説明

エピタキシャルウェーハの製造方法

【課題】エピタキシャル層の厚みの面内方向の均一性を向上できるエピタキシャルウェーハの製造方法を提供する。
【解決手段】開閉部材の操作によって対応するガス流出口を開閉させ、エピ厚傾きの変化の傾向をモデル化し、エピ厚傾き変化傾向モデルを作成するモデル作成工程S1と、半導体ウェーハにエピタキシャル層を形成させるエピタキシャル層形成工程S2と、エピタキシャル層について半導体ウェーハの面内方向に配列する複数の測定位置においてエピタキシャル層の実厚みを測定する実厚み測定工程S3と、複数の測定位置におけるエピタキシャル層の実厚みに基づいて実厚みのエピ厚傾きである実エピ厚傾きを算出する実エピ厚傾き算出工程S4と、モデル作成工程S1により作成されたエピ厚傾き変化傾向モデルに基づいて開閉部材を操作することにより実エピ厚傾きを、その絶対値が小さくなるように修正する実エピ厚傾き修正工程S10とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハの主表面にエピタキシャル層が形成されてなるエピタキシャルウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンウェーハなどの半導体ウェーハの分野においては、基板としての半導体ウェーハの主表面にエピタキシャル層が形成されてなるエピタキシャルウェーハが知られている。エピタキシャルウェーハによれば、例えば、シリコンウェーハ上に任意の厚みや比抵抗を有する単結晶シリコンのエピタキシャル層が形成されているので、高性能の半導体デバイスを製造することができる。
【0003】
半導体ウェーハの主表面にエピタキシャル層を成長させてエピタキシャルウェーハを得る装置として気相成長装置が使用されている。気相成長装置は、一般的に、半導体ウェーハが収容されるチャンバー(反応室)と、チャンバーの内部に回転可能に設置され且つ半導体ウェーハを支持するサセプタと、原料ガス(SiH等)又はキャリアガス(H等)を少なくとも含む反応ガスをチャンバーの内部に供給するガス供給源とを備えており、ガス供給源から反応ガスをチャンバーの内部に供給することにより、チャンバーに収容された半導体ウェーハの主表面にエピタキシャル層を成長させることができる。
【0004】
ところで、半導体デバイスの分野においては高集積化が進んでおり、より微細な加工が必要になってきている。例えば、フォトリソグラフィー工程における露光装置の焦点深度等の関係から、デバイス材料となる半導体ウェーハには、より高い平坦度が要求されてきている。
【0005】
気相成長装置において平坦度を向上させるためには、エピタキシャル層の厚み(以下「エピ厚」ともいう)についての面内方向の均一性(以下「面内均一性」ともいう)を向上させることが重要となる。ウェーハを1枚ずつ処理する枚葉式の気相成長装置においてエピ厚の面内均一性を向上させる技術として、下記特許文献1には、複数のガス流出口を有する整流部材を設け、ガス供給源から供給される反応ガスを、整流部材の複数のガス流出口から流出させることで整流して、チャンバーの内部に供給させる技術が記載されている。なお、枚葉式の気相成長装置によるエピ厚みの面内方向の傾向は、ウェーハの中心を対称軸とした軸対称分布となる。
【0006】
【特許文献1】特開2002−249398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の気相成長装置によれば、特定のプロセス条件に対しては有効であるかもしれないが、種々変更されるプロセス条件の全てに対して有効な手段であるとは言えない。特に、1個のサセプタに複数枚のウェーハを載置して処理を行うバッチ式の気相成長装置においては、ウェーハのエピ厚の面内方向の傾向が不明確で、ウェーハの中心を対称軸とした軸対称分布とはならないため、エピ厚の面内均一性を向上させることは、更に難しい。
【0008】
従って、本発明は、エピタキシャル層の厚みについての面内方向の均一性をより向上させることができるエピタキシャルウェーハの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明のエピタキシャルウェーハの製造方法は、半導体ウェーハを収容するチャンバーと、該半導体ウェーハを載置可能に該チャンバーの内部に設置されるサセプタと、原料ガス又はキャリアガスを少なくとも含む反応ガスを前記チャンバーの内部に供給するガス供給源と、該ガス供給源から供給される前記反応ガスを前記チャンバーの内部へ流出させる複数のガス流出口及び該ガス流出口を開閉する複数の開閉部材を有する整流部と、を備え、前記チャンバーに収容された前記半導体ウェーハの主表面にエピタキシャル層を形成させる気相成長装置を用いたエピタキシャルウェーハの製造方法であって、前記サセプタに載置された前記半導体ウェーハの面内方向に配列する複数の測定位置において前記エピタキシャル層の厚みを測定し、基準位置からの該測定位置の距離を横軸とし、該測定位置に対応する該エピタキシャル層の厚みを縦軸として作成された、該測定位置と該測定位置に対応する該エピタキシャル層の厚みとの関係についてのグラフで、隣接する該測定位置に対応する該エピタキシャル層の厚みを結んだ直線の傾きをエピ厚傾きと定義する場合に、前記開閉部材それぞれの操作によって該開閉部材に対応する前記ガス流出口を開閉させ、前記エピ厚傾きの変化の傾向をモデル化して、エピ厚傾き変化傾向モデルを作成するモデル作成工程と、前記半導体ウェーハに前記エピタキシャル層を形成させるエピタキシャル層形成工程と、前記エピタキシャル層形成工程により形成された前記エピタキシャル層について前記半導体ウェーハの面内方向に配列する複数の前記測定位置において該エピタキシャル層の実厚みを測定する実厚み測定工程と、前記実厚み測定工程により測定された複数の前記測定位置における前記エピタキシャル層の実厚みに基づいて、該実厚みのエピ厚傾きである実エピ厚傾きを算出する実エピ厚傾き算出工程と、前記モデル作成工程により作成された前記エピ厚傾き変化傾向モデルに基づいて前記開閉部材を操作することにより、前記実エピ厚傾き算出工程により算出された前記実エピ厚傾きを、その絶対値が小さくなるように修正する実エピ厚傾き修正工程と、を備えることを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法。
【0010】
(2)前記実エピ厚傾き修正工程は、前記実エピ厚傾きの修正量を算出する実エピ厚傾き修正量算出工程と、前記実エピ厚傾き修正量算出工程により算出された前記実エピ厚傾きの修正量に基づいて前記開閉部材による前記ガス流出口の開閉パターンを選択する開閉パターン選択工程と、前記開閉パターン選択工程により選択された前記ガス流出口の開閉パターンに基づいて前記開閉部材を操作する開閉部材操作工程と、を備えることが好ましい。
【0011】
(3)前記整流部は、その内部空間が複数の空間に仕切られ、複数の前記ガス流出口が複数の該空間に対応して配置されており、該空間に導入された前記反応ガスが該空間に対応する該ガス流出口から流出するように構成されていることが好ましい。
【0012】
(4)前記モデル作成工程により作成された前記エピ厚傾き変化傾向モデルを、既に行われた前記実エピ厚傾き算出工程において算出された実エピ厚傾きに基づいて補正するエピ厚傾き変化傾向モデル補正工程を更に備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のエピタキシャルウェーハの製造方法によれば、エピタキシャル層の厚みについての面内方向の均一性をより向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明のエピタキシャルウェーハの製造方法の一実施態様について図面を参照にしながら説明する。まず、本発明のエピタキシャルウェーハの製造方法の一実施態様で使用される気相成長装置について説明する。
【0015】
図1は、本発明のエピタキシャルウェーハの製造方法の一実施態様に用いられる気相成長装置1を模式的に示す平面図である。図2は、図1に示す気相成長装置1における整流部2を拡大して示す平面図である。図3は、図2に示す整流部2をガス流出口22が形成された面側から見た側面図で、(A)は全てのガス流出口22が開いた状態を示す図、(B)は一部のガス流出口22が閉じた状態を示す図である。
【0016】
本形態の気相成長装置1は、シリコンウェーハ等の半導体ウェーハWの主表面にエピタキシャル層を形成して(気相成長させて)、エピタキシャルウェーハを製造する装置である。この気相成長装置1は、図1〜図3に示すように、チャンバー12、サセプタ13、ガス供給源14、整流部2等を備える。そして、本形態の気相成長装置1によれば、ガス供給源14から導入される反応ガスGを、整流部2を介してチャンバー12の内部に供給することにより、チャンバー12に収容された半導体ウェーハWの主表面にエピタキシャル層を形成することができる。
【0017】
チャンバー12は、反応室、反応容器などとも呼ばれ、サセプタ13、エピタキシャル層が形成される半導体ウェーハWなどが収容される。
サセプタ13は、チャンバー12の内部に回転可能に設置されており、半導体ウェーハWを収容する凹部(図示せず)を複数有する。サセプタ13は、前記凹部に複数枚(例えば8枚)の半導体ウェーハWを載置することが可能に構成されている。サセプタ13の載置面には、複数枚の半導体ウェーハWがサセプタ13の回転方向に沿って、所定間隔を置いて配列して載置される。従って、サセプタ13を回転させることにより複数枚の半導体ウェーハWがサセプタ13の中心を回転中心として公転し、公転する半導体ウェーハWの主表面に、同時にエピタキシャル層が形成される。
【0018】
ガス供給源14は、原料ガス又はキャリアガスを少なくとも含む反応ガスを、整流部2を介してチャンバー12の内部に供給する。原料ガスとしては、例えばSiH、SiCl、SiHCl、SiHClが挙げられる。キャリアガスとしては、例えばHが挙げられる。原料ガス、キャリアガスなどからなる反応ガスは、混合ガスの状態で供給配管16及び整流部2を介してチャンバー2の内部に供給される。
【0019】
整流部2は、チャンバー12の外部の上方に配設されており、供給配管16を通じて導入される反応ガスをチャンバー12の内部に供給する際に、反応ガスを整流してから半導体ウェーハWの上方空間に流出させる部位である。整流部2は、ガス供給源14から供給される反応ガスをチャンバー12の内部へ流出させる複数のガス流出口22、及びガス流出口22を開閉する複数の開閉部材23を備えている。
【0020】
詳述すると、図2及び図3に示すように、整流部2は、その内部空間が複数の空間に仕切られている。整流部2には、複数(本形態では40個)のガス流出口22が設けられている。なお、図2及び図3においては、簡略化のため、40個のガス流出口22のうち20個のみを図示している。
複数個のガス流出口22は、整流部2において、高さ方向には同じ位置に配置しており、幅方向には等間隔で配列している。
【0021】
整流部2は、その内部空間を複数の空間(以下「分割空間」ともいう)26に仕切る仕切り部材25を備えている。本形態においては、5個の仕切り部材25が設けられており、従って、整流部2の内部空間には、6個の分割空間26が形成される。
複数のガス流出口22は、複数の分割空間26に対応して配置されている。本形態においては、40個のガス流出口22は、一方の外壁24の側から6個、6個、8個、8個、6個及び6個ごとに分割空間26に対応して配置される。
【0022】
供給配管16は、分割空間26ごとに独立して反応ガスの供給量を調節できるようになっている。従って、各分割空間26ごとに、その分割空間26に設けられたガス流出口22からの反応ガスの総流量を変更することができる。
【0023】
各分割空間26に導入された反応ガスは、各分割空間26に対応する各ガス流出口22から流出する。例えば、3個のガス流出口22を有する分割空間26において、3個のガス流出口22が完全に開いているときには、3個のガス流出口22から均等に反応ガスが流出する。2個のガス流出口22が完全に開いており、1個のガス流出口22が完全に閉じているときには、3個のガス流出口22が完全に開いているときよりも大きな流量で、2個のガス流出口22から均等に反応ガスが流出する。3個のガス流出口22が完全に閉じているときには、対応する分割空間26から反応ガスは流出しない。
【0024】
開閉部材23は、各ガス流出口22に対応して設けられており、対応するガス流出口22を開閉する。図3(B)に示すように、開閉部材23が上方に位置するときには、対応するガス流出口22が開いた状態となる。一方、開閉部材23が下方に位置するときには、対応するガス流出口22が閉じた状態となる。
【0025】
開閉部材23は、ガス流出口22を完全に開くか、あるいは完全に閉じるかの択一的に開閉する構成を有していてもよい。また、開閉部材23は、ガス流出口22の開き度(開口度)を無段階で又は段階的に調整可能な構成(例えば、70%の開き度で開く)を有していてもよい。開閉部材23は、気相成長プロセスの途中でガス流出口22の開閉の調整(開き度の調整を含む)を行うことができる。
【0026】
次に、本発明のエピタキシャルウェーハの製造方法の一実施態様について、図4を参照しながら説明する。図4は、本発明のエピタキシャルウェーハの製造方法の一実施態様を示すフローチャートである。本実施態様のエピタキシャルウェーハの製造方法は、前述した気相成長装置1を用いてエピタキシャルウェーハを製造する方法である。
【0027】
図4に示すように、本実施態様のエピタキシャルウェーハの製造方法は、下記工程S1〜S4、S10(S11〜S13)、S21及びS2’を備える。
【0028】
(S1)モデル作成工程
開閉部材23それぞれの操作によって開閉部材23に対応するガス流出口22を開閉させ、エピ厚傾きφの変化の傾向をモデル化して、エピ厚傾き変化傾向モデルを作成する。
【0029】
ここで、エピ厚傾きφは、サセプタ13に載置された半導体ウェーハWの面内方向に配列する複数の測定位置においてエピタキシャル層の厚み(以下「エピ厚」ともいう)を測定し、図5に示すように、基準位置(ここでは、半導体ウェーハWの中心)からの測定位置P1〜P7の距離を横軸とし、測定位置P1〜P7に対応するエピ厚を縦軸として作成された、測定位置P1〜P7と測定位置P1〜P7に対応するエピ厚との関係についてのグラフで、隣接する測定位置P1〜P7に対応するエピ厚を結んだ直線の傾きをいう。
【0030】
「面内方向に配列する複数の測定位置」とは、反応ガスGの流れ方向と同じ方向で、ウェーハWの中心を通る直線CL(図1参照)上の配列位置をいう。本形態の気相成長装置1のように、1個のサセプタ13に複数枚のウェーハWが載置される場合には、ウェーハWをサセプタ13上における最も反応ガスGの流れ方向の上流側に配置させた状態で、前記の配列位置を定める。
【0031】
ここで、エピ厚は、反応ガスGの流れ方向と直交する方向において、サセプタ13の中心を基準として同じ軌跡を通ることから差異が生じにくい。したがって、反応ガスGの流れ方向と同じ方向(平行な方向)の測定位置においてエピ厚を評価すれば、ウェーハWの全面においてエピ厚の面内方向の均一性(面内均一性)を評価できる
【0032】
本実施態様においては、測定位置P1〜P7は、整流部2における6個の分割空間26(T1〜T6)(図3(A)参照)の境界(外壁24又は仕切り部材25)に対応するエピタキシャル層の位置となる。エピ厚は、例えば、FTIR法(フーリエ変換型赤外分光法)を用いて測定される。
【0033】
(S2)エピタキシャル層形成工程
ガス供給源14から反応ガスGをチャンバー12の内部に供給することにより、チャンバー12に収容された半導体ウェーハWの主表面にエピタキシャル層を形成する。詳細には、反応ガスGは、ガス供給源14から供給配管16を介して整流部2における各分割空間26に導入され、整流部2において整流されてからチャンバー12の内部に供給される。
【0034】
(S3)実厚み測定工程
エピタキシャル層形成工程S2により形成されたエピタキシャル層について半導体ウェーハWの面内方向に配列する複数の測定位置P1〜P7においてエピタキシャル層の実厚みを測定する。前述したように、バッチ式の気相成長装置1の場合には、ウェーハWをサセプタ13上における最も反応ガスGの流れ方向の上流側に配置させた状態で、エピタキシャル層の実厚みを測定する。エピタキシャル層の実厚みは、例えば、FTIR法を用いて低抵抗の半導体ウェーハの主表面上にエピタキシャル層を成長させたエピタキシャルウェーハにより測定される。
【0035】
(S4)実エピ厚傾き算出工程
実厚み測定工程S3により測定された複数の測定位置におけるエピタキシャル層の実厚みに基づいて、実厚みのエピ厚傾きである実エピ厚傾きを算出する。実エピ厚傾きは、モデル作成工程S1におけるエピ厚傾きφと同様の方法で算出される。
【0036】
(S10)実エピ厚傾き修正工程
モデル作成工程S1により作成されたエピ厚傾き変化傾向モデルと、実厚み測定工程S3で測定されたエピタキシャル層の実厚みとに基づいて開閉部材23を操作することにより、実エピ厚傾き算出工程S4により算出された実エピ厚傾きを、その絶対値が小さくなるように修正し、かつ各測定位置におけるエピタキシャル層の実厚みも等しくなるように修正する。
【0037】
実エピ厚傾き修正工程S10は、チャンバー12の構成部材の洗浄を行った後のように気相成長プロセスの条件が大きく変化したと考えられる場合に、行うことが好ましい。
実エピ厚傾き修正工程S10は、下記実エピ厚傾き修正量算出工程S11、開閉パターン選択工程S12及び開閉部材操作工程S13を備えている。
【0038】
(S11)実エピ厚傾き修正量算出工程
実エピ厚傾き算出工程S4により算出された実エピ厚傾きの修正量を算出する。具体的には、実エピ厚傾きの絶対値が小さくなるように、実エピ厚傾きの修正量を算出する。
【0039】
(S12)開閉パターン選択工程
実エピ厚傾き修正量算出工程S11により算出された実エピ厚傾きの修正量に基づいて、開閉部材23によるガス流出口22の開閉パターンを選択する。ガス流出口22の開閉パターンは、モデル作成工程S1により作成されたエピ厚傾き変化傾向モデルに基づいて選択される。
【0040】
(S13)開閉部材操作工程
開閉パターン選択工程S12により選択されたガス流出口22の開閉パターンに基づいて開閉部材23を操作する。開閉部材操作工程S13は、次のエピタキシャル層形成工程S2’の前に行われることになる。
開閉部材23は、ガス流出口22を完全に開くか、あるいは完全に閉じるかの択一的に開閉してもよい。また、開閉部材23は、ガス流出口22の開き度(開口度)を無段階で又は段階的に調整してもよい(例えば、70%の開き度で開く)。開閉部材23は、気相成長プロセスの途中でガス流出口22の開閉の調整(開き度の調整を含む)を行ってもよい。
開閉部材23の操作は、開閉パターン選択工程S12により選択されたガス流出口22の開閉パターンに連動させて機械的に行うこともでき、あるいは作業者の操作によって行うこともできる。
【0041】
(S21)エピ厚傾き変化傾向モデル補正工程
モデル作成工程S1により作成されたエピ厚傾き変化傾向モデルを、既に行われた実エピ厚傾き算出工程S4において算出された実エピ厚傾きに基づいて補正する。
【0042】
(S2’)エピタキシャル層形成工程
エピ厚傾き変化傾向モデル補正工程S21の後、次のエピタキシャル層形成工程S2’が行われる。エピタキシャル層形成工程S2’の前には、チャンバー12の構成部材の洗浄などのメンテナンス、気相成長プロセスの条件の変更(反応ガスの変更、雰囲気ガスの変更、半導体ウェーハWの直径の変更など)などを行うことができる。
【0043】
本実施態様のエピタキシャルウェーハの製造方法によれば、以下の効果が奏される。
本実施態様においては、モデル作成工程S1により作成されたエピ厚傾き変化傾向モデルに基づいて開閉部材23を操作することにより、実エピ厚傾き算出工程S4により算出された実エピ厚傾きを、その絶対値が小さくなるように修正する実エピ厚傾き修正工程S10を備えている。そのため、エピタキシャル層の厚みについての面内方向の均一性を向上させることができる。従って、平坦度が優れ、比抵抗についての面内方向の分布も優れたエピタキシャルウェーハが得られる。
【0044】
特に、図1に示すような、1個のサセプタ13に複数枚の半導体ウェーハWを載置して処理を行うバッチ式の気相成長装置1においては、ウェーハのエピ厚の面内方向の傾向が不明確で、ウェーハの中心を対称軸とした軸対称分布とはならない。サセプタ13上におけるウェーハWの載置位置によって、エピ厚の分布は、サセプタ13の回転中心に向かう方向とサセプタ13の回転方向(周方向)とで異なるためである。
これに対して、本実施態様によれば、ガス流出口22の開閉度とサセプタ13の回転中心に向かう方向の厚さ分布との関係により最適な条件を抽出できる工程を採用することで、サセプタ13の回転中心に向かう方向の厚さ分布を向上させることができる。従って、エピ厚の面内均一性を向上させることができる。
【0045】
以上、本発明のエピタキシャルウェーハの製造方法の一実施態様について説明したが、本発明は、前述した実施態様に制限されるものではない。
例えば、モデル作成工程S1におけるエピタキシャル層の厚みを測定する測定位置及び実厚み測定工程S3におけるエピタキシャル層の実厚みを測定する測定位置については、その位置、その数などは特に制限されない。
開閉部材操作工程は、エピタキシャル層形成工程の途中に行うこともできる。
【0046】
気相成長装置1において、ガス流出口22、開閉部材23、仕切り部材25、分割空間26などの個数は、前記形態における個数に制限されない。
整流部2におけるガス流出口22が設けられた面は、サセプタ13の周方向に沿って湾曲していてもよい。整流部2には、整流板が設けられていてもよい。
気相成長装置は、バッチ式の装置に制限されず、枚葉式の装置でもよい。また、気相成長装置は、半導体ウェーハの主表面に対して側方から反応ガスを供給する形態の装置でもよい。半導体ウェーハは、シリコンウェーハに制限されない。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
気相成長装置として、前述の気相成長装置1を用いた。ガス流出口22及び開閉部材23の個数は40個である。
【0049】
まず、全て(40個)のガス流出口22を全開させた状態で、シリコンウェーハの主表面にエピタキシャル層を形成した。各分割空間26ごとにガス流出口22から流出される反応ガスGの流量比を変える実験を行い、エピ厚についての面内方向の分布が最小となる、各分割空間における反応ガスの流量比を求めた。
【0050】
次に、前述のように求めた流量比で、各分割空間26に位置するガス流出口22から反応ガスGを流出させた状態において、実験計画法に基づいて各開閉部材23によるガス流出口22の開閉操作を行うことにより、エピ厚についての面内方向の分布を変化させた。この実験の結果を解析することにより、各開閉部材23によるガス流出口22の開閉パターンがエピ厚についての面内方向の分布に与える影響を推定した。
【0051】
具体的には、各測定位置P1〜P7におけるエピ厚を測定し、隣接する測定位置P1〜P7についての半導体ウェーハの中心からの距離及びエピ厚から、隣接する測定位置P1〜P7に対応するエピ厚を結んだ直線の傾き(エピ厚傾き)φを求めた。
エピ厚傾きφについて、全てのガス流出口22を全開させた状態において、エピ厚傾きφの変化の傾向をモデル化し、エピ厚傾き変化傾向モデルを作成した。
【0052】
次に、作成したエピ厚傾き変化傾向モデルを用いて、エピ厚についての面内方向の分布を均一にさせるための開閉部材23によるガス流出口22の開閉パターンを逆算した。
開閉部材23によるガス流出口22の開閉パターンがエピ厚に与える影響は、例えば以下のように求めることができる。
【0053】
図6には、40個のガス流出口22を有する整流部2について、40個のガス流出口22のうち、一方の端部(外壁24側)と中央部との間の20個のガス流出口22(つまり分割空間26(T1〜T3)に位置するガス流出口22)に、一方の端部側から[1]〜[20]と昇順で付番した例を示した。なお、ガス流出口22の開閉度は、整流部2の前記中央部(反応ガスGの流れの中央線)に対して対称であるとは限らず、非対称の場合もある。ガス流出口22の開閉度が非対称である場合に、エピ厚の面内均一性が最適化される場合も多い。
【0054】
下記〔表1〕には、開閉部材23により対応するガス流出口22を完全に閉じることにより、各評価領域R1〜R6(隣接する測定位置P1〜P7の間の領域)におけるエピ厚傾きφに与える影響の符号のみを示した。具体的には、「−(マイナス)」は、ガス流出口22を閉じることによりエピ厚傾きφが小さくなることを意味し、「+(プラス)」は、ガス流出口22を閉じることによりエピ厚傾きφが大きくなることを意味する。
【0055】
実施例の条件では、ガス流出口[2]を閉じることで、何れのエピ厚傾きもマイナス側に移行すること、及びガス流出口[15]を閉じることで、何れのエピ厚傾きもプラス側に移行するという結果が得られた。その他のガス流出口に関しては、一方向の傾向のみではなく、これら複数のガス流出口の開閉を適切に組み合わせることにより、何れのエピ厚傾きもその絶対値が小さくなるように調整される。
【0056】
【表1】

【0057】
実際には、エピ厚傾き変化傾向モデルの数値データからデータベースを作成しており、このデータベースを用いることで、エピ厚についての面内方向の分布を均一にさせる条件を抽出することができる。具体的には、6インチの半導体ウェーハを用いて、エピタキシャル層が30μmの厚みに成長したとき、全てのガス流出口22を全開にした状態で得られたエピ厚についての面内方向の分布が2.84%である(図7参照)のに対し、ガス流出口22のうちの[2]、[3]及び[15]を閉じた状態で得られたエピ厚についての面内方向の分布は1.20%である(図8参照)。
更に、開閉部材23によるガス流出口22の開閉パターンを固定した状態で、反応ガスの流量比を調整することにより、エピ厚についての面内方向の分布を0.82%に向上させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明のエピタキシャルウェーハの製造方法の一実施態様に用いられる気相成長装置1を模式的に示す平面図である。
【図2】図1に示す気相成長装置1における整流部2を拡大して示す平面図である。
【図3】図2に示す整流部2をガス流出口22が形成された面側から見た側面図で、(A)は全てのガス流出口22が開いた状態を示す図、(B)は一部のガス流出口22が閉じた状態を示す図である。
【図4】本発明のエピタキシャルウェーハの製造方法の一実施態様を示すフローチャートである。
【図5】モデル作成工程S1におけるエピ厚傾きφの算出方法を示すグラフである。
【図6】整流部2における20個のガス流出口22に[1]〜[20]の付番をした例を示す図である。
【図7】全てのガス流出口22を全開にした状態で得られたエピ厚についての面内方向の分布を示すグラフである。
【図8】一部のガス流出口22を閉じた状態で得られたエピ厚についての面内方向の分布を示すグラフである。
【符号の説明】
【0059】
1 気相成長装置
2 整流部
12 チャンバー
13 サセプタ
14 ガス供給源
22 ガス流出口
23 開閉部材
25 仕切部材
26 分割空間(空間)
S1 モデル作成工程
S2,S2’ エピタキシャル層形成工程
S3 実厚み測定工程
S4 実エピ厚傾き算出工程
S10 実エピ厚傾き修正工程
S11 実エピ厚傾き修正量算出工程
S12 開閉パターン選択工程
S13 開閉部材操作工程
S21 エピ厚傾き変化傾向モデル補正工程
W 半導体ウェーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェーハを収容するチャンバーと、該半導体ウェーハを載置可能に該チャンバーの内部に設置されるサセプタと、原料ガス又はキャリアガスを少なくとも含む反応ガスを前記チャンバーの内部に供給するガス供給源と、該ガス供給源から供給される前記反応ガスを前記チャンバーの内部へ流出させる複数のガス流出口及び該ガス流出口を開閉する複数の開閉部材を有する整流部と、を備え、前記チャンバーに収容された前記半導体ウェーハの主表面にエピタキシャル層を形成させる気相成長装置を用いたエピタキシャルウェーハの製造方法であって、
前記サセプタに載置された前記半導体ウェーハの面内方向に配列する複数の測定位置において前記エピタキシャル層の厚みを測定し、基準位置からの該測定位置の距離を横軸とし、該測定位置に対応する該エピタキシャル層の厚みを縦軸として作成された、該測定位置と該測定位置に対応する該エピタキシャル層の厚みとの関係についてのグラフで、隣接する該測定位置に対応する該エピタキシャル層の厚みを結んだ直線の傾きをエピ厚傾きと定義する場合に、
前記開閉部材それぞれの操作によって該開閉部材に対応する前記ガス流出口を開閉させ、前記エピ厚傾きの変化の傾向をモデル化して、エピ厚傾き変化傾向モデルを作成するモデル作成工程と、
前記半導体ウェーハに前記エピタキシャル層を形成させるエピタキシャル層形成工程と、
前記エピタキシャル層形成工程により形成された前記エピタキシャル層について前記半導体ウェーハの面内方向に配列する複数の前記測定位置において該エピタキシャル層の実厚みを測定する実厚み測定工程と、
前記実厚み測定工程により測定された複数の前記測定位置における前記エピタキシャル層の実厚みに基づいて、該実厚みのエピ厚傾きである実エピ厚傾きを算出する実エピ厚傾き算出工程と、
前記モデル作成工程により作成された前記エピ厚傾き変化傾向モデルに基づいて前記開閉部材を操作することにより、前記実エピ厚傾き算出工程により算出された前記実エピ厚傾きを、その絶対値が小さくなるように修正する実エピ厚傾き修正工程と、を備えることを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項2】
前記実エピ厚傾き修正工程は、
前記実エピ厚傾きの修正量を算出する実エピ厚傾き修正量算出工程と、
前記実エピ厚傾き修正量算出工程により算出された前記実エピ厚傾きの修正量に基づいて前記開閉部材による前記ガス流出口の開閉パターンを選択する開閉パターン選択工程と、
前記開閉パターン選択工程により選択された前記ガス流出口の開閉パターンに基づいて前記開閉部材を操作する開閉部材操作工程と、を備えることを特徴とする請求項1に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項3】
前記整流部は、その内部空間が複数の空間に仕切られ、複数の前記ガス流出口が複数の該空間に対応して配置されており、該空間に導入された前記反応ガスが該空間に対応する該ガス流出口から流出するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項4】
前記モデル作成工程により作成された前記エピ厚傾き変化傾向モデルを、既に行われた前記実エピ厚傾き算出工程において算出された実エピ厚傾きに基づいて補正するエピ厚傾き変化傾向モデル補正工程を更に備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−80824(P2010−80824A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249708(P2008−249708)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】