説明

シリコン前駆体の製造方法、シリコンの製造方法、及び電子デバイスの製造方法

【課題】P型ドープシリコン前駆体を効率よく生成する。
【解決手段】シクロペンタシラン溶液11に、ドーパントをラジカル化するための第1の波長の光と、シクロペンタシランをラジカル化するための第2の波長の光を含む紫外線15を高圧水銀ランプ14から照射し、同時にドーパントガス16としてのジボランガスをシクロペンタシラン溶液11に供給することにより、シクロペンタシランの重合体にドーパントが結合したP型ドープシリコン前駆体を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン前駆体の製造方法、シリコンの製造方法、及び電子デバイスの製造方法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体用シリコンの製造方法としては、CZ法、FZ法等の引き上げ法や、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等の真空プロセスが知られている。これらの方法は大掛かりな装置が必要であり、また、フォトリソグラフィーによりシリコン膜の不要部分を除去するため、原料の使用効率が悪かった。また、CZ法、FZ法等で製造される半導体用シリコンにドーパントとしての不純物を添加する場合は、溶解したシリコン中に直接添加する方法がとられている。また、CVD法で作成したシリコン膜に対しては、熱拡散法やイオン注入法等の不純物拡散が行なわれている。これらの方法は、大掛かりな専用装置が必要であり、また、ドーピング制御に熟練した技術が必要とされる。
【0003】
これに対し、液体半導体材料(シリコン前駆体液)を印刷技術等で基板上に塗布して焼成することで、シリコン膜を形成する方法では、CVDのような大掛かりな装置が不要である。また、液体半導体材料の塗布でパターニングできるため、フォトリソグラフィーが不要であり、原材料の使用効率が良い。
【0004】
特許文献1には、常圧下で、塗布法により、基体上に、均一な燐ドープシリコン導電膜を形成する方法およびそのためのリン原子含有高次シラン化合物の製造法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−284639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、P型のドープシリコン前駆体を生成する際に用いるP型のドープ材料は、一般的に固体、液体の状態では非常に安定性が高く、シラン化合物の重合体に結合させるためには、高温または高エネルギー条件下での長時間の反応が必要となる。そのような条件での反応を行うと、シラン化合物が揮発したり、アモルファス化したりしてしまうため効率よくドープシリコン前駆体を生成することができない。
【0007】
そこで、本発明に係る態様の1つは、効率よくドープシリコン前駆体を生成するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るシリコン前駆体の製造方法は、シラン化合物を含む溶液に、光を照射しながらドーパントとなる元素を含むガスを供給することにより、シラン化合物の重合体にドーパントが結合したシリコン前駆体を生成する。
上記構成によれば、光の照射によってドーパントとなる元素を含むガスとシラン化合物を活性化することにより、効率よくシリコン前駆体を生成することができる。また、高温、高エネルギー条件下での長時間の反応を行わなくてよいため、シラン化合物が揮発したり、アモルファス化したりしてしまうことを防止できる。
【0009】
本発明に係るシリコン前駆体の製造方法は、シラン化合物を含む溶液に、ドーパントとなる元素を含むガスを供給すると共に溶液に光を照射し、シランラジカルとドーパントとなる元素のラジカルを発生させる工程と、シランラジカルが重合し、さらにシランラジカルとドーパントとなる元素を含むガスのラジカルが反応することによりシランポリマーにドーパントが結合したシリコン前駆体を生成する工程と、を含むものである。
上記構成によれば、光の照射によってドーパントとなる元素を含むガスとシラン化合物を活性化することにより、効率よくシリコン前駆体を生成することができる。また、高温、高エネルギー条件下での長時間の反応を行わなくてよいため、シラン化合物が揮発したり、アモルファス化したりしてしまうことを防止できる。
【0010】
また、ドーパントをラジカル化するための第1の波長の光と、シラン化合物をラジカル化するための第2の波長の光を同時に照射することが望ましい。
これにより、ドーパントとなる元素を含むガスとシラン化合物を確実に活性化し、効率よくシリコン前駆体を生成することができる。
【0011】
また、ドーパントとなる元素を含むガスは、常温常圧で気体である第13族元素の化合物を含むことが望ましい。
これにより、高温、高圧の条件下で反応を行う必要がなく、シラン化合物の揮発やアモルファス化を防止できる。
【0012】
また、ドーパントとなる元素を含むガスの総供給量は、ドーパントとなる元素の原子数が、シラン化合物に含まれるケイ素原子と反応するのに必要な原子数の1倍〜10倍となる量であることが望ましい。
これにより、原料を無駄にせず効率よくシリコン前駆体を生成することができる。
【0013】
本発明に係るシリコンの製造方法は、シラン化合物を含む溶液に、光を照射しながらドーパントとなる元素を含むガスを供給することにより、シラン化合物の重合体にドーパントが結合したシリコン前駆体を生成する第1工程と、シリコン前駆体を基板に塗布し、焼成することによりドーパントを含むシリコンを形成する第2工程と、を有する。
これにより、大掛かりな専用装置が必要なく、簡易な方法により、効率よくシリコンを形成することができる。
【0014】
本発明に係る電子デバイスの製造方法は、シラン化合物を含む溶液に、光を照射しながらドーパントとなる元素を含むガスを供給することにより、シラン化合物の重合体にドーパントが結合したシリコン前駆体を生成する第1工程と、シリコン前駆体を基板に塗布し、焼成することによりドーパントを含むシリコンを形成する第2工程と、を有する。
これにより、大掛かりな専用装置が必要なく、簡易な方法により、効率よく電子デバイスを製造することができる。電子デバイスは、例えば太陽電池や薄膜トランジスタ(TFT)などである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の本実施の形態によるドープシリコン前駆体の製造工程を模式的に示す図である。
【図2】P型ドープシリコン前駆体ポリマーの構造の例を示す図である。
【図3】本発明の本実施の形態によるドープシリコン前駆体の製造方法の例を模式的に示す図である。
【図4】本発明の本実施の形態によるドープシリコン前駆体の製造方法の例を模式的に示す図である。
【図5】本発明の本実施の形態によるドープシリコン前駆体の製造方法の例を模式的に示す図である。
【図6】本発明による電子デバイスの一例であるPIN型シリコン薄膜太陽電池の製造工程を模式的に示す断面図である。
【図7】本発明による電子デバイスの一例であるHIT型太陽電池の構造を模式的に示す断面図である。
【図8】本発明による電子デバイスの一例であるpn接合型太陽電池の構造を模式的に示す断面図である。
【図9】本発明による電子デバイスの一例である薄膜トランジスタの製造工程を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
実施の形態
[ドープシリコン前駆体の製造方法]
「前駆体」とは、特定物質を得るための前段階の物質を言い、ここでは、シリコン膜を得るための液体シリコン材料をいうものとする。具体的には、例えば、シクロペンタシラン(Si510)に紫外線を照射するなどして重合させたポリシランを有機溶媒に分散させた液体を挙げることができる。
【0017】
本実施の形態では、ドーパントガス(ドーパントとなる元素を含むガス)、シラン化合物、及びドープシリコン前駆体を使用する環境は、窒素1ppm以下、水分1ppm以下に制御されている。
【0018】
図1は、本実施の形態によるドープシリコン前駆体の製造工程を模式的に示す図である。
まず、図1(A)に示すように、ガラス容器10に、シクロペンタシラン(シラン化合物)溶液11を10mlとテフロン(登録商標)製の攪拌子12を入れ、ガラス容器10をマグネティックスターラー13上に設置する。
【0019】
次に、図1(B)に示すように、ガラス容器10内のシクロペンタシラン溶液11に、ガスライン17を通してドーパントガス16を供給し、同時に高圧水銀ランプ14から紫外線15を照射する。この時、ガラス容器10内のシクロペンタシラン溶液11を、マグネティックスターラー13で渦が生じるぐらい激しく攪拌する。ガラス容器10は、密閉してもよいし、開放したままでもよい。ガスライン17は、例えば石英ガラスで形成することができる。
【0020】
ドーパントガス16は、例えばジボラン(B26)ガスとすることができる。ガスの流量は、フローメーター18を用いて、例えば、0.005ml/minとすることができる。
【0021】
高圧水銀ランプ14からは、195nmの波長の光(第1の波長の光)と、400nmの波長の光(第2の波長の光)を含む光を照射する。また、照射光の強度は、1mW/cm2以上6000mW/cm2以下である。ジボランガスは195nm以下の紫外線を照射することにより、ホウ素ラジカルとなる。シクロペンタシランは200〜450nm以下の紫外線を照射することによりシランラジカルとなり、開環重合を開始する。発生したシランラジカルとホウ素ラジカルが反応することにより、シランポリマーにホウ素が結合し、P型ドープシリコン前駆体ポリマー(ドープシリコン前駆体)が生成される。
【0022】
このように、ドーパントガス16の供給および紫外線15の照射の開始と同時に、シクロペンタシランの重合反応が開始する。この時、シクロペンタシラン溶液11を攪拌することにより、重合反応を溶液内で均一にすることができる。
【0023】
なお、ドーパントガス16がシクロペンタシランの量に対して多量に供給されている場合は、195nmの波長の光の照射強度は弱めでもよい。これは、光のエネルギーがドーパント(ジボラン)に伝わる確率が高いためである。一方、ドーパントガス16の量がシクロペンタシランに対して少量の場合は、光のエネルギーがシクロペンタシランに遮られてドーパントに十分に伝わらない可能性があるため、195nmの波長の光の照射強度は強くすると良い。
【0024】
また、ドーパントガス16の供給量については、供給開始からしばらくの間は未反応のシクロペンタシランが多いので、ドーパントガス16の供給量を多くして、シランポリマーとホウ素の結合反応が効率的に行われるようにすることが望ましい。さらに、この段階では、ドーパントガス16を活性化するための195nmの光の照射強度を強めにし、ドーパントガス16の活性化を促進することにより、反応効率をより高めることができる。一方、P型ドープシリコン前駆体ポリマーの生成がある程度進んだら、活性化されたシクロペンタシランの量が少なくなっているため、ドーパントガス16の供給量を少なくすることが望ましい。ドーパントガス16の総供給量は、ドーパントガス16に含まれるホウ素原子数がシクロペンタシラン溶液11に含まれるケイ素原子と反応するのに必要な原子数の1倍〜10倍となる量にすることにより、原料を無駄にせず効率よくP型ドープシリコン前駆体を生成することができる。
【0025】
紫外線15の照射とドーパントガス16の供給を約30分間行うと、シクロペンタシラン溶液11内のほぼすべてのシクロペンタシランが重合してP型ドープシリコン前駆体ポリマーとなる。P型ドープシリコン前駆体ポリマーは、図2に示す化合物1001〜1006のような構造を有する。なお、図中、X,Yは整数、またはX=2n、Y=2n(nは整数)である。
【0026】
P型ドープシリコン前駆体ポリマー中のドーパントの量は、ポリマー中に含まれるドーパント原子(ここではホウ素原子。)の数が、ポリマーに含まれるケイ素原子の数に対して0.0001%以上10%以下であることが望ましい。
【0027】
以上のようにして生成したP型ドープシリコン前駆体ポリマーをトルエンに10重量%になるように溶解し、P型ドープシリコン前駆体溶液を得る。
【0028】
なお、シラン化合物としては、シクロペンタシラン以外の、他のケイ素化合物の重合体を用いても良い。ケイ素化合物としては、Sinmで表されるケイ素化合物を用いることができる。m=2n+2である化合物の具体例としては、トリシラン、テトラシラン、ペンタシラン、ヘキサシラン、ヘプタシランなどの水素化シラン、またこれらの水素原子の一部またはすべてをハロゲン原子に置換したものが挙げられる。m=2nである具体例としては、シクロトリシラン、シクロテトラシラン、上述のシクロペンタシラン、シリルシクロペンタシラン、シクロヘキサシラン、シリルシクロヘキサシラン、シクロヘプタシラン、などの一個の環系を有する水素化ケイ素化合物およびこれらの水素原子の一部またはすべてをハロゲン原子に置換したヘキサクロルシクロトリシラン、トリクロルシクロトリシラン、オクタクロルシクロテトラシラン、テトラクロルシクロテトラシラン、デカクロルシクロペンタシラン、ペンタクロルシクロペンタシラン、ドデカクロルシクロヘキサシラン、ヘキサクロルシクロヘキサシラン、テトラデカクロルシクロヘプタシラン、ヘプタクロルシクロヘプタシラン、ヘキサブロモシクロトリシラン、トリブロモシクロトリシラン、ペンタブロモシクロトリシラン、テトラブロモシクロトリシラン、オクタブロモシクロテトラシラン、テトラブロモシクロテトラシラン、デカブロモシクロペンタシラン、ペンタブロモシクロペンタシラン、ドデカブロモシクロヘキサシラン、ヘキサブロモシクロヘキサシラン、テトラデカブロモシクロヘプタシラン、ヘプタブロモシクロヘプタシランなどのハロゲン化環状ケイ素化合物が挙げられる。m=2n−2である化合物の具体例としては、1、1'−ビスシクロブタシラン、1、1'−ビスシクロペンタシラン、1、1'−ビスシクロヘキサシラン、1、1'−ビスシクロヘプタシラン、1、1'−シクロブタシリルシクロペンタシラン、1、1'−シクロブタシリルシクロヘキサシラン、1、1'−シクロブタシリルシクロヘプタシラン、1、1'−シクロペンタシリルシクロヘキサシラン、1、1'−シクロペンタシリルシクロヘプタシラン、1、1'−シクロヘキサシリルシクロヘプタシラン、スピロ[2、2]ペンタシラン、スピロ[3、3]ヘプタタシラン、スピロ[4、4]ノナシラン、スピロ[4、5]デカシラン、スピロ[4、6]ウンデカシラン、スピロ[5、5]ウンデカシラン、スピロ[5、6]ドデカシラン、スピロ[6、6]トリデカシランなどの2個の環系を有する水素化ケイ素化合物およびこれらの水素原子の一部またはすべてをSiH3基やハロゲン原子に置換したケイ素化合物が挙げられる。また、m=nである化合物や、これらの水素原子の一部またはすべてを部分的にSiH3基やハロゲン原子に置換したケイ素化合物、また、一般式Siabcで表わされるケイ素化合物を用いてもよい。これらの化合物は2種以上を混合して使用することができる。また、重合に際しては、上記紫外線の他、熱や他のエネルギー線を用いてもよい。
【0029】
また、ドープシリコン前駆体ポリマーを溶かす溶媒としては、トルエン以外にも、ケイ素化合物を溶解するものであれば特に限定されない。具体例として、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカン、ジシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、デュレン、インデン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、スクワランなどの炭化水素系溶媒の他、ジプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系溶媒、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、クロロホルムなどの極性溶媒が挙げられる。また、Sinmで表される化合物で、m=2n+2(mは3以上の整数)のものが挙げられる。具体例はトリシラン、テトラシラン、ペンタシランなどである。また、Sinmで表され、m=2n(mは3以上の整数)の環状シラン化合物が挙げられる。具体例としては、シクロトリシラン、シクロテトラシラン、シクロペンタシランなど液体の低級シラン化合物を挙げることができる。これらのうち、ケイ素化合物及び変性ケイ素化合物の溶解性と、溶液の安定性の点で、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒が好ましく、さらに好ましい溶媒としては炭化水素系溶媒を挙げることができる。これらの溶媒は、単独でも、或いは2種以上を混合しても使用できる。特に炭化水素系溶媒は、ケイ素化合物の溶解性が高く、熱処理時のケイ素化合物の残留を抑制する効果がある。
【0030】
また、ドーパントガス16としては、ジボランの他にも、第13族元素の化合物を用いることができる。例えば、ホウ素化合物であるテトラボランなどの水素化ホウ素化合物、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素などのハロゲン化ホウ素化合物、メチルボランなどのようなホウ素含有炭化水素、塩化アルミニウムなどのハロゲン化アルミニウム化合物、トリメチルアルミニウムなどのアルミニウム含有炭化水素、塩化ガリウムなどのハロゲン化ガリウム、トリメチルガリウムなどのガリウム含有炭化水素、トリメチルインジウムなどのインジウム含有炭化水素などを使うことができる。その他、常温常圧で気体である第13族元素の化合物を用いることができる。また、常温で固体であっても、気化することによりガスとして使えるものであれば良い。
【0031】
また、シクロペンタシラン溶液11への光の照射方法は図1に示すものに限られず、例えば、図3(A)に示すように、光ファイバー21を介して高圧水銀ランプ14からの紫外線15を照射するようにしてもよい。また、光を当てる方向についても、図1に示すようにガラス容器10の上から照射する方法に限られず、図3(B)に示すように、ガラス容器10の真横から紫外線15を照射するようにしてもよい。また、図3(C)に示すように、ガラス容器10の下から紫外線15を照射するようにしてもよい。
【0032】
さらに、図4(A)に示すように、高圧水銀ランプ14の他に、もう1つの光源31を設け、それぞれの光源から、195nmの波長の光(第1の波長の光)15と、400nmの波長の光(第2の波長の光)32を照射するようにしてもよい。このように2つの光源を用いる場合にも、光に照射方向は、図4(A)に示すようにガラス容器10の上から照射してもよいし、図4(B)に示すように、それぞれの光をガラス容器10の横から照射するようにしてもよい。また、図4(C)に示すように、どちらか一方の光源からの光を光ファイバー21を介して照射するようにしてもよいし、両方の光源からの光を光ファイバー21を通して照射するようにしてもよい。
【0033】
また、図5に示すように、シクロペンタシラン溶液11の入ったガラス容器10をステンレスボックス41に格納してもよい。また、高圧水銀ランプ14からの紫外線15が集光レンズ42を通ってシクロペンタシラン溶液11に照射されるようにしてもよい。
【0034】
なお、光源としては、高圧水銀ランプの他に、例えば、エキシマランプ、誘電体バリア放電エキシマランプ、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、キセノン水銀ランプ、重水素ランプ、UV−LED光源、希ガスハライドエキシマレーザー、希ガスエキシマレーザー、窒素レーザー、フッ素レーザー、Nd:YAG三倍高調波、Nd:YAG四倍高調波、Ce:LiSAFレーザー、半導体レーザーなどを使うことができる。
【0035】
また、ガラス容器10、ガスライン17は、紫外線耐性の高い素材を用いることが望ましい。たとえば、石英ガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。
【0036】
また、シクロペンタシラン溶液11を攪拌する手段としては、マグネティックスターラー13以外にも、ミキサー、メカニカルスターラーなど、溶液を攪拌できる手段であればどのようなものでも使用できる。
【0037】
以上説明したように、シクロペンタシラン溶液11に、ドーパントガス16をラジカル化するための195nmの波長の光(第1の波長の光)と、シクロペンタシランをラジカル化するための400nmの波長の光(第2の波長の光)を同時に照射しながらドーパントガス16を供給することにより、光の照射によってドーパントガスとシクロペンタシランを活性化しながら、効率よくP型ドープシリコン前駆体を生成することができる。また、高温、高エネルギー条件下での長時間の反応を行わなくてよいため、シクロペンタシランが揮発したり、アモルファス化したりしてしまうことを防止できる。
【0038】
[ドープシリコン膜の製造方法]
次に、上記の方法で生成したP型ドープシリコン前駆体溶液を用いて、P型ドープシリコン膜を形成する方法について説明する。
上述したように、生成したP型ドープシリコン前駆体ポリマーをトルエンに10重量%になるように溶解し、P型ドープシリコン前駆体溶液を得る。このP型ドープシリコン前駆体溶液を、基板上に塗布して塗布膜を形成する。塗布方法は、インクジェット法、スピンコート法、ディップコート法など、種々の方法を用いることができる。塗布後、300℃以上で焼成することにより、P型ドープドープアモルファスシリコン膜を形成する。
【0039】
P型ドープシリコン前駆体ポリマーは、ホウ素がシランポリマーに結合しているため、昇華温度が飛躍的に高くなる。このため、シリコン膜形成のために300℃で焼成しても、シラン化合物及びドーパントが揮発することがないため、多くのドーパントを含有するシリコン膜を製膜することができる。
【0040】
上記のP型ドープシリコン前駆体溶液を用いて形成したP型ドープシリコン膜は、各種電子デバイスの製造に利用することができる。適用できる電子デバイスに制限はないがその一例について説明する。
【0041】
[PIN型シリコン薄膜太陽電池]
図6は、PIN型シリコン薄膜太陽電池の製造工程を模式的に示す断面図である。
まず、図6(A)に示すように、透明基板331上にスパッタ法等で透明電極332を形成する。
【0042】
次に、図6(B)に示すように、透明電極332上に、本実施の形態によるP型ドープシリコン前駆体溶液を塗布し、300℃で焼成することにより、30nmの厚さのP型ドープシリコン膜333を形成する。P型ドープシリコン膜333の厚さは10nm以上100nm以下が望ましい。
【0043】
次に、図6(C)に示すように、P型ドープシリコン膜333上に、シクロペンタシランに紫外線を当てて得られたノンドープのシリコン前駆体ポリマーを有機溶媒に溶かしたものを塗布し、300℃で焼成することにより、500nmの厚さのI型アモルファスシリコン膜334を形成する。I型アモルファスシリコン膜334の厚さは200nm以上1μm以下が望ましい。
【0044】
次に、図6(D)に示すように、I型アモルファスシリコン膜334上に、黄燐とシクロペンタシランを混合したものに紫外線を照射して得られたN型ドープシリコン前駆体を有機溶媒に溶かしたものを塗布し、300℃で焼成することにより、N型アモルファスシリコン膜335を形成する。N型アモルファスシリコン膜335の厚さは10nm以上100nm以下が望ましい。
【0045】
最後に、図6(E)に示すように、N型アモルファスシリコン膜335上に、アルミニウムをスパッタ法等で製膜して電極336を形成することにより、PIN型シリコン薄膜太陽電池が得られる。
【0046】
[HIT型太陽電池]
図7は、HIT型太陽電池の構造を模式的に示す断面図である。図7を用いて、HIT型太陽電池の製造方法について説明する。
まず、N型シリコン基板70にノンドープのシリコン前駆体ポリマーを有機溶媒に溶かしたものをスピンコート法等で塗布し、300℃で焼成することにより、7nmの厚さのI型アモルファスシリコン膜71を形成する。I型アモルファスシリコン膜71の厚さは5nm以上10nm以下が望ましい。N型シリコン基板70は、集光効率の良いテクスチャー構造を有するものを使用することが望ましい。
【0047】
次に、I型アモルファスシリコン膜71の上に、本実施の形態によるP型ドープシリコン前駆体溶液をスピンコート法等で塗布し、300℃で焼成することにより、30nmの厚さのP型ドープシリコン膜72を形成する。P型ドープシリコン膜72の厚さは10nm以上100nm以下が望ましい。
【0048】
次に、P型ドープシリコン膜72上に、スパッタ法等で透明電極73を形成し、透明電極73の上にアルミニウムで補助電極75を形成する。また、N型シリコン基板70の裏面にはアルミニウムの電極74をスパッタ法等で形成する。なお、補助電極75は、蒸着法、スパッタ法、CVD法、導電性テープや金属微粒子などの液体材料による電極形成、無電解メッキ、電解メッキなどの方法で形成することができる。
【0049】
[pn接合型太陽電池]
図8は、pn接合型太陽電池の構造を模式的に示す断面図である。図8を用いて、pn接合型太陽電池の製造方法について説明する。
まず、N型シリコン基板80に、本実施の形態によるP型ドープシリコン前駆体溶液をスピンコート法等で塗布し、300℃で焼成することにより、30nmの厚さのP型ドープシリコン膜81を形成する。P型ドープシリコン膜81の厚さは10nm以上100nm以下が望ましい。N型シリコン基板80は、集光効率の良いテクスチャー構造を有するものを使用することが望ましい。
【0050】
次に、P型ドープシリコン膜81上に、スパッタ法等で透明電極82を形成し、透明電極82の上にアルミニウムで補助電極84を形成する。N型シリコン基板80の裏面にはアルミニウムの電極83をスパッタ法等で形成する。なお、補助電極84は、蒸着法、スパッタ法、CVD法、導電性テープや金属微粒子などの液体材料による電極形成、無電解メッキ、電解メッキなどの方法で形成することができる。
【0051】
[薄膜トランジスタ]
図9は、薄膜トランジスタの製造工程を模式的に示す断面図である。
まず、図9(A)に示すように、ガラス基板などの絶縁性基板411の上に、ノンドープのシリコン前駆体ポリマーを有機溶媒に溶かしたものを所望の形状に塗布する。次いで、300℃で30分間加熱(焼成)し、真性半導体であるI型シリコン膜412を形成する。I型シリコン膜412はアモルファスシリコン膜でもよいが、焼成後にエキシマレーザー光を照射または700℃以上で加熱して結晶化し、多結晶シリコン膜としてもよい。
【0052】
次に、図9(B)に示すように、本実施の形態によるP型ドープシリコン前駆体溶液をI型シリコン膜412上の両端に塗布し、300℃で焼成することにより、P型ドープシリコン膜413を形成する。
【0053】
次に、図9(C)に示すように、P型ドープシリコン膜413を覆うようにゲート絶縁膜414を形成する。さらに、図9(D)に示すように、ゲート絶縁膜414上にタンタル(Ta)などの導電性膜を堆積し、パターニングすることによりゲート電極415を形成する。
【0054】
次に、図9(E)に示すように、ゲート電極415を覆うように層間絶縁膜416を形成する。さらに、図9(F)に示すように、層間絶縁膜416の一部を除去してコンタクトホールC1を形成する。さらに、図9(G)に示すように、コンタクトホールC1の内部およびその上部にアルミニウムAlなどの導電性膜よりなる配線(ソース電極およびドレイン電極)M1を形成する。配線M1は、例えばスパッタリング法などを用いて導電性膜を成膜した後、導電性膜をパターニングすることにより形成することができる。
【0055】
上記実施の形態を通じて説明された実施例や応用例は、用途に応じて適宜に組み合わせて、又は変更若しくは改良を加えて用いることができ、本発明は上述した実施の形態の記載に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0056】
10 ガラス容器、11 シクロペンタシラン溶液、12 攪拌子、13 マグネティックスターラー、14 高圧水銀ランプ、15 紫外線、16 ドーパントガス、17 ガスライン、18 フローメーター、21 光ファイバー、31 光源、41 ステンレスボックス、42 集光レンズ、70 N型シリコン基板、71 I型アモルファスシリコン膜、72 P型ドープシリコン膜、73 透明電極、74 電極、75 補助電極、80 N型シリコン基板、81 P型ドープシリコン膜、82 透明電極、83 電極、84 補助電極、331 透明基板、332 透明電極、333 P型ドープシリコン膜、334 I型アモルファスシリコン膜、335 N型アモルファスシリコン膜、411 絶縁性基板、412 I型シリコン膜、413 P型ドープシリコン膜、414 ゲート絶縁膜、415 ゲート電極、416 層間絶縁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シラン化合物を含む溶液に、光を照射しながらドーパントとなる元素を含むガスを供給することにより、前記シラン化合物の重合体にドーパントが結合したシリコン前駆体を生成する、シリコン前駆体の製造方法。
【請求項2】
シラン化合物を含む溶液に、ドーパントとなる元素を含むガスを供給すると共に前記溶液に光を照射し、シランラジカルと前記ドーパントとなる元素のラジカルを発生させる工程と、
前記シランラジカルが重合し、さらに前記シランラジカルと前記ドーパントとなる元素を含むガスのラジカルが反応することによりシランポリマーに前記ドーパントが結合したシリコン前駆体を生成する工程と、
を含むことを特徴とするシリコン前駆体の製造方法。
【請求項3】
前記ドーパントをラジカル化するための第1の波長の光と、前記シラン化合物をラジカル化するための第2の波長の光を同時に照射することを特徴とする請求項1または2に記載のシリコン前駆体の製造方法。
【請求項4】
前記ドーパントとなる元素を含むガスは、常温常圧で気体である第13族元素の化合物を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のシリコン前駆体の製造方法。
【請求項5】
前記ドーパントとなる元素を含むガスの総供給量は、前記ドーパントとなる元素の原子数が、前記シラン化合物に含まれるケイ素原子と反応するのに必要な原子数の1倍〜10倍となる量であることを特徴とする、請求項4に記載のシリコン前駆体の製造方法。
【請求項6】
シラン化合物を含む溶液に、光を照射しながらドーパントとなる元素を含むガスを供給することにより、前記シラン化合物の重合体にドーパントが結合したシリコン前駆体を生成する第1工程と、
前記シリコン前駆体を基板に塗布し、焼成することにより前記ドーパントを含むシリコンを形成する第2工程と、を有するシリコンの製造方法。
【請求項7】
シラン化合物を含む溶液に、光を照射しながらドーパントとなる元素を含むガスを供給することにより、前記シラン化合物の重合体にドーパントが結合したシリコン前駆体を生成する第1工程と、
前記シリコン前駆体を基板に塗布し、焼成することにより前記ドーパントを含むシリコンを形成する第2工程と、を有する電子デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−248027(P2010−248027A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98788(P2009−98788)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】