説明

運転支援装置

【課題】自車両周囲の車両交通流に悪影響を与えないようにしつつ、経済運転を実現させる運転支援装置を提供すること。
【解決手段】車両に搭載され、経済運転実現のために運転者による運転操作を支援する運転支援装置に、自車両が一時停止しようとしている目標停止位置を検出する停止位置検出手段と、エンジンブレーキを使用することにより、摩擦ブレーキを用いずに自車両を上記目標停止位置で一時停止させようとするときに、燃料カットオフ制御が開始されるべき位置を算出する開始位置算出手段と、自車両後方を走行する後続車及びその後続車との車間距離を検出する後続車検出手段とを設け、開始位置算出手段が、後続車検出手段により後続車が検出されたとき、自車両が停止するまで上記車間距離が所定距離以上に保たれるように、算出した燃料カットオフ制御開始位置を修正するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、車両に搭載され、経済運転実現のために運転者による運転操作を支援する運転支援装置に係り、特に、自車両周囲の車両交通流に悪影響を与えないようにしつつ、経済運転を実現させる運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載され、経済運転実現のために運転者による運転操作を支援する運転支援装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、アクセルペダル等の運転操作や車速等の車両状態を検出し、燃費の良いアクセルワーク情報を車内表示器を通じて運転者に提供する装置が開示されている。
【特許文献1】特開2002−370560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
経済運転を実現するためのアクセル操作の一例として、車両減速時にアクセルペダルをリリースすることによるエンジンブレーキを極力長い時間(若しくは距離)使用し、燃料カットオフ制御が実施される時間を極力長くすることが考えられる。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1記載の従来装置では、自車両の走行状態にのみ基づいて最適と考えられるアクセル操作が運転者に提示されるため、自車両周辺の交通状況によっては適切でないアクセル操作が提示される可能性がある。
【0006】
例えば、自車両が前方の交差点などで一時停止しようとしており、且つ、自車両の後方に自車両と同じ車線を同じ方向へ走行中の後続車が存在するという交通状況において、燃費の向上を狙いとして比較的早い段階から(比較的手前の地点から)エンジンブレーキのみを使って一時停止するようにという情報が提示され、運転者がこれに従ってアクセルペダル操作してしまうと、自車両と後続車との車間距離が比較的短時間で急激に縮まるという事態が発生する可能性がある。
【0007】
このように、上記特許文献1記載の従来装置によれば、運転者が燃費向上のために提示された内容に従ってアクセルペダル操作を行ったことによって、自車両周辺車両の走行に悪影響を与えてしまうおそれがある。
【0008】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、自車両周囲の車両交通流に悪影響を与えないようにしつつ、経済運転を実現させる運転支援装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の第一の態様は、車両に搭載され、経済運転実現のために運転者による運転操作を支援する運転支援装置であって、自車両が一時停止しようとしている目標停止位置を検出する停止位置検出手段と、エンジンブレーキを使用することにより、摩擦ブレーキを用いずに自車両を上記目標停止位置で一時停止させようとするときに、燃料カットオフ制御が開始されるべき位置を算出する開始位置算出手段と、自車両後方を走行する後続車及びその後続車との車間距離を検出する後続車検出手段とを有し、上記開始位置算出手段は、上記後続車検出手段により後続車が検出されたとき、自車両が停止するまで上記車間距離が所定距離以上に保たれるように、算出した燃料カットオフ制御開始位置を修正する、運転支援装置である。
【0010】
上記第一の態様において、燃料カットオフ制御を運転支援装置側で自動的に実施する場合には、上記運転支援装置が上記開始位置算出手段により算出及び/又は修正された上記燃料カットオフ制御開始位置において、内燃機関の燃料カットオフ制御を開始する車両制御手段を更に有するようにする。
【0011】
また、上記第一の態様において、燃料カットオフ制御が運転者操作により実施される場合には、上記運転支援装置が上記開始位置算出手段により算出及び/又は修正された上記燃料カットオフ制御開始位置を自車両運転者に提示する情報提示手段を更に有するようにし、運転者が提示された燃料カットオフ制御開始位置においてアクセルペダルをリリースすれば、後続車との車間距離を上記所定距離以上に保った、経済的な減速制御が実現されるようにする。
【0012】
上記第一の態様によれば、一時停止すべき地点に向けて減速する際に、後続車が存在すれば後続車との間の車間距離が所定距離以上となるように制御しつつ、エンジンブレーキを極力使用し、摩擦ブレーキを極力使用しないようにした減速制御が実現されるため、特に後続車などの周辺車両に迷惑を掛けることなく、経済的な減速制御を実現し、燃料消費量を低減させることができる。
【0013】
なお、上記第一の態様において、燃料カットオフ制御時には、発電機(オルタネータ)による発電制御も併せて行うことが好ましい。これにより、燃料カットオフ制御により燃料消費が抑制されることに加えて、発電制御により減速時の減速エネルギを有効に回収することができる。
【0014】
上記目的を達成するための本発明の第二の態様は、ハイブリッド車両に搭載され、経済運転実現のために運転者による運転操作を支援する運転支援装置であって、自車両が一時停止しようとしている目標停止位置を検出する停止位置検出手段と、摩擦ブレーキを用いずに自車両を前記目標停止位置で一時停止させようとするときに、電気モータの回生制御が開始されるべき位置を算出する開始位置算出手段と、自車両後方を走行する後続車及びその後続車との車間距離を検出する後続車検出手段とを有し、前記開始位置算出手段は、前記後続車検出手段により後続車が検出されたとき、自車両が停止するまで前記車間距離が所定距離以上に保たれるように、算出した回生制御開始位置を修正する、運転支援装置である。
【0015】
上記第二の態様によれば、一時停止すべき地点に向けて減速する際に、後続車が存在すれば後続車との間の車間距離が所定距離以上となるように制御しつつ、摩擦ブレーキを極力使用しないようにした減速制御が実現されるため、特に後続車などの周辺車両に迷惑を掛けることなく、経済的な減速制御を実現し、減速エネルギを有効に回収することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、自車両周囲の車両交通流に悪影響を与えないようにしつつ、経済運転を実現させる運転支援装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【0018】
なお、以下に説明する一実施例においては、一例として、制御対象車両がオートマチックトランスミッションを備えているものとする。
【実施例】
【0019】
以下、図1〜4を用いて、本発明の一実施例に係る運転支援装置について説明する。
【0020】
図1は、本実施例に係る運転支援装置100の概略構成図である。
【0021】
運転支援装置100は、図示しないセンタや他車両と通信する通信部101を有する。通信部101が備えるアンテナの性能や形状並びに通信に利用する方式や周波数帯域などについては、特段の制限はなく、任意でよい。具体的には、例えば、既存の携帯電話や無線LANなどの通信規格に準拠した無線通信方式を採用することが考えられる。また、図示しないセンタと通信部101との間の通信接続は、直接的な無線通信接続に限られず、センタと有線通信接続された無線中継局を経由してもよく、或いは、車車間通信や衛星通信などの他の無線通信接続を経由してもよい。同様に、他車両と通信部101との間の車車間通信も、直接的な無線通信接続に限られず、固定局経由の間接的な通信接続であってもよい。
【0022】
運転支援装置100は、更に、例えばGPS(Global Positioning System;全地球測位システム)を利用して自車両の位置を検出する自車両位置検出部102を有する。自車両位置検出部102の検出精度(分解能)は高い(細かい)ほど好ましく、例えばRTK(Real Time Kinematic)−GPSなどの高精度GPSが利用されることが好ましい。
【0023】
運転支援装置100は、更に、自車両の車速を検出する車速検出部103を有する。車速検出部103は、例えば車輪速センサを利用して、自車両の車速を検出する。代替例として、自車両位置検出部102によって検出された自車両位置の時間変化から自車両の車速を算出してもよい。
【0024】
運転支援装置100は、更に、例えばレーザレーダ、ミリ波レーダ、カメラなどを利用して、自車両周辺の他車両の存在を検出すると共に、そのような他車両が存在する場合には自車両と当該他車両との間の距離(車間距離)を検出する周辺車両検出部104を有する。このような自車両周辺の他車両の存在を検出し、車間距離を検出する装置/手法は、特に先行車の存在及び先行車との車間距離を検出するものとして、例えば先行車との車間距離を一定に保つ追従走行制御システムや衝突可能性を判定するプリクラッシュセーフティシステムなどの当業者には既知のシステムを通じて様々なものが既に提案されているため、詳しい説明を省略する。本実施例において、周辺車両検出部104は、主たる機能として、特に、先行車及び後続車の存在、先行車及び後続車の車速、並びに、それら車両との自車両前後の車間距離、を検出するものとする。
【0025】
運転支援装置100は、更に、自車両が走行中の道路の勾配を検出する道路勾配検出部105を有する。走行道路の勾配は、例えば、車両運動制御系において演算・推定された値が検出されてもよく、或いは、車両の走行抵抗から推定されてもよい。代替例として、勾配情報は、例えば、通信部101を通じてセンタから取得されてもよく、或いは、後述する地図情報から取得されるものとしてもよい。
【0026】
運転支援装置100は、更に、自車両運転者が、後述するような一時停止のために減速する際に、自動的に経済運転を行う運転モード(以下、便宜上、「経済運転モード」と呼ぶ)をON/OFF切り替えするのに用いられるユーザ入力部106を有する。ユーザ入力部106は、例えばオン/オフ切替2値スイッチであり、自車両運転者が容易に操作できる位置に設置されることが望ましい。
【0027】
運転支援装置100は、更に、地図情報と車両特性情報とを予め記憶保持する記憶部107を有する。記憶部107は、任意の種類・規格の記憶媒体でよい。
【0028】
記憶部107に記憶保持される地図情報は、例えば通信部101による通信を利用して、最新のバージョン/内容に適宜更新されることが好ましい。さらに、記憶部107に予め記憶保持される地図情報には、道路情報と共に道路勾配情報が含まれているものとしてもよい。この場合、道路勾配検出部105を省いた構成とすることが可能となる。
【0029】
また、記憶部107に予め記憶保持される車両特性情報は、例えば、車両重量、転がり抵抗、空気抵抗、及び、一例を図2に示すような各ギア段での車速とエンジンブレーキにより生じる制動力の関係、などのデータを含むものとする。
【0030】
運転支援装置100は、更に、例えば燃料噴射系を制御していわゆる燃料カットオフ制御を実現させることができるエンジン制御部108を有する。燃料カットオフ制御自体については、様々な手法が提案されており、当業者には既知であるため、詳しい説明及び図示を省略する。
【0031】
運転支援装置100は、更に、オートマチックトランスミッションの変速比を制御するトランスミッション制御部109を有する。
【0032】
運転支援装置100は、更に、例えばブレーキ油圧を制御するなどして、運転者によるブレーキペダル操作とは独立して、自車両において発生する制動力の大きさを制御する制動力制御部110を有する。
【0033】
運転支援装置100は、更に、運転支援装置100の各構成要素を統括的に制御する主制御部111を有する。主制御部111は、例えば、ECU(Electronic Control Unit;電子制御ユニット)である。
【0034】
このような構成を有する車両制御装置100において、主制御部111は、ユーザ入力部106を通じてユーザから一時停止のための減速を行う際に経済運転を実施するように要求されているときに、自車両前方に一時停止すべき地点が検出されると、燃料カットオフ制御のみによって(すなわち、エンジンブレーキのみを用いて)当該一時停止地点で自車両を停止させるためには当該一時停止地点からどのくらい手前の地点で燃料カットオフ制御を開始する必要があるかを算出し、その地点に到達すると自動的に燃料カットオフ制御を開始して、当該地点から一時停止地点までの間が燃料カットオフ制御区間となるようにし、燃料消費量の低減を図る。
【0035】
ここで、エンジンブレーキを開始すべき地点は、経済運転の観点から、一時停止すべき地点に近すぎても、遠すぎても、好ましくない。
【0036】
エンジンブレーキを開始する地点が一時停止すべき地点に近すぎると、図3(a)に一例を示すように、摩擦ブレーキの併用が必要になることに加えて、図3(b)に一例を示すようなエンジンブレーキのみが使用される場合と比べて、エンジンブレーキが使用される時間が短いため、燃料カットオフ制御が実施されている時間も短くなり、見込まれる燃料消費低減量も少なくなる。
【0037】
また、エンジンブレーキを開始する地点が一時停止すべき地点から遠すぎると、一時停止すべき地点の手前でクリープ走行状態となってエンジンがアイドリング状態となってしまうため、燃料が消費される時間が新たに生じてしまう。
【0038】
但し、経済運転実現のために、図3(b)に一例を示したように、エンジンブレーキのみを用いてちょうど一時停止すべき地点で自車両が停止するようにエンジンブレーキを開始すると、自車両に後続車が存在し、且つ、その後続車が図3(a)に示すような通常通りのエンジンブレーキ+摩擦ブレーキによる減速制御を行おうとしていた場合に、自車両と後続車との車間距離が短時間で急激に縮まってしまうおそれがある。
【0039】
そこで、本実施例では、後続車が存在するか否かを検出し、後続車との車間距離を監視して、自車両が一時停止目標地点に停止するまで後続車との車間距離が所定距離以上に保たれるように、燃料カットオフ制御を開始する地点を調整する。
【0040】
したがって、本実施例では、後続車との所定以上の車間距離を保つために、図3(b)に示したようなエンジンブレーキのみを使用して一時停止目標地点で停止する場合よりも当該一時停止目標地点寄りの地点からエンジンブレーキが開始される場合も生じ得る。そのような場合、目標地点で一時停止するために、摩擦ブレーキも適宜用いられる。
【0041】
また、このような減速制御時の自動経済ブレーキ運転をしているときに、自車両前方に他車両が割り込んできた場合にも、新たに先行車となった当該割込車との車間距離を十分に保つために、摩擦ブレーキが併用される。
【0042】
このような処理の流れを図4のフローチャートを用いて詳述する。
【0043】
まず、運転支援装置100の主制御部111は、ユーザ入力部106を通じて、ユーザから一時停止すべき地点へ向けた減速制御時には自動的に経済運転をするように要求されているか否かを判定する(S401)。
【0044】
一時停止すべき地点へ向けた減速制御時には自動的に経済運転を行うようにユーザから設定されている場合(S401の「YES」)、次いで、主制御部111は、自車両位置検出部102によって検出された自車両現在位置を記憶部107に予め記憶保持された地図情報に照らして、自車両前方に自車両が一時停止すべき地点(例えば、交差点、踏切、一時停止線、など)が存在するか否かを判定する(S402)。
【0045】
このような判定に加えて又は代えて、自車両位置検出部102によって検出された自車両現在位置を通信部101を介して図示しないセンタへ送信し、インフラ側から自車両前方に一時停止線等の一時停止すべき地点が存在するか、或いは、自車両前方に赤信号(及び/又は黄信号)が存在するか、が判定されてもよい。
【0046】
自車両前方に一時停止すべきと判断される地点が存在すると判断された場合(S402の「YES」)、次いで、主制御部111は、エンジンブレーキのみを使用して(すなわち図3(b)に示したような車速変化で)当該一時停止地点で自車両を停止させるのに適した変速比及び燃料カットオフ制御開始地点を演算により求める(S403)。この燃料カットオフ制御開始地点は、車速検出部103によって検出された車速、道路勾配検出部105により検出された勾配、記憶部107に記憶保持された車両特性(重量、転がり抵抗、空気抵抗、各ギア段でのエンジンブレーキ力、など)の関数として求めることができる。
【0047】
燃料カットオフ制御開始地点が算出されると、次いで、主制御部111は、周辺車両検出部104による検出結果に基づいて、自車両後方に後続車が存在するか否かを判定する(S404)。
【0048】
ここで、自車両と後続車との車間距離が十分に離れていれば、自車両が例えば図3(b)に示すように一時停止地点に対してより早い段階からエンジンブレーキのみで緩やかに減速しても後続車に対して迷惑となることはない。
【0049】
そこで、本実施例では、S404において、自車両後方において自車両と同じ車線を自車両と同じ方向に走行している車両すべてを後続車として扱うのではなく、自車両がS403において算出した地点から燃料カットオフ制御を開始し、後続車がその時点での車速を維持し続けるものと仮定した場合に、自車両が一時停止地点で停止したときの自車両と後続車との車間距離が所定距離A未満となる後続車のみを、自車両の減速制御の影響が及ぶ後続車として扱うものとする。
【0050】
上記のような定義に該当する後続車が自車両後方に存在すると判断された場合(S404の「YES」)、次いで、主制御部111は、当該後続車がそのときの車速を維持し続けるものと仮定して、自車両が一時停止地点で停止したときの自車両と当該後続車との車間距離が上記所定距離A以上となり、且つ、経済運転実現のためにエンジンブレーキを極力使用し、摩擦ブレーキの使用割合を極力低減して自車両を一時停止地点で停止させるための、新たな燃料カットオフ制御開始地点を算出し、この新たに算出した燃料カットオフ制御開始地点でS403において算出された地点を修正する(S405)。
【0051】
後続車が車速を維持するものと仮定すると、自車両と後続車との車間距離が最も短くなるのは自車両が一時停止地点で停止したときであるから、上記の減速制御は、換言すれば、自車両と後続車との車間距離を上記所定距離A以上に保ちつつ、自車両を極力エンジンブレーキを利用して一時停止地点で停止させる減速制御である。
【0052】
他方、上述の定義に該当する後続車が存在しないと判断された場合(S404の「NO」)、主制御部111は、減速制御にあたって後続車の存在を考慮する必要はないと判断して、S405をスキップする。すなわち、S403において算出された、エンジンブレーキのみで停止する場合の燃料カットオフ制御開始地点から燃料カットオフ制御を開始する。
【0053】
このようにして後続車が存在する場合には当該後続車との車間距離も考慮しながら、経済的に最適な燃料カットオフ制御開始位置が算出・修正されると、次いで、主制御部111は、自車両位置検出部102により検出された自車両現在位置を監視して、その算出された燃料カットオフ制御開始位置に自車両が到達したか否かを判定する(S406)。
【0054】
自車両がいまだ燃料カットオフ制御開始地点に到達していないと判断された場合(S406の「NO」)、S404へ戻り、後続車が存在するか否か、換言すれば燃料カットオフ制御開始地点を修正すべきか否か、を再度判定する。なお、自車両が燃料カットオフ制御開始地点に到着する前に自車両運転者がアクセルオフした場合、主制御部111はエンジン制御部108に燃料カットオフ制御に入りやすいようにエンジン制御するように指示する。
【0055】
自車両が燃料カットオフ制御開始地点に到着したと判断された場合(S406の「YES」)、主制御部111は、エンジン制御部108に指示して燃料カットオフ制御を開始させる(S407)。また、必要に応じて、トランスミッション制御部109に指示して、算出された最適な変速比を実現させる。
【0056】
このようにして一時停止地点までの減速制御が開始された後、主制御部111は、周辺車両検出部104による検出結果を監視して、自車両前方に割り込んできた他車両が存在するか否かを判断する(S408)。
【0057】
割込車が現れた場合(S408の「YES」)、主制御部111は、その割込車を新たな先行車とし、先行車との車間距離を一定以上確保するために、ブレーキ制御部110に指示して当該割込車との車間距離が一定以上となるまで摩擦ブレーキにより自車両を減速させる(S409)。
【0058】
割込車が現れなければ、このような摩擦ブレーキによる減速制御は必要ない(S408の「NO」でS409をスキップ)。
【0059】
このような減速制御により経済的且つ安全に減速しながら、主制御部111は、自車両位置検出部102により検出された自車両現在位置を監視して、当初検出された一時停止すべき地点において自車両が一時停止したか否かを判定する(S410)。
【0060】
いまだ到達していなければ(S410の「NO」)、S404〜S409の処理が繰り返される(S404へ戻る)。
【0061】
他方、一時停止地点において自車両が一時停止したと判断されれば(S410の「YES」)、減速制御は終了となり、本フローの1ルーチンを終了する。
【0062】
このように、本実施例によれば、一時停止すべき地点に向けて減速する際に、後続車が存在すれば後続車との間の車間距離が所定距離以上となるように制御しつつ、エンジンブレーキを極力使用して、燃料カットオフ制御が実施される時間を極力長くした減速制御が実現されるため、特に後続車などの周辺車両に迷惑を掛けることなく、経済的な減速制御を実現させ、燃料消費量を低減させることができる。
【0063】
なお、上記一実施例においては、燃料カットオフ制御時に、併せて、発電機(オルタネータ)の発電制御を行うようにし、燃料カットオフ制御による燃料消費の抑制に加えて、減速時の減速エネルギの有効回収をも図ることが好ましい。
【0064】
また、上記一実施例においては、一例として、制御対象車両に搭載された運転支援装置が最適な変速比を選択できるように、オートマチックトランスミッションが搭載された車両を例に挙げたが、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、マニュアルトランスミッションを備えた車両にも適用可能である。その場合、運転支援装置側でトランスミッションのギア比を経済的な減速制御(エンジンブレーキ)実現のための最適なギア比へと制御することはできないため、ギア段ごとに最適なエンジンブレーキ開始位置を算出して、ディスプレイ装置上で運転者に提示し、運転者が任意に選択したギア段に応じて、提示されたエンジンブレーキ開始位置からエンジンブレーキを開始してもらうようにする。
【0065】
さらに、上記一実施例においては、一例として、制御対象車両がエンジン車であることを前提としたが、本発明は、ハイブリッド車両にも適用可能である。その場合、燃料カットオフ制御に代えて電気モータの回生制御を行い、減速時の減速エネルギを有効に回収する。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、経済運転実現のために運転者による運転操作を支援する運転支援装置に利用できる。制御対象となる搭載車両の燃料種類、外観デザイン、重量、サイズ、走行性能等はいずれも不問である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施例に係る運転支援装置の概略構成図である。
【図2】ギア段ごとの車速とエンジンブレーキにより発生する制動力との関係の一例を示す図である。
【図3】エンジンブレーキを早めに開始することにより燃料カットオフ区間が延長されることを示す図である。
【図4】本発明の一実施例に係る運転支援装置による経済運転制御処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0068】
100 運転支援装置
101 通信部
102 自車両位置検出部
103 車速検出部
104 周辺車両検出部
105 道路勾配検出部
106 ユーザ入力部
107 記憶部
108 エンジン制御部
109 トランスミッション制御部
110 ブレーキ制御部
111 主制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、経済運転実現のために運転者による運転操作を支援する運転支援装置であって、
自車両が一時停止しようとしている目標停止位置を検出する停止位置検出手段と、
エンジンブレーキを使用することにより、摩擦ブレーキを用いずに自車両を前記目標停止位置で一時停止させようとするときに、燃料カットオフ制御が開始されるべき位置を算出する開始位置算出手段と、
自車両後方を走行する後続車及びその後続車との車間距離を検出する後続車検出手段と、を有し、
前記開始位置算出手段は、前記後続車検出手段により後続車が検出されたとき、自車両が停止するまで前記車間距離が所定距離以上に保たれるように、算出した燃料カットオフ制御開始位置を修正する、ことを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
請求項1記載の運転支援装置であって、
前記開始位置算出手段により算出及び/又は修正された前記燃料カットオフ制御開始位置において、内燃機関の燃料カットオフ制御を開始する車両制御手段を更に有する、ことを特徴とする運転支援装置。
【請求項3】
請求項1記載の運転支援装置であって、
前記開始位置算出手段により算出及び/又は修正された前記燃料カットオフ制御開始位置を自車両運転者に提示する情報提示手段を更に有する、ことを特徴とする運転支援装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項記載の運転支援装置であって、
燃料カットオフ制御時には、発電機による発電制御も併せて行う、ことを特徴とする運転支援装置。
【請求項5】
ハイブリッド車両に搭載され、経済運転実現のために運転者による運転操作を支援する運転支援装置であって、
自車両が一時停止しようとしている目標停止位置を検出する停止位置検出手段と、
摩擦ブレーキを用いずに自車両を前記目標停止位置で一時停止させようとするときに、電気モータの回生制御が開始されるべき位置を算出する開始位置算出手段と、
自車両後方を走行する後続車及びその後続車との車間距離を検出する後続車検出手段と、を有し、
前記開始位置算出手段は、前記後続車検出手段により後続車が検出されたとき、自車両が停止するまで前記車間距離が所定距離以上に保たれるように、算出した回生制御開始位置を修正する、ことを特徴とする運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−49916(P2008−49916A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−229738(P2006−229738)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】