説明

量子ドット形成方法及びこれを実施するためのプログラムを記憶する記憶媒体並びに基板処理装置

【課題】基板表面の構造に拘わらず,所望の位置に高精度で量子ドットを形成する。
【解決手段】定在波を有するレーザ光のレーザ光源Lを基板Wの側方に配置し,そのレーザ光を基板Wの側方からその基板の表面に沿うように照射させることによって,基板表面をそのレーザ光の定在波の半波長間隔で励起させる。その基板に対してその表面を構成する下地膜と格子定数の異なる膜を成長させることによって,上記レーザ光の照射により励起した部位Exに量子ドットが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,半導体ウエハ,液晶基板,太陽電池用基板などの基板上に量子ドットを形成するための方法及びこれを実施するためのプログラムを記憶する記憶媒体並びに基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年,量子ドットの光電子デバイスへの適用が注目されている。この量子ドットは特定のエネルギ状態に電子を集中させることができるので,発光素材としても,また太陽電池の素材としても利用価値が高い。この量子ドットの形成方法としては従来からSK(Stranski Krastanov)モードを利用する方法が用いられている(特許文献1〜3参照)。SKモードは,下地結晶材料と堆積結晶材料の格子定数の違いによる結晶の歪エネルギを利用して結晶成長中の自己組織化現象を利用して量子ドットを形成するものである。
【0003】
具体的には,基板表面に結晶材料を堆積させるとき,基板表面を構成する下地結晶材料とは格子定数の異なる結晶材料を堆積させると,堆積した材料は下地結晶材料の格子定数に一致するように成長しようとする。ところが,実際には格子定数が下地結晶材料とは異なるため,成長させるに従って圧縮歪を受けることになる。更に成長が進むと,基板上に堆積した材料は,この歪エネルギを緩和しようとして,ある臨界膜厚を超えたところでSKモードが起こり,成長膜が島状構造に変化し,その部分が量子ドットとなって成長していく。
【0004】
ところが,このようなSKモードによって量子ドットを生成する場合には,結晶成長中の自己組織化現象を利用するので,量子ドットが生成される位置を制御することは非常に難しいという問題があった。
【0005】
このため,量子ドットの位置を制御する方法として様々な方法が開発されている。例えば特許文献1,2では基板表面において量子ドットを形成しようとする所定の位置に予め段差や微細穴を形成しておき,その段差や微細穴に量子ドットを形成する技術が開示されている。また,特許文献3では基板に表面波(弾性波)を立てることで,その弾性波の波長に応じた部位に量子ドットを形成させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−281954号公報
【特許文献2】特開平11−111618号公報
【特許文献3】特開2000−219600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら,基板表面に段差や微細穴などを形成してからそこに量子ドットを形成させるものでは,基板表面に段差や微細穴などの別の構造を加えなければならないという不利がある。また,基板に表面波(弾性波)を立てるものでは,基板表面の構造によってその伝わり方も異なるので,実際に形成した量子ドットが所望の位置からずれてしまう虞もある。
【0008】
そこで,本発明は,このような問題に鑑みてなされたもので,その目的とするところは,レーザ光照射によって,基板表面の構造に拘わらず,所望の位置に高精度で量子ドットを形成することができる量子ドット形成方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために,本発明のある観点によれば,基板の表面に量子ドットを形成する方法であって,定在波を有するレーザ光を前記基板の側方からその基板の表面に沿うように照射させることによって,前記基板表面を前記定在波の半波長間隔で励起させる基板表面励起ステップと,前記基板に対してその表面を構成する下地膜と格子定数の異なる膜を成長させて前記励起部位に量子ドットを形成する量子ドット形成ステップと,
を有することを特徴とする量子ドット形成方法が提供される。
【0010】
上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,基板の表面に量子ドットを形成する方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶するコンピュータ読取可能な記憶媒体であって,前記量子ドット形成方法は,定在波を有するレーザ光を前記基板の側方からその基板の表面に沿うように照射させることによって,前記基板表面を前記定在波の半波長間隔で励起させる基板表面励起ステップと,前記基板に対してその表面を構成する下地膜と格子定数の異なる膜を成長させて前記励起部位に量子ドットを形成する量子ドット形成ステップとを有することを特徴とする記憶媒体が提供される。
【0011】
本発明によれば,定在波を有するレーザ光を基板の側方から表面上に沿って照射することによって,基板表面の所望の部位を所望の間隔で励起することができ,その励起部位に量子ドットを形成することができる。これによれば,基板の表面に弾性波が発生することもないので,基板表面の構造に拘わらず所望の位置に量子ドットを形成させることができる。
【0012】
また,上記基板表面励起ステップは,前記レーザ光のレーザ光源をレーザ光照射方向に垂直な方向に駆動して前記基板表面を走査させながら,前記レーザ光を所定間隔で間欠照射させるようにしてもよい。この場合,上記レーザ光の波長を変えることによって,前記基板表面を励起する部位のレーザ光照射方向の間隔を調整してもよく,上記レーザ光を間欠照射する所定間隔を変えることによって,前記基板表面を励起する部位のレーザ光照射方向に垂直な方向の間隔を調整してもよい。このようにレーザ光の波長を変えたり,照射間隔を変えたりするという簡単な操作で,レーザ光照射方向やその垂直方向の所望の位置に量子ドットを形成できる。
【0013】
また,上記基板表面励起ステップは,複数のレーザ光源からそれぞれレーザ光を同時に又は別々のタイミングで照射することによって前記基板表面を励起するようにしてもよい。この場合,上記各レーザ光源から異なる波長のレーザ光を照射して前記基板表面を励起するようにしてもよい。このように複数のレーザ光源から同時にレーザ光を照射することで,基板表面励起処理の処理速度を向上させることができ,処理時間を短縮できる。
【0014】
さらに,上記基板表面励起ステップは,前記基板の表面の一部を覆うように誘電体を載置した状態で前記レーザ光を照射することによって,前記誘電体で覆われた領域とそれ以外の領域における励起部位の間隔を変えるようにしてもよい。これによれば,基板表面に部分的に異なる間隔で量子ドットを形成することができる。
【0015】
上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,基板の表面に量子ドットを形成する処理を行う基板処理装置であって,前記量子ドットを形成する前の基板の表面のうち,前記量子ドットを形成したい部位を励起させる処理を行う基板表面励起処理部と,基板表面励起処理を施した基板に対して,その表面を構成する下地膜と格子定数の異なる膜を成長させて前記励起部位に量子ドットを形成する処理を行う量子ドット形成処理部と,を備え,前記基板表面励起処理部は,基板を載置する載置台と,定在波を有するレーザ光を前記載置台に載置された基板の側方からその基板の表面に沿うように照射するレーザ光源と,レーザ光源を少なくともレーザ照射方向に垂直な方向に駆動させる駆動機構と,を備えることを特徴とする基板処理装置が提供される。
【0016】
この場合,前記基板表面励起処理部と量子ドット形成処理部は,異なる処理室に別々に設けてもよく,また同一の処理室に設けてもよい。これによれば,異なる処理室に別々に設けた場合は,基板表面励起処理部を備えた処理室にて基板表面励起処理を行った後に,量子ドット形成処理部を備えた処理室にて量子ドット形成処理を行う。また,同一の処理室に設けた場合は,基板表面励起処理と量子ドット形成処理を別々に行うこともでき,また同時に行うこともできる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば,定在波を有するレーザ光を基板の側方から表面上に沿って照射することによって,基板表面の構造に拘わらず,所望の位置に高精度で量子ドットを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態における基板表面励起処理の原理を説明するための観念図であり,レーザ光によって基板表面の所望の部位を励起した場合である。
【図2】図1の基板にSKモードを利用した成膜処理を施すことによって量子ドットQを形成する過程を説明するための観念図である。
【図3】本実施形態にかかる基板表面励起ユニット(基板表面励起処理部)の構成の概略を示す斜視図である。
【図4】図3に示す基板表面励起ユニットの断面図である。
【図5】本実施形態における制御部が行う基板表面励起処理の具体例を示すフローチャートである。
【図6A】基板表面励起処理の作用説明図であり,レーザ光源が待機位置t0にある場合である。
【図6B】基板表面励起処理の作用説明図であり,レーザ光源が励起開始位置t1にある場合である。
【図6C】基板表面励起処理の作用説明図であり,レーザ光源が次の位置t2にある場合である。
【図6D】基板表面励起処理の作用説明図であり,レーザ光源が励起終了位置tnにある場合である。
【図7】レーザ光をオンする所定間隔を変えたときの作用説明図である。
【図8】レーザ光の波長を変えたときの作用説明図である。
【図9】本実施形態における他の基板表面励起処理の原理を説明するための観念図である。
【図10A】図9に示す他の基板表面励起処理の作用説明図であり,特定領域Aを含むラインを励起する場合である。
【図10B】図9に示す他の基板表面励起処理の作用説明図であり,特定領域Bを含むラインを励起する場合である。
【図10C】図9に示す他の基板表面励起処理の作用説明図であり,特定領域Cを含むラインを励起する場合である。
【図11】本実施形態における基板表面励起ユニットの変形例を示す斜視図である。
【図12】図11に示す基板表面励起ユニットによる基板表面励起処理の作用説明図であり,同じ波長の2つのレーザ光を照射する場合である。
【図13】図11に示す基板表面励起ユニットによる基板表面励起処理の作用説明図であり,異なる波長の2つのレーザ光を照射する場合である。
【図14】図11に示す基板表面励起ユニットによる基板表面励起処理の作用説明図であり,2つのレーザ光源のY方向の配置位置を変えた場合である。
【図15】本実施形態における基板表面励起ユニットを適用可能な基板処理装置の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0020】
(基板表面励起処理の原理)
先ず,本発明にかかる量子ドット形成方法において利用する基板表面励起処理の原理について図面を参照しながら説明する。図1は基板上に各量子ドットを成長させる位置を特定するときの作用を説明するための図であり,図2は特定された位置に成長した量子ドットを示す図である。
【0021】
本実施形態では,結晶の歪エネルギを利用して結晶成長中の自己組織化現象を用いたSK(Stranski Krastanov)モードを利用して,基板上に量子ドットを成長させる。ここでのSKモードとは,結晶成長において2次元膜構造が3次元的島状構造に変化することである。
【0022】
例えば基板上に形成された下地膜(例えばGaAs膜)にその結晶とは異なる格子定数の膜(例えばInAs膜)を成長させたときに,その格子不整合度が1.7%以上のときには成長層は歪みを持ち,系全体のエネルギが大きくなる。成長膜圧を増やすほど系の持つ歪みエネルギが増大し,ある臨界膜厚を超えたところでSKモードが起こり,成長膜が島状構造に変化し,その部分が量子ドットとなって成長していく。このような膜成長には,例えば分子線エピタキシー法(MBE:Molecular Beam Epitaxy)や有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition,MOVPE:Metal−Organic Vapor Phase Epitaxy)を用いることができる。
【0023】
このようなSKモードによって量子ドットを生成する場合には,結晶成長中の自己組織化現象を利用するので,量子ドットが生成される位置を制御することは非常に難しいという問題があった。
【0024】
このため,量子ドットの位置を制御する方法として様々な方法が開発されているものの,ナノオーダー間隔で所望の位置に正確に量子ドットを形成する技術は未だ確立されていない。例えば基板に表面波(弾性波)を立ててその弾性波の波長に応じた部位に量子ドットを形成させて位置を制御するものもあるが,これでは基板表面の構造によってその伝わり方も異なるので,実際に形成した量子ドットが所望の位置からずれてしまうなど量子ドットの形成位置にばらつきが生じる虞もある。
【0025】
この点,レーザ光の定在波では,エネルギが最も大きくなる腹部と最も小さくなる節部の位置は揺らぐことがない。そこで,本発明では,このような特性を有するレーザ光を基板の側方からその表面に沿って照射させることで,レーザ光の定在波の腹部を利用して基板表面をナノオーダー間隔で部分的に励起させる。これによれば,その励起部位のみに量子ドットを成長させることができるので,量子ドットの位置を高精度に制御できる。
【0026】
しかも,本発明では,レーザ光を直接基板に当てるのではなく,側方から基板表面すれすれに照射するので,基板自体には弾性的な波動を起こさせずに基板表面を励起させることができる。このように本発明ではレーザ光の特性を効果的に利用することで,基板表面の構造によらずに,所望の位置に量子ドットを形成させることができる。
【0027】
例えば図1に示すように,量子ドット生成前にレーザ光源Lからのレーザ光を基板Wの側方からその表面に沿って照射させると,基板表面のうちレーザ光の定在波の腹部に最も近い部位のみを励起させることができる。レーザ光の定在波の腹部は,その定在波の半波長λ/2の間隔になるため,それと同間隔で基板表面を励起させることができる。以下,このようにレーザ光により基板の表面を励起させる処理を基板表面励起処理と称する。
【0028】
その後に図2に示すように,SKモードによる成膜処理を行って基板表面を構成する下
地膜とは異なる格子定数の膜を成長させるとその励起部位のみに3次元的島状構造が形成されて量子ドットQが成長する。こうして,レーザ光の定在波の腹部の間隔,すなわちレーザ光の定在波の半波長λ/2のナノオーダー間隔で量子ドットQが形成される。
【0029】
このような基板表面励起処理では,レーザ光を基板の側方から基板表面上を平行に照射することで,レーザ光の定在波のエネルギが最も大きくなる腹部が基板表面に接触すればそのエネルギによってその部位だけを部分的に直接励起させることができ,また基板表面に接触しなくてもレーザ光の定在波の腹部の輻射熱によって基板表面を部分的に励起させることができるものと考えられる。
【0030】
(基板表面励起ユニットの構成例)
以下,このようなレーザ光による基板表面励起ステップを実行する基板表面励起ユニット(基板表面励起処理部)について図面を参照しながら説明する。図3は基板表面励起ユニット100の構成例を示す斜視図であり,図4はその断面図である。本実施形態では,半導体ウエハである基板W上の下地膜に対してレーザ光による基板表面励起ステップを施す場合について説明する。
【0031】
図3,図4に示すように,基板表面励起ユニット100は,基板Wを載置する回転自在な載置台112を備える載置台ユニット110の近傍に,レーザユニット130を配設して構成される。載置台112は,例えば図3に示すように円板状に形成されており,基板Wは載置台112の上側の載置面に載置される。載置台112は,支持軸114によって例えば処理室内の底面にボルトなどの締結部材で取り付けられている。
【0032】
載置台112には,支持軸114の内部にモータ(例えばステッピングモータ)が設けられ,このモータを駆動させることによって載置台112を回転させる。また,載置台112には,その載置面上の基板Wを保持する例えばバキュームチャックなどの保持機構を備える。この保持機構によって,載置面上に基板Wを保持させることにより,載置台112が回転したときに,基板Wが載置面からずれることを防止できる。なお,保持機構としては,上記バキュームチャックに限られず,クランプ機構や静電チャックなど,基板Wを保持することができるものであればよい。
【0033】
レーザユニット130は,図3,図4に示すようにレーザ光源Lを上下方向のみならず,水平方向にも駆動可能なレーザ駆動機構138を備える。レーザ光源Lはナノサイズの定在波を有するレーザ光を照射することができる例えば半導体レーザなどで構成される。レーザ光源Lは基台134を介してレーザ駆動機構138に取り付けられている。レーザ駆動機構138は,基台134を上下方向(Z方向)に駆動させる上下方向駆動部と,水平方向に駆動させる水平方向駆動部とを備える。具体的には上下方向駆動部はZ方向駆動部138Zにより構成され,水平方向駆動部は,基台134をX方向に駆動させるX方向駆動部138XとY方向に駆動させるY方向駆動部138Yにより構成される。
【0034】
これによれば,レーザ駆動機構138のX方向駆動部138Xによってレーザ光源Lを駆動させることで,基板Wの表面全体に渡ってレーザ光を走査させることができる。なお,Z方向駆動部138Zによってレーザ光源Lを駆動させることで,基板Wの表面の高さに併せるようにレーザ光の高さ位置を調整できる。さらに,Y方向駆動部138Yによってレーザ光源Lを駆動させることで,基板Wの径に併せてレーザ光の水平位置を調整できる。
【0035】
載置台ユニット110は,図4に示すように制御部200に接続されており,この制御部200からの制御信号に基づいて載置台112の回転やレーザ駆動機構138の動作が制御されるようになっている。
【0036】
(基板表面励起処理の具体例)
次に,このような構成の基板表面励起ユニット100を用いた基板表面励起処理について図面を参照しながら説明する。制御部200は,所定のプログラムに基づいて基板表面励起ユニット100の動作を制御することによって,基板表面励起処理を実行するようになっている。図5は本実施形態にかかる基板表面励起処理の具体例を示すフローチャートである。
【0037】
図6A〜図6Dは,基板表面励起処理を行う場合におけるレーザ光による作用を説明するための図である。図6A〜図6Dはそれぞれ,レーザ光源が位置t0,t1,t2,tnにある場合を示している。なお,図6A〜図6Dは図3に示す基板表面励起ユニット100を上から見た図であり,レーザユニット130については基台134とレーザ光源L以外の構成は省略している。
【0038】
ここでの基板表面励起処理は,基板表面の下地膜にSKモードによって量子ドットQを形成させる前に,基板表面励起ユニット100によって量子ドットQを形成させたい部位を励起させる場合を例に挙げる。
【0039】
先ず,下地膜が形成された基板Wが図示しない搬送アームなどで載置台ユニット110の載置台112に載置されると,図5に示すフローチャートによる基板表面励起処理が実行される。基板表面励起処理では,先ずステップS110にてレーザ光源Lの高さ(Z方向の位置)を調整する。具体的には例えば図6Aに示すようにレーザ光源Lが基板Wの外縁部から離間したX方向の待機位置t0にある状態で,レーザ光をオンしてZ方向駆動部138Zを駆動させる。これにより,レーザ光が基板W上をその表面に沿って照射されるようにレーザ光源Lの高さを調整する。
【0040】
次にステップS120にてレーザ光をオフにした状態で,レーザ光源LをX方向に一定の速度で走査を開始させる。そしてステップS130にてレーザ光源Lが基板W上の励起開始位置t1に到達したときから所定間隔T1でレーザ光をオンさせる。具体的には図6Bに示すように先ずレーザ光源Lが励起開始位置t0に到達すると,所定の照射時間だけレーザ光がオンされる。これにより,基板表面のX方向の励起開始位置t0においてレーザ光の定常波の腹部に対向する部位Exだけが励起される。このため,励起された部位ExのY方向(レーザ光の照射方向)の間隔は,レーザ光の定常波の半波長λ/2に等しくなる。
【0041】
続いてレーザ光がオフのままX方向に走査され,図6Cに示すようにレーザ光源Lが次の位置t2まで到達したときにレーザ光が上記照射時間だけオンされる。これにより,基板表面のX方向の次の位置t2においてレーザ光の定常波の腹部に対向する部位だけが励起される。ここでの励起された部位ExのY方向(レーザ光の照射方向)の間隔も,レーザ光の定常波の半波長λ/2に等しくなる。その後は,レーザ光源LをX方向に走査しながら,所定間隔T1ごとにレーザ光を上記照射時間だけオンする。
【0042】
そして,ステップS140にて基板表面全体の処理が完了したか否かを判断する。具体的には基板W上の励起終了位置tnまで基板表面励起が完了したか否かを判断する。ステップS140にて基板表面全体の処理が完了したと判断した場合は,ステップS150にて図6Dに示すようにレーザ光をオフにしてレーザ光源LをX方向の待機位置t0まで戻して,一連の基板表面励起処理を終了する。
【0043】
こうして,励起開始位置t1から励起終了位置tnまで基板Wの表面を励起させることができ,その後のSKモードによる膜成長によってこの励起部位Exにだけ量子ドットQが形成される。
【0044】
励起された部位ExのX方向の間隔はレーザ光を照射させる所定間隔T1となり,Y方向(レーザ光の照射方向)の間隔は半波長λ/2となる。従って,その後に形成される量子ドットQのX方向,Y方向の間隔を容易に制御することができる。
【0045】
すなわち,励起部位ExのX方向の間隔は,レーザ光をオンするタイミングである所定間隔T1を変えるだけで簡単に制御できるので,その後に形成される量子ドットQのX方向の間隔を制御できる。このようにレーザ光をオンするタイミングによって量子ドットQをX方向の間隔をナノオーダーで制御できる。
【0046】
具体的にはレーザ光をオンする所定間隔を短くするほど,励起部位ExのX方向の間隔を狭くすることができるので,X方向の間隔が狭い量子ドットQを形成できる。逆にレーザ光をオンする所定間隔を長くするほど,励起部位ExのX方向の間隔を長くすることができるので,X方向の間隔が長い量子ドットQを形成できる。例えば図7は,レーザ光をオンする所定間隔をT1よりも長いT2にして基板表面励起処理を実行した場合である。
【0047】
このように,励起部位のX方向の間隔は上記のようにレーザ光を所定の間隔で間欠照射することで調整できる。レーザを間欠照射する方法としては,上記のようなレーザ光自体のオン/オフに限られず,例えばレーザ光を遮蔽可能なシャッタを設け,このシャッタによってレーザ光の遮蔽と非遮蔽を繰り返すようにしてもよい。
【0048】
また,励起部位ExのY方向(レーザ光の照射方向)の間隔は,レーザ光の定常波の波長λを変えるだけで簡単に制御できるので,その後に形成される量子ドットQのY方向の間隔λ/2を制御できる。このようにレーザ光の波長を変えることによって量子ドットQのY方向の間隔をナノオーダーで制御できる。
【0049】
具体的にはレーザ光の波長を短くするほど,励起部位ExのY方向の間隔を狭くすることができるので,Y方向の間隔が狭い量子ドットQを形成できる。逆にレーザ光の波長を長くするほど,励起部位ExのY方向の間隔を長くすることができるので,Y方向の間隔が長い量子ドットQを形成できる。例えば図8は,レーザ光の波長をλより短いλにして基板表面励起処理を実行した場合である。この場合の量子ドットQの間隔は,レーザ光の半波長λ/2となる。
【0050】
また,上記実施形態では,レーザ光源LをX方向に走査させながらレーザ光をオンオフするので,レーザ光をオンしたときの照射時間を変えることで,励起部位ExのY方向の長さを調整できる。これにより,その励起部位に形成される量子ドットQのサイズを制御することができる。
【0051】
なお,基板表面の励起方法としては,上記実施形態のようにレーザ光源LをX方向に走査させ続けながら所定間隔でレーザ光をオンオフする場合に限られるものではなく,所定間隔ごとにレーザ光源Lを停止させるようにしてもよい。具体的にはレーザ光源Lを待機位置t0からX方向に走査させると,先ず励起開始位置t0で停止させてレーザ光を所定の照射時間だけオンする。その後は励起終了位置tnまで所定間隔ごとにレーザ光源Lを停止させてその停止位置ごとにレーザ光を所定の照射時間だけオンする。この場合は,レーザ光を照射している間はレーザ光源Lが停止しているので,その照射時間を変えることで同じ励起部位に与えるエネルギ量を調整できる。
【0052】
また,一度基板表面励起処理を実行して例えば図6Dに示すような励起部位Exを形成した後に,載置台112を回転して基板Wを例えば90度回転させて,レーザ光の波長や照射タイミングを変えて再度基板表面励起処理を実行することで,一回目の基板表面励起処理で形成された励起部位Exの隙間にさらに励起部位Exを形成することもできる。これによれば,より密に励起部位Exを形成することができる。なお,基板Wの回転角度は90度に限られるものではなく,載置台112を回転させて自由に基板Wの角度を変えることで所望の位置に励起部位Exを形成することができる。これにより,基板上の所望の位置に量子ドットQを形成することができる。
【0053】
また,基板W上に誘電体を載置することで,レーザ光の波長を部分的に変えることができる。具体的には図9に示すようにレーザ光が透過するように基板W上に誘電体Dを載置すると,誘電体D内ではレーザ光の波長が変わるため,誘電体Dが載置された部位では,励起部位のX方向の間隔が変わることになる。これを利用することで,所望の領域だけ別の間隔で量子ドットQを形成させることもできるようになる。
【0054】
ここで,誘電体Dを用いることによって特定領域だけX方向の間隔が異なる量子ドットQを形成させるための基板表面励起処理について図面を参照しながら説明する。図10A,図10B,図10Cは誘電体Dの作用を説明するための図である。ここでは,基板上の特定領域A,B,Cに他の領域より密の量子ドットQを形成する場合を例に挙げて説明する。
【0055】
先ず,特定領域Aの上に誘電体Dを載置した状態で,レーザ光源LをX方向に走査を開始する。そして,図10Aに示すようにt1,t2のタイミングでレーザ光をオンすることによって,レーザ光は誘電体Dを透過する。このとき,レーザ光の波長は誘電体Dの外部よりも内部の方が短くなるため,Y方向(レーザ光の照射方向)では特定領域Aではそれ以外の領域よりも密な励起部位Exが形成される。
【0056】
次いで,特定領域Bの上に誘電体Dを載置した状態で,レーザ光源LをさらにX方向に走査する。そして,図10Bに示すようにt3,t4のタイミングでレーザ光をオンすることによって,図10Aの場合と同様にY方向(レーザ光の照射方向)では特定領域Bではそれ以外の領域よりも密な励起部位Exが形成される。
【0057】
次に,特定領域Cの上に誘電体Dを載置した状態で,レーザ光源LをさらにX方向に走査する。そして,図10Cに示すようにt5,t6のタイミングでレーザ光をオンすることによって,図10Aの場合と同様にY方向(レーザ光の照射方向)では特定領域Cではそれ以外の領域よりも密な励起部位Exが形成される。
【0058】
このように,レーザ光をX方向に走査させる際に,所定のタイミングで誘電体DをY方向にずらしながら基板W上に載置することで,特定領域だけX方向の間隔が異なる量子ドットQを形成させることができる。このような誘電体D内のレーザ光の波長は,誘電体Dの誘電率を変えることで調整できる。従って,誘電体Dを誘電率の異なる材料に変えることによって,誘電体D内の量子ドットのY方向(レーザ光の照射方向)の間隔を調整できる。
【0059】
なお,上記実施形態では単一のレーザ光で基板表面を走査することによって所望の部位を励起する場合について説明したが,これに限られるものではなく,複数のレーザ光で基板表面を走査することによって所望の部位を励起するようにしてもよい。
【0060】
(基板表面励起ユニットの変形例)
ここで,二つのレーザ光を基板表面上にて走査させることができる基板表面励起ユニット100の変形例について図面を参照しながら説明する。図11は基板表面励起ユニット100の変形例を示す斜視図である。図11に示す基板表面励起ユニット100は,二つのレーザ光源L1,L2を基台134に取り付けることによって,二つのレーザ光を照射できるレーザユニット130を備える。その他の構成は図3に示すものと同様であるため,その詳細な説明は省略する。
【0061】
レーザ光源L1,L2からのレーザ光は同一の波長であってもよく,又は異なる波長であってもよい。同一波長のレーザ光を照射する場合は,図12に示すように同時に照射することで同時にY方向の2ラインずつ励起することができるので,基板表面励起処理の速度を高めることができる。また,異なる波長のレーザ光を照射する場合は,図13に示すようにY方向の奇数ラインと偶数ラインでX方向の間隔の異なる量子ドットQを形成できる。
【0062】
また,図14に示すようにレーザ光源L1,L2をずらして基台134に取り付けるようにしてもよい。これにより,Y方向の奇数ラインと偶数ラインでX方向に所定間隔でずれた量子ドットQを形成することができる。
【0063】
このように複数のレーザ光を基板表面上に走査させることで,処理速度を向上させることができるだけではなく,量子ドットQの形成される位置をより細かく制御することができる。なお,図14では2つのレーザ光を照射させて基板表面励起処理を行う場合を例に挙げたが,これに限定されるものではなく,3つ以上のレーザ光を照射させて基板表面励起処理を行うようにしてもよい。また,複数のレーザ光は同時に照射する場合に限られるものではなく,別々のタイミングで照射するようにしてもよい。例えば異なる波長のレーザ光を用いる場合は,必要に応じていずれかの波長のレーザ光をオンすることで,所望の間隔で基板表面を励起させることができる。
【0064】
以上,詳述した基板表面励起処理が施された基板Wに対して,SKモードによって膜を成長させると,例えば図6Dに示す励起部位Ex上だけに3次元的島状構造が形成され,量子ドットQが形成される。従って,本実施形態によればレーザ光を基板表面上にて走査させながらレーザ光オンオフするという極めて簡単な制御で量子ドットQが形成される位置を制御できる。しかも,基板表面には振動が発生しないため,表面構造が異なる基板であっても常に所望の位置に量子ドットQを形成させることができる。
【0065】
(基板表面励起ユニットを適用可能な基板処理装置)
次に,上記基板表面励起ユニット100を適用可能な基板処理装置の一例を図面を参照しながら説明する。図15は基板処理装置の概略構成を示す断面図である。基板処理装置300は,基板Wに対して量子ドットQを形成するためのSKモードを利用した膜成長を行う複数の処理室を備えるプロセス処理ユニット310と,このプロセス処理ユニット310に対して基板Wを搬出入させる搬送室330を設けた搬送ユニット320とを備える。
【0066】
まず,搬送ユニット320の構成について説明する。カセット容器332に収容された複数枚(例えば25枚)の基板Wを基板処理装置300に出し入れするための搬送室330を備える。搬送室330には例えば3つのカセット台331A〜331Cがそれぞれゲートバルブ333A〜333Cを介して設けられており,これらの各カセット台331A〜331Cにはそれぞれカセット容器332A〜332Cがセットできるようになっている。
【0067】
搬送室330には,上述した基板表面励起処理を行う基板表面励起処理室400が設けられている。基板表面励起処理室400はその内部に基板表面励起ユニット(基板表面励起処理部)100を備える。基板表面励起ユニット100の構成は図3に示すものと同様のため,その詳細な説明を省略する。
【0068】
搬送室330には,基板Wの位置合せを行うプリアライメント処理室(オリエンタ)336が設けられている。プリアライメント処理室336は,例えばその処理室内に回転可能に配設された載置台338と載置台338上の基板Wの周縁部を光学的に検出する光学センサ339を備え,載置台338で基板Wを回転させて,基板Wの周縁部に形成されるオリエンテーションフラットやノッチなどを光学センサ339で検出して基板Wの位置合せを行う。
【0069】
搬送室330内には,その長手方向(図11に示す矢印方向)に沿ってスライド自在に構成された搬送ロボット370が設けられている。搬送ロボット370には,例えば基板Wを載せて搬送するための搬送アーム373A,373Bが設けられている。搬送アーム373A,373Bは,屈伸・昇降・旋回可能に構成されており,上記カセット容器332A〜332C,プリアライメント処理室336,基板表面励起処理室400,後述するロードロック室360M,360Nに対して基板Wの出し入れを行うようになっている。なお,搬送ロボット370は2つの搬送アーム373A,373Bを備えるので,これらを利用して例えばロードロック室360M,360N,プリアライメント処理室336,基板表面励起処理室400などに対して,処理済みの基板Wと処理前の基板Wとを交換するように,基板Wの出し入れをすることができる。
【0070】
次に,プロセス処理ユニット310の構成について説明する。プロセス処理ユニット310は例えば図15に示すようなクラスタツール型に構成される。すなわち,プロセス処理ユニット310は,多角形(例えば六角形)に形成された共通搬送室350を備え,この共通搬送室350の周囲には,基板Wに対して所定のプロセス処理を施す複数(例えば6つ)のプロセス処理室340A〜340Fがそれぞれゲートバルブ344A〜344Fを介して接続される。
【0071】
各プロセス処理室340A〜340Fは,基板Wを載置するための載置台342(342A〜342F)がそれぞれ設けられ,予め制御部500の記憶媒体などに記憶されたプロセス・レシピなどに基づいて,載置台342上の基板Wに対して例えば量子ドットQを形成するためのSKモードを利用した成膜処理を施す量子ドット形成処理部を備える。各プロセス処理室340A〜340Fは,量子ドット形成処理部によって,上述した基板表面励起処理を施した基板に対して,その表面を構成する下地膜と格子定数の異なる膜を成長させて励起部位Exに量子ドットQを形成する処理を行うようになっている。
【0072】
量子ドット形成処理部は,例えば分子線エピタキシー法(MBE)を用いて成膜処理を行う場合は,プロセス処理室340A〜340Fの内部を所定の真空圧力に減圧する真空ポンプなどの排気部,基板を加熱する加熱機構,薄膜原料を基板表面に供給する原料供給源,基板表面に向けて分子線を照射する原料蒸発源としての分子線源(例えば分子線セル,電子銃など),などにより構成する。
【0073】
これにより,各プロセス処理室340A〜340Fを高真空中で薄膜原料を加熱して基板表面に蒸着し,基板表面に量子ドットQを成長させるMBE処理室として構成することができる。このようなMBE処理室の構成は,公知のMBE装置のものを適用できる。
【0074】
なお,量子ドットQを形成する成膜処理を実行する処理室は,MBE処理室として構成する場合に限られるものでない。例えば有機金属気相成長法(MOCVD)を用いて成膜処理を行う場合,量子ドット形成処理部は,プロセス処理室340A〜340Fの内部を所定の真空圧力に減圧する真空ポンプなどの排気部,基板を加熱する加熱機構,薄膜原料を気化させて基板表面に供給する原料供給源などにより構成する。この場合,プラズマを用いて成膜を行う場合は,さらにプラズマ発生用の高周波電力を印加する電極を設けてもよい。
【0075】
これにより,各プロセス処理室340A〜340Fを基板表面に薄膜原料を高温中で反応させてCVDプロセスにより成膜することにより量子ドットQを成長させるMOCVD処理室として構成することができる。このようなMOCVD処理室の構成は,公知のMOCVD装置のものを適用できる。
【0076】
上述したような量子ドットQを形成する成膜処理を行う処理室として構成するのは,プロセス処理室340A〜340Fのうち少なくとも1つであればよく,その他の処理室は例えばエッチング,熱処理など他のプロセスを行う処理室として構成してもよい。また,プロセス処理室340の数は,図15に示す場合に限られるものではない。
【0077】
また,共通搬送室350の周囲には,上記搬送室330との間で基板Wをやり取りするロードロック室360M,360Nが設けられている。第1,第2ロードロック室360M,360Nは,その内部に配設された受渡台364M,364Nを介して基板Wを一時的に保持し,圧力調整後に真空圧側の共通搬送室350と大気圧側の搬送室330との間で基板Wをパスさせるものである。従って,気密保持のため,ロードロック室360M,360Nは,共通搬送室350とはゲートバルブ354M,354Nを介して接続され,搬送室330とはゲートバルブ362M,362Nを介して接続される。
【0078】
共通搬送室350内には,その長手方向に沿って設けられた案内レール384に沿ってスライド自在に構成された搬送ロボット380が設けられている。搬送ロボット380には,例えば基板Wを載せて搬送するための搬送アーム383A,383Bが設けられている。搬送アーム383A,383Bは,屈伸・昇降・旋回可能に構成されており,各プロセス処理室340A〜340F,ロードロック室360M,360Nに対して基板Wの出し入れを行うようになっている。
【0079】
例えば搬送ロボット380を共通搬送室350の基端側寄りにスライドさせて,各ロードロック室360M,360Nとプロセス処理室340A,340Fに対して基板Wの出し入れを行い,また共通搬送室350の先端側寄りにスライドさせて,4つのプロセス処理室340B〜340Eに対して基板Wの出し入れを行う。なお,搬送ロボット380は,2つの搬送アーム383A,383Bを備えるので,これらを利用して例えばプロセス処理室340A〜340F,ロードロック室360M,360Nに対して処理済みの基板Wと処理前の基板Wとを交換するように,基板Wの出し入れをすることができる。
【0080】
基板処理装置300には,搬送ロボット370,380,各ゲートバルブ333,344,354,362,プリアライメント処理室336,基板表面励起処理室400などの制御を含め,基板処理装置全体の動作を制御する制御部500が設けられている。制御部500は,例えば制御部本体を構成するCPU,このCPUが処理を行うために必要なデータを記憶するROM,CPUが行う各種データ処理のために使用されるメモリエリアなどを設けたRAM,CPUが各部を制御するためのプログラムや各種データを記憶するハードディスク(HDD)又はメモリ等の記憶手段の他,操作画面や選択画面などを表示する液晶ディスプレイ,オペレータによるプロセス・レシピの入力や編集など種々のデータの入力および所定の記憶媒体へのプロセス・レシピやプロセス・ログの出力など各種データの出力などを行うことができる入出力手段,基板処理装置300の各部を制御するための各種コントローラなどを備える。
【0081】
(基板処理装置の動作)
次に,基板処理装置300の動作について説明する。基板処理装置300は制御部500により所定のプログラムに基づいて稼働する。例えば搬送ロボット370によりカセット容器332A〜332Cのいずれかから搬出された基板Wは,搬送室330内を通ってプリアライメント処理室336に搬入されて位置決め処理がなされる。
【0082】
位置決め処理された基板Wは,プリアライメント処理室336から搬出されて基板表面励起処理室400に搬入され,上述したレーザ光による基板表面励起処理が施される(基板表面励起ステップ)。これにより,基板表面(下地膜)の所望の位置に励起部位Exが形成される。
【0083】
基板表面励起処理が施された基板Wは,基板表面励起処理室400から搬出されてロードロック室360Mまたは360N内へ搬入される。このとき,必要なすべてのプロセス処理が完了した基板Wがロードロック室360Mまたは360Nにあれば,その基板Wを搬出して未処理の基板Wを搬入する。
【0084】
ロードロック室360Mまたは360Nへ搬入された基板Wは,搬送ロボット380によりロードロック室360Mまたは360Nから搬出され,プロセス処理室340A〜340FのうちのMBE処理室として構成された処理室へ搬入されて量子ドットQを形成するためのSKモードを利用した成膜処理が実行される。これにより,基板表面(下地膜)の励起部位Exに量子ドットQが形成される(量子ドット形成ステップ)。そして,処理が完了した基板Wは,ロードロック室360Mまたは360N,搬送室330を介してカセット容器332A〜332Cに戻される。
【0085】
このように,本実施形態にかかる基板処理装置300によれば,基板表面励起処理室において基板Wに対して所望の位置を励起させる基板表面励起処理を施した上で,MBE処理室として構成された処理室にてSKモードを利用した成膜処理を行うことによって,その励起部位Exにのみに量子ドットQを形成できる。
【0086】
なお,図15に示す基板処理装置300では,基板表面励起ユニット100を備えた基板表面励起処理室400を大気圧雰囲気の搬送室330に設けた場合について説明したが,これに限定されるものではなく,例えば真空圧雰囲気の共通搬送室350に設けるようにしてもよい。この場合,プロセス処理室340A〜340Fのうちの1つを基板表面励起処理室400として構成してもよい。また,基板表面励起ユニット100は必ずしも基板表面励起処理室400として他の処理室と独立して設ける場合に限定されるものではなく,プロセス処理室340A〜340Fのいずれかの内部に設けるようにしてもよく,またプリアライメント処理室(オリエンタ)336やロードロック室360N,360Mの内部に設けるようにしてもよい。この場合,プロセス処理室340A〜340F,プリアライメント処理室(オリエンタ)336,ロードロック室360N,360Mには載置台342A〜342Fや受渡台364N,364Mは既に設けられているため,レーザユニット130だけを追加で設けるようにしてもよい。
【0087】
これにより,プロセス処理室340A〜340F,プリアライメント処理室(オリエンタ)336,ロードロック室360N,360Mでも上述した基板表面励起処理を実行することができる。特にプロセス処理室340A〜340F処理室のうち,量子ドットを形成する成膜処理を行うMBE処理室又はMOCVD処理室として構成した処理室の内部にレーザユニット130を設ければ,レーザ光によって基板表面を励起させながら,SKモードを利用した成膜処理を同時に実行できる。
【0088】
なお,上記実施形態により詳述した本発明については,複数の機器から構成されるシステムに適用しても,1つの機器からなる装置に適用してもよい。上述した実施形態の機能を実現するソフトウエアのプログラムを記憶した記憶媒体等の媒体をシステムあるいは装置に供給し,そのシステムあるいは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が記憶媒体等の媒体に記憶されたプログラムを読み出して実行することによっても,本発明が達成され得る。
【0089】
この場合,記憶媒体等の媒体から読み出されたプログラム自体が上述した実施形態の機能を実現することになり,そのプログラムを記憶した記憶媒体等の媒体は本発明を構成することになる。プログラムを供給するための記憶媒体等の媒体としては,例えば,フロッピー(登録商標)ディスク,ハードディスク,光ディスク,光磁気ディスク,CD−ROM,CD−R,CD−RW,DVD−ROM,DVD−RAM,DVD−RW,DVD+RW,磁気テープ,不揮発性のメモリカード,ROMなどが挙げられる。また,媒体に対してプログラムを,ネットワークを介してダウンロードして提供することも可能である。
【0090】
なお,コンピュータが読み出したプログラムを実行することにより,上述した実施形態の機能が実現されるだけでなく,そのプログラムの指示に基づき,コンピュータ上で稼動しているOSなどが実際の処理の一部又は全部を行い,その処理によって上述した実施形態の機能が実現される場合も,本発明に含まれる。
【0091】
さらに,記憶媒体等の媒体から読み出されたプログラムが,コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後,そのプログラムの指示に基づき,その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部又は全部を行い,その処理によって上述した実施形態の機能が実現される場合も,本発明に含まれる。
【0092】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は,基板上に量子ドットを形成するための方法及びこれを実施するためのプログラムを記憶する記憶媒体並びに基板処理装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0094】
100 基板表面励起ユニット
110 載置台ユニット
112 載置台
114 支持軸
130 レーザユニット
134 基台
138 レーザ駆動機構
138X X方向駆動部
138Y Y方向駆動部
138Z Z方向駆動部
200 制御部
300 基板処理装置
310 プロセス処理ユニット
320 搬送ユニット
330 搬送室
331A〜331C カセット台
332A〜332C カセット容器
333A〜333C ゲートバルブ
336 プリアライメント処理室
338 載置台
339 光学センサ
340A〜340F プロセス処理室
342A〜342F 載置台
344A〜344F ゲートバルブ
350 共通搬送室
354M,354N ゲートバルブ
360M,360N ロードロック室
362M,362N ゲートバルブ
364M,364N 受渡台
370,380 搬送ロボット
373A,373B 搬送アーム
383A,383B 搬送アーム
384 案内レール
400 基板表面励起処理室
500 制御部
A,B,C 特定領域
D 誘電体
Ex 励起部位
L,L1,L2 レーザ光源
Q 量子ドット
W 基板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に量子ドットを形成する方法であって,
定在波を有するレーザ光を前記基板の側方からその基板の表面に沿うように照射させることによって,前記基板表面を前記定在波の半波長間隔で励起させる基板表面励起ステップと,
前記基板に対してその表面を構成する下地膜と格子定数の異なる膜を成長させて前記励起部位に量子ドットを形成する量子ドット形成ステップと,
を有することを特徴とする量子ドット形成方法。
【請求項2】
前記基板表面励起ステップは,前記レーザ光のレーザ光源をレーザ光照射方向に垂直な方向に駆動して前記基板表面を走査させながら,前記レーザ光を所定間隔で間欠照射させることを特徴とする請求項1に記載の量子ドット形成方法。
【請求項3】
前記基板表面励起ステップは,前記レーザ光の波長を変えることによって,前記基板表面を励起する部位のレーザ光照射方向の間隔を調整することを特徴とする請求項1又は2に記載の量子ドット形成方法。
【請求項4】
前記基板表面励起ステップは,前記レーザ光を間欠照射する所定間隔を変えることによって,前記基板表面を励起する部位のレーザ光照射方向に垂直な方向の間隔を調整することを特徴とする請求項2又は3に記載の量子ドット形成方法。
【請求項5】
前記基板表面励起ステップは,複数のレーザ光源からそれぞれレーザ光を同時に又は別々のタイミングで照射することによって前記基板表面を励起することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の量子ドット形成方法。
【請求項6】
前記基板表面励起ステップは,前記各レーザ光源から異なる波長のレーザ光を照射して前記基板表面を励起することを特徴とする請求項5に記載の量子ドット形成方法。
【請求項7】
前記基板表面励起ステップは,前記基板の表面の一部を覆うように誘電体を載置した状態で前記レーザ光を照射することによって,前記誘電体で覆われた領域とそれ以外の領域における励起部位の間隔を変えることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の量子ドット形成方法。
【請求項8】
基板の表面に量子ドットを形成する方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶するコンピュータ読取可能な記憶媒体であって,
前記量子ドット形成方法は,
定在波を有するレーザ光を前記基板の側方からその基板の表面に沿うように照射させることによって,前記基板表面を前記定在波の半波長間隔で励起させる基板表面励起ステップと,
前記基板に対してその表面を構成する下地膜と格子定数の異なる膜を成長させて前記励起部位に量子ドットを形成する量子ドット形成ステップと,
を有することを特徴とする記憶媒体。
【請求項9】
基板の表面に量子ドットを形成する処理を行う基板処理装置であって,
前記量子ドットを形成する前の基板の表面のうち,前記量子ドットを形成したい部位を励起させる処理を行う基板表面励起処理部と,
基板表面励起処理を施した基板に対して,その表面を構成する下地膜と格子定数の異なる膜を成長させて前記励起部位に量子ドットを形成する処理を行う量子ドット形成処理部と,を備え,
前記基板表面励起処理部は,
基板を載置する載置台と,
定在波を有するレーザ光を前記載置台に載置された基板の側方からその基板の表面に沿うように照射させる照射するレーザ光源と,
レーザ光源を少なくともレーザ照射方向に垂直な方向に駆動させる駆動機構と,
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項10】
前記基板表面励起処理部と前記量子ドット形成処理部は,異なる処理室に別々に設けたことを特徴とする請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記基板表面励起処理部と前記量子ドット形成処理部は,同一の処理室に設けたことを特徴とする請求項9に記載の基板処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−49186(P2012−49186A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187318(P2010−187318)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】