説明

選択成膜方法、成膜装置、及び構造体

【課題】炭素を含む膜を選択成長させること。
【解決手段】主面上にトレンチとポストが形成された基板13上に、選択的に炭素を有した膜を、プラズマCVD法により堆積する選択成膜方法である。基板を設置する反応室11において、第1電力により、膜の原料ガスのプラズマを生成し、反応室と連通し、区画された補助空間21において、第2電力により、基板に対してエッチング性を有するガスのプラズマを生成して、反応室に、イオン及びラジカルを供給する。反応室において、基板の主面に垂直方向に電界を発生させるバイアス電圧を制御して、基板のポストの上面、トレンチの側面及び底面に至るイオン量を制御する。第1電力、第2電力、バイアス電圧を制御することにより、基板の前記ポストの上面、トレンチの側面及び底面のうちの選択された1つの面、又は、2つの面に対して、膜を成膜する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主面に、トレンチとポストによる凹凸が形成された基板において、ポストの上面、トレンチの側面及び底面の3面のうち、少なくとも何れか1面に、炭素を含む膜を選択的に成膜する成膜方法、成膜装置、構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、集積回路などの半導体装置においては、ドライエッチングによる微細加工が行われている。そのためには、半導体基板上に、フォトレジストを塗布し、露光、現像して、パターン化されたフォトレジストを形成して、このフォトレジストをマスクにして、ドライエッチングすることが行われている。このフォトレジストには、エッチング耐性の高いベンゼン環を有する材料が用いられている。半導体装置においては、集積密度を向上させるために、要求される加工幅は、益々、狭くなりつつある。例えば、ULSIなどにおいては、加工幅をナノスケールとすることが要求されており、そのためには、短波長光による露光が必要となっている。加工幅が30nm程度以下になると、波長193nmのArFレーザを用いた液浸技術、又は、EUVを光源として用いる必要がある。しかしながら、ベンゼン環を有する材料には、波長193nmに大きな光吸収があるため、レジストの下部まで光が浸透し難く、露光不足を生じる。この結果、レジストマスクを厚く形成できず、深いトレンチの形成に対して、ドライエッチングの耐性がないという問題がある。また、波長193nmに光吸収がない材料を用いるとすると、エッチング耐性が弱く、必要な深さのトレンチの加工ができないという問題があった。
【0003】
この問題を解決する技術として、下記特許文献1に開示の技術が知られている。特許文献1に開示の技術は、フォトリソグラフィによりパターン化されたフォトレジストマスクの上面と、側面に窓を塞がない程度に、アモルファスカーボン膜を被膜して、このアモルファスカーボン膜により、ドライエッチングにおけるマスクの耐性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−158306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1によるアモルファスカーボン膜の堆積は、有機材料とアモルファスカーボンとの接着性に注目したもので、フォトレジストと異なる材料の被加工物の露出面には、堆積し難いものの、フォトレジストマスクの上面と側面とには、一様に堆積する。したがって、パターン化されたマスクの窓の側面にも、不均一に、アモルファスカーボンが堆積するために、加工幅が均一にならないという問題がある。
また、特許文献1には、ポストの上面、トレンチの側面及び底面の3面における少なくとも1面に、選択的に炭素を含む膜を成膜する選択成膜については、何ら開示されていない。
本発明は、上記の課題を解決するために成されたものであり、その目的は、ポストの上面、トレンチの側面及び底面の3面において、少なくとも1面に、選択的に炭素を含む膜を成膜する選択成膜技術を確立することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、主面にトレンチとポストが形成された基板上に、選択的に炭素を有した膜を、プラズマCVD法により堆積する選択成膜方法において、基板を設置する反応室において、第1電力により、膜の原料ガスのプラズマを生成し、反応室と連通し、区画された補助空間において、第2電力により、基板に対してエッチング性を有するガスのプラズマを生成して、反応室に、イオン及びラジカルを供給し、反応室において、基板の主面に垂直方向に電界を発生させるバイアス電圧を制御して、基板のポストの上面、トレンチの側面及び底面に至るイオン量を制御し、第1電力、第2電力、バイアス電圧を制御することにより、基板のポストの上面、トレンチの側面及び底面のうちの選択された1つの面、又は、2つの面に対して、膜を成膜することを特徴とする選択成膜方法である。
【0007】
原料ガスが、反応室において、第1電力によりプラズマ化される。したがって、炭素を含む膜を生成するための分子、原子の量は、第1電力により制御される。このうちこれらの粒子のイオンは、バイアス電圧によるバイアス電界により、基板側に加速される。したがって、基板上への中性粒子、ラジカルの供給量は、第1電力により制御され、基板上へのこれらの粒子のイオンの供給量は、第1電力及びバイアス電圧により制御され、イオンの運動エネルギーはバイアス電圧により制御される。
【0008】
補助空間は、金属メッシュなどにより反応室と区画されているが、反応室へ連通している空間である。また、補助空間は、反応室に接続されているが、反応室とは異なる独立した室であっても良い。この補助空間において、エッチング性を有するガスのプラズマが生成される。このプラズマからエッチング性を有する原子や分子のイオン、ラジカルが、反応室に供給される。この時、これらの粒子のイオンとラジカルの生成量は、第2電力により制御される。そして、イオンは、バイアス電圧によるバイアス電界により基板に向かって加速される。したがって、これらの粒子のラジカルの反応室への供給量は、第2電力により制御され、これらの粒子のイオンの反応室への供給量は、第2電力及びバイアス電圧により制御され、イオンの運動エネルギーはバイアス電圧により制御される。
【0009】
原料ガスの中性分子、中性原子、分子ラジカル、原子ラジカル、エッチング性を有するガスの分子ラジカル、原子ラジカルは、ポストの上面に対する衝突頻度が最も高く、トレンチの側面と底面は、深さが深くなるにしたがって、衝突頻度は低下する。よって、トレンチのアスペクト比が小さい場合には、これらの粒子は、ポストの上面、ポストの側面、トレンチの底面と、均一に接触することになる。
【0010】
一方、原料ガスの分子イオン、原子イオン、エッチング性を有するガスの分子イオン、原子イオンは、バイアス電圧による基板の主面に垂直な方向にかかる電界により加速されるので、電界に垂直なポストの上面とトレンチの底面との衝突の頻度は、ポスト側面との衝突の頻度よりも大きくなる。また、イオンのポストの上面への衝突頻度は、トレンチの底面への衝突頻度よりも大きいが、バイアス電圧を大きくするにしたがって、トレンチの底面へのイオンの衝突頻度は、ポストの上面への衝突頻度に等しくなるまで、大きくなる。
【0011】
まず、エッチング性を有する粒子のラジカルの存在により、ポストの上面、トレンチの側面及び底面の何れにも、炭素を含む膜が形成されない状態に、第1電力、第2電力、バイアス電圧が調整される。この状態を、以下、初期状態という。原料ガス、エッチング性を有するガスのプラズマを、この初期状態で発生させる。次に、第1電力とバイアス電圧とを調整することで、炭素を含む粒子の生成量を制御し、炭素を含む粒子のイオンと、エッチング性を有する粒子のイオンの基板に対する供給量を制御する。これにより、イオンアシストによる基板の主面に対する炭素を含む膜の成膜速度を調整する。膜の成膜速度は、原料粒子のラジカルによる成膜速度とイオンアシストによる成膜速度との和による成膜速度と、エッチング性を有する粒子のラジカルと基板との反応によるエッチング速度との差により決定される。この時、第1電力、第2電力、バイアス電圧を調整することにより、ポストの上面、トレンチの側面及び底面の3面のうち、少なくとも1面に対して、膜が選択的に成長するように調整することができる。
【0012】
第2の発明は、エッチング性を有するガスから生じるラジカルは、Hラジカル、Arラジカル、OHラジカルの少なくとも1種であること特徴とする。
特に、Hラジカル、Arラジカルとを組合せることで、選択的成膜が効果的に実施できる。
第3の発明は、エッチング性を有するガスは水素ガスとアルゴンガスとの混合ガスであることを特徴とする。水素ガスとアルゴンガスを用いて、エッチング性を有するラジカルを発生すると、選択的成膜を効果的に実施できる。
第4の発明は、水素ガスとアルゴンガスの流量比を制御することにより、成膜する面の選択性を制御することを特徴とする。第1電力、第2電力、及びバイアス電圧の制御により、基本的には、選択的成膜が実現されるが、水素ガスとアルゴンガスとの流量比により、反応室に供給されるHラジカルとArラジカル、Hイオンと、Arイオンの発生量を制御できる。これにより基板に対するエッチング速度を制御して、成膜面の選択性を効果的に実現できる。
【0013】
第5の発明は、水素ガスとアルゴンガスの総流量に対する水素ガスの流量比を、1/9上1/3以下にして、トレンチの側面には、膜を成膜させないことを特徴とする。
第6の発明は、水素ガスとアルゴンガスの総流量に対する水素ガスの流量比を、1/9以上1/3以下にして、トレンチのアスペクト比を3.6以上として、ポストの上面にのみ、膜を成膜することを特徴とする。
この場合に、ポストの上面だけに、成膜することができる。
第7の発明は、基板の温度を制御することにより、成膜する面の選択性を制御することを特徴とする。
第8の発明は、ポストは、基板上に形成されたパターン化されたフォトレジスト膜であり、トレンチの底面は、基板の上面であることを特徴とする。
【0014】
第9の発明は、主面にトレンチとポストが形成された基板上に、選択的に炭素を有した膜を、プラズマCVD法により堆積する選択成膜装置において、基板を設置する反応室と、反応室に膜の原料ガスを供給する第1ガス供給装置と、反応室において、膜の原料ガスのプラズマを生成するため第1電力を供給する第1電源装置と、反応室と連通し、区画された補助空間と、補助空間に基板に対してエッチング性を有するガスを供給する第2ガス供給装置と、補助空間において、基板に対してエッチング性を有するガスのプラズマを生成するための第2電力を供給する第2電源装置と、反応室において、基板の主面に垂直方向に電界を発生させるバイアス電圧を供給する第3電源装置と、基板の周囲を覆う金属メッシュとを有し、バイアス電圧を制御して、基板のポストの上面、トレンチの側面及び底面に至るイオン量を制御し、第1電力、第2電力、バイアス電圧を制御することにより、基板のポストの上面、トレンチの側面及び底面のうちの選択された1つの面、又は、2つの面に対して、前記膜を成膜することを特徴とする選択成膜装置である。
【0015】
また、第10の発明は、ポスト、トレンチを有した基板に、炭素を有した膜を形成した構造体において、少なくとも一次元方向の幅が、0.1μm以上、10μm以下の範囲に存在するポスト又はトレンチを有し、ポストの上面、トレンチの底面のみ、ポスト又はトレンチの側面のみ、トレンチの側面と底面のみ、又は、ポストの上面と側面にのみ、炭素を有した膜が形成された構造体である。ポストは、凸部分であり、トレンチは凹部である。ポスト、トレンチは、ストライプ形状、ドット形状を含む。角型のドット形状であれば、他の辺が0.1μm以上、10μm以下の範囲にあり、円形であれば、直径が0.1μm以上、10μm以下の範囲に存在する。少なくとも一次元方向の幅は、望ましくは、0.1μm以上、5μm以下、さらに、望ましくは、0.1μm以上、1μm以下であり、0.1μm以上、0.5μm以下の範囲である。本発明は、これらの微細部な凸部、凹部における上面、底面、側面に対する炭素を含む膜を選択成長させた構造体である。
【発明の効果】
【0016】
本方法及び装置の発明は、第1電力により原料ガスのプラズマ量、第2電力によりエッチング性ガスのイオン、ラジカル量を制御し、原料粒子イオンとエッチング性粒子イオンの基板に対する供給量をバイアス電圧と第1電力、第2電力とにより制御している。この3要素の制御により、ポストの上面と、トレンチの側面及び底面との3面のうち、少なくとも1面に対する選択的な成膜を実現することができる。特に、ポストの上面やトレンチの底面、ポスト又はトレンチの側面にのみ成膜し、他の部分には成膜しない選択成膜を実現できる。これを、基板上に形成されパターニングされたフォトレジストによるポストとトレンチ構造において、ポストの上面であるフォトレジストの上面にのみ炭素を含む膜を成膜して、マスクのドライエッチングによる耐性を向上させることができる。また、装置の発明においては、基板の周囲を覆う金属メッシュの存在により、金属メッシュによるイオンの中性化率を変化させて、イオンとラジカルのフラックス比率を変化させることができる。基板に到達するイオンとラジカルのフラックス比率は、金属メッシュの線の太さ、空孔率(空孔面積/メッシュ全面積)、基板と金属メッシュとの距離を調整することで、変化させることができる。また、構造体の発明は、少なくとも一次元方向の幅が、0.1μ以上、10μm以下の範囲に存在するポスト又はトレンチを有した構造体において、ポストの上面、トレンチの底面のみ、ポスト又はトレンチの側面のみ、トレンチの側面と底面のみ、又は、ポストの上面と側面にのみに、炭素を有する薄膜を有した新規構造体であり、微小電気機械素子(MEMS、NEMS)表面の機能性薄膜堆積、大規模集積回路の配線配線、極端紫外線解像限界を超えた超微細構造形成、微少構造体表面の修飾などに応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1.A】本発明方法を実施するための成膜装置の構成図。
【図1.B】成膜装置の一部であって、基板と、基板を囲む金属メッシュとの関係を示した斜視図。
【図2】成膜する基板の構成を示した断面図。
【図3】トレンチの側面の成膜速度とトレンチのアスペクト比との関係の、エッチング性を有するガスに与える電力に対する変化特性の測定結果を示した特性図。
【図4】トレンチの底面の成膜速度とトレンチのアスペクト比との関係の、エッチング性を有するガスに与える電力に対する変化特性の測定結果を示した特性図。
【図5】成膜比(側面/上面)とトレンチのアスペクト比との関係の、水素ガス流量比に対する変化特性の測定結果を示した特性図。
【図6】成膜比(底面/上面)とトレンチのアスペクト比との関係の、水素ガス流量比に対する変化特性の測定結果を示した特性図。
【図7】イオンエネルギーと水素ガス流量比と選択成膜との関係の測定結果を示した特性図。
【図8】選択成膜を実現するイオンエネルギーと水素ガス流量比の範囲を示した特性図。
【図9.A】ポストの上面にのみ炭素を含む膜が形成された構造体の顕微鏡写真。
【図9.B】トレンチの底面と側面にのみ炭素を含む膜が形成された構造体の顕微鏡写真。
【図9.C】ポストの上面と側面にのみ炭素を含む膜が形成された構造体の顕微鏡写真。
【図9.D】トレンチの底面にのみ炭素を含む膜が形成された構造体の顕微鏡写真。
【図10】他の実施例に係る選択成膜の方法を示した断面図。
【図11】他の実施例に係る選択成膜の方法を示した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
炭素を含む膜としては、アモルファスカーボン膜、カーボンナノ構造体膜を用いることができる。カーボンナノ構造体は、グラフェン、カーボンナノウォール、カーボンナノチュウブなどである。上記製造方法により得られるカーボンナノウォールの典型例は、基材の表面からほぼ一定の方向に立ち上がった壁状の構造を有するカーボンナノ構造体である。
【実施例1】
【0019】
成膜装置について説明する。図1.A、本実施例に係る成膜装置1の斜視図である。円筒状の筐体10の内部が反応室11である。この反応室11には、サセプタ12が設置されており、このサセプタ12の上に、成膜される基板13が設置されている。また、図1.Bに示すように、基板13を囲み基板13と同電位の金属メッシュ14が設けられている。金属メッシュ14の空孔率(全空孔の面積/金属メッシュの表面積)は、2〜81%である。また、金属メッシュ14の上面14aと、基板13の上面13aとの距離は、0.1〜1cmである。金属メッシュ14は、基板13に向かって飛来するイオンとラジカルのうち、イオンを中性粒子化し減速させ、ラジカルを透過させる。この結果、金属メッシュ14の空孔率と、基板13の上面13aとの距離を調整することで、基板13の上面14aに到達するイオンとラジカルのフラックス比率を変化させることができる。反応室11には、筐体10の側面から水素ガスにより気体化されたトルエン(C78)が供給される。トルエンガスは、原料ガス供給装置15から供給された液体トルエンを、気化装置16によりキャリアである水素ガスにより気体化して得られる。第1ガス供給装置は、原料ガス供給装置15、気化装置16で構成されている。反応室11の上部には、供給されたトルエンガスと水素ガスとをプラズマ化するための放電電極17が設けられており、この放電電極17に第1電源装置18から28MHzの高周波電力(第1電力)が供給される。さらに、放電電極17の上部には、アースされた金属メッシュ20が設けられており、その金属メッシュ20の上部空間が補助空間21を構成している。補助空間21の中には、放電電極22が設けられている。この放電電極22には、第2電源装置24から13.56MHzの高周波電力(第2電力)が供給される。補助空間21には、エッチング性ガス供給装置(第2ガス供給装置)23から、水素ガスとアルゴンガスとの混合比が正確に制御された混合ガスが供給される。また、金属メッシュ20とサセプタ12との間には、400kHzのバイアス電圧が第3電源装置25から印加されている。これにより、金属メッシュ20と基板13との間の反応室11には、基板13の主面に垂直にバイアス電界が印加される。なお、図示されていないが、反応室11のガスは、下方から排気装置により排気されて、反応室11の圧力が制御可能になっている。
【0020】
以上の構成により、反応室11には、第1電源装置18から供給される電力により、トルエン分子、トルエン分子ラジカル、トルエン分子イオン、トルエンが分解された分子(Cなど)、その分子ラジカル、分子イオン、炭素分子及び炭素原子、それらのラジカル、イオン、水素分子、水素原子、それらのラジカル及びイオン、及び、電子から成るプラズマが生成される。また、補助空間21においては、第2電源装置24から供給される電力により、アルゴン分子及びアルゴン原子、それら粒子のラジカル及びイオン、水素分子及び水素原子、それらの粒子のラジカル及びイオン、及び、電子から成るエッチング性粒子のプラズマが生成される。これらの粒子が、金属メッシュ20、14を通過するとき、電子は捕獲され、イオンの一部は中性粒子又はラジカルとなり、ラジカルの大部分は、金属メッシュ20を通過して、反応室11に供給される。反応室11に供給されるエッチング性粒子のイオンの供給量は、第3電源装置25により印加されるバイアス電圧により制御される。さらに、金属メッシュ14を通過する時、イオンの一部は金属メッシュ14で中性粒子化されて減速されて、基板に到達するイオンの量が減少する。また、ラジカルは、金属メッシュ14を通過して、基板13の上面13aに照射される。
【0021】
次に、選択成膜の実験結果について説明する。図2に示すように、シリコンの基板13に、ポスト31とトレンチ32によるストライプ状の凹凸加工を施した基板13を試料とした。ポスト31とトレンチ32の幅Wは、500nmであり、トレンチ32の深さDは、1700nmである。幅Wを一定にして、深さDを変化させて、トレンチ32のアスペクト比を、変化させて、成膜を行った。
【0022】
まず、第1電源装置18により放電電極17に供給される電力を45W、第2電源装置23により放電電極22に供給される電力(第2電力)を500Wにした。基板13の温度は100℃である。原料ガスについては、気化装置16における昇華温度が150℃、反応室11の吸入孔での温度が90℃、キャリアガス(水素)の温度は220℃、キャリアガスの流量は10sccm、原料ガスの流量は4.5sccmである。補助空間21へ供給されるエッチング性ガスについては、水素ガスの流量が70sccm、アルゴンガスの流量が10sccm、水素ガス流量比R(水素ガス流量/(水素ガス流量+アルゴンガス流量))は、88.9%である。反応室11の圧力は0.1Torr、バイアス電圧により加速されるイオンのエネルギーは45eVである。金属メッシュ20と基板13との距離は、4cm、バイアス電圧の直流オフセット電圧(交流の中心電圧)を、−20V(基板側を負電位とする)、成膜時間は15分とした。
【0023】
ポスト31の上面T、トレンチ32の側面S、トレンチ32の底面Bにおける成膜に関する結果を図3、図4に示す。図3は、トレンチ32の側面Sでの成膜速度の比率(成膜速度の最大値を基準とする比率)とアスペクト比との関係を示している。図4は、トレンチ32の底面Bでの成膜速度の比率(成膜速度の最大値を基準とする比率)とアスペクト比との関係を示している。両者ともに、比較のために、第2電源装置24により供給される電力を零とした場合、すなわち、補助空間21において、予め水素、アルゴンのラジカルやイオンを発生させずに、反応室11において、第1電源装置18の電力45Wで、それらのラジカルやイオンが発生される場合の成膜速度を測定した。
【0024】
図3、4から明らかなように、補助空間21において、水素、アルゴンのラジカル、イオンを発生した場合の方が、トレンチ32の側面S、トレンチ32の底面Bの成膜速度は、小さいことが分かる。また、そられの成膜速度の低減率は、アスペクト比が大きくなる程、大きくなることが分かる。すなわち、上面T、側面S、底面Bの3面における選択成膜に関して、エッチング性ガスのプラズマを、反応室11で発生させるのではなく、反応室11に導入する前に、予め補助空間21において、水素、アルゴンのラジカル、イオンを発生させることが、効果的であることが分かる。
【0025】
次に、バイアス電圧の直流オフセット電圧を、−20V、バイアス電圧により加速されるイオンのエネルギーは45eVとして、補助空間21へ供給される水素ガス流量比Rだけを変化させ、他の条件は上記の通りとして、上面Tの膜厚に対する側面Sの膜厚の比率、上面Tの膜厚に対する底面Bの膜厚の比率と、アスペクト比との関係を測定した。図5、図6に、それぞれの結果を示す。図5から明らかなように、水素ガス流量比Rが33.3%以下、11.1%以上の場合には、アスペクト比の実験した全範囲0.7〜4.8において、上面Tにのみ成膜されて、側面Sには成膜されないことが分かる。また、水素ガス流量比Rが50%、88.9%となると、側面Sにも成膜され、アスペクト比が小さくなるにしたがって、側面Sの膜厚が厚くなっていることが分かる。アスペクト比が大きくなると、選択性が大きくなるので、水素ガス流量比Rが33.3%以下であれば、アスペクト比に係わらず、側面Sでの成膜はないことが理解される。
【0026】
また、水素ガス流量比Rが50%の場合においても、アスペクト比が3.7以上であれば、側面Sには成膜されない。したがって、アスペクト比が3.7以上の場合には、水素ガス流量比Rが50%以下において、選択性成膜、すなわち、異方性成膜が実現されている。
【0027】
また、図6から明らかなように、水素ガス流量比Rだけでは、底面Bでの成膜を阻止すことはできないが、アスペクト比を3.6以上とすると、水素ガス流量比Rが33.3%以下において、底面Bには成膜されず、上面Tにのみ成膜されることが分かる。また、水素ガス流量比Rが、11.1%、33.3%の場合には、アスペクト比が1.6以上において、底面Bでの成膜がなく、上面Tでの成膜のみが実現しているのが分かる。
【0028】
図5、図6の結果から、水素ガス流量比Rが33.3%以下、11.1%以上であって、アスペクト比が3.6以上の場合には、上面Tのみに成膜され、側面Sと底面Bには成膜さないことが分かる。
【0029】
次に、第3電源装置25により印加されるバイアス電圧(直流オフセット電圧)を変化させることによりイオンエネルギーを変化させて、上記と同様な成膜実験を行った。イオンエネルギーと水素ガス流量比Rと選択成膜との関係を測定した。アスペクト比が、3.7の場合の結果を図7に示す。イオンエネルギーが10eVの場合には、アスペクト比が1.6以上で、水素ガス流量比Rが33.3%以下において、上面Tにのみ成膜され、側面Sと底面Bには、成膜されないことが分かる。水素ガス流量比Rが88.9%以上の場合、又は、イオンエネルギーが0eVの場合には、sub-conformal構造(上面・側面・底面すべてに堆積し、入り口が塞がる構造)が見られた。
また、図7から、水素ガス流量比Rが22.2%の場合には、イオンエネルギーが10eV以上、45eV以下において、上面Tにのみ成膜され、側面Sと底面Bには、成膜されないことが分かる。
【0030】
図7から分かるように、水素ガス流量比Rが33.3%以下、11.1%以上であって、イオンエネルギーが10eV以上、75eV以下の場合には、2サンプルの例外を除いては、上面Tにのみ成膜されて、側面Sと底面Bには、成膜されないことが分かる。水素ガス流量比Rが11.1%、イオンエネルギーが45eVの場合、水素ガス流量比Rが22.2%、イオンエネルギーが75eVの場合には、上面Tへの成膜の他、底面Bへの成膜が見られた。
【0031】
また、図7から分かるように、水素ガス流量比Rが、11.1%の場合であって、イオンエネルギーが125eVの場合には、側面Sにのみ炭素膜が成膜され、上面Tと底面Bには成膜されていないことが分かる。さらに、水素ガス流量比Rが、50.0%の場合であって、イオンエネルギーが10eVの場合には、底面Bにのみ炭素膜が成膜され、上面Tと側面Sには、炭素膜は成膜されていないことが分かる。
【0032】
以上のことから、水素ガス流量比Rが適正範囲(11.1%以上、33.3%以下)の場合に、選択成膜が顕著となり、上面Tだけの成膜を実現することができる。また、水素ガス流量比が小さく、イオンエネルギーが大きい場合に、側面Sのみの選択成膜の傾向が強くなる。そして、水素ガス流量比が大きく、イオンエネルギーが小さい場合には、底面Bのみの選択成膜が実現される傾向を示していることが分かった。
【0033】
以上の実験及びその他の実験に基づいて、選択成膜の原理を考察すると、基板温度や圧力など、その他の条件を調整することで、図8に示すように、上面T、底面B、側面Sのみの選択成膜の範囲が設定できるものと理解される。次の条件範囲で、選択成膜が実現されるものと思われる。上面Tのみの選択成膜の条件は、水素ガス流量比Rが1%以上、35%以下、イオンエネルギーは5eV以上、100eV以下である。なお、水素ガスは、微量であっても含まれていることが必要であると思われる。底面Bのみの選択成膜の条件は、水素ガス流量比Rが35%以上、65%以下、イオンエネルギーは5eV以上、100eV以下である。側面Sのみの選択成膜の条件は、水素ガス流量比Rが1%以上、20%以下、イオンエネルギーは100eV以上145eV以下である。この場合も、水素ガスは、微量であっても含まれていることが必要であると思われる。
【0034】
また、実験により次のことが確認された。第2電力が0W、基板13の温度が140℃以上、240℃以下の範囲においては、基板温度を上昇させるに伴い、底面Bと側面Sの成膜速度は減少する。基板温度が250℃以上の場合には、側面Sにおける成膜はなく、上面Tと底面Bのみに成膜が見られ、異方性成膜が実現する。金属メッシュ14又は金属メッシュ20と基板13の距離が長い程、成膜速度は大きくなる。このことは、イオン/ラジカル比が成膜速度に影響を与えることを意味している。バイアス電圧を印加しない場合には、成膜されない。イオンエネルギーが5以上、145eV以下の範囲においては成膜された。すなわち、基板13に衝突する時のイオンエネルギーが成膜に影響を与える。水素ガス流量比Rが小さくなるほど、すなわち、アルゴンガス流量比が大きくなるほど、成膜速度は増加傾向にある。これは電子エネルギー分布が成膜速度に関係していることを意味している。反応室11のガス圧は、0.1Torrにおいて、全てのアスペクト比において、成膜速度が最大となる。0.5Torr以下の範囲で圧力が低くなる程、側面成膜比(側面成膜速度/上面成膜速度)と底面成膜比(底面成膜速度/上面成膜速度)が小さくなる、すなわち、成膜の異方性が大きくなる。これは、ラジカルの拡散係数が関係していることを意味している。エッチング性ガスのプラズマ化電力(第2電力)は、500Wの場合には、0Wに比べて、成膜速度は遅くなる。側面の成膜速度の低下率は、ポストの上面の成膜速度の低下率よりも大きくなる。これは、水素原子フラックスが、異方性成膜に寄与していることを意味する。
【0035】
次に、成膜の結果の顕微鏡写真を図9に示す。図9に示されている構造体は、シリコン上にシリコン酸化膜を形成して、このシリコン酸化膜をエッチングして、ポストとトレンチを形成し、そのシリコン酸化膜の表面に窒化タングステン(WN)膜を形成し、その上に炭素膜を形成したものである。ポストとトレンチの幅は、500nmであり、トレンチの深さは、1700nm、アスペクト比は3.4である。図9.Aは、ポストの上面にのみ炭素を含む膜が形成されていることを示している。図9.Bは、トレンチの底面と側面にのみ炭素を含む膜が形成されていることを示している。図9.Cは、ポストの上面と側面にのみ炭素を含む膜が形成されていることを示している。図9.Dは、トレンチの底面にのみ炭素を含む膜が形成されていることを示している。図9.A〜図9.Dにおける条件については、基板温度は100℃、アルゴンガスの流量は70sccm、トルエン(C78)の流量は4.5sccm、反応室11の圧力は0.1Torr、放電電極22に供給される電力(第2電力)は500Wで、共通である。また、水素ガス流量比Rと、バイアス電圧によるイオンエネルギーについては、図9.Aの場合が、11.1%、9eV, 図9.Dの場合が、50%, 9eVである。 図9.Bは、水素ガス流量比Rを50%, イオンエネルギーを9eVとして、底面にのみ炭素を含む膜を成膜した後に、水素ガス流量比Rを11.1%、イオンエネルギーを125eVの側面にのみ成膜できる条件で、成膜した後の構造体の顕微鏡写真である。 図9.Cは、水素ガス流量比Rを11.1%、イオンエネルギーを9eVとして、上面にのみ炭素を含む膜を成膜した後に、水素ガス流量比Rを11.1%、イオンエネルギーを125eVの側面にのみ成膜できる条件で、成膜した後の構造体の顕微鏡写真である。
また、他の実験から、ポストとトレンチの幅を、100〜10000nmとし、トレンチの深さを、200〜2500nmとし、アスペクト比を1.6〜4とした場合について、ポストの上面のみ、ポストの上面と側面のみ、トレンチの底面のみ、トレンチの底面と側面のみに、炭素を含む膜が形成されていることが確認されている。
【実施例2】
【0036】
他の実施例について説明する。図10は、本発明をパターニングされたフォトレジスト41の上面Tにのみ炭素を含む膜42を成膜して、フォトレジスト41のエッチンク耐性を向上させるのに応用する方法を示している。シリコンやGaNなどの半導体、二酸化珪素、窒化珪素などの誘電体などのエッチングの対象物40の主面上に、ArFレーザ、又は、EUV光源用のフォトレジスト41を一様に形成する。その後、ナノスケールでの露光、現像を行い、フォトレジスト41のパターニングを行う。次に、上記の成膜装置1を用いて、第1電力、第2電力、バイアス電圧、水素ガス流量比Rを、フォトレジスト41の上面Tにのみ、炭素を含む膜42が成膜されるように調整する。調整した状態で、成膜することで、パターニングされたフォトレジスト41の上面Tのみに、炭素を含む膜42を堆積することにより、エッチング耐性の強い、マスクを得ることができる。なお、トレンチの底面Bに、上面T上の膜に比べて十分に薄い膜が、形成されても、上面T上の膜42が対象物40のエッチングにおいて耐え得る厚さであれば、対象物40のエッチングの時に除去されるので、問題はない。この状態で、炭素を含む膜42とフォトレジスト41との2重構造をマスクとして、対象物40を反応性プラズマエッチングする。これにより、ナノスケールの幅を有した深いトレンチを加工することができる。
【実施例3】
【0037】
次に、他の実施例について説明する。図11は、本発明を応用した他の例を示している。パターニングされたフォトレジスト41の上面Tとその側面Sにのみ炭素を含む膜42を成膜して、窓43の幅をフォトレジスト41による窓よりも狭くすると共に、フォトレジスト41のエッチンク耐性を向上させるのに応用する方法を示している。エッチングの対象物40の主面上に、ArFレーザ、又は、EUV光源用のフォトレジスト41を一様に形成する。その後、ナノスケールでの露光、現像を行い、フォトレジスト41のパターニングを行う。次に、上記の成膜装置1を用いて、第1電力、第2電力、バイアス電圧、水素ガス流量比を、フォトレジスト41の上面Tと側面Sにのみ、炭素を含む膜42が成膜するように調整する。調整した状態で、成膜することで、パターニングされたフォトレジスト41の上面Tと側面Sのみに、炭素を含む膜42を堆積することにより、エッチング耐性の強い、マスクを得ることができる。この状態で、炭素を含む膜42とフォトレジスト41との2重構造をマスクとして、対象物40を反応性プラズマエッチングする。これにより、ナノスケールの幅を有した深いトレンチを加工することができる。
【0038】
その他、本発明は、ポストとトレンチを有する微細加工された物体において、ポトスの上面、ポストの側面、トレンチの底面の3面のうち、少なくとも1面に選択的に炭素を含む膜を形成するマイクロマシーニング技術などに応用することができる。
【0039】
上記実施例において、炭素を含む膜の原料ガスには、トルエンを用いた。この他、原料ガスとしては、少なくとも炭素を構成元素とする種々の物質を選択することができる。一種類の物質のみを用いてもよく、二種以上の物質を任意の割合で用いてもよい。好ましい原料物質の一例としては、少なくとも炭素と水素を構成元素とする物質(ハイドロカーボン等)が挙げられる。例えば、CHである。好ましい原料ガスの他の例としては、少なくとも炭素とフッ素を構成元素とする物質(フルオロカーボン等)が挙げられる。例えば、CやCFである。また、炭素と水素とフッ素を必須構成元素とする物質(フルオロハイドロカーボン等)が挙げられる。例えば、CHFである。これらを原料ガスとすることで、炭素を含む膜、特に、カーボンナノウォールを成膜することができる。
エッチング性ガスには、水素ガス、アルゴンガスの他、窒素ガス、CHFガスを用いることがてきる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、凹凸形状の物体の面に選択的に炭素を含む膜を成膜することに用いることができる。
【符号の説明】
【0041】
1…成膜装置
11…反応室
13…基板
21…補助空間
18…第1電源装置
24…第2電源装置
25…第3電源装置
20,14…金属メッシュ
17,22…放電電極
31…ポスト
32…トレンチ
T…ポストの上面
S…トレンチの側面
B…トレンチの底面
41…フォトレジスト
42…炭素を含む膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面にトレンチとポストが形成された基板上に、選択的に炭素を有した膜を、プラズマCVD法により堆積する選択成膜方法において、
前記基板を設置する反応室において、第1電力により、前記膜の原料ガスのプラズマを生成し、
前記反応室と連通し、区画された補助空間において、第2電力により、前記基板に対してエッチング性を有するガスのプラズマを生成して、前記反応室に、イオン及びラジカルを供給し、
前記反応室において、前記基板の前記主面に垂直方向に電界を発生させるバイアス電圧を制御して、前記基板の前記ポストの上面、前記トレンチの側面及び底面に至るイオン量を制御し、
前記第1電力、前記第2電力、前記バイアス電圧を制御することにより、前記基板の前記ポストの上面、前記トレンチの側面及び底面のうちの選択された1つの面、又は、2つの面に対して、前記膜を成膜することを特徴とする選択成膜方法。
【請求項2】
前記エッチング性を有するガスから生じるラジカルは、Hラジカル、Arラジカル、OHラジカルの少なくとも1種であること特徴とする請求項1に記載の選択成膜方法。
【請求項3】
前記エッチング性を有するガスは水素ガスとアルゴンガスとの混合ガスであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の選択成膜方法。
【請求項4】
前記水素ガスと前記アルゴンガスの流量比を制御することにより、成膜する面の選択性を制御することを特徴とする請求項3に記載の選択成膜方法。
【請求項5】
水素ガスとアルゴンガスの総流量に対する前記水素ガスの流量比を、1/9以上1/3以下にして、前記トレンチの側面には、前記膜を成膜させないことを特徴とする請求項3に記載の選択成膜方法。
【請求項6】
水素ガスとアルゴンガスの総流量に対する前記水素ガスの流量比を、1/9以上1/3以下にして、前記トレンチのアスペクト比を3.6以上として、前記ポストの上面にのみ、前記膜を成膜することを特徴とする請求項3に記載の成膜方法。
【請求項7】
前記基板の温度を制御することにより、成膜する面の選択性を制御することを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の選択成膜方法。
【請求項8】
前記ポストは、基板上に形成され、パターン化されたフォトレジスト膜であり、前記トレンチの底面は、基板の上面であることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の選択成長方法。
【請求項9】
主面にトレンチとポストが形成された基板上に、選択的に炭素を有した膜を、プラズマCVD法により堆積する選択成膜装置において、
前記基板を設置する反応室と、
前記反応室に前記膜の原料ガスを供給する第1ガス供給装置と、
前記反応室において、前記膜の原料ガスのプラズマを生成するため第1電力を供給する第1電源装置と、
前記反応室と連通し、区画された補助空間と、
前記補助空間に前記基板に対してエッチング性を有するガスを供給する第2ガス供給装置と、
前記補助空間において、前記基板に対してエッチング性を有するガスのプラズマを生成するための第2電力を供給する第2電源装置と、
前記反応室において、前記基板の前記主面に垂直方向に電界を発生させるバイアス電圧を供給する第3電源装置と、
前記基板の周囲を覆う金属メッシュと
を有し、
前記バイアス電圧を制御して、前記基板の前記ポストの上面、前記トレンチの側面及び底面に至るイオン量を制御し、前記第1電力、前記第2電力、前記バイアス電圧を制御することにより、前記基板の前記ポストの上面、前記トレンチの側面及び底面のうちの選択された1つの面、又は、2つの面に対して、前記膜を成膜することを特徴とする選択成膜装置。
【請求項10】
ポスト、トレンチを有した基板に、炭素を有した膜を形成した構造体において、
少なくとも一次元方向の幅が、0.1μm以上、10μm以下の範囲に存在するポスト又はトレンチを有し、ポストの上面、トレンチの底面のみ、ポスト又はトレンチの側面のみ、トレンチの側面と底面のみ、又は、ポストの上面と側面にのみ、炭素を有した膜が形成された構造体。


【図1.A】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図11】
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【図1.B】
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【図8】
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【図9.A】
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【図9.B】
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【図9.C】
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【図9.D】
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【公開番号】特開2012−79819(P2012−79819A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221791(P2010−221791)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】