説明

近赤外線吸収性能の面分布測定方法、及び近赤外線吸収フィルタの製造方法

【課題】近赤外線吸収性能の面均一性を容易に測定できる、近赤外線吸収性能の面分布測定方法と、この測定方法を利用した近赤外線吸収フィルタの製造方法を提供する。
【解決手段】透明基材シート2上に近赤外線は吸収し且つ可視光は吸収しない近赤外線吸収層3を積層した帯状の近赤外線吸収フィルタ1に対して、搬送させながら、その幅方向TD及び流れ方向MDに亘る所定領域面A毎に、近赤外線光源5からの透過光の面分布を、近赤外線領域に感度を有する二次元イメージセンサ5による二次元画像として撮影し、画像処理装置7で画像処理して、その輝度分布から近赤外線吸収性能の面分布を測定し、ディスプレイ8に表示する。更に、判定基準に従い面分布の不良品と良品とをマーキング等で識別できる様にすると良い。この方法を用いて、近赤外線吸収フィルタを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線吸収性能の面分布の測定方法に関する。特に、プラズマディスプレイなど広い面積のディスプレイの前面に配置する近赤外線吸収フィルタについて、近赤外線吸収性能の面均一性が良い製品を製造するのに適した近赤外線吸収性能の面分布測定方法、とそれを用いた近赤外線吸収フィルタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、例えばプラズマディスプレイパネル(以後PDPとも言う)等のディスプレイの前面(観察者側面)には、ディスプレイから放出される近赤外線によるリモートコントローラの誤動作を防ぐ為に、近赤外線吸収フィルタを具備する光学フィルタが配置されている。この様な、近赤外線吸収フィルタは、近赤外線吸収能を有する色素を樹脂バインダ中に分散した近赤外線吸収層を、樹脂シートなどの透明基材シート上に塗工形成したものが用いられている(特許文献1)。
【0003】
また、ディスプレイの画面サイズが大型化してく昨今、広い面積に亘って、均一な近赤外線吸収性能を維持するには、高度な塗工技術が必要である。
そこで、前記特許文献1では、図4の斜視図で示す様に、帯状シートの状態の近赤外線吸収フィルタ20に対して、所定のシート幅方向TDの位置で流れ方向MDに約10m毎の測定点Sで、近赤外線吸収性能に代えて透過する可視光の測定を行うことで、近赤外線吸収性能の面均一性を測定している。すなわち、近赤外線吸収層中には、可視光線領域にも吸収を有する色素、具体的にはネオン光を吸収するネオンカット色素をも近赤外線吸収色素と共に添加しておく。そして、このネオンカット色素に基づく可視光線領域での色差計での測定から、色の濃淡を色空Labでの色差ΔEについて算出して、色差ΔEの最大値が2.0以下のものを良品として選ぶものである。
また、特許文献1では、シート幅方向についても、少なくとも5箇所の測定点Sで測定を行い幅方向でも所定の色差ΔEに収めることを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−189642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1による測定方法は、帯状シートの形態の近赤外線吸収フィルタに対して、色差は流れ方向で、始めから終わりまでの全長さについてのLabの平均値を求めて、この平均値に対する色の差として評価しており、多数の点を測定する必要がある。このため、近赤外線吸収性能の面内分布の把握に、多大な時間、労力を要することになる。しかも、上記Labの平均値は帯状シートの全長さに亘って測定が終了しないと算出できず、色差ΔEの良否も全長さに亘って測定が終了しないと確定しない。
また、可視光域でのLabの色差分布を求める方法であり、該色差の面内バラツキと、近赤外線吸収性能の面内バラツキとの一対一の対応関係が成立することを前提とする測定方法である。したがって、可視光域での吸収がある着色色素を添加しない近赤外線吸収層に対しては、適用できない。
【0006】
また、特許文献1による測定方法は、近赤外線吸収性能の面均一性に対して、幅方向も測定することで一応可能ではあるが、互いに離れた複数の測定点Sに基づく離散的な測定である。このため、近赤外線吸収性能の面内ムラの多用なパターン形態の把握が困難であり、例えば測定点P同士の間に生じた針穴状の欠点に代表される局部的な近赤外線吸収性能の欠点を見つけることが出来ず見逃す可能性がある。
【0007】
すなわち、本発明の課題は、近赤外線吸収性能の面均一性を容易に、しかも高い面内分解能で測定できる、近赤外線吸収性能の面分布測定方法と、この測定方法を利用した近赤外線吸収フィルタの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明では、次の様な構成の、近赤外線吸収性能の面分布測定方法と近赤外線吸収フィルタの製造方法とした。
(1)透明基材シート上に、近赤外線は吸収し且つ可視光は吸収しない近赤外線吸収層を積層した、帯状シート形態の近赤外線吸収フィルタに対して、その幅方向及び流れ方向に亘る所定領域面毎に、該近赤外線吸収フィルタを透過させた近赤外線の面分布を、近赤外線領域に感度を有する二次元イメージセンサによる二次元画像として撮影し、撮影された二次元画像の輝度分布から前記所定領域面の近赤外線吸収性能の面分布を測定する、近赤外線吸収性能の面分布測定方法。
(2)透明基材シート上に、近赤外線は吸収し且つ可視光線は吸収しない近赤外線吸収層を積層する近赤外線フィルタ製造工程、及び上記(1)の近赤外線吸収性能の面分布測定方法を利用して測定した近赤外線吸収性能の面分布を、良否の判定基準に従って良否を判定して、面分布の不良品と良品とを識別する工程とからなる、近赤外線吸収フィルタの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、目視乃至は色差では測定不可能な、無着色透明な近赤外線吸収フィルタに於いても、近赤外線吸収性能の面分布を測定できる。
しかも、近赤外線吸収性能の面分布が、離散的スポット的に散在する測定点の集合としてではなく、二次元画像として連続的な面パターンで把握できる。この為、近赤外線吸収性能の面分布を、そのムラ(面ムラ)のパターン形態として詳細が把握できる。したがって、パターン形態毎の多様な対応、原因究明も可能となり、品質向上が行い易い。
また、面分布を二次元イメージセンサによる二次元画像として所定領域面単位で測定するために短時間で測定でき、得られた二次元画像を見て直感的に即座に面ムラの有無など面分布の良否を把握できる上、離散的な測定でないので、微小な欠点も見逃さずに把握できる。
また、帯状シートの形態の近赤外線吸収フィルタを走行させながら、流れ方向に連続的に近赤外線吸収性能の面分布を測定し検査できる。この為、生産性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による近赤外線吸収フィルタの面分布の測定方法と製造方法とを概念的に説明する説明面であり、図中、(A)は斜視図、(B)は同フィルタの断面図の一形態を例示する断面図。
【図2】近赤外線光源の一形態例を示す平面図。
【図3】近赤外線吸収フィルタの別の一形態(他の機能層あり)を例示する断面図。
【図4】従来の近赤外線吸収フィルタの離散的測定方法を概念的に説明する斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の1形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
《A.近赤外線吸収性能の面分布測定方法》
本発明による、近赤外線吸収性能の面分布測定方法について、先ず図1を参照して説明する。
【0013】
〔面分布測定〕
本発明では、図1で示す様に、近赤外線吸収フィルタ1を枚葉シートに切断する前の帯状シートの形態で、近世外線吸収性能の面分布を測定する。それも、該帯状シートの形態の近赤外線吸収フィルタ1を搬送させながら測定する。本発明では、測定は測定領域面A1,A2,A3毎に搬送を一時停止させて間欠送りにして行っても良いが、搬送を一時停止させずに連続的に測定領域面を撮影(測定)するのが、生産性の点で好ましい。したがって、測定は、近赤外線吸収フィルタ1に対してロール・ツー・ロール方式で行うことが可能である。
なお、「ロール・ツー・ロール方式」とは、被加工材をロールから巻き出した帯状の形態として供給し、適宜の加工・操作を施した後、ロールに巻き取る加工形態のことをいう。
【0014】
図1(A)では、ロール・ツー・ロール方式で近赤外線吸収フィルタ1はロールR1から巻き出して図面左から右に向かって搬送して面分布を測定する例である。測定対象の近赤外線吸収フィルタ1は、図1(B)の断面図で例示する様に、少なくとも、透明基材シート2上に近赤外線吸収層3が積層された構成のフィルタである。また、本実施形態に於いては、この近赤外線吸収層3は、樹脂中に近赤外線吸収色素は含有するが可視光を吸収する着色色素は含有しない層から構成されている。従って、近赤外線吸収層3は、近赤外線吸収色素が可視光領域に吸収がなければ、肉眼では無色透明に見える層となる。この為、先に説明した特許文献1の測定方法の様に、可視光領域での色変化では近赤外線吸収性能を測定できない近赤外線吸収層3である。
【0015】
そして、ロールR1から巻き出された帯状の近赤外線吸収フィルタ1は、本実施形態に於いては、停止させる事なく走行させながら連続的に二次元イメージセンサ4で所定領域面Aを順次撮影していくことで、近赤外線吸収性能の面分布を測定していく。
図1では、所定領域面Aは、流れ方向MDに対して、所定領域面A1、所定領域面A2、所定領域面A3を順次撮影し測定することを示している。これら所定領域面A(個別の所定領域面を特に言う場合以外は添え字1、2、3は省略する)は、近赤外線吸収フィルタ1の流れ方向MD及びシート幅方向TDに亘った二次元面であり、この所定領域面Aを撮影する二次元イメージセンサ4の解像度に応じた細かさで、面分布が測定できることになる。
【0016】
なお、所定領域面Aは、図1では、近赤外線吸収フィルタ1のシート幅方向TDの全幅に亘って測定する様にしている。しかし、シート幅方向TDの両側の各両端から所定の幅(例えば10〜100mm)部分は、近赤外線吸収層3の非形成部が存在することがあり得る為、或いは枚葉シートに切断後は吸収フィルタとして使用しない部分である等の為、所定領域面Aの域外としても良い。
また、所定領域面Aは、図1では、近赤外線吸収フィルタ1のシート流れ方向MDに亘って、隣接する所定領域面同士、例えば、所定領域面A1と所定領域面A2とは重複せず、また、間隔を空けることなく測定する例である。しかし、流れ方向MDでの所定領域面Aの外縁部分から所定幅は重複させる様にして測定しても良い。なお、重複させる長さは任意であり、例えば5〜100mm程度とする。
【0017】
また、所定領域面Aは、後述する様に、実際に二次元イメージセンサ4で画像として撮影する範囲の撮影領域面ではなく、面分布の測定単位とする測定領域面を意味する。撮影領域面が測定領域面と同じときに限って、つまり撮影領域面の全てを面分布の測定領域面として測定するときに、所定領域面Aは撮影領域面と同じとなる。
また、所定領域面Aは、近赤外線吸収フィルタをディスプレイに適用時は、適用するディスプレイの前面に配置する時の枚葉シート状態の近赤外線吸収フィルタの形状及び大きさに対応したものであり、少なくとも該ディスプレイ画面の形状及び大きさに対応したものである。なお、前記の如く、流れ方向MDで重複させる場合は、所定領域面Aは重複分だけ拡張された大きさとしてもよい。
また、流れ方向MDで隣接する所定領域面Aは、間隔を空けても良い。これは、例えば、枚葉シート化した近赤外線吸収フィルタ1の四方全周囲の額縁状の枠部分は、ディスプレイ等の適用面に対して近赤外線吸収性能を必要とせず、必要される中央部のみに対応して測定する場合等である。
【0018】
[二次元イメージセンサ]
二次元イメージセンサ4としては、近赤外線領域に感度を有するものであれば、特に制限はなく、既存の市販品を用いることもできる。この場合、可視光領域にも感度を有するものでも良い。可視光領域に感度を有するものを利用する場合は、(可視光カット)近赤外線透過フィルタを併用して、不要な可視光線は二次元イメージセンサ4に到達しない様にすると良い。
この様な、近赤外線領域に感度を有する二次元イメージセンサ4の市販品を挙げれば、例えば、ソニー株式会社から撮像素子にCCDを用いた白黒カメラモジュールXC−EI50等のXC−EIシリーズが市販されている。例えば、XC−EI50では400nmの可視光領域から少なくとも1000nmの近赤外線領域まで感度を持ち、このうち780nm以下の可視光をカットする近赤外線透過フィルタを併用することで、可視光線は除外して近赤外線での撮影が可能となる。
【0019】
なお、この様な可視光カット近赤外線透過フィルタとしては、各社フィルタメーカ等から市販されている市販品を用いることができる。例えば、日進電子工業株式会社製のIR−80では、透過限界波長800nmで770nmでは5%の透過率(95%のカット率)の性能である。また、IR−85では、透過限界波長850nmで802nmでは5%の透過率(95%のカット率)の性能である。
【0020】
ところで、所定領域面Aに対する面分布測定の解像度は、測定に使用する二次元イメージセンサ4の解像度以下となる。例えば上記CCD方式のカメラモジュールXC−EI50では、映像出力画素数が水平方向752画素、垂直方向485画素で約38万画素の解像度となる。これを、1画素で縦横1mm四方の面を受け持てば、一撮影分で所定領域面Aの寸法としては752mm×485mmが可能である。また、1画素で縦横2mm四方の面を受け持てば、一撮影分でこの倍の1504mm×970mmの面分布の測定が可能となる。従って、充分に大面積の近赤外線吸収性能の面分布を充分に細かい解像度で測定できる。
【0021】
また、面分布を測定する測定領域面Aは、近赤外線吸収フィルタ1を適用するのが、ワイド画面のテレビ用途のディスプレイであれば、16:9(横:縦)の寸法比の領域面単位で測定するのが実用的である。一方、測定に使用する二次元イメージセンサ4の解像度乃至は縦横比は、前記具体例のカメラモジュールの様に、必ずしも、求める面分布の領域面とはその縦横比が相似形であるとは言えない。この為、二次元イメージセンサ4で一画面分として撮影する対象の撮影領域面は、二次元イメージセンサ4の解像度に応じた縦横比として、この撮影領域面を撮影した撮影画像の中から面分布の測定単位の測定領域面、つまり所定領域面Aに対応した部分についてのみ面分布を測定する。
なお、所定領域面Aの形状及び寸法は、適用するディスプレイ画面サイズとは無関係のものとしても良い(例えば、適用対象の形状及び大きさが未確定の状態のとき等)。
【0022】
また、走行している帯状の近赤外線吸収フィルタ1に対して連続的に所定領域面Aを撮影し面分布を測定していく為には、相応のタイミングで撮影して行くことが必要である。例えば、帯状の近赤外線吸収フィルタ1を、30m/minの速度で搬送する場合、その1秒間の移動距離は500mmである。つまり、1mmを1/500秒で移動し、0.1mmを1/5000秒で移動する。従って、例えば、1/5000秒のシャッター速度で撮影した場合は、縦横1mm×1mmの正方形の面を1画素分に対応する測定単位面として撮影した場合、流れ方向MDにおいては、これに0.1mm足した1.1mm×1mmのやや長方形がかった測定単位面を(1mm×1mmの測定単位面として)実際には測定していることになる。しかし、この程度(長さ及び面積共に10%)の測定単位面の誤差は、従来の離散的な測定方法からすれば、面分布の測定方法として充分な面密度で測定できると言える。
【0023】
ちなみに、前記したXC−EI50では1/10000秒での高速シャッターも可能である。また、測定単位面の大きさを縦横2倍にした2mm×2mmの正方形とすれば、上記測定単位面の誤差は1/2となる。また、前記で言えば、1/500秒のシャッター速度で撮影して、流れ方向は2mmの平均値で測定して、2mm×1mmの長方形の測定単位面を1画素分として測定しても良い。
【0024】
以上の様にして、所定領域面A1、所定領域面A2、所定領域面A3と順番に測定していくが、撮影のタイミング、つまりシャッターを切るタイミングは、当然に、帯状シートの近赤外線吸収フィルタ1の移動速度に連動したものとする。連動は、移動速度一定であれば、予め設定した時間間隔で撮影する様にしても良い。例えば、30m/minの速度で搬送する場合、その1秒間の移動距離は500mmであっだか、所定領域面Aの流れ方向MDでの大きさも500mmとして測定するならば、1秒間隔で撮影することになる。或いは、例えば前記XC−EI50では、シャッターを任意のトリガで切って撮影することが可能であるので、近赤外線吸収フィルタ1の搬送装置の移動速度に連動してトリガを二次元イメージセンサ4に送れば、搬送中での移動速度の変化に対応して撮影タイミングを任意に可変できる。
【0025】
[近赤外線光源]
ところで、二次元イメージセンサ4で近赤外線の面分布を測定するには、近赤外線吸収フィルタ1の撮影側とは反対側に近赤外線光源5を配置しておくことが必要である。この近赤外線光源5としては、測定に必要な近赤外線領域の光線を放射できるものであれば、白熱電球、赤外線LEDなど特に制限はなく、より好ましくは面光源として利用できるものが良い。例えば、PDP前面フィルタとして用いる近赤外線吸収フィルタの場合、該フィルタが遮断すべき近赤外線スペクトル帯域は、PDPから輻射されると共にリモートコントローラに使用されている近赤外線帯域である800〜1100nmの範囲内と言われている。従って、この範囲の近赤外線を放射できる光源であれば良い。また、リモートコントローラでは近赤外線放出源として使用されているのはLED(発光ダイオード)素子である様に、測定用の近赤外線光源の光源としてもLED素子を用いることができる。但し、リモートコントローラから放出された近赤外線を検知する製品毎の検知部の受光感度分布も勘案して、ある程度の広がりを持った近赤外線を放射できるものであることが、より好ましい。この様な観点から、LED素子を用いる場合には、ピーク発光波長が異なる発光素子を複数併用して測定用の近赤外線光源として求められる波長帯域全域をカバーすることが好ましい。
【0026】
ここで、図2は、LEDなどで発光波長のスペクトル帯域が互いに異なる複数の発光素子6a、発光素子6bを用いた近赤外線光源5を例示する平面図である。発光素子6aと発光素子6bとは互い違いに千鳥格子状に配置した例でもある。
例えば、発光素子6aには、ピーク発光波長850nmの赤外LEDを用い、発光素子6bにはピーク発光波長950nmの赤外LEDを用いると良い。
なお、赤外線LEDなどの点光源の発光素子を面配置する間隔は、希望の発光輝度(乃至強度)の面均一性が得られるものとすればよい。図6に例示した近赤外線光源5は二種類の発光素子6aと発光素子6bとを千鳥格子状に配置した部分拡大図である。
また、LED素子等の本質的に点光源からの発光強度の面均一性を向上させる為に、光拡散板を発光素子上に配置して光拡散板を透過した光を近赤外線光源5の放射光とするのが好ましい。光拡散板としては、透過型LEDディスプレイでバックライト光源の構成部品として使用されている、公知の光拡散板(光拡散シート)を使用することができる。
【0027】
また、光拡散板を用いる等しても面光源としての近赤外線光源5の放射光輝度乃至強度の面均一性が、近赤外線吸収性能の面均一性の測定の支障を来たすような場合は、近赤外線光源5の面均一性を予めキャリブレーション(較正)しておくと良い。
また、近赤外線光源5の持つ分光スペクトル強度及び/又は二次元イメージセンサ4の分光感度が測定対象波長帯域内で波長依存性を持つ場合、二次元イメージセンサ4の出力画像から、測定対象波長帯域の全域に亙たる、近赤外線吸収フィルタの分光透過率の値を定量的に検知することが出来ない。
この場合も、近赤外線光源5の分光スペクトル強度及び二次元イメージセンサ4の分光感度の総合特性をキャリブレーションし、これらの依存性を相殺しておけば良い。
【0028】
[面分布の算出と表示]
以上の様にして撮影された所定領域面Aに対する二次元画像は、近赤外線吸収フィルタを透過した近赤外線の面内輝度分布からなる画像を可視光線輝度の面内輝度分布からなる画像に変換したものである。よって、該二次元画像に於いて輝度が高い部分(白っぽい部分)が近赤外線の透過率が高い部分であり、輝度が小さい部分(黒っぽい部分)が近赤外線の透過率が小さい部分に該当する。撮影した二次元画像は、コンピュータを用いた画像処理装置7に取り込み、撮影画像が所定領域面Aより大きい場合は所定領域面Aに対応する画像部分を抜き出して、所定領域面Aに対応した二次元画像を、モニターディスプレイ8に表示する。測定と同時に即座にモニターディスプレイ8に表示すれば、ほぼリアルタイムで近赤外線吸収性能の面分布をオペレータが目視で確認できる。また、所定領域面A毎の撮影画像を画像処理装置7に記憶させてもよい。
【0029】
[面分布の良否判定]
近赤外線吸収性能の面分布の測定方法としては、該面分布の測定結果の表示や記録のみでも良い。但し、通常は、該測定結果に基づいて、面分布の良否判定を装置によって自動判定するのが実用的である。つまり、装置的には、二次元イメージセンサ4、近赤外線光源5、画像処理装置7、モニターディスプレイ8を備える測定装置に、更に判定手段を付加された装置を用いるか、測定装置の測定データを受けて良否判定する判定装置を別途追加する。
【0030】
そして、画像処理装置7で測定した所定領域面Aに対する二次元画像の輝度の面分布を、設定した判定基準に従って、判定基準を超えた分布、つまり輝度のバラツキが判定基準で定義された許容値を超えた場合は不良、許容値以内の分布である場合は良品と、判定する。
判定結果はモニターディスプレイ8に表示しても良く、また所定領域面A毎にその属性情報として記憶させても良い。モニターディスプレイ8での表示は、撮影した元々の画像は白黒画像であるが、例えば、画面の全体又は一部を、良品の場合は緑表示、不良の場合は赤表示等とカラー表示すると判り易い。
また、その際、所定領域面A単位で良否表示をする以外に、所定領域面Aの面内の各点に於いて透過した近赤外線の輝度の大小(透過率の大小)に応じた色で、カラー表示するのも分かり易い。例えば、針穴状に透過率が大きく輝度が大きい部分のみ、或いはそれを含む任意の広い領域を赤色表示する、赤枠で囲う等である。また、輝度に応じて、輝度(透過率)の小さい部分から、大きい部分にかけて、複数段階で、順に青、緑、黄色、赤など多色カラー表示で近赤外線輝度の面分布を等高線の様に表示する、所謂擬似着色をしてより判り易くしても良い。
【0031】
良否の判定基準は、要求仕様に応じたものとすれば良い。例えば、近赤外線吸収フィルタについて、近赤外線吸収率の面内均一性を判定する場合は、面分布が透過率(%)で最大値と最小値の差が所定%以下であるか否か、或いは、面分布が透過率(%)で所定領域面A内での平均値に対してプラスマイナスで所定%以下であるか否か等である。測定で得られた(所定測定波長帯域内に於ける)透過率の最大値と最小値の差等の値が、予め設定された最大許容値を超えた場合に不良と判定し、最大許容値以下の場合に良と判定する。
或いは、通常、PDP前面フィルタで問題にされるように、近赤外線吸収フィルタを透過した近赤外線の輝度を所定値以下に制御する場合は、透過率(%)そのものが、所定%以下であるか否か(この場合は、面分布が均一であっても、透過率そのものが大きければ不良と判定されることもあり得る)等である。この場合は、予め設定された(所定測定波長帯域内に於ける)透過近赤外線の最大許容輝度を超える不良領域を、赤等の特定の色で表示すると、効率的に不良領域の存在、その位置、その形状と面積等の情報を得ることが出来る。不良領域を有する場合を不良、不良領域のない場合を良と判定する。
なお、この様な判定基準及びこれに基づく自動判定は、判定機能を付加された測定装置、乃至は判定装置のコンピュータのプログラムに対して、設定した判定基準及び判定方法を実行することが行うことができる。
【0032】
また、判定結果は、測定した所定領域面A1,A2,A3等の各所定領域面A毎に、良品と不良品とが判る様にすると良い。その為には、例えば、測定後、近赤外線吸収フィルタ1を所定領域面Aを含む面毎に、枚葉シートに切断する場合は、切断後の枚葉シートで不良品のものは排除して、良品の枚葉シートのみを保存することで、良品と不良品とは直ちに分離することができる。
或いは、測定後の近赤外線吸収フィルタ1に対して属性情報として所定領域面Aに対して付加する。例えば、測定後、近赤外線吸収フィルタを帯状シートのまま、図1に例示の様にロールR2に巻き取る場合は、帯状シートの測定開始点から測った長さや、測定開始してから数えた所定領域面Aが何番目か等を番地として、不良品の所定領域面Aが何番地に存在するかの製品データを作製しておくと良い。或いは、帯状シート状の近赤外線吸収フィルタ1の所定の位置座標(通常は、ロールR2の巻き出し部先端の位置を0とする)で不良領域の位置を記録しておいても良い。或いはまた、帯状シート自体にレーザマーカなどのマーカーで不良とした所定領域面Aの部分にマーキングしておいても良い。
以上のように、近赤外線吸収性能の面分布の測定定結果を基にして、更に面分布の良否判定を装置によって自動判定する形態を採用する場合は、該良否判定結果を基づき、確実に近赤外線性能の不良品を排除出来る。又、上記した様な不良の形態(近赤外線透過率の値、近赤外線透過率不良領域の近赤外線吸収フィルタ内に於ける位置座標、該不良領域の形状及び面積等)を解析することによって、近赤外線吸収性能の不良の原因究明と改善対策の立案、更には該不良率の低減に役立てることが出来る。
【0033】
この様に、近赤外線吸収性能の面分布を、帯状シートの形態の近赤外線吸収フィルタ1を、空間的に離散的ではなく、連続的な二次元分布として測定出来る。この為、点状欠点でも見落としなく検知出来る。しかも時間的にも、連続的に走行させながら離散的でなくリアルタイムで測定でき、しかも、ロール・ツー・ロール方式での測定もできるので、間欠測定による生産性低下もなく、生産性に優れた方法となる。
【0034】
〔近赤外線吸収フィルタ〕
次に、測定対処となる近赤外線吸収フィルタ1について説明する。
【0035】
近赤外線吸収フィルタ1は、図1(B)の断面図で例示した様に、少なくとも、透明基材シート2上に近赤外線吸収層3が積層された構成であるが、さらにその他の層、例えば、電磁波遮蔽層、ハードコート層等の各種機能層を含んでいても良い。この様な近赤外線吸収フィルタ1としては、公知のものを測定対象とすることができる。但し、本発明が最も効果的且つその利点が活きるのは、近赤外線吸収層3が着色色素を含んでいないものである。例えば、肉眼では無色透明に見える近赤外線吸収層乃至は近赤外線吸収フィルタである。
【0036】
[透明基材シート]
透明基材シート2は、帯状の透明な樹脂シート(乃至フィルム)を使用できる。該樹脂シートの樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、或いは、シクロオレフィン重合体などのポリオレフィン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂等である。なかでも、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは好適な材料である。なお、透明基材シート2の厚みは、取扱性、コスト等の点で通常は12〜5000μm、好ましくは25〜200μmだが、特に制限はない。
なお、用語としての「シート」は、「フィルム」に対しては一般により厚い物を、又板に対しては、一般により薄い物を意味することがあるが、本発明では単に呼称上の違いのみであり、その意味の区別は特にない。
【0037】
[近赤外線吸収層]
近赤外線吸収層3は、一般には、近赤外線の所定の波長帯域をを吸収するする層であれば特に制約はなく、後述の如き樹脂中に近赤外線吸収色素を含有する層、銀等の金属又はITO(酸化インジウム錫)等の金属酸化物から成る1層又は2層以上の薄膜等の各種の物が使用出来る。
これらの中で、本実施形態で採用するのは、高生産性及び低価格である点から、樹脂中に近赤外線吸収色素を含有する層である。その中でも本発明の効果を奏する上で特に好適なものは、該樹脂中に可視光を吸収する着色色素は含有しない層である。つまり、層を構成する樹脂中に可視光を吸収する着色色素を近赤外線吸収性能の面分布の測定に利用する為に含有させなくてもよい層である。
尚、ここで、近赤外線とは、波長780〜2500nmの波長帯域の電磁波を意味する。実際の個々の近赤外線吸収層の近赤外線吸収波長帯域としては、この波長帯域の中から各個の用途で要求される波長帯域を選択すれば良い。
【0038】
上記樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂などによる透明樹脂が用いられる。該熱可塑性樹脂は、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、熱可塑性ウレタン系樹脂などであり、該硬化性樹脂は、例えば、熱硬化型ウレタン系樹脂、熱硬化型アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の熱硬化性樹脂や、紫外線や電子線で硬化する電離放射線硬化性樹脂などである。なお、電離放射線硬化性樹脂には、アクリレート系で代表されるラジカル重合性化合物や、エポキシ系で代表されるカチオン重合性化合物を含む樹脂がある。
【0039】
上記近赤外線吸収色素としては、特に、PDP前面フィルタ用途の場合には、近赤外線領域のうちPDPから輻射される波長帯域であると共にリモートコントローラに用いる波長帯域でもある780nm〜1100nmの波長帯域を吸収できる色素であれば、特に限定は無く、公知の色素で良い。この様な、近赤外線吸収色素としては、例えば、フタロシアニン系化合物、イモニウム系化合物、ジイモニウム化合物系、ジチオール金属錯体、シアニン系化合物、アゾ化合物、ポリメチン系化合物、キノン系化合物、ジフェニルメタン系化合物、トリフェニルメタン系化合物系等の有機系近赤外線吸収色素、或いは金属酸化物、金属ホウ(硼)化物、金属窒化物などの無機系近赤外線吸収色素が挙げられる。
これらの中でも、耐久性の点からは無機系が好ましく、例えば、金属酸化物として、酸化タングステン系化合物、さらにその中でも特にセシウム含有酸化タングステンが高性能である。
又、可視光波長帯域での透明性の点からは、ジイモニウム系化合物が好ましい。
なお、近赤外線吸収色素は、樹脂分に対して通常0.1〜15質量%程度の濃度で含有させる。 又、近赤外線吸収層の厚みは、通常、1〜30μm程度である。
【0040】
この様にすることで、近赤外線吸収層の近赤外線吸収性能は、吸収すべき所定の近赤外線波長帯域内の全域に於いて、80%以上(透過率で20%以下)、好ましくは90%以上(透過率で10%以下)とすることができる。
【0041】
[機能層]
近赤外線吸収フィルタ1としては、例えば図3の断面図で例示する様に、近赤外線吸収層3以外の層として機能層9を含んでいても良い。例えば、近赤外線吸収機能以外の各種フィルタ機能や、帯電防止などの各種機能を付与する為の機能層9である。この様な機能層9は、公知の層を設けることができ、具体的には光学フィルタ層と非光学フィルタ層とを挙げることができる。
【0042】
(光学フィルタ層)
光学フィルタ層は、光学フィルタ機能として、例えば、紫外線吸収層、或いは、視覚上の効果が得られる、PDPのネオン光を吸収するネオン光吸収層、表示画像を好みの色調に補正する色補正層などの可視光での特定光透過層、反射防止層(防眩、反射防止、防眩及び反射防止兼用のいずれか)、特開2007−272161号公報などに記載の微小ルーバによる外光反射防止層(コントラスト向上層)などである。例えば、ネオン光吸収層、色補正層などは、これらの機能に応じた色素(ネオン光吸収色素、色補正色素)を樹脂中に分散させた樹脂層として形成される。
また、これら各種機能層は、実際に機能を実現する機能実現層単層として、或いは、該機能実現層と共にそれを支持する透明基材との積層構成の層として設けられる。なお透明基材としては、上記した透明基材シート2で列記したもの等が用いられる。この様な機能実現層は、通常樹脂層として塗工或いは印刷により形成される。或いは、透明基材中に、着色剤、紫外線吸収剤等を添加して、着色機能(色補正機能)、紫外線吸収機能を付与して、透明基材自体を単層の機能実現層とすることもある。
【0043】
特に、本発明では、可視光に影響されずに近赤外線の透過強度を測定する関係上、ネオン光吸収層、表示画像を好みの色調に補正する色補正層などの可視光域での特定光透過機能を実現する機能層も有する場合に、この様な機能層の着色の面ムラなど面分布が存在しても、その面分布に影響されずに近赤外線吸収性能の面分布を測定できる利点を有する。もちろん、その際、可視光域での吸収によって着色(無彩色も含む)しているこの様な機能層は、測定対象とする近赤外線領域には吸収がない機能層であることが前提である。
【0044】
(非光学フィルタ層)
非光学フィルタ層は、その非光学フィルタ機能として、電磁波遮蔽層、表面を保護する表面保護層、ハードコート層、帯電防止層、汚染防止層、耐衝撃層、2層間の物質移動を防ぐバリア層、近赤外線吸収フィルタをディスプレイ前面板などの被着体に貼り付ける為の粘着剤層、その面を一時的に保護するセパレータフィルム、2層間を接着させる接着剤層などがある。
例えば、電磁波遮蔽層は金属箔メッシュ等を透明基材に積層した層等として設けられ、ハードコート層は電離放射線硬化性樹脂の硬化物層等として設けられる。また、上記各機能の1又は2以上を、単層又は多層構成によって実現することができる。
また、非光学フィルタ層も、前記光学フィルタ層同様に、更に、機能実現層によってその機能を実現し、該機能実現層を支持し機械的強度を強める透明基材を備えることがある。また、透明基材自体で表面保護機能を果たし得る。また、前記光学フィルタ同様に、非光学フィルタにおいても、該透明基材として透明基材シート2を流用し共用することもある。
【0045】
《B.近赤外線吸収フィルタの製造方法》
本発明による近赤外線吸収フィルタの製造方法は、図1等を参照して説明した上記近赤外線吸収フィルタの面分布測定方法を利用して、面分布を測定して、更に上記[面分布の良否判定]の欄で説明した様にして良品判定を行って、良品と不良品を識別できる様にして、近赤外線吸収フィルタ1を製造する方法である。
近赤外線吸収フィルタの製造方法の全工程中に於ける近赤外線吸収性能の面分布測定工程以外の各工程については、公知の工程手段の中から適宜選択採用すれば良い。代表的な本発明による近赤外線吸収フィルタの製造方法は、以下の各工程(A)及び(B)を順次実施してなる。
【0046】
(A)透明基材シート上に、近赤外線は吸収し且つ可視光線は吸収しない近赤外線吸収層を積層する近赤外線フィルタ製造工程。
(B)前記の如き近赤外線吸収性能の面分布測定方法を利用して測定した近赤外線吸収性能の面分布を、良否の判定基準に従って良否を判定して、面分布の不良品と良品とを識別する工程。
【0047】
以上の工程のうち、工程(A)では、先ず、前記した透明基材シート2を用意する。次いで、該透明基材シート2上に近赤外線吸収層3を積層する。本実施形態に於いては、近赤外線吸収層が樹脂中に近赤外線吸収色素を含有する組成物からなる液状の塗料を用意し、該塗料を透明基材シート2の一方の表面上に塗工し、次いで該塗料を溶剤乾燥、硬化反応等によって固化させて、樹脂中に近赤外線吸収色素を含有する近赤外線吸収層3を形成する。
尚、工程(B)については、既に前記した通りである為、ここでの重複説明は省略する。
【0048】
また、本方法によれば、図3の様に、近赤外線吸収層とは別の層として色補正層等の可視光に吸収帯域を有する着色した機能層9を有する近赤外線吸収フィルタ1であっても、該着色した機能層9の塗工ムラ等に基づく着色の面分布に影響されることなく、近赤外線吸収層3自体の近赤外線吸収性能を測定し良否判定も効率的且つ高い面内精度でできるという利点を有する。
【0049】
《C.変形形態》
本発明は、上記説明した以外の形態として、例えば、次の様な変形形態もとり得る。
【0050】
また、図1を参照した前記実施形態の説明では、既に近赤外線吸収層を形成済みの近赤外線吸収フィルタ1に対して、それをロールR1から巻き出して測定したが、帯状の透明基材シート2に対して近赤外線吸収層3を塗工形成する装置上で、ロールに巻き取る前の帯状の近赤外線吸収フィルタ1に対して、近赤外線吸収性能の面分布を測定(On Line測定)しても良い。この様な形態の場合、近赤外線吸収フィルタ1の製造工程と該近赤外線吸収フィルタ1の近赤外線吸収性能の面分布測定工程とが2工程となる前記実施形態に比べて、両工程が1工程で同時に完了する為、全体の工程数及び製造時間が短縮出来るという有利な効果が有る。
また、ロールから巻き出した帯状の近赤外線吸収フィルタ1を枚葉シートに切断する装置上で、切断前に近赤外線吸収性能の面分布を測定しても良い。そして、測定結果から更に良否判定を行い、直ちに良品と不良品の枚葉シートとして取り分けても良い。この様な形態の場合、近赤外線吸収フィルタ1の枚葉化工程と該近赤外線吸収フィルタ1の近赤外線吸収性能の面分布測定工程とを別工程で行う実施形態に比べて、両工程が1工程で同時に完了する為、全体の工程数及び製造時間が短縮出来るという有利な効果が有る。
なお、上記本発明の説明においては、近赤外線吸収層3は可視光を吸収する着色色素は含有しない層であった。そして、この様な層でも測定できるのが本発明の特徴でもあった。しかし、該着色色素を含有していても(それが近赤外線領域に吸収を持たない色素であれば近赤外線領域での吸収スペクトルは影響されないので)正しい近赤外線吸収性能の面分布を測定可能である。よって、この様な着色色素が含有している近赤外線吸収フィルタへの適用も可能である。
【0051】
《D.用途》
本発明による近赤外線吸収性能の面分布測定方法が対象とする近赤外線吸収フィルタ、乃至は、本発明によって製造される近赤外線吸収フィルタは、その用途に特に制限は無いが、特にディスプレイ用途は好適な用途である。例えば、テレビジョン受像器、測定機器や計器類、事務用機器、医療機器、電算機器、電話機、電子看板、遊戯機器等の表示部等に用いられるPDP、CRT(ブラウン管)、LCD(液晶ディスプレイ)、電界発光(EL)ディスプレイなどの各種画像表示装置の前面フィルタ用として好適であり、特にPDP用として好適である。
この他、写真、映画、テレビジョン等のカメラ(写真機乃至撮像装置)、分光測定機器、近赤外線を信号として用いる遠隔操作機器等の近赤外線吸収フィルタ、ビニールハウスや温室に使用する農作物の成長制御用の近赤外線吸収フィルタ、住宅、事務所、病院、店舗等の建築物の窓硝子の熱線遮断用の(近)赤外線吸収フィルタ等に用いることも出来る。
【符号の説明】
【0052】
1 近赤外線吸収フィルタ
2 透明基材シート
3 近赤外線吸収層
4 二次元イメージセンサ
5 近赤外線光源
6a、6b 発光素子
7 画像処理装置(コンピュータ)
8 ディスプレイ
9 機能層
20 (着色された)近赤外線吸収フィルタ
A1〜A3 所定領域面
R1,R2 ロール
S 測定点


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材シート上に、近赤外線は吸収し且つ可視光は吸収しない近赤外線吸収層を積層した、帯状シート形態の近赤外線吸収フィルタに対して、その幅方向及び流れ方向に亘る所定領域面毎に、該近赤外線吸収フィルタを透過させた近赤外線の面分布を、近赤外線領域に感度を有する二次元イメージセンサによる二次元画像として撮影し、撮影された二次元画像の輝度分布から前記所定領域面の近赤外線吸収性能の面分布を測定する、近赤外線吸収性能の面分布測定方法。
【請求項2】
透明基材シート上に、近赤外線は吸収し且つ可視光線は吸収しない近赤外線吸収層を積層する近赤外線フィルタ製造工程、及び上記請求項1記載の近赤外線吸収性能の面分布測定方法を利用して測定した近赤外線吸収性能の面分布を、良否の判定基準に従って良否を判定して、面分布の不良品と良品とを識別する工程とからなる、近赤外線吸収フィルタの製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−47582(P2012−47582A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189617(P2010−189617)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】