説明

電子写真感光体の検査方法及び検査装置

【課題】電子写真感光体の両端基体面と、帯電ロール両端の間隔をスペーサーで規制することにより電子写真感光体と帯電ロールのギャプを保つ帯電方式に供する浸漬塗工で製造した電子写真感光体の基体面の検査を行い、帯電ギャップが正確に保てる電子写真感光体を提供する。
【解決手段】電子写真感光体の端部外面に波長250nm〜420nmの紫外光を照射し、該電子写真感光体端部外面に残存する電荷輸送層塗工液の固化物が、該紫外光あるいは近紫外光を受けて出す蛍光を測光することにより、電子写真感光体の端部外面に存在する電荷輸送層塗工液の固化物の付着状態を検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、プロッタ等の画像形成装置、該画像形成装置に用いられる帯電装置、プロセスカートリッジにおいて、帯電ギャップの精度を保証する為の電子写真感光体の端部外面の検査方法及び検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式を用いた電子写真装置は品質が向上し、例えば、印字解像度が1200dpiあるいはそれ以上になったり、フルカラー印字が可能になっている。また装置自体もコンパクトになっている。
そのような中で、電子写真装置がその設置環境に与える影響も最小にすることが求められており、例えば、使用中のオゾンやNOx発生量の低減、消費電力量の低減が求められている。
このような要請の中で、オゾンやNOx発生量の低減、および帯電時の省エネルギーの観点から、帯電ローラ方式が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、帯電ローラを帯電部材とし、感光体に帯電ローラを接触させる接触帯電装置が開示されている。帯電ローラの表面は誘電体であり、帯電ローラの回転方向が感光体の回転方向と同じ(帯電ローラと感光体との最近接部での移動する向きが逆)である。帯電ローラの表面が誘電体であるため、感光体上にピンホールなどがあっても、対向する帯電部材のピンホール周辺の表面に電荷がなくなることはなく、これによる感光体上に未帯電部分が発生しない。さらに、帯電ローラを上記の方向に回転させることにより、感光体と誘電体のそれぞれが帯電されても、感光体は順次帯電電位が低い誘電体と接触するようになるため、低い印加電圧で感光体を所望の電位に帯電することが可能になる。このように、帯電用のローラが感光体に接触された状態で使用されるものである。確かに、スコロトロンに代表される非接触帯電機に比べ、帯電機に印加する電圧が小さくて済み、前記反応性ガスの発生量が少なくなる。
【0004】
ところが、接触帯電装置には、(i)帯電ローラ跡、(ii)帯電音、(iii)感光体上
のトナーなどが帯電部材に付着することによる帯電性能の低下、(iv)帯電部材を構成している物質の感光体への付着、及び(v)感光体を長期停止したときに生じる帯電部材の永久変形、のような問題点がある。
【0005】
帯電ローラ跡は、帯電部材を構成している物質が帯電部材から滲みだし、被帯電体の停止期間中に被帯電体の表面に付着移行するために起こる。また帯電音は、帯電部材に交流電圧を印加したときに被帯電体に接触している帯電部材が振動するために起こる。このような問題を解決する方法として、帯電部材を非接触に感光体に近接させる近接帯電装置が考案されている。近接帯電装置は、帯電装置を、感光体との最近接部での距離が0.005〜0.3[mm]になるように対向させ、帯電部材に電圧を印加することにより、感光体の帯電を行なう帯電装置である。近接帯電装置では、帯電装置と感光体とが接触していないために、接触帯電装置で問題となる「帯電部材を構成している物質の感光体への付着」、「感光体を長期停止したときに生じる永久変形」は問題とはならない。また、「感光体上のトナーなどが帯電部材に付着することによる帯電性能の低下」に関しても、帯電部材に付着するトナーが少なくなるため、近接帯電装置の方が優れている。
【0006】
このような近接帯電の例としては、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9記載のもの等が挙げられる。これらは近接帯電方法として記載されており、実験的に帯電部材と感光体とをギャップを介して
近接させ、その帯電状態を調べた例が記載されている。
【0007】
ギャップを作る方法としては、以下の特許文献が存在する。
例えば、特許文献10では、帯電ローラの両端部にシート状部材を貼り付けて、感光体と帯電ローラの間に微小な帯電ギャップを形成する方法が提案されている。
特許文献11では、ギャップ保持部材を帯電部材か感光体の少なくとも一方の表面に設けることにより、ギャップを確保する提案がなされている。
【0008】
特許文献12及び特許文献13では、両端をスプリング等で固定したギャップ保持部材としての絶縁テープを帯電部材と感光体の間に挟み、ギャップを確保する提案がなされている。
特許文献14では、帯電ローラの軸受け部分に適当なスペーサーを設け、そのスペーサーが感光体表面と当接することにより、ギャップを確保する提案がなされている。
【0009】
特許文献15では、ギャップ保持部材を帯電部材か感光体の少なくとも一方の表面に設けることにより、ギャップを確保する提案がなされている。
他にも電子写真感光体と帯電ロールのギャプ保持に関しては特許文献16、特許文献17、特許文献18、特許文献19がある。
【0010】
このように電子写真感光体と帯電ロールの間に一定の隙間を形成する部材を挟み、一定のギャップを形成することが行なわれているが、この隙間形成部材は電子写真感光体と帯電ロールの両端にそれぞれ挟む。
ここで、すきま形成部材を挟む位置であるが、一般に電子写真感光体の両端の非画像領域に挟むのが一般的である。電子写真感光体は円筒状導電性基体の表面に、電荷発生層や電荷輸送層等の電子写真感光体層を浸漬塗工して形成するが、この浸漬塗工において、導電性基体の上端に非塗工部を設け、全長のすべてを塗工しないことにより、導電性基体が露出するので、この部分に隙間形成部材を配置する位置とするのが一般的である。
そして、もう片端は、浸漬塗工後に塗工下端部の塗工液を拭き取って導電性基体を露出させ、ここに隙間形成部材を位置させるのが一般的である。
この浸漬塗工を行なった後の感光体ドラムの塗工時下端部に付着した塗膜を除去する方法に関しては、多くの特許文献があるが、一例として,特許文献20、特許文献21、特許文献22、特許文献23、特許文献24がある。
【0011】
これらの特許文献に示す方法で、浸漬塗工時の感光体ドラムの下端に付着した塗膜が除去されるが、製造装置の不調や洗浄液の供給不足があった場合、下端部の塗膜除去が不十分となり、下端部に塗膜残りが発生する。
塗膜が電荷輸送層の場合、塗膜は僅かに黄色味を帯びた透明膜であり、厚さも数μmと薄いためこれを発見するのは困難であった。その為、この検査法に関する特許文献は無かった。
【0012】
【特許文献1】特開平4−336556号公報
【特許文献2】特開平2−148059号公報
【特許文献3】特開平5−127496号公報
【特許文献4】特開平5−273837号公報
【特許文献5】特開平5−307279号公報
【特許文献6】特開平6−308807号公報
【特許文献7】特開平8−202126号公報
【特許文献8】特開平9−171282号公報
【特許文献9】特開平10−288881号公報
【特許文献10】特開2001−194868号公報
【特許文献11】特開平11−95523号公報
【特許文献12】特開平5−107871号公報
【特許文献13】特開平5−273837号公報
【特許文献14】特開平7−168417号公報
【特許文献15】特開平11−95523号公報
【特許文献16】特開2002−148904号公報
【特許文献17】特開2003−148905号公報
【特許文献18】特開2003−215889号公報
【特許文献19】特開2005−194868号公報
【特許文献20】特開2000−275878号公報
【特許文献21】特開2000−305292号公報
【特許文献22】特開2002−148825号公報
【特許文献23】特開2002−278104号公報
【特許文献24】特開2002−346449号公報
【特許文献25】特開昭52−36016号公報
【特許文献26】特開2000−103984号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記従来技術の欠点に対応すべくなされたものであり、非接触で被検査体にキズをつけることが無く、また、基体であるアルミニウム素管の表面性や光沢の影響を受けることが無く、また、検査対象である電子写真感光体端部外面の光沢や表面性の影響を受けることが無い、電子写真感光体端部外面の検査方法、及び、検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
図1は帯電ロールを使用した帯電機構を説明するための斜視図で、1は電子写真感光体であり、両端にはフランジが取り付けられ回転可能になっている。図1の電子写真感光体において、2は塗工時の上端側の導電性基体露出部である。この部分の幅は通常2〜10mmである。また、3は電子写真感光層が形成された部分、4は塗工時の下側の導電性基体露出部である。浸漬塗工で電子写真感光体1を製造した場合、塗工時下側には塗工液が付着するので、溶剤と拭き部材を使用して下端部は塗膜を拭き取り導電性基体面が露出部4を形成する。この幅は通常2〜10mmである。
【0015】
5は帯電ロールであり、この両端には軸があって帯電ロールが回転するようになっている。そして、帯電ロールの両端にはベルト状スペーサー6a、6bが貼り付けられている。この帯電ロールのスペーサー6aが電子写真感光体1の導電性基体露出部2に接触し、また、スペーサー6bが電子写真感光体1の導電性基体露出部4に接触するように電子写真感光体1に当接させる。この結果、帯電ロール5のスペーサーが無い部分の表面7と、電子写真感光体1の塗工面3の間隔は正確に一定に保たれ、これによって均一な帯電が行なわれる。
【0016】
電子写真感光体1には各種の層構成があるが、最も簡単な例を紹介すると、導電性基体の上に電荷発生層を形成し、更にその上に電荷輸送層を形成したものがある。
画像干渉縞防止等の目的で、必要に応じ、導電性基体と電荷発生層の間に下引き層を形成することも行なわれる。また、耐磨耗性向上を目的として、最表面に保護層を形成することも行なわれる。また、下引き層及び、保護層は複数層からなる場合もある。
【0017】
導電性基体及び各層について説明すると、導電性基体としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、
金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス等の板、およびそれらを押し出し、引き抜き等の工法で素管化後、切削、超仕上げ、研磨等で表面処理した管等を使用することができる。また、特許文献25に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性基体として用いることができる。
【0018】
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工し導電層を形成したものも、本発明の導電性基体として用いることができる。このような導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、また、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀等の金属粉或いは導電性酸化スズ、ITO等の金属酸化物粉体等が挙げられる。また、同時に用いられる結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性、熱硬化性樹脂、または光硬化性樹脂が挙げられる。
【0019】
導電性層は、上記導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えばTHF(テトラヒドロフラン)、MDC(ジクロロメタン)、MEK(メチルエチルケトン)、トルエン等に分散し、これを塗布することにより形成することができる。さらに、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明における導電性支持体1として良好に用いることができる。
【0020】
電荷発生層は、導電性基体上に、結着樹脂と、電荷発生材料と、溶剤とを含有した塗工液を塗布し、乾燥することにより形成される。
電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。結着樹脂の量は、電荷発生物質100重量部に対し20〜200重量部、好ましくは50〜150重量部が適当である。
【0021】
特に、電荷発生層にブチラール化度70モル%未満のブチラール系樹脂や、ホルマール化度15モル%未満のブチラール系樹脂を含むことが好ましく、これらのブチラール系樹脂がビニル化合物の重合体、もしくはその共重合体樹脂からなることが好ましい。このような結着樹脂を用いることによって、分散性や取り扱い性が良好で安定した塗工液が得られ、形成された感光体を繰り返し使用しても長期間、高品質で安定した電子写真画像が提供できる。
【0022】
ここで用いられる溶剤としては、例えば、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、リグロイン等が挙げられる。上記塗工液の塗工法としては
、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の方法を用いることができる。電荷発生層2の膜厚は0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.1〜2μmである。
【0023】
電荷発生層に必要により可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどのシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は結着樹脂に対して0〜1重量%程度が適当である。
【0024】
電荷輸送層3は、電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷発生層2上に塗布、乾燥することにより形成する。
ここで、電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがあり、いずれも使用できる。電子輸送物質としては、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ[1,2−b]チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ベンゾキノン誘導体等の電子受容性物質が挙げられる。
【0025】
一方、正孔輸送物質としては、ポリ−N−カルバゾール及びその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメート及びその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物及びその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、ポリシラン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジエン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等その他公知の材料が挙げられる。これらの電荷輸送物質は、単独または2種以上混合して用いられる。
【0026】
電荷輸送層形成用の結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性、または熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0027】
電荷輸送物質の量は、結着樹脂100重量部に対し、20〜300重量部、好ましくは40〜150重量部が適当である。また、電荷輸送層の膜厚は、5〜50μm程度とすることが好ましい。ここで、用いられる溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトンなどが挙げられる。
【0028】
また、電荷輸送層には電荷輸送物質としての機能と、結着樹脂としての機能を有する高分子電荷輸送物質も良好に使用される。これら高分子電荷輸送物質から構成される電荷輸送層は、耐摩耗性に優れたものである。高分子電荷輸送物質としては、公知の材料が使用できるが、トリアリールアミン構造を主鎖及び/又は側鎖に含むポリカーボネートが良好に用いられる。例えば、特許文献26の(1)〜(10)式で表わされる高分子電荷輸送
物質が良好に用いられる。
【0029】
また、本発明において、電荷輸送層に可塑剤やレベリング剤を添加してもよい。可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなど一般の樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量としては結着樹脂に対して0〜30重量%程度が適当である。レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどのシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は結着樹脂に対して0〜1重量%程度が適当である。
【0030】
本発明における電子写真感光体には、導電性基体1と感光層との間に下引き層を設けることができる。本発明において、感光層とは電荷発生材料あるいは電荷輸送材料の少なくとも片方あるいは両方を含有した層を示す。下引き層は一般には樹脂を主成分とするが、下引き層状に感光層を溶剤で塗布することを考えると、これらの樹脂は一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂などが挙げられる。また、下引き層にはモアレ防止、残留電位の低減等のために、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物の微粉末を加えてもよい。これらの下引き層は、前述の感光層の場合と同様、適当な溶媒、塗工法を用いて形成することができる。
【0031】
さらに、本発明における下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。この他、本発明の下引き層にはAlを陽極酸化によって設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物や、SiO、SnO、TiO、ITO、CeO等の無機物を真空薄膜作製法によって設けたものも良好に使用できる。この他にも公知のものを用いることができる。下引き層の膜厚は0〜5μmが適当である。
下引き層は一層でなく、複数の層からなっていても良い。
【0032】
更に、本発明の電子写真感光体には、感光層保護の目的で、保護層を感光層の上に設けることもある。保護層に使用する材料としては、ABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、AS樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。また、保護層5にはその他、耐摩耗性を向上する目的で、ポリテトラフルオロエチレンのような弗素樹脂、シリコーン樹脂およびこれら樹脂に酸化チタン、酸化スズ、チタン酸カリウム等の無機材料を分散したもの等を添加することができる。
【0033】
保護層の形成法としては、通常の塗布法が採用される。なお、保護層の厚さは、0.1〜7μm程度が適当である。また、以上の他に真空薄膜作製法にて形成したα−C、α−SiCなど公知の材料も保護層5として用いることができる。
【0034】
また、本発明においては、感光層と保護層との間に図示しない中間層を設けることも可能である。中間層には、一般にバインダー樹脂を主成分として用いる。これら樹脂として
は、ポリアミド、アルコール可溶性ナイロン、水酸化ポリビニルブチラール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。中間層の形成法としては、前述のような通常の塗布法が採用される。なお、中間層の厚さは0.05〜2μm程度が適当である。
【0035】
次に感光層が単層構成の場合について述べる。
ここで、単層感光体とは、電子写真機能を有する層が単層である感光体を総称したものであり、下引き層あるいは保護層が有っても、単層感光層は、電荷発生物質および電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することによって形成できる。
【0036】
結着樹脂としては、先に電荷輸送層3で挙げた結着樹脂をそのまま用いるほかに、電荷発生層2で挙げた結着樹脂を混合して用いてもよい。もちろん、高分子電荷輸送物質も良好に使用できる。結着樹脂100重量部に対する電荷発生物質の量は5〜40重量部が好ましく、電荷輸送物質の量は0〜190重量部が好ましくさらに好ましくは50〜150重量部である。単層感光層は、電荷発生物質、結着樹脂を必要ならば電荷輸送物質とともにテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロエタン、シクロヘキサン等の溶媒を用いて分散機等で分散した塗工液を、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコートなどで塗工して形成できる。単層感光層の膜厚は、5〜25μm程度が適当である。
【0037】
次に帯電ロールについて説明する。
帯電ロールは回転軸上に、導電性弾性体を設けたものである。
回転軸としては、鉄、銅、真鍮、ステンレスなどの金属部材が用いられ、導電性弾性体としては、一般に合成ゴム中に導電性粉末や導電性繊維(カーボンブラック、金属粉末、カーボン繊維など)を混入した組成物により形成される。表面に抵抗調整層を用いる場合には、この層の抵抗は10〜10Ω・cm程度の半導電性領域が良好に用いられ、単独で用いられるような場合にはもう少し高め(10〜1010Ω・cm程度)で使用される。抵抗調整層は、通常の合成樹脂(ポリエチレン、ポリエステル、エポキシ樹脂)や合成ゴム(エチレン−プロピレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、塩素化ポリエチレンゴム等)等が用いられる。このほかに、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合ゴム、エピクロルヒドリンゴムとフッ素樹脂の混合物など様々なものが使用できる。
【0038】
図1のように、帯電ロール表面の感光体における非画像形成領域に当接する部分に隙間形成部材を貼り付け、帯電ロールと電子写真感光体とは空間的な隙間(ギャップ)を有し、感光体に非接触状態で帯電を施すものである。
【0039】
次に、このような構成の帯電機構における問題点について説明する。
電子写真感光体は浸漬塗工で製造することが多いが、この浸漬塗工法では塗工下端の付着した塗工液は溶剤で溶解して除去して導電性基体表面を露出させ、図1の4の導電性基体露出部を作る。しかし、この塗工下端の付着液除去が不十分であると、先に述べた様に塗工下端の基体表面を利用して現像ギャップや帯電ギャップを正確に維持することが困難になる。これを図2で詳細に説明する。
【0040】
図2は電子写真感光体と帯電ロールの間隔を保つしくみを示す断面図であり、図2のAは電子写真感光体と帯電ロールを当接させる前の図である。
図2において、10は電子写真感光体の導電性基体、11は電子写真感光体の感光層、2は塗工時の上端側の導電性基体露出部である。4は塗工時の下側の導電性基体露出部である。先に述べた様に浸漬塗工で電子写真感光体1を製造した場合、塗工時下側には塗工液が付着するので、溶剤と拭き部材を使用して下端部は塗膜を拭き取り導電性基体面が露出部4を形成する。この幅は通常2〜10mmである。
また、5は帯電ロールであり、両端にはベルト状スペーサー6a、6bが貼り付けられている。
図2のAの状態の電子写真感光体と帯電ロールを当接させると、図2のBの状態となり、電子写真感光体の感光層11の表面と、帯電ロール5の表面の間隔は正確に保たれる。
【0041】
ギャップ部位における膜厚差は10〜200μmが好ましい。より好ましくは、20〜100μmである。10μm以下の場合は、帯電部材と感光体が接触する可能性があり、また感光体上の未クリーニングトナーが帯電部材に固着する可能性があり、好ましくない。また、200μm以上の場合には、帯電部材に印加する電圧が高くなり余分な消費電力を必要とし、更に感光体上の帯電ムラが生じやすくなるという欠点も有しており好ましくない。
【0042】
図2のCは塗工時の下端部の塗膜除去が不十分な例であり、11は電子写真感光体の感光層、2は塗工時の上端側の導電性基体露出部である。13は塗工時の下側の導電性基体に塗膜が残っている部分である。そして、5は帯電ロールであり、両端にはベルト状スペーサー6a、6bが貼り付けられている。
図2のCの状態の電子写真感光体10と帯電ロール5を当接させると、図2のDの状態となり、電子写真感光体10の感光層11の表面と、帯電ロール5の表面の間隔に左右差が生じる。このような状態で画像出しを行なうと、異常画像が発生したり、あるいは電子写真感光体の片側磨耗が発生する問題が発生する。
【0043】
このような現象が発生するのを防ぐ為に、電子写真感光体を製造する際、浸漬塗工時の下側に塗工液が残っていないことを検査する必要がある。
しかし、電子写真感光体の電荷輸送層は僅かに黄色味を帯びた透明膜であり、その膜が数μm残っている場合、これを発見するのは非常に困難である。そこで、本発明の目的は、電子写真感光体の端部の検査を行い、帯電ロールによる均一な帯電が可能な電子写真感光体を提供することである。
【0044】
そこで、上記目的を達成するための手段として、請求項1に係る発明は、電荷輸送層塗工後の電子写真感光体端部外面に、電子写真感光体を停止、あるいは5回/秒以下の回転速度で回転させながら、波長250nm〜420nmの紫外光あるいは、近紫外光(以下紫外光と略す)を照射し、電子写真感光体端部外面に残存する電荷輸送層塗工液の固化物が該紫外光あるいは近紫外光を受けて出す蛍光を側光することにより、電子写真感光体端部外面に存在する電荷輸送層塗工液の固化物の付着状態を検査することを特徴としている。
【0045】
特に、電荷輸送層塗工液の主成分は電荷輸送材料とバインダー樹脂と溶剤からなり、この乾固物はわずかに黄色を帯びた透明物である。従って、塗工下端外面にこのような固化物が付着しても、目視でこの付着状態を確認するには困難である。このような前記固化物の厚さが数μmである場合は、目視で簡便にこれを検出することはできない。しかし、請求項1に示す様に、前記固化物に紫外線を照射すると、前記固化物は蛍光を発するため、その厚さが0.1〜0.01μmであってもその存在を容易に確認することができる。
【0046】
上記目的を達成するための手段として、請求項2に係る発明は、電荷輸送層塗工後の電子写真感光体の下端外面に、電子写真感光体を停止、あるいは5回/秒以下の回転速度で回転させながら、波長250nm〜420nmの紫外光を照射し、電子写真感光体下端外面に付着した電荷輸送層塗工液あるいはその固化物が該紫外光あるいは近紫外光を受けて出す蛍光を測光することにより、電子写真感光体下端外面に存在する電荷輸送層塗工液あるいはその固化物の付着量を測定することを特徴とする。
【0047】
更に、請求項2に示す発明では、検査対象面に波長250nm〜420nmの紫外光を照射すると、電子写真感光体下端外面に電荷輸送層塗工液あるいはその固化物が残存していた場合、該紫外光を受けて蛍光を発し、その蛍光の量は電荷輸送層塗工液あるいはその固化物の量と相関しているので、電荷輸送層塗工液あるいはその固化物の量を精度良く測定が可能になる。
また、蛍光を出すのは、電荷輸送層塗工液及びその固化物のみなので、基体であるアルミニウム管の端部外面の表面性や光沢の影響をまったく受けない利点があり、電荷輸送層塗工液固化物の精度の良い測定が可能になる。
【0048】
ここで、電子写真感光体の回転速度は紫外光を照射した場合に発生する蛍光を測光できる回転速度であれば良く、5回/秒以下の速度であれば十分であり、望ましくは1回/秒から1回/2秒の回転速度が良い。
回転速度を5回/秒以上にしても、設備のコストが高くなるだけで何らメリットは少ない。
また、検査対象である電子写真感光体を静止させ、波長250nm〜420nmの紫外光を回転させながら照射し、電子写真感光体下端外面に残存する電荷輸送層塗工液あるいはその固化物が該紫外光を受けて出す蛍光を測光することにより、電子写真感光体下端外面に存在する電荷輸送層塗工液あるいはその固化物の付着量を測定する。
【0049】
請求項2に示す発明において、検査対象である電子写真感光体ドラムを回転させながら、光センサーで電荷輸送層塗工液の固化物が紫外光を受けて出す蛍光を電気信号とし、これを直接、あるいは、増幅後にA/D変換を行なう場合、A/D変換の間隔は、電子写真感光体ドラムが回転しても、測光対象部位に漏れが生じないことが好ましい。その為には、測光とA/D変換後に電子写真感光体ドラムが回転した場合、次ぎの測光とA/D変換時に、測光部位一部が重複することが好ましい。
本発明において、A/D変換後の値はそのまま基準値と比較しても良いが、測光対象部位に重複がある場合は、移動平均法等の数値処理を行なった後、基準値と比較しても良い。
【0050】
請求項2に示す発明は、紫外光あるいは近紫外光を検査対象面に照射し、電荷輸送層塗工液あるいはその固化が出す蛍光を測光するので、検査対象面の光沢や表面性に差があり、紫外光の反射光量に差が有っても影響をまったく受けない利点がある。
ここで、検査対象面に照射する光の波長として、250nm以下の紫外光を生成するには、ハロゲンランプや紫外線ランプ等の寸法が大きな装置が必要であり、好ましくは無い。
また、検査対象面に照射する光の波長が420nm以上では、検査対象面に電荷輸送層塗工液あるいはその固化物が残存していても、蛍光を発することが無く、あるいは発する蛍光の量が極めて少ないので好ましくない。
【0051】
請求項3に係る発明は、前記紫外光を照射する光源が紫外LEDであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真感光体の検査方法である。更に、その大きさは、大きくとも高さ8mm以下、直径5mm以下なので、極めて小さく、従って小型の検査装置を構成することが可能になる。ここで、紫外LEDは1個でもよいが、2個あるいはそれ以上を使用しても良い。
【0052】
請求項4に係る発明は、前記紫外光あるいは近紫外光の照射面における光の形状が、縦横比2:1〜6:1の楕円形であるか、あるいは縦横比2:1〜6:1の複数の楕円形がその長軸の端部で重なり合った形状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の電子写真感光体の検査方法である。
【0053】
本発明において、検査対象である電荷輸送層塗工液の固化物の存在形態は、薄く広がったものや、厚く広がったもの、小さな点状に盛り上がったもの、スジ状に盛り上がったもの等がある。
このような各種存在形態の電荷輸送層塗工液固化物を検出しようとする際、照射する紫外光のスポット径が大きいと、その照射範囲に、存在を把握しようとする小さな点状の電荷輸送層塗工液固化物が入ったとしても、蛍光は点状にしか発生しない。このような点状の蛍光を光センサーで測光した場合、蛍光の量は平均化されて検出することが困難となる。このような現象に対する対策として、光センサーを多数配置するが、画素数の多い光センサーを用意して、その個々の光センサーあるいは、光センサーの画素の光量を調べる必要がある。しかし、この方法では、測光系が複雑になる問題がある。
【0054】
そこで、紫外光を、電子写真感光体ドラムの軸方向と平行なスリット状とすれば、光センサーの数が1個あるいは2〜3個であっても、小さな点状の電荷輸送層塗工液固化物が出す蛍光を検出することができる。
従って、請求項4に係る発明によれば、検査を行ないたい部分にのみ紫外光を投光出来るので、蛍光の受光センサーが1個あるいは3個以下でよく、また5画素以上の受光センサーを使わなくて良いので、受光系の構造や電気回路の構成、判定ソフトウェアが簡易になる。
【0055】
請求項5に係る発明は、前記紫外光あるいは近紫外光をシンドリカルレンズあるいはリニアフレネルレンズを通してから検査対象面に照射することを特徴とするものである。
請求項5に係る発明は、前記紫外光あるいは近紫外光を、焦点距離が1mm以上、10mm以下のシンドリカルレンズ、あるいはリニアフレネルレンズを通してから検査対象面に照射することを特徴とする、前記請求項1〜4のいずれか一に記載の電子写真感光体の検査方法である。
【0056】
シンドリカルレンズあるいは、リニアフレネルレンズを使用することにより、簡便に紫外光照射の光スポットの形状を請求項4に示す形状にすることが可能になる。また、該シンドリカルレンズあるいは、リニアフレネルレンズの焦点距離を1mm以上10mm以下とすることによって、紫外LEDとリニアフレネルレンズからなる紫外光投光の光学系を小型にすることが可能になる。ここで、リニアフレネルレンズの焦点距離は、1mm以上10mm以下が良いが、より好ましくは、5mm以上8mm以下が良い。
【0057】
請求項6に係る発明は、複数の光ファイバーを並べて縦横比2:1〜10:1の矩形状、あるいは、円形状の両端が重なった形状で前記紫外光、あるいは、近紫外光を照射したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の電子写真感光体の検査方法である。請求項6に示す様に、光ファイバーを並べ、これに紫外光を導入することによっても、本発明を実施するのに好適なスリット状の照射スポットを得ることができる。
【0058】
請求項7に係る発明は、前記センサーに受光素子を有し、該受光素子の分光感度のピークが460nm以上であることを特徴とする、請求項2〜6のいずれか1に記載の電子写真感光体の検査方法である。本発明において光源の波長を請求項1、あるいは請求項2に示す様に、波長250nm〜420nmとし、受光素子の分光感度のピークを460nm以上とすることにより、一般的に電子写真感光体の基体として使われているアルミニウム管表面の表面性、光沢等にまったく影響されず、電荷発生層塗工液およびその固化物の出す蛍光のみ測光可能になる。
【0059】
従って、電子写真感光体の基体のロットが変わることにより、表面性や光沢が変わっても、精度や感度の影響を受けずに電荷発生層塗工液およびその固化物を検出することが可能になる。
ここで、受光素子としては各種の受光素子が使用可能であるが、500〜700nmに感度を有する必要があり、Siフォトダイオード、GaAsPフォトダイオード、GaPフォトダイオード等が好適である。
ここで、受光素子は1個でもよいが、2個あるいはそれ以上を使用しても良い。
受光素子からの信号を増幅する方法は、各種増幅回路が使用可能であり、トランジスタによる方法やオペアンプによる方法を適宜選択して使用することができる。
【0060】
請求項8に係る発明は、前記受光素子の受光面に500nm以下の光を遮光する光学フィルターを設けることを特徴とする、請求項7に示す電子写真感光体の検査方法である。
本発明では光源として波長250nm〜420nmに紫外光を使用し、受光素子として受光素子の分光感度のピークが460nm以上である受光素子を使用するが、受光素子の受光面に500nm以下の光を遮光する光学フィルターを設けることにより、受光素子に500nm以下の光が入ることを防ぎ、これにより光源である紫外光の迷光や散乱光の影響を完全に除くことが可能になる。
【0061】
請求項9に係る発明は、前記受光素子の受光面にJIS B−7133 写真用ガラスフィルター(シャープカット)で定義される透過限界波長の値が440nm以上、580nm以下である光学フィルターを設けることを特徴とする、請求項7又は8に示す電子写真感光体の検査方法である。
ここで、透過限界波長について説明する。フィルターの分光透過率において透過性が72%以上となる波長値と5%以下となる波長値の間隔を波長傾斜幅といい、波長傾斜幅の中点に該当する波長を透過限界波長という。
【0062】
本発明では光源として波長250nm〜420nmに紫外光あるいは近紫外光を使用し、受光素子として受光素子の分光感度のピークが460nm以上である受光素子を使用するが、受光素子の受光面に、JIS B−7133 写真用ガラスフィルター(シャープカット)で定義している透過限界波長の値が440nm以上、580nm以下のフィルターを設けることにより、光源である紫外光が光センサーに入光することを防止し、蛍光のみ入光させることが可能になる。
【0063】
請求項8、請求項9において、光学フィルターの材質としては、各種材質が使用可能で、ガラス、プラスチックが使用できる。また一般に市販されている写真用フィルターの中でゼラチンフィルターやトリアセチルセルロース(TRI ACETYL CELLULOSE)製フィルターが好適に使用可能である。
【0064】
請求項10に係る発明は、前記紫外光あるいは近紫外光の正反射光が前記受光素子に入射することを特徴とする、請求項7〜9のいずれか一に示す電子写真感光体の検査方法である。
紫外光あるいは近紫外光の正反射光が受光素子に入射するような光学系にすることにより、感度を高くすることが可能になり、精度良く電荷輸送層塗工液あるいはその固化物を検出することが可能になる。
【0065】
請求項11に係る発明は、前記1〜10のいずれか一に記載の電子写真感光体の検査方法により、電子写真感光体下端表面に存在する電荷輸送層塗工液あるいはその固化物の付着量を測定する手段を備えたことを特徴とする、電子写真感光体の検査装置である。請求項11に示す検査装置により、電子写真感光体下端表面に存在する電荷輸送層塗工液あるいはその固化物の付着量を精度良く高速に検査することが可能になる。
【0066】
以下、本発明に係る電子写真用円筒体の端部外面検査方法および装置について図面を参照して詳細に説明する。
図3は請求項1に示す発明を実施するのに好適な構成の図である。図3において21は電子写真感光体である。この図では電子写真感光体21は、浸漬塗工時の下部をそのまま下側とした状態で描いてある。そして22は紫外光源である。紫外光源2は波長250〜420nmの紫外光を発するものであれば何でも良いが、波長350〜420nmの紫外LEDが好適に使用できる。そして、紫外LEDの電力消費量(Power Dissipation)は紫外LED1個当り、60〜200mWが良く、好ましくは100〜150mWである。
また電子写真感光体1と紫外光源2の間隔は紫外光を照射できればいくつでも良いが、1〜10cmが好適である。このような構成で、フランジ取り付け前の電子写真感光体の検査対象部位に紫外光を照射し、電荷発生層塗工液の固化物が有れば発生する蛍光の状態を観察する。
【0067】
図4は請求項2に示す発明を実施するのに好適な装置の構成を示す構成図である。
図4において、21は検査対象である電子写真感光体、23は電子写真感光体21の浸漬塗工時上側の非塗工部、24は浸漬塗工時の下側で浸漬塗工後に塗膜を溶剤とワイパーで除去した部分である。この様態で電子写真感光体は回転可能になっている。25は本発明に示す紫外光光源と受光素子からなるセンサーヘッド、27は紫外光光源への電力源と受光素子からの信号を増幅し閾値を比較する演算処理機構、26はセンサーヘッド25と演算処理機構27を接続するケーブルである。
【0068】
図5は請求項4に示す紫外光の照射面における光の形状を示す図であり、この図では紫外光を照射した部分を斜めの格子状で示している。
図5において、Aは縦横比が約4:1の楕円形である紫外光スポットの場合の光の照射形状である。
また、図5のBは縦横比が約2:1である2つの楕円形の紫外光スポットを、その長軸の端部で重なり合わせた場合の光の照射形状である。
また、図5のCは縦横比が約2:1である3つの楕円形の紫外光スポットを、その長軸の端部で重なり合わせた場合の光の照射形状である。
【0069】
請求項4に示す発明の効果を図6によって説明する。
図6では浸漬塗工の下側を上として描いている。そして、図6のアとウは紫外光をスリット状に照射した場合、図6のイとエは紫外光を円状に照射した場合を示している。
この様に電子写真感光体に紫外光を照射しつつ、該電子写真感光体を回転させ、紫外光照射範囲に電荷輸送層塗工液固化物が有った場合に発する蛍光を1つの光センサーで測光する場合を考える。
図6のウは、アが回転し、その紫外光照射範囲に電荷輸送層塗工液固化物(図中における白抜部)が入ってきた状態である。また、図6のエは、イが回転し、その紫外光照射範囲に電荷輸送層塗工液固化物(図中における白抜部)が入ってきた状態である。ウとエを比較すると、紫外光照射範囲に占める電荷輸送層塗工液固化物(図中における白抜部)の割合はウの方が明らかに大きく、従って、電荷輸送層塗工液固化物をより精度良く検出できる。
従って、請求項4に示す様に、紫外光あるいは近紫外光の照射面における光の形状が、縦横比2:1〜6:1の楕円形であるか、あるいは縦横比2:1〜6:1の複数の楕円形がその長軸の端部で重なり合った形状とすることにより、電荷輸送層塗工液固化物をより精度良く検出できる。
【0070】
図7は請求項5に示す発明を実施するのに好適な構成の例である。
図7は、図4の装置のセンサーヘッド25と電子写真感光体21を下方から見た図である。
図において、31は電子写真感光体の浸漬塗工時の下側で浸漬塗工後に塗膜を溶剤とワ
イパーで除去した部分、32は紫外LED、33はリニアフレネルレンズ、34は紫外光照射面、35は蛍光を測光する受光素子、36は紫外LED32、リニアフレネルレンズ33、受光素子35を取り付ける台である。図7の構成からなる光学系において、リニアフレネルレンズの焦点処理を請求項6に示す範囲にすることにより、紫外光照射面における光照射面の形状を請求項4に示す形状とすることができる。
ここで、リニアフレネルレンズの表面凹凸の方向は、電子写真感光体の軸方向と一致させる必要がある。
リニアフレネルレンズの替わりにシンドリカルレンズを使用する場合は、図5のリニアフレネルレンズ33の替わりにシンドリカルレンズを組み込めば良い。
図7に示すセンサーヘッドの構成によって、紫外LED32から出た紫外光はリニアフレネルレンズ33によって照射面34において矩形になるように整えられる。
照射面34に電荷輸送層塗工液あるいはその固化物が存在すると、それは蛍光を発する。もし蛍光が発生した場合、その蛍光は受光素子35で捉えられる。
【0071】
図8は請求項6を実施するのに好適な装置の構成図であり、32は紫外LED、37は光ファイバーを束ねたものであり、ここから紫外光が入る。38は光ファイバーが並べられたものであり、ここから紫外光39が照射される。この構成にすることにより、紫外光の照射形状を請求項4に示した形状にすることができる。
【0072】
図9は請求項8、9に示す発明を実施するのに好適な構成の例である。
図9は、図2の装置のセンサーヘッド25と電子写真感光体21を下方から見た図である。
図9において、31は電子写真感光体の浸漬塗工時の下側で浸漬塗工後に塗膜を溶剤とワイパーで除去した部分、32は紫外LED、33はリニアフレネルレンズ、34は紫外光照射面、35は蛍光を測光する受光素子、40は光学フィルター、36は紫外LED32、リニアフレネルレンズ33、受光素子35等を取り付ける台である。
光学フィルター40としては、ゼラチンをベースとする光学フィルターや、トリアセチルセルロース(TRI ACETYL CELLULOSE)をベースとしたものが使用可能である。例えば、富士フイルム製SC−50フィルターが好適に使用できる。
図9に示す構成では、図7と同様に紫外LEDから出た紫外光はリニアフレネルレンズ33によって照射面34において矩形になるように整えられる。照射面34に電荷輸送層塗工液あるいはその固化物が存在すると、それは蛍光を発する。もし蛍光が発生した場合、その蛍光は光学フィルター40を通過した後、受光素子35で捉えられる。
【0073】
本発明においては、当然のことであるが、検査対象である電子写真用感光体31が置かれている環境は、周囲の光が入らないように遮光することが好ましく、特に、受光素子35には検査対象面以外からの光が入らないようにする必要がある。
また、本発明においては、紫外光源に変調をかけ信号処理を行なうと、周囲からの漏れ光によるノイズを除くために有効な場合も有る。
【発明の効果】
【0074】
請求項1に係る発明は、電子写真感光体を停止、あるいは5回/秒以下の回転速度で回転させながら、電荷輸送層塗工後の電子写真感光体の端部外面に、波長250nm〜420nmの紫外光あるいは、近紫外光を照射し、電子写真感光体内部に残存する電荷輸送層塗工液の固化物が該紫外光あるいは近紫外光を受けて発生する蛍光を側光するので、蛍光灯や白熱灯では存在状態の確認が困難な、透明薄膜の電荷発生層塗工液固化物の存在を目視により明確に把握でき、従って、浸漬塗工時の塗工下端の塗膜除去状況を正確に把握できる。
【0075】
請求項2に係る発明は、電子写真感光体を停止あるいは回転させながら、電荷輸送層塗
工後の電子写真感光体の端部外面に、波長250nm〜420nmの紫外光あるいは、近紫外光を照射し、電子写真感光体の端部表面に残存する電荷輸送層塗工液あるいはその固化物が該紫外光あるいは近紫外光を受けて出す蛍光を測光することにより、電子写真感光体の端部表面に存在する電荷輸送層塗工液あるいはその固化物の付着量を測定している。ここで、電荷輸送層塗工液あるいはその固化物が残存していた場合、該紫外光あるいは近紫外光を受けて蛍光を発し、その蛍光の量は電荷輸送層塗工液あるいはその固化物の量と相関しているので、電荷輸送層塗工液あるいはその固化物の量を精度良く測定が可能になる。
また、蛍光を出すのは電荷輸送層塗工液あるいはその固化物のみなので、基体であるアルミニウム管の表面性や光沢の影響をまったく受けない利点が有り、電荷輸送層塗工液あるいはその固化物の精度の良い測定が可能になる。
また、検査対象面の光沢や表面性に差が有り、紫外光あるいは近紫外光の反射光量に差が有っても影響をまったく受けない利点がある。
【0076】
また、請求項2に係る発明は、電荷輸送層塗工液あるいはその固化物が該紫外光あるいは近紫外光を受けて発生する蛍光をセンサーで測光することにより、電荷輸送層塗工液あるいはその固化物の付着量をその表面性や、基体の表面性の影響を受けずに、精度良く測定することが可能になり、帯電ロールを使用した帯電機構で使用する際に、正確な帯電ギャップを形成することが可能になる。
【0077】
請求項3に係る発明は、紫外光あるいは近紫外光の光源が紫外LEDであり、その大きさは、大きくとも高さ8mm以下、直径5mm以下なので、極めて小さく、従って小型の検査装置を構成することが可能になる。
【0078】
請求項4に係る発明は、紫外光あるいは近紫外光の照射面における光の形状が、縦横比2:1〜6:1の楕円形であるか、あるいは縦横比2:1〜6:1の複数の楕円形がその長軸の端部で重なり合った形状なので、紫外光の受光センサーが1個あるいは3個以下でよく、また5画素以上の受光センサーを使わなくて良いので、受光系の構造や電気回路の構成、判定ソフトウェアが簡易になる。
【0079】
請求項5に係る発明は、紫外光あるいは近紫外光を、焦点距離が1mm以上、10mm以下のシンドリカルレンズ、あるいは、リニアフレネルレンズを通してから検査対象面に照射するので、簡便に紫外光照射の光スポットの形状を請求項4に示す形状にすることが可能になる。
【0080】
請求項6に係る発明は、複数の光ファイバーを並べて縦横比2:1〜10:1の矩形状、あるいは、円形状の両端が重なった形状で紫外光、あるいは、近紫外光を照射したことを特徴とするので、簡便に、紫外光照射の光スポットの形状を請求項4に示す形状にすることが可能になる。
【0081】
請求項7に係る発明は、蛍光を測光する受光素子の分光感度のピークが460nm以上であり、光源の波長を250nm〜420nmとすることにより、一般的に電子写真感光体の基体として使われているアルミニウム管の表面性、光沢等にまったく影響されず、電荷発生層塗工液およびその固化物の出す蛍光のみ測光可能になる。
【0082】
請求項8に係る発明は、受光素子の受光面に500nm以下の光を遮光する光学フィルターを設けることにより、光源である紫外光の迷光や散乱光の影響を完全に除くことが可能になる。
【0083】
請求項9に係る発明は、受光素子の受光面に設ける光学フィルターはJIS B−71
33 写真用ガラスフィルター(シャープカット)で定義している透過限界波長の値が好ましくは440nm以上、580nm以下、最も好ましくは480nm以上、520nm以下であることにより、光源である紫外光の迷光や散乱光の影響を完全に除くことが可能になる。
【0084】
請求項10に係る発明は、紫外光あるいは近紫外光の正反射光が受光素子に入射するような光学系にすることにより、感度を高くすることが可能になり、精度良く電荷輸送層塗工液あるいはその固化物を検出することが可能になる。
【0085】
請求項11に係る発明の電子写真感光体検査装置は、請求項1〜10のいずれか一に記載の電子写真感光体の検査方法により電子写真感光体内面に存在する電荷輸送層塗工液あるいはその固化物の付着量を測定する手段を備えているため、該電荷輸送層塗工液あるいはその固化物の付着量を精度良く高速に検査することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0086】
次に本発明の実施例の説明の前に実施例及び比較例で評価試料とする電子写真用感光体ドラムの製造方法について述べる。尚、以下に記す部や%は重量基準である。
【0087】
[電子写真感光体用基体の作成]
抽伸加工によって作成した外径約30.5mm、長さ340mmのアルミニウム製円筒体の表面を切削加工し、外径30mm、内径28.5mm、長さ340mmのアルミニウム製基体を30本用意した。これにNo.1からNo.30までの番号を付けた。このアルミニウム製基体を洗浄して切削油を除去した。
次に下記塑性の下引き層塗工液を調整し、上記電子写真感光体用素管に浸漬塗工を行った後、下端の未塗膜を特許文献24に示された方法で除去し、120℃で20分間乾燥し、厚さ3.0μmの下引き層を形成した。
【0088】
〔下引き層塗工液〕
アルキッド樹脂(ベッコゾール 1307−60−EL,
大日本インキ化学工業製) 6部
メラミン樹脂(スーパーベッカミン G−821−60,
大日本インキ化学工業製) 4部
酸化チタン 40部
メチルエチルケトン 200部
【0089】
次に、ビーズミリング分散により顔料の平均粒径が0.2μmになるように調製した下記組成の電荷発生層用塗工液を浸漬塗工装置に入れ、浸漬塗布した後、特許文献24に示された方法で下端の塗膜を除去した。続いて、80℃で20分間乾燥し、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0090】
[電荷発生層用塗工液]
構造式1に示す電荷発生材料 15部
ポリビニルブチラール 10部
メチルエチルケトン 600部
【0091】
[構造式1]
【化1】

【0092】
続いて、下記組成の電荷輸送層塗工液を前記電荷発生層上に塗布し、特許文献24に示された方法で下端の塗膜を除去した後、130℃で20分間乾燥して膜厚25μmの電荷輸送層を形成し、電子写真感光体を作製した。
これを実施例1の電子写真感光体とする。
【0093】
[電荷輸送層塗工液]
Zタイプのポリカーボネート樹脂 10部
構造式2の電荷輸送材料 8部
テトラヒドロフラン 80部
【0094】
[構造式2]
【化2】

【0095】
ここで、電荷輸送層塗工後に、電子写真感光体下端に付着した電荷輸送層塗工液は、特許文献24に示された方法で除去した。しかし、このとき、No.1、No.11、及びNo.21の3本は下端の一部に僅かに塗膜拭き残りが有るようにした。このようにしてNo.1からNo.30までの30本の電子写真感光体の製造を行なった。
【0096】
No.1、No.11、及びNo.21の3本の下端の電荷輸送層拭き残りの厚さは光干渉膜厚計で測定したところ、No.1は最大3μm、No.11は最大5μm、No.21は最大6μmであった。
この30本の電子写真感光体を本発明に示す方法で評価した。以下それを説明する。
【0097】
(実施例1)
作成した30本の電子写真感光体を、図3に示す装置を使用して、目視観察を行った。実施例1では図3の紫外LED22として、OptoSupply社製の紫外LEDであるOSSV5111Aを1個使用した。この紫外LEDの発光ピーク波長は約400nmであり、電源には単三乾電池4本を直列に接続して、電流制限抵抗を入れて紫外LEDに流れる電流値を20mAとした。
その結果、No.1、No.11,No.21の3本の電子写真感光体から下端部に電荷輸送層拭き残りがあることを検出できた。
【0098】
(実施例2)
図9に示すセンサーヘッドの材料として紫外LEDにはOptoSupply社製のOSSV5111Aを2個、受光素子には浜松ホトニクス株式会社製SiフォトダイオードS7686を2個、リニアフレネルレンズには幅1cm、長さ2cmに切断した有機光学株式会社製L426(焦点距離7mm)を、光学フィルターには富士フイルム社製光学フィルターSC−50を使用してセンサーヘッドを作成した。尚、SC−50フィルターのJIS B−7133で定義する透過限界波長は約500nmである。また、この紫外LEDの発光ピーク波長は約400nmであった。また、紫外LEDの電力消費量(Power Dissipation)は150mWであった。
ここで、紫外LEDは直列に接続し、直流24Vの定電流源を使用して20mAの電流を流して発光させた。
【0099】
このセンサーヘッドを図9に示す検査装置のセンサーヘッド32とし電子写真感光体下端部の塗膜除去部位の検査を行なった。このとき、センサーヘッド32の先端と検査対象である電子写真感光体の下端部の間隔は約5mmに設定した。
そして、電子写真感光体は1回/秒の速度で回転させた。また、2個のSiフォトダイオードからの信号はそれぞれNPNトランジスタである2SC1815で増幅した。この増幅した2つの信号を米国Atmel社製のワンチップマイコンATmega8のアナログ信号入力ピンに供給し、それぞれ90回/秒の速度で90回のA/D変換を行なって0〜1023の数値に変換し、その最小値を求めた。ここで、電荷輸送層塗工液固化物拭き残りが有ると、A/D変換値が小さくなる。
【0100】
この装置を使用してNo.1からNo.30までの30本の電子写真感光体の下端部の検査を行なった。その結果、No.1の電子写真感光体検査時のA/D変換結果は173、No.11の電子写真感光体検査時のA/D変換結果は116、No.21の電子写真感光体検査時のA/D変換結果は84であった。それ以外の電子写真感光体検査時のA/D変換結果はすべて780〜880の範囲内であった。従って、本発明によって、正確に下端部の電荷輸送層拭き残りを検出していることが検証できた。
【0101】
(実施例3)
図9に示すセンサーヘッドの材料として紫外LEDにはSANDER ELECTRONICS社製のSDL−5N3CUV−Aを2個、受光素子には浜松ホトニクス株式会社製SiフォトダイオードS7686を2個、リニアフレネルレンズには幅1cm、長さ2cmに切断した有機光学株式会社製L426(焦点距離7mm)、光学フィルターには富士フイルム社製光学フィルターSC−50を使用してセンサーヘッドを作成した。また、この紫外LEDの発光ピーク波長は約400nm、紫外LEDの電力消費量(Power
Dissipation)は150mWであった。
【0102】
このセンサーヘッドを図9に示す検査装置のセンサーヘッド32とし電子写真感光体の下端部塗膜除去部位の検査を行なった。
ここで、電子写真感光体は2回/秒の速度で回転させた。また、2個のSiフォトダイオードからの信号はそれぞれ新日本無線製のオペレーショナルアンプNJM2904Dで増幅し、この増幅した2つの信号を米国Atmel社製のワンチップマイコンATmega8のアナログ信号入力ピンに供給し、それぞれ90回/秒の速度で90回のA/D変換を行なって0〜1023の数値に変換し、その最小値を求めた。
ここで、電荷輸送層塗工液固化物拭き残りがあるとA/D変換値が小さくなる。
この装置を使用してNo.1からNo.30までの30本の電子写真感光体の下端部の検査を行なった。その結果、No.1の電子写真感光体検査時のA/D変換結果は143、No.11の電子写真感光体検査時のA/D変換結果は107、No.21の電子写真感光体検査
時のA/D変換結果は73であった。それ以外の電子写真感光体検査時のA/D変換結果はすべて750〜890の範囲内であった。従って、本発明によって、正確に下端部の電荷輸送層拭き残りを検出していることが検証できた。
【0103】
(比較例)
キーエンス社製レーザ式変位センサーLV−H42型S−31を用い、No.1からNo.30までの30本の電子写真感光体の下端表面の検査を行なった。このLV−H42は、扇型に波長650nmのレーザ光を照射し、対象物に当って反射してくる光を測光して変位を求めている。従って、LV−H42型では投光の波長と受光の波長とは同じであり、本発明による方法とは測定原理が異なっている。このキーエンス社製レーザ式変位センサーではNo.2、No.7とNo.21の電子写真感光体の下端に電荷輸送層塗工液固化物拭き残りが存在しているこという結果が出た。従って、No.1とNo.11の電子写真感光体の電荷輸送層拭き残りの検出が出来ておらず、正確に検出していないと判断した。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】電子写真感光体と帯電ローラーからなる帯電機構を説明する構成図。
【図2】電子写真感光体の端部塗拭き残りがローラー帯電に影響する機構を説明する為の図。
【図3】電子写真感光体の端部の検査を行なう構成図。
【図4】電子写真感光体の端部の検査を行なう別の構成図。
【図5】請求項4に示す紫外光の照射パターンを説明する為の図。
【図6】請求項4の効果を説明する為の図。
【図7】請求項5を実施する装置の構成図の例。
【図8】請求項6を実施する装置の構成図の例。
【図9】請求項8、9を実施する装置の構成図の例。
【符号の説明】
【0105】
1 電子写真感光体
2 塗工時の上端側の導電性基体露出部
3 電子写真感光層が形成された部分
4 塗工時の下側の導電性基体露出部
5 帯電ロール
6a、6b 帯電ロールの両端のスペーサー
7 帯電ロールのスペーサーが無い部分の表面
【0106】
10 電子写真感光体の導電性基体
11 電子写真感光体の感光層
13 塗工時の下側の導電性基体に塗膜が残っている部分
21 電子写真感光体
22 紫外光源
23 電子写真感光体21の浸漬塗工時上側の非塗工部
24 浸漬塗工時の下側で浸漬塗工後に塗膜を溶剤とワイパーで除去した部分
25 本発明に示す紫外光光源と受光素子からなるセンサーヘッド
26 センサーヘッド25と演算処理機構27を接続するケーブル
27 紫外光光源への電力源と受光素子からの信号を増幅し閾値を比較する演算処理機構
【0107】
31 電子写真感光体の浸漬塗工時の下側で浸漬塗工後に塗膜を溶剤とワイパーで除去した部分
32 紫外LED
33 リニアフレネルレンズ
34 紫外光照射面
35 蛍光を測光する受光素子
36 紫外LEDや受光素子を取り付けた台
37 光ファイバーを束ねたもの
38 光ファイバーが並べられたもの
39 紫外光の照射口
40 光学フィルター



【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真感光体を停止あるいは5回/秒以下の回転速度で回転させながら、電子写真感光体の端部外面に波長250nm〜420nmの紫外光あるいは近紫外光を照射し、該電子写真感光体の端部外面に残存する電荷輸送層塗工液の固化物が、該紫外光あるいは近紫外光を受けて発生する蛍光を測光することにより、電子写真感光体の端部外面に存在する電荷輸送層塗工液の固化物の付着状態を検査することを特徴とする、電子写真感光体の検査方法。
【請求項2】
前記蛍光をセンサーで測光することにより、電子写真感光体の端部外面に存在する電荷輸送層塗工液の固化物の付着量を測定することを特徴とする、請求項1に記載の電子写真感光体の検査方法。
【請求項3】
前記紫外光あるいは近紫外光を照射する光源が紫外LEDであることを特徴とする、請求項1又は2に記載された電子写真感光体の検査方法。
【請求項4】
前記紫外光あるいは近紫外光の照射面における光の形状が、縦横比2:1〜6:1の楕円形であるか、あるいは縦横比2:1〜6:1の複数の楕円形がその長軸の端部で重なり合った形状であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載された電子写真感光体の検査方法。
【請求項5】
前記紫外光あるいは近紫外光を、焦点距離が1mm以上、10mm以下のシンドリカルレンズ、あるいは、リニアフレネルレンズを通してから検査対象面に照射することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載された電子写真感光体の検査方法。
【請求項6】
複数の光ファイバーを並べて縦横比2:1〜10:1の矩形状、あるいは、円形状の両端が重なった形状で前記紫外光あるいは近紫外光を照射したことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一に記載された電子写真感光体の検査方法。
【請求項7】
前記センサーに受光素子を有し、該受光素子の分光感度のピークが460nm以上であることを特徴とする、請求項2〜6のいずれか一に記載された電子写真感光体の検査方法。
【請求項8】
前記受光素子の受光面に500nm以下の光を遮光する光学フィルターを設けることを特徴とする、請求項7に記載の電子写真感光体の検査方法。
【請求項9】
前記受光素子の受光面にJIS B−7133 写真用ガラスフィルター(シャープカット)で定義される透過限界波長の値が440nm以上、580nm以下である光学フィルターを設けることを特徴とする、請求項7又は8に記載された電子写真感光体の検査方法。
【請求項10】
前記紫外光あるいは近紫外光の正反射光が前記受光素子に入射することを特徴とする、請求項7〜9のいずれか一に記載された電子写真感光体の検査方法。
【請求項11】
前記1〜10のいずれか一に記載の電子写真感光体の検査方法により、電子写真感光体端部外面に存在する電荷輸送層塗工液あるいはその固化物の付着量を測定する手段を備えたことを特徴とする、電子写真感光体の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−20219(P2008−20219A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−189958(P2006−189958)
【出願日】平成18年7月11日(2006.7.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】