説明

載置台及びプラズマ処理装置

【課題】基板上の半導体デバイスにおける絶縁膜の劣化を防止するとともに、容易に製造することができる載置台を提供する。
【解決手段】プラズマ処理装置10の載置台12は、第1の高周波電源28及び第2の高周波電源29に接続される下部電極20と、該下部電極20の上面中央部分において埋設される誘電体層21と、該誘電体層21の上に載置される静電チャック22と、ウエハW及び誘電体層21の間に配される導電膜45とを有し、該静電チャック22は電極膜37を有し、導電膜45は条件「δ/z≧85」及び条件「ρs1≦2.67×10Ω/□」を満たし、電極膜37は条件「δ/z≧85」を満たす。但し、z:導電膜45の厚さ、δ:導電膜45のスキンデプス、ρs1:導電膜45の表面抵抗率、z:電極膜37の厚さ、δ:電極膜37のスキンデプス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理が施される基板が載置される載置台及び該載置台を備えるプラズマ処理装置に関し、特に、誘電体層が埋設された載置台に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程では、処理ガスから生じたプラズマを用いて半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」という。)にプラズマ処理、例えば、ドライエッチングやアッシングが施される。このようなプラズマ処理を行うプラズマ処理装置では、例えば平行平板状の一対の電極が上下に対向されて配置され、該対向する電極の間に高周波電力が印加されて処理ガスからプラズマを生じさせる。プラズマ処理が施される際、ウエハは載置台としての下側の電極上に載置される。
【0003】
近年、プラズマ処理ではイオンのエネルギーが低く且つ電子密度の高いプラズマを用いることが多く、これに対応して、電極の間に印加される高周波電力の周波数が従来(例えば、10数MHz程度)と比べて、例えば100MHzと非常に高い。ところが、印加する高周波電力の周波数を上昇させると、電極表面の中央部分、すなわち、ウエハの中央部分に対向する空間で電界の強度が強くなる一方で、電極表面の周縁部分に対向する空間では電界の強度が弱くなることが確認されている。このように電界の強度分布が不均一になると、発生するプラズマの電子密度も不均一となるため、例えば、イオンを用いるドライエッチングではウエハの位置によってエッチング速度が異なり、その結果、ドライエッチングの面内均一性を確保するのが困難であるという問題があった。
【0004】
このような問題に対し、例えば、下側の電極(載置台)の対向表面の中央部分にセラミックス等の誘電体層を埋設することによって電界の強度分布を均一にし、プラズマ処理の面内均一性を向上させることが可能なプラズマ処理装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
図9(A)に示すように、プラズマ処理装置90では下部電極91へ高周波電源92から高周波電力を印加すると、表皮効果によって下部電極91の表面を伝播して上部に達した高周波電流は、ウエハWの表面に沿って中央部分に向かいつつ、一部がウエハWの表面の中央部分から下部電極91側に漏れて、その後下部電極91内を外側へ向かって流れる。ここで、誘電体層93が埋設されている部位では、高周波電流が他の部位よりも深く潜ることができ、これにより、下部電極91の中央部分においてTMモードの空洞円筒共振が発生する。その結果、ウエハWの中央部分に対向する空間における電界の強度を下げることができ、ウエハWに対向する空間における電界の強度分布を均一にすることができる。
【0006】
通常、プラズマ処理は減圧雰囲気で行われるため、図9(B)に示すように、プラズマ処理装置90ではウエハWの固定に静電チャック94が用いられる。静電チャック94では、誘電体、例えば、アルミナからなる下側部材及び上側部材の間に導電性の電極膜95が挟まれる。プラズマ処理では、該電極膜95へ高圧直流電源96から高圧直流電力を印加して静電チャック94の上側部材表面に生じるクーロン力によってウエハWを静電吸着して固定する。
【0007】
ところで、プラズマ処理装置90の各構成部品は高周波電流に関する電気回路を構成すると考えられる一方、ウエハWはシリコン等の半導体からなるため、該ウエハWも電気回路の構成要素と考えられる。ここで、ウエハWが静電チャック94に静電吸着される際、該ウエハWと電極膜95とは互いに平行となるため、該ウエハWと電極膜95とは上記電気回路において並列に配置された抵抗に該当すると考えられる。
【0008】
したがって、ウエハWを流れる高周波電流の値は、該ウエハWの抵抗値と電極膜95の抵抗値とのバランスによって左右されるが、電極膜95の抵抗値が極端に大きい場合又は極端に小さい場合において、ウエハW上の半導体デバイスにおいてゲート酸化膜がチャージアップして劣化する(チャージアップダメージが発生する)という問題があった。
【0009】
そこで、本出願人は実験を通じて電極膜95の抵抗値とチャージアップダメージの発生率との関係を把握し、チャージアップダメージが発生しない電極膜95の抵抗値の範囲、具体的にはスキンデプスや表面抵抗率(シート抵抗率)の範囲を見出した(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−363552号公報
【特許文献2】特願2008−029348号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、抵抗値の範囲を厳密に管理するためには、電極膜95の膜厚の上限及び下限を厳密に管理する必要がある。一方、電極膜95には高圧直流電力を印加するための給電ピンを接触させる必要があり、そのための構造を厳密に管理する必要がある。すなわち、載置台を製造する際、電極膜95の膜厚の上限及び下限だけでなく給電ピンを接触させるための接触構造も厳密に管理する必要があり、その結果、載置台を容易に製造することができないという問題がある。
【0012】
本発明の目的は、基板上の半導体デバイスにおける絶縁膜の劣化を防止するとともに、容易に製造することができる載置台及びプラズマ処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1記載のプラズマ処理装置用の載置台は、基板が載置されるプラズマ処理装置用の載置台であって、プラズマ生成用の高周波電源及びイオン引き込み用の高周波電源に接続される導電体部材と、該導電体部材の上面中央部分において埋設される誘電体層と、該誘電体層の上に載置される静電チャックと、前記基板及び前記誘電体層の間に配される導電膜とを備え、前記静電チャックは高圧直流電源に接続される電極膜を有し、前記導電膜は条件「δ/z≧85且つρs1≦2.67×10Ω/□」を満たし、前記電極膜は条件「δ/z≧85」を満たすことを特徴とする。但し、δ=(ρv1/(μπf))1/2であり、z:前記導電膜の厚さ、δ:前記プラズマ生成用の高周波電源から印加される高周波電力に対する前記導電膜のスキンデプス、f:前記プラズマ生成用の高周波電源から印加される高周波電力の周波数、π:円周率、μ:前記導電膜の透磁率、ρv1:前記導電膜の比抵抗、ρs1:前記導電膜の表面抵抗率であり、δ=(ρv2/(μπf))1/2であり、z:前記電極膜の厚さ、δ:前記プラズマ生成用の高周波電源から印加される高周波電力に対する前記電極膜のスキンデプス、μ:前記電極膜の透磁率、ρv2:前記電極膜の比抵抗である。
【0014】
上記目的を達成するために、請求項2記載のプラズマ処理装置用の載置台は、基板が載置されるプラズマ処理装置用の載置台であって、プラズマ生成用の高周波電源及びイオン引き込み用の高周波電源に接続される導電体部材と、該導電体部材の上面中央部分において埋設される誘電体層と、該誘電体層の上に載置される静電チャックと、前記基板及び前記誘電体層の間に配される導電膜とを備え、前記静電チャックは高圧直流電源に接続される電極膜を有し、前記導電膜は条件「115Ω/□≦ρs1≦2.67×10Ω/□」を満たし、前記電極膜は条件「115Ω/□≦ρs2」を満たすことを特徴とする。但し、ρs1:前記導電膜の表面抵抗率、ρs2:前記電極膜の表面抵抗率である。
【0015】
請求項3記載のプラズマ処理装置用の載置台は、請求項1又は2記載のプラズマ処理装置用の載置台において、前記導電膜の表面抵抗率ρs1が304Ω/□以下であることを特徴とする。
【0016】
請求項4記載のプラズマ処理装置用の載置台は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置用の載置台において、前記基板側から前記導電膜を眺めた場合において該導電膜は前記誘電体層を隠すことを特徴とする。
【0017】
請求項5記載のプラズマ処理装置用の載置台は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置用の載置台において、前記導電膜の表面抵抗率ρs1が前記電極膜の表面抵抗率ρs2よりも小さいことを特徴とする。
【0018】
請求項6記載のプラズマ処理装置用の載置台は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置用の載置台において、前記導電体部材及び前記静電チャックは互いに接着されて結合し、前記導電膜は前記導電体部材及び前記静電チャックの間に挟まれることを特徴とする。
【0019】
請求項7記載のプラズマ処理装置用の載置台は、請求項6記載のプラズマ処理装置用の載置台において、前記導電膜は樹脂からなるシート上に形成され、該シートは前記導電体部材又は前記静電チャックの表面に貼着されることを特徴とする。
【0020】
請求項8記載のプラズマ処理装置用の載置台は、請求項6記載のプラズマ処理装置用の載置台において、前記導電膜は前記導電体部材又は前記静電チャックの表面に形成されることを特徴とする。
【0021】
請求項9記載のプラズマ処理装置用の載置台は、請求項7又は8記載のプラズマ処理装置用の載置台において、前記導電膜は蒸着によって形成されることを特徴とする。
【0022】
請求項10記載のプラズマ処理装置用の載置台は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置用の載置台において、前記導電膜は前記静電チャックに内蔵されることを特徴とする。
【0023】
上記目的を達成するために、請求項11記載のプラズマ処理装置は、基板が載置される載置台を備え、前記載置台は、プラズマ生成用の高周波電源及びイオン引き込み用の高周波電源に接続される導電体部材と、該導電体部材の上面中央部分において埋設される誘電体層と、該誘電体層の上に載置される静電チャックと、前記基板及び前記誘電体層の間に配される導電膜とを有するプラズマ処理装置であって、前記静電チャックは高圧直流電源に接続される電極膜を有し、前記導電膜は条件「δ/z≧85且つρs1≦2.67×10Ω/□」を満たし、前記電極膜は条件「δ/z≧85」を満たすことを特徴とする。但し、δ=(ρv1/(μπf))1/2であり、z:前記導電膜の厚さ、δ:前記プラズマ生成用の高周波電源から印加される高周波電力に対する前記導電膜のスキンデプス、f:前記プラズマ生成用の高周波電源から印加される高周波電力の周波数、π:円周率、μ:前記導電膜の透磁率、ρv1:前記導電膜の比抵抗、ρs1:前記導電膜の表面抵抗率であり、δ=(ρv2/(μπf))1/2であり、z:前記電極膜の厚さ、δ:前記プラズマ生成用の高周波電源から印加される高周波電力に対する前記電極膜のスキンデプス、μ:前記電極膜の透磁率、ρv2:前記電極膜の比抵抗である。
【0024】
上記目的を達成するために、請求項12記載のプラズマ処理装置は、基板が載置される載置台を備え、前記載置台は、プラズマ生成用の高周波電源及びイオン引き込み用の高周波電源に接続される導電体部材と、該導電体部材の上面中央部分において埋設される誘電体層と、該誘電体層の上に載置される静電チャックと、前記基板及び前記誘電体層の間に配される導電膜とを有するプラズマ処理装置であって、前記静電チャックは高圧直流電源に接続される電極膜を有し、前記導電膜は条件「115Ω/□≦ρs1≦2.67×10Ω/□」を満たし、前記電極膜は条件「115Ω/□≦ρs2」を満たすことを特徴とする。但し、ρs1:前記導電膜の表面抵抗率、ρs2:前記電極膜の表面抵抗率である。
【発明の効果】
【0025】
請求項1記載のプラズマ処理装置用の載置台及び請求項11記載のプラズマ処理装置によれば、条件「δ/z≧85」及び条件「ρs1≦2.67×10Ω/□」を満たす導電膜と、条件「δ/z≧85」を満たす電極膜を有する静電チャックとを備える。δ(スキンデプス)は導電膜や電極膜において電界の強度が1/eだけ減少する厚みであり、δが大きいほど電界が導電膜や電極膜を透過し易くなるため高周波電流が導電膜や電極膜を厚さ方向に透過して深く潜り易い。したがって、δ/z≧85且つδ/z≧85であれば、高周波電流の大部分は導電膜や電極膜を流れることなく、これらの導電膜や電極膜を厚さ方向に透過して誘電体層へ向けて深く潜ることができ、その結果、TMモードの空洞円筒共振を発生させて基板に対向する空間における電界の強度分布を均一にすることができ、基板において直流的な電流の発生を防止することができる。また、導電膜の表面抵抗率が小さいほど該導電膜に高周波電流が流れ易い。したがって、ρs1≦2.67×10Ω/□であれば、電極膜や基板に過剰な高周波電流が流れるのを防止することができる。その結果、基板上の半導体デバイスにおける絶縁膜の劣化を防止することができる。
【0026】
さらに、電極膜において表面抵抗率の上限は基板の静電吸着力のみを考慮して管理すればよいため、電極膜の膜厚の管理を簡素化でき、且つ導電膜には高圧直流電源が接続されないため、該導電膜において給電ピンを接触させるための接触構造を設ける必要がない。その結果、電極膜や導電膜の品質管理を比較的容易に行うことができ、もって、載置台を容易に製造することができる。
【0027】
請求項2記載のプラズマ処理装置用の載置台及び請求項12記載のプラズマ処理装置によれば、条件「115Ω/□≦ρs1≦2.67×10Ω/□」を満たす導電膜と、条件「115Ω/□≦ρs2」を満たす電極膜を有する静電チャックとを備える。導電膜や電極膜の表面抵抗率が大きいほど高周波電流が導電膜や電極膜を流れ難くなるため高周波電流が導電膜や電極膜を厚さ方向に透過して深く潜り易い。したがって、115Ω/□≦ρs1且つ115Ω/□≦ρs2あれば、高周波電流の大部分は導電膜や電極膜を流れることなく、これらの導電膜や電極膜を厚さ方向に透過して誘電体層へ向けて深く潜ることができ、その結果、TMモードの空洞円筒共振を発生させて基板に対向する空間における電界の強度分布を均一にすることができ、基板において直流的な電流の発生を防止することができる。また、導電膜の表面抵抗率が小さいほど該導電膜に高周波電流が流れ易い。したがって、ρs1≦2.67×10Ω/□であれば、電極膜や基板に過剰な高周波電流が流れるのを防止することができる。その結果、基板上の半導体デバイスにおける絶縁膜の劣化を防止することができる。
【0028】
さらに、電極膜において表面抵抗率の上限は基板の静電吸着力のみを考慮して管理すればよいため、電極膜の膜厚の管理を簡素化でき、且つ導電膜には高圧直流電源が接続されないため、該導電膜において給電ピンを接触させるための接触構造を設ける必要がない。その結果、電極膜や導電膜を比較的容易に製造することができ、もって、載置台を容易に製造することができる。
【0029】
請求項3記載のプラズマ処理装置用の載置台によれば、導電膜の表面抵抗率ρs1が304Ω/□以下であるので、電極膜や基板に過剰な高周波電流が流れるのを確実に防止することができる。
【0030】
請求項4記載のプラズマ処理装置用の載置台によれば、基板側から導電膜を眺めた場合において導電膜は誘電体層を隠すので、高抵抗である誘電体層が基板側から見えない。その結果、高周波電流は基板ではなく導電膜を積極的に流れ、基板に過剰な高周波電流が流れるのをより確実に防止することができる。
【0031】
請求項5記載のプラズマ処理装置用の載置台によれば、導電膜の表面抵抗率ρs1が電極膜の表面抵抗率ρs2よりも小さいので、高周波電流は導電膜を積極的に流れる。これにより、基板に過剰な高周波電流が流れるのをさらに確実に防止することができる。
【0032】
請求項6記載のプラズマ処理装置用の載置台によれば、導電体部材及び静電チャックは互いに接着されて結合し、導電膜は導電体部材及び静電チャックの間に挟まれるので、導電体部材及び静電チャックの接着前に導電膜の表面抵抗率を測定することができ、導電膜の実際の表面抵抗率の範囲を保証することができる。その結果、半導体デバイスにおける絶縁膜の劣化防止に関して信頼性の高い載置台を提供することができる。
【0033】
請求項7記載のプラズマ処理装置用の載置台によれば、導電膜は樹脂からなるシート上に形成され、該シートは導電体部材又は静電チャックの表面に貼着されるので、載置台に導電膜を容易に付設することができ、もって、載置台をより容易に製造することができる。
【0034】
請求項8記載のプラズマ処理装置用の載置台によれば、導電膜は導電体部材又は静電チャックの表面に形成されるので、導電体部材及び静電チャックを互いに接着するだけで載置台に導電膜を付設することができ、もって、載置台をより容易に製造することができる。
【0035】
請求項9記載のプラズマ処理装置用の載置台によれば、導電膜は蒸着によって形成されるので、膜厚が均一な導電膜を容易に得ることができ、もって、導電膜の表面抵抗率の管理を容易に行うことができる。
【0036】
請求項10記載のプラズマ処理装置用の載置台によれば、導電膜は静電チャックに内蔵されるので、載置台に導電膜を確実に付設することができ、もって、載置台をより容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態に係る載置台を備えるプラズマ処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図2】図1のプラズマ処理装置において導電膜が存在しないと仮定したときに高出力のプラズマ生成用電力が印加される場合を説明するための図であり、図2(A)は静電チャック近傍の構成を概略的に示す部分断面図であり、図2(B)は第1の高周波電源等からなる電気回路を示す図である。
【図3】図1のプラズマ処理装置において導電膜が存在しないと仮定したときに高出力のバイアス電力が印加される場合を説明するための図であり、図3(A)は静電チャック近傍の構成を概略的に示す部分断面図であり、図3(B)は第2の高周波電源等からなる電気回路を示す図である。
【図4】δ/zの値が異なる複数の導電性の薄膜を用いた場合の各ウエハの面内におけるフォトレジストのエッチング速度の分布を示すグラフである。
【図5】δ/zの値が異なる複数の導電性の薄膜を用いた場合の各テストウエハにおけるTEGのゲート酸化膜の劣化の程度を示す表である。
【図6】図1における載置台の構成を概略的に示す拡大断面図である。
【図7】図1のプラズマ処理装置において高出力のバイアス電力が印加される場合を説明するための図であり、図7(A)は静電チャック近傍の構成を概略的に示す部分断面図であり、図7(B)は第2の高周波電源等からなる電気回路を示す図である。
【図8】図1における載置台の変形例の構成を概略的に示す拡大断面図であり、図8(A)は第1の変形例であり、図8(B)は第2の変形例であり、図8(C)は第3の変形例であり、図8(D)は第4の変形例である。
【図9】従来のプラズマ処理の面内均一性を向上させることが可能なプラズマ処理装置の構成を概略的に示す断面図であり、図9(A)は静電チャックが配置されていない場合であり、図9(B)は静電チャックが配置されている場合である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0039】
図1は、本実施の形態に係る載置台を備えるプラズマ処理装置の構成を概略的に示す断面図である。このプラズマ処理装置は直径が、例えば、300mmの半導体ウエハ(基板)にプラズマエッチング、例えば、RIE(Reactive Ion Etching)やアッシングを施すように構成されている。
【0040】
図1において、プラズマ処理装置10は、例えば、真空チャンバからなる処理容器11と、該処理容器11内の底面中央部分に配設された載置台12と、該載置台12の上方に載置台12と対向するように設けられた上部電極13とを備える。
【0041】
処理容器11は小径の円筒状の上部室11aと、大径の円筒状の下部室11bとを有する。上部室11aと下部室11bとは互いに連通しており、処理容器11全体は気密に構成される。上部室11a内には載置台12や上部電極13が格納され、下部室11b内には載置台12を支えると共に冷媒やバックサイドガス用の配管を収めた支持ケース14が格納される。
【0042】
下部室11bの底面には排気口15が設けられ、該排気口15には排気管16を介して排気装置17が接続される。該排気装置17はAPC(Adaptive Pressure Control)バルブ、DP(Dry Pump)やTMP(Turbo Molecular Pump)を有し(いずれも図示しない)、APCバルブ等は制御部(図示しない)からの信号によって制御され、処理容器11内全体を真空排気して所望の真空度に維持する。一方、上部室11aの側面にはウエハWの搬出入口18が設けられており、該搬出入口18はゲートバルブ19によって開閉可能である。また、上部室11aと下部室11bとはアルミニウム等の導電性の部材から構成され、且つ接地される。
【0043】
載置台12は、例えば、導電体であるアルミニウムからなる台状部材であるプラズマ生成用の下部電極20(導電体部材)と、後述の処理空間内において電界の強度を均一にするために下部電極20の上面中央部分に埋設された、例えば、誘電体であるセラミックスからなる誘電体層21と、ウエハWを載置面において静電吸着して固定するための静電チャック22と、導電膜45とを有する。なお、導電膜45については後ほど詳述する。
【0044】
載置台12では、下部電極20、誘電体層21及び静電チャック22がこの順で積層されている。また、下部電極20が支持ケース14上に設置された支持台23に絶縁部材24を介して固定され、処理容器11に対して電気的に十分浮いた状態になっている。
【0045】
下部電極20内には冷媒を通流させるための冷媒流路25が形成され、冷媒が冷媒流路25を流れることによって下部電極20が冷却され、静電チャック22上面の載置面に載置されたウエハWが所望の温度に冷却される。
【0046】
静電チャック22は誘電体からなり、電極膜37を内包する。該電極膜37は、例えば、アルミナ(Al)に炭化珪素(SiC)を含有させた電極材料からなり、導電性を呈する。該電極膜37には高圧直流電源42が接続され、電極膜37に印加された高圧直流電力は静電チャック22の載置面及びウエハWの間にクーロン力を生じさせてウエハWを静電吸着して固定する。
【0047】
また、静電チャック22には載置面とウエハWの裏面との間の熱伝達性を高めるためのバックサイドガスを放出する貫通孔26が開口している。該貫通孔26は、下部電極20内等に形成されたガス流路27と連通しており、該ガス流路27を介してガス供給部(図示しない)から供給されたヘリウム(He)等のバックサイドガスが放出される。
【0048】
下部電極20には、周波数が、例えば、27MHz以上の高周波電力(プラズマ生成用電力)を印加する第1の高周波電源28(プラズマ生成用の高周波電源)と、第1の高周波電源28よりも周波数の低い、例えば、27MHz以下の高周波電力(バイアス電力)を印加する第2の高周波電源29(イオン引き込み用の高周波電源)とがそれぞれ整合器30、31を介して接続される。第1の高周波電源28から印加されるプラズマ生成用電力は、後述する処理ガスからプラズマを生じさせ、第2の高周波電源29から印加されるバイアス電力はプラズマ中のイオンをウエハWの表面に引き込む。
【0049】
また、下部電極20の上面外縁部には、静電チャック22を囲むようにフォーカスリング32が配置される。フォーカスリング32は後述する処理空間内においてプラズマをウエハWが対向する空間よりも広げてウエハWの面内におけるエッチング速度の均一性を向上させる。
【0050】
支持台23の下部外側には該支持台23を取り囲むようにバッフル板33が設けられる。バッフル板33は、上部室11a内の処理ガスをバッフル板33と上部室11a壁部との間に形成された隙間を介して下部室11bへ通流させることにより、処理ガスの流れを整える整流板としての役割を果たすとともに、後述する処理空間内のプラズマが下部室11bへ漏洩するのを防止する。
【0051】
上部電極13は、上部室11a内に面する導電材からなる天井電極板34と、該天井電極板を釣支する電極板支持体35と、該電極板支持体35内に設けられたバッファ室36とを有する。バッファ室36にはガス導入管38の一端が接続され、該ガス導入管38の他端は処理ガス供給源39に接続される。処理ガス供給源39は、処理ガス供給量の制御機構(図示しない)を有し、処理ガスの供給量の制御を行う。また、天井電極板34には、該天井電極板34を貫通してバッファ室36及び上部室11a内を連通させる多数のガス供給孔40が形成される。
【0052】
上部電極13では処理ガス供給源39からバッファ室36に供給された処理ガスがガス供給孔40を介して上部室11a内へ分散供給されるので、上部電極13は処理ガスのシャワーヘッドとして機能する。また、上部電極13が上部室11aの壁部に固定されることによって上部電極13と処理容器11との間には導電路が形成される。
【0053】
プラズマ処理装置10では、上部室11aの周囲においてゲートバルブ19の上下に2つのマルチポールリング磁石41a、41bが配置される。マルチポールリング磁石41a、41bでは、複数の異方性セグメント柱状磁石(図示しない)がリング状の磁性体のケーシング(図示しない)に収容され、該ケーシング内において隣接する複数のセグメント柱状磁石の磁極の向きが互いに逆向きになるように配置される。これにより、磁力線が隣接するセグメント柱状磁石間に形成され、上部電極13と下部電極20との間に位置する処理空間の周辺に磁場が形成され、該磁場によって処理空間へプラズマを閉じこめる。なお、プラズマ処理装置10の装置構成をマルチポールリング磁石41a、41bを備えない装置構成としてもよい。
【0054】
プラズマ処理装置10では、ウエハWにRIEやアッシングを施す際、処理容器11内の圧力を所望の真空度に調整した後、処理ガスを上部室11a内に導入して第1の高周波電源28からプラズマ生成用電力を印加し、第2の高周波電源29からバイアス電力を印加することにより、処理ガスからプラズマを生じさせると共に、該プラズマ中のイオンをウエハWに引き込む。このとき、イオンのエネルギーが低く且つ電子密度の高いプラズマを発生させるためには、第1の高周波電源28が27MHz以上、好ましくは40MHz以上の高周波電力を印加するのがよく、さらに、プラズマ中のイオンをウエハWに向けて確実に引き込むには、第2の高周波電源29が27MHz以下、好ましくは13.56MHz以下の高周波電力を印加するのがよい。第1の高周波電源28や第2の高周波電源29から印加された高周波電力は、下部電極20→プラズマ→上部電極13→処理容器11の壁部→接地からなる経路を流れる。
【0055】
プラズマ処理装置10では、第1の高周波電源28が印加するプラズマ生成用電力の周波数が比較的高い(40MHz以上)ので、処理空間においてウエハWの中央部分に対向する部分の電界の強度が強くなる傾向がある。この傾向を解消して処理空間において電界の強度分布を均一にするために、プラズマ処理装置10は下部電極20の誘電体層21を備える。該誘電体層21の存在により、第1の高周波電源28からの高周波電流は、ウエハWの中央部分から静電チャック22を介して下部電極20の誘電体層21に向けて深く潜る。その結果、下部電極20の中央部分においてTMモードの空洞円筒共振が発生し、処理空間における電界の強度分布を均一にする。
【0056】
ここでプラズマ処理装置10において導電膜45が存在しないと仮定した場合、第1の高周波電源28、下部電極20、誘電体層21、静電チャック22、電極膜37、ウエハW及び処理空間に発生するプラズマPZ等(図2(A))が、図2(B)に示すような電気回路43を構成する。また、第2の高周波電源29等(図3(A))が、図3(B)に示すような電気回路44を構成する。プラズマ処理装置10では下部電極20の中央部分においてのみ誘電体層21が存在するため、電気回路43(44)では、下部電極20の中央部分に対応する回路43a(44a)と、下部電極20の周縁部分に対応する回路43b(44b)とが存在していると考えられ、回路43a(44a)と回路43b(44b)とはウエハWの抵抗R及び電極膜37の抵抗Rによってブリッジされる。また、ウエハWが静電チャック22の載置面に載置される際、該ウエハWと電極膜37は互いに平行となるため、抵抗R及び抵抗Rは電気回路的に並行に配置されることとなる。
【0057】
第1の高周波電源28から高出力のプラズマ生成用電力が印加される場合において、電極膜37の抵抗Rが小さいと、ウエハWの中央部分から静電チャック22を厚さ方向へ透過する第1の高周波電源28からの高周波電流は、さらに誘電体層21に向けて潜る代わりに電極膜37を伝って静電チャック22の中央部分から周縁部分へ流れる。その結果、誘電体層21へ潜る高周波電流に起因して発生し且つ電極膜37を透過する電界を発生させることが困難となる。この現象を以下に説明する。
【0058】
本実施の形態では、電極膜37等の導電性の薄膜を透過する電界の減少の程度を示す指標として、薄膜のスキンデプスδを用いる。スキンデプスδとは薄膜を透過する電界が1/eだけ減少する厚みであり、スキンデプスδが大きいと電界が減少しにくく、電界が薄膜をよく透過し、スキンデプスδが小さいと電界が減少し易く、電界が薄膜を透過しにくい。スキンデプスδは下記式(5)で表される。
δ=(2ρ/(μω))1/2=(ρ/(μπf))1/2 … (5)
ここで、μは薄膜の透磁率(H/m)であり、ωは2πf(π:円周率、f:第1の高周波電源28から印加されるプラズマ生成用電力の周波数(Hz))であり、ρは薄膜を構成する電極材料の比抵抗(Ω・m)である。
【0059】
また、薄膜中に形成される電界Eはマクスウェルの方程式から下記式(6)で表される。
E=Eexp(−iωt)exp(iz/δ)exp(−z/δ) … (6)
ここで、zは薄膜の厚さ(m)であり、Eは薄膜に入射する電界の強度である。
【0060】
すなわち、第1の高周波電源28から印加されるプラズマ生成用電力の電界が電極膜37を透過する透過率「E/E」は、下記式(7)に示すように、「exp(−z/δ)」に比例する。
E/E∝exp(−z/δ) … (7)
上記式(7)より「z/δ」の値が「0」に近づくほど電界の透過率は1.0(100%)に近づき、「δ」が小さいほど電界の透過率が低くなる。ここで、電極膜37の抵抗Rが小さいことは電極膜37の比抵抗ρが小さいことに他ならないので、抵抗Rが小さいと「(ρ/(μπf))1/2」で示されるスキンデプスδが小さくなり、電極膜37を透過する電界を発生させることが困難となる。
【0061】
電極膜37を透過する電界が殆ど発生しないと、下部電極20の中央部分においてTMモードの空洞円筒共振が発生せず、処理空間におけるウエハWの中央部分(以下、「中央空間」という。)に対向する部分の電界の強度が、処理空間におけるウエハWの周縁部分(以下、「周縁空間」という。)に対向する部分の電界の強度よりも大きくなり、中央空間においてプラズマの電子密度が高くなる。その結果、ウエハWの面内におけるエッチング速度の分布が不均一になる。
【0062】
このとき、処理空間におけるプラズマの電子密度分布の不均一に起因して電気回路43における、プラズマPZの抵抗R、プラズマPZのシースキャパシタC、ゲート酸化膜のキャパシタC、及びウエハWの抵抗Rによって構成される回路において直流的な電流(図2(B)において破線矢印で示す)が発生する。直流的な電流がウエハWを流れるとき、ウエハW上の半導体デバイス(以下、単に「デバイス」という。)においてゲート酸化膜(絶縁膜)がチャージアップしてダメージを受けて劣化する。
【0063】
高出力のプラズマ生成用電力が印加される場合において、ウエハWの面内におけるエッチング速度の分布を均一にし、且つデバイスにおいてゲート酸化膜の劣化を防止するには、第1の高周波電源28からの高周波電流が電極膜37を流れるのを抑制し、該高周波電流を誘電体層21に向けて深く潜らせて電極膜37を透過する電界を発生させる必要があるが、このためには上記式(7)より、「δ/z」を大きくすればよい。「δ/z」を大きくするには、スキンデプスδを大きくするか、電極膜37の厚さ「z」を小さくすればよい。スキンデプスδは、上述したように「(ρ/(μπf))1/2」で表されるため、スキンデプスδを大きくするには、周波数が一定の場合、比抵抗ρの大きな電極材料を使用して電極膜37の抵抗Rを大きくすればよい。また、高周波電力の周波数が高いほどスキンデプスδは小さくなるので(δ∝(1/ω)=(1/2πf))、高周波電力の周波数を高くした場合には、電極膜37の構成材料として比抵抗ρのより大きな電極材料を使用すればよい。
【0064】
また、電気回路44において、第2の高周波電源29からバイアス電力が印加されると、下部電極20の中央部分に対応する回路44aには誘電体層21のキャパシタCが存在するため、第2の高周波電源29からの高周波電流は主として回路44aではなく下部電極20の周縁部分に対応する回路44bを流れ、やがて回路44aへ還流する(図3(B)において太実線矢印で示す)。ここで、電極膜37の抵抗RをウエハWの抵抗Rよりも大きく設定した場合、回路44aへ還流する高周波電流は主として電極膜37ではなくウエハWを流れる。これにより、ウエハWの面内において電位差が生じ、ウエハWの面内におけるゲート酸化膜(絶縁膜)のチャージのバランスが崩れる。その結果、やはり、ウエハW上のデバイスにおいてゲート酸化膜がチャージアップしてダメージを受けて劣化する。
【0065】
第2の高周波電源29から高出力のバイアス電力が印加される場合において、デバイスにおいてゲート酸化膜の劣化を防止するには、第2の高周波電源29からの高周波電流が主としてウエハWを流れるのを防止する必要があるが、そのためには電極膜37の抵抗Rを小さくして該電極膜37へ積極的に高周波電流を流せばよい。
【0066】
以上より、高出力のプラズマ生成用電力が印加される場合においてウエハWの面内におけるエッチング速度の分布を均一にするためには、δ/zを或る値より大きくすればよい(換言すると、電極膜37の抵抗Rを或る値より大きくすればよい。)。また、高出力のプラズマ生成用電力が印加される場合、及び高出力のバイアス電力が印加される場合のいずれにおいてもゲート酸化膜の劣化を防止するには、「δ/z」を或る値より大きくすると共に、該「δ/z」を他の或る値より小さくすればよい(換言すると、電極膜37の抵抗Rを或る値より大きくすると共に該抵抗Rを他の或る値より小さくすればよい。)。
【0067】
図4は、δ/zの値が異なる複数の導電性の薄膜を用いた場合の各ウエハの面内におけるフォトレジストのエッチング速度の分布を示すグラフである。
【0068】
図4のグラフは、δ/z(及び抵抗R)の値が異なる複数の導電性の薄膜としての電極膜37を準備し、各電極膜37を用いてプラズマ処理装置10(導電膜45を除いたもの)においてウエハWのフォトレジストにアッシングを施し、各ウエハWの面内におけるフォトレジストのエッチング速度の分布を観測した結果である。
【0069】
図4のグラフでは、電極膜37の抵抗Rから該電極膜37の厚さの影響を取り除くべく、電極膜37の抵抗値を導電性の薄膜の表面抵抗率ρで表した。薄膜の表面抵抗率ρは下記式(8)で表され、単位面積あたりの抵抗値を示し、薄膜を構成する電極材料の物性値(比抵抗ρ)及び該薄膜の厚さで決まる。
ρ=ρ/z (Ω/□) … (8)
ここで用いた薄膜としての各電極膜37のδ/z(及びρ)は、7518(及び8.9×10Ω/□)、6711(及び2.67×10Ω/□)、297(及び1740Ω/□)、195(及び750Ω/□)、124(及び304Ω/□)、103(及び208Ω/□)、92(及び166Ω/□)、85(及び115Ω/□)、並びに47(及び35Ω/□)であった。
【0070】
また、このときのアッシングでは、処理ガスとしてO単ガスを流量100sccmで上部室11a内に導入し、第1の高周波電源28が印加するプラズマ生成用電力の周波数を100MHzに設定し、且つその値を2000Wに設定したが、第2の高周波電源29からはバイアス電力を印加しなかった。
【0071】
図4のグラフでは、横軸がウエハWの中心からの距離であり、縦軸がエッチング速度(nm/分)である。また、破線がδ/z(及び表面抵抗率)=47(及び35Ω/□)の場合に該当し、他の実線がδ/z(及び表面抵抗率)≧85(及び115Ω/□)の場合に該当する。図4のグラフによれば、δ/zを85以上(ρを115Ω/□以上)にすれば、ウエハWの面内におけるエッチング速度の分布をほぼ均一にすることができる。
【0072】
図5は、δ/zの値が異なる複数の導電性の薄膜を用いた場合の各テストウエハにおけるTEGのゲート酸化膜の劣化の程度を示す表である。
【0073】
図5の表は、δ/z(及び抵抗R)の値が異なる複数の導電性の薄膜としての電極膜37を準備し、各電極膜37を用いてプラズマ処理装置10(導電膜45を除いたもの)においてテストウエハにRIE又はアッシングを施し、各テストウエハにおけるTEG(Test Element Group)のゲート酸化膜の劣化を観測した結果である。
【0074】
通常、TEGではアンテナ比が10倍以下に設定され、大きくても100倍以下に設定されるが、ここではTEGのゲート酸化膜の劣化を加速させるために、TEGのアンテナ比が1万(10K)倍に設定されたテストウエハと、TEGのアンテナ比が10万(100K)倍に設定されたテストウエハ(以下、「100Kテストウエハ」という。)とを用いた。また、ゲート酸化膜の劣化の指標としては、テストウエハにおける全ゲート酸化膜の数に対するRIE又はアッシングの前後において劣化度が所定値を越えなかったゲート酸化膜の数の割合(以下、「ゲート酸化膜生存率(%)」という)を用いた。
【0075】
ゲート酸化膜生存率の閾値に関し、下部電極20に誘電体層21を有さず且つプラズマ生成用として比較的低い周波数の高周波電力を用いる通常のプラズマ処理装置において、上記100KテストウエハにRIEを施したときのゲート酸化膜生存率が54%であったことから、該54%を100KテストウエハにRIEを施したときの通常のゲート酸化膜生存率の閾値(以下、「通常閾値」という。)とした。なお、上記通常のプラズマ処理装置では、通常のアンテナ比(約10倍)のTEGを有するテストウエハにRIEを施してもゲート酸化膜の劣化が発生しなかった。また、特殊なデバイスにRIE又はアッシングを施した際に求められる歩留まりは、上記100KテストウエハにRIE又はアッシングを施したときのゲート酸化膜生存率に換算すると65%に該当することから、該65%を100KテストウエハにRIEを施したときの特殊なデバイスにおけるゲート酸化膜生存率の閾値(以下、「特殊デバイス閾値」という。)とした。
【0076】
また、ここで用いた各電極膜37のδ/z(及びρ)は、上述した各ウエハWの面内におけるフォトレジストのエッチング速度の分布を観測したときのδ/z(及びρ)と同じに設定した。
【0077】
高出力のプラズマ生成用電力が印加される場合には、処理ガスとしてO単ガスを流量200sccmで上部室11a内に導入し、プラズマ生成用電力の周波数を100MHzに設定し、且つその値を2400Wに設定すると共に、第2の高周波電源29からはバイアス電力を印加せずに各テストウエハにアッシングを施した。さらに、高出力のバイアス電力が印加される場合(この場合では高出力のプラズマ生成用電力も印加される)には、処理ガスとしてCガス、Arガス及びOガスの混合ガス(流量比:Cガス/Arガス/Oガス=35/200/30sccm)を上部室11a内に導入し、プラズマ生成用電力の周波数を100MHzに設定し、且つその値を500Wに設定すると共に、バイアス電力の周波数を3.2MHzに設定し、且つその値を4000Wに設定して各テストウエハにRIEを施した。なお、図5における「高パワーHF」は 高出力のプラズマ生成用電力が印加される場合に該当し、「高パワーLF」は 高出力のバイアス電力が印加される場合に該当する。
【0078】
また、図5の表では、各試験条件について、劣化度が所定値を越えなかったゲート酸化膜の分布状況を濃淡で示すテストウエハの平面図とゲート酸化膜生存率とが示されている。
【0079】
図5の表によれば、高出力のプラズマ生成用電力が印加される場合(高パワーHFの場合)、δ/zを85以上(ρを115Ω/□以上)にすれば、100Kテストウエハにアッシングを施したときのゲート酸化膜生存率が通常閾値(54%)以上となり、且つ高出力のバイアス電力が印加される場合(高パワーLFの場合)、ρを2.67×10Ω/□以下にすれば、100KテストウエハにRIEを施したときのゲート酸化膜生存率が通常閾値(54%)以上となる。
【0080】
すなわち、通常のアンテナ比を有するデバイスのゲート酸化膜の劣化を防止することを目的として第1の高周波電源28からの高周波電流が電極膜37を流れるのを抑制し、該高周波電流を誘電体層21に向けて深く潜らせて電極膜37を透過する電界を発生させるためにはδ/zを85以上(ρを115Ω/□以上)にすればよい。また、第2の高周波電源29からの高周波電流が主としてウエハWを流れるのを防止するためにはρを2.67×10Ω/□以下にすればよい。
【0081】
また、図5の表によれば、高出力のプラズマ生成用電力が印加される場合(高パワーHFの場合)、δ/zを85以上(ρを115Ω/□以上)にすれば、100Kテストウエハにアッシングを施したときのゲート酸化膜生存率が特殊デバイス閾値(65%)以上となり、且つ高出力のバイアス電力が印加される場合(高パワーLFの場合)、ρを304Ω/□以下にすれば、100KテストウエハにRIEを施したときのゲート酸化膜生存率が特殊デバイス閾値(65%)以上となる。
【0082】
すなわち、特殊なデバイスのゲート酸化膜の劣化を防止することを目的として第1の高周波電源28からの高周波電流が電極膜37を流れるのを抑制し、該高周波電流を誘電体層21に向けて深く潜らせて電極膜37を透過する電界を発生させるためにはδ/zを85以上(ρを115Ω/□以上)にすればよい。また、第2の高周波電源29からの高周波電流が主としてウエハWを流れるのを防止するためにはρを304Ω/□以下にすればよい。
【0083】
ここで、例えば、通常のアンテナ比を有するデバイスのゲート酸化膜の劣化を防止するために、電極膜37のρを115Ω/□以上に設定し、且つそのρを2.67×10Ω/□以下に設定するためには、表面抵抗率が薄膜の膜厚に反比例するため、電極膜37の膜厚の上限及び下限を厳密に管理する必要がある。一方、上述したように、電極膜37には高圧直流電力を印加するための給電ピンを接触させる必要があるため、電極膜37において給電ピンを接触させるための接触構造も厳密に管理する必要がある。
【0084】
したがって、電極膜37を用いてデバイスのゲート酸化膜の劣化を防止する場合、電極膜37において膜厚の上限及び下限だけでなく給電ピンを接触させるための接触構造も厳密に管理する必要がある。その結果、電極膜37の品質管理には多大な困難が伴い、載置台12を容易に製造することができない。
【0085】
ところで、高出力のバイアス電力が印加される場合、デバイスのゲート酸化膜の劣化を防止するためには、第2の高周波電源29からの高周波電流がウエハW以外の電流路を流れればよく、必ずしも該高周波電流を電極膜37へ流す必要はない。本実施の形態は、これに対応して、載置台12において第2の高周波電源29からの高周波電流の電流路を電極膜37とは別に設ける。具体的には、載置台12に電極膜37と電気回路的に並列に配置された電流路として機能する導電膜45を設ける。
【0086】
図6は、図1における載置台の構成を概略的に示す拡大断面図である。
【0087】
図6において、導電膜45は、静電チャック22に静電吸着されたウエハW及び誘電体層21の間に配されている。導電膜45は導電性部材、例えば円板状の金属膜からなり、ウエハW側から誘電体層21を眺めた場合において該誘電体層21を隠すことが可能な大きさを有する。
【0088】
静電チャック22は、セラミックスの焼結材からなる円板状の基材22aと、該基材22aの表面(図中における上面)上に形成された電極膜37と、該電極膜37上に積層されて電極膜37及び基材22aに圧着された、セラミックスの焼結材からなる円板状の上部材22bと、一端が電極膜37と接触し且つ他端が基材22aの裏面(図中における下面)に露出する円筒状の給電ピン46とを備える。静電チャック22において電極膜37は基材22aの裏面と平行になるように配されている。
【0089】
導電膜45は樹脂シート47上に蒸着、例えばCVDによって形成され、該樹脂シート47は静電チャック22における基材22aの裏面に貼着される。これにより、導電膜45は電極膜37と平行に静電チャック22に接合される。
【0090】
導電膜45が接合された静電チャック22は下部電極20の上面に載置され、絶縁性接着剤48により、導電膜45を下部電極20及び静電チャック22の間に挟むように下部電極20に接着される。このとき、給電ピン46の他端は、通電棒49を介して高圧直流電源42に電気的に接続される。これにより、高圧直流電源42は電極膜37に高圧直流電圧を供給することができる。
【0091】
プラズマ処理装置10では、高出力のバイアス電力が印加される場合、図7(A)に示すように導電膜45の存在を考慮すると、電気回路50(図7(B))が成立している。この電気回路50では、誘電体層21が存在する下部電極20の中央部分に対応する回路50aと、下部電極20の周縁部分に対応する回路50bとが存在していると考えられ、回路50aと回路50bとはウエハWの抵抗R、電極膜37の抵抗R及び導電膜45の抵抗Rによってブリッジされる。また、ウエハWが静電チャック22の載置面に載置される際、該ウエハWと電極膜37、導電膜45は互いに平行となるため、抵抗R及び抵抗R、抵抗Rは電気回路的に並行に配置されることとなる。
【0092】
電気回路50において第2の高周波電源29からの高周波電流が主としてウエハWを流れるのを防止するためには、抵抗R又は抵抗Rを抵抗Rよりも小さく設定すればよい。これを図5の表に示す結果を用いて換言すれば、通常のアンテナ比を有するデバイスのゲート酸化膜の劣化を防止することを目的とする場合には、電極膜37又は導電膜45のρを2.67×10Ω/□以下にすればよい。また、特殊なデバイスのゲート酸化膜の劣化を防止することを目的とする場合には、電極膜37又は導電膜45のρを304Ω/□以下にすればよい。
【0093】
ここで、第2の高周波電源29からの高周波電流が主として電極膜37を流れなくても、該高周波電流が主として導電膜45を流れれば、該高周波電流が主としてウエハWを流れるのを防止することができ、デバイスのゲート酸化膜の劣化を防止することができる。そこで、本実施の形態では、導電膜45のρのみを2.67×10Ω/□以下、好ましくは、304Ω/□以下に設定する。これにより、図7(B)において太実線矢印で示すように、第2の高周波電源29からの高周波電流を主として導電膜45(抵抗R)に流すことができる。
【0094】
また、高出力のプラズマ生成用電力が印加される場合、デバイスのゲート酸化膜の劣化を防止することを目的として、第1の高周波電源28からの高周波電流を誘電体層21に向けて深く潜らせるためには、第1の高周波電源28からの高周波電流が電極膜37だけでなく導電膜45を流れるのも抑制する必要がある。
【0095】
ここで、図5の表によれば、高出力のプラズマ生成用電力が印加される際、通常のアンテナ比を有するデバイス及び特殊なデバイスのゲート酸化膜の劣化を防止するためには、電極膜37及び導電膜45のδ/zを85以上(ρを115Ω/□以上)にすればよい。そこで、本実施の形態では、電極膜37だけでなく導電膜45のδ/zも85以上(ρを115Ω/□以上)に設定する。
【0096】
本実施の形態に係る載置台12によれば、条件「δ/z≧85」及び条件「ρ≦2.67×10Ω/□」を満たす導電膜45と、条件「δ/z≧85」を満たす電極膜37を有する静電チャック22とを備える。スキンデプスδが大きいほど電界が電極膜37や導電膜45を透過し易くなるため、第1の高周波電源28からの高周波電流が電極膜37や導電膜45を厚さ方向に透過して誘電体層21に向けて深く潜り易い。したがって、電極膜37や導電膜45が条件「δ/z≧85」を満たせば、高周波電流の大部分は電極膜37や導電膜45を流れることなく電極膜37や導電膜45を厚さ方向に透過して誘電体層21へ向けて深く潜り込むことができる。その結果、下部電極20の中央部分においてTMモードの空洞円筒共振を発生させて処理空間における電界の強度分布を均一にすることができ、ウエハWにおいて直流的な電流の発生を防止することができる。また、導電膜45の表面抵抗率ρが小さいほど該導電膜45に第2の高周波電源29からの高周波電流が流れ易い。したがって、導電膜45が条件「ρ≦2.67×10Ω/□」を満たせば、ウエハWに第2の高周波電源29からの過剰な高周波電流が流れるのを防止することができる。これにより、ウエハW上における通常のアンテナ比を有するデバイスのゲート酸化膜の劣化を防止することができる。
【0097】
また、上述した載置台12によれば、電極膜37や導電膜45は条件「115Ω/□ ≦ρ」を満たす。電極膜37や導電膜45の表面抵抗率ρが大きいほど高周波電流が電極膜37や導電膜45を流れ難くなるため第1の高周波電源28からの高周波電流が電極膜37や導電膜45を厚さ方向に透過して深く潜り易い。したがって、電極膜37や導電膜45が条件「115Ω/□ ≦ρ」を満たせば、第1の高周波電源28からの高周波電流の大部分は電極膜37や導電膜45を厚さ方向に透過して誘電体層21へ向けて深く潜り込むことができる。
【0098】
上述した載置台12において、導電膜45は条件「ρ≦304Ω/□」を満たすように設定されてもよい。導電膜45の表面抵抗率ρが304Ω/□以下であれば、ウエハWに第2の高周波電源29からの過剰な高周波電流が流れるのを確実に防止することができる。これにより、ウエハW上における特殊なデバイスのゲート酸化膜の劣化を防止することができる。
【0099】
さらに、上述した載置台12では、導電膜45のρのみを2.67×10Ω/□以下、好ましくは、304Ω/□以下に設定すればよいので、電極膜37においてρの上限はウエハWの静電吸着力のみを考慮して管理すればよく、その結果、電極膜37の膜厚の管理を簡素化できる。また、導電膜45には高圧直流電源42が接続されないため、該導電膜45において給電ピン46を接触させるための接触構造を設ける必要がない。その結果、電極膜37や導電膜45の品質管理を比較的容易に行うことができ、もって、載置台12を容易に製造することができる。
【0100】
また、上述した載置台12では、ウエハW側から導電膜45を眺めた場合において導電膜45は誘電体層21を隠すので、例えば、高抵抗材であるセラミックからなる誘電体層21がウエハW側から見えない。その結果、第2の高周波電源29からの高周波電流は、誘電体層21の上方においてウエハWではなく導電膜45を積極的に流れ、ウエハWに過剰な高周波電流が流れるのをより確実に防止することができる。
【0101】
上述した載置台12では、導電膜45の表面抵抗率ρと電極膜37の表面抵抗率ρとの大小関係について特に規定していないが、好ましくは、導電膜45の表面抵抗率ρを電極膜37の表面抵抗率ρよりも小さくするのがよい。これにより、第2の高周波電源29からの高周波電流は導電膜45を積極的に流れ、ウエハWに過剰な高周波電流が流れるのをさらに確実に防止することができる。
【0102】
また、上述した載置台12では、下部電極20及び静電チャック22は互いに接着されて結合し、導電膜45は下部電極20及び静電チャック22の間に挟まれるので、下部電極20及び静電チャック22の接着前に導電膜45の表面抵抗率を測定することができ、載置台12の製造後における導電膜45の実際の表面抵抗率の範囲を保証することができる。
【0103】
さらに、上述した載置台12では、導電膜45は樹脂シート47上に形成され、該樹脂シート47は静電チャック22における基材22aの裏面に貼着されるので、載置台12に導電膜45を容易に付設することができる。なお、上記樹脂シート47は下部電極20の上面、特に誘電体層21の上面に貼着されてもよい。
【0104】
また、上述した載置台12では、導電膜45は蒸着によって形成されるので、膜厚が均一な導電膜45を容易に得ることができ、もって、導電膜45のρの管理を容易に行うことができる。
【0105】
上述した載置台12では、導電膜45を静電チャック22及び下部電極20の間に挟み込んだが、導電膜45は第2の高周波電源29からの高周波電流の電流路として機能しさえすれば、導電膜45の配置場所を制限する必要はなく、導電膜45は少なくとも静電チャック22に静電吸着されたウエハW及び誘電体層21の間に配されていればよい。
【0106】
また、上述した載置台12では、導電膜45が樹脂シート47を介して静電チャック22に貼着されたが、導電膜45の載置台12への付設方法はこれに限られない。
【0107】
例えば、図8(A)に示すように、導電膜45を蒸着によって基材22aの裏面に直接形成してもよい。これにより、下部電極20及び静電チャック22を互いに接着するだけで載置台12に導電膜45を付設することができ、もって、載置台12をより容易に製造することができる。なお、導電膜45を蒸着によって下部電極20の上面、特に、誘電体層21の上面に形成してもよい。
【0108】
また、下部電極20及び静電チャック22を接着する前に、下部電極20の上面に絶縁性接着剤48を塗布し、該塗布された絶縁性接着剤48の上に、予め形成された薄膜状の導電膜45を載置し、該導電膜45の上にさらに絶縁性接着剤48を塗布した上で、該絶縁性接着剤48によって下部電極20及び静電チャック22を接着してもよい。これにより、導電膜45は絶縁性接着剤48中に浮遊し(図8(B))、剛体である静電チャック22や下部電極20と接触することがないため、導電膜45が破れる等のトラブルを防ぐことができる。
【0109】
さらに、図8(C)に示すように、導電膜45を付設する代わりに、所定の透磁率や比抵抗を有する接着剤からなる接着剤層51を用いて下部電極20及び静電チャック22を接着してもよい。このとき、接着剤層51の厚さ及び表面抵抗率は、該接着剤層51が条件「δ/z≧85」及び条件「ρ≦2.67×10Ω/□」を満たすように調整・管理される。これにより、第1の高周波電源28からの高周波電流の大部分を接着剤層51に流すことなく該接着剤層51を厚さ方向に透過させて誘電体層21へ向けて深く潜り込ませることができるとともに、該接着剤層51へ第2の高周波電源29からの高周波電流を積極的に流すことができる。
【0110】
また、図8(D)に示すように、基材22aを焼結する際に導電膜45を該基材22aに内蔵させてもよい。これにより、載置台12に導電膜45を確実に付設することができ、載置台12をより容易に製造することができる。
【0111】
なお、上述した本実施の形態では、RIEやアッシングが施される基板が半導体ウエハであったが、RIEやアッシングが施される基板はこれに限られず、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)等を含むFPD(Flat Panel Display)用のガラス基板であってもよい。
【符号の説明】
【0112】
W ウエハ
10 プラズマ処理装置
11 チャンバ
12 載置台
20 下部電極
21 誘電体層
22 静電チャック
22a 基材
28 第1の高周波電源
29 第2の高周波電源
37 電極膜
42 高圧直流電源
43,44,50 電気回路
45 導電膜
46 給電ピン
47 樹脂シート
48 絶縁性接着剤
51 接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が載置されるプラズマ処理装置用の載置台であって、
プラズマ生成用の高周波電源及びイオン引き込み用の高周波電源に接続される導電体部材と、
該導電体部材の上面中央部分において埋設される誘電体層と、
該誘電体層の上に載置される静電チャックと、
前記基板及び前記誘電体層の間に配される導電膜とを備え、
前記静電チャックは高圧直流電源に接続される電極膜を有し、
前記導電膜は下記式(1)に示す条件を満たし、前記電極膜は下記式(2)に示す条件を満たすことを特徴とする載置台。
δ/z ≧ 85 且つ ρs1 ≦ 2.67×10Ω/□ … (1)
但し、δ=(ρv1/(μπf))1/2
但し、z:前記導電膜の厚さ、δ:前記プラズマ生成用の高周波電源から印加される高周波電力に対する前記導電膜のスキンデプス、f:前記プラズマ生成用の高周波電源から印加される高周波電力の周波数、π:円周率、μ:前記導電膜の透磁率、ρv1:前記導電膜の比抵抗、ρs1:前記導電膜の表面抵抗率
δ/z ≧ 85 … (2)
但し、δ=(ρv2/(μπf))1/2
但し、z:前記電極膜の厚さ、δ:前記プラズマ生成用の高周波電源から印加される高周波電力に対する前記電極膜のスキンデプス、μ:前記電極膜の透磁率、ρv2:前記電極膜の比抵抗
【請求項2】
基板が載置されるプラズマ処理装置用の載置台であって、
プラズマ生成用の高周波電源及びイオン引き込み用の高周波電源に接続される導電体部材と、
該導電体部材の上面中央部分において埋設される誘電体層と、
該誘電体層の上に載置される静電チャックと、
前記基板及び前記誘電体層の間に配される導電膜とを備え、
前記静電チャックは高圧直流電源に接続される電極膜を有し、
前記導電膜は下記式(3)に示す条件を満たし、前記電極膜は下記式(4)に示す条件を満たすことを特徴とする載置台。
115Ω/□ ≦ ρs1 ≦ 2.67×10Ω/□ … (3)
但し、ρs1:前記導電膜の表面抵抗率
115Ω/□ ≦ ρs2 … (4)
但し、ρs2:前記電極膜の表面抵抗率
【請求項3】
前記導電膜の表面抵抗率ρs1が304Ω/□以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のプラズマ処理装置用の載置台。
【請求項4】
前記基板側から前記導電膜を眺めた場合において該導電膜は前記誘電体層を隠すことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置用の載置台。
【請求項5】
前記導電膜の表面抵抗率ρs1が前記電極膜の表面抵抗率ρs2よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置用の載置台。
【請求項6】
前記導電体部材及び前記静電チャックは互いに接着されて結合し、前記導電膜は前記導電体部材及び前記静電チャックの間に挟まれることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置用の載置台。
【請求項7】
前記導電膜は樹脂からなるシート上に形成され、該シートは前記導電体部材又は前記静電チャックの表面に貼着されることを特徴とする請求項6記載のプラズマ処理装置用の載置台。
【請求項8】
前記導電膜は前記導電体部材又は前記静電チャックの表面に形成されることを特徴とする請求項6記載のプラズマ処理装置用の載置台。
【請求項9】
前記導電膜は蒸着によって形成されることを特徴とする請求項7又は8記載のプラズマ処理装置用の載置台。
【請求項10】
前記導電膜は前記静電チャックに内蔵されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置用の載置台。
【請求項11】
基板が載置される載置台を備え、
前記載置台は、プラズマ生成用の高周波電源及びイオン引き込み用の高周波電源に接続される導電体部材と、該導電体部材の上面中央部分において埋設される誘電体層と、該誘電体層の上に載置される静電チャックと、前記基板及び前記誘電体層の間に配される導電膜とを有するプラズマ処理装置であって、
前記静電チャックは高圧直流電源に接続される電極膜を有し、
前記導電膜は下記式(1)に示す条件を満たし、前記電極膜は下記式(2)に示す条件を満たすことを特徴とするプラズマ処理装置。
δ/z ≧ 85 且つ ρs1 ≦ 2.67×10Ω/□ … (1)
但し、δ=(ρv1/(μπf))1/2
但し、z:前記導電膜の厚さ、δ:前記プラズマ生成用の高周波電源から印加される高周波電力に対する前記導電膜のスキンデプス、f:前記プラズマ生成用の高周波電源から印加される高周波電力の周波数、π:円周率、μ:前記導電膜の透磁率、ρv1:前記導電膜の比抵抗、ρs1:前記導電膜の表面抵抗率
δ/z ≧ 85 … (2)
但し、δ=(ρv2/(μπf))1/2
但し、z:前記電極膜の厚さ、δ:前記プラズマ生成用の高周波電源から印加される高周波電力に対する前記電極膜のスキンデプス、μ:前記電極膜の透磁率、ρv2:前記電極膜の比抵抗
【請求項12】
基板が載置される載置台を備え、
前記載置台は、プラズマ生成用の高周波電源及びイオン引き込み用の高周波電源に接続される導電体部材と、該導電体部材の上面中央部分において埋設される誘電体層と、該誘電体層の上に載置される静電チャックと、前記基板及び前記誘電体層の間に配される導電膜とを有するプラズマ処理装置であって、
前記静電チャックは高圧直流電源に接続される電極膜を有し、
前記導電膜は下記式(3)に示す条件を満たし、前記電極膜は下記式(4)に示す条件を満たすことを特徴とするプラズマ処理装置。
115Ω/□ ≦ ρs1 ≦ 2.67×10Ω/□ … (3)
但し、ρs1:前記導電膜の表面抵抗率
115Ω/□ ≦ ρs2 … (4)
但し、ρs2:前記電極膜の表面抵抗率

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−161109(P2010−161109A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−857(P2009−857)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】