説明

音声出力制御装置および車両用ナビゲーション装置

【課題】電話機の事前の接続や無線端末登録が不要であって、電話機の着信時に車室内の音声出力装置から出力される音声を自動的に消音または音量低減する。
【解決手段】マイク10a〜10dにより入力した車室内の音声波形から、ナビゲーション装置1の音声制御回路9およびオーディオ装置15が出力する音声波形を減算することにより、背景音を除いた差分音声の音声データを生成する。予め外部メモリ6に登録されている電話機の着信音の音声波形データと差分音声の音声波形データを比較し、一致する場合にはナビゲーション装置1およびオーディオ装置15を消音状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電話機の着信時に音声出力装置の出力音声を消音または低減する音声出力制御装置および車両用ナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の運転中に携帯電話機を操作することなく当該携帯電話機を用いた通話が可能となる車両用ハンズフリーシステムがある。特許文献1には、BLUETOOTH(登録商標)による通信機能を備えた携帯電話機が着信した時、オーディオ装置の出力音声をミュート(消音)するハンズフリーシステムが記載されている。これに関連して、オーディオ装置の出力音声を制御する技術としては、車室内で検出された騒音音圧に応じて再生音の音量を変化させる音声操作装置が特許文献2に示されている。
【特許文献1】特開2003−198713号公報
【特許文献2】特開平10−178324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載されたハンズフリーシステムは、携帯電話機とハンズフリーシステムとを直接接続しなくても作動可能であるが、携帯電話機の最初の接続時または対象とする携帯電話機の変更時には、周辺の携帯電話機を検索し選択する処理が必要となる。すなわち、これまでのシステムでは、携帯電話機とハンズフリーシステムとを車内LANで接続し或いはBLUETOOTHの端末登録が必要であり、接続済み或いは無線端末登録済みの携帯電話機が着信したとき以外はミュートをかけることができなかった。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、電話機の事前の接続や無線端末登録が不要であって、電話機の着信時に車室内の音声出力装置から出力される音声を自動的に消音または音量低減できる音声出力制御装置および車両用ナビゲーション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載した手段によれば、車室内の音声を集音して得られた音声データと、音声出力装置が出力する音声の音声データとに基づいて、車室内の音声から各装置が出力している音声(背景音)を除いた差分音声の音声データを生成する。この差分音声には、車室内に持ち込まれた電話機の着信音の他、車両の走行に伴う騒音、車外から入ってくる音、乗員から発せられる音声などが含まれている。
【0006】
車室内に持ち込まれる電話機の着信音は、音声出力制御装置内のメモリやネットワークで接続されるサーバなどの記憶手段に予め登録されている。上記差分音声の音声データと予め登録されている着信音の音声データとに基づいて両音声データが一致するか否かを判定し、一致すると判定した場合、音声出力装置の音声出力状態を消音状態または音量低減状態に制御する。
【0007】
本手段によれば、車室内に持ち込まれる電話機の有線接続、電話機へのBLUETOOTHなどの無線通信手段の搭載、無線端末手段の事前登録などが不要となる。また、事前に電話機の着信音を登録しておけば、電話機の接続規格、通信規格、持ち込み台数などによらず、何れの電話機であっても上記着信時の消音(音量低減)制御が可能となり、拡張性に優れている。
【0008】
請求項2に記載した手段によれば、音声データは音声波形からなるデータであって、車室内の音声の波形成分から音声出力装置が出力している音声の波形成分を減算することにより差分音声の音声データを生成し、その差分音声の音声波形と登録された着信音の音声波形とを比較して音声データの一致を判定する。本手段によれば、着信音の種類によらず全ての電話機に対し適用できる。
【0009】
請求項3に記載した手段によれば、車両の走行に伴う車内騒音の主要な周波数成分よりも高い遮断周波数を持つハイパスフィルタを通して差分音声の音声データを出力する。着信音は、人が容易に認識できるように比較的高い周波数の音で構成されているため、ハイパスフィルタを設けたことによる減衰は少ない。不要な車内騒音の波形成分がカットされるため、判定手段による一致判定の精度を高められる。
【0010】
請求項4に記載した手段によれば、背景音除去手段から出力される音声データの平均波形レベルと登録音入力手段により入力される音声データの平均波形レベルとを等しく調整した上で比較処理を実行するので、レベルの違いによる着信検出ミスを極力防止することができる。
【0011】
請求項5に記載した手段によれば、着信音に含まれる言語情報を音声データとして登録しておく。そして、差分音声の中から言語情報を認識し、その差分音声に含まれる言語情報と登録した着信音に含まれる言語情報とを比較して両音声データが一致するか否かを判定する。例えば着信音に歌詞、言葉などが含まれている場合、着信の検出精度を高めることができる。
【0012】
請求項6に記載した手段によれば、車室内に設置された音声出力装置が出力する音声の音声データを遅延回路を介して入力し、差分音声の音声データを生成する。音声出力ユニット(スピーカ)から車室内に出力された音声は、若干の遅延を有して音声入力ユニット(マイクロフォン)に到達する。遅延回路に、上記音声到達までの遅延時間に相当する時間を設定すれば、より確実に背景音が消去された差分音声を得ることができる。
【0013】
請求項7に記載した手段によれば、複数の音声入力ユニットが車室内の相異なる位置に設置されており、複数の音声入力ユニットのうち、登録された着信音の音声データを最も早く且つ最も大きいレベルで入力した音声入力ユニットの設置位置周辺から(音声出力ユニットを介して)出力される音声を消音状態または音量低減状態に制御する。これにより、着信した電話機を持つ通話者の周囲の音量のみを下げ、他の乗員の周囲の音声出力を極力維持するように、車室内における通話者の位置に応じた選択的な音量制御が可能となる。
【0014】
請求項8に記載した手段によれば、車室内で実際に電話機の着信音を鳴らし、その音声を所定の記憶手段に登録することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について図1ないし図4を参照しながら説明する。
図1は、車両用のナビゲーション装置の電気的構成およびナビゲーション装置とオーディオ装置、スピーカ、マイクロフォン(マイク)との接続状態を示すブロック図である。ナビゲーション装置1は、マイコンを主体として構成された制御回路2、車両の現在位置を検出するための位置検出器3、地図データ入力器4、操作スイッチ群5、外部メモリ6、カラー液晶ディスプレイ等からなる表示装置7、スピーカ8(8a〜8d)が接続された音声制御回路9、マイク10(10a〜10d)により車室内の音声を入力し着信ミュート制御を実行する着信ミュート制御回路11、リモコン12との間でコマンド等の送受信を行うリモコンセンサ13、および外部(例えばサーバを備えた情報センター)との間で無線通信によりデータの送受信を行う外部情報入出力装置14から構成されている。着信ミュート制御回路11は、車室内に設けられたCD/DVD再生装置、MD再生装置、ラジオ受信装置などのオーディオ装置15(音声出力装置に相当)と接続されている。
【0016】
図3は、車室内におけるナビゲーション装置1、オーディオ装置15、スピーカ8a〜8d(音声出力ユニット)およびマイク10a〜10d(音声入力ユニットに相当)の配置を示している。ナビゲーション装置1とオーディオ装置15は、車室内のセンターコンソールに収容されている。スピーカ8aとマイク10aは車室内の右前部に取り付けられており、スピーカ8bとマイク10bは車室内の左前部に取り付けられている。また、スピーカ8cとマイク10cは車室内の右後部に取り付けられており、スピーカ8dとマイク10dは車室内の左後部に取り付けられている。
【0017】
ナビゲーション装置1において、位置検出器3は、図1に示すように車両の回転角速度を検出するジャイロスコープ16、車両の走行距離を検出する距離センサ17、人工衛星からの送信電波に基づいて車両の現在位置を検出(測位)するGPS(Global Positioning System)のためのGPS受信機18を有している。制御回路2は、各センサ16〜18の検出値を補間しながら用いることにより、車両の現在位置、進行方向、速度、走行距離、現在時刻等を高精度で検出するようになっている。
【0018】
地図データ入力器4は、道路地図データ、目印データ、マップマッチング用データ、目的地データ(施設データベース)、交通情報を道路データに変換するためのテーブルデータなどの各種データを記録した地図データ記録メディアからデータを読み出すためのドライブ装置により構成されている。地図データ記録メディアには、DVD等の大容量記憶媒体を用いるのが一般的であるが、メモリカード、ハードディスク装置等の媒体を用いてもよい。
【0019】
上記道路地図データは、道路形状、道路幅、道路名、信号、踏切、建造物、各種施設、地名、地形等のデータを含むとともに、その道路地図を表示装置7の画面上に表示するためのデータを含んでいる。また、目的地データは、駅等の交通機関、レジャー施設、宿泊施設、公共施設等の施設や、小売店、デパート、レストラン等の各種の店舗、住居やマンション、地名などに関する情報からなり、このデータにはそれらの電話番号や住所、緯度および経度等のデータが含まれるとともに、施設を示すランドマーク等を、表示装置7の画面上に道路地図に重ね合せて表示するためのデータを含んで構成されている。
【0020】
入力手段である操作スイッチ群5は、表示装置7の画面の近傍に設けられたメカニカルスイッチや、表示装置7の画面上に設けられるタッチパネルを含んで構成されている。ユーザ(ドライバ)は、この操作スイッチ群5を用いて、目的地や目的地の検索に必要な情報(目的地検索条件)の入力、車室内に持ち込まれた携帯電話機19(図3参照)の着信音の登録、および表示装置7の画面や表示態様の切り替え(地図縮尺変更、メニュー表示選択、経路探索、経路案内開始、音量調整、音量ミュート等)を行う各種のコマンドの入力を行う。また、リモコン12には複数の操作スイッチが設けられており、スイッチ操作によりリモコン12からリモコンセンサ13を介して各種の指令信号が制御回路2に送信される。なお、操作スイッチ群5とリモコン12は、何れの操作によっても制御回路2に同様の機能を実行させることができる。
【0021】
外部メモリ6(記憶手段に相当)は、フラッシュメモリカード等から構成されている。この外部メモリ6には、特定のデータ例えば経路案内時に制御回路2が設定した目的地までの経路のデータ、車両が通過した経路のデータ、携帯電話機19の着信音の音声データ等が記憶される。
【0022】
表示装置7の画面には、車両の位置周辺の地図が各種縮尺で表示されるとともに、その表示に重ね合わせて、車両の現在位置と進行方向とを示す現在地マーク(ポインタ)が表示される。また、目的地までの経路案内の実行時には経路案内用の画面が表示される。さらに、ユーザが目的地の検索に必要な情報等を入力したり、目的地の検索や設定を行うための入力用の画面や、携帯電話機19の着信音を登録する際の案内メッセージも表示される。
【0023】
図2に示すように、音声制御回路9は、制御回路2からの音声出力指令に基づいて外部メモリ6から出力音声に対応した音声データを入力し音声信号を生成する音声信号生成回路9aと、その音声信号を増幅してスピーカ8a〜8dに出力するアンプ9bとから構成されている。音声制御回路9を介してスピーカ8a〜8dから出力される音声は、案内に関する音声、操作説明に関する音声、音声認識結果に応じたトークバック音声などである。音声制御回路9およびオーディオ装置15は、着信ミュート制御回路11からミュート指令信号Smを受けると、スピーカ8a〜8dへの音声出力信号を停止し消音(ミュート)状態とする。
【0024】
着信ミュート制御回路11(音声出力制御装置に相当)は、マイク10a〜10dを介して入力した車内音の音声データと、外部メモリ6またはメモリ20(記憶手段に相当)に予め記憶(登録)されている携帯電話機19の着信音の音声データと、音声制御回路9およびオーディオ装置15が出力する音声の音声データとを入力し、携帯電話機19の着信音が鳴った時に、ナビゲーション装置1およびオーディオ装置15に対しミュート指令信号Smを出力するものである。
【0025】
図2は、着信ミュート制御回路11の電気的なブロック構成図である。着信ミュート制御回路11は、車内音入力回路21、インターフェース回路22、音声信号入力回路23(23a、23b)、減算回路24、比較回路25、音量制御回路26および音声データ生成回路27から構成されている。車室内には4つのスピーカ8a〜8dとマイク10a〜10dが配設されているので、これらの回路は4チャネル分設けられている。
【0026】
車内音入力回路21(車内音入力手段に相当)は、マイク10a〜10dを介して入力した車室内の音声信号をA/D変換器28によりA/D変換し、音声波形からなる音声データを得るようになっている。音声信号入力回路23a、23b(背景音入力手段に相当)は、それぞれ音声制御回路9のアンプ9b、オーディオ装置15から出力される(電気的な)音声信号を入力し、遅延回路29a、29bを介して音声波形からなる音声データとして出力するようになっている。遅延回路29(29a、29b)の遅延時間は、スピーカ8から車室内に出力された音声がマイク10に到達するまでの時間に等しく設定されている。
【0027】
減算回路24(背景音除去手段に相当)は、減算器30とフィルタ回路31とから構成されている。減算器30は、車内音入力回路21により入力された車内音の音声データ(波形成分)と音声信号入力回路23から出力された背景音の音声データ(波形成分)との差分を演算し、その差分音声の音声データをフィルタ回路31を介して出力する。フィルタ回路31は、車両の走行に伴う車内騒音の主要な周波数成分よりも高い遮断周波数を持つハイパスフィルタである。
【0028】
音声データ生成回路27は、携帯電話機19の着信音の音声データを登録する際に用いられるもので、減算回路24から出力された車内音の音声データに所定の情報(音声データの登録日、携帯電話機19の識別情報(呼出番号)等)を付加する。インターフェース回路22(登録音入力手段、登録手段に相当)は、通常モードにおいては外部メモリ6(またはメモリ20)から携帯電話機19の着信音の音声データを読み出し、登録モードにおいては音声データ生成回路27からの音声データを外部メモリ6(またはメモリ20)に書き込む。
【0029】
比較回路25(判定手段に相当)は、減算回路24から出力される音声データの平均波形レベルとインターフェース回路22を介して読み込まれた音声データの平均波形レベルとが等しくなるようにレベル調整するレベル調整回路32(レベル調整手段に相当)を備えている。比較回路25は、このレベル調整された音声データ同士を比較することにより音声波形が一致するか否かを判定し、その結果を音量制御回路26(音量制御手段に相当)に出力する。音量制御回路26は、比較回路25から音声データの一致信号を受けると、音声制御回路9のアンプ9bおよびオーディオ装置15に対しミュート指令信号Smを出力する。
【0030】
ナビゲーション装置1の制御回路2を構成するマイコンは、CPU、メモリ(RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ等)、I/Oなどを備えている。このうちメモリ20は、EEPROM、フラッシュメモリなど電気的に書き換え可能な不揮発性メモリであって、上述したように携帯電話機19の着信音の音声データが記憶可能になっている。CPUがROM(またはフラッシュメモリ)に記憶されたプログラムを実行することにより、制御回路2は、目的地設定手段、経路探索手段、表示制御手段、経路案内手段、通過経路特定手段、機能制御手段、現在位置修正手段として機能する。なお、着信ミュート制御回路11をソフトウェア処理する構成とした場合にも、上記CPUが処理の実行を行う。
【0031】
経路探索手段としての機能は、車両の出発地から目的地までの推奨する走行経路を自動計算するものである。また、経路案内手段としての機能は、走行経路に沿って移動可能なように、表示装置7の画面に現在地周辺の道路地図を表示するとともに、車両の現在位置と進行方向を示す現在地マークを道路地図に重ね合わせて表示する機能である。
【0032】
次に、ナビゲーション装置1の着信ミュート機能および着信音登録機能について、図4に示すフローチャートを参照しながら説明する。このフローチャートに示す着信ミュート処理(ステップS1〜S9)および着信音登録処理(ステップS10〜S13)は、着信ミュート制御回路11が実行する。また、着信音の音声データは、外部メモリ6に記憶(登録)するものとする。着信音の音声データは、音声波形データであって、例えばwma、wav、mp3などの形式で記憶されている。
【0033】
着信ミュート制御回路11は、車内音入力回路21のA/D変換器28から出力された車内音の音声データおよび音声信号入力回路23a、23bから出力された音声データ(アンプ9b、オーディオ装置15の出力音声信号)を所定時間分だけRAMに記憶する(ステップS1、S2)。
【0034】
減算回路24は、これら記憶された車内音の音声データ(波形成分)から背景音の音声データ(波形成分)を減算して差分音声の音声データを生成し(ステップS3)、その音声データに対しフィルタ回路31により走行騒音の除去処理を実行する(ステップS4)。その後、通常モードか登録モードかを判断する(ステップS5)。
【0035】
通常モードの場合、インターフェース回路22を介して、外部メモリ6から携帯電話機19の着信音の音声データをRAMに読み出す(ステップS6)。この読み出しは、ステップS1の前に実行してもよい。レベル調整回路32は、差分音声の音声データと外部メモリ6から読み出した着信音の音声データの平均波形レベル(音圧レベル)が等しくなるようにレベル調整し、比較回路25は、このレベル調整された音声データ同士を比較する(ステップS7)。
【0036】
この比較処理は、両音声データの波形の特徴を抽出しその特徴に基づいて一致度を求めたり、両音声データのタイミングを順次ずらしながら波形同士の一致度を求めることにより実行する。そして、両音声波形が一致する場合(ステップS8;YES)には、比較回路25の一致信号に応じて音量制御回路26がミュート指令信号Smを出力し(ステップS9)、両音声波形が一致しない場合(ステップS8;NO)にはミュート指令信号Smを出力することなくステップS1に戻る。
【0037】
音量制御回路26は、比較回路25から音声データの一致信号を受けると、着信音の音声データを最も早く且つ最も大きいレベルで入力したマイク10(10a〜10dの何れか)の位置周辺に配置されたスピーカ8(8a〜8dの何れか)を駆動するアンプ9bおよびオーディオ装置15に対してミュート指令信号Smを出力する。これにより、着信音が登録されている携帯電話機19が着信した時、その携帯電話機19の位置(つまり通話者の位置)の周囲の音声出力(案内音声、再生音声、放送音声)のみが消音され、他の乗員の周囲の音声出力はそのまま維持される。
【0038】
この着信ミュート機能を利用するのに先立って、ユーザは車室内に持ち込む携帯電話機19の着信音の音声データを外部メモリ6に登録しておく。この着信音の登録は、操作スイッチ群5またはリモコン12を用いて登録モードに移行して行う(ステップS5;YES)。登録モードに移行すると、着信ミュート制御回路11はステップS10からS13に示す着信音登録処理を実行する。
【0039】
車室内で携帯電話機19の着信音を鳴らした状態で所定の登録開始操作を行うと、音声データ生成回路27は、減算回路24から出力された差分音声の音声データを順次RAMに記憶する(ステップS10)。所定の登録終了操作が行われると(ステップS11;YES)、音声データ生成回路27は、RAMに記憶された音声データを外部メモリ6に書き込み(ステップS12)、その後通常モードに戻る(ステップS13)。外部メモリ6には複数の音声データを登録でき、上述したように各音声データには登録日、携帯電話機19の識別情報(呼出番号)等を付加することができる。音声データ生成回路27は、これらの付加情報により指定された音声データを編集、消去可能となっている。
【0040】
以上説明した本実施形態によれば、車室内に持ち込む携帯電話機19の着信音を予め登録しておくことにより、その携帯電話機19が車室内で着信した時(着信音が鳴った時)に、ナビゲーション装置1およびオーディオ装置15からスピーカ8を通して出力される音声が自動的に消音(ミュート)状態となる。この場合、その着信した携帯電話機19の周囲に配置されたスピーカ8からの音声のみが選択的に消音されるので、通話者は通話し易くなるとともに通話者以外の乗員は音声を聞き続けることができる。
【0041】
本実施形態では、車室内に持ち込まれる携帯電話機19をナビゲーション装置1にケーブルで接続する必要がなく、携帯電話機19へのBLUETOOTHなどの近距離無線通信ユニットの搭載、無線通信ユニットの事前登録などが不要となる。また、携帯電話機19の接続規格、通信規格、持ち込み台数などによらず、何れの携帯電話機19であっても上記着信ミュート制御が可能となる。
【0042】
比較回路25は、音声波形からなる音声データに基づいて、入力した車室内の音声中に登録着信音が存在するか否かを判断しているので、着信音の種類(パターン音、メロディ、チャイム、歌詞、言葉など)によらず種々の着信音を持つ携帯電話機19に対し適用できる。
【0043】
減算回路24は、車内音から背景音を減算して得られる差分音声に対するフィルタ回路31を備えている。このフィルタ回路31は、車両の走行に伴う車内騒音の主要な周波数成分よりも高い遮断周波数を有しているので、差分音声から車内騒音の波形成分が除去され、比較回路25における着信判定の精度が向上する。着信音は、人が容易に認識できるように比較的高い周波数の音で構成されているので、比較的低い周波数成分を持つ車内騒音を遮断するフィルタ回路31による減衰は少ない。
【0044】
比較回路25は、差分音声の音声データと読み出した着信音の音声データの平均波形レベル(音圧レベル)が等しくなるようにレベル調整した後、当該音声データ同士を比較するので、レベルの違いによる着信誤判定を防止することができる。
【0045】
音声信号入力回路23は、遅延回路29により、スピーカ8から車室内に出力された音声がマイク10に到達するのに要する時間だけ信号を遅延させて、音声制御回路9のアンプ9b、オーディオ装置15からの音声信号を入力する。これにより、入力した車内音から確実に背景音を消去することができる。
【0046】
(第2の実施形態)
図5は、本発明の第2の実施形態における着信ミュート制御回路の構成図であり、図2と同一部分には同一符号を付して示している。この着信ミュート制御回路33は、減算回路24と比較回路25との間に音声認識回路34を備えている。音声認識回路34(音声認識手段に相当)は、減算回路24から出力された差分音声に含まれる言語情報(歌詞、言葉など)を認識するようになっている。なお、比較回路25にレベル調整回路32は不要である。
【0047】
登録モードの場合には、ユーザが車室内で携帯電話機19の着信音(例えば「でんわです」というフレーズを繰り返す音声)を鳴らした状態で所定の登録開始操作を行う。音声データ生成回路27は、この登録開始操作から登録終了操作までの期間に音声認識回路34により認識された言語情報(「でんわです」という言葉に対応したコード)を外部メモリ6に書き込む。一方、通常モードの場合には、比較回路25は、音声認識回路34により認識された言語情報と、外部メモリ6から読み出した着信音の言語情報とを比較する。言語情報(「でんわです」という言葉)が一致すれば、音量制御回路26がミュート指令信号Smを出力する。
【0048】
本実施形態によれば、音声データが言語情報で構成され、携帯電話機19の着信音に含まれる言語情報(歌詞、言葉など)を音声認識回路34により音声認識し、その認識された言語情報により携帯電話機19が車室内で着信した(着信音が鳴った)ことの判定を行う。本実施形態は、着信音に言語情報が含まれている場合に有効であり、第1の実施形態と同様の効果が得られる。また、音声データが波形データからなる第1の実施形態と併用すれば、着信音に含まれる言語情報の有無にかかわらず、着信時のミュート制御が可能となる。
【0049】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上記し且つ図面に示す各実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように変形または拡張が可能である。
音量制御回路26は、消音状態とするミュート指令信号Smに替えて、音量低減状態とするミュート指令信号Smを出力してもよい。この場合、ナビゲーション装置1およびオーディオ装置15からスピーカ8を通して出力される音声の音量が所定量だけ低下する。
【0050】
消音状態の解除は、操作スイッチ群5またはリモコン12を用いて所定の解除操作をすることにより行えばよい。
音量制御回路26は、比較回路25から音声データの一致信号を受けると、スピーカ8a〜8dを駆動する全てのアンプ9bおよびオーディオ装置15に対してミュート指令信号Smを出力してもよい。
【0051】
携帯電話機に限らず車両に設置された電話機に対しても同様にして着信ミュート制御を実行できる。
遅延回路29或いはフィルタ回路31は、必要に応じて設ければよい。
本発明でいう音声出力装置にはバックガイドモニタ、ETC車載器なども含まれる。
【0052】
インターフェース回路22は、外部情報入出力装置14を介して情報センターのサーバに着信音の音声データを登録するとともに、その情報センターから外部情報入出力装置14を介して着信音の音声データを入力するように構成してもよい。
着信ミュート制御回路11を音声出力制御装置として車両用ナビゲーション装置から独立した構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す車両用ナビゲーション装置の構成図
【図2】着信ミュート制御回路の電気的なブロック構成図
【図3】車室内におけるスピーカ、マイク等の配置図
【図4】着信ミュート処理および着信音登録処理を示すフローチャート
【図5】本発明の第2の実施形態を示す図2相当図
【符号の説明】
【0054】
1は車両用ナビゲーション装置、6は外部メモリ(記憶手段)、10、10a〜10dはマイクロフォン(音声入力ユニット)、11、33は着信ミュート制御回路(音声出力制御装置)、15はオーディオ装置(音声出力装置)、19は携帯電話機(電話機)、20はメモリ(記憶手段)、21は車内音入力回路(車内音入力手段)、22はインターフェース回路(登録音入力手段、登録手段)、23、23a、23bは音声信号入力回路(背景音入力手段)、24は減算回路(背景音除去手段)、25は比較回路(判定手段)、26は音量制御回路(音量制御手段)、29、29a、29bは遅延回路、31はフィルタ回路(ハイパスフィルタ)、32はレベル調整回路(レベル調整手段)、34は音声認識回路(音声認識手段)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の音声を入力しその音声データを生成する車内音入力手段と、
電話機について予め登録されている着信音の音声データを入力する登録音入力手段と、
前記車室内に設置された音声出力装置が出力する音声の音声データを入力する背景音入力手段と、
前記車内音入力手段により入力された音声データと前記背景音入力手段により入力された音声データとに基づいて、前記車室内の音声から前記音声出力装置が出力している音声を除いた差分音声の音声データを生成する背景音除去手段と、
この背景音除去手段から出力される差分音声の音声データと前記登録音入力手段により入力された着信音の音声データとに基づいて両音声データが一致するか否かを判定する判定手段と、
この判定手段により一致すると判定された場合、前記音声出力装置の音声出力状態を消音状態または音量低減状態に制御する音量制御手段とを備えて構成されていることを特徴とする音声出力制御装置。
【請求項2】
前記音声データは音声波形データであって、
前記背景音除去手段は、前記車室内の音声の波形成分から前記音声出力装置が出力している音声の波形成分を減算することにより前記差分音声の音声データを生成し、
前記判定手段は、前記差分音声の音声波形と前記登録されている着信音の音声波形とを比較して音声データの一致を判定することを特徴とする請求項1記載の音声出力制御装置。
【請求項3】
前記背景音除去手段は、車両の走行に伴う車内騒音の主要な周波数成分よりも高い遮断周波数を持つハイパスフィルタを備え、そのハイパスフィルタを通して前記差分音声の音声データを出力することを特徴とする請求項2記載の音声出力制御装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記背景音除去手段から出力される音声データの平均波形レベルと前記登録音入力手段により入力される音声データの平均波形レベルとを等しく調整するレベル調整手段を備え、当該レベル調整手段によりレベル調整された音声データに対し前記比較処理を実行することを特徴とする請求項2または3記載の音声出力制御装置。
【請求項5】
前記背景音除去手段から出力される差分音声に含まれる言語情報を認識する音声認識手段を備え、
前記登録音入力手段は、着信音に含まれる言語情報を表す音声データを入力し、
前記判定手段は、前記音声認識手段により認識された言語情報と前記着信音に含まれる言語情報とを比較して両音声データが一致するか否かを判定することを特徴とする請求項1記載の音声出力制御装置。
【請求項6】
前記背景音入力手段は、遅延回路を介して前記音声データを入力することを特徴とする請求項1ないし5の何れかに記載の音声出力制御装置。
【請求項7】
前記車内音入力手段は、車室内の相異なる位置に設置された複数の音声入力ユニットから構成されており、
前記音量制御手段は、前記複数の音声入力ユニットのうち、前記登録された着信音の音声データを最も早く且つ最も大きいレベルで入力した音声入力ユニットの設置位置周辺から出力される音声を消音状態または音量低減状態に制御することを特徴とする請求項1ないし6の何れかに記載の音声出力制御装置。
【請求項8】
前記車内音入力手段から入力された音声データを、前記電話機の着信音の音声データとして所定の記憶手段に登録する登録手段を備えていることを特徴とする請求項1ないし7の何れかに記載の音声出力制御装置。
【請求項9】
請求項1ないし8の何れかに記載の音声出力制御装置を備えたことを特徴とする車両用ナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−132927(P2008−132927A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−321919(P2006−321919)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】