スピントロニクス応用のための磁気電気電界効果トランジスタ
本発明の対象は、チャネル領域と、チャネル領域の一方の側に接続され、チャネル領域に電子を注入するように適合されたソースと、チャネル領域の反対側に接続され、スピン偏極した電子を検出するように適合されたドレインと、4つの磁気要素を備える磁気二重対要素を少なくとも1つ備えるゲートとを備える磁気電気電界効果トランジスタであって、各磁気要素がチャネル領域に磁界を誘導するように適合され、各磁気二重対要素の誘導された磁界の合計がほぼゼロになるように制御することが可能であり、ゲートがチャネル領域に電界を誘導するようにさらに適合された磁気電気電界効果トランジスタである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、主に電界効果素子に関する。特に、本発明は、磁気電気障壁電界効果トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]スピントロニクス(スピンエレクトロニクス)は、固体物理学における電子スピンの役割、ならびにスピン特性を活用する素子の可能性の研究を意味する。DattaとDasによる、半導体スピントロニクス素子の最も初期の提案の1つが、スピン偏極電界効果トランジスタ(スピンFET)[1]に関するものであり、この中では、高移動度チャネルに移動した、スピン偏極した電子を注入および検出するために、ソース端子とドレイン端子とが強磁性材料であった。スピンFETのコンダクタンスは、チャネル内の電子スピン配向によって変わり、ドレイン端子の磁化に対するゲート電圧で制御することが可能であり、これによってスピンベースモードの動作が行われる。
【0003】
[0003]スピン偏極電流を強磁性体金属または磁性半導体から半導体に注入することを前提とした、スピントロニクスについての他の初期の試みは、非磁性体金属をスピンアライナとして用いる場合の伝導率の不一致の問題や、磁性半導体を用いる場合のキュリー温度が低い問題に直面している。
【0004】
[0004]最近の研究[2、3]では、スピン偏極(P)が、空間的に均質でない、平面に対して垂直な磁気電気障壁の影響下で電流が二次元電子ガス(2DEG)平面を横切ることによって達成可能であることが示されている。しかしながら、計算[4、5、6]では、反対称デルタ磁気障壁は偏極を誘導できないことが示されている。その後、Yongら[7]によって、単一電子ハミルトニアンで表される対称デルタ障壁であれば小さい正味の偏極を誘導できることが示されている。偏極を増やす1つの方法は、そのような対称障壁の数を増やすことであろう。しかしながら、そのような試みは、電子が単一障壁を横切るたびに透過確率(T)が低下するために、透過確率を下げることにもつながる。これは、電子をy方向に偏向させると電子のx方向の位置エネルギーまたは運動エネルギーが減り、x方向の残りの運動エネルギーが磁気障壁を突破するのに十分でない可能性があるためである。さらに、多くの障壁が横切られる場合は特に、対称障壁を実現するのが困難である。
【0005】
[0005][8]では、Rashbaスピン軌道相互作用定数の値の探求方法が示されている。[9]では、強磁性体半導体界面でのスピン注入が観察されている。[10]では、スピン軌道相互作用を用いて無秩序な二次元電子ガスの拡散コンダクタンステンソルを導出する方法が開示されている。[11]では、量子井戸に印加された時間依存ゲート電圧による擬似二次元電子のスピン操作の理論が編み出されている。[12]では、Rashba分裂伝導帯の速度演算子を導出する方法が開示されている。[13]では、二次元電子ガスにおいて、Rashba型およびDresselhaus型の両方のスピン軌道相互作用の存在が異方性散乱関係およびフェルミコンターにつがなることが開示されている。[14]では、Rashba型およびDresselhaus型の両方のスピン軌道相互作用に基づくスピン電界効果トランジスタが提案されている。[15]では、デジタル情報の不揮発性ストレージのメモリ素子として用いることが可能なハイブリッド磁気スピン注入FET構造が開示されている。[16]では、半導体のベースとコレクタとの間に磁気的に制御可能な障壁を設けてコレクタへの電荷キャリアの拡散を制御するスピントランジスタが開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[0006]以上の研究成果にもかかわらず、ゲートに印加される電圧を増やさずに、スピンFETのチャネル領域に注入される電子のスピン偏極を増やすスピンFET、すなわち、電子の偏極が、ゲートに印加される電圧に対して、より高感度であるスピンFETが有用であろう。
【0007】
[0007]本発明の対象は、
チャネル領域と、
チャネル領域の一方の側に接続され、チャネル領域に電子を注入するように適合されたソースと、
チャネル領域の反対側に接続され、スピン偏極した電子を検出するように適合されたドレインと、
4つの磁気要素を備える磁気二重対要素を少なくとも1つ備えるゲートとを備える磁気電気電界効果トランジスタであって、各磁気要素がチャネル領域に磁界を誘導するように適合され、各磁気二重対要素の誘導された磁界の合計がほぼゼロになるように制御することが可能であり、ゲートがチャネル領域に電界を誘導するようにさらに適合された磁気電気電界効果トランジスタである。
【0008】
[0008]説明のために、本発明を、ゲート、ソース、およびドレインを備える磁気電気スピンFETの形のスピントロニクス素子として実施することが可能である。本発明の他の実施形態として、プログラマブル不揮発性メモリセル、非常に低い電圧で動作可能な電圧増幅器、スピン電流源、プログラマブルスピン論理(たとえば、磁気センサ、アナログデジタル変換器、デコーダおよび/または論理ゲート)などがあり、これらに限定されない。一般的に言えば、本発明は、ゲートされることが可能であって、弾道伝導の発生を可能にする任意のナノ素子(たとえば、高品質半導体ナノワイヤおよびカーボンナノチューブ)の形で実施可能である。スピントロニクス素子は、電流がソースからドレインに流れる際に通り抜ける二次元電子ガス(2DEG)を生成するために用いられる高電子移動度トランジスタ(HEMT)のような多層に基づくことが好ましい。ソースは、電流注入装置として機能する。ドレインは、電流受取装置、電流フィルタ、スピン検出装置、または抵抗検出装置として機能する。ゲートは、チャネル領域に磁化を誘導するように適合された材料を備える。ゲートは、磁化を誘導するために、少なくとも1つの磁気二重対要素を備える。すなわち、少なくとも4つの磁気デルタ障壁がチャネル領域に誘導される。スピントロニクス素子のスピン偏極は、磁気障壁と電気障壁との組合せによって制御される。磁気障壁は、ゲート電極の磁化によって生成され、電気障壁は、ゲートに印加された電圧バイアスから発生する。ゲート電圧を変えると、電流のスピン偏極が変化する。
【0009】
[0009]本発明においては、「磁気要素」という用語は、磁気デルタ障壁を発生させる(たとえば、スピンFETのチャネル領域に磁気デルタ障壁を誘導する)ことに好適な要素を意味する。そのような磁気要素は、単極書き込みヘッドまたは極(すなわち、磁石(たとえば、永久磁石または電磁石)のS極またはN極)であることが可能である。この定義によれば、1つの永久磁石は、2つの磁気要素(すなわち、一対の要素)を与えることが可能である。これは、永久磁石がチャネル領域に平行に並べられた場合、すなわち、永久磁石のN極とS極とをつなぐ線がチャネル領域に平行に並べられた場合に、永久磁石のS極およびN極がスピンFETのチャネル領域に磁気デルタ障壁を与えることが可能だからである。したがって、1つの磁気二重対要素が、2対の磁気要素を備え、4つのデルタ障壁を誘導する。
【0010】
[0010]一実施形態では、誘導された磁界は、ゲートとチャネル領域との間の界面に垂直である。
【0011】
[0011]本発明の利点の1つは、垂直磁界(垂直方向のB場)が存在する場合に、ゲートに印加される電圧バイアスの小変動に対するスピン偏極の感度が高いことである。スピン偏極は、数ミリボルト程度の電圧変化に対して感度が高い。
【0012】
[0012]各磁気二重対要素によって誘導される磁界はゼロであることが好ましい。
【0013】
[0013]本発明の実施形態によれば、磁気二重対要素によって誘導される磁気障壁は、いわゆる「正味ゼロA型」の磁気障壁である。「正味ゼロA型」は、磁気二重対要素によって誘導されるすべての磁気障壁の合計がゼロであることを意味し、「A」は磁気ベクトルポテンシャルである。たとえば、磁気二重対要素が1つの場合、「正味ゼロA型」は、それぞれの磁界強度がB1、B2、B3、およびB4であって、磁気二重対要素によってチャネル領域に誘導される4つの磁気デルタ障壁の合計がゼロになること(すなわち、B1+B2+B3+B4=0)を意味する(ただし、B1、B2、B3、およびB4はz方向の磁界である)。
【0014】
[0014]数値計算によれば、垂直磁界が存在する場合、スピン偏極は、ゲートに印加される電圧バイアスの小変動に対して高感度である。したがって、磁気電気スピンFETは、スピン偏極電流を発生させ、操作することが可能な低電圧トランジスタである。スピンFET内の電流のスピン偏極を、ソース−ドレインチャネルの磁気抵抗の変化に変換することも可能である。この方法により、スピンFETは、2DEG内の電流に対して可変かつ制御可能な抵抗を与えるので、電流増幅器として動作することが可能である。
【0015】
[0015]本発明の実施形態によれば、二重対要素は、反対称または対称である場構成を有するように設計される。反対称の場合は、非ゼロ偏極を発生させるためにスピンFETにゲート電圧が印加され、対称の場合は、ゲート電圧を印加しなくても非ゼロ偏極が達成される。しかしながら、いずれの場合も、二重対要素は、Ay(x)にゼロ正味変化を有する場構成を有するように設計される。このように、二重対を用いることにより、透過しきい値をより高い電子エネルギーにシフトすることなく、注入される電子の偏極を増やすことが可能である。
【0016】
[0016]本発明による磁気電気障壁電界効果トランジスタの別の利点は、より高い磁界を用いることによってスピン偏極を増やすことが可能なことである。スピン偏極の利得特性は、他の独立パラメータ(たとえば、ゲート材料の飽和磁化、および/または磁気二重対によって誘導される異なる磁気障壁の磁化配列)によって制御可能である。これらのパラメータは、磁気電気障壁電界効果トランジスタのセットアップからは独立しているので、磁気電気障壁電界効果トランジスタの使用にはさらなる自由度を与えられる。
【0017】
[0017]本発明によるスピンFETを用いて、高度に偏極したスピン電流を発生させ、それを操作することが可能であり、したがって、本発明によるスピンFETは、スピン論理素子および回路の重要な要素であることが可能である。たとえば、2DEGからのスピン偏極電流は、他のスピンFETのゲート電極に供給された場合には、それらのスピンFETに対する入力信号として動作することが可能である。
【0018】
[0018]本発明によるスピンFETはさらに、それ自体で、および/またはメモリ素子内で不揮発性メモリとして使用可能である。これは、スピンFETが発生させるスピン偏極電流を用いてメモリ素子の磁化を切り替えることが可能なためである。
【0019】
[0019]さらに、本発明のスピンFETは、高い歳差周波数(30GHzから100GHzのオーダー)で動作可能であり、したがって、高い周波数の信号とともに動作することが可能である。
【0020】
[0020]本発明のスピンFETの一実施形態では、ゲートは、複数の磁気二重対要素を備える。複数の磁気二重対要素を用いると、チャネル領域を通過する電子の偏極が増える。すべての個々の磁気二重対要素が、電子の正味偏極を増やす。複数の磁気二重対要素を用いる場合は、個々の磁気二重対要素のそれぞれが、正味ゼロA型である。基本的に、結果として得られる偏極が、磁気電気電界効果トランジスタのドレイン領域によって検出されるだけの十分な高さである限り、任意の好適な数の磁気二重対を用いることが可能である。たとえば、そのような偏極は、2個、4個、6個、8個、10個、またはそれ以上の磁気二重対によって達成可能である。上限は、本発明のスピンFETの、所望の感度および/または所望のサイズに応じて選択される。したがって、10個、15個、20個、25個、または27個のように多数の磁気二重対もスピンFETで使用可能である。
【0021】
[0021]別の実施形態では、ソースは、非磁性体、強磁性体、半金属、および磁気半導体からなる群から選択される材料を含むか、それで構成される。これらの材料を用いることにより、偏極した電子でも偏極していない電子でもチャネル領域に注入することが可能であり、それらの偏極を、ゲートの磁気二重対要素によって増やすことが可能である。
【0022】
[0022]別の実施形態では、ドレインは、強磁性体、半金属、および磁気半導体からなる群から選択される材料を含むか、それで構成される。これらの材料は、チャネル領域(すなわち、高移動度チャネル)に移動した、スピン偏極した電子を検出するのに好適である。したがって、ドレインは、電流受取装置、電流フィルタ、スピン検出装置、または抵抗検出装置として機能することが可能である。
【0023】
[0023]さらなる実施形態では、チャネル領域は、n+ドープアルミニウムガリウムヒ素からなる第1の層と、アルミニウムガリウムヒ素からなる第2の層と、ガリウムヒ素からなる第3の層とを含む。チャネル領域としてこれらの材料の副層をそのように組み合わせることは、磁気電気電界効果トランジスタのチャネル領域に二次元電子ガス(2DEG)を発生させるのに好適である。
【0024】
[0024]本発明のスピンFETのさらに別の実施形態では、ゲートは、強磁性材料を含む。強磁性材料は、チャネル領域に垂直磁界を誘導するのに好適である。したがって、これらの材料は、本発明による磁気二重対要素の材料として用いられることが好ましい。本出願において使用可能な強磁性材料として、たとえば、鉄、コバルト、ニッケル、またはそのような元素を含む合金がある。一実施形態では、強磁性材料は、コバルトクロム白金および/または鉄白金および/または鉄コバルトおよび/またはコバルト白金などのような対応合金(またはそのような合金の混合物)であることが好ましい。これらの合金のような材料は、高度に磁化されることに好適であり、したがって、チャネル領域に高磁界を誘導するのに好適である。したがって、チャネル領域を通過する電子の偏極を容易に増やすことが可能である。
【0025】
[0025]前述の説明によれば、本発明のスピンFETのいくつかの実施形態において、ゲートは、少なくとも10個の磁気二重対要素を含む。他の実施形態では、磁気二重対要素は、極がチャネル領域にほぼ平行に並べられている磁石によって形成される。磁気二重対要素をチャネル領域に平行に並べて用いることは、磁気二重対要素のフリンジ場がほぼ垂直な磁界をチャネル領域に誘導することを保証するための好適な方法の1つである。そのような実施形態では、ほぼ平行に並んでいることは、各磁石のN磁極とS磁極との間の線がチャネル領域の方向にほぼ平行であることを意味する。そのような並びの場合、磁石に用いる強磁性材料は、鉄、コバルト、ニッケル、またはそのような元素の合金であることが好ましい。そのような並びによる例示的方法では、各磁石が2つの磁気デルタ障壁をチャネル領域に誘導することが保証される。したがって、磁気二重対要素を2つの磁石で実現することが可能である。そのような並びでは、各極、すなわち、各極の各N極および各S極は、1つの磁気デルタ障壁を誘導する。そのような並びを用いることによって、各磁気二重対の正味ゼロA型を容易な方法で保証することも可能である。これは、各磁石が磁気デルタ障壁の正味ゼロA型対を誘導することが、自動的に保証されるからである。1つの磁気二重対要素を形成している2つの磁石の磁化強度が異なる場合は、非対称磁界が発生し、これが、チャネル領域を通過する電子の正味偏極につながる。そのような並びでは、1つの磁気二重対要素が3つの磁石を含むことも可能である。
【0026】
[0026]別の実施形態では、磁気二重対要素は、極がチャネル領域にほぼ垂直に並べられている磁石によって形成される。磁気二重対要素をチャネル領域に垂直に並べて用いることは、磁気二重対要素の場が垂直磁界をチャネル領域に誘導することを保証するための好ましい方法である。この実施形態では、ほぼ垂直に並んでいることは、各磁石のN磁極とS磁極との間の線がチャネル領域の方向にほぼ垂直であることを意味する。そのような並びでは、強磁性材料は、コバルトクロム白金および/または鉄白金および/または鉄コバルトおよび/またはコバルト白金などのような合金(またはそのような合金の混合物)であることが好ましい。このような並びによる例示的方法では、各磁石が1つの磁気デルタ障壁をチャネル領域に誘導することが保証される。したがって、磁気二重対要素を4つの磁石で実現することが可能である。そのような並びでは、各磁石(すなわち、各磁石のN極またはS極)が1つの磁気デルタ障壁を誘導する。そのような並びを用いることにより、磁化強度が同じである磁石の対を用いて正味ゼロA型を保証することが可能である。そのような並びでは、強度の異なる磁気デルタ障壁を誘導する磁気二重対要素を容易に発生させることが可能である。これは、各磁気二重対要素の個々の磁気デルタ障壁のそれぞれの強度を、4つの個々の磁石によって独立に設定することが可能だからである。
【0027】
[0027]さらに別の実施形態では、ゲートは、単極書き込みヘッドを含み、これらの単極書き込みヘッドは、磁気二重対要素によってチャネル領域に誘導された垂直磁界に作用するように適合されている。単極書き込みヘッドは、ゲート電極の磁化を変化させることが可能であるようにゲート電極に垂直磁界を書き込むために用いられることが好ましい。
【0028】
[0028]単極書き込みヘッドは、コンピュータ分野では知られている素子であり、たとえば、磁気ディスクドライブに用いられている。単極書き込みヘッドを使用することは、ほぼ垂直に並べた磁石を使用する実施形態と類似している。単極書き込みヘッドを使用することは、個々の磁気デルタ障壁のそれぞれの強度を変化させることが可能であり、したがって、スピン偏極をより細かく制御することが可能になるという、さらなる利点をもたらす。
【0029】
[0029]好ましい実施形態では、磁気電気電界効果トランジスタは、ゲートの反対側のチャネル領域の下に軟磁性材料の層をさらに含む。
【0030】
[0030]チャネルの下に軟磁性下層を用いることは、チャネル領域に誘導される垂直磁界の強度を高め、さらに、磁気二重対要素によって誘導される磁界の配向を高める。これは特に、極がチャネル領域にほぼ垂直に並ぶ磁石によって磁気二重対要素が形成される実施形態に当てはまる。したがって、各磁気二重対によって誘導される正味偏極が増えることにつながり、したがって、チャネル領域を通過する電子の偏極が増える。軟磁性下層は、磁界Bzを強めることと、磁界Bzの配向を高めることのために用いられる。すなわち、軟磁性下層は、必要に応じて、ゲートの磁気部分からのB場線が、2DEGを通り抜ける際に垂直な進路を維持することを保証する。軟磁性下層として好適な材料としては、鉄コバルトボロン、コバルトジルコニウムニオブ、鉄アルミニウム窒素、ニッケル鉄様パーマロイ(Ni0.8Fe0.2)またはNi0.45Fe0.55などがあり、これらに限定されない。
【0031】
[0031]チャネル領域は、HEMT様チャネル領域であることが好ましい。高電子移動度トランジスタ(HEMT)のチャネル領域に類似したチャネル領域を用いることは、チャネル領域の二次元電子ガスを発生させる効率的な方法である。
【0032】
[0032]さらに別の実施形態では、第1の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB1であり、第2の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB2であり、第3の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB3であり、第4の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB4であり、B1、B2、B3、およびB4は、互いに次の関係を有する。
|B2|=|B3|、|B1|=|B4|および|B1|≠|B2|
【0033】
[0033]個々の磁気二重対要素によって誘導される4つの磁気デルタ障壁の強度のそのような関係を用いることにより、チャネル領域に誘導される垂直磁界を誘導することが正味ゼロA型であることが保証され、それによって、チャネルを通過する電子の正味偏極が各磁気二重対要素によって発生することが保証される。B1、B2、B3、およびB4はすべて、z方向(チャネル領域に垂直な方向)で測定される。
【0034】
[0034]代替実施形態では、第1の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB1であり、第2の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB2であり、第3の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB3であり、第4の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB4であり、B1、B2、B3、およびB4は、互いに次の関係を有する。
|B1|=|B2|、|B3|=|B4|および|B1|≠|B3|
【0035】
[0035]個々の磁気二重対要素によって誘導される4つの磁気デルタ障壁の強度のそのような関係を用いることにより、チャネル領域に誘導される垂直磁界を誘導することが正味ゼロA型であることが保証され、それによって、チャネルを通過する電子の正味偏極が各磁気二重対要素によって発生することが保証される。B1、B2、B3、およびB4はすべて、z方向(チャネル領域に垂直な方向)で測定される。
【0036】
[0036]別の代替実施形態では、第1の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB1であり、第2の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB2であり、第3の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB3であり、第4の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB4であり、B1、B2、B3、およびB4は、互いに次の関係を有する。
|B1|=|B2|=|B3|=|B4|
【0037】
[0037]ゲートは、パターン化された層を含むことが好ましい。すなわち、ゲートは、パターン化された媒体で作られることが好ましい。このパターン化された媒体は、高いアスペクト比(たとえば、x方向の長さがz方向の長さに比べて短いために、磁化が垂直方向に並びやすいアスペクト比)で作られることが可能な、パターン化された要素を含む。
【0038】
[0038]別の実施形態では、誘導される磁界が、ゲートとチャネル領域との間の界面に平行であり、ソースからドレインに向かう線に垂直である。
【0039】
[0039]本発明による磁気電気電界効果トランジスタは、増幅器またはメモリチップのかたちで実装可能である。
【0040】
[0040]本発明による磁気電気電界効果トランジスタを含む増幅器は、小さな電圧変化に対して感度が高く、ゲート電圧に対してスピン偏極をリニアに変化させる。偏極は電圧に変換することが可能である。さらに、リニアな増加は、フェルミエネルギーのまわりに発生する。
【0041】
[0041]まとめると、本発明の概念の態様は、少なくとも1つの磁気二重対要素を含むゲートを用いて、磁気電気障壁電界効果トランジスタの(好ましくはHEMT様)チャネル領域に磁気デルタ障壁を誘導することに見られる。好ましくは、磁気二重対要素は、正味ゼロA型の垂直磁界を磁気電気障壁電界効果トランジスタのチャネル領域に誘導し、この垂直磁界は、好ましくは、極がチャネル領域の平面にほぼ垂直に並べられた磁石によって誘導され、それによって、チャネル領域の平面に垂直な磁場B2がチャネル領域に誘導される。さらに、磁気電気障壁電界効果トランジスタのゲートに電位が印加される。磁気電気障壁電界効果トランジスタの記載の構造は、チャネル領域に注入された、偏極した電子の偏極が増えることを保証する。永久磁石によって誘導される永久B場の場合でも、スピン偏極の、制御可能な柔軟性のレベルが存在する。これは、磁気電気障壁電界効果トランジスタの、一種の別々のゲートと見られる複数の磁気デルタ障壁を、別々の磁化構成で初期化することが可能なためである。
【0042】
[0042]ある磁気二重対要素と次の磁気二重対要素との間に、非磁性磁気領域を配置することが好ましい。非磁性金属領域の機能は、ゲート電圧印加のための接点を与え、磁気二重対要素同士を互いに隔てるスペーサとして動作することである。磁気領域は、垂直場が、良好に隔てられた2つの方形障壁の理想特性に近づくことが可能なように、互いに隔てられなければならない。代替として、非磁性でない領域を、ある磁気二重対要素と次の磁気二重対要素との間に配置し、ゲート電圧を磁気二重対要素の磁性材料に印加する。磁界Bzを強めることと、磁界Bzの配向を高めることのために軟磁性下層を用いる。すなわち、軟磁性下層は、ゲートの磁気部分からのB場線が、2DEGを通り抜ける際に垂直な進路を維持することを保証する。
【0043】
[0043]磁気デルタ障壁全体にわたる波動関数の振幅および束の連続性の要件次第で、スピンアップ電子およびスピンダウン電子の透過確率が異なり、したがって、キャリア(たとえば、電子)の2DEG内での正味スピン偏極が結果として得られる。本発明は、従来のスピンFETより低いゲート電圧でスピン偏極を増やすことが可能なスピンFETを提供する。好ましくは、ソースは、x方向、すなわち、チャネル領域の方向に偏極した電子を注入し、ドレインは、z方向、すなわち、誘導された磁界の方向に偏極した電子を検出するように適合される。各磁気二重対要素の磁石は、永久磁石、単極書き込みヘッド、電磁石、および/またはこれらの組合せによって実現可能である。
【0044】
[0044]以下では、限定ではない実施形態および図面を参照しながら、本発明を詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
[0056]図1は、本発明による磁気電気障壁電界効果トランジスタ100(スピンFET)の全体的なレイアウトを概略的に示す図である。スピンFET 100は、ガリウムヒ素(GaAs)または別の好適な半導体材料(シリコンなど)からなる基板101を含む。ソース102、(高電子移動度トランジスタ(HEMT)様チャネル領域を形成する)HEMT様多層103、およびドレイン104が、基板101上に配置されている。
【0046】
[0057]ソース102は、スピン偏極キャリア(すなわち、電子)を、HEMT様チャネル領域103に注入するように適合されている。ソースは、非磁性材料、強磁性材料、半金属、または磁気半導体から作られ、x方向に磁化される。x方向は、スピンFETのソース102からドレイン104に向かう方向である。ドレインは、強磁性材料、半金属、または磁気半導体、またはこれらの組合せから作られる。さらに、ドレインは、スピン偏極した電子を検出するように適合され、特に、z方向に偏極した電子を検出するように適合される。z方向は、二次元電子ガス(2DEG)の二次元空間が配置される平面に垂直な方向である。
【0047】
[0058]HEMT様チャネル領域103は、2DEGを生成し、3つの副層を含む。第1の副層105は、基板101上に配置される副層であって、ガリウムヒ素(GaAs)からなり、バッファ層として動作する。第2の副層106は、第1の副層106の上に配置される副層であって、アルミニウムガリウムヒ素(AlGaAs)からなり、スペーサ層として動作する。第3の副層107は、n+ドープアルミニウムガリウムヒ素(n+AlGaAs)からなり、第2の副層106の上に配置される。第3の副層107は、ドナー層として動作する。HEMT様チャネル領域の場合、ゲート絶縁層は不要である。これは、AlGaAs−GaAsの場所に存在するバンドの曲がりが、横断方向(すなわち、HEMT様チャネル領域に垂直な方向)に電流が流れるのを妨げる静電障壁を発生させるからである。
【0048】
[0059]さらに、スピンFETは、ゲート108を含む。ゲート108は、磁気二重対要素を含み、第3の副層107の上に配置される。好ましい実施形態では、磁気二重対要素の数は10である。図1を明瞭にするために、2つの磁気二重対要素109および110のみを示した。各磁気二重対要素は、コバルトクロム白金および/または鉄白金の2つの永久磁石によって実現される。他の好適な材料として、鉄コバルトおよび/またはコバルトパラジウムなどがある。各永久磁石は、永久磁石の磁化が、x方向にほぼ垂直であり、したがって、スピンFETのz方向の磁界(Bz)(すなわち、2DEGに垂直な磁界)を誘導するように磁化される。別の実施形態では、永久磁石の磁化は、x方向にほぼ平行であり、したがって、スピンFETのz方向のフリンジ磁界(Bz)(すなわち、2DEGに垂直な磁界)を誘導する。ほぼ平行な、磁化された永久磁石を有する、本実施形態による磁気二重対要素のより詳細な図を図2に示す。図1に示すように、ある磁気二重対要素と次の磁気二重対要素との間に非磁性金属要素111を配置することが好ましい。非磁性金属要素の機能は、ゲート電圧印加のための接点を与え、磁気領域同士を互いに隔てるスペーサとして動作することである。磁気領域は、垂直場が、良好に隔てられた2つの方形障壁の理想特性に近づくことが可能なように、互いに隔てられなければならない。
【0049】
[0060]さらに、スピンFET 100は、軟磁性下層112を含む。軟磁性下層112は、基板101に埋め込まれ、ゲート108と対向して配置される。軟磁性下層は、磁界Bzを強めることと、磁界Bzの配向を高めることのために用いられる。すなわち、軟磁性下層は、ゲートの磁気部分からのB場線が、2DEGを通り抜ける際に垂直な進路を維持することを保証する。軟磁性下層として好適な材料としては、鉄コバルトボロン、コバルトジルコニウムニオブ、鉄アルミニウム窒素、ニッケル鉄様パーマロイ(Ni0.8Fe0.2)またはNi0.45Fe0.55などがあり、これらに限定されない。軟磁性下層を用いることは、永久磁石の磁化が、x方向にほぼ垂直であり、したがって、スピンFETのz方向の磁界(Bz)(すなわち、2DEGに垂直な磁界)を誘導する実施形態において特に有利である。さらに、2DEG内のDresseIhaus&Rashbaスピン相互作用は、面内軸のまわりでスピン歳差運動をする際の振動の形で、x−y平面内およびz方向のスピンについてのみ検出可能であることに注意されたい。
【0050】
[0061]説明のために、磁気二重対要素によって誘導される磁界Bzを、図1で概略的に描かれたスピンFETのいくつかの例示的寸法とともに、図1に示している。図1にさらに描かれたいくつかの寸法は次のとおりである。
t=200nm(tは、磁性膜として形成される、磁気二重対要素の厚さである)
h=60nm(hは、磁性膜(すなわち、ゲートの底部)からの2DEGの距離である)
Dsd=500nm(Dsdは、ソースとドレインとの間の距離である)
w=150nm(wは、各磁気ストリップ(すなわち、各磁気二重対要素)の幅である)
【0051】
[0062]3つの副層の厚みの合計は、50nmから100nmの範囲である。好ましくは、第1の副層105の厚さが30nmであり、第2の副層106の厚さが5nmであり、第3の副層の厚さが20nmである。軟磁性下層の長さは約440nmであり、これは、約10mTの磁界B0に対応する。さらに、図5に結果が描かれているシミュレーションのために、磁気二重対要素に対して800cm−3の飽和磁化が選択されている。
【0052】
[0063]磁気電気電界効果トランジスタの多層構造の別の可能な構造として、厚さ40nmのn+ドープインジウムガリウムヒ素キャップ層、厚さ30nmのn+ドープインジウムアルミニウムヒ素キャリア供給層、厚さ3.5nmの非ドープインジウムアルミニウムヒ素スペーサ供給層、厚さ2.5nmの非ドープインジウムガリウムヒ素チャネル層、厚さ4nmの非ドープインジウムヒ素挿入層、およびインジウムリン基板上の厚さ約500nmの非ドープインジウムガリウムヒ素バッファ層がある。キャリア供給層およびキャップ層の場合の好適なドープは、4×1018/cm3の範囲であり、ドープにはシリコンを用いる。多層構造の適切な成長温度は約300℃である。
【0053】
[0064]磁気電気電界効果トランジスタの多層構造の可能な反転構造として、厚さ10nmのn+ドープインジウムガリウムヒ素キャップ層、厚さ20nmの非ドープインジウムアルミニウムヒ素ゲートショットキー層、厚さ13.5nmの非ドープインジウムガリウムヒ素チャネル層、厚さ4nmの非ドープインジウムヒ素挿入層、厚さ2.5nmの非ドープインジウムガリウムヒ素チャネル層、厚さ約6nmの非ドープインジウムアルミニウムヒ素スペーサ層、厚さ7nmのn+ドープインジウムアルミニウムヒ素キャリア供給層、およびインジウムリン基板上の厚さ約200nmの非ドープインジウムアルミニウムヒ素バッファ層がある。キャリア供給層およびキャップ層の場合の好適なドープは、4×1018/cm3の範囲であり、ドープにはシリコンを用いる。多層構造の適切な成長温度は約300℃である。
【0054】
[0065]前述の寸法および数はすべて例示のみを目的としたものであり、限定と理解されてはならない。本発明による磁気電気電界効果トランジスタにおけるパラメータの代表的な値は、おおよそ次のとおりである。
キャリア移動度:1.5×104cm2/Vs(300K)および1.11×105cm2/Vs(10K)
キャリア濃度:2.3×1012cm2(300Kおよび10K)
ランデ因子|g|:3.8
ゲート長:0.5μm(300K)、しきい値電圧:−1V、
最大外因性相互コンダクタンス(300K):700mS/mm
【0055】
[0066]図1はさらに、例示的素子のx軸に沿ってシミュレートされた磁界(Bz)特性を示している。B場のピークは約11mTであり、2つのピークの間の間隔は240nmである。しかしながら、B場が10mT、間隔が350nmの場合について理論的計算が行われている。今日のリソグラフィ設備では、500nmのゲート長が製造可能である(ゲート長は、ソースからドレインまでの距離に等しい)。
【0056】
[0067]図2は、本発明の実施形態による磁気二重対要素を詳細に描いた図である。図2は、概略的なHEMT様チャネル領域200を示している。HEMT様チャネル領域は、2DEGを発生させる。HEMT様チャネル領域200の上に、1つの磁気二重対要素201が示されている。磁気二重対要素201は、第1の強磁性領域202(たとえば、第1の永久磁石)と、第2の強磁性領域203(たとえば、第2の永久磁石)とを含む。第1の強磁性領域202と第2の強磁性領域203との間に、非磁性金属領域204を配置することが好ましい。さらに、2つの強磁性領域のそれぞれは、第1の電圧源205および第2の電圧源206として概略的に描かれた電圧源に接続されている。図2では、x軸は左から右である。
【0057】
[0068]第1の磁性領域202の磁化方向は、矢印207で概略的に示され、x軸に平行である。一方、第2の磁性領域203の磁化方向は、矢印208で概略的に示され、x軸に逆平行である。さらに、磁性領域のフリンジ場が描かれており、フリンジ場は垂直磁界を2DEGに誘導する。図2に示すように強磁性領域を配置することにより、磁気二重対要素の正味ゼロA型構成が達成されることが自動的に保証される。
【0058】
[0069]図2ではさらに、磁気ベクトルポテンシャルAの強度を概略的に示している。第1の定義域Iでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロである。第2の定義域IIでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、ゼロより高い値を有する。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第1の強磁性領域202の左端によって実現される第1の磁気デルタ障壁において増える。第3の定義域IIIでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロである。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第1の強磁性領域202の右端によって実現される第2の磁気デルタ障壁において減る。第4の定義域IVでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、ゼロより低い値を有する。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第2の強磁性領域203の左端によって実現される第3の磁気デルタ障壁において減る。第5の定義域Vでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロである。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第2の強磁性領域203の右端によって実現される第4の磁気デルタ障壁において増える。
【0059】
[0070]さらに、図2には電位Uの値が描かれている。電位Uは、電圧源205および206によって誘導される。第1の定義域Iでは、電位Uはゼロである。第2の定義域IIでは、電位Uは、ゼロより高い値を有する。ただし、「ゼロより高い」とは、電位Uがゼロでないこと、すなわち、ゼロでない正の値または負の値を有することを意味する。電位Uの値は、第1の強磁性領域202の左端によって実現される第1の磁気デルタ障壁において増える。第3の定義域IIIでは、電位Uはゼロである。電位Uの値は、第1の強磁性領域202の右端によって実現される第2の磁気デルタ障壁において減る。第4の定義域IVでは、電位Uは、ゼロより高い値を有する。電位Uの値は、第2の強磁性領域203の左端によって実現される第3の磁気デルタ障壁において増える。第5の定義域Vでは、電位Uはゼロである。電位Uの値は、第2の強磁性領域203の右端によって実現される第4の磁気デルタ障壁において減る。
【0060】
[0071]第2の定義域IIおよび第4の定義域IVのx方向の長さはLであり、第3の定義域IIIのx方向の長さはgである。
【0061】
[0072]図3は、本発明の別の実施形態による磁気二重対要素を詳細に描いた図である。図3は、概略的なHEMT様チャネル領域300を示している。HEMT様チャネル領域は、2DEGを発生させる。HEMT様チャネル領域300の上に、1つの磁気二重対要素301が示されている。磁気二重対要素301は、第1の強磁性領域302(たとえば、第1の永久磁石の一部)と、第2の強磁性領域303(たとえば、第2の永久磁石)と、第3の強磁性領域304(たとえば、第3の永久磁石の一部)とを含む。好ましくは、第1の強磁性領域302と第2の強磁性領域303との間に第1の非磁性金属領域305を配置し、第2の強磁性領域303と第3の強磁性領域304との間に第2の非磁性金属領域306を配置する。さらに、2つの非磁性領域のそれぞれは、第1の電圧源307および第2の電圧源308として概略的に描かれた電圧源に接続されている。図3では、x軸は左から右である。
【0062】
[0073]第1の強磁性領域302および第3の強磁性領域304の磁化方向は、それぞれ、矢印309および矢印310で概略的に示され、x軸に対して逆平行である。一方、第2の磁性領域303の磁化方向は、矢印311で概略的に示され、x軸に対して平行である。さらに、磁性領域のフリンジ場が描かれており、フリンジ場は垂直磁界を2DEGに誘導する。図3のように強磁性領域を配置する場合、磁気二重対要素の正味ゼロA型構成を達成するためには、第1の強磁性領域302および第3の強磁性領域304によって誘導される磁界の絶対値が等しいことを保証しなければならない。代替として、極がチャネル領域にほぼ垂直に並べられている磁石によって磁気二重対要素を形成して、垂直磁界をより直接に、2DEGに誘導することが可能である。
【0063】
[0074]さらに図3でも、磁気ベクトルポテンシャルAの強度を概略的に示している。第1の定義域Iでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロである。第2の定義域IIでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、ゼロより高い値を有する。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第1の強磁性領域302の右端によって実現される第1の磁気デルタ障壁において増える。第3の定義域IIIでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、第2の定義域IIでの値より高い値まで増える。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第2の強磁性領域302の左端によって実現される第2の磁気デルタ障壁において増える。第4の定義域IVでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、第2の定義域IIと同じ値を有する。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第2の強磁性領域303の右端によって実現される第3の磁気デルタ障壁において減る。第5の定義域Vでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロである。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第3の強磁性領域304の左端によって実現される第4の磁気デルタ障壁において減る。
【0064】
[0075]さらに、図3には電位Uの値が描かれている。電位Uは、電圧源307および308によって誘導される。第1の定義域Iでは、電位Uはゼロである。第2の定義域IIでは、電位Uは、ゼロより高いか低い値を有する。電位Uの値は、第1の非磁性領域305の左端によって実現される第1の磁気デルタ障壁において増える。第3の定義域IIIでは、電位Uはゼロである。電位Uの値は、第1の非磁性領域305の右端によって実現される第2の磁気デルタ障壁において減る。第4の定義域IVでは、電位Uは、ゼロより高いか低い値を有する。電位Uの値は、第2の非磁性領域306の左端によって実現される第3の磁気デルタ障壁において増える。第5の定義域Vでは、電位Uはゼロである。電位Uの値は、第2の非磁性領域306の右端によって実現される第4の磁気デルタ障壁において減る。
【0065】
[0076]第2の定義域IIおよび第4の定義域IVのx方向の長さはLであり、第3の定義域IIIのx方向の長さはgである。
【0066】
[0077]図4では、磁気デルタ障壁のいくつかの構成を概略的に示している。図4の(a)〜(f(では、磁気ベクトルポテンシャルAの強度を、様々な正味ゼロA型構成について概略的に示している。本発明によるスピンFETでは、これらすべての構成を用いることが可能である。図4の(a)の第1の定義域Iでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロである。第2の定義域IIでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、ゼロより高い値を有する。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第1の磁気デルタ障壁において増える。第3の定義域IIIでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、第2の定義域IIでの値より高い値まで増える。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第2の磁気デルタ障壁において増える。第4の定義域IVでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、第2の定義域IIと同じ値を有する。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第3の磁気デルタ障壁において減る。第5の定義域Vでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロである。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第4の磁気デルタ障壁において減る。図示した正味ゼロA型構成は、図3に描かれた構成と同じである。
【0067】
[0078]図4の(b)の第1の定義域Iでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロである。第2の定義域IIでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、ゼロより高い値を有する。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第1の磁気デルタ障壁において増える。第3の定義域IIIでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロまで減る。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第2の磁気デルタ障壁において減る。第4の定義域IVでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、ゼロより低い値を有する。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第3の磁気デルタ障壁において減る。第5の定義域Vでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロである。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第4の磁気デルタ障壁において増える。図示した正味ゼロA型構成は、図2に描かれた構成と同じである。
【0068】
[0079]図4の(c)の第1の定義域Iでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロである。第2の定義域IIでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、ゼロより低い値を有する。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第1の磁気デルタ障壁において減る。第3の定義域IIIでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロまで増える。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第2の磁気デルタ障壁において増える。第4の定義域IVでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、ゼロより低い値を有する。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第3の磁気デルタ障壁において減る。第5の定義域Vでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロである。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第4の磁気デルタ障壁において増える。図示した正味ゼロA型構成は、図2に描かれた構成と類似している。図4の(c)に示した構成は、図2に示した構成の、強磁性領域202の磁化方向を示す矢印207を反転させた構成によって達成されるであろう。
【0069】
[0080]図4の(d)の第1の定義域Iでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロである。第2の定義域IIでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、ゼロより低い値を有する。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第1の磁気デルタ障壁において減る。第3の定義域IIIでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、第2の定義域IIでの値より低い値まで減る。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第2の磁気デルタ障壁において減る。第4の定義域IVでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、第2の定義域IIと同じ値を有する。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第3の磁気デルタ障壁において増える。第5の定義域Vでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロである。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第4の磁気デルタ障壁において増える。図示した正味ゼロA型構成は、図3に描かれた構成と類似している。図4の(d)に示した構成は、図3に示した構成の、強磁性領域302、303、および304の磁化方向を示す矢印309、310、および311を反転させた構成によって達成されるであろう。
【0070】
[0081]図4の(e)の第1の定義域Iでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロである。第2の定義域IIでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、ゼロより低い値を有する。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第1の磁気デルタ障壁において減る。第3の定義域IIIでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロまで増える。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第2の磁気デルタ障壁において増える。第4の定義域IVでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、ゼロより高い値を有する。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第3の磁気デルタ障壁において増える。第5の定義域Vでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロである。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第4の磁気デルタ障壁において減る。図示した正味ゼロA型構成は、図2に描かれた構成と類似している。図4の(e)に示した構成は、図2に示した構成の、強磁性領域202および203の磁化方向を示す矢印207および208を反転させた構成によって達成されるであろう。
【0071】
[0082]図4の(f)の第1の定義域Iでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロである。第2の定義域IIでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、ゼロより高い値を有する。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第1の磁気デルタ障壁において増える。第3の定義域IIIでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロまで減る。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第2の磁気デルタ障壁において減る。第4の定義域IVでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、ゼロより高い値を有する。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第3の磁気デルタ障壁において増える。第5の定義域Vでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロである。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第4の磁気デルタ障壁において減る。図示した正味ゼロA型構成は、図2に描かれた構成と類似している。図4の(f)に示した構成は、図2に示した構成の、強磁性領域203の磁化方向を示す矢印208を反転させた構成によって達成されるであろう。
【0072】
[0083]例として、図4の(g)では、正味ゼロA型を有しない構成の磁気ベクトルポテンシャルAを示している。したがって、図4の(g)に示した構成は、本発明によるスピンFETにおいてはあまり好適ではない。それは、図4の(g)に示した例に従う複数の磁気二重対要素を用いることが、透過確率が低くなることにつながるためである。図4の(g)の第1の定義域Iでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロである。第2の定義域IIでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、ゼロより高い値を有する。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第1の磁気デルタ障壁において増える。第3の定義域IIIでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、第2の定義域IIでの値より高い値まで増える。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第2の磁気デルタ障壁において増える。第4の定義域IVでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、第3の定義域IIIでの値より高い値を有する。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第3の磁気デルタ障壁において増える。第5の定義域Vでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、第4の定義域IVでの値より高い。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第4の磁気デルタ障壁において増える。そのような構成は、透過確率が低下することにつながる。それは、磁気デルタ障壁を横切るごとに磁気ベクトルポテンシャルAが増え、それが、スピンFETのチャネルを通過する電子の偏向につながり、それによって電子のx方向の運動エネルギーが減るからである。
【0073】
[0084]本発明によるスピンFETのチャネル領域を通る電子の正味スピン偏極を発生させるために、図4の(a)〜(g)で示したすべての磁気特性を用いることが可能である。図示した構成のいくつかは、電位を印加することが必要である。特に、定義域IIおよびIVでは、電圧+Uおよび−Uをそれぞれ印加することが必要である。これらの構成は、図4の(a)、(c)、(d)および(f)に示してある。一方、図4の(b)および(e)に示した構成は、定義域IIおよびIVで電圧の印加がなくてもスピン偏極を与える。
【0074】
[0085]図5は、本発明による磁気電気障壁電界効果トランジスタのゲートの様々な構成についてのシミュレーションの結果を示している。図5の(a)〜(h)の各図では、本発明によるスピンFETのHEMT様チャネル領域を通過する電子の、計算された透過確率を線500として示している。さらに、HEMT様チャネル領域を通過する電子の偏極を線501として示している。図5の(a)〜(h)のx軸は、電子エネルギーを任意単位で示している。y軸は、電子の透過確率および偏極を示している。図5の(a)〜(h)に示したすべての計算結果において、磁気デルタ障壁の強度は、B1=B2=+2(任意単位)、およびB3=B4=−2(任意単位)であった。
【0075】
[0086]図5の(a)〜(d)は、1個の磁気二重対要素を有するゲートを含むスピンFETのシミュレーションの結果を示している。図5の(a)は、ゲート電圧が0.17mVの場合の透過確率および偏極を示している。図5の(b)は、ゲート電圧が1.1mVの場合の透過確率および偏極を示している。図5の(c)は、ゲート電圧が3.0mVの場合の透過確率および偏極を示している。図5の(d)は、ゲート電圧が6.8mVの場合の透過確率および偏極を示している。これらの図は、磁気二重対要素が1個しかない場合には、HEMT様チャネル領域を通過する電子の偏極が非常に低いことを示している。
【0076】
[0087]図5の(e)〜(h)は、27個の磁気二重対要素を有するゲートを含むスピンFETのシミュレーションの結果を示している。27という数字は、磁気二重対要素の任意の数の一例にすぎない。図5の(e)は、ゲート電圧が0.17mVの場合の透過確率および偏極を示している。図5の(f)は、ゲート電圧が1.1mVの場合の透過確率および偏極を示している。図5の(g)は、ゲート電圧が3.0mVの場合の透過確率および偏極を示している。図5の(h)は、ゲート電圧が6.8mVの場合の透過確率および偏極を示している。これらの図は、磁気二重対要素が27個の場合には、HEMT様チャネル領域を通過する電子の偏極が、磁気二重対要素が1個しかない場合に比べて大幅に増えることを示している。
【0077】
[0088]いずれの場合も、すなわち、二重対要素が1個の構成の場合も、二重対要素が27個の構成の場合も、ゲート電圧が数mV程度であっても、透過確率が大幅に変化することを示している。透過確率曲線は、n=1の場合には電子エネルギーに対する変化がわずかであるが、n=27の場合には、変化が大きくなり、電子エネルギーが低いところで明確な共振ピークが生じている。この共振挙動は、特定の値の電子波長だけが優先的に障壁を透過するという事実によるものであり、この波長選択は、電子が横切らなければならない障壁(すなわち、二重対要素)が多くなるほど特定的になる。この共振挙動は、スピンアップ電子とスピンダウン電子とで選択される波長がわずかに異なるため、高いスピン偏極を達成するためには有利である。したがって、1つのスピンが優先的に透過し、他のスピンがブロックされる状況につながり、スピン偏極が50%を超えることにつながる。図5は、電子エネルギーが低いところで、狭いピークの高スピン偏極を達成することが可能であることを示しており、このことは、ゲートが値のわずかなシフトでスピン偏極特性を切り替えるよう動作することが可能になるように、高スピン偏極が高透過確率の領域にも対応することを保証する。電子エネルギーが高いところでは、静電界および磁界によって生じた障壁が問題にならなくなり、高い透過確率が保証される。さらに、磁界Bに比例する、スピンアップエネルギーとスピンダウンエネルギーの差が問題にならなくなり、スピン偏極が低下する。
【0078】
[0089]計算によれば、電子のスピン偏極は、非常に低い電圧により変動する。磁界を大きくしても、スピン偏極が大幅に変化する。図5は、磁気二重対要素の数(すなわち、磁気デルタ障壁)を増やすと、スピン偏極が増えることを示している。
【0079】
[0090]以下のパラグラフでは、スピン偏極のいくつかの理論的導出を与える。2DEG内の電子運動は、面内波動ベクトルを表すkxおよびkyにより、基底状態のフェルミ円で表すことが可能である。電子運動に対するUおよびB障壁の作用を表すハミルトニアンは、次のとおりである。
【数1】
ただし、m*、m0は、それぞれ電子の有効質量および実質量であり、g*は有効ランデ因子であり、σ=+1(スピンアップ電子)、−1(スピンダウン電子)であり、px、pyは、それぞれx方向およびy方向の電子運動量である。yにおける並進対称を考慮すると、電子の波動関数は
【数2】
で与えられる。古典運動では、+pxを有してBz内を移動する電子は、ローレンツ力を受け、したがって、−yに偏向する。したがって、z方向の磁界の中をx方向に移動する電子は、運動の方向に運動エネルギーを消費して、横のy方向に運動エネルギーを取得する。このシステムは、自由度1のラグランジアン
【数3】
で表すことが可能である(
【数4】
はy方向の速度)。ラグランジアンのルジャンドル変換
【数5】
を実行すると、式(1)のハミルトニアンにpy+eAyが加わったものが得られる。発明者らの研究では、図1の二重対を、二重対の右端で正味運動利得がゼロになるように設計している。使用可能な全エネルギーE−Ueffは、kxが消えていかないことを保証するのに常に十分である。これにより、ゼロA二重対の数を増やすことによってPを増やすことが可能である。計算を簡単にするために、次のように、すべてのパラメータを無次元単位まで小さくする:x→lBx、
【数6】
、
【数7】
、ωc=eB0/m*。B0は、何らかの、共通に達成可能な磁界である。
【0080】
[0091]ハミルトニアンの最初の量子化により、次式が得られる。
【数8】
【0081】
[0092]一例として、図4の(a)および(g)の構成の波動ベクトルは、式(2)から導出される。
【0082】
[0093]図4の(a)で描かれた構成の波動ベクトルは次のとおりである。
【数9】
【0083】
[0094]図4の(g)で描かれた構成の波動ベクトルは次のとおりである。
【数10】
【0084】
[0095]電子波動ベクトルの一般形式は、前述の式から次のように得られる。
【数11】
【0085】
[0096]Pは、Tを用いて式(3)で定義される。
【数12】
【0086】
[0097]磁気デルタ障壁における波動関数の振幅および束の連続性のマッチングから、1つの二重対磁気電気障壁の伝送行列成分が得られる。デルタ障壁における束のマッチングは、次のように実行できる。
【数13】
【0087】
[0098]1つの二重対磁気電気障壁の伝送行列成分を以下に示す。
【数14】
ただし、ki、L、およびgは図6に示してある。
【0088】
[0099]図6は、複数の二重障壁対の基本単位として動作する二重対を概略的に示している。各二重対の領域IIおよびIVに電圧が印加される。各二重対の磁気障壁構成は、二重対を通過した後の、領域IVにおける磁気ベクトルポテンシャル(A)の正味変化が常に0であることを保証する。
【0089】
[00100]前述の伝送行列成分は、図6に概略的に示した二重対磁気電気障壁の全体にわたる波動関数の振幅を表す。
【0090】
[00101]さらに、透過確率およびフェルミエネルギーを用いてコンダクタンスGが得られる。
【数15】
【0091】
[00102]図7は、本発明の別の実施形態による磁気電気障壁電界効果トランジスタを概略的に示している。図7aに概略的に描かれた実施形態によれば、磁気電気障壁電界効果トランジスタ700は、基板701、ソース702、2DEGを発生させるように適合されたチャネル領域703、およびドレイン704を含む。さらに磁気電気障壁電界効果トランジスタ700は、6個の要素706、707、708、709、710、および711を有するパターン化された媒体を含むゲート705を含む。この6という数は例示を目的としたものにすぎず、この実施形態による磁気電気障壁電界効果トランジスタは6個の要素に限定されない。好ましくは、これらの要素は磁気二重対要素としてグループ化される(すなわち、要素の数は4の倍数である)。要素706、707、708、709、710、および711は、チャネル領域703に磁界を誘導するように適合され、その磁化方向は、ゲートとチャネル領域との間の界面に平行であって、ソースからドレインに向かう線に垂直(すなわち、電子の移動方向に垂直)な方向である。したがって、磁界は、By場であり、紙の表面を出入りする概略矢印によって概略的に示されている。さらに図7bでは、様々な電子エネルギーに対する、透過確率712(暗い線)を計算するシミュレーションの結果、および結果として得られるスピン偏極713(明るい線)を示しており、このシミュレーション結果は、図5に示したシミュレーションと類似している。
【0092】
[00103]図8は、本発明の実施形態による磁気電気障壁電界効果トランジスタを概略的に示している。図8aに概略的に描かれた実施形態によれば、磁気電気障壁電界効果トランジスタ800は、基板801、ソース802、2DEGを発生させるように適合されたチャネル領域803、およびドレイン804を含む。さらに磁気電気障壁電界効果トランジスタ800は、6個の要素806、807、808、809、810、および811を有するパターン化された媒体を含むゲート805を含む。この6という数は例示を目的としたものにすぎず、この実施形態による磁気電気障壁電界効果トランジスタは6個の要素に限定されない。好ましくは、これらの要素は磁気二重対要素としてグループ化される(すなわち、要素の数は4の倍数である)。要素806、807、808、809、810、および811は、チャネル領域803に磁界を誘導するように適合され、その磁化方向は、ゲートとチャネル領域との間の界面に垂直であって、ソースからドレインに向かう線に垂直(すなわち、電子の移動方向に垂直)な方向である。したがって、磁界は、Bz場であり、左から右、または右から左に向かう概略矢印によって概略的に示されている。
【0093】
[00104]さらに、図8bでは、様々な電子エネルギーEおよび様々なゲート電圧Vに対してスピン偏極Pを計算するシミュレーションの結果を三次元プロットで示している。この三次元プロットは、特定の電子エネルギー(たとえば、5E0および10E0(10E0はほぼフェルミエネルギー))の場合にスピン偏極Pがゲート電圧Vにほぼ線形依存することを示している。この、ほぼ線形な部分を、図8では、ブラケット812および813とマーキングしている。この、ほぼ線形な部分は、E=5E0の場合にはゲート電圧の約20から35に延びている(ゲート電圧を表す数は任意単位である)。この、ほぼ線形な部分は、E=10E0の場合にはゲート電圧の約20から45に延びている(ゲート電圧を表す数は任意単位である)。この、ほぼ線形な依存により、電圧の小変化に対する感度が高く、ゲート電圧の増加に対してスピン偏極(この偏極は電圧に変換することが可能)のほぼ線形な増加を呈する増幅器として、磁気電気障壁電界効果トランジスタを用いることが可能である。
【0094】
[00105]本発明による磁気電気障壁電界効果トランジスタによって実現可能な別のスピントロニクス素子として、不揮発性メモリセルがある。その概略構造を図9に示す。不揮発性メモリセルの磁気電気障壁電界効果トランジスタ900は、基板901、ソース902、2DEGを発生させるように適合されたチャネル領域903、およびドレイン904を含む。さらに磁気電気障壁電界効果トランジスタ900は、ゲート905を含み、ゲート905は、固定磁化をチャネル領域に誘導する第1の要素906と、切り換え可能磁界をチャネル領域に誘導する第2の要素907とを含む。第1の要素906および第2の要素907は、磁気二重対要素を構成する。ソースとドレインとの間の線に沿っての第1の要素906および第2の要素907の長さは同じであることが好ましい。
【0095】
[00106]図9aに示されている磁気電気障壁電界効果トランジスタ900は高抵抗状態にある。一方、図9bに示されている磁気電気障壁電界効果トランジスタ900は低抵抗状態にある。磁気電気障壁電界効果トランジスタ900は、第2の要素907の磁界の方向が反転するように第2の要素907を切り替えることによって、それら2つの状態の間で切り替えることが可能である。磁界方向の反転は、図9aでは左を向いている矢印908として概略的に描かれ、図9bでは矢印908は右を向いている。図9cおよび図9dでは、様々な電子エネルギーおよび障壁の数(すなわち、磁気二重対要素の数)に対する結果として得られるスピン偏極を示している。図9cは、高抵抗状態の場合に図9aの磁気電気障壁電界効果トランジスタ900が、電子エネルギー10E0(ほぼフェルミエネルギー)に対してスピン偏極を呈することを示している。スピン偏極の値は、障壁の数とともに増える。図9dは、低抵抗状態の場合に図9bの磁気電気障壁電界効果トランジスタ900が、ゼロであるスピン偏極を呈することを示している。
【0096】
[00107]図9で概略的に描かれた不揮発性メモリセルが、チャネル領域を通過する電子のスピン偏極を変化させることに基づくのに対し、図10で概略的に描かれた不揮発性メモリセルは、透過しきい値型である。
【0097】
[00108]不揮発性メモリセルの磁気電気障壁電界効果トランジスタ1000は、基板1001、ソース1002、2DEGを発生させるように適合されたチャネル領域1003、およびドレイン1004を含む。さらに磁気電気障壁電界効果トランジスタ1000は、ゲート1005を含み、ゲート1005は、固定磁化をチャネル領域1003に誘導する第1の要素1006と、切り換え可能磁界をチャネル領域1003に誘導する第2の要素1007と、固定磁化をチャネル領域1003に誘導する第3の要素1008と、切り換え可能磁界をチャネル領域1003に誘導する第4の要素1009とを含む。さらに、不揮発性メモリセルは、軟磁性下層1010を含む。第1の要素1006、第2の要素1007、第3の要素1008、および第4の要素1009は、磁気二重対要素を構成し、この磁化は垂直型である。すなわち、要素1006、1007、1008、および1009は、個々の要素のそれぞれのN極およびS極の間の線がチャネル領域1003の面にほぼ垂直になるように並べられる。これを、図10に示した矢印で概略的に示した。
【0098】
[00109]図10aに示した磁気電気障壁電界効果トランジスタ1000は、低透過しきい値状態または高電流状態、すなわち、第2の要素1007および第4の要素1009によって誘導される磁化が、第1の要素1006および第3の要素1008によって誘導される磁化に対して逆平行である状態にあり、一方、図10cに示した磁気電気障壁電界効果トランジスタ1000は、高透過しきい値状態または低電流状態、すなわち、第2の要素1007および第4の要素1009によって誘導される磁化が、第1の要素1006および第3の要素1008によって誘導される磁化に対して平行である状態にある。磁気電気障壁電界効果トランジスタ1000は、第2の要素1007および第4の要素1007の磁界の方向が反転するように第2の要素1007および第4の要素1009を切り替えることによって、それら2つの状態の間で切り替えることが可能である。図10bおよび図10dでは、様々な電子エネルギーおよび障壁の数(すなわち、磁気二重対要素の数)に対する結果として得られる透過確率を示している。図10bは、低透過しきい値状態の場合に図10aの磁気電気障壁電界効果トランジスタ1000が、約10E0(ほぼフェルミエネルギー)のしきい値を呈することを示している。このしきい値は、障壁の数にはほとんど依存しない。図10dは、高透過しきい値状態の場合に図10bの磁気電気障壁電界効果トランジスタ1000が、図10bに比べて格段に高い透過しきい値を呈することを示している。透過しきい値は、障壁の数に強く依存する。
【0099】
[00110]図11は、本発明の実施形態によるプログラマブルAND/NANDゲートを概略的に示している。AND/NANDゲートの磁気電気障壁電界効果トランジスタ1100は、基板1101、ソース1102、2DEGを発生させるように適合されたチャネル領域1103、およびドレイン1104を含む。さらに磁気電気障壁電界効果トランジスタ1100は、ゲート1105を含み、ゲート1105は、固定磁化をチャネル領域1103に誘導する第1の要素1106と、切り換え可能磁界をチャネル領域1103に誘導する第2の要素1107と、固定磁化をチャネル領域1103に誘導する第3の要素1108と、切り換え可能磁界をチャネル領域1103に誘導する第4の要素1009とを含む。さらに、不揮発性メモリセルは、軟磁性下層1110を含む。第1の要素1106、第2の要素1107、第3の要素1108、および第4の要素1109は、磁気二重対要素を構成し、この磁化は垂直型である。すなわち、要素1106、1107、1108、および1109は、個々の要素のそれぞれのN極およびS極の間の線がチャネル領域1103の面にほぼ垂直になるように並べられる。これを、図11に示した矢印で概略的に示した。さらに、第2の要素1107および第4の要素1109にそれぞれ接続される入力1および入力2を概略的に示した。
【0100】
[00111]入力1および入力2に様々な信号を用いることにより、図11のAND/NANDゲートの様々な状態を実現できる。一例として、入力1および入力2の様々な信号に対して透過しきい値を用いることにより、ANDゲートを実現することが可能である。たとえば、出力、すなわち、電子のチャネル領域への透過を、入力1および入力2に信号ロー(0)が印加された場合はロー(0)、入力1に信号ローが印加され、入力2に信号ハイ(1)が印加された場合はロー(0)、入力1に信号ハイ(1)が印加され、入力2に信号ロー(0)が印加された場合はロー(0)、および入力1および入力2に信号ハイ(1)が印加された場合はハイ(1)となるように設定することが可能である。したがって、図11に示した、本発明の実施形態によるプログラマブルAND/NANDゲートによって論理ANDゲートを実現することが可能である。
【0101】
[00112]まとめると、本発明の概念の態様は、少なくとも1つの磁気二重対要素を含むゲートを用いて、磁気電気障壁電界効果トランジスタのHEMT様チャネル領域に磁気デルタ障壁を誘導することに見られる。磁気二重対要素は、正味ゼロA型の垂直磁界を磁気電気障壁電界効果トランジスタのHEMT様チャネル領域に誘導する。さらに、磁気電気障壁電界効果トランジスタのゲートに電位が印加される。磁気電気障壁電界効果トランジスタの記載の構造は、HEMT様チャネル領域に注入された、偏極した電子の偏極が増えることを保証する。永久磁石によって誘導された永久B場の場合でも、様々な磁化構成により、複数の磁気デルタ障壁を初期化および変更することが可能なので、スピン偏極の制御の自由度が存在する。さらに、ゲートの近傍に位置する書き込み線を流れる電流を用いて、ゲートの磁化を変化させることが可能である。
【0102】
[00113]本発明およびその利点について詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲において定義される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に関して様々な変更、置換、および改変が可能であることを理解されたい。
【0103】
なお、本出願においては、以下の文献を引用した。
[1] Supriyo Datta, and Biswajit Das, Appl.Phys. Lett. 56 (7), 665 (1989)
[2] Amlan Majumdar, Phys. Rev. B 54, 11911(1996)
[3] Yong Guo, Binglin Gu, and Wenhui Duan,Yu Zhang, Phys. Rev. B 55,9314 (1997)
[4] G. Papp, F. M. Peeters, Appl. Phys.Lett. 78,2184 (2001)
[5] H. Z. Xu and Y. Okada, Appl. Phys.Lett. 79,3119 (2001)
[6] Y. Jiang, Jalil MBA, and T. S. Low, Appl.Phys. Lett. 80, 1673 (2002)
[7] Yong Guo, Jian-Hua Qin, Xn-Yi Chen, andBing-Lin Gu, Semicond. Sci. Technol. 18, 297-299 (2003)
[8] Takaaki Koga, Junsaku Nitta, TatsushiAkazaki, and Hideaki Takayanagi, Phys. Rev. Lett. 89, 046801-1 (2002)
[9] P. R. Hammar, B. R. Bennet, M. J. Yang,and Mark Johnson, Phys. Rev. Lett. 83,203 (1999)
[10] Jun-ichiro Inoue, Gerrit E. W. Bauer,and Laurens W. Molenkamp, Phys. Rev. B 67, 033104(2003)
[11] E. I. Rashba, and Al. L. Efros, Phys.Rev. Lett. 91, 126405 (2003)
[12] Laurens W. Molenkamp, G. Schmidt, andGerrit E. W. Bauer, Phys. Rev. B 64,121202 (R), 2001
[13] John Schliemann, and Daniel Loss,Phys. Rev. B 68, 165311 (2003)
[14] John Schliemann, J. Carlos Egues, andDaniel Loss, Phys. Rev. Lett. 90,146801-1 (2003)
[15] US patent 5,654,566
[16] US patent 6,218,718
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の実施形態による磁気電気障壁電界効果トランジスタ(スピンFET)を概略的な全体レイアウトを示す図である。
【図2】本発明の別の実施形態による磁気二重対要素を詳細に描いた図である。
【図3】本発明のさらなる実施形態による磁気二重対要素を詳細に描いた図である。
【図4】正味ゼロA型構成の概略図である。
【図5】本発明の実施形態による磁気電気障壁電界効果トランジスタのゲートの様々な構成についてのシミュレーションの結果を示す図である。
【図6】複数の障壁対の基本単位として動作する二重対を概略的に示す図である。
【図7】本発明の別の実施形態による磁気電気障壁電界効果トランジスタを概略的に示す図である。
【図8】本発明による磁気電気障壁電界効果トランジスタを含む増幅器の概略と、様々な電子エネルギーおよびゲートに印加される様々な電圧に対する結果であるスピン偏極とを示す図である。
【図9】本発明の実施形態による磁気電気障壁電界効果トランジスタの中の不揮発性メモリセルを概略的に示す図である。
【図10a】本発明の別の実施形態による磁気電気障壁電界効果トランジスタの中の不揮発性メモリセルを概略的に示す図である。
【図10b】本発明の別の実施形態による磁気電気障壁電界効果トランジスタの中の不揮発性メモリセルを概略的に示す図である。
【図10c】本発明の別の実施形態による磁気電気障壁電界効果トランジスタの中の不揮発性メモリセルを概略的に示す図である。
【図10d】本発明の別の実施形態による磁気電気障壁電界効果トランジスタの中の不揮発性メモリセルを概略的に示す図である。
【図11】本発明の実施形態によるプログラマブルAND/NANDゲートを概略的に示す図である。
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、主に電界効果素子に関する。特に、本発明は、磁気電気障壁電界効果トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]スピントロニクス(スピンエレクトロニクス)は、固体物理学における電子スピンの役割、ならびにスピン特性を活用する素子の可能性の研究を意味する。DattaとDasによる、半導体スピントロニクス素子の最も初期の提案の1つが、スピン偏極電界効果トランジスタ(スピンFET)[1]に関するものであり、この中では、高移動度チャネルに移動した、スピン偏極した電子を注入および検出するために、ソース端子とドレイン端子とが強磁性材料であった。スピンFETのコンダクタンスは、チャネル内の電子スピン配向によって変わり、ドレイン端子の磁化に対するゲート電圧で制御することが可能であり、これによってスピンベースモードの動作が行われる。
【0003】
[0003]スピン偏極電流を強磁性体金属または磁性半導体から半導体に注入することを前提とした、スピントロニクスについての他の初期の試みは、非磁性体金属をスピンアライナとして用いる場合の伝導率の不一致の問題や、磁性半導体を用いる場合のキュリー温度が低い問題に直面している。
【0004】
[0004]最近の研究[2、3]では、スピン偏極(P)が、空間的に均質でない、平面に対して垂直な磁気電気障壁の影響下で電流が二次元電子ガス(2DEG)平面を横切ることによって達成可能であることが示されている。しかしながら、計算[4、5、6]では、反対称デルタ磁気障壁は偏極を誘導できないことが示されている。その後、Yongら[7]によって、単一電子ハミルトニアンで表される対称デルタ障壁であれば小さい正味の偏極を誘導できることが示されている。偏極を増やす1つの方法は、そのような対称障壁の数を増やすことであろう。しかしながら、そのような試みは、電子が単一障壁を横切るたびに透過確率(T)が低下するために、透過確率を下げることにもつながる。これは、電子をy方向に偏向させると電子のx方向の位置エネルギーまたは運動エネルギーが減り、x方向の残りの運動エネルギーが磁気障壁を突破するのに十分でない可能性があるためである。さらに、多くの障壁が横切られる場合は特に、対称障壁を実現するのが困難である。
【0005】
[0005][8]では、Rashbaスピン軌道相互作用定数の値の探求方法が示されている。[9]では、強磁性体半導体界面でのスピン注入が観察されている。[10]では、スピン軌道相互作用を用いて無秩序な二次元電子ガスの拡散コンダクタンステンソルを導出する方法が開示されている。[11]では、量子井戸に印加された時間依存ゲート電圧による擬似二次元電子のスピン操作の理論が編み出されている。[12]では、Rashba分裂伝導帯の速度演算子を導出する方法が開示されている。[13]では、二次元電子ガスにおいて、Rashba型およびDresselhaus型の両方のスピン軌道相互作用の存在が異方性散乱関係およびフェルミコンターにつがなることが開示されている。[14]では、Rashba型およびDresselhaus型の両方のスピン軌道相互作用に基づくスピン電界効果トランジスタが提案されている。[15]では、デジタル情報の不揮発性ストレージのメモリ素子として用いることが可能なハイブリッド磁気スピン注入FET構造が開示されている。[16]では、半導体のベースとコレクタとの間に磁気的に制御可能な障壁を設けてコレクタへの電荷キャリアの拡散を制御するスピントランジスタが開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[0006]以上の研究成果にもかかわらず、ゲートに印加される電圧を増やさずに、スピンFETのチャネル領域に注入される電子のスピン偏極を増やすスピンFET、すなわち、電子の偏極が、ゲートに印加される電圧に対して、より高感度であるスピンFETが有用であろう。
【0007】
[0007]本発明の対象は、
チャネル領域と、
チャネル領域の一方の側に接続され、チャネル領域に電子を注入するように適合されたソースと、
チャネル領域の反対側に接続され、スピン偏極した電子を検出するように適合されたドレインと、
4つの磁気要素を備える磁気二重対要素を少なくとも1つ備えるゲートとを備える磁気電気電界効果トランジスタであって、各磁気要素がチャネル領域に磁界を誘導するように適合され、各磁気二重対要素の誘導された磁界の合計がほぼゼロになるように制御することが可能であり、ゲートがチャネル領域に電界を誘導するようにさらに適合された磁気電気電界効果トランジスタである。
【0008】
[0008]説明のために、本発明を、ゲート、ソース、およびドレインを備える磁気電気スピンFETの形のスピントロニクス素子として実施することが可能である。本発明の他の実施形態として、プログラマブル不揮発性メモリセル、非常に低い電圧で動作可能な電圧増幅器、スピン電流源、プログラマブルスピン論理(たとえば、磁気センサ、アナログデジタル変換器、デコーダおよび/または論理ゲート)などがあり、これらに限定されない。一般的に言えば、本発明は、ゲートされることが可能であって、弾道伝導の発生を可能にする任意のナノ素子(たとえば、高品質半導体ナノワイヤおよびカーボンナノチューブ)の形で実施可能である。スピントロニクス素子は、電流がソースからドレインに流れる際に通り抜ける二次元電子ガス(2DEG)を生成するために用いられる高電子移動度トランジスタ(HEMT)のような多層に基づくことが好ましい。ソースは、電流注入装置として機能する。ドレインは、電流受取装置、電流フィルタ、スピン検出装置、または抵抗検出装置として機能する。ゲートは、チャネル領域に磁化を誘導するように適合された材料を備える。ゲートは、磁化を誘導するために、少なくとも1つの磁気二重対要素を備える。すなわち、少なくとも4つの磁気デルタ障壁がチャネル領域に誘導される。スピントロニクス素子のスピン偏極は、磁気障壁と電気障壁との組合せによって制御される。磁気障壁は、ゲート電極の磁化によって生成され、電気障壁は、ゲートに印加された電圧バイアスから発生する。ゲート電圧を変えると、電流のスピン偏極が変化する。
【0009】
[0009]本発明においては、「磁気要素」という用語は、磁気デルタ障壁を発生させる(たとえば、スピンFETのチャネル領域に磁気デルタ障壁を誘導する)ことに好適な要素を意味する。そのような磁気要素は、単極書き込みヘッドまたは極(すなわち、磁石(たとえば、永久磁石または電磁石)のS極またはN極)であることが可能である。この定義によれば、1つの永久磁石は、2つの磁気要素(すなわち、一対の要素)を与えることが可能である。これは、永久磁石がチャネル領域に平行に並べられた場合、すなわち、永久磁石のN極とS極とをつなぐ線がチャネル領域に平行に並べられた場合に、永久磁石のS極およびN極がスピンFETのチャネル領域に磁気デルタ障壁を与えることが可能だからである。したがって、1つの磁気二重対要素が、2対の磁気要素を備え、4つのデルタ障壁を誘導する。
【0010】
[0010]一実施形態では、誘導された磁界は、ゲートとチャネル領域との間の界面に垂直である。
【0011】
[0011]本発明の利点の1つは、垂直磁界(垂直方向のB場)が存在する場合に、ゲートに印加される電圧バイアスの小変動に対するスピン偏極の感度が高いことである。スピン偏極は、数ミリボルト程度の電圧変化に対して感度が高い。
【0012】
[0012]各磁気二重対要素によって誘導される磁界はゼロであることが好ましい。
【0013】
[0013]本発明の実施形態によれば、磁気二重対要素によって誘導される磁気障壁は、いわゆる「正味ゼロA型」の磁気障壁である。「正味ゼロA型」は、磁気二重対要素によって誘導されるすべての磁気障壁の合計がゼロであることを意味し、「A」は磁気ベクトルポテンシャルである。たとえば、磁気二重対要素が1つの場合、「正味ゼロA型」は、それぞれの磁界強度がB1、B2、B3、およびB4であって、磁気二重対要素によってチャネル領域に誘導される4つの磁気デルタ障壁の合計がゼロになること(すなわち、B1+B2+B3+B4=0)を意味する(ただし、B1、B2、B3、およびB4はz方向の磁界である)。
【0014】
[0014]数値計算によれば、垂直磁界が存在する場合、スピン偏極は、ゲートに印加される電圧バイアスの小変動に対して高感度である。したがって、磁気電気スピンFETは、スピン偏極電流を発生させ、操作することが可能な低電圧トランジスタである。スピンFET内の電流のスピン偏極を、ソース−ドレインチャネルの磁気抵抗の変化に変換することも可能である。この方法により、スピンFETは、2DEG内の電流に対して可変かつ制御可能な抵抗を与えるので、電流増幅器として動作することが可能である。
【0015】
[0015]本発明の実施形態によれば、二重対要素は、反対称または対称である場構成を有するように設計される。反対称の場合は、非ゼロ偏極を発生させるためにスピンFETにゲート電圧が印加され、対称の場合は、ゲート電圧を印加しなくても非ゼロ偏極が達成される。しかしながら、いずれの場合も、二重対要素は、Ay(x)にゼロ正味変化を有する場構成を有するように設計される。このように、二重対を用いることにより、透過しきい値をより高い電子エネルギーにシフトすることなく、注入される電子の偏極を増やすことが可能である。
【0016】
[0016]本発明による磁気電気障壁電界効果トランジスタの別の利点は、より高い磁界を用いることによってスピン偏極を増やすことが可能なことである。スピン偏極の利得特性は、他の独立パラメータ(たとえば、ゲート材料の飽和磁化、および/または磁気二重対によって誘導される異なる磁気障壁の磁化配列)によって制御可能である。これらのパラメータは、磁気電気障壁電界効果トランジスタのセットアップからは独立しているので、磁気電気障壁電界効果トランジスタの使用にはさらなる自由度を与えられる。
【0017】
[0017]本発明によるスピンFETを用いて、高度に偏極したスピン電流を発生させ、それを操作することが可能であり、したがって、本発明によるスピンFETは、スピン論理素子および回路の重要な要素であることが可能である。たとえば、2DEGからのスピン偏極電流は、他のスピンFETのゲート電極に供給された場合には、それらのスピンFETに対する入力信号として動作することが可能である。
【0018】
[0018]本発明によるスピンFETはさらに、それ自体で、および/またはメモリ素子内で不揮発性メモリとして使用可能である。これは、スピンFETが発生させるスピン偏極電流を用いてメモリ素子の磁化を切り替えることが可能なためである。
【0019】
[0019]さらに、本発明のスピンFETは、高い歳差周波数(30GHzから100GHzのオーダー)で動作可能であり、したがって、高い周波数の信号とともに動作することが可能である。
【0020】
[0020]本発明のスピンFETの一実施形態では、ゲートは、複数の磁気二重対要素を備える。複数の磁気二重対要素を用いると、チャネル領域を通過する電子の偏極が増える。すべての個々の磁気二重対要素が、電子の正味偏極を増やす。複数の磁気二重対要素を用いる場合は、個々の磁気二重対要素のそれぞれが、正味ゼロA型である。基本的に、結果として得られる偏極が、磁気電気電界効果トランジスタのドレイン領域によって検出されるだけの十分な高さである限り、任意の好適な数の磁気二重対を用いることが可能である。たとえば、そのような偏極は、2個、4個、6個、8個、10個、またはそれ以上の磁気二重対によって達成可能である。上限は、本発明のスピンFETの、所望の感度および/または所望のサイズに応じて選択される。したがって、10個、15個、20個、25個、または27個のように多数の磁気二重対もスピンFETで使用可能である。
【0021】
[0021]別の実施形態では、ソースは、非磁性体、強磁性体、半金属、および磁気半導体からなる群から選択される材料を含むか、それで構成される。これらの材料を用いることにより、偏極した電子でも偏極していない電子でもチャネル領域に注入することが可能であり、それらの偏極を、ゲートの磁気二重対要素によって増やすことが可能である。
【0022】
[0022]別の実施形態では、ドレインは、強磁性体、半金属、および磁気半導体からなる群から選択される材料を含むか、それで構成される。これらの材料は、チャネル領域(すなわち、高移動度チャネル)に移動した、スピン偏極した電子を検出するのに好適である。したがって、ドレインは、電流受取装置、電流フィルタ、スピン検出装置、または抵抗検出装置として機能することが可能である。
【0023】
[0023]さらなる実施形態では、チャネル領域は、n+ドープアルミニウムガリウムヒ素からなる第1の層と、アルミニウムガリウムヒ素からなる第2の層と、ガリウムヒ素からなる第3の層とを含む。チャネル領域としてこれらの材料の副層をそのように組み合わせることは、磁気電気電界効果トランジスタのチャネル領域に二次元電子ガス(2DEG)を発生させるのに好適である。
【0024】
[0024]本発明のスピンFETのさらに別の実施形態では、ゲートは、強磁性材料を含む。強磁性材料は、チャネル領域に垂直磁界を誘導するのに好適である。したがって、これらの材料は、本発明による磁気二重対要素の材料として用いられることが好ましい。本出願において使用可能な強磁性材料として、たとえば、鉄、コバルト、ニッケル、またはそのような元素を含む合金がある。一実施形態では、強磁性材料は、コバルトクロム白金および/または鉄白金および/または鉄コバルトおよび/またはコバルト白金などのような対応合金(またはそのような合金の混合物)であることが好ましい。これらの合金のような材料は、高度に磁化されることに好適であり、したがって、チャネル領域に高磁界を誘導するのに好適である。したがって、チャネル領域を通過する電子の偏極を容易に増やすことが可能である。
【0025】
[0025]前述の説明によれば、本発明のスピンFETのいくつかの実施形態において、ゲートは、少なくとも10個の磁気二重対要素を含む。他の実施形態では、磁気二重対要素は、極がチャネル領域にほぼ平行に並べられている磁石によって形成される。磁気二重対要素をチャネル領域に平行に並べて用いることは、磁気二重対要素のフリンジ場がほぼ垂直な磁界をチャネル領域に誘導することを保証するための好適な方法の1つである。そのような実施形態では、ほぼ平行に並んでいることは、各磁石のN磁極とS磁極との間の線がチャネル領域の方向にほぼ平行であることを意味する。そのような並びの場合、磁石に用いる強磁性材料は、鉄、コバルト、ニッケル、またはそのような元素の合金であることが好ましい。そのような並びによる例示的方法では、各磁石が2つの磁気デルタ障壁をチャネル領域に誘導することが保証される。したがって、磁気二重対要素を2つの磁石で実現することが可能である。そのような並びでは、各極、すなわち、各極の各N極および各S極は、1つの磁気デルタ障壁を誘導する。そのような並びを用いることによって、各磁気二重対の正味ゼロA型を容易な方法で保証することも可能である。これは、各磁石が磁気デルタ障壁の正味ゼロA型対を誘導することが、自動的に保証されるからである。1つの磁気二重対要素を形成している2つの磁石の磁化強度が異なる場合は、非対称磁界が発生し、これが、チャネル領域を通過する電子の正味偏極につながる。そのような並びでは、1つの磁気二重対要素が3つの磁石を含むことも可能である。
【0026】
[0026]別の実施形態では、磁気二重対要素は、極がチャネル領域にほぼ垂直に並べられている磁石によって形成される。磁気二重対要素をチャネル領域に垂直に並べて用いることは、磁気二重対要素の場が垂直磁界をチャネル領域に誘導することを保証するための好ましい方法である。この実施形態では、ほぼ垂直に並んでいることは、各磁石のN磁極とS磁極との間の線がチャネル領域の方向にほぼ垂直であることを意味する。そのような並びでは、強磁性材料は、コバルトクロム白金および/または鉄白金および/または鉄コバルトおよび/またはコバルト白金などのような合金(またはそのような合金の混合物)であることが好ましい。このような並びによる例示的方法では、各磁石が1つの磁気デルタ障壁をチャネル領域に誘導することが保証される。したがって、磁気二重対要素を4つの磁石で実現することが可能である。そのような並びでは、各磁石(すなわち、各磁石のN極またはS極)が1つの磁気デルタ障壁を誘導する。そのような並びを用いることにより、磁化強度が同じである磁石の対を用いて正味ゼロA型を保証することが可能である。そのような並びでは、強度の異なる磁気デルタ障壁を誘導する磁気二重対要素を容易に発生させることが可能である。これは、各磁気二重対要素の個々の磁気デルタ障壁のそれぞれの強度を、4つの個々の磁石によって独立に設定することが可能だからである。
【0027】
[0027]さらに別の実施形態では、ゲートは、単極書き込みヘッドを含み、これらの単極書き込みヘッドは、磁気二重対要素によってチャネル領域に誘導された垂直磁界に作用するように適合されている。単極書き込みヘッドは、ゲート電極の磁化を変化させることが可能であるようにゲート電極に垂直磁界を書き込むために用いられることが好ましい。
【0028】
[0028]単極書き込みヘッドは、コンピュータ分野では知られている素子であり、たとえば、磁気ディスクドライブに用いられている。単極書き込みヘッドを使用することは、ほぼ垂直に並べた磁石を使用する実施形態と類似している。単極書き込みヘッドを使用することは、個々の磁気デルタ障壁のそれぞれの強度を変化させることが可能であり、したがって、スピン偏極をより細かく制御することが可能になるという、さらなる利点をもたらす。
【0029】
[0029]好ましい実施形態では、磁気電気電界効果トランジスタは、ゲートの反対側のチャネル領域の下に軟磁性材料の層をさらに含む。
【0030】
[0030]チャネルの下に軟磁性下層を用いることは、チャネル領域に誘導される垂直磁界の強度を高め、さらに、磁気二重対要素によって誘導される磁界の配向を高める。これは特に、極がチャネル領域にほぼ垂直に並ぶ磁石によって磁気二重対要素が形成される実施形態に当てはまる。したがって、各磁気二重対によって誘導される正味偏極が増えることにつながり、したがって、チャネル領域を通過する電子の偏極が増える。軟磁性下層は、磁界Bzを強めることと、磁界Bzの配向を高めることのために用いられる。すなわち、軟磁性下層は、必要に応じて、ゲートの磁気部分からのB場線が、2DEGを通り抜ける際に垂直な進路を維持することを保証する。軟磁性下層として好適な材料としては、鉄コバルトボロン、コバルトジルコニウムニオブ、鉄アルミニウム窒素、ニッケル鉄様パーマロイ(Ni0.8Fe0.2)またはNi0.45Fe0.55などがあり、これらに限定されない。
【0031】
[0031]チャネル領域は、HEMT様チャネル領域であることが好ましい。高電子移動度トランジスタ(HEMT)のチャネル領域に類似したチャネル領域を用いることは、チャネル領域の二次元電子ガスを発生させる効率的な方法である。
【0032】
[0032]さらに別の実施形態では、第1の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB1であり、第2の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB2であり、第3の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB3であり、第4の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB4であり、B1、B2、B3、およびB4は、互いに次の関係を有する。
|B2|=|B3|、|B1|=|B4|および|B1|≠|B2|
【0033】
[0033]個々の磁気二重対要素によって誘導される4つの磁気デルタ障壁の強度のそのような関係を用いることにより、チャネル領域に誘導される垂直磁界を誘導することが正味ゼロA型であることが保証され、それによって、チャネルを通過する電子の正味偏極が各磁気二重対要素によって発生することが保証される。B1、B2、B3、およびB4はすべて、z方向(チャネル領域に垂直な方向)で測定される。
【0034】
[0034]代替実施形態では、第1の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB1であり、第2の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB2であり、第3の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB3であり、第4の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB4であり、B1、B2、B3、およびB4は、互いに次の関係を有する。
|B1|=|B2|、|B3|=|B4|および|B1|≠|B3|
【0035】
[0035]個々の磁気二重対要素によって誘導される4つの磁気デルタ障壁の強度のそのような関係を用いることにより、チャネル領域に誘導される垂直磁界を誘導することが正味ゼロA型であることが保証され、それによって、チャネルを通過する電子の正味偏極が各磁気二重対要素によって発生することが保証される。B1、B2、B3、およびB4はすべて、z方向(チャネル領域に垂直な方向)で測定される。
【0036】
[0036]別の代替実施形態では、第1の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB1であり、第2の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB2であり、第3の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB3であり、第4の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB4であり、B1、B2、B3、およびB4は、互いに次の関係を有する。
|B1|=|B2|=|B3|=|B4|
【0037】
[0037]ゲートは、パターン化された層を含むことが好ましい。すなわち、ゲートは、パターン化された媒体で作られることが好ましい。このパターン化された媒体は、高いアスペクト比(たとえば、x方向の長さがz方向の長さに比べて短いために、磁化が垂直方向に並びやすいアスペクト比)で作られることが可能な、パターン化された要素を含む。
【0038】
[0038]別の実施形態では、誘導される磁界が、ゲートとチャネル領域との間の界面に平行であり、ソースからドレインに向かう線に垂直である。
【0039】
[0039]本発明による磁気電気電界効果トランジスタは、増幅器またはメモリチップのかたちで実装可能である。
【0040】
[0040]本発明による磁気電気電界効果トランジスタを含む増幅器は、小さな電圧変化に対して感度が高く、ゲート電圧に対してスピン偏極をリニアに変化させる。偏極は電圧に変換することが可能である。さらに、リニアな増加は、フェルミエネルギーのまわりに発生する。
【0041】
[0041]まとめると、本発明の概念の態様は、少なくとも1つの磁気二重対要素を含むゲートを用いて、磁気電気障壁電界効果トランジスタの(好ましくはHEMT様)チャネル領域に磁気デルタ障壁を誘導することに見られる。好ましくは、磁気二重対要素は、正味ゼロA型の垂直磁界を磁気電気障壁電界効果トランジスタのチャネル領域に誘導し、この垂直磁界は、好ましくは、極がチャネル領域の平面にほぼ垂直に並べられた磁石によって誘導され、それによって、チャネル領域の平面に垂直な磁場B2がチャネル領域に誘導される。さらに、磁気電気障壁電界効果トランジスタのゲートに電位が印加される。磁気電気障壁電界効果トランジスタの記載の構造は、チャネル領域に注入された、偏極した電子の偏極が増えることを保証する。永久磁石によって誘導される永久B場の場合でも、スピン偏極の、制御可能な柔軟性のレベルが存在する。これは、磁気電気障壁電界効果トランジスタの、一種の別々のゲートと見られる複数の磁気デルタ障壁を、別々の磁化構成で初期化することが可能なためである。
【0042】
[0042]ある磁気二重対要素と次の磁気二重対要素との間に、非磁性磁気領域を配置することが好ましい。非磁性金属領域の機能は、ゲート電圧印加のための接点を与え、磁気二重対要素同士を互いに隔てるスペーサとして動作することである。磁気領域は、垂直場が、良好に隔てられた2つの方形障壁の理想特性に近づくことが可能なように、互いに隔てられなければならない。代替として、非磁性でない領域を、ある磁気二重対要素と次の磁気二重対要素との間に配置し、ゲート電圧を磁気二重対要素の磁性材料に印加する。磁界Bzを強めることと、磁界Bzの配向を高めることのために軟磁性下層を用いる。すなわち、軟磁性下層は、ゲートの磁気部分からのB場線が、2DEGを通り抜ける際に垂直な進路を維持することを保証する。
【0043】
[0043]磁気デルタ障壁全体にわたる波動関数の振幅および束の連続性の要件次第で、スピンアップ電子およびスピンダウン電子の透過確率が異なり、したがって、キャリア(たとえば、電子)の2DEG内での正味スピン偏極が結果として得られる。本発明は、従来のスピンFETより低いゲート電圧でスピン偏極を増やすことが可能なスピンFETを提供する。好ましくは、ソースは、x方向、すなわち、チャネル領域の方向に偏極した電子を注入し、ドレインは、z方向、すなわち、誘導された磁界の方向に偏極した電子を検出するように適合される。各磁気二重対要素の磁石は、永久磁石、単極書き込みヘッド、電磁石、および/またはこれらの組合せによって実現可能である。
【0044】
[0044]以下では、限定ではない実施形態および図面を参照しながら、本発明を詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
[0056]図1は、本発明による磁気電気障壁電界効果トランジスタ100(スピンFET)の全体的なレイアウトを概略的に示す図である。スピンFET 100は、ガリウムヒ素(GaAs)または別の好適な半導体材料(シリコンなど)からなる基板101を含む。ソース102、(高電子移動度トランジスタ(HEMT)様チャネル領域を形成する)HEMT様多層103、およびドレイン104が、基板101上に配置されている。
【0046】
[0057]ソース102は、スピン偏極キャリア(すなわち、電子)を、HEMT様チャネル領域103に注入するように適合されている。ソースは、非磁性材料、強磁性材料、半金属、または磁気半導体から作られ、x方向に磁化される。x方向は、スピンFETのソース102からドレイン104に向かう方向である。ドレインは、強磁性材料、半金属、または磁気半導体、またはこれらの組合せから作られる。さらに、ドレインは、スピン偏極した電子を検出するように適合され、特に、z方向に偏極した電子を検出するように適合される。z方向は、二次元電子ガス(2DEG)の二次元空間が配置される平面に垂直な方向である。
【0047】
[0058]HEMT様チャネル領域103は、2DEGを生成し、3つの副層を含む。第1の副層105は、基板101上に配置される副層であって、ガリウムヒ素(GaAs)からなり、バッファ層として動作する。第2の副層106は、第1の副層106の上に配置される副層であって、アルミニウムガリウムヒ素(AlGaAs)からなり、スペーサ層として動作する。第3の副層107は、n+ドープアルミニウムガリウムヒ素(n+AlGaAs)からなり、第2の副層106の上に配置される。第3の副層107は、ドナー層として動作する。HEMT様チャネル領域の場合、ゲート絶縁層は不要である。これは、AlGaAs−GaAsの場所に存在するバンドの曲がりが、横断方向(すなわち、HEMT様チャネル領域に垂直な方向)に電流が流れるのを妨げる静電障壁を発生させるからである。
【0048】
[0059]さらに、スピンFETは、ゲート108を含む。ゲート108は、磁気二重対要素を含み、第3の副層107の上に配置される。好ましい実施形態では、磁気二重対要素の数は10である。図1を明瞭にするために、2つの磁気二重対要素109および110のみを示した。各磁気二重対要素は、コバルトクロム白金および/または鉄白金の2つの永久磁石によって実現される。他の好適な材料として、鉄コバルトおよび/またはコバルトパラジウムなどがある。各永久磁石は、永久磁石の磁化が、x方向にほぼ垂直であり、したがって、スピンFETのz方向の磁界(Bz)(すなわち、2DEGに垂直な磁界)を誘導するように磁化される。別の実施形態では、永久磁石の磁化は、x方向にほぼ平行であり、したがって、スピンFETのz方向のフリンジ磁界(Bz)(すなわち、2DEGに垂直な磁界)を誘導する。ほぼ平行な、磁化された永久磁石を有する、本実施形態による磁気二重対要素のより詳細な図を図2に示す。図1に示すように、ある磁気二重対要素と次の磁気二重対要素との間に非磁性金属要素111を配置することが好ましい。非磁性金属要素の機能は、ゲート電圧印加のための接点を与え、磁気領域同士を互いに隔てるスペーサとして動作することである。磁気領域は、垂直場が、良好に隔てられた2つの方形障壁の理想特性に近づくことが可能なように、互いに隔てられなければならない。
【0049】
[0060]さらに、スピンFET 100は、軟磁性下層112を含む。軟磁性下層112は、基板101に埋め込まれ、ゲート108と対向して配置される。軟磁性下層は、磁界Bzを強めることと、磁界Bzの配向を高めることのために用いられる。すなわち、軟磁性下層は、ゲートの磁気部分からのB場線が、2DEGを通り抜ける際に垂直な進路を維持することを保証する。軟磁性下層として好適な材料としては、鉄コバルトボロン、コバルトジルコニウムニオブ、鉄アルミニウム窒素、ニッケル鉄様パーマロイ(Ni0.8Fe0.2)またはNi0.45Fe0.55などがあり、これらに限定されない。軟磁性下層を用いることは、永久磁石の磁化が、x方向にほぼ垂直であり、したがって、スピンFETのz方向の磁界(Bz)(すなわち、2DEGに垂直な磁界)を誘導する実施形態において特に有利である。さらに、2DEG内のDresseIhaus&Rashbaスピン相互作用は、面内軸のまわりでスピン歳差運動をする際の振動の形で、x−y平面内およびz方向のスピンについてのみ検出可能であることに注意されたい。
【0050】
[0061]説明のために、磁気二重対要素によって誘導される磁界Bzを、図1で概略的に描かれたスピンFETのいくつかの例示的寸法とともに、図1に示している。図1にさらに描かれたいくつかの寸法は次のとおりである。
t=200nm(tは、磁性膜として形成される、磁気二重対要素の厚さである)
h=60nm(hは、磁性膜(すなわち、ゲートの底部)からの2DEGの距離である)
Dsd=500nm(Dsdは、ソースとドレインとの間の距離である)
w=150nm(wは、各磁気ストリップ(すなわち、各磁気二重対要素)の幅である)
【0051】
[0062]3つの副層の厚みの合計は、50nmから100nmの範囲である。好ましくは、第1の副層105の厚さが30nmであり、第2の副層106の厚さが5nmであり、第3の副層の厚さが20nmである。軟磁性下層の長さは約440nmであり、これは、約10mTの磁界B0に対応する。さらに、図5に結果が描かれているシミュレーションのために、磁気二重対要素に対して800cm−3の飽和磁化が選択されている。
【0052】
[0063]磁気電気電界効果トランジスタの多層構造の別の可能な構造として、厚さ40nmのn+ドープインジウムガリウムヒ素キャップ層、厚さ30nmのn+ドープインジウムアルミニウムヒ素キャリア供給層、厚さ3.5nmの非ドープインジウムアルミニウムヒ素スペーサ供給層、厚さ2.5nmの非ドープインジウムガリウムヒ素チャネル層、厚さ4nmの非ドープインジウムヒ素挿入層、およびインジウムリン基板上の厚さ約500nmの非ドープインジウムガリウムヒ素バッファ層がある。キャリア供給層およびキャップ層の場合の好適なドープは、4×1018/cm3の範囲であり、ドープにはシリコンを用いる。多層構造の適切な成長温度は約300℃である。
【0053】
[0064]磁気電気電界効果トランジスタの多層構造の可能な反転構造として、厚さ10nmのn+ドープインジウムガリウムヒ素キャップ層、厚さ20nmの非ドープインジウムアルミニウムヒ素ゲートショットキー層、厚さ13.5nmの非ドープインジウムガリウムヒ素チャネル層、厚さ4nmの非ドープインジウムヒ素挿入層、厚さ2.5nmの非ドープインジウムガリウムヒ素チャネル層、厚さ約6nmの非ドープインジウムアルミニウムヒ素スペーサ層、厚さ7nmのn+ドープインジウムアルミニウムヒ素キャリア供給層、およびインジウムリン基板上の厚さ約200nmの非ドープインジウムアルミニウムヒ素バッファ層がある。キャリア供給層およびキャップ層の場合の好適なドープは、4×1018/cm3の範囲であり、ドープにはシリコンを用いる。多層構造の適切な成長温度は約300℃である。
【0054】
[0065]前述の寸法および数はすべて例示のみを目的としたものであり、限定と理解されてはならない。本発明による磁気電気電界効果トランジスタにおけるパラメータの代表的な値は、おおよそ次のとおりである。
キャリア移動度:1.5×104cm2/Vs(300K)および1.11×105cm2/Vs(10K)
キャリア濃度:2.3×1012cm2(300Kおよび10K)
ランデ因子|g|:3.8
ゲート長:0.5μm(300K)、しきい値電圧:−1V、
最大外因性相互コンダクタンス(300K):700mS/mm
【0055】
[0066]図1はさらに、例示的素子のx軸に沿ってシミュレートされた磁界(Bz)特性を示している。B場のピークは約11mTであり、2つのピークの間の間隔は240nmである。しかしながら、B場が10mT、間隔が350nmの場合について理論的計算が行われている。今日のリソグラフィ設備では、500nmのゲート長が製造可能である(ゲート長は、ソースからドレインまでの距離に等しい)。
【0056】
[0067]図2は、本発明の実施形態による磁気二重対要素を詳細に描いた図である。図2は、概略的なHEMT様チャネル領域200を示している。HEMT様チャネル領域は、2DEGを発生させる。HEMT様チャネル領域200の上に、1つの磁気二重対要素201が示されている。磁気二重対要素201は、第1の強磁性領域202(たとえば、第1の永久磁石)と、第2の強磁性領域203(たとえば、第2の永久磁石)とを含む。第1の強磁性領域202と第2の強磁性領域203との間に、非磁性金属領域204を配置することが好ましい。さらに、2つの強磁性領域のそれぞれは、第1の電圧源205および第2の電圧源206として概略的に描かれた電圧源に接続されている。図2では、x軸は左から右である。
【0057】
[0068]第1の磁性領域202の磁化方向は、矢印207で概略的に示され、x軸に平行である。一方、第2の磁性領域203の磁化方向は、矢印208で概略的に示され、x軸に逆平行である。さらに、磁性領域のフリンジ場が描かれており、フリンジ場は垂直磁界を2DEGに誘導する。図2に示すように強磁性領域を配置することにより、磁気二重対要素の正味ゼロA型構成が達成されることが自動的に保証される。
【0058】
[0069]図2ではさらに、磁気ベクトルポテンシャルAの強度を概略的に示している。第1の定義域Iでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロである。第2の定義域IIでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、ゼロより高い値を有する。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第1の強磁性領域202の左端によって実現される第1の磁気デルタ障壁において増える。第3の定義域IIIでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロである。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第1の強磁性領域202の右端によって実現される第2の磁気デルタ障壁において減る。第4の定義域IVでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、ゼロより低い値を有する。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第2の強磁性領域203の左端によって実現される第3の磁気デルタ障壁において減る。第5の定義域Vでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロである。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第2の強磁性領域203の右端によって実現される第4の磁気デルタ障壁において増える。
【0059】
[0070]さらに、図2には電位Uの値が描かれている。電位Uは、電圧源205および206によって誘導される。第1の定義域Iでは、電位Uはゼロである。第2の定義域IIでは、電位Uは、ゼロより高い値を有する。ただし、「ゼロより高い」とは、電位Uがゼロでないこと、すなわち、ゼロでない正の値または負の値を有することを意味する。電位Uの値は、第1の強磁性領域202の左端によって実現される第1の磁気デルタ障壁において増える。第3の定義域IIIでは、電位Uはゼロである。電位Uの値は、第1の強磁性領域202の右端によって実現される第2の磁気デルタ障壁において減る。第4の定義域IVでは、電位Uは、ゼロより高い値を有する。電位Uの値は、第2の強磁性領域203の左端によって実現される第3の磁気デルタ障壁において増える。第5の定義域Vでは、電位Uはゼロである。電位Uの値は、第2の強磁性領域203の右端によって実現される第4の磁気デルタ障壁において減る。
【0060】
[0071]第2の定義域IIおよび第4の定義域IVのx方向の長さはLであり、第3の定義域IIIのx方向の長さはgである。
【0061】
[0072]図3は、本発明の別の実施形態による磁気二重対要素を詳細に描いた図である。図3は、概略的なHEMT様チャネル領域300を示している。HEMT様チャネル領域は、2DEGを発生させる。HEMT様チャネル領域300の上に、1つの磁気二重対要素301が示されている。磁気二重対要素301は、第1の強磁性領域302(たとえば、第1の永久磁石の一部)と、第2の強磁性領域303(たとえば、第2の永久磁石)と、第3の強磁性領域304(たとえば、第3の永久磁石の一部)とを含む。好ましくは、第1の強磁性領域302と第2の強磁性領域303との間に第1の非磁性金属領域305を配置し、第2の強磁性領域303と第3の強磁性領域304との間に第2の非磁性金属領域306を配置する。さらに、2つの非磁性領域のそれぞれは、第1の電圧源307および第2の電圧源308として概略的に描かれた電圧源に接続されている。図3では、x軸は左から右である。
【0062】
[0073]第1の強磁性領域302および第3の強磁性領域304の磁化方向は、それぞれ、矢印309および矢印310で概略的に示され、x軸に対して逆平行である。一方、第2の磁性領域303の磁化方向は、矢印311で概略的に示され、x軸に対して平行である。さらに、磁性領域のフリンジ場が描かれており、フリンジ場は垂直磁界を2DEGに誘導する。図3のように強磁性領域を配置する場合、磁気二重対要素の正味ゼロA型構成を達成するためには、第1の強磁性領域302および第3の強磁性領域304によって誘導される磁界の絶対値が等しいことを保証しなければならない。代替として、極がチャネル領域にほぼ垂直に並べられている磁石によって磁気二重対要素を形成して、垂直磁界をより直接に、2DEGに誘導することが可能である。
【0063】
[0074]さらに図3でも、磁気ベクトルポテンシャルAの強度を概略的に示している。第1の定義域Iでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロである。第2の定義域IIでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、ゼロより高い値を有する。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第1の強磁性領域302の右端によって実現される第1の磁気デルタ障壁において増える。第3の定義域IIIでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、第2の定義域IIでの値より高い値まで増える。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第2の強磁性領域302の左端によって実現される第2の磁気デルタ障壁において増える。第4の定義域IVでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、第2の定義域IIと同じ値を有する。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第2の強磁性領域303の右端によって実現される第3の磁気デルタ障壁において減る。第5の定義域Vでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロである。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第3の強磁性領域304の左端によって実現される第4の磁気デルタ障壁において減る。
【0064】
[0075]さらに、図3には電位Uの値が描かれている。電位Uは、電圧源307および308によって誘導される。第1の定義域Iでは、電位Uはゼロである。第2の定義域IIでは、電位Uは、ゼロより高いか低い値を有する。電位Uの値は、第1の非磁性領域305の左端によって実現される第1の磁気デルタ障壁において増える。第3の定義域IIIでは、電位Uはゼロである。電位Uの値は、第1の非磁性領域305の右端によって実現される第2の磁気デルタ障壁において減る。第4の定義域IVでは、電位Uは、ゼロより高いか低い値を有する。電位Uの値は、第2の非磁性領域306の左端によって実現される第3の磁気デルタ障壁において増える。第5の定義域Vでは、電位Uはゼロである。電位Uの値は、第2の非磁性領域306の右端によって実現される第4の磁気デルタ障壁において減る。
【0065】
[0076]第2の定義域IIおよび第4の定義域IVのx方向の長さはLであり、第3の定義域IIIのx方向の長さはgである。
【0066】
[0077]図4では、磁気デルタ障壁のいくつかの構成を概略的に示している。図4の(a)〜(f(では、磁気ベクトルポテンシャルAの強度を、様々な正味ゼロA型構成について概略的に示している。本発明によるスピンFETでは、これらすべての構成を用いることが可能である。図4の(a)の第1の定義域Iでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロである。第2の定義域IIでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、ゼロより高い値を有する。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第1の磁気デルタ障壁において増える。第3の定義域IIIでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、第2の定義域IIでの値より高い値まで増える。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第2の磁気デルタ障壁において増える。第4の定義域IVでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、第2の定義域IIと同じ値を有する。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第3の磁気デルタ障壁において減る。第5の定義域Vでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロである。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第4の磁気デルタ障壁において減る。図示した正味ゼロA型構成は、図3に描かれた構成と同じである。
【0067】
[0078]図4の(b)の第1の定義域Iでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロである。第2の定義域IIでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、ゼロより高い値を有する。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第1の磁気デルタ障壁において増える。第3の定義域IIIでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロまで減る。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第2の磁気デルタ障壁において減る。第4の定義域IVでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、ゼロより低い値を有する。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第3の磁気デルタ障壁において減る。第5の定義域Vでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロである。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第4の磁気デルタ障壁において増える。図示した正味ゼロA型構成は、図2に描かれた構成と同じである。
【0068】
[0079]図4の(c)の第1の定義域Iでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロである。第2の定義域IIでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、ゼロより低い値を有する。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第1の磁気デルタ障壁において減る。第3の定義域IIIでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロまで増える。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第2の磁気デルタ障壁において増える。第4の定義域IVでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、ゼロより低い値を有する。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第3の磁気デルタ障壁において減る。第5の定義域Vでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロである。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第4の磁気デルタ障壁において増える。図示した正味ゼロA型構成は、図2に描かれた構成と類似している。図4の(c)に示した構成は、図2に示した構成の、強磁性領域202の磁化方向を示す矢印207を反転させた構成によって達成されるであろう。
【0069】
[0080]図4の(d)の第1の定義域Iでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロである。第2の定義域IIでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、ゼロより低い値を有する。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第1の磁気デルタ障壁において減る。第3の定義域IIIでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、第2の定義域IIでの値より低い値まで減る。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第2の磁気デルタ障壁において減る。第4の定義域IVでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、第2の定義域IIと同じ値を有する。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第3の磁気デルタ障壁において増える。第5の定義域Vでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロである。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第4の磁気デルタ障壁において増える。図示した正味ゼロA型構成は、図3に描かれた構成と類似している。図4の(d)に示した構成は、図3に示した構成の、強磁性領域302、303、および304の磁化方向を示す矢印309、310、および311を反転させた構成によって達成されるであろう。
【0070】
[0081]図4の(e)の第1の定義域Iでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロである。第2の定義域IIでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、ゼロより低い値を有する。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第1の磁気デルタ障壁において減る。第3の定義域IIIでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロまで増える。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第2の磁気デルタ障壁において増える。第4の定義域IVでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、ゼロより高い値を有する。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第3の磁気デルタ障壁において増える。第5の定義域Vでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロである。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第4の磁気デルタ障壁において減る。図示した正味ゼロA型構成は、図2に描かれた構成と類似している。図4の(e)に示した構成は、図2に示した構成の、強磁性領域202および203の磁化方向を示す矢印207および208を反転させた構成によって達成されるであろう。
【0071】
[0082]図4の(f)の第1の定義域Iでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロである。第2の定義域IIでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、ゼロより高い値を有する。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第1の磁気デルタ障壁において増える。第3の定義域IIIでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロまで減る。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第2の磁気デルタ障壁において減る。第4の定義域IVでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、ゼロより高い値を有する。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第3の磁気デルタ障壁において増える。第5の定義域Vでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロである。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第4の磁気デルタ障壁において減る。図示した正味ゼロA型構成は、図2に描かれた構成と類似している。図4の(f)に示した構成は、図2に示した構成の、強磁性領域203の磁化方向を示す矢印208を反転させた構成によって達成されるであろう。
【0072】
[0083]例として、図4の(g)では、正味ゼロA型を有しない構成の磁気ベクトルポテンシャルAを示している。したがって、図4の(g)に示した構成は、本発明によるスピンFETにおいてはあまり好適ではない。それは、図4の(g)に示した例に従う複数の磁気二重対要素を用いることが、透過確率が低くなることにつながるためである。図4の(g)の第1の定義域Iでは、磁気ベクトルポテンシャルAはゼロである。第2の定義域IIでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、ゼロより高い値を有する。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第1の磁気デルタ障壁において増える。第3の定義域IIIでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、第2の定義域IIでの値より高い値まで増える。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第2の磁気デルタ障壁において増える。第4の定義域IVでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、第3の定義域IIIでの値より高い値を有する。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第3の磁気デルタ障壁において増える。第5の定義域Vでは、磁気ベクトルポテンシャルAは、第4の定義域IVでの値より高い。磁気ベクトルポテンシャルAの値は、第4の磁気デルタ障壁において増える。そのような構成は、透過確率が低下することにつながる。それは、磁気デルタ障壁を横切るごとに磁気ベクトルポテンシャルAが増え、それが、スピンFETのチャネルを通過する電子の偏向につながり、それによって電子のx方向の運動エネルギーが減るからである。
【0073】
[0084]本発明によるスピンFETのチャネル領域を通る電子の正味スピン偏極を発生させるために、図4の(a)〜(g)で示したすべての磁気特性を用いることが可能である。図示した構成のいくつかは、電位を印加することが必要である。特に、定義域IIおよびIVでは、電圧+Uおよび−Uをそれぞれ印加することが必要である。これらの構成は、図4の(a)、(c)、(d)および(f)に示してある。一方、図4の(b)および(e)に示した構成は、定義域IIおよびIVで電圧の印加がなくてもスピン偏極を与える。
【0074】
[0085]図5は、本発明による磁気電気障壁電界効果トランジスタのゲートの様々な構成についてのシミュレーションの結果を示している。図5の(a)〜(h)の各図では、本発明によるスピンFETのHEMT様チャネル領域を通過する電子の、計算された透過確率を線500として示している。さらに、HEMT様チャネル領域を通過する電子の偏極を線501として示している。図5の(a)〜(h)のx軸は、電子エネルギーを任意単位で示している。y軸は、電子の透過確率および偏極を示している。図5の(a)〜(h)に示したすべての計算結果において、磁気デルタ障壁の強度は、B1=B2=+2(任意単位)、およびB3=B4=−2(任意単位)であった。
【0075】
[0086]図5の(a)〜(d)は、1個の磁気二重対要素を有するゲートを含むスピンFETのシミュレーションの結果を示している。図5の(a)は、ゲート電圧が0.17mVの場合の透過確率および偏極を示している。図5の(b)は、ゲート電圧が1.1mVの場合の透過確率および偏極を示している。図5の(c)は、ゲート電圧が3.0mVの場合の透過確率および偏極を示している。図5の(d)は、ゲート電圧が6.8mVの場合の透過確率および偏極を示している。これらの図は、磁気二重対要素が1個しかない場合には、HEMT様チャネル領域を通過する電子の偏極が非常に低いことを示している。
【0076】
[0087]図5の(e)〜(h)は、27個の磁気二重対要素を有するゲートを含むスピンFETのシミュレーションの結果を示している。27という数字は、磁気二重対要素の任意の数の一例にすぎない。図5の(e)は、ゲート電圧が0.17mVの場合の透過確率および偏極を示している。図5の(f)は、ゲート電圧が1.1mVの場合の透過確率および偏極を示している。図5の(g)は、ゲート電圧が3.0mVの場合の透過確率および偏極を示している。図5の(h)は、ゲート電圧が6.8mVの場合の透過確率および偏極を示している。これらの図は、磁気二重対要素が27個の場合には、HEMT様チャネル領域を通過する電子の偏極が、磁気二重対要素が1個しかない場合に比べて大幅に増えることを示している。
【0077】
[0088]いずれの場合も、すなわち、二重対要素が1個の構成の場合も、二重対要素が27個の構成の場合も、ゲート電圧が数mV程度であっても、透過確率が大幅に変化することを示している。透過確率曲線は、n=1の場合には電子エネルギーに対する変化がわずかであるが、n=27の場合には、変化が大きくなり、電子エネルギーが低いところで明確な共振ピークが生じている。この共振挙動は、特定の値の電子波長だけが優先的に障壁を透過するという事実によるものであり、この波長選択は、電子が横切らなければならない障壁(すなわち、二重対要素)が多くなるほど特定的になる。この共振挙動は、スピンアップ電子とスピンダウン電子とで選択される波長がわずかに異なるため、高いスピン偏極を達成するためには有利である。したがって、1つのスピンが優先的に透過し、他のスピンがブロックされる状況につながり、スピン偏極が50%を超えることにつながる。図5は、電子エネルギーが低いところで、狭いピークの高スピン偏極を達成することが可能であることを示しており、このことは、ゲートが値のわずかなシフトでスピン偏極特性を切り替えるよう動作することが可能になるように、高スピン偏極が高透過確率の領域にも対応することを保証する。電子エネルギーが高いところでは、静電界および磁界によって生じた障壁が問題にならなくなり、高い透過確率が保証される。さらに、磁界Bに比例する、スピンアップエネルギーとスピンダウンエネルギーの差が問題にならなくなり、スピン偏極が低下する。
【0078】
[0089]計算によれば、電子のスピン偏極は、非常に低い電圧により変動する。磁界を大きくしても、スピン偏極が大幅に変化する。図5は、磁気二重対要素の数(すなわち、磁気デルタ障壁)を増やすと、スピン偏極が増えることを示している。
【0079】
[0090]以下のパラグラフでは、スピン偏極のいくつかの理論的導出を与える。2DEG内の電子運動は、面内波動ベクトルを表すkxおよびkyにより、基底状態のフェルミ円で表すことが可能である。電子運動に対するUおよびB障壁の作用を表すハミルトニアンは、次のとおりである。
【数1】
ただし、m*、m0は、それぞれ電子の有効質量および実質量であり、g*は有効ランデ因子であり、σ=+1(スピンアップ電子)、−1(スピンダウン電子)であり、px、pyは、それぞれx方向およびy方向の電子運動量である。yにおける並進対称を考慮すると、電子の波動関数は
【数2】
で与えられる。古典運動では、+pxを有してBz内を移動する電子は、ローレンツ力を受け、したがって、−yに偏向する。したがって、z方向の磁界の中をx方向に移動する電子は、運動の方向に運動エネルギーを消費して、横のy方向に運動エネルギーを取得する。このシステムは、自由度1のラグランジアン
【数3】
で表すことが可能である(
【数4】
はy方向の速度)。ラグランジアンのルジャンドル変換
【数5】
を実行すると、式(1)のハミルトニアンにpy+eAyが加わったものが得られる。発明者らの研究では、図1の二重対を、二重対の右端で正味運動利得がゼロになるように設計している。使用可能な全エネルギーE−Ueffは、kxが消えていかないことを保証するのに常に十分である。これにより、ゼロA二重対の数を増やすことによってPを増やすことが可能である。計算を簡単にするために、次のように、すべてのパラメータを無次元単位まで小さくする:x→lBx、
【数6】
、
【数7】
、ωc=eB0/m*。B0は、何らかの、共通に達成可能な磁界である。
【0080】
[0091]ハミルトニアンの最初の量子化により、次式が得られる。
【数8】
【0081】
[0092]一例として、図4の(a)および(g)の構成の波動ベクトルは、式(2)から導出される。
【0082】
[0093]図4の(a)で描かれた構成の波動ベクトルは次のとおりである。
【数9】
【0083】
[0094]図4の(g)で描かれた構成の波動ベクトルは次のとおりである。
【数10】
【0084】
[0095]電子波動ベクトルの一般形式は、前述の式から次のように得られる。
【数11】
【0085】
[0096]Pは、Tを用いて式(3)で定義される。
【数12】
【0086】
[0097]磁気デルタ障壁における波動関数の振幅および束の連続性のマッチングから、1つの二重対磁気電気障壁の伝送行列成分が得られる。デルタ障壁における束のマッチングは、次のように実行できる。
【数13】
【0087】
[0098]1つの二重対磁気電気障壁の伝送行列成分を以下に示す。
【数14】
ただし、ki、L、およびgは図6に示してある。
【0088】
[0099]図6は、複数の二重障壁対の基本単位として動作する二重対を概略的に示している。各二重対の領域IIおよびIVに電圧が印加される。各二重対の磁気障壁構成は、二重対を通過した後の、領域IVにおける磁気ベクトルポテンシャル(A)の正味変化が常に0であることを保証する。
【0089】
[00100]前述の伝送行列成分は、図6に概略的に示した二重対磁気電気障壁の全体にわたる波動関数の振幅を表す。
【0090】
[00101]さらに、透過確率およびフェルミエネルギーを用いてコンダクタンスGが得られる。
【数15】
【0091】
[00102]図7は、本発明の別の実施形態による磁気電気障壁電界効果トランジスタを概略的に示している。図7aに概略的に描かれた実施形態によれば、磁気電気障壁電界効果トランジスタ700は、基板701、ソース702、2DEGを発生させるように適合されたチャネル領域703、およびドレイン704を含む。さらに磁気電気障壁電界効果トランジスタ700は、6個の要素706、707、708、709、710、および711を有するパターン化された媒体を含むゲート705を含む。この6という数は例示を目的としたものにすぎず、この実施形態による磁気電気障壁電界効果トランジスタは6個の要素に限定されない。好ましくは、これらの要素は磁気二重対要素としてグループ化される(すなわち、要素の数は4の倍数である)。要素706、707、708、709、710、および711は、チャネル領域703に磁界を誘導するように適合され、その磁化方向は、ゲートとチャネル領域との間の界面に平行であって、ソースからドレインに向かう線に垂直(すなわち、電子の移動方向に垂直)な方向である。したがって、磁界は、By場であり、紙の表面を出入りする概略矢印によって概略的に示されている。さらに図7bでは、様々な電子エネルギーに対する、透過確率712(暗い線)を計算するシミュレーションの結果、および結果として得られるスピン偏極713(明るい線)を示しており、このシミュレーション結果は、図5に示したシミュレーションと類似している。
【0092】
[00103]図8は、本発明の実施形態による磁気電気障壁電界効果トランジスタを概略的に示している。図8aに概略的に描かれた実施形態によれば、磁気電気障壁電界効果トランジスタ800は、基板801、ソース802、2DEGを発生させるように適合されたチャネル領域803、およびドレイン804を含む。さらに磁気電気障壁電界効果トランジスタ800は、6個の要素806、807、808、809、810、および811を有するパターン化された媒体を含むゲート805を含む。この6という数は例示を目的としたものにすぎず、この実施形態による磁気電気障壁電界効果トランジスタは6個の要素に限定されない。好ましくは、これらの要素は磁気二重対要素としてグループ化される(すなわち、要素の数は4の倍数である)。要素806、807、808、809、810、および811は、チャネル領域803に磁界を誘導するように適合され、その磁化方向は、ゲートとチャネル領域との間の界面に垂直であって、ソースからドレインに向かう線に垂直(すなわち、電子の移動方向に垂直)な方向である。したがって、磁界は、Bz場であり、左から右、または右から左に向かう概略矢印によって概略的に示されている。
【0093】
[00104]さらに、図8bでは、様々な電子エネルギーEおよび様々なゲート電圧Vに対してスピン偏極Pを計算するシミュレーションの結果を三次元プロットで示している。この三次元プロットは、特定の電子エネルギー(たとえば、5E0および10E0(10E0はほぼフェルミエネルギー))の場合にスピン偏極Pがゲート電圧Vにほぼ線形依存することを示している。この、ほぼ線形な部分を、図8では、ブラケット812および813とマーキングしている。この、ほぼ線形な部分は、E=5E0の場合にはゲート電圧の約20から35に延びている(ゲート電圧を表す数は任意単位である)。この、ほぼ線形な部分は、E=10E0の場合にはゲート電圧の約20から45に延びている(ゲート電圧を表す数は任意単位である)。この、ほぼ線形な依存により、電圧の小変化に対する感度が高く、ゲート電圧の増加に対してスピン偏極(この偏極は電圧に変換することが可能)のほぼ線形な増加を呈する増幅器として、磁気電気障壁電界効果トランジスタを用いることが可能である。
【0094】
[00105]本発明による磁気電気障壁電界効果トランジスタによって実現可能な別のスピントロニクス素子として、不揮発性メモリセルがある。その概略構造を図9に示す。不揮発性メモリセルの磁気電気障壁電界効果トランジスタ900は、基板901、ソース902、2DEGを発生させるように適合されたチャネル領域903、およびドレイン904を含む。さらに磁気電気障壁電界効果トランジスタ900は、ゲート905を含み、ゲート905は、固定磁化をチャネル領域に誘導する第1の要素906と、切り換え可能磁界をチャネル領域に誘導する第2の要素907とを含む。第1の要素906および第2の要素907は、磁気二重対要素を構成する。ソースとドレインとの間の線に沿っての第1の要素906および第2の要素907の長さは同じであることが好ましい。
【0095】
[00106]図9aに示されている磁気電気障壁電界効果トランジスタ900は高抵抗状態にある。一方、図9bに示されている磁気電気障壁電界効果トランジスタ900は低抵抗状態にある。磁気電気障壁電界効果トランジスタ900は、第2の要素907の磁界の方向が反転するように第2の要素907を切り替えることによって、それら2つの状態の間で切り替えることが可能である。磁界方向の反転は、図9aでは左を向いている矢印908として概略的に描かれ、図9bでは矢印908は右を向いている。図9cおよび図9dでは、様々な電子エネルギーおよび障壁の数(すなわち、磁気二重対要素の数)に対する結果として得られるスピン偏極を示している。図9cは、高抵抗状態の場合に図9aの磁気電気障壁電界効果トランジスタ900が、電子エネルギー10E0(ほぼフェルミエネルギー)に対してスピン偏極を呈することを示している。スピン偏極の値は、障壁の数とともに増える。図9dは、低抵抗状態の場合に図9bの磁気電気障壁電界効果トランジスタ900が、ゼロであるスピン偏極を呈することを示している。
【0096】
[00107]図9で概略的に描かれた不揮発性メモリセルが、チャネル領域を通過する電子のスピン偏極を変化させることに基づくのに対し、図10で概略的に描かれた不揮発性メモリセルは、透過しきい値型である。
【0097】
[00108]不揮発性メモリセルの磁気電気障壁電界効果トランジスタ1000は、基板1001、ソース1002、2DEGを発生させるように適合されたチャネル領域1003、およびドレイン1004を含む。さらに磁気電気障壁電界効果トランジスタ1000は、ゲート1005を含み、ゲート1005は、固定磁化をチャネル領域1003に誘導する第1の要素1006と、切り換え可能磁界をチャネル領域1003に誘導する第2の要素1007と、固定磁化をチャネル領域1003に誘導する第3の要素1008と、切り換え可能磁界をチャネル領域1003に誘導する第4の要素1009とを含む。さらに、不揮発性メモリセルは、軟磁性下層1010を含む。第1の要素1006、第2の要素1007、第3の要素1008、および第4の要素1009は、磁気二重対要素を構成し、この磁化は垂直型である。すなわち、要素1006、1007、1008、および1009は、個々の要素のそれぞれのN極およびS極の間の線がチャネル領域1003の面にほぼ垂直になるように並べられる。これを、図10に示した矢印で概略的に示した。
【0098】
[00109]図10aに示した磁気電気障壁電界効果トランジスタ1000は、低透過しきい値状態または高電流状態、すなわち、第2の要素1007および第4の要素1009によって誘導される磁化が、第1の要素1006および第3の要素1008によって誘導される磁化に対して逆平行である状態にあり、一方、図10cに示した磁気電気障壁電界効果トランジスタ1000は、高透過しきい値状態または低電流状態、すなわち、第2の要素1007および第4の要素1009によって誘導される磁化が、第1の要素1006および第3の要素1008によって誘導される磁化に対して平行である状態にある。磁気電気障壁電界効果トランジスタ1000は、第2の要素1007および第4の要素1007の磁界の方向が反転するように第2の要素1007および第4の要素1009を切り替えることによって、それら2つの状態の間で切り替えることが可能である。図10bおよび図10dでは、様々な電子エネルギーおよび障壁の数(すなわち、磁気二重対要素の数)に対する結果として得られる透過確率を示している。図10bは、低透過しきい値状態の場合に図10aの磁気電気障壁電界効果トランジスタ1000が、約10E0(ほぼフェルミエネルギー)のしきい値を呈することを示している。このしきい値は、障壁の数にはほとんど依存しない。図10dは、高透過しきい値状態の場合に図10bの磁気電気障壁電界効果トランジスタ1000が、図10bに比べて格段に高い透過しきい値を呈することを示している。透過しきい値は、障壁の数に強く依存する。
【0099】
[00110]図11は、本発明の実施形態によるプログラマブルAND/NANDゲートを概略的に示している。AND/NANDゲートの磁気電気障壁電界効果トランジスタ1100は、基板1101、ソース1102、2DEGを発生させるように適合されたチャネル領域1103、およびドレイン1104を含む。さらに磁気電気障壁電界効果トランジスタ1100は、ゲート1105を含み、ゲート1105は、固定磁化をチャネル領域1103に誘導する第1の要素1106と、切り換え可能磁界をチャネル領域1103に誘導する第2の要素1107と、固定磁化をチャネル領域1103に誘導する第3の要素1108と、切り換え可能磁界をチャネル領域1103に誘導する第4の要素1009とを含む。さらに、不揮発性メモリセルは、軟磁性下層1110を含む。第1の要素1106、第2の要素1107、第3の要素1108、および第4の要素1109は、磁気二重対要素を構成し、この磁化は垂直型である。すなわち、要素1106、1107、1108、および1109は、個々の要素のそれぞれのN極およびS極の間の線がチャネル領域1103の面にほぼ垂直になるように並べられる。これを、図11に示した矢印で概略的に示した。さらに、第2の要素1107および第4の要素1109にそれぞれ接続される入力1および入力2を概略的に示した。
【0100】
[00111]入力1および入力2に様々な信号を用いることにより、図11のAND/NANDゲートの様々な状態を実現できる。一例として、入力1および入力2の様々な信号に対して透過しきい値を用いることにより、ANDゲートを実現することが可能である。たとえば、出力、すなわち、電子のチャネル領域への透過を、入力1および入力2に信号ロー(0)が印加された場合はロー(0)、入力1に信号ローが印加され、入力2に信号ハイ(1)が印加された場合はロー(0)、入力1に信号ハイ(1)が印加され、入力2に信号ロー(0)が印加された場合はロー(0)、および入力1および入力2に信号ハイ(1)が印加された場合はハイ(1)となるように設定することが可能である。したがって、図11に示した、本発明の実施形態によるプログラマブルAND/NANDゲートによって論理ANDゲートを実現することが可能である。
【0101】
[00112]まとめると、本発明の概念の態様は、少なくとも1つの磁気二重対要素を含むゲートを用いて、磁気電気障壁電界効果トランジスタのHEMT様チャネル領域に磁気デルタ障壁を誘導することに見られる。磁気二重対要素は、正味ゼロA型の垂直磁界を磁気電気障壁電界効果トランジスタのHEMT様チャネル領域に誘導する。さらに、磁気電気障壁電界効果トランジスタのゲートに電位が印加される。磁気電気障壁電界効果トランジスタの記載の構造は、HEMT様チャネル領域に注入された、偏極した電子の偏極が増えることを保証する。永久磁石によって誘導された永久B場の場合でも、様々な磁化構成により、複数の磁気デルタ障壁を初期化および変更することが可能なので、スピン偏極の制御の自由度が存在する。さらに、ゲートの近傍に位置する書き込み線を流れる電流を用いて、ゲートの磁化を変化させることが可能である。
【0102】
[00113]本発明およびその利点について詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲において定義される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に関して様々な変更、置換、および改変が可能であることを理解されたい。
【0103】
なお、本出願においては、以下の文献を引用した。
[1] Supriyo Datta, and Biswajit Das, Appl.Phys. Lett. 56 (7), 665 (1989)
[2] Amlan Majumdar, Phys. Rev. B 54, 11911(1996)
[3] Yong Guo, Binglin Gu, and Wenhui Duan,Yu Zhang, Phys. Rev. B 55,9314 (1997)
[4] G. Papp, F. M. Peeters, Appl. Phys.Lett. 78,2184 (2001)
[5] H. Z. Xu and Y. Okada, Appl. Phys.Lett. 79,3119 (2001)
[6] Y. Jiang, Jalil MBA, and T. S. Low, Appl.Phys. Lett. 80, 1673 (2002)
[7] Yong Guo, Jian-Hua Qin, Xn-Yi Chen, andBing-Lin Gu, Semicond. Sci. Technol. 18, 297-299 (2003)
[8] Takaaki Koga, Junsaku Nitta, TatsushiAkazaki, and Hideaki Takayanagi, Phys. Rev. Lett. 89, 046801-1 (2002)
[9] P. R. Hammar, B. R. Bennet, M. J. Yang,and Mark Johnson, Phys. Rev. Lett. 83,203 (1999)
[10] Jun-ichiro Inoue, Gerrit E. W. Bauer,and Laurens W. Molenkamp, Phys. Rev. B 67, 033104(2003)
[11] E. I. Rashba, and Al. L. Efros, Phys.Rev. Lett. 91, 126405 (2003)
[12] Laurens W. Molenkamp, G. Schmidt, andGerrit E. W. Bauer, Phys. Rev. B 64,121202 (R), 2001
[13] John Schliemann, and Daniel Loss,Phys. Rev. B 68, 165311 (2003)
[14] John Schliemann, J. Carlos Egues, andDaniel Loss, Phys. Rev. Lett. 90,146801-1 (2003)
[15] US patent 5,654,566
[16] US patent 6,218,718
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の実施形態による磁気電気障壁電界効果トランジスタ(スピンFET)を概略的な全体レイアウトを示す図である。
【図2】本発明の別の実施形態による磁気二重対要素を詳細に描いた図である。
【図3】本発明のさらなる実施形態による磁気二重対要素を詳細に描いた図である。
【図4】正味ゼロA型構成の概略図である。
【図5】本発明の実施形態による磁気電気障壁電界効果トランジスタのゲートの様々な構成についてのシミュレーションの結果を示す図である。
【図6】複数の障壁対の基本単位として動作する二重対を概略的に示す図である。
【図7】本発明の別の実施形態による磁気電気障壁電界効果トランジスタを概略的に示す図である。
【図8】本発明による磁気電気障壁電界効果トランジスタを含む増幅器の概略と、様々な電子エネルギーおよびゲートに印加される様々な電圧に対する結果であるスピン偏極とを示す図である。
【図9】本発明の実施形態による磁気電気障壁電界効果トランジスタの中の不揮発性メモリセルを概略的に示す図である。
【図10a】本発明の別の実施形態による磁気電気障壁電界効果トランジスタの中の不揮発性メモリセルを概略的に示す図である。
【図10b】本発明の別の実施形態による磁気電気障壁電界効果トランジスタの中の不揮発性メモリセルを概略的に示す図である。
【図10c】本発明の別の実施形態による磁気電気障壁電界効果トランジスタの中の不揮発性メモリセルを概略的に示す図である。
【図10d】本発明の別の実施形態による磁気電気障壁電界効果トランジスタの中の不揮発性メモリセルを概略的に示す図である。
【図11】本発明の実施形態によるプログラマブルAND/NANDゲートを概略的に示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャネル領域と、
前記チャネル領域の一方の側に接続され、前記チャネル領域に電子を注入するように適合されたソースと、
前記チャネル領域の反対側に接続され、スピン偏極した電子を検出するように適合されたドレインと、
4つの磁気要素を備える磁気二重対要素を少なくとも1つ備えるゲートとを備える磁気電気電界効果トランジスタであって、各磁気要素が前記チャネル領域に磁界を誘導するように適合され、各磁気二重対要素の誘導された磁界の合計がほぼゼロになるように制御することが可能であり、前記ゲートが前記チャネル領域に電界を誘導するようにさらに適合された磁気電気電界効果トランジスタ。
【請求項2】
前記ゲートが複数の磁気二重対要素を備える、請求項1に記載の磁気電気電界効果トランジスタ。
【請求項3】
前記ソースが、非磁性体、強磁性体、半金属、および磁気半導体からなる群から選択される材料を含む、請求項1または2に記載の磁気電気電界効果トランジスタ。
【請求項4】
前記ドレインが、強磁性体、半金属、および磁気半導体からなる群から選択される材料を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の磁気電気電界効果トランジスタ。
【請求項5】
前記チャネル領域が、n+ドープアルミニウムガリウムヒ素からなる第1の層と、アルミニウムガリウムヒ素からなる第2の層と、ガリウムヒ素からなる第3の層とを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の磁気電気電界効果トランジスタ。
【請求項6】
前記ゲートが強磁性材料を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の磁気電気電界効果トランジスタ。
【請求項7】
前記強磁性材料が、コバルトクロム白金および/または鉄白金および/または鉄コバルトおよび/またはコバルトパラジウムの合金である、請求項6に記載の磁気電気電界効果トランジスタ。
【請求項8】
前記ゲートが少なくとも10個の磁気二重対要素を備える、請求項1〜7のいずれか一項に記載の磁気電気電界効果トランジスタ。
【請求項9】
前記磁気二重対要素が、極が前記チャネル領域にほぼ平行に並べられている磁石によって形成される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の磁気電気電界効果トランジスタ。
【請求項10】
前記磁気二重対要素が、極が前記チャネル領域にほぼ垂直に並べられている磁石によって形成される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の磁気電気電界効果トランジスタ。
【請求項11】
前記ゲートが単極書き込みヘッドを備え、前記単極書き込みヘッドが、前記磁気二重対要素によって前記チャネル領域に誘導された磁界に作用するように適合されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の磁気電気電界効果トランジスタ。
【請求項12】
前記ゲートの反対側の前記チャネル領域の下に軟磁性材料の層をさらに備える、請求項1〜11のいずれか一項に記載の磁気電気電界効果トランジスタ。
【請求項13】
前記チャネル領域がHEMT様チャネル領域である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の磁気電気電界効果トランジスタ。
【請求項14】
第1の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB1であり、第2の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB2であり、第3の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB3であり、第4の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB4であり、B1、B2、B3、およびB4は、互いに次の関係
|B2|=|B3|、|B1|=|B4|および|B1|≠|B2|
を有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の磁気電気電界効果トランジスタ。
【請求項15】
前記第1の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB1であり、前記第2の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB2であり、前記第3の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB3であり、前記第4の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB4であり、B1、B2、B3、およびB4は、互いに次の関係
|B1|=|B2|、|B3|=|B4|および|B1|≠|B3|
を有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の磁気電気電界効果トランジスタ。
【請求項16】
前記第1の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB1であり、前記第2の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB2であり、前記第3の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB3であり、前記第4の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB4であり、B1、B2、B3、およびB4は、互いに次の関係
|B1|=|B2|=|B3|=|B4|
を有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の磁気電気電界効果トランジスタ。
【請求項17】
前記ゲートが、パターン化された層を備える、請求項1〜16のいずれか一項に記載の磁気電気電界効果トランジスタ。
【請求項18】
前記誘導される磁界が、前記ゲートと前記チャネル領域との間の界面に垂直である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の磁気電気電界効果トランジスタ。
【請求項19】
前記誘導される磁界が、前記ゲートと前記チャネル領域との間の界面に平行であり、ソースからドレインに向かう線に垂直である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の磁気電気電界効果トランジスタ。
【請求項20】
各磁気二重対要素によって誘導される磁界がゼロである、請求項1〜19のいずれか一項に記載の磁気電気電界効果トランジスタ。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか一項に記載の磁気電気電界効果トランジスタを備える増幅器。
【請求項22】
請求項1〜19のいずれか一項に記載の磁気電気電界効果トランジスタを備えるメモリチップ。
【請求項23】
請求項1〜19のいずれか一項に記載の磁気電気電界効果トランジスタを備えるAND/NANDゲート。
【請求項1】
チャネル領域と、
前記チャネル領域の一方の側に接続され、前記チャネル領域に電子を注入するように適合されたソースと、
前記チャネル領域の反対側に接続され、スピン偏極した電子を検出するように適合されたドレインと、
4つの磁気要素を備える磁気二重対要素を少なくとも1つ備えるゲートとを備える磁気電気電界効果トランジスタであって、各磁気要素が前記チャネル領域に磁界を誘導するように適合され、各磁気二重対要素の誘導された磁界の合計がほぼゼロになるように制御することが可能であり、前記ゲートが前記チャネル領域に電界を誘導するようにさらに適合された磁気電気電界効果トランジスタ。
【請求項2】
前記ゲートが複数の磁気二重対要素を備える、請求項1に記載の磁気電気電界効果トランジスタ。
【請求項3】
前記ソースが、非磁性体、強磁性体、半金属、および磁気半導体からなる群から選択される材料を含む、請求項1または2に記載の磁気電気電界効果トランジスタ。
【請求項4】
前記ドレインが、強磁性体、半金属、および磁気半導体からなる群から選択される材料を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の磁気電気電界効果トランジスタ。
【請求項5】
前記チャネル領域が、n+ドープアルミニウムガリウムヒ素からなる第1の層と、アルミニウムガリウムヒ素からなる第2の層と、ガリウムヒ素からなる第3の層とを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の磁気電気電界効果トランジスタ。
【請求項6】
前記ゲートが強磁性材料を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の磁気電気電界効果トランジスタ。
【請求項7】
前記強磁性材料が、コバルトクロム白金および/または鉄白金および/または鉄コバルトおよび/またはコバルトパラジウムの合金である、請求項6に記載の磁気電気電界効果トランジスタ。
【請求項8】
前記ゲートが少なくとも10個の磁気二重対要素を備える、請求項1〜7のいずれか一項に記載の磁気電気電界効果トランジスタ。
【請求項9】
前記磁気二重対要素が、極が前記チャネル領域にほぼ平行に並べられている磁石によって形成される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の磁気電気電界効果トランジスタ。
【請求項10】
前記磁気二重対要素が、極が前記チャネル領域にほぼ垂直に並べられている磁石によって形成される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の磁気電気電界効果トランジスタ。
【請求項11】
前記ゲートが単極書き込みヘッドを備え、前記単極書き込みヘッドが、前記磁気二重対要素によって前記チャネル領域に誘導された磁界に作用するように適合されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の磁気電気電界効果トランジスタ。
【請求項12】
前記ゲートの反対側の前記チャネル領域の下に軟磁性材料の層をさらに備える、請求項1〜11のいずれか一項に記載の磁気電気電界効果トランジスタ。
【請求項13】
前記チャネル領域がHEMT様チャネル領域である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の磁気電気電界効果トランジスタ。
【請求項14】
第1の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB1であり、第2の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB2であり、第3の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB3であり、第4の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB4であり、B1、B2、B3、およびB4は、互いに次の関係
|B2|=|B3|、|B1|=|B4|および|B1|≠|B2|
を有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の磁気電気電界効果トランジスタ。
【請求項15】
前記第1の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB1であり、前記第2の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB2であり、前記第3の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB3であり、前記第4の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB4であり、B1、B2、B3、およびB4は、互いに次の関係
|B1|=|B2|、|B3|=|B4|および|B1|≠|B3|
を有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の磁気電気電界効果トランジスタ。
【請求項16】
前記第1の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB1であり、前記第2の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB2であり、前記第3の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB3であり、前記第4の磁気デルタ障壁によって誘導される磁界の強度がB4であり、B1、B2、B3、およびB4は、互いに次の関係
|B1|=|B2|=|B3|=|B4|
を有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の磁気電気電界効果トランジスタ。
【請求項17】
前記ゲートが、パターン化された層を備える、請求項1〜16のいずれか一項に記載の磁気電気電界効果トランジスタ。
【請求項18】
前記誘導される磁界が、前記ゲートと前記チャネル領域との間の界面に垂直である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の磁気電気電界効果トランジスタ。
【請求項19】
前記誘導される磁界が、前記ゲートと前記チャネル領域との間の界面に平行であり、ソースからドレインに向かう線に垂直である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の磁気電気電界効果トランジスタ。
【請求項20】
各磁気二重対要素によって誘導される磁界がゼロである、請求項1〜19のいずれか一項に記載の磁気電気電界効果トランジスタ。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか一項に記載の磁気電気電界効果トランジスタを備える増幅器。
【請求項22】
請求項1〜19のいずれか一項に記載の磁気電気電界効果トランジスタを備えるメモリチップ。
【請求項23】
請求項1〜19のいずれか一項に記載の磁気電気電界効果トランジスタを備えるAND/NANDゲート。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図10c】
【図10d】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図10c】
【図10d】
【図11】
【公表番号】特表2007−535167(P2007−535167A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−510662(P2007−510662)
【出願日】平成16年4月27日(2004.4.27)
【国際出願番号】PCT/SG2004/000111
【国際公開番号】WO2005/104240
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年4月27日(2004.4.27)
【国際出願番号】PCT/SG2004/000111
【国際公開番号】WO2005/104240
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]