説明

インジェクションタイプのプラズマ処理装置及び方法

本発明は、インジェクションタイプのプラズマ処理装置に関し、常圧条件で誘電体バリア放電(DBD;Dielectric Barrier Discharge)を利用して多様な面積、多様な大きさ、及び多様な形状を有する処理対象物を微細アークストリーマによる損傷なしに処理することができるインジェクションタイプのプラズマ処理装置を提供することをその目的にする。本発明に係るインジェクションタイプのプラズマ処理装置は、誘電体が形成された状態で、反応チャンバに提供される電源電極板と、前記電源電極板に交流電力が印加される時に前記電源電極板との間でプラズマを形成する、前記反応チャンバの壁の一部を構成し且つ複数のホールが形成された接地電極板と、前記反応チャンバ内に反応ガスを注入して、反応チャンバ内のプラズマを前記接地電極板のホールを介して外部に噴射させるガス供給ユニットとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インジェクションタイプのプラズマ処理装置及び方法に関し、より詳細には、常圧条件で誘電体バリア放電(DBD;Dielectric Barrier Discharge)を利用して、多様な面積、多様な大きさ、及び多様な形状を有する作業物をプラズマ処理するのに適したインジェクションタイプのプラズマ処理装置及びその処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、大気圧放電、すなわち常圧でプラズマを生成させる技術として、パルスコロナ放電(pulsed corona discharge)と誘電体バリア放電が公知されている。パルスコロナ放電は、高電圧のパルス電源を利用してプラズマを生成する技術であり、誘電体バリア放電は、2つの電極のうち少なくとも1つに誘電体が形成され、2つの電極に数十Hz乃至数MHzの周波数を有する電源を印加してプラズマを生成する技術である。
【0003】
大気圧放電において、システムの気圧増加は、電子の平均自由飛程(electron mean free path)の顕著な減少を伴い、これにより、極端な電気放電条件が要求される。したがって、既存の大気圧放電システムは、非常に強い電場(electric field)を要求するため、発生電源の大型化のような問題点が惹起される。したがって、大気圧で容易で且つ安価に、そして大量にプラズマを生成するための技術が要求される。
【0004】
DBD放電技術を利用した大気圧プラズマ処理技術として、「Uchiyama」などの米国特許第5,124,173号には、平板電極の間に処理対象物を配置し、不活性気体を利用して大気圧で誘電体バリア放電を起こし、表面を親水処理する方法が開示されており、「Roth」などのアメリカ登録特許第5,414,324号には、大気圧プラズマを形成させるための気体の組成と電極間の間隔などの条件を変化させて放電状態を改善した技術が開示されており、米国登録特許第6,429,400号には、平板電極でないチューブ形態の電極を適用した大気圧プラズマ装置が開示されており、大韓民国登録特許第0365898号には、チャンバ内にHe、Arなどの反応ガスを注入し、その反応ガスが誘電体板を間に置いた2つの電極の間に流れるようにして、2つの電極の間に形成されるプラズマにより2つの電極の間の処理対象物を処理する技術が開示されている。
【0005】
前述のような従来の技術の一例を図1を参照して説明すれば、従来のプラズマ処理装置100は、反応チャンバ110内に誘電体122、142が形成された2つの電極120、140が互いに対向するように配置され、2つの電極120、140の間に起きる放電と、反応チャンバ110内に導入され、2つの電極の間に流れる反応ガスによってプラズマが発生し、2つの電極の間に配置された処理対象物Tに対するプラズマ処理をすることができた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前述のような従来のプラズマ処理装置は、放電を起こす2つの電極の間に処理対象物が配置されるので、厚さが厚いか、3次元の複雑な形状を有するか、又は、広い面積を有する処理対象物を処理するのに限界があった。そして、従来のプラズマ処理装置は、2つの電極の間の間隔を数mm以上離隔しにくいし、グロー状態の均一な放電にならず、2つの電極の間に微細アークストリーマ(streamer)が多量発生し、処理対象物に損傷を与えるおそれが大きかった。さらに、従来のプラズマ処理装置は、プラズマ発生領域に比べてチャンバの全体容積が大きく、チャンバ内に導入された反応ガスの相当量がプラズマ発生に寄与しないので、反応ガスの消費量が大きく、また迅速な反応ガスの供給が難しいという問題点があった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、常圧条件で誘電体バリア放電(DBD)で形成されたプラズマを処理対象物に向かって噴射する方式として、多様な面積、多様な大きさ、及び多様な形状を有する作業物(すなわち、処理対象物)を微細アークストリーマによる損傷なしに処理することができるインジェクションタイプのプラズマ処理装置を提供することにある。
【0008】
また、本発明の他の目的は、反応チャンバから噴射されるプラズマを利用して、多様な面積、多様な大きさ、及び多様な形状を有する処理対象物を損傷なしに処理し、且つ反応ガスをプラズマ発生領域に迅速に且つ大きい損失なしに供給することができるインジェクションタイプのプラズマ処理装置を提供することにある。
【0009】
また、本発明のさらに他の目的は、プラズマ発生領域を画定する電極全てが反応チャンバの外部に露出していて、電極の冷却が容易な構造のインジェクションタイプのプラズマ処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、反応チャンバ内にプラズマを発生させ、発生したプラズマを処理対象物に向かって噴射するインジェクションタイプのプラズマ処理装置を提供し、前記プラズマ処理装置は、誘電体が形成された状態で、前記反応チャンバに提供される電源電極板と、前記電源電極板に交流電力が印加される時に前記電源電極板との間でプラズマを形成する、前記反応チャンバの壁の一部を画定し且つ複数のホールが形成された接地電極板と、前記反応チャンバ内に反応ガスを注入し、反応チャンバ内のプラズマを前記接地電極板のホールを介して外部に噴射させるガス供給ユニットと、を含むことを特徴とする。
【0011】
ここで、前記ガス供給ユニットは、電源電極板と接地電極板との間のプラズマ発生領域に設けられるガス注入部を具備し、前記プラズマ発生領域に向かって反応ガスを直接的に注入することが好ましい。
【0012】
また、前記ガス注入部は、電源電極板と隣接するように設けられ、下側のプラズマ発生領域に向かっていることが好ましい。他の実施態様として、前記ガス注入部は、反応チャンバの側壁に設けられ、側方のプラズマ発生領域に向かっていることができる。
【0013】
また、前記電源電極板が反応チャンバの上部壁に設けられ、前記接地電極板が反応チャンバの下部壁に設けられ、前記上部壁と前記下部壁との間がプラズマ発生領域として画定されることが好ましい。また、前記電源電極板が前記上部壁上で外部に露出された状態で、空冷または他の冷却手段によって冷却されることができることが好ましい。
【0014】
また、前記ホールの直径は、好ましくは、前記電源電極板と前記接地電極板との間の間隔の5倍以内、より好ましくは、3〜5倍に定められる。前記接地電極板と前記処理対象物との間の距離は、好ましくは、前記ホールの直径の25倍以内、より好ましくは、15〜25倍に定められる。前記接地電極板と前記電源電極板との間の間隔は、0.03mm〜45mmに定められることが好ましい。前記ホールの直径は、0.01mm〜9mmに定められることがより好ましい。さらに、前記ホールは、反応チャンバ側から処理対象物側に向かってその直径が拡張されてもよく、これは、接地電極のホールを介して噴射されるプラズマが処理対象物上で均一の分布で幅広く拡散されることを可能にする。
【0015】
また、本発明に係るプラズマ処理方法は、電源電極板と接地電極板との間に放電を起こし、反応チャンバ内にプラズマを発生させるステップと、前記反応チャンバ内に反応ガスを注入し、接地電極板に形成された複数のホールを介してプラズマを噴射させるステップと、噴射されるプラズマを利用して接地電極板の下方に位置する処理対象物をプラズマ処理するステップと、を含む。
【0016】
ここで、前記プラズマ処理は、表面改質、Siエッチング、フォトレジストエッチング、殺菌または薄膜堆積であることが好ましい。前記反応ガスの注入量は、前記接地電極板に形成されるホールの個数、ホールの直径またはホール間の間隔によって調節されることがより好ましい。前記ホールの直径は、前記電源電極板と接地電極板との間の間隔の5倍以内に定められることがさらに好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施態様を詳細に説明する。
【0018】
図2は、本発明の一実施態様に係るインジェクションタイプのプラズマ処理装置1を概略的に示す模式図である。
【0019】
図2に示されたように、本実施態様に係るプラズマ処理装置1は、反応チャンバ10と、該反応チャンバ10に提供される電源電極板20及び接地電極板40と、前記反応チャンバ10内に反応ガスを供給するガス供給ユニット50などを含む。
【0020】
本実施態様において、反応チャンバ10は、側壁と上部壁及び/または下部壁の一部を含むフレーム12と、前記フレーム12に設置される電源電極板20及び接地電極板40により形成され、プラズマの発生がなされる1つの空間を画定する。
【0021】
電源電極板20は、反応チャンバ10外側の交流電源60から周波数略1KHz〜90MHz、電圧0.1kV〜900kVの高電圧の電力を印加されて活性化される電極であって、金属導電体22と、その底面に形成される誘電体24とから構成される。この時、前記誘電体24として、MgO、Al23、TiO2、Pb(Zr、Ti)O3、Si34、PZT(鉛ジルコネートチタネート)などの酸化物系のセラミックスやPTFE(polytetrafluoroethylene)、テフロン(登録商標)、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)、PEEK(Poly Ether Ether Ketone)、PC(Poly Carbonate)、PVC(Polyvinyl Chloride)などのポリマー系樹脂を利用することができる。この時、本実施態様に係る電源電極板20は、反応チャンバ10の上部壁の一部を構成し、以下で詳しく説明するように、電源電極板20は、容易に冷却可能であり、プラズマ発生領域PAが反応チャンバ10と実質的に同じ空間になるようにして、反応ガスの不要な消費を防止し、プラズマ領域への早い反応ガス供給を可能にする。
【0022】
本実施態様において、接地電極板40は、反応チャンバ10の下部壁を構成しながら、上側では、電源電極板20、より具体的には、電源電極板20上の誘電体24から所定間隔で離隔された状態で、電源電極板20との間にプラズマ発生領域PAを画定する。そして、前記接地電極板40には、複数のホール42が形成され、その下側に配置される処理対象物Tに向かっている。前記複数のホール42は、接地電極板40と電源電極板20との間のプラズマ発生領域PAで発生したプラズマが以下説明されるガス供給ユニット50の助けを受けて処理対象物Tに噴射されることを可能にする。また、前記接地電極板40は、2次(secondary)電子の放出が多い白金Pt、タングステンW、銀Agなどの貴金属からなるか、前記貴金属が少なくとも内側面にコーティングされて形成されることが好ましく、これは、接地電極板40と電源電極板20との間に一層容易な放電がなされるように助ける。
【0023】
一方、ガス供給ユニット50は、反応チャンバ10の側壁に形成されたガス注入部52を介して反応ガスを反応チャンバ10の内側に供給する。前記反応ガスは、処理対象物Tの種類または処理対象物の表面処理方式によって変えることができ、例えば、処理対象物に対する表面処理方式が表面改質(surface modification)、Siエッチング、フォトレジストエッチング、殺菌、または薄膜堆積のうちいずれかによって、N2、O2、Ar、He、CO2、CO、H2、NH3、CF4、CH4、C26、空気または水蒸気を単一または混合して使用することができる。
【0024】
反応チャンバ10内に供給された反応ガスは、反応チャンバ10内のプラズマ発生領域PAを経て接地電極40に形成された複数のホール42を介して外部に噴射され、この過程でプラズマ発生領域PAで発生したプラズマPも反応チャンバ10外側の処理対象物Tに向かって噴射される。この時、ガス注入部52は、電源電極板20が形成された反応チャンバ10の上部壁と接地電極板40が形成された反応チャンバ10の下部壁との間でプラズマ発生領域PAと連通しているので、反応チャンバ10内に供給された反応ガスによって、損失なしに且つ迅速にプラズマ発生領域PAに存在するプラズマPを外部に噴射させることができる。図2で、ガス注入部52が反応チャンバ10のプラズマ発生領域PAに直接接続するように反応チャンバ10の側壁に形成されるものとして示されているが、前記ガス注入部52を電源電極板20と隣接するように反応チャンバ10の上部壁に形成することもできる。このような場合にも、前記ガス注入部52は、下側のプラズマ発生領域に直接的に連通するようになる。
【0025】
これに加えて、前記電源電極板20は、反応チャンバ10の上部壁を介して外部に露出しているので、外部の空気または任意の冷却手段によって容易に冷却可能であり、これは、電力印加及びこれによる電気抵抗熱の発生による電源電極板20の過熱を低減するのに寄与する。
【0026】
図3は、本発明に係るプラズマ処理装置の処理特性を規定する因子を定義するための図である。図3を参照すれば、「a」は、接地電極板40に形成されたホールの直径(以下、「ホール直径」という)を示し、「b」は、電源電極板20と接地電極板40との間の間隔(以下、「電極間の間隔」という)を示し、「D」は、接地電極板40と処理対象物Tとの間の間隔(以下、「処理間隔」という)を示す。上記のような因子の相互関係を図4乃至図7を参照して説明すれば、次の通りである。
【0027】
図4及び図5は、本発明のプラズマ処理装置の駆動時にホール直径aと電極間の間隔bが処理対象物Tに及ぼす影響を説明するための図である。図4及び図5に示されたように、本発明に係るプラズマ処理装置は、ホール直径aが電極間の間隔bの5倍より大きい場合、すなわちa>5bの場合、プラズマ発生時に生じた微細アークストリーマSは、接地電極板40を通過してその下側の処理対象物Tに影響を及ぼし、この場合、微細アークストリーマSにより処理対象物Tが損傷されうる。これに対し、ホール直径aが電極間の間隔bの5倍以下の場合、すなわち、a≦5bの場合、プラズマ発生時に生じた微細アークストリーマSは、接地電極板40をほとんど通り過ぎることができず、したがって、接地電極板40の下側に位置する処理対象物Tには、微細アークストリーマSの発生による損傷が起きない。これは、本発明に係るプラズマ処理装置においてホール直径aと電極間の間隔bを調節することによって、電極板20、40間で発生し、処理対象物Tを損傷させ得る微細アークストリーマSを制限することができることを意味する。特に、ホール直径aが電極間の間隔bの5倍以内、より好ましくは、3〜5倍に設定される場合、微細アークストリーマSが処理対象物Tに何らの影響も及ぼさないことを実験を通じて確認することができたが、この場合、ホール直径aは、0.01〜9mmであり、電極距離bは、0.03〜45mmである。
【0028】
上記のように、本発明に係るプラズマ処理装置は、ホール直径aと電極間の間隔bを調整することによって、微細アークストリーマSが処理対象物Tを損傷することを防止すると共に、電源電極板20と接地電極板40との間の強い電場で形成されたプラズマPが接地電極板40のホール42を介して接地電極板40に隣接している処理対象物Tに到逹するので、プラズマ形成時に発生した高密度のラジカル、イオン、電子などを処理対象物Tの表面改質、洗浄、エッチングなどに効果的に利用することができる。
【0029】
図6は、本発明のプラズマ処理装置において、所定のホール直径aと処理間隔Dの下で起きる2次放電効果を示す模式図である。図6に示されたように、処理間隔D、すなわち接地電極板40と処理対象物Tとの間の間隔Dが接地電極板40のホール直径aの25倍以内、より好ましくは、15〜25倍に維持される場合、接地電極板40のすぐ下側で2次放電効果が誘発され、これは、接地電極板40のホール42を介して噴射されるプラズマPを幅方向に拡散させ、処理対象物Tに対するプラズマ処理効率を高めることができる。また、図7は、定められたホール直径aに対して処理対象物Tと接地電極板40との間の間隔、すなわち処理間隔Dを変化させながらプラズマ放電を撮影した写真である。図7を参照すれば、処理間隔Dが小さくなるほど、すなわち接地電極板と処理対象物が近いほど、プラズマ拡散効果が極大化されることが分かる。
【0030】
前述した2次放電と共に、接地電極板40のホール42の形状を図8に示されたように設計することによって、プラズマの拡散効果を一層増大させ、これにより、処理対象物に対して一層均一なプラズマ処理をすることが可能である。すなわち、図8の(a)及び(b)に示されたように、処理対象物に向かって直径が拡張するように接地電極板40のホール42を設計することによって、プラズマの拡散効果をより一層増大させることができる。
【0031】
前述したように、本発明に係るプラズマ処理装置は、多様な面積、多様な大きさ、及び多様な形状を有する処理対象物を微細アークストリーマなどによる損傷なしに且つ容易にプラズマ処理することができ、図2に示された構成、すなわち反応チャンバ10の下部壁に複数のホール42を有する接地電極板40を形成し、反応ガスによって複数のホール42を介してプラズマPを噴射するように構成することによって、反応ガスを過多に消費せずに、処理対象物を効率的に処理することができる。特に、前記プラズマ処理装置1は、ガス供給ユニット50のガス注入部52がプラズマ発生領域PAの隣に設けられるように構成されるため、反応チャンバ10内に注入された反応ガスはほとんど失われずに、プラズマ処理に利用され、これにより、反応ガスの消費量をさらに大きく低減することができる。
【0032】
図9は、従来に公知されたプラズマ処理装置(比較例)と本発明の実施態様に係るプラズマ処理装置の反応ガス消費量を比較したグラフであって、処理対象物に対する接触角に対して使用された反応ガスの流量をグラフとして示す図である。図9を参照すれば、本実施態様のプラズマ処理装置1は、比較例と比較すると、同量のプラズマ処理時に非常に少ない流量の反応ガスのみを使用することを示し、これは、本実施態様のプラズマ処理装置1が既存のプラズマ処理装置に比べて少ない量の反応ガスでプラズマを発生噴射させることができることを意味する。
【0033】
図10は、本発明の多様な変形実施態様に係るプラズマ処理装置を示す図であって、図10の(a)は、前述した実施態様のように、電源電極板20が反応チャンバ10の上部壁に形成され、且つガス供給ユニット50のガス注入部52が反応チャンバ10の側壁ではなく電源電極板20に隣接する上部壁に形成されたプラズマ処理装置を示す。このようなプラズマ処理装置1は、前述した実施態様のプラズマ処理装置と同様に、反応ガスがプラズマ発生領域に直接注入されるという点から、反応ガスの消費量が少なく、迅速な反応ガスの供給が可能であるという利点を有する。図10の(b)を参照すると、電源電極板20が反応チャンバ10の内側に形成され、電源電極板20を境界にして反応チャンバ10がガス供給領域GAとプラズマ発生領域 PAとに分けられ、電源電極板20と反応チャンバ10の側壁との間に画定された流路(flow passage)17を介して反応ガスがプラズマ発生領域に流れて行く。
【0034】
図2及び図10の(a)に示されたような、電源電極板が反応チャンバの上部壁に形成されたプラズマ処理装置は、図10の(b)に示されたような、反応チャンバ内に電源電極板が形成されたプラズマ処理装置に比べて利点を有し、その利点とは、前者は後者と比べて、反応ガスの消費が少なく、反応ガスがさらに迅速に供給され、電源電極板の冷却が一層容易であることである。
【0035】
図2及び図10には、1つのガス注入部52が反応チャンバ10に接続されるものとして図示されているが、これは、一例に過ぎず、複数のガス注入部52を反応チャンバ10に接続させることも可能であることは勿論である。前述した実施態様において、接地電極板40に形成されたホールが円形であるものとして説明したが、前記ホールを、円形だけでなく、三角形、四角形または、スリット型などに形成できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係るプラズマ処理装置は、複数のホールを有する接地電極板の下方に処理対象物が配置される構造となっており、厚さが厚いか、3次元の複雑な形状を有するか、又は広い面積を有する処理対象物を容易で且つ高い処理効率でプラズマ処理することができるという効果がある。
【0037】
また、本発明は、ガス供給ユニットのガス注入部をプラズマ発生領域に直接連通させることによって、反応ガスの不要な消費を低減し、反応ガスを迅速にプラズマ発生領域に送ることができるという効果がある。
【0038】
また、本発明は、電極板、特に電源電極板を反応チャンバの外部に露出させることによって、電気抵抗熱による電源電極板の過熱を大きく低減することができるという効果がある。
【0039】
また、本発明は、接地電極板に形成されるホールの直径と、接地電極板と電源電極板との間の電極間隔を適宜設計することによって、処理対象物に損傷を与えうる微細アークストリーマを制御することができるという効果がある。
【0040】
また、本発明は、接地電極板に形成されるホールの直径と、接地電極板と電源電極板との間の電極間隔を適宜設計することによって、プラズマの拡散効果を増大させることができ、一層均一で且つ幅広いプラズマ処理が可能であるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】従来技術によるプラズマ処理装置を概略的に示す模式図である。
【図2】本発明の実施態様に係るプラズマ処理装置を概略的に示す模式図である。
【図3】本発明に係るプラズマ処理装置の処理特性を規定する因子を定義するための図である。
【図4】本発明に係るプラズマ処理装置において、電極間の間隔とホール直径の相関関係を説明するために示す模式図である。
【図5】本発明に係るプラズマ処理装置において、電極間の間隔とホール直径の相関関係を説明するためのグラフである。
【図6】接地電極板の付近で2次放電効果が起きる本発明に係るプラズマ処理装置を示す模式図である。
【図7】接地電極板の付近で形成される2次放電を多様な条件で撮影した写真である。
【図8】プラズマの拡散噴射のために設計された接地電極板の形状を示す図である。
【図9】本発明の実施態様に係るプラズマ処理装置と従来のプラズマ処理装置との間のプラズマ処理装置の反応ガス消費量を示すグラフである。
【図10】本発明の他の実施態様に係るプラズマ処理装置を説明するための模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応チャンバ内にプラズマを発生させ、発生したプラズマを処理対象物に向かって噴射するインジェクションタイプのプラズマ処理装置であって、
誘電体が形成された状態で、前記反応チャンバに提供される電源電極板と、
前記電源電極板に交流電力が印加される時に前記電源電極板との間でプラズマを形成する、前記反応チャンバの壁の一部を画定し且つ複数のホールが形成された接地電極板と、
前記反応チャンバ内に反応ガスを注入し、反応チャンバ内のプラズマを前記接地電極板のホールを介して外部に噴射させるガス供給ユニットと、
を含むことを特徴とするインジェクションタイプのプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記ガス供給ユニットは、電源電極板と接地電極板との間のプラズマ発生領域に設けられるガス注入部を具備し、前記プラズマ発生領域に向かって反応ガスを直接的に注入することを特徴とする請求項1に記載のインジェクションタイプのプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記ガス注入部は、電源電極板と隣接するように設けられ、下側のプラズマ発生領域に向かっていることを特徴とする請求項2に記載のインジェクションタイプのプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記ガス注入部は、反応チャンバの側壁に設けられ、側方のプラズマ発生領域に向かっていることを特徴とする請求項2に記載のインジェクションタイプのプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記電源電極板が反応チャンバの上部壁に設けられ、前記接地電極板が反応チャンバの下部壁に設けられ、前記上部壁と前記下部壁との間がプラズマ発生領域として画定されることを特徴とする請求項2に記載のインジェクションタイプのプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記電源電極板が前記上部壁上で外部に露出された状態で、空冷または他の冷却手段によって冷却されることを特徴とする請求項5に記載のインジェクションタイプのプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記ホールの直径は、前記電源電極板と前記接地電極板との間の間隔の5倍以内に定められることを特徴とする請求項1に記載のインジェクションタイプのプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記接地電極板と前記処理対象物との間の距離は、前記ホール直径の25倍以内に定められることを特徴とする請求項1に記載のインジェクションタイプのプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記接地電極板と前記電源電極板との間の間隔は、0.03mm〜45mmに定められることを特徴とする請求項1に記載のインジェクションタイプのプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記ホールの直径は、0.01mm〜9.0mmに定められることを特徴とする請求項1に記載のインジェクションタイプのプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記ホールは、三角形、四角形、円形、または、スリット型に形成され、前記接地電極板上に配列されることを特徴とする請求項1に記載のインジェクションタイプのプラズマ処理装置。
【請求項12】
前記ホールは、反応チャンバ側から処理対象物側に向かってその直径が拡張されることを特徴とする請求項1に記載のインジェクションタイプのプラズマ処理装置。
【請求項13】
電源電極板と接地電極板との間に放電を起こし、反応チャンバ内にプラズマを発生させるステップと、
前記反応チャンバ内に反応ガスを注入し、接地電極板に形成された複数のホールを介してプラズマを噴射させるステップと、
噴射されるプラズマを利用して接地電極板の下方に位置する処理対象物をプラズマ処理するステップと、
を含むことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項14】
前記プラズマ処理は、表面改質、Siエッチング、フォトレジストエッチング、殺菌または薄膜堆積であることを特徴とする請求項13に記載のプラズマ処理方法。
【請求項15】
前記反応ガスの注入量は、前記接地電極板に形成されるホールの個数、ホールの直径またはホール間の間隔によって調節されることを特徴とする請求項13に記載のプラズマ処理方法。
【請求項16】
前記ホールの直径は、前記電源電極板と接地電極板との間の間隔の5倍以内に定められることを特徴とする請求項13に記載のプラズマ処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−503781(P2009−503781A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−523776(P2008−523776)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【国際出願番号】PCT/KR2005/002405
【国際公開番号】WO2007/013703
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(508026445)ピーエスエム インコーポレイティド (2)
【Fターム(参考)】