説明

酸化亜鉛薄膜、及びそれを用いた透明導電膜、及び表示素子

【課題】所望の結晶性を有する酸化亜鉛薄膜を形成する。
【解決手段】基板上に積層された酸化亜鉛薄膜であって、ウルツ鉱型の結晶性薄膜であり、該結晶性薄膜のc軸が基板に略垂直方向に配向しており、かつ該結晶性薄膜のc軸方向の極性面の一つである亜鉛面が最上層に形成されているものである。また、基板上に積層された酸化亜鉛薄膜であって、ウルツ鉱型の結晶性薄膜であり、金属薄膜層上に薄膜形成技術によって形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な酸化亜鉛薄膜、及びそれを用いた透明導電膜、及び表示素子に係り、薄膜、軽量、高精細にして、高効率かつ長寿命な透明導電膜を用いた薄膜素子、特に液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ等に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、各種携帯電話や移動体端末、モバイルコンピュータ、カーナビゲーション等の普及により、軽量で、高精彩、高輝度でかつ安価な小型な平面ディスプレイ(Flat Panel Display, FPD)への要求は高まっている。また、家庭内やオフィスにおいても、省スペース型のデスクトップディプレイや壁掛けテレビ等の平面ディスプレイが、従来のCRT管ディスプレイから置き換わりつつある。特に、高速インターネットの普及やデジタル放送の進展により、数百〜数ギガビット/秒級のデジタル信号伝送が有線、無線の双方で実用化され、一般利用者が極めて大容量の情報をリアルタイムにやり取りする時代に移りつつある。このことから、これら平面ディプレイに対する要求は従来以上の軽量性、高精彩、高輝度、低価格に加えて、デジタル信号処理可能な高速表示性が求められている。このようなFPDには、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display, LCD)、プラズマディスプレイ(Plasma Display Panel, PDP)、フィールドエミッションディスプレイ(Field Emission Display)、有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode, OLED)ディスプレイ、等々が知られている。これらのディスプレイにおいては、各表示画素に電場や電流を印加することで、光の発生または光量の調節を行い、同時にその光を素子外部に取り出す必要から、可視光は透過するが、電気も流すことが可能な透明電極が用いられている。
【0003】
透明電極材料は、大きく結晶系と非晶質系に分類される。結晶系としては、インジウム-スズ酸化物(Indium-Tin-Oxide、ITO)を含む酸化インジウムIn2O3系、酸化亜鉛ZnO系、酸化スズSnO2系、酸化チタンTiO2系、酸化カドミウムスズCdSnO4系が知られている。また、非晶質系には酸化インジウム亜鉛IZO系(Indium Zinc Oxide。In2O3とZnOの中間組成で現れる非晶相。代表的にはIn2O3が80%)が挙げられる。これらの中で圧倒的に普及している透明電極材料は、酸化インジウムIn2O3系の一種であるITO(In2O3結晶に10〜20%のスズSnでInを置換したもの。)である。ITOを透明電極として薄膜形成する代表的手法はスパッタ法である。これは透明電極材料であるITOのターゲットを真空装置内に、薄膜形成させたい基板に対向させて配置し、アルゴンArや酸素O2ガスをスパッタガスに用いてターゲット材料を気化させ、基板上に堆積させていく。この手法によって膜厚数十〜数百nmのITO薄膜が、数m角サイズの大型基板上に一括成膜されている。また、ITOからなる透明電極は、FPDを構成するその他の部材とのマッチング性やフォトレジストによるパターニング加工性、途中での加熱処理等によってもその特性が変化することなく、安定である。
【0004】
しかしながら、ITOは稀少金属であるインジウムInを主要成分に含むが、In自身の地下埋蔵量は限られ、かつ亜鉛鉱石の副産物としてしか産出されないため、資源枯渇が懸念されている。このようなことから、ITOに代わる代替透明電極材料が渇望されている。ITO以外の透明電極材料のうち、SnO2系、TiO2系は導電性自体がITOに比べて1桁以上大きく、かつ加工性に難がある。CdSnO4系はCdの毒性があるため余り検討されていない。IZO系は主成分がInであるため、Inを用いない代替材料とは言い難い。ITOと同等の透明性、導電性が得られているものはZnO系であり、これが代替材料の最有力候補とされる。
【0005】
酸化亜鉛ZnO結晶に関する一般的物性は、例えば非特許文献1にまとめられている。例
えば、酸化亜鉛ZnOは天然に紅亜鉛鉱として産出するウルツ鉱型(六方晶系)構造をもっていて、結合様式はイオン結合と共有結合の中間に位置している。a軸=3.249Å、c軸=5.207Åで、c軸方向に極性がある。c軸方向に直角にへき開すると、Znが表面に露出した(0001)面(Zn面と呼ぶ)、及びOが露出した(0001)面(O面と呼ぶ)が得られる。その他、無極性の(1120)面や(1010)面がある。表面にはテラスやステップの存在することが多い。100kbarを超える高圧下ではNaCl型(立方晶)が現れ、また銅線上に析出したZnを酸化したZnOはこの高圧下同様のNaCl型構造ながら10%格子定数の大きな結晶構造を示すことが知られている。ZnOは単結晶状態ではウルツ鉱型の六方晶系に属するIIb-VIb族ワイドギャップn型半導体であり、バンドギャップが3.2eVあるために、可視域では透明となる。伝導帯はZn 4sとO 2pのσ反結合によって形成されているが、導電性を付与するためにはこの伝導帯へ自由キャリアを付与する必要がある。導電性ZnOの自由キャリアには2種類あり、一つはZnO結晶中の酸素空孔または格子間の過剰Znが形成してZnOの中でZnの比率がOよりも多くなる場合、もう一つはZnまたはOを価数の大きな元素(IIIb族=B, Al, Ga, In、VIIb族=F)で置換した場合で、余った結合電子が自由電子化する。代表的な置換元素はAlとGaで、置換比は高々5%程度であり、ITOと同等の導電性を得るには、このZn比率が高い状態と置換元素添加の双方の効果が必要である。
【0006】
ウルツ鉱型の酸化亜鉛結晶が、そのc軸方向に対して亜鉛だけからなる原子層の亜鉛層と酸素だけからなる原子層の酸素層とが交互に堆積した構造を有することは古くから知られており、その最表面層が亜鉛層となるか酸素層となるかによって、それぞれ亜鉛面、酸素面と呼ばれており、その電気的極性は亜鉛面が正、酸素面が負であるために、その表面の物性が大きく異なることが酸化亜鉛単結晶のこれら両面について検討されている。
【0007】
また、ZnO単結晶の極性面の違いは、外部物質の吸着、化学反応性の違いにも現れる。このZnOを薄膜化する手法には、ITO同様のスパッタ法以外に、反応性プラズマ堆積法(Reactive Plasma Depostion, RPD)や化学蒸気堆積法(Chemical Vapor Depostion, CVD)、分子線蒸着法(Molecular Beam Deposition, MBD)、パルスレーザ堆積法(Pulsed Laser Depostion, PLD)等、各種薄膜形成法が採用されている。例えば、特許文献1には、分子線蒸着法によるZnOの成膜方法が示されている。この手法で、ZnまたはOを価数の大きな元素(IIIb族=B, Al, Ga, In、VIIb族=F, Cl, Br, I)でドーピングさせつつ成膜されるが、分子線蒸着法では成膜速度が遅く、また真空装置にも超真空状態が必要であり、FPD用途の成膜方法として適切ではない。一般にZnOは結晶性が高いため、ガラスや金属、或いは有機樹脂等のアモルファスな基板上では、基板界面直近から結晶状態となるが、結晶核が多数発生し、かつその配向がランダムであるため、薄膜成長初期では微結晶となり、より稠密な結晶膜となるには膜厚100nm以上まで成長する必要があるといわれる。このような薄膜を基板界面から高結晶な状態にするためには、成長初期の結晶核の数を抑制し、可能な限り緩やかに核成長を行うことが一般的な手法である。しかしながら、今日のFPD等の基板サイズがメートル級大型透明電極形成にとっては、量産性向上のためになるべく高速に薄膜形成することが望まれている。ITO透明電極においては、スパッタ法により成膜されるが、ITOの場合基板界面から高結晶性で膜厚100nmを超えても透明電極としての性質がより薄い膜と同一である。このように、ITOの代替となる透明電極材料となるためには、量産性の高い薄膜形成手法を用いても、基板界面近傍から厚膜に至るまで、高結晶性な膜となることが必要である。
【0008】
【非特許文献1】科学技術庁無機材質研究所研究報告書第50号、『酸化亜鉛に関する研究』、1987年
【特許文献1】特開平7−106615
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述したような定法に従って基板上に成膜しても、所望の結晶性を有する酸化亜鉛薄膜を形成することはできないといった問題があった。また、所望の結晶性を有する酸化亜鉛薄膜を形成することができないことから、透明電極として使用できる所望の電気特性を満足する酸化亜鉛薄膜を製造できないといった問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、所定の条件下で酸化亜鉛薄膜を製造することで結晶性を制御できることを見いだし本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明に係る酸化亜鉛薄膜は、基板上に積層された酸化亜鉛薄膜であって、ウルツ鉱型の結晶性薄膜であり、該結晶性薄膜のc軸が基板に略垂直方向に配向しており、かつ該結晶性薄膜のc軸方向の極性面の一つである亜鉛面が最上層に形成されているものである。また、本発明に係る酸化亜鉛薄膜は、基板上に積層された酸化亜鉛薄膜であって、ウルツ鉱型の結晶性薄膜であり、金属薄膜層上に薄膜形成技術によって形成されたものである。
【0012】
また、本発明に係る酸化亜鉛薄膜は、該結晶性薄膜のa軸方向が該酸化亜鉛薄膜の薄膜面内で一方向に配向していることが好ましい。また、上記金属薄膜層の膜厚としては、例えば1〜20nmである。さらに、上記金属薄膜層は、正のイオン性極性基を最表面に有することが好ましい。
【0013】
さらに、本発明に係る酸化亜鉛薄膜は、結晶性薄膜直上に積層された酸化亜鉛とは異なる第2の金属薄膜層を有する構成であっても良い。上記第2の金属薄膜層の膜厚としては例えば1〜20nmとすることができる。また、上記第2の金属薄膜層としては金属亜鉛を挙げることができる。上記第2の金属薄膜層は透明電極膜であってもよい。
【0014】
ところで、上述した本発明に係る酸化亜鉛薄膜は、それ自体を透明電極膜として使用することができる。すなわち、上述した本発明に係る酸化亜鉛薄膜を透明電極として使用した表示素子を提供することができる。
【0015】
一方、本発明に係る酸化亜鉛薄膜の製造方法は、金属薄膜層上に薄膜形成技術によって酸化亜鉛を薄膜形成する工程を含み、ウルツ鉱型の結晶性薄膜であり、該結晶性薄膜のc軸が基板に略垂直方向に配向しており、かつ該結晶性薄膜のc軸方向の極性面の一つである亜鉛面が最上層に形成された酸化亜鉛薄膜を上記金属薄膜上に形成するものである。
【0016】
特に、本発明に係る酸化亜鉛薄膜の製造方法では、上記金属薄膜層を基板上に真空中で成膜する工程を更に含み、上記金属薄膜層を真空中で形成した後、真空を維持して引き続き上記酸化亜鉛薄膜を形成することが好ましい。上記薄膜形成技術としてはスパッタリング法を適用することができる。また、上記酸化亜鉛を薄膜形成する工程では基板温度を200〜300℃とすることが好ましい。さらに、上記酸化亜鉛薄膜を薄膜形成する工程では、室温条件で所定の膜厚で初期成膜を行い、それに引き続き残りの膜厚を成膜することが好ましい。上記初期成膜は低電力のスパッタリング法を適用し、残りの膜厚を蒸着によって成膜することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る酸化亜鉛薄膜は、任意の基板上に酸化亜鉛の極性と配向性を制御された所望の結晶性を有するため、より稠密で、欠陥の少ない薄膜となる。また、本発明に係る透明電極は、任意の基板上に酸化亜鉛の極性と配向性を制御された所望の結晶性を有する酸化亜鉛薄膜を主体とするため、電気特性に優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を図面を参照して詳細に説明する。
本発明に係る酸化亜鉛薄膜は、基板上に積層された酸化亜鉛薄膜であって、ウルツ鉱型の結晶性薄膜であり、該結晶性薄膜のc軸が基板に略垂直方向に配向しており、かつ該結晶性薄膜のc軸方向の極性面の一つである亜鉛面が最上層に形成されているものである。また、本発明に係る酸化亜鉛薄膜は、基板上に積層された酸化亜鉛薄膜であって、ウルツ鉱型の結晶性薄膜であり、金属薄膜層上に薄膜形成技術によって形成されたものである。
【0019】
図1には、本発明に係る酸化亜鉛薄膜の基本的構成を示した。本発明の酸化亜鉛薄膜(1)は基板(2)上に形成されており、酸化亜鉛薄膜(1)を構成している亜鉛Zn原子と酸素原子Oが結合している様子を模式的に示している。本発明の酸化亜鉛薄膜はウルツ鉱型であり、その酸化亜鉛薄膜のc軸方向(3)は基板に対して略垂直方向に形成されている。六方晶系であるウルツ鉱型結晶において、そのa軸方向はc軸に対して垂直であるため、図1の構成の中では、特に図示してはいないが、酸化亜鉛薄膜(1)のa軸は基板面に平行な方向にある。本発明を特徴づける点として、c軸方向の最上層(4)はすべて亜鉛Zn原子によって構成されており、すなわち酸化亜鉛の亜鉛面が最上層に形成されている。ちなみに、酸化亜鉛薄膜の基板に最も近接している原子層を最下層(5)と呼ぶことにする。
【0020】
ここで酸化亜鉛薄膜とは、主成分が亜鉛Znと酸素Oとからなる無機化合物薄膜であり、それ以外に複数の元素を添加元素として含有することができる。そのような添加元素としては、例えばホウ素B、アルミニウムAl、ガリウムGa、インジウムIn、炭素C、シリコンSi、ゲルマニウムGe、スズSn、窒素N、フッ素F、スカンジウムSc、チタンTi、バナジルV、ニッケルNi等の元素を亜鉛Zn及び酸素O以外の添加元素として含むことができる。
【0021】
また、本発明が対象とする酸化亜鉛薄膜が結晶性であるとは、通常の使用温度と圧力の範囲において結晶性であることであり、その圧力範囲は少なくとも大気圧以下であり、かつ温度はその圧力下での酸化亜鉛が固体となる温度範囲である。その使用する圧力が更に高い場合も考え得るが、その場合本発明の対象とする結晶性の酸化亜鉛であるかどうかは、その結晶構造がウルツ鉱型であることによって区別される。その結晶構造は、最も単純な組成として全く添加元素を含まない酸化亜鉛ZnO単結晶が知られており、それとほぼ同様の結晶学的特長を示す。
【0022】
このウルツ鉱型(六方晶系)の酸化亜鉛はそのc軸方向に極性があり、亜鉛Znの原子面と酸素の原子面がc軸方向に交互に積層されている。本発明の酸化亜鉛薄膜においては、このうち亜鉛Zn面が最上層(4)になるように形成されている。
【0023】
また、本発明にいうc軸が基板に略垂直に配向しているとは、該酸化亜鉛薄膜が基板の上に積層されており、その結晶c軸が基板面に略垂直な向きに成長していることを意味する。但し、そのc軸が略垂直な向きとは、該酸化亜鉛薄膜全体に対して、例えばX線回折法のような構造解析手法を用いると、少なくとも90%以上、好ましくは95%以上がc軸方向の回折ピークが優先的に検知されることを指す。また、本発明にいう該酸化亜鉛薄膜のa軸方向が薄膜面内で一方向に配向しているとは、該酸化亜鉛薄膜が基板の上に積層されており、その結晶c軸が基板面に平行な向きに成長しており、かつその基板面内での配向方向が特定の方向にほぼ配向していることを意味する。但し、そのa軸が特定方向に配向している状態とは、該酸化亜鉛薄膜全体に対して、例えばX線回折法のような構造解析手法を用いると、少なくとも80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上がa軸方向の回折ピークが優先的に検知される向きのことを指す。
【0024】
また、基板(2)としては、詳細を後述するが、コーニング1737等の一般的な硼珪ガラスや溶融石英等のガラス基板、或いはシリコンや石英等の単結晶基板、SUSや銅、アルミニウム等の金属基板、ポリカーボネート(Polycarbonate)やポリアクリレート(Polyacrylate)等のプラスチック基板、或いはこれらを組み合わせた多層基板を用いることができる。また、基板(2)にはガラス、シリコン、ガリウム砒素等の無機物質からなる基板や、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル等の有機物質からなる基板、或いは両者を複合化させた基板を用いることができる。これら基板(2)はその母材からの切り出し研磨、射出成形、サンドブラスト法、ダイシング法等の手法によって形成することができる。但し、これらの基板(2)は該薄膜をその上に形成する上での基材であり、その基板表面にそのまま直接形成されるものではない。本発明に係る酸化亜鉛薄膜では、例えば、当該基板(2)の上に金属薄膜層を成膜することで、単結晶基板の特定方位面の上に酸化亜鉛薄膜をエピタキシャル成長させることができる。例えば、基板(2)の表面を超清浄化した後、その上に金属薄膜層を形成し、当該金属薄膜層上に酸化亜鉛薄膜の極性面と薄膜面内の配向方向を制御して膜形成することができる。
【0025】
本発明に係る酸化亜鉛薄膜において、下地層となる金属薄膜層としては、例えば、金属亜鉛膜を挙げることができる。また、金属薄膜層としては、その上に成膜する酸化亜鉛薄膜の結晶配向性を制御できれば金属亜鉛からなる薄膜に限定されず、例えば、銅、銀、金、白金、タングステン、モリブデン、クロム、ニッケル、ジルコニウムやそれら金属の合金といった金属を使用してもよい。また、金属薄膜層は、1〜20nmの膜厚であることが好ましい。金属薄膜層の膜厚が1nm未満である場合には、アイランド状になってしまう場合があり酸化亜鉛薄膜の結晶配向性を制御できない虞がある。また、金属薄膜層の膜厚が20nmを超える場合には、全体としての透明性を損なう場合があり透明電極として使用できない虞がある。
【0026】
本発明の酸化亜鉛薄膜を形成する手法には、各種薄膜形成技術、例えばスピンコート法、塗布法、キャスト法、スパッタ法、真空蒸着法、分子線蒸着法、液相エピタキシャル法、原子層エピタキシャル法、ロール法、スクリーン印刷法、インクジェット法、電界重合法、ラビング法、吹き付け法、水面展開法、ラングミュア・ブロジェット膜法、プラズマ化学気相成長法、ゾルゲル法等を用いることができる。但し、これらの各種薄膜形成技術は、以下に述べるような該酸化亜鉛薄膜を直接形成する金属薄膜層の配向規制効果をその薄膜形成過程において損なわないことが望ましい。また、これら製膜中または製膜後の配向化を促進させるために、成膜の前後または成膜中において、基板の加熱や冷却、光や電磁波、電場や磁場、或いは成膜雰囲気の真空度や雰囲気中のガス等を、成膜条件の最適化の手段として用いることも可能である。
【0027】
以上のように、本発明に係る酸化亜鉛薄膜は、ウルツ鉱型の結晶性薄膜であり、該結晶性薄膜のc軸が基板に略垂直方向に配向しており、かつ該結晶性薄膜のc軸方向の極性面の一つである亜鉛面が最上層に形成されている。このように、本発明に係る酸化亜鉛薄膜は、極性面の一つである亜鉛面が最上層に形成されるために、種々のプロセス環境中のガス、例えば水、酸素、炭酸ガス等に対して安定なものとなる。このような外部からのガス付着性が制御されることにより、酸化亜鉛薄膜全体の導電性や透過率の安定性も向上する。また、本発明に係る酸化亜鉛薄膜においては、極性面が制御されているため、成長初期の極薄膜でも結晶性が高く、かつパターニングプロセスにおけるエッチング特性制御性にも優れる。さらに、本発明に係る酸化亜鉛薄膜は、極性面の一つである亜鉛面が最上層に形成されるために、その他の材料薄膜の基板として用いることも可能である。すなわち、本発明に係る酸化亜鉛薄膜は、透明電極として使用されるだけでなく、更に第2の金属薄膜層を形成することによって、高品質のその他の材料薄膜として使用することもできる。
【0028】
特に、本発明に係る酸化亜鉛薄膜は、ITOに代わるFPD用の透明電極として用いるためには、基板界面からの薄膜成長を制御することが非常に望ましい事である。上述したように、金属薄膜層上に酸化亜鉛薄膜を成膜する場合には、スパッタリング法により高速かつ大面積に成膜することができ、酸化亜鉛薄膜のZnの比率が多くなるように成膜することができ、さらに、成膜初期から確実に結晶性が向上したものとなる。このように、スパッタリング法によって本発明に係る酸化亜鉛薄膜を製造する場合には、MBE法やPLD法等のように極めて低速で、かつ限られた小面積の範囲で成膜条件を精密に制御して作製する場合と比較して、比較的大面積の範囲を一括して成膜することができ、既存の製造設備を用いても高い結晶性のZnO薄膜を製造することができる。
【0029】
また、本発明に係る酸化亜鉛薄膜は、その薄膜または素子形成の過程で、必要とする薄膜または素子構造を作製するために、各種精密加工技術を用いることができる。例えば、精密ダイアモンド切断加工、レーザ加工、エッチング加工、フォトリソグラフィ、反応性イオンエッチング、集束イオンビームエッチング等が挙げられる。また、あらかじめ加工された薄膜または素子を複数個配列させたり、多層化したり、またはその間を光導波路で結合したり、またはその状態で封止したりすることもできる。
【0030】
また、本発明に係る酸化亜鉛薄膜はまたは素子を不活性ガスまたは不活性液体を充填させた容器に保存することをも可能である。更にその動作環境を調整するための冷却または加熱機構を共存させることもできる。容器に用いることができる素材としては銅、銀、ステンレス、アルミニウム、真鍮、鉄、クロム等の各種金属やその合金、或いはポリエチレンやポリスチレン等の高分子材料等にこれら金属を分散させた複合材料、セラミック材料等を用いることができる。また、断熱層には発泡スチロール、多孔質セラミックス、ガラス繊維シート、紙等を用いることができる。特に、結露を防止するためのコーティングを行うことも可能である。また、内部に充填する不活性液体としては、水、重水、アルコール、低融点ワックス、水銀、等の液体やその混合物を用いることができる。また、内部に充填する不活性ガスとしては、ヘリウム、アルゴン、窒素等を挙げることができる。また、容器内部の湿度低減のために、乾燥剤を入れることも可能である。
【0031】
また、本発明に係る酸化亜鉛薄膜は、製品の形成後に、外観、特性の向上や長寿命化のための処理を行ってもよい。こうした後処理としては、熱アニ−リング、放射線照射、電子線照射、光照射、電波照射、磁力線照射、超音波照射等が挙げられる。更に、該有機電界発光素子を各種の複合化、例えば接着、融着、電着、蒸着、圧着、染着、溶融成形、混練、プレス成形、塗工等、その用途または目的に応じた手段を用いて複合化させることができる。また、本発明に係る酸化亜鉛薄膜を透明導電膜として用いた素子、特に表示素子においては、駆動させるための電子回路と近接させて高密度実装させることも可能であり、外部との信号の授受のインターフェースやアンテナ等と一体化することもできる。
【0032】
本発明に係る酸化亜鉛薄膜を透明電極として使用した表示素子の一例を図2〜4に示す。なお、図2〜4に示した表示素子は、本発明の適用例であり具体的な構造はこれらに限定されるものではない。
【0033】
図2には、表示素子として液晶ディスプレイに本発明を適用した場合のデバイス構造を示している。このデバイスの中では、上下に対向した透明電極付の基板に液晶が挟まれたタイプの液晶ディスプレイについて示している。透明電極10a及び10bは上下に対向した基板15a及び15b上に形成されている。上部の基板15a表面には、RGBのカラーフィルタ14、ブラックマトリクス12、透明電極10a及び配向膜11a等が形成されており、その面が液晶13に接している。基板15aの液晶13側とは反対側の表面には偏光板16aが貼り付けられている。また、下部の基板15b表面には透明電極10b、配向膜11bが形成されており、その面が液晶13に接している。基板15bの液晶13側とは反対側の表面には偏光板16bが貼り付けられており、その更に下部には蛍光灯18が設けられている。上下の基板15a及び15bは接着材17a及び17bを介して一定間隔に保たれており、その間に液晶13が充填されている。おり、その外部には駆動回路19a及び19bが設けられている。
【0034】
図3には、表示素子としてプラズマディスプレイに本発明を適用した場合のデバイス構造を示している。このデバイスの中では、前面ガラス基板21上に表示電極として透明電極20が設けられており、更に電圧降下を抑制するためのバス電極22、誘電体層(上部)23、保護層(MgO)24が形成されている。その下には、RGB蛍光体28を含む背面基板29上の構造体が形成されており、その構造体は表示電極27、誘電体層26、隔壁25等を更に含んでいる。
【0035】
図4には、表示素子として有機発光ダイオードディスプレイに本発明を適用した場合のデバイス構造を示している。このデバイス中では、ガラス基板33上に形成された透明電極(陽極)30があり、その上部にはRGB発光層を含む有機層31が形成されている。それらは隔壁34により区切られており、それら全体を覆うように陰極32が形成されている。素子全体は封止缶35で覆われており(簡略して示している)、外気に触れることがないように保護されている。
【0036】
以上のように構成された各種表示素子においては、ITOに代わる透明電極として上述したような酸化亜鉛薄膜を使用している。この酸化亜鉛薄膜は、上述したように、極性面の一つである亜鉛面が最上層に形成されるために、表面へのガス付着性等が制御されることにより酸化亜鉛薄膜全体の導電性や透過率の安定性が向上しており、薄膜、軽量、高精細にして高効率かつ長寿命なものとなる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
本発明の酸化亜鉛薄膜を形成するための、薄膜形成過程の一例を図5を用いて説明する。図5には、本発明の酸化亜鉛薄膜形成真空装置の構成を示した。この薄膜形成真空装置は、基板を装置内に搬入するための仕込室40、基板表面状態を分析する分析室41、酸化亜鉛薄膜を形成するためのスパッタ室42、酸化亜鉛薄膜以外の物質を蒸着するための蒸着室43、仕込室40から投入された基板を真空を破ることなく、別の真空室41から43に振り分けるための受渡室44からなっており、それぞれゲートバルブ(45a、45b、45c、45d)からなる。これら5つの真空室は特に図示していないが、それぞれ独立した真空ポンプによって排気されている。このうち、仕込室40、スパッタ室42、蒸着室43、受渡室44はそれぞれターボ分子ポンプによって排気され、そのベース圧力は1×10-8 Torrである。分析室41はイオンゲッタポンプによって排気され、そのベース圧力は1×10-9Torrである。
【0038】
分析室41にはXPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)分析装置が取り付けられており、基板や成膜試料を大気に曝すことなく、表面分析することが可能である。この中には、基板表面の汚れや膜表面から内部の電子状態解析を行うために試料表面をスパッタするHe、Ar切り替え可能な局所的スパッタ機構が設けられている。
【0039】
スパッタ室42には、市販の酸化亜鉛スパッタ用ターゲット材料が取り付けられており、必要に応じてスパッタ室42を独立でターゲット材料の交換が可能である。スパッタガスにはアルゴン(Ar)、酸素(O2)、水素(H2)、窒素(N2)、二酸化炭素(CO2)の最大5種のガスを用いることができる機構が設けてあり、適宜バルブの開閉及びガス流量を調整することによって、単独または混合ガス化してスパッタリングに用いることができる。代表的な酸化亜鉛薄膜形成にはアルゴン(Ar)を中心に用い、そのガス流量は50sccm、ガス流入中のスパッタ室42の真空度は5×10-3Torrを保持するように調整される。混合ガス化してスパッタする場合は、アルゴン(Ar)を中心に、その他のガスを混合し、その混合比率はガスの流量の比率によって調整する。スパッタは直流スパッタ法によって行い、代表的な印加電力は200から600Wの範囲で、適宜調整される。また、スパッタ室42には基板加熱機構が設けられており、室温から最高300℃の範囲で、基板温度調整が可能である。ターゲット直上での基板とターゲットとの間の距離は150mmで、スパッタ室42内で、スパッタ放電中のターゲット直上を水平方向に基板を移動させて目的のターゲット材料を基板上に堆積させる。堆積量はスパッタガス種と流量、スパッタ電力、及び基板の移動速度によって制御され、いくつかのスパッタ条件で事前に成膜したものの膜厚を段差計によって測定し、蒸着条件と得られる膜厚の校正関係を得ておく。
【0040】
また、蒸着室43には、抵抗加熱型の蒸着ボートが最大4つ装着可能で、4種の材料を同時に真空蒸着することができる。蒸着ボートと基板との距離は300mmで、基板温度を室温から最大300℃の範囲で調整可能、蒸着中基板は固定されている。また、蒸着量は基板近傍及び各蒸着ボート対抗位置に設けられた水晶振動子型膜厚計によって制御されている。更に基板と蒸着ボートとの間にはシャッタが設けられ、最初に所定の電力を蒸着ボートに供給して、各蒸着ボート対抗位置に設けられた水晶振動子型膜厚計によって検知された一定の蒸発量に達した時点でシャッタを開けて蒸着を開始し、基板近傍の膜厚計によって所定の膜厚に到達した時点でシャッタを閉じて蒸着を終了させる。但し、各蒸着材料の膜厚計の蒸着量と実際の膜厚は別途、段差計によって測定された実際の蒸着膜の膜厚によって校正されている。
【0041】
また、受渡室44には、真空状態で基板表面を加熱するための加熱機構が設けられており、室温から最大1000℃まで加熱可能である。
【0042】
次に、この薄膜形成真空装置を用いて、本発明の酸化亜鉛薄膜を形成した過程の一例を図6を用いて説明する。
【0043】
第1段階として薄膜形成真空装置内に基板50を準備した。具体的には、基板には無アルカリガラス(旭ガラス、AN100、100×100×0.7mm)を用いた。購入した基板を、最初に中性洗剤で擦り洗いし、次に純水流水洗浄、純水超音波洗浄を施した後、基板をクリーン乾燥炉で乾燥させた後、紫外線照射装置を用いて、オゾン洗浄したものを手早く専用の基板ホルダに装着し、仕込室40から薄膜形成真空装置に搬入、直ちに真空に排気した。1×10-7Torr以下になった段階で、ゲートバルブ(45a、45d)を開け、(特に図示はしていないが)搬送棒を用いて、真空を破ることなく、基板を基板ホルダごと、蒸着室43に搬送した。次に、ゲートバルブ(45a、45d)を閉じた。このようにして、基板50を準備した。
【0044】
第2段階として、基板上に金属薄膜層51を形成した。具体的には、基板50を搬入する前に、複数の蒸着原料を蒸着室43の蒸着ボートに装着しておく。一度、蒸発温度まで蒸着ボートに通電して脱ガスした状態で、基板50の搬入に備えておく。後の実施例ではいくつかの金属を変えた時の効果を検証した結果を示すが、この最初の実施例では、蒸着原料に金属亜鉛(高純度化学、純度4N)を用いた。ここで、基板温度は室温(約23℃)、50、100℃の場合を検討し、その蒸着量は水晶振動子膜厚計で、金属層膜厚Lmetal=0、0.5、1、3、6、10、20nmとした。これらの基板温度と金属層膜厚の組み合わせで基板50上の金属薄膜層51を形成した単独膜を形成し、分析室41のXPSによって、薄膜形成状態を解析し、基板50のガラスの主成分である珪素のSi 2p軌道のシグナルが検知されるかどうか(その上に形成された金属薄膜層51の成分である亜鉛のZn 2p軌道のシグナルに比べて組成比で5%より小さい場合を検知されない状態とした)を確認しておいた。このようにして金属薄膜層51を形成したものは、直ちにゲートバルブ(45c、45d)を開けて、真空を破ることなく、スパッタ室42に搬送し、すぐにゲートバルブ(45c、45d)を閉めて、次の段階に供した。
【0045】
第3段階では、酸化亜鉛薄膜52を形成した。具体的には、ZnOターゲットには3%AlドープZnO(東ソー)を用い、スパッタ時の基板温度と、蒸着膜厚、印加電力については複数の条件を選択した。すなわち、基板温度は室温、蒸着膜厚は最終膜厚を70、150、300nmから選び、印加電力は200、300、400Wから選んだ。最終膜厚に到達した試料は、特に基板温度が室温よりも高い場合はその場で室温まで放冷した後、ゲートバルブ(45a、45c)を開けて、真空を破らずに仕込室40まで基板を搬送し、ゲートバルブ(45a、45c)を閉じた後、仕込室40を大気圧に戻してから、試料を取り出した。
【0046】
以上のような手法によって、本発明の酸化亜鉛薄膜が得られた。次に、このようにして得られた酸化亜鉛薄膜が所望の該結晶性薄膜のc軸が基板に垂直に配向しており、かつ該結晶性薄膜のc軸方向の極性面の一つである亜鉛面が最上層に形成されている状態となっているかどうかを確認した方法について説明する。
【0047】
酸化亜鉛薄膜の結晶性はX線回折法によって解析した。得られた薄膜を大気中に取り出し、X線回折装置で、薄膜の膜厚方向の結晶状態(リガク製RINT2500HL、X線源Cu、X線出力50kV-250mA、走査軸2θ/θ連動、走査範囲5≦2θ≦90deg、ステップ0.02deg/step)及び膜面内の結晶状態(リガク製ATX-G、X線源Cu、X線出力40kV-400mA、走査軸2θχ/φ、走査範囲20≦2θ≦80deg、走査速度1.0deg/、ステップ0.05deg/step、入射角度0.4deg)を解析した。得られた薄膜のX線回折測定を行うと、複数の回折ピークが得られるが、それらを粉末X線回折データJCPDS(ICDD)に登録されている酸化亜鉛のX線回折ピーク情報と対応させ、ピークの帰属を行った。その中で、得られた酸化亜鉛薄膜が結晶性であることはX線回折測定を行うと複数の回折ピークが確認されることで検知でき、かつそのc軸方向が基板に垂直に配向していることは膜厚方向の結晶状態を測定すると、c軸方向の回折ピークである(002)、(004)、...(002n)(ここでn=1,2,3…)のみが検知され、それ以外の方向の回折ピーク、例えば(100)、(101)、(102)、(110)、(103)、(200)、(112)、(201)、(202)等が検知されないことで判断できる。実際にはc軸方向の主たる回折ピーク(002)のピーク強度を1とした時、c軸以外の方向の回折ピーク強度が1%以下である場合をもって、c軸が基板に垂直に配向と判断した。
【0048】
酸化亜鉛薄膜の極性は、成膜装置内のXPS分光装置による表面状態の解析と、得られた薄膜を成膜装置外部に取り出して、そのエッチング特性を評価する手法によって判断した。成膜装置内での評価には、XPS分光装置(島津/Kratos社製X線光電子分光(XPS)装置AXIS-HS、X線源モノクロAl、管電圧15kV、管電流15mA、分析面積600×1000μm2、分解能Pass Energy 40、イオン銃設定加速電圧2.5kV、イオン銃励起電流15mA、HeまたはArガス圧3×10-5Pa)を用いた。成膜した酸化亜鉛薄膜表面がZn面であるかO面であるかは、通常XPSそのものの測定では判断が容易ではなく、その光電子の角度分光を行うことでも判断できる。
【0049】
但し、ここではより簡便な方法で極性判定を行うことにした。すなわち、酸化亜鉛のZn面の方がO面よりも雰囲気ガスを吸着しやすく、特にO2、CO、H2O等のガスを吸着して表面第1層の構造緩和する特性を生かして、成膜が終わったスパッタ室42内で、スパッタ用の電圧を印加せず、ただCO2ガスのみをスパッタ時に用いるのと同じ流量で30分間流し続け、CO2を表面吸着させた。この試料を分析室41まで同様に真空を破らずに搬送し、そこのXPS装置によって吸着したCO2の炭素C 1s由来の光電子信号強度から極性面の形成度を判断した。すなわち、酸化亜鉛薄膜の最表面が完全な酸素面であればCO2吸着が起こらず、バックグラウンドレベル以上の炭素C 1sの信号は検知されないが、最表面が完全な亜鉛面であればCO2が強く吸着するため、強い炭素C 1sの信号が検知される(A. N. Mariano and R. E. Hanneman: Crystallographic polarity of ZnO crystals: J. Appl. Phys. 34 (1963) 384-388参照)。
【0050】
完全な酸素面と完全な亜鉛面の状態の差は、別途市販の極性面が明らかな酸化亜鉛単結晶基板を用いて以下のように定義した参照値を用いて判断した。すなわち、市販の極性面が明らかな酸化亜鉛単結晶基板を同じ成膜装置内に搬入して、その表面を分析室41に具備されているHeガススパッタによって表面を清浄化し、その基板をスパッタ室42に真空を破ることなく搬送し、そこで同様にCO2ガスに暴露させ、しかる後再び分析室41に真空を破ることなく搬送し、そこでXPS分析を行うことで、完全な酸素面と完全な亜鉛面が実現できている場合の光電子信号強度を得てこれらを参照値とした。実際の酸化亜鉛薄膜試料に対して得られた光電子信号強度をIs、完全な酸素面と完全な亜鉛面での光電子信号強度をそれぞれ、Io、Izとすると、(Is−Io)/(Iz−Io)で極性度を評価し、極性度1の時を完全亜鉛面状態、極性度0の時を完全酸素面状態と定義した。そして、極性度0.8以上の場合を極性あり、それ以外を極性なしと判定した。
【0051】
次に、得られた酸化亜鉛薄膜の透明導電膜としての特性を評価した手法について説明する。酸化亜鉛薄膜試料の透明性は、分光光度計(日本分光社製V-570)を用いて測定し、波長380から750nmの可視光域における試料の光透過率の平均値によって評価した。また、試料の膜厚は、段差計(Tencor社製、表面形状測定装置 Surface Profilier P-10)を用いて測定し、事前に部分的に酸化亜鉛薄膜をスパッタ堆積しない領域を基板上に形成し、薄膜を形成した領域との段差を測定することで決定した。また、試料の導電性は、シート抵抗測定器(共和理研、抵抗率測定器 Model K-705RM)を用いて測定し、測定されたシート抵抗の値を、先に求めた試料の膜厚で割った値をもって、試料の抵抗率とした。抵抗安定性は、試料を大気中100℃に保管し、24時間後に同様にシート抵抗を測定して、初期の抵抗に対する抵抗の変化率によって決定した。
【0052】
表1には、このようにして得られたガラス基板上の下地層膜厚と下地層基板温度との関係を示した。いくつかの下地層基板温度を検討したが、下地層膜厚3nm以上で基板からのXPS信号が実質的に検知できなくなり、十分な被覆率が得られているものと考えられた。
【0053】
【表1】

【0054】
また、表2、3、4に酸化亜鉛薄膜の膜厚がそれぞれ75、150、300nmの場合の、得られらた酸化亜鉛薄膜のc軸配向性、極性度、透過率、抵抗率、抵抗安定性等の物性を、下地層基板温度と下地層膜厚ごとにまとめて示した。
【0055】
【表2】

【0056】
【表3】

【0057】
【表4】

【0058】
表2に示すように、酸化亜鉛膜厚75nmの時、下地層のない場合は2.3×10-3Ωcmの抵抗率を示すが、これよりも小さな1.6×10-3Ωcm場合があり、いずれもc軸配向性と極性度を示している。特筆すべきは、その抵抗安定性で、190から200%の安定性しかないものが、これらの場合には120%程度まで安定性が向上している。表3及び4に示すように、酸化亜鉛膜150及び300nmの場合、元々の抵抗率が異なるが、その中でより抵抗率が小さくなる場合、更に抵抗安定性が向上する場合はいずれもc軸配向性と極性度を示している。但し、透過率は下地層の膜厚が厚い程低下する傾向がある。また、酸化亜鉛薄膜の膜厚が厚くなると透過率が低下する傾向があるが、これは酸化亜鉛薄膜の光干渉による反射率の変化に由来していると思われる。
【0059】
このように透明導電膜として用いるには、その目的に応じた透過率、抵抗率を選ぶ必要があるが、本発明の酸化亜鉛薄膜においてはより低抵抗状態とより安定な状態を実現できる。
【0060】
〔実施例2〕
本実施例では、酸化亜鉛薄膜を、酸化亜鉛薄膜形成時の基板の基板温度を100℃で形成した結果を示す。結果として表5、6、7に酸化亜鉛薄膜の膜厚がそれぞれ75、150、300nmの場合の、得られらた酸化亜鉛薄膜のc軸配向性、極性度、透過率、抵抗率、抵抗安定性等の物性を、下地層基板温度と下地層膜厚ごとにまとめて示した。
【0061】
【表5】

【0062】
【表6】

【0063】
【表7】

【0064】
表5に示すように、酸化亜鉛膜厚75nmの時、下地層のない場合は1.6〜1.7×10-3Ωcmの抵抗率を示すが、これよりも小さな1.1〜1.2×10-3Ωcm場合があり、いずれもc軸配向性と極性度を示している。特筆すべきは、その抵抗安定性で、180から190%の安定性しかないものが、これらの場合には117%程度まで安定性が向上している。表6及び7に示すように、酸化亜鉛膜150、300nmの場合、元々の抵抗率が異なるが、その中でより抵抗率が小さくなる場合、更に抵抗安定性が向上する場合はいずれもc軸配向性と極性度を示している。但し、透過率は下地層の膜厚が厚い程低下する傾向がある。また、酸化亜鉛薄膜の膜厚が厚くなると透過率が低下する傾向があるが、これは酸化亜鉛薄膜の光干渉による反射率の変化に由来していると考えられる。また、実施例1の場合と比べると、このような効果が現れる下地層の基板温度と膜厚の範囲はやや異なっており、これは下地層が同じでも、酸化亜鉛薄膜を形成する際の温度により、下地層の表面状態もしくは構造が変化したことによると考えられる。特に、酸化亜鉛薄膜を成膜する際の温度は、室温よりも高い温度に設定した方がc軸配向性と極性度を制御することができ、低い抵抗率及び優れた抵抗安定性が達成できる傾向にあることが判る。
【0065】
このように透明導電膜として用いるには、その目的に応じた透過率、抵抗率を選ぶ必要があるが、本発明の酸化亜鉛薄膜においてはより低抵抗状態とより安定な状態を実現できる。
【0066】
〔実施例3〕
本実施例では、酸化亜鉛薄膜を、酸化亜鉛薄膜形成時の基板の基板温度を200℃で形成した結果を示す。結果として表8、9、10に酸化亜鉛薄膜の膜厚がそれぞれ75、150、300nmの場合の、得られらた酸化亜鉛薄膜のc軸配向性、極性度、透過率、抵抗率、抵抗安定性等の物性を、下地層基板温度と下地層膜厚ごとにまとめて示した。
【0067】
【表8】

【0068】
【表9】

【0069】
【表10】

【0070】
表8に示すように、酸化亜鉛膜厚75nmの時、下地層のない場合は1.1〜1.2×10-3Ωcmの抵抗率を示すが、これよりも小さな8.2〜8.32×10-4Ωcm場合があり、いずれもc軸配向性と極性度を示している。特筆すべきは、その抵抗安定性で、179から182%の安定性しかないものが、これらの場合には116%程度まで安定性が向上している。表9及び10に示すように、酸化亜鉛膜150、300nmの場合、元々の抵抗率が異なるが、その中でより抵抗率が小さくなる場合、更に抵抗安定性が向上する場合はいずれもc軸配向性と極性度を示している。但し、透過率は下地層の膜厚が厚い程低下する傾向がある。また、酸化亜鉛薄膜の膜厚が厚くなると透過率が低下する傾向があるが、これは酸化亜鉛薄膜の光干渉による反射率の変化に由来していると考えられる。また、実施例1の場合と比べると、このような効果が現れる下地層の基板温度と膜厚の範囲はやや異なっており、これは下地層が同じでも、酸化亜鉛薄膜を形成する際の温度により、下地層の表面状態もしくは構造が変化したことによると思われる。特に、本実施例では、酸化亜鉛薄膜を成膜する際の温度は、室温や100℃の場合よりc軸配向性と極性度をより制御することができ、低い抵抗率及び優れた抵抗安定性が達成できる傾向にあることが判る。
【0071】
このように透明導電膜として用いるには、その目的に応じた透過率、抵抗率を選ぶ必要があるが、本発明の酸化亜鉛薄膜においてはより低抵抗状態とより安定な状態を実現できる。
【0072】
〔実施例4〕
本実施例では、酸化亜鉛薄膜を、酸化亜鉛薄膜形成時の基板の基板温度を300℃で形成した結果を示す。結果として表11、12、13に酸化亜鉛薄膜の膜厚がそれぞれ75、150、300nmの場合の、得られらた酸化亜鉛薄膜のc軸配向性、極性度、透過率、抵抗率、抵抗安定性等の物性を、下地層基板温度と下地層膜厚ごとにまとめて示した。
【0073】
【表11】

【0074】
【表12】

【0075】
【表13】

【0076】
表11に示すように、酸化亜鉛膜厚75nmの時、下地層のない場合は5.7〜5.8×10-4Ωcmの抵抗率を示すが、これよりも小さな4.6〜4.8×10-4Ωcm場合があり、いずれもc軸配向性と極性度を示している。特筆すべきは、その抵抗安定性で、175から178%の安定性しかないものが、これらの場合には115%程度まで安定性が向上している。酸化亜鉛膜150、300nmの場合、元々の抵抗率が異なるが、その中でより抵抗率が小さくなる場合、更に抵抗安定性が向上する場合はいずれもc軸配向性と極性度を示している。但し、透過率は下地層の膜厚が厚い程低下する傾向がある。また、酸化亜鉛薄膜の膜厚が厚くなると透過率が低下する傾向があるが、これは酸化亜鉛薄膜の光干渉による反射率の変化に由来していると考えられる。また、実施例1の場合と比べると、このような効果が現れる下地層の基板温度と膜厚の範囲はやや異なっており、これは下地層が同じでも、酸化亜鉛薄膜を形成する際の温度により、下地層の表面状態もしくは構造が変化したことによると思われる。特に、本実施例及び実施例3からは、酸化亜鉛薄膜を成膜する際の温度が200〜300℃の場合には、c軸配向性と極性度を特に制御することができ、より低い抵抗率及び特に優れた抵抗安定性が達成できる傾向にあることが判る。
【0077】
このように透明導電膜として用いるには、その目的に応じた透過率、抵抗率を選ぶ必要があるが、本発明の酸化亜鉛薄膜においてはより低抵抗状態とより安定な状態を実現できる。
【0078】
〔実施例5〕
本実施例では、酸化亜鉛薄膜の成膜の初期の段階で、10nmだけ室温で成膜し(これを初期成膜と呼ぶことにする)、しかる後、それぞれの酸化亜鉛薄膜の成膜条件で、引き続き残りの膜厚を蒸着する場合も検討した。
【0079】
初期成膜を施す場合には、まず洗浄済み基板に対して、以下のような表面処理を施した。まず、基板を専用の真鍮製基板治具に固定し、それごとホットステージに載せて150℃に加熱した。(尚、ホットステージ及び基板治具は、事前に200℃で加熱、紫外線照射して、発ガスによって基板表面が汚染されることがないようにした。)この状態で、別途同じ温度の恒温槽で加熱したテフロンロットを強く手で(耐熱手袋をつけて)一方向に数回擦りつけた。(この擦りつけた方向をラビング方向と呼ぶことにする。)このような処理を施したガラス基板は室温に戻した後、成膜装置に同様に搬入した。次に、これまでと同様にして、下地層を形成した。更に、この基板上に基板温度室温で、10nmだけ酸化亜鉛薄膜を形成した。急速な酸化亜鉛薄膜の成長を抑制するため、なるべく低いスパッタ電力を選択した。
【0080】
表14には、このようにして得られたガラス基板上に表面処理したものの上の下地層膜厚と下地層基板温度との関係を示した。
【0081】
【表14】

【0082】
表14に示すように本実施例ではいくつかの下地層基板温度を検討したが、下地層膜厚1nm以上で基板からのXPS信号が実質的に検知できなくなり、十分な被覆率が得られているものと思われる。
【0083】
また、本実施例の結果として表15、16に酸化亜鉛薄膜の膜厚が150nmで、基板温度がそれぞれ室温と200℃の場合の、得られらた酸化亜鉛薄膜のc軸配向性、極性度、透過率、抵抗率、抵抗安定性等の物性を、下地層基板温度と下地層膜厚ごとにまとめて示した。
【0084】
【表15】

【0085】
【表16】

【0086】
表15に示すように、基板温度が室温の時、下地層のない場合は1.8×10-3Ωcmの抵抗率を示すが、これよりも小さな1.3×10-3Ωcm場合があり、いずれもc軸配向性と極性度を示している。特筆すべきは、その抵抗安定性で、約170%の安定性しかないものが、これらの場合には114%程度まで安定性が向上している。表16に示すように、基板温度が200℃の時、下地層のない場合は約9.0×10-4Ωcmの抵抗率を示すが、これよりも小さな約6.5×10-4Ωcm場合があり、いずれもc軸配向性と極性度を示している。特筆すべきは、その抵抗安定性で、約150%の安定性しかないものが、これらの場合には110%程度まで安定性が向上している。但し、透過率は下地層の膜厚が厚い程低下する傾向がある。また、酸化亜鉛薄膜の膜厚が厚くなると透過率が低下する傾向があるが、これは酸化亜鉛薄膜の光干渉による反射率の変化に由来していると思われる。また、実施例1の場合と比べると、このような効果が現れる下地層の基板温度と膜厚の範囲はやや異なっており、これは下地層が同じでも、酸化亜鉛薄膜を形成する際の温度により、下地層の表面状態もしくは構造が変化したことによると思われる。また、これらの膜の面内の配向性をX線回折法によって解析した。特に、ラビング方向に平行方向で測定した時の酸化亜鉛薄膜のa軸の回折強度Ia//とラビング方向に垂直方向で測定した時の酸化亜鉛薄膜のa軸の回折強度Ia⊥との比率(Ia//)/(Ia//+Ia⊥)をa軸の面内配向度(%)と定義すると、いずれも場合も面内配向度は70%以上であった。
【0087】
このように透明導電膜として用いるには、その目的に応じた透過率、抵抗率を選ぶ必要があるが、本発明の酸化亜鉛薄膜においてはより低抵抗状態とより安定な状態を実現できる。
【0088】
〔実施例6〕
本実施例では、酸化亜鉛薄膜の特性を一層向上させるために、得られた酸化亜鉛薄膜最上層に表面修飾を行った。
【0089】
具体的には実施例5の方法で作成された酸化亜鉛薄膜を用い、スパッタ室42で成膜された直後に、真空を破ることなく、蒸着室43まで試料を搬送した。そこで、実施例1で行ったのと同様の手順でその最上層に亜鉛を極薄く真空蒸着した。具体的には、最上層形成時の基板温度は室温とし、最上層亜鉛の膜厚を3nmとした。このような表面処理を行った前後の抵抗率の変化を、酸化亜鉛薄膜の膜厚が150nmで、酸化亜鉛薄膜形成時の基板温度がそれぞれ室温と200℃の場合について、それぞれ表17、18にまとめた。
【0090】
【表17】

【0091】
【表18】

【0092】
表17及び18に示すように、いずれの場合も、表面処理後に抵抗率が一層低下していた。特に記載はしていないが、この程度の膜厚の最上層亜鉛形成によって、透過率はほとんど変化していなかった。より厚く最上層亜鉛を形成した場合には更に抵抗率が低下できるが、透過率の低下が徐々に大きくなる虞があるため、透明導電膜としての特性を考慮して適宜設定することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明に係る酸化亜鉛薄膜を模式的に示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る酸化亜鉛薄膜を透明電極として用いた表示素子(液晶ディスプレイ)を模式的に示す要部断面図である。
【図3】本発明に係る酸化亜鉛薄膜を透明電極として用いた表示素子(プラズマディスプレイ)を模式的に示す要部断面図である。
【図4】本発明に係る酸化亜鉛薄膜を透明電極として用いた表示素子(有機発光ダイオードディスプレイ)を模式的に示す要部断面図である。
【図5】本発明に係る酸化亜鉛薄膜を製造する酸化亜鉛薄膜形成装置を一例として示す概略構成図である。
【図6】実施例で作製した酸化亜鉛薄膜の構成を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0094】
1…酸化亜鉛薄膜、2…基板、3…酸化亜鉛薄膜のc軸方向、4…最上層、5…最下層、10…透明電極、11…配向膜、12…ブラックマトリックス、13…液晶、14…RGBカラーフィルタ、15…ガラス基板、16…偏光板、17…接着材、18…蛍光灯、19…駆動IC、20…透明電極、21…全面ガラス基板、22…バス電極、23…誘電体層、24…保護層、25…隔壁、26…誘電体層、27…表示電極、28…蛍光体、29…背面基板、30…透明電極、31…有機層、32…陰極、33…ガラス基板、34…隔壁、35…封止缶、40…仕込室、41…分析室、42…スパッタ室、43…蒸着室、44…受渡室、45…バルブ、50…基板、51…金属薄膜層、52…酸化亜鉛薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に積層された酸化亜鉛薄膜において、
ウルツ鉱型の結晶性薄膜であり、
該結晶性薄膜のc軸が基板に略垂直方向に配向しており、かつ該結晶性薄膜のc軸方向の極性面の一つである亜鉛面が最上層に形成されていることを特徴とする酸化亜鉛薄膜。
【請求項2】
基板上に積層された酸化亜鉛薄膜において、
ウルツ鉱型の結晶性薄膜であり、
金属薄膜層上に薄膜形成技術によって形成されたことを特徴とする酸化亜鉛薄膜。
【請求項3】
該結晶性薄膜のa軸方向が該酸化亜鉛薄膜の薄膜面内で一方向に配向していることを特徴とする請求項1又は2記載の酸化亜鉛薄膜。
【請求項4】
上記金属薄膜層の膜厚が1〜20nmであることを特徴とする請求項2記載の酸化亜鉛薄膜。
【請求項5】
上記金属薄膜層は、正のイオン性極性基を最表面に有することを特徴とする請求項2記載の酸化亜鉛薄膜。
【請求項6】
結晶性薄膜直上に積層された酸化亜鉛とは異なる第2の金属薄膜層を有することを特徴とする請求項1〜5いずれか一項記載の酸化亜鉛薄膜。
【請求項7】
上記第2の金属薄膜層の膜厚が1〜20nmであることを特徴とする請求項6に記載の酸化亜鉛薄膜。
【請求項8】
上記第2の金属薄膜層が金属亜鉛であることを特徴とする請求項6記載の酸化亜鉛薄膜。
【請求項9】
上記第2の金属薄膜層は透明電極膜であることを特徴とする請求項6記載の酸化亜鉛薄膜。
【請求項10】
請求項1乃至9いずれか一項記載の酸化亜鉛薄膜からなる透明電極膜。
【請求項11】
請求項1乃至9いずれか一項記載の酸化亜鉛薄膜からなる透明電極膜を有する表示素子。
【請求項12】
金属薄膜層上に薄膜形成技術によって酸化亜鉛を薄膜形成する工程を含み、ウルツ鉱型の結晶性薄膜であり、該結晶性薄膜のc軸が基板に略垂直方向に配向しており、かつ該結晶性薄膜のc軸方向の極性面の一つである亜鉛面が最上層に形成された酸化亜鉛薄膜を上記金属薄膜上に形成することを特徴とする酸化亜鉛薄膜の製造方法。
【請求項13】
上記金属薄膜層を基板上に真空中で成膜する工程を更に含み、上記金属薄膜層を真空中で形成した後、真空を維持して引き続き上記酸化亜鉛薄膜を形成することを特徴とする請求項12記載の酸化亜鉛薄膜の製造方法。
【請求項14】
上記薄膜形成技術はスパッタリング法であることを特徴とする請求項12記載の酸化亜鉛薄膜の製造方法。
【請求項15】
上記酸化亜鉛を薄膜形成する工程では基板温度を200〜300℃とすることを特徴とする請求項12記載の酸化亜鉛薄膜の製造方法。
【請求項16】
上記酸化亜鉛薄膜を薄膜形成する工程では、室温条件で所定の膜厚で初期成膜を行い、それに引き続き残りの膜厚を成膜することを特徴とする請求項12記載の酸化亜鉛薄膜の製造方法。
【請求項17】
上記初期成膜は低電力のスパッタリング法を適用し、残りの膜厚を蒸着によって成膜することを特徴とする請求項16記載の酸化亜鉛薄膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−57605(P2009−57605A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−226245(P2007−226245)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】