説明

金属酸化物層の製造方法

【課題】金属酸化物層の表面のアモルファス層を低減し、金属酸化物層の誘電率を向上させること。
【解決手段】金属酸化物の前駆体層を分解して金属酸化物層を形成する工程と、金属酸化物層にレーザを照射して前記金属酸化物層を結晶化する工程と、結晶化された金属酸化物層に対して、10〜300Hzの間隔で、最初のパルスの照射フルエンスを60〜100mJ/cmとし、最後のパルスの照射フルエンスを10mJ/cm以下とし、照射フルエンスの減少速度Vが−150≦V[mJ/(cmmin)]<0となるように、各パルスの照射フルエンスを減少させながらパルスレーザを照射する除冷工程と、を備える金属酸化物層の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物層の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属酸化物を備えた電子デバイスの製造方法が検討されている。電子デバイスとしては、例えば、強誘電体メモリ、チューナブルフィルタ、薄膜コンデンサ素子等が挙げられ、金属酸化物としてはBa及びTiを含む金属酸化物(BaTiO、BaSr1−xTiO等)等が例示できる。
【0003】
特許文献1には、金属酸化物の前駆体層を分解して金属酸化物層を形成し、金属酸化物層に紫外線を照射することにより、金属酸化物層を結晶化させる方法が開示されている。
【特許文献1】特開2008−28381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法により得られる金属酸化物層の誘電率は、必ずしも十分ではなかった。そして本発明者らは、従来の方法により得られる金属酸化物層は、特に、表面の結晶性が十分でなく、誘電率の低いアモルファス層が残存するということを見出した。金属酸化物層の最表層にアモルファス層が残存すると、金属酸化物層の誘電率を十分高くすることができない。
【0005】
そこで本発明は、金属酸化物層の表面のアモルファス層を低減し、金属酸化物層の誘電率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の金属酸化物層の製造方法は、金属酸化物の前駆体層を分解して金属酸化物層を形成する工程と、金属酸化物層にレーザを照射して金属酸化物層を結晶化する工程と、結晶化された金属酸化物層に対して、10〜300Hzの間隔で、最初のパルスの照射フルエンスを60〜100mJ/cmとし、最後のパルスの照射フルエンスを10mJ/cm以下とし、照射フルエンスの減少速度Vが−150≦V[mJ/(cmmin)]<0となるように、各パルスの照射フルエンスを減少させながらパルスレーザを照射する除冷工程と、を備える。
【0007】
金属酸化物の前駆体層を分解して金属酸化物層を形成し、該金属酸化物層にレーザを照射して金属酸化物層の結晶化を行うと、金属酸化物層の表面の放熱速度が金属酸化物層の内部の放熱速度よりも速いために、レーザの照射直後に金属酸化物層の最表層は急冷され、アモルファス層が形成されてしまう。本発明によれば、レーザ照射により金属酸化物層の結晶化を行った後、さらにこの金属酸化物層に対して、10〜300Hzの間隔で、最初のパルスの照射フルエンスを60〜100mJ/cmとし、最後のパルスの照射フルエンスを10mJ/cm以下とし、照射フルエンスの減少速度Vが−150≦V[mJ/(cmmin)]<0となるように、各パルスの照射フルエンスを減少させながらパルスレーザを照射することにより、金属酸化物層の表面温度の急速な低下を防ぐことができるようになる。これにより、金属酸化物層の最表層に形成されるアモルファス層を極めて低減することができる.
【0008】
なお、パルスレーザの周波数は、10〜300Hzである。周波数が10Hzよりも小さいと、パルス間隔が長くなるため、ある1つのパルスが照射された後、次のパルスが照射される前の、エネルギが与えられていない時間内に、金属酸化物層の表面は急冷されることとなり、アモルファス層が形成され易くなる。300Hzより大きいと、パルス間隔が短くなり、エネルギを与える時間の間隔が短くなるため、エネルギが過剰に与えられ、金属酸化物層の温度が上昇し過ぎるため、適度な冷却効果が得られなくなる傾向がある。
【0009】
また、除冷工程の前に、照射フルエンスが60〜100mJ/cmであるパルスレーザを、1〜10000ショット、結晶化された金属酸化物層に対して照射することが好ましい。このような工程を上記除冷工程前に備えることにより、金属酸化物層の最表層は、除冷工程前に適度に溶融されることとなり、最表層に残ったアモルファス層が再結晶化されやすい状態となる。これにより、アモルファス層がさらに低減される。
【0010】
また、金属酸化物層を結晶化する工程のレーザはパルスレーザであり、パルスの照射フルエンスが、60〜80mJ/cmであることが好ましい。これにより、金属酸化物層の結晶化が好適に行われる。
【0011】
また、金属酸化物は、AサイトにBa、BサイトにTiを含むABO型ペロブスカイト構造酸化物であることが好ましい。AサイトにBa、BサイトにTiを含むABO型ペロブスカイト構造酸化物は、例えば薄膜コンデンサ等の電子デバイスとして有用である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、金属酸化物層の表面のアモルファス層を低減し、金属酸化物層の誘電率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、図1〜8を参照しつつ、本実施形態に係る金属酸化物層の製造方法について具体的に説明する。ただし、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
[金属酸化物層の形成]
まず、金属酸化物層の形成方法について説明する。金属酸化物層の形成方法は、(a)金属酸化物の前駆体を基板上に塗布し乾燥する、金属酸化物の前駆体層形成工程、(b)金属酸化物の前駆体層を分解する、前駆体層分解工程、(c)金属酸化物層にレーザを照射して、金属酸化物層を結晶化する結晶化層形成工程、を含むものである。
【0015】
(a)前駆体層形成工程
図1に示すように、金属酸化物の前駆体層20Aは、例えば、基板10上に塗布、乾燥されて形成される。
【0016】
(基板)
基板10は、例えば下地層のない金属の単層14であっても、下地基材15の表面に金属層14が形成された多層構造であってもよい。金属層14としては、例えば、Ag,Al,Au,Cr,Cu,Ir,Ni,Pt,Ta,Ti等の金属層及びそれらの合金層が挙げられる。
【0017】
下地基材15は特に限定されないが、例えば、Si,GaAs,GaP,InP,SiC等の半導体基板、SiO,LaAlO,TiO,Al,MgO,SrTiO等の酸化物基板、Cu,Ni,Fe等の金属基板、又はそれらを主とする合金、LTCC(Low Temperature Co−fired Ceramics)、アルミナ等のセラミックス基板、ガラスエポキシ樹脂基板(例えば、FR4)等の有機基板、PETフィルム等が挙げられる。
【0018】
このような基板には、MgO,ITO,ZnO,SnO等の金属酸化物層、Au,Pt,Ag,Ir,Ru,Co,Ni,Fe,Cr,Al等の金属層等の下地層を1層又は複数層形成した下地基材15も使用できる。これらの下地基材は、基材自体の酸化や、スパッタ法等により容易に形成できる。
【0019】
具体的には、基板10としては、例えば、図1に示すように、Si等の半導体基板11上に、バッファ層として、SiO等の金属酸化物膜12、及び、TiO等の金属酸化物層13を積層したものが好ましい。SiO層は、Si基板を酸化性雰囲気中で高温にすることにより形成できる。また、TiO層はスパッタ等により形成できる。
【0020】
続いて、基板10の表面に、金属層14を形成する。例えば、TiO/SiO/Siから構成される下地基材15の表面のTiO層などに、スパッタ法等により、0.01〜30μm程度のPt,Ni,Cu等の金属層を形成すると、表面が(111)や(100)結晶面に自然に配向した金属層14を容易に得ることができ、好ましい。ただし、金属層14の表面は、配向性を有していなくても本発明の実施は可能である。
【0021】
また、金属酸化物層の結晶性を高めるために、金属層14の表面に、さらにバッファ層が形成されてもよい。バッファ層は、金属層14よりも低い熱伝導率を有するものであれば特に限定されない。バッファ層の300Kにおける熱伝導率が1〜80W/m・Kであることが好ましい。また、バッファ層の厚みは1〜1000nmであることが好ましい。
バッファ層の材料は、導体であることが好ましく、抵抗率10−3Ω・m以下の材料であることがより好ましい。このような材料として、例えば、In,ZnO,SnO,SrRuO,ITO,LaTiO,YBCO等の導電性金属酸化物が挙げられる。このような導電性金属酸化物は、照射レーザの熱を金属層14に伝わり難くするだけでなく、電極としても用いることができる。特に、上記バッファ層の材料のうち、導電率が高く、低温での成膜が可能な、ZnOが好ましい。また、ZnO層の厚さは100〜700nmとすることが好ましい。なお、バッファ層は、例えば、成膜したい金属酸化物をターゲットとしたスパッタリング法やCVD法により、金属層14上に製造できる。
【0022】
(前駆体層の形成)
続いて、上述した基板10上に金属酸化物の前駆体層20Aを、いわゆる化学溶液法によって形成する。化学溶液法では、金属アルコキシド、有機酸金属塩や無機金属塩等を含む溶液を、例えば、スピンコート法等によって金属層14上に塗布し、例えば300℃以下に設定されたオーブン、基板の温度が150℃以下となるよう設定されたホットプレート等により乾燥して溶媒を蒸発させ、金属酸化物の前駆体層20Aを形成する。金属酸化物を構成する金属の種類、及び組成は特に限定されないが、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸ストロンチウムバリウム(BaSr1−xTiO)等のAサイトにBa、BサイトにTiを含むABO型ペロブスカイト構造酸化物であることが好ましい。
【0023】
前駆体の原料となる金属化合物としては、金属アルコキシド(例えば、Ti(OC、Ba(OC、Zr(OC、Sr(OC等)、有機酸金属塩(例えば、2−エチルヘキサン酸バリウム、2−エチルヘキサン酸ジルコニル、2−エチルヘキサン酸チタン、2−エチルヘキサン酸ストロンチウム等、ラウリン酸塩、アセチルアセトナート等)等が挙げられ、無機金属塩としては、金属硝酸塩(例えば、Ba(NO、Sr(NO)、金属酢酸塩(例えば、Ba(CHCOO)・HO)、金属炭酸塩(例えばBaCO、SrCO)等が挙げられる。
【0024】
これらの金属化合物を、溶媒に混合して溶液を形成し、形成したい金属酸化物の組成に応じて各溶液を混合し、その混合溶液を、基板上に塗布すればよい。溶媒としては、エタノール、メタノール等のアルコール、トルエン、キシレン等が挙げられる。そして、基板上に塗布した混合溶液を乾燥させ、場合によっては加水分解や縮合等を行わせることにより、前駆体層を形成する。金属酸化物としては、BaTiO,BaSr1−xTiO,BaZrTi1−x,BaHfTi1−x,BaCa1−xTiOなどが挙げられるが、特に、BaTiO又はBaSr1−xTiOを形成することが好ましい。
【0025】
金属酸化物の前駆体層20Aの厚みは特に限定されないが、10〜30000nmとすることが好ましい。
【0026】
(b)前駆体層分解工程
続いて、金属酸化物の前駆体層を分解して無機化合物からなる金属酸化物層を形成する。ここで、分解方法は特に限定されないが、例えば、ヒータにより加熱する方法、レーザ照射により分解する方法が挙げられる。本工程において形成される金属酸化物層20Bは、通常は層全体がアモルファス状態である。
【0027】
(ヒータにより加熱する方法)
ヒータから熱を与えることにより、金属酸化物の前駆体層20Aを分解する。加熱時の雰囲気は特に限定されず、還元雰囲気、不活性雰囲気、酸化雰囲気のいずれであってもよいが、金属酸化物層の内部に炭素、水素原子が残留することによる酸化物層の電気特性の低下、特に、リーク電流密度や誘電損失の経時的な劣化を抑制するため、酸化雰囲気下で行うことが好ましく、特に大気等の酸素含有雰囲気下で加熱することが好ましい。加熱時間は、十分に前駆体を分解できる時間であれば特に限定されず、例えば、1〜30分間とすることができる。
【0028】
加熱温度は、金属酸化物の前駆体の分解温度以上、好ましくは、分解温度以上分解温度より約100℃高い温度以下とすればよい。金属酸化物の前駆体の分解温度は、形成したい金属酸化物の前駆体の構造によって異なるが、示差走査熱量測定(DSC)によって観測される1つの吸熱ピークとして測定できる。例えば、Ba及びTiを含むペロブスカイト構造酸化物の前駆体層20Aが、Ba又はTiをそれぞれ含有する金属アルコキシドから形成されたものである場合には、この前駆体の分解温度は概ね350℃〜400℃であるので、Ba及びTiを含むペロブスカイト構造酸化物の前駆体層を加熱する温度を、350〜500℃とすることが好ましい。
【0029】
具体的な方法としては、例えば、図2に示すように、金属酸化物の前駆体層20Aが表面に形成された基板10を加熱ステージ110上へ載置し、金属酸化物の前駆体層20Aを所定の時間、所定の温度に加熱すればよい。これにより、金属酸化物の前駆体層20Aが加熱され、分解して、アモルファス状態の金属酸化物層20Bが形成する。
【0030】
金属酸化物の前駆体層20Aの形成工程において、金属酸化物の前駆体の塗布量を調節し、所定の厚みの前駆体層20Aを形成することにより、所望の厚みの金属酸化物層20Bを形成する。上述の金属酸化物の前駆体層20Aの形成、及び、当該前駆体層20Aの分解の二つの操作の組合せによって、金属酸化物層20Bの形成を複数回繰り返すことにより、金属酸化物層20Bが複数積層された層を、基板10上に形成することもできる。金属酸化物層20B一層当たりの膜厚は、特に制限はないが、実用上の観点から10〜30000nm程度であることが好ましく、比較的均一で、かつ損傷が少ないアモルファス状態の金属酸化物層20Bを短時間で形成する観点から、30〜300nmであることがより好ましい。
【0031】
(レーザにより加熱する方法)
金属酸化物の前駆体層20Aに対して、例えば、紫外線パルスレーザ光等の高エネルギーレーザ光を照射して熱分解してもよい。これにより、金属酸化物の前駆体層20Aが分解され、アモルファス状態の金属酸化物層20Bが形成する。紫外線パルスレーザ光の波長は、例えば、100〜500nm、好ましくは、100〜400nmである。具体的には、紫外線パルスレーザ光として、ArF(193nm)、XeCl(308nm)、KrF(248nm)等を媒質として用いるエキシマレーザ光を用いることが好ましい。
【0032】
例えば、図3に示すように、金属酸化物の前駆体層20Aが表面に形成された基板10を加熱ステージ110上へ載置し、金属酸化物の前駆体層20Aを0℃〜400℃に維持し、1〜30分間加熱しながら、レーザ照射を行えばよい。紫外線パルスレーザ光を用いる場合、紫外線パルスレーザ光の1パルスあたりの照射フルエンスは、1〜100mJ/cmとすることが好ましく、10〜90mJ/cmであることがより好ましい。1パルスあたりの照射フルエンスが、1mJ/cmよりも小さい場合、金属酸化物の前駆体層20Aを分解して酸化物にすることが難しく、100mJ/cmよりも大きい場合、前駆体層を分解し、アモルファス層を形成するにはエネルギが大きすぎて、層が損傷する傾向がある。また、金属酸化物の前駆体層20Aの各場所に対して照射する総パルス数は例えば、5〜50000とすることができる。
【0033】
ここで、比較的厚みの大きい金属酸化物の前駆体層20Aに対して行なう紫外線パルスレーザ光の照射は、1パルスあたり1〜40mJ/cmの紫外線パルスレーザ光を照射した後、1パルスあたり40〜100mJ/cmの紫外線パルスレーザ光を照射すること組み合わせて行うことが好ましい。これにより30〜300nmの金属酸化物のアモルファス層20Bを好適に形成することができる。(b)工程において、1パルスあたりのレーザ光の照射フルエンスを段階的に変化させることにより、アモルファス層形成初期において与えるエネルギを低くでき、熱分解時のガスの大量発生による層の損傷等を抑制しやすくなる。また一方で、アモルファス層形成後期において与えるエネルギを高くでき、未分解の前駆体成分を少なくすることができる。
【0034】
特に、1パルスあたり1〜30mJ/cmの紫外線パルスレーザ光を照射した後、1パルスあたり20〜40mJ/cmの紫外線パルスレーザ光を照射し、さらにその後、1パルスあたり40〜100mJ/cmの紫外線パルスレーザ光を照射することが好ましい。また、このように1パルスあたりの紫外線パルスレーザ光の照射フルエンスを段階的に変化させて照射する代わりに、紫外線パルスレーザ光の1パルスあたりの照射フルエンスを連続的に増加させてもよい。
【0035】
また、パルス周波数(1秒間に照射するパルスの数)は1〜400Hz程度とすることが好ましく、10〜300Hz程度とすることがより好ましい。なお、1パルスの照射時間は、例えば、1〜100nsとすることができる。
【0036】
ここで、金属酸化物の前駆体層20Aの温度を、0〜400℃にした状態で紫外線パルスレーザ光を照射することが好ましい。400℃よりも十分に高い温度に金属酸化物の前駆体層20Aを維持すると、紫外線パルスレーザ光の照射フルエンスの程度に関わらず、金属層14の酸化を生じ易い傾向がある。一方、0℃未満では、熱分解が起こり難い傾向がある。
【0037】
また、レーザ照射時の雰囲気は特に限定されず、還元雰囲気、不活性雰囲気、酸化雰囲気のいずれであってもよいが、内部に炭素、水素原子が残留することによる、誘電損失やリーク電流による長期安定性の低下等誘電損失の増大等の酸化物層の電気特性への影響を抑制すべく、酸化雰囲気で行うことが好ましく、特に、大気等の酸素を含有する雰囲気で行うことが好ましい。
【0038】
また、上述した「ヒータにより加熱する方法」と同様に、「レーザにより加熱する方法」においても、金属酸化物の前駆体層20Aの形成、及び、当該前駆体層20Aの分解の組合せによって、金属酸化物層20Bの形成を複数回繰り返すことにより、複数の金属酸化物層20Bが積層した層を基板10上に形成することもできる。
【0039】
また、金属酸化物の前駆体層をヒータで加熱した後、レーザ光の照射により加熱して、金属酸化物層20Bを形成してもよい。この場合、金属酸化物の前駆体層を0℃以上前駆体の分解温度程度まで加熱し、その後、レーザによる加熱の際に、パルスレーザの1パルスあたりのエネルギ(照射フルエンス)、及び、照射するパルスレーザの総パルス数の組合せを適宜調整することにより、金属酸化物層20Bが結晶化しない照射条件にて金属酸化物の前駆体層20Aを分解し、アモルファス状態の金属酸化物層20Bを形成する。
【0040】
(c)結晶化層形成工程
金属酸化物の前駆体層20Aを分解して得られた金属酸化物層20Bへ、レーザ照射を行うことにより、金属酸化物層20Bの結晶化を行う。図2,3に続いて、図4に示すように、金属酸化物層20Bに、紫外線パルスレーザ光等の高エネルギーレーザ光を照射してアニールし、金属酸化物層20Bの結晶化を行い、結晶化された金属酸化物層20Cを形成する。紫外線パルスレーザ光の波長は、例えば、100〜500nm、好ましくは、100〜400nmである。具体的には、紫外線パルスレーザ光として、ArF(193nm)、XeCl(308nm)、KrF(248nm)等を媒質として用いるエキシマレーザ光を用いることが好ましい。金属酸化物層20Bの結晶化工程におけるレーザ照射条件、すなわち、レーザ照射時の酸化物層の温度、紫外線パルスレーザ光の1パルスあたりのエネルギ(照射フルエンス)、及び、照射するパルスレーザの総パルス数は、例えば前駆体層の分解工程の熱処理の方法に関わらず、0〜1000℃において60〜400mJ/cm、総パルス数1〜50000ショットのレーザ照射条件であることが特に好ましく、特に、結晶性を良好にする観点から60〜100mJ/cmとすることが好ましい。1000℃よりも十分に高い温度にこの酸化物層20Bを維持すると、利用可能な基板が限られる。例えば、1000℃を越えると、高い耐熱性を有するPtであっても再結晶化し、表面に荒れが起きることにより、誘電体の特性劣化を生じる傾向がある。一方、0℃未満では、結晶化が起こり難い傾向がある。
【0041】
また、パルス周波数(1秒間に照射するパルスの数)は1〜400Hz程度とすることが好ましく、10〜300Hz程度とすることがより好ましい。なお、1パルスの照射時間は、例えば、1〜100nsとすることができる。
【0042】
このような温度にするためには、具体的には、例えば、図4に示すような装置を用いて金属酸化物層20Bの結晶化をすることができる。すなわち、加熱ステージ110上に金属酸化物層20Bが基板10の表面に形成された積層体を載せ、この金属酸化物層20Bを0〜400℃に保持し、これに対してレーザ光源200からレーザ光を照射すればよい。
【0043】
また、結晶化工程における雰囲気は特に限定されず、還元雰囲気、不活性雰囲気、酸化雰囲気のいずれであってもよいが、酸素原子の不足による誘電損失の増大等の酸化物層の電気特性への影響を抑制すべく、酸化雰囲気で行うことが好ましく、大気等の酸素を含有する雰囲気で行うこともできる。
【0044】
また、上述のような金属酸化物の前駆体層20Aの形成工程(a)と、金属酸化物の前駆体層20Aの分解工程(b)と、金属酸化物層20Bの結晶化工程(c)と、を含む一連の工程を複数回繰り返すことにより、後述する図6のように金属酸化物層20Cを多数積層して比較的厚みのある20Dを形成してもよい。
【0045】
なお、ここでは、金属酸化物の前駆体層20Aの分解工程(b)と、金属酸化物層20Bの結晶化工程(c)とを明確に分離して行っているが、(b)工程と(c)工程とを連続的に行ってもよい。ただし、金属酸化物の前駆体層20Aに対して、十分強い照射フルエンスのレーザ照射を行うと、金属酸化物の前駆体層が損傷してしまう。そこで、レーザの照射方法としては、金属酸化物の前駆体層に対して、比較的弱い照射フルエンスでレーザ照射を開始し、最終的に金属酸化物層を結晶化できる程度の照射フルエンスでレーザ照射を実施できるよう、照射フルエンスの強度を調節すればよい。
【0046】
また、例えば500nm以上の厚みのある金属酸化物層20Dを形成する場合、(a)工程と、(b)工程とを複数回繰り返して、30〜660nm程度の金属酸化物層20Bを形成した後に、金属酸化物層20Bの結晶化工程(c)を行って、比較的厚みのある結晶化した金属酸化物層20Cを形成することができる。結晶化した金属酸化物層20Cを形成した後、さらに同様にして、(a)工程と、(b)工程とを複数回実施することにより、結晶化された金属酸化物層20Cが複数積層された結晶化層20Dが得られる。このように、比較的厚みのある金属酸化物層20Cを重ねることにより、比較的厚みのある結晶化層20Dを得ることができる。
【0047】
なお、本結晶層形成工程は、パルス光ではなく連続光でも実施は可能であり、また、レーザ光でなくても水銀ランプ等の紫外線ランプの光を照射しても実施は可能である。しかし、結晶性が高い金属酸化物層20C,20Dを形成するためには、紫外線パルスレーザを用いることが特に好ましい。
【0048】
そして、このようにして結晶化工程を行った後に金属酸化物層を観察すると、最表層の金属酸化物層の表面に、アモルファス層が残存することが多い。図5に、後述する本発明に係る除冷工程を行わない、従来の手法で形成された金属酸化物層のSTEM像を示す。金属酸化物は、BaTiO(BT)であり、結晶化された金属酸化物層5b(20D)の表面に、アモルファス層5aが約20〜25nm存在している。なお、結晶化された金属酸化物層5b(20D)は、一層の厚みが約50nmの結晶化層(20C)を二層積層することにより形成されているが、アモルファス層5aは、結晶化層の最表層のみに形成されている。
【0049】
[除冷工程:アモルファス層の再結晶化]
続いて、図6、7を参照して、本実施形態に係る除冷による、結晶化された金属酸化物層20C,20Dの最表層に形成されたアモルファス層の再結晶化について説明する。
【0050】
図6は、複数の結晶化された金属酸化物層20Cが積層した層20Dを表面に備える積層体示す。結晶化された金属酸化物層20Dの表面には、結晶化工程(c)の後に、アモルファス層30Cが形成される。結晶化工程においてレーザが照射された後、20Dの最表層が急冷されることにより、結晶化された金属酸化物層20Dの表面にアモルファス層が残存する。
【0051】
結晶化された金属酸化物層20Dの最表層に残存するアモルファス層30Cの再結晶化を行うため、結晶化工程(c)の後に、最表層にアモルファス層30Cを備えた金属酸化物の結晶化層20Dに対して、パルスレーザの照射を行う。
【0052】
本発明に係る除冷工程は、図7に示すグラフのT〜Tの時間に行われる工程に相当する。最初のパルスPの照射フルエンスEは、結晶化層20Dが瞬間的に融点に達することができる程度のエネルギ、すなわち、60〜100mJ/cmである。そして、最後のパルスPの照射フルエンスEを10mJ/cm以下とし、その間のパルスの1分間の照射フルエンスの減少速度Vが−150≦V[mJ/(cmmin)]<0となるように、照射フルエンスを減少させながら、10〜300Hzの間隔でパルスレーザを照射する。
【0053】
ここで、Pが100mJ/cm超であると、金属酸化物層が必要以上に加熱されて損傷する可能性があり好ましくない。また、Pが60mJ/cm未満であると、アモルファス層30Cを融点以上に加熱できないため好ましくない。また、最終パルスの照射フルエンスEが10mJ/cm超であると、急冷がおこることとなりアモルファス層を十分に低減できない。一方、Eが10mJ/cm以下であると、結晶化した誘電体に損傷を与える等の影響がなく、また、投入されるエネルギが十分に低くなり、パルス照射によっても金属酸化物の結晶構造に変化が殆ど起こらなくなり、したがって、Pの照射後に金属酸化物が急冷されても、アモルファス化が起こらなくなる程度まで照射エネルギが低減されているため好ましい。また、パルスの一分間の照射フルエンスの減少速度Vが、−150mJ/(cmmin)未満であると、除冷効果がなくなってアモルファス層を低減しにくい。
【0054】
また、パルスレーザの周波数が10Hzよりも小さいと、パルス間隔が長くなり、1のパルスの照射後、次のパルスの照射前に、金属酸化物層の表面は急冷されることとなり、結晶化された金属酸化物層に、再度アモルファス層が形成され易くなる。300Hzより大きいと、パルス間隔が短くなり、エネルギを与える時間の間隔が短くなるため、エネルギが過剰に与えられ、金属酸化物層の温度が上昇し過ぎるため、適度な冷却効果が得られなくなる傾向がある。
【0055】
パルスレーザとしては、例えば、紫外線パルスレーザ光等の高エネルギーレーザ光を照射すればよい。紫外線パルスレーザ光の波長は、例えば、100〜500nm、好ましくは、100〜400nmである。具体的には、紫外線パルスレーザ光として、ArF(193nm)、XeCl(308nm)、KrF(248nm)等を媒質として用いるエキシマレーザ光を用いることが好ましい。なお、1パルスの照射時間すなわちパルス幅は、例えば、1〜100nsとすることができる。
【0056】
このような除冷によれば、概ね1分間程度以上かけて、パルスの照射フルエンスが60〜100mJ/cmから10mJ/cm以下になるような除冷が実施されることとなり、アモルファス層を極めて低減させることが可能である。
【0057】
なお、図7では、TからTの除冷工程において、パルスの照射フルエンスを直線的に減少させる、すなわち、各パルス間の照射フルエンスの減少速度Vがいずれも同一となっているが、各パルス間の照射フルエンスの減少速度Vがそれぞれ−150mJ/(cmmin)≦V<0であれば、各パルス間で減少速度Vが互いに異なっていてもよい。
【0058】
このような照射フルエンスを減少させる除冷工程は、結晶化工程(c)の直後に酸化物を冷却することなく行うこともできるが、(c)工程終了後、金属酸化物の結晶化層20Dを表面に備える積層体を、室温まで冷却し、10〜20分間放置した後に行ってもよい。
【0059】
さらに、図7における最初のパルスの照射開始Tより以前の範囲において、照射フルエンスが60〜100mJ/cmであるパルスレーザ光を、結晶化工程(c)を経た金属酸化物層に対し照射することが好ましい。Tより以前の範囲において、パルスレーザ光の照射フルエンスは必ずしも一定である必要はなく、また、除冷工程の最初のパルスPの照射フルエンスEと異なっていてもよい。また、ショット数は1〜10000であることが好ましく、周波数は10〜300Hzであることが好ましい。この操作によれば、上記除冷工程の直前に、アモルファス層を最表層に有する金属酸化物層の最表層が適度に溶融される。金属酸化物層が適度に溶融され、続く除冷工程において、アモルファス層の下にある良好な結晶性をもつ結晶粒を核として結晶化がはじまることにより、アモルファス状態が結晶化し易くなる。
【0060】
上述の除冷工程を行うことにより、図8に示すような、最表層にアモルファス層30Cがほとんど形成されない、金属酸化物層20Dを備える積層体を形成することができる。したがって、本実施形態によれば、結晶化された金属酸化物層の最表層に形成されたアモルファス層を低減でき、得られる金属酸化物層の誘電率(比誘電率)を高くすることができる。上述のような製造方法によって得られた金属酸化物層は、表面のアモルファス層が低減され、高い結晶性及び、場合により高い配向性を有するので、例えば、薄膜コンデンサ素子等に好適に用いることができる。本発明により製造される金属酸化物層を有する薄膜コンデンサ素子は、金属酸化物層の誘電率の向上に伴い、容量が増加することとなる。特に、金属酸化物層20Dが、Ba及びTiを含むペロブスカイト構造酸化物層であって、該金属酸化物層20Dを一対のCu層(電極層)14で挟んだ構造の積層体を有する電子デバイスである場合は、薄膜コンデンサに限られず、FeRAM、チューナブルフィルタ等のデバイスにも使用可能である。また、上記実施形態では、金属層14上に金属酸化物層を形成しているが、金属層以外の層の上に金属酸化物層を形成する場合にも適用可能であることは言うまでも無い。
【実施例】
【0061】
次に、具体的な実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0062】
(実施例1)
まず、表面に熱酸化層が500nm形成された多結晶のSi基板上に、スパッタ法によりTiO層を20nm形成し、さらに、TiO層上にスパッタ法によりPt層を約120nm形成し、Pt/TiO/SiO/Siから構成される基板10を用意した。
【0063】
(工程a:前駆体層形成工程)
続いて、チタン、バリウム、及び、ストロンチウムを、BST相当にしてそれぞれ7wt%含む、チタン酸バリウムストロンチウム層形成用の原料液(三菱マテリアル社製BST薄膜形成剤)を、スピンコータ(3000rpm、15sec)でPt層上に塗布し、ホットプレート上で基板の温度が150℃となるように加熱し、10分間乾燥させ、チタン酸バリウムストロンチウムの前駆体層20Aを形成した。
【0064】
(工程b:アモルファス化工程)
続いて、ホットプレート上で、基板温度が400℃となるように、10分間前駆体層20Aの加熱し、アモルファス状態の金属酸化物層20Bを形成した。
【0065】
(工程c:結晶化工程)
ホットプレート上で基板の温度が400℃となるように、アモルファス状態の金属酸化物層20Bを加熱し、この金属酸化物層20Bに対し照射フルエンス80mJ/cm、周波数30Hz、ショット数1000にて、レーザ照射を行った。これにより、結晶化した金属酸化物層20Cを形成した。
【0066】
工程a〜cを4回繰り返し、結晶化した金属酸化物層20Cが積層した20Dを形成した。
【0067】
(工程d:放冷工程)
工程a〜cを4回繰り返した後、基板上に酸化物層20Dの形成された積層体をホットプレート上から外し、この積層体を室温にて約15分間放置した。
【0068】
(工程e:再結晶化工程)
[e−1 レーザ第1照射ステップ]
ホットプレート上で基板の温度が400℃となるように、金属酸化物層20Dを加熱し、パルスの照射フルエンスを80mJ/cm、周波数を30Hzとし、ショット数が100となるように、パルスレーザの照射を行った。
[e−2 レーザ第2照射ステップ(除冷工程)]
e−1の直後に、パルスの照射フルエンス及び周波数をe−1から変えずにパルスレーザの照射を開始し、1分間で、パルスの照射フルエンスが80mJ/cmから8mJ/cm(照射開始時の照射フルエンスの1/10)となるように線形に減少させて、パルスレーザを金属酸化物層20Dへ照射した。ショット数は合計1800であった。
【0069】
得られた酸化物層の比誘電率及び容量密度を以下の方法により測定した。結果を表1に示す。
【0070】
[比誘電率]
インピーダンスアナライザHP4194Aによって酸化物層の容量を測定した。また、酸化物層の膜厚を、断面画像から求めた。また、スパッタによって酸化物層の上面に形成された、Pt電極の直径を測定することにより、その値から面積を算出し、酸化物層の面積とした。測定した容量の値、酸化物層の膜厚、酸化物層の面積により、酸化物層の誘電率を算出し、得られた値を真空の誘電率で除して比誘電率を算出し、ひとつの酸化物層に対して3点以上測定した平均値を比誘電率として記載した。
【0071】
[容量密度]
インピーダンスアナライザHP4194Aによって容量を測定した。また、スパッタによって酸化物層の上面に形成された、Pt電極の直径を測定し、その値から面積を算出し、酸化物層の面積とした。測定した容量の値を、酸化物層の面積で除して、容量密度を算出した。
【0072】
得られた酸化物層の断面を観察した。実施例1で得られた酸化物層の断面のSTEM観察により得られた明視野像を、図9に示す。
【0073】
[STEM観察]
走査透過型顕微鏡(日本電子社製,JEM−2100F)を用い、加速電圧200kVにて、酸化物層を観察した。
【0074】
(実施例2〜4)
再結晶化工程(工程e)において、ショット数を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、レーザ照射を行った。
【0075】
(実施例5)
再結晶化工程(工程e)において、照射フルエンスを60mJ/cm、ショット数を5000に変更した以外は実施例1と同様にして、レーザ照射を行った。
【0076】
(比較例1)
再結晶化工程(工程e)の除冷工程(e−2)を行わなかったこと以外は実施例3と同様にして、レーザ照射を行った。
【0077】
(比較例2)
再結晶化工程(工程e)を行わなかった以外は実施例1と同様にして、レーザ照射を行った。
【0078】
(比較例3)
再結晶化工程(工程e)のレーザ照射の代わりに、ホットプレート上で、基板の温度が350℃となるように10分間の加熱を行った。それ以外は実施例1と同様にして、レーザ照射を行った。
【0079】
(比較例4)
再結晶化工程(工程e)において、パルスの照射フルエンスを40mJ/cm、ショット数を1000とし、除冷工程(e−2)を行った後、さらにホットプレート上で、基板の温度が350℃となるように10分間の加熱を行った。それ以外は実施例1と同様にして、酸化物層を形成した。
【0080】
【表1】

【0081】
実施例1〜5及び比較例1、2の結果から、工程eの冷却工程を含むパルスレーザの照射は、得られる金属酸化物の比誘電率及び、それを用いた薄膜コンデンサ素子の容量密度を大幅に上昇させることが認められた。図6の実施例1の酸化物層の断面STEM像から、実施例1の酸化物層の表面にはアモルファス層がほとんど残存していないことが確認された。
【0082】
また、比較例1は、除冷工程の照射フルエンス減少速度が小さすぎる場合に対応するが、比誘電率は十分でない。また、比較例3の結果から、除冷工程を含むレーザ照射の代わりに、加熱による酸化物層の結晶化を行っても、比誘電率及び容量密度は充分ではないことが確認された。また、比較例4の結果から、最初のパルスの照射フルエンスを40mJ/cmとした場合には、与えるエネルギが充分でなく、除冷工程を含むレーザ照射に加え、さらに加熱によって金属酸化物層の結晶化を行っても、金属酸化物の比誘電率及びそれを用いた薄膜コンデンサ素子の容量密度は充分ではないことが確認された。
【0083】
以上より、本発明の金属酸化物層の製造方法によれば、金属酸化物層の最表層に形成されたアモルファス層を低減でき、その結果、金属酸化物層の誘電率は向上し、この金属酸化物層を用いた薄膜コンデンサ素子は、容量が増加することが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る金属酸化物層の製造方法を説明するための概略断面図である
【図2】図2は、本発明の実施形態に係る金属酸化物層の製造方法を説明するための図1に続く一例の概略断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態に係る金属酸化物の製造方法を説明するための図1に続く他の一例の概略断面図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態に係る金属酸化物層の製造方法を説明するための図2又は図3に続く概略断面図である。
【図5】図5は、除冷工程を含まない従来の方法によって得られたチタン酸バリウム(BT)の断面STEM観察による明視野像である。
【図6】図6は、本発明の実施形態に係る金属酸化物層の製造方法を説明するための図4に続く概略断面図である。
【図7】図7は、本発明に係る除冷工程の一例(実施例3における除冷工程)である。
【図8】図8は、本発明の実施形態に係る製造方法により得られる金属酸化物層の概略断面図である。
【図9】図9は、実施例1の金属酸化物層の断面STEM観察による明視野像である。
【符号の説明】
【0085】
10…基板、20A…金属酸化物の前駆体層、20B…金属酸化物層、20C,20D,5b…結晶化された金属酸化物層、14…金属層、30C,5a…アモルファス層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物の前駆体層を分解して金属酸化物層を形成する工程と、
前記金属酸化物層にレーザを照射して前記金属酸化物層を結晶化する工程と、
前記結晶化された金属酸化物層に対して、10〜300Hzの間隔で、最初のパルスの照射フルエンスを60〜100mJ/cmとし、最後のパルスの照射フルエンスを10mJ/cm以下とし、照射フルエンスの減少速度Vが−150≦V[mJ/(cmmin)]<0となるように、各パルスの照射フルエンスを減少させながらパルスレーザを照射する除冷工程と、を備える金属酸化物層の製造方法。
【請求項2】
前記除冷工程の前に、照射フルエンスが60〜100mJ/cmであるパルスレーザを、1〜10000ショット、前記結晶化された金属酸化物層に対して照射する、請求項1記載の金属酸化物層の製造方法。
【請求項3】
前記金属酸化物層を結晶化する工程のレーザはパルスレーザであり、パルスの照射フルエンスが、60〜100mJ/cmである、請求項1又は2記載の金属酸化物層の製造方法。
【請求項4】
前記金属酸化物は、AサイトにBa、BサイトにTiを含むABO型ペロブスカイト構造酸化物である、請求項1〜3のいずれか一項記載の金属酸化物層の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図5】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−56454(P2010−56454A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−222471(P2008−222471)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】