説明

グラフトポリマーパターン形成方法、導電性パターン形成方法、及び有機EL表示装置

【課題】基材との密着性に優れたグラフトポリマーパターンを、基材表面の所望の領域にのみ簡便に形成しうるグラフトポリマーパターン形成方法、エッチング工程を行うことなく微細な導電性パターンの形成が可能であり、且つ、基材表面の凹凸が少ない場合であっても基材との密着性に優れた導電性パターンを形成しうる導電性パターン形成方法を提供する。
【解決手段】(a)基材上に光ラジカル発生剤を含有する組成物をパターン状に直接付与する工程、(b)光ラジカル発生剤を基材に固定化する工程、及び、(c)固定化された前記光ラジカル発生剤を有する基材表面に、重合性の二重結合を有する化合物を接触させた後、該基材表面にエネルギーを付与して、固定化された光ラジカル発生剤が存在する領域にグラフトポリマーパターンを形成する工程、を有することを特徴とするグラフトポリマーパターン形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフトポリマーパターン形成方法、該方法を適用した導電性パターン形成方法、及びそれにより得られた導電性パターンを配線として有する有機EL表示装置に関する。特に、プリント配線基板、ガラス基板配線、有機EL用配線などに有用な導電性パターン形成方法、及び該方法により得られた配線を有する有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の導電性パターン形成方法としては、主に「サブトラクティブ法」、「セミアディティブ法」、「フルアディティブ法」による金属パターン形成方法が知られている。サブトラクティブ法とは、基板上に形成された金属の層に、活性光線の照射により感光する感光層を設け、この感光層に像様露光し、現像してレジスト像を形成し、ついで、金属をエッチングして導電性パターンを形成し、最後にレジストを剥離する方法である。この方法で使用される金属基板は、基板と金属層との密着性を持たせるために、基板界面を凹凸処理してアンカー効果により密着性を発現させていた。その結果、出来上がる導電性パターンの基板界面部が凹凸になってしまい、電気配線として使用する際、高周波特性が悪くなるという問題点があった。更に、金属基板を形成する際に、基板を凹凸処理するため、クロム酸などの強酸で基板を処理するという煩雑な工程が必要であるいという問題点があった。
【0003】
この問題を解決する為に、基板表面にラジカル重合性化合物をグラフトして表面改質を行うことで、基板の凹凸を最小限にとどめ、かつ、基板の処理工程を簡易にする方法が提案されている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照。)。しかし、この方法で作製した金属基板をサブトラクティブ法によりパターン化しても、サブトラクティブ法に特有の問題点がある。それは、サブトラクティブ法により高細線幅の金属パターンを形成するためには、レジストパターンの線幅よりもエッチング後の線幅が細くなる、いわゆるオーバーエッチング法が有効であるが、オーバーエッチング法により、微細導電性パターンを直接形成しようとすると、線のにじみやかすれ、断線等が発生し易くなという問題である。このため、良好な微細導電性パターンを形成するという観点からは、30μm以下の導電性パターンの形成は難しかった。また、パターン部以外のエリアに存在する導電性膜をエッチング処理によって除去するため無駄が多く、また、そのエッチング処理によって生じる金属廃液の処理に費用がかかるなど、環境、価格面でも問題があった。
【0004】
この問題を解決するために、セミアディティブ法と呼ばれる導電性パターン形成方法が提案されている。セミアディティブ法では、先ず、基板上にめっき等により薄くCr等の下地金属層を形成し、該下地金属層上にレジストパターンを形成する。続いて、レジストパターン以外の領域の下地金属層上にめっきによりCu等の金属層を形成した後、レジストパターンを除去することにより配線パターンを形成する。更に、配線パターンをマスクとして下地金属層をエッチングし、レジストパターン以外の領域にのみ導電性パターンを形成する。この方法は、30μm以下の細線パターンの形成が容易であり、めっきにより必要な部分にのみ金属を析出させるため、環境、価格面でも有効である。しかしながら、この方法では、基板と導電性パターンの密着性を持たせるために基板表面を凹凸処理する必要があり、その結果、出来上がる導電性パターンの基板界面部が凹凸になってしまい、電気配線として使用する際、高周波特性が悪くなるという問題点があった。
【0005】
また、フルアディティブ法と呼ばれる導電性パターン形成方法も提案がなされている。フルアディティブ法では、基板上にレジストパターンを形成し、レジストパターン以外の領域に、めっきにより金属を析出させ、その後にレジストパターンを除去する。この手法も、エッチングレスの手法であるために30μm以下の細線パターンの形成が容易である。しかし、セミアディティブ法と同様の問題点を有しており、細線パターンが形成でき、基板界面の凹凸が少なく、エッチング廃液の少ない、新たな導電性パターン形成手法が望まれていた。
【特許文献1】特開昭58−196238号明細書。
【非特許文献1】Advanced Materials 2000年 20号 1481−1494。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
本発明の第1の目的は、基材との密着性に優れた高解像度のグラフトポリマーパターンを、基材表面の所望の領域にのみ簡便に形成しうるグラフトポリマーパターン形成方法を提供することにある。
本発明の第2の目的は、エッチング工程を行うことなく微細な導電性パターンの形成が可能であり、且つ、基材表面の凹凸が少ない場合であっても基材との密着性に優れた導電性パターンを形成しうる導電性パターン形成方法を提供することにある。
本発明の第3の目的は、基材との密着性に優れた導電性パターンを配線として備えた、低電圧、高効率、高寿命な有機EL表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意検討の結果、グラフトポリマーパターンの形成に際して、グラフトポリマー形成の起点となる光ラジカル発生剤を含有する組成物を基材上にパターン状に直接付与した後に、該光レジカル発生剤を固定化することで、レジストを用いた工程や、マスク露光・現像工程などのフォトリソ工程を行うことなく、基材上における光ラジカル発生剤のパターニングを簡便に行えることに着目し、これを適用したグラフトパターン形成方法により、高精細で且つ基材との密着性に優れたグラフトポリマーパターンを簡便に形成しうること、さらには、形成されたグラフトポリマーパターンが無電解メッキ触媒又はその前駆体を含むことで、基材表面の凹凸が少ない場合であっても、無電解めっきにより高精細で基材との密着性に優れた導電性パターンが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、前記課題を達成するための手段は以下の通りである。
【0008】
<1> (a)基材上に光ラジカル発生剤を含有する組成物をパターン状に直接付与する工程、(b)前記光ラジカル発生剤を基材に固定化する工程、及び、
(c)固定化された前記光ラジカル発生剤を有する基材表面に、重合性の二重結合を有する化合物を接触させた後、該基材表面にエネルギーを付与して、固定化された光ラジカル発生剤が存在する領域にグラフトポリマーパターンを形成する工程、を有することを特徴とするグラフトポリマーパターン形成方法。
【0009】
<2> 前記(a)基材上に光ラジカル発生剤を含有する組成物をパターン状に直接付与する工程の前に、基材表面を活性化する処理を行うことを特徴とする前記<1>に記載のグラフトポリマーパターン形成方法。
<3> 前記光ラジカル発生剤が、分子内に光ラジカル発生基を有するシランカップリング剤であることを特徴とする前記<1>又は<2>に記載のグラフトポリマーパターン形成方法。
<4> 前記光ラジカル発生剤が、分子内に基材結合基と光ラジカル発生基とを有する高分子光ラジカル発生剤であることを特徴とする前記<1>又は<2>に記載のグラフトポリマーパターン形成方法。
【0010】
<5> 前記光ラジカル発生剤を含有する組成物が、熱硬化性エポキシ樹脂組成物であることを特徴とする前記<1>から<4>のいずれか1項に記載のグラフトポリマーパターン形成方法。
<6> 前記光ラジカル発生剤を含有する組成物が、光硬化性エポキシ樹脂組成物であることを特徴とする前記<1>から<4>のいずれか1項に記載のグラフトポリマーパターン形成方法。
<7> 前記光ラジカル発生剤を含有する組成物の25℃での粘度が3mPa・s以上30mPa・s以下であることを特徴とする前記<1>から<6>のいずれか1項に記載のグラフトポリマーパターン形成方法。
<8> 前記(a)工程が、基材上に光ラジカル発生剤を含有する組成物をインクジェット装置を用いてパターン状に直接付与する工程であることを特徴とする前記<1>から<7>のいずれか1項に記載のグラフトポリマーパターン形成方法。
【0011】
<9> 前記基材が、SiO、SiON、若しくはITOを有していてもよいエポキシ樹脂基材、ポリイミド基材、ガラス基材、PET基材、又はPEN基材であることを特徴とする前記<1>乃至<8>のいずれか1項に記載のグラフトポリマーパターン形成方法。
<10> 前記グラフトポリマーパターンの厚みが、0.01μm〜2μmであることを特徴とする前記<1>から<9>のいずれか1項に記載のグラフトポリマーパターン形成方法。
<11> 前記重合性の二重結合を有する化合物が、重合性基を有するモノマー、重合性基を有するマクロマー、及び重合性の二重結合を有する高分子化合物からなる群より選択される1種以上の化合物であることを特徴とする前記<1>から<10>のいずれか1項に記載のグラフトポリマーパターン形成方法。
【0012】
<12> (a)基材上に光ラジカル発生剤を含有する組成物をパターン状に直接付与する工程、(b)光ラジカル発生剤を基材に固定化する工程、(c’)固定化された前記光ラジカル発生剤を有する基材表面に、分子内に重合性の二重結合を有する化合物と無電解めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有する化合物とを接触させるか、或いは、分子内に重合性の二重結合及び無電解めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有する化合物を接触させた後、該基材表面にエネルギーを付与して、固定化された光ラジカル発生剤が存在する領域にグラフトポリマーパターンを形成する工程、(d)グラフトポリマーパターンが形成された領域に無電解めっき触媒又はその前駆体を付与する工程、及び、(e)無電解めっきを行い、グラフトポリマーパターンが形成された領域に導電性パターンを形成する工程、を有することを特徴とする導電性パターン形成方法。
【0013】
<13> 前記(a)工程において、基材上に光ラジカル発生剤を含有する組成物をパターン状に直接付与する前に、基材表面を活性化する処理を行うことを特徴とする前記<12>に記載の導電性パターン形成方法。
<14>前記光ラジカル発生剤が、分子内に光ラジカル発生基を有するシランカップリング剤であることを特徴とする前記<12>又は<13>に記載の導電性パターン形成方法。
<15> 前記光ラジカル発生剤が、分子内に基板結合基と光ラジカル発生基とを有する高分子光ラジカル発生剤であることを特徴とする前記<12>又は<13>に記載の導電性パターン形成方法。
【0014】
<16> 前記光ラジカル発生剤を含有する組成物が、熱硬化性エポキシ樹脂組成物であることを特徴とする前記<12>から<15>のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法。
<17> 前記光ラジカル発生剤を含有する組成物が、光硬化性エポキシ樹脂組成物であることを特徴とする前記<12>から<15>のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法。
<18> 前記光ラジカル発生剤を含有する組成物の25℃での粘度が3mPa・s以上30mPa・s以下であることを特徴とする前記<12>から<17>のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法。
<19> 前記(a)工程が、基材上に光ラジカル発生剤を含有する組成物をインクジェット装置を用いてパターン状に直接付与する工程であることを特徴とする前記<9>から<18>のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法。
【0015】
<20> 前記基材が、SiO、SiON若しくはITOを有していてもよいエポキシ樹脂基材、ポリイミド基材、ガラス基材、PET基材、又はPEN基材であることを特徴<12>から<19>のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法。
<21> 前記グラフトポリマーパターンの厚みが、0.01μm〜2μmであることを特徴とする<12>から<20>のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法。
<22> 前記重合性の二重結合を有する化合物が、重合性基を有するモノマー、重合性基を有するマクロマー、及び、重合性の二重結合を有する高分子化合物からなる群より選択される1種以上の化合物である前記<12>から<21>のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法。
【0016】
<23> 前記<12>から<22>のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法により形成した導線を備えることを特徴とする有機EL表示装置。
<23> 絶縁基板と、該絶縁基板上に設けられた画素電極配線と、該画素電極配線上に順次積層された有機層及び陰極層と、を少なくとも備えてなり、該画素電極配線に接続する補助配線が前記<12>から<22>のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法により形成された補助配線であることを特徴とする有機EL表示装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、基材との密着性に優れた高解像度のグラフトポリマーパターンを、基材表面の所望の領域にのみ簡便に形成しうるグラフトポリマーパターン形成方法を提供することができる。
また、本発明によれば、エッチング工程を行うことなく微細な導電性パターンの形成が可能であり、且つ、基材表面の凹凸が少ない場合であっても基材との密着性に優れた導電性パターンを形成しうる導電性パターン形成方法を提供することができる。
さらに、本発明によれば、基材との密着性に優れた導電性パターンを配線として備えた、低電圧、高効率、高寿命な有機EL表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明のグラフトパターン形成方法、該グラフトパターン形成方法を適用した導電性パターン形成方法、及びそれにより得られた導電性パターンを配線として有する有機EL表示装置について詳細に説明する。
【0019】
[グラフトパターン形成方法、導電性パターン形成方法]
本発明のグラフトポリマーパターン形成方法は、基材上に光ラジカル発生剤を含有する組成物(以下、適宜、「特定組成物」と称する。)をパターン状に直接付与する工程(以下、適宜、「光ラジカル発生剤パターン形成工程」と称する。)、(b)光ラジカル発生剤を基材に固定化する工程(以下、適宜、「光ラジカル発生剤固定化工程」称する。)、及び、(c)固定化された前記光ラジカル発生剤を有する基材表面に重合性の二重結合を有する化合物を接触させた後、該基材表面にエネルギーを付与して、固定化された光ラジカル発生剤が存在する領域にグラフトポリマーパターンを形成する工程(以下、適宜、「グラフトポリマーパターン形成工程」と称する。)、を含むことを特徴とする。
【0020】
本発明のグラフトポリマーパターン形成方法においては、光ラジカル発生剤を含有する組成物として、分子内に光ラジカル発生基を有するシランカップリング剤の如き基材に固定化可能な光ラジカル発生剤を含む組成物、或いは、熱硬化性又は光硬化性のエポキシ樹脂の如き基材に固定化可能な樹脂を含む組成物を用いることが好ましい。
【0021】
本発明の導電性パターン形成方法は、本発明のグラフトポリマーパターン形成方法を適用してなるものであり、(a)基材上に光ラジカル発生剤を含有する組成物(特定組成物)をパターン状に直接付与する工程(光ラジカル発生剤パターン形成工程)、(b)光ラジカル発生剤を基材に固定化する工程(光ラジカル発生剤固定化工程)、(c’)固定化された前記光ラジカル発生剤を有する基材表面に、分子内に重合性の二重結合を有する化合物と無電解めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基(以下、相互作用性基とも称する。)を有する化合物とを接触させるか、或いは、分子内に重合性の二重結合及び無電解めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有する化合物を接触させた後、該基材表面にエネルギーを付与して、固定化された光ラジカル発生剤が存在する領域にグラフトポリマーパターンを形成する工程(以下、適宜、「グラフトポリマーパターン形成工程」と称する。)、(d)グラフトポリマーパターンが形成された領域に無電解めっき触媒又はその前駆体を付与する工程(以下、適宜、「無電解めっき触媒付与工程」と称する。)、及び、(e)無電解めっきを行い、グラフトポリマーパターンが形成された領域に導電性パターンを形成する工程(以下、適宜、「無電解めっき工程」と称する。)、を有することを特徴とする。
【0022】
本発明のグラフトポリマーパターン形成方法においては、基材上に特定組成物をパターン状に直接付与し、該光ラジカル発生剤を基材に固定化することから、グラフトポリマーの生成を行う際の基材表面には、グラフトポリマーの生成が所望される領域にのみ光ラジカル発生剤が基板と強固に密着した状態で存在しており、それ以外の領域には光ラジカル発生剤が存在していない。このため、基材表面に重合性の二重結合を有する化合物を接触させエネルギー付与を行うことで、基材表面の光ラジカル発生剤が存在する領域にのみ選択的且つ簡便に、基材と直接結合したグラフトポリマーを、光ラジカル発生剤を起点として生成させることができると考えられる。特に、光ラジカル発生剤を含む組成物として、分子内に光ラジカル発生基を有するシランカップリング剤の如き基材に固定化可能な光ラジカル発生剤を含む組成物、或いは、熱硬化性又は光硬化性のエポキシ樹脂の如き基材に固定化可能な樹脂を含む組成物を用いた場合には、基材と光ラジカル発生剤又は光ラジカル発生剤を含む樹脂組成物からなる層との密着性がより向上することから、グラフトポリマーパターンと基材との密着性がより強固になるものと考えられる。
【0023】
また、本発明においては、グラフトポリマーが有する官能基を選択することにより、種々の機能性材料を付着させることもできる。さらに、基材上への特定組成物の付与は、インクジェット方式の適用など種々の方法により所望の精細さで行うことができることから、本発明のグラフトポリマーパターン形成方法は、高精細さが要求される各種のパターン形成(例えば、導電性パターン形成)などに好適に用いることができる。
【0024】
本発明の導電性パターン形成方法は、グラフトポリマーパターンが形成された領域に、選択的に無電解めっき又はその前駆体を付与し、続いて無電解めっきを行うため、基材表面の凹凸が少ない場合であっても、従来のレジストパターンを用いたエッチング処理によるパターン形成方法と比較して、基材と導電性膜との密着性に優れた高解像度の導電性パターンを容易に得ることができる。また、本発明においては、既述のように、光ラジカル発生剤が存在する領域にのみグラフトポリマーパターンが形成され、当該領域以外の基材表面にはグラフトポリマーパターンは形成されない。このため、無電解めっきにより析出しためっき金属は、グラフトポリマーパターンを覆うように基材表面と接触するため、基材と導電性パターンとの密着性がより向上したものとなる。さらに、本発明の導電性パターン形成方法は、エッチング廃液がでないといった利点をも奏する。
【0025】
さらに、本発明の導電性パターン形成方法は、プリント配線基板、ガラス基板配線、有機EL表示装置における配線などの各種の配線形成に好適に用いることができる。本発明の導電性パターン形成方法は、基板の粗化処理をすることなく配線を形成できることから、配線パターンを有する基板表面の凹凸を最小限に留めることができ、且つ、配線(導電性パターン)が形成されている領域は、基板表面とグラフトポリマーとが直接結合しているため、形成された配線と基板との密着性が高いものとなる。したがって、本発明の導電性パターン形成方法により形成された配線は、優れた高周波特性を発揮しうる。
【0026】
以下、本発明のグラフトポリマーパターン形成方法、及び、本発明の導電性パターン形成方法における各工程について順次説明する。
【0027】
〔(a)光ラジカル発生剤パターン形成工程〕
本工程は、基材上に特定組成物をパターン状に直接付与する工程である。
【0028】
1.基材
(a)工程に用いうる基材としては、例えば、SiO、SiON、若しくはITOを有していてもよいエポキシ樹脂基材;ポリイミド基材;ガラス基材;PET基材;PEN基材;三酢酸セルロース、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリテトラフルオロエチレン、シクロオレフィンポリマー、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキシド、液晶ポリマー、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、アラミド樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、又はシアネート樹脂等からなる基材;などを用いることができる。
【0029】
基材としては、一般的には、平板状の基材(各種の基板)が用いられるが、必ずしも平板状の基材に限定されず、円筒形などの任意の形状の基材を用いることもできる。
なお、本発明において「基材表面」という場合には、基材自体の表面の他、基材上に形成された構成要素(例えば、電極)など、特定組成物の付与対象となる基板上の領域をも含む。
【0030】
本発明における基材としては、上記した各基材の中でも、SiO、SiON、若しくはITOを有していてもよいエポキシ樹脂基材、ポリイミド基材、ガラス基材、PET基材、及びPEN基材、等を好適に用いることができる。
【0031】
本発明においては、光ラジカル発生剤パターン形成工程の前に、基材表面を活性化する処理(基材活性化処理)を、所望により実施することができる。基材表面の活性化処理としては、UVオゾン処理、ピランハ液(硫酸/30%過酸化水素=1/1vol混合液)に浸漬させる処理、等が挙げられる。
【0032】
2.光ラジカル発生剤を含む組成物
光ラジカル発生剤パターン形成工程に適用される光ラジカル発生剤を含む組成物(特定組成物)について詳細に説明する。
特定組成物には、公知の光ラジカル発生剤を含有させることができる。該光ラジカル発生剤としては、基材との密着性を向上させる官能基を有する化合物が好ましい。基材との密着性を向上させる官能基を有する化合物としては、分子内に光ラジカル発生基を有するシランカップリング剤、分子内に基材結合基と光ラジカル発生基とを有する高分子ラジカル発生剤、等が挙げられる。
また、特定組成物としては、熱硬化性エポキシ樹脂組成物、光硬化性エポキシ樹脂組成物も好適に用いられる。
【0033】
また、特定組成物の25℃での粘度は、3mPa・s以上30mPa・s以下であることが好ましい。なお、本明細書における粘度は、RE80型粘度計(商品名、東機産業(株)製)にて測定した値を用いた。
【0034】
(分子内に光ラジカル発生基を有するシランカップリング剤)
分子内に光ラジカル発生基を有するシランカップリング剤(以下、適宜、「シランカップリング剤」と称する。)としては、光開裂によりラジカル重合を開始しうる重合開始部位(以下、単に、重合開始部位と称する。)と基材結合部位とを有する化合物が挙げられる。この化合物について、基材結合部位(Q)と、重合開始部位(Y)と、を有する化合物(Q−Y)のモデルを用いて詳細に説明すれば、一般に、重合開始部位(Y)は、光、特に紫外線により開裂しうる単結合を含む構造である。
【0035】
光により開裂する単結合としては、カルボニルのα開裂、β開裂反応、光フリー転位反応、フェナシルエステルの開裂反応、スルホンイミド開裂反応、スルホニルエステル開裂反応、N−ヒドロキシスルホニルエステル開裂反応、ベンジルイミド開裂反応、活性ハロゲン化合物の開裂反応、などを利用して開裂が可能な単結合が挙げられる。これらの反応により、光により開裂しうる単結合が切断されることになる。光により開裂しうる単結合としては、C−C結合、C−N結合、C−O結合、C−Cl結合、N−O結合、及びS−N結合等が挙げられる。
【0036】
また、これらの光により開裂しうる単結合を含む重合開始部位(Y)は、グラフトポリマー生成工程におけるグラフト重合の起点となることから、光により開裂しうる単結合が開裂すると、その開裂反応によりラジカルを発生させる機能を有する。
【0037】
このような、光により開裂しうる単結合を有し、かつ、ラジカルを発生可能な重合開始部位(Y)の構造としては、以下に挙げる基を含む構造が挙げられる。
即ち、芳香族ケトン基、フェナシルエステル基、スルホンイミド基、スルホニルエステル基、N−ヒドロキシスルホニルエステル基、ベンジルイミド基、トリクロロメチル基、ベンジルクロライド基、などが挙げられる。
【0038】
重合開始部位(Y)は、露光により開裂して、ラジカルが発生すると、そのラジカル周辺に重合可能な化合物が存在する場合には、このラジカルがグラフト重合反応の起点として機能し、所望のグラフトポリマーを生成することができる。
【0039】
また、基材結合部位(Q)としては、基材表面に存在する官能基Zと反応して結合しうる反応性基で構成され、その反応性基としては、具体的には、以下に示すような基が挙げられる。
【0040】
【化1】

【0041】
重合開始部位(Y)と、基材結合部位(Q)と、は直接結合していてもよいし、連結基を介して結合していてもよい。この連結基としては、炭素、窒素、酸素、及びイオウからなる群より選択される原子を含む連結基が挙げられ、具体的には、例えば、飽和炭素基、芳香族基、エステル基、アミド基、ウレイド基、エーテル基、アミノ基、スルホンアミド基、等が挙げられる。また、この連結基は更に置換基を有していてもよく、その導入可能な置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、等が挙げられる。
【0042】
基材結合部位(Q)と、重合開始部位(Y)と、を有する化合物(Q−Y)の具体例〔例示化合物1〜例示化合物13〕を、開裂部と共に以下に示すが、本発明はこれらに制限されるものではなく、例えば、公知のシランカップリング剤であって、分子内に前記した光により開裂しうる単結合を含むものなども好適に使用しうる。
【0043】
【化2】

【0044】
【化3】

【0045】
【化4】

【0046】
(分子内に基材結合基と光ラジカル発生基を有する高分子光ラジカル発生剤)
分子内に基材結合基と光ラジカル発生基を有する高分子光ラジカル発生剤(以下、適宜、「高分子光ラジカル発生剤」と称する。)としては、例えば、下記化合物(14)〜(25)を挙げることができる。なお、高分子光ラジカル発生剤としては、引き続き実施されるグラフトポリマー生成工程におけるグラフト重合性の観点から、その分子量が10000以上の化合物が好ましく、分子量が30000〜100000の範囲である化合物がより好ましい。
【0047】
なお、下記化合物(14)〜(25)中、x、yは、モル分率を表し、x+y=100(x≠0、y≠0)である。下記化合物(14)〜(25)は、エポキシ基が基材結合部位の機能を有しているので、光ラジカル発生剤パターン形成工程後に行われる光ラジカル発生剤固定化工程において基板に強く固定化することができる。
【0048】
【化5】

【0049】
【化6】

【0050】
【化7】

【0051】
(熱硬化性エポキシ樹脂組成物)
熱硬化性エポキシ樹脂組成物とは、組成物中に含まれる全固形分中、エポキシ樹脂が20質量%以上含まれる態様を指す。熱硬化性エポキシ樹脂組成物には、グラフト重合に必要な光ラジカル発生剤を含有し、さらに他の樹脂成分を含有してもよい。
【0052】
他の樹脂成分を添加する場合、該成分の添加効果とエポキシ樹脂の強度などの特性発揮との両立及びグラフトポリマーの生成反応の進行性の観点から、エポキシ樹脂に対して30〜300質量%の範囲、好ましくは50〜200質量%の範囲で添加される。
【0053】
熱硬化性エポキシ樹脂組成物としては、(A)1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、(B)1分子中に2個以上のエポキシ基と反応する官能基を有する化合物(以下、適宜「硬化剤」と称する。)と、(C)光ラジカル発生剤と、を必須成分として含有するものが好ましい。
【0054】
(B)硬化剤における官能基としては、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、チオール基などの官能基から選ばれる官能基が好ましい。
【0055】
(A)1分子中にエポキシ基2個以上を有するエポキシ化合物(エポキシ樹脂と称されるものを含む)としては、エポキシ基を2個以上、好ましくは2〜50個、より好ましくは2〜20個を1分子中に有するエポキシ化合物(エポキシ樹脂と称されるものを含む)である。エポキシ基は、オキシラン環構造を有する構造であればよく、例えば、グリシジル基、オキシエチレン基、エポキシシクロヘキシル基等を示すことができる。このような多価エポキシ化合物は、例えば、新保正樹編「エポキシ樹脂ハンドブック」日刊工業新聞社刊(昭和62年)等に広く開示されており、これらを用いることが可能である。
【0056】
具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、3官能型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA含核ポリオール型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂などを挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。多官能エポキシ、エポキシ当量の低いエポキシ、ナフタレン型エポキシ、ジシクロペンタジエン型エポキシなどの使用により、耐熱性等に優れたエポキシ樹脂となる。
【0057】
(B)硬化剤としては、テレフタル酸などの多官能カルボン酸化合物、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、レゾルシノール誘導体、カテコール誘導体等の二官能フェノール化合物、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のフェノール樹脂、アミノ樹脂、1,3,5―トリアミノトリアジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホンなどの多官能アミノ化合物を挙げることができる。中でも、上記(B)硬化剤としては、エポキシ基と反応する官能基として、水酸基、アミノ基を有する化合物を用いることが好ましい。
【0058】
熱硬化性エポキシ樹脂組成物における(B)硬化剤の添加量としては、(A)成分として含有されるエポキシ化合物中のエポキシ基に対して、硬化剤の官能基の割合が0.1〜5.0であることが好ましく、0.3〜2.0であることがより好ましい。
【0059】
(C)光ラジカル発生剤は、低分子であっても高分子であってもよい。
低分子の光ラジカル発生剤としては、具体的には、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーのケトン、ベンゾイルベンゾエート、ベンゾイン類、α−アシロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、トリクロロメチルトリアジン、及びチオキサントン等の公知のラジカル発生剤が挙げられる。また、通常、光酸発生剤として用いられるスルホニウム塩やヨードニウム塩なども、光照射によりラジカル発生剤として作用するため、本発明ではこれらを用いてもよい。
【0060】
また、感度を高める目的で、(C)光ラジカル発生剤に加えて、増感剤を用いてもよい。増感剤としては、具体的には、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、及びチオキサントン誘導体、等が挙げられる。また、(C)光ラジカル発生剤としては、高分子光ラジカル発生剤を用いてもよく、例えば、特開平9−77891号、特開平10−45927号に記載の活性カルボニル基を側鎖に有する高分子化合物を使用することができる。
【0061】
(C)光ラジカル発生剤として用いうる高分子の光ラジカル発生剤としては、例えば、下記化合物(26)〜(39)を挙げることができる。
【0062】
【化8】

【0063】
【化9】

【0064】
【化10】

【0065】
なお、(C)光ラジカル発生剤としては、グラフトポリマー生成工程における、グラフト重合性の観点から高分子型の光ラジカル発生剤を用いることが好ましい。この高分子型の光ラジカル発生剤の分子量としては、10000以上が好ましく、30000以上がより好ましい。
【0066】
なお、熱硬化性エポキシ樹脂組成物に含まれる(A)エポキシ化合物(エポキシ樹脂)は、(C)光ラジカル発生剤における「光ラジカル発生能を有する構造」を分子内に有するものであってもよい。このように、(A)エポキシ樹脂自体が光ラジカル発生能を有する場合には、(C)光ラジカル発生剤と同様の機能を(A)エポキシ化合物が有するため、エポキシ樹脂組成物中に、さらに(C)光ラジカル発生剤を別途含まずに、(A)エポキシ樹脂が(C)光ラジカル発生剤を兼ねてもよい。
【0067】
このような光ラジカル発生能を有するエポキシ樹脂としては、上記(高分子光ラジカル発生剤)の項で記載したエポキシ基を有する化合物(前記化合物14〜25)を使用することができる。
【0068】
熱硬化性エポキシ樹脂組成物における光ラジカル発生剤の量は、グラフト重合性、グラフトポリマーパターンと基材との密着強度、導電性、エポキシ樹脂硬化物のTgや誘電率など熱特性や電気特性等の観点から、該組成物中に含まれる全固形分に対して0.1〜50質量%程度であることが好ましく、1.0〜30.0質量%程度であることがより好ましい。
【0069】
熱硬化性エポキシ樹脂組成物には、樹脂の機械強度、耐熱性、耐候性、難燃性、耐水性、電気特性などの特性を強化するために、その他の添加剤として、樹脂と他の成分とのコンポジット(複合素材)も使用することができる。複合化するのに使用される材料としては、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリエーテルスルホン、フェノキシ樹脂、PPE等を挙げることができる。これらの材料を添加する場合は、上記の特性を強化する効果、樹脂特有の強度、グラフト重合反応の進行性の観点から、いずれもエポキシ樹脂に対して、1〜200質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは10〜80質量%の範囲で添加される。
【0070】
更に、熱硬化性エポキシ樹脂組成物中に、熱硬化を促進するための硬化促進剤を添加しても良い。硬化促進剤としては、2−エチルー4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール系化合物、4−ジメチルアミノピリジンなどのピリジン系化合物、トリフェニルホスフィンなどの有機ホスフィン系化合物を使用することができる。硬化促進剤を使用する場合、配合量は、フェノール系硬化剤の配合量を100質量%とした場合に0.5〜2質量%の範囲で用いるのが好ましい。
【0071】
以上述べた、シランカップリング剤を含有する組成物、高分子光ラジカル発生剤を含有する組成物、及び熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、有機溶剤を含有した溶液状態やワニス状であってもよい。
この場合、使用される有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メトキシプロパノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等を挙げることができる。有機溶剤は単独で使用してもよいし、2種以上の混合溶剤として使用してもよい。
各組成物における有機溶剤の含有量としては、全組成物中、20質量%〜99.9質量%が好ましい。
【0072】
シランカップリング剤を含有する組成物、高分子光ラジカル発生剤を含有する組成物、又は熱硬化性エポキシ樹脂組成物を用いて、インクジェット記録装置を用いて基材上にパターニングする場合、溶剤としては、ノズル吐出性の点で、沸点が140℃〜250℃の溶剤が好ましい。溶剤として具体的には、ジメチルスルホキシド、スルホラン、シクロヘキサノンなどの溶剤を使用することができる。また、これらの組成物の粘度は、3mPa・s〜30mPa・sが好ましい。
【0073】
(光硬化性エポキシ樹脂組成物)
光硬化性エポキシ樹脂組成物は、モノマー、光カチオン重合開始剤、及び光ラジカル発生剤を含有してなる。該光カチオン重合開始剤が光ラジカル発生剤としての機能をも有する場合には、光カチオン重合開始剤が光ラジカル発生剤を兼ねてもよい。光硬化性エポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、増感剤、添加剤、溶剤を更に含んでもよい。
【0074】
<モノマー>
光硬化性エポキシ樹脂組成物におけるモノマーとしては、公知のオキシラン化合物やオキセタン化合物を使用することができる。例えば、特開2000−169552号公報、特開2001−220526号公報、特開2002−317139号公報、特開2005−2191号公報に記載のオキシランやオキセタンを有するモノマーを挙げることができる。
【0075】
また、低粘度化、高速硬化、硬化物の脆性に優れているモノマーとして、特願2005−346098に記載の下記一般式(I)で表される化合物をモノマーとして使用することもできる。
【0076】
【化11】

【0077】
一般式(I)中、R1〜R8はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、Lは炭素以外の2価の原子又は連結基を表す。X及びYはそれぞれ独立にアルキレン基又は単結合を表す。
【0078】
一般式(I)において、R1〜R8はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、該置換基の例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、複素芳香族基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルバモイル基、ウレイド基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アミノ基、ハロゲン原子、フッ化炭化水素基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基等が挙げられ、これらの置換基は、更に上述の置換基によって置換されていてもよく、また、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成していてもよい。又は、R1〜R8は各々の置換基の末端部が任意に結合して環を形成してもよい。該環は脂肪族炭化水素環であることが好ましく、該環には上述した置換基が置換していてもよい。R1〜R8としては、水素原子、アルキル基であることが好ましい。
【0079】
一般式(I)において、R1〜R8で表されるアルキル基は直鎖でも分岐を有していても、環状になっていてもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましく、更に好ましくはメチル基又はエチル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0080】
一般式(I)において、R1〜R8で表されるアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基等;アルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロパルギル基等;芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等;複素芳香族基としては、例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キナゾリル基、フタラジル基等;ヘテロ環基としては、例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等;アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等;アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等;アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等;アリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等;アルコキシカルボニル基としては、例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等;アリールオキシカルボニル基としては、例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等;スルファモイル基としては、例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等;アシル基としては、例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等;アシルオキシ基としては、例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等;
【0081】
アミド基としては、例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等;カルバモイル基としては、例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等;ウレイド基としては、例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等;アルキルスルホニル基としては、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等;アリールスルホニル基としてはフェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等;アミノ基としては、例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等;ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等;フッ化炭化水素基としては、例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等;シリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等が挙げられる。
【0082】
一般式(I)において、Lは炭素以外の2価の原子又は連結基を表し、例えば、酸素(−O−)、硫黄(−S−)、窒素(−NR−)などの2価の原子又は連結基が挙げられる。ここで、Rは水素原子又はアルキル基を表す。アルキル基の好ましい例は上記R1〜R8の場合と同義である。さらに好ましくは酸素(−O−)、硫黄(−S−)である。
【0083】
一般式(I)において、X及びYは、それぞれ独立にアルキレン基又は単結合を表し、該アルキレン基としては炭素数1〜10のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1〜5のアルキレン基であることがさらに好ましく、炭素数1〜3のアルキレン基であることが特に好ましい。
【0084】
X−L−Yで表される基の主鎖を構成する原子の数が3又は4であることが更に好ましい。ここで、「主鎖を構成する原子」には、X、L又はYに置換しうる置換基を構成する原子はもちろん、X、L又はY中の水素原子をも含まない。例えば、アルキレン基の場合、主鎖を構成する原子とはアルキレン基を構成する炭素原子のみをいい、アルキレン基を構成する水素原子は含まない。
【0085】
一般式(I)で表される化合物の25℃における粘度は1〜10mPa・sが好ましく、1〜8mPa・sがより好ましい。一般式(I)で表される化合物の粘度は、例えばRE80型粘度計(商品名、東機産業株式会社製)を用いて測定することができる。
【0086】
以下に、一般式(I)で表される化合物の具体例(I−1〜I−19)を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されない。
【0087】
【化12】

【0088】
光硬化性エポキシ樹脂組成物における一般式(I)で表される化合物の含有量は、任意に設定できるが、粘度や、硬化性の観点から、該組成物の総量の5質量%以上90質量%以下が好ましく、10質量%以上80質量%以下がより好ましい。
【0089】
一般式(I)で表される化合物は、単独で用いるだけでなく複数混合して用いても、他のカチオン重合性化合物と混合して用いてもよい。一般式(I)で表される化合物と他のカチオン重合性化合物の総量は、光硬化性エポキシ樹脂組成物の総量に対して70質量%以上99質量%以下が好ましく、75質量%以上98質量%以下がより好ましく、80質量%以上95質量%以下が最も好ましい。
【0090】
光硬化性エポキシ樹脂組成物において、一般式(I)で表される化合物の重合性化合物の総量に対する割合としては、任意に設定できるが、硬化性や粘度、硬化物の物性の観点から、5質量%以上90質量%以下が好ましく、10質量%以上80質量%以下がより好ましく、15質量%以上70質量%以下が特に好ましい。
【0091】
一般式(I)で表される化合物と併用可能な他のカチオン重合性化合物としては、一般に知られているカチオン重合性基を有する化合物であれば、モノマー、オリゴマー、ポリマーの種を問わず使用することができる。カチオン重合性化合物としては、例えば、以下に例示する化合物が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではなく、公知のカチオン重合性化合物であれば問題なく使用することができる。また、カチオン重合性化合物は反応速度や、組成物の物性、硬化膜物性等を調整する目的で1種又は複数を混合して用いることができる。
【0092】
このような、カチオン重合性化合物としては、公知のカチオン重合性化合物を用いることができ、例えば、スチレン誘導体、ビニルエーテル化合物の他に、オキシラン化合物、オキセタン化合物、テトラヒドロフラン化合物、ラクタム化合物、ラクトン化合物などが用いられる。中でも、オキシラン化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物、又はスチレン誘導体が好ましく用いられ、特に、オキシラン化合物、オキセタン化合物が好ましい。
【0093】
また、オキシラン環含有化合物(オキシラン化合物、即ちエポキシ化合物)及びオキセタン環含有化合物(オキセタン化合物)は、前記一般式(I)で表させる化合物の他に一つを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。硬化速度と硬化度を向上させる観点から、それぞれ少なくとも1種のオキセタン化合物とオキシラン化合物とを併用することが好ましい。この場合、オキシラン化合物とオキセタン化合物の比率はそれぞれ10:90〜70:30が好ましく用いられる。この間に設定すると硬化性と硬化速度のバランスの良い光硬化性エポキシ樹脂組成物が得られる。
【0094】
光硬化性エポキシ樹脂組成物をインクジェット装置により基材上に付与する場合には、組成物を安定に吐出する観点から、他のカチオン重合性化合物としては、粘度の低いものを用いることが好ましく、単官能のカチオン重合性化合物を含むことが好ましい。単官能のカチオン重合性化合物としては、オキシラン化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物が好ましく用いられ、中でもオキシラン化合物又はオキセタン化合物の一方も悪しく両方を混合して用いるのが好ましい。硬化性及び組成物の粘度の観点からは、単官能のカチオン重合性化合物は、光硬化性エポキシ樹脂組成物の総量の3質量%以上50質量%以下の割合で用いることが好ましく、5質量%以上30質量%以下が最も好ましい。
【0095】
−オキシラン化合物−
オキシラン化合物としては、芳香族エポキシド、脂環式エポキシドなどが挙げられる。芳香族エポキシドとしては、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジ又はポリグリシジルエーテルが挙げられ、例えば、ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、ならびにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0096】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセン又はシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られるシクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましく挙げられる。
【0097】
脂肪族エポキシドとしては、脂肪族多価アルコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル又は1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリンあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテルに代表されるポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド等が挙げられる。
これらのオキシラン化合物のなかでも、芳香族エポキシドおよび脂環式エポキシドが、硬化速度に優れるという観点から好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。
【0098】
単官能エポキシドの例としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド等が挙げられる。
【0099】
多官能エポキシドの例としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,1,3−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン等が挙げられる。
【0100】
−オキセタン化合物−
オキセタン化合物としては、オキセタン環を有する化合物を指し、特開2001−220526、同2001−310937、同2003−341217の各公報に記載されるような、公知オキセタン化合物を任意に選択して使用できる。
【0101】
光硬化性エポキシ樹脂組成物に使用しうるオキセタン環を有する化合物としては、その構造内にオキセタン環を1〜4個有する化合物が好ましい。上述したように、なかでも光硬化性エポキシ樹脂組成物の粘度と粘着性の観点から、オキセタン環を有する化合物としては、オキセタン環を1個又は2個有する化合物を使用することが好ましい。このような化合物を使用することで、光硬化性エポキシ樹脂組成物の粘度をハンドリング性の良好な範囲に維持することが容易となり、また、硬化後の組成物と基材との高い密着性を得ることができる。
【0102】
分子内に1〜2個のオキセタン環を有する化合物としては、下記一般式(1)〜(3)で示される化合物等が挙げられる。
【0103】
【化13】

【0104】
a1は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基、フリル基又はチエニル基を表す。分子内に2つのRa1が存在する場合、それらは同じであっても異なるものであってもよい。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、フルオロアルキル基としては、これらアルキル基の水素のいずれかがフッ素原子で置換されたものが好ましく挙げられる。
a2は、炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数2〜6個のアルケニル基、芳香環を有する基、炭素数2〜6個のアルキルカルボニル基、炭素数2〜6個のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜6個のN−アルキルカルバモイル基を表す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、アルケニル基としては、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等が挙げられ、芳香環を有する基としては、フェニル基、ベンジル基、フルオロベンジル基、メトキシベンジル基、フェノキシエチル基等が挙げられる。アルキルカルボニル基としては、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基等が、アルキコキシカルボニル基としては、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等が、N−アルキルカルバモイル基としては、エチルカルバモイル基、プロピルカルバモイル基、ブチルカルバモイル基、ペンチルカルバモイル基等が挙げられる。
【0105】
a3は、線状又は分枝状アルキレン基、線状又は分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基、線状又は分枝状不飽和炭化水素基、カルボニル基又はカルボニル基を含むアルキレン基、カルボキシル基を含むアルキレン基、カルバモイル基を含むアルキレン基、又は、以下に示す基を表す。アルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が挙げられ、ポリ(アルキレンオキシ)基としては、ポリ(エチレンオキシ)基、ポリ(プロピレンオキシ)基等が挙げられる。不飽和炭化水素基としては、プロペニレン基、メチルプロペニレン基、ブテニレン基等が挙げられる。
【0106】
【化14】

【0107】
a3が上記多価基である場合、Ra4は、水素原子、炭素数1〜4個のアルキル基、炭素数1〜4個のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、低級アルキルカルボキシル基、カルボキシル基、又はカルバモイル基を表す。
a5は、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、NH、SO、SO2、C(CF3)2、又は、C(CH3)2を表す。
【0108】
a6は、炭素数1〜4個のアルキル基、又はアリール基を表し、nは0〜2000の整数である。Ra7は炭素数1〜4個のアルキル基、アリール基、又は、下記構造を有する1価の基を表す。下記式中、Ra8は炭素数1〜4個のアルキル基、又はアリール基であり、mは0〜100の整数である。
【0109】
【化15】

【0110】
3〜4個のオキセタン環を有する化合物としては、下記一般式(4)で示される化合物が挙げられる。
【0111】
【化16】

【0112】
一般式(4)において、Ra1は、前記一般式(1)におけるのと同義である。また、多価連結基であるRa9としては、例えば、下記A〜Cで示される基等の炭素数1〜12の分枝状アルキレン基、下記Dで示される基等の分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基又は下記Eで示される基等の分枝状ポリシロキシ基等が挙げられる。jは、3又は4である。
【0113】
【化17】

【0114】
上記Aにおいて、Ra10はメチル基、エチル基又はプロピル基を表す。また、上記Dにおいて、pは1〜10の整数である。
【0115】
また、本発明に好適に使用しうるオキセタン化合物の別の態様として、側鎖にオキセタン環を有する下記一般式(5)で示される化合物が挙げられる。
【0116】
【化18】

【0117】
一般式(5)において、Ra1およびRa8は前記式におけるのと同義である。Ra11はメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基又はトリアルキルシリル基であり、rは1〜4である。
【0118】
光硬化性エポキシ樹脂組成物で用いられるオキセタン化合物には、単官能オキセタンの例としては、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−(メタ)アリルオキシメチル−3−エチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4−フルオロ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、4−メトキシ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)エチル〕フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−テトラブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−トリブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等が挙げられる。
【0119】
また多官能オキセタンとしては、例えば、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、3,3’−(1,3−(2−メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン))ビス−(3−エチルオキセタン)、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、1,2−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールF(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等の多官能オキセタンが挙げられる。
【0120】
−ビニルエーテル化合物−
また、光硬化性エポキシ樹脂組成物には、更に硬化度を付与するためにビニルエーテル基を有する化合物(ビニルエーテル化合物)を含有させてもよい。この場合、ビニルエーテル基を有する化合物は、硬化物の表面物性や特定組成物の溶解性の調整の観点から光硬化性エポキシ樹脂組成物中に1質量%〜20質量%の範囲で含有させることができる。
【0121】
単官能ビニルエーテル化合物の例としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフリフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
【0122】
多官能ビニルエーテル化合物の例としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテルなどのジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル類等が挙げられる。
【0123】
−スチレン誘導体−
スチレン誘導体としては、公知の化合物が用いられるが、ビニル基上の電子密度を向上させる観点から芳香環のp位およびo位の少なくとも一方が電子供与性官能基で置換されているスチレン誘導体が好ましく用いられる。ここで電子供与性官能基とは、Hammett則の置換基定数σ値が負となるものをいい、このような官能基としては、アミノ基、水酸基、アルコキシ基、アルキル基、などが挙げられる。中でも、重合中に活性末端と反応しにくいことから、アルコキシ基、アルキル基、ジメチルアミノ基が好ましく用いられる。
【0124】
単官能スチレンとしては、スチレン、2−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,6−メチルスチレン、2−エチルスチレン、4−エチルスチレン、2−エチルスチレン、4−n−ブチルスチレン、2−n−ブチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、2−t−ブチルスチレン、4−ブテニルスチレン、4−オクテニルスチレン等の2−アルキルスチレン類および4−アルキルスチレン類、4−メトキシスチレン、2−メトキシスチレン、4−t−ブチルスチレンなどの2−アルコキシスチレン、又は4−アルコキシスチレン類、4−アセトキシスチレン、4−ジメチルアミノスチレン、4−ジメチルアミノメチルスチレン、4−グリシジルメチルスチレン、4−ヒドロキシスチレン、2,4−ジアルキルスチレン、2,4,6−トリアルキルスチレン、2,4−ジアルコキシスチレン、2,4,6−トリアルコキシスチレン等が挙げられる。
【0125】
多官能スチレンとしては、ジビニルベンゼン、ビス(4−ビニルフェニル)メタン、ビス(4−ビニルフェニル)エタン、ビス(4−ビニルフェニル)ブタン、ビス(4−ビニルフェニル)ヘキサン、ビス(4−ビニルフェニル)ヘプタン、ビス(4−ビニルフェニル)オクタン、ビス(4−ビニルフェノキシ)ヘキサン、ビス(4−ビニルベンジル)ジエチレングリコール、エチレングリコールビス(4−ビニルフェニル)エーテル、プロピレングリコールビス(4−ビニルフェニル)エーテル、1,6−ヘキサンジオールビス(4−ビニルフェニル)エーテル、1,8−オクタンジオールビス(4−ビニルフェニル)エーテル、オリゴエチレングリコールビス(4−ビニルフェニル)エーテル、ポリエチレングリコール(4−ビニルフェニルエーテル)、オリゴプロピレングリコールビス(4−ビニルフェニル)エーテル、ポリプロピレングリコールビス(4−ビニルフェニル)エーテル、グリセリントリス(4−ビニルフェニル)エーテル等が挙げられる。
【0126】
<光カチオン重合開始剤>
光硬化性エポキシ樹脂組成物は、硬化性の観点から、少なくとも一種の光カチオン重合開始剤、及び少なくとも一種の光増感剤を含むことが好ましい。
光カチオン重合開始剤とは、活性光線又は放射線の照射により酸を発生してカチオン重合を開始する化合物をいい、公知の化合物及びそれらの混合物を適宜に選択して使用することができる。
【0127】
光カチオン重合開始剤は、以下に挙げるものを1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。光硬化性エポキシ樹脂組成物における光カチオン重合開始剤の含量は、酸の発生量、硬化性等の観点から、0.1〜20質量%が好ましく、0.5質量%〜10質量%の範囲であることがより好ましい。
【0128】
光カチオン重合開始剤としては、例えば、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネートを挙げることができる。
【0129】
また、これらの光カチオン重合開始剤、又は、それと同等の作用を有する基若しくは化合物をポリマーの主鎖又は側鎖に導入した化合物、例えば、米国特許第3,849,137号、独国特許第3914407号、特開昭63−26653号、特開昭55−164824号、特開昭62−69263号、特開昭63−146038号、特開昭63−163452号、特開昭62−153853号、特開昭63−146029号等に記載の化合物を用いることができる。
さらに米国特許第3,779,778号、欧州特許第126,712号等に記載の光により酸を発生する化合物も使用することができる。
【0130】
本発明に使用しうる光カチオン重合開始剤として好ましい化合物としては、下記一般式(b1)、(b2)、(b3)で表される化合物を挙げることができる。
【0131】
【化19】

【0132】
一般式(b1)において、R201、R202及びR203は、各々独立に有機基を表す。
-は、非求核性アニオンを表し、好ましくはスルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、ビス(アルキルスルホニル)アミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン、BF4-、PF6-、SbF6-や以下に示す基などが挙げられ、好ましくは炭素原子を有する有機アニオンである。
【0133】
【化20】

【0134】
好ましい有機アニオンとしては下式に示す有機アニオンが挙げられる。
【0135】
【化21】



【0136】
Rc1は、有機基を表す。
Rc1における有機基として炭素数1〜30のものが挙げられ、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はこれらの複数が、単結合、−O−、−CO2−、−S−、−SO3−、−SO2N(Rd1)−などの連結基で連結された基を挙げることができる。
【0137】
Rd1は、水素原子、アルキル基を表す。Rc3、Rc4、Rc5は、各々独立に、有機基を表す。Rc3、Rc4、Rc5の有機基として、好ましくはRc1における好ましい有機基と同じものを挙げることができ、最も好ましくは炭素数1〜4のパーフロロアルキル基である。Rc3とRc4が結合して環を形成していてもよい。Rc3とRc4が結合して形成される基としてはアルキレン基、アリーレン基が挙げられる。好ましくは炭素数2〜4のパーフロロアルキレン基である。
【0138】
Rc1、Rc3〜Rc5の有機基として、最も好ましくは1位がフッ素原子又はフロロアルキル基で置換されたアルキル基、フッ素原子又はフロロアルキル基で置換されたフェニル基である。フッ素原子又はフロロアルキル基を有することにより、光照射によって発生した酸の酸性度が上がり、感度が向上する。
【0139】
201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、好ましくは1〜30、より好ましくは1〜20である。
また、R201〜R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。R201〜R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)を挙げることができる。
【0140】
201、R202及びR203としての有機基の具体例としては、後述する化合物(b1−1)、(b1−2)、(b1−3)における対応する基を挙げることができる。
なお、一般式(b1)で表される構造を複数有する化合物であってもよい。例えば、一般式(b1)で表される化合物のR201〜R203のうち少なくともひとつが、一般式(b1)で表される他の化合物のR201〜R203の少なくともひとつと直接、又は、連結基を介して結合した構造を有する化合物であってもよい。
【0141】
更に好ましい(b1)成分として、以下に説明する化合物(b1−1)、(b1−2)、及び(b1−3)を挙げることができる。
【0142】
化合物(b1−1)は、上記一般式(b1)のR201〜R203の少なくとも1つがアリール基である、アリールスルホニム化合物、即ち、アリールスルホニウムをカチオンとする化合物である。
【0143】
アリールスルホニウム化合物は、R201〜R203の全てがアリール基でもよいし、R201〜R203の一部がアリール基で、残りがアルキル基、シクロアルキル基でもよい。
【0144】
アリールスルホニウム化合物としては、例えば、トリアリールスルホニウム化合物、ジアリールアルキルスルホニウム化合物、アリールジアルキルスルホニウム化合物、ジアリールシクロアルキルスルホニウム化合物、アリールジシクロアルキルスルホニウム化合物等を挙げることができる。
【0145】
アリールスルホニウム化合物のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基などのアリール基、インドール残基、ピロール残基、などのヘテロアリール基が好ましく、更に好ましくはフェニル基、インドール残基である。アリールスルホニウム化合物が2つ以上のアリール基を有する場合に、2つ以上あるアリール基は同一であっても異なっていてもよい。
【0146】
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているアルキル基としては、炭素数1〜15の直鎖又は分岐状アルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等を挙げることができる。
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているシクロアルキル基としては、炭素数3〜15のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
【0147】
201〜R203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜14)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基を置換基として有してもよい。好ましい置換基としては、炭素数1〜12の直鎖又は分岐状アルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数1〜12の直鎖、分岐又は環状のアルコキシ基であり、最も好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基である。置換基は、3つのR201〜R203のうちのいずれか1つに置換していてもよいし、3つ全てに置換していてもよい。また、R201〜R203がアリール基の場合に、置換基はアリール基のp−位に置換していることが好ましい。
【0148】
次に、化合物(b1−2)について説明する。
化合物(b1−2)は、式(b1)におけるR201〜R203が、各々独立に、芳香環を含有しない有機基を表す場合の化合物である。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を含有する芳香族環も包含するものである。
201〜R203としての芳香環を含有しない有機基は、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20である。
201〜R203は、各々独立に、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリル基、ビニル基であり、より好ましくは直鎖、分岐又は環状の2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基、特に好ましくは直鎖又は分岐の2−オキソアルキル基である。
【0149】
201〜R203としてのアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)を挙げることができ、直鎖又は分岐の2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基がより好ましい。
【0150】
201〜R203としてのシクロアルキル基は、好ましくは、炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができ、環状2−オキソアルキル基がより好ましい。
【0151】
201〜R203の直鎖、分岐、環状2−オキソアルキル基としては、好ましくは、上記のアルキル基、シクロアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
201〜R203としてのアルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基としては、好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基)を挙げることができる。
201〜R203は、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1〜5)、水酸基、シアノ基、ニトロ基によって更に置換されていてもよい。
【0152】
化合物(b1−3)は、以下の一般式(b1−3)で表される化合物であり、フェナシルスルフォニウム塩構造を有する化合物である。
【0153】
【化22】

【0154】
一般式(b1−3)に於いて、R1c〜R5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、又はハロゲン原子を表す。R6c及びR7cは、各々独立に、水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。Rx及びRyは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基、又はビニル基を表す。R1c〜R5c中のいずれか2つ以上、R6cとR7c、及びRxとRyは、それぞれ結合して環構造を形成してもよい。Zc-は、非求核性アニオンを表し、一般式(b1)に於けるX-の非求核性アニオンと同様のものを挙げることができる。
【0155】
1c〜R7cとしてのアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、例えば炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12の直鎖又は分岐のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、直鎖又は分岐のプロピル基、直鎖又は分岐のブチル基、直鎖又は分岐のペンチル基)を挙げることができる。
【0156】
1c〜R7cのシクロアルキル基として、好ましくは、炭素数3〜8個のシクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基)を挙げることができる。
【0157】
1c〜R5cとしてのアルコキシ基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、例えば炭素数1〜10のアルコキシ基、好ましくは、炭素数1〜5の直鎖及び分岐のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、直鎖又は分岐のプロポキシ基、直鎖又は分岐のブトキシ基、直鎖又は分岐のペントキシ基)、炭素数3〜8の環状アルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基)を挙げることができる。
【0158】
1c〜R5c中のいずれか2つ以上、R6cとR7c、及びRxとRyが結合して形成する基としては、ブチレン基、ペンチレン基等を挙げることができる。この環構造は、酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合を含んでいてもよい。
【0159】
好ましくはR1c〜R5cのうちいずれかが直鎖状若しくは分岐状アルキル基、シクロアルキル基又は直鎖、分岐、環状アルコキシ基であり、更に好ましくはR1c〜R5cの炭素数の和が2〜15である。これにより、より溶剤溶解性が向上し、保存時にパーティクルの発生が抑制される。
【0160】
x及びRyとしてのアルキル基、シクロアルキル基は、R1c〜R7cとしてのアルキル基、シクロアルキル基と同様のものを挙げることができる。
x及びRyは、2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基であることが好ましい。
2−オキソアルキル基は、R1c〜R5cとしてのアルキル基、シクロアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
アルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基については、R1c〜R5cとしてのアルコキシ基と同様のものを挙げることができる。
【0161】
x、Ryは、好ましくは炭素数4個以上のアルキル基、シクロアルキル基であり、より好ましくは6個以上、更に好ましくは8個以上のアルキル基、シクロアルキル基である。
【0162】
一般式(b2)、(b3)中、R204〜R207は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。X-は、非求核性アニオンを表し、一般式(b1)に於けるX-の非求核性アニオンと同様のものを挙げることができる。
【0163】
204〜R207のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基が好ましく、更に好ましくはフェニル基である。
204〜R207としてのアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)を挙げることができる。R204〜R207としてのシクロアルキル基は、好ましくは、炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができる。
204〜R207が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜15)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基等を挙げることができる。
【0164】
使用してもよい光カチオン重合開始剤として、更に、下記一般式(b4)、(b5)、(b6)で表される化合物を挙げることができる。
【0165】
【化23】

【0166】
一般式(b4)〜(b6)中、Ar3及びAr4は、各々独立に、アリール基を表す。R206、R207及びR208は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。Aは、アルキレン基、アルケニレン基又はアリーレン基を表す。
【0167】
光カチオン重合開始剤のなかでも好ましいものとしては、一般式(b1)〜(b3)で表される化合物を挙げることができる。
本発明に用いうる光カチオン重合開始剤の特に好ましいものの具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0168】
【化24】

【0169】
【化25】

【0170】
【化26】

【0171】
【化27】

【0172】
【化28】

【0173】
【化29】

【0174】
また、特開2002−122994号公報、段落番号〔0029〕乃至〔0030〕に記載のオキサゾール誘導体、s−トリアジン誘導体なども好適に用いられる。
特開2002−122994号公報、段落番号〔0037〕乃至〔0063〕に例示されるオニウム塩化合物、スルホネート系化合物も本発明に好適に使用しうる。
【0175】
<重合禁止剤>
光硬化性エポキシ樹脂組成物には、光カチオン重合開始剤による重合を効果的に進行させるために、カチオン性重合以外の重合の進行を禁止する重合禁止剤を併用することが好ましい。
【0176】
適当な重合禁止剤としてはフェノール系水酸基含有化合物およびキノン類、N−オキシド化合物類、ピペリジン 1−オキシル フリーラジカル化合物類、ピロリジン 1−オキシル フリーラジカル化合物類、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン類、及びカチオン染料類からなる群より選択される化合物である。好ましい重合禁止剤としてはハロイドキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、レゾルシノール、カテコール、t−ブチルカテコール、ハイドロキノン、ベンゾキノン、4,4−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンおよびその誘導体、ジ−t−ブチルニトロキシド、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシドおよびその誘導体等;ピペリジン 1−オキシル フリーラジカル、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシル フリーラジカル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシル フリーラジカル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシル フリーラジカル、4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシル フリーラジカル、4−マレイミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシル フリーラジカル、4−ホスホノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシル フリーラジカル、3−カルボキシ−2,2,5,5−テトラメチルピロリジン 1−オキシル フリーラジカル、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン第一セリウム塩、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩、クリスタルバイオレット、メチルバイオレット、エチルバイオレット及びビクトリアピュアブルーBOH等が挙げられる。重合禁止剤の添加量は、組成物の全固形分の質量に対して、0.01質量%〜5質量%が好ましい。
【0177】
<光増感剤>
光硬化性エポキシ樹脂組成物には、光カチオン重合開始剤の感度を向上させる目的で、光増感剤を添加することが好ましい。好ましい光増感剤としては、以下の化合物類に属する増感色素であり、かつ350nm〜450nm域に吸収波長を有するものを挙げることができる。
【0178】
多核芳香族類(例えば、アントラセン、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えばチアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン)。
【0179】
より好ましい増感色素の例としては、下記一般式(IX)〜(XIII)で表される化合物が挙げられる。
【0180】
【化30】

【0181】
一般式(IX)中、A1は硫黄原子又はNR50を表し、R50はアルキル基又はアリール基を表し、L2は隣接するA1及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R51、R52はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表し、R51、R52は互いに結合して、色素の酸性核を形成してもよい。Wは酸素原子又は硫黄原子を表す。
一般式(X)中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立にアリール基を表し、−L3−による結合を介して連結している。ここでL3は−O−又はS−を表す。また、Wは一般式(IX)に示したものと同義である。
【0182】
一般式(XI)中、A2は硫黄原子又はNR59を表し、L4は隣接するA2及び炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R53、R54、R55、R56、R57及びR58はそれぞれ独立に一価の非金属原子団の基を表し、R59はアルキル基又はアリール基を表す。
【0183】
一般式(XII)中、A3、A4はそれぞれ独立に−S−又はNR62−又はNR63−を表し、R62、R63はそれぞれ独立に置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基を表し、L5、L6はそれぞれ独立に、隣接するA3、A4及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R60、R61はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団であるか又は互いに結合して脂肪族性又は芳香族性の環を形成することができる。
一般式(XIII)中、R66は置換基を有してもよい芳香族環又はヘテロ環を表し、A5は酸素原子、硫黄原子又はNR67−を表す。R64、R65及びR67はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表し、R67とR64、及びR65とR67はそれぞれ互いに脂肪族性又は芳香族性の環を形成するため結合することができる。
【0184】
一般式(IX)〜(XIII)で表される化合物の好ましい具体例としては、以下に示す例示化合物(A−1)〜(A−20)などが挙げられる。
【0185】
【化31】

【0186】
【化32】

【0187】
<光ラジカル発生剤>
光硬化性エポキシ樹脂組成物は、光ラジカル発生剤を含有する。光カチオン重合開始剤が、光ラジカル発生剤として機能する場合には、光硬化性エポキシ樹脂組成物をパターニング・固定化した後に、硬化物中に一部残存した光カチオン重合開始剤を、グラフト重合時に必要な光ラジカル発生剤(本発明における光ラジカル発生剤)として機能させることができることから、光カチオン重合開始剤が光ラジカル発生剤を兼ねていてもよい。より効率良くグラフト重合を進行させるためには、光硬化性エポキシ樹脂組成物には、光カチオン重合開始剤と、光ラジカル発生剤とを含有することが好ましい。
光硬化性エポキシ樹脂組成物に、光カチオン重合開始剤と光ラジカル発生剤とをそれぞれ含有する場合は、光硬化性エポキシ樹脂組成物中のモノマーが、光カチオン重合開始剤の作用で硬化する際には反応せず、グラフトポリマー形成工程でラジカルを発生するように、光ラジカル発生剤固定化工程の露光条件を制御することが好ましい。
【0188】
光硬化性エポキシ樹脂組成物中に添加する光ラジカル発生剤としては、上記(高分子光ラジカル発生剤)の項で記載したエポキシ基を有する化合物、(熱硬化性エポキシ樹脂組成物)の項で記載した、公知の低分子光ラジカル発生剤や、高分子の光ラジカル発生剤を使用することができる。
【0189】
以下に、上記の他、光硬化性エポキシ樹脂組成物中に添加することができる添加剤を挙げる。
【0190】
<導電性塩類>
光硬化性エポキシ樹脂組成物には、インクジェット装置に適用した際における射出物性の制御を目的として、チオシアン酸カリウム、硝酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルアミン塩酸塩などの導電性塩類を添加することができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、光硬化性エポキシ樹脂組成物の総量に対して0.001〜1.0質量%程度である。
【0191】
<溶剤>
光硬化性エポキシ樹脂組成物には、該組成物と基材との密着性を改良するため、極微量の有機溶剤を添加することも有効である。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、などが挙げられる。
溶剤の添加量は、光硬化性エポキシ樹脂組成物の総量に対して0.1〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3質量%の範囲である。
【0192】
<高分子化合物>
光硬化性エポキシ樹脂組成物には、膜物性を調整するため、各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、スチレン系重合体、アクリル系重合体、環状エーテル重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、スチレン系モノマー、アクリル系のモノマー、環状エーテルの共重合が好ましい。さらに、高分子結合材の共重合組成として、「環状エーテル基含有モノマー」、「ビニルエーテル基含有モノマー」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、光硬化性エポキシ樹脂組成物の総量に対して0.01〜10.0質量%程度である。
【0193】
〔界面活性剤〕
界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。なお、前記界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
界面活性剤の添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、特定組成物の0.001〜5.0質量%程度である。
【0194】
この他にも、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、ポリオレフィンやPET等の被記録媒体への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤーなどを含有させることができる。
タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環族アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香族アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などである。
【0195】
光硬化性エポキシ樹脂組成物を用いて、基材上にインクジェット記録装置を用いてパターニングする場合は、吐出する際の組成物を15〜90℃の範囲でほぼ一定温度に保持し、そのときの粘度が1〜20mPa・sとなるようにすることが好ましく、上記範囲になるように適宜組成比を調整し決定することが好ましい。なお、光硬化性エポキシ樹脂組成物の25℃での粘度は、好ましくは2〜100mPa・s、より好ましくは3〜30mPa・sである。
【0196】
3.基材上への光ラジカル発生剤を含む組成物の付与
光ラジカル発生剤パターン形成工程においては、上記した特定組成物を用い、基材上に該組成物をパターン状に直接付与する(以下、単に「パターニング」と称する場合がある。)。
【0197】
光ラジカル発生剤パターン形成工程におけるパターニングの方法としては、インクジェット法;コンタクト印刷、マイクロコンタクト印刷のような印章法;スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、平版印刷のような印刷法、などが挙げられる。なかでも、インクジェット法が、パターンの解像度、プロセスの簡便性の点で好ましい。
【0198】
印章法とは、凹凸のパターンを形成したゴム印を、特定組成物に浸漬し、このゴム印を基材表面に押しつけることにより、凸部に付着した特定組成物を基材表面に転写する方法である。ゴム印としては、天然ゴム、シリコーンゴム、適度な柔軟性を有するエラストマーなどを用いて、予め所望のパターンを転写するための凹凸を形成したものを準備して用いることができる。この凹凸を有するゴム印は、数百μm〜数mmのパターンの場合、予め溝を作製した金型にゴム印の材料を流し込んで作製することができる。また、数十nm〜十数μmのマイクロコンタクトプリンティングに用いる如きパターンの場合には、レジストを用いたエッチング法により作製することができる。
【0199】
印刷法は、スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、平版印刷などで使用される印刷方法を使用して、特定組成物を基材表面に転写する方法である。
【0200】
インクジェット法とは、液体吐出孔から記録信号(デジタルデータ)に応じたピコリットルオーダーの特定組成物からなる液滴を基材に向けて吐出させ、パターンを形成させる方法であり、微細なパターン形成に優れた方法である。
【0201】
<インクジェット法を用いたパターニング>
以下、光ラジカル発生剤パターン形成工程において好適に実施されるインクジェット法を用いたパターニングについて詳細に説明する。なお、以下のインクジェット法に関する説明では、本発明に係る特定組成物を、説明の便宜上、適宜「インク」と称して説明する場合がある。
【0202】
光ラジカル発生剤パターン形成工程に適用しうるインクジェット法(インクジェット記録方式)には特に制限はなく、例えば、静電誘引力を利用して液体を吐出する電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用して液体を吐出する音響型インクジェット方式、液体を加熱して気泡を形成し、発生した圧力を利用するサーマル型インクジェット方式、等のいずれであってもよい。
前記インクジェット記録方式のうち、ピエゾ素子を用いたドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)が好適である。
【0203】
パターンニングの際に使用するインクノズル等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。適用しうるシステムとしては、特開2002−11860号公報に示すような態様が一例としてあげられるが、これに限定されるものではなく、他の態様であってもよい。
【0204】
インクジェット記録装置には、インク温度の安定化手段を備えるものが好ましく、一定温度にする部位はインクタンク(中間タンクがある場合は中間タンク)からノズル射出面までの配管系、部材の全てが対象となる。
【0205】
温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インクの流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断もしくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンタ立上げ時間を短縮するため、あるいは熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うとともに、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
【0206】
光ラジカル発生剤パターン形成工程において光硬化性エポキシ樹脂組成物が用いられる場合、液滴付与手段と放射線等の露光手段とを備えたインクジェット記録装置を用いることにより、特定組成物の付与に引き続き、後述する(b)光ラジカル発生剤固定化工程を行ってもよい。
【0207】
インクジェット記録装置を用いた放射線の照射条件について述べる。基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている。具体的には、ヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式でヘッドと光源を走査する。照射は、インク着弾後、一定時間をおいて行われることになる。更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させる。WO99/54415号では、照射方法として、光ファイバを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されている。本発明においては、これらの照射方法を用いることが可能である。照射する活性エネルギー線としては、一般的に用いられる水銀灯、メタルハライドランプ等を用いてもよいし、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ、蛍光灯等の光源を用いてもよい。また熱陰極管、冷陰極管、電子線、X線等、インクの重合反応が進行する光源、電磁波等を用いることができる。
【0208】
本発明では、LED又は半導体レーザを光源として用いることが好ましい。LED又は半導体レーザは小型であることが特徴である。特にLEDは長寿命であり、発熱量が少なく、消費電力が小さい上、オゾンが発生しない、電源を入れると即時使用可能であるという長所を有する。また、365nm±20nmの光源がコスト面でメリットがあり、既存の光重合開始系を使用できる。
【0209】
メタルハライドランプを用いる場合、ランプは10〜1000W/cm2のものを使用し、メディア面で1mW/cm2〜100W/cm2の照度であることが好ましい。また露光エネルギーは、0.1mJ/cm2〜100J/cm2であることが好ましい。
また、高圧放電を用いる水銀灯、メタルハライドランプ等では放電にともない、オゾンが発生するため、排気手段を有することが好ましい。排気手段は、インク吐出時に発生するインクミストの回収を兼ねるべく配置してあることが好適である。
【0210】
これら、硬化させるための光等のエネルギーがインク吐出ノズルに照射されると、ノズル面表面に付着したインクミスト等が固化し、インク吐出の妨げとなる可能性があるため、ノズルへの照射を最小限にとどめるため、遮光等の措置を施すことが好ましい。具体的には、ノズルプレートへの照射を防止する隔壁を設ける、あるいは迷光を低減するべくメディアへの入射角を限定するための手段を設ける等が好適である。
【0211】
インクの付与に際しては、インクを一定温度に加温するとともに、着弾から照射までの時間を0.01〜0.5秒とすることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.3秒、更に好ましくは0.01〜0.15秒後に放射線を照射することにある。このように着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、着弾したインクが硬化前に滲むことを防止するこが可能となる。
【0212】
本発明に用いうるインクジェット記録装置としては、特に制限はなく、市販のインクジェット記録装置が使用できる。該インクジェット記録装置に適用しうるインク保持手段及びインク供給路について説明する。
【0213】
[インク保持手段]
インクを保持する手段としては、公知のインクカートリッジに充填することが好ましく、特開平5−16377号公報に開示されるように変形可能な容器に収納し、タンクとなすことも可能である。また特開平5−16382号公報に開示されるように、サブタンクを有するとインクをヘッドへの供給が更に安定する。また特開平8−174860号公報に開示されるように、インク供給室の圧力が低下した場合に、弁の移動によりインクを供給する態様のカートリッジを用いることも可能である。これらのインク保持手段でヘッド内のメニスカスを適切にたもつための負圧付与方法としては、インク保持手段の高さすなわち水頭圧による方法、またインク流路中にもうけたフィルタの毛細管力による方法、また、ポンプ等により圧力を制御する方法、また、特開昭50−74341号公報に開示されるようにインクをインク吸収体に保持し、この毛細管力により負圧を付与する方法等が適切である。
【0214】
[インク供給路]
インクをこれらインク保持手段からヘッドに供給する方法として、ヘッドユニットに直接保持手段を連結する方法でもよいし、チューブ等の流路により連結する方法でもよい。これらインク保持手段および流路は、インクに対して良好な濡れ性を持つような素材であること、もしくは表面処理が施されていることが好ましい。
【0215】
[インク打滴方法]
インクを打滴する方法としては、特開平5−104725号公報に開示されるように、連続的にインク滴を吐出させ、画像(特定組成物により形成されるパターン)に応じて滴を偏向して基材に着弾させるか、させないかを選択制御する方法であってもよいし、所謂オンデマンド方式を呼ばれる、画像として必要な部分にのみインク滴を吐出させる方式であってもよい。オンデマンド方式は、特開平5−16349号公報に開示されるように、圧電素子等を用いて構造体の変形によりインク圧を発生させ、吐出させる方式であってもよいし、特開平1−234255号公報に開示されるように、熱エネルギーによる気化にともなう膨張により発生する圧力で吐出する方式であってもよい。また特開2001−277466号公報に開示されるように、電界により基材への吐出を制御する方式であってもよい。
【0216】
さらに、ノズルを特開昭63−160849号公報に記載されるように画像の幅と同等以上の幅分配置し、所謂ラインヘッドとなし、これらのノズルからの打滴と同時に基材を移動させることにより、高速に画像を形成することが可能となる。また、ノズルの表面は、特開平5−116327号公報に開示されるような表面処理を施すことにより、ノズル表面へのインク滴の飛沫の付着、およびインク滴の付着を防ぐことが可能となる。このような処理を施しても、なお汚れが付着する場合があり、このため、特開平6−71904号公報に開示されるように、ブレードにより清掃を行うことが好ましい。また、インクの組成によっては長時間吐出されない場合もありうる。このようなときに、メニスカスを安定に保つために、特開平11−157102号公報に開示されるように、画像領域外で適宜インクを吐出させ、ヘッドに新しいインクを補給することにより、インク物性を適性値に維持することが好ましい。また、このような処置を施してもなお気泡がヘッド内に侵入もしくはヘッド内で発生することがある。このような場合は、特開平11−334092号公報に記載されるように、ヘッド外より強制的にインクを吸引することにより、物性の変化したインクを廃棄するとともに、気泡もヘッド外に排出することができる。更に長時間打滴しない場合は特開平11−138830号公報に開示されるように、キャップでノズル表面を覆うことによりノズル表面を保護することができる。これらの措置を講じてもなお吐出しない場合がありうる。ノズルの一部が吐出しない状態でインクの付与を行うと、形成されるパターンにムラが発生する等の問題が発生する。このようなことを避けるため、特開平2000−343686号公報に開示されるように、吐出しないことを検出して処置をとることが有効である。
【0217】
インクを吐出するにあたっては、粘度を一定に維持するためにインク温度を所定精度で一定に保持することが好ましい。このためにはインク温度検出手段と、インク加熱手段、および検出されたインク温度に応じて加熱を制御する制御手段を有することが好ましい。さらにあるいは、インク温度に応じてインクを吐出させる手段への印加エネルギーを制御する手段を有することも好適である。ヘッドユニットを特開平6−115099号公報に記載されるように機械的に移動させ、これと同期して基材を直交方向に間欠的に移動させることにより重畳打滴を行うと、基材の間欠的な移動の精度不良にともなうムラを見えにくくする効果があり、高画質を実現することが可能となる。このとき、ヘッドの移動速度、基材の移動量、ノズル数の関係を適宜設定することにより、画質(パターンの形成状態)と記録速度の関係を好ましい関係に設定することが可能となる。また、逆にヘッドを固定し、基材を機械的に所定方向に往復移動するとともに、それと直交方向に間欠移動させることにより、同様の効果を得ることが可能である。
【0218】
<(b)光ラジカル発生剤固定化工程>
光ラジカル発生剤固定化工程では、光ラジカル発生剤パターン形成工程で基板上に付与された特定組成物が含有する光ラジカル発生剤を基材に固定化する。本工程における光ラジカル発生剤の固定化は、露光又は加熱により行うことができる。
【0219】
特定組成物として、光硬化性エポキシ樹脂組成物を用いた場合は、該組成物を硬化させると同時に光ラジカル発生剤を基材に固定化させることができる。
【0220】
光硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化は、活性エネルギー線を利用したものであり、光ラジカル発生剤パターン形成工程において基材上に該組成物をパターン状に直接付与した後、付与された組成物に活性エネルギー線を照射することによって、該組成物中に含有される重合性化合物の重合硬化が進行する。
【0221】
硬化は、特定組成物の有する感応波長に対応する波長領域の活性エネルギー線を発する光源を用いて重合硬化を促進する露光処理により行なえばよい。光源、露光時間及び光量は、特定組成物が含有する重合性化合物の重合硬化の程度に応じて適宜選択すればよい。
なお、硬化した後における特定組成物からなるパターン(硬化物)の厚みは、0.05μm〜30μmであることが好ましい。
【0222】
特定組成物の付与が、インクジェット法により行われた場合、硬化は光ラジカル発生剤パターン形成工程の説明中<インクジェット法を用いたパターニング>の項で述べたような方法で行うことができる。
【0223】
特定組成物が、光ラジカル発生基を有するシランカップリング剤を含有する組成物、高分子光ラジカル発生剤を有する組成物、又は熱硬化性エポキシ樹脂組成物である場合には、加熱により光ラジカル発生剤を固定化させることができる。
この場合、加熱温度としては、20〜200℃が好ましく、より好ましくは80〜180℃である。加熱時間は、1秒〜50時間、より好ましくは10秒から10時間である。
【0224】
<(c)グラフトポリマーパターン形成工程>
グラフトポリマーパターン形成工程では、基材表面に重合性の二重結合を有する化合物を接触させた後、該基材表面にエネルギーを付与して、光ラジカル発生剤が存在する領域にグラフトポリマーパターンを形成する。
【0225】
グラフトポリマーパターン形成工程では、基材表面に、重合性の二重結合を有する化合物を接触させ、紫外線等のエネルギーを付与する。エネルギーが付与されると、光ラジカル発生剤がパターン状に存在する領域のみに、表面と直接結合したグラフトポリマーパターンが形成される。
【0226】
本発明における重合性の二重結合を有する化合物は、その分子内に、極性官能基のごとき官能基を更に有するものであってもよい。また、重合性の二重結合を有する化合物と共に、極性官能基のごとき官能基を有する他の化合物を基材上に接触させてもよい。これにより、例えば、極性官能基に機能性材料を吸着させることなどにより、基材上に形成されたグラフトポリマーパターンに所望の特性を持たせることもできる。
【0227】
従って、例えば、基材表面に、重合性の二重結合を有する化合物と無電解めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有する化合物とを接触させるか、或いは、分子内に重合性の二重結合及び無電解めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有する化合物を接触させることで、得られたグラフトポリマーパターンは、無電解めっき触媒又はその前駆体が相互作用により吸着しうることから、後述する導電性パターンの形成に有用となる〔本発明の導電性パターン形成方法における(c’)工程〕。
【0228】
以下、本発明におけるグラフトポリマーパターン形成工程について、詳細に説明する。
【0229】
〔表面グラフト形成方法〕
グラフトポリマーパターン形成工程では、光ラジカル発生剤が固定化されたパターンを有する基材表面に、重合性の二重結合を有する化合物を接触させ、紫外線照射によりエネルギーを付与して、光ラジカル発生剤のパターン表面と直接結合するグラフトポリマーを生成させる。
【0230】
(重合性の二重結合を有する化合物)
重合性の二重結合を有する化合物(以下、適宜、「重合性化合物」と称する。)としては、モノマー、マクロマー、あるいは分子内に重合性の二重結合を有する高分子化合物をいずれも用いることができる。
これらの重合性化合物は、公知のものを任意に使用することができる。これらのうち、本発明において特に有用な重合性化合物は、重合性基を有し、かつ極性官能基を有する化合物である。
【0231】
この極性官能基により、形成されたグラフトポリマーに、親水性或いは無電解めっき触媒(前駆体)との相互作用性などの特性を付与することができる。極性官能基としては、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アミド基、などの親水性基を挙げることができる。
【0232】
−モノマー−
本発明に用いうるモノマーとしては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、イタコン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、スチレンスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−スルホエチル(メタ)アクリレート若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アリルアミン若しくはそのハロゲン化水素酸塩、N−ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、ビニルチオフェン、スチレン、エチル(メタ)アクリル酸エステル、n−ブチル(メタ)アクリル酸エステルなど炭素数1〜24までのアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどを挙げることができる。
【0233】
−マクロマー、分子内に重合性の二重結合を有する高分子化合物−
重合性化合物としては、モノマーのみならず、マクロマー、分子内に重合性の二重結合を有する高分子化合物も好ましく使用することができる。
【0234】
本発明に用いうるマクロマーは、前記モノマーを用いて公知の方法にて作製することができる。マクロモノマーの製造方法は、例えば、平成1年9月20日にアイピーシー出版局発行の「マクロモノマーの化学と工業」(編集者 山下雄也)の第2章「マクロモノマーの合成」に各種の製法が提案されている。これらのマクロモノマーのうち有用な重量平均分子量は、250〜10万の範囲であり、特に好ましい範囲は400〜3万である。
【0235】
本発明に用いうる分子内に重合性の二重結合を有する高分子化合物としては、重合性基として、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基などのエチレン付加重合性不飽和基(重合性基)を導入したポリマーが挙げられる。このポリマーは、少なくとも末端又は側鎖に重合性基を有するものであり、側鎖に重合性基を有するものがより好ましい。
【0236】
分子内に重合性の二重結合を有する高分子化合物は、重合性基のほかにも、前記したようにカルボキシル基などの、極性基、或いは、表面に導入しようとする機能性材料と相互作用性可能な官能基を有することが好ましい。
重合性基を有する高分子化合物の有用な重量平均分子量は500〜50万の範囲で、特に好ましい範囲は1000〜5万の範囲である。
【0237】
本発明においては、基材表面と接触させる重合性化合物として、末端のみならず、側鎖に複数の重合性基を有するマクロマー、分子内に重合性の二重結合を有する高分子化合物を用いることで、グラフトポリマーの生成密度が向上し、均一で高密度のグラフトポリマーを生成することができる。
このため、このようなグラフトポリマーを表面に有する材料(表面グラフト材料)に、無電解めっき触媒或いはその前駆体を付着させる際にも、付着密度が向上し、優れためっき受容性領域を得ることができる。
マクロマーや分子内に重合性の二重結合を有する高分子化合物を重合性化合物として用いる場合には、重合性基が高密度に存在することから、重合開始剤を共存させたり、高エネルギーの電子線を用いる公知の方法を用いてグラフト生成すると、先に述べたホモポリマーの生成が著しくなり、また、形成されたホモポリマーの除去性もより低下することから、このような重合性化合物を用いた場合に、本発明の効果が著しいことがわかる。
【0238】
また、製造方法の観点からは、重合性化合物として分子内に重合性の二重結合を有する高分子化合物を用い、該高分子化合物を塗布法により基板表面に接触させることにより、均一な厚みの高分子塗布膜が容易に形成できる。この場合、モノマー塗布の場合に必要となる塗布液保護用カバーが不要となり、重合性化合物を任意の厚みで均一に接触させることが可能となるため、形成されるグラフトポリマーの均一性が向上し、製造適性に優れるという利点をも有する。このような理由から、大面積、或いは大量の製造においては、重合性化合物として、分子内に重合性の二重結合を有する高分子化合物を用いることが製造適性上特に有用である。
【0239】
−分子内に重合性の二重結合及び無電解めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有する化合物−
本発明における重合性化合物の好適な態様の一つは、分子内に重合性の二重結合(以下、適宜「重合性基」と称する。)及び電解めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基(以下、適宜「相互作用基」と称する。)を有する化合物である。
【0240】
本発明において、重合性基と相互作用性基(例えば、前記した極性官能基)とを有する高分子化合物の合成方法としては、i)相互作用性基を有するモノマーと重合性基を有するモノマーとを共重合する方法、ii)相互作用性基を有するモノマーと二重結合前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、iii)相互作用性基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、二重結合を導入(重合性基を導入する)方法が挙げられる。
【0241】
好ましい合成方法は、合成適性の観点から、ii)相互作用性基を有するモノマーと二重結合前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、iii)相互作用性基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、重合性基を導入する方法である。
【0242】
なお、ii)のグラフトポリマー合成方法に用いうる相互作用性基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、イタコン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、より具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アリルアミン若しくはそのハロゲン化水素酸塩、3−ビニルプロピオン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、ビニルスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン(下記構造)、スチレンスルホン酸ナトリウム、ビニル安息香酸等が挙げられ、一般的には、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基若しくはそれらの塩、水酸基、アミド基、ホスフィン基、イミダゾール基、ピリジン基、若しくはそれらの塩、及びエーテル基などの官能基を有するモノマーが使用できる。
【0243】
【化33】

【0244】
相互作用性基を有するモノマーと共重合する重合性基を有するモノマーとしては、アリル(メタ)アクリレート、2−アリルオキシエチルメタクリレートが挙げられる。
また、二重結合前駆体を有するモノマーとしては2−(3−クロロ−1−オキソプロポキシ)エチルメタクリレー卜や、特開2003−335814号公報に記載の化合物(i−1〜i−60)が使用することができ、これらの中でも、特に下記化合物(i−1)が好ましい。
【0245】
【化34】

【0246】
更に、相互作用性基を有するポリマー中の、カルボキシル基、アミノ基若しくはそれらの塩、水酸基、及びエポキシ基などの官能基との反応を利用して、不飽和基を導入するために用いられる重合性基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートなどがある。
ii)相互作用性基を有するモノマーと二重結合前駆体を有するモノマーとを共重合させた後の、塩基などの処理により二重結合を導入する方法については、例えば、特開2003−335814号公報に記載の手法を用いることができる。
【0247】
また、本発明に用いうる重合性化合物としては、例えば、下記一般式(1A)表されるユニット、及び、一般式(2A)で表されるユニットを含む共重合体(以下、適宜、「シアノ基含有重合性ポリマー」と称する。)も挙げられる。
【0248】
【化35】

【0249】
上記式(1A)及び式(2A)中、R〜Rは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、X、Y及びZは、夫々独立して、単結合、又は置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、L及びLは、夫々独立して、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。
【0250】
〜Rが、置換若しくは無置換のアルキル基である場合、無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられ、また、置換アルキル基としては、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換された、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。
なお、Rとしては、水素原子、メチル基、又はヒドロキシ基、臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
としては、水素原子、メチル基、又はヒドロキシ基、臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
としては、水素原子が好ましい。
としては、水素原子が好ましい。
としては、水素原子、メチル基が好ましい。
【0251】
X、Y及びZが、置換若しくは無置換の二価の有機基の場合、該二価の有機基の有機基としては、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基が挙げられる。
脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、又はこれらの基が、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたものが好ましい。
芳香族炭化水素基としては、無置換のフェニル基、若しくは、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたフェニル基が好ましい。
中でも、−(CH−(nは1〜3の整数)が好ましく、更に好ましくは−CH−である。
【0252】
は、ウレタン結合又はウレア結合を有する二価の有機基が好ましく、中でも、総炭素数1〜9であるものが好ましい。なお、ここで、Lの総炭素数とは、Lで表される置換若しくは無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
の構造として、より具体的には、下記式(1A−1)、又は、式(1A−2)で表される構造であることが好ましい。
【0253】
【化36】

【0254】
上記式(1A−1)及び式(1A−2)中、R及びRは、夫々独立して、置換若しくは無置換の、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基を表す。
【0255】
また、Lは、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、又はこれらを組み合わせた基であることが好ましい。該アルキレン基と芳香族基とを組み合わせた基は、更に、エーテル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基を介していてもよい。中でも、Lは総炭素数が1〜15であることが好ましく、特に無置換であることが好ましい。なお、ここで、Lの総炭素数とは、Lで表される置換若しくは無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基、及びこれらの基が、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたもの、更には、これらを組み合わせた基が挙げられる。
【0256】
本発明のシアノ基含有重合性ポリマーとしては、前記式(1A)で表されるユニットが、下記式(3A)で表されるユニットであることが好ましい。
【0257】
【化37】

【0258】
上記式(3A)中、R及びRは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しく無置換のアルキル基を表し、Zは、単結合、又は置換若しくは無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、Wは、窒素原子、又は酸素原子、Lは、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。
【0259】
式(3A)におけるR及びRは、前記式(1A)におけるR及びRと同義であり、好ましい例も同様である。
【0260】
式(3A)におけるZは、前記式(1A)におけるZと同義であり、好ましい例も同様である。
また、式(3A)におけるLも、前記式(1A)におけるLと同義であり、好ましい例も同様である。
【0261】
本発明のシアノ基含有重合性ポリマーとしては、前記式(3A)で表されるユニットが、下記式(4A)で表されるユニットであることが好ましい。
【0262】
【化38】

【0263】
式(4A)中、R及びRは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しく無置換のアルキル基を表し、V及びWは、夫々独立して、窒素原子又は酸素原子を表し、Lは、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。
【0264】
式(4A)におけるR及びRは、前記式(1A)におけるR及びRと同義であり、好ましい例も同様である。
【0265】
式(4A)におけるLは、前記式(1A)におけるLと同義であり、好ましい例も同様である。
【0266】
前記式(3A)及び式(4A)において、Wは、酸素原子であることが好ましい。
また、前記式(3A)及び式(4A)において、Lは、無置換のアルキレン基、或いは、ウレタン結合又はウレア結合を有する二価の有機基が好ましく、中でも、総炭素数1〜9であるものが特に好ましい。
【0267】
また、本発明のシアノ基含有重合性ポリマーとしては、前記式(2A)で表されるユニットが、下記式(5A)で表されるユニットであることが好ましい。
【0268】
【化39】

【0269】
上記式(5A)中、Rは、水素原子、又は置換若しく無置換のアルキル基を表し、Uは、窒素原子又は酸素原子を表し、Lは、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。
【0270】
式(5A)におけるRは、前記式(1A)におけるR及びRと同義であり、水素原子であることが好ましい。
【0271】
また、式(5A)におけるLは、前記式(1A)におけるLと同義であり、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、又はこれらを組み合わせた基であることが好ましい。
特に、式(5A)においては、Lが、シアノ基との連結部位に、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基を有する二価の有機基であることが好ましく、中でも、この二価の有機基が総炭素数1〜10であることが好ましい。
また、別の好ましい態様としては、式(5A)におけるLが、シアノ基との連結部位に、芳香族基を有する二価の有機基であることが好ましく、中でも、該二価の有機基が、総炭素数6〜15であることが好ましい。
【0272】
本発明のシアノ基含有重合性ポリマーは、前記式(1A)〜式(5A)で表されるユニットを含んで構成されるものであり、重合性基とシアノ基とを側鎖に有するポリマーである。
このシアノ基含有重合性ポリマーは、例えば、以下のように合成することができる。
【0273】
重合反応の種類としては、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合が知られているが、反応制御の観点から、ラジカル重合、カチオン重合を用いることが好ましい。
本発明のシアノ基含有重合性ポリマーは、1)ポリマー主鎖を形成する重合形態と側鎖に導入される重合性基の重合形態とが異なる場合と、2)ポリマー主鎖を形成する重合形態と側鎖に導入される重合性基の重合形態とが同一の場合とで、その合成方法が異なる。
【0274】
1)ポリマー主鎖を形成する重合形態と側鎖に導入される重合性基の重合形態が異なる場合
ポリマー主鎖を形成する重合形態と側鎖に導入される重合性基の重合形態が異なる場合は、1−1)ポリマー主鎖形成がカチオン重合で行われ、側鎖に導入される重合性基の重合形態がラジカル重合である態様と、1−2)ポリマー主鎖形成がラジカル重合で行われ、側鎖に導入される重合性基の重合形態がカチオン重合である態様と、がある。
【0275】
1−1)ポリマー主鎖形成がカチオン重合で行われ、側鎖に導入される重合性基の重合形態がラジカル重合である態様
本発明において、ポリマー主鎖形成がカチオン重合で行われ、側鎖に導入される重合性基の重合形態がラジカル重合である態様で用いられるモノマーとしては、以下の化合物が挙げられる。
【0276】
・重合性基含有ユニットを形成するために用いられるモノマー
本態様に用いられる重合性基含有ユニットを形成するために用いられるモノマーとしては、ビニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、4−(メタ)アクリロイルブタンビニルエーテル、2−(メタ)アクリロイルエタンビニルエーテル、3−(メタ)アクリロイルプロパンビニルエーテル、(メタ)アクリロイロキシジエチレングリコールビニルエーテル、(メタ)アクリロイロキシトリエチレングリコールビニルエーテル、(メタ)アクリロイル1stテルピオネール、1−(メタ)アクリロイロキシ−2−メチル−2−プロペン、1−(メタ)アクリロイロキシ−3−メチル−3−ブテン、3−メチレン−2−(メタ)アクリロイロキシ−ノルボルナン、4,4’−エチリデンジフェノールジ(メタ)アクリレート、メタクロレインジ(メタ)アクリロイルアセタール、p−((メタ)アクリロイルメチル)スチレン、アリル(メタ)アクリレート、2−(ブロモメチル)アクリル酸ビニル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸アリルが挙げられる。
【0277】
・シアノ基含有ユニット形成するために用いられるモノマー
本態様に用いられるシアノ基含有ユニット形成するために用いられるモノマーとしては、2−シアノエチルビニルエーテル、シアノメチルビニルエーテル、3−シアノプロピルビニルエーテル、4−シアノブチルビニルエーテル、1−(p−シアノフェノキシ)−2−ビニロキシ−エタン、1−(o−シアノフェノキシ)−2−ビニロキシ−エタン、1−(m−シアノフェノキシ)−2−ビニロキシ−エタン、1−(p−シアノフェノキシ)−3−ビニロキシ−プロパン、1−(p−シアノフェノキシ)−4−ビニロキシ−ブタン、o−シアノベンジルビニルエーテル、m―シアノベンジルビニルエーテル、p―シアノベンジルビニルエーテル、アリルシアニド、アリルシアノ酢酸や、以下の化合物が挙げられる。
【0278】
【化40】

【0279】
重合方法は、実験化学講座「高分子化学」2章−4(p74)に記載の方法や、「高分子合成の実験方法」大津隆行著 7章(p195)に記載の一般的なカチオン重合法が使用できる。なお、カチオン重合には、プロトン酸、ハロゲン化金属、有機金属化合物、有機塩、金属酸化物及び固体酸、ハロゲンが開始剤として用いることができるが、この中で、活性が大きく高分子量が合成可能な開始剤として、ハロゲン化金属と有機金属化合物の使用が好ましい。
具体的には、3フッ化ホウ素、3塩化ホウ素、塩化アルミ、臭化アルミ、四塩化チタン、四塩化スズ、臭化スズ、5フッ化リン、塩化アンチモン、塩化モリブデン、塩化タングステン、塩化鉄、ジクロロエチルアルミニウム、クロロジエチルアルミニウム、ジクロロメチルアルミニウム、クロロジメチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、トリメチル亜鉛、メチルグリニアが挙げられる。
【0280】
1−2)ポリマー主鎖形成がラジカル重合で行われ、側鎖に導入される重合性基の重合形態がカチオン重合である態様
本発明において、ポリマー主鎖形成がラジカル重合で行われ、側鎖に導入される重合性基の重合形態がカチオン重合である態様用いられるモノマーとしては、以下の化合物が挙げられる。
【0281】
・重合性基含有ユニット形成するために用いられるモノマー
上記1−1)の態様で挙げた重合性基含有ユニット形成するために用いられるモノマーと同じものを用いることができる。
【0282】
・シアノ基含有ユニット形成するために用いられるモノマー
本態様に用いられるシアノ基含有ユニット形成するために用いられるモノマーとしては、シアノメチル(メタ)アクリレート、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、3−シアノプロピル(メタ)アクリレート、2−シアノプロピル(メタ)アクリレート、1−シアノエチル(メタ)アクリレート、4−シアノブチル(メタ)アクリレート、5−シアノペンチル(メタ)アクリレート、6−シアノヘキシル(メタ)アクリレート、7−シアノヘキシル(メタ)アクリレート、8−シアノヘキシル(メタ)アクリレート、2−シアノエチル−(3−(ブロモメチル)アクリルレート)、2−シアノエチル−(3−(ヒドロキシメチル)アクリルレート)、p−シアノフェニル(メタ)アクリレート、o−シアノフェニル(メタ)アクリレート、m−シアノフェニル(メタ)アクリレート、5−(メタ)アクリロイル−2−カルボニトリロ−ノルボルネン、6−(メタ)アクリロイル−2−カルボニトリロ−ノルボルネン、1−シアノ−1−(メタ)アクリロイル−シクロヘキサン、1,1−ジメチル−1−シアノ−(メタ)アクリレート、1−ジメチル−1−エチル−1−シアノ−(メタ)アクリレート、o−シアノベンジル(メタ)アクリレート、m−シアノベンジル(メタ)アクリレート、p−シアノベンジル(メタ)アクリレート、1―シアノシクロヘプチルアクリレート、2―シアノフェニルアクリレート、3―シアノフェニルアクリレート、シアノ酢酸ビニル、1―シアノ−1―シクロプロパンカルボン酸ビニル、シアノ酢酸アリル、1―シアノ−1―シクロプロパンカルボン酸アリル、N,N―ジシアノメチル(メタ)アクリルアミド、N−シアノフェニル(メタ)アクリルアミド、アリルシアノメチルエーテル、アリル−o―シアノエチルエーテル、アリル−m―シアノベンジルエーテル、アリル−p―シアノベンジルエーテルなどが挙げられる。
また、上記モノマーの水素の一部を、ヒドロキシル基、アルコキシ基、ハロゲン、シアノ基などで置換した構造を持つモノマーも使用可能である。
【0283】
重合方法は、実験化学講座「高分子化学」2章−2(p34)に記載の方法や、「高分子合成の実験方法」大津隆行著 5章(p125)に記載の一般的なラジカル重合法が使用できる。なお、ラジカル重合の開始剤には、100℃以上の加熱が必要な高温開始剤、40〜100℃の加熱で開始する通常開始剤、極低温で開始するレドックス開始剤などが知られているが、開始剤の安定性、重合反応のハンドリングのし易さから、通常開始剤が好ましい。
通常開始剤としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、ペルオキソ2硫酸塩、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビル−2,4−ジメチルバレロニトリルが挙げられる。
【0284】
2)ポリマー主鎖を形成する重合形態と側鎖に導入される重合性基の重合形態とが同一の場合
ポリマー主鎖を形成する重合形態と側鎖に導入される重合性基の重合形態とが同一の場合は、2−1)両者がカチオン重合の態様と、2−2)両者がラジカル重合である態様と、がある。
【0285】
2−1)両者がカチオン重合の態様
両者がカチオン重合の態様には、シアノ基を有するモノマーとして、前記1−1)の態様で挙げたシアノ基含有ユニット形成するために用いられるモノマーと同じものを用いることができる。
なお、重合中のゲル化を防止する観点から、シアノ基を有するポリマーを予め合成した後、該ポリマーと重合性基を有する化合物(以下、適宜、「反応性化合物」と称する。)とを反応させ、重合性基を導入する方法を用いることが好ましい。
【0286】
なお、シアノ基を有するポリマーは、反応性化合物との反応のために、下記に示すような反応性基を有することが好ましい。
また、シアノ基を有するポリマーと反応性化合物とは、以下のような官能基の組み合わせとなるように、適宜、選択されることが好ましい。
具体的な組み合わせとしては、(ポリマーの反応性基、反応性化合物の官能基)=(カルボキシル基、カルボキシル基)、(カルボキシル基、エポキシ基)、(カルボキシル基、イソシアネート基)、(カルボキシル基、ハロゲン化ベンジル)、(水酸基、カルボキシル基)、(水酸基、エポキシ基)、(水酸基、イソシアネート基)、(水酸基、ハロゲン化ベンジル)(イソシアネート基、水酸基)、(イソシアネート基、カルキシル基)等を挙げることができる。
【0287】
ここで、反応性化合物として、具体的には、以下に示す化合物を用いることができる。
即ち、アリルアルコール、4−ヒドロキシブタンビニルエーテル、2−ヒドロキシエタンビニルエーテル、3−ヒドロキシプロパンビニルエーテル、ヒドロキシトリエチレングリコールビニルエーテル、1stテルピオネール、2−メチル−2−プロペノール、3−メチル−3−ブテノール、3−メチレン−2−ヒドロキシ−ノルボルナン、p−(クロロメチル)スチレンである。
【0288】
2−2)両者がラジカル重合である態様
両者がラジカル重合である態様では、合成方法としては、i)シアノ基を有するモノマーと重合性基を有するモノマーとを共重合する方法、ii)シアノ基を有するモノマーと二重結合前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、iii)シアノ基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、二重結合を導入(重合性基を導入する)方法が挙げられる。好ましいのは、合成適性の観点から、ii)シアノ基を有するモノマーと二重結合前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、iii)シアノ基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、重合性基を導入する方法である。
【0289】
前記i)の合成方法で用いられる重合性基を有するモノマーとしては、アリル(メタ)アクリレートや、以下の化合物などが挙げられる。
【0290】
【化41】

【0291】
前記ii)の合成方法で用いられる二重結合前駆体を有するモノマーとしては、下記式(a)で表される化合物などが挙げられる。
【0292】
【化42】

【0293】
上記式(a)中、Aは重合性基を有する有機団、R〜Rは、夫々独立して、水素原子又は1価の有機基、B及びCは脱離反応により除去される脱離基であり、ここでいう脱離反応とは、塩基の作用によりCが引き抜かれ、Bが脱離するものである。Bはアニオンとして、Cはカチオンとして脱離するものが好ましい。
式(a)で表される化合物としては、具体的には以下の化合物を挙げることができる。
【0294】
【化43】

【0295】
【化44】

【0296】
また、前記ii)の合成方法において、二重結合前駆体を二重結合に変換するには、下記に示すように、B、Cで表される脱離基を脱離反応により除去する方法、つまり、塩基の作用によりCを引き抜き、Bが脱離する反応を使用する。
【0297】
【化45】

【0298】
上記の脱離反応において用いられる塩基としては、アルカリ金属類の水素化物、水酸化物又は炭酸塩、有機アミ化合物、金属アルコキシド化合物が好ましい例として挙げられる。アルカリ金属類の水素化物、水酸化物、又は炭酸塩の好ましい例としては、水素化ナトリウム、水素化カルシウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。有機アミン化合物の好ましい例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン、N−メチルジシクロヘキシルアミン、N−エチルジシクロヘキシルアミン、ピロリジン、1−メチルピロリジン、2,5−ジメチルピロリジン、ピペリジン、1−メチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ピペラジン、1,4−ジメチルピペラジン、キヌクリジン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]−オクタン、ヘキサメチレンテトラミン、モルホリン、4−メチルモルホリン、ピリジン、ピコリン、4−ジメチルアミノピリジン、ルチジン、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕−7−ウンデセン(DBU)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルエチルアミン、Schiff塩基などが挙げられる。金属アルコキシド化合物の好ましい例としては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシドなどが挙げられる。これらの塩基は、1種或いは2種以上の混合であってもよい。
【0299】
また、前記脱離反応において、塩基を付与(添加)する際に用いられる溶媒としては、例えば、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、水などが挙げられる。これらの溶媒は単独或いは2種以上混合してもよい。
【0300】
使用される塩基の量は、化合物中の特定官能基(B、Cで表される脱離基)の量に対して、当量以下であってもよく、また、当量以上であってもよい。また、過剰の塩基を使用した場合、脱離反応後、余剰の塩基を除去する目的で酸などを添加することも好ましい形態である。
【0301】
前記iii)の合成方法において、シアノ基を有するポリマーと反応させる重合性基を有するモノマーとしては、シアノ基を有するポリマー中の反応性基の種類によって異なるが、以下の組合せの官能基を有するモノマーを使用することができる。
即ち、(ポリマーの反応性基、モノマーの官能基)=(カルボキシル基、カルボキシル基)、(カルボキシル基、エポキシ基)、(カルボキシル基、イソシアネート基)、(カルボキシル基、ハロゲン化ベンジル)、(水酸基、カルボキシル基)、(水酸基、エポキシ基)、(水酸基、イソシアネート基)、(水酸基、ハロゲン化ベンジル)(イソシアネート基、水酸基)、(イソシアネート基、カルキシル基)等を挙げることができる。
具体的には以下のモノマーを使用することができる。
【0302】
【化46】

【0303】
以上のようにして合成された本発明のシアノ基含有重合性ポリマーは、共重合成分全体に対し、重合性基含有ユニット、シアノ基含有ユニットの割合が以下の範囲であることが好ましい。
即ち、重合性基含有ユニットが、共重合成分全体に対し5〜50mol%で含まれることが好ましく、更に好ましくは5〜40mol%である。5mol%以下では反応性(硬化性、重合性)が落ち、50mol%以上では合成の際にゲル化しやすく合成しにくい。
また、シアノ基含有ユニットは、共重合成分全体に対し1〜95mol%で含まれることが好ましく、更に好ましくは10〜95mol%である。
【0304】
なお、本発明のシアノ基含有重合性ポリマーは、シアノ基含有ユニット、重合性基含有ユニット以外に、他のユニットを含んでいてもよい。この他のユニットを形成するために用いられるモノマーとしては、本発明の効果を損なわないものであれば、いかなるモノマーも使用することができる。
ただし、前述のように重合性基をポリマーに反応させて導入する場合は、100%導入することが困難な際には少量の反応性部分が残ってしまうことから、これが第3のユニットとなる可能性もある。
具体的には、ラジカル重合でポリマー主鎖を形成する場合は、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどの無置換(メタ)アクリル酸エステル類、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、3,3,3−トリフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレートなどのハロゲン置換(メタ)アクリル酸エステル類、2−(メタ)アクリルロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドなどのアンモニウム基置換(メタ)アクリル酸エステル類、ブチル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類、スチレン、ビニル安息香酸、p−ビニルベンジルアンモニウムクロライドなどのスチレン類、N−ビニルカルバゾール、酢酸ビニル、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルカプロラクタムなどのビニル化合物類や、その他にジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−エチルチオ−エチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどが使用できる。
また、上記記載のモノマーを用いて得られたマクロモノマーも使用できる。
【0305】
カチオン重合でポリマー主鎖を形成する場合は、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、エチレングリコールビニルエーテル、ジ(エチレングリコール)ビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、酢酸ビニル、2−ビニルオキシテトラヒドロピラン、ビニルベンゾエート、ビニルブチレートなどのビニルエーテル類、スチレン、p−クロロスチレン、p−メトキシスチレンなどのスチレン類、アリルアルコール、4−ヒドロキシ−1−ブテンなどの末端エチレン類を使用することができる。
【0306】
本発明のシアノ基含有重合性ポリマーの分子量(Mw)は、3000〜20万が好ましく、更に好ましくは4000〜10万である。
【0307】
本発明のシアノ基含有重合性ポリマーの具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
なお、これらの具体例の重量平均分子量は、いずれも、3000〜100000の範囲である。
【0308】
【化47】

【0309】
【化48】

【0310】
【化49】

【0311】
【化50】

【0312】
【化51】

【0313】
ここで、例えば、前記具体例の化合物2−2−11は、アクリル酸と2−シアノエチルアクリレートを、例えば、N−メチルピロリドンに溶解させ、重合開始剤として、例えば、アゾイソブチロニトリル(AIBN)を用いてラジカル重合を行い、その後、グリシジルメタクリレートをベンジルトリエチルアンモニウムクロライドのような触媒を用い、ターシャリーブチルハイドロキノンのような重合禁止剤を添加した状態で付加反応することで合成することができる。
また、例えば、前記具体例の化合物2−2−19は、以下のモノマーと、p−シアノベンジルアクリレートを、N、N−ジメチルアクリルアミドのような溶媒に溶解させ、アゾイソ酪酸ジメチルのような重合開始剤を用いてラジカル重合を行い、その後、トリエチルアミンのような塩基を用いて脱塩酸を行うことで合成することができる。
【0314】
【化52】

【0315】
本発明におけるシアノ基含有重合性ポリマーの含有量は、組成物全体に対して、2質量%〜50質量%の範囲が好ましく、5質量%〜30質量%の範囲がより好ましい。
【0316】
(無電解めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有する化合物)
本発明においては、前記したモノマー又はマクロマーなどの重合性の二重結合有する化合物と共に、無電解めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有する化合物を用いることができる。無電解めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有する化合物としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基若しくはそれらの塩、水酸基、アミド基、ホスフィン基、イミダゾール基、ピリジン基、シアノ基、若しくはそれらの塩、及びエーテル基などの官能基を有する化合物を挙げることができ、製造特性上特に制限されない。
【0317】
〔表面グラフト重合〕
基材表面に生成されるグラフトポリマー(表面グラフトポリマー)は、一般的に表面グラフト重合と呼ばれる手段を用いて生成される。
グラフト重合とは、高分子化合物鎖上に活性種を与え、これによって重合を開始する別の単量体を更に重合させ、グラフト(接ぎ木)重合体を合成する方法であり、特に活性種を与える高分子化合物が固体表面を形成する時には表面グラフト重合と呼ばれる。
本発明では、上記で説明した、光ラジカル発生剤のパターンを有する基材表面に重合性の二重結合を有する化合物を接触させ、エネルギーを付与することで、光ラジカル発生剤パターンから活性点を発生させ、この活性点と該化合物の重合性基とが反応し、表面グラフト重合反応が引き起こされる。
【0318】
重合性化合物は、基材表面の全面に接触させてもよいし、光ラジカル発生剤を含有する組成物がパターン状に付与された領域を含む基材表面の一部分に接触させてもよい。
【0319】
基材表面に、重合性化合物を接触させる方法としては、基材ごと該重合性化合物を含有する液状の組成物中に浸漬することで行ってもよいが、取り扱い性や製造効率、さらには、本発明を回路形成などに適用する場合における影響を考慮すれば、該重合性化合物を基材表面にそのまま塗布するか、或いは、それを主成分として含有する組成物を塗布して、基材表面に該重合性化合物を含有する層を形成することにより行うことが好ましい。
【0320】
この接触に際しては、ホモポリマーの所望されない生成を抑制する観点から、重合開始能を有する化合物の非存在下で行われることが好ましい。即ち、接触が重合性化合物単体で行われる場合には、当然他の化合物が共存しないことになるが、該重合性化合物を溶剤に溶解するか、分散媒中に分散させてなる組成物を接触させる場合、その組成物中には、重合開始剤などの重合反応に関与しうる他の化合物を含まないことを要する。
【0321】
従って、浸漬法及び塗布法のいずれであっても、重合性化合物を含有する組成物は、好ましくは、主成分として、該重合性化合物及び溶媒又は分散媒のみからなる組成物であり、他の化合物を含む場合であっても、所望により塗布性や面状性などの液体組成物の物性の向上を目的とした界面活性剤などに限ることが好ましい。塗布法を用いる場合でも、塗布後、乾燥により溶剤を除去した後露光を行うことが好ましい。
【0322】
重合性化合物を含有する組成物に使用する溶剤は、組成物の主成分である重合性化合物などが溶解可能ならば特に制限はない。また、溶剤には、更に、界面活性剤を添加してもよい。
使用できる溶剤としては、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテルの如きアルコール系溶剤、酢酸の如き酸、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンの如きケトン系溶剤、ホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンの如きアミド系溶剤、アセトニトリル、プロピロニトリルの如きニトリル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチルの如きエステル系溶剤などが挙げられる。
【0323】
シアノ基含有重合性ポリマーを用いる場合であれば、アミド系、ケトン系、ニトリル系溶剤が好ましく、具体的には、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、N−メチルピロリドンが好ましい。
また、シアノ基含有重合性ポリマーを含有する組成物を塗布する場合は、取り扱い安さから沸点が50〜150℃の溶剤が好ましい。なお、これらの溶剤は単一で使用しても良いし、混合して使用してもよい。
【0324】
必要に応じて溶剤に添加することのできる界面活性剤は、溶剤に溶解するものであればよく、そのような界面活性剤としては、例えば、n−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの如きアニオン性界面活性剤や、n−ドデシルトリメチルアンモニウムクロライドの如きカチオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル(市販品としては、例えば、エマルゲン910、花王(株)製など)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(市販品としては、例えば、商品名「ツイーン20」など)、ポリオキシエチレンラウリルエーテルの如き非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0325】
また、必要に応じて可塑剤を添加することもできる。使用できる可塑剤としては、一般的な可塑剤が使用でき、フタル酸エステル類(ジメチルエステル、ジエチルエステル、ジブチルエステル、ジ−2−エチルヘキシルエステル、ジノルマルオクチルエステル、ジイソノニルエステル、ジノニルエステル、ジイソデシルエステル、ブチルベンジルエステル)、アジピン酸エステル類(ジオクチルエステル、ジイソノニルエステル)、アゼラインサンジオクチル、セバシンサンエステル類(ジブチルエステル、ジオクチルエステル)リン酸トリクレシル、アセチルクエン酸トリブチル、エポキシ化大豆油、トリメリット酸トリオクチル、塩素化パラフィンやジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンのような高沸点溶媒も使用することができる。
【0326】
基材表面に組成物を液状のまま接触させてグラフトポリマー生成を行う場合には、任意に行うことができるが、塗布法により基材表面に組成物を適用する場合の塗布量としては、充分な塗布膜を得る観点からは、固形分換算で0.1〜10g/mが好ましく、特に0.5〜5g/mが好ましい。
【0327】
〔エネルギー付与〕
光ラジカル発生剤パターン表面に活性点を発生させ、グラフトを生成させるためのエネルギー付与方法としては、紫外線の照射や、γ線、電子線などの放射線照射等を用いることができる。例えば、UVランプ、ブラックライトなどによる光照射が可能である。
光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、等がある。また、g線、i線、Deep−UV光も使用される。
エネルギー付与に要する時間としては、目的とするグラフトポリマーの生成量及び光源により異なるが、通常、10秒〜5時間の間である。
【0328】
露光後に溶媒による洗浄、例えば水による洗浄が行われ未反応の二重結合を有する化合物が除去されてグラフトポリマーパターンが形成される。本発明の方法では所望されないホモポリマーの形成がなく、不純物は簡易な洗浄により容易に除去され、露光条件に応じた高精細なグラフトポリマーパターンが形成される。
【0329】
グラフトポリマーパターンの厚みとしては、0.01μm〜2μmの範囲であることが好ましい。
【0330】
このようにして、任意の基材表面に所望のパターンで、基材表面に強固に結合し、且つ、運動性に優れたグラフトポリマーを生成することができる。このようなグラフトポリマーはそれが有する極性官能基などに起因して、種々の機能性材料を付着させることができ、機能性のパターンを有する材料の製造に有用である。
また、このようなグラフトポリマーパターン形成領域は、極性基、或いは無電解めっき触媒(前駆体)との相互作用性基を有することで、後述する無電解めっきを行う場合に優れためっき受容性を有する領域となる。
【0331】
本発明の導電性パターン形成方法は、本発明のグラフトポリマー形成方法を含む方法であり、(a)工程、(b)工程の後、(c)工程に代えて(c’)工程を行い、更に、(d)工程、及び(e)工程を行う。
【0332】
(c)工程の一態様である(c’)工程は、基材表面に、分子内に重合性の二重結合を有する化合物と無電解めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有する化合物とを接触させるか、或いは、分子内に重合性の二重結合及び無電解めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有する化合物を接触させた後、該基材表面にエネルギーを付与して、固定化された光ラジカル発生剤が存在する領域にグラフトポリマーパターンを形成する工程であり、無電解めっき触媒又はその前駆体が相互作用する官能基をもつグラフトポリマーを生成する。
本発明の導電性パターン形成方法においては、(c’)工程に引き続き、グラフトポリマーが生成したパターン状の領域に導電性を付与するための工程である(d)無電解めっき触媒付与工程及び(e)無電解めっき工程を行うことで導電性パターンが形成される。
【0333】
以下、本発明の導電性パターン形成方法における(d)無電解めっき触媒付与工程程及び(e)無電解めっき工程について説明する。
【0334】
<(d)無電解めっき触媒付与工程、(e)無電解めっき工程>
本発明の導電性パターン形成方法における、(d)工程では、グラフトポリマーパターンが形成された領域に無電解めっき触媒又はその前駆体を付与し、(e)工程では、無電解めっきを行い、導電性パターンを形成する。
【0335】
基材表面にグラフトポリマーが形成されると、グラフトポリマーパターンが形成された領域がめっき受容性領域となる。このため、(d)工程では、グラフトポリマーパターンが形成された領域に選択的に無電解めっきを施すことで、導電性パターンを形成する。
【0336】
(d)工程で実施されるめっき処理は、銅めっき、ニッケルめっき等、金属の種類は特に限定されることなく、通常公知の無電解めっきを適用することができる。
無電解めっき処理を施す方法としては、具体的には、グラフトポリマーパターンが形成された領域(グラフトポリマー鎖の存在領域)に、無電解めっき触媒又はその前駆体を付与し、その後、無電解めっきを行い、パターン状に金属膜を形成する方法が挙げられる。
【0337】
−無電解めっき触媒−
(d)工程において用いられる無電解めっき触媒とは、主に0価金属であり、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられる。本発明においては、特に、Pd、Agがその取り扱い性の良さ、触媒能の高さから好ましい。0価金属を前記グラフトパターン上(相互作用性領域)に固定する手法としては、例えば、グラフトパターン上のこれら無電解めっき触媒(前駆体)と相互作用する官能基(相互作用性基)と、相互作用するように荷電を調節した金属コロイドを、相互作用性領域に適用する手法が用いられる。一般に、金属コロイドは、荷電を持った界面活性剤又は荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、金属イオンを還元することにより作製することができる。金属コロイドの電荷は、ここで使用される界面活性剤又は保護剤により調節することができ、このように電荷を調節した金属コロイドを、グラフトパターンが有する相互作用性基と相互作用させることで、グラフトパターン上に選択的に金属コロイド(無電解めっき触媒)を吸着させることができる。
【0338】
−無電解めっき触媒前駆体−
(d)工程において用いられる無電解めっき触媒前駆体とは、化学反応により無電解めっき触媒となりうるものであれば、特に制限なく使用することができる。主には上記無電解めっき触媒で用いた0価金属の金属イオンが用いられる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、還元反応により無電解めっき触媒である0価金属になる。無電解めっき触媒である金属イオンは、基材へ付与した後、無電解めっき浴への浸漬前に、別途還元反応により0価金属に変化させて無電解めっき触媒としてよいし、無電解めっき触媒前駆体のまま無電解めっき浴に浸漬し、無電解めっき浴中の還元剤により金属(無電解めっき触媒)に変化させてもよい。
【0339】
実際、無電解めっき前駆体である金属イオンは、金属塩の状態でグラフトパターンに付与して相互作用させる。使用される金属塩としては、適切な溶媒に溶解して、金属イオンと塩基(陰イオン)とに解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO、MCl、M2/n(SO)、M3/n(PO)(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、例えば、Agイオン、Cuイオン、Alイオン、Niイオン、Coイオン、Feイオン、Pdイオンが挙げられ、Agイオン、Pdイオンが触媒能の点で好ましい。
【0340】
無電解めっき触媒である金属コロイド、或いは、無電解めっき前駆体である金属塩をグラフトパターン上に付与する方法としては、金属コロイドを適当な分散媒に分散、或いは、金属塩を適切な溶媒で溶解し、解離した金属イオンを含む溶液を調製し、その溶液をグラフトパターンが存在する基材表面に塗布するか、或いは、その溶液中にグラフトパターンを有する基材を浸漬すればよい。金属イオンを含有する溶液を接触させることで、前記グラフトパターン形成領域の相互作用性基に、イオン−イオン相互作用、又は、双極性−イオン相互作用を利用して金属イオンを吸着させること、或いは、相互作用性領域に金属イオンを含浸させることができる。これら吸着或いは含浸を十分に行なわせるという観点からは、接触させる溶液の金属イオン濃度、或いは金属塩濃度は1〜50質量%の範囲であることが好ましく、10〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、1分〜24時間程度であることが好ましく、5分〜1時間程度であることがより好ましい。
【0341】
次に、(e)工程により、無電解めっき触媒(前駆体)が付与されたグラフトポリマーパターンが形成された領域に、無電解めっきを行うことで、グラフトポリマーパターン上に該パターンにしたがった高密度の金属膜が形成され、導電性パターンが得られる。形成された金属パターンは、優れた導電性と密着性を発揮する。
【0342】
−無電解めっき−
無電解めっきとは、めっきとして析出させたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる操作のことをいう。
(e)工程における無電解めっきは、例えば、無電解めっき触媒がパターン状に付与された基材を水洗して余分な無電解めっき触媒(金属)を除去した後、無電解めっき浴に浸漬して行なう。使用される無電解めっき浴としては一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
【0343】
また、無電解めっき触媒がパターン状に付与された基材を、無電解めっき触媒前駆体がグラフトパターンに吸着又は含浸した状態で無電解めっき浴に浸漬する場合には、基材を水洗して余分な無電解めっき触媒前駆体(金属塩など)を除去した後、無電解めっき浴に浸漬する。この場合には、無電解めっき浴中において前駆体の還元と、それに引き続いて無電解めっきが行われる。この態様に用いられる無電解めっき浴としても、上記同様、一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
【0344】
一般的な無電解めっき浴の組成としては、1.めっき用の金属イオン、2.還元剤、3.金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が主に含まれている。このめっき浴には、これらに加えて、めっき浴の安定剤など公知の添加物が含まれていてもよい。
無電解めっき浴に用いられる金属の種類としては、銅、すず、鉛、ニッケル、金、パラジウム、ロジウムが知られており、中でも、導電性の観点からは、銅、金が特に好ましい。
【0345】
また、上記金属に合わせて最適な還元剤、添加物がある。例えば、銅の無電解めっきの浴は、銅塩としてCu(SO、還元剤としてHCOH、添加剤として銅イオンの安定剤であるEDTAやロッシェル塩などのキレート剤が含まれている。また、CoNiPの無電解めっきに使用されるめっき浴には、その金属塩として硫酸コバルト、硫酸ニッケル、還元剤として次亜リン酸ナトリウム、錯化剤としてマロン酸ナトリウム、りんご酸ナトリウム、こはく酸ナトリウムが含まれている。また、パラジウムの無電解めっき浴は、金属イオンとして(Pd(NH)Cl、還元剤としてNH、HNNH、安定化剤としてEDTAが含まれている。これらのめっき浴には、上記成分以外の成分が入っていてもよい。
【0346】
このようにして形成される金属膜の膜厚は、めっき浴の金属塩又は金属イオン濃度、めっき浴への浸漬時間、或いは、めっき浴の温度などにより制御することができるが、導電性の観点からは、0.1μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。
また、めっき浴への浸漬時間としては、1分〜3時間程度であることが好ましく、1分〜1時間程度であることがより好ましい。
【0347】
本発明の導電性パターン形成方法は、表示素子における導線の形成に好適の用いることができる。以下、有機EL表示装置を例に挙げて説明する。
【0348】
[有機EL表示装置]
本発明の有機EL表示装置は、本発明の導電性パターン形成方法により形成した導線を備えることを特徴とする。ここで、本発明の導電性パターン形成方法で形成しうる導線としては、パッシブパネル用補助配線、アクティブパネル用TFT引き回し配線、等の導線が挙げられる。
【0349】
本発明の有機EL表示装置の一つの態様は、絶縁基板と、該絶縁基板上に設けられた画素電極配線と、該画素電極配線上に順次積層された有機層及び陰極層と、を少なくとも備えてなり、該画素電極配線に接続する補助配線が本発明の導電性パターン形成方法により形成された態様である。以下、この態様の有機EL表示装置を例に、本発明の有機EL表示装置について図面を参照して説明する。
【0350】
図1は、本発明の有機EL表示装置10の概略構成を示す上面図である。有機EL表示装置10は、絶縁基板12上に、複数の画素電極配線14、有機層22、及び複数の陰極層24がこの順に積層されて構成されている。補助配線20は、本発明の導電性パターン形成方法により形成された配線であり、画素電極配線14に接続して構成される。
図2は、図1中のA−A線に沿った断面図である。
【0351】
本発明においては、光ラジカル発生剤をパターン状に形成するため、図2に示すように、画素電極配線14上の必要な領域のみに、特定組成物から形成される層である光ラジカル重合開始層16を形成しうる。更に、既述したように、光ラジカル発生剤のパターニング方法も簡便である。つまり、レジストを用いた工程やマスク露光・現像工程などのフォトリソ工程を含まず、光ラジカル発生剤を直接パターニングするという簡便なプロセスで、光ラジカル発生剤のパターニングを行うことができる。このため、有機EL表示装置の導電性パターン非形成領域において、光ラジカル発生剤の存在に起因する物性変化などの影響を最小限に低減することが可能となる。
【0352】
光ラジカル発生剤が補助配線20が形成される領域以外に存在すると、画素電極配線14とその上に積層される有機層22等との導通が阻害され、駆動電圧上昇、抵抗率化、低寿命化など素子の性能劣化を招来するおそれがある。また、補助配線20と画素電極配線14との間に光ラジカル発生剤が存在した場合には、画素電極配線14と補助配線20とのコンタクトが不充分とり、コンタクト抵抗を上昇させるおそれがある。
【0353】
一方、本発明においては、光ラジカル発生剤は必要な領域のみに付与されることから、画素電極14とその上に積層される有機層22等の導通は阻害されることはなく、良好な素子性能を発揮しうる。また、補助電極20と画素電極配線14とは、図2中のコンタクト部26が示すように直接接触することから、コンタクト抵抗も減少させることができ、かかる点からも、低駆動電圧、高効率、高寿命な有機EL表示装置を得ることが可能となる。
【0354】
本発明の有機EL表示装置における基材、電極、有機層については、公知の有機EL表示装置における基材、電極、有機層を本発明にも同様に適用することができる。
【実施例】
【0355】
以下、実施例及び比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0356】
[実施例1]
<光ラジカル発生剤パターン形成工程>
光ラジカル発生剤として、光ラジカル発生基を有するシランカップリング剤(前記例示化合物6)を使用した。溶剤としてキシレンを用いて希釈し、25℃におけるインク粘度を15mPa・sに調整して特定組成物(1)とした。インク粘度はRE80型粘度計(商品名、東機産業(株)製)にて測定した。
【0357】
ガラス基板の上に膜厚約200nmのITO膜をCVD法で設けた基板(ITO/ガラス基板)上に、上記特定組成物(1)をインクジェット記録装置を用いてパターン状に付与した。本実施例では、特開2007−2098号公報の段落番号[0168]〜[0190]に記載のインクジェット記録装置を使用した。その際、ピエゾ方式のヘッドを用いて、ヘッド及び特定組成物(1)の温度を25℃±1℃にして打滴を行った。ヘッドは25.4mmあたり150のノズル密度で、318ノズルを有しており、これを2個ノズル列方向にノズル間隔の1/2ずらして固定することにより、メディア上にはノズル配列方向に25.4mmあたり300滴打滴される。
【0358】
ヘッドからの特定組成物(1)の吐出は、ヘッドに付与されるピエゾ駆動信号により制御され、一滴あたり6〜42plの吐出が可能であって、本実施例ではヘッドの下1mmの位置でメディアが搬送されながらヘッドより打滴される。搬送速度は50〜200mm/sの範囲で設定可能である。またピエゾ駆動周波数は最大4.6kHzまでが可能であって、これらの設定により打滴量を制御することができる。
【0359】
本実施例では、搬送速度90mm/s、駆動周波数1.9kHzとすることにより、24plに特定組成物(1)の吐出量を制御して、特定組成物(1)がパターン状に付与された基板を得た。
【0360】
なお、実施例1における特定組成物(1)がパターン状に付与された基板としては、「L/S=5/25」、「L/S=10/20」、及び「L/S=10/10」の各L/Sを有する導電性パターンを形成しうる3態様の基板を作製した。(後述する実施例2〜13も同様である。)ここで、L/SにおけるLは、無電解めっきを行った後における、導電性パターンの細線幅を表し、Sは形成された導電性パターン間のスペース幅を表す(単位はμm)。
【0361】
<光ラジカル発生剤固定化工程>
特定組成物(1)がパターン状に付与された基板を、150℃で10分加熱し、光ラジカル発生剤を基板に固定化した。
【0362】
<グラフトポリマーパターン形成工程>
(1)基板と二重結合を有する高分子化合物との接触
上記のようにして得られた基板表面に、二重結合を有する化合物として、アクリル基とカルボキシル基とを有し、且つ側鎖に重合性基を持つ親水性ポリマー(P−1、下記合成例により得られた化合物)を含む水溶液(下記の塗布液組成物1)を、300rpmで5秒、その後750rpmで20秒の条件でスピンコートした。塗布後、80℃で5分間乾燥した。
【0363】
<塗布液組成物1>
・側鎖に重合性基を持つ親水性ポリマー(P−1) 3.1g
・水 24.6g
・1−メトキシ−2−プロパノール 12.3g
【0364】
(側鎖に重合性基を有する親水性ポリマー(P−1)の合成)
ポリアクリル酸(平均分子量25、000)18gを、ジメチルアセトアミド(DMAC)300gに溶解し、そこに、ハイドロキノン0.41gと、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート19.4gと、ジブチルチンジラウレート0.25gと、を添加し、65℃、4時間反応させた。得られたポリマーの酸価は7.02meq/gであった。その後、1mol/l(1N)の水酸化ナトリウム水溶液でカルボキシル基を中和し、酢酸エチルを加えポリマーを沈殿させ、よく洗浄して、側鎖に重合性基を持つ親水性ポリマー18.4g(P−1)を得た。
【0365】
(2)露光によるグラフトポリマーの生成
塗布液組成物1が塗布された基板表面に、以下の条件で、その全面にエネルギーを付与(光照射)した後、基板をイオン交換水でよく洗浄した。その後、基板を5質量%重曹水に5分間浸漬した後、水洗し、ITO/ガラス基板にグラフトポリマーがパターン状に生成した材料を得た。
エネルギー付与は、アルゴン雰囲気下で、1500W高圧水銀灯(UVX−02516S1LP01,ウシオ電気(株)製、254nmにおける光強度38mW/cm)を使用し、1分間基板の全面に照射することにより実施した。
【0366】
<導電性パターン形成工程>
(無電解めっき)
得られた基板を、硝酸銀(和光純薬製)1質量%の水溶液に1分浸漬した後、蒸留水で洗浄した。その後、下記組成の無電解めっき浴にて、40℃で50分間無電解めっきを行った。
【0367】
(無電解めっき浴の組成)
・蒸留水 86mL
・ATSアドカッパーIW−A 5ml
・ATSアドカッパーIW−M 8ml
・ATSアドカッパーIW−C 1ml
・NaOH 0.22g
・2,2’−ビピリジル 0.2mg
無電解めっき浴のpH:12.67
【0368】
[実施例2]
<光ラジカル発生剤パターン形成工程>
光ラジカル発生剤として、基材結合部位としてエポキシ基を有する高分子光ラジカル発生剤(前記例示化合物14、x=90、y=10)を使用した。この光ラジカル発生剤を、溶剤としてメトキシプロパノールを用いて希釈し、25℃における粘度を17mPa・sに調整して特定組成物(2)とした。粘度はRE80型粘度計(商品名、東機産業(株)製)にて測定した。
特定組成物(1)に代えて特定組成物(2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、インクジェット記録装置により特定組成物(2)を基板上に付与し、特定組成物(2)がパターン状に付与された基板を得た。
【0369】
<光ラジカル発生剤固定化工程>
特定組成物(1)がパターン状に付与された基板を、170℃で30分加熱し、光ラジカル発生剤を基板に固定化した。
【0370】
<グラフトポリマーパターン形成工程、導電性パターン形成工程>
グラフトポリマーパターン形成工程、及び導電性パターン形成工程は、実施例1と同様にして実施し、実施例2の導電性パターンを得た。
【0371】
[実施例3]
<光ラジカル発生剤パターン形成工程>
光ラジカル発生剤を含有する組成物として、以下の熱硬化性エポキシ樹脂組成物を使用した。該熱硬化性エポキシ樹脂組成物の25℃における粘度は、16mPa・sであった。粘度はRE80型粘度計(商品名、東機産業(株)製)にて測定した。
特定組成物(1)に代えて熱硬化性エポキシ樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして、インクジェット記録装置により熱硬化性エポキシ樹脂組成物を基板上に付与し、熱硬化性エポキシ樹脂組成物がパターン状に付与された基板を得た。
【0372】
(熱硬化性エポキシ樹脂組成物)
(A)エポキシ樹脂
(ジャパンエポキシレジン(株)製、
エピコート806(jER806)、エポキシ当量167) 0.34g
(B)アミノトリアジンノボラック樹脂(大日本インキ化学工業(株)製
フェノライトLA7052、不揮発分62質量%、
不揮発分のフェノール性水酸基当量120) 0.4g
(C)フェノキシ樹脂(不揮発分40質量%、東都化成(株)、FX293)
1g
(D)2−エチル−4−メチルイミダゾール(和光純薬工業製) 0.005g
(E)シクロヘキサノン(和光純薬工業製) 19g
(F)光ラジカル発生剤
(前記例示化合物14、x=10、y=90) 0.1g
【0373】
<光ラジカル発生剤固定化工程>
熱硬化性エポキシ樹脂組成物がパターン状に付与された基板を、170℃で30分加熱し、光ラジカル発生剤を基板に固定化した。
【0374】
<グラフトポリマーパターン形成工程、導電性パターン形成工程>
グラフトポリマーパターン形成工程、及び導電性パターン形成工程は、実施例1と同様にして実施し、実施例3の導電性パターンを得た。
【0375】
[実施例4]
<光ラジカル発生剤パターン形成工程>
光ラジカル発生剤を含有する組成物として、以下の光硬化性エポキシ樹脂組成物を使用した。該光硬化性エポキシ樹脂組成物の25℃における粘度は、10mPa・sであった。粘度はRE80型粘度計(商品名、東機産業(株)製)にて測定した。
特定組成物(1)に代えて光硬化性エポキシ樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして、インクジェット記録装置により光硬化性エポキシ樹脂組成物を基板上に付与し、光硬化性エポキシ樹脂組成物がパターン状に付与された基板を得た。
【0376】
(光硬化性エポキシ樹脂組成物)
(A)モノマーA:セロキサイド3000 40g
(商品名、ダイセル・ユーシービー製)
(B)モノマーB:ビス〔1−エチル(3−オキセタニル)〕メチルエーテル
30g
(アロンオキセタンOXT−221、商品名、東亜合成製)
(C)モノマー(前記例示化合物I−1) 30g
(D)光カチオン重合開始剤:(4−イソブチルフェニル)4−メチルフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファートとプロピレンカーボネートとの混合物(Irgacure 250、商品名、チバスペシャリティーケミカルズ製)
6.0g
(E)増感剤:9,10−ジブトキシアントラセン 3.0g
(F)界面活性剤:BYK307(商品名、BYK Chemie社製)
0.2g
(G)光ラジカル発生剤(前記例示化合物27) 5.0g
【0377】
<光ラジカル発生剤固定化工程>
光硬化性エポキシ樹脂組成物が付与された基板を、露光部に搬送し、紫外発光ダイオード(UV−LED)により露光した。本実施例ではUV−LEDは日亜化学製NCCU033(商品名)を用いた。本LEDは1チップから波長365nmの紫外光を出力するものであって、約500mAの電流を通電することにより、チップから約100mWの光が発光される。これを7mm間隔に複数個配列し、メディア表面で0.3W/cm2のパワーが得られる。打滴後露光されるまでの時間、および露光時間は基板の搬送速度およびヘッドとLEDの搬送方向の距離により変更可能である。本実施例では、光硬化性エポキシ樹脂組成物の付与(着弾)後、約0.5秒後に露光した。
基板との距離および搬送速度の設定に応じて、基板上の露光エネルギーを0.01〜15J/cm2の間で調整することができる。本実施例では搬送速度により露光エネルギーを調整し、30mJ/cm2の露光エネルギーで光照射した。
【0378】
<グラフトポリマーパターン形成工程、導電性パターン形成工程>
グラフトポリマーパターン形成工程、及び導電性パターン形成工程は、実施例1と同様にして実施し、実施例4の導電性パターンを得た。
【0379】
[実施例5]
実施例1における光ラジカル発生剤パターン形成工程の前に、ITO/ガラス基板をUVオゾンクリーナーで10分間処理(基材活性化処理)した以外は、実施例1と同様にして実施例5の導電性パターンを得た。
【0380】
[実施例6]
実施例2における光ラジカル発生剤パターン形成工程の前に、ITO/ガラス基板をUVオゾンクリーナーで10分間処理(基材活性化処理)した以外は、実施例2と同様にして実施例6の導電性パターンを得た。
【0381】
[実施例7]
実施例3における光ラジカル発生剤パターン形成工程の前に、ITO/ガラス基板をUVオゾンクリーナーで10分間処理(基材活性化処理)した以外は、実施例3と同様にして実施例7の導電性パターンを得た。
【0382】
[実施例8]
実施例4における光ラジカル発生剤パターン形成工程の前に、ITO/ガラス基板をUVオゾンクリーナーで10分間処理(基材活性化処理)した以外は、実施例4と同様にして実施例8の導電性パターンを得た。
【0383】
[実施例9]
実施例8において用いたITO/ガラス基板の代わりに、膜厚約200nmのSiO膜をCVD法で設けたガラス基板(SiO2/ガラス基板)を用いた以外は、実施例8と同様にして実施例9の導電性パターンを得た。
【0384】
[実施例10]
実施例5において用いたITO/ガラス基板の代わりに、膜厚約200nmのSiON膜を有するPEN基板(ポリエチレンナフタレート:帝人社製テオネックスQ65FA)上にITO膜を設けた基板(ITO/SiON/PEN基板)を用いた以外は、実施例5と同様にして実施例10の導電性パターンを得た。
【0385】
[実施例11]
実施例6において用いたITO/ガラス基板の代わりに、膜厚約200nmのSiON膜を有するPEN基板(ポリエチレンナフタレート:帝人社製テオネックスQ65FA)上にITO膜を設けた基板(ITO/SiON/PEN基板)を用いた外は、実施例6と同様にして実施例11の導電性パターンを得た。
【0386】
[実施例12]
実施例7において用いたITO/ガラス基板の代わりに、膜厚約200nmのSiON膜を有するPEN基板(ポリエチレンナフタレート:帝人社製テオネックスQ65FA)上にITO膜を設けた基板(ITO/SiON/PEN基板)を用いた外は、実施例7と同様にして実施例12の導電性パターンを得た。
【0387】
[実施例13]
実施例8において用いたITO/ガラス基板の代わりに、膜厚約200nmのSiON膜を有するPEN基板(ポリエチレンナフタレート:帝人社製テオネックスQ65FA)上にITO膜を設けた基板(ITO/SiON/PEN基板)を用いた外は、実施例8と同様にして実施例13の導電性パターンを得た。
【0388】
実施例1から実施例13に使用した基板の平均粗さ(Rz)を原子間力顕微鏡(AFM)で測定したところ、いずれも0.1μm以下であった。
【0389】
以上のようにして得られた実施例1〜実施例13の導電性パターンについて、、剥離強度、膜厚、及び表面抵抗値を測定した。
【0390】
1.剥離強度
剥離強度は、JIS K5400(1990年版)に準拠して、碁盤目テープ剥離試験を行い、評価した。その結果、いずれの導電性パターンも全く剥離することはなかった。
【0391】
2.膜厚
膜厚は、原子間力顕微鏡(AFM)で測定した。
【0392】
3.表面抵抗値
表面抵抗値は、JIS K7194(1994年版)に準拠し、表面抵抗計(ロレスタ−EP、型番MCP−T360、三菱化学社(株)社製)を用いて四探針法により測定した。なお、表面抵抗値の測定は、「L/S=5/25」、「L/S=10/20」、及び「L/S=10/10」の3態様の各導電性パターンの総てについて行った。測定結果を表1に示す。
【0393】
【表1】

【0394】
表1に示す結果から明らかなように、実施例1〜実施例13の導電性パターン形成方法により、表面平滑性の高い基板上に、剥離強度及び導電性に優れた導電性パターンを形成できることが確認された。なお、膜厚、表面抵抗値ともに、導電性パターンのL/Sに関わらず同一の値を示した。
【0395】
[実施例14]
以下に示すように、実施例14の有機EL表示装置を作製した。なお、以下の説明における有機EL表示装置の各構成要素の符号は、図1又は図2に示される各符号にそれぞれ対応するものである。
【0396】
<画素電極配線付き基板の作製>
膜厚約200nmのSiONを有するPEN基板(ポリエチレンナフタレート:帝人社製テオネックスQ65FA)上に、公知の技術を用いてITO(150nm)からなる画素電極配線の形成・パターニングを行った。具体的には、(1)スパッタITO成膜→(2)レジスト塗布→(3)マスク露光→(4)現像→(5)ウエットエッチング→(6)レジスト剥離、以上の6工程を行うことにより、所定の位置にITOからなる画素電極配線を形成してなる画素電極配線付き基板を作製した。
【0397】
<補助配線の形成>
画素電極配線付き基板上に、実施例8と同様にして、基材活性化処理を行った後、本発明の導電性パターン形成方法の各工程を実施することにより、図2に示す如き断面を有する補助配線を形成した。具体的に、絶縁基板12上に画素配線電極14を形成し、この絶縁基板12に対して基材活性化処理を行った後、該画素配線電極14表面の所定領域にのみ、硬化性エポキシ樹脂組成物からなる光重合開始層16を形成し、その表面に無電解めっき触媒等との相互作用性基を有するグラフトポリマー層18を形成し、そこに無電解めっきを行うことにより、補助配線20を形成した。
なお、図2において、形成された補助配線20の側端部と画素配線電極14とが接する領域が両者のコンタクト部26となる
【0398】
<有機EL素子の作製>
図2に示すように、補助配線20を形成した画素電極配線14付き基板12上の画素領域部に、2TNATA(膜厚140nm)からなる正孔注入層、NPD(膜厚10nm)からなる正孔輸送層、t(na)py 1質量%をドープしたAlq(膜厚30nm)からなる発光層、Alq(膜厚20nm)からなる電子輸送層を、順次シャドウマスクを用いて真空蒸着して有機層22を形成した。さらに、有機層22上に、LiF(膜厚0.5nm)からなる電子注入層(不図示)、及びAl(膜厚200nm)からなる陰極24をシャドウマスクにて真空蒸着により形成した。
図2において、画素配線電極14表面に有機層22及び陰極24が積層されてなる領域が有機EL素子における画素領域となる。
【0399】
<封止>
最後に、有機層成膜エリアの全体を覆うように封止用フイルムをラミネートすることにより、有機EL素子の封止を行った。
以上により、図1に示すような構成を有する有機EL表示装置10を作製した。
この有機EL表示装置は、良好な緑発光の表示特性を示した。また、有機EL表示装置の駆動電圧は14Vであった。。
【図面の簡単な説明】
【0400】
【図1】本発明の有機EL表示装置の一態様を示す概略構成図である。
【図2】図1中のA−A線に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0401】
10 有機EL表示装置
12 絶縁基板
14 画素電極配線
20 補助配線
22 有機層
24 陰極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基材上に光ラジカル発生剤を含有する組成物をパターン状に直接付与する工程、
(b)前記光ラジカル発生剤を基材に固定化する工程、及び、
(c)固定化された前記光ラジカル発生剤を有する基材表面に、重合性の二重結合を有する化合物を接触させた後、該基材表面にエネルギーを付与して、固定化された光ラジカル発生剤が存在する領域にグラフトポリマーパターンを形成する工程、
を有することを特徴とするグラフトポリマーパターン形成方法。
【請求項2】
前記(a)基材上に光ラジカル発生剤を含有する組成物をパターン状に直接付与する工程の前に、基材表面を活性化する処理を行うことを特徴とする請求項1に記載のグラフトポリマーパターン形成方法。
【請求項3】
前記光ラジカル発生剤が、分子内に光ラジカル発生基を有するシランカップリング剤であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のグラフトポリマーパターン形成方法。
【請求項4】
前記光ラジカル発生剤が、分子内に基材結合基と光ラジカル発生基とを有する高分子光ラジカル発生剤であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のグラフトポリマーパターン形成方法。
【請求項5】
前記光ラジカル発生剤を含有する組成物が、熱硬化性エポキシ樹脂組成物であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のグラフトポリマーパターン形成方法。
【請求項6】
前記光ラジカル発生剤を含有する組成物が、光硬化性エポキシ樹脂組成物であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のグラフトポリマーパターン形成方法。
【請求項7】
前記光ラジカル発生剤を含有する組成物の25℃での粘度が3mPa・s以上30mPa・s以下であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のグラフトポリマーパターン形成方法。
【請求項8】
前記(a)工程が、基材上に光ラジカル発生剤を含有する組成物をインクジェット装置を用いてパターン状に直接付与する工程であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のグラフトポリマーパターン形成方法。
【請求項9】
(a)基材上に光ラジカル発生剤を含有する組成物をパターン状に直接付与する工程、
(b)光ラジカル発生剤を基材に固定化する工程、
(c’)固定化された前記光ラジカル発生剤を有する基材表面に、分子内に重合性の二重結合を有する化合物と無電解めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有する化合物とを接触させるか、或いは、分子内に重合性の二重結合及び無電解めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有する化合物を接触させた後、該基材表面にエネルギーを付与して、固定化された光ラジカル発生剤が存在する領域にグラフトポリマーパターンを形成する工程、
(d)グラフトポリマーパターンが形成された領域に無電解めっき触媒又はその前駆体を付与する工程、及び、
(e)無電解めっきを行い、グラフトポリマーパターンが形成された領域に導電性パターンを形成する工程、
を有することを特徴とする導電性パターン形成方法。
【請求項10】
前記(a)工程において、基材上に光ラジカル発生剤を含有する組成物をパターン状に直接付与する前に、基材表面を活性化する処理を行うことを特徴とする請求項8に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項11】
前記光ラジカル発生剤が、分子内に光ラジカル発生基を有するシランカップリング剤であることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項12】
前記光ラジカル発生剤が、分子内に基板結合基と光ラジカル発生基とを有する高分子光ラジカル発生剤であることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項13】
前記光ラジカル発生剤を含有する組成物が、熱硬化性エポキシ樹脂組成物であることを特徴とする請求項9から請求項12のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項14】
前記光ラジカル発生剤を含有する組成物が、光硬化性エポキシ樹脂組成物であることを特徴とする請求項9から請求項12のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項15】
前記光ラジカル発生剤を含有する組成物の25℃での粘度が3mPa・s以上30mPa・s以下であることを特徴とする請求項9から請求項14のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項16】
前記(a)工程が、基材上に光ラジカル発生剤を含有する組成物をインクジェット装置を用いてパターン状に直接付与する工程であることを特徴とする請求項9から請求項15のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項17】
請求項9から請求項16のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法により形成した導線を備えることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項18】
絶縁基板と、該絶縁基板上に設けられた画素電極配線と、該画素電極配線上に順次積層された有機層及び陰極層と、を少なくとも備えてなり、該画素電極配線に接続する補助配線が請求項9から請求項17のいずれか1項に記載の導電性パターン形成方法により形成された補助配線であることを特徴とする有機EL表示装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−257892(P2008−257892A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−95601(P2007−95601)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】