説明

エンジンの制御装置

【課題】 圧縮着火式のエンジンにおいて、減速リッチスパイク時に噴射燃料が燃焼することを素早く、且つ確実に抑制することができるエンジンの制御装置を提供する。
【解決手段】 ECU1Aは、減速フューエルカット運転時に筒内に燃料を噴射する減速リッチスパイクを行う圧縮着火式のエンジン50につき、減速リッチスパイクの実行に応じて、圧縮端の筒内温度に対応した所定の圧力以下になるように圧縮端の筒内圧を制御する筒内圧制御手段を備える。エンジン50には、排気を還流するEGR通路41と、EGR通路41の開度を変更するEGRバルブ43とがさらに設けられており、ECU1Aは、減速リッチスパイクの実行に応じて、EGR通路41の開度を小さく変更するようにEGRバルブ43を制御するEGR率制御手段をさらに備えている。筒内圧制御手段は具体的にはディーゼルスロットル13を制御対象として、筒内圧を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジンの制御装置に関し、特に減速フューエルカット運転時に筒内に燃料を噴射する減速リッチスパイクを行う圧縮着火式のエンジンについての制御装置であるエンジンの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、NOx吸蔵還元型触媒(以下、単にNOx触媒とも称す)が排気系に設けられたエンジンが知られている。NOx触媒は、流入する排気の酸素濃度が高いとき、すなわち排気の空燃比(A/F)が高いときは排気中の窒素酸化物(NOx)を吸蔵する。一方、NOx触媒は、流入する排気の酸素濃度が低下し、且つ還元剤が存在するときには吸蔵していたNOxを窒素(N)に還元しつつ放出する。したがって、流入する排気のA/Fが低くなったときはNOx触媒に吸蔵されていたNOxがNに還元されつつ放出される。
【0003】
かかるNOx触媒では、排気浄化能力を維持するため、吸蔵されたNOxを還元、放出する必要がある。このため、排気のA/Fを一時的に低くするいわゆるリッチスパイクを行い、吸蔵されたNOxを還元、放出する。そしてこのリッチスパイクとして、減速フューエルカット運転時に筒内に燃料を噴射する減速リッチスパイクが従来から知られている。
ここで、通常燃焼時には筒内に供給される空気量が多いため、リッチな状態を作り出すためにはそれだけ多くの燃料を必要とする。これに対して、減速フューエルカット運転時には筒内に供給される空気量が少ないため、リッチな状態を作り出すための燃料の量も通常燃焼時と比較して少なくて済む。このため減速リッチスパイクによれば燃費の悪化を抑制することができる点で有利である。
減速リッチスパイクに関する技術として、本発明と関連性があると考えられる技術が例えば特許文献1から3までで提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2007−177680号公報
【特許文献2】特開2006−009638号公報
【特許文献3】特開2003−020982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
減速リッチスパイクを行う場合には、噴射した燃料が燃焼しないようにする必要がある。この点、噴射した燃料を燃焼させないためには、筒内での酸素と燃料の反応が圧縮膨張行程期間に完了しないように反応速度を遅くする必要がある。
これに対して特許文献1が提案する技術は、圧縮端温度を低下させて、減速リッチスパイクによる噴射燃料が燃焼することを抑制している。また特許文献1が提案する技術は、圧縮端温度を低下させるにあたって具体的には吸気温度を低下させている。この点、エンジンの圧縮工程は断熱変化のため、次の式(1)で示されるように吸気温度を下げれば理論上は圧縮端の温度を下げることはできる。
in・Vinκ−1=TTDC・VTDCκ−1 ・・・(1)
inは吸気温度、Vinは吸気体積、TTDCは圧縮端温度、VTDCは圧縮端体積
【0006】
しかしながら、吸気温度はエンジンからの受熱等で高まってしまうことから、時間の限られた減速リッチスパイクでは、吸気温度を低下させても実際には圧縮端温度を十分に下げることが困難な点で問題がある。またこのような受熱の問題は容易に回避することがエンジンの構造上、困難であると考えられる。
また、圧縮端温度を低下させることは、時間の限られた減速リッチスパイクに対しては、応答性の面で必ずしも十分とはいえない点でも問題がある。
【0007】
そこで本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、圧縮着火式のエンジンにおいて、減速リッチスパイク時に噴射燃料が燃焼することを素早く、且つ確実に抑制することができるエンジンの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は減速フューエルカット運転時に筒内に燃料を噴射する減速リッチスパイクを行う圧縮着火式のエンジンにつき、前記減速リッチスパイクの実行に応じて、圧縮端の筒内温度に対応した所定の圧力以下になるように圧縮端の筒内圧を制御する筒内圧制御手段を備えることを特徴とする。
【0009】
ここで次の式(2)に示すアレニウスの式および式(3)から、圧縮端の筒内圧を下げることができれば、噴射燃料の反応速度を遅らせることができることがわかる。
k=Ae^(−E/RT) ・・・(2)
kは反応速度定数、Aは温度に無関係な定数、Eは活性化エネルギ、Rは気体定数、Tは絶対温度(K)
反応速度=k×(O)×(燃料) ・・・(3)
(O2)×(燃料)はモル濃度(mol/m
【0010】
式(2)および(3)から、反応速度は圧縮端の温度が低く、活性化エネルギが高いと遅くなることがわかる。また、式(3)から、圧縮端の筒内圧を下げることができれば、酸素濃度が低下するため、反応速度が遅くなることがわかる。
図14は実験により得たアレニウスプロットを示す図であり、この図からも減速リッチスパイクの運転領域では、圧縮端の温度が低く、圧縮端の圧力が低いほど着火遅れ時間が長くなることがわかる。
一方、吸気温度を下げる方法では、エンジンからの受熱等で圧縮端の温度を下げることが実際には困難であることは前述した通りである。
【0011】
これに対して本発明によれば、筒内圧を制御するので、時間の限られた減速リッチスパイク時でも、噴射燃料の反応速度を圧縮膨張期間よりも遅くすることを素早く、且つ確実に実現できる。すなわち本発明によれば筒内圧を制御するので、制御を実行した次のサイクルから条件を変えることが可能であり、このため時間の限られた減速リッチスパイク時でも噴射燃料が燃焼することを素早く、且つ確実に抑制できる。
また燃焼を抑制可能な筒内圧の上限値は筒内温度に応じて変化してくるところ、本発明によれば、圧縮端の筒内温度に対応した所定の圧力以下になるように圧縮端の筒内圧を制御するので、噴射燃料が燃焼することを確実に抑制できる。
【0012】
また本発明は前記エンジンに排気を還流するEGR通路と、該EGR通路の開度を変更するEGR率変更手段とがさらに設けられており、前記減速リッチスパイクの実行に応じて、前記EGR通路の開度を小さく変更するように前記EGR率変更手段を制御するEGR率制御手段をさらに備えるとともに、前記筒内圧制御手段が、前記エンジンの吸気系に設けられた空気量調節手段を制御対象として、前記筒内圧を制御する構成であってもよい。
本発明によれば、好ましくはEGR通路を全閉することを含め、EGR通路の開度を小さく変更するので、吸気を絞ることにより圧縮端の筒内圧を所定の圧力以下に制御することが可能になる。なお、筒内圧制御手段は、例えば空気量調節手段(具体的には例えばスロットル弁)およびエンジンが備える吸気弁の弁特性を可変にする可変動弁機構を制御対象として、筒内圧を制御してもよい。
【0013】
また本発明は前記エンジンが可変容量型過給機付きのエンジンであり、前記減速リッチスパイクの実行に応じて、容量が大きくなるように前記可変容量型過給機を制御する過給機制御手段をさらに備える構成であってもよい。
ここで、圧縮端の筒内圧を所定の圧力以下に制御するにあたり、吸気を絞る場合にはポンプロスが増大し、減速感が大きくなる。これに対して本発明によれば、ポンプロスを減少させることができ、この結果、違和感なく減速リッチスパイクを完了させることができる。このため本発明によれば、減速リッチスパイクによりドライバビリティが損なわれることをさらに抑制できる。
【0014】
また本発明は前記筒内圧制御手段が、前記エンジンが備える圧縮比を可変にする可変圧縮比機構、または前記エンジンが備える吸気弁の弁特性を可変にする可変動弁機構を制御対象として、前記筒内圧を制御する構成であってもよい。
すなわち圧縮比を下げることで筒内圧を制御するという観点から、圧縮比を下げることが可能な制御対象として、具体的には例えば可変圧縮比機構や可変動弁機構を制御対象として筒内圧を制御することもできる。
【0015】
また本発明は前記エンジンの回転数に応じて、前記所定の圧力を可変とする所定圧変更手段をさらに備える構成であってもよい。
ここで、エンジンの回転数が高くなれば圧縮膨張行程の時間が短くなり、この結果、噴射燃料が燃焼しない条件も変化してくるところ、本発明によれば、さらに噴射燃料が燃焼しない条件を確実に作り出すことができる。
【0016】
また本発明は前記エンジンが、さらに前記エンジンのピストン下方から気筒内にオイルを噴射するオイルジェットと、該オイルジェットからのオイル噴射を許可、禁止するオイルジェット切替手段とを有して構成されるオイルジェット装置を備えるとともに、前記減速リッチスパイクの実行に応じて、前記エンジンの筒内圧が、前記エンジンのクランクケース内圧よりも低い所定値以下となった場合に、オイル噴射を停止させるように前記オイルジェット切替手段を制御するオイルジェット停止制御手段をさらに備える構成であってもよい。
ここで、圧縮端の筒内圧を所定の圧力以下に制御した場合には筒内の負圧が増大することから、オイル上がりによるオイル消費の増大が懸念される。これに対して本発明によれば、オイル消費を量の観点から低減することができる。
【0017】
また本発明は前記エンジンのクランクケース内を、前記エンジンの吸気系のうち、該吸気系に設けられたスロットル弁よりも上流側の部分と、下流側の部分とに連通する連通路を備えるとともに、前記クランクケース内との連通を、前記吸気系のうち、前記スロットル弁よりも上流側の部分と、下流側の部分との間で切り替えるPCV切替手段を備えるPCV装置が前記エンジンにさらに設けられており、前記減速リッチスパイクの実行に応じて、前記クランクケース内との連通を前記吸気系のうち、前記スロットル弁よりも上流側の部分から、下流側の部分に切り替えるように前記PCV切替手段を制御するPCV切替制御手段をさらに備える構成であってもよい。
またオイル上がりは筒内圧がクランクケース内圧よりも低くなることで起きるところ、本発明によれば、オイル消費を状態の観点から低減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば圧縮着火式のエンジンにおいて、減速リッチスパイク時に噴射燃料が燃焼することを素早く、且つ確実に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面と共に詳細に説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、ECU(Electronic Control Unit:電子制御装置)1Aで実現されている本実施例に係るエンジンの制御装置をエンジン50など関連する各構成とともに模式的に示す図である。吸気系10は、エアフロメータ11と、インタークーラ12と、ディーゼルスロットル(空気量調節手段に相当)13と、インテークマニホールド14と、I/Cバイパスバルブ15と、I/Cバイパス路16とを有して構成されている。エアフロメータ11はエアフロセンサと大気温センサとを有して構成されており、吸入空気量を計測するとともに計測した吸入空気量に応じた信号を出力する。インタークーラ12は過給機30によって圧縮された吸気を冷却する。ディーゼルスロットル13はECU1Aの制御のもと、図示しないアクチュエータによって開閉駆動し、吸入空気量を調節する。インテークマニホールド14はエンジン50の各気筒に吸気を分配する。I/Cバイパスバルブ15はECU1Aの制御のもと、インタークーラ12故障時等に吸気の流通先をインタークーラ12からI/Cバイパス路16に切り替える。I/Cバイパス路16はインタークーラ12を迂回するように吸気を流通させる。
【0021】
排気系20は、エキゾーストマニホールド21と、NOx触媒22とを有して構成されている。エキゾーストマニホールド21は、各気筒からの排気を下流側で一つの排気通路に合流させる。NOx触媒22は、内部流路の壁面上にアルミナからなる担体の層を備えている。また担体上には、バリウム(Ba)と白金(Pt)が担持され、これにO2 ストレージ能力のあるセリア(Ce2 O3 )が添加されている。なお、NOx触媒22は、例えば、アルミナを担体とし、その担体上に、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)、もしくはセシウム(Cs)等のアルカリ金属と、バリウム(Ba)もしくはカルシウム(Ca)等のアルカリ土類と、ランタン(La)もしくはイットリウム(Y)等の希土類とから選択された少なくとも1つと、白金(Pt)等の貴金属とを担持して構成することができる。
【0022】
過給機30は可変容量型ターボチャージャであり、コンプレッサ部31と、タービン部32とを有して構成されている。過給機30は、図示しないコンプレッサホイールを収納するコンプレッサ部31が吸気系10に、図示しないタービンホイール32を収納するタービン部32が排気系20に、夫々介在するようにして配設されている。コンプレッサホイールとタービンホイールとは回転軸で連結されており、タービンホイールが排気によって駆動されると、回転軸を介してコンプレッサホイールが駆動し吸気を圧縮する。また過給機30はタービン部32に図示しないバリアブルノズル(以下、VNと称す)を備えている。VNはECU1Aの制御のもと、タービン容量を変更する。
【0023】
排気還流系40はEGR通路41と、EGRクーラ42と、EGRバルブ(EGR率変更手段に相当)43とを有して構成されている。EGR通路41は吸気系10と排気系20とを連通している。EGR通路41は本実施例では具体的にはインテークマニホールド14の上流側の集合部分とエキゾーストマニホールド21の下流側の集合部分とを連通している。EGRクーラ42は還流される排気を冷却する。EGRバルブ43はECU1Aの制御のもと、EGR通路41の開度を変更し、還流される排気の量を調節する。これによりEGR率が変更される。なお、排気還流系40は例えばエンジン50の気筒毎に設けられてもよい。
【0024】
エンジン50は圧縮着火式のディーゼルエンジンであり、各気筒51に直接燃料を噴射する燃料噴射弁52を備えている。各燃料噴射弁52は、燃料を所定圧まで蓄圧する蓄圧室(コモンレール)53と接続されている。コモンレール53は、図示しない燃料供給管を介して燃料ポンプ(図示省略)と連通している。燃料ポンプから吐出された燃料はコモンレール53へ供給され、コモンレール53で所定圧まで蓄圧されて各気筒51の燃料噴射弁52へ分配される。そして、燃料噴射弁52に駆動電流が印加されると、燃料噴射弁52が開弁し、これにより燃料噴射弁52から気筒51内へ燃料が噴射される。気筒51内に噴射された燃料は着火に適した筒内温度および筒内圧で自己着火(圧縮着火)する。エンジン50には、クランク角センサ101やエンジン50の冷却水温を検出するための水温センサ102など各種のセンサが配設されている。
【0025】
エンジン50は、ピストン下方から気筒内にオイルを噴射するオイルジェット装置60を備えている(図2参照)。このオイルジェット装置60はオイルジェット61と、オイルジェット切替弁(オイルジェット切替手段に相当)62とを有して構成されている。エンジン50では、オイルジェット61から噴射されたオイルがピストン54やボア55の冷却および潤滑を促進する。オイルジェット切替弁62はリリーフ弁であり、ECU1Aの制御のもと、流路を切り替えてオイルポンプ56が吐出するオイルをリリーフすることで、オイルジェット61からのオイル噴射を禁止する。またオイルジェット切替弁62は、ECU1Aの制御のもと、流路を切り替えてオイルポンプ56が吐出するオイルをオイルジェット61に到達させることで、オイルジェット61からのオイル噴射を許可する。
【0026】
またエンジン50は、吸気側VVT(Variable Valve Timing)70を有して構成されている(図3参照)。吸気側VVT70は、吸気弁57の作用角(開弁期間)及びバルブリフト量を変更するための構成であり、コントロールシャフト71と、接続アーム72と、摺接アーム73と、揺動カム74とを有して構成されている。吸気側VVT70では、ECU1Aの制御のもと、コントロールシャフト71を適宜回動させることにより、バルブリフト量及び作用角を連続的に可変にすることができる。本実施例では吸気側VVT70で可変動弁機構が実現されている。なお、可変動弁機構は排気弁のバルブ特性を可変にする機構を含む構成であってもよい。また可変動弁機構は、少なくとも吸気弁57のバルブ特性を可変にすることが可能な適宜の構造からなる可変動弁機構であってよい。
【0027】
またエンジン50にはPCV装置80が設けられている(図4参照)。PCV装置80はエンジン50のクランクケース内58から吸気系10にブローバイガスを流通させるための構成である。PCV装置80はクランクケース内58と、吸気系10のうち、ディーゼルスロットル13よりも上流側の部分(本実施例では具体的にはエアフロメータ11とコンプレッサ部31との間の部分)とを連通する第1の連通路81を備えている。またPCV装置80は第1の連通路81から分岐し、クランクケース内58と、吸気系10のディーゼルスロットル13よりも下流側の部分(本実施例では具体的にはインテークマニホールド14)とを連通する第2の連通路82を備えている。さらにPCV装置80は第1の連通路81と第2の連通路82との合流地点にPCV切替バルブ(PCV切替手段に相当)83を備えている。PCV切替バルブ83はECU1Aの制御のもと、クランクケース内58との連通を吸気系10のうち、ディーゼルスロットル13よりも上流側の部分と、下流側の部分との間で切り替える。
【0028】
またエンジン50は可変圧縮比装置90を備えている(図5参照)。可変圧縮比装置90は上部ブロック59a、下部ブロック59bおよびアクチュエータ91で構成されている。エンジン50では、シリンダブロック59が上部ブロック59aと下部ブロック59bとからなっており、また上部ブロック59aと下部ブロック59bとの間にアクチュエータ91が設けられている。アクチュエータ91はECU1Aの制御のもと、上部ブロック59aを下部ブロック59bに対して上下方向に移動させる。上部ブロック59aを上方に移動させると、燃焼室の容積が大きくなるため圧縮比が小さくなる。逆に上部ブロック59aを下方に移動させると、燃焼室の容積が小さくなるため圧縮比が大きくなる。なお、可変圧縮比機構は可変圧縮比装置90に限られず、圧縮比を可変にすることが可能な適宜のものであってよい。
【0029】
ECU1Aは、図示しないCPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータと入出力回路などを有して構成されている。ECU1Aは主にエンジン50を制御するように構成されており、本実施例では具体的には燃料噴射弁52や燃料ポンプのほか、ディーゼルスロットル13や、I/Cバイパスバルブ15や、過給機30や、EGRバルブ43や、オイルジェット用切替弁62や、吸気側VVT70や、PCV切替バルブ83や、アクチュエータ91などを制御するように構成されている。これら制御対象はECU1Aに電気的に接続されている。また、ECU1Aにはエアフロメータ11や、クランク角センサ101や、水温センサ102のほか、図示しない筒内圧センサやクランクケース内圧センサなどの各種のセンサが電気的に接続されている。ROMはCPUが実行する種々の処理が記述されたプログラムやマップデータなどを格納するための構成である。CPUがROMに格納されたプログラムに基づき、必要に応じてRAMの一時記憶領域を利用しつつ処理を実行することで、ECU1Aでは各種の制御手段や判定手段や検出手段や算出手段などが機能的に実現される。
【0030】
この点、本実施例では以下に示すEGR率制御手段と、筒内圧制御手段とがECU1Aで機能的に実現される。EGR率制御手段は、減速リッチスパイクの実行に応じて、EGR通路41の開度を小さく変更するようにEGRバルブ43を制御する。この点、EGR率制御手段は本実施例ではさらに具体的にはEGR通路41を遮蔽するようにEGRバルブ43を制御するように構成されている。
筒内圧制御手段は、減速リッチスパイクの実行に応じて、圧縮端の筒内温度に対応した所定の圧力以下になるように圧縮端の筒内圧を制御する。また筒内圧制御手段は本実施例では具体的にはディーゼルスロットル13を制御対象として、筒内圧の制御をするように構成されている。
【0031】
次にECU1Aの動作を図6に示すフローチャートを用いて説明する。ECU1Aでは、図6のフローチャートに示す処理がごく短い時間間隔で繰り返し実行される。ECU1Aは減速リッチスパイクの実行条件が成立したか否か、或いは成立しているか否かを判定する(ステップS11)。本実施例では具体的には減速フューエルカット運転になったか否かを判定することで、減速リッチスパイクの実行条件が成立したか否かを判定する。減速フューエルカット運転になったか否かは、例えば所定のエンジン回転数NE以上で、アクセルOFFになったか否かで判定することができる。
【0032】
但しこれに限られず、減速リッチスパイクの実行条件が成立したか否かは、減速フューエルカット運転になったか否かの判定を含め、適宜の条件であってよい。例えば減速フューエルカット運転になったと判定した場合に、さらに前回NOx還元を行ってから所定の期間が経過したか否かを判定し、所定期間が経過したと判定した場合に、減速リッチスパイクの実行条件が成立したと判定してもよい。また、例えば減速フューエルカット運転になったと判定した場合に、さらに推定したNOx触媒22のNOx吸蔵量が所定値を超えたか否かを判定し、所定値を超えたと判定した場合に、減速リッチスパイクの実行条件が成立したと判定してもよい。
【0033】
また本ステップでは、減速リッチスパイク実行フラグがONであるか否かを判定することで、減速リッチスパイク実行条件が成立しているか否かを判定する。そして減速リッチスパイク実行フラグがONである場合には、ステップS11で肯定判定される。ステップS11で肯定判定であれば、ECU1Aは減速リッチスパイク実行フラグをONにする(ステップS12)。これにより、減速リッチスパイクの実行条件が成立する。ステップS12に続いて、ECU1Aは減速フューエルカット運転中であるか否かを判定する(ステップS13)。本ステップで肯定判定されることにより、減速リッチスパイクが継続されることになる。ステップS11またはS13で否定判定であれば、減速リッチスパイク実行フラグをOFFにする(ステップS17)。
【0034】
一方、ステップS13で肯定判定であれば、ステップS14でECU1AはEGR通路41を遮蔽するようにEGRバルブ43を制御する(EGRバルブ43閉)。EGRバルブ43は一般に減速フューエルカット運転時でも次の加速に備えるために開かれたままとなっているところ、これにより、ディーゼルスロットル13で筒内圧を負圧にすることが可能になる。ステップS14に続いて、ECU1Aはディーゼルスロットル13を制御することで圧縮端の筒内圧を制御する(ステップS15)。本ステップでECU1Aは具体的にはディーゼルスロットル13を閉じ側に制御して吸気を絞る。またこのとき前述のステップS13でEGRバルブ43を閉じていることから、圧縮端の筒内圧を負圧に制御することができ、これにより圧縮端の筒内温度に対応した所定の圧力以下になるように圧縮端の筒内圧を制御できる。ステップS15に続いてECU1Aは筒内に燃料を噴射する(ステップS16)。これにより減速リッチスパイクが行われる。
【0035】
図7は減速リッチスパイク時に噴射燃料の燃焼を抑制可能な圧縮端の筒内圧の一例を模式的に示す図である。図6に示すフローチャートのステップS15でディーゼルスロットル13を制御する際、ECU1Aは具体的には図7に示す範囲内に筒内圧が収まるようにディーゼルスロットル13を制御する。図7に示すように、噴射燃料が燃焼することを抑制可能な圧縮端の筒内圧の上限値(Pmax)はそのときの筒内温度に応じて異なってくる。したがって、圧縮端の筒内圧を制御すれば、噴射燃料が燃焼することを抑制し得るところ、その筒内圧が図7に示す範囲外であった場合には噴射燃料が燃焼してしまうことになる。
【0036】
これに対してECU1Aは、圧縮端の筒内温度に対応した所定の圧力(ここでは図7に示す上限値を示す線の圧力)以下になるように圧縮端の筒内圧を制御するので、すなわち図7に示す範囲内になるように圧縮端の筒内圧を制御するので、噴射燃料の燃焼を好適に抑制することができる。そして、図7に示す範囲は例えば台上試験で求めることができ、またROMにマップデータとして予め格納しておくことができる。
【0037】
また図7に示す範囲内になるように圧縮端の筒内圧を制御するにあたっては、例えば水温センサ102の出力やエンジン50の運転状態に基づき筒内温度を推定するとともに、推定した筒内温度に対応する図7に示す範囲内の所定の筒内圧に圧縮端の筒内圧を制御することで行うことができる。そしてこの場合の所定の筒内圧もマップデータなどで予め設定およびROMに格納しておくことができる。例えば推定した筒内温度に対応する図7に示す範囲内の筒内圧のうち、より大きい筒内圧に所定の筒内圧を設定すれば、筒内圧の減少度合いを小さく済ますことができる。また、推定した筒内温度に対応する図7に示す範囲内の筒内圧のうち、より小さい筒内圧に所定の筒内圧を設定すれば、推定誤差やばらつきなどの影響があっても確実に噴射燃料の燃焼を抑制することができる。
また筒内圧の制御は筒内温度の制御と比較して応答性の面で有利である。すなわち、筒内圧を制御するECU1Aによれば、制御を実行した次のサイクルから条件を変更することができる。このため筒内圧を制御するECU1Aは時間の限られた減速リッチスパイクに特に適している。
【0038】
なお、筒内圧制御手段はディーゼルスロットル13を制御する代わりに、例えば吸気側VVT70を制御することで、圧縮端の筒内圧を制御してもよい。具体的には、吸気弁58の閉弁タイミングを遅らせ、圧縮工程においても吸気弁58が開いた状態になるように吸気側VVT70を制御すれば、筒内に吸気された空気がピストン55の上昇に伴い吸気系10に排出されることから、筒内圧の上昇を抑制できる。このように吸気側VVT70を制御対象として筒内圧を制御すれば、エンジン50の実圧縮比を低くすることができ、以って所定の圧力以下になるように圧縮端の筒内圧を制御することができる。
【0039】
一方、このように吸気側VVT70を制御しても、I/Cバイパスバルブ15をI/Cバイパス路16側へ切り替えた場合を含め、インタークーラ12の故障等で吸気温度が通常より高い場合には、筒内圧が上がってしまい、噴射燃料が燃焼してしまうことも考えられる。すなわちこのような場合には、吸気側VVT70を制御するだけでは筒内圧力を十分に下げることが困難なことも考えられる。そこでこのような場合には、さらにディーゼルスロットル13を閉じることでインテークマニホールド14を負圧にし、筒内から吸気系10に空気が排出され易くなるようにすることが好適である。インタークーラ12の故障等で吸気温度が通常より高い場合は、例えばインテークマニホールド14における温度が外気温度とインタークーラ12の能力から算出される温度と比較して高い場合として検出することができる。
【0040】
また筒内圧制御手段はディーゼルスロットル13を制御する代わりに、例えば可変圧縮比装置90を制御することで、圧縮端の筒内圧を制御してもよい。具体的にはアクチュエータ91を制御して上部ブロック59aを上方に移動させることで、圧縮比を下げることができ、これにより所定の圧力以下になるように圧縮端の筒内圧を制御することができる。
このようにECU1Aは、圧縮着火式のエンジン50において、減速リッチスパイク時に噴射燃料が燃焼することを素早く、且つ確実に抑制することができる
【実施例2】
【0041】
本実施例に係るECU1Bは、エンジン50の回転数NEに応じて、所定の圧力を可変とする所定圧変更手段をさらに備えている点以外、ECU1Aと実質的に同一のものとなっている。なお、ECU1Bに関連する各構成はECU1Aの場合と同じとなっている。このため本実施例ではECU1Bその他関連する各構成については図示省略する。また、所定圧変更手段はECU1AのROMに格納されたプログラムやマップデータを変更することで実現できる。
【0042】
次にECU1Bの動作を図8に示すフローチャートを用いて詳述する。なお、本フローチャートは図示のようにステップS21およびS22が追加されている点以外、図6に示すフローチャートと同一のものとなっている。このため本実施例では特にこれらステップS21およびS22について詳述する。ステップS14に続いて、ECU1Bは回転数NEを検出するとともに(ステップS21)、検出した回転数NEに基づいて適用するマップデータを決定する(ステップS22)。そしてステップS15では、ステップS22で決定したマップデータに基づき、筒内圧の制御が行われる。
【0043】
図9は減速リッチスパイク時に噴射燃料の燃焼を抑制可能な圧縮端の筒内圧の一例を回転数NEに応じて模式的に示す図である。図9に示すように、噴射燃料の燃焼を抑制できる圧縮端の筒内圧の上限値は、回転数NEに応じて変化する。このため例えば1000rpmで上限値付近の筒内圧になるように筒内圧の制御をしていた場合には、回転数NEが4000rpmに上昇した場合に、上限値を超えてしまい、この結果、噴射燃料が燃焼してしまうことになる。
これに対して本実施例ではECU1Bが、回転数NEに応じて適用するマップデータを決定することで、噴射燃料が燃焼しない条件を確実に作り出すことができる。これにより、噴射燃料の燃焼を確実に抑制することができる。
このようにECU1Bは、ECU1Aと比較して回転数NEが変化した場合であっても、圧縮着火式のエンジン50において、減速リッチスパイク時に噴射燃料が燃焼することを素早く、且つ確実に抑制することができる。
【実施例3】
【0044】
本実施例に係るECU1Cは、減速リッチスパイクの実行に応じて、容量が大きくなるように可変容量型過給機である過給機30を制御する過給機制御手段をさらに備えている点以外、ECU1Aと実質的に同一のものとなっている。なお、ECU1Cに関連する各構成はECU1Aの場合と同じとなっている。このため本実施例ではECU1Cその他関連する各構成については図示省略する。また、過給機制御手段は、ECU1AのROMに格納されたプログラムを変更することで実現できる。また、ECU1Bに対して過給機制御手段をさらに備えることも可能である。
【0045】
次にECU1Cの動作を図10に示すフローチャートを用いて詳述する。なお、本フローチャートは図示のようにステップS31が追加されている点以外、図6に示すフローチャートと同一のものとなっている。このため本実施例では特にステップS31について詳述する。ステップS15に続いて、ECU1Bは容量が大きくなるように過給機30を制御する(ステップS31)。このときECU1Bは具体的には過給機30のVNを開き側に制御することで、容量が大きくなるように過給機30を制御する。
【0046】
図11はエンジン50のPV線図をインジケータ線図で示す図であり、具体的にはディーゼルスロットル13で吸気を絞ったときの状態変化を図11(a)で、図11(a)に対してさらに過給機30のVNを開き側に制御したときの状態変化を図11(b)でそれぞれ示している。ディーゼルスロットル13で吸気を絞ったときには、下死点の筒内圧である圧力Pbが低下する。一方、筒内残留圧である圧力P4と圧力Pbとで囲われた部分の面積S1はポンプロスの大きさを示すことから、圧力Pbが低下するとポンプロスが増大することになる。このときには減速感が大きくなるため、車両のドライバビリティが損なわれてしまう。
【0047】
これに対して本実施例では、過給機30のVNを開き側に制御することで、筒内残留圧P4を低下させることができる。これにより、ポンプロスの大きさを示す面積S2を図11(a)に示す面積S1と同等にすることができ、この結果、違和感なく減速リッチスパイクを完了させることができる。したがって、減速リッチスパイクによりドライバビリティが損なわれることを抑制できる。
このようにECU1Cは、圧縮着火式のエンジン50において、減速リッチスパイク時に噴射燃料が燃焼することを素早く、且つ確実に抑制することができ、またECU1Aと比較して減速リッチスパイクによりドライバビリティが損なわれることをさらに抑制できる。
【実施例4】
【0048】
本実施例に係るECU1Dは、減速リッチスパイクの実行に応じて、オイル噴射を停止させるようにオイルジェット切替弁62を制御するオイルジェット停止制御手段をさらに備えている点以外、ECU1Aと実質的に同一のものとなっている。このオイルジェット停止制御手段は本実施例ではさらにエンジン50の筒内圧が、エンジン50のクランクケース内圧よりも低い所定値以下になった場合に、オイル噴射を停止させるようにオイルジェット切替弁62を制御するよう構成されている。なお、ECU1Dに関連する各構成はECU1Aの場合と同じとなっている。このため本実施例ではECU1Dその他関連する各構成については図示省略する。また、オイルジェット停止制御手段は、ECU1AのROMに格納されたプログラムを変更することで実現できる。また、ECU1BやECU1Cに対してオイルジェット停止制御手段をさらに備えることも可能である。
【0049】
次にECU1Dの動作を図12に示すフローチャートを用いて詳述する。なお、本フローチャートは図示のようにステップS41、S42およびS43が追加されている点以外、図6に示すフローチャートと同一のものとなっている。このため本実施例では特にこれらステップS41、S42およびS43について詳述する。ステップS15に続いて、ECU1Dは筒内圧とクランクケース内圧とを検出し(ステップS41)、筒内圧がクランクケース内圧よりも低く、且つ所定値以下であるか否かを判定する(ステップS42)。否定判定であれば、ステップS16に進む。一方、ステップS42で肯定判定であれば、ECU1Dはオイル噴射を停止させるようにオイルジェット切替弁62を制御する(ステップS43)。
【0050】
ここで、減速リッチスパイク実行時には燃焼を伴わないので、筒内温度も特段上がることはない。このためオイルジェット61でピストンやボアを冷却および潤滑する必要性は低く、オイルジェット61からのオイル噴射を停止しても、焼付き等が発生することもない。これに対してECU1Dは、オイルジェット61からのオイル噴射を停止しピストン55やボア56に供給するオイルをなくすことで、負圧になっている筒内にオイルが吸われ、この結果、オイル消費が増大することを防止できる。すなわちオイル消費の増大を量の観点から低減することができる。
このようにECU1Dは、圧縮着火式のエンジン50において、減速リッチスパイク時に噴射燃料が燃焼することを素早く、且つ確実に抑制することができ、またECU1Aと比較してさらにオイル消費が増大することを量の観点から低減できる。
【実施例5】
【0051】
本実施例に係るECU1Eは、減速リッチスパイクの実行に応じて、クランクケース内58との連通を吸気系10のうち、ディーゼルスロットル13よりも上流側の部分から、下流側の部分に切り替えるようにPCV切替バルブ83を制御するPCV切替制御手段を備えている点以外、ECU1Aと実質的に同一のものとなっている。なお、ECU1Eに関連する各構成はECU1Aの場合と同じとなっている。このため本実施例ではECU1Eその他関連する各構成については図示省略する。またオイルジェット停止制御手段は、ECU1EのROMに格納されたプログラムを変更することで実現できる。またECU1B、ECU1CまたはECU1Dに対してPCV切替制御手段をさらに備えることも可能である。
【0052】
次にECU1Eの動作を図13に示すフローチャートを用いて詳述する。なお、本フローチャートは図示のようにステップS51が追加されている点以外、図6に示すフローチャートと同一のものとなっている。このため本実施例では特にステップS51について詳述する。ステップS15に続いて、ECU1Eはクランクケース内58との連通をインテークマニホールド14に切り替えるようにPCV切替バルブ83を制御する(ステップS51)。これにより、クランクケース58の内圧が低下するため、筒内圧とクランクケース内圧の圧力差をなくすことができる。したがってオイル消費の増大を状態の観点から低減することができる。
このようにECU1Eは、圧縮着火式のエンジン50において、減速リッチスパイク時に噴射燃料が燃焼することを素早く、且つ確実に抑制することができ、またECU1Aと比較してさらにオイル消費が増大することを状態の観点から低減できる。
【0053】
上述した実施例は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
例えばEGR率制御手段は、上述の実施例に限られず、EGRの応答遅れを考慮し、減速リッチスパイクの実行条件が成立する前に(例えばEGRの応答遅れに相当する所定時間前の時点で)EGR率変更手段を制御してもよい。
また、筒内圧制御手段やEGR率制御手段や所定圧変更手段や過給機制御手段やPCV切替制御手段はECU1で実現することが合理的であるが、例えばその他の電子制御装置や専用の電子回路などのハードウェアやこれらの組み合わせによって実現されてもよい。この点、本発明のエンジンの制御装置は例えば複数の電子制御装置や電子制御装置と電子回路等のハードウェアとの組み合わせで実現されてもよい。すなわち、本発明のエンジンの制御装置は例えば分散制御的な態様で実現されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】ECU1Aを関連する各構成とともに模式的に示す図である。
【図2】オイルジェット装置60を模式的に示す図である。
【図3】吸気側VVT70を模式的に示す図である。
【図4】PCV装置80を模式的に示す図である。
【図5】可変圧縮比装置90を模式的に示す図である。
【図6】ECU1Aの動作をフローチャートで示す図である。
【図7】噴射燃料の燃焼を抑制可能な圧縮端の筒内圧の一例を模式的に示す図である。
【図8】ECU1Bの動作をフローチャートで示す図である。
【図9】噴射燃料の燃焼を抑制可能な圧縮端の筒内圧の一例を回転数NEに応じて模式的に示す図である。
【図10】ECU1Cの動作をフローチャートで示す図である。
【図11】エンジン50のPV線図をインジケータ線図で示す図である。
【図12】ECU1Dの動作をフローチャートで示す図である。
【図13】ECU1Eの動作をフローチャートで示す図である。
【図14】実験により得たアレニウスプロットを示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 ECU
13 ディーゼルスロットル
22 NOx触媒
30 過給機
43 EGRバルブ
50 エンジン
52 燃料噴射弁
60 オイルジェット装置
70 吸気側VVT
80 PCV装置
90 可変圧縮比装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
減速フューエルカット運転時に筒内に燃料を噴射する減速リッチスパイクを行う圧縮着火式のエンジンにつき、
前記減速リッチスパイクの実行に応じて、圧縮端の筒内温度に対応した所定の圧力以下になるように圧縮端の筒内圧を制御する筒内圧制御手段を備えることを特徴とするエンジンの制御装置。
【請求項2】
請求項1記載のエンジンの制御装置であって、
前記エンジンに排気を還流するEGR通路と、該EGR通路の開度を変更するEGR率変更手段とがさらに設けられており、
前記減速リッチスパイクの実行に応じて、前記EGR通路の開度を小さく変更するように前記EGR率変更手段を制御するEGR率制御手段をさらに備えるとともに、
前記筒内圧制御手段が、前記エンジンの吸気系に設けられた空気量調節手段を制御対象として、前記筒内圧を制御することを特徴とするエンジンの制御装置。
【請求項3】
請求項2項記載のエンジンの制御装置であって、
前記エンジンが可変容量型過給機付きのエンジンであり、
前記減速リッチスパイクの実行に応じて、容量が大きくなるように前記可変容量型過給機を制御する過給機制御手段をさらに備えることを特徴とするエンジンの制御装置。
【請求項4】
請求項1記載のエンジンの制御装置であって、
前記筒内圧制御手段が、前記エンジンが備える圧縮比を可変にする可変圧縮比機構、または前記エンジンが備える吸気弁の弁特性を可変にする可変動弁機構を制御対象として、前記筒内圧を制御することを特徴とするエンジンの制御装置。
【請求項5】
請求項1から4いずれか1項記載のエンジンの制御装置であって、
前記エンジンの回転数に応じて、前記所定の圧力を可変とする所定圧変更手段をさらに備えることを特徴とするエンジンの制御装置。
【請求項6】
請求項1から5いずれか1項記載のエンジンの制御装置であって、
前記エンジンが、さらに前記エンジンのピストン下方から気筒内にオイルを噴射するオイルジェットと、該オイルジェットからのオイル噴射を許可、禁止するオイルジェット切替手段とを有して構成されるオイルジェット装置を備えるとともに、
前記減速リッチスパイクの実行に応じて、前記エンジンの筒内圧が、前記エンジンのクランクケース内圧よりも低い所定値以下となった場合に、オイル噴射を停止させるように前記オイルジェット切替手段を制御するオイルジェット停止制御手段をさらに備えることを特徴とするエンジンの制御装置。
【請求項7】
請求項1から6いずれか1項記載のエンジンの制御装置であって、
前記エンジンのクランクケース内を、前記エンジンの吸気系のうち、該吸気系に設けられたスロットル弁よりも上流側の部分と、下流側の部分とに連通する連通路を備えるとともに、前記クランクケース内との連通を、前記吸気系のうち、前記スロットル弁よりも上流側の部分と、下流側の部分との間で切り替えるPCV切替手段を備えるPCV装置が前記エンジンにさらに設けられており、
前記減速リッチスパイクの実行に応じて、前記クランクケース内との連通を前記吸気系のうち、前記スロットル弁よりも上流側の部分から、下流側の部分に切り替えるように前記PCV切替手段を制御するPCV切替制御手段をさらに備えることを特徴とするエンジンの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−24865(P2010−24865A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184314(P2008−184314)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】