説明

シート部材の組付け方法

【課題】2台のロボットを用いてシート部材の組付けを行うと共に、被組付け物の位置を力覚センサを用いて検出できるようにして、設備費の大幅な削減を図る。
【解決手段】2台のロボットの動作端に取付けた第1と第2の2つの治具11,21によりシート部材2を保持する。両治具11,21を接近させてシート部材2を弛ませた状態で、第1治具11に設けたピン16を被組付け物1の基準孔に押し込み、第1治具11とロボットの動作端との間に介設した力覚センサで検出される位置検出ピンの押し込み反力に基づいて第1治具11の位置を修正し、位置検出ピン16が基準孔に同心で挿入されたときの第1治具11の位置に基づいて被組付け物1の位置を検出する。検出された被組付け物1の位置に基づいて第1と第2の両治具11,21を被組付け物1に対し位置合わせし、被組付け物1にシート部材2を組付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドア等の被組付け物にホールシール等のシート部材を組付けるシート部材の組付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のシート部材の組付けに際しては、一般的に1台のロボットを用い、定位置に置かれたシート部材をロボットの動作端に取付けた治具に備える複数のシート保持部材により吸着保持して取出し、次に、ロボットの動作で治具を被組付け物に正対する位置に移動させ、その後、治具を被組付け物に接近させて、被組付け物にシート部材を組付けるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、治具としては、一般に、シート部材のサイズに合わせた専用治具を用いており、被組付け物の機種変更でシート部材のサイズが変わった場合には、治具を交換するようにしている。そのため、機種変更に対処できるように複数の治具を用意しておく必要があって、設備費が嵩む不具合がある。この場合、2台のロボットを用い、一方のロボットの動作端に取付けた治具に備えるシート保持部材と、他方のロボットの動作端に取付けた治具に備えるシート保持部材とでシート部材の互いに離れた箇所を保持するように構成すれば、両治具の間隔を変えることで異なるサイズのシート部材も保持でき、治具を汎用化できる。従って、設備費の削減を図るには、2台のロボットを用いてシート部材の組付けを行うことが望まれる。
【0004】
ところで、被組付け物にシート部材を正確に組付けるには、被組付け物の位置を検出して、被組付け物に対し治具を正確に位置合わせする必要がある。この場合、治具にカメラを搭載し、被組付け物に対向する予め定めた基準位置に治具を移動させたところで、カメラにより被組付け物を撮像して、画像処理により被組付け物の位置を検出することが考えられる。然し、これでは画像処理装置を含む設備全体のコストが高くなる不具合がある。
【0005】
ここで、従来、被組付け物に形成した孔に部品を挿入して組付ける方法として、部品を把持するロボットハンドを力覚センサを介してロボットの動作端に取付け、部品を孔に押し込みつつ、力覚センサで検出される部品の押し込み反力に基づいてロボットハンドの位置を修正して、部品を孔に同心で挿入する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。かかる技術を応用し、被組付け物の位置を力覚センサを用いて検出できるようにすれば、設備費の一層の削減を図ることができる。
【特許文献1】特開平5−104358号公報
【特許文献2】特許第3352173号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、2台のロボットを用いてシート部材の組付けを行うと共に、被組付け物の位置を力覚センサを用いて検出できるようにして、設備費の大幅な削減を図れるようにしたシート部材の組付け方法を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、被組付け物にシート部材を組付けるシート部材の組付け方法であって、シート部材を保持するシート保持部材と、被組付け物に形成された少なくとも2個の基準孔に挿入可能な少なくとも2個の位置検出ピンとを具備する第1治具を力覚センサを介して動作端に取付けた第1ロボットと、シート部材を保持するシート保持部材を具備する第2治具を動作端に取付けた第2ロボットとを備える設備を用い、定位置にセットされたシート部材の互いに離れた箇所を第1治具のシート保持部材と第2治具のシート保持部材とで保持して取出す取出し工程と、第1と第2の両ロボットの協調動作でシート部材を被組付け物の近傍に搬送すると共に、第1治具と第2治具とを互いに接近させてシート部材を弛ませる搬送工程と、各位置検出ピンを被組付け物の各基準孔に押し込みつつ、力覚センサで検出されるこれら位置検出ピンの押し込み反力に基づいて第1ロボットの動作により第1治具の位置を各位置検出ピンが各基準孔に同心で挿入されるように修正し、各位置検出ピンが各基準孔に同心で挿入されたときの第1治具の位置に基づいて被組付け物の位置を検出する位置検出工程と、第1治具と第2治具とを互いに離隔させてシート部材の弛みを除去すると共に、位置検出工程で検出された被組付け物の位置に基づいて第1と第2の両治具を被組付け物に対し位置合わせし、この状態で第1と第2の両治具を被組付け物に接近させて、被組付け物にシート部材を組付けるシート組付け工程とを順に実行することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、第1と第2の2台のロボットを用いてシート部材を組付けるため、両ロボットに取付ける第1と第2の両治具の間隔を変えることでサイズの異なるシート部材も保持でき、治具を汎用化できる。更に、位置検出工程での力覚センサの検出出力に基づく第1治具の位置修正を行って、被組付け物の少なくとも2個の基準孔に第1治具の少なくとも2個の位置検出ピンを同心で挿入することにより、被組付け物の傾きを含めた三次元的な位置を検出でき、被組付け物に正確にシート部材を組付けることができる。そして、位置検出にカメラを用いる場合のような高価な画像処理装置が不要になり、治具の汎用化と相俟って設備費の大幅な削減を図ることができる。
【0009】
ここで、第1治具と第2治具との間にシート部材が張り渡されている状態で位置検出工程を実行すると、第1治具の位置修正に伴う第2治具に対する第1治具の相対移動がシート部材により制限され、また、第1治具にシート部材の張力が作用して、この張力の影響で基準孔に対する位置検出ピンの押し込み反力を力覚センサにより正しく検出できなくなり、その結果、第1治具をうまく位置修正できず、被組付け物の位置が検出不能になることがある。これに対し、本発明では、第1治具と第2治具とを互いに接近させてシート部材を弛ませた状態で位置検出工程を実行するため、第2治具に対する第1治具の相対移動がシート部材で制限されたり、第1治具にシート部材の張力が作用したりすることが防止される。従って、力覚センサで位置検出ピンの押し込み反力を正確に検出できると共に、力覚センサの検出出力に基づいて第1治具の位置を確実に修正でき、各位置検出ピンを各基準孔に同心で挿入して、被組付け物の位置を正確に、且つ、確実に検出できる。
【0010】
尚、第1治具に、位置検出ピンをこれがシート保持部材と同一方向を向くように配置することも可能である。この場合、シート保持部材に保持されるシート部材に位置検出ピンが干渉しないように、第1治具に、シート部材の外縁より外方に位置させて位置検出ピンを配置する必要があり、シート組付け工程で被組付け物に位置検出ピンが干渉する可能性がある。これに対し、第1治具の長手方向の軸線回りに関してシート保持部材とは異なる方向を向くように位置検出ピンを配置しておけば、シート組付け工程で位置検出ピンが被組付け物に干渉する虞はない。この場合、位置検出工程で位置検出ピンが被組付け物に対向するように第1治具を回転させる必要があるが、シート部材を上記の如く弛ませているため、第1治具を支障なく回転させることができる。
【0011】
ところで、シート部材或いは被組付け物に接着剤を塗布した状態で被組付け物にシート部材を組付けて、被組付け物にシート部材を接着することがある。このような場合、接着剤が固化するまでのシート部材の位置ずれを防止するため、被組付け物に形成した係合孔にシート部材を通して挿入される係止具によりシート部材を被組付け物に係止することが望ましい。そのためには、第1と第2の両治具の少なくとも一方の治具に、係止具を保持する係止具保持部材をシート保持部材で保持されるシート部材の法線方向に進退自在に設け、定位置にセットされた係止具を取出し工程において係止具保持部材で保持して取出し、シート組付け工程後に、係止具保持部材をシート部材側、即ち、被組付け物側に前進させて、係止具をシート部材を通して被組付け物の係合孔に挿入する係止具挿入工程を実行すれば良い。
【0012】
ここで、シート部材の位置ずれを確実に防止するには、係止具を少なくとも2個設け、これら係止具を被組付け物に形成した少なくとも2個の係合孔に挿入して、シート部材を複数箇所で被組付け物に係止することが望まれる。この場合、位置検出ピンを設けた第1治具にこれら係止具を保持する少なくとも2個の係止具保持部材を設け、これら係止具を挿入する係合孔を基準孔として上記位置検出工程を実行すれば、係合孔の位置が直接検出されることになり、第1治具を各係止具保持部材が各係合孔に正対するように正確に位置合わせすることができる。従って、係止具挿入工程で係合孔に確実に係止具を挿入できるようになり、組付け作業の確実性が担保される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図1に示す如く、被組付け物たる車両用のドア1にホールシールと呼ばれるシート部材2を組付ける方法に本発明を適用した実施形態について説明する。尚、ドア1のインナパネル1aには、部品儀装用の複数の開口部1bが形成されており、シート部材2またはインナパネル1aに接着剤を塗布し、インナパネル1aに複数の開口部1bの形成箇所を覆うようにシート部材2を接着して組付ける。また、ドア1を起立させた状態でシート部材2を組付けており、接着剤が固化するまでにシート部材2が位置ずれする可能性がある。そこで、インナパネル1aの上部に左右方向(ドア1を車両に実装した状態で車長方向に沿う方向)に離れた2個の係合孔1c,1cを形成し、2個の係止具3,3をシート部材2の上部の左右に形成した取付孔2a,2aを通して両係合孔1c,1cに挿入することにより、インナパネル1aにシート部材2を係止している。
【0014】
シート部材2の組付けは、図2に示す如く、第1と第2の2台のロボット10,20を備える設備を用いて行われる。第1と第2の各ロボット10,20は、旋回自在なロボット本体10a,20aと、ロボット本体10a,20aに揺動自在に連結される第1ロボットアーム10b,20bと、第1ロボットアーム10b,20bの先端に揺動自在に連結される第2ロボットアーム10c,20cと、第2ロボットアーム10c,20cの先端の3軸構造の手首10d,20dとを備える6軸ロボットで構成されている。そして、各ロボット10,20の動作端たる手首10d,20dの先端に治具11,21を取付けている。
【0015】
第1ロボット10に取付ける第1治具11と、第2ロボット20に取付ける第2治具21は、上下一方の縁部にローラ12,22を軸着した中央の治具ベース11a,21aと、治具ベース11a,21aから左右方向にのびる左右一対のアーム11b,21bと、各アーム11b,21bの外端部に固定される治具プレート11c,21cとを備えている。そして、第1治具11の治具ベース11a及び各治具プレート11cと第2治具21の各治具プレート21cとに、シート部材2を吸着して保持する真空引きされる吸盤で構成されたシート保持部材13,23が夫々ばね13a,23aによりシート部材2側に付勢した状態で取付けられている。ここで、各治具11,21のアーム11b,21bは、治具ベース11a,21aに左右方向に移動自在に支持されている。そして、治具ベース11a,21aに搭載したモータ11d,21dによりラックピニオン機構(図示せず)を介して各アーム11b,21b、即ち、各治具プレート11c,21cを左右方向に位置調節自在としている。そのため、ドア1の機種変更でシール部材2の左右方向の幅が変わっても、治具プレート11c,21cの位置調節で対処できる。尚、シール部材2の上下方向幅の変化には、第1と第2の両治具11,21の間隔を変化させることで対処できる。従って、治具11,21の汎用化が可能になる。
【0016】
また、第1治具11の各治具プレート11cには、係止具3を吸着して保持する真空引きされる吸盤で構成された係止具保持部材14と、この係止具保持部材14の近傍でシート部材2を押える真空引きされるパイプで構成されたシート押え部材15とが取付けられている。ここで、係止具保持部材14は、治具プレート11cに搭載したシリンダ14aにより、シート保持部材13に保持されるシート部材2の法線方向に進退されるようになっており、また、シート押え部材15は、シート保持部材13と同様にばね15aによりシート部材2側に付勢されている。更に、各治具プレート11cには、第1治具11の長手方向の軸線回りに関してシート保持部材13とは90°異なる方向を向くように位置検出ピン16が取付けられている。尚、位置検出ピン16は、左右方向に関して、係止具保持部材14と同一位置に取付けられる。また、第1治具11は、治具ベース11aの背面の取付基部11eにおいて6軸の力覚センサ17を介して第1ロボット10の手首10dの先端に取付けられている。一方、第2治具21は、治具ベース21aの背面の取付基部21eにおいて第2ロボット20の手首20dの先端に直結されている。
【0017】
第1と第2の両ロボット10,20の配置部近傍には、図3に示す如く、係止具用の第1セット台30と、シール部材用の第2セット台40とが並設されている。第1セット台30には、セット孔30aが所定の間隔を存して左右一対に形成されており、各セット孔30aに各係止具3の軸部を挿入することで、左右一対の係止具3,3が定位置に位置決めした状態でセットされる。また、第2セット台40には、位置決めピン40aが所定の間隔を存して左右一対に立設されており、シール部材2を各取付孔2aに各位置決めピン40aが嵌合するように第2セット台40に載置することで、シール部材2が定位置に位置決めした状態でセットされる。
【0018】
ドア1のインナパネル1aに対するシール部材2の組付けに際しては、先ず、係止具3とシート部材2の取出し工程を実行する。取出し工程では、最初に、第1治具11を第1ロボット10の動作で第1セット台30上に移動させ、この状態で第1治具11の左右の治具パネル11c,11cに設けた係止具保持部材14,14を夫々シリンダ14aにより下降させて、第1セット台30上にセットされた左右一対の係止具3,3を両係止具保持部材14,14で吸着した後、各係止具保持部材14をシリンダ14aにより上昇させて各係止具3を第1セット台30から取出す。次に、図4(a)に示すように、第1治具11を第1ロボット10の動作で第2セット台40上に移動させて下降させ、第2セット台40上にセットされたシート部材2のドア実装状態で上部になる部分を第1治具11のシート保持部材13及びシート押え部材15により吸着すると共に、第2治具21を第2ロボット20の動作で第2セット台40上に移動させて下降させ、第2セット台40上にセットされたシート部材2のドア実装状態で上部になる部分を第2治具21のシート保持部材23で吸着する。次に、第1と第2の両治具11,21を第1と第2の両ロボット10,20の動作で上昇させて、シート部材2を第2セット台40から取出す。
【0019】
上記の如く取出し工程を実行すると、次に、搬送工程を実行する。搬送工程では、図4(b)に示す如く、第1と第2の両ロボット10,20の協調動作で第1と第2の両治具11,21で保持されるシート部材2をドア1の近傍に搬送する。この際、両治具11,21の間隔を狭めてシート部材2を弛ませ、更に、第1治具11を第1ロボット10の手首10dの動作で位置検出ピン16がドア1側を向くように回転させる。尚、治具ベース11aを取付基部11eに対し第1治具11の長手方向の軸線回りに回転自在に連結し、治具ベース11aの回転で位置決めピン16をドア1側に向けることも可能である。
【0020】
上記搬送工程を実行すると、続いて位置検出工程を実行する。位置検出工程では、先ず、第1治具11を第1ロボット10の動作で所定の原点位置からドア1のインナパネル1aに向けて前進させ、第1治具11に設けた左右一対の位置検出ピン16,16をインナパネル1aの基準孔たる左右一対の係合孔1c,1cに押し込む。ここで、原点位置は、インナパネル1aが正規位置に存する状態でインナパネル1aの各係合孔1cに対し各位置検出ピン16が同心になるよう設定されている。インナパネル1aが正規位置からずれていると、各位置検出ピン16が各係合孔1cの孔縁部に片当りし、各位置検出ピン16に押し込み反力が作用して、左右の位置検出ピン16,16に作用する押し込み反力の合力が力覚センサ17で検出される。そして、第1ロボット10のロボットコントローラ(図示せず)により力覚センサ17の検出出力に基づいて補正量を演算し、この補正量に基づく第1ロボット10の位置修正動作で第1治具11の位置を各位置検出ピン16が各係合孔1cに同心で挿入されるように修正することを繰り返す。その結果、最終的に図4(c)に示す如く各位置検出ピン16が各係合孔1cに同心で挿入され、このときの第1治具11の位置に基づいてインナパネル1aの傾きを含む三次元的な位置が検出される。
【0021】
ここで、シート部材2は搬送工程で上記の如く弛ませられており、この状態で位置検出工程が実行される。そのため、第2治具21に対する第1治具11の相対移動がシート部材2で制限されたり、第1治具11にシート部材2の張力が作用したりすることが防止される。従って、力覚センサ17で位置検出ピン16の押し込み反力を正確に検出できると共に、力覚センサ17の検出出力に基づいて第1治具11の位置を確実に修正でき、各位置検出ピン16を各係合孔1cに同心で挿入して、インナパネル1aの位置を正確に、且つ、確実に検出できる。
【0022】
尚、第1治具11にカメラを搭載し、カメラによりインナパネル1aを撮像して、画像処理によりインナパネル1aの位置を検出することも可能である。然し、これでは高価な画像処理装置が必要になって設備費が高くなる。これに対し、本実施形態のように力覚センサ17を用いてインナパネル1aの位置検出を行えば、高価な画像処理装置が不要になり、設備費の削減を図ることができる。
【0023】
上記の如く位置検出工程を実行すると、次に、シート組付け工程を実行する。シート組付け工程では、図4(d)に示すように、第1治具11と第2治具21とを互いに離隔させてシート部材2の弛みを除去すると共に、位置検出工程で検出されたインナパネル1aの位置に基づいて第1と第2の両治具11,21をインナパネル1aに対し位置合わせし、この状態で第1と第2の両治具11,21を第1と第2の両ロボット10,20の協調動作でインナパネル1aに向けて前進させる。そして、両治具11,21に保持されるシート部材2をインナパネル1aに押し付けて接着する。これにより、シート部材2をインナパネル1aに位置精度を確保した状態で組付けることができる。尚、各治具11,21の前進端位置は、各治具11,21のシート保持部材13,23がインナパネル1aへの押し付け反力でばね13a,23aの付勢力に抗して各治具11,21に対し所定ストローク後退するような位置に設定されており、シート部材2はインナパネル1aに確実に押し付けられる。
【0024】
上記の如くシート組付け工程を実行すると、続いて係止具挿入工程を実行する。係止具挿入工程では、第1治具11の各係止具保持部材14をシリンダ14aによりインナパネル1aに向けて前進させる。そして、図4(e)に示すように、各係止具保持手段14に吸着保持されている各係止具3の軸部をシート部材2の各取付孔2aを通してインナパネル1aの各係合孔1cに挿入する。ここで、本実施形態では、上記位置検出工程でインナパネル1aの位置を検出するための基準孔として係合孔1cを用いている。そのため、係合孔1cの位置が直接検出されることになり、第1治具11を各係止具保持部材14が各係合孔1cに正対するように正確に位置合わせすることができる。従って、係止具挿入工程で各係合孔1cに確実に各係止具3を挿入できる。
【0025】
尚、取付孔2aはシート部材2の隅部に形成されており、係止具保持部材14との干渉を防止する上で、取付孔2aの周辺部分をシート保持部材13のような比較的径の大きな吸盤で吸着保持することはできない。ここで、取付孔2aの周辺部分をフリーにしておくと、周辺部分のまくれやずれで係止具3を取付孔2aにうまく挿通できなくなることがある。一方、本実施形態では、係止具保持部材14との干渉を生じないように、取付孔2aの周辺部分を小径のパイプ状のシート押え部材15で吸着してインナパネル1aに押え付けている。そのため、取付孔2aの周辺部分のまくれやずれを生ずることがなく、係止具3を取付孔2aを通して係合孔1cに確実に挿入できる。
【0026】
上記の如く係止具挿入工程を実行すると、次に、シート押圧工程を実行する。シート押圧工程では、先ず、第1治具11のシート保持部材13及びシート押え部材15と第2治具21のシート保持部材23とによるシート部材2の吸着を解除して、第1と第2の各治具11,21を一旦シート部材2から離脱させる。次に、第1と第2の各治具11,21を各治具11,21に設けたローラ12,22がインナパネル1a側を向くように姿勢変更し、ローラ12,22によりインナパネル1aに対するシート部材2の接着部をなぞるようにしてシート部材2を押圧する。そして、シート押圧工程の終了で1回のシート組付け作業が完了する。
【0027】
ところで、第1治具11に、位置検出ピン16をシート保持部材13と同方向を向くように配置することも可能である。この場合、シート保持部材13に保持されるシート部材2に位置検出ピン16が干渉しないように、第1治具11に、シート部材2の外縁より外方に位置させて位置検出ピン16をシート部材2よりも先方に突出するように配置することが必要になり、シート組付け工程で位置検出ピン16がドア1に干渉する可能性がある。これに対し、本実施形態の如く第1治具11の長手方向の軸線回りに関してシート保持部材13とは異なる方向を向くように位置検出ピン16を配置しておけば、シート組付け工程で位置検出ピン16がドア1に干渉する虞はない。この場合、位置検出工程で位置検出ピン16がインナパネル1aに対向するように第1治具11を回転させる必要があるが、位置検出工程ではシート部材2が上記の如く弛ませられているため、第1治具11を支障なく回転させることができる。
【0028】
また、上記実施形態では、インナパネル1aの上部のみに係合孔1cを形成している関係で、第1治具11のみに係止具保持部材14を設けているが、インナパネル1aの下部にも係止具を挿入する係合孔を形成する場合は、第2治具21にも係止具保持部材を設ける。
【0029】
以上、車両用のドア1に対するシート部材2の組付けに本発明を適用した実施形態について説明したが、ドア1以外の被組付け物にシート部材を組付ける場合にも同様に本発明を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】被組付け物としての車両用ドアとシート部材とを示す斜視図。
【図2】本発明の実施に用いる第1と第2の2台のロボットの一例を示す斜視図。
【図3】係止具をセットする第1セット台とシート部材をセットする第2セット台との一例を示す斜視図。
【図4】本発明の実施形態によるシート部材の組付け手順を模式的に示す説明図。
【符号の説明】
【0031】
1…ドア(被組付け物)、1c…係合孔、2…シート部材、3…係止具、10…第1ロボット、11…第1治具、13…シート保持部材、14…係止具保持部材、16…位置検出ピン、17…力覚センサ、20…第2ロボット、21…第2治具、23…シート保持部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被組付け物にシート部材を組付けるシート部材の組付け方法であって、
シート部材を保持するシート保持部材と、被組付け物に形成された少なくとも2個の基準孔に挿入可能な少なくとも2個の位置検出ピンとを具備する第1治具を力覚センサを介して動作端に取付けた第1ロボットと、シート部材を保持するシート保持部材を具備する第2治具を動作端に取付けた第2ロボットとを備える設備を用い、
定位置にセットされたシート部材の互いに離れた箇所を第1治具のシート保持部材と第2治具のシート保持部材とで保持して取出す取出し工程と、
第1と第2の両ロボットの協調動作でシート部材を被組付け物の近傍に搬送すると共に、第1治具と第2治具とを互いに接近させてシート部材を弛ませる搬送工程と、
各位置検出ピンを被組付け物の各基準孔に押し込みつつ、力覚センサで検出されるこれら位置検出ピンの押し込み反力に基づいて第1ロボットの動作により第1治具の位置を各位置検出ピンが各基準孔に同心で挿入されるように修正し、各位置検出ピンが各基準孔に同心で挿入されたときの第1治具の位置に基づいて被組付け物の位置を検出する位置検出工程と、
第1治具と第2治具とを互いに離隔させてシート部材の弛みを除去すると共に、位置検出工程で検出された被組付け物の位置に基づいて第1と第2の両治具を被組付け物に対し位置合わせし、この状態で第1と第2の両治具を被組付け物に接近させて、被組付け物にシート部材を組付けるシート組付け工程とを順に実行することを特徴とするシート部材の組付け方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−181674(P2006−181674A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−377049(P2004−377049)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】