説明

電気光学装置の製造方法、電気光学装置、投射型表示装置および電子機器

【課題】画素間領域に設けた絶縁膜によって画素電極に起因する凹凸を緩和する場合でも、画素電極の厚さを適正に制御することができる電気光学装置の製造方法、かかる方法により製造された電気光学装置、当該電気光学装置を備えた投射型表示装置、および電子機器を提供すること。
【解決手段】液晶装置の素子基板に画素電極9aを形成する際、画素間領域10fに沿って延在する格子状の凸部47fを備えた第1絶縁膜47を形成した後、第1絶縁膜47にコンタクトホール47aを形成し、その後、導電膜9および第2絶縁膜49を順次積層する。次に、研磨工程では、凸部47fが露出するまで研磨し、第2絶縁膜49および導電膜9を凸部47f(画素間領域10f)により分割する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素子基板に複数の画素電極が形成された液晶装置の製造方法、かかる方法により製造された液晶装置、および当該液晶装置を備えた投射型表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶装置等の電気光学装置では、素子基板上に複数の画素電極がマトリクス状に配置されている(特許文献1参照)。かかる電気光学装置のうち、例えば、液晶装置において、図8(a)に示すように、素子基板10の表面に画素電極9aに起因する凹凸が発生していると、ポリイミド膜等の有機材料系の配向膜16に対するラビング処理を均一に行えない等の問題点がある。また、シリコン酸化膜等の斜方蒸着により、無機材料系の配向膜16を形成する際、画素電極9aに起因する凹凸が発生していると、隣り合う画素電極9aにより挟まれた画素間領域10fに対して斜方蒸着を好適に行うことができず、配向膜16の配向能力がばらつく等の問題点がある。
【0003】
それに対して、図8(b)に示すように、隣り合う画素電極9aにより挟まれた画素間領域10fを絶縁膜90で埋めておけば、配向膜16を平坦面上に形成することができ、上記の問題点を解消することができる。かかる平坦化は一般的に、図8(c)に示すように、画素電極9aの表面側に絶縁膜90を形成した後、図8(d)に示すように、画素電極9aの表面が露出するまで研磨し、絶縁膜90を画素間領域10fに残すことにより実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−96966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図8(b)〜(d)を参照して説明した方法では、研磨の際、画素電極9aの表面が研磨されることを避けることができないため、画素電極9aの厚さが変動するという問題点がある。その結果、透過型の液晶装置においては、画素電極9aを構成する透光性導電膜の分光特性が変動し、画像の品位が低下するという問題が発生する。また、反射型の液晶装置で形成される画像は、液晶層の厚さによって影響を受けやすいため、画素電極9aを構成する反射性導電膜の厚さが変動した結果、液晶層の厚さが変動すると、画像の品位が低下するという問題が発生する。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、画素間領域に設けた絶縁膜によって画素電極に起因する凹凸を緩和する場合でも、画素電極の厚さを適正に制御することができる電気光学装置の製造方法、電気光学装置、投射型表示装置および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る電気光学装置の製造方法は、基板の一方面側に、少なくとも格子状の凸部を備えた第1絶縁膜を形成する第1絶縁膜形成工程と、該第1絶縁膜を貫通するコンタクトホールを形成するコンタクトホール形成工程と、前記第1絶縁膜に対して前記基板と反対側に画素電極を構成する導電膜を成膜する導電膜成膜工程と、前記導電膜に対して前記第1絶縁膜と反対側に第2絶縁膜を成膜する第2絶縁膜成膜工程と、前記導電膜および前記第2絶縁膜を前記凸部が露出するまで研磨して前記導電膜を前記凸部により分割して前記画素電極を形成する研磨工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明では、画素間領域に沿って格子状に延在する凸部を備えた第1絶縁膜を形成した後、第1絶縁膜にコンタクトホールを形成し、その後、導電膜および第2絶縁膜を順次積層する。次に、研磨工程では、凸部が露出するまで研磨し、第2絶縁膜および導電膜を凸部(画素間領域)により分割する。その結果、分割された導電膜によって画素電極が形成され、かかる画素電極の間(画素間領域)には第1絶縁膜の凸部が残る。従って、画素電極に起因する凹凸は、第1絶縁膜の凸部によって緩和される。また、本発明によれば、コンタクトホール内では、画素電極の表面に第2絶縁膜が残るので、コンタクトホールに起因する凹凸は、コンタクトホール内の第2絶縁膜によって緩和される。さらに、本発明では、導電膜の表面に第2絶縁膜を形成しておくので、導電膜の表面は研磨されない。従って、画素電極の厚さは、研磨によって変動せず、導電膜を成膜した際の厚さによって制御される。それ故、例えば、透過型の液晶装置においては、画素電極を構成する透光性導電膜の分光特性が変動しないので、かかる分光特性の変動に起因する画像の品位低下を防止することができる。また、反射型の液晶装置においては、画素電極を構成する反射性導電膜の厚さが変動しないので、液晶層の厚さ変動に起因する画像の品位低下を防止することができる。
【0009】
本発明に係る方法により製造された電気光学装置は、基板と、該基板の一方面側に設けられた複数の画素電極と、前記複数の画素電極と前記基板との間に設けられ、前記複数の画素電極のうち、隣り合う画素電極により挟まれた画素間領域内で延在する凸部、およびコンタクトホールが形成された第1絶縁膜と、前記コンタクトホール内において前記画素電極に対して前記基板とは反対側で重なる第2絶縁膜と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る液晶装置の製造方法において、前記研磨工程の後、前記第2絶縁膜と前記凸部との間で露出する前記導電膜をエッチングする導電膜エッチング工程と、前記凸部と前記導電膜とが平坦な面を形成するまで第1絶縁膜および前記第2絶縁膜をエッチングする絶縁膜エッチング工程と、を行うことが好ましい。かかる方法で製造した液晶装置では、前記凸部の高さ寸法は、前記画素電極の厚さ寸法と同一である。それ故、画素電極の間(画素間領域)は第1絶縁膜の凸部によって完全に平坦化されることになる。
【0011】
本発明において、前記第2絶縁膜は、リンおよびボロンのうちの少なくとも一方がドープされたシリケートガラスであることが好ましい。かかるシリケートガラスは研磨速度が速いので、第2絶縁膜の成膜厚さに対するマージンが大であるという利点がある。
【0012】
本発明を適用した液晶装置は、直視型表示装置や投射型表示装置等、各種の電子機器に用いることができる。かかる電子機器のうち、投射型表示装置は、本発明を適用した電気光学装置に照射される照明光を出射する光源部と、前記液晶装置により変調された光を投射する投射光学系と、を有している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用した液晶装置(液晶装置)の電気的構成を示すブロック図である。
【図2】本発明を適用した液晶装置に用いた液晶パネルの説明図である。
【図3】本発明を適用した液晶装置の画素の説明図である。
【図4】本発明を適用した液晶装置における画素電極周辺の断面構成を拡大して示す説明図である。
【図5】本発明を適用した液晶装置の製造工程の要部を示す説明図である。
【図6】本発明を適用した液晶装置の製造工程の要部を示す説明図である。
【図7】本発明を適用した液晶装置を用いた投射型表示装置の概略構成図である。
【図8】従来の問題点を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の説明では、各種の電気光学装置のうち、液晶装置およびその製造方法に本発明を適用した場合を中心に説明する。また、以下の説明で参照する図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。また、図8を参照して説明した構成との対応が分かりやすいように、対応する部分には同一の符号を付して説明する。また、画素トランジスターを流れる電流の方向が反転する場合、ソースとドレインとが入れ替わるが、本説明では、画素電極が接続されている側(画素側ソースドレイン領域)をドレインとし、データ線が接続されている側(データ線側ソースドレイン領域)をソースとする。また、素子基板に形成される層を説明する際、上層側あるいは表面側とは素子基板の基板本体が位置する側とは反対側(対向基板が位置する側)を意味し、下層側とは素子基板の基板本体が位置する側を意味する。
【0015】
[液晶装置の説明]
(全体構成)
図1は、本発明を適用した液晶装置の電気的構成を示すブロック図である。なお、図1は、あくまで電気的な構成を示すブロック図であるため、容量線等が延在している方向等、レイアウトについては模式的に示してある。
【0016】
図1において、本形態の液晶装置100は、TN(Twisted Nematic)モードやVA(Vertical Alignment)モードの液晶パネル100pを有しており、液晶パネル100pは、その中央領域に複数の画素100aがマトリクス状に配列された画像表示領域10a(画素領域)を備えている。液晶パネル100pにおいて、後述する素子基板10(図2等を参照)では、画像表示領域10aの内側で複数本のデータ線6aおよび複数本の走査線3aが縦横に延びており、それらの交点に対応する位置に画素100aが構成されている。複数の画素100aの各々には、電界効果型トランジスターからなる画素トランジスター30、および後述する画素電極9aが形成されている。画素トランジスター30のソースにはデータ線6aが電気的に接続され、画素トランジスター30のゲートには走査線3aが電気的に接続され、画素トランジスター30のドレインには、画素電極9aが電気的に接続されている。
【0017】
素子基板10において、画像表示領域10aより外周側には走査線駆動回路104やデータ線駆動回路101が設けられている。データ線駆動回路101は各データ線6aに電気的に接続しており、画像処理回路から供給される画像信号を各データ線6aに順次供給する。走査線駆動回路104は、各走査線3aに電気的に接続しており、走査信号を各走査線3aに順次供給する。
【0018】
各画素100aにおいて、画素電極9aは、後述する対向基板20(図2等を参照)に形成された共通電極と液晶層を介して対向し、液晶容量50aを構成している。また、各画素100aには、液晶容量50aで保持される画像信号の変動を防ぐために、液晶容量50aと並列に蓄積容量55が付加されている。本形態では、蓄積容量55を構成するために、複数の画素100aに跨る第1電極層5aが容量電極層として形成されている。本形態において、第1電極層5aは、共通電位Vcomが印加された共通電位線5cに導通している。
【0019】
(液晶パネル100pの構成)
図2は、本発明を適用した液晶装置100に用いた液晶パネル100pの説明図であり、図2(a)、(b)は各々、液晶パネル100pを各構成要素と共に対向基板の側から見た平面図、およびそのH−H′断面図である。
【0020】
図2(a)、(b)に示すように、液晶パネル100pでは、素子基板10と対向基板20とが所定の隙間を介してシール材107によって貼り合わされており、シール材107は対向基板20の外縁に沿うように枠状に設けられている。シール材107は、光硬化樹脂や熱硬化性樹脂等からなる接着剤であり、両基板間の距離を所定値とするためのグラスファイバー、あるいはガラスビーズ等のギャップ材が配合されている。
【0021】
かかる構成の液晶パネル100pにおいて、素子基板10および対向基板20はいずれも四角形であり、液晶パネル100pの略中央には、図1を参照して説明した画像表示領域10aが四角形の領域として設けられている。かかる形状に対応して、シール材107も略四角形に設けられ、シール材107の内周縁と画像表示領域10aの外周縁との間には、略四角形の周辺領域10bが額縁状に設けられている。素子基板10において、画像表示領域10aの外側では、素子基板10の一辺に沿ってデータ線駆動回路101および複数の端子102が形成されており、この一辺に隣接する他の辺に沿って走査線駆動回路104が形成されている。なお、端子102には、フレキシブル配線基板(図示せず)が接続されており、素子基板10には、フレキシブル配線基板を介して各種電位や各種信号が入力される。
【0022】
詳しくは後述するが、素子基板10の一方面10sおよび他方面10tのうち、一方面10s側では、画像表示領域10aに、図1を参照して説明した画素トランジスター30、および画素トランジスター30に電気的に接続する画素電極9aがマトリクス状に形成されており、かかる画素電極9aの上層側には配向膜16が形成されている。
【0023】
また、素子基板10の一方面10s側において、周辺領域10bには、画素電極9aと同時形成されたダミー画素電極9b(図2(b)参照)が形成されている。ダミー画素電極9bについては、ダミーの画素トランジスターと電気的に接続された構成、ダミーの画素トランジスターが設けられずに配線に直接、電気的に接続された構成、あるいは電位が印加されていないフロート状態にある構成が採用される。かかるダミー画素電極9bは、素子基板10において配向膜16が形成される面を研磨により平坦化する際、画像表示領域10aと周辺領域10bとの高さ位置を圧縮し、配向膜16が形成される面を平坦面にするのに寄与する。また、ダミー画素電極9bを所定の電位に設定すれば、画像表示領域10aの外周側端部での液晶分子の配向の乱れを防止することができる。
【0024】
対向基板20において素子基板10と対向する一方面側には共通電極21が形成されており、共通電極21の上層には配向膜26が形成されている。共通電極21は、対向基板20の略全面あるいは複数の帯状電極として複数の画素100aに跨って形成されている。また、対向基板20において素子基板10と対向する一方面側には、共通電極21の下層側に遮光層108が形成されている。本形態において、遮光層108は、画像表示領域10aの外周縁に沿って延在する額縁状に形成されており、見切りとして機能する。ここで、遮光層108の外周縁は、シール材107の内周縁との間に隙間を隔てた位置にあり、遮光層108とシール材107とは重なっていない。なお、対向基板20において、遮光層108は、隣り合う画素電極9aにより挟まれた画素間領域と重なる領域等にブラックマトリクス部として形成されることもある。
【0025】
このように構成した液晶パネル100pにおいて、素子基板10には、シール材107より外側において対向基板20の角部分と重なる領域に、素子基板10と対向基板20との間で電気的導通をとるための基板間導通用電極109が形成されている。かかる基板間導通用電極109には、導電粒子を含んだ基板間導通材109aが配置されており、対向基板20の共通電極21は、基板間導通材109aおよび基板間導通用電極109を介して、素子基板10側に電気的に接続されている。このため、共通電極21は、素子基板10の側から共通電位Vcomが印加されている。シール材107は、略同一の幅寸法をもって対向基板20の外周縁に沿って設けられている。このため、シール材107は、略四角形である。但し、シール材107は、対向基板20の角部分と重なる領域では基板間導通用電極109を避けて内側を通るように設けられており、シール材107の角部分は略円弧状である。
【0026】
かかる構成の液晶装置100において、画素電極9aおよび共通電極21をITOやIZO等の透光性の導電膜により形成すると、透過型の液晶装置を構成することができる。これに対して、共通電極21をITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)等の透光性導電膜により形成し、画素電極9aをアルミニウム等の反射性導電膜により形成すると、反射型の液晶装置を構成することができる。液晶装置100が反射型である場合、対向基板20の側から入射した光が素子基板10の側の基板で反射して出射される間に変調されて画像を表示する。液晶装置100が透過型である場合、素子基板10および対向基板20のうち、一方側の基板から入射した光が他方側の基板を透過して出射される間に変調されて画像を表示する。
【0027】
液晶装置100は、モバイルコンピューター、携帯電話機等といった電子機器のカラー表示装置として用いることができ、この場合、対向基板20には、カラーフィルター(図示せず)や保護膜が形成される。また、液晶装置100では、使用する液晶層50の種類や、ノーマリホワイトモード/ノーマリブラックモードの別に応じて、位相差フィルムや偏光板等が液晶パネル100pに対して所定の向きに配置される。さらに、液晶装置100は、後述する投射型表示装置(液晶プロジェクター)において、RGB用のライトバルブとして用いることができる。この場合、RGB用の各液晶装置100の各々には、RGB色分解用のダイクロイックミラーを介して分解された各色の光が投射光として各々入射されることになるので、カラーフィルターは形成されない。
【0028】
本形態において、液晶装置100が、後述する投射型表示装置においてRGB用のライトバルブとして用いられる透過型の液晶装置であって、対向基板20から入射した光が素子基板10を透過して出射される場合を中心に説明する。また、本形態において、液晶装置100は、液晶層50として、誘電異方性が負のネマチック液晶化合物を用いたVAモードの液晶パネル100pを備えている場合を中心に説明する。
【0029】
(画素の具体的構成)
図3は、本発明を適用した液晶装置100の画素の説明図であり、図3(a)、(b)は各々、素子基板10において隣り合う画素の平面図、および図3(a)のF−F′線に相当する位置で液晶装置100を切断したときの断面図である。なお、図3(a)では、各領域を以下の線で表してある。
走査線3a=太い実線
半導体層1a=細くて短い点線
データ線6aおよびドレイン電極6b=一点鎖線
第1電極層5aおよび中継電極5b=細くて長い破線
第2電極層7a=二点鎖線
画素電極9a=太くて短い破線
【0030】
図3(a)に示すように、素子基板10には、複数の画素100aの各々に矩形状の画素電極9aが形成されており、隣り合う画素電極9aにより挟まれた縦横の画素間領域10fと重なる領域に沿ってデータ線6aおよび走査線3aが形成されている。より具体的には、画素間領域10fのうち、走査線3aに沿って延在する第1画素間領域10gと重なる領域に沿って走査線3aが延在し、データ線6aに沿って延在する第2画素間領域10hと重なる領域に沿ってデータ線6aが延在している。データ線6aおよび走査線3aは各々、直線的に延びており、データ線6aと走査線3aとが交差する領域に画素トランジスター30が形成されている。素子基板10には、データ線6aと重なるように、図1を参照して説明した第1電極層5a(容量電極層)が形成されている。
【0031】
図3(a)、(b)に示すように、素子基板10は、石英基板やガラス基板等の透光性の基板本体10w、基板本体10wの液晶層50側の表面(一方面10s側)に形成された画素電極9a、画素スイッチング用の画素トランジスター30、および配向膜16を主体として構成されている。対向基板20は、石英基板やガラス基板等の透光性の基板本体20w、その液晶層50側の表面(素子基板10と対向する一方面側)に形成された共通電極21、および配向膜26を主体として構成されている。
【0032】
素子基板10において、基板本体10wの一方面側には、導電性のポリシリコン膜、金属シリサイド膜、金属膜あるいは金属膜化合物等の導電膜からなる走査線3aが形成されている。本形態において、走査線3aは、タングステンシリサイド(WSi)等の遮光性導電膜から構成されており、画素トランジスター30に対する遮光膜としても機能している。本形態において、走査線3aは、厚さが200nm程度のタングステンシリサイドからなる。なお、基板本体10wと走査線3aとの間には、シリコン酸化膜等の絶縁膜が設けられることもある。
【0033】
基板本体10wの一方面10s側において、走査線3aの上層側には、シリコン酸化膜等の絶縁膜12が形成されており、かかる絶縁膜12の表面に、半導体層1aを備えた画素トランジスター30が形成されている。本形態において、絶縁膜12は、例えば、テトラエトキシシラン(Si(OC254)を用いた減圧CVD法やテトラエトキシシランと酸素ガスとを用いたプラズマCVD法等により形成したシリコン酸化膜と、高温CVD法により形成したシリコン酸化膜(HTO(High Temperature Oxide)膜)との2層構造を有している。
【0034】
画素トランジスター30は、走査線3aとデータ線6aとの交差領域において走査線3aの延在方向に長辺方向を向けた半導体層1aと、半導体層1aの長さ方向と直交する方向に延在して半導体層1aの長さ方向の中央部分に重なるゲート電極3cとを備えている。また、画素トランジスター30は、半導体層1aとゲート電極3cとの間に透光性のゲート絶縁層2を有している。半導体層1aは、ゲート電極3cに対してゲート絶縁層2を介して対向するチャネル領域1gを備えているとともに、チャネル領域1gの両側にソース領域1bおよびドレイン領域1cを備えている。本形態において、画素トランジスター30は、LDD構造を有している。従って、ソース領域1bおよびドレイン領域1cは各々、チャネル領域1gの両側に低濃度領域1b1、1c1を備え、低濃度領域1b1、1c1に対してチャネル領域1gとは反対側で隣接する領域に高濃度領域1b2、1c2を備えている。
【0035】
半導体層1aは、多結晶シリコン膜等によって構成されている。ゲート絶縁層2は、半導体層1aを熱酸化したシリコン酸化膜からなる第1ゲート絶縁層2aと、CVD法等により形成されたシリコン酸化膜等からなる第2ゲート絶縁層2bとの2層構造からなる。ゲート電極3cは、導電性のポリシリコン膜、金属シリサイド膜、金属膜あるいは金属膜化合物等の導電膜からなり、半導体層1aの両側において、第2ゲート絶縁層2bおよび絶縁膜12を貫通するコンタクトホール12a、12bを介して走査線3aに導通している。本形態において、ゲート電極3cは、膜厚が100nm程度の導電性のポリシリコン膜と、膜厚が100nm程度のタングステンシリサイド膜との2層構造を有している。
【0036】
なお、本形態では、液晶装置100を透過した後の光が他の部材で反射した際、かかる反射光が半導体層1aに入射して画素トランジスター30で光電流に起因する誤動作が発生することを防止することを目的に、走査線3aを遮光膜により形成してある。但し、走査線をゲート絶縁層2の上層に形成し、その一部をゲート電極3cとしてもよい。この場合、図3に示す走査線3aは、遮光のみを目的として形成されることになる。
【0037】
ゲート電極3cの上層側にはシリコン酸化膜等からなる透光性の層間絶縁膜41が形成されており、層間絶縁膜41の上層には、データ線6aおよびドレイン電極6bが同一の導電膜によって形成されている。層間絶縁膜41は、例えば、シランガス(SH4)と亜酸化窒素(N2O)とを用いたプラズマCVD法等により形成したシリコン酸化膜等からなる。
【0038】
データ線6aおよびドレイン電極6bは、導電性のポリシリコン膜、金属シリサイド膜、金属膜あるいは金属膜化合物等の導電膜からなる。本形態において、データ線6aおよびドレイン電極6bは、膜厚が20nmのチタン(Ti)膜、膜厚が50nmの窒化チタン(TiN)膜、膜厚が350nmのアルミニウム(Al)膜、膜厚が150nmのTiN膜をこの順に積層してなる4層構造を有している。データ線6aは、層間絶縁膜41および第2ゲート絶縁層2bを貫通するコンタクトホール41aを介してソース領域1b(データ線側ソースドレイン領域)に導通している。ドレイン電極6bは、第1画素間領域10gと重なる領域において、半導体層1aのドレイン領域1c(画素電極側ソースドレイン領域)と一部が重なるように形成されており、層間絶縁膜41および第2ゲート絶縁層2bを貫通するコンタクトホール41bを介してドレイン領域1cに導通している。
【0039】
データ線6aおよびドレイン電極6bの上層側にはシリコン酸化膜等からなる透光性の層間絶縁膜42が形成されている。層間絶縁膜42は、例えば、テトラエトキシシランと酸素ガスとを用いたプラズマCVD法等により形成したシリコン酸化膜等からなる。
【0040】
層間絶縁膜42の上層側には、第1電極層5aおよび中継電極5bが同一の導電膜によって形成されている。第1電極層5aおよび中継電極5bは、導電性のポリシリコン膜、金属シリサイド膜、金属膜あるいは金属膜化合物等の導電膜からなる。本形態において、第1電極層5aおよび中継電極5bは、膜厚が200nm程度のAl膜と、膜厚が100nm程度のTiN膜との2層構造を有している。第1電極層5aは、データ線6aと同様、第2画素間領域10hと重なる領域に沿って延在している。中継電極5bは、第1画素間領域10gと重なる領域において、ドレイン電極6bと一部が重なるように形成されており、層間絶縁膜42を貫通するコンタクトホール42aを介してドレイン電極6bに導通している。
【0041】
第1電極層5aおよび中継電極5bの上層側にはシリコン酸化膜等の層間絶縁膜44がエッチングストッパー層として形成されており、かかる層間絶縁膜44には、第1電極層5aと重なる領域に開口部44bが形成されている。本形態において、層間絶縁膜44は、テトラエトキシシランと酸素ガスとを用いたプラズマCVD法等により形成したシリコン酸化膜等からなる。ここで、開口部44bは、図3(a)では図示を省略するが、データ線6aと走査線3aとの交差領域を起点として第1画素間領域10gと重なる領域に沿って延在する部分と、データ線6aと走査線3aとの交差領域を起点として第2画素間領域10hと重なる領域に沿って延在する部分とを備えたL字形状に形成されている。
【0042】
層間絶縁膜44の上層側には透光性の誘電体層40が形成されており、かかる誘電体層40の上層側には第2電極層7aが形成されている。第2電極層7aは、導電性のポリシリコン膜、金属シリサイド膜、金属膜あるいは金属膜化合物等の導電膜からなる。本形態において、第2電極層7aは、膜厚が100nm程度のTiN膜からなる。誘電体層40としては、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜等のシリコン化合物を用いることができる他、アルミニウム酸化膜、チタン酸化膜、タンタル酸化膜、ニオブ酸化膜、ハフニウム酸化膜、ランタン酸化膜、ジルコニウム酸化膜等の高誘電率の誘電体層を用いることができる。第2電極層7aは、データ線6aと走査線3aとの交差領域を起点として第1画素間領域10gと重なる領域に沿って延在する部分と、データ線6aと走査線3aとの交差領域を起点として第2画素間領域10hと重なる領域に沿って延在する部分とを備えたL字形状に形成されている。従って、第2電極層7aのうち、第2画素間領域10hと重なる領域に沿って延在する部分は、層間絶縁膜44の開口部44bにおいて、誘電体層40を介して第1電極層5aに重なっている。このようにして、本形態では、第1電極層5a、誘電体層40、および第2電極層7aは、第1画素間領域10gと重なる領域に蓄積容量55を構成している。
【0043】
また、第2電極層7aにおいて、第1画素間領域10gと重なる領域に沿って延在する部分は、中継電極5bと部分的に重なっており、誘電体層40および層間絶縁膜44を貫通するコンタクトホール44aを介して中継電極5bに導通している。
【0044】
第2電極層7aの上層側には透光性の層間絶縁膜45が形成されており、本形態では、層間絶縁膜45の上層側には、図4〜図6を参照して後述する第1絶縁膜47が形成されている。層間絶縁膜45は、例えば、シランガスと亜酸化窒素(N2O)とを用いたプラズマCVD法等により形成したシリコン酸化膜等からなる。
【0045】
第1絶縁膜47の上層側には、厚さが140nm程度のITO膜等の透光性の導電膜からなる画素電極9aが形成されている。画素電極9aは、データ線6aと走査線3aとの交差領域の近傍で第2電極層7aと部分的に重なっており、第1絶縁膜47および層間絶縁膜45を貫通するコンタクトホール47aを介して第2電極層7aに導通している。また、コンタクトホール47aの内部において、画素電極9aの表面には、図4〜図6を参照して後述する第2絶縁膜49が形成されている。
【0046】
画素電極9aの表面には配向膜16が形成されている。配向膜16は、ポリイミド等の樹脂膜、あるいはシリコン酸化膜等の斜方蒸着膜からなる。本形態において、配向膜16は、SiOX(x<2)、SiO2、TiO2、MgO、Al23、In23、Sb23、Ta25等の斜方蒸着膜からなる無機配向膜(垂直配向膜)である。
【0047】
対向基板20では、石英基板やガラス基板等の透光性の基板本体20wの液晶層50側の表面(素子基板10に対向する側の面)に、ITO膜等の透光性導電膜からなる共通電極21が形成されており、かかる共通電極21を覆うように配向膜26が形成されている。配向膜26は、配向膜16と同様、ポリイミド等の樹脂膜、あるいはシリコン酸化膜等の斜方蒸着膜からなる。本形態において、配向膜26は、SiOX(x<2)、SiO2、TiO2、MgO、Al23、In23、Sb23、Ta25等の斜方蒸着膜からなる無機配向膜(垂直配向膜)である。かかる配向膜16、26は、液晶層50に用いた誘電異方性が負のネマチック液晶化合物を垂直配向させ、液晶パネル100pは、ノーマリブラックのVAモードとして動作する。
【0048】
なお、図1および図2を参照して説明したデータ線駆動回路101および走査線駆動回路104には、nチャネル型の駆動用トランジスターとpチャネル型の駆動用トランジスターとを備えた相補型トランジスター回路等が構成されている。ここで、駆動用トランジスターは、画素トランジスター30の製造工程の一部を利用して形成されたものである。このため、素子基板10においてデータ線駆動回路101および走査線駆動回路104が形成されている領域も、図3(b)に示す断面構成と略同様な断面構成を有している。
【0049】
(画素電極9a周辺の詳細構成)
図4は、本発明を適用した液晶装置100における画素電極9a周辺の断面構成を拡大して示す説明図である。
【0050】
図4に示すように、本形態の液晶装置100においては、第2電極層7aの上層側には透光性の層間絶縁膜45が形成されており、層間絶縁膜45の上層側には、透光性の第1絶縁膜47が形成されている。第1絶縁膜47の上層側には、画素電極9aが形成されており、画素電極9aは、第1絶縁膜47および層間絶縁膜45を貫通するコンタクトホール47aを介して第2電極層7aに導通している。層間絶縁膜45の表面は、化学機械的研磨等の方法で平坦面になっており、かかる平坦面上に第1絶縁膜47が形成されている。また、画素電極9aは、第1絶縁膜47のうち、平坦部分47eの表面に形成されている。より具体的には、第1絶縁膜47は、画素電極9aが位置する部分が凹部47gになっており、かかる凹部47gの底部において、画素電極9aに下層側で重なる部分は平坦部分47eになっている。このため、画素電極9aの表面は平坦面になっている。
【0051】
また、第1絶縁膜47において、凹部47g(平坦部分47e)に挟まれた部分は、幅寸法が0.5μm程度の凸部47fになっている。ここで、凸部47fは、隣り合う画素電極9aにより挟まれた画素間領域10f内で連続的に延在しており、画素電極9aにより挟まれた凹部(画素間領域10f)を埋めている。また、凸部47fの高さ寸法は、画素電極9aの厚さと同一であり、約140nmである。このため、画素電極9aの表面と凸部47fの上端面とは、連続した平坦面を構成している。
【0052】
また、コンタクトホール47aの内部では、画素電極9aの表面側に第2絶縁膜49が形成されており、画素電極9aの表面において、コンタクトホール47aに起因する凹部を埋めている。
【0053】
このように本形態では、画素電極9aは、第1絶縁膜47の平坦部分47eに形成されており、画素電極9aの表面は平坦面である。また、画素電極9aにより挟まれた凹部(画素間領域10f)は、第1絶縁膜47の凸部47fによって埋められ、画素電極9aの表面と凸部47fの上端面とは、連続した平坦面を構成している。さらに、画素電極9aの表面において、コンタクトホール47aに起因する凹凸は、第2絶縁膜49によって緩和されている。従って、本形態では、配向膜16を無機材料から形成する際、連続した平坦面に対して斜方蒸着を行うことになるので、配向膜16を好適に形成することができる。また、配向膜16をポリイミド等の有機材料から形成した際、配向膜16の表面が連続した平坦面になっているので、ラビング処理を適正に行うことができる。それ故、液晶層50を好適に配向させることができる。
【0054】
(液晶装置100の製造方法)
図5および図6は、本発明を適用した液晶装置100の製造工程の要部を示す説明図である。なお、以下に説明する工程は、素子基板10を多数取りできる大型基板の状態で行われるが、以下の説明では、サイズにかかわらず、素子基板10として説明する。
【0055】
本形態の液晶装置100の製造工程のうち、素子基板10を形成する工程では、周知の方法により、図5(a)に示すように、層間絶縁膜45までを形成した後、層間絶縁膜45の表面を研磨し、平坦化する。
【0056】
次に、図5(a)、(b)に示す第1絶縁膜工程において、隣り合う画素電極9aにより挟まれた画素間領域10fに沿って延在する凸部47fを備えた第1絶縁膜47(図4参照)を形成する。より具体的には、図5(a)に示すように、層間絶縁膜45の上層にシリコン酸化膜等の絶縁膜47wを形成した後、画素間領域10fと重なる領域にレジストマスク470を形成する。本形態では、絶縁膜47wを約500nm程度の厚さに形成する。また、本形態では、絶縁膜47wとして、例えば、テトラエトキシシランと酸素ガスとを用いたプラズマCVD法等により形成したノンドープのシリコン酸化膜等を形成する。
【0057】
次に、絶縁膜47wの表面にレジストマスク470を形成した状態で、絶縁膜47wをエッチングした後、レジストマスク470を除去する。その結果、画素間領域10fにより囲まれた領域(画素電極9a)が形成される領域に凹部47gが形成され、その結果として、格子状の凸部47fを備えた第1絶縁膜47が形成される。本形態において、凸部47fの高さ寸法は約400nm程度であり、幅寸法は0.5μm程度である。
【0058】
次に、コンタクトホール形成工程では、第1絶縁膜47の表面にレジストマスク(図示せず)を形成し、この状態で、第1絶縁膜47をエッチングした後、レジストマスクを除去し、図5(c)に示すように、第1絶縁膜47および層間絶縁膜46を貫通するコンタクトホール47aを形成する。
【0059】
次に、図5(d)に示す導電膜成膜工程では、画素電極9aを構成する導電膜9として、ITO膜等の透光性の導電膜9をスパッタ法等により成膜する。その結果、導電膜9は、コンタクトホール47aの底部で第2電極層7aと導通する。導電膜9の厚さは、例えば140nm程度である。
【0060】
次に、図6(a)に示す第2絶縁膜工程では、導電膜9の表面側にシリコン酸化膜等の絶縁膜からなる第2絶縁膜49を成膜する。第2絶縁膜49の厚さは、導電膜9の厚さより大であり、例えば150nm程度である。第2絶縁膜49は、例えば、リンおよびボロンのうちの少なくとも一方がドープされたシリケートガラスであり、かかるシリケートガラスは、常圧CVD法等により形成することができる。かかるシリケートガラスのうち、リンドープトシリケートガラス(PSG膜)を形成する場合の使用ガスは、SiH4、PH3、O3等である。ボロンドープトシリケートガラス(BSG膜)を形成する場合の使用ガスは、SiH4、B26、O3等であり、ボロン・リンドープトシリケートガラス膜(BPSG膜)を形成する場合の使用ガスは、SiH4、B26、PH3、O3等である。
【0061】
次に、図6(b)に示す研磨工程では、第2絶縁膜49を表面側から研磨して第1絶縁膜47の凸部47fを露出させ、第2絶縁膜49および導電膜9を画素間領域10fで分割する。その結果、分割された導電膜9によって画素電極9aが形成される。本形態では、第1絶縁膜47の凸部47fが露出した以降も研磨を行って凸部47fの高さ寸法を低くするが、導電膜9(画素電極9a)の表面に第2絶縁膜49が薄く残っているうちに研磨を停止する。本形態では、導電膜9(画素電極9a)の表面に第2絶縁膜49が約50nm程度の厚さで残っているうちに研磨を停止する。その結果、凸部47fの高さ寸法は、約200nm程度まで低くなる。
【0062】
かかる研磨工程においては、化学機械研磨を利用でき、化学機械研磨では、研磨液に含まれる化学成分の作用と、研磨剤と素子基板10との相対移動によって、高速で平滑な研磨面を得ることができる。より具体的には、研磨装置において、不織布、発泡ポリウレタン、多孔質フッ素樹脂等からなる研磨布(パッド)を貼り付けた定盤と、素子基板10を保持するホルダーとを相対回転させながら、研磨を行なう。その際、例えば、平均粒径が0.01〜20μmの酸化セリウム粒子、分散剤としてのアクリル酸エステル誘導体、および水を含む研磨剤を研磨布と素子基板10との間に供給する。
【0063】
かかる研磨の際、画素電極9aと重なる領域では、第2絶縁膜49のみが研磨されるのに対して、画素間領域10fと重なる領域では、第2絶縁膜49および導電膜9を研磨した後、第1絶縁膜47の凸部47fが研磨されることになる。
【0064】
このようにして画素電極9aを形成した時点で、画素電極9aに起因する凹凸がかなり緩和されているので、この状態で配向膜16を形成してもよい。但し、本形態では、凸部47fに相当する箇所は、第2絶縁膜49が残っている箇所よりわずかに高い位置にある。そこで、本形態では、研磨工程の後、図6(c)、(d)を参照して以下に説明する工程を行うことによって、凹凸を解消してから配向膜16を形成する。
【0065】
より具体的には、研磨工程の後、図6(c)に示す導電膜エッチング工程において、第2絶縁膜49と凸部47fとの間で露出する導電膜9の端部(画素電極9aの端部9e)をエッチングする。かかるエッチングでは、ウエットエッチングおよびドライエッチングのいずれをも用いることができる。但し、導電膜9(画素電極9a)と絶縁膜(第1絶縁膜47および第2絶縁膜49)との間にエッチング選択性があることが望ましいことから、ウエットエッチングが好ましい。
【0066】
次に、図6(d)に示す絶縁膜エッチング工程では、凸部47fの高さ寸法が導電膜9(画素電極9a)の厚さ寸法と同一となるまで第1絶縁膜47をエッチングする。その際、第2絶縁膜49もエッチングされる。かかるエッチングでは、ウエットエッチングおよびドライエッチングのいずれをも用いることができる。但し、導電膜9(画素電極9a)と絶縁膜(第1絶縁膜47および第2絶縁膜49)との間におけるエッチング選択性が高いことが望ましいことから、ウエットエッチングが好ましい。その結果、画素電極9aはエッチングされずに、凸部47fの高さ寸法が導電膜9(画素電極9a)の厚さ寸法と同一となる。また、画素電極9aと重なる領域の第2絶縁膜49は除去される。従って、画素電極9aの表面と凸部47fの上端面とは、連続した平坦面を構成することになる。なお、コンタクトホール47aの内部には第2絶縁膜49の一部49cが残るので、画素電極9aの表面において、コンタクトホール47aに起因する凹凸が緩和される。
【0067】
しかる後に、図4に示すように配向膜16を形成する。なお、それ以降の工程は、周知の方法を利用できるので、説明を省略する。
【0068】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態によれば、画素間領域10fに沿って延在する凸部47fを備えた第1絶縁膜47を形成した後、第1絶縁膜47にコンタクトホール47aを形成し、その後、導電膜9および第2絶縁膜49を順次積層する。次に、研磨工程では、凸部47fが露出するまで研磨し、第2絶縁膜49および導電膜9を凸部47f(画素間領域10f)により分割する。その結果、分割された導電膜9によって画素電極9aが形成され、かかる画素電極9aの間(画素間領域10f)には第1絶縁膜47の凸部47fが残る。従って、画素電極9aに起因する凹凸は、第1絶縁膜47の凸部47fによって緩和される。また、本形態によれば、コンタクトホール47a内では、画素電極9aの表面に第2絶縁膜49の一部49cが残るので、コンタクトホール47aに起因する凹凸は、コンタクトホール47a内の第2絶縁膜49によって緩和される。それ故、配向膜16を形成する際、平坦な面上に配向膜を形成することができ、その結果、配向膜16の表面も平坦となる。
【0069】
また、本形態では、導電膜9の表面に第2絶縁膜49を形成しておくので、導電膜9の表面は研磨されない。それ故、画素電極9aの厚さは、研磨によって変動せず、導電膜9を成膜した際の厚さによって制御される。それ故、透過型の液晶装置100においては、画素電極9aを構成する透光性導電膜の分光特性が変動しないので、かかる分光特性の変動に起因する画像の品位低下を防止することができる。
【0070】
また、本形態では、研磨工程の後、第2絶縁膜49と第1凸部47fとの間で露出する導電膜9(画素電極9aの端部9e)をエッチングする導電膜エッチング工程と、凸部47fの高さ寸法が導電膜9(画素電極9a)の厚さ寸法と同一となるまで第1絶縁膜47および第2絶縁膜49をエッチングする絶縁膜エッチング工程とを行う。このため、凸部47fの高さ寸法は、画素電極9aの厚さ寸法と同一であるため、画素電極9aの間(画素間領域10f)と重なる領域は、第1絶縁膜47の凸部47fによって完全に平坦化される。
【0071】
また、本形態では、第2絶縁膜49は、リンおよびボロンのうちの少なくとも一方がドープされたシリケートガラスであるため、第1絶縁膜47に比して、研磨速度が速い。それ故、第2絶縁膜49を形成する際の厚さに対するマージンが大きいという利点がある。
【0072】
[他の実施の形態]
上記実施の形態では、透過型の液晶装置100に本発明を適用した例を説明したが、反射型の液晶装置100に本発明を適用してもよい。この場合でも、本形態によれば、画素電極9aの厚さは、研磨によって変動せず、導電膜9を成膜した際の厚さによって制御される。それ故、液晶層50の厚さが変動しないので、液晶層50の厚さ変動に起因する画像の品位低下を防止することができる。また、上記実施の形態では、液晶装置100に本発明を適用した例を説明したが、有機エレクトロルミネッセンス装置等の液晶装置以外の電気光学装置に本発明を適用してもよい。
【0073】
[電子機器への構成例]
上述した実施形態に係る液晶装置100を備えた電子機器について説明する。図7は、本発明を適用した液晶装置100を用いた投射型表示装置の概略構成図であり、図7(a)、(b)は各々、透過型の液晶装置100を用いた投射型表示装置の説明図、および反射型の液晶装置100を用いた投射型表示装置の説明図である。
【0074】
(投射型表示装置の第1例)
図7(a)に示す投射型表示装置110は、観察者側に設けられたスクリーン111に光を照射し、このスクリーン111で反射した光を観察する、いわゆる投影型の投射型表示装置である。投射型表示装置110は、光源112を備えた光源部130と、ダイクロイックミラー113、114と、液晶ライトバルブ115〜117(液晶装置100)と、投射光学系118と、クロスダイクロイックプリズム119と、リレー系120とを備えている。
【0075】
光源112は、赤色光、緑色光及び青色光を含む光を供給する超高圧水銀ランプで構成されている。ダイクロイックミラー113は、光源112からの赤色光を透過させると共に緑色光及び青色光を反射する構成となっている。また、ダイクロイックミラー114は、ダイクロイックミラー113で反射された緑色光及び青色光のうち青色光を透過させると共に緑色光を反射する構成となっている。このように、ダイクロイックミラー113、114は、光源112から出射した光を赤色光と緑色光と青色光とに分離する色分離光学系を構成する。
【0076】
ここで、ダイクロイックミラー113と光源112との間には、インテグレーター121及び偏光変換素子122が光源112から順に配置されている。インテグレーター121は、光源112から照射された光の照度分布を均一化する構成となっている。また、偏光変換素子122は、光源112からの光を例えばs偏光のような特定の振動方向を有する偏光にする構成となっている。
【0077】
液晶ライトバルブ115は、ダイクロイックミラー113を透過して反射ミラー123で反射した赤色光を画像信号に応じて変調する透過型の液晶装置100である。液晶ライトバルブ115は、λ/2位相差板115a、第1偏光板115b、液晶パネル115c及び第2偏光板115dを備えている。ここで、液晶ライトバルブ115に入射する赤色光は、ダイクロイックミラー113を透過しても光の偏光は変化しないことから、s偏光のままである。
【0078】
λ/2位相差板115aは、液晶ライトバルブ115に入射したs偏光をp偏光に変換する光学素子である。また、第1偏光板115bは、s偏光を遮断してp偏光を透過させる偏光板である。そして、液晶パネル115cは、p偏光を画像信号に応じた変調によってs偏光(中間調であれば円偏光又は楕円偏光)に変換する構成となっている。さらに、第2偏光板115dは、p偏光を遮断してs偏光を透過させる偏光板である。したがって、液晶ライトバルブ115は、画像信号に応じて赤色光を変調し、変調した赤色光をクロスダイクロイックプリズム119に向けて出射する構成となっている。
【0079】
なお、λ/2位相差板115a及び第1偏光板115bは、偏光を変換させない透光性のガラス板115eに接した状態で配置されており、λ/2位相差板115a及び第1偏光板115bが発熱によって歪むのを回避することができる。
【0080】
液晶ライトバルブ116は、ダイクロイックミラー113で反射した後にダイクロイックミラー114で反射した緑色光を画像信号に応じて変調する透過型の液晶装置100である。そして、液晶ライトバルブ116は、液晶ライトバルブ115と同様に、第1偏光板116b、液晶パネル116c及び第2偏光板116dを備えている。液晶ライトバルブ116に入射する緑色光は、ダイクロイックミラー113、114で反射されて入射するs偏光である。第1偏光板116bは、p偏光を遮断してs偏光を透過させる偏光板である。また、液晶パネル116cは、s偏光を画像信号に応じた変調によってp偏光(中間調であれば円偏光又は楕円偏光)に変換する構成となっている。そして、第2偏光板116dは、s偏光を遮断してp偏光を透過させる偏光板である。したがって、液晶ライトバルブ116は、画像信号に応じて緑色光を変調し、変調した緑色光をクロスダイクロイックプリズム119に向けて出射する構成となっている。
【0081】
液晶ライトバルブ117は、ダイクロイックミラー113で反射し、ダイクロイックミラー114を透過した後でリレー系120を経た青色光を画像信号に応じて変調する透過型の液晶装置100である。そして、液晶ライトバルブ117は、液晶ライトバルブ115、116と同様に、λ/2位相差板117a、第1偏光板117b、液晶パネル117c及び第2偏光板117dを備えている。ここで、液晶ライトバルブ117に入射する青色光は、ダイクロイックミラー113で反射してダイクロイックミラー114を透過した後にリレー系120の後述する2つの反射ミラー125a、125bで反射することから、s偏光となっている。
【0082】
λ/2位相差板117aは、液晶ライトバルブ117に入射したs偏光をp偏光に変換する光学素子である。また、第1偏光板117bは、s偏光を遮断してp偏光を透過させる偏光板である。そして、液晶パネル117cは、p偏光を画像信号に応じた変調によってs偏光(中間調であれば円偏光又は楕円偏光)に変換する構成となっている。さらに、第2偏光板117dは、p偏光を遮断してs偏光を透過させる偏光板である。したがって、液晶ライトバルブ117は、画像信号に応じて青色光を変調し、変調した青色光をクロスダイクロイックプリズム119に向けて出射する構成となっている。なお、λ/2位相差板117a及び第1偏光板117bは、ガラス板117eに接した状態で配置されている。
【0083】
リレー系120は、リレーレンズ124a、124bと反射ミラー125a、125bとを備えている。リレーレンズ124a、124bは、青色光の光路が長いことによる光損失を防止するために設けられている。ここで、リレーレンズ124aは、ダイクロイックミラー114と反射ミラー125aとの間に配置されている。また、リレーレンズ124bは、反射ミラー125a、125bの間に配置されている。反射ミラー125aは、ダイクロイックミラー114を透過してリレーレンズ124aから出射した青色光をリレーレンズ124bに向けて反射するように配置されている。また、反射ミラー125bは、リレーレンズ124bから出射した青色光を液晶ライトバルブ117に向けて反射するように配置されている。
【0084】
クロスダイクロイックプリズム119は、2つのダイクロイック膜119a、119bをX字型に直交配置した色合成光学系である。ダイクロイック膜119aは青色光を反射して緑色光を透過する膜であり、ダイクロイック膜119bは赤色光を反射して緑色光を透過する膜である。したがって、クロスダイクロイックプリズム119は、液晶ライトバルブ115〜117のそれぞれで変調された赤色光と緑色光と青色光とを合成し、投射光学系118に向けて出射するように構成されている。
【0085】
なお、液晶ライトバルブ115、117からクロスダイクロイックプリズム119に入射する光はs偏光であり、液晶ライトバルブ116からクロスダイクロイックプリズム119に入射する光はp偏光である。このようにクロスダイクロイックプリズム119に入射する光を異なる種類の偏光としていることで、クロスダイクロイックプリズム119において各液晶ライトバルブ115〜117から入射する光を合成できる。ここで、一般に、ダイクロイック膜119a、119bはs偏光の反射トランジスター特性に優れている。このため、ダイクロイック膜119a、119bで反射される赤色光及び青色光をs偏光とし、ダイクロイック膜119a、119bを透過する緑色光をp偏光としている。投射光学系118は、投影レンズ(図示略)を有しており、クロスダイクロイックプリズム119で合成された光をスクリーン111に投射するように構成されている。
【0086】
(投射型表示装置の第2例)
図7(b)に示す投射型表示装置1000において、光源部890は、システム光軸Lに沿って光源810、インテグレーターレンズ820および偏光変換素子830が配置された偏光照明装置800を有している。また、光源部890は、システム光軸Lに沿って、偏光照明装置800から出射されたs偏光光束をs偏光光束反射面841により反射させる偏光ビームスプリッター840と、偏光ビームスプリッター840のs偏光光束反射面841から反射された光のうち、青色光(B)の成分を分離するダイクロイックミラー842と、青色光が分離された後の光束のうち、赤色光(R)の成分を反射させて分離するダイクロイックミラー843とを有している。
【0087】
また、投射型表示装置1000は、各色光が入射する3つの反射型の液晶装置100(液晶装置100R、100G、100B)を備えており、光源部890は、3つの液晶装置100(液晶装置100R、100G、100B)に所定の色光を供給する。
【0088】
かかる投射型表示装置1000においては、3つの液晶装置100R、100G、100Bにて変調された光をダイクロイックミラー842、843、および偏光ビームスプリッター840にて合成した後、この合成光を投射光学系850によってスクリーン860等の被投射部材に投射する。
【0089】
(他の投射型表示装置)
なお、投射型表示装置については、光源部として、各色の光を出射するLED光源等を用い、かかるLED光源から出射された色光を各々、別の液晶装置に供給するように構成してもよい。
【0090】
(他の電子機器)
本発明を適用した液晶装置100については、上記の電子機器の他にも、携帯電話機、情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assistants)、デジタルカメラ、液晶テレビ、カーナビゲーション装置、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等の電子機器において直視型表示装置として用いてもよい。
【符号の説明】
【0091】
9・・導電膜、9a・・画素電極、10・・素子基板、10f・・画素間領域、10w・・基板本体、30・・画素トランジスター、47・・第1絶縁膜、47a・・コンタクトホール、47f・・凸部、47g・・凹部、49・・第2絶縁膜、100・・液晶装置、110、1000・・投射型表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の一方面側に、少なくとも格子状の凸部を備えた第1絶縁膜を形成する第1絶縁膜形成工程と、
該第1絶縁膜を貫通するコンタクトホールを形成するコンタクトホール形成工程と、
前記第1絶縁膜に対して前記基板と反対側に画素電極を構成する導電膜を成膜する導電膜成膜工程と、
前記導電膜に対して前記第1絶縁膜と反対側に第2絶縁膜を成膜する第2絶縁膜成膜工程と、
前記導電膜および前記第2絶縁膜を前記凸部が露出するまで研磨して前記導電膜を前記凸部により分割して前記画素電極を形成する研磨工程と、
を有することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項2】
前記研磨工程の後、前記第2絶縁膜と前記凸部との間で露出する前記導電膜をエッチングする導電膜エッチング工程と、前記凸部と前記導電膜とが平坦な面を形成するまで第1絶縁膜および前記第2絶縁膜をエッチングする絶縁膜エッチング工程と、を行うことを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項3】
前記第2絶縁膜は、リンおよびボロンのうちの少なくとも一方がドープされたシリケートガラスであることを特徴とする請求項1または2に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項4】
前記導電膜は、透光性導電膜であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項5】
前記導電膜は、反射性導電膜であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項6】
基板と、
該基板の一方面側に設けられた複数の画素電極と、
前記複数の画素電極と前記基板との間に設けられ、前記複数の画素電極のうち、隣り合う画素電極により挟まれた画素間領域内で延在する凸部、およびコンタクトホールが形成された第1絶縁膜と、
前記コンタクトホール内において前記画素電極に対して前記基板とは反対側で重なる第2絶縁膜と、
を有することを特徴とする電気光学装置。
【請求項7】
前記凸部と前記画素電極とが平坦な面を形成することを特徴とする請求項6に記載の電気光学装置。
【請求項8】
前記第2絶縁膜は、リンおよびボロンのうちの少なくとも一方がドープされたシリケートガラスであることを特徴とする請求項6または7に記載の電気光学装置。
【請求項9】
請求項6乃至8の何れか一項に記載の電気光学装置を備えた投射型表示装置であって、
前記液晶装置に照射される照明光を出射する光源部と、前記液晶装置により変調された光を投射する投射光学系と、を有していることを特徴とする投射型表示装置。
【請求項10】
請求項6乃至8の何れか一項に記載の電気光学装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−208296(P2012−208296A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73548(P2011−73548)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】