説明

運転者の健康管理システム及び緊急時対応方法

【課題】高齢者や持病を有する車両の運転者の健康管理を行い、緊急時に必要な対応を可能にする運転者の健康管理システム及び緊急時対応方法を提供する。
【解決手段】車両10のハンドル70に運転者530の生体情報読み取り装置455、460、520を設け、読み取られた生体情報をカーナビ50及び統合通信端末80を含む車載端末20によりアクセス網180及びインターネット240を介して病院センター局210、警察センター局200、自動車保険事業者センター局220及びレッカー事業者センター局230とネットワークを構成する。病院センター局210では、運転者530から受信した生体情報をモニタ及び解析して必要な緊急時対応等を迅速に行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は運転者の健康管理システム及び緊急時対応方法に関し、特に高齢の又は持病を持つ車両運転者の健康を管理する健康管理システム及び緊急時対応方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会では、特別な場合を除き日常生活に車両は必須不可欠であり、健常者のみならず、高齢者、多少の身体不自由者及び持病等による健康不安者であっても車両の運転をする必要が生じる。車両運転による交通安全(運転者及び歩行者等の安全)のために、運転者の健康状態を管理することが重要である。
【0003】
斯かる技術分野、即ち運転者の健康管理に関する従来技術は、幾つかの技術文献に開示されている(例えば、特許文献1乃至3参照)。特許文献1には、操舵ハンドルを操作する操作者の心拍数等の生体情報を検出する生体情報検出装置が開示されている。特許文献2には、運転者等の監視対象者及び周囲の状況を監視し、状況に応じて事故抑止のための適切な処理を行う事故抑止システム及び方法が開示されている。また、特許文献3には、患者の症状を確認した医療機関のうち、受け入れ及び適切な治療が可能な医療機関を正確に検索して患者の迅速な搬送と治療を実現する救急医療用車両装置、医療機関装置及び救急医療機関検索システムが開示されている。
【0004】
上述の如き従来のシステムでは、車両のハンドルに実装された生体情報読み取り機能を利用して運転者の血圧等の生体情報を取得している。しかし、高齢者や心臓病、糖尿病、脳梗塞等の持病を持つ運転者及び健康な運転者を含め、生体情報は運転者の重要な個人情報であるために、取得前に認証機能の実装が必要である。また、計測された運転者の生体情報は、車両に実装された記憶装置又は記憶装置を備える携帯端末に保存されている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−262481号公報(第3頁、第1図)
【特許文献2】特開2000−301963号公報(第5頁、第4図)
【特許文献3】特開2004−355275号公報(第4−5頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のシステムでは、運転者の個人情報を計測する際に、認証機能を実装せずに運転者の生体情報が計測され、個人情報の取り扱いに問題があった。また、計測された生体情報は、車両内に実装された記憶装置や記憶装置を備えた携帯端末に保存され、その情報を運転者が任意に登録した医療機関や健康管理サービス事業者にアップロードする際は、一度自宅のパソコンにデータをダウンロードするか又はクレードルに携帯端末を接続する必要があり、リアルタイム性とモビリティ性の問題があった。
【0007】
更に、運転者が車両を運転している状態においても、常時運転者の生体情報を読み取り、カーナビに実装された生体情報管理ユニットで異常が発生したと判断された場合に、インターネットを利用した暗号化されたネットワーク経由で運転者が任意に登録した病院センター局が、リアルタイムに顧客の生体情報を管理・分析し、運転者に健康上の緊急事態が発生した際に、車載カメラを利用した遠隔監視サービスや強制介入制御で車両を緊急停止させることにより被害を最小限に抑える等のサービスがないので、高齢者や心臓病、糖尿病、脳梗塞等の持病を持った運転者が安心して長距離ドライブ等の十分なサポートサービスを運転者に提供することができなかった。
【0008】
本発明は、従来技術の上述した課題に鑑みなされたものであり、斯かる課題を解決又は軽減可能な運転者の健康管理システム及び緊急時対処方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した従来技術の課題を解決するために、本発明の運転者の健康管理システム及び緊急時対処方法は、次の如き特徴的な構成を採用している。
【0010】
(1)本発明の運転者の健康管理システムは、車両の運転者の健康状態を前記車両に搭載された生体情報読み取り装置により読み取られた前記運転者の生体情報に基づいて管理する運転者の健康管理システムにおいて、
前記車両に搭載され通信機能を有する車載端末と、無線通信手段を介して前記車載端末に接続された病院センター局とを備え、
前記車載端末を介して前記生体情報読み取り装置で読み取られた前記運転者の生体情報を前記病院センター局でモニタすると共に当該モニタ結果を前記車載端末を介して前記運転者に送信する運転者の健康管理システム。
【0011】
(8)また、本発明の緊急時対処方法は、車両に搭載された生体情報読み取り装置により読み取られた前記車両の運転者の生体情報を病院センター局に送信して前記運転者の状態をモニタリングして前記運転者の緊急時に予め決められた緊急時対応を行う緊急時対応方法において、
前記運転者情報及び前記車両情報を予め前記病院センター局に登録する情報登録ステップと、
前記運転者の生体情報を前記病院センター局へ適宜に送信するステップと、
前記運転者から前記病院センター局へ送信される前記運転者の生体情報を分析して異常状態を検出するステップと、
前記異常状態の検出時に前記車両に対して緊急時対応を行うステップと
を備える運転者の緊急時対応方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の運転者の健康管理システム及び緊急時対応方法によると、次の如き実用上の特有の効果を奏する。即ち、高齢又は持病を有する運転者が、予め任意の病院センター局に静脈情報や車両登録IDを登録することにより、運転者自身が所有する車両を運転する際にハンドルに実装された静脈読み取り機能により病院センター局側で登録本人として認証することが可能になる。
【0013】
また、車載端末の統合通信端末は、アクセスポイント間の電波強度や通信メディア切り替えユニットによる通信メディア切り替え機能を有するので、異なる通信メディアやアクセスポイント間の車両移動の際にも、車両に実装した車載通信端末がシームレスなネットワーク環境を維持して、車両からアクセス網及びインターネットを経由して病院センター局サーバに常時アクセスすることが可能である。
【0014】
運転者が、ハンドルに実装された生体情報読み取り機能を利用することにより、取得された運転者の生体情報データは、カーナビに搭載された生体情報管理ユニット内の生体データモニタリング部及び任意の病院センター局の生体情報管理ユニット内の生体データ分析部のアルゴリズムに更新された、生体データ分析部で一次解析される。そして、異常発生時には、異常発信部において、そのデータは病院センター局宛に送信され、統合通信端末で暗号化され、車両外ネットワークを経由して病院センター局サーバ宛に転送される。そのため、病院センター局でそのデータを復号化して病院センター局の医療スタッフにより、その生体情報をモニタリング及び分析することが可能である。
【0015】
また、病院センター局からの応答確認メールに対して、運転者が「NO」やその他のレスポンス(応答)が一定期間内にない場合には、病院センター局は、遠隔監視サービスを開始する。これにより、運転者に病気等の健康上の重大事態が発生した際の運転者の運転状況をリアルタイム画像で確認可能である。
【0016】
運転者の健康状態及び運転状況が困難であると判断した場合には、病院センター局が緊急停止要求メッセージをターゲットとなる車両の統合通信端末宛に送信する。そして、車両の車両LANバス上に接続された各種制御ユニットに対してハザード、減速、緊急停止等のメッセージを送信する。この強制介入処置により、車両の緊急停止等の緊急時対応が可能になる。
【0017】
病院センター局側から車両に緊急停止要求メッセージを送信した後、警察センター局、自動車保険事業者センター局及び/又はレッカー事業者センター局宛に、緊急対応要求メッセージ及び運転者の暗号化された個人情報がマルチキャスト通信される。この通信は、マルチキャストグループに参加しているセンター局にデータ転送が限定されるので、運転者の個人情報の保護が可能である。
【0018】
また、病院センター局からの緊急停止要求メッセージ及び運転者の個人情報を受信した警察センター局、自動車保険事業者センター局及びレッカー事業者センター局は、運転者の個人情報を解析することができる。そして、緊急停止要求メッセージを、車両が停止している近隣の交番、地域病院、自動車保険事業者支店及びレッカー事業者始点宛に送信し、運転者に対して迅速且つ適切な対応を行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明による運転者の健康管理システム及び緊急時対処方法の好適な実施例の構成及び動作を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
先ず、図1は、本発明による運転者の健康管理システムの好適な実施例の全体構成を示すシステム構成図である。この運転者の健康管理システム(以下、単に健康管理システムという場合もある)は、ネットワークを利用する車両運転者の健康管理を行うシステムである。この健康管理システムは、車載端末20が搭載された車両10、この車載端末20と無線通信するWWAN(Wireless Wide Area Network)サービスエリア140、アクセス網180、更にネットワーク(インターネット)240を介して接続された警察センター局200、病院センター局210、自動車保険事業者センター局220及びレッカー事業者センター局230により構成されている。このWWANサービスエリア140は、異なる通信メディアカード(又は通信手段)であるWMAN(Wireless Metro Area Network)サービスエリア150、WLAN(Wireless Local Area Network)サービスエリア160及びWPAN(Wireless Personal Area Network)サービスエリア170を含んでいる。そして、交番145、地域病院155、自動車保険事業者支点165及びレッカー事業者支店175と通信可能に構成されている。
【0021】
車載端末20は、タッチパネルモニタ(例えば、液晶表示パネル)30及び記録媒体(例えば、HDD:ハードディスク)40を含むと共に車載カメラ60及びハンドル70に接続されたカーナビゲーションシステム(カーナビ)50、統合通信端末80及び車載LANインタフェース130を備えている。
【0022】
図2は、図1中に示すカーナビ50及び統合通信端末80の詳細構成を示す機能ブロック図である。カーナビ50は、上述したタッチパネルモニタ30及び記録媒体40に加えて、バスを介して相互接続されたタッチパネル制御ユニット250、画像制御ユニット260、CPU(中央処理装置)270、通信インタフェース280、330及び340、生体情報管理ユニット285、認証演算ユニット290、画像解析ユニット320、認証データベースユニット440、音声制御ユニット540及びGPS(全地球測位システム)ユニット550を含んでいる。ここで、生体情報管理ユニット285は、生体データ分析部286、生体データモニタリング部288及び警告発生部287を有する。また、認証データベースユニット440は、車両登録ID300及び静脈情報データ310を含んでいる。更に、カーナビ50には、上述の如く、車載カメラ60及びハンドル70が接続されている。
【0023】
他方、統合通信端末80は、図2に示す如く、通信インタフェース350、CPU360、通信メディア切り替え制御ユニット370、HUB380、通信インタフェース(#1〜#4)390、400、410及び420を含んでいる。この統合通信端末80は、車載LANインタフェース130を介して車載LANバス430に接続されている。そして、統合通信端末80及びカーナビ50は、それぞれ通信インタフェース350及び280を介して相互接続されている。
【0024】
図3は、本発明による運転者の健康管理システムの車両10のハンドル70に関連する構成の説明図である。ハンドル70には、運転者530の生体情報読み取り電極パッド455、右手用静脈情報読み取りユニット460及び左手用静脈除法読み取りユニット520が設けられている。更に、ハンドル70に関連してCPU470、記憶装置480、生体情報制御ユニット490、静脈情報制御ユニット510及び通信インタフェース500を備えている。これらのユニットから読み取られた運転者の生体情報等は、通信インタフェース500を介して車載端末20のカーナビ50へ送信される。
【0025】
また、図4は、図1中に示すインターネット240を介して接続された病院センター局210、警察センター局200、自動車保険事業者センター局220及びレッカー事業者センター局230の詳細を示す図である。尚、警察センター局200、自動車保険事業者センター局220及びレッカー事業者センター局230は、同様構成であり得るので、一括して図示している。また、図4中には、インターネット240にルータ940を介して接続された暗号化ユニット950、交番145、地域病院155、自動車保険事業者支店165及びレッカー事業者支店175を示す。
【0026】
図4に示す如く、病院センター局210は、ルータ570を介してインターネット240に接続されている。そして、この病院センター局210は、暗号化ユニット560、センターサーバ580、確認応答送受信ユニット590、位置情報ユニット600、認証照合ユニット610、静脈情報データベースユニット640、車両登録ID660、ユーザ情報管理データベース680、生体情報管理ユニット710、遠隔監視ユニット750及び緊急メッセージ送信ユニット770を含んでいる。更に、認証照合ユニット610は、ハッシュ値演算結果620及びハッシュ値データベース630を有する。静脈情報データベースユニット640は、静脈情報650を保持する。車両登録IDデータベースユニット660は、車両登録ID670を保持する。ユーザ情報管理データベース680は、ユーザA690毎のカルテ700を有する。生体情報管理ユニット710は、生体データモニタリング部720、生体データ分析部730及び警告発信部740を有する。遠隔監視ユニット750は、画像処理部760を有する。緊急メッセージ送信ユニット770は、緊急停止要求メッセージ部780及び緊急対応要求メッセージ部790を有する。
【0027】
一方、警察センター局200、自動車保険事業者センター局220及びレッカー事業者センター局230は、ルータ830を介してインターネット240に接続されている。そして、これらのセンター局200〜230は、暗号化ユニット820、センターサーバ840、ユーザ情報管理データベース850及び緊急メッセージ送信ユニット920を含んでいる。更に、ユーザ情報管理データベース850は、上述の如く、同様のセンターネットワーク構成であり、センタサーバ840、ユーザ情報管理データベース850及び緊急メッセージ送信ユニット920を含んでいる。ここで、ユーザ情報管理データベース850は、ユーザリスト860、車両情報870、位置情報880、病歴890、症状900及びその他910を有する。また、緊急メッセージ送信ユニット920は、緊急対応要求メッセージ部930を有する。
【0028】
上述の如く、センタサーバ840のユーザ情報管理データベース850には、病院センター局210から暗号化されてマルチキャスト通知された運転者530の氏名、例えば、ユーザA860、車両情報870、位置情報880、病歴890、症状900及びその他910の個人情報が格納されている。また、緊急メッセージ送信ユニット920に格納された緊急対応要求メッセージ部930は、各センター局200、210、220、230から、交番145、地域病院155、自動車保険事業支店165及びレッカー事業者支店175宛てに緊急対応要求メッセージを自動転送する。
【0029】
警察センター局200、自動車保険事業者センター局220又はレッカー事業者センター局230からの緊急対応要求メッセージが自動転送される際に、暗号化ユニット820を実装したルータ830から、インターネット240を経由して、アクセス網内の暗号化ユニット820を実装したルータ830と暗号化通信によって、緊急対応要求メッセージが交番145、地域病院155、自動車保険事業支店165及び/又はレッカー事業者支店175宛てに転送されるようにネットワークが構成されている。
【0030】
次に、図5及び図6のフローチャート又はシーケンス図を参照して、図1〜図4に示す本発明による運転者の健康管理システムの好適な実施例の動作を詳細に説明する。図5及び図6は、運転者530、車両10のハンドル70、車載端末20及び病院センター局210間の動作を示す。
【0031】
サービスを希望する運転者530は、事前に任意の病院センター局210のセンターサーバ580に運転者530が所有する車両登録ID670及び静脈情報650をそれぞれ車両登録IDデータベースユニット660及び静脈情報データベースユニット640に登録する(ステップA1)。
【0032】
次に、上述したステップA1で登録された任意の病院センター局210のセンターサーバ580の認証照合ユニット610において、車両登録ID670及び静脈情報650のハッシュ値が、ハッシュ値演算結果620として算出され(ステップA2)る。そして、この算出値は、ハッシュ値データベース630上に登録される(ステップA3)。
【0033】
運転者530がACC電源ON又はエンジンスタートを行うと(ステップA4)、車載端末20のカーナビ50は、タッチパネルモニタ30上にサービス希望の有無を問う(ステップA5)。運転者530がサービスを希望しない場合には、静脈情報読み取り機能は停止して終了となる(ステップA6)。他方、運転者530がサービスを希望する場合には、カーナビ50は、タッチパネルモニタ30上に静脈情報読み取り案内を開始する(ステップA7)。
【0034】
次に、運転者530は、案内に従って車両10のハンドル70に実装された右手用静脈情報読み取りユニット460及び左手用静脈情報読み取りユニット520を両手で握る(ステップA8)。そこで、静脈情報の読み取りが開始され、その取得データは静脈情報制御ユニット510でデータ化される(ステップA9)。このデータは、通信インタフェース500を経由してカーナビ50に送信され(ステップA10)、通信インタフェース280を経由して、カーナビ50の認証データベースユニット440に静脈情報データ310として格納される(ステップA11)。そして、認証演算ユニット290で予め登録されている車両登録ID300と右手用静脈情報読み取りユニット460及び左手用静脈情報読みとしユニット520から取得した静脈情報310のハッシュ値を算出する(ステップA12)。
【0035】
算出されたハッシュ値は、通信インタフェース280を経由して、統合通信端末の通信インタフェース350で受信され、IP Sec(IP Security)やSSL(Secure Socket Layer)等のセキュリティ・プロトコルを利用して、暗号化ユニット450で暗号化される(ステップA13)。そして、WWANカード90、WMANカード100、WLANカード110及びWPANカード120の如き複数通信メディアカードを挿入可能な#1通信インターフェ−ス390、#2インタフェース400、#3インタフェース410又は#4インタフェース420を経由して、WWANサービスエリア140、WLANサービスエリア160、WMANサービスエリア150及びWPANサービスエリア170の如き異なる通信メディア間のサービスエリアやその間の移動においても、そのサービスエリアから発せられる電波強度を感知して電波強度の状況に応じて通信メディアを切り替える切り替え制御ユニット370が、通信メディアを切り替える手段を利用して、アクセス網180に繋がる。そして、病院センター局210のセンターサーバ580宛にデータ送信する(ステップA14)。
【0036】
病院センター局210のルータ570でデータを受信し、受信したデータを暗号化ユニット560で復号化する(ステップA15)。そのハッシュ値データは、病院センター局210に備えられた認証照合ユニット610のハッシュ値データベース630内のデータをサーチして、受信したハッシュ値データと認証処理を行う(ステップA16)。
【0037】
次に、病院センター局210のセンターサーバ580は、車載端末20宛に認証結果を通知する(ステップA17)。その認証結果通知が不適合の場合(ステップA18:不適合)には、カーナビ50のタッチパネルモニタ30上に不適合である旨を表示する(ステップA19)。そして、カーナビ50内の通信インタフェース330を経由して、ハンドル70の静脈情報制御ユニット510宛に不適合データを送信し、ハンドル70内の通信インタフェース500で受信したデータに基づき、静脈情報制御ユニット510は、取得データを削除し(ステップA20)、読み取り機能を停止して終了する(ステップA21)。
【0038】
一方、認証結果通知が適合の場合(ステップA18:適合)には、カーナビ50は、タッチパネルモニタ30上に生体情報読み取り案内開始の情報を表示し(ステップA22)、運転者530がサービスを希望しない場合(ステップA23)には、読み取り機能を停止して終了する(ステップA6)。サービスを希望する場合(ステップA23)には、運転者530は、ハンドル70の生体情報読み取り電極パット455を両手で握り(ステップA29.5)、生体情報の読み取りが開始される(ステップA24)。
【0039】
ハンドル70を介して運転者530から読み取られた生体情報は、生体情報制御ユニット510でデータ化され、ハンドル70内の通信インタフェース500を経由して、カーナビ50に実装された生体情報管理ユニット285内の生体データモニタリング部286で、モニタリングされる。異常/正常の判断は、運転者530が任意に登録した病院センター局210からの生体データ分析アルゴリズムをダウンロードした生体データ分析部287の情報を基に判定を行う。ここで、異常が発生した場合には、警告発信部288がそのデータを病院センター局210宛に送信する(ステップA25.5)ために統合通信端末80宛に送信される(ステップA25)。
【0040】
統合通信端末80の通信インタフェース350で受信したデータは、暗号化ユニット450で生体情報データを暗号化して、病院センター局210のルータ570に送信する(ステップA26)。次に、病院センター局210のルータ570でデータを受信し、暗号化ユニット560でそのデータを復号化する(ステップA27)。復号化された生体情報データは、病院センター局210に備えられたセンターサーバ580の生体情報管理ユニット710の生体データモニタリング部720でモニタリングされ、生体データ分析部730で分析される(ステップA28)。
【0041】
一方、運転者530が本サービスを希望しない場合には、読み取り機能を停止させ終了することができる(ステップA29.6)。また、運転者530が、アクセサリー電源OFFやエンジンをストップさせると(ステップA29.7)、読み取り機能を停止させ終了することができる(ステップA29.8)。病院センター局210での生体情報モニタリング及び分析を行っている最中に、病院スタッフにより、運転者530に健康上の異常を検出した場合(ステップA29:YES)には、病院センター局210のセンターサーバ580の確認応答送・受信ユニット590から、車載端末20宛に確認応答メッセージを送信する(ステップA30)。
【0042】
統合通信端末80で受信した確認応答メッセージデータを通信インタフェース350経由でカーナビ50に転送する(ステップA31)。カーナビ50のタッチパネルモニタ30上に「OK?」、「NO?」を表示(ステップA32)するか又は音声制御ユニット540でそれを音声化して、音声通知で運転者530に対して「OK?」、「NO?」の選択を通知する(ステップA33)。
【0043】
運転者530に健康上問題ないと判断した場合(ステップA34)には、カーナビ50のタッチパネルモニタ30上の「OK」を選択し(ステップA35)、音声にて「OK」と発声する(ステップA36)。そして、そのデータを統合通信端末80から病院センター局210宛に送信する(ステップA37)。また、カーナビ50に備えられたGPSユニット550内の現在地の位置情報を病院センター局210宛に送信する(ステップ39)。病院センター局210のセンターサーバ580の位置情報ユニット600で車両位置情報を確認し、現時点での車両10の位置を確認する(ステップA38)。その車両位置情報を元に、近場の地域病院情報を統合通信端末80宛に送信する(ステップA39.5)。統合通信端末80から、位置情報を受信したカーナビ50は、近場の地域病院情報をタッチパネルモニタ30上の地図に表示する(ステップA39.6)。そして、運転者530が引き続きサービスを継続するか否かを判断する(ステップA39.7)。
【0044】
一方、運転者530の健康状態が悪く、運転者530自身が「NO」を選択した場合(ステップA34)には、カーナビ50のタッチパネルモニタ30上の「NO」を選択するか(ステップA40)、音声で「NO」と発声する(ステップA41)ことにより、そのデータを統合通信端末80から病院センター局210宛に送信する(ステップA42)。また、病院センター局210のセンターサーバ580が、応答確認メッセージを送信したにも関わらず規定時間内に該当車両からの応答確認メッセージを受信できない場合(ステップA39.8)には、病院センター局210のセンターサーバ580の遠隔監視サービス(ステップA43)が開始され、車載カメラ60にリモートアクセスする。車載端末20のカーナビ50に接続されている車載カメラ60は、運転者530の運転状態をモニタリングする(ステップA44、A45)。そのデータは、病院センター局210のセンターサーバ580宛に、統合通信端末80から暗号化されて送信され(ステップA46)、病院センター局210のルータ570でデータを受信し、暗号化ユニット560でそのデータを復号化する(ステップA47)。
【0045】
復号化された画像データは、遠隔監視ユニット750の画像処理部760で解析され、病院センター局210のスタッフにより、運転者530の運転状況が監視される。病院センター局210のスタッフによる運転者530の運転可否判断で「問題ない」と判断した場合(ステップA49)には、カーナビ50が内蔵するGPSユニット550の現在地の位置情報を病院センター局210宛に送信する(ステップA39)。病院センター局210のセンターサーバ580の位置情報ユニット600で車両位置情報を確認し、現時点での車両10の位置を確認する(ステップA38)。その車両位置情報を元に、近場の地域病院情報を統合通信端末80宛に送信する(ステップA39.5)。統合通信端末80から、位置情報を受信したカーナビ50は、近場の地域病院情報をタッチパネルモニタ30上の地図に表示する(ステップ39.6)。運転者530が引き続きサービスを継続するか否かを判断する(ステップA39.7)。
【0046】
一方、運転者530が「運転継続不可」と判断した場合(ステップA48)には、病院センター局210のセンターサーバ580の緊急メッセージ送信ユニット770の緊急停止要求メッセージ部780から緊急停止要求メッセージが、統合通信端末80宛に送信される(ステップA50)。そして、統合通信端末80内の#1通信インタフェ−ス390、#2インタフェース400、#3インタフェース410及び#4インタフェース420で受信した緊急停止要求メッセージは、車載LANインタフェース130から、車載LANバス430上に接続される各制御ユニットに対し、ハザード、減速、車両停止制御メッセージを送信する(ステップA53)。
【0047】
ハザード、減速、車両停止制御メッセージを受信した車両10内の各制御ユニットは、連携して車両を緊急停止させる(ステップA54)。また、病院センター局210のセンターサーバ580の緊急メッセージ送信ユニット770の緊急停止要求メッセージ部780から緊急停止要求メッセージが、統合通信端末80宛に送信される(ステップA50)。すると、緊急メッセージ送信ユニット770の緊急対応要求メッセージ部790より、緊急対応要求メッセージが、警察センター局200、自動車保険事業者センター局220及び/又はレッカー事業者センター局230へ暗号化ユニット560により暗号化して送信され、マルチキャスト通信される(ステップA51)。同様に、ユーザ情報管理データベース680、車両情報870、位置情報880が、警察センター局200、自動車保険事業者センター局220及び/又はレッカー事業者センター局230へ暗号化されてマルチキャスト通信され、警察センター局200、自動車保険事業者センター局220及びレッカー事業者センター局230のセンターサーバ840のユーザ情報管理データベース850に個人情報として管理され、緊急メッセージ送信ユニット920の緊急対応要求メッセージ部930より、緊急対応要求メッセージが自動転送される際に(ステップA52)、暗号化ユニット820を実装したルータ830から、インターネット240を経由して、アクセス網内の暗号化ユニット820を実装したルータ830と暗号化通信によって、緊急対応要求メッセージが、交番145、地域病院155、自動車保険事業支店165及び/又はレッカー事業者支店175宛てに転送され、各事業者が連携して迅速な対応が可能となる(ステップA54)。
【0048】
上述の如く、ハンドルに実装された、生体情報読み取り機能を利用して、運転者の血圧等の生体情報を取得する方法は知られていた。しかし、運転者の個人情報を計測する際に、認証機能を実装することなく運転者の生体情報が計測され、個人情報の取り扱いに問題がある。また、計測された生体情報は、車両内に実装された、記憶装置や記憶装置を持った携帯端末に保存されるのみで、外部ネットワークを利用した、異なる通信メディア間やアクセスポイント間のシームレス通信を実現するための統合通信端末を利用することによる、リアルタイム性やモビリティ性を改善するものはない。また、車両を運転している状態においても、常に運転者の生体情報を読み取り、インターネットを利用した、暗号化されたネットワーク経由で運転手が任意に登録した、病院センター局において、リアルタイムに顧客(運転者)の生体情報を管理し、その運転者に健康上の緊急事態が発生した際に、車載カメラを利用した遠隔監視サービスや強制介入制御で車両を緊急停止させることによって被害を最小限に抑え、車両の近くに存在する交番、地域病院、自動車保険事業支店及びレッカー事業者支店が連携して緊急対応を実施するといった本発明による運転者の健康管理システムや緊急時対応方法を記述している発明は知られていない。
【0049】
以上、本発明による運転者の健康管理システム及び緊急時対応方法の好適な実施例の構成及び動作を詳述した。しかし、斯かる実施例は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨や精神を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であること、当業者には容易に理解できよう。例えば、本発明の実施態様は、課題を解決するための手段における構成(1)及び(8)に加えて次のような構成として表現できる。
(2)前記病院センター局には、前記運転者の持病その他の健康データを車両データと共に予め登録している上記(1)の運転者の健康管理システム。
(3)前記車載端末は、カーナビゲーションシステム(カーナビ)及び各種通信機能を有する統合通信端末を含み、前記運転者及び前記病院センター局側の双方向通信手段とする上記(1)又は(2)の運転者の健康管理システム。
(4)前記車載端末は、前記無線通信手段を介して前記病院センター局に加えて警察センター局、自動車保険事業者センター局及びレッカー事業者センター局の少なくとも1つのセンター局に接続され、前記運転者の健康状態又は前記車両の状態に応じて対応可能にする上記(1)、(2)又は(3)の運転者の健康管理システム。
(5)前記車載端末には車載カメラが接続され、前記運転者及び前記車両の状態を前記病院センター局側で遠隔モニタリング可能にする上記(1)乃至(4)の何れかの運転者の健康管理システム。
(6)前記病院センター局には、前記車載端末を介して前記運転者に緊急メッセージを発信する緊急メッセージ発信手段を備える上記(1)乃至(5)の何れかの運転者の健康管理システム。
(7)前記生体情報読み取り手段により読み取られた前記生体情報を送信暗号化して送信する暗号化手段を備える上記(1)乃至(6)の何れかの運転者の健康管理システム。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明による運転者の健康管理システムの好適な実施例の全体構成を示すシステム構成図である。
【図2】図1中に示す車載端末に含まれるカーナビ及び統合通信端末の詳細構成を示すブロック図である。
【図3】図1中の車両のハンドルに関連して設けられた運転者の生体情報読み取り装置の詳細構成を示すブロック図である。
【図4】図1中の病院センター局、警察センター局、自動車保険事業者センター局及びレッカー事業者センター局の詳細構成を示すブロック図である。
【図5】本発明による運転者の健康管理システムの動作を説明するフローチャートの一部である。
【図6】本発明による運転者の健康管理システムの動作を説明する図5に続くフローチャートの一部である。
【符号の説明】
【0051】
10 車両
20 車載端末
50 カーナビ
60 車載カメラ
70 ハンドル
80 統合通信端末
180 アクセス網
200 警察センター局
210 病院センター局
220 自動車保険事業者センター局
230 レッカー事業者センター局
240 通信ネットワーク(インターネット)
455、460,520 生体情報読み取り装置
530 運転者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転者の健康状態を前記車両に搭載された生体情報読み取り装置により読み取られた前記運転者の生体情報に基づいて管理する運転者の健康管理システムにおいて、
前記車両に搭載され通信機能を有する車載端末と、無線通信手段を介して前記車載端末に接続された病院センター局とを備え、
前記車載端末を介して前記生体情報読み取り装置で読み取られた前記運転者の生体情報を前記病院センター局でモニタすると共に当該モニタ結果を前記車載端末を介して前記運転者に送信することを特徴とする運転者の健康管理システム。
【請求項2】
前記病院センター局には、前記運転者の持病その他の健康データを車両データと共に予め登録していることを特徴とする請求項1に記載の運転者の健康管理システム。
【請求項3】
前記車載端末は、カーナビゲーションシステム(カーナビ)及び各種通信機能を有する統合通信端末を含み、前記運転者及び前記病院センター局側の双方向通信手段とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の運転者の健康管理システム。
【請求項4】
前記車載端末は、前記無線通信手段を介して前記病院センター局に加えて警察センター局、自動車保険事業者センター局及びレッカー事業者センター局の少なくとも1つのセンター局に接続され、前記運転者の健康状態又は前記車両の状態に応じて対応可能にすることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の運転者の健康管理システム。
【請求項5】
前記車載端末には車載カメラが接続され、前記運転者及び前記車両の状態を前記病院センター局側で遠隔モニタリング可能にすることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の運転者の健康管理システム。
【請求項6】
前記病院センター局には、前記車載端末を介して前記運転者に緊急メッセージを発信する緊急メッセージ発信手段を備えることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の運転者の健康管理システム。
【請求項7】
前記生体情報読み取り手段により読み取られた前記生体情報を送信暗号化して送信する暗号化手段を備えることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の運転者の健康管理システム。
【請求項8】
車両に搭載された生体情報読み取り装置により読み取られた前記車両の運転者の生体情報を病院センター局に送信して前記運転者の状態をモニタリングして前記運転者の緊急時に予め決められた緊急時対応を行う緊急時対応方法において、
前記運転者情報及び前記車両情報を予め前記病院センター局に登録する情報登録ステップと、
前記運転者の生体情報を前記病院センター局へ適宜に送信するステップと、
前記運転者から前記病院センター局へ送信される前記運転者の生体情報を分析して異常状態を検出するステップと、
前記異常状態の検出時に前記車両に対して緊急時対応を行うステップと
を備えることを特徴とする運転者の緊急時対応方法。
【請求項9】
前記病院センター局へ送信される生体情報を暗号化する暗号化ステップを更に備えることを特徴とする請求項8に記載の運転者の緊急時対応方法。
【請求項10】
前記緊急時対応は、警察、自動車保険事業者及びレッカー事業者の少なくとも1つへの通報を含むことを特徴とする請求項8又は9に記載の運転者の緊急時対応方法。
【請求項11】
前記運転者が前記緊急時対応サービスを受けるか否か随時選択するサービス選択ステップを更に備えることを特徴とする請求項8、9又は10に記載の運転者の緊急時対応方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−80718(P2009−80718A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−250536(P2007−250536)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】