説明

エンジン制御装置

【課題】例えばエンジン停止中に吸気通路切換手段が氷結して動作不能になったとしても、再始動時の失火等を抑制する。
【解決手段】エンジン制御装置は、エンジンに吸気を供給する吸気管(14)の管路に設けられた吸気冷却装置(24)と、吸気管において吸気冷却装置をバイパスするバイパス通路(14B)と、吸気冷却装置側(14A)とバイパス通路側(14B)との間で吸気が通る吸気通路を切り換える吸気通路切換手段(22,22A,22B)とを備え、吸気通路切換手段は、当該エンジンの停止時には、吸気通路をバイパス通路側(14B)に切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの吸気を冷却する吸気冷却装置における氷結対策技術に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のエンジンでは、吸気温度が低いほど空気の圧縮率が良くなり出力を向上させることが可能であるため、過給器が圧縮して加熱した空気を冷却することを目的として、過給器と吸気マニホールドを結ぶ吸気管に吸気冷却装置が設けられる。ところが、エンジンの冷間始動時においてまで吸気冷却装置が吸気を冷却すると、エンジンの暖気が遅れるおそれがある。
【0003】
このような不具合に対処するため、例えば特許文献1には、吸気冷却装置をバイパスするバイパス通路と、このバイパス通路を開閉するバイパス通路開閉弁とを備え、エンジンの冷間始動時にバイパス通路開閉弁をバイパス通路側に開とする技術が開示されている。この技術によれば、過給器から加圧された吸気が、吸気冷却装置をバイパスして流れるので冷却されない。それゆえ、エンジンの暖気が早期に行われ、排気ガス温度も早期に上昇する。
【0004】
しかしながら、この特許文献1に開示された技術では、エンジン始動時にバイパス通路開閉弁を動作させるので、エンジン始動前にバイパス通路開閉弁が氷結固着していると、その動作が不能になる。そうすると、エンジンの冷間始動時には、バイパス通路に吸気が流れなくなり、吸気冷却装置側に吸気が流れ、吸気冷却装置により吸気温度が下がってしまい、HC,白煙,あるいは失火の原因となりうる。
【0005】
また、特許文献2には、タンブル生成バルブの氷結防止のために、エンジン停止時にタンブル生成バルブを開弁ないし微開する技術が開示されている。
【0006】
しかしながら、この技術では、バイパス通路開閉弁の氷結までは防止できない。
【0007】
また、特許文献3には、冷間始動時に、可変ノズル(Variable Nozzle:VN)を閉じ、吸気絞り弁を開き、EGR弁を閉じ、エンジンの暖気を促進する技術が開示されており、特許文献4〜6には、エンジン冷却水を利用してバルブを温める技術が開示されている。
【0008】
しかしながら、これらの技術をもってしても、エンジン始動前に開閉弁が氷結固着していると、開閉弁が動作不能の期間が大なり小なり生じうる。
【0009】
【特許文献1】特開平7−332094号公報
【特許文献2】特開2001−329848号公報
【特許文献3】特開2001−227395号公報
【特許文献4】特開平5−87258号公報
【特許文献5】特開平10−103203号公報
【特許文献6】特開平10−121937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みてなされたものであり、吸気冷却装置のバイパス通路を開閉するバイパス通路開閉弁が、エンジンの冷間始動時に氷結したとしても、HC,白煙,あるいは失火を抑制又は回避可能な、エンジン制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決するために、本発明に係るエンジン制御装置は、エンジンに吸気を供給する吸気管の管路に設けられた吸気冷却装置と、前記吸気管において前記吸気冷却装置をバイパスするバイパス通路と、前記吸気冷却装置側と前記バイパス通路側との間で吸気が通る吸気通路を切り換える吸気通路切換手段とを備え、前記吸気通路切換手段は、当該エンジンの停止時には、前記吸気通路を前記バイパス通路側に切り換える。
【0012】
この構成によると、エンジン停止時に吸気通路をバイパス通路側に切り換えるので、エンジン停止中に吸気通路切換手段が氷結して動作不能になったとしても、エンジンの再始動時に確実にバイパス通路側に吸気を通すことができる。言い換えれば、エンジンの再始動時に、吸気冷却装置側に吸気が通って吸気温度が低下することを回避できるので、HC,白煙,あるいは失火を抑制又は回避可能である。
【0013】
ちなみに、この構成において、吸気冷却装置は、いわゆるインタークーラであり、エンジンに吸気を供給する吸気管の管路に設けられている。インタークーラの冷却方式は、空冷のものでも水冷のものでも良く、他の方式のものとしても良い。バイパス通路は、吸気管において吸気冷却装置をバイパスする。過給機を備える場合には、その構成要素たるコンプレッサの下流であって吸気冷却装置の上流部と、吸気冷却装置の下流部とを連通する。吸気通路切換手段は、例えばECU(Engine Control Unit)及び該ECUにより制御可能な動弁機構からなり、吸気冷却装置側とバイパス通路側との間で吸気が通る吸気通路を切り換える。ここで、吸気通路の切り換えは、吸気冷却装置側を通る吸気量と、バイパス通路側を通る吸気量とを別個独立に調整可能な複数の制御弁により行われてもよいし、吸気冷却装置側とバイパス通路側との間で吸気通路を択一的に切り換える一の制御弁により行われてもよい。そして、特に、吸気通路切換手段は、当該エンジンの停止時には、吸気通路をバイパス通路側に切り換える。
【0014】
本発明に係るエンジン制御装置の一態様では、前記吸気通路切換手段は、前記エンジンに供給される吸気のうち少なくとも一部が前記吸気冷却装置側を通るように、前記吸気通路を切り換える。
【0015】
この構成によると、吸気冷却装置側へ多少なりとも吸気が流れるので、吸気通路切換手段のうち吸気冷却装置側に配置された部品の解氷が促進される。
【0016】
本発明に係るエンジン制御装置の他の態様では、前記吸気通路切換手段が氷結するおそれがあるか否かを判定する判定手段を更に備え、当該エンジンのエコランによる停止時に、前記吸気通路切換手段が氷結するおそれがあると判定される場合には、前記吸気通路切換手段は、前記吸気通路を前記バイパス通路側に切り換える。
【0017】
この構成によると、当該エンジンのエコランによる停止時に吸気通路切換手段が氷結するおそれがある場合には、吸気通路をバイパス通路側に切り換えるので、再始動時に吸気温度の低下を防止でき、もってHC,白煙,あるいは失火を抑制又は回避可能である。他方で、当該エンジンのエコランによる停止時に吸気通路切換手段が氷結するおそれがない場合には、吸気通路切換手段による吸気通路の切り換えは特に行わなくてもよい。
【0018】
ちなみに、この構成において、判定手段は、例えば温度センサとマイクロコンピュータからなり、吸気通路切換手段が氷結するおそれがあるか否かを判定する。ここで、「吸気通路切換手段が氷結しているおそれ」とは、吸気通路切換手段が実際に氷結している場合のみならず、氷結している可能性が大なり小なりある場合も含んでもよい趣旨である。例えば、温度センサにより検出された外気温度が0℃以下であれば、吸気通路切換手段が氷結しているおそれがあるとしてよい。また、エコランとは、停車を検知して当該エンジンを自動的に停止するとともに、発進動作を検知してエンジンを再始動させる、アイドリングストップ機構による走行を示す。
【0019】
本発明に係るエンジン制御装置の他の態様では、前記吸気通路切換手段は、当該エンジンを冷却するエンジン冷却水の通水路と熱的に接する。
【0020】
この構成によると、エンジン冷却水の通水路から伝わる熱エネルギによって、吸気通路切換手段が温められるので、その解氷が促進される。
【0021】
ちなみに、この構成において、吸気通路切換手段とエンジン冷却水の通水路とが熱的に接する状態には、各々の少なくとも一部が直接的に接している状態のみならず、又は伝熱性の部材を介して間接的に接している状態も含まれる趣旨である。また、吸気通路切換手段と熱的に接する相手は、通水路に限らず、他の発熱部材であってもよい。ただし、他の発熱部材から吸気通路切換手段へ伝わる熱量は、吸気通路切換手段を解氷可能であり、かつ、その切換機構に支障をきたさない範囲であることが好ましい。
【0022】
本発明に係るエンジン制御装置の他の態様では、前記吸気通路切換手段は、前記吸気管の管路において前記吸気冷却装置よりも上流に配置される。
【0023】
この構成によると、吸気冷却装置により冷却されていない比較的高温な吸気が吸気通路切換手段に直接的に当たるので、その解氷が促進される。
【0024】
本発明に係るエンジン制御装置の他の態様では、前記吸気通路切換手段が氷結するおそれがあるか否かを判定する判定手段と、前記吸気管において前記吸気冷却装置よりも上流に配置され、前記吸気を圧縮する際の過給圧を増減させる過給手段とを更に備え、前記過給手段は、前記吸気通路切換手段が氷結するおそれがあると判定される場合には、そうでない場合に比べて、前記過給圧を増加させる。
【0025】
この構成によると、過給圧の増加により吸気温度が一段と上昇し、そのような吸気が吸気通路切換手段に当たるので、解氷が一段と促進される。
【0026】
ちなみに、この構成において、過給手段の駆動方式や圧縮方式は特に限定されない。例えば、排気タービン式であっても、機械式であっても、過給圧の増加により吸気温度を上昇させることは可能である。
【0027】
本発明に係るエンジン制御装置の他の態様では、前記吸気通路切換手段が氷結するおそれがあるか否かを判定する判定手段と、前記吸気管において前記吸気冷却装置よりも上流に配置され、当該エンジンから排気管へと排出される排気ガスの排気エネルギによって前記吸気を圧縮する際の過給圧を増減させる排気タービン式の過給手段と、前記排気管へと排出される排気ガスのうち、前記吸気管へと還流させるものの流量であるEGR量を調整するEGR量調整手段とを更に備え、前記EGR量調整手段は、前記吸気通路切換手段が氷結するおそれがあると判定される場合には、そうでない場合に比べて、前記EGR量を減少させる。
【0028】
この構成によると、EGR量を減少させたぶん、吸気管へと還流させる排気ガスが減るので、タービンに作用する排気エネルギが増加し、もって過給圧が上昇する。そうすると、過給後の高温な吸気が吸気通路切換手段に当たるので、その解氷が一段と促進される。
【0029】
本発明の作用及び他の利得は、次に説明する実施するための最良の形態から明らかにされよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、発明を実施するための最良の形態として本発明の一実施形態を、図面に基いて詳細に説明する。
【0031】
(1)第1実施形態
先ず、第1実施形態に係るエンジン制御装置の構成について、図1を参照して説明する。 図1は、本発明の第1実施形態に係るエンジン制御装置の吸気系から排気系までを模式的に示す、断面図である。
【0032】
図1に示すように、第1実施形態に係るエンジン制御装置のエンジン12には、吸気管14と排気管16とが連通している。
【0033】
吸気管14には、コンプレッサ201、インタークーラ24、及びスロットルバルブ26が配置されている。
【0034】
コンプレッサ201は、排気ガスのエネルギを利用して吸気の過給を行う過給機20の一部である。過給機20は、排気管16に設置されており排気エネルギにより稼働するタービン202と、吸気管14に設置されており該タービン202の稼働に伴い吸気を圧縮するコンプレッサ201とを備える。なお、タービン202に作用する排気エネルギは、不図示の可変ノズルVNの開度に応じて増減される。
【0035】
インタークーラ24は、例えばポンプ駆動型による水冷式冷却装置であり、コンプレッサ201が圧縮して加熱した吸気を冷却水によって冷却し、もって吸気の圧縮率が高まる。
【0036】
スロットルバルブ26は、不図示のアクセルペダルの操作に基づいて開度が変更され、もってエンジン12へ流入する吸気流量が調節される。
【0037】
本実施形態に係るエンジン制御装置には特に、吸気管14においてインタークーラ24の上流と下流とを連通することでインタークーラ24をバイパスするバイパス通路14Bが備わる。これに対し、吸気管14のうち、バイパス通路14Bを経由しないでインタークーラ24を通過する部分をクーラ側通路14Aとも称する。更に、バイパス通路14Bとクーラ側通路14Aとの間で吸気が通る吸気通路を切り換える吸気通路切換装置22が備わる。吸気通路切換装置22は、バイパス通路14B、及びクーラ側通路14Aを通る吸気の流量を夫々独立して調整可能なバタフライ弁22B、及びバタフライ弁22Aを備える。
【0038】
エンジン12は、例えばガソリンを燃料とするガソリンエンジンであり、吸気管14から流入する吸気と不図示の燃料噴射装置から噴射された燃料から成る混合気を、不図示の点火プラグにて点火して燃焼させ、もって機関出力を得る。燃焼時に発生する排気ガスは排気管16を介して排出される。
【0039】
排気管16には、EGR(Exhaust Gas Recirculation)管40、タービン202、及び触媒装置17が配置されている。
【0040】
EGR管40は、排気管16と吸気管14とを連通し、排気ガスを吸気側に還流させる。EGR管40には、還流させる排気ガスを冷却水等により適温に冷却するEGRクーラ41、及び還流させる排気ガス量(すなわち、EGR量)を調整するEGRバルブ42が備わる。
【0041】
タービン202については、上述の通りである。
【0042】
触媒装置17は、例えば通電加熱式の吸蔵還元型NOx触媒であり、排気ガスに含まれるNOx等の成分を所定の活性温度のもとで浄化する。
【0043】
ECU32は、エンジン12の運転状態や運転者による指示に応じて、上記の各種装置を制御する。ECU32は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ECU32は、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,温度センサ81からの外気温度信号,タービン202の可変ノズルに対する目標過給圧に応じた開度制御信号,吸気通路切換装置22に対するエンジン12の運転状況に応じた切換制御信号,インタークーラ24のポンプに対するポンプ駆動信号,スロットルバルブ26に対する開度制御信号,EGRバルブ42に対する開度制御信号,エンジン12に対する吸排気弁の開閉制御信号・点火時期制御信号・機関出力及び回転数の検出信号,或いは触媒装置17に対する温度制御信号等を、入出力ポートを介してやり取りする。
【0044】
上述の如く構成された本実施形態に係るエンジン制御装置による制御について、図2及び図3を用いて説明する。ここで、図2は、第1実施形態に係るエンジン制御装置による制御の流れを示す、フローチャートである。図3は、第1実施形態に係るエンジン制御装置により吸気通路が切り換えられる様子を示す、吸気系の部分断面図である。図3(a)は、吸気通路をバイパス通路14B側に切り換えた様子を示し、図3(b)は、吸気通路をインタークーラ24側に切り換えた様子を示す。
【0045】
図2に示すように、エンジン12の稼働中に(ステップS01)、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号に基づいて、エンジン12が停止するか否かが判定される(ステップS02)。
【0046】
ここで、例えばイグニッションスイッチ80がオンのままであり、エンジン12が停止するとは判定されない場合(ステップS02:No)、吸気通路切換装置22を通常通り制御する(ステップS03.2)。例えば、図3(b)に示すように、コンプレッサ201によって過給された吸気を冷却するために、バタフライ弁22Bは閉じ、バタフライ弁22Aは開く。ただし、バタフライ弁22Bを完全に閉じたり、バタフライ弁22Aを完全に開いておく必要はなく、運転状況等に応じて適宜両開度を調整しておけばよい。
【0047】
他方で、例えばイグニッションスイッチ80がオフになり、エンジン12が停止すると判定される場合(ステップS02:Yes)、エンジン12の停止中にバタフライ弁22B及びバタフライ弁22Aが氷結して動作不能になるおそれがある。そこで、予めバイパス通路14B側に吸気通路を切り換える(ステップS03.1)。例えば、図3(a)に示すように、バタフライ弁22Bは開き、バタフライ弁22Aを閉じる。そうすると、仮にエンジン12の停止中にバタフライ弁22B及びバタフライ弁22Aが氷結して動作不能になったとしても、バタフライ弁22Bは開いているので、エンジン12の再始動時に確実にバイパス通路14B側に吸気を通すことができる。そうすると、暖気を要する冷間始動時に、インタークーラ24によって吸気温度が低下することを回避できる。
【0048】
以上説明したように、第1実施形態に係るエンジン制御装置によれば、仮にエンジン12の停止中にバタフライ弁22B及びバタフライ弁22Aが氷結して動作不能になったとしても、エンジン12の再始動時において、HC,白煙,あるいは失火を抑制又は回避可能である。
【0049】
(2)第2実施形態
次に、第2実施形態に係るエンジン制御装置の基本構成及び基本制御について説明する。本実施形態は、主に以下の課題を解決するためのものである。すなわち、第1実施形態に係るエンジン制御装置の制御により、エンジン12が停止する際に予めバイパス通路14B側に吸気通路を切り換えておいたとする。そうすると、上述のように、エンジン12の再始動時において、HC,白煙,あるいは失火を抑制又は回避可能である。ところが、仮にバイパス通路14B側に吸気通路が氷結したままでエンジン12に高負荷運転を強いると、インタークーラ24による冷却ができないので、吸気温度の上昇によりスモークが発生しやすい。そこで、エンジン12の再始動後には、氷結したバタフライ弁22A及びバタフライ弁22Bを早期に解氷することが望ましい。本実施形態は、かかる課題を解決することを目的とした、バタフライ弁22A及びバタフライ弁22Bの配置に関する実施形態である。なお、上述の第1実施形態と同一の構成については同一の参照符号を付し、その詳細な説明を適宜省略する。また、基本制御は上述の第1実施形態と同様でよい。
【0050】
図4は、第2実施形態に係るエンジン制御装置の吸気系と、比較例に係るそれとを比較結果を示す、吸気系の部分断面図である。図4(a)は、バタフライ弁22Aをインタークーラ24よりも下流に配置した様子を示し、図4(b)は、上流に配置した様子を示す。
【0051】
図4に示すように、インタークーラ24の上流と下流とでは温度差が顕著である。具体的には、インタークーラ24の上流ではコンプレッサ201によって吸気が圧縮加熱されるので例えば100℃の高温になるのに対し、インタークーラ24の下流ではインタークーラ24によって吸気が冷却されるので例えば−5℃の低温になる。
【0052】
ここで、図4(a)に示すように、バタフライ弁22Aを、インタークーラ24の下流に配置する。ところが、そこは上述のように低温であるので、バタフライ弁22Aの解氷が望まれない。
【0053】
そこで、図4(b)に示すように、バタフライ弁22Aを、インタークーラ24の上流に配置する。そうすると、そこは上述のように高温であるので、下流に比べて、バタフライ弁22Aの解氷が望まれる。
【0054】
以上説明したように、第2実施形態に係るエンジン制御装置によれば、エンジン12の再始動時において、HC,白煙,あるいは失火を抑制又は回避可能としつつも、氷結したバタフライ弁22A及びバタフライ弁22Bを早期に解氷することで、高負荷運転時のスモーク発生も回避可能となる。
【0055】
(3)第3実施形態
次に、第3実施形態に係るエンジン制御装置の基本構成及び基本制御について説明する。本実施形態は、主に以下の課題を解決するためのものである。すなわち、第2実施形態に示すようにバタフライ弁22Aをインタークーラ24の上流に配置しても、エンジン12の低中負荷運転が続くと、コンプレッサ201による吸気温度の上昇があまり見込めず、高負荷運転時に比べてバタフライ弁22Aの解氷が遅れるおそれがある。本実施形態は、かかる課題を解決することを目的とした、エンジン12の再始動時における、過給機20の可変ノズルVN及びEGRバルブ42の開度制御に関する実施形態である。なお、エンジン制御装置の基本構成は上述の第1,第2実施形態と同様でよく、エンジン12の停止時の制御は上述の第1実施形態と同様でよいので、重複する記載については適宜省略する。
【0056】
図5は、第3実施形態に係るエンジン制御装置による制御の流れを示す、フローチャートである。図6は、第3実施形態に係るエンジン制御装置における、可変ノズルVNの制御マップである。図6(a)は、通常マップを示し、図6(b)は閉じマップを示す。なお、図6のマップにおいては、回転数、及び負荷に対応した可変ノズルVNの目標開度を示しており、同図中の模様分けされた領域、及び太矢印によって、一般に回転数、及び負荷が上昇すれば可変ノズルVNを開くように開度制御が行われることが示されている。
【0057】
図5に示すように、一旦停止したエンジン12の再始動時には(ステップS31)、バタフライ弁22A及びバタフライ弁22Bが氷結しているおそれがあるか否かを判定する(ステップS32)。ここで「氷結しているおそれ」としているのは、実際に氷結している場合のみならず、氷結している可能性が大なり小なりある場合も含んでもよい趣旨である。例えば、外気温が0℃以下であれば、バタフライ弁22A及びバタフライ弁22Bが実際に氷結しているか否かを検査せずとも、氷結しているおそれがあるとして、肯定的な判定を下す。なお、本判定は、上記弁が実際に氷結しているか否かを検査することを妨げる趣旨ではない。
【0058】
ここで、バタフライ弁22A及びバタフライ弁22Bが氷結しているおそれがないと判定される場合には(ステップS32:No)、特に氷結対策を取る必要はないので、ECU32は、図6(a)に示すような通常マップを使用して可変ノズルVNの開度制御を行い(ステップS33.2)、公知の通常マップを使用してEGRバルブ42の開度制御を行う(ステップS34.2)。
【0059】
他方で、バタフライ弁22A及びバタフライ弁22Bが氷結しているおそれがあると判定される場合には(ステップS32:Yes)、エンジン12の低中負荷運転に備えて、ECU32は、以下の解氷促進制御を行う。すなわち、図6(b)に示すような閉じマップを使用して、低中負荷運転における可変ノズルVNの開度を通常マップによる制御時に比べて閉じる(ステップS33.1)。そうすると、タービン202に作用する排気エネルギが上昇するので、コンプレッサ201による吸気温度の上昇が見込まれる。加えて、ポンプロスが増大し、噴射量も増大するので、エンジン12の暖気性も向上する。この可変ノズルVNの開度制御に加えて又は代えて、ECU32は、EGR量をカットするか、又は通常マップによる制御時に比べて減量するように、EGRバルブ42の開度制御を行う(ステップS34.1)。例えば、通常マップによる制御時に比べてEGR量を一律5割削減する。そうすると、還流する排気ガスが減る分、タービン202に作用する排気エネルギが上昇するので、コンプレッサ201による吸気温度の上昇が見込まれる。
【0060】
以上説明したように、第3実施形態に係るエンジン制御装置によれば、エンジン12の再始動時に低中負荷運転が続いたとしても、過給機20の可変ノズルVN及びEGRバルブ42の開度制御によって吸気温度を上昇させるので、バタフライ弁22Aの解氷を好適に促進できる。
【0061】
(4)第4実施形態
次に、第4実施形態に係るエンジン制御装置の基本構成及び基本制御について説明する。本実施形態は、主に以下の課題を解決するためのものである。すなわち、上記各実施形態に係るエンジン制御装置の制御により、エンジン12が停止する際に予めバイパス通路14B側に吸気通路を切り換えておいた場合に、バタフライ弁22Aが全閉にされていると、バタフライ弁22Aへの過給加熱された吸気の流れが形成されず、バタフライ弁22Aの解氷が促進されにくい(後述の図8(a)を参照)。本実施形態は、かかる課題を解決することを目的とした、バタフライ弁22Aの開度制御に関する実施形態である。なお、上述の第1実施形態と同一の構成については同一の参照符号を付し、その詳細な説明を適宜省略する。
【0062】
図7は、第4実施形態に係るエンジン制御装置による制御の流れを示す、フローチャートである。図8は、第4実施形態に係るエンジン制御装置の吸気系において、バタフライ弁22Aの開度に応じた吸気流れの様子を示す、吸気系の部分断面図である。図8(a)は、バタフライ弁22Aが全閉にされている様子を示し、図8(b)は、バタフライ弁22Aが微少開度開かれている様子を示す。
【0063】
図7に示すように、第4実施形態に係るエンジン制御装置による制御は、第1実施形態のそれと以下のように異なる。すなわち、エンジン12が停止すると判定される場合(ステップS02:Yes)、予めバイパス通路14B側に吸気通路を切り換える(ステップS03.1)にあたり、図8(a)に示すようにバタフライ弁22Aを全閉にするのではなく、図8(b)に示すようにバタフライ弁22Aを微少開度開いておく(ステップS44.1)。
【0064】
以上説明したように、第4実施形態に係るエンジン制御装置によれば、仮にエンジン12の停止中にバタフライ弁22B及びバタフライ弁22Aが氷結して動作不能になったとしても、バタフライ弁22Bは開いているので、エンジン12の再始動時に確実にバイパス通路14B側に吸気を通すことができる。それに加えて、バタフライ弁22Aが微少開度開いているので、バタフライ弁22Aへの過給加熱された吸気の流れが形成されて、バタフライ弁22Aの解氷が促進される。
【0065】
(5)第5実施形態
次に、第5実施形態に係るエンジン制御装置の基本構成及び基本制御について説明する。本実施形態は、主に以下の課題を解決するためのものである。すなわち、第2実施形態でも指摘したように、第1実施形態による制御のみでは、仮にバイパス通路14B側に吸気通路が氷結したままでエンジン12に高負荷運転を強いると、スモークが発生しやすい。そこで、エンジン12の再始動後には、氷結したバタフライ弁22A及びバタフライ弁22Bを早期に解氷することが望ましい。ところが、第2〜第4実施形態によっても、低負荷が続くと、コンプレッサ201による吸気温度の上昇が見込めない。むしろ第4実施形態によれば、吸気温度を下げかねない。本実施形態は、かかる課題を解決することを目的とした、バタフライ弁22A及びバタフライ弁22Bへの通水による早期解氷技術に関する実施形態である。なお、上述の第1実施形態と同一の構成については同一の参照符号を付し、その詳細な説明を適宜省略する。また、基本制御は上述の第1実施形態と同様でよい。
【0066】
図9は、第5実施形態に係るエンジン制御装置の吸気通路切換装置22にエンジン冷却水路50が熱的に接続されている様子を示す、吸気系の部分断面図である。
【0067】
図9に示すように、第5実施形態に係るエンジン制御装置によれば、低負荷が続いて吸気温度が上昇しにくい場合でも、エンジン冷却水路50により吸気通路切換装置22を別途温めるので、氷結したバタフライ弁22A及びバタフライ弁22Bを早期に解氷することが可能となる。なお、エンジン冷却水路50は、吸気通路切換装置22を介することなく、バタフライ弁22A及びバタフライ弁22Bを直接的に温めても良い。
【0068】
(6)第6実施形態
次に、第6実施形態に係るエンジン制御装置の基本構成及び基本制御について説明する。本実施形態は、主に以下の課題を解決するためのものである。すなわち、イグニッションスイッチ80がオフになっていなくても、エコランによる停止時には、極低温の場合にバタフライ弁22A及びバタフライ弁22Bが氷結するおそれがある。他方で、エコランによる停止時には、氷結のおそれがない常温の場合にまで、バタフライ弁22Bを開き、バタフライ弁22Aを閉じてしまうと、インタークーラ24を利用できずに不都合が生じる。本実施形態は、かかる課題を解決することを目的とした、エコランによる停止時における吸気通路切換装置22の制御に関する実施形態である。なお、エンジン制御装置の基本構成は上述の第1〜第5実施形態の何れかと同様でよく、同一の構成については同一の参照符号を付し、その詳細な説明を適宜省略する。
【0069】
図10は、第6実施形態に係るエンジン制御装置による制御の流れを示す、フローチャートである。
【0070】
図10に示すように、第6実施形態に係るエンジン制御装置による制御は、第4実施形態のそれと以下のように異なる。すなわち、エンジン12の停止が、エコランによる停止であるか否かがECU32によって判定される(ステップS62)。ここで、エンジン12がエコランにより停止していると判定される場合(ステップS62:Yes)、次いで、バタフライ弁22A及びバタフライ弁22Bが氷結しているおそれがあるか否かが、外気温等に基づいて判定される(ステップS32)。
【0071】
ここで、バタフライ弁22A及びバタフライ弁22Bが氷結しているおそれがあると判定される場合には(ステップS32:Yes)、バタフライ弁22A及びバタフライ弁22Bの氷結に備えて、予めバイパス通路14B側に吸気通路を切り換える(ステップS03.1)。加えて、第4実施形態と同様に、バタフライ弁22Aを微少開度開いておいてもよい(ステップS44.1)。
【0072】
他方で、バタフライ弁22A及びバタフライ弁22Bが氷結しているおそれがないと判定される場合には(ステップS32:No)、特に氷結対策を取る必要はない。それにもかかわらず、予めバイパス通路14B側に吸気通路を切り換えておくと、再始動後直ぐにクーラ側通路14Aに吸気通路を切り換える必要が生じるので、弁作動回数が増加してしまい、両弁の耐久コストが増加するため好ましくない。しかも、吸気通路の切り換え遅れ期間に吸気温度が上昇してしまい、NOxやスモークが増加するおそれがある。そこで、この場合には、予めバイパス通路14B側に吸気通路を切り換えておく(ステップS03.2)。
【0073】
以上説明したように、第6実施形態に係るエンジン制御装置によれば、エコランによる停止時においても、極低温時には、バタフライ弁22B及びバタフライ弁22Aの氷結により生じうるHC,白煙,あるいは失火を抑制又は回避可能である。加えて、常温時には、吸気通路の不要な切り換え動作を減らし、もって両弁の耐久コストを抑制したり切り換え遅れによる上記弊害を未然に防ぐことができる。
【0074】
なお、上述した実施形態において、インタークーラ24が、本発明に係る「吸気冷却装置」の一例であり、バイパス通路14Bが、本発明に係る「バイパス通路」の一例であり、吸気通路切換装置22,バタフライ弁22A,バタフライ弁22Bが、本発明に係る「吸気通路切換手段」の一例であり、クーラ側通路14Aが、本発明に係る「吸気冷却装置側」の「吸気通路」の一例であり、バイパス通路14Bが、本発明に係る「バイパス通路側」の「吸気通路」の一例であり、エンジン冷却水路50が、本発明に係る「エンジン冷却水の通水路」の一例であり、温度センサ81,ECU32が、本発明に係る「判定手段」の一例であり、過給機20,ECU32が、本発明に係る「過給手段」,「排気タービン式の過給手段」の一例であり、EGR管40,EGRバルブ42,ECU32が、本発明に係る「EGR量調整手段」の一例である。
【0075】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うエンジン制御装置も又、本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の第1実施形態に係るエンジン制御装置の吸気系から排気系までを模式的に示す、断面図である。
【図2】第1実施形態に係るエンジン制御装置による制御の流れを示す、フローチャートである。
【図3】第1実施形態に係るエンジン制御装置により吸気通路が切り換えられる様子を示す、吸気系の部分断面図である。
【図4】第2実施形態に係るエンジン制御装置の吸気系と、比較例に係るそれとを比較結果を示す、吸気系の部分断面図である。
【図5】第3実施形態に係るエンジン制御装置による制御の流れを示す、フローチャートである。
【図6】第3実施形態に係るエンジン制御装置における、可変ノズルVNの制御マップである。
【図7】第4実施形態に係るエンジン制御装置による制御の流れを示す、フローチャートである。
【図8】第4実施形態に係るエンジン制御装置の吸気系において、バタフライ弁22Aの開度に応じた吸気流れの様子を示す、吸気系の部分断面図である。
【図9】第5実施形態に係るエンジン制御装置の吸気通路切換装置22にエンジン冷却水路50が熱的に接続されている様子を示す、吸気系の部分断面図である。
【図10】第6実施形態に係るエンジン制御装置による制御の流れを示す、フローチャートである。
【符号の説明】
【0077】
24…インタークーラ,22…吸気通路切換装置,22A…バタフライ弁,22B…バタフライ弁,14A…クーラ側通路,14B…バイパス通路,50…エンジン冷却水路,81…温度センサ,32…ECU,20…過給機,32…ECU,40…EGR管,42…EGRバルブ,32…ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに吸気を供給する吸気管の管路に設けられた吸気冷却装置と、
前記吸気管において前記吸気冷却装置をバイパスするバイパス通路と、
前記吸気冷却装置側と前記バイパス通路側との間で吸気が通る吸気通路を切り換える吸気通路切換手段とを備え、
前記吸気通路切換手段は、当該エンジンの停止時には、前記吸気通路を前記バイパス通路側に切り換える
ことを特徴とするエンジン制御装置。
【請求項2】
前記吸気通路切換手段は、前記エンジンに供給される吸気のうち少なくとも一部が前記吸気冷却装置側を通るように、前記吸気通路を切り換える
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジン制御装置。
【請求項3】
前記吸気通路切換手段が氷結するおそれがあるか否かを判定する判定手段を更に備え、
当該エンジンのエコランによる停止時に、前記吸気通路切換手段が氷結するおそれがあると判定される場合には、前記吸気通路切換手段は、前記吸気通路を前記バイパス通路側に切り換える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のエンジン制御装置。
【請求項4】
前記吸気通路切換手段は、当該エンジンを冷却するエンジン冷却水の通水路と熱的に接する
ことを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項5】
前記吸気通路切換手段は、前記吸気管の管路において前記吸気冷却装置よりも上流に配置される
ことを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項6】
前記吸気通路切換手段が氷結するおそれがあるか否かを判定する判定手段と、
前記吸気管において前記吸気冷却装置よりも上流に配置され、前記吸気を圧縮する際の過給圧を増減させる過給手段とを更に備え、
前記過給手段は、前記吸気通路切換手段が氷結するおそれがあると判定される場合には、そうでない場合に比べて、前記過給圧を増加させる
ことを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項7】
前記吸気通路切換手段が氷結するおそれがあるか否かを判定する判定手段と、
前記吸気管において前記吸気冷却装置よりも上流に配置され、当該エンジンから排気管へと排出される排気ガスの排気エネルギによって前記吸気を圧縮する際の過給圧を増減させる排気タービン式の過給手段と、
前記排気管へと排出される排気ガスのうち、前記吸気管へと還流させるものの流量であるEGR量を調整するEGR量調整手段とを更に備え、
前記EGR量調整手段は、前記吸気通路切換手段が氷結するおそれがあると判定される場合には、そうでない場合に比べて、前記EGR量を減少させる
ことを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のエンジン制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−138618(P2009−138618A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−315467(P2007−315467)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】