説明

金属配線構造用のルテニウム膜の形成方法

【課題】薄く且つ連続的なRu膜を形成する。
【解決手段】 反応室内で基板上にルテニウム(Ru)薄膜を堆積させる方法であって、(i)反応室内にルテニウム前駆体のガスを供給して、非環式ジエニルを含むルテニウム複合体であるルテニウム前駆体のガスを基板に吸着させる段階と、(ii)励起した還元ガスを反応室内に供給して、基板に吸着されたルテニウム前駆体を活性化させる段階と、(iii)段階(i)と(ii)を繰り返し、それにより基板上にルテニウム薄膜を形成する段階とを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、微細半導体素子を作成する際に好適に使用することができる金属配線構造用のルテニウム(Ru)膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Ru膜は、MPUなどの高速論理素子に使用される主配線構造であるCu配線構造中のCuとバリア金属との境界にRu膜を形成することによって、Cuとの接着性を改善し、配線の信頼性を大幅に高めることができるため注目されている。Cu拡散バリア金属であるRu膜をTaN膜またはWN膜の上に形成し、次にRu膜の上にCu膜を形成する方法が研究されている(RuとTaNの組み合わせに関するそのような方法の例は、C-C Yongらによる論文「Physical, Electrical, and Reliability Characterization of Ru for Cu Interconnects」IITC 2006、pp.187-189を参照されたい)。具体的には、Ru/TaNなどの積層構造から成るCuライナーの適用が研究されている。
【0003】
Cu配線ライナーとしての利用が検討されているRu/TaNなどのCuライナー膜は、この膜が厚いほどCu配線体積が小さくなるので、膜が厚いとCu配線抵抗が高くなりやすい。このため、できるだけ薄い膜を作成することが必要になる。しかしながら、銅拡散バリア膜とRu膜から成る積層構造では、Ru膜を薄くすることにより実際には連続膜の形成が妨げられ、その結果バリア膜が部分的に露出する。その結果、Cu配線とバリア膜の境界ができ、それが問題を引き起こすことがある。一方、連続膜を形成するためにRu膜を厚く作成すると、Cu配線の抵抗が大きくなる。換言すると、薄く且つ連続的なRu膜を形成することが望ましい。また、TaN膜、TaNC膜などの銅拡散バリア膜上にRu膜を形成するときに、前述のバリア膜が酸化するのを防ぐため、Ru膜は、還元雰囲気中で形成されることが望ましい。
【0004】
特許文献1(米国特許公開2006/0177601A)によれば、Ru膜は、シクロペンタジエニル基を含む配位子を含むRu原料を供給する段階と、高周波によって活性化されたNH3ガスを使用する処理段階によって還元雰囲気中で形成することができる。
【特許文献1】米国特許公開2006/0177601公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
WNC膜は優れた銅拡散バリア膜であるが、Ru/WNC積層構造を形成するとRu膜が薄くなり、そのため膜が実質的に連続的でなくなり、従ってWNC膜が部分的に露出されやすい。発明者は、米国特許2006/0177601Aに開示された方法を利用してWNC膜上に3nmのRu膜を形成し、その後で銅シード層をめっき層と共に形成し、次に配線にCMP処理を行った。その結果、Ru膜が連続的ではないため下層のWNC膜がエッチングされ、Ru膜が剥がれた。Ru膜は、薄膜が特定の厚さ(約3〜4nm)にならないと連続膜になりにくい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、本発明は、反応室内で基板上にルテニウム(Ru)薄膜を堆積させる方法を提供し、この方法は、(i)ルテニウム前駆体のガスを反応室に供給して、非環式ジエニルを含むルテニウム複合体であるルテニウム前駆体のガスが基板に吸着されるようにする段階と、(ii)励起した還元ガスを反応室内に供給して基板に吸着されたルテニウム前駆体を活性化させる段階と、(iii)段階(i)と(ii)を繰り返し、それにより基板上にルテニウム薄膜を形成する段階とを含む。
【0007】
上記の態様は、以下の態様を含むが、これらに限定されない。
【0008】
一態様では、ルテニウム複合体は、Xa−Ru−Xbの構造を有することができ、XaまたはXbの少なくとも一方は非環式ジエニルである。非環式ジエニルは、非環式ペンタジエニルでよい。非環式ペンタジエニルは、C1−2アルキル基の少なくとも1つの側鎖を有することがある。非環式ペンタジエニルは、メチルの2つの側鎖を有することがある。
【0009】
一態様では、Xaは非環式ジエニルでよく、Xbは環式ジエニルでよい。Xaは非環式ペンタジエニルでよく、Xbはシクロペンタジエニルでよい。
【0010】
他の態様では、XaとXbは両方とも、非環式ペンタジエニルでよい。
【0011】
一態様では、励起した還元ガスは、高周波電力を還元ガスに印加することによって生成されてもよい。還元ガスは、アンモニア、水素、または窒素と水素の混合物でよい。励起した還元ガスは、アンモニアまたは水素のプラズマでよい。
【0012】
一態様では、方法は、更に、段階(i)の後で反応室からルテニウム前駆体ガスをパージし、段階(ii)の後で反応室から励起した還元ガスをパージする段階を更に含むことができる。
【0013】
一態様では、段階(i)と(ii)を繰り返して、0.5nm以上2.0nm以下の厚さを有するルテニウム薄膜を形成することができる。また、段階(i)と(ii)を繰り返して、0.5nm以上2.0nm以下の厚さを有するルテニウム薄膜を形成することができる。段階(i)と(ii)は、更に、50回〜150回繰り返されてもよい。
【0014】
一態様では、方法は、更に、ルテニウム薄膜を金属膜上に形成する段階(i)〜(iii)の前に金属膜を与える段階を含むことができる。金属膜は、WNC、WN、TaN、Ta、TaNC、TiN、Ti、Cu、Al、Co、およびNiから成るグループから選択されてもよい。
【0015】
一態様では、段階(i)で、ルテニウム前駆体のガスは第1のガスでよく、段階(i)は、更に、別のルテニウム前駆体の第2のガスを第1のガスと同時に反応室に供給する段階を含むことができる。
【0016】
他の態様では、方法は、更に、段階(i)と(ii)を所定回数繰り返した後で、(iv)別のルテニウム前駆体の第2のガスを反応室内に供給して、他のルテニウム前駆体の第2のガスを基板に吸着させる段階と、(v)励起した還元ガスを反応室内に供給して基板上に吸着された他のルテニウム前駆体を活性化させる段階と、(vi)段階(iv)と(v)を繰り返し、それにより基板上にルテニウム薄膜を形成する段階とを含むことができる。
【0017】
一態様では、方法は、更に、段階(iii)の後で、CVDによってルテニウム薄膜上にルテニウム薄膜または酸化ルテニウム薄膜を形成する段階を含むことができる。
【0018】
一態様では、方法は、更に、段階(iii)の後で、ルテニウム薄膜上に銅膜を形成する段階を含むことができる。銅膜は、CVDまたはALDによって生成される銅前駆体のガスを基板上に供給することによって形成されてもよい。
【0019】
別の態様では、本発明は、基板と、基板上に形成され、ピンホールがなく連続的で且つ0.5nm以上2.0nm以下の厚さを有するルテニウム薄膜とを含むルテニウム薄膜形成構造体を提供する。
【0020】
以上の態様はすべて、任意の組み合わせで使用することができる。
【0021】
以上の態様は、更に、以下の態様を含むがこれらに限定されない。
【0022】
ルテニウム薄膜は、非環式ジエニルを含むルテニウム複合体によって形成することができる。基板は金属膜を含んでもよく、ルテニウム薄膜は金属膜上に形成されてもよい。金属膜は、WNC、WN、TaN、Ta、TaNC、TiN、Ti、Cu、Al、Co、およびNiから成るグループから選択することができる。ルテニウム薄膜形成構造は、更に、ルテニウム薄膜上に銅膜を含むことができる。
【0023】
以上の態様はすべて、任意の組み合わせで使用することができる。
【0024】
以上、本発明とそれにより達成された関連技術より優れた利点を要約するために、本発明の特定の目的および利点を説明した。当然ながら、本発明の任意の特定の実施形態に従って必ずしもすべてのそのような目的または利点が達成されなくてもよいことを理解されたい。従って、例えば、当業者は、本明細書に教示したような1つの利点または1組の利点を達成または最適化するように本発明を具体化または実施すればよく、本明細書に教示または示唆した他の目的または利点を必ずしも達成しなくてもよいことを理解されよう。
【0025】
本発明の更に他の態様、特徴および利点は、以下の好適実施形態の詳細な説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に、本発明の上記または他の特徴を、限定しないように意図した好適実施形態の図面を参照して説明する。
【0027】
本発明を好適実施形態と図面に関して説明する。しかしながら、この好適実施形態と図面は、本発明を限定するものではない。
【0028】
本発明の一実施形態は、Ru(XaXb)構造を有しXaとXbの少なくとも一方が非環式ジエニルである分子から選択されたRu原料ガスを基板上に供給する段階と、高周波によって励起した還元ガスを使って基板を処理する段階とを含むRu膜形成方法を特徴とする。この実施形態は、また、前述の形成方法によって形成されたRu膜を特徴とする。非環式ジエニル(「直鎖ジエニル」とも呼ばれる)は、一例として、5員、6員、7員、または8員の鎖を有することができるが、それらの中でも一実施形態では、5員の非環式ペンタジエニルを都合よく使用することができる。この非環式ジエニルは、1個以上(好ましくは2個以下)の炭素が結合された側鎖を有することができる。
【0029】
一実施形態では、分子構造Ru(XaXb)(ここで、XaとXbの少なくとも一方が非環式ペンタジエニルである)を有するRu原料中の前述のペンタジエニル基(単に「ペンタジエニル」とも呼ばれる)は、1個以上の炭素が結合された側鎖を有することができる。図2(a)と図(b)の両方に示した材料は、ペンタジエニル基に結合された2メチル基側鎖を有する。例えば、この側鎖の他に、エチル基やブチル基を結合することもできる。ペンタジエニル基に結合されたどの炭化水素側鎖も2個以下の炭素を有することが好ましい。また、結合された側鎖の数は1個から4個であり、あるいは好ましくは2個以下である。また、側鎖のないペンタジエニル基構造も可能である。
【0030】
一実施形態では、ペンタジエニルは、1,3−ペンタジエニルまたは1,4ペンタジエニルである。
【0031】
米国特許公開2006/0177601A1では、構造は、シクロペンタジエニル基だけを有するものに限定され、他のRu化合物の使用は禁止されている。これは、シクロペンタジエニル基が化学的に極めて安定しており、扱いやすいからである。発明者は、環式シクロペンタジエニル(シクロペンタジエニル(Cp)、メチルシクロペンタジエニル(MeCp)、エチルシクロペンタジエニル(EtCp)またはイソプロピルシクロペンタジエニル(i−PrCp)など)を有するRu原料を使用するいくつかの事例(膜をWNC膜上に形成するときなど)で、極めて小さな厚さを有する連続膜を形成するのが難しいことを発見した。しかしながら、本発明の一実施形態では、非環式ジエニル基を有するRu化合物を使用して、極めて薄く(1nm以下)且つ連続した膜を形成することができる。そのようなRu原料を還元NH3プラズマと組み合わせることによって極めて薄い連続膜を形成できることは驚くべき発見である。例えば、シクロペンタジエニルを有するRu原料を使用するには、連続膜を形成するために3〜4nmの厚さを必要とするが、一実施形態では、ペンタジエニルを含むRu原料を使用することによって、わずか約0.6nmの厚さを有する連続膜ができる。連続的な薄いRu膜を形成するこの技術は、配線の抵抗の低減と信頼性の改善に大きく貢献し、将来の半導体素子のためのより微細な銅配線の作成を容易にし、前述の材料とNH3プラズマを組み合わせることによって、半導体素子の大幅な品質改善が可能になる。シクロペンタジエニル複合体は、合成が容易であり、従って入手し易く、また構造的に安定している。これらの特徴によって、シクロペンタジエニル複合体は工業生産用途に適切である。これにより良好なALD(原子層堆積)膜の形成が可能になるが、薄膜の厚さを更に薄くすると問題が起こる。
【0032】
図1(a)は、一実施形態における基本プロセスを示す。最初に、Ru原料ガスが基板上に供給される。この時点で、Ru原料は、約80〜120℃の温度範囲で加熱され(90℃、100℃、110℃、およびこれらの温度の間の他の温度を含む)、生成されたRu原料の蒸気は、不活性ガス(Arなど)によって反応装置に導入される。不活性ガスの流量は、約100〜700sccmの範囲(200sccm、300sccm、400sccm、500sccm、600sccm、およびこれらの値の間の他の流量を含むか、好ましくは300〜500sccm)でよい。Ru原料の最適な蒸気圧を達成するために、蒸気圧は、約0.1〜2torrの範囲(0.5torr、1.0torr、1.5torr、およびこれらの値の間の他の圧力を含む)に調整されることが望ましい。この実施形態では、蒸発したRuの流量は、Ruを含むキャリアガス(不活性ガス)の流量のことを指し、このキャリアガスは、材料を上記蒸気圧で蒸発させることにより生成されたRu原料蒸気を運ぶために使用される。また、供給パイプは、蒸発した材料が液化するのを防ぐために、望ましくは、150℃などの130℃以上の温度に加熱されてもよい。ALDプロセスは自己帰還プロセスであり、ALD膜を基板上に前記条件下で形成することができることに注意されたい。
【0033】
次に、一実施形態では、前記ガスをパージし(1,000〜3,000sccmの流量の不活性ガスを使用して)、その後で高周波を使用して還元ガスを励起してRu膜表面を処理する。これを行う条件として、13.56kHzの高周波を利用する200〜1,000Wで高周波出力(300W、500W、700W、およびこれらの値の間の他の出力を含む)で、NH3ガスを200〜700sccm(好ましくは、300〜500sccm)の範囲の流量で供給することができる。不活性ガスに関しては、望ましくは300〜2,000sccmの範囲(好ましくは、500〜1,200sccm)の流量のArを供給することができる。圧力条件を1〜3torr間の最適レベルに調整することができる。一実施形態では、前述の還元ガスは、NH3、H2、N2とH2の混合物、あるいはこれらのガスのいずれかを含む混合ガスでよい。
【0034】
一実施形態では、前述のRu原料ガスを基板に供給する段階と、高周波によって励起した還元ガスを使用して前述の基板を処理する段階を繰り返して、0.5nm以上2.0nm以下、あるいは好ましくは0.7nm以上1.2nm以下の厚さのRu膜を形成する。
【0035】
一実施形態では、基板に前述のRu原料ガスを供給する段階と、高周波によって励起した少なくともNH3またはH2を含むガスを使用して前述の基板の上面を処理する段階とを、50サイクル以上150サイクル以下、あるいは好ましくは75以上100サイクル以下で繰り返して、前述のRu膜を形成する。換言すると、前記段階を50サイクル以下150サイクル以上で繰り返すことによって、0.5nm以上2.0nm以下の厚さの薄膜を形成することができる。
【0036】
一実施形態では、前述のRu膜は、図1(b)に説明したように金属膜上に形成される。前述の金属膜は、WNC、WN、TaN、Ta、TaNC、TiN、Ti、Cu、Al、Co、またはNiから作成することができる。
【0037】
次に、本発明の実施形態では、前述のRu原料ガスと異なるRu原料ガスを基板上に同時に供給することができる。この異なる原料は、図2(c)に示した原料(即ち、(Ru(EtCp)2)と混合されてもよい。混合比は、異なる原料が約50〜95%(流量)の割合でもよい。換言すると、一実施形態では、5%以上(10%、30%、50%、80%、100%、およびこれらの値の間の他の割合を含む)の少なくとも1つの非環式ジエニル基を含むRu複合体を、残りの部分に相当する異なる原料(詳細には、環式ジエニル基だけを含むRu複合体)と共に使用することができる。例えば、前述の異なる原料は50%以上使用される。異なる原料を同時に供給する1つの利点は、ペンタジエニル基を含む原料をNH3プラズマで容易に分解してRuコアを形成することができ、いったんRuコアが形成されると、Ru(EtCp)の吸着が促進され、従って異なる原料だけでRu形成を促進できることである。また、安価に作成できるRu(EtCp)2を使用してRu膜をより低いコストで形成できるという経済的利点もある。
【0038】
一実施形態では、前述のRu原料ガスを供給する1つの段階(この段階の1サイクルは、Ru原料の供給、パージ、NH3プラズマ処理、およびパージからなる)は、指定サイクル数(10サイクル、20サイクル、30サイクル、40サイクル、50サイクル、およびこれらの値の間の他のサイクルなど)だけ繰り返され、その後で、異なるRu原料ガス(Ru(EtCp)2のような環式ジエニル基だけを含むRu複合体など)を供給する段階(この段階は、異なるRu原料の供給、パージ、NH3プラズマ処理、およびパージからなる)が、指定サイクル数(前の段階と合計100サイクル繰り返す場合は、残りの90サイクル、80サイクル、70サイクル、60サイクル、50サイクル、および以上の値の間の他のサイクル数)だけ繰り返される。この場合も、前述のものと類似の利点を達成することができる。
【0039】
一実施形態では、任意のRu原料と酸素ガスを使用する化学蒸着法(CVD)によって、既に形成されている前述のRu膜の上にRu膜またはRuの酸化膜を積層することができる。CVDによってRu膜が形成されるかRu酸化膜が形成されるかは、酸素の分圧によって決まり、酸素の分圧が低いとRu膜が形成され、酸素の分圧が高いとRuOx膜が形成される。この場合、目的に従ってRu膜かRuOx膜が形成される。しかしながら、下層のバリア膜は、プラズマALDによって形成されたRu膜が下側に存在するため酸化されない。プラズマ原子層堆積又は原子層堆積の1つの欠点は、成長が遅いために、厚い膜を形成するときに生産性が低くなることである。一方、化学蒸着法は、素早い成長を促進し、従って短時間で厚膜を形成できる。換言すると、プラズマALDによって約1〜2nmの下層のRu膜を形成し、次に化学蒸着法プロセスで更に厚い膜を形成することによって、Ru膜を効率的に形成することができる。例えば、CVDによって約10〜20nmのRu膜またはRuOx膜を形成することは有効である。CVDによる膜成長速度は、ALDによって得られる膜成長速度の10〜100倍であるが、CVDは、酸素ガスを必要とし、また還元ガスを使用して下側にALD Ru膜を形成しなければならない。
【0040】
前述のCVDの一実施形態では、酸素ガスは、20〜100sccmの流量で供給され、Ru原料は、80〜100℃の温度範囲に加熱され、不活性ガス(Arガスなど)は、300〜500sccmの流量で反応装置に供給される。また、Arガスも、900〜1,200sccmの流量で供給することができる。1〜3torrの圧力で膜を形成するには、基板を300〜400℃の範囲の温度に維持することが望ましい。
【0041】
一実施形態では、前述のRu膜上に銅膜を形成することができる。銅原料分子をガスの形で真空中に供給することにより、化学蒸着法または原子層堆積法によって、前述のRu膜上に銅膜を形成することができる。この銅膜は、原料としてCu(hfac)(tmvs)((トリメチルビニルシリル)(ヘキサフルオロアセチルアセトナート))を使用し、基板温度を90〜200℃の範囲に調整することによって形成することができる。不活性ガスを300〜500sccmの流量でキャリアガスとして導入することができる。Cu(hfac)(tmvs)は、50〜200mg/分の速度で供給されることが望ましい。気化は、一般的な蒸発器を使用して約60〜80℃の範囲の温度で行うことができ、気化された銅原料は反応装置に供給される。膜形成圧力は、1〜2torrの範囲で調整されることが望ましい。
【0042】
条件および/または構造が指定されない本開示では、当業者は、そのような条件および/または構造を、本開示に鑑みて、日常的な実験事項として提供することができる。米国特許公開2006/0177601A1の開示は、ここに参照文献として組み込む。また、本出願と同じ譲受人が所有する米国特許出願第11/367,177号の開示は、ここに参考文献として組み込む。
【0043】
図面を参照して本発明を詳細に説明する。しかしながら、図面は、本発明を限定するものではない。
【0044】
前述のように、本発明の一実施形態では、Ru膜形成プロセスは、還元雰囲気中で行われ、その結果、Cu拡散バリアの役割をするTaNやWNCなどのバリア金属上に、このバリア金属を酸化させることなくRu膜を形成することができる。図1(a)に示したように、還元雰囲気中で、Ru前駆体を基板表面に導入する段階と、不要なRu前駆体をパージする段階と、基板表面に吸着されたRu前駆体を、少なくともNH3やH2などを含む還元ガスに高周波を印加することによって生成されたプラズマガスを使用して処理する段階と、還元ガスをパージする段階とを繰り返すことによってRu膜を形成することができる。この方法によって、TaNまたはWNCで作成されたCu拡散バリアの上面を酸化することなくRu膜を形成することができる。
【0045】
図1(b)は、類似の方法を使ってWNCまたはTaNで作成された金属膜上にRu膜を形成する順序を示す。WNC膜などの金属膜上のRu膜の連続性を評価することにより、連続膜を形成するために必要な膜の厚さは、Ru膜を形成するために使用されるRu原料分子の構造によって大きく変化することが分かった。
【0046】
図2(a)は、本発明の実施形態に使用することができるRu前駆体の一例を示す。この前駆体は、Ruに結合された1個のペンタジエニル基と1個のシクロペンタジエニル基を有する。図2(b)では、2個のペンタジエニル基がRuに結合されている。これらのRu前駆体を使用することによって、例えば、図1(a)および(b)に示したRu原料の供給段階とNH3プラズマ処理段階とを繰り返すことによって、薄く且つ連続的な膜を容易に形成することができる。図2(c)に示したように2つのシクロペンタジエニル基がRuに結合されたRu前駆体を使用する場合、連続膜を形成するには、図2(a)および(b)のRu前駆体を使用するときよりも厚い膜が必要になる。これは、図2(a)および(b)に示したRu前駆体の場合、Ru原料の吸着ペンタジエニル基が基板表面で不安定になりやすく、Ru原料分子の吸着を促進するからであると思われる。また、次の段階で、NH3プラズマの導入によってペンタジエニル基が容易に分離し、図2(b)のRu前駆体の場合は、Ru原料に結合された他方の基も不安定になり分離する。一方、2個のシクロペンタジエニル基を有するRu原料は、基板上で安定したままであり、従ってペンタジエニル基は、次の段階でNH3プラズマを導入したときでもRu原料から分離するのに時間がかかる。これにより、ペンタジエニル基が部分的に吸収された領域、分離された領域、あるいはまだ分離されていない領域ができ、これにより、最終的に、滑らかなRu膜ができにくくなる。従って、少なくとも1個のペンタジエニル基を有するRu原料分子を導入する段階と、NH3またはH2プラズマ処理段階とを繰り返すことによって、わずか約1nmの厚さの連続的なRu膜を形成できることが分かった。図2(c)に示した前駆体の場合、厚さが3nm〜4nmでないと連続膜の形成は難しかった。
【0047】
図3は、本発明を実施するために使用することができる薄膜形成装置の一例を示す。この薄膜形成装置を使って、処理ターゲットである半導体基板を真空移送室(図示せず)から反応室1に移送することができ、この反応室1内で薄膜形成プロセスを実施することができる。この反応室は、上蓋2、分散板3、排気ダクト4、下室5、基板移送ゲート6、排気口7、基板ヒータ8、および基板ヒータ上昇/下降ベローズ9を有する。反応室1に導入された後で、半導体基板を基板ヒータ上に置き、基板ヒータを上方に動かして分散板3と基板の間の距離が適切になるようにすることができる。
【0048】
また、上蓋は、ガス導入パイプ10とガス導入部11に接続される。反応性ガスがパイプ10に接続され、反応性ガスをパージするための窒素ガスまたは不活性ガスも接続される。また、パイプ10は、ゲートバルブ11を介してラジカルソース12に接続され、ゲートバルブ11を開くことによって、ラジカルソース12で生成された様々な種類のラジカルガスを導入することができる。ガス導入部11は、ガス分散部13につながり、ガス導入部から導入されたガスはガス分散部13内で拡散し分散する。また、ガス導入部11は、ガスを分散するようにガス分散部13に導入することを可能にする分散構造を有することができる。分散部13内で拡散されたガスは、分散部13と分散板2の間の空間14に達する。ガス分散部13の先端と分散板2の間にスリット型排気口17が形成され、このスリットは、分散部13の先端に円形に設けられる。符号18は、この排気スリット17につながる空間であり、この空間18は、分散部13の外壁と上蓋2とによって形成され、ガス導入部11の周囲の空間につながる。
【0049】
上蓋上には、この空間18と排気バルブ20にも続く排気管19用のフランジ接続口が形成されている。一方、分散板2上に設けられたガス分散部13、空間14およびガス放出口21を通り最終的に基板加熱台8と分散板2の間の空間に達するガスは、更に、流れて基板15の表面に達し、次に排気ダクト4に形成されたリングスロット23を通ってスリットから続く排気管24から放出される。分散板3と基板加熱台8の間にプラズマを生成するために、分散板3に高周波導入端子25により高周波電極が導入される。
【0050】
図4(a)および(b)は、Ru膜の連続性を評価する方法を示す。図4(a)は、Ru膜が不連続な場合に該当し、図4(b)は、Ru膜が連続の場合に該当する。SiO2膜403上にWNC膜402を形成し、次にRu膜401または401’を形成し、その後で、得られた試料を、WNC膜を溶かすことができるウェットエッチング溶液404(塩酸と過酸化水素から成る混酸)に浸し、WNC膜からウェットエッチング溶液404に溶出したタングステン(W)405の量をICP質量分析によって測定し定量化することができる。(a)の概略図は、Ru膜401が連続的でないときにWNC膜がピンホールによってエッチングされる状態を示す。一方、(b)は、Ru膜401'は、コア密度が高い場合に連続であり、この場合、ウェットエッチング溶液がWNC膜に到達できず、従ってWNC膜から溶出したタングステン原子はエッチング溶液中に検出されない。ウェットエッチング溶液は、WNC膜をエッチングして溶出させるHCL、H22およびH2Oが1:1:20で混合された混酸であるが、この溶液はRu膜をエッチングしない。従って、Ru膜が連続的でない場合は、下層のWNC膜がエッチングされ、その成分が溶出する。従って、ICP質量分析によりエッチング溶液を測定することによってWの量を検出することができる。
【0051】
図5は、図2(a)、(b)または(c)に示したRu原料を使用したときのサイクル数に対するRu成長速度の依存を示す。膜形成条件は、後で実施例2で説明する。サイクル数に関しては、実施例2の表2に示した段階が1つのサイクルを構成するものとして定義し、このサイクルを繰り返す回数を数えた。図2(a)、(b)および(c)のRu原料の放置サイクル(厚さとサイクル数の比例関係を推定することによって得られる厚さが零の点に対応する)は、それぞれ37サイクル、30サイクルおよび54サイクルであった。
【0052】
図6は、図5で形成されたRu膜のサイクル数と、図4に示した方法を使用して得られたWの検出量との関係を示す。ここで、収集率は、W原子がすべてエッチング溶液に溶出したと仮定して、Ru膜の下のWNC膜中の全W原子に対する検出されたW原子の実際の量の比率を示す。100%は、完全にエッチングされたことを示し、1%は、W原子全体の1%に対応するWの量が検出されたことを示す。図2(a)と(b)のRu前駆体の場合は、50サイクル後にほとんど完全な連続膜が形成された。一方、図2(c)のRu前駆体の場合は、200サイクルで連続膜は形成されなかった。
【0053】
図7は、前述のプロセスをデュアルダマシンCu配線プロセスに適用した場合のプロセスフローを示す。
【0054】
図7(a)から図7(d)は、半導体素子の配線構造を示す概略断面図であり、本発明の一実施形態によるデュアルダマシン銅配線構造を形成するプロセスを説明するために示されている。具体的には、これらの図は、ALD法を使用して金属バリア膜を有するデュアルダマシン構造内のトレンチとコンタクトビアの表面全体をライニングし、その後でRu膜と銅層を形成するプロセスを説明している。
【0055】
図7(a)は、金属バリア層を形成する前のデュアルダマシン構造を示す。導電性配線層201上に絶縁拡散バリア202を形成し、絶縁拡散バリア202の上にボトム絶縁体層203を形成し、ボトム絶縁体層203上にエッチングストップ層204を形成する。トップ絶縁体層205は、エッチングストップ層204の上に形成される。エッチングストップ層204は、所望の配線パターンのトレンチ208を形成するために使用される。トレンチ208は、エッチングマスク層レベルにエッチングされ、2つの絶縁体層205、203間に形成される。エッチングストップ層204は、トップ絶縁体層205の形成前にパターン形成されエッチングされ、トレンチ208の底から延在するコンタクトビアの所望の水平寸法を明確に画定するハードマスクを構成する。ハードマスクを含むエッチングストップ層204をエッチングする領域内で、トレンチ208の底から低導電性配線層201につながるコンタクトビア207が開けられる。符号206は、平坦化段階で化学機械的研磨が止められる層を示す。
【0056】
図7(b)は、本発明の一実施形態における前処理工程を示す。この工程は、コンタクトビア207の底の銅配線面上に形成された酸化物を除去する段階と、ダマシン構造に露出された層間絶縁膜203、205の表面を前処理する段階(例えば、H2/Heガスを800WのRF出力で30秒間導入し、次にH2/H2/N2混合ガスを300WのRF出力で60秒間導入するによって)を含む。これにより、ダマシン構造の層間絶縁膜の表面が−NH結合と−NH2結合で終端する。この終端は、NH3ガスを使用する単純な熱処理だけで実現するのは難しい。しかしながら、高周波を使用してNH3を活性化すると、その表面を、プラズマで活性化させたH2/H2/N2混合ガスを使用するときと全く同じようにNH結合とNH2結合を使用して終端させることができる。
【0057】
SiO2、SiOC、SiOなどの表面にアミノ基が導入される場合は、表面の原子に対するNの配位数は1であるなら、3配位原子であるNは表面上の原子と結合し、表面は−NH2で終端する。配位数が2の場合、表面は>NHで終端する。換言すると、本発明の一実施形態で望ましい表面終端構造は、−NH2か>NHである。後述するように、TEBガスや他の還元ガスは、図4に示したような−NH2結合またはNH結合内でHの置換の形で吸着されると考えられ、従って、表面には−NH2か>NHがなければならない。例えば、Si−NH−SiやSiONHOSiの場合には>NHが生じる。図7(b)では、−NHxの「x」は1か2を表わす。
【0058】
一実施形態において、表面へのアミノ基の導入は、低誘電率の膜の表面だけでなく、図7(b)に示したようなビアの底の金属配線層の表面にも行われる。
【0059】
図7(a)に示した絶縁膜205、203として、次世代素子に幅広く使用されるであろうSiOC低誘電率膜が利用される場合は、アルキル基であるメチル基鎖などのSiOC膜中の炭素含有側鎖が、NH3ガスによる高周波プラズマによってエッチングされ、その結果SiOC膜中のCH3、C25や他のアルキル基が失われる。これにより、しばしばコンタクトビア207が樽形に変形する。高周波プラズマによって絶縁膜205、203が破損される可能性がある場合は、H2/He/N2ガスによる高周波プラズマを使用することにより、SiOC膜上の悪影響を軽減することができる。一実施形態では、H2/He/N2中の窒素の分圧は、5〜50%であり、より好ましくは10〜30%である。RF出力周波数は、13.56MHz(通常は2MHz以上60MHz以下)に調整することができる。Heの他に、Arや他の不活性ガスも使用することができる。一実施形態では、処理条件を以下のように設定することができる。
【0060】
以上の説明で、「プラズマ」は、例えばシャワーヘッドと基板が乗せられた加熱台の間に印加される13.56kHzの高周波RF波によって生成される平行平板プラズマと呼ばれるものを指す。換言すると、基板はプラズマ生成雰囲気中にある。従って、このプロセスは、イオン活性種などのプラズマ中に生成され寿命の短い活性種による影響を受ける。一方で、基板から遠い場所にプラズマを生成する方法(遠隔プラズマ装置を使用する)があり、活性化された分子の間で、長い寿命を有する中性分子が基板まで移送され表面処理に使用される。これは、ラジカルプロセスと呼ばれる。換言すると、「ラジカル」は、電子が安定しているノーマル(基底)状態に対して、電子が励起された状態の分子を指す。ラジカルはイオンではないが、活性化されており反応性である。本発明の一実施形態では、プラズマとラジカルを交換可能に使用することができる。当業者は、適切なラジカル生成条件を、対応するプラズマ生成条件から決定できるはずである。
【0061】
前述のプロセスでは、アミノ基がプラズマによって表面に導入される。プラズマを使用せずにアミノ基を熱的に導入するのは困難である。例えば、NH3を供給するだけでアミノ基を導入することは困難である。しかしながら、表面へのアミノ基の導入は、N22ガス(ヒドラジン)などを使用すれば、プラズマを使用することなく可能である。一実施形態では、ヒドラジンを使用するプロセス条件を以下のように設定することができる。全流量に対するヒドラジンの分圧は、10〜50%であることが好ましい。
【0062】
図7(c)によって示した段階では、TEB(トリエチルボロン)ガスや他の還元ガスを導入して次に不活性ガスでパージし、その後で、WF6ガスや他の金属ハロゲン化物を導入して次に不活性ガスでパージし、その後で、NH3ガスや他のハロゲン置換窒化物ガスを導入して次に不活性ガスでパージする。これらの導入とパージを繰り返すことによって、ダマシン構造の表面に、金属原子(金属バリア膜とも呼ばれる)209を含む滑らかなWNC膜や他のバリア膜を形成することができる。バリア膜は、導電膜と呼ばれることがあるが、この用語の使用は、絶縁膜との差を強調する状況に限られる。バリア膜は必ずしも導電性とは限らない。
【0063】
還元ガスに関しては、TEBの代わりに、B26、アルキルボロン化合物、SiH4、Si26、またはアルキルシリコン化合物を使用することができる。金属ハロゲン化物に関しては、WF6の代わりにTaF6またはTiCl4を使用することができる。その結果、WNC膜の代わりに、金属原子を含むバリア膜をTaN、TaCN、WN、TiNまたはTiCN膜として形成することができる。
【0064】
前に述べたように、前述のバリア膜を形成した表面はアミノ基で終端する。還元ガスを導入し、金属ハロゲン化物を導入し、次にハロゲン置換窒化物ガスを導入するプロセスを繰り返すことによって、滑らかで均一のバリア膜を形成することができる。米国特許第6,759,325号は、ダマシン配線構造を形成するトレンチとビアの内表面にWF6を吸着させ、次にTEBや他の還元ガスを使用して還元させる方法を開示している。しかしながら、金属ハロゲン化物前駆体を導入すると、層間絶縁膜が破損したり膜内への浸透が生じたりすることがある。
【0065】
一実施形態では、バリア膜の厚さは、1〜5nmの範囲、好ましくは2〜4nmの範囲に調整される。
【0066】
図7(d)によって示した段階では、Ru膜などの第2の金属膜210が、プラズマALDや他の方法を使用してWNC膜などのバリア膜209上に形成される。ここで、第2の金属膜は、前処理の後で形成された金属バリア膜の上に形成される。この膜は、配線に使用される銅膜との良好な接着を示すRu、Ta、その他の材料を含み、いわゆる接着層または粘着層として働く。換言すると、この膜は、銅配線と、銅拡散バリアとして働く導電膜の間に挟まれており、この2つの間の接着力を高める。
【0067】
Ru−ALDは、前述の化合物とNH3プラズマを交互に供給するプラズマALD法によって形成することができる。Ru膜が還元雰囲気中で形成されるので、WNC膜209を酸化することなく積層構造を作成することができる。
【0068】
一実施形態では、第2の金属膜の厚さは、1〜10nmの範囲、または好ましくは1〜3nmの範囲に調整される。
【0069】
図7(e)は、ビア/トレンチを銅で埋めるために銅211を散布する段階を示す。図7(f)で、ビア/トレンチの上の余分な銅層をCMPによって除去し、素子の表面がCMPによって更に平坦化され、その結果、WNC膜209とRu膜210を上面から除去し、それにより相互接続銅線212が形成される。
【0070】
以上において、第1のRF出力の周波数は、13MHz〜30MHzでもよく、第2のRF出力の周波数は、300kHz〜450kHzでもよい。第2のRF出力は、第1のRF出力より低くてもよい。上記の条件に従って、厚さが約2〜約10nm、好ましくは約2nm〜約5nmのSiC膜を形成することができる。
【0071】
図8(b)は、本発明の一実施形態で使用可能な処理装置の例を示す構造図である。この装置は、様々な工程段階を処理するクラスタ型構造を有する。図8(a)は、本発明の一実施形態によるプロセスフローを示す。点線で囲まれた段階は、図8(b)に示した装置内で処理される。
【0072】
図8(b)では、例えば、基板が、大気圧ロボット301によってカセットボックス300からロードロック室302に移され、その後で、基板は、N2/H2/Heガスを使用するプラズマプロセスに基づく前処理にかけるために、中央プラットフォーム303に備えられた中央ハンドラ303によって前処理モジュール304に移される。次に、前処理された基板は、真空中でWNC−ALDモジュール305に移されてWNC−ALDプロセスにかけ、次に真空中でRuALDモジュール306に移されてRu−ALD膜が形成される。WNC膜の表面は、大気と接触すると酸化し易いので、前述のように、真空中で基板を移送することは、Ru−ALD膜を形成する際に極めて有効である。
【0073】
図9(a)は、本発明の一実施例において、本発明によって提案された方法に従ってWNC上にRu膜を形成する段階と、CVDによって酸化雰囲気中でRu膜を形成する段階とを含むプロセスを実施するために使用される反応装置の構造の一例を示す。この薄膜形成装置によって、処理ターゲットである半導体基板を、ゲートバルブ102を介して真空移送室(図示せず)から反応室101内に移すことができ、この反応室101内で薄膜形成プロセスを実行することができる。移された基板114は、加熱台102上に配置され、その環境を、バルブ127を介してターボ分子ポンプ128(TMP)を使用して真空にすることができる。その後で、基板加熱台102は、ベローズ114によって、シャワープレートからの距離が最適になるまで上昇される。その結果、シャワープレートから供給される反応性ガスが、基板114の表面に供給され、次に排気ダクト103から放出される。この時点で、シャワープレート104から供給される反応性ガスが、ベローズ114が配置された移送側に拡散するのを防ぐために、バルブ131を開けて不活性ガスを供給することができる。
【0074】
この反応室は、排気ダクト103、シャワープレート104、および上蓋113が次々と上に配置された積層構造を有し、ガス導入パイプ110に続くガス分散ノズル111(図9(b))とガス分散ガイド108が、シャワープレート104と上蓋113の間に配置されている。更に、ガス分散ガイドに沿って、分散部を排気するための排気バルブ109が接続される。また、ガス導入部105、ガス導入バルブ124、およびガス排出弁132は、シャワープレート104に接続される。パージ用の不活性ガス導入バルブ123も接続される。更に、ガス導入バルブ121とパージ用の不活性ガス導入バルブ120が、ガス導入パイプ110に接続される。Ru原料ガスがバルブ121から導入される。また、不活性ガスを速い流量で導入するバルブ122が形成される。バルブ121からガス導入パイプ110に導入されたRu原料は、ガス分散ノズル111によって分散され、ガス分散ガイドに沿って流れ、その後で、シャワープレート104のガス放出口112を通り、基板114上に供給される。一方、ガス弁124から供給されたNH3ガスまたはO2ガスは、シャワープレート104に設けられたガス導入部105内を通り、ガス分散室107内に拡散し、次にガス放出口106から基板114上に供給される。この時点で、シャワープレート104に高周波が印加され、アースされた基板加熱台102とシャワープレート104の間にプラズマが励起されて、NH3プラズマによって基板106の表面が処理される。また、基板114上に供給されたガスは、排気ダクト103を介して、排気バルブ125と圧力制御装置(APC)126によって、真空ポンプ130によって放出される。
【0075】
反応性ガスをパージするときは、不活性ガスがガス弁120と122によって導入され、排気バルブ109が、残っているRu原料を放出するために開かれる。この時点で、残っているRu原料は、ガス放出口112を介して排気ダクト103から放出されるが、装置は、バルブ109内の排気コンダクタンスが少なくとも1桁高くなるように設計され、従って残っているガスのほとんどが排気バルブ109を通って放出される。ガス弁124から供給されたNH3ガスをパージするとき、同様に不活性ガスがバルブ123から導入され、残っているガスが放出するために排気バルブ132が開かれる。この時点で、排気ダクト103を介してガス放出口106から多少のガスが放出されるが、排気バルブ132のガス排出コンダクタンスは、ガス放出口106のものより大きいので、ほとんどのガスが排気バルブ132から放出される。
【0076】
以上の機能を利用することによって、反応性Ru原料ガスを交互に供給する原子層堆積プロセス、即ち一層づつの薄膜を形成するプロセスに理想的なプロセス装置を提供することができる。
【0077】
また、Ru原料とO2ガスを同時に供給することによって、化学蒸着法を実施することができる。この場合、バルブ121を通って供給されるRu原料は、ガス放出口112を通り、基板表面に供給され、バルブ24を通って供給されたO2ガスは、ガス放出口6を通り、基板表面に供給される。Ru原料とO2が、基板表面で化学蒸着反応によって反応すると、薄いRu膜が形成される。
【0078】
図10は、実施例3に説明されたキャパシタ電極の断面構造を示す概略図である。この構造は、本発明の実施形態に従ってWNxCy膜401上にRu膜402を形成し、次に化学蒸着法によってRu膜またはRuO2膜を上に堆積させることによって作成される。
【0079】
図11は、ALD−Ru膜のシート抵抗のサイクル数に対する依存性を示すグラフであり、シートは、WF6、NH3またはTEBガスを使用してALDによって形成されたALDWNC膜の上に、本発明の一実施形態によるRu膜を使用してNH3ガスとプラズマを利用するALDによってALD−Ru膜を形成し、次にその上に同じRu原料と酸素を使用してCVDによって形成されたRuCVD膜を積層することによって作成される。この例では、図2(a)に示したRu前駆体が使用される。
【0080】
これらのサンプルの特定の構造を説明する。最初に、4つのタイプの下層のRu膜をプラズマALDによって形成した(実施例2の表2に示した膜形成条件に従って)。この4つのタイプは、25、50、75および100の異なるサイクル数に対応する(換言すると、実施例2の表2に示した4つの段階から成るサイクルはそれぞれ、25回、50回、75回および100回繰り返された)。このように作成された各Ru膜上に、化学蒸着法によってRuCVD膜を形成し、この膜を形成するのに必要な時間を水平軸によって示した。ここで、25サイクルのプラズマALDによって形成されたRu膜上に、酸化雰囲気中でRuCVD膜が形成されたとき、プラズマALDによるRu膜が連続的でないと、酸素ガスが下層WNC膜に拡散し酸化させる。その結果、本来時間とともに減少するものであるシート抵抗は逆に大きくなる。
【0081】
一方、75サイクルと100サイクルのプラズマALDによって形成されたRu膜上に化学蒸着法によってRuCVD膜を形成しても抵抗は増大せず、下層のWNC膜は酸化しない。
【0082】
図12(a)は、本発明の実施形態で使用することができる形成装置の構造の一例を示し、Ru膜402を形成するために使用される原料は、化学蒸着法によってRu膜403を形成するために使用される原料と異なる。図9(a)に示した構造を構成するものと同じ構成要素は、同じ符号で示されている。図9(a)との違いは、図12(a)では、第2のRu原料(Ru(C))を供給する原料供給容器138が提供されていることである。この原料供給容器138は、キャリアガス導入バルブ136を介してキャリアガス供給ライン133に接続され、原料供給バルブ137を介して反応装置にも接続される。この図では、Ru(A)とRu(C)は、同じラインによって反応装置に供給される。しかしながら、原料を供給する方法はこの構成に限定されず、別のラインを使用してそれぞれの原料を反応装置に供給することができる。
【0083】
前述の図1〜図12を使用して特定の実施例を説明する。
【0084】
(実施例1)
図1(b)のプロセスシーケンスによれば、金属膜を形成し、次にアンモニアプラズマALDに基づくRu原料を使用してRu膜を形成するプロセスで、下層金属膜として、ALDによって形成されたWNC膜を使用した。WNC膜は、WF6、NH3またはTEB(トリエチルボロン)を使用するプロセスによって形成された(実施例2の表1に示した条件で)。Ru−ALD膜は、図2(a)、(b)および(c)に示したRu原料と、図3に示した形成装置とを使用して形成された(実施例2の表2に示した条件で)。その結果を比較して、膜ごとにピンホールとサイクル数の関係を調べた。
【0085】
図5は、Ru膜の厚さとサイクル数の関係を示す。図2(c)に示した前駆体は、(以下、「前駆体C」と呼ぶ)は、57サイクル必要とし、図2(a)に示した前駆体(以下、「前駆体A」と呼ぶ)と図2(b)に示した前駆体(以下「前駆体B」と呼ぶ)はそれぞれ、37サイクルと35サイクルを必要とする。図6は、各膜ごとに現れたピンホールとサイクル数の関係を示す。図4に示した方法を使用してRu/WNC層膜を形成したチップの単位面積から溶出したタングステンの量をICP法に基づいて定量分析することにより、WNC膜中の全タングステン含有量に対する溶出したタングステンの割合を測定した。
【0086】
図6は、図2(a)と(b)に示したRu原料の様々な収集率(%)に対応するサイクル数を示す。これらのRu原料の場合、収集率は、約50サイクルと55サイクル以上でそれぞれ0%になった。タングステンは収集率%でエッチング液に溶出しないので、これらのサイクルで連続膜が形成されたことが分かる。一方、図2(c)に示したRu原料の場合、ほぼ0%の収集率を達成するには約200膜形成サイクルが必要であり、その点で、タングステン溶出はないと考えられる。図1に示したようなNH3プラズマを使用する連続プロセスは、前駆体AやBなどのペンタジエニル基を有するRu分子を使用すると、連続膜を短いサイクルで形成することができる。しかしながら、前駆体Cなどのシクロペンタジエニル基だけを有するRu分子の場合は、少なくとも200サイクルで連続膜を形成することはできない。
【0087】
図5に示したように、1サイクル当たりの膜成長速度は、Ru分子とほぼ等しいが、必要な放置時間は、前駆体A、BおよびCの間でそれぞれ37サイクル、30サイクルおよび54サイクルと変化した。形成された膜が連続であると考えられるサイクル数が、それぞれ50サイクル、50サイクル、および200サイクルであったとき、得られた膜厚は、それぞれ0.44nm、0.3nm、および3.4nmであった。従って、図2(a)と(b)に示した原料の場合、膜は、膜厚が0.5nm以上の場合に十分に連続的になる。また、実際には、半導体素子には平坦部分と段差部分があり、NH3プラズマと共にRu原料を使用するプロセスは、アスペクト比が5の穴に対して70%の被覆率を提供することが分かった。換言すると、素子被覆率も考慮すると0.7nm以上の厚さで連続膜を得ることができる。実際には、膜厚を0.7〜1.0nmの範囲内で制御することが好ましい。また、より大きなマージンを達成できるので、1.0nm以上の厚さで高い信頼性を保証することができる。
【0088】
一方、図2(c)に示したRu原料を使用する場合は、膜が連続しなくなる最小厚さは約3〜4nmであり、すなわち、実際にはRu膜は4nm以上の厚さでなければならない。その結果、実際の銅配線にこのRu原料を使用すると、Ru膜の厚さが増えるので銅配線量が減少し、それにより実質的に配線抵抗が高くなる。この問題を防ぐために、より薄いRu膜が必要である。本発明によって提案される方法によって、1nm以下の厚さのRu膜の使用が可能になるので、銅配線とRu間の良好な接着力を保証しながら銅体積を増やし配線抵抗を減少させることができる。
【0089】
ペンタジエニル基を有するRu原料の場合、この実施例で説明したようなNH3プラズマを使用するALD法によって、Ru成分をNH3プラズマによって容易に分離することができ、従ってコア形成密度が向上し、それにより連続膜を小さな膜厚で容易に形成できることが分かる。一方、Ru原料がシクロペンタジエニルだけを有する場合は、シクロペンタジエニルは、NH3プラズマの下でも容易に分離せず、従って連続膜は容易に形成されない。
【0090】
(実施例2)
この実施例は、最も一般的に使用される銅配線構造であるデュアルダマシン構造を使用する配線プロセスの形成に対する本発明の適用と、そのような適用の効果を示す。
【0091】
図7は、デュアルダマシン構造を形成するプロセスを示す。図7(a)〜(f)は、デュアルダマシン処理の完了後の状態から始まるプロセスフローを示す。図8(a)と(b)は、この実施例で使用されるクラスタ装置(図8(b))の構造とクラスタプロセスシーケンス(図8(a))を示す。図8(b)に示したクラスタ装置は、前処理モジュール304、WNxCy膜形成モジュール305、およびRu形成モジュール306を含み、図8(a)に示したような連続真空サイクルに基づいてプロセスを実行する。図7(a)は、デュアルダマシン処理の完了後の状態を示す。SiOC膜202、層間絶縁膜203、エッチングストッパ膜204、層間絶縁膜205および銅拡散防止膜206が、下層の銅配線201上に形成されて、銅拡散防止層が作成される。この条件で、ALDバリア膜の形成前に、図8に示した前処理モジュール304を使用して前処理が実行される。図7(b)は、前処理直後の状態を示す。ここで、銅配線203の表面上のコンタクトビア207の底に形成された酸化物を還元する段階が、デュアルダマシン構造のトレンチ208とコンタクトビア207の上に層間絶縁膜を構成する202、203、204、205および206の処理端の表面を安定させる処理と同時に実行される。この処理は、表面にNH基またはNH2基を形成する。この表面処理は、次の段階でWNxCy膜のスムーズな形成を可能にする。その表面を、図8(b)に示した前処理モジュール304によって処理した後で、基板は、WNC膜を形成するために図8(b)に示したようなWNC−ALD形成305のための処理モジュールに移される。表1は、ここで実施されるWNC−ALD形成の条件を示す(表に示した値は、±50%の範囲内で修正することができる)。
【0092】
【表1】

【0093】
以上の段階を繰り返すことによって、図7(c)に示したように、3nmのWNC膜209をスムーズに形成することができる。次に図7(d)で、図8(b)に示したRu−ALDモジュール305を使用してRu膜210を形成する。ここでは、図2(a)に示したRu原料を使用し、図1(a)に示したシーケンスに従うNH3プラズマプロセスで原料を処理した。表2は、Ru−ALD処理条件を示す。NH3プラズマのRF出力として800Wを使用したが、200〜1、000WのRF出力範囲でRu膜を形成することができる。また、250〜400℃の範囲の形成温度で類似のプロセスを達成することができる。100サイクルで約1nmの厚さのRu膜が形成された(下の表2に示した条件で。表に示した値は、±50%の範囲内で修正することができ、他のRu原料で同じようにプロセスを実行することができる。)。図8(b)に示した装置から移されたウェーハ上に、図7(d)に示したCuシード膜211が形成され、その後で、図7(e)に示したように銅めっき膜が形成されて、CMPによって銅配線212が形成される。また、Ru膜210を形成した後にCuめっきによってCu膜を形成してもよく、あるいはRu膜210上に直接Cuめっきを形成してもよい。Cu膜211の場合、PVDの代わりにCVDまたはALDによって形成したCu膜を使用することもできる。
【0094】
前述のように、表面処理、ALDによるWNC/Ru形成、およびCuめっきを含む一連の段階を連続的に実行することによって、高い信頼性を維持することができる。前述の方法によって形成された層状WNCとRu膜構造の厚さは4nmであり、これは、従来のバリア金属を使用したときより薄い。その結果、低抵抗の銅配線が得られた。
【0095】
【表2】

【0096】
(実施例3:Ru−CVD/Ru−ALDの実施例)
この実施例は、実施例1または2に示した極めて薄いRu膜、即ちCu膜接着層として使用される約1〜4nmのRu膜に関する。電極としてRu膜を使用するキャパシタの形成などの特定の用途では、Ru膜を約10〜20nmの厚さ範囲にもっと厚く形成しなければならない。しかしながら、実施例1または2に示したプロセスでは、10nmの膜を形成するには図1(a)に示したサイクルを500回繰り返さなければならない。1サイクルが完了するのに3秒かかる場合、サイクルタイムの合計は1,500秒になり、このため、半導体素子の生産性が大幅に低下する。一方、Ru膜を化学蒸着法によって形成する場合は、図2に示したRu原料と酸素ガスを使用してRu膜を形成することもでき、酸素分圧を調整することによってRuO2膜を形成することもできる。
【0097】
実施例1と2に示した構造は、一般的なキャパシタ電極と共に、Ru膜の下にWNxCy膜を使用するが、多結晶シリコンまたはTiN膜などが電極の下層として配置される。Ru膜が化学蒸着法によって形成される場合は、前述の多結晶シリコン、TiNなどの表面が酸化され、その結果接触抵抗が大きくなる。この実施例は、この酸化を抑えながらRu電極とRuO2電極をどのように形成できるかを示す。
【0098】
図9は、この実施例で使用されるRu膜形成装置の断面を示す構造図である。Ru前駆体Aが、バルブ121を介して供給され、NH3またはO2が、バルブ140または123を介して供給される。Arパージガスが、バルブ122と124を介して供給される。
【0099】
最初に、実施例2の表2に示した条件に基づいてNH3プラズマによる原子層堆積法によってRu膜を形成し、その後で、NH3をO2ガスに変更し、Ru前駆体Aと酸素ガスを、それぞれシャワーヘッドの112と107を介して供給した。2つのガスがシャワーヘッド内で混合しないので、これらのガスは、シャワーヘッド内で互いに反応しないが、基板106の表面で反応してRu膜を形成する。
【0100】
図10は、WNC−ALD膜401上にRu−ALD膜402を形成し、次にRu膜403を化学蒸着法によって形成した断面構造を示す概略図である。Ru膜402が連続的でなく且つ酸化雰囲気にさらされた場合、下層のWNC膜401は酸化し易い。従って、Ru膜402を形成するために行われるサイクルの数を25、50、75および100に変更し、各サイクル数で作成されたRu膜上にRu膜403を形成した。図10は、シート抵抗が様々なサイクル数でどのように変化したかを示す。
【0101】
WNC膜401が酸化されることなくRu膜が形成される場合、Ru膜403の形成時間が長くなるほどシート抵抗は本質的に小さくなることがある。図11に示したように、Ru膜402が25および50サイクルで形成されたときにシート抵抗は大きくなる。一方、膜が75および100サイクルで形成されたときシート抵抗は小さくなる。これらの結果から、Ru膜402が連続的でなく、従って最初の50サイクルの間に下層のWNC膜が酸化されたことが分かる。一方、酸素の拡散を防ぐことができる連続膜は、75サイクルの後で形成された可能性が高い。75サイクルの後で達成された膜厚は約0.7nmであり、100サイクルの後で達成された膜厚は約1nmであった。換言すると、膜厚が0.7nm以上に達したときに酸素の拡散を防ぐことができる連続したRu膜が形成されたと考えられる。
【0102】
以上のことから、Ru−ALD膜402が、WNC膜401上に0.7nm以上の膜厚になるように75サイクル以上で形成される限り、Ru膜が、酸素ガスを必要とするプロセスを使用する化学蒸着法によって形成されるときでも、下層のWNC膜は酸化されないことは明らかである。従って、約5〜10nm/分のRu膜を形成することができる化学蒸着法を使用して10〜20nmのRu膜を形成するときは、酸化防止Ru−ALD膜402を厚さ1nmまで形成すれば十分であり、Ru膜の残りの厚さを、優れた生産性を示す化学蒸着法によって形成することができる。これにより、優れた生産性を実現できる技術が提供される。
【0103】
図12に示したように、また、Ru−ALD膜401を形成するために図2(a)に示したRu原料を供給する原料容器135と、化学蒸着法によってRu膜402を形成するために図2(c)に示したRu原料を供給する原料容器138とを使用することができる。詳細には、図2(a)に示した原料を使用することにより、図2(c)に示した原料を使用するときよりも化学蒸着の成長速度が速くなり、また図2(c)に示した原料の方が安価である。これらの要素は、そのような装置を使用する際の実際的な利点を提供する。
【0104】
前述のように、本発明の一実施形態のRu膜を形成する方法を使用して1nmの連続的なRu膜を形成することができるが、従来の方法を使用して、例えば1nm程度の極めて小さな厚さを有する連続膜を達成することは難しかった。得られた薄いRu膜は、液体化学薬品に耐えることができるだけでなく、真空中で酸素ガスが浸透するのを防ぎ、乾燥雰囲気中でも下層中の原料を保護する。このRu膜が細いCu配線に使用されるときに、銅拡散を防ぐために使用されるWNC、WN、TaN、TaNCなどのバリア金属の上に1nmのRu膜を形成した場合、下層の面は、雰囲気中、真空中あるいは液体化学薬品にさらされたときに損傷を受けない。これは、細い配線の形成に寄与するCMPプロセス(化学機械研磨)などの表面状態に影響を受けるプロセスの繰り返しと安定性を改善する。
【0105】
一方、電極としてRu膜またはRuO2膜が形成される場合、本発明の実施形態に従って下層のコンタクト金属の表面にRu膜を形成することができ、その後、酸化雰囲気中で、TiN膜や多結晶シリコンなどの表面を酸化させることなくRu膜またはRu/RuOx膜を形成する適切なプロセスを実行して基礎となるコンタクト配線を構成することができる。換言すると、本発明の実施形態は、従来の方法と関連した酸化の問題を解決し、Ru膜に極めて有効に適用することができる。
【0106】
本発明は、以上の実施形態と、以下の実施形態を含む他の様々な実施形態を含む。
【0107】
1)Ru膜を形成する方法および前記方法によって形成されたRu膜であって、Ru膜を形成する方法の場合に、XaまたはXbの少なくとも一方が非環式ペンタジエニルであるRu(XaXb)分子構造を有するRu原料ガスを基板上に供給する段階と、高周波によって励起された還元ガスを使用して基板を処理する段階とを含むことを特徴とする、Ru膜を形成する方法および前記方法によって形成されたRu膜。
【0108】
2)前記1)によるRu膜を形成する方法および前記方法によって形成されたRu膜であって、基板にRu原料ガスを供給する段階と、高周波によって励起された還元ガスを使用して基板を処理する段階とを含むことを繰り返すことによってRu膜は、0.5nm以上2.0nm以下、あるいは好ましくは0.7nm以上1.2nm以下の厚さに形成されることを特徴とする、Ru膜を形成する方法および前記方法によって形成されたRu膜。
【0109】
3)Ru膜が金属膜上に形成されることを特徴とする、前記1)または2)による薄いRu膜を形成する方法および前記方法によって形成されたRu膜。
【0110】
4)金属膜が、WNC、WN、TaN、Ta、TaNC、TiN、Ti、Cu、Al、Co、またはNiで作成されたことを特徴とする、前記3)による薄いRu膜を形成する方法および前記方法によって形成されたRu膜。
【0111】
5)還元ガスが、NH3、H2、またはN2とH2の混合物であることを特徴とする、前記1)から4)のいずれかによる薄いRu膜を形成する方法および前記方法によって形成されたRu膜。
【0112】
6)前記1)によるRu膜を形成する方法および前記方法によって形成されたRu膜であって、第1のRu膜が、基板にRu原料ガスを供給する段階と、50サイクル以上150サイクル以下、あるいは好ましくは75サイクル以上100サイクル以下で高周波によって励起された少なくともNH3またはH2を含むガスを使用して、基板を処理する段階とを繰り返すことによって形成されることを特徴とする、Ru膜を形成する方法および前記方法によって形成されたRu膜。
【0113】
7)Ru原料ガスを異なるRu原料ガスと同時に供給することを特徴とする、前記1)から6)のいずれかによるRu膜を形成する方法および前記方法によって形成されたRu膜。
【0114】
8)前記1)から6)のいずれかによるRu膜を形成する方法および前記方法によって形成されたRu膜であって、Ru原料ガスを供給する段階が、指定回数繰り返され、次に異なるRu原料ガスを供給する段階が、指定回数繰り返されることを特徴とする、Ru膜を形成する方法および前記方法によって形成されたRu膜。
【0115】
9)ペンタジエニル基が、1個以上の炭素が結合された側鎖を有することを特徴とする、前記1)から8)のいずれかによるRu膜を形成する方法および前記方法によって形成されたRu膜。
【0116】
10)Ru膜とRu酸化膜のいずれかが、所望のRu原料と酸素ガスを使用する化学蒸着法によってRu膜上に積層されたことを特徴とする、前記1)から9)のいずれかによるRu膜を形成する方法および前記方法によって形成されたRu膜。
【0117】
11)銅膜がRu膜上に形成されたことを特徴とする、前記1)〜10)のいずれかによるRu膜を形成する方法および前記方法によって形成されたRu膜。
【0118】
12)銅原料分子を真空中にガスの形で供給することによって、銅膜が、化学蒸着法または原子層堆積法によってRu膜上に形成さることを特徴とする、前記11)によるRu膜を形成する方法および前記方法によって形成されたRu膜。
【0119】
当業者は、本発明の思想から逸脱することなく多数の様々な修正を行うことができることを理解するであろう。従って、本発明の形態が単なる例示であり、本発明の範囲を限定するものではないことをよく理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】図1aは本発明の実施形態で実現されるRu膜を形成するために繰り返される工程を示す図である。図1bは本発明の実施形態で実現される金属膜上にRu膜を形成するために繰り返される工程を示す図である。
【図2】図2aは本発明の実施形態で使用することができるRu前駆体の化学式である。図2bは本発明の実施形態で使用することができるRu前駆体の化学式である。図2cは先行技術で使用されているRu前駆体の化学式である。
【図3】本発明を実施するために使用することができる薄膜形成装置を示す概略図である。
【図4】図4aは非連続的なRu膜の連続性を評価する方法を示す概略図である。図4bは連続的なRu膜の連続性を評価する方法を示す概略図である。
【図5】図2(a)、(b)または(c)に示したRu原料を使用するときの、Ru成長速度のサイクル数に対する依存性の一例を示すグラフである。
【図6】図4に示した方法を使用したときの、図5で形成されたRu膜の薄膜形成サイクルと、下の層から検出されたWの量の関係の一例を示すグラフである。
【図7】図7aは本発明の実施形態によるRu膜形成工程をデュアルダマシンCu配線工程に適用するプロセスフロー((a)→(b)→(c)→(d)→(e)→(f))の1つの工程を示す概略図である。図7bは本発明の実施形態によるRu膜形成工程をデュアルダマシンCu配線工程に適用するプロセスフロー((a)→(b)→(c)→(d)→(e)→(f))の1つの工程を示す概略図である。図7cは本発明の実施形態によるRu膜形成工程をデュアルダマシンCu配線工程に適用するプロセスフロー((a)→(b)→(c)→(d)→(e)→(f))の1つの工程を示す概略図である。図7dは本発明の実施形態によるRu膜形成工程をデュアルダマシンCu配線工程に適用するプロセスフロー((a)→(b)→(c)→(d)→(e)→(f))の1つの工程を示す概略図である。図7eは本発明の実施形態によるRu膜形成工程をデュアルダマシンCu配線工程に適用するプロセスフロー((a)→(b)→(c)→(d)→(e)→(f))の1つの工程を示す概略図である。図7fは本発明の実施形態によるRu膜形成工程をデュアルダマシンCu配線工程に適用するプロセスフロー((a)→(b)→(c)→(d)→(e)→(f))の1つの工程を示す概略図である。
【図8】図8aは本発明の実施形態で使用されるような図7に示したデュアルダマシンCu配線工程(前処理→WNxCy膜→Ru膜形成)を示す図である。図8bは図8aの工程を実施するために使用される真空サイクルクラスタ装置の一例を示す構造図である。
【図9】図9aは本発明の実施形態において、WNC上にRu膜を形成する段階と、酸化雰囲気中でCVDによってRu膜を形成する段階とを含む工程を実施するために使用される反応装置の構造の一例を示す概略図である。図9bは図9(a)に示した装置に使用することができるガス分散ノズルの一例を示す概略図である。
【図10】実施例3に示したキャパシタ電極の断面構造を示す概略図である。
【図11】本発明の実施形態においてALD−Ru膜のサイクル数に対するシート抵抗の依存性を示すグラフであり、シート抵抗は、WF6、NH3またはTEBガスを使用してALDによるALD−WNC膜を形成し、このALD−WNC膜上にRu原料とNH3ガスプラズマを使用してALDにより形成されたALD−Ru膜を形成し、次にこの上に同じRu原料と酸素を使用してCVDによって形成されたRuCVD膜を積層することによって得られた層状シートに関係する。
【図12】図12aは本発明の実施形態で使用することができる形成装置の構造の一例を示す概略図であり、ALD−Ru膜を形成するために使用される材料は、CVDによってRu膜を形成するために使用される材料とは異なる。図12bは図12(a)に示した装置で使用することができるガス分散ノズルの一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0121】
1 反応室
2 上蓋
3 分散板
4 排気ダクト
5 下室
6 基板移送ゲート
7 排気口
8 基板ヒータ
9 基板ヒータ上昇/下降ベローズ
10 ガス導入パイプ
11 ガス導入部分
12 ラジカルソース
13 ガス分散ガイド
14 ガス分散部13と分散板3の間の空間
15 基板
16 ラジカルソース接続バルブ
17 ガス分散ガイドから排気口まで続くスリット
18 排気口まで続く空間
19 排気用の接続フランジ
20 シャワーヘッド内に続く排気バルブ
21 分散板3上に設けられたガス放出口
22 分散板3と基板の間の空間
23 リングスリット
24 リングスリットまで続く排気管
25 高周波導入端子
26 圧力制御部分
27 分子ポンプゲートバルブ
28 排気ゲートバルブ
29 分子ポンプ
30 ドライポンプ
31 ベローズパージガス導入バルブ
201 下層銅配線
202 銅拡散防止層
203 層間絶縁膜1
204 エッチングストッパ層
205 層間絶縁膜2
206 銅拡散防止膜
207 ビア
208 トレンチ
209 WNxCy膜
210 Ru−ALD膜
211 Cuシード膜
212 銅配線
300 シリコン基板導入口
301 シリコン基板移送ユニット
302 ロードロック室
303 真空移送室
304 前処理モジュール
305 WNxCy形成モジュール
306 Ru−ALD形成モジュール
101 反応室
102 ゲートバルブ
103 排気ダクト
104 シャワープレート
105 下側ガス分散室へのガス導入口
106 下側ガス分散室からのガス放出口
107 下側ガス分散室
108 上側ガス分散室用のガスガイド
109 上側ガス分散室用の排気バルブ
110 ガスを混合する中央ガス管
111 ガス分散板
112 上側ガス分散室からのガス放出口
113 上蓋板
114 基板加熱台上昇/下降ベローズ
115 基板
120 Ru原料ガスパージバルブ
121 Ru原料ガス導入バルブ
122 中央ガス管の混合ガスをパージするガス
123 原料ガス(NH3またはO2)パージガスバブル
124 原料ガス(NH3またはO2)導入バルブ
125 排気側メインバルブ
126 圧力制御部
127 分子ポンプゲートバルブ
128 排気ゲートバルブ
129 分子ポンプ
130 ドライポンプ
131 ベローズパージガス導入バルブ
132 分散室7まで続く排気バルブ
133 Ru(前駆体A)原料容器へのキャリアガス導入バルブ
134 Ru(前駆体A)原料容器からのRu原料供給バルブ
135 Ru(前駆体A)原料容器
136 Ru(前駆体C)原料容器へのキャリアガス導入バルブ
137 Ru(前駆体C)原料容器へのRu原料供給バルブ
138:Ru(前駆体C)原料容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応室内で基板上にルテニウム(Ru)薄膜を堆積させる方法であって、
(i)反応室内にルテニウム前駆体のガスを供給して、非環式ジエニルを含むルテニウム複合体であるルテニウム前駆体のガスを基板に吸着させる段階と、
(ii)励起した還元ガスを反応室内に供給して、基板上に吸着されたルテニウム前駆体を活性化させる段階と、
(iii)段階(i)と(ii)を繰り返し、それにより基板上にルテニウム薄膜を形成する段階とを含む方法。
【請求項2】
ルテニウム複合体は、Xa−Ru−Xbの構造を有し、XaとXbの少なくとも一方が非環式ジエニルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
非環式ジエニルは、非環式ペンタジエニルである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
非環式ペンタジエニルは、C1−2アルキル基の少なくとも1つの側鎖を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
非環式ペンタジエニルは、メチルの2つの側鎖を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
Xaは非環式ジエニルであり、Xbは環式ジエニルである、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
Xaは、非環式ペンタジエニルであり、Xbがシクロペンタジエニルである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
XaとXbは両方とも非環式ペンタジエニルである、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
励起された還元ガスは、還元ガスに高周波電力を印加することによって生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
還元ガスは、アンモニア、水素、または窒素と水素の混合物である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
励起した還元ガスは、アンモニアまたは水素のプラズマである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
段階(i)の後で反応室からルテニウム前駆体ガスをパージし、段階(ii)の後で反応室から励起した還元ガスをパージする段階を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
段階(i)と(ii)は、0.5nm以上2.0nm以下の厚さを有するルテニウム薄膜を形成するように繰り返される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
段階(i)と(ii)は、0.5nm以上2.0nm以下の厚さを有するルテニウム薄膜を形成するように繰り返される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
段階(i)と(ii)は、50回〜150回繰り返される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
金属膜上にルテニウム薄膜を形成する段階(i)〜(iii)が始まる前に、金属膜を与える段階を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
金属膜は、WNC、WN、TaN、Ta、TaNC、TiN、Ti、Cu、Al、Co、およびNiから成るグループから選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
段階(i)において、ルテニウム前駆体のガスは第1のガスであり、段階(i)は、更に、別のルテニウム前駆体の第2のガスを第1のガスと同時に反応室内に供給する段階を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
段階(i)と(ii)を所定の回数繰り返した後で、
(iv)別のルテニウム前駆体の第2のガスを反応室内に供給して、他のルテニウム前駆体の第2のガスを基板に吸着させる段階と、
(v)励起した還元ガスを反応室内に供給して、基板に吸着された他のルテニウム前駆体を活性化させる段階と、
(vi)段階(iv)と(v)を繰り返して、それにより基板上にルテニウム薄膜を形成する段階とを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
段階(iii)の後で、ルテニウム薄膜上にCVDによってルテニウム薄膜またはルテニウム酸化物薄膜を形成する段階を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
段階(iii)の後で、ルテニウム薄膜上に銅膜を形成する段階を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
銅膜は、CVDまたはALDによって生成された銅前駆体のガスを基板上に供給することによって形成される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
ルテニウム薄膜形成構造体であって、
基板と、
基板上に形成され、ピンホールがなく連続的で0.5nm以上2.0nm以下の厚さを有するルテニウム薄膜とを含むルテニウム薄膜形成構造体。
【請求項24】
ルテニウム薄膜は、非環式ジエニルを含むルテニウム複合体で形成される、請求項23に記載のルテニウム薄膜形成構造体。
【請求項25】
基板は金属膜を有し、ルテニウム薄膜は金属膜上に形成される、請求項23に記載のルテニウム薄膜形成構造体。
【請求項26】
金属膜は、WNC、WN、TaN、Ta、TaNC、TiN、Ti、Cu、Al、Co、およびNiからなるグループから選択された、請求項25に記載のルテニウム薄膜形成構造体。
【請求項27】
ルテニウム薄膜上に銅膜を更に有する、請求項23に記載のルテニウム薄膜形成構造体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2008−57042(P2008−57042A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−223300(P2007−223300)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(000227973)日本エー・エス・エム株式会社 (68)
【Fターム(参考)】