy(またはy)を人手によりまたは別途設置した公知の測距装置を用いて測定しておく。これらの距離は、公知の方法により演算表示部6に基準位置として入力しておく。これ以後、回転軸体10を通常通り一定の速度で回転させ、その軸線方向に軸振れが生じた場合にその軸振れ量を測定することができる。
【0042】
回転中の回転軸体10に軸線方向に軸振れが生じると、その軸振れに伴い平行ターゲット体20の反射パターンがこれに入射する光線L1に対して回転軸体10の軸線方向いずれかの方向にずれ、当該反射パターン上の光線L1の照射位置が変化する。そうすると、図3(a)における光線L1の走査線が図に向って上下方向に平行移動し、それに応じて反射パターン上の1単位の反射性幅変化部21および非反射性幅変化部22の走査(通過)時間が変化する。この場合、図3(d)、(e)におけるパルス幅tまたはt(1パルス周期あたりのt、tの時間比率)が変化するので、このtまたはtの時間変化を求めることで、簡単な比例計算によって回転軸体10の軸線方向における軸振れ量を計測することができる。
【0043】
この比例計算は、以下に示すとおりである。図1に示す回転軸体10の軸線方向、図に向って左側に軸振れが生じ、図3(a)に示す平行ターゲット体20の反射パターン上における光線L1の見かけの走査線が図に向って下側にずれたとすると(このとき、xが仮にx’になったとする)、図3(d)において受光時間tは長くなり、遮光時間tはその分短くなる。ここで、受光時間tに着目し、この時間が軸振れにより長くなりt11になったとすると、三角形の相似から、この場合の回転軸体の10の軸線方向の軸振れ量を以下の式で求めることができる。
【0044】
【数1】

【0045】
同様に、回転軸体10の軸線方向、図1に向って右側に軸振れが生じ、図3(a)に示す光線L1の走査線が図の上側にずれ、xがx”になり、それに応じて図3(d)のtがt12になったと仮定すると、上式でx’をx”に、またt11をt12に代えて計算することで、回転副体10の軸線方向の軸振れ量を求めることができる。
【0046】
また、回転軸体10に回転中に径方向の軸振れが生じた場合、当該径方向の軸振れ量に応じて直立ターゲット体25の反射パターンが径方向いずれかの方向にずれ、当該反射パターン上の光線L2の照射位置が変化する。そうすると、図3(b)に示す光線L2の見かけの走査線が図に向って上下方向に平行移動し、それに応じて反射パターン上の1対の反射性幅変化部25および非反射性幅変化部26の走査(通過)時間が変化する。これにより、図3(e)におけるパルス幅tまたはt(1パルス周期あたりのt、tの時間比率)が変化するので、このtまたはtの時間変化を求めることで、簡単な比例計算によって回転軸体10の径方向における軸振れ量を計測することができる。
【0047】
例えば、回転軸体10の右端に径方向図に向って上方に軸振れが生じ、図3(b)に示す直立ターゲット体25の反射パターン上における光線L2の走査線が図に向って下側にずれたとすると(このとき、yが仮にy’になったとする)、図3(d)において遮光時間tは長くなり、受光時間tはその分短くなる。ここで、不受光時間tに着目し、この時間が軸振れにより長くなりt31になったとすると、三角形の相似から、この場合の回転軸体の10の軸線方向の軸振れ量を以下の式で求めることができる。
【0048】
【数2】

【0049】
同様に、図1に示す回転軸体10の右端に径方向下側に軸振れが生じ、図3(b)に示す光線L2の見かけの走査線が図の上側にずれ、yがy”になり、それに応じて図3(d)のtがt32になった場合には、上式(数2)でy’をy”に、またt31をt32に代えて計算することで、回転副体10の軸線方向の軸振れ量を求めることができる。
【0050】
このようにして得られる演算結果は、演算表示部6の所定の表示部にて表示され、この演算結果が制御に用いられる場合には、制御機器に有線または無線にて送信される。
【0051】
[実施形態2]
本発明の軸振れ計測装置では、被計測対象である回転軸体に実施形態1における平行ターゲット体および直立ターゲット体のほかに、さらに所定の方向に反射性部分と非反射性部分とが交互に配置されたターゲット体を少なくとも1つ設置することができる。そして、発光部からの光線がこれら3つのターゲット体の反射パターンのいずれかに照射され、必要であれば、そこからの反射光が残りの2つのターゲット体の反射パターンの間で任意の順番で照射、反射が繰り返されるように実施形態1における光誘導手段とは別個に光誘導手段30を追加的に設けることもできる。第3のターゲット体は、実施形態1における平行ターゲット体または直立ターゲット体のいずれであってもよい。また、第3のターゲット体は、前記2つのターゲット体と同様に、これらの反射パターンとして前記したものと同種または異種の反射パターンを備えたものとすることができる。ここで、反射パターンが「同種」とは、双方の反射パターンの構成単位が同形同サイズである場合を、また「異種」とは、双方の反射パターンの構成単位が同形で異なるサイズの場合、異なる形状で同サイズの場合および異なる形状およびサイズの場合を示している。このように第3のターゲット体を設けることで、以下に説明するように、さらに回転軸体の軸ねじれを計測できる利点がある。
【0052】
図4は、このような第3のターゲット体を設置する本発明の軸振れ計測装置の実施形態の別の例を示す図である。この図に示す実施形態の軸振れ計測装置2では、実施形態1における2つのターゲット体20、25の設置位置から回転軸体10の軸線方向所定の距離だけ離して第3のターゲット体として平行ターゲット体23を当該回転軸体10に設置し、この反射パターンに発光部3からの光線を照射し、そこからの反射光が追加の光誘導手段30を経て平行ターゲット体20の反射パターンに照射、反射され、さらに直立ターゲット体25の反射パターンに照射、反射されるように構成されている。なお、以下では、説明の便宜上、光線の照射順を考慮して、平行ターゲット体23を「第1平行ターゲット体」と呼び、また平行ターゲット体20を「第2平行ターゲット体」と呼ぶことにする。
【0053】
第1平行ターゲット体23は、その表面を被照射面とする帯状体であり、その長さ方向を回転軸体10の周方向に合致させ、被照射面を外側に向けて当該回転軸体10の外周面に設けられる。この被照射面はその全面が光反射性とされ、第1平行ターゲット体23の長さ方向に直交する方向に適宜設定可能な幅を有する直線状の光非反射性部分(以下、非反射性区画線という。)24、24、・・・が当該長手方向に均等な間隔で設けられている。すなわち、光非反射性部分の両側縁に位置する光反射性部分との境界線は、回転軸体10の軸線方向に向けられる。前記間隔は適宜設定できるが、通常、後述する第2平行ターゲット体の反射パターン20における反射性幅変化部21(または非反射性幅変化部22)の配置方向におけるピッチと略同等かそれよりも小さく設定される。また、第2平行ターゲット体20は、回転軸体10の周方向に略直角三角形の平面形状の反射性幅変化部21と非反射性幅変化部22とが交互に配置されており、実施形態1に示した物と本質的に変わりはないため、ここでは重複した説明は省略する。
【0054】
直立ターゲット体25は、回転軸体10に外嵌可能な鍔状体を呈し、回転軸体10の軸線方向互いに反対方向に向いた面のうちの片面が光反射性の被照射面とされている。当該被照射面には、回転軸体10の外周面よりも大径の同心円に沿って複数条の直線状の非反射性部分(以下、「非反射性区画線」と呼ぶこととする。)が両端で隣り合うもの同士がそれぞれ連結され、かつ各非反射性区画線が1条おきに平行とされ、鋸刃状に連続して配置され反射パターン28が形成されている。この反射パターン28における各鋸刃を構成する2条の光非反射性区画線によって囲まれた光反射性の領域はそれぞれ配置方向に均等な間隔の幅変化部として形成されている。各幅変化部を構成する2条の非反射性区画線のうちの一方は、回転軸体10の径方向に実質的に一致させることが好ましい。なお、本実施形態では、非反射性区画線を直線状とするが、2条の非反射性区画線によってこれらで区画される光反射性の領域あに幅変化部が形成されれば、前記非反射性区画線は曲線であってもよい。
【0055】
追加の光誘導手段30としては、ハーフミラー30が用いられている。このハーフミラー30は、第1平行ターゲット体23に向けて進行する発光部3からの光線の光路上に当該光路に対して斜め45°に設けられ、その光線はそのまま透過し、第1平行ターゲット体23から当該光路を逆行する反射光L2を反射し、その光路を直角に変更するようになっている。なお、図4において光誘導手段13、14、16、17および集光レンズ15、18は、実施形態1におけるものと本質的に変わらない。また、発光部3および受光・演算表示部4もまた、実施形態1に示したものと本質的に変わりはない。
【0056】
本実施形態においては、まず発光部3から光ファイバーケーブルなどの光伝送手段11を経て出射された光線L1がレンズ12によって平行光とされた後に、ハーフミラー30および集光レンズ31を通過して第1平行ターゲット体23の反射パターン23に照射される。光線L1の照射位置では、回転軸体10の回転に伴って反射パターン23の非反射性区画線24が周期的に通過するので、ここからの反射光L2は非反射部によって一瞬光が途切れる周期性のある断続光となる。仮にこの反射光L2を受光部に通した場合、図5(d)に示す波形(反射時間t)の電気信号がここから出力されることになる。なお、回転軸体10の周囲への発光部3の設置位置によっては、光伝送手段11は不要である。また、ハーフミラー30を含む光誘導手段のみで第2平行ターゲット体20の反射パターンに照射可能に光線を誘導できる場合には、この光伝送手段32もまた設けるには及ばない。
【0057】
この第1平行ターゲット体23から反射し、発光部3からの光線L1の光路上を当該光線に逆行する断続的な反射光L2は、図4に示すように、ハーフミラー30によってその光路を直角に変更された後、光伝送手段(光ファイバーケーブルなど)32によって伝送される。光伝送手段32からレンズ33を通して出射された反射光L2は、光誘導手段13および集光レンズ15を経て第2平行ターゲット体20の反射パターンに略垂直に照射される。
【0058】
この第2平行ターゲット体の反射パターン20に照射された光線L2は、そこを走査する際に非反射性幅変化部22、22、・・・では反射せず、反射性幅変化部21、21、・・・のみからさらに断続的な反射光L3が反射される。この反射光L3を受光部に通したと仮定した場合にそこから出力される電気信号の波形は、図5(e)に示すように、反射時間tの入射光L2の一部が非反射性幅変化部22に対応して反射されない部分(不受光時間t)によって分断された状態となる。
【0059】
第2平行ターゲット体の反射パターン20から反射され、光線L2の光路を逆行する反射光L3は、前記のハーフミラー13によってその光路を略直角に変更された後、その光路上に斜め45°に設置されたハーフミラー14を通過し、回転軸体10の径方向に反射面を対向して配置された2つの反射ミラー16、17によってその光路をそれぞれ直角に変更されて回転軸体10の外周面により接近し、集光レンズ18を経て直立ターゲット体25の反射パターン25の所定位置に略垂直に照射される。
【0060】
回転軸体10の回転に伴って反射パターン25における入射光L2が2条の非反射性区画線28、28、・・・によって形成される幅変化部上を走査することで、非反射性区画線28を入射光L3が走査する際には反射せず、これらによって形成された反射性幅変化部27からのみ反射するので、入射光L3が分断された状態で点滅反射光L4として反射される。この点滅反射光L4は、入射光L3の光路を逆行し、ハーフミラー14を介して受光・演算表示部4に向けて進行し、受光部5にて受光される。受光部5では、入射された点滅反射光L4の強度に応じた所定の大きさの電気信号に変換され、信号線7を介して演算表示部6に入力される。
【0061】
本実施形態において、これら各ターゲット体23,20、25を経て反射光L4を受光した受光部5では、当該光線の受光、不受光に応じて生成した電気パルス信号を演算表示部4に送出する。演算表示部6では、入力された電気パルス信号の波形から回転軸体10の軸ねじれ量、軸線方向および径方向の軸振れ量が演算される。
【0062】
ここで、回転軸体10の軸ねじれ量は、第1平行ターゲット体23と第2平行ターゲット体20または直立ターゲット体25との間において回転軸体10がその回転方向またはその逆方向にどの程度ねじりが生じるかを示すものである。具体的には、前記電気パルス信号において第1平行ターゲット体の反射パターン23における非反射性部分24と、これに続いて現れる第2平行ターゲット体20の非反射性幅変化部22との間の受光パルス波形の幅(受光時間t11)の変化、または非反射性部分24とこれに続いて現れる直立ターゲット体25の反射パターンにおける非反射性区画線28との間の受光パルス波形の幅(受光時間t10)の変化から軸ねじれ量は求められる。
【0063】
回転軸体10の回転中にその軸線方向に軸振れが生じると、第2平行ターゲット体20の反射パターン上における入射光L2の走査(照射)位置が回転軸体10の軸線方向に変化し、それに伴い当該反射パターンにおける各反射性幅変化部21、21、・・・での光線の走査幅が変化する結果(図5(f)、受光時間t参照。不受光時間tを用いることもできる)、そこからの反射光L3の反射時間も変化する。よって、実施形態1で説明したように、この変化前後の受光時間を用いて、前記の比例演算を行なうことで、回転軸体10の軸線方向における軸振れ量を求めることができる。
【0064】
また、回転軸体10に径方向に軸振れが生じた場合には、直立ターゲット体25の反射パターンにおいてこれに入射する反射光L3の走査位置が当該軸振れの大小に応じて回転軸体10の径方向に変化し、その結果当該入射光L3の走査線上の反射性領域の幅(例えば図5(f)、時間t参照)が変化する。ここで反射される点滅反射光L4を受光した受光・演算表示部では、前記変化前後にける時間tから簡単な比例計算により回転軸体10の径方向における軸振れ量を求めることができる。これらの軸振れ量の演算結果は、演算表示部6の所定の表示部にて表示され、この演算結果が制御に用いられる場合には、設置されている制御機器に有線または無線にて送信される。
【0065】
以上2つの実施形態を挙げて、回転軸体10に設けられた少なくとも1つの平行ターゲット体20(および23)および直立ターゲット体25のそれぞれに1点にのみ光線を照射する1系統の構成を説明したが、本発明はこのような構成に限定されず、光線の照射位置を各ターゲット体について2点とする2系統以上の軸振れ量の計測を行なうようにすることもできる。この場合、発光部および受光・演算表示部としてそれぞれ2条の光線の出射および受光が可能なものとともに、これら2条の光線を各別に誘導可能な光誘導手段を被計測対象である回転軸体の所定位置に備え、例えば回転軸体の軸心を通る任意の直角座標系を設定し、各座標軸上において前記したように各ターゲット体に光線を順次照射して得られる反射光から各座標軸上での軸振れ量を計測することもできる。
【0066】
また、これらの実施形態において、前記のように直交座標軸上での回転軸体10の軸線方向および径方向における2つの直交する方向(x方向およびy方向)における軸振れ量をそれぞれ連続的に求め、これらのベクトル和を求めることで、回転軸体10に生じる軸振れ量の動的な変化を求めることができる。この場合、受光部からの電気信号に異常があれば、当該異常値を推移データから除去するようにできる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の軸振れ量計測装置は、電動機などの回転機などが備える回転軸体から、発電プラントなどにおけるタービン軸に至る広範な回転軸体の軸線方向および径方向の3次元における軸振れ量、さらには軸ねじれ量を計測するのに有効に使用できる。
【符号の説明】
【0068】
1 軸振れ計測装置
3 発光部
4 受光・演算表示部
5 受光部
6 演算表示部
7 信号線
10 回転軸体
11 光伝送手段(光ファイバーケーブル)
12 レンズ
13、14 ハーフミラー
15,18 集光レンズ
16、17 ミラー
20 平行ターゲット体
21 反射性幅変化部
22 非反射性幅変化部
24、28 線状非反射部
25 直立ターゲット体
26 非反射性幅変化部
27 被照射面(反射性幅変化部)
27a 反射性幅変化部
30 光誘導手段
32 光伝送手段
33 レンズ
35 複合ターゲット体
36 平行反射面
37 直立反射面
41 光線L1の見かけの走査線
42 光線L2の見かけの走査線
43 光線L4の見かけの走査線
L1〜L3 光線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光反射性部分および光非反射性部分が所定の方向に交互に配置されて当該配置方向に幅変化部の列がそれぞれ形成されてなる2つの反射パターンのうちの一方を被計測対象である回転軸体の外周面にその周方向に前記配置方向を一致させて形成するとともに、他方を前記回転軸体の径方向に平行に設けた環状の被照射面に当該回転軸体よりも大径の同心円に前記配置方向を一致させて形成し、
いずれか一方の反射パターンの幅変化部に照射された発光部からの光線が前記回転軸体の回転により当該幅変化部上を走査することで断続的に反射される反射光を光誘導手段によって導いて他方の反射パターンの幅変化部に照射し、その上を走査させることでさらに分断されて反射される点滅反射光を受光・演算表示部で受光するようにしておき、
前記回転軸体の軸振れに伴う当該点滅反射光の受光時間の変化から求めた前記各幅変化部上の光線の走査位置の距離変化に基づいて前記回転軸体の軸線方向および径方向における軸振れ量を求めるようにしたことを特徴とする軸振れ計測装置。
【請求項2】
前記光反射性部分および前記光非反射性部分のうちの少なくとも一方は、幅変化部として形成されてなる請求項1に記載の軸振れ計測装置。
【請求項3】
前記2つの反射パターンにおける光反射性部分はそれぞれ略三角形の平面形状を有する幅変化部として形成され、前記回転軸体の周方向に均等な間隔で配置されてなる請求項1または請求項2に記載の軸振れ計測装置。
【請求項4】
さらに光反射性部分および光非反射性部分が交互に配置された反射パターンを前記回転軸体において前記2つの反射パターンの設置位置とは異なる位置にこれらのいずれかと同様に形成し、別途設けた光誘導手段によって光線を誘導して当該反射パターンと前記2つの反射パターンのいずれか一方との間で授受を行なうようにした請求項1〜3のいずれか1項に記載の軸振れ計測装置。
【請求項5】
前記光反射性部分と前記光非反射性部分とは、前記回転軸体の軸線方向に平行な境界線若しくは径方向に放射状に設けられる境界線、または前記いずれかの方向と鋭角をなすように設けられる境界線で区画されてなる請求項4に記載の軸振れ計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−190864(P2010−190864A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38278(P2009−38278)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】