説明

アライメント装置、露光装置、及びデバイス製造方法

【課題】簡単な機構でマスクと基板ステージとの位置関係情報を高精度に計測する。
【解決手段】マスクアライメント系12Aであって、マスクMAに形成されたマスクマーク15A,15Bのうちのマスクマーク15Aを照明する照明系と、プレートステージPSTに設けられ、基準マーク27A,27Bが形成された基準マーク部材26と、基準マーク27Aの形成面と基準マーク27Bの形成面とを光学的に共役にするリレー光学系29Aと、マスクマーク15A,15B及び基準マーク27A,27Bの像を共通の撮像面で検出する撮像ユニット14Aとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクの位置関係情報を計測するアライメント技術、このアライメント技術を用いる露光技術、及びこの露光技術を用いるデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示装置として液晶表示パネルが多用されている。液晶表示パネルを製造する際に、プレートに透明薄膜電極をパターニングするためのフォトリソグラフィ工程において、マスクパターンをプレートに投影露光するために露光装置が使用されている。露光装置としては、投影光学系の大型化を抑制して大面積のマスクパターンを露光するために、複数の等倍の部分投影光学系を2列に配列した投影光学系を備え、マスクとプレートとを同期して移動するマルチレンズ型で走査露光型の露光装置(走査型露光装置)が使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来のマルチレンズ型の走査型露光装置は、マスクとプレートステージとの位置関係を計測してマスクのアライメントを行うために、プレートステージに設けられた空間像計測系を用いて、マスクに形成されたマスクマークと、プレートステージに形成された基準マークとの位置関係を所定の部分投影光学系を介して計測していた(例えば、特許文献2参照)。この場合、各部分投影光学系毎に、露光領域の両端部で1対のマークの位置ずれ量を計測し、隣接する露光領域の重なった部分で共通の1対のマークの位置ずれ量を計測するものとすると、必要な空間像計測系の個数は、部分投影光学系の個数よりも1だけ多くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−337462号公報
【特許文献2】特開2005−26528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近では、液晶表示パネルの大型化に伴い、その製造に使用されるプレート及びマスクも大型化する。このようにマスクが大型化すると、投影光学系を構成する部分投影光学系の個数が多くなり、マスクのアライメント用の空間像計測系の個数も多くなり、プレートステージの構成が複雑化する。
さらに、投影光学系を小型化するために、例えば複数の部分投影光学系を一列に配置し、プレートの一つのパターン形成領域を露光するために2回の走査露光を行うものとすると、必要な空間像計測系の個数は部分投影光学系の個数の2倍になる。
【0006】
また、従来は、各部分投影光学系の露光領域の両端部に2つの基準マークが形成されているため、2つの基準マークの間隔が変動した場合、マスクマークの位置の計測誤差が生じる恐れがあった。
本発明の態様は、このような事情に鑑み、簡単な構成でマスクと露光対象の基板を保持するステージとの位置関係情報を高精度に計測できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によるアライメント装置は、マスクステージに保持されたマスクと、そのマスクのパターンの投影光学系による像が露光される基板を保持して移動する基板ステージとの位置関係情報を計測するアライメント装置において、そのマスクに形成された第1マーク及び第2マークの少なくとも一方を照明光で照明する照明系と、その基板ステージに設けられ、その投影光学系に関してその第1マーク及びその第2マークとほぼ光学的に共役な位置に配置可能な第1基準マーク及び第2基準マークが形成された基準マーク部材と、その第1基準マークの形成面とその第2基準マークの形成面とを実質的に光学的に共役にするリレー光学系と、その第1マークの像及びその第1基準マークの像と、その第2マークの像及びその第2基準マークの像とを共通の受光面で検出する撮像装置と、その撮像装置の検出結果に基づいてその第1マークとその第1基準マークとの位置関係及びその第2マークと第2基準マークとの位置関係を示す位置関係情報を求める処理装置と、を備えるものである。
【0008】
また、本発明の第2の態様による露光装置は、マスクを保持するマスクステージと、そのマスクのパターンの像を基板に形成する投影光学系と、その基板を保持して移動する基板ステージとを有する露光装置において、本発明の第1の態様によるアライメント装置と、そのアライメント装置の検出結果に基づいてそのマスクステージとその基板ステージとの相対位置を制御する制御装置と、を備えるものである。
【0009】
また、本発明の第3の態様によるデバイス製造方法は、本発明の第2の態様による露光装置を用いて、そのマスクに形成されたパターンを感光基板に転写することと、そのパターンが転写されたその感光基板をそのパターンに基づいて加工することと、を含むものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の態様によれば、一つの撮像装置を用いて、マスクの2つのマークと、これらに対応する2つの基準マークとの位置関係情報を求めることができる。さらに、その撮像装置を用いて、2つの基準マークの間隔等の変動量も計測できる。従って、簡単な構成でマスクと基板ステージとの位置関係情報を高精度に計測できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態に係る露光装置の主に照明装置及びマスクステージを示す斜視図である。
【図2】第1の実施形態の露光装置の全体の概略構成を示す斜視図である。
【図3】(A)は図1のマスクステージに保持されたマスクMAを示す平面図、(B)は図3(A)のBB線に沿う断面図である。
【図4】(A)は図1のプレートステージの一部を示す平面図、(B)は図4(A)のBB線に沿う断面図である。
【図5】(A)はマスクアライメント系12Aを使用している状態の要部を示す断面図、(B)は図5(A)のマスクMAの照明領域を示す平面図、(C)は図5(A)の基準マーク部材26の露光領域を示す平面図、(D)は撮像面のマークの像の一例を示す拡大図である。
【図6】(A)はマスクステージで保持された露光中のマスクMAを示す平面図、(B)は図6(A)のマスクMAのパターンが転写されるプレートPTを示す平面図である。
【図7】(A)は2回目の走査露光前のマスクMAを示す平面図、(B)は図7(A)のマスクMAのパターンが転写されるプレートPTを示す平面図である。
【図8】(A)は第2の実施形態のマスクアライメント系を使用している状態の要部を示す断面図、(B)は第1変形例のマスクマーク及び基準マークの像を示す図、(C)は第2変形例のマスクマーク及び基準マークの像を示す図である。
【図9】液晶表示素子の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1の実施形態]
以下、本発明の第1の実施形態につき図1〜図7を参照して説明する。
図1は、本実施形態のステップ・アンド・スキャン方式の走査露光型の露光装置100の照明装置IU及びマスクステージMST等を示す斜視図、図2は、露光装置100の概略構成を示す斜視図である。図1及び図2において、露光装置100は、光源からの照明光でマスクMAのパターンを照明する照明装置IUと、マスクMAを保持して移動するマスクステージMSTと、マスクMAのパターンの拡大像をプレートPT上に投影する投影光学装置PLと、プレートPTを保持して移動するプレートステージPSTとを備えている。さらに、露光装置100は、マスクMAとプレートステージPSTとの位置関係を計測する4個のマスクアライメント系12A,12B,12C,12Dを含むマスクアライメント装置と、マスクステージMST及びプレートステージPSTを駆動するリニアモータ等を含む駆動機構(不図示)と、露光装置100の動作を統括的に制御するコンピュータよりなる主制御系23等とを備えている。照明装置IU、マスクステージMST及びプレートステージPSTの各ベース部材(不図示)、並びに投影光学装置PL等は不図示のフレーム機構に支持されている。
【0013】
本実施形態のプレートPTは、一例として液晶表示素子製造用のフォトレジスト(感光材料)が塗布された1.9×2.2m角、2.2×2.4m角、2.4×2.8m角、又は2.8×3.2m角程度の矩形の平板状のガラスプレートである。一例として、プレートPTの表面は、それぞれマスクMAのパターンが転写される2つのパターン転写領域EP1,EP2に区分して主制御系23に認識される。
【0014】
以下、図1及び図2において、マスクMAが保持されるマスクステージMSTの上面(保持面)に平行な平面(ほぼ水平面)に垂直にZ軸を取り、その平面内で走査露光時のマスクMAの走査方向に沿ってX軸を取り、X軸に直交する非走査方向に沿ってY軸を取って説明する。また、以下では、X軸、Y軸、及びZ軸に平行な軸の周りの回転方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明する。
【0015】
図1の照明装置IUにおいて、光源部10の4つの送光部10a,10b,10c,10dから射出された露光用の照明光(露光光)ILは、同一構成の部分照明光学系ILS1,ILS2,ILS3,ILS4にそれぞれ入射する。部分照明光学系ILS1,ILS2,ILS3,ILS4は、それぞれマスクMAのパターン面(下面)の照明領域(照野領域)IF1,IF2,IF3,IF4を照明する。照明光ILとしては、例えばYAGレーザの3倍高調波(波長355nm)が使用されている。
【0016】
部分照明光学系ILS1〜ILS4に入射した照明光ILは、それぞれコリメータレンズ4により平行光束にされた後、フライアイレンズ6(オプティカルインテグレータ)、集光レンズ7、可変視野絞り8、及びリレー光学系9を介して、マスクMAのパターン面のY軸に平行な2辺及びこの2辺を結ぶX方向に対して平行又は傾斜した2辺で囲まれた台形状の照明領域IF1〜IF4をほぼ均一に照明する。照明領域IF1〜IF4は、Y方向に沿って一列に等間隔で配置されている。
【0017】
また、部分照明光学系ILS1,ILS2のリレー光学系9とマスクMAとの間の領域をY方向に連結するように第1の支持機構13Aが配置され、部分照明光学系ILS3,ILS4のリレー光学系9とマスクMAとの間の領域をY方向に連結するように第2の支持機構13Aが配置されている。支持機構13A,13Bは不図示のフレーム機構に固定されている。支持機構13Aはマスクアライメント系12A,12Bを構成する所定部材を支持し、支持機構13Bはマスクアライメント系12C,12Dを構成する所定部材を支持している(詳細後述)。
【0018】
マスクMAの照明領域IF1,IF2,IF3,IF4からの光は、図2に示すように、それぞれ対応する部分投影光学系PL1,PL2,PL3,PL4を介して、プレートPT上の露光領域(像野領域又はイメージフィールド)EF1,EF2,EF3,EF4を露光する。部分投影光学系PL1〜PL4から一列に配列された4眼のマルチレンズ型の投影光学装置PLが構成されている。部分投影光学系PL1〜PL4は、それぞれマスクMA側及びプレートPT側にテレセントリックであり、マスクMA側からプレートPT側へ共通の拡大倍率M(絶対値)を有している。部分投影光学系PL1〜PL4及び露光領域EF1〜EF4はY方向に一列に等間隔で配置されている。Y方向における照明領域IF1〜IF4の配列周期(配列のピッチ)と露光領域EF1〜EF4の配列周期とは等しい。なお、照明領域IF1〜IF4ひいては露光領域EF1〜EF4の形状は、可変視野絞り8が照明光の一部を遮光することによって設定される。
【0019】
照明領域IF1〜IF4及び露光領域EF1〜EF4のY方向の配列周期は例えば300〜500mm程度、露光領域EF1〜EF4のY方向の長さLYEFはほぼその配列周期の1/2であり、照明領域IF1〜IF4のY方向の長さはほぼLYEF/Mである。
各部分投影光学系PL1〜PL4は、それぞれ例えば反射屈折系より構成され、マスクMAのパターンのX方向(走査方向)に正立でY方向(非走査方向)に倒立の拡大像をプレートPT上に形成する。部分投影光学系PL1〜PL4の拡大倍率Mは、好ましくは2倍以上であり、本実施形態では一例として2.5倍である。この場合、露光領域EF1〜EF4のY方向の配列周期を例えば400mmとすると、露光領域EF1〜EF4のY方向の長さは200mm程度、照明領域IF1〜IF4のY方向の長さは80mm程度である。
【0020】
図1において、マスクMAはマスクホルダ(不図示)を介してマスクステージMST上に真空吸着(又は静電吸着等)によって吸着保持されている。マスクステージMSTは、不図示のベース部材上に気体軸受機構を介してX方向、Y方向への移動、及びθz方向の回転が可能な状態で載置されている。マスクステージMSTの上面にX軸、Y軸の移動鏡50X及び50Yが固定され、移動鏡50XにX軸に平行に計測用ビームを照射するレーザ干渉計22XA,22XB、及び移動鏡50YにY軸に平行に計測用ビームを照射するレーザ干渉計22Yよりなるマスク側レーザ干渉計が配置されている。
【0021】
マスク側レーザ干渉計は、マスクステージMSTのX方向、Y方向の位置、及びθz方向の回転角を計測し、計測結果を主制御系23に供給する。主制御系23はその計測値に基づいてリニアモータ等のステージ駆動機構(不図示)を介してマスクステージMSTのX方向、Y方向の位置及び速度、並びにθz方向の回転角を制御する。
さらに、マスクMAのパターン領域には、Y方向に照明領域IF1〜IF4の配列周期の1/2の周期で、かつY方向に照明領域IF1〜IF4の長さと同じ幅で、X方向に細長い8個の部分パターン領域A1,B1,A2,B2,A3,B3,A4,B4が配列され、部分パターン領域A1〜B4内に転写用のパターンが描画されている。本実施形態では、後述のように2回の走査露光によって、マスクMAのパターンがプレートPT上の各パターン転写領域EP1,EP2に露光されるため、マスクMAの部分パターン領域A1〜B4の個数は、部分投影光学系PL1〜PL4の個数の2倍である。マスクMAの部分パターン領域A1〜A4及びB1〜B4の−X方向の端部には、それぞれアライメント用の同じ形状の2個の2次元のマスクマーク15A,15B〜15G,15H及び16A,16B〜16G,16Hが形成されている。
【0022】
図4(A)は図2のプレートステージPST及びプレートPTの一部を示す。図4(A)において、プレートPTのパターン転写領域EP1は、それぞれマスクMAの8個の部分パターン領域A1〜B4のパターンの拡大像がY方向に継ぎ合わせて露光される8個の部分転写領域54A〜54Hに分かれている。これはパターン転写領域EP2も同様である。なお、図2では、マスクMAの部分パターン領域A1〜A4、及び部分パターン領域A1〜A4のパターンの像が露光されるパターン転写領域EP1,EP2上の部分転写領域に斜線が施されている。
【0023】
また、図3(A)は図1のマスクステージMSTに保持されたマスクMAを示す。図3(A)において、マスクMAの部分パターン領域A1〜A4及びB1〜B4の+X方向の端部には、それぞれアライメント用の同じ形状の2個の2次元のマスクマーク17A,17B〜17G,17H及び18A,18B〜18G,18Hが形成されている。本実施形態では、一例としてマスクマーク15A,16A,17A,18Aは、光透過部に形成された十字型の遮光マークである。
【0024】
図3(A)のBB線に沿う断面図である図3(B)に示すように、マスクMAの部分パターン領域A1〜B4及びマスクマーク15A〜16H,17A〜18Hに対向するマスクステージMSTの部分には照明光ILを通す開口が形成されている。本実施形態では、後述のように、マスクアライメント系12A,12Bによって、マスクMAの+Y方向の半面内のマスクマーク15A〜16D及び17A〜18Dの位置情報が計測され、マスクアライメント系12C,12Dによって、マスクMAの−Y方向の半面内のマスクマーク15E〜16H及び17E〜18Hの位置情報が計測される。
【0025】
次に、図2において、プレートPTはプレートホルダ(不図示)を介してプレートステージPSTの上面に吸着保持されている。プレートステージPSTにはX軸、Y軸の移動鏡51X及び51Yが固定されている。そして、移動鏡51XにX軸に平行に計測用ビームを照射する2軸のレーザ干渉計21XA,21XBと、移動鏡51YにY軸に平行に計測用ビームを照射するレーザ干渉計21YAとを含むプレート側レーザ干渉計が配置されている。プレート側レーザ干渉計によって、プレートステージPSTのX方向、Y方向の位置、及びθz方向の回転角が計測される。なお、さらにマスクステージMST及びプレートステージPSTのθx方向、θy方向の回転角を計測してもよい。
【0026】
プレート側レーザ干渉計の計測値は主制御系23に供給され、主制御系23はその計測値に基づいてリニアモータ等のステージ駆動系(不図示)を介してプレートステージPSTのX方向、Y方向の位置及び速度、並びにθz方向の回転角を制御する。なお、一例として、プレートステージPSTは、θz方向の回転角が一定となるように駆動される。走査露光時には、マスクステージMSTのX方向に対する速度V/M(Mは拡大倍率)での駆動と、プレートステージPSTのX方向に対する速度Vでの駆動とが同期して行われる。部分投影光学系PL1〜PL4の像はX方向に正立像であるため、マスクステージMSTの走査方向とプレートステージPSTの走査方向とは同じ方向である。
【0027】
また、プレートPTのパターン転写領域EP1,EP2の近傍にはそれぞれ複数のアライメントマークAM1,AM2が形成されている。部分投影光学系PL1〜PL4の近傍には、アライメントマークAM1,AM2の位置を計測するためのオフアクシス方式で例えば画像処理型のプレートアライメント系ALGが配置されている。プレートアライメント系ALGの検出結果は主制御系23に供給され、その検出結果に基づいて主制御系23はプレートPTのアライメントを行う。
【0028】
さらに、プレートステージPSTの上面には、Y方向に沿って細長い基準マーク部材26が固定され、基準マーク部材26の上面は、プレートPTの上面と同じ高さに設定されている。基準マーク部材26の上面には、ほぼY方向に沿って同じ形状の8個の2次元の基準マーク27B,27A,27D,27C,27F,27E,27H,27Gが形成されている。
【0029】
図4(B)は図4(A)のBB線に沿う断面図である。図4(B)に示すように、基準マーク27A〜27Hは、それぞれ例えば極めて線膨張係数の小さい金属(インバー等)からなる基準マーク部材26の上板に固定された、照明光ILを透過する平板状のガラス基板28A〜28Hの上面に形成されている。図4(A)に示すように、基準マーク27A〜27Hは、光透過部中に形成された枠状の遮光パターンである。また、プレートステージPSTを駆動することによって、2つずつの基準マーク27A,27B〜27G,27Hはそれぞれ部分投影光学系PL1〜PL4の露光領域EF1〜EF4内の両端部に配置可能である。この場合、基準マーク27A〜27Hは、それぞれ図3(A)のマスクマーク15A〜15Hと部分投影光学系PL1〜PL4に関して光学的に共役な位置の近傍に配置可能である。さらに、基準マーク27A〜27Hは、他の1組のマスクマーク16A〜16H、1組のマスクマーク17A〜17H、又は1組のマスクマーク18A〜18Hと、それぞれ部分投影光学系PL1〜PL4に関して光学的に共役な位置の近傍にも配置可能である。
【0030】
さらに、基準マーク部材26の内部の基準マーク27A,27Bの下方にリレー光学系29Aが設置されている。
図5(A)は、マスクアライメント系12Aによって、マスクMAのマスクマーク15A,15Bと基準マーク部材26の基準マーク27A,27Bとの部分投影光学系PL1を介した位置関係を計測している状態の要部を示す図である。図5(A)において、部分投影光学系PL1は簡略化して表されている。図5(A)において、基準マーク27A,27Bの下方に、基準マーク27Aの周囲を透過した照明光ILの光路を90°ずつ折り曲げて基準マーク27Bを含む領域に導くように1対のミラー30A及び30Bが配置されている。ミラー30A及び30Bの間にY方向に所定間隔で1対のダブレットレンズ31A,31Bが配置されている。ミラー30A,30B及びダブレットレンズ31A,31Bから、基準マーク27Aの形成面28Aaと基準マーク27Bの形成面28Baとを光学的に共役にする等倍のリレー光学系29Aが構成されている。図4(A)の露光領域EF1のY方向の幅が例えば200mm程度である場合、ダブレットレンズ31A,31Bは、例えば焦点距離が70mm程度で、140mm程度の間隔をあけて配置される。
【0031】
また、図5(B)は図5(A)中の照明光ILの照明領域IF1内のマスクマーク15A,15Bを示す平面図、図5(C)は図5(A)中の部分投影光学系PL1の露光領域EF1内の基準マーク27A,27Bを示す平面図である。図5(B)に示すように、マスクマーク15A,15BはX方向の位置がdY1だけずれている。これは、後述のようにマスクアライメント系12Aの共通の視野内でマスクマーク15A,15Bの像を同時に検出するときに、その2つの像が重ならないようにするためである。同様に、他のマスクマーク15C,15D〜15G,15H及び16A,16B〜16G,16H等もそれぞれX方向の位置がずれている。
【0032】
さらに、図5(C)に示すように、基準マーク27A,27BもX方向の位置がdY2だけずれている。これは、基準マーク27Aのリレー光学系29Aによる像が基準マーク27Bと重ならないようにするためである。なお、リレー光学系29AがX方向に倒立像又は正立像を形成するかに応じて、基準マーク27Bの位置は基準マーク27Aの像と重ならないように設定すればよい。
【0033】
図4(B)の他の基準マーク27C,27D、基準マーク27E,27F、及び基準マーク27G,27Hの下方にもそれぞれリレー光学系29Aと同じ構成のリレー光学系29B,29C,29Dが配置されている。リレー光学系29A〜29Dは、基準マーク部材26の内部で例えば支持部材(不図示)を介してプレートステージPSTの上面に固定されている。さらに、基準マーク27C,27D等の位置も、一方のマークの像と他方のマークとが重ならないように設定されている。
【0034】
次に、本実施形態のマスクアライメント装置の構成及び動作につき説明する。マスクアライメント装置は、被検マークを照明する照明系として兼用される照明装置IUと、基準マーク27A〜27Hが形成された基準マーク部材26と、マスクアライメント系12A〜12Dとを備えている。マスクアライメント系12A〜12Dは、マスクMAの1組ずつのマスクマーク15A〜15H,16A〜16H,17A〜17H,18A〜18HとプレートステージPSTの1組の基準マーク27A〜27Hとの部分投影光学系PL1〜PL4を介した位置関係をそれぞれ計測する。
【0035】
まず、マスクアライメント系12A〜12Dによる計測対象をマスクMAのマスクマーク15A〜15Hとする。この場合、図3(A)に示すように、マスクステージMSTを駆動して、マスクMAの2つずつのマスクマーク15A,15B〜15G,15Hが照明領域IF1〜IF4内の両端部に配置される。この動作とともに、図4(A)に示すように、プレートステージPSTを駆動して、基準マーク部材26の2つずつの基準マーク27A,27B〜27G,27Hが露光領域EF1〜EF4内の両端部のマスクマーク15A,15B〜15G,15Hの像とほぼ共役な位置に配置される。
【0036】
さらに、図3(A)のBB線に沿う断面図である図3(B)において、マスクアライメント系12Aは、マスクMAの検出対象の一つのマスクマーク15Bの上方に配置される可動ミラー41Aと、対物レンズ42A及びCCDカメラ又はCMOSカメラ等の2次元の撮像素子43Aを有する撮像ユニット14Aと、図4(B)の基準マーク27A,27Bの底面側に配置されているリレー光学系29Aと、撮像ユニット14Aの撮像信号を処理する信号処理装置24(図1参照)とを備えている。信号処理装置24は、マスクアライメント系12A〜12Dで共用される。可動ミラー41A及び撮像ユニット14Aは支持機構13Aによって支持されている。
【0037】
図5(A)に示すように、撮像ユニット14Aの対物レンズ42Aは、部分投影光学系PL1からマスクMA及び可動ミラー41Aを介して入射する照明光ILPによって、マスクMAのマスクマーク15B及びこの近傍に形成される複数のマークの像を撮像素子43Aの撮像面43Aaに形成する。即ち、マスクマーク15Bの形成面(マスクMAのパターン面MAa)と撮像面43Aaとは光学的に共役である。可動ミラー41Aは、例えば14×20mm角程度の大きさの表面鏡である。一例として、対物レンズ42Aは、開口数が0.15で、倍率が25倍であり、撮像面43Aaの大きさは1/3インチである。
【0038】
可動ミラー41Aがあるため、一方のマスクマーク15Aだけが部分照明光学系ILS1からの照明光ILで照明される。なお、露光時に、可動ミラー41Aは、支持機構13Aによって照明光ILの光路外の点線で示す位置E1に退避される。
図3(B)のマスクアライメント系12Bも、マスクマーク15Cの上方に配置される可動ミラー41Bと、対物レンズ42B及び2次元の撮像素子43Bを有する撮像ユニット14Bと、図4(B)の基準マーク27C,27Dの底面側に配置されたリレー光学系29Bとを備えている。可動ミラー41B及び撮像ユニット14Bは、可動ミラー41A及び撮像ユニット14Aと対称な配置で支持機構13Aで支持されている。このような配置を用いることで、部分照明光学系ILS1,ILS2の間に、2つのマスクアライメント系12A,12Bの撮像ユニット14A,14B及び可動ミラー41A,41Bを容易に配置できる。なお、マスクアライメント系12Bに関しては、マスクマーク15Dが部分照明光学系ILS2からの照明光ILで照明される。
【0039】
他の2つのマスクアライメント系12C,12Dも、マスクアライメント系12A,12Bと同様に対称な構成である。マスクアライメント系12C,12Dで検出対象となる4個のマスクマーク15E〜15Hのうちの外側のマスクマーク15E,15Hが部分照明光学系ILS3,ILS4からの照明光ILで照明される。
図5(A)において、マスクアライメント系12Aを用いてマスクMAのマスクマーク15A,15Bの位置情報を計測する際には、マスクMAのパターン面MAaが部分投影光学系PL1の物体面に配置され、プレートステージPST側の基準マーク27A,27Bの形成面28Aa,28Baが部分投影光学系PL1の像面に配置される。そして、部分照明光学系ILS1(図3(A)参照)からの照明光ILは、一方のマスクマーク15Aを照明し、マスクマーク15Aの周囲を透過した照明光ILは、部分投影光学系PL1を介して基準マーク部材26の基準マーク27Aの近傍にマスクマーク15Aを拡大した像15AP(図5(C)参照)を形成する。基準マーク27Aの形成面28Aaを透過した照明光ILは、リレー光学系29Aによって基準マーク27Bの形成面28Baに、基準マーク27A及び像15APのそれぞれの等倍の像を形成する。
【0040】
形成面28Baを透過して上方に向かう照明光ILPは、部分投影光学系PL1を介してマスクマーク15Bの近傍のパターン面MAaに、マスクマーク15A、基準マーク27A、及び基準マーク27Bの各像(縮小像)を形成する。さらに、マスクマーク15Bの周囲のパターン面MAaを透過した照明光ILPは、可動ミラー41Aで反射され、撮像ユニット14Aの撮像素子43Aの矩形の撮像面43aに、図5(D)に示すように、基準マーク27A,27Bの像27AP,27BP、及びマスクマーク15A,15Bの像15AP,15BPを形成する。撮像素子43Aの撮像信号は信号処理装置24に供給される。図5(D)の座標系(X’,Y’)は、図5(B)の座標系(X,Y)に対応する方向を示している。なお、撮像ユニット14Aの視野は、撮像面43aと共役なパターン面MAa上の領域であり、その視野に形成されるパターンは撮像面43aに形成されるパターンを縮小したものである。
【0041】
この場合、図5(B)及び図5(C)に示すように、マスクマーク15A,15B及び基準マーク27A,27BはそれぞれX方向の位置がずれている。従って、撮像面43Aa(又は撮像ユニット14Aの視野)において、像27AP及び像15APと、像27BP及び像15BPとはX’方向(又はX方向)に横ずれしている。従って、信号処理装置24は、撮像素子43Aの撮像信号を処理することによって、基準マーク像27APの中心に対するマスクマークの像15APのX’方向、Y’方向の位置ずれ量(dXA,dYA)、及び基準マークの像27BPの中心に対するマスクマークの像15BPのX’方向、Y’方向の位置ずれ量(dXB,dYB)を求めることができる。なお、これらの位置ずれ量(dXA,dYA)等は例えば部分投影光学系PL1の像面(形成面28Aa等)での値に換算されている。これらの位置ずれ量(dXA,dYA)等は、マスクMAのマスクマーク15A,15Bの部分投影光学系PL1による像と対応する基準マーク27A,27BとのX方向、Y方向の位置ずれ量、ひいてはマスクマーク15A,15BとプレートステージPSTとの位置関係を表す情報である。
【0042】
なお、基準マーク部材26の線膨張係数は極めて小さいが、それでも基準マーク27A,27BのY方向の間隔が微小量δYだけ変動するものとする。この場合には、図5(D)の撮像面43Aaにおいて、基準マークの像27AP,27BPのY’方向の位置がδYだけ変化する。これに対して、例えば基準マークの像27AP,27BPの中心のY’座標を、それらの中心が近づく方向に±δY/2だけ補正してもよい。これによって、基準マーク27A,27Bの間隔が僅かに変動しても、基準マーク27A,27Bの中点を基準として、マスクマーク15A,15Bの像の位置を正確に計測できる。
【0043】
同様に、図3(B)の他のマスクアライメント系12B〜12Dにおいても、それぞれマスクマーク15C,15D〜15G,15Hの像と対応する基準マーク27C,27D〜27G,27HとのX方向、Y方向の位置ずれ量を計測できる。
また、さらに図3(A)のマスクMAの部分パターン領域A1〜A4内のパターンの描画誤差を計測する場合には、マスクステージMSTを駆動し、+X方向のマスクマーク17A〜17Hを照明領域IF1〜IF4内に移動する。そして、マスクアライメント系12A〜12Dを用いて、マスクマーク17A〜17Hの像と対応する基準マーク27A〜27HとのX方向、Y方向の位置ずれ量を計測してもよい。その後、マスクステージMSTを+Y方向にステップ移動し、図7(A)に示すように、マスクMAの部分パターン領域B1〜B4の+X方向のマスクマーク18A〜18Hを照明領域IF1〜IF4内に移動する。さらに、マスクアライメント系12A〜12Dを用いて、マスクマーク18A〜18Hの像と対応する基準マーク27A〜27HとのX方向、Y方向の位置ずれ量を計測する。さらに、マスクステージMSTを+X方向にステップ移動し、部分パターン領域B1〜B4の−X方向のマスクマーク16A〜16Hを照明領域IF1〜IF4内に移動する。そして、マスクアライメント系12A〜12Dを用いて、マスクマーク16A〜16Hの像と対応する基準マーク27A〜27HとのX方向、Y方向の位置ずれ量を計測してもよい。
【0044】
これらの位置ずれ量の計測結果は主制御系23に供給され、主制御系23は、その計測結果を用いてマスクMAのパターンの像とプレートステージPST(基準マーク部材26)とのX方向、Y方向の位置、及びθz方向の回転角を計算し、計算結果を記憶する。主制御系23は、必要に応じてその計算結果に基づいて、マスクステージMSTを介してマスクMAのθz方向の回転角を補正する。これによってマスクMAのアライメントが完了する。このマスクMAのアライメントは、例えばマスクMAの交換時に1回行うのみでもよい。
【0045】
また、予めプレートアライメント系ALGによって基準マーク部材26の基準マーク27A〜27Hの位置を計測することによって、プレートアライメント系ALGの検出中心と基準マーク部材26との位置関係も求められて、記憶されている。その後、図2のプレートステージPSTにフォトレジストが塗布されたプレート(プレートPTとする)がロードされる。次に、プレートステージPSTを駆動してプレートPTをX方向、Y方向に移動しながら、プレートアライメント系ALGによって、パターン転写領域EP1,EP2の複数(例えば4個)のアライメントマークAM1,AM2の位置を計測する。この計測結果より主制御系23は、マスクMAの部分パターン領域A1〜B4のパターンの像と、プレートPTのパターン転写領域EP1,EP2の部分転写領域54A〜54Hとの位置関係を認識する。
【0046】
この後は、マスクMAの部分パターン領域A1〜B4のパターンの像が、プレートPTのパターン転写領域EP1(EP2)の部分転写領域54A〜54Hに正確に露光されるように走査露光が行われる。即ち、図6(A)に示すように、マスクステージMSTを介してマスクMAを−X方向に速度V/M(Mは投影倍率)で移動し、照明領域IF1〜IF4をマスクMAの奇数番目の部分パターン領域A1〜A4に対して+X方向に相対走査する。これに同期して、図6(B)に示すように、プレートステージPSTを介してプレートPTを−X方向に速度Vで移動し、露光領域EF1〜EF4をパターン転写領域EP1の奇数番目の部分転写領域54A,54C,54E,54Gに対して+X方向に相対走査する。これによって、パターン転写領域EP1の部分転写領域54A,54C,54E,54GにそれぞれマスクMAの部分パターン領域A1〜A4のパターンの像が走査露光される。
【0047】
その後、図7(A)に示すように、マスクステージMSTを介してマスクMAを−Y方向にステップ移動し、これとほぼ同時に、図7(B)に示すように、プレートステージPSTを介してプレートPTを−Y方向にステップ移動する。次に、マスクステージMSTを介してマスクMAを+X方向に速度V/Mで移動して、照明領域IF1〜IF4をマスクMAの偶数番目の部分パターン領域B1〜B4に対して−X方向に相対走査する。これに同期して、プレートステージPSTを介してプレートPTを+X方向に速度Vで移動して、露光領域EF1〜EF4をパターン転写領域EP1の偶数番目の部分転写領域54B,54D,54F,54Hに対して−X方向に相対走査する。これによって、パターン転写領域EP1の部分転写領域54B,54D,54F,54HにそれぞれマスクMAの部分パターン領域B1〜B4のパターンの像が走査露光される。
【0048】
その後、プレートPTのパターン転写領域EP2に対しても、2回の走査露光によって、マスクMAの部分パターン領域A1〜B4のパターンの像が露光される。その後、プレートステージPST上のプレートを交換して露光が繰り返される。
本実施形態の効果等は以下の通りである。
(1)本実施形態の露光装置100は、マスクステージMSTに保持されたマスクMAと、マスクMAのパターンの部分投影光学系PL1〜PL4による像が露光されるプレートPTを保持して移動するプレートステージPSTとの位置関係情報を計測するマスクアライメント装置を備えている。そのマスクアライメント装置は、マスクMAに形成されたマスクマーク15A,15Bの一方のマスクマーク15Aを照明光ILで照明する照明装置IU(照明系)と、プレートステージPSTに設けられ、基準マーク27A,27Bが形成された基準マーク部材26と、基準マーク27Aの形成面28Aaと基準マーク27Bの形成面28Baとを光学的に共役にするリレー光学系29Aと、マスクマーク15Aの像及び基準マーク27Aの像と、マスクマーク15Bの像及び基準マーク27Bの像とを共通の撮像面43Aa(受光面)で検出する撮像ユニット14Aと、撮像ユニット14Aの検出結果に基づいてマスクマーク15Aの像と基準マーク27Aとの位置ずれ量、及びマスクマーク15Bの像と基準マーク27Bとの位置ずれ量(位置関係情報)を求める信号処理装置24と、を備えている。
【0049】
本実施形態によれば、一つの撮像ユニット14Aを用いて、マスクMAの2つのマスクマーク15A,15Bの像と、これらに対応する2つの基準マーク27A,27Bとの位置ずれ量、ひいてはマスクMAのパターンの像とプレートステージPSTとの位置関係情報を求めることができる。さらに、その撮像ユニット14Aを用いて基準マーク27A,27Bの間隔の変動量も計測できる。従って、その間隔の変動量の補正を行うことによって、簡単な構成でマスクMAのパターンの像とプレートステージPSTとの位置関係を高精度に計測できる。
【0050】
(2)また、マスクマーク15Aの像15AP及び基準マーク27Aの像27APと、マスクマーク15Bの像15BP及び基準マーク27Bの像27BPとは、撮像ユニット14Aの撮像面43Aa内でX方向に対応する方向にずれた異なる位置に形成される。従って、マスクマーク15A,15Bが同じ形状で、基準マーク27A,27Bが同じ形状であっても、それらの位置ずれ量を高精度に計測できる。
【0051】
(3)また、マスクMAには、マスクマーク15A,15Bと同じ形状のマスクマーク15C,15D〜15G,15Hが全部で4対形成され、基準マーク部材26には基準マーク27A,27Bと同じ形状の基準マーク27C,27D〜27G,27Hが全部で4対形成され、撮像ユニット14Aと同じ構成の撮像ユニット及びリレー光学系29Aと同じ構成のリレー光学系を有する4個のマスクアライメント系12A〜12Dが設けられている。従って、4個のマスクアライメント系12A〜12D(撮像ユニット)によって、4対のマスクマーク15A〜15Hの像と4対の基準マーク27A〜27Hとの位置関係を一括して計測できる。
【0052】
この場合、各リレー光学系29A〜29Dの製造コストは、撮像ユニット14Aの製造コストの1/4程度である。従って、本実施形態によれば、4対のマスクマーク15A〜15Hの像と4対の基準マーク27A〜27Hとの位置関係を例えば8個の空間像計測系(撮像ユニット14A)を用いて計測する場合に比べて、製造コストを6割程度に低減できる。
【0053】
なお、マスクマークがN対(Nは2以上の整数)、基準マークがN対形成されている場合に、これらの位置関係を一括して計測するためには、撮像ユニット14AがN個、かつリレー光学系29AがN個あればよい。
なお、本実施形態では、マスクMAのパターンを2回に分けてプレートPTの各パターン転写領域EP1,EP2に転写するため、マスクマーク15A〜15H,16A〜16Hは−X方向側で実質的に2×N対(図1ではN=4)設けられている。この場合、部分投影光学系PL1〜PL4及びマスクアライメント系12A〜12DはN個(図1、図2ではN=4)であるため、その2×N対のマスクマークは、2回に分けて位置検出が行われる。
【0054】
また、本実施形態では、さらにマスクMAの部分パターン領域A1〜A4,B1〜B4のパターンの描画誤差をも計測するために、全体としてマスクマークは4×N対設けられている。この場合でも、基準マークはN対でよく、撮像ユニット14A等及びリレー光学系29A等もそれぞれN個あればよい。
(4)また、マスクアライメント系12A〜12Dの撮像ユニット14A,14B等はマスクステージMSTの上方に配置されている。従って、プレートステージPSTにはリレー光学系29A〜29Dを設ければよいだけであるため、プレートステージPSTの構成を簡素化できる。
【0055】
(5)また、マスクアライメント系12Aは、照明装置IUとマスクマーク115Bとの間に退避可能に配置される可動ミラー41Aを備えている。従って、露光時には可動ミラー41Aを退避させることで、走査露光を行うことができる。
(6)また、本実施形態の露光装置100は、マスクMAを保持して移動するマスクステージMSTと、マスクMAのパターンの像をプレートPTに形成する部分投影光学系PL1〜PL4と、プレートPTを保持して移動するプレートステージPSTとを有する露光装置において、本実施形態のマスクアライメント装置と、このマスクアライメント装置の検出結果に基づいてマスクステージMSTとプレートステージPSTとの相対位置を制御する主制御系23とを備えている。
【0056】
そのマスクアライメント装置によれば、簡単な構成で高精度にマスクMAのアライメントを行うことができるため、マスクMAのパターンの像を高精度にプレートPTに露光できる。
(7)また、マスクMAのマスクマーク15Aとマスクマーク15BとはX方向(所定方向)に直交するY方向にほぼ沿って配列され、プレートPTを露光する際にマスクMAのX方向への移動と、プレートPTの対応する方向(X方向)への移動とが同期して行われる。従って、例えば走査露光の前に2つのマスクマーク15A,15Bの像と基準マーク27A,27Bとの位置関係を効率的に計測できる。
【0057】
(8)また、本実施形態の露光装置では、マスクMAの露光用の照明装置IUがマスクアライメント装置の照明系を兼用している。従って、マスクアライメント装置を小型化できる。
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態につき図8(A)を参照して説明する。本実施形態の露光装置は、図1の露光装置100に対してマスクアライメント系の構成が異なっている。以下、図8(A)において、図5(A)に対応する部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0058】
図8(A)は、本実施形態のマスクアライメント系45を用いてマスクMAのマスクマーク15A,15Bの像とプレートステージ(不図示)の基準マーク部材26に形成された基準マーク27A,27Bとの位置ずれ量を計測している状態を示す断面図である。図8(A)において、マスクマーク15A,15Bは、図1の照明装置IUと同じ照明装置からの照明光ILA,ILBで照明され、マスクマーク15A,15Bの部分投影光学系PL1による像が基準マーク27A,27Bの近傍に形成される。
【0059】
マスクアライメント系45は、基準マーク27Aの周囲を透過した照明光ILAの光路を折り曲げて、かつ基準マーク27Aの形成面28Aaと光学的に共役な面48にマスクマーク15Aの像及び基準マーク27Aの等倍の像を形成するリレー光学系29Dと、基準マーク27Bの周囲を透過した照明光ILBと面48を通過した照明光ILAとを合成するビームスプリッタ47と、合成された光束を受光する撮像ユニット14Aとを備えている。リレー光学系29Dは、ミラー30Aと、2つのダブレットレンズ31C,31Dとを有する。
【0060】
この場合、ビームスプリッタ47に関して、基準マーク27Bの形成面28Baと面48とは光学的に共役である。従って、基準マーク27Aの形成面28Aaと基準マーク27Bの形成面28Baとは、リレー光学系29Dによって実質的に光学的に共役にされているとみなすことができる。
また、撮像ユニット14Aにおいて、撮像素子43Aの撮像面43aには、図5(D)と同様に、基準マーク27A,27Bの像とマスクマーク15A,15Bの像とがX方向に離れて形成される。従って、マスクアライメント系45の撮像ユニット14Aの撮像信号を処理することによって、簡単な構成で、マスクマーク15A,15Bの像と基準マーク27A,27Bとの位置ずれ量を一括して計測できる。さらに、基準マーク27A,27Bの間隔の変動量も計測できるため、この変動量を補正することで、その位置ずれ量を高精度に求めることができる。
【0061】
次に、上記の第1及び第2の実施形態では、以下のような変形が可能である。
(1)上記の実施形態では、マスクマーク15A,15Bの像の中心及び基準マーク27A,27Bの像の中心を撮像素子43Aの撮像面43a(又はこれに対応する視野内)で横ずれさせている。しかしながら、2つのマスクマークの形状を異ならせ、かつ基準マークの形状を異ならせることによって、マスクマーク及び基準マークの像の中心を撮像面43aのほぼ同じ位置に形成することが可能である。
【0062】
まず、図8(B)の第1の変形例では、第1のマスクマークの像15A1Pは十字型のパターン、第1の基準マークの像27A1Pはそれを囲む枠状のパターン、第2のマスクマークの像15B1Pは像27A1Pを囲む枠状のパターン、第2の基準マークの像27B1Pは像15B1Pを囲む枠状のパターンである。これらのパターンが例えば図8(A)の撮像ユニット14Aの撮像素子43Aの撮像面43aに形成される。この場合でも、像27A1Pに対する像15A1Pの位置ずれ量、及び像27B1Pに対する像15B1Pの位置ずれ量を計測できる。この計測結果から、第1及び第2の基準マークに対する第1及び第2のマスクマークの像のそれぞれの位置ずれ量を計測できる。
【0063】
次に、図8(C)の第2の変形例では、第1のマスクマークの像15A2PはX’方向、Y’方向にほぼ平行な2本ずつのラインパターン、第1の基準マークの像27A2Pはそれを囲む2本ずつのラインパターン、第2のマスクマークの像15B2PはX’方向、Y’方向にほぼ45°で交差する方向に平行な2本ずつのラインパターンパターン、第2の基準マークの像27B2Pは像15B2Pを囲む2本ずつのラインパターンである。これらのパターンが撮像素子43Aの撮像面43aに形成される。この場合でも、像27A2Pに対する像15A2Pの2次元の位置ずれ量、及び像27B2Pに対する像15B2Pの2次元の位置ずれ量を計測できる。この計測結果から、第1及び第2の基準マークに対する第1及び第2のマスクマークの像のそれぞれの位置ずれ量を計測できる。
【0064】
(2)マスクMAの部分パターン領域A1〜A4,B1〜B4のパターンの描画誤差を計測する必要がない場合には、マスクMAの−X方向のマスクマーク15A〜16H又は+X方向のマスクマーク17A〜18Hの一方のマークを省略してもよい。
(3)部分投影光学系PL1〜PL4は拡大倍率であるが、部分投影光学系PL1〜PL4の倍率は等倍又は縮小倍率でもよい。さらに、部分投影光学系PL1〜PL4は、X方向に正立像又は倒立像のいずれを形成してもよく、Y方向にも正立像又は倒立像のいずれを形成してもよい。
【0065】
(4)投影光学装置PLは、4眼で一列の部分投影光学系PL1〜PL4を備えているが、部分投影光学系PL1〜PL4の個数は任意であり、複数の部分投影光学系を例えば2列に配置してもよい。
さらに、投影光学装置PL(投影光学系)として、単一の結像光学系のみからなる投影光学系を使用してもよい。この場合には、マスクのパターン領域は1つであり、マスクマーク及び基準マークはそれぞれ少なくとも2個あればよい。
【0066】
(5)上記の実施形態の露光装置は走査型露光装置であるが、本発明は、一括露光型(静止露光型)の露光装置のマスクアライメント装置にも適用できる。
また、上記の実施形態の露光装置100を用いて、基板(ガラスプレート)上に所定のパターン(回路パターン、電極パターン等)を形成することによって、電子デバイスとしての液晶表示素子(液晶表示パネル)を得ることもできる。以下、図9を参照して、この製造方法の一例につき説明する。
【0067】
図9のステップS401(パターン形成工程)では、先ず、露光対象の基板上にフォトレジストを塗布して感光基板を準備する塗布工程、上記の露光装置を用いて液晶表示素子用のマスクのパターンをその感光基板上に転写露光する露光工程、及びその感光基板を現像する現像工程が実行される。この塗布工程、露光工程、及び現像工程を含むリソグラフィ工程によって、その基板上に所定のレジストパターン(転写パターン層)が形成される。このリソグラフィ工程に続いて、そのレジストパターンをマスクとしたエッチング工程、及びレジスト剥離工程等(加工工程)を経て、その基板上に多数の電極等を含む所定パターンが形成される。そのリソグラフィ工程等は、その基板上のレイヤ数に応じて複数回実行される。
【0068】
次のステップS402(カラーフィルタ形成工程)では、赤R、緑G、青Bに対応した3つの微細なフィルタの組をマトリックス状に多数配列するか、又は赤R、緑G、青Bの3本のストライプ状の複数のフィルタの組を水平走査線方向に配列することによってカラーフィルタを形成する。その次のステップS403(セル組立工程)では、例えばステップS401にて得られた所定パターンを有する基板とステップS402にて得られたカラーフィルタとの間に液晶を注入して、液晶パネル(液晶セル)を製造する。
【0069】
その後のステップS404(モジュール組立工程)では、そのようにして組み立てられた液晶パネル(液晶セル)に表示動作を行わせるための電気回路、及びバックライト等の部品を取り付けて、液晶表示素子として完成させる。
上述の液晶表示素子の製造方法によれば、上記の実施形態の露光装置を用いて、マスクに形成されたパターンを感光基板に転写することと、そのパターンが転写されたその感光基板をそのパターンに基づいて加工すること(エッチング等)と、を含んでいる。その露光装置によれば、簡単な構成でマスクアライメントを高精度に行うことができるため、液晶表示素子を低コストで、かつ高精度に製造できる。
【0070】
なお、本発明は、液晶表示素子の製造プロセスへの適用に限定されることなく、例えば、プラズマディスプレイ等のディスプレイ装置の製造プロセスや、撮像素子(CCD等)、マイクロマシーン、MEMS(Microelectromechanical Systems:微小電気機械システム)、セラミックスウエハ等を基板として用いる薄膜磁気ヘッド、及び半導体素子等の各種デバイスの製造プロセスにも広く適用できる。
【0071】
なお、上記の実施形態では、露光用の照明光として、YAGレーザの3倍高調波が使用されている。その外に、露光用の照明光としては、例えば水銀ランプから射出されるg線(波長436nm)、h線(波長405nm)及びi線(波長365nm)等から選択された波長の光、KrF(波長248nm)若しくはArF(波長193nm)等のエキシマレーザ光、又は半導体レーザの高調波等も使用可能である。このように、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成を取り得る。
【符号の説明】
【0072】
IU…照明装置、MA…マスク、MST…マスクステージ、PL1〜PL4…部分投影光学系、PT…プレート、PST…プレートステージ、ALG…プレートアライメント系、12A〜12D…マスクアライメント系、14A〜14B…撮像ユニット、15A〜15H,16A〜16H…マスクマーク、24…信号処理装置、26…基準マーク部材、27A〜27H…基準マーク、29A〜29D…リレー光学系、41A,41B…可動ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクステージに保持されたマスクと、前記マスクのパターンの投影光学系による像が露光される基板を保持して移動する基板ステージとの位置関係情報を計測するアライメント装置において、
前記マスクに形成された第1マーク及び第2マークの少なくとも一方を照明光で照明する照明系と、
前記基板ステージに設けられ、前記投影光学系に関して前記第1マーク及び前記第2マークとほぼ光学的に共役な位置に配置可能な第1基準マーク及び第2基準マークが形成された基準マーク部材と、
前記第1基準マークの形成面と前記第2基準マークの形成面とを実質的に光学的に共役にするリレー光学系と、
前記第1マークの像及び前記第1基準マークの像と、前記第2マークの像及び前記第2基準マークの像とを共通の受光面で検出する撮像装置と、
前記撮像装置の検出結果に基づいて前記第1マークと前記第1基準マークとの位置関係及び前記第2マークと第2基準マークとの位置関係を示す位置関係情報を求める処理装置と、
を備えることを特徴とするアライメント装置。
【請求項2】
前記第1マークの像及び前記第1基準マークの像と、前記第2マークの像及び前記第2基準マークの像とは、前記撮像装置の前記受光面の異なる位置に形成されることを特徴とする請求項1に記載のアライメント装置。
【請求項3】
前記マスクには、前記第1マーク及び前記第2マークがN対形成され(Nは2以上の整数)、
前記基準マーク部材には、前記第1基準マーク及び前記第2基準マークがN対形成され、
前記N対のマーク及び前記N対の基準マークに対応して前記撮像装置及び前記リレー光学系がそれぞれN個設けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載のアライメント装置。
【請求項4】
前記撮像装置は、前記マスクステージの上方に配置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のアライメント装置。
【請求項5】
前記照明系と前記第2マークとの間に退避可能に配置されるミラーを備え、
前記照明系からの前記照明光は、前記第1マーク、前記投影光学系、前記第1基準マーク、及び前記リレー光学系を介して前記第2基準マークを照明し、
前記第2基準マークを通過した前記照明光は、前記投影光学系、前記第2マーク、及び前記ミラーを介して前記撮像装置に入射することを特徴とする請求項4に記載のアライメント装置。
【請求項6】
前記撮像装置は、前記基板ステージに支持されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のアライメント装置。
【請求項7】
前記照明系からの前記照明光は前記第1マーク及び前記第2マークを照明し、
前記第1マークを通過した前記照明光は、前記投影光学系、前記第1基準マーク、及び前記リレー光学系を介して前記撮像装置に入射し、
前記第2マークを通過した前記照明光は、前記投影光学系、及び前記第2基準マークを介して前記撮像装置に入射することを特徴とする請求項6に記載のアライメント装置。
【請求項8】
マスクを保持するマスクステージと、前記マスクのパターンの像を基板に形成する投影光学系と、前記基板を保持して移動する基板ステージとを有する露光装置において、
請求項1〜7のいずれか一項に記載のアライメント装置と、
前記アライメント装置の検出結果に基づいて前記マスクステージと前記基板ステージとの相対位置を制御する制御装置と、
を備えることを特徴とする露光装置。
【請求項9】
前記マスクの前記第1マーク及び前記第2マークは所定方向に交差する方向に配列され、
前記マスク及び前記投影光学系を介して前記基板を露光するときに、
前記マスクステージによる前記マスクの所定方向への移動と、前記基板ステージによる前記基板の前記所定方向に対応する方向への移動とを同期して行うことを特徴とする請求項8に記載の露光装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の露光装置を用いて、前記マスクに形成されたパターンを感光基板に転写することと、
前記パターンが転写された前記感光基板を前記パターンに基づいて加工することと、
を含むデバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−22532(P2011−22532A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169868(P2009−169868)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】