説明

SOI基板の作製方法

【課題】結晶性に優れた結晶質半導体層を有するSOI基板を提供する。
【解決手段】支持基板上に、バッファ層を介して単結晶半導体基板から分離させた単結晶半導体を部分的に形成する。単結晶半導体基板は、加速されたイオンの照射とそれに伴う脆化層の形成、及び熱処理により、単結晶半導体を分離する。単結晶半導体上に非単結晶半導体層を形成し、レーザビームを照射することにより、非単結晶半導体層を結晶化させて、SOI基板を作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
絶縁表面上に結晶質半導体層が設けられたシリコン・オン・インシュレーター(SOI;Silicon on Insulator)基板の作製方法および半導体装置の作製方法に関する。
【0002】
なお、本明細書における半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指す。例えば、電気光学装置(液晶表示装置、EL表示装置を含む)、半導体回路および電子機器は全て範疇に含む。
【背景技術】
【0003】
液晶表示装置やプラズマ表示装置など薄型表示装置が適用された薄型テレビジョン装置が普及している。最近では、エレクトロルミネッセンス(以下、ELともいう)表示装置を適用したELテレビジョン装置なども開発されている。その主要技術の一つに、薄膜トランジスタがある。薄膜トランジスタの性能を向上させ、また製造コストの削減を図ることで、優れた表示性能を有する薄型表示装置を安価に提供することができる。各社がせめぎ合う薄型表示装置(フラットパネルディスプレイ)の市場において、性能向上、低価格化は、優位に立つため必要不可欠である。
【0004】
薄型表示装置に必要な薄膜トランジスタは、ガラス基板上など安価で大判な基板上に形成する必要がある。一般に、非晶質シリコン層を用いた薄膜トランジスタ、多結晶シリコン層を用いた薄膜トランジスタが形成されている。トランジスタの性能という点では単結晶シリコンが最適だが、ガラス基板を用いる場合、プロセス上の制限、特に熱処理温度の制限が厳しい。
【0005】
上記のような状況を踏まえて、薄膜トランジスタの性能向上を図るために、半導体層の結晶性を向上させる方法が研究開発されている。一例としては、レーザビームを照射して非晶質シリコンを多結晶化する技術が挙げられる。例えば、特許文献1では、半導体層の結晶面の角度に整合させたレーザビームの走査を行うことで、高品質な多結晶による高性能な薄膜トランジスタとする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−124230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非単結晶半導体層にレーザビームを照射して結晶化する方法では、ランダムに結晶核が発生して結晶方位などが揃わない問題がある。結晶そのものの特性は優れても、結晶が集合した多結晶半導体層では、結晶方位や結晶粒界などの原因により、単結晶半導体ほどの特性を達成することが難しい。そのため、上記特許文献1などのように、レーザビームの走査方法などを工夫することにより、半導体層の結晶性向上および薄膜トランジスタの性能向上が図られている。
【0008】
本発明の一態様は、結晶性に優れた半導体層を有するSOI基板を提供することを課題の一とする。または、本発明の一態様は、安価なSOI基板を提供することを課題の一とする。または、本発明の一態様は、結晶性に優れた半導体層を有するSOI基板により、高性能な半導体装置を提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、単結晶半導体基板から分離した単結晶半導体を用い、非単結晶半導体層を結晶化させ、結晶質半導体層を有するSOI基板を作製する。非単結晶半導体層は、レーザビームを照射することで、単結晶半導体を種結晶(結晶核)として結晶化させる。
【0010】
また、本発明の一態様は、加速されたイオンの照射とそれに伴う脆化層の形成により、単結晶半導体基板から単結晶半導体を分離し、分離した単結晶半導体を種結晶として非単結晶半導体層を結晶化させることが好ましい。
【0011】
本発明の一態様は、支持基板上に、バッファ層を介して単結晶半導体基板から分離させた単結晶半導体を部分的に形成し、単結晶半導体上に非単結晶半導体層を形成し、レーザビームを照射することにより、単結晶半導体を種結晶として非単結晶半導体層を結晶化させる。
【0012】
上記構成において、単結晶半導体基板に加速されたイオンを照射することで、単結晶半導体基板に脆化層を形成し、単結晶半導体基板と支持基板とを、バッファ層を介して貼りあわせる。熱処理を行うことにより、脆化層を境として単結晶半導体基板の一部を分離させ、バッファ層上に単結晶半導体を部分的に形成することが好ましい。
【0013】
本発明の一態様は、支持基板上に、バッファ層を介して非単結晶半導体層を形成し、非単結晶半導体層上に、単結晶半導体基板から分離させた単結晶半導体を部分的に形成し、レーザビームを照射することにより、単結晶半導体を種結晶として非単結晶半導体層を結晶化させる。
【0014】
上記構成において、単結晶半導体基板に加速されたイオンを照射することで、単結晶半導体基板に脆化層を形成し、単結晶半導体基板と支持基板とを、バッファ層及び非単結晶半導体層を介して貼りあわせる。熱処理を行うことにより、脆化層を境として単結晶半導体基板の一部を分離させ、非単結晶半導体層上に単結晶半導体を部分的に形成することが好ましい。
【0015】
また、本発明の一態様は、部分的に形成される単結晶半導体の結晶方位が揃っていることが好ましい。
【0016】
また、本発明の一態様は、脆化層を境として単結晶半導体基板の一部を分離させ単結晶半導体の連続層を形成した後、単結晶半導体の連続層を選択的にエッチングして単結晶半導体を部分的に形成してもよい。
【0017】
また、本発明の一態様は、部分的に形成される単結晶半導体を、ドット状、線状に形成することができる。
【0018】
また、本発明の一態様は、単結晶半導体基板の一部を分離させ、クラスター状の単結晶半導体を形成してもよい。
【0019】
また、本発明の一態様は、非単結晶半導体層または単結晶半導体に加熱された不活性ガスを吹き付けながらレーザビームを照射することができる。さらに、支持基板を加熱しながらレーザビームを照射することができる。
【0020】
なお、本明細書において、「単結晶」とは、結晶面、結晶軸が揃っている結晶であり、それを構成している原子または分子が空間的に規則正しい配列になっているものをいう。もっとも、単結晶は原子が規則正しく配列することによって構成されるものであるが、一部にこの配列の乱れがある格子欠陥を含むもの、意図的または非意図的に格子歪みを有するものも含むものとする。
【0021】
また、本明細書における「脆化層」とは、分割工程で、単結晶半導体基板が分割される領域およびその近傍のことを示す。「脆化層」を形成する手段によって「脆化層」の状態は異なるが、例えば、「脆化層」は、局所的に結晶構造が乱され、脆弱化された領域である。なお、場合によっては単結晶半導体基板の表面側から「脆化層」までの領域も多少脆弱化される場合があるが、本明細書の「脆化層」は後に分割される領域およびその近傍を指すものとする。
【0022】
また、本明細書において「第1」、「第2」、または「第3」等の数詞の付く用語は、要素を区別するために便宜的に付与しているものであり、数的に限定するものではなく、また配置および段階の順序を限定するものでもない。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様によれば、結晶性に優れた半導体層を有するSOI基板を提供することができる。または、安価なSOI基板を提供することができる。または、結晶性に優れた半導体層を有するSOI基板により、高性能な半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一態様に係るSOI基板の作製方法を説明する図。
【図2】本発明の一態様に係るSOI基板の作製方法を説明する図。
【図3】本発明の一態様に係るSOI基板の作製方法を説明する図。
【図4】本発明の一態様に係るSOI基板の作製方法を説明する図。
【図5】本発明の一態様に係るSOI基板の作製方法を説明する図。
【図6】本発明の一態様に係るSOI基板の作製方法を説明する図。
【図7】本発明の一態様に係るSOI基板の作製方法を説明する図。
【図8】本発明の一態様に係るSOI基板の作製方法を説明する図。
【図9】本発明の一態様に係るSOI基板の作製方法を説明する図。
【図10】本発明の一態様に係るSOI基板の作製方法を説明する図。
【図11】本発明の一態様に係るSOI基板の作製方法を説明する図。
【図12】本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法を説明する図。
【図13】本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法を説明する図。
【図14】本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法を説明する図。
【図15】マイクロプロセッサの構成の一例を示すブロック図。
【図16】RFCPUの構成の一例を示すブロック図。
【図17】液晶表示装置の画素の平面図および断面図。
【図18】EL表示装置の画素の平面図および断面図。
【図19】電子機器の例を示す外観図。
【図20】本発明の一態様に係る半導体装置を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更しうることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0026】
(実施の形態1)
本実施の形態では、結晶質半導体層の作製方法および結晶質半導体層を有するSOI基板の作製方法について説明する。
【0027】
図1および図2は、本発明の一態様に係る結晶化について説明する模式図である。図1は平面図であり、図2は図1の線分OPにおける断面図である。
【0028】
支持基板111上にバッファ層105が形成され、バッファ層105上に部分的に単結晶半導体133が形成されている(図1(A)、図2(A))。
【0029】
単結晶半導体133は、単結晶半導体基板から分離させ、支持基板111に貼りあわせて形成する。ここでは、島状に複数の単結晶半導体133を形成する例を図示している。単結晶半導体133は、バッファ層105上の全面でなく部分的に形成されるならば、形状など特に限定されるものではない。例えば、平面からみて、ドット状またはストライプ状などに単結晶半導体133が形成される。また、複数の単結晶半導体133において、個々の単結晶半導体は、短冊形状、円形状、多角形状など各種形状を取ることができる。図1では、円形状の単結晶半導体がドット状に点在して形成されている例を示している。また、単結晶半導体133は、単結晶半導体133の平均膜厚に対して表面粗さが大きく、部分的に欠損するものであってもよい。
【0030】
また、島状の複数の単結晶半導体133において、隣接する単結晶半導体同士の間隔は、それぞれの単結晶半導体を種結晶とした場合の横成長幅を考慮した間隔とすることが好ましい。また、バッファ層の面積に対する単結晶半導体の密度や個々の単結晶半導体の面積なども、単結晶半導体を種結晶とした場合の横成長幅を考慮して調整することが好ましい。例えば、隣接する単結晶半導体同士間の距離は、それぞれの単結晶半導体が横成長可能な距離の和程度とすることが好ましい。
【0031】
次に、単結晶半導体133上に非単結晶半導体層141を形成する(図1(B)、図2(B))。非単結晶半導体層141は、バッファ層105上の全面に形成される。
【0032】
非単結晶半導体層141としては、非晶質半導体層または微結晶半導体層を形成する。具体的には、非晶質シリコン層、微結晶シリコン層、非晶質シリコンゲルマニウム層、非晶質ゲルマニウム層などが挙げられる。非単結晶半導体層141は、化学気相成長(CVD;Chemical Vapor Deposition)法やスパッタリング法などを用いて形成する。
【0033】
例えば、プラズマCVD法により、非単結晶半導体層141を形成する。プラズマCVD装置の反応室に、半導体材料ガスまたは半導体材料ガスに適宜希釈ガスを加えた反応ガスを導入し、プラズマを生成して、被膜(非単結晶半導体層141)を成膜する。半導体材料ガスとしては、シラン、ジシランに代表される水素化シリコン、SiHCl2、SiHCl3、SiClなどの塩化シリコン、またはSiFなどのフッ化シリコンが挙げられる。希釈ガスとしては、水素または希ガス(ヘリウム、アルゴン、クリプトンまたはネオン)などが挙げられる。プラズマCVD装置は、例えば3MHz以上300MHz以下(代表的には13.56MHz、27.12MHz、60MHzなど)までの高周波電力(VHF帯を含む)、1GHz以上5GHz以下(代表的には2.45GHz)のマイクロ波電力を印加してプラズマを生成することができる。また、被処理体(ここではバッファ層105、単結晶半導体133が形成された支持基板111)は、100℃以上300℃以下、好ましくは120℃以上200℃以下に加熱し、被膜を成膜する。
【0034】
また、非単結晶半導体層141を形成した後、熱処理を行うことが好ましい。具体的には、非単結晶半導体層141中又は単結晶半導体133中の水素を脱離させることを目的とした熱処理を行うことが好ましい。半導体中の水素を脱離させておくことで、レーザビームの照射により半導体層がアブレーションしてしまうことを防ぐことができる。
【0035】
熱処理の温度は、水素が非単結晶半導体層141中又は単結晶半導体133中から放出される温度以上であって、支持基板111の歪み点近傍の温度までの範囲で設定する。熱処理に用いる装置としては、拡散炉、抵抗加熱炉などの加熱炉、RTA(瞬間熱アニール、Rapid Thermal Anneal)装置、マイクロ波加熱装置などが挙げられる。RTA装置によって熱処理を行う場合には、基板の歪み点近傍又はそれよりも若干高い温度で加熱することもできる。
【0036】
次に、レーザビーム171を照射して非単結晶半導体層141を結晶化させ(図2(B))、結晶質半導体層163を形成する(図1(D)、図2(C))。支持基板111上にバッファ層105を介して結晶質半導体層163が形成されることとなり、SOI基板を作製することができる。
【0037】
非単結晶半導体層141にレーザビーム171を照射することで、非単結晶半導体層141を溶融させる。非単結晶半導体層141にレーザビームが照射されるならば、非単結晶半導体層141側からレーザビームを照射しても、支持基板111側からレーザビームを照射してもよい。ただし、単結晶半導体133は種結晶(結晶核)とさせるため、単結晶半導体133を完全に溶融させてしまわないようにレーザビーム171を照射することが好ましい。単結晶半導体133は、単結晶半導体基板から分離させたものであり、同一の単結晶半導体基板から分離させたものであれば結晶方位をほぼ揃えることができる。
【0038】
レーザビーム171の照射により非単結晶半導体層141を溶融させ、単結晶半導体133を種結晶として結晶化させることで、単結晶半導体133の結晶方位に基づいて結晶化させることができる。その結果、従来のポリシリコン作製のように、非晶質半導体層にレーザビームを照射して結晶化を行う場合と比較して、結晶方位を揃えて結晶化を行うことができる。したがって、結晶性に優れた結晶質半導体層163、さらには単結晶半導体層と同程度に結晶性が優れた結晶質半導体層163を得ることができる。また、本形態に係る一態様は、種結晶が存在するため、特許文献1と比較してレーザビームを複雑に制御して照射する必要がないため工程が容易であり生産性が良好である。
【0039】
図1(C)は、図1(B)に示す点在している単結晶半導体133が種結晶となり、結晶成長が進行している様子を模式的に示している。図1(C)中の矢印161に示すように、単結晶半導体133から同心円状に結晶成長を進行させることができる。
【0040】
レーザビーム171を射出するレーザの種類は、非単結晶半導体層141を溶融させるレーザビームが射出できれば特に限定されない。例えば、パルス発振レーザや連続発振レーザ(CWレーザ)が挙げられる。
【0041】
パルス発振レーザの具体例としては、Arレーザ、エキシマ(ArF、KrF、XeCl)レーザ、COレーザ、YAGレーザ、YVOレーザ、YLFレーザ、YAlOレーザ、GdVOレーザ、Yレーザ、ルビーレーザ、アレキサンドライトレーザ、Ti:サファイアレーザ、銅蒸気レーザなどが挙げられる。連続発振レーザの具体例としては、Arレーザ、Krレーザ、COレーザ、YAGレーザ、YVOレーザ、YLFレーザ、YAlOレーザ、GdVOレーザ、Yレーザ、ルビーレーザ、アレキサンドライトレーザ、Ti:サファイアレーザ、ヘリウムカドミウムレーザなどが挙げられる。
【0042】
レーザビーム171の波長は、非単結晶半導体層141に吸収される波長とする。具体的な波長は、レーザビーム171の侵入長などを考慮して決定すればよい。また、レーザビーム171のエネルギー密度は、レーザビーム171の波長、非単結晶半導体層141の材料および膜厚などを考慮して決定すればよい。
【0043】
また、レーザビーム171は、酸素を含む雰囲気下(例えば、大気雰囲気下)、または窒素を含む雰囲気若しくは希ガスを含む雰囲気などの不活性雰囲気下で照射してもよい。レーザビーム171の照射を行う雰囲気を制御するには、雰囲気を制御した気密性のあるチャンバー内でレーザビーム171の照射を行えばよい。また、チャンバーを用いない場合、レーザビーム171の被照射面に窒素ガスなど不活性ガスを吹き付けることで、不活性雰囲気とすることもできる。また、真空中でレーザビーム171を照射してもよい。
【0044】
また、レーザビーム171は、非単結晶半導体層141を加熱しながら照射してもよい。例えば、非単結晶半導体層141が形成された支持基板111を載置するステージに加熱手段を設け、ステージの加熱により非単結晶半導体層141を加熱しながらレーザビーム171の照射を行う。また、非単結晶半導体層141に加熱された不活性ガス(例えば窒素ガス)を吹き付けながらレーザビーム171の照射を行うことができる。また、ステージを加熱し、且つ加熱された不活性ガスを吹き付けながらレーザビーム171の照射を行ってもよい。
【0045】
また、レーザビーム171の断面形状は、線状、矩形状(正方形または長方形を含む)とすることができる。レーザビーム171の断面形状は、光学系により適宜調節することができる。
【0046】
以上のように作製されたSOI基板は、結晶性に優れた結晶質半導体層を有している。そして、結晶性に優れた結晶質半導体層を有するSOI基板を用いて、高性能な半導体装置を作製することができる。
【0047】
なお、単結晶半導体133上に非単結晶半導体層141を積層することで生じる段差は、非単結晶半導体層141を結晶化する際のレーザビーム171の照射により、平坦化することができる。平坦化が十分でない場合は、必要に応じて、エッチング(ドライエッチング又はウェットエッチング)、レーザビームの照射、またはCMP(Chemical Mechanical Polishing)処理などを適宜行えばよい。また、段差を残したままとし、同一基板上に用途の異なる素子を形成することもできる。
【0048】
次に、図1(A)および図2(A)に示すように、バッファ層上に単結晶半導体133を部分的に形成する方法について説明する。
【0049】
単結晶半導体133の形成には、イオン(代表的には水素のイオン)の照射とそれに伴う脆化領域の形成による単結晶半導体基板の分離を利用することが好ましい。このような方法を用いることで、単結晶半導体基板の使用量を低減させることができる。また、単結晶半導体を分離して残った単結晶半導体基板は再利用することができる。その結果、省資源化および低コスト化を図ることができ、安価なSOI基板を提供することも可能となる。
【0050】
バッファ層上に単結晶半導体133を部分的に形成する方法の例として、(1)バッファ層上に単結晶半導体層を形成した後、単結晶半導体層を選択的にエッチングすることで部分的に単結晶半導体を形成する、(2)単結晶半導体基板に部分的に脆化層を形成することで部分的に単結晶半導体を形成する、(3)単結晶半導体基板を選択的にエッチングして複数の凸部を設け脆化層を形成した後、支持基板に貼り合わせることで、部分的に単結晶半導体を形成する、(4)単結晶半導体基板に脆化層を形成した後、単結晶半導体基板を選択的にエッチングして複数の凸部を設けて支持基板に貼り合わせることで、部分的に単結晶半導体を形成する、などが挙げられる。以下、(1)〜(4)の例について説明する。
【0051】
図3に、(1)バッファ層上に単結晶半導体層を形成した後、単結晶半導体層を選択的にエッチングすることで部分的に単結晶半導体を形成する一例を示す。
【0052】
単結晶半導体基板101を準備する(図3(A−1))。また、支持基板111を準備する(図3(B))。
【0053】
単結晶半導体基板101としては、単結晶シリコン基板、単結晶ゲルマニウム基板、単結晶シリコンゲルマニウム基板など、周期表第14族元素でなる単結晶半導体基板が挙げられる。その他、ガリウムヒ素やインジウムリンなどの化合物半導体基板が挙げられる。
【0054】
支持基板111としては、ガラス基板、石英基板、セラミック基板、またはサファイア基板などを用いる。安価で大判なSOI基板およびSOI基板を用いた半導体装置を提供するためには、支持基板111にガラス基板を用いることが好ましい。ガラス基板としては、例えばアルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスのような電子工業用に使われる基板が挙げられる。
【0055】
単結晶半導体基板101および支持基板111の表面は、汚染除去の点から、硫酸過水(SPM)、アンモニア過水(APM)、塩酸過水(HPM)、希フッ酸(DHF)などを用いて適宜洗浄することが好ましい。また、希フッ酸とオゾン水を交互に吐出して、単結晶半導体基板101または支持基板111の表面を洗浄してもよい。
【0056】
単結晶半導体基板101上にバッファ層105を形成する。また、単結晶半導体基板101の内部に脆化層103を形成する(図3(A−2))。
【0057】
単結晶半導体基板101の表面から所定の深さの領域に、結晶構造が損傷された脆化層103を形成する。脆化層103は、運動エネルギーを有する水素等のイオンを単結晶半導体基板101に照射することで形成できる。
【0058】
具体的には、加速され運動エネルギーを持ったイオンを単結晶半導体基板101に照射することで、単結晶半導体基板101の表面から所定の深さの領域に、照射されたイオンを構成する元素が添加されて脆化層103が形成される。運動エネルギーを有するイオンとは、ソースガスを励起してソースガスのプラズマを生成し、該プラズマに含まれるイオンを電界の作用によりプラズマから引き出して加速したイオンである。
【0059】
脆化層103が形成される領域の深さは、イオンの運動エネルギー、質量と電荷、イオンの照射角によって調節することができる。また、バッファ層などが形成された側から、単結晶半導体基板にイオンを照射して脆化層を形成する場合、バッファ層の厚さによっても、脆化層103の位置を調節することができる。また、イオンの運動エネルギーは、加速電圧、ドーズ量などにより調節できる。
【0060】
また、脆化層103の形成は、イオンドーピング法またはイオン注入法により行うことができる。イオンドーピング法に適用されるイオンドーピング装置の代表例は、プロセスガスをプラズマ励起して生成された全ての種類のイオンをチャンバー内に配置された被処理体に照射する非質量分離型の装置である。非質量分離型の装置は、プラズマ中のイオンを質量分離しないで、全ての種類のイオンを被処理体に照射する。イオン注入法に適用されるイオン注入装置は質量分離型の装置である。イオン注入装置は、プラズマ中のイオンを質量分離し、ある特定の質量のイオンを被処理体に照射する装置である。
【0061】
ここで、脆化層103は、単結晶半導体基板101の表面から、可能な限り浅く形成することが好ましい。単結晶半導体基板101の浅い領域に脆化層103を形成するためには、単結晶半導体基板上に絶縁層などを厚く形成して絶縁層側からイオンを照射する、またはイオンの加速のために印加する加速電圧を低くするなどの方法が挙げられる。脆化層103を浅く形成することで、単結晶半導体基板101から分離される単結晶半導体の量が少なくなり、繰り返し利用できる量も増えるため、製造コスト低減および省資源化が可能となる。また、加速電圧を低下させることによりイオンのドーズ量を減らすことが可能となり、律速となるイオン照射工程の時間を短くすることができる。そのため、タクトタイムを向上させ、生産性を向上させることができる。
【0062】
バッファ層105は、酸化シリコン層、酸化窒化シリコン層、窒化シリコン層、または窒化酸化シリコン層などの絶縁層を用いて、単層構造または2層以上の積層構造で形成する。バッファ層105を形成する絶縁層は、CVD法、スパッタリング法、原子層エピタキシ(ALE)法、又は熱酸化法などにより形成する。
【0063】
ここで、本明細書における酸化窒化シリコン層とは、組成として窒素よりも酸素の含有量が多く、好ましくはラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)及び水素前方散乱法(HFS:Hydrogen Forward Scattering)を用いて測定した場合に、組成範囲として酸素が50atoms%乃至70atoms%、窒素が0.5atoms%乃至15atoms%、シリコンが25atoms%乃至35atoms%、水素が0.1atoms%乃至10atoms%の範囲で含まれるものをいう。また、窒化酸化シリコン層とは、組成として酸素よりも窒素の含有量が多く、RBS及びHFSを用いて測定した場合に、酸素が5atoms%乃至30atoms%、窒素が20atoms%乃至55atoms%、シリコンが25atoms%乃至35atoms%、水素が10atoms%乃至30atoms%の範囲で含まれるものをいう。
【0064】
バッファ層105は、単結晶半導体基板101および支持基板111のうち、いずれか一方の基板の表面上、または、両方の基板上に設ければよい。単結晶半導体基板101に、脆化層103を形成する前、脆化層103を形成した後、または、脆化層103を形成する前および脆化層103を形成した後に、バッファ層を形成する。また、支持基板111側にのみバッファ層を形成してもよく、単結晶半導体基板101側および支持基板111側にバッファ層を形成してもよい。形成されるそれぞれのバッファ層は、単層膜でも2層以上の積層膜でもよい。
【0065】
バッファ層105を間に介して、単結晶半導体基板101と支持基板111とを貼り合わせる(図3(C))。
【0066】
単結晶半導体基板101上のみにバッファ層を形成した場合は、バッファ層の表面と支持基板111の表面とを接合させる。支持基板111上のみにバッファ層を形成した場合は、バッファ層の表面と単結晶半導体基板101の表面とを接合させる。単結晶半導体基板101の表面上にバッファ層を形成し、且つ、支持基板111の表面上にバッファ層を形成した場合は、単結晶半導体基板101側バッファ層の表面と支持基板111側バッファ層の表面とを接合させる。
【0067】
例えば、単結晶半導体基板101と支持基板111とを対向させ、単結晶半導体基板101上のバッファ層105と支持基板111の表面とを密着させた後、単結晶半導体基板101の一箇所に0.1N/cm以上50N/cm以下、好ましくは0.1N/cm以上20N/cm以下、例えば1N/cm程度の圧力を加える。圧力を加えた部分からバッファ層105と支持基板111とが接合しはじめ、自発的に接合され全面におよぶ。接合は、ファンデルワールス力や水素結合が作用しており、熱処理を伴わず、常温で行うことができる。そのため、支持基板111に、ガラス基板のように耐熱温度が低い基板を用いることができる。
【0068】
なお、単結晶半導体基板101側接合面、および支持基板111側接合面に対し、表面処理を行ってから貼り合わせを行ってもよい。表面処理としては、プラズマ処理、オゾン処理、メガソニック洗浄、2流体洗浄(純水や水素添加水等の機能水を窒素等のキャリアガスとともに吹き付ける方法)又はこれらの方法の組み合わせが挙げられる。接合面にプラズマ処理を行った後、オゾン処理、メガソニック洗浄、2流体洗浄等を行うことによって、接合面に付着する有機物等のゴミを除去し、表面を親水化することができる。その結果、単結晶半導体基板101と支持基板111の接合界面での接合強度を向上させることができる。
【0069】
また、バッファ層105の表面と支持基板111の表面とを密着させ、接合させた後、熱処理を行うことで接合界面の接合強度を高めることが好ましい。熱処理の温度は、脆化層103に亀裂を発生させない温度とし、例えば、室温以上410℃未満の温度範囲で処理する。また、室温以上410℃未満の温度範囲で加熱した雰囲気下で、バッファ層105の表面と支持基板111の表面とを密着させ接合させてもよい。熱処理に用いる装置としては、拡散炉、抵抗加熱炉などの加熱炉、RTA装置、マイクロ波加熱装置などが挙げられる。接合強度を高めるための熱処理は、貼り合わせを行った装置或いは場所で、そのまま連続して行うことが好ましい。また、接合強度を高めるための熱処理からそのまま連続して、脆化層103を境とした単結晶半導体基板101を分割する熱処理を行ってもよい。
【0070】
単結晶半導体基板101の内部に形成された脆化層103を境として、単結晶半導体基板101を分割することで、支持基板111上にバッファ層105を間に介して単結晶半導体層131が形成される(図3(D))。ここでは、単結晶半導体の連続層である単結晶半導体層131が形成される例を図示している。
【0071】
例えば、熱処理を行うことにより、脆化層103に沿って単結晶半導体基板101を分割することができる。これは、熱処理による温度上昇によって、脆化層103に形成されている微小な空洞の体積変化が起こり、脆化層103に亀裂が生じるためである。なお、熱処理の温度は、脆化層103に亀裂が生じる温度以上であって、支持基板111の歪み点近傍の温度までの範囲で設定する。熱処理に用いる装置は、上記接合強度を高める熱処理と同様に、加熱炉、RTA装置、マイクロ波加熱装置などが挙げられる。例えば、RTA装置を用いる場合、加熱温度550℃以上730℃以下、処理時間0.5分以上60分以内として、単結晶半導体基板101の分割を行うことができる。
【0072】
単結晶半導体層131を選択的に除去して、バッファ層105上に部分的に単結晶半導体133を形成する(図3(F))。
【0073】
単結晶半導体層131の選択的な除去は、例えば、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術により行う。図3(E)に示すように、単結晶半導体層131上にマスク181を部分的に形成する。マスク181としては、例えばレジストマスクを形成する。また、マスク181の形状を反映して単結晶半導体133が形成されるため、例えば、平面からみて、ドット状やストライプ状などのマスク181を形成する。そして、マスク181を用いて単結晶半導体層131をエッチングすることで、単結晶半導体133を形成する。このようにすることで、連続層であった単結晶半導体を選択的にエッチングして、単結晶半導体の非連続層が形成される。なお、不要となったマスク181は、適宜除去すればよい。
【0074】
以上により、バッファ層105上に部分的に単結晶半導体133を形成することができる。
【0075】
次に、図4に、(2)単結晶半導体基板に部分的に脆化層を形成することで部分的に単結晶半導体を形成する一例を示す。なお、図3と同一又は同様の箇所は、説明を省略又は簡略化する。
【0076】
バッファ層105が形成された単結晶半導体基板101上に、部分的にマスク281を形成する(図4(A−1))。
【0077】
マスク281は、イオンを照射する際のマスクとなる。そのため、マスク281の形状を反映して、マスク281が形成されていない領域に脆化層が形成されることとなる。例えば、マスク281が形成されていない領域が、平面からみて、ドット状やストライプ状などになるよう形成する。
【0078】
なお、マスク281としては、イオンの照射に耐えるものを用いる。具体的には、酸化シリコン層、窒化シリコン層、酸化窒化シリコン層、または窒化酸化シリコン層などの絶縁層をハードマスクとして形成することが好ましい。
【0079】
また、マスク281が開口している領域(マスク281の開口部)に、10nm以下の薄い絶縁層(酸化シリコン層、窒化シリコン層など)を形成してもよい。絶縁層を設けておくことで、脆化層を形成するためのイオンの照射により、バッファ層105がエッチングされるのを防ぐことができる。例えば、ラジカル処理(酸素ラジカル処理や窒素ラジカル処理など)またはプラズマ処理(酸素プラズマ処理や窒素プラズマ処理など)等により、10nm以下の薄い絶縁層を形成することが好ましい。また、酸化性の薬剤により形成されるケミカルオキサイドを用いてもよい。
【0080】
単結晶半導体基板の内部に、部分的に脆化層203を形成する(図4(A−2))。
【0081】
マスク281によりイオンの照射を遮るため、マスク281が形成されていない領域に脆化層203が形成される。なお、脆化層203は、単結晶半導体基板101の表面から、可能な限り浅く形成する。不要となったマスク281はエッチングなどにより除去すればよい。
【0082】
支持基板111を準備する(図4(B))。なお、ここでは図示していないが、支持基板111側にもバッファ層105と同様のバッファ層(絶縁層など)を形成することが好ましい。
【0083】
バッファ層105を間に介して、単結晶半導体基板101と支持基板111とを貼り合わせる(図4(C))。
【0084】
単結晶半導体基板101の内部に形成された脆化層203を境として、単結晶半導体基板101を分割する。支持基板111上に、バッファ層105を間に介して、部分的に単結晶半導体133が形成される(図4(D))。
【0085】
脆化層203は、単結晶半導体基板101に部分的に形成されている。そのため、熱処理などによる単結晶半導体基板101の分割工程で、脆化層203が形成されている領域及びその近傍を選択的にバッファ層105に接合させることができる。
【0086】
以上により、バッファ層上に部分的に単結晶半導体133を形成することができる。
【0087】
次に、図5に、(3)単結晶半導体基板を選択的にエッチングして複数の凸部を設け脆化層を形成した後、支持基板に貼り合わせることで、部分的に単結晶半導体を形成する一例を示す。なお、図3、図4と同一又は同様の箇所は、説明を省略又は簡略化する。
【0088】
単結晶半導体基板101を選択的にエッチングして溝(以下、凹部104ともいう)を形成し、複数の凸状に残存する部分(以下、凸部102ともいう)を得る(図5(A−1))。
【0089】
単結晶半導体133を凸部102に基づき形成するため、例えば平面からみて、ドット状やストライプ状となるように凸部102を形成する。例えば、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術により、単結晶半導体基板101上に、レジストによりマスク283を形成し、単結晶半導体基板101を選択的にエッチングして溝を形成することで、複数の凸部102を形成する。なお、溝(凹部104)の深さを凸部102に形成される脆化層よりも深くなるようにすると、凸部102のみを容易に分離させることができる。不要となったマスク283は適宜除去すればよい。
【0090】
また、マスク283を除去した後、単結晶半導体基板101の凹部104を設けた側の表面に10nm以下の薄い絶縁層(酸化シリコン層、窒化シリコン層など)を形成することが好ましい。絶縁層を設けておくことで、脆化層を形成するイオンの照射により、単結晶半導体基板101がエッチングされることを防ぐことができる。例えば、ラジカル処理(酸素ラジカル処理や窒素ラジカル処理など)またはプラズマ処理(酸素プラズマ処理や窒素プラズマ処理など)等により、10nm以下の薄い絶縁層を形成することが好ましい。また、酸化性の薬剤により形成されるケミカルオキサイドを用いてもよい。
【0091】
単結晶半導体基板101の内部に脆化層223を形成する(図5(A−2))。脆化層223は、単結晶半導体基板101に形成された凸部102及び凹部104により、段違いに形成される。なお、単結晶半導体基板101にイオンを照射する際、保護層となる絶縁層を形成してもよい。
【0092】
また、支持基板111を準備し、支持基板111上にバッファ層225を形成する(図5(B))。バッファ層225は、バッファ層105と同様の材料及び方法で形成すればよい。
【0093】
バッファ層225を間に介して、単結晶半導体基板101と支持基板111とを貼り合わせる(図5(C))。単結晶半導体基板101には複数の凸部102が設けられており、凸部102の表面がバッファ層225表面に接合される。
【0094】
単結晶半導体基板101の内部に形成された脆化層223を境として、単結晶半導体基板101を分割する。支持基板111上に、バッファ層225を間に介して、部分的に単結晶半導体133が形成される(図5(D))。
【0095】
単結晶半導体基板101において、凸部102がバッファ層225に接合されている。そのため、熱処理などによる単結晶半導体基板101の分割工程で、凸部102を選択的にバッファ層225上に残存させることができる。
【0096】
以上により、バッファ層上に部分的に単結晶半導体133を形成することができる。
【0097】
次に、図6に、(4)単結晶半導体基板に脆化層を形成した後、単結晶半導体基板を選択的にエッチングして複数の凸部を設けて支持基板に貼り合わせることで、部分的に単結晶半導体を形成する一例を示す。なお、図3〜図5と同一又は同様の箇所は、説明を省略又は簡略化する。
【0098】
単結晶半導体基板101の内部に脆化層103を形成する(図6(A−1))。
【0099】
脆化層103を形成する際、単結晶半導体基板101に保護層となる絶縁層を形成し、イオンを照射することが好ましい。例えば、ケミカルオキサイド、またはラジカル処理若しくはプラズマ処理などにより得られる10nm以下の薄い絶縁層を保護層として形成する。保護層を形成しておくことで、イオンの照射により単結晶半導体基板101がエッチングされるのを防ぐことができる。
【0100】
単結晶半導体基板101を選択的にエッチングして溝(凹部246)を形成し、複数の凸状に残存する部分(以下、凸部244ともいう)を得る(図6(A−2))。
【0101】
上述した図5と同様、凸部244に基づき単結晶半導体133を形成する。所望の形状にマスク285を形成し、単結晶半導体基板101を選択的にエッチングして溝(凹部246)を形成することで、複数の凸部244を形成する。ここで、溝(凹部246)の深さは凸部244に脆化層103が形成された深さよりも深くすることで、凸部244のみに脆化層103が形成された状態となる。不要となったマスク285は適宜除去する。
【0102】
支持基板111を準備し、支持基板111上にバッファ層225を形成する(図6(B))。
【0103】
バッファ層225を間に介して、単結晶半導体基板101と支持基板111とを貼り合わせる(図6(C))単結晶半導体基板101には複数の凸部244が設けられており、凸部244の表面がバッファ層225表面に接合される。
【0104】
単結晶半導体基板101の内部に形成された脆化層103、ここでは凸部244に形成された脆化層103を境として、単結晶半導体基板101を分割する。支持基板111上に、バッファ層225を間に介して、部分的に単結晶半導体133が形成される(図6(D))。
【0105】
単結晶半導体基板101において、凸部244がバッファ層225に接合されている。そのため、熱処理などによる単結晶半導体基板101の分割工程で、凸部244を選択的にバッファ層225上に残存させることができる。
【0106】
以上により、バッファ層上に部分的に単結晶半導体133を形成することができる。
【0107】
なお、図3〜図6で説明した、バッファ層上に部分的に単結晶半導体133を形成する方法において、単結晶半導体133が分離された単結晶半導体基板121は、繰り返し利用することができる。単結晶半導体基板121には、適宜再生処理を行う。再生処理としては、エッチングによる損傷領域の除去やレーザビーム照射による結晶性向上などがあげられる。単結晶半導体基板121は、本形態の単結晶半導体基板101として用いてもよいし、その他の用途へ流用してもよい。
【0108】
本形態のように作製されるSOI基板は、スマートカット法などの貼り合わせSOI法により得られるSOI基板よりも単結晶半導体の使用量を少なくすることができ、省資源化および低コスト化を図ることができる。
【0109】
なお、イオンの照射とそれに伴う脆化領域の形成により単結晶半導体基板を分離する場合、イオンの加速のために印加する加速電圧を低下させる、又はイオンを照射して該イオンを構成する元素を通過させる絶縁層(バッファ層、保護層など)を厚く形成することで、単結晶半導体基板の浅い領域に脆化層を形成できる。そして、分離する単結晶半導体層を薄くすることができる。しかし、単結晶半導体基板の浅い領域に厚さの均一な脆化層を形成するのは難しく、分離する単結晶半導体層を薄くしようとすると、局所的に分離できない半導体が存在して分離後の単結晶半導体層に孔が形成されるなど、欠陥や欠損が増加しやすい。例えば、単結晶半導体層が100nm以下、50nm以下、さらに30nm以下と薄くなっていくほど欠陥や欠損が生じやすい。
単結晶半導体層に孔が存在すると、表示装置を作製した場合、孔により不良のあるトランジスタが形成され、画素が動かないなどの致命的な欠陥となりうる。本形態のように、分離した単結晶半導体上に非晶質半導体層を形成し、非晶質半導体層を結晶化させることで、孔などの欠陥がなく、結晶性に優れた半導体層を形成することができる。また、イオンのドーズ量を少なくできるため、生産性向上を図ることもできる。
【0110】
なお、本実施の形態で示した構成は、本明細書の他の実施の形態で示す構成と適宜組み合わせることができる。
【0111】
(実施の形態2)
本形態では、上記実施の形態と異なるSOI基板の作製方法について説明する。以下、図7を用いて説明する。
【0112】
支持基板111上にバッファ層105が形成され、バッファ層105上に非単結晶半導体層341が形成されている。そして、非単結晶半導体層341上に部分的に単結晶半導体133が形成されている(図7(A))。
【0113】
次に、レーザビーム371を照射して非単結晶半導体層341を結晶化させ(図7(B))、結晶質半導体層363を形成する(図7(C))。支持基板111上にバッファ層105を介して結晶質半導体層363が形成されることとなり、SOI基板を作製することができる。
【0114】
本形態における図7と上述した実施の形態1における図2との違いは、非単結晶半導体層341上に単結晶半導体133が形成されることである。図7(A)に示す構成を得るためには、図3(A−1)、図4(A−1)において単結晶半導体基板101上に非単結晶半導体層341を形成した後にバッファ層105を形成する、図5(B)、図6(B)において支持基板111上にバッファ層225を形成し、バッファ層225上に非単結晶半導体層341を形成する、などが挙げられる。非単結晶半導体層341は、図2における非単結晶半導体層141と同様に形成すればよい。
【0115】
なお、非単結晶半導体層341と単結晶半導体133を貼り合わせる(接合させる)場合は、貼り合わせを行う面の一方または両方に活性化処理を行うことが好ましい。具体的には、アルゴンガス(Arガス)を用いたプラズマ照射、ラジカル照射、原子ビーム照射、またはイオンビーム照射などの活性化処理を行うことが好ましい。
【0116】
図7(B)では、支持基板111側からレーザビーム371を照射する例を示している。非単結晶半導体層341にレーザビームが照射されるならば照射される方向は限定されないが、単結晶半導体133を完全に溶融させてしまわないことが好ましい。本形態では、単結晶半導体133の下層に非単結晶半導体層341が位置するため、支持基板111側からレーザビームを照射することで、効率良く非単結晶半導体層341を結晶化させることができる。単結晶半導体133が種結晶となり、結晶方位をほぼ揃えて非単結晶半導体層341を結晶化させることができる。
【0117】
なお、非単結晶半導体層341上に単結晶半導体133を形成することで生じる段差は、非単結晶半導体層341を結晶化する際のレーザビーム371の照射により、平坦化することができる。平坦化が十分でない場合は、必要に応じて、エッチング、レーザビームの照射、またはCMP処理などを適宜行えばよい。また、段差を残したままとし、厚さの違いを用途の異なる素子作製に用いてもよい。膜厚の違いは、同一基板上に用途の異なる素子を形成する際に利用することができる。
【0118】
なお、本実施の形態で示した構成は、本明細書の他の実施の形態で示す構成と適宜組み合わせることができる。
【0119】
(実施の形態3)
本形態では、上記実施の形態と異なるSOI基板の作製方法について説明する。以下、図8を用いて説明する。
【0120】
単結晶半導体基板101を準備し(図8(A−1))、単結晶半導体基板101上にバッファ層105を形成し、単結晶半導体基板101内部に脆化層403を形成する(図8(A−2))。また、支持基板111を準備する(図8(B))。
【0121】
バッファ層105を間に介して、単結晶半導体基板101と支持基板111とを貼り合わせる(図8(C))。
【0122】
脆化層403を境として単結晶半導体基板101を分割し、支持基板111上に、バッファ層105を間に介して、クラスター状の単結晶半導体433を形成する(図8(D))。
【0123】
ここで、「クラスター」とは、複数の原子又は分子が集まってできる構造単位を示す。例えば、単結晶半導体基板101としてシリコン基板を用いて、バッファ層105上にクラスター状シリコンを形成する。
【0124】
クラスター状の単結晶半導体433は、例えば単結晶半導体基板101表面から極浅い領域に脆化層403を形成し、熱処理などにより単結晶半導体基板101を分割することで形成する。なお、単結晶半導体433は、クラスター状でなく、100nm以下、50nm以下、30nm以下、又は極薄(例えば一原子層)の連続層であってもよい。脆化層403を極浅い領域に形成する方法としては、厚い絶縁層(バッファ層、保護層など)を介して単結晶半導体基板101にイオンを照射する、またはイオンのドーズ量を減少させるなどが挙げられる。
【0125】
クラスター状の単結晶半導体433上に非単結晶半導体層441を形成し、非単結晶半導体層441にレーザビーム471を照射して結晶化させ(図8(E)参照)、結晶質半導体層463を形成する(図8(F))。以上により、支持基板111上に結晶質半導体層463が形成されてSOI基板を作製することができる。
【0126】
非単結晶半導体層441は、図2における非単結晶半導体層141と同様に形成すればよい。また、上記実施の形態2のように、バッファ層上に非単結晶半導体層を形成した後、非単結晶半導体層上にクラスター状の単結晶半導体を形成してもよい。レーザビーム471の照射についても、レーザビーム171と同様である。
【0127】
なお、単結晶半導体433上に非単結晶半導体層441を積層することで生じる段差は、非単結晶半導体層441を結晶化する際のレーザビーム471の照射により、平坦化することができる。平坦化が十分でない場合は、必要に応じて、エッチング、レーザビームの照射、またはCMP処理などを適宜行えばよい。
【0128】
本形態のようにクラスター状の単結晶半導体を用いることで、一回の工程で単結晶半導体基板から分離する単結晶半導体の量が少なくなるので、省資源化及び低コスト化を図ることができる。残る単結晶半導体基板も多くなるので、繰り返し利用出来る回数も増えることになる。その結果、安価なSOI基板の提供を可能とすることができる。
【0129】
また、脆化層403を極浅く形成することでクラスター状の単結晶半導体を形成すれば、フォトリソグラフィ技術やエッチング技術を用いたパターニングは不要であり、工程が容易になり生産性が向上する。
【0130】
さらに、クラスター状の単結晶半導体は、連続層よりも厚みを薄くでき、上層に非単結晶半導体層を形成し結晶化して得られる結晶質半導体層の平坦性も良好にできる。
【0131】
なお、本実施の形態で示した構成は、本明細書の他の実施の形態で示す構成と適宜組み合わせることができる。
【0132】
(実施の形態4)
本形態では、上記実施の形態と異なるSOI基板の作製方法について説明する。
【0133】
本形態では、1枚の単結晶半導体基板から、種結晶となる単結晶半導体を効率良く分離して、SOI基板を作製する例について説明する。ここでは、1枚の単結晶半導体基板から矩形状(短冊状)である単結晶半導体を複数分離させることで、種結晶となる単結晶半導体を1枚の基板から効率良く分離する例を説明する。1枚の単結晶半導体基板から分離させる矩形状である複数の単結晶半導体は、複数の支持基板上にそれぞれ形成することが好ましい。
【0134】
なお、本形態では、矩形状(短冊状)である単結晶半導体を分離させる例を示すが、無駄なく単結晶半導体基板を使用できる形状であれば特に限定されない。複数の単結晶半導体が分離され、残った単結晶半導体基板表面(分離面)の平坦性を良好にできる形状であることが好ましい。残った単結晶半導体基板表面の平坦性が良好であれば、繰り返し又はその他の用途に用いる際にも使いやすく、再利用するための処理も容易で無駄となる部分を少なくできる。矩形状(短冊状)の単結晶半導体を分離させれば、容易に、無駄なく、平坦な表面を有する単結晶半導体基板を残すことができる。
【0135】
本形態に係る一態様は、支持基板と単結晶半導体基板を準備し、支持基板上に、バッファ層を介して、単結晶半導体基板から分離させた矩形状の単結晶半導体を形成する工程Aと、矩形状の単結晶半導体が形成されたバッファ層上に非単結晶半導体層を形成し、レーザビームを照射することにより、矩形状の単結晶半導体を種結晶として非単結晶半導体層を結晶化させる工程Bとを行うことでSOI基板を作製する。
【0136】
工程Aおよび工程Bをセットとして、当該工程A工程Bを複数並行又は繰り返し行うことで、複数のSOI基板を作製する。複数の工程Aにおいて、1枚の単結晶半導体基板から、複数の支持基板へ向けて、それぞれ矩形状の単結晶半導体を分離させ、それぞれバッファ層を介して、それぞれの支持基板上にそれぞれの矩形状の単結晶半導体を形成する。このとき、支持基板は複数枚であるのに対して、単結晶半導体基板は1枚又は支持基板の枚数より少なくできる。
【0137】
また、上記複数の工程Aにおいて、1枚の単結晶半導体基板から複数の矩形状の単結晶半導体を分離させ、残った単結晶半導体基板の表面(分離面)を平坦(略平坦)にすることが好ましい。
【0138】
以下、図面を用いて具体的に説明する。まず、図9を用いて上記工程Aの一例を説明する。
【0139】
図9(A−1)に示すように、単結晶半導体基板551を準備し、単結晶半導体基板551の内部に部分的に脆化層553aを形成する。なお、図9(A−1)の上図は断面模式図であり、下図は平面図である。
【0140】
ここでは、部分的に脆化層553aを形成するため、マスク581aを形成する。マスク581aにより、脆化層を形成するためのイオンの照射を遮り、部分的に脆化層553aを形成することができる。また、図9(A−1)では、単結晶半導体基板551端部が矩形状(図示するのは短冊状)に露出するように、マスク581aを形成する例を示している。なお、脆化層553aを形成するためのイオンの照射や、単結晶半導体基板551の材料などについては、それぞれ、上述した脆化層103、単結晶半導体基板101の説明と同じである。なお、ここでは図示していないが、単結晶半導体基板551上(単結晶半導体基板551とマスク581aとの間)にバッファ層(絶縁層など)を形成してもよい。
【0141】
マスク581aとしては、イオンの照射に耐えるものを用いる。具体的には、酸化シリコン層、窒化シリコン層、酸化窒化シリコン層、または窒化酸化シリコン層などの絶縁層をハードマスクとして形成することが好ましい。
【0142】
また、ここではイオンを通過させたい領域はイオンの照射を遮るものを設けない(イオンを通過させたい領域は露出させている)マスク581aの例を図示しているが、異なる厚さ(段差)を有するマスクを用いることもできる。例えば、イオンを通過させたい領域とイオンを遮りたい領域で段差のあるマスクを用いる。マスクにおいて、イオンを通過させたい領域はイオンが通過できる程度に厚さを薄くし、イオンを遮りたい領域はイオンを通過させない程度に厚さを厚くする。脆化層を形成する領域を、マスクを通過させてイオンを照射する構成とすることで、単結晶半導体基板551の浅い領域に、容易に脆化層553aを形成することができる。
【0143】
脆化層553aを形成した後、不要となったマスク581aはエッチングなどにより適宜除去すればよい。また、マスク581aを除去した後、凹部が設けられた側の単結晶半導体基板表面に、ケミカルオキサイド、またはラジカル処理若しくはプラズマ処理などにより得られる絶縁層を形成してもよい。
【0144】
図9(B−1)に示すように、バッファ層505aが形成された支持基板511a上に単結晶半導体501aを接合させる。
【0145】
単結晶半導体501aの形成は、上記実施の形態1などで説明した単結晶半導体133の形成と同様に行えばよい。バッファ層505a、支持基板511aについても、上述したバッファ層105、支持基板111の説明と同じである。バッファ層を間に介して、支持基板511aと単結晶半導体基板551とを貼り合わせる。単結晶半導体基板551内部に部分的に形成された脆化層553aを境として、単結晶半導体基板551から単結晶半導体501a(ここでは短冊状の単結晶半導体501a)を分離させ、バッファ層505a上に単結晶半導体501aを接合させる。
【0146】
なお、単結晶半導体基板551において、支持基板511aに貼り合わせない領域(バッファ層505a上に接合させない領域)は、支持基板511aに貼り合わされないように、予め処理しておくことが好ましい。例えば、単結晶半導体基板551の接合させない領域(単結晶半導体501aとして分離される領域以外)の表面は疎水性にし、脆化層が形成された領域(単結晶半導体501aとして分離される領域)の表面は親水性にすることで、所望の領域を支持基板511aに貼り合わせることができる。または、単結晶半導体基板551の接合させない領域は凹部となり、脆化層が形成された領域(単結晶半導体501aとなる領域)は凸部となるように、単結晶半導体基板551に段差をつけることで、貼り合わせる領域を制御してもよい。または、単結晶半導体基板551の接合させない領域の表面粗さを大きくすることで、貼り合わせる領域を制御してもよい。
【0147】
また、図9(B−1)に示すように、単結晶半導体基板551から単結晶半導体501aが分離され、残った単結晶半導体基板551aが得られる。
【0148】
次に、図9(B−1)で残った単結晶半導体基板551aを用い、図9(A−2)に示すように、単結晶半導体基板551a内部に部分的に脆化層553bを形成する。脆化層553bは、例えば図9(A−1)で脆化層553aを形成した領域の隣に形成する。マスク581bは、図9(A−1)で露出させた隣の領域が露出するよう形成する。ここで、図9(A−2)のようにマスク581bの側面と、単結晶半導体基板551aの段差部の側面と、を揃えて形成する(面一で形成する)ことが難しい場合は、マスク581bが単結晶半導体基板551aの段差部を乗り越えるよう形成されていてもよい。
【0149】
図9(B−2)に示すように、バッファ層505bが形成された支持基板511b上に単結晶半導体501bを接合させる。単結晶半導体基板551aから単結晶半導体501bが分離され、残った単結晶半導体基板551bが得られる。
【0150】
さらに、単結晶半導体基板551bを用い、図9(A−3)に示すように、単結晶半導体基板551b内部に部分的に脆化層553cを形成する。脆化層553cは、例えば図9(A−2)で脆化層553bを形成した領域の隣(脆化層553aが形成された領域と逆側)に形成する。マスク581cは、図9(A−3)の平面図で示すように形成すればよい。ここで、図9(A−3)のようにマスク581cの側面と、単結晶半導体基板551bの段差部の側面と、を揃えて形成する(面一で形成する)ことが難しい場合は、マスク581cが単結晶半導体基板551bの段差部を乗り越えるよう形成されていてもよい。
【0151】
図9(B−3)に示すように、バッファ層505cが形成された支持基板511c上に単結晶半導体501cを接合させる。単結晶半導体基板551bから単結晶半導体501cが分離され、残った単結晶半導体基板551cが得られる。
【0152】
さらに、単結晶半導体基板551cを用い、図9(A−4)に示すように、単結晶半導体基板551c内部に部分的に脆化層553dを形成する。脆化層553dは、例えば図9(A−3)で脆化層553cを形成した領域の隣(脆化層553bが形成された領域と逆側)に形成する。マスク581dは、図9(A−4)の平面図で示すように形成すればよい。ここで、図9(A−4)のようにマスク581dの側面と、単結晶半導体基板551cの段差部の側面と、を揃えて形成する(面一で形成する)ことが難しい場合は、マスク581dが単結晶半導体基板551cの段差部を乗り越えるよう形成されていてもよい。
【0153】
図9(B−4)に示すように、バッファ層505dが形成された支持基板511d上に単結晶半導体501dを接合させる。単結晶半導体基板551cから単結晶半導体501dが分離され、残った単結晶半導体基板551dが得られる。
【0154】
なお、マスク581b、マスク581c、マスク581dは、マスク581aの説明と同じである。また、イオンを通過させたい領域はイオンの照射を遮るものを設けないマスクに代えて、段差のあるマスクを用いることができる。イオンを通過させたい領域(脆化層を形成したい領域)の厚さを薄くしたマスクを用いて脆化層の形成を行うことで、単結晶半導体基板の浅い領域に、容易に脆化層を形成することができる。
【0155】
以上のように単結晶半導体基板551から単結晶半導体を分離させていくことで、無駄なく単結晶半導体基板を用いることができる。具体的には、図9(B−4)に示された単結晶半導体基板551dの表面(分離面)はほぼ平坦になっている。また、図9(A−1)〜図9(B−4)までで、4枚分のSOI基板の種結晶を形成できている。
【0156】
なお、図9では、短冊状の単結晶半導体を分離しバッファ層上に接合させる例を示したが、単結晶半導体基板から分離させる単結晶半導体の形状は、無駄なく単結晶半導体基板を使用できる形状であれば特に限定されない。
【0157】
また、図9では、4枚分のSOI基板作製用の種結晶を形成する例を示したが、1枚の単結晶半導体基板から分離させる単結晶半導体の個数は特に限定されない。例えば、2つ、3つ、または5つ以上の単結晶半導体を分離させることで、残る単結晶半導体基板の表面(分離面)が平坦になるようにしてもよい。
【0158】
次に、図10を用いて工程Bの一例を説明する。図10(A)に示すように、単結晶半導体501が形成されたバッファ層505上全面に非単結晶半導体層541を形成する。なお、単結晶半導体501、バッファ層505、支持基板511は、それぞれ、図9に示した単結晶半導体501a〜単結晶半導体501d、バッファ層505a〜バッファ層505d、支持基板511a〜支持基板511dに相当する。
【0159】
図10(B)に示すように、非単結晶半導体層541にレーザビーム571を照射して結晶化させ、図10(C)に示すように結晶質半導体層563を形成する。
【0160】
非単結晶半導体層541は、上述の非単結晶半導体層141などと同様に形成すればよい。また、上記実施の形態2のように、バッファ層上に非単結晶半導体層を形成した後、非単結晶半導体層上に短冊状などの単結晶半導体501aを形成してもよい。
【0161】
レーザビーム571の照射については、上述のレーザビーム171、レーザビーム371などの照射と同様に行えばよいが、図9では種結晶として短冊状(面積をもつ線状とも言える)の単結晶半導体501aを形成するため、線状の照射領域を有するレーザビームを照射することが好ましい。図10(B)では線状のレーザビーム571を照射する例を示しており、レーザビーム571は図示した白抜きの矢印の方向に走査する例を示している。線状の照射領域を有するレーザビーム571と、短冊状の単結晶半導体501との長軸方向を揃え、短軸方向側に走査していくことで、効率よく結晶化させることができる。また、結晶方位も揃いやすく、結晶性の良い結晶質半導体層563を形成することができる。
【0162】
以上により、支持基板511上に結晶質半導体層563が形成されたSOI基板を作製することができる。
【0163】
なお、単結晶半導体501上に非単結晶半導体層541を形成することで生じる段差は、非単結晶半導体層541を結晶化する際のレーザビーム571の照射により、平坦化することができる。平坦化が十分でない場合は、必要に応じて、エッチング、レーザビームの照射、またはCMP処理などを適宜行えばよい。また、段差を残したままとし、厚さの違いを用途の異なる素子作製に用いてもよい。膜厚の違いは、同一基板上に用途の異なる素子を形成する際に利用することができる。
【0164】
本形態のように、無駄の無いように単結晶半導体基板から単結晶半導体を分離することで、単結晶半導体基板の使用量を少なくでき、省資源化及び低コスト化を図ることができる。また、図9、図10に示すように、短冊状の単結晶半導体を分離し、線状のレーザビームを利用して短冊状の単結晶半導体上に形成された非単結晶半導体層を結晶化させることで、結晶方位を揃えて結晶化させやすくなり、結晶性の優れた結晶質半導体層を形成することができる。
【0165】
なお、本実施の形態で示した構成は、本明細書の他の実施の形態で示す構成と適宜組み合わせることができる。
【0166】
(実施の形態5)
本形態では、上記実施の形態と異なるSOI基板の作製方法について説明する。本形態では、1枚の大面積な支持基板上に結晶質半導体層を形成して、SOI基板を作製する例について説明する。
【0167】
1枚の支持基板に対して複数枚の単結晶半導体基板から単結晶半導体を分離させ貼り合わせる、または、1枚の支持基板に対して1枚の単結晶半導体基板から単結晶半導体を繰り返し分離させ貼り合わせることで、1枚の大面積な支持基板上に結晶質半導体層を形成することができる。本形態において、分離させる単結晶半導体等には、他の実施の形態のいずれかを組み合わせてもよい。以下、図11を用いて具体的に説明する。
【0168】
図11(A)は、1枚の支持基板611上に、単結晶半導体群631a、単結晶半導体群631b、単結晶半導体群631c、単結晶半導体群631d、単結晶半導体群631e、単結晶半導体群631fを形成した状態を示している。単結晶半導体群631a〜単結晶半導体群631fは、それぞれ1枚の単結晶半導体基板から分離され、支持基板611上のバッファ層605に接合されたものである。1枚の支持基板611上に、複数の単結晶半導体基板から分離した単結晶半導体633が形成されている。
【0169】
支持基板611は、大面積基板を用いることができる。例えば、支持基板611として、液晶パネルの製造用に開発されたマザーガラス基板を用いることが好ましい。マザーガラス基板としては、例えば、第3世代(550mm×650mm)、第3.5世代(600mm×720mm)、第4世代(680mm×880mm、または730mm×920mm)、第5世代(1100mm×1300mm)、第6世代(1500mm×1850mm)、第7世代(1870mm×2200mm)、第8世代(2200mm×2400mm)等のサイズの基板が知られている。支持基板611としてこのような大面積基板を用いることで、SOI基板の大面積化が実現できる。
【0170】
支持基板611上に、バッファ層605を間に介して、複数の単結晶半導体633を形成する。図11では、上記実施の形態1で示したように、バッファ層上に、ドット状に単結晶半導体633を形成する例を示しているが、上記実施の形態2で示したように、バッファ層上に非単結晶半導体層を形成した後、非単結晶半導体層上に単結晶半導体633を形成してもよい。また、上記実施の形態3で示したように、クラスター状の単結晶半導体を形成してもよい。また、上記実施の形態4で示したように、短冊状の単結晶半導体を形成するものとし、1枚の大面積な支持基板上に、1枚の単結晶半導体基板から分離される複数の短冊状の単結晶半導体を図11の単結晶半導体群631a〜単結晶半導体群631dのように順に配置させ、単結晶半導体基板を無駄なく使用するようにしてもよい。
【0171】
図11(B)は、複数の単結晶半導体633(単結晶半導体群631a〜単結晶半導体群631d)が形成されたバッファ層605上全面に非単結晶半導体層641が形成された状態を示している。非単結晶半導体層641にレーザビームを照射して結晶化させることで、図11(C)に示すように、大面積な結晶質半導体層663を形成することができる。以上により、大面積なSOI基板を作製することができる。
【0172】
本形態のように、大面積基板である支持基板を用いる場合も、単結晶半導体を種結晶として、単結晶半導体の上層又は下層に設けた非単結晶半導体層を結晶化させる構成とすることで、結晶性が良く、さらに孔などの欠陥の低減した結晶質半導体層を有する大面積なSOI基板を作製することができる。また、大面積なSOI基板を容易に作製することができるため、SOI基板を安価に提供することも可能となる。
【0173】
なお、本実施の形態で示した構成は、本明細書の他の実施の形態で示す構成と適宜組み合わせることができる。
【0174】
(実施の形態6)
本形態では、SOI基板を用いて半導体素子を作製する例について説明する。ここでは、半導体素子として、nチャネル型電界効果トランジスタとpチャネル型電界効果トランジスタを作製する例について、図12〜図14の断面図を用いて説明する。
【0175】
まず、上記実施の形態などにより作製されたSOI基板を準備する。例えば、上記実施の形態1で得られたSOI基板を用いるものとし、支持基板111上に、バッファ層105を間に介在させて結晶質半導体層163が形成されたSOI基板を準備する。
【0176】
結晶質半導体層163には、nチャネル型電界効果トランジスタ及びpチャネル型電界効果トランジスタの形成領域に合わせて、硼素、アルミニウム、ガリウムなどのp型不純物元素、若しくはリン、砒素などのn型不純物元素を添加することが好ましい。例えば、nチャネル型電界効果トランジスタの形成領域に対応してp型不純物元素を添加し、pチャネル型電界効果トランジスタの形成領域に対応してn型不純物元素を添加して、所謂ウェル領域を形成する。不純物イオンのドーズ量は1×1012ions/cm乃至1×1014ions/cm程度で行えばよい。さらに、電界効果トランジスタのしきい値電圧を制御する場合には、これらのウェル領域にn型不純物元素若しくはp型不純物元素を添加すればよい。
【0177】
次に、図12(B)に示すように、結晶質半導体層163をエッチングして、素子の配置に合わせて島状に分離した結晶質半導体層163c、結晶質半導体層163dを形成する。本実施形態では、結晶質半導体層163cからnチャネル型電界効果トランジスタを作製し、結晶質半導体層163dからpチャネル型電界効果トランジスタを作製する。
【0178】
次に、図12(C)に示すように、結晶質半導体層163c、結晶質半導体層163d上に、ゲート絶縁層710、ゲート電極を形成する導電層712、及び導電層714を順に形成する。
【0179】
ゲート絶縁層710は、CVD法、スパッタリング法、又はALE法等により、酸化シリコン層、酸化窒化シリコン層、窒化シリコン層、又は窒化酸化シリコン層等の絶縁層を用いて、単層構造又は積層構造で形成する。
【0180】
また、ゲート絶縁層710は、結晶質半導体層163c、結晶質半導体層163dに対してプラズマ処理を行うことにより、表面を酸化又は窒化することで形成してもよい。この場合のプラズマ処理はマイクロ波(代表的な周波数は2.45GHz)を用いて励起したプラズマによるプラズマ処理も含むものとする。例えばマイクロ波で励起され、電子密度が1×1011/cm以上1×1013/cm以下、且つ電子温度が0.5eV以上1.5eV以下のプラズマを用いた処理も含むものとする。このようなプラズマ処理を適用して半導体層表面の酸化処理又は窒化処理を行うことにより、薄くて緻密な膜を形成することが可能である。また、半導体層表面を直接酸化するため、界面特性の良好な膜を得ることができる。また、ゲート絶縁層710は、CVD法、スパッタリング法、又はALE法により形成した膜に対してマイクロ波を用いたプラズマ処理を行うことで形成してもよい。
【0181】
なお、ゲート絶縁層710は半導体層との界面を形成するため、酸化シリコン層若しくは酸化窒化シリコン層が界面となるように形成することが好ましい。これは、窒化シリコン層又は窒化酸化シリコン層のように酸素よりも窒素の含有量が多い膜を形成すると、トラップ準位が形成され界面特性が問題となる恐れがあるからである。
【0182】
ゲート電極を形成する導電層は、タングステン、タンタル、チタン、モリブデン、アルミニウム、銅、クロム、或いはニオブ等から選択された元素、前述の元素を含む合金材料、又は前述の元素を含む化合物材料などの導電材料を用いて、スパッタリング法やCVD法により、単層構造又は積層構造で形成する。その他、ゲート電極を形成する導電層としては、リン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコンに代表される半導体材料を用いることもできる。ゲート電極を積層構造とする場合は、異なる導電材料を用いて形成することもできるし、同一の導電材料を用いて形成することもできる。本形態では、ゲート電極を形成する導電層を、導電層712及び導電層714の2層構造で形成する例を示す。
【0183】
本形態のように、導電層712及び導電層714の2層の積層構造でゲート電極を形成する場合は、例えば、窒化タンタル層とタングステン層、窒化チタン層とタングステン層、窒化モリブデン層とモリブデン層などの積層構造を形成することができる。窒化タンタル層とタングステン層との積層構造を形成すると、両者のエッチングレートに差がつけやすく、エッチングの選択比を高くできるため好ましい。なお、例示した2層の積層構造において、先に記載した層(例えば窒化タンタル層)をゲート絶縁層710上に接して形成することが好ましい。例えば、導電層712を20nm乃至100nmの厚さで形成し、導電層714を100nm乃至400nmの厚さで形成する。もちろん、ゲート電極は、導電層を3層以上積層した構造とすることもできる。
【0184】
次に、導電層714上にレジストマスク720c、レジストマスク720dを選択的に形成する。そして、レジストマスク720c、レジストマスク720dを用いて第1のエッチング処理及び第2のエッチング処理を行う。
【0185】
まず、レジストマスク720cを用いた第1のエッチング処理により導電層712及び導電層714を選択的にエッチングして、結晶質半導体層163c上に導電層716cおよび導電層718cを形成する。同時に、レジストマスク720dを用いた第1のエッチング処理により導電層712および導電層714を選択的にエッチングして、結晶質半導体層163d上に導電層716d及び導電層718dを形成する(図12(D)参照)。
【0186】
次に、レジストマスク720cを用いた第2のエッチング処理により導電層718cの端部をエッチングして、導電層722cを形成する。同時に、レジストマスク720dを用いた第2のエッチング処理により導電層718dの端部をエッチングして、導電層722dを形成する(図12(E)参照)。なお、導電層722cは導電層716cよりも幅(キャリアがチャネル形成領域を流れる方向(ソース領域とドレイン領域を結ぶ方向)に平行な方向の長さ)が小さくなるように形成する。同様に、導電層722dは、導電層716dよりも幅が小さくなるように形成する。このようにして、導電層716c及び導電層722cからなる2層構造のゲート電極724c、並びに導電層716d及び導電層722dからなる2層構造のゲート電極724dを形成する。
【0187】
第1のエッチング処理及び第2のエッチング処理に適用するエッチング法は適宜選択すればよいが、ECR(Electron Cyclotron Resonance)方式やICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)方式などの高密度プラズマ源を用いたドライエッチング装置を用いるとエッチング速度を向上できるため好ましい。第1のエッチング処理および第2のエッチング処理のエッチング条件(コイル型の電極や平行平板型の電極に印加される電力量、基板側の電極に印加される電力量、基板側の電極温度等)を適宜調節することで、導電層716c、716d、及び導電層722c、722dの側面を所望のテーパー形状とすることができる。所望のゲート電極724c、724dを形成した後、レジストマスク720c、720dは除去すればよい。
【0188】
次に、結晶質半導体層163cを覆うようにレジストマスク781を選択的に形成する。そして、レジストマスク781をマスクとして、結晶質半導体層163dに不純物元素780を添加する。結晶質半導体層163dは、上方に形成された導電層716dおよび導電層722dがマスクとなって、自己整合的に一対の第1不純物領域728dと、一対の第2不純物領域730dと、チャネル形成領域726dが形成される(図13(A)参照)。
【0189】
不純物元素780としては、硼素、アルミニウム、ガリウムなどのp型不純物元素、若しくはリン、砒素などのn型不純物元素を添加する。ここでは、pチャネル型電界効果トランジスタを形成するため、不純物元素780としてp型不純物元素であるボロンを添加する。また、第1不純物領域728dに、1×1020atoms/cm乃至5×1021atoms/cm程度の濃度で硼素が含まれるようにする。第1不純物領域728dは、ソース領域又はドレイン領域として機能する。
【0190】
結晶質半導体層163dにおいて、導電層716dと重ならない領域に第1不純物領域728dが形成され、導電層716dと重なり導電層722dと重ならない領域に第2不純物領域730dが形成され、導電層722dと重なる領域にチャネル形成領域726dが形成される。第2不純物領域730dは、第1不純物領域728dよりも低不純物濃度となる。
【0191】
レジストマスク781を除去した後、結晶質半導体層163dを覆うようにレジストマスク782を選択的に形成する。そして、レジストマスク782をマスクとして、結晶質半導体層163cに不純物元素784を添加する。結晶質半導体層163cは、上方に形成された導電層716cおよび導電層722cがマスクとなって、自己整合的に一対の第3不純物領域728cと、一対の第4不純物領域730cと、チャネル形成領域726cが形成される(図13(B)参照)。
【0192】
ここでは、nチャネル型電界効果トランジスタを形成するため、不純物元素784としてn型不純物元素を添加する。例えば不純物元素784としてリンを添加し、第3不純物領域728cに5×1019atoms/cm乃至5×1020atoms/cm程度の濃度でリンが含まれるようにする。第3不純物領域728cは、ソース領域又はドレイン領域として機能する。
【0193】
結晶質半導体層163cにおいて、導電層716cと重ならない領域に第3不純物領域728cが形成され、導電層716cと重なり導電層722cと重ならない領域に第4不純物領域730cが形成され、導電層722cと重なる領域にチャネル形成領域726cが形成される。第4不純物領域730cは、第3不純物領域728cよりも低不純物濃度となる。
【0194】
なお、結晶質半導体層163dに第1不純物領域728d、第2不純物領域730d、チャネル形成領域726dを形成し、結晶質半導体層163cに第3不純物領域728c、第4不純物領域730c、チャネル形成領域726cを形成する順序などは本形態に限られるものでなく、適宜変更することができる。また、結晶質半導体層163c、163dに不純物領域(第1不純物領域728d〜第4不純物領域730c)形成後は、熱処理やレーザビームの照射などを適宜行うことにより、活性化(低抵抗化)する。
【0195】
次に、ゲート電極724c、ゲート電極724d、およびゲート絶縁層710上を覆う絶縁層を単層構造または積層構造で形成する。ゲート絶縁層710およびその上層の絶縁層に、結晶質半導体層163cに形成された一対の第3不純物領域728c、および結晶質半導体層163dに形成された一対の第1不純物領域728dのそれぞれに達するコンタクトホールを形成する。該コンタクトホールに、ソース電極又はドレイン電極として機能する導電層736c、導電層736dを形成する。
【0196】
まず、ゲート電極724c、ゲート電極724d、およびゲート絶縁層710上を覆う絶縁層731を形成する(図14(A)参照)。絶縁層731は、CVD法やスパッタリング法により、酸化シリコン層、酸化窒化シリコン層、窒化シリコン層、又は窒化酸化シリコン層などを形成する。例えば、絶縁層731として、プラズマCVD法により酸化窒化シリコン層(膜厚50nm)を形成する。次に、400℃以上支持基板111の歪み点温度以下で熱処理を行うことで、不純物領域(第1不純物領域728d〜第4不純物領域730c)の活性化を行うことができる。例えば、窒素雰囲気下で480℃、1時間の熱処理を行う。絶縁層731を形成した後に熱処理を行うことで、該熱処理によるゲート電極の酸化を防ぐことができる。なお、熱処理の際に雰囲気を制御することで、絶縁層731を形成しなくともゲート電極の酸化を防ぐこともできる。
【0197】
次に、絶縁層731上に、絶縁層732および絶縁層734を形成する(図14(B)参照)。
【0198】
絶縁層732、絶縁層734としては、CVD法やスパッタリング法により、酸化シリコン層、酸化窒化シリコン層、窒化シリコン層、又は窒化酸化シリコン層等を形成することができる。また、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルフェノール、ベンゾシクロブテン、アクリル若しくはエポキシ等の有機材料、シロキサン樹脂等のシロキサン材料、又はオキサゾール樹脂などを用いて、スピンコート法などの塗布法により形成することができる。なお、シロキサン材料とは、Si−O−Si結合を含む材料に相当する。
【0199】
なお、ゲート電極724c、724d上層に形成される絶縁層としては、水素を含有する絶縁層を少なくとも1層形成し、熱処理を行うことにより、結晶質半導体層に存在するダングリングボンドの水素終端化を図ることが好ましい。水素を含有する絶縁層を形成した後、例えば350℃以上480℃以下、好ましくは400℃以上450℃以下の処理温度で熱処理を行うことで、絶縁層に含有された水素が熱処理により熱的に励起して拡散され、絶縁層を通過して結晶質半導体層に到達する。そして、到達した水素により結晶質半導体層に存在するダングリングボンドが水素終端される。半導体層、特にチャネル形成領域にダングリングボンドが存在すると、完成するトランジスタの電気的特性に悪影響を与えかねないため、本形態のように水素終端を行うことは効果的である。水素終端を行うことで、ゲート絶縁層と結晶質半導体層との界面特性の改善を図ることができる。
【0200】
水素を含有する絶縁層は、プラズマCVD法により、Hを含む成膜用のプロセスガスを用いることで形成することができる。また、水素を含有する絶縁層を形成しなくとも、水素を含む雰囲気中で熱処理を行うことにより、結晶質半導体層の水素終端化を行うこともできる。例えば、絶縁層732として水素を含有する絶縁層を形成し、その上層に絶縁層734を形成した後、水素終端する熱処理を行う。この場合、絶縁層734は、絶縁層732に含まれる水素が脱水素化しない温度で成膜する。
【0201】
例えば、プラズマCVD法により、絶縁層732である窒化酸化シリコン層(膜厚300nm)と絶縁層734である酸化窒化シリコン層(膜厚450nm)とを連続成膜する。窒化酸化シリコン層は成膜用のプロセスガスとしてモノシラン、アンモニア、水素および酸化窒素を用いる。酸化窒化シリコン層は成膜用のプロセスガスとしてモノシランと亜酸化窒素を用いる。また、処理温度は200℃〜300℃程度とすることで、窒化酸化シリコン層に含有される水素を脱水素化することなく、絶縁層を形成できる。そして、絶縁層734を形成した後、窒素雰囲気下で450℃1時間の熱処理を行うことにより、結晶質半導体層の水素終端化を行う。
【0202】
次に、絶縁層734、絶縁層732、絶縁層731およびゲート絶縁層710にコンタクトホールを形成し、該コンタクトホールを埋めるように導電層736c、導電層736dを形成する(図14(C)参照)。ここでは、一対の第1不純物領域728dそれぞれに達する一対のコンタクトホールを形成し、該コンタクトホールを通じて第1不純物領域728dに達する一対の導電層736cを形成する。同時に、一対の第3不純物領域728cそれぞれに達する一対のコンタクトホールを形成し、該コンタクトホールを通じて第3不純物領域728cに達する一対の導電層736dを形成する。導電層736c、導電層736dは、ソース電極又はドレイン電極として機能する。導電層736cは第3不純物領域728cと電気的に接続する。導電層736dは、第1不純物領域728dと電気的に接続する。
【0203】
導電層736c、導電層736dは、アルミニウム、タングステン、チタン、タンタル、モリブデン、ニッケル、ネオジム、或いは銅等から選択された元素、前述の元素を含有する合金材料、又は前述の元素を含有する化合物材料を用いて形成する。前述の元素を含有する合金材料としては、例えば、チタンを含有したアルミニウム合金、ネオジムを含有したアルミニウム合金、シリコンを含有するアルミニウム合金(アルミニウムシリコンとも言われる)などが挙げられる。また、上記元素を含有する化合物としては、窒化タングステン、窒化チタン、窒化タンタルなどの窒化物が挙げられる。導電層736c、導電層736dは、上述の材料を用いてスパッタリング法やCVD法により全面に形成した後、選択的にエッチングして所望の形状に加工すればよい。また、導電層736c、導電層736dは、単層構造又は2層以上の積層構造で形成することができる。例えば、チタン層、窒化チタン層、アルミニウム層およびチタン層を順に積層した構造とすることができる。アルミニウム層をチタン層で挟む構成とすることで、耐熱性を向上させることができる。また、チタン層とアルミニウム層との間に形成する窒化チタン層はバリア層として機能できる。
【0204】
以上で、SOI基板を用いて、nチャネル型電界効果トランジスタおよびpチャネル型電界効果トランジスタを作製することができる。
【0205】
上記実施の形態により作製されたSOI基板は、従来の非晶質半導体層をレーザ結晶化させた多結晶半導体層よりも、結晶性の優れた結晶質半導体層を有している。このようなSOI基板を用いることで、動作特性(移動度など)の良好な半導体素子を形成することができる。
【0206】
なお、導電層736cおよび導電層736dを電気的に接続させることでnチャネル型電界効果トランジスタとpチャネル型電界効果トランジスタを電気的に接続させ、CMOSトランジスタとすることもできる。
【0207】
また、本形態では、ゲート電極を2層の導電層の積層構造とし、各層で幅を異ならせる例を示したが、本発明は特に限定されない。例えば、ゲート電極は、導電層の単層構造で形成してもよいし、導電層を3層以上の積層構造としてもよい。また、導電層の積層構造で、各層の幅は略一致するように形成してもよいし、各層のテーパー形状を異ならせてもよい。さらに、ゲート電極の側面に接してサイドウォールと言われる絶縁層を形成してもよい。
【0208】
本形態で説明したトランジスタを複数組み合わせて、各種機能を有する半導体装置を提供することができる。また、本形態で示したトランジスタの構造は一例であり、図示した構造に限定されるものではない。
【0209】
なお、本実施の形態で示した構成は、本明細書の他の実施の形態で示す構成と適宜組み合わせることができる。
【0210】
(実施の形態7)
本発明の一態様に係るSOI基板を用いて、上記実施の形態6で示したようなトランジスタに加えて、容量、抵抗などの各種半導体素子を形成することで、高付加価値の半導体装置を作製することができる。本形態では、図面を参照しながら半導体装置の具体的な態様を説明する。
【0211】
まず、半導体装置の一例として、マイクロプロセッサについて説明する。図15はマイクロプロセッサ2000の構成例を示すブロック図である。マイクロプロセッサ2000は、演算回路2001(Arithmetic logic unit;ALUともいう。)、演算回路用制御部2002(ALU Controller)、命令解析部2003(Instruction Decoder)、割り込み制御部2004(Interrupt Controller)、タイミング制御部2005(Timing Controller)、レジスタ2006(Register)、レジスタ制御部2007(Register Controller)、バスインターフェース2008(Bus I/F)、読み出し専用メモリ2009、及びメモリインターフェース2010を有している。
【0212】
バスインターフェース2008を介してマイクロプロセッサ2000に入力された命令は命令解析部2003に入力され、デコードされた後に演算回路用制御部2002、割り込み制御部2004、レジスタ制御部2007、タイミング制御部2005に入力される。演算回路用制御部2002、割り込み制御部2004、レジスタ制御部2007、タイミング制御部2005は、デコードされた命令に基づき各種制御を行う。具体的に演算回路用制御部2002は、演算回路2001の動作を制御するための信号を生成する。また、割り込み制御部2004は、マイクロプロセッサ2000のプログラム実行中に、外部の入出力装置や周辺回路からの割り込み要求を、その優先度やマスク状態から判断して処理する。レジスタ制御部2007は、レジスタ2006のアドレスを生成し、マイクロプロセッサ2000の状態に応じてレジスタ2006の読み出しや書き込みを行う。タイミング制御部2005は、演算回路2001、演算回路用制御部2002、命令解析部2003、割り込み制御部2004、レジスタ制御部2007の動作のタイミングを制御する信号を生成する。例えばタイミング制御部2005は、基準クロック信号CLK1を基に、内部クロック信号CLK2を生成する内部クロック生成部を備えており、クロック信号CLK2を上記各種回路に供給する。なお、図15に示すマイクロプロセッサ2000は、その構成を簡略化して示した一例にすぎず、実際にはその用途によって多種多様な構成を備えることができる。
【0213】
次に、非接触でデータの送受信を行うことのできる演算機能を備えた半導体装置の一例について図16を参照して説明する。図16は、半導体装置として無線通信により外部装置と信号の送受信を行って動作するコンピュータ(以下、「RFCPU」という)の一例を示す。RFCPU2111は、アナログ回路部2112とデジタル回路部2113を有している。アナログ回路部2112として、共振容量を有する共振回路2114、整流回路2115、定電圧回路2116、リセット回路2117、発振回路2118、復調回路2119と、変調回路2220を有している。デジタル回路部2113は、RFインターフェース2221、制御レジスタ2222、クロックコントローラ2223、CPUインターフェース2224、中央処理ユニット(CPU)2225、ランダムアクセスメモリ(RAM)2226、読み出し専用メモリ(ROM)2227を有している。
【0214】
RFCPU2111の動作は以下の通りである。アンテナ2228が受信した信号は共振回路2114により誘導起電力を生じる。誘導起電力は整流回路2115を経て容量部2229に充電される。容量部2229はセラミックコンデンサーや電気二重層コンデンサーなどのキャパシタで形成されていることが好ましい。容量部2229はRFCPU2111と一体形成されている必要はなく、別部品としてRFCPU2111を構成する絶縁表面を有する基板に取り付けられていれば良い。
【0215】
リセット回路2117は、デジタル回路部2113をリセットし初期化する信号を生成する。例えば、電源電圧の上昇に遅延して立ち上がる信号をリセット信号として生成する。発振回路2118は定電圧回路2116により生成される制御信号に応じて、クロック信号の周波数とデューティー比を変更する。ローパスフィルタで形成される復調回路2119は、例えば振幅変調(ASK)方式の受信信号の振幅の変動を二値化する。変調回路2220は、送信データを振幅変調(ASK)方式の送信信号の振幅を変動させて送信する。変調回路2220は、共振回路2114の共振点を変化させることで通信信号の振幅を変化させている。クロックコントローラ2223は、電源電圧又は中央処理ユニット2225における消費電流に応じてクロック信号の周波数とデューティー比を変更するための制御信号を生成している。電源電圧の監視は電源管理回路2230が行っている。
【0216】
アンテナ2228からRFCPU2111に入力された信号は復調回路2119で復調された後、RFインターフェース2221で制御コマンドやデータなどに分解される。制御コマンドは制御レジスタ2222に格納される。制御コマンドには、読み出し専用メモリ2227に記憶されているデータの読み出し、ランダムアクセスメモリ2226へのデータの書き込み、中央処理ユニット2225への演算命令などが含まれている。中央処理ユニット2225は、CPUインターフェース2224を介して読み出し専用メモリ2227、ランダムアクセスメモリ2226、制御レジスタ2222にアクセスする。CPUインターフェース2224は、中央処理ユニット2225が要求するアドレスより、読み出し専用メモリ2227、ランダムアクセスメモリ2226、制御レジスタ2222のいずれかに対するアクセス信号を生成する機能を有している。
【0217】
中央処理ユニット2225の演算方式は、読み出し専用メモリ2227にOS(オペレーティングシステム)を記憶させておき、起動とともにプログラムを読み出し実行する方式を採用することができる。また、専用回路で演算回路を構成して、演算処理をハードウェア的に処理する方式を採用することもできる。ハードウェアとソフトウェアを併用する方式では、専用の演算回路で一部の処理を行い、残りの演算はプログラムを使って中央処理ユニット2225が実行する方式を適用することができる。
【0218】
マイクロプロセッサ2000やRFCPU2111などの半導体装置は、複数のトランジスタを組み合わせた各種機能を有する回路を適用して作製することができる。トランジスタは、本発明の一態様に係るSOI基板の結晶質半導体層を利用して作製することができる。また、支持基板としてガラス基板などの安価な基板を用いることができるため、低コスト化を図ることもできる。このようなトランジスタを組み合わせて集積回路を作製することにより、マイクロプロセッサやRFCPUなどの半導体装置の高性能化、処理速度の高速化、さらには低コスト化などを実現できる。なお、図16ではRFCPUの形態について示しているが、通信機能、演算処理機能、メモリ機能を備えたものであれば、ICタグのようなものであっても良い。
【0219】
次に、図17および図18を用いて、本発明の一態様に係るSOI基板を利用した表示装置について説明する。
【0220】
図17は、液晶表示装置の構成例を示す図面である。図17(A)は液晶表示装置の画素の平面図であり、図17(B)はJ−K切断線による図17(A)の断面図である。図17(A)において、結晶質半導体層5101は、画素のトランジスタ5205を構成する。画素は、結晶質半導体層5101、結晶質半導体層5101と交差している走査線5202、走査線5202と交差している信号線5203、画素電極5204、画素電極5204と結晶質半導体層5101を電気的に接続する電極5208を有する。結晶質半導体層5101は、本発明の一態様に係るSOI基板の有する結晶質半導体層から形成された層である。支持基板111としては、ガラス基板を用いることが好ましい。
【0221】
図17(B)に示すように、支持基板111上に、バッファ層105、結晶質半導体層5101が積層されている。結晶質半導体層5101は、結晶質半導体層163をエッチングによる素子分離により形成した層である。結晶質半導体層5101には、チャネル形成領域5102、n型の不純物領域5104が形成されている。トランジスタ5205のゲート電極は走査線5202に含まれ、ソース電極またはドレイン電極の一方は信号線5203に含まれている。
【0222】
層間絶縁層5207上には、信号線5203、画素電極5204および電極5208が設けられている。層間絶縁層5207上には、柱状スペーサ5209が形成され、信号線5203、画素電極5204、電極5208および柱状スペーサ5209を覆って配向膜5300が形成されている。対向基板5302には、対向電極5303、対向電極5303を覆う配向膜5304が形成されている。柱状スペーサ5209は、支持基板111と対向基板5302の隙間を維持するために形成される。柱状スペーサ5209によって維持される対向基板5302側の配向膜5304と支持基板111側の配向膜5300との隙間に液晶層5305が形成されている。信号線5203と不純物領域5104、および電極5208と不純物領域5104の接続部は、層間絶縁層5207や信号線5203、電極5208により段差が生じるので、接続部で液晶層5305の液晶の配向が乱れやすい。そのため、段差部に柱状スペーサ5209を形成して、液晶の配向の乱れを防ぐ。
【0223】
なお、支持基板111としてはガラス基板を用いることができる。そのため、本発明の一態様であるSOI基板を適用して作製する液晶表示装置は、反射型液晶表示装置に限定されず、透過型液晶表示装置または半透過型液晶表示装置とすることができる。
【0224】
次に、EL表示装置について、説明する。図18(A)はEL表示装置の画素の平面図であり、図18(B)は画素の断面図である。図18(A)に示すように、画素は、トランジスタでなる選択用トランジスタ4001、表示制御用トランジスタ4002、走査線4005、信号線4006、および電流供給線4007、画素電極4008を含む。エレクトロルミネセンス材料を含んで形成される層(少なくとも発光層を含む有機化合物層)が一対の電極間に挟まれた構造の発光素子が各画素に設けられている。発光素子の一方の電極が画素電極4008である。
【0225】
選択用トランジスタ4001が有する結晶質半導体層4003、表示制御用トランジスタ4002が有する結晶質半導体層4004は、本発明の一態様に係るSOI基板の有する結晶質半導体層から形成された層である。支持基板111としてはガラス基板を用いることが好ましい。
【0226】
選択用トランジスタ4001において、ゲート電極は走査線4005に含まれ、ソース電極またはドレイン電極の一方は信号線4006に含まれ、他方は電極4101として形成されている。表示制御用トランジスタ4002は、ゲート電極4102が電極4101と電気的に接続され、ソース電極またはドレイン電極の一方は、画素電極4008に電気的に接続される電極4103として形成され、他方は、電流供給線4007に含まれている。
【0227】
表示制御用トランジスタ4002はpチャネル型電界効果トランジスタである。図18(B)に示すように、結晶質半導体層4004には、チャネル形成領域4501、p型の不純物領域4502が形成されている。表示制御用トランジスタ4002のゲート電極4102を覆って、層間絶縁層4207が形成されている。層間絶縁層4207上に、信号線4006、電流供給線4007、電極4101、電極4103などが形成されている。また、層間絶縁層4207上には、電極4103に電気的に接続されている画素電極4008が形成されている。画素電極4008は周辺部が絶縁性の隔壁層4208で囲まれている。画素電極4008上には有機化合物層4209が形成され、有機化合物層4209上には対向電極4300が形成されている。補強板として対向基板4301が設けられており、対向基板4301は樹脂層4302により支持基板111に固定されている。
【0228】
支持基板111としてはガラス基板を用いることができる。そのため、本発明の一態様であるSOI基板を適用して作製するEL表示装置は、対向基板側から光を取り出すトップエミッション構造に限定されず、支持基板側から光を取り出すボトムエミッション構造とすることができる。
【0229】
図17に示す液晶表示装置や図18に示すEL表示装置に、本発明の一態様に係るSOI基板の結晶質半導体層を用いたトランジスタを適用することができる。本発明の一態様に係る結晶質半導体層は、単結晶半導体を種結晶として結晶化させるため、従来の非晶質半導体層をレーザ結晶化させた多結晶半導体層よりも結晶性が優れている。結晶性の優れた結晶質半導体層でトランジスタのチャネル形成領域を形成することで、画素を駆動するなど表示装置を構成するトランジスタを高性能化することができ、さらに高画質な表示装置を提供することができる。
【0230】
また、上述のように、支持基板としてはガラス基板を用いることができ、支持基板として半導体基板を適用する場合と異なり、光を透過することが可能となる。したがって、支持基板側から光を取り出す構成(支持基板側に光を透過させる構成)、対向基板側から光を取り出す構成(対向基板側に光を透過させる構成)、両方の基板から光を取り出す構成(両方の基板側から光を透過させる構成)など、適宜実施者が選択することができる。
【0231】
また、本発明の一態様に係るSOI基板を用いて半導体装置を作製し、様々な電子機器に適用することができる。電子機器としては、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍など)、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポなど)、コンピュータ、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ナビゲーションシステム、ゲーム機器、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDVD(digital versatile disc)などの画像データを表示する表示装置を備えた装置などが含まれる。
【0232】
図19を用いて、電子機器の具体的な態様を説明する。図19(A)は、携帯電話機900の一例を示す外観図である。携帯電話機900は、筐体901および筐体902の2つの筐体で構成されており、連結部903により折りたたみ可能に連結されている。筐体901には表示部904が組み込まれている。筐体902には操作キー906が設けられている。なお、携帯電話機900の構成は特に限定されず、少なくとも本発明の一態様に係るSOI基板を用いて作製した素子を備えた構成であればよく、その他付属設備が適宜設けられた構成とすることができる。例えば、表示部904に、図17または図18で説明した表示装置を適用することで、高画質化を実現することができる。また、SOI基板を用いた半導体素子作製工程での不良を防止することができるため、携帯電話機に組み込む表示装置の歩留まり向上につなげることができる。
【0233】
図19(B)は、PDA(Personal Digital Assistance)920の一例を示す外観図である。PDA920は、筐体921に組み込まれた表示部922の他、操作ボタン923、外部接続ポート924、スピーカー925、マイク926などを備えている。また、PDA920は、携帯電話機の機能を有していてもよい。PDA920の構成は特に限定されず、少なくとも本発明の一態様に係るSOI基板を用いて作製した素子を備えた構成であればよく、その他の付属設備が適宜設けられた構成としてもよい。例えば、表示部922に、図17または図18で説明した表示装置を適用することで、高画質化を実現することができる。
【0234】
図19(B)に示すPDA920は、表示部922を指などで触れることで、情報を入力ことができる。また、電話を掛ける、或いはメールを打つ操作は、表示部922を指などで触れることにより行うことができる。
【0235】
表示部922の画面は主として3つのモードがある。第1は、画像の表示を主とする表示モードであり、第2は、文字等の情報の入力を主とする入力モードである。第3は表示モードと入力モードの2つのモードが混合した表示+入力モードである。
【0236】
例えば、情報を入力する、電話を掛ける、或いはメールを作成する場合は、表示部922を文字の入力を主とする文字入力モードとし、画面に表示させた文字の入力操作を行えばよい。この場合、表示部922の画面のほとんどにキーボードまたは番号ボタンを表示させることが好ましい。
【0237】
また、PDA920内部に、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサを有する検出装置を設けることで、PDA920の向き(縦か横か)を判断して、表示部922の画面表示を自動的に切り替えるようにすることができる。
【0238】
また、画面モードの切り替えは、表示部922を触れること、又は筐体921の操作ボタン923の操作により行われる。また、表示部922に表示される画像の種類によって切り替えるようにすることもできる。例えば、表示部に表示する画像信号が動画のデータであれば表示モード、テキストデータであれば入力モードに切り替える。
【0239】
また、入力モードにおいて、表示部922の光センサで検出される信号を検知し、表示部922のタッチ操作による入力が一定期間ない場合には、画面のモードを入力モードから表示モードに切り替えるように制御してもよい。
【0240】
表示部922は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部922に掌や指を触れることで、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。また、表示部に赤外光を発光するバックライトまたは赤外光を発光するセンシング用光源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。
【0241】
図19(C)は、電子書籍970の一例を示している。例えば、電子書籍970は、筐体971および筐体973の2つの筐体で構成されている。筐体971および筐体973は、軸部978により一体とされており、該軸部978を軸として開閉動作を行うことができる。このような構成により、紙の書籍のような動作を行うことが可能となる。
【0242】
筐体971には表示部975が組み込まれ、筐体973には表示部977が組み込まれている。表示部975および表示部977は、続き画面を表示する構成としてもよいし、異なる画面を表示する構成としてもよい。異なる画面を表示する構成とすることで、例えば右側の表示部(表示部975)に文章を表示し、左側の表示部(表示部977)に画像を表示することができる。
【0243】
電子書籍970の構成は特に限定されず、少なくとも本発明の一態様に係るSOI基板を用いて作製した素子を備えた構成であればよく、その他の付属設備が適宜設けられた構成としてもよい。
【0244】
また、図19(C)では、筐体971に操作部などを備えた例を示している。例えば、筐体971において、電源974、操作キー972、スピーカー976などを備えている。操作キー972により、頁を送ることができる。なお、筐体の表示部と同一面にキーボードやポインティングデバイスなどを備える構成としてもよい。また、筐体の裏面や側面に、外部接続用端子(イヤホン端子、USB端子、またはACアダプタおよびUSBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能な端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成としてもよい。さらに、電子書籍970は、電子辞書としての機能を持たせた構成としてもよい。
【0245】
また、電子書籍970は、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。無線により、電子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロードする構成とすることも可能である。
【0246】
なお、本実施の形態で示した構成は、本明細書の他の実施の形態で示す構成と適宜組み合わせることができる。
【0247】
(実施の形態8)
本形態では、本発明の一態様に係るSOI基板を用いて、上記実施の形態と異なる半導体装置を作製する例を説明する。
【0248】
トランジスタなどの半導体素子により各種集積回路などを構成するにあたっては、集積回路が大規模化、多機能化するに伴って、それぞれの半導体素子が構成する回路の用途などにより、半導体素子に求められる特性が異なってくる場合がある。例えば、高速動作や低電圧駆動が求められる回路や、高電圧印加時に十分な信頼性(高耐圧特性)が求められる回路が存在する。
【0249】
本形態では、上記実施の形態により、厚さの異なる領域を有する結晶質半導体層が形成されたSOI基板を用いて、異なる特性が求められる回路を同一基板上に形成する例を説明する。
【0250】
例えば、図20(A)、(B)は、1枚の支持基板801上に結晶質半導体層803が形成されている。結晶質半導体層803は、第1の領域800と第2の領域850を有している。また、第1の領域800には第1の回路群820が形成され、第2の領域850には第2の回路群870が形成されている。なお、図20(A)は簡略化した平面図であり、図20(B)、(C)は、図20(A)中の線分OPにおける断面模式図に相当する。
【0251】
図20(B)に示すように、第1の領域800は、第2の領域850よりも結晶質半導体層803の厚さが厚い領域である。このようなSOI基板は、例えば種結晶として単結晶半導体を設けた領域を第1の領域800とし、バッファ層805上に非単結晶半導体層が直接形成され単結晶半導体を種結晶として結晶化された領域を第2の領域850とすることで得ることができる。
【0252】
例えば、上記実施の形態4の図10(C)に示される結晶質半導体層563の膜厚が厚い領域(図10(A)で単結晶半導体501が存在した領域及びその付近)を第1の領域800とすることができる。また、図10(C)に示される結晶質半導体層563の膜厚が薄い領域(図10(A)でバッファ層505上に非単結晶半導体層541のみが形成された領域及びその付近)を第2の領域850とすることができる。
【0253】
図20(C)に示すように、第1の領域800に第1のトランジスタ810が設けられ、第2の領域850に第2のトランジスタ860が設けられている。第1のトランジスタ810は第1の回路群820を構成する素子の一例であり、第2のトランジスタ860は第2の回路群870を構成する素子の一例である。
【0254】
第1のトランジスタ810は、チャネル形成領域とソース領域とドレイン領域を含む結晶質半導体層813と、結晶質半導体層813上にゲート絶縁層807を間に介して設けられたゲート電極815と、ゲート絶縁層807及びゲート電極815上の全面に設けられた絶縁層809と、絶縁層809及びゲート絶縁層807に設けられた開口を介して結晶質半導体層813と電気的に接続する電極816とで構成されている。同様に、第2のトランジスタ860は、チャネル形成領域とソース領域とドレイン領域を含む結晶質半導体層863と、結晶質半導体層863上にゲート絶縁層807を間に介して設けられたゲート電極865と、ゲート絶縁層807及びゲート電極865上の全面に設けられた絶縁層809と、絶縁層809及びゲート絶縁層807に設けられた開口を介して結晶質半導体層863と電気的に接続する電極866とで構成されている。なお、電極816及び電極866は、ソース電極又はドレイン電極として機能する。
【0255】
図20(C)に示すように、第1のトランジスタ810は、第2のトランジスタ860と比較して、膜厚の厚い結晶質半導体層813を有している。このように、膜厚の厚い結晶質半導体層813を用いて形成する第1のトランジスタ810は、高耐圧性が求められる回路を構成することが好ましい。また、第1のトランジスタ810と比較して、膜厚の薄い結晶質半導体層863を用いて形成される第2のトランジスタ860は、高速動作や低電圧駆動が要求される回路を構成することが好ましい。
【0256】
以上のように、本発明の一態様に係り、厚さの異なる領域を有する結晶質半導体層を用いて、求める特性に応じた半導体素子を、同一基板上に容易に形成することができる。
【0257】
なお、本実施の形態で示した構成は、本明細書の他の実施の形態で示す構成と適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0258】
101 単結晶半導体基板
102 凸部
103 脆化層
104 凹部
105 バッファ層
111 支持基板
121 単結晶半導体基板
131 単結晶半導体層
133 単結晶半導体
141 非単結晶半導体層
163 結晶質半導体層
171 レーザビーム
181 マスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶半導体基板に加速されたイオンを照射することで、前記単結晶半導体基板に脆化層を形成し、
前記単結晶半導体基板と支持基板とを、バッファ層を介して貼りあわせ、
熱処理を行うことにより、前記脆化層を境として前記単結晶半導体基板の一部を分離させ、
前記支持基板上に、前記バッファ層を介して前記単結晶半導体を選択的且つ部分的に形成し、
前記単結晶半導体上に非単結晶半導体層を形成し、
レーザビームを照射することにより、前記単結晶半導体を種結晶として前記非単結晶半導体層を結晶化させる
ことを特徴とするSOI基板の作製方法。
【請求項2】
支持基板上に、バッファ層を介して非単結晶半導体層を形成し、
単結晶半導体基板に加速されたイオンを照射することで、前記単結晶半導体基板に脆化層を形成し、
前記単結晶半導体基板と前記支持基板とを、前記非単結晶半導体層を介して貼りあわせ、
熱処理を行うことにより、前記脆化層を境として前記単結晶半導体基板の一部を分離させ、
前記支持基板上に、前記バッファ層及び前記非単結晶半導体層を介して単結晶半導体を選択的且つ部分的に形成し、
レーザビームを照射することにより、前記単結晶半導体を種結晶として前記非単結晶半導体層を結晶化させる
ことを特徴とするSOI基板の作製方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記熱処理を行うことにより、前記脆化層を境として前記単結晶半導体基板の一部を分離させ、前記支持基板上に単結晶半導体層を形成した後、
前記単結晶半導体層を選択的に除去することで、前記単結晶半導体を選択的且つ部分的に形成することを特徴とするSOI基板の作製方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2において、
前記単結晶半導体基板は、予め選択的に除去して表面に複数の凸部が形成されており、
前記単結晶半導体基板に対し、前記凸部が形成された表面側から加速されたイオンを照射することで前記脆化層を形成し、
前記単結晶半導体基板と前記支持基板とを、前記単結晶半導体基板の前記凸部が形成された表面側が前記支持基板と向き合うように貼り合わせ、
前記熱処理を行うことにより、前記脆化層を境として前記単結晶半導体基板の一部を分離させることで、前記単結晶半導体を選択的且つ部分的に形成することを特徴とするSOI基板の作製方法。
【請求項5】
請求項1又は請求項2において、
前記脆化層を境として前記単結晶半導体基板の一部を分離させ単結晶半導体の連続層を形成した後、
前記単結晶半導体の連続層を選択的にエッチングして前記単結晶半導体を部分的に形成することを特徴とするSOI基板の作製方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一において、
部分的に形成される前記単結晶半導体は、ドット状またはストライプ状に形成される
ことを特徴とするSOI基板の作製方法。
【請求項7】
請求項1又は請求項2において、
前記単結晶半導体基板の一部を分離させ、クラスター状の前記単結晶半導体を形成する
ことを特徴とするSOI基板の作製方法。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一において、
結晶方位が揃った前記単結晶半導体を部分的に形成する
ことを特徴とするSOI基板の作製方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一において、
前記非単結晶半導体層または前記単結晶半導体に加熱された不活性ガスを吹き付けながら前記レーザビームを照射する
ことを特徴とするSOI基板の作製方法。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか一において、
前記支持基板を加熱しながら前記レーザビームを照射する
ことを特徴とするSOI基板の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−251725(P2010−251725A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66112(P2010−66112)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】