説明

載置台およびプラズマ処理装置

【課題】
本発明の実施形態では、ずれを防止し、取り替え作業を容易に実施できる保護層を有した載置台を提供する。
【解決手段】
載置台10は、ウェーハWを載置する載置面4を有する電極本体2と、前記載置面4に設けられ、紫外光を照射されることによって前記載置面4に対する粘着力が可変となる着脱自在な保護層3とを有することを特徴とする。また、載置台10をプラズマ処理装置100に適用し、プラズマ発生時の紫外光を用いて、保護層3の粘着力を可変とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、載置台およびプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板やLCDガラス、プリント基板などの基板を試料台に保持または温度制御するために静電チャックが用いられている。静電チャックは基板の一部分に対して機械的な押し当てをすることなく、裏面から電気的に吸着固定することから基板全面を均一に固定することができる。また、近年では静電チャックにヒーターや冷却水路など温度調整手段を内蔵し、基板の温度調整手段としても用いることも一般的である。
【0003】
しかし、静電チャックをプラズマ処理に用いる際には問題点がいくつかある。
【0004】
例えば、基板裏面と静電チャックは直接接触するため、接触部である基板裏面にキズが生成されたり、静電チャックから発生したパーティクルが基板裏面に付着してしまう。
【0005】
また、基板の微小な欠けであるチッピングや基板自体の反りにより、静電吸着力での保持が正常に働かなくなり、基板自体に亀裂や破損する事が発生する場合がある。この事象は厚みの薄い基板ではより顕著に現れる。
【0006】
そこで、従来より静電チャック表面に緩衝層の役割を果たす膜を設けることにより基板裏面へのキズや、パーティクルの付着や基板の保持力の欠損を防ぐ技術が行われている。
【0007】
例えば、特許文献1には、静電チャックの吸着面に防着シートと呼ばれるパーティクル捕捉シートなどの保護層を基板との間に挟んで処理を行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−45949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の防着シートは、ただチャック本体上に載置、もしくは接着剤により部分的に接着されることによってチャック本体に保持されている。しかし、処理対象の基板が繰り返し載置、搬送される静電チャック表面においては、防着シートがただ載置されているだけでは、基板を静電チャックから搬送する際などに載置面4からずれて防着シートの位置を再度調整しなければならない可能性がある。また、防着シートを接着する場合、ずれは抑えられるが、取替え作業が困難となる。
【0010】
そこで本発明の実施形態では、ずれを防止し、取り替え作業を容易に実施できる保護層を有した載置台およびプラズマ処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本実施形態の載置台は、
被処理物を載置する載置面を有する電極本体と、
前記載置面に設けられ、紫外光を照射されることによって前記載置面に対する粘着力が可変となる着脱自在な保護層とを有することを特徴としている。
【0012】
また、本実施形態のプラズマ処理装置は
大気圧よりも減圧された雰囲気を維持可能な処理容器と、
前記処理容器の内部を所定の圧力まで減圧する減圧部と、
前記処理容器の内部に設けられた被処理物を載置する載置台と、
前記処理容器の内部にプラズマを発生させるプラズマ発生部と、
前記載置台の前記被処理物を載置する載置面に対しての粘着力が紫外光を照射されることによって変化する保護層を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の実施形態では、ずれを防止し、取り替え作業を容易に実施できる保護層を有した載置台およびプラズマ処理装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態に係るプラズマ処理装置を例示するための模式図
【図2】本実施の形態に係る載置台を例示するための模式図
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0016】
図1は、本実施の形態に係るプラズマ処理装置を例示するための模式図、図2は、本実施の形態に係る載置台を例示するための模式図である。
【0017】
図1に示すように、プラズマ処理装置100には、処理容器1、プラズマ発生部8、減圧部105、ゲートバルブ(不図示)などが設けられている。
【0018】
プラズマ発生部8は、下部電極と上部電極で構成されている。
【0019】
ここで、本実施形態における載置台10について図2を参照して例示する。
【0020】
本実施形態の載置台10は、下部電極となる電極本体2と保護層3によって構成されるものとする。
【0021】
図2に示すように、電極本体2はさらに電極プレート7、金属電極6、誘電体プレート5、載置面4を有している。
【0022】
電極本体2には被処理物Wが載置可能であり、リフトピンなどの被処理物Wの受け渡し手段(図示せず)などが内蔵されている。被処理物Wの具体例は半導体装置用ウェーハや液晶表示装置用のガラス基板などであるが、これに限定されるものではなくプラズマ処理を行うあらゆる被処理物が含まれる。
【0023】
電極プレート7はアルミニウム合金などの金属部材で形成され、図示しない絶縁リングで周囲を覆われている。電極プレート7には第1の電位供給線104aを介して、ブロッキングコンデンサ101、高周波電源102と順に接続されており、高周波電源102は100KHz〜100MHz程度の高周波電力を電極プレート7に印加する。
【0024】
電極プレート7の上部には、内部に金属電極6を有した誘電体プレート5が設けられている。金属電極6が電極本体2の中で電位的絶縁性を保つために、誘電体プレート5は絶縁性物質で形成される。絶縁性物質としては、例えば、ポリイミド等の樹脂や、アルミナ等のセラミックスを用いることができる。金属電極6は、第2の電位供給線104bを介して直流電源103に接続されており、直流電圧を印加することにより生じるクーロン力等の静電力により基板を吸着する。本実施例においては誘電体プレート5の表面(厳密には保護層3を介して)を被処理物Wの載置面とする。
【0025】
誘電体プレート5表面であって被処理物Wを載置する載置面4は、エッチング防止のために例えばテフロン(登録商標)などで表面をコーティングすることもできる。
【0026】
また、載置面4は後述する熱伝導用ガスG2が供給されるガス孔を開口し、被処理物W裏面を熱伝導用ガスG2で充満できるように溝を設けることもできる。
【0027】
載置面4には保護層3が設けられている。保護層3は紫外光の照射によって載置面4に対する粘着力が変化する材料で構成され、紫外光を照射することにより粘着力が小さくなり、載置面4から保護層3を容易に剥離することができる。このような保護層3の材料としては例えば、UVフィルムを挙げることができる。UVフィルムでなくても、保護層3は被処理物Wが繰り返し載置面4に載置してもずれの起こらない程度に粘着力(保持力)を有していて、また、本実施の形態では耐プラズマエッチング性のある材料とすることができる。
【0028】
電極本体2の底部には図示しない熱伝導用ガス供給源が接続され、電極プレート7と誘電体プレート5の内部を連通する熱伝導用ガス配管と熱伝導用ガス孔を介して電極本体2表面、つまり被処理物W裏面に熱伝導用ガスG2を供給する。このため、保護層3は、熱伝導用ガスを噴出するガス孔に対応するように一つ以上の孔が開けられている。
【0029】
この熱伝導用ガス配管は、電極プレート7を冷却又は温調するために、誘電体プレート5を連通せずに電極プレート7のみを循環させて電極プレート7を温度調整し、被処理物Wを間接的に冷却・温調するものであってもよい。この場合、載置面4に熱伝導用ガス孔は開口していないので、保護層3にガス孔を開ける必要はない。
【0030】
また、熱伝導用ガスは例えばHe又はN2などの不活性ガスとすることができる。
【0031】
次に本実施例の載置台10を用いたプラズマ処理装置100について例示する。
【0032】
図1に例示するプラズマ処理装置100は、一般に「平行平板型RIE(Reactive Ion Etching)装置」と呼ばれる容量結合型プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)処理装置である。すなわち、平行平板電極に高周波電力を印加することで発生させたプラズマを用いてプロセスガスGからプラズマ生成物を生成し、被処理物Wの処理を行うプラズマ処理装置100の一例である。
【0033】
プラズマ処理装置100は、アルミニウムなどの導電性材料で形成され減圧雰囲気を保持可能な処理容器1を備えている。
【0034】
処理容器1の天井部分には、処理ガスGを導入するための上部ガスノズル107が設けられている。処理ガスGは、処理ガス供給手段から図示しない処理ガス流量調整手段により流量が調整されつつ上部ガスノズル107のガス導入孔108から処理容器11の内部に供給される。処理ガスGの具体例としては、CF4、NF3、O2などがあるが、これに限られるものではなく、エッチングや薄膜堆積などの処理作業にあわせて適宜選択される。
【0035】
処理容器11の内部には前述した電極本体2が設けられており、図示しない整合器を介して高周波電源102に接続されている。この電極本体2に対向するように設けられた上部ガスノズル107は接地されている。つまり、電極本体2は下部電極を、上部ガスノズル107は上部電極をそれぞれ成して平行平板電極を構成し、この間にプラズマPを発生させるようになっている。
【0036】
処理容器1の底部には図示しない圧力制御部と排気配管106を介して減圧部105が接続されており、処理容器1を所定の圧力まで減圧するようになっている。減圧部105は、例えば、ターボ分子ポンプ(TMP:Turbo Molecular Pump)などとすることができる。
【0037】
圧力制御部(不図示)は、処理容器1の内圧を検出する図示しない真空計などの出力に基づいて、処理容器1の内圧が所定の圧力となるように減圧部105を制御する。圧力制御部は、例えば、APC(Auto Pressure Controller)などとすることができる。
【0038】
処理容器1の側壁には、被処理物Wの搬入搬出口が設けられている。搬入搬出口は図示しないシール部材を備える扉(図示しない)が設けられており、扉を閉めたときにシール部材で搬入搬出口が封止されるようになっており、処理容器1内を気密に維持できるようになっている。
【0039】
次に本実施形態のプラズマ処理装置100の動作について説明する。
【0040】
搬入搬出口の扉を図示しない扉開閉機構によって開き、図示しない搬送手段により、搬入搬出口から被処理物Wを処理容器1に搬入する。被処理物Wは電極に載置され、前述した電極に内蔵された金属電極に直流電圧を印加することにより生じるクーロン力等の静電力により吸着保持される。次に搬送手段(図示せず)を処理容器1の外に退避させ、扉を扉開閉機構(図示せず)によって閉じ、処理容器1内を所定の圧力まで排気する。
【0041】
プロセスガスGが、プロセスガス供給部109によって上部ガスノズル107に供給される。一方、電源より100KHz〜100MHz程度の高周波電力が電極本体2に印加される。すると、電極本体2と上部電極とが平行平板電極を構成するため、電極間に放電が起こりプラズマPが発生する。発生したプラズマPによりプロセスガスGが励起、活性化されて中性活性種、イオン、電子などのプラズマ生成物が生成される。この生成されたプラズマ生成物が、処理容器1内を下降して被処理物Wの表面に到達し、所望のプラズマ処理(例えば、エッチング処理やアッシング処理など)が行われる。
【0042】
この場合、生成されたイオンと電子のうち、質量の軽い電子は動きが速く、電極と上部ガスノズル107にすぐに到達する。電極本体2に到達した電子は、ブロッキングコンデンサ101により移動を阻止され電極本体2を帯電させる。電極本体2の帯電圧は400V〜1000V程度に達するが、これを「陰極降下」という。一方、上部電極は接地されているため、到達した電子は移動が阻止されず、上部電極はほとんど帯電しない。
【0043】
そして、陰極降下により発生する垂直な電界に沿ってイオンが電極本体2(被処理物W)方向に移動し、被処理物Wの表面に入射することで物理的なプラズマ処理が行われる。なお、中性活性種は、ガス流、拡散、重力などにより下降して被処理物Wの表面に到達し、化学的なプラズマ処理が行われる。これにより、エッチングや薄膜堆積などの処理作業が終わると、被処理物Wを図示しない搬送手段によって処理容器1外に搬出する。
【0044】
載置面4上に保持された保護層3が、処理作業後のフッ素による腐食やパーティクルによって劣化した場合は、保護層3を剥離する作業を行なう。
【0045】
保護層3は上述した通り、紫外光によって載置面4に対して粘着力が変化する材質で構成されており、プラズマの光やランプの光に含まれる紫外光によって、載置面4に対して粘着力が変化し、載置面4から剥離できるようになっている。
【0046】
剥離方法について以下例示する。
【0047】
被処理物Wが電極本体2の載置面4から処理容器1外に搬出された後、保護層3はむき出しの状態となっている。そこで、処理容器1内の減圧を行い、電極本体2に電位を印加し、プラズマPを再度起こすようにすると、プラズマPの光に含まれる紫外光によって、保護層3の粘着力を小さくさせることができる。つまり、載置面4に対する保護層3の保持力が小さくなるので、保護層3を載置面4から容易に剥離できるようになる。紫外光の照射時間は実験により求めることができる。
【0048】
その後、人手またはロボットによって載置面4から保護層3の剥離作業を行う。保護層3を剥離した後の載置面4を有機溶剤などで洗浄し、新たな保護層3を再度接着することで保護層3の交換作業を終えることができる。
【0049】
ここで、被処理物Wが載置面4に載置されている間は、プラズマ処理を行っても被処理物Wによって紫外光が遮られるため保護層3の粘着力はほぼ変化しない。
【0050】
しかし、被処理物Wが処理容器1外に搬送され、載置面4に何も載置されていない状態においては、保護層3がむき出しとなっているため、紫外光が入射した場合は保護層3の粘着力が変化する。つまり、被処理物Wがプラズマ処理されている間、保護層3は載置面4に対して保持力を有するが、被処理物Wが載置されていない間にプラズマを起こすことによって保護層3に紫外光を入射させると、載置面4に対しての保持力は小さくなり、容易に剥離することができる。
【0051】
保護層3の剥離作業に用いる光源は、上述したように処理容器1内のプラズマ光でもよいし、別にランプなどの光源を設けてもよい。
【0052】
処理容器1内のプラズマ光を用いる場合は、装置の構成を変える必要がないので容易に剥離作業を行うことができる。さらに、プラズマクリーニング時に使用するプラズマ光を用いれば、保護層3を載置面4から剥離するためのみのプラズマを生成するガスや動力、放電時間を用いることなく剥離作業を行うことができるため、工数の削減となる。
【0053】
紫外線などの紫外光を照射する光源を別に設ける場合は、処理容器1側壁などに透過窓を設け、ランプ等の光を処理容器1外から載置面4に照射することができる。その場合、載置面4のできるだけ全面を照射できるような位置にランプを設けることができる。例えば、リモートプラズマエッチング装置のように、プラズマ光が処理容器1内に進入しにくい構成の処理装置に本実施形態の載置台10を用いる場合は、光源を処理容器1側壁などに設けることができる。
【0054】
このように、本実施形態の載置台10の載置面4上に設け保護層3は、プラズマ処理中には載置面4に対して粘着力を有するが、紫外光を照射することで載置面4からはがれやすい状態に変化する。これにより、必要に応じて保護層3を容易に載置面4から剥離することができる。
【0055】
以上、実施の形態について例示をした。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、プラズマ処理装置100が備える各要素の形状、寸法、材質、配置、数などは、例示をしたものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 処理容器、2 電極本体、3 保護層、4 載置面、5 誘電体プレート、6 金属電極、7 電極プレート、8 プラズマ生成部、10 載置台、100 プラズマ処理装置、101 ブロッキングコンデンサ、102 高周波電源、103 直流電源、
104a 第一の電位供給線、104b 第二の電位供給線、105 減圧部、106 排気配管、107 上部ガスノズル、108 ガス導入孔、109 プロセスガス供給部
G プロセスガス、P プラズマ、W 被処理物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を載置する載置面を有する電極本体と、
前記載置面に設けられ、紫外光を照射されることによって前記載置面に対する粘着力が可変となる着脱自在な保護層とを有することを特徴とした載置台。
【請求項2】
前記保護層は紫外光を照射することで粘着力が小さくなる材質であることを特徴とする請求項1記載の載置台。
【請求項3】
大気圧よりも減圧された雰囲気を維持可能な処理容器と、
前記処理容器の内部を所定の圧力まで減圧する減圧部と、
前記処理容器の内部に設けられた被処理物を載置する載置台と、
前記処理容器の内部にプラズマを発生させるプラズマ発生部と、
前記載置台の前記被処理物を載置する載置面に対しての粘着力を照射されることによって変化する保護層を有することを特徴としたプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記保護層は基板処理中には粘着力を有し、前記被処理物処理後は着脱自在となる程度に粘着力が小さくなることを特徴とした請求項3記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記保護層に紫外光を照射する光ランプを有することを特徴とした請求項3または請求項4記載のプラズマ処理装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−216691(P2012−216691A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81308(P2011−81308)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】