説明

酸化膜形成方法

【課題】酸化膜とCVD膜との密着性を高めて界面特性の優れた膜の作製を実現する。
【解決手段】処理チャンバ205内において、処理基板に対してオゾン含有ガスのみを供給して処理基板上に酸化膜を形成する酸化工程と、この酸化工程を経た処理基板に対してCVD原料ガスとオゾン含有ガスとを供給して当該処理基板上に前記原料ガスの成分の酸化物からなる酸化膜を形成させるCVD工程とが実行される。前記CVD工程の初期段階の製膜速度は前記酸化工程の製膜速度よりも小さく制御される。また、前記CVD工程を経た処理基板をオゾン含有ガスの雰囲気または紫外光領域の波長を有する光が照射されたオゾン含有ガスの雰囲気に曝すアニール工程と、このアニール工程を経た処理基板を前記CVD工程に供する工程とを有するとよい。前記アニール工程を経た処理基板を前記CVD工程に供する工程を複数繰り返すとなおよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオゾン含有ガスが適用される酸化絶縁膜作製プロセス、ポリシリコンTFT、FETゲート酸化膜等の半導体の製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体プロセスにオゾンガスを導入することにより、製膜プロセスの低温化が可能となっている。特にSi酸化では、オゾンに紫外光(波長:200〜300nm)を照射することにより発生する光励起オゾン(O(1D))を用いて400℃以下でも酸化が可能となっている。ここでオゾンの光分解の反応式は「O3→O(1D)+O2」である。光励起オゾン酸化により400℃以下で作製されたSi酸化膜は、優れた絶縁特性・界面特性を持つことから、TFTやFET素子のゲート絶縁膜として有用であることが明らかになっている(特許文献1)。更に、ポリシリコン基板に光励起オゾン酸化を適用することで、ポリシリコン基板面上を均一厚みの酸化膜が得られた(非特許文献1)。ここで、ポリシリコン基板は、単結晶シリコンウエハとは異なり、表面に析出する結晶方位面が幾つも存在するため、均一な厚みの酸化膜を得るためには、酸化速度が結晶方位の影響を受けてはならないことが要求される。ところが従来の酸素を用いたSi酸化では、ポリシリコン基板上に均一な酸化膜を作ることができないことからも、光励起オゾン酸化は、ポリシリコンデバイスや低温作製デバイス(例えばフレキシブルディスプレイ)作製において極めて重要な役割を果たすことが予想される。
【0003】
また、光励起オゾンは酸化以外に、CVDによる酸化膜の低温製膜にも有用である。例えば、テトラエトキシシラン(以下、TEOSと称する)またはヘキサメチルジシラン(以下、HMDSと称する)を原料ガスとして光励起オゾンとCVDプロセスを行うと、400℃以下でSiO2膜を作製することが可能である。こうしてできたCVD−SiO2膜は、他の低温SiO2製膜プロセスであるプラズマCVDに比べ、少ない濃度の膜中不純物および優れた絶縁性を有する(特許文献2)。
【0004】
このことから光励起オゾンを用いたCVD技術は、低温製膜技術として注目が集まっている。このような技術は、基板の融点の低い材料(ガラスやプラスチック)上へのデバイス素子作りに特に有効である。図2のようの融点の低い材料101上にSi単結晶またはポリシリコンやアモルファスシリコン102を堆積させた上にTFT103やFET104を作るとき、高温プロセスが必要になると材料101が劣化してしまうためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−270040号公報
【特許文献2】特開2006−80474号公報
【特許文献3】特開2008−243926号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】N.Kameda1 et al.“J.of Electrochem.Soc.”vol.154 H769,2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
低温で光励起オゾンを用いたCVDによりゲート絶縁膜としてSiO2膜を作製すると、Si02の界面特性が悪い。界面特性はTFT・FETの動作性能に大きく影響を与えるので、改善する必要がある。一方、光励起オゾンによってSiを直接酸化することによって作製されたSiO2膜は優れた界面特性を持つが、低温では原子拡散速度が遅いために低温5nm以上の膜厚を作製するのが困難である(特許文献1)。低温ポリシリコンTFT・FETでは、ゲート酸化膜に必要な厚みは現在、50〜100nm程度なのでCVD製膜方法を適用しなければならない。
【0008】
そこで、ポリシリコン上に先に直接酸化による酸化膜を作製し、続けてCVDプロセスを行うことで、Si/SiO2界面に界面特性が優れた直接酸化膜を形成し、この直接酸化膜上にCVDによって製膜させる方法が考えられる。
【0009】
しかしながら、このような二段階でのプロセスでの製膜を行うにあたり、下地の直接酸化膜とCVDプロセス酸化膜とCVD膜との密着性が問題となる。下地に酸化膜が存在することで、表面が水素終端されてないためにこれらの膜間の密着性がどうしても悪くなる。密着性の劣化により、両者の膜間に低密度な膜ができることにより、電荷捕獲サイトの増加、膜の誘電率の変化を引き起こすことが考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、前記課題を解決するための酸化膜形成方法は、処理基板上に酸化膜を形成する酸化膜形成方法であって、処理基板に対してオゾン含有ガスのみを供給して処理基板上に酸化膜を形成する酸化工程と、この酸化工程を経た処理基板に対してCVD原料ガスとオゾン含有ガスとを供給して当該処理基板上に前記原料ガスの成分の酸化物からなる酸化膜を形成させるCVD工程を有する。
【0011】
前記CVD工程の初期段階では製膜速度を前記酸化工程の製膜速度よりも小さく制御すると、基板上の酸化膜とCVD膜との密着性がさらに高まる。前記製膜速度の態様としては、例えば、前記CVD工程の開始直後に製膜速度を前記酸化工程の製膜速度よりも小さくし一定の時間が経過した後に所定の製膜速度に増加させる方式や、前記CVD工程の開始直後に製膜速度0の状態から所定の製膜速度までに経時的に増加させる方式が挙げられる。前記製膜速度は、例えば、前記処理基板を含んだCVD工程に係る系の圧力、オゾン含有ガスの流量、CVD原料ガスの流量のいずれかを調整することで制御できる。また、前記酸化工程及び前記CVD工程では処理基板に対して紫外光領域の波長を有する光を照射すると、当該各工程におけるオゾンが励起されて酸化処理の効率が高まる。この場合、前記CVD工程では前記光の照度を調整することで前記製膜速度を制御できる。
【0012】
また、前記CVD工程を経た処理基板をオゾン含有ガスの雰囲気または紫外光領域の波長を有する光が照射されたオゾン含有ガスの雰囲気に曝すアニール工程と、このアニール工程を経た処理基板を前記CVD工程に供する工程とをさらに有するようにすると、前記基板上の酸化膜とCVD膜との密着性がさらに一層高まる。そして、前記アニール工程を経た処理基板を前記CVD工程に供する工程を複数繰り返すと、酸化膜とCVD膜との密着性が向上することに加えてCVD膜の膜質が向上する。
【発明の効果】
【0013】
以上の発明によれば酸化膜とCVD膜との密着性が高まり界面特性の優れた膜の作製が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】発明の実施形態に係る製膜プロセス装置を示した概略構成図。
【図2】従来技術に係る製膜プロセスで形成された半導体基板の概略構成を示した断面図。
【図3】発明に係る処理チャンバの具体的な構成例を示した概略構成図。
【図4】(a)発明に係る製膜方法の手順を示したフローチャート図,(b)当該製膜方法によって処理基板に形成された酸化膜の層を示した概略断面図。
【図5】(a)製膜プロセスP1,P2によって形成した処理基板のSiO2膜上にAl電極を蒸着してなるMISキャパシタを示した概略構成図,(b)前記MISキャパシタの界面準位密度。
【図6】MISキャパシタのJ−E特性図。
【図7】直接酸化膜層とCVD膜層との間に介在する層を示した基板の概略断面図。
【図8】P1プロセスの処理時間が0分、3分、10分である場合の高周波(100MHz)C−V特性図。
【図9】発明の実施形態2に係る製膜速度の制御のタイムスケジュールを示した図。
【図10】HMDSガス流量の条件を変えた場合のC−V特性の飽和容量を示した特性図。
【図11】発明の実施形態3に係る製膜プロセスの手順を示したフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態1)
図1に示された発明の実施形態1に係る製膜プロセス装置1は酸化処理及びCVD処理に供される処理基板を格納する処理チャンバ205を備える。酸化プロセスとCVDプロセスを同一チャンバ内で処理する。すなわち、処理チャンバ205においては処理基板に対してオゾン含有ガスのみが供給されて処理基板上に酸化膜を形成する酸化工程が実行される。次いで、この工程を経た処理基板に対してCVD原料ガスとオゾン含有ガスとを供給されて当該処理基板上に前記原料ガスの成分の酸化物からなる酸化膜を形成させるCVD工程が実行される。尚、酸化の対象の処理基板はSi以外でも構わない。例えばアルミ酸化が挙げられる。
【0016】
上記酸化工程およびCVD工程に用いるオゾン含有ガスはオゾン供給装置201から供給される。オゾン供給装置201にはオゾン発生機またはオゾンガスを充填したボンベが適用される。オゾン含有ガスのオゾン濃度は1〜100%とする。オゾン濃度100%のオゾンガスとしては例えば特公平5−17164に示されたオゾンビーム発生装置から得られたオゾンガスが挙げられる。
【0017】
CVDに用いられる原料ガスは原料ガス供給装置202から供給される。原料ガスとしてはHMDS、TEOSが例示される有機シリコン系のガスが挙げられる。原料ガス供給装置202には前記原料ガスの発生機またはボンベが適用される。尚、CVD工程ではSiO2以外の膜作製でも構わない。例えば、HfO2酸化膜、Si34膜が挙げられる。
【0018】
供給装置201,202から供されたガスはそれぞれ真空対応(<0.1Pa)の配管211,212を介して処理チャンバ205へ供給するようにする。配管211,212には流量を調節するバルブV01,V02が設置する。
【0019】
処理チャンバ205に供された処理済みのオゾンガス及び原料ガスは配管213を介して排気ポンプ207によって排気される。配管213にも流量可変バルブまたは開閉バルブ等に例示されるバルブV03が設置される。
【0020】
配管211はオゾンが通過するときにオゾン分解を抑えるため、配管211の内面を研磨などでオゾン分解を防止する処理が適宜に施される。配管212,213及び処理チャンバ205は室温よりも高くても構わない。すなわち、前記原料ガスとして例えばTEOSのような低い蒸気圧のガスを用いる場合、配管212、処理チャンバ205、配管213での前記ガスの液化を防ぐために当該配管及びチャンバに加熱機構が具備される。
【0021】
図3を参照しながら処理チャンバの具体的な構成例について説明する。
【0022】
図3に示された処理チャンバ205は配管211〜213を天井部にそれぞれ一つ以上接続させている。もしオゾンガスと原料ガスとを処理チャンバ205よりも上流側で合流させる場合はオゾンガスと原料ガスの混合ガスを導入するための配管が一つのみ接続される。処理チャンバ205には必要に応じてパージ用ガスを導入するための配管214を設けてもよい。また、処理チャンバ205の端部には処理基板用の出入り口215が一つ以上設けられる。
【0023】
処理チャンバ205は真空対応の炉となるように形成される。チャンバの到達圧力は0.01Pa程度である。オゾン処理炉205には圧力計221を設けるのが望ましい。圧力計221の仕様は測定範囲圧力が0.01Pa〜10000Paであるものを採用するとよい。処理チャンバ205の炉壁を構成する材料としてはアルミ・SUS・石英ガラスに例示される0.1Paまでの真空状態での使用が可能で酸化しにくい材料が採用される。
【0024】
また、処理チャンバ205にて光オゾン酸化・光オゾンCVDを行う場合、当該酸化、CVDに供される紫外光を処理基板222に照射するための紫外光源203が処理チャンバ205の外に設置される。紫外光源203の紫外光が処理基板222に供されるように処理チャンバ205には照射窓204が具備される。照射窓204の材質は200〜300nmの光を透過するものを用いる(例えば、石英ガラス、MgF2など)。紫外光源203には少なくとも波長200〜300nmの光を含む光を照射する周知の光源を適用すればよい。また、紫外光源203と透過窓204との間にシャッター206設置する。シャッター206は開閉可能とし、プロセス前後で開閉を行えるようにする。透過窓204の材質として少なくとも波長200〜300nmの光を吸収もしくは反射する材質が採用される(例えばAl)。
【0025】
処理基板222はその表面に紫外光源203の光が直接当たるように処理チャンバ205に格納される。処理基板222はサセプタ223上に保持されている。サセプタ223は回転機構や搬送機構によって処理チャンバ205内を移動可能なるように設置される。サセプタ223は必要に応じ加熱機構によって加熱可能とするとよい。
【0026】
酸化工程及びCVD工程においては、共有するプロセス条件(オゾン供給量、CVD原料ガス供給量、プロセス圧力、紫外光光源203の光照射量、プロセス温度(例えばサセプタ223の温度)、排気速度(例えば排気ポンプ207の排気速度))が適宜制御される。
【0027】
図4を参照しながら本実施形態に係る製膜方法についてより具体的に説明する。
【0028】
本実施形態の製膜方法は図4(a)に示すように大きく2つの段階からなる。すなわち、処理基板に対してオゾンガスのみを供して直接酸化を行う製膜プロセスP1と、このプロセスを経た処理基板に対してCVD原料ガスとオゾンガスとを供してCVDを行う製膜プロセスP2とからなる。プロセスは一貫して400℃以下の低温で行われる。
【0029】
製造プロセスP1では処理チャンバ205内にオゾン含有ガスのみが供給され、CVD原料ガスは供給しない。ガス流を制御するために、窒素やアルゴンなどの不活性ガスを導入してもよい。光オゾンによる酸化を用いる場合、紫外光源203から基板へ光を供給する。
【0030】
製造プロセスP2ではオゾン含有ガスとCVD原料ガスとがチャンバ205に供給される。ガス流を制御するために、窒素やアルゴンなどの不活性ガスを導入することは問題ない。光CVDによる製膜の場合、紫外光源203から処理基板222へ光を供給する。
【0031】
酸化プロセスP1とCVD製膜プロセスP2において、プロセス圧力、オゾン流量、光照射量、光照射波長、光照射領域は相違していてもよい。
【0032】
以上の製膜プロセスP1,P2を経ることで図4(b)のような膜構造を形成できる。基板301の上には製膜プロセスP1により作製された酸化膜302が存在し、酸化膜302の上に製膜プロセスP2により作製された酸化膜303が存在する。
【0033】
製膜プロセスP1,P2ともにプロセス圧力はオゾンの爆発限界以下の範囲とする。また、光源203からの供給される光の紫外光200〜300nm成分は光子数換算で、オゾン分子密度よりも十分に大きい範囲の出力とする。光源203はレーザーによるパルス型発振型またはランプによる連続照射型どちらでもよい。CVD原料ガスは、例えばSiO2膜を作製する場合、HMDSやTEOSなどSiを含むものとする。室温では蒸気圧が低いTEOSでは、ガス供給系の配管を70℃程度に加熱するとよい。HMDS及びTEOSガス流量は、オゾン流量に対して十分小さい範囲とする。これは原料ガス1分子に対し、分解に必要なオゾン分子が多数個必要であるため。真空下であれば、製膜プロセスP1,P2の間に中断時間を設けてもよい。
【0034】
製膜プロセスP1,P2をそれぞれ別チャンバで行っても構わない。その場合、チャンバ間を真空雰囲気下で搬送するようにする。製膜プロセスP1と製膜プロセスP2を別チャンバにすることにより、製膜プロセスP2で発生するパーティクルが製膜プロセスP1に与える影響を小さくすることができる。また、製膜プロセスP1と製膜プロセスP2の処理チャンバを別にすることで、それぞれのプロセスの特徴に応じたチャンバにて製膜できることから、効率的に行うことができる。例えば製膜プロセスP1においてはチャンバ内の光炉長(ギャップ長)を短くしたものを用いることにより、プロセスP1の処理時間を短くすることが可能となる。
【0035】
次に本実施形態の実施例について説明する。本実施例ではSiウエハ上にSiO2膜を製膜した。製膜プロセスP1では光オゾン酸化プロセスを実施した。処理基板はSi(100)とした。オゾン含有ガスはオゾン濃度90%以上のものを用いてその流量は約100sccmに設定した。製膜プロセスP1に係る光源には高圧水銀ランプを採用した。基板温度は100℃、プロセスP1の処理時間は10分以下、プロセスP1で作製される膜の膜厚は3nm以下に制御した。
【0036】
製膜プロセスP1の後、同じチャンバで同じ光源を用いた製膜プロセスP2を開始した。製膜プロセスP2では光励起オゾンCVDを実施した。CVD原料ガスにはHMDSを使用した。オゾン含有ガスは製膜プロセスP1と同じ濃度で使用した。オゾン含有ガスの流量は約100sccm、HMDSの流量は1sccm、処理時間は8分、膜厚は50nm程度、基板温度は100℃に設定した。
【0037】
上記の条件で作製された処理基板に製膜されたSiO2の界面特性結果を図5に示す。図5(a)に示したように、製膜プロセスP1,P2の後、Si(100)からなる処理基板401にSiO2膜403上にAl電極404を蒸着してMISキャパシタを形成した。図示されたSiO2膜402,403はそれぞれ製膜プロセスP1,P2で得られた酸化膜である。図5(b)はquasi−static法によるC−V測定から算出された界面準位密度を示す。Al電極404の蒸着後にAlとSiO2膜との密着性を高めるために、PMAアニールを0.1atmのN2雰囲気下400℃で20分行っている。製膜プロセスP1の処理時間(酸化処理時間)を0分、3分、10分とした場合の界面順位密度を開示した。製膜プロセスP1の処理時間が大きくなると界面準位密度の最小値が減少し、ギャップ幅も大きくなることから、界面特性が大幅に改善されている。つまり、この結果は、製膜プロセスP1を行うことにより、界面特性が改善できていることを示している。
【0038】
一方、絶縁特性のような膜全体で決まる特性は製膜プロセスP1の影響をほとんど受けない。図6はMISキャパシタ配置におけるJ−E特性である。酸化処理時間が異なる製膜プロセスP1(処理時間0分、3分、10分)で形成されたキャパシタのJ−E特性を比較すると、差異がほとんどみられなかった。これは製膜プロセスP1で作製された膜厚が3nm以下に対し製膜プロセスP2で作製された膜厚が50nmであるので、製膜プロセスP2で作製された膜が全体膜厚の大部分を占めることにより、膜全体の特性によってきまる膜質は、製膜プロセスP1の時間の長さにほとんど影響を受けないことを示している。
【0039】
以上の例により、実際に界面を改善できることを示した。プロセス条件について特に制限を設けないが実用的なプロセスとして、製膜プロセスP1,P2ともオゾン流量は1〜1000sccmの範囲、Si酸化及びCVDプロセスに用いるオゾンの分圧は0.1〜1000Paの範囲内、製膜プロセスP1,P2に用いる200〜300nmの光照射量は、1〜1000mW/cm2の範囲である。また、製膜プロセスP2に用いるHMDSガスは1〜100sccmであり、製膜プロセスP1の処理時間は、0.1秒〜1時間程度である。
【0040】
以上説明したように実施形態1の製膜プロセス装置1によれば界面特性が優れた酸化膜を作製することができる。また、400℃以下の低温で酸化膜を作製することができる。波長200〜300nmの光源を併用することで、200℃以下の低温で酸化膜を製膜することができる。100nm以上の厚い膜を作ることができる。
【0041】
酸化プロセス(P1)、CVDプロセス(P2)は別チャンバで実行してもよい。酸化プロセスチャンバとCVDプロセスチャンバとの間の輸送は1Pa以下の真空度の環境で行われる。このようにプロセスP1、プロセスP2を個別の系で実行することで、酸化プロセスにおけるパーティクルの混入を減らすことができ、より界面特性の優れた膜の作製が可能となる。そして、酸化プロセスにおける製膜速度が上昇することで、酸化プロセス処理時間の短縮が実現する。
【0042】
(実施形態2)
二段階でのプロセスでの製膜を行うにあたり、下地の直接酸化膜とCVDプロセス酸化膜とCVD膜との密着性が問題となる。CVDプロセスを始めるときに下地に酸化膜が存在するために、通常の水素終端された表面でないため界面の密着性がどうしても悪くなる。この密着性の劣化により、両者の膜間に低密度な膜ができてしまい、電荷捕獲サイトの増加、膜の誘電率の変化を引き起こすことが考えられる。つまり、図7に示したように基板301上に直接酸化膜302があるときにCVD膜303を形成しようとすると膜302と膜303との間に密度が低い層304ができてしまう。
【0043】
二段階製膜を行うと避けられない問題として、両者の膜の密着性の問題がある。これは図7で示した膜304の存在に相当する。膜304の存在は図8のC−V特性の飽和容量からわかる。図8はP1プロセスの処理時間を0分、3分、10分とした場合の高周波(100MHz)C−V曲線である。製膜プロセスP1の処理時間が0分である場合の飽和容量COX(801)に対して、処理時間が3分、10分である場合の飽和容量COX(802)減少している。これは、膜の誘電率が変化したために起こる。この変化量ΔCOX(802)は、製膜プロセスP1による膜302の誘電率ε1(約3.9)とCVD膜303の誘電率ε2(約5.7)の膜厚割合の変化では説明ができず、膜302と膜303の間に低密度で真空に近い誘電率(約1)を持つ層304を仮定しなければ説明できないことから、膜304の存在が示唆される。尚、層304の厚みは1nm以下である。膜304はプロセスP2の開始直後にできると考えられる。
【0044】
そこで、実施形態2では、製膜プロセスP2において、製膜速度をプロセス内で変化をつけるようし、プロセス開始直後の製膜速度を小さくすることで解決ができる。製膜プロセスの制御の態様としては図9に例示したようにスケジュールS1,S2が挙げられる。スケジュールS1は製膜プロセスP2の開始直後に製膜速度を製膜プロセスP1よりも小さくし一定の時間が経過した後に所定の製膜速度までに増加させる。スケジュールS2は製膜プロセスP2の開始直後に製膜速度0の状態から時間経過とともに所定の製膜速度までに徐々に増加させる。以上のように製膜プロセスP2の初期の製膜速度を製膜プロセスP1の製膜速度よりも小さくすることで直接酸化膜とCVD膜との間の膜密度を高めることができる。製膜速度は、基板温度以外に、処理チャンバの圧力、オゾン含有ガス流量、CVDガス流量、光源の光照度(光CVDの場合)、ガス流速を変化させることで制御できる。
【0045】
本実施形態の実施例として二段階製膜において密着性を高めた実施例について説明する。
【0046】
本実施例はSiウエハ上にSiO2膜を作製した例である。製膜プロセスP1では光オゾン直接酸化を行った。処理基板にはSi(100)を採用した。オゾン含有ガスはオゾン濃度90%以上、ガス流量は〜100sccm、直接酸化に供する光源には高圧水銀ランプを採用した。基板温度は100℃、プロセスp1の処理時間は10分、作製される膜厚は3nm程度に制御した。製膜プロセスP1の後、同じチャンバで同じ光源を用いて製膜プロセスP2を開始した。製膜プロセスP2では光励起オゾンCVDを実施した。CVD原料ガスにHMDSを使用した。オゾン含有ガスは製膜プロセスP1と同じ濃度で使用した。オゾン流量は約100sccmに設定した。HMDSの流量は0.1〜1sccmに設定した。製膜プロセスP2の処理時間は8〜18分である。膜厚は50nm程度である。基板温度は100℃に設定した。
【0047】
製膜プロセスP2では製膜速度を変えるために以下の条件1〜4でHMDSガス流量を変えた。
条件1:開始後1分までHMDS流量0.1sccm、その後8分間1sccm。
条件2:開始後10分までHMDS流量0.1sccm、その後8分間1sccm。
条件3:開始直後からHMDS流量1sccm8分間。
条件4:製膜プロセスP1を行わないでプロセスP2として開始直後からHMDS流量1sccm8分間のCVD。
【0048】
以上の4条件におけるC−V特性を示す飽和容量曲線を比較した。
【0049】
それぞれの飽和容量は図10において条件1〜4に対して飽和容量曲線(以下、曲線とと称する)1001〜1004に対応する。まず条件4の曲線1004が一番小さい。これは製膜プロセスP1がないことで膜304が存在しないことに相当する。一方、曲線1003が一番大きい。これは膜304による影響を上記4条件の中でもっとも大きく置けていることを意味する。一分間CVD製膜速度を落とした膜の曲線1001は曲線1003よりも曲線1004に近づく。更に10分間CVD製膜速度を落とした膜の曲線1002は曲線1001よりも曲線1004に近づいていることから、初期の製膜速度をなるべく抑制することで、膜304をなくすように製膜できることを示すことができた。
【0050】
(実施形態3)
本実施形態は製膜速度の制御の他に製膜プロセスP2中に処理基板をオゾン含有ガスまたは光励起オゾン雰囲気に曝す時間を意図的に導入している。すなわち、処理基板をオゾン含有ガスまたは光励起オゾンガスの雰囲気に曝すオゾンアニールによって直接酸化膜とCVD膜との密着性をさらに高めさせ、CVD膜質を向上させることできる(特許文献3)。
【0051】
本実施形態の製膜プロセスは図11に示したように製膜プロセスP1,P2における製膜プロセスP2(CVD製膜)をプロセスP2−1とプロセスP2−2の2段階に分け、このプロセスP2−1,P2−2の間にオゾンアニールのプロセスP3を有している。プロセスP3に用いるオゾン濃度は製膜プロセスP1,P2に用いるオゾン含有ガスのオゾン濃度と同程度(2〜100%)でよい。プロセスP3用のオゾン含有ガスは製膜プロセスP1,P2に供するオゾン含有ガスを適用すればよい。以上のプロセスを実行するための装置構成は図3に開示された製膜プロセス装置1と同じ構成を採ればよい。
【0052】
オゾンアニール(プロセスP3)ではオゾンまたは光励起オゾンのSiO2膜中の拡散長の温度依存性により、400℃以下の低温では膜厚1〜2nmのCVD膜に対して有効である(特許文献3)。
【0053】
図11のフローチャートにおいて、製膜プロセスP2−1(CVD製膜)では、膜厚1〜2nm程度製膜しておくようにしてプロセスP3(アニール)を行うことで効果的になる。また、製膜プロセスP2−2(CVD製膜)では、開始直後の製膜速度は小さい方が望ましい。初期膜成長速度を遅くすることでプロセスP3が終了したときに析出しているSiO2表面とプロセスP2−2により形成されるSiO2との界面状態が良くなるためである。このように製膜プロセスP1を経た酸化膜上に製膜プロセスP2によってCVD膜が少し積んだ状態でオゾンアニールすることで両者の密着性が上昇する。
【0054】
また、プロセスP3は一回以上行っても構わない。例えば、製膜プロセスP2をn回に分けて行い製膜プロセスP2−1〜P2−nとしたときに製膜プロセスP2−iと製膜プロセスP2−i+1(1≦i≦n−1)の間でプロセスP3を実行する態様が挙げられる。このようにプロセスP3を計n−1回実施することで直接酸化膜とCVD製膜との密着性が向上することに加えて、製膜プロセスP2によって形成されたCVD膜の膜質を向上させることができる。前述のように、オゾンアニールは、製膜プロセスP1,P2を行うチャンバ205で行える。または別途、オゾンアニール用のチャンバを具備してもよい。別途チャンバでオゾンアニールを行う場合、1Pa以下で搬送すると、CVD膜の表面の劣化を防ぐことができる。
【0055】
以上のように実施形態3の製膜プロセス装置によれば二段階製膜において異なるプロセスによって作られたSiO2膜の界面の密着性を向上することができる。また、基板温度を上昇させる必要がない。さらに、紫外光を用いることで密着性の効果が上昇する。また、単一の処理チャンバで複数のプロセスの実施が可能である共にオゾン含有ガスは直接酸化(製膜プロセスP1)CVD(製膜プロセスP2−n)、アニール(プロセスP3)の共用とすることができるので、低廉な製膜が実現する。
【符号の説明】
【0056】
1…製膜プロセス装置
201…オゾン供給装置
202…原料ガス供給装置
203…紫外光源
205…処理チャンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理基板上に酸化膜を形成する酸化膜形成方法であって、
処理基板に対してオゾン含有ガスのみを供給して処理基板上に酸化膜を形成する酸化工程と、
この酸化工程を経た処理基板に対してCVD原料ガスとオゾン含有ガスとを供給して当該処理基板上に前記原料ガスの成分の酸化物からなる酸化膜を形成させるCVD工程と
を有すること
を特徴とする酸化膜形成方法。
【請求項2】
前記CVD工程の初期段階の製膜速度を前記酸化工程の製膜速度よりも小さく制御することを特徴とする請求項1に記載の酸化膜形成方法。
【請求項3】
前記CVD工程の開始直後に製膜速度を前記酸化工程の製膜速度よりも小さくし一定の時間が経過した後に所定の製膜速度に増加させることを特徴とする請求項2に記載の酸化膜形成方法。
【請求項4】
前記CVD工程の開始直後に製膜速度0の状態から所定の製膜速度までに経時的に増加させることを特徴とする請求項2に記載の酸化膜形成方法。
【請求項5】
前記製膜速度は前記処理基板を含んだCVD工程に係る系の圧力、オゾン含有ガスの流量、CVD原料ガスの流量のいずれかを調整することにより制御すること
を特徴とする請求項3または4に記載の酸化膜形成方法。
【請求項6】
前記酸化工程及び前記CVD工程では処理基板に対して紫外光領域の波長を有する光を照射すること
を特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の酸化膜形成方法。
【請求項7】
前記CVD工程では前記光の照度を調整することで前記製膜速度を制御すること
を特徴とする請求項6に記載の酸化膜形成方法。
【請求項8】
前記CVD工程を経た処理基板をオゾン含有ガスの雰囲気または紫外光領域の波長を有する光が照射されたオゾン含有ガスの雰囲気に曝すアニール工程と、
このアニール工程を経た処理基板を前記CVD工程に供する工程と
さらに有すること
を特徴とすることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の酸化膜形成方法。
【請求項9】
前記アニール工程を経た処理基板を前記CVD工程に供する工程を複数繰り返すことを特徴とする請求項8に記載の酸化膜形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−54894(P2011−54894A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204865(P2009−204865)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】