説明

ナビゲーションシステム

【課題】通信負荷を分散と、装置構成の簡略化や電磁波ノイズの軽減を図ることができる通信型のナビゲーションシステムを提供する。
【解決手段】クライアントカーナビCNが、自身の近距離無線通信圏内にあり、かつ基地局装置BSが長距離無線通信圏内にあるサーバ機器SVに対して、自身の位置情報に対応する地図情報を基地局装置BSから取得するように近距離無線通信で要求し、当該要求に応じて取得された地図情報をサーバ機器SVから近距離無線通信で受信して、当該地図情報を用いたナビゲーション処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無線通信により外部から取得した地図データを用いてナビゲーション処理を実行するサーバ/クライアント構成のナビゲーションシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、地図データ等を配信するセンタ装置と、無線通信で取得した地図データでナビゲーション処理を実行する車載端末装置との間に中間サーバを設けて、中間サーバが車載端末装置からセンタ装置へのアクセスを中継して車載装置の位置情報に対応した地図データを通信することにより、車載端末装置やセンタ装置の通信負荷を低減する通信型ナビゲーションシステムが提案されている。このナビゲーションシステムは、ブロードバンド通信サービスが一般的に普及し家庭内で無線通信接続されるようになったことに着目したものであり、中間サーバがホームサーバという位置付けで車載端末装置やセンタ装置の負荷低減に貢献している。
【0003】
【特許文献1】特開2006−189284号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のシステムでは、車載端末装置が、ホームサーバとの間でもセンタ装置へのアクセスと同様の長距離無線通信手段を備える必要がある上、車内の周辺機器と通信するための近距離無線通信手段へ電磁波ノイズを与えて誤動作させる可能性があるという課題があった。
【0005】
図12は、従来の通信型ナビゲーションシステムの概要を示す図である。図12において、車載端末装置(N)300a,300b,300c(以下、通信機能付カーナビと称す)は、車輌600e,600f,600gに搭載されており、ホームサーバ(HS)550との間で長距離無線通信を行い、ホームサーバ550を介して基地局装置500からナビゲーション処理に必要なプログラムやデータを取得する。なお、車輌600e,600f,600gは、路側分離帯610a,610b、中央分離帯611、及び車線分離帯612a,612bで規定された片道2車線の道路上を走行している。
【0006】
また、ホームサーバ550は、必ずしも上記道路の近傍でなくてもよいが、通信機能付カーナビと長距離無線通信が可能な位置にある建物614内に設けられ、当該長距離無線通信を介して通信機能付カーナビ300a,300b,300cから要求があると、基地局装置500の基地局通信部503と長距離無線通信を行って、当該要求に応じたプログラムやデータを基地局装置500から取得する。
【0007】
基地局装置500は、基地局中央演算処理部501、基地局主記憶部502、基地局通信部503及び基地局記憶部504を備え、基地局通信部503がホームサーバ550と長距離無線通信を行い、ホームサーバ550を介して基地局記憶部504に記憶された地図データ等を通信機能付カーナビ300a,300b,300cへ配信する。
【0008】
図13は、上記従来の通信型ナビゲーションシステムの通信機能付カーナビの内部構成を示すブロック図である。図13において、通信機能付カーナビ300(図12中の通信機能付カーナビ300a,300b,300cに相当する)は、中央演算処理部310、主記憶部311、長距離通信部312、近距離通信部313、GPS受信部315、表示部316、音声出力部317、記憶部314を備える。
【0009】
長距離通信部312は、送信部320、受信部321及びベースバンド部322を備え、長距離無線通信用の比較的大電力な出力のアンテナ350を介して、ホームサーバ550と長距離無線通信を行う。近距離通信部313は、送信部323、受信部324及びベースバンド部325を備え、近距離無線通信用のアンテナ352を介して車輌内の機器、例えば携帯機器400と近距離無線通信を行う。GPS受信部315は、GPS受信用アンテナ351と接続しており、GPS受信用アンテナ351を介して自車位置の計測に必要な自車の位置情報をGPS衛星(不図示)から取得する。
【0010】
図14は、上記従来の通信機能付カーナビシステムによる地図取得処理の流れを示すフローチャートである。通信機能付カーナビ300では、GPS受信部315で自車の位置情報を収集し(ステップST100)、中央演算処理部310が、当該位置情報に基づきナビゲーション処理に必要な地図(例えば、自車位置周辺の地図)を選択する。
【0011】
次に、中央演算処理部310は、選択した地図のデータが記憶部314にあるか否かを確認する(ステップST101)。ここで、地図データが既に記憶部314にある場合(YES)は地図データの取得処理を終了し、自車位置や行先情報に基づいてルート検索を行ってルートを決定し、そのルート上への自車位置のマップマッチングを実行する。
【0012】
一方、地図データが記憶部にない場合(NO)、中央演算処理部310は、長距離通信部312を制御してホームサーバ550との通信を確立し、ステップST100で選択した地図に関する地図データの取得要求をホームサーバ550へ送信する(ステップST102)。ホームサーバ550は、通信機能付カーナビ300から地図データの取得要求を受信すると(ステップST103)、自身に備えられた記憶部(不図示)に該当する地図データがあればそれを返信し、無ければ、長距離無線通信を介して基地局装置500に要求して地図データを取得して通信機能付カーナビ300へ送信する。
【0013】
このように、従来の通信機能付きカーナビ300(車載端末装置)は、ホームサーバ550と通信するための長距離通信部312を備える必要があり、高価なカーナビゲーション用車載端末装置となる。また、近年の情報処理機器に標準的に搭載されるようになっているBluetoothやIrDA(Infrared Data Association)等の近距離通信部313で携帯機器400と通信する際や、GPS受信部315でGPS情報を受信する際、大きな送信電力を必要とする長距離通信部312からの電磁波ノイズの影響を受けて、近距離通信部313やGPS受信部315が誤動作する可能性があった。
【0014】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、サーバ/クライアント構成として通信負荷を分散するとともに、近距離無線通信を利用してナビゲーションに必要なデータを取得することで、長距離無線通信部の省略や長距離無線通信頻度の低減を実現し、これによる装置構成の簡略化や電磁波ノイズの軽減を図ることができるナビゲーションシステムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明に係るナビゲーションシステムは、クライアント装置が、自身の近距離無線通信圏内にあり、かつ基地局装置が長距離無線通信圏内にあるサーバ装置に対して、自身の位置情報に対応する地図情報を基地局装置から取得するように近距離無線通信手段の近距離無線通信で要求し、当該要求に応じて取得された地図情報をサーバ装置から近距離無線通信で受信して、当該地図情報を用いたナビゲーション処理を実行するものである。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、クライアント装置が、自身の近距離無線通信圏内にあり、かつ基地局装置が長距離無線通信圏内にあるサーバ装置に対して、自身の位置情報に対応する地図情報を基地局装置から取得するように近距離無線通信で要求し、当該要求に応じて取得された地図情報をサーバ装置から近距離無線通信で受信して、当該地図情報を用いたナビゲーション処理を実行する。このようにサーバ/クライアント構成とすることで通信負荷を分散でき、近距離無線通信を利用することにより長距離無線通信部の省略や長距離無線通信頻度の低減を実現したことから、装置構成の簡略化や電磁波ノイズの軽減を図ることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるナビゲーションシステムの構成例1を示す図である。図1に示す例において、車輌600a,600b,600cには、サーバ機器SV(サーバ装置)及びクライアントナビゲーション端末CN(以下、クライアントカーナビCNと称す)(クライアント装置)がセットで搭載されている。すなわち、車輌600aには、サーバ機器SV−1aとクライアントカーナビCN−2aが、車輌600bにはサーバ機器SV−1bとクライアントカーナビCN−2bが、車輌600cにはサーバ機器SV−1cとクライアントカーナビCN−2cが取り付けられる。
【0018】
サーバ機器SVは、基地局装置500との間で長距離無線通信を行う通信機能と、クライアントカーナビCNとの間で近距離無線通信を行う通信機能を有し、近距離無線通信でクライアントカーナビCNから要求された地図データ等を、長距離無線通信で基地局装置500から取得することができる。すなわち、サーバ機器SV−1aはクライアントカーナビCN−2a,CN−2bと、サーバ機器SV−1bはクライアントカーナビCN−2a,CN−2b,CN−2cと、サーバ機器SV−1cはクライアントカーナビCN−2b,CN−2cと近距離無線通信が可能である。
【0019】
クライアントカーナビCNは、サーバ機器SVや他のクライアントカーナビCNとの間で近距離無線通信を行う通信機能を有し、近距離無線通信でサーバ機器SVあるいは他のクライアントカーナビCNに要求して取得した地図データ等を利用して、自車輌のナビゲーション処理を実行する。
【0020】
なお、図1において、クライアントカーナビCN−2a,CN−2b,CN−2cは、それぞれ通信圏3a,3b,3c内(図1中に一点鎖線で示す円状の通信圏)での近距離無線通信が可能である。従って、クライアントカーナビCN−2aは、サーバ機器SV−1a,SV−1bとクライアントカーナビCN−2bと近距離無線通信が可能であり、クライアントカーナビCN−2bは、サーバ機器SV−1a,SV−1b,SV−1cとクライアントカーナビCN−2a,CN−2cと近距離無線通信が可能であり、クライアントカーナビCN−2cは、サーバ機器SV−1b,SV−1cとクライアントカーナビCN−2bと近距離無線通信が可能である。
【0021】
また、サーバ機器SV及びクライアントカーナビCNを備えた車輌600e,600f,600gは、路側分離帯610a,610b、中央分離帯611、及び車線分離帯612a,612bで規定された片道2車線の道路上を走行している。
基地局装置500は、必ずしも上記道路の近傍でなくてもよいが、サーバ機器SVの長距離無線通信圏内に配置され、基地局中央演算処理部501、基地局主記憶部502、基地局通信部503、及び基地局記憶部504を備える。なお、基地局装置500の基地局通信部503が、複数のサーバ機器SVと同時に長距離無線通信することが可能である。
【0022】
ここで、サーバ機器SV−1aがクライアントカーナビCN−2aからのアクセス要求で基地局装置500と長距離無線通信(図1中に二重線の矢印で示す)している際、クライアントカーナビCN−2bで基地局装置500へのアクセス要求が発生した場合を考える。この場合、クライアントカーナビCN−2bは、直ちに自車のサーバ機器SV−1b経由で基地局装置500へアクセス要求せず、近距離無線通信圏内に存在する他車のサーバ機器SV−1a,SV−1cの状態を確認し、他車のサーバ機器SV−1aが長距離無線通信中であれば、この通信接続に便乗して基地局装置500にアクセスする。
【0023】
このようにすることで、近距離無線通信で互いに通信接続されたサーバ/クライアント構成のナビゲーションシステム全体のサーバ機器SVの稼働率の逓減化を図ることが可能となる。なお、この場合、クライアントカーナビCN−2bは、サーバ機器SV−1aを介して基地局装置500から取得したデータ及びプログラムを、自車輌のサーバ機器SV−1bへ転送してデータを格納することが可能である。
【0024】
図2は、図1中の各車輌に保持される通信管理ファイルを示す図であり、図2(a)は車輌600aの通信管理ファイル、図2(b)は車輌600bの通信管理ファイル、図2(c)は車輌600cの通信管理ファイルを示しており、各車輌では通信管理ファイルに従って通信処理が実行される。通信管理ファイル200,201,202は、車輌600a,600b,600cにそれぞれ搭載したサーバ機器SV及びクライアントカーナビCNに設けられる。
【0025】
通信管理ファイル中のサーバ機器SVのリストには、サーバ機器SVとの間で近距離無線通信可能なクライアントカーナビCNと基地局装置BSが登録されており、リスト中のデジタル値1は通信中であることを示しており、デジタル値0は通信中でないことを示している。
【0026】
また、通信管理ファイル中のクライアントカーナビCNのリストには、クライアントカーナビCNとの間で近距離通信可能なサーバ機器SVと他のクライアントカーナビCNが登録されており、同様にデジタル値1は通信中であることを示しており、デジタル値0は通信中でないことを示している。なお、クライアントカーナビCNのリストに登録された基地局装置BSは、デジタル値1がアクセス要求が発生していることを示しており、デジタル値0はアクセス要求が発生していないことを示している。
【0027】
図2(a)(b)(c)中に一点鎖線で囲んだリストデータは、他車輌のサーバ機器SV及びクライアントカーナビCNから取得した通信管理ファイル203,204,205,206,207,208である。図1に示すシステムでは、自車輌にないサーバ機器SV及びクライアントカーナビCNとの間で近距離無線通信を実施した際、通信相手のサーバ機器SV及びクライアントカーナビCNの通信管理ファイルを取得して自車輌の通信管理ファイルと関連付けて登録する。
【0028】
これにより、例えばクライアントカーナビCN−2bで基地局装置BSへのアクセス要求が発生した場合、直ちに自車輌のサーバ機器SV−1b経由で基地局装置BSへのアクセス要求をするのではなく、近距離無線通信圏内に存在する他車輌のサーバ機器SV−1a,SV−1cの通信管理ファイルを取得してリスト中の基地局装置BSが通信中を示すデジタル値1となっているか否かを確認する。これにより、サーバ機器SV−1aが基地局装置と通信中であることが判れば、これに便乗して基地局装置BSへアクセスする。
【0029】
図3は、この発明の実施の形態1によるナビゲーションシステムの構成例2を示す図である。図3に示す例において、車輌600aには、サーバ機器SV及びクライアントカーナビCNがそれぞれセットで搭載されており、車輌600b,600cには、クライアントカーナビのみ搭載される。すなわち、車輌600aにはSV−1a及びCN−2aが、車輌600bにはCN−2bが、車輌600cにはCN−2cが取り付けられる。
【0030】
サーバ機器SVは、図1と同様に、基地局装置500との間で長距離無線通信を行う通信機能と、クライアントカーナビCNとの間で近距離無線通信を行う通信機能を有し、近距離無線通信でクライアントカーナビCNから要求された地図データ等を、長距離無線通信で基地局装置500から取得することができる。すなわち、サーバ機器SV−1aはクライアントカーナビCN−2a,CN−2bと近距離無線通信が可能である。
【0031】
クライアントカーナビCNは、サーバ機器SV及び他のクライアントカーナビCNとの間で近距離無線通信を行う通信機能を有し、近距離無線通信でサーバ機器SVあるいは他のクライアントカーナビCNに要求して取得した地図データ等を利用して、自車輌のナビゲーション処理を実行する。
【0032】
クライアントカーナビCN−2a,CN−2b,CN−2cは、それぞれ通信圏3a,3b,3c内(図3中に一点鎖線で示す円状の通信圏)で近距離無線通信が可能である。従って、クライアントカーナビCN−2aは、サーバ機器SV−1aとクライアントカーナビCN−2bと近距離無線通信が可能であり、クライアントカーナビCN−2bは、サーバ機器SV−1aとクライアントカーナビCN−2a,CN−2cと近距離無線通信が可能であり、クライアントカーナビCN−2cは、クライアントカーナビCN−2bのみと近距離無線通信が可能である。
【0033】
図3に示す構成では、クライアントカーナビCN−2aが基地局装置500と通信する際、車輌600aのサーバ機器SV−1aを介して間接的に通信を実行する。また、クライアントカーナビCN−2cが基地局装置BSと通信する際には、クライアントカーナビCN−2b及びサーバ機器SV−1aを介して間接的に通信を実行する。
【0034】
このように、クライアントカーナビCN−2a,CN−2b,CN−2cが基地局装置500と通信する際は必ずサーバ機器SV−1aを介して実行し、自身は近距離無線通信に特化した機能のみとすることで、安価でEMC(Electro-Magnetic Compatibility)設計的に容易なナビゲーションシステムを実現できる。
【0035】
図4は、図3中の各車輌に保持される通信管理ファイルを示す図であり、図4(a)は車輌600aの通信管理ファイル、図4(b)は車輌600bの通信管理ファイル、図4(c)は車輌600cの通信管理ファイルを示しており、各車輌では通信管理ファイルに従って通信処理が実行される。通信管理ファイル211,212,213は、車輌600a,600b,600cに搭載したサーバ機器SVやクライアントカーナビCNに設けられる。
【0036】
通信管理ファイル中のサーバ機器SVのリストには、図2と同様に、サーバ機器SVとの間で近距離無線通信可能なクライアントカーナビCNと基地局装置BSが登録されており、リスト中のデジタル値1は通信中であることを示しており、デジタル値0は通信中でないことを示している。
【0037】
また、通信管理ファイル中のクライアントカーナビCNのリストには、クライアントカーナビCNとの間で近距離通信可能なサーバ機器SVと他のクライアントカーナビCNが登録されており、同様にデジタル値1は通信中であることを示しており、デジタル値0は通信中でないことを示している。なお、クライアントカーナビCNのリストに登録されている基地局装置BSは、デジタル値1がアクセス要求が発生していることを示しており、デジタル値0はアクセス要求が発生していないことを示している。
【0038】
図4(a)(b)(c)中に一点鎖線で囲んだリストデータは、他車輌のサーバ機器SV及びクライアントカーナビCNから取得した通信管理ファイル214,215,216,217である。図3に示すシステムにおいても、自車輌にないサーバ機器SV及びクライアントカーナビCNとの間で近距離無線通信を実施した際、通信相手のサーバ機器SV及びクライアントカーナビCNの通信管理ファイルを取得して自車輌の通信管理ファイルと関連付けて登録する。これにより、例えばクライアントカーナビCN−2bで基地局装置へのアクセス要求が発生した場合、近距離無線通信圏内に存在するサーバ機器SV−1aの通信管理ファイルを取得して、サーバ機器SV−1aを介して基地局装置500にアクセスすることが可能である。
【0039】
また、クライアントカーナビCN−2cで基地局装置500へのアクセス要求が発生した場合、近距離無線通信圏内にサーバ機器SVが存在しないため、クライアントカーナビCN−2bの通信管理ファイルを取得する。この通信管理ファイルからクライアントカーナビCN−2bがサーバ機器SV−1aと通信可能であると、クライアントカーナビCN−2b及びサーバ機器SV−1aを介して間接的に基地局装置500にアクセスする。
【0040】
図5は、この発明の実施の形態1によるナビゲーションシステムの構成例3を示す図である。図5に示す例において、サーバ機器SV−1bは、道路沿いのガソリンスタンドや自宅等の建物613の路側に設置され、クライアントカーナビCN−2dが車輌600dに搭載される。
【0041】
サーバ機器SV−1bは、図1と同様に、基地局装置500との間で長距離無線通信を行う通信機能と、クライアントカーナビCN−2dとの間で近距離無線通信を行う通信機能を有し、クライアントカーナビCN−2dから要求された地図データ等を、長距離無線通信を介して基地局装置500から取得することができる。
【0042】
また、クライアントカーナビCN−2dは、サーバ機器SV−1bとの間で近距離無線通信を行う通信機能を有し、近距離無線通信でサーバ機器SV−1bに要求して取得した地図データ等を用い、自車輌のナビゲーション処理を実行する。図5において、クライアントカーナビCN−2dは、それぞれ通信圏3d内(図5中に一点鎖線で示す円状の通信圏)での近距離無線通信が可能である。従って、クライアントカーナビCN−2dは、サーバ機器SV−1bと近距離無線通信が可能である。
【0043】
基地局装置500は、必ずしも上記道路の近傍でなくてもよいが、サーバ機器SV−1bの長距離無線通信圏内に配置され、基地局中央演算処理部501、基地局主記憶部502、基地局通信部503及び基地局記憶部504を備える。なお、基地局装置500の基地局通信部503が、複数のサーバ機器SVと同時に長距離無線通信することが可能である。なお、サーバ機器SV−1bと基地局装置500とは、有線ネットワークで接続されていてもよい。クライアントカーナビCN−2dが基地局装置500と通信する際、サーバ機器SV−1bを介して間接的に通信が実行される。
【0044】
このように、クライアントカーナビCN−2dを近距離無線通信機能のみとし、基地局装置500と通信する際は必ずサーバ機器SV−1bを介するように構成することで、上述した構成例1,2よりも安価で、かつEMC設計的に容易なナビゲーションシステムを実現することが可能である。
【0045】
また、図5に示す構成例3において、クライアントカーナビCN−2dが、自車の停車(走行時の交差点などの一旦停止以外)、例えば自車輌のサイドブレーキの操作検出結果等からガソリンスタンドや自宅等での停車であるか否かを判断し、この停車時に近距離無線通信圏内のサーバ機器の検索を実行し、路側に設置されたサーバ機器SV−1dとの間で近距離無線通信を優先的に確保する。
【0046】
さらに、クライアントカーナビCN−2dを車輌600dから取り外し可能な携帯端末として構成し、自宅等に設けたサーバ機器SVとの間で近距離無線通信以外の通信、例えば有線通信や屋内LANなどの無線通信を行う通信手段を設け、この通信手段で通信接続して、当該サーバ機器SVからナビゲーション処理に必要なプログラム及びデータを取得するようにしてもよい。これにより、走行中及び停車中に近距離無線通信することなく、ナビゲーション処理を実現することも可能である
【0047】
図6は、この発明の実施の形態1によるナビゲーションシステムの構成を示すブロック図である。図6において、サーバ機器SV−1は、サーバ中央演算処理部10、サーバ主記憶部11、長距離及び近距離サーバ通信部12、及びサーバ記憶部14を備える。長距離及び近距離サーバ通信部12は、送信部23と受信部24からなる長距離通信RF部20(長距離無線通信手段)、送信部25と受信部26からなる近距離通信RF部21(近距離無線通信手段)、及びベースバンド部22を備えており、比較的大電力出力の長距離無線通信用アンテナ50と近距離無線通信用アンテナ52aが接続されている。
【0048】
サーバ中央演算処理部10は、サーバ機器SV−1の情報処理(例えば、クライアントカーナビCNから要求されたマップマッチング処理)を実行し、処理中に生じたデータ等がサーバ主記憶部11に記憶される。また、サーバ記憶部14には、図2,4で示したような通信管理ファイルが格納されており、サーバ中央演算処理部10が、サーバ記憶部14から読み出した通信管理ファイルに基づいて長距離及び近距離サーバ通信部12による通信処理を制御する。
【0049】
長距離通信RF部20は、サーバ中央演算処理部10に制御されて、送信部23を介して基地局装置BSに各種要求を行い、受信部24を介して基地局装置BSから高周波信号の応答データ(要求に応じた地図データ等)を受信する。また、近距離通信RF部21は、受信部26を介してクライアントカーナビCNから高周波信号の各種要求を受信し、送信部25を介してクライアントカーナビCNへ高周波信号の応答データ(要求に応じた地図データ等)を送信する。
【0050】
ベースバンド部22では、長距離通信RF部20や近距離通信RF部21で受信された高周波信号を、サーバ中央演算処理部10による情報処理に適した周波数までダウンコンバートしてサーバ中央演算処理部10に出力する。サーバ中央演算処理部10は、長距離及び近距離サーバ無線通信部12からの情報に基づいて通信処理を制御する。
【0051】
クライアントカーナビCN−2aは、クライアント中央演算処理部30、クライアント主記憶部31、クライアント近距離通信部32(近距離無線通信手段)、GPS受信部35、表示部36、音声出力部37及びディスクキャッシュ部34を備える。クライアント近距離通信部32は、送信部40、受信部41及びベースバンド部42を備え、近距離無線通信用のアンテナ52が接続されている。また、GPS受信部35にはGPS受信用アンテナ51が接続されている。
【0052】
クライアント近距離通信部32は、クライアント中央演算処理部30に制御されて、送信部40を介してサーバ機器SV−1や他のクライアントカーナビCNに対して各種要求を行い、受信部41を介してサーバ機器SV−1や他のクライアントカーナビCNから高周波信号の応答データを受信する。
【0053】
ベースバンド部42は、クライアント近距離通信部32で受信された高周波信号を、クライアント中央演算処理部30による情報処理に適した周波数までダウンコンバートしてクライアント中央演算処理部30に出力する。クライアント中央演算処理部30は、クライアント近距離通信部32からの情報に基づいて通信処理を制御する。
【0054】
また、クライアントカーナビCN−2b,CN−2cも、クライアントカーナビCN−2aと同様な構成である。なお、クライアントカーナビCN−2bとクライアントカーナビCN−2cにはそれぞれ近距離無線通信用アンテナ52c,52dが接続されている。なお、近距離無線通信用のアンテナ52a,52b,52cを介して車輌内の機器、例えば携帯機器400と近距離無線通信を行うこともできる。GPS受信部35は、GPS受信用アンテナ51を介して自車位置の計測に必要な自車の位置情報をGPS衛星(不図示)から取得する。
【0055】
クライアント中央演算処理部30は、クライアントカーナビCN−2aの情報処理(ナビゲーション処理等)を実行し、処理中に生じたデータ等が例えばクライアント主記憶部31に記憶される。なお、サーバ機器SV側で自車輌に関するマップマッチング処理を実行させる場合は、その処理結果を用いたナビゲーション処理を実行する。
【0056】
ディスクキャッシュ部34は、ナビゲーション処理に用いる地図データや、図2,4で示した通信管理ファイルを格納する。クライアント中央演算処理部30は、ディスクキャッシュ部34から読み出した地図データを用いてナビゲーション処理を実行したり、通信管理ファイルに基づいてクライアント近距離通信部32による通信処理を制御する。ナビゲーション処理結果は、表示部36の表示画面上に表示されたり、音声出力部37によって音声案内等が実行される。
【0057】
サーバ機器SV−1では、長距離及び近距離サーバ通信部12の長距離通信RF部20によって基地局装置BSとの間で長距離無線通信を行い、近距離通信RF部21によってクライアントカーナビCN−2a,CN−2b,CN−2cとの間で近距離無線通信を行う。
【0058】
なお、クライアントカーナビCN−2a,CN−2b,CN−2cのディスクキャッシュ34には、予め完全仕様の地図データは用意されておらず、自車位置に応じた地図データの取得要求が発生すると、サーバ機器SV−1との近距離無線通信で所望の地図データを取得し、当該地図データを用いたナビゲーション処理が行われる。
【0059】
また、図6に示すように、サーバ機器SV−1が近距離無線通信圏内にないクライアントカーナビCN−2cでは、サーバ機器SV−1が近距離無線通信圏内にあるクライアントカーナビCN−2bに対してサーバ機器SV−1との通信の仲介依頼を示す制御信号を送信し、この制御信号に基づいてクライアントカーナビCN−2bがサーバ機器SV−1との通信を中継してナビゲーション処理に必要なプログラム及びデータを取得する。
【0060】
なお、クライアントカーナビCN−2a,CN−2b,CN−2cは、近距離無線通信で互いのディスクキャッシュ部34に格納されているプログラム及びデータのリストを交換することができる。例えば、サーバ機器SV−1と近距離無線通信が不可能であるクライアントカーナビCN−2cでは、近距離無線通信可能なクライアントカーナビCN−2bが所望のプログラム及びデータを持っている場合、当該クライアントカーナビCN−2b経由でサーバ機器SV−1へアクセスすることなく、クライアントカーナビCN−2bから所望のプログラム及びデータを受信する。
【0061】
さらに、サーバ機器SV−1、クライアントカーナビCN−2a,CN−2b,CN−2cは、近距離無線通信圏内に存在する他のサーバ機器SV及びクライアントカーナビCNから所望の通信に適した通信相手を選択するため、自車位置及び速度、特別ルート情報を交換し、これら情報に基づいて最適な通信相手を選択するようにしてもよい。
【0062】
特別ルート情報には、クライアントカーナビCN−2a,CN−2b,CN−2cで、ユーザが設定している目的地と自車位置間のルート情報のうちの当面の走行軌跡を示すルート情報が挙げられる。また、ユーザが目的地を設定しておらず、ルートが不明な場合、自車輌の進行方向から判断した当面の走行予想軌跡を示す情報であってもよい。なお、特別ルート情報は秘匿性を持たせるため、近距離無線通信で暗号化してもよい。
【0063】
サーバ機器SV−1は、クライアントカーナビCN−2a,CN−2b,CN−2cから要求されたプログラム及びデータがサーバ記憶部14に存在する場合、これを近距離無線通信でクライアントカーナビCN−2a,CN−2b,CN−2cへ返信する。一方、サーバ記憶部14にない場合は、速やかに長距離無線通信で基地局装置BSから所望のプログラム及びデータを取得してクライアントカーナビCN−2a,CN−2b,CN−2cへ提供する。
【0064】
サーバ機器SV−1は、クライアントカーナビCN−2a,CN−2b,CN−2cから要求されたデータから、次に要求されるであろうデータを予測(例えば、車輌位置やルートの進行方向から当該車輌が到達するであろうと予測される地域やルート)し、優先的にサーバ記憶部14に残すようにしたり、先行して基地局装置BSから取得しサーバ記憶部14へ格納するようにしてもよい。
【0065】
なお、サーバ機器SV−1は、クライアントカーナビCN−2a,CN−2b,CN−2cから要求されたプログラム処理を実行して、処理結果のみをクライアントカーナビCN−2a,CN−2b,CN−2cへ提供するようにしてもよい。
【0066】
次に動作について説明する。
(1)地図データ取得処理
図7は、この発明のナビゲーションシステムによる地図データ取得処理の流れを示すフローチャートである。先ず、クライアントカーナビCNのGPS受信部35が、GPS受信用アンテナ51を介してGPS衛星(不図示)から自車輌の位置情報を収集する(ステップST1)。この自車輌の位置情報に基づいて、クライアント中央演算処理部30が、ナビゲーション処理に必要な地図を選択する。
【0067】
次に、クライアント中央演算処理部30は、選択した地図の地図データがディスクキャッシュ部34に存在するか否かを確認する(ステップST2)。このとき、ディスクキャッシュ部34に存在すれば(YES)、クライアントカーナビCNは、地図データの取得処理を終了し、ディスクキャッシュ部34から読み出した当該地図データ、自車位置情報及び行き先情報を用いてルート検索を行ってルートを決定し、そのルート上への自車位置のマップマッチングを実行する(ナビゲーション処理)。
【0068】
一方、選択した地図データがディスクキャッシュ部34に存在しない場合(NO)、クライアント中央演算処理部30は、地図データ取得要求プログラムを実行してクライアント近距離通信部32を起動し(ステップST3)、通信管理ファイルに基づいて決定したサーバ機器SVに対し、送信部40によって近距離無線通信用アンテナ52bを介して地図データ取得要求を送信する(ステップST4)。なお、このときの通信相手の選択は、後述の図10,11を用いて詳細に説明する。
【0069】
サーバ機器SVでは、近距離通信RF部21でクライアントカーナビCNから送信された地図データ取得要求を受信する(ステップST5)。この受信情報は、ベースバンド部22によってダウンコンバートされてサーバ中央演算処理部10へ出力される。サーバ中央演算処理部10では、当該ダウンコンバートされた情報に基づいて、クライアントカーナビCNから要求された地図データがサーバ記憶部14に存在するか否かを確認する(ステップST6)。ここで、地図データが存在する場合(YES)、サーバ中央演算処理部10は、サーバ記憶部14から当該地図データを読み出し、近距離通信RF部21を制御して要求元のクライアントカーナビCNへ当該地図データを返信する(ステップST10)。クライアントカーナビCNでは、サーバ機器SVから当該地図データを受信すると(ステップST11)、地図データ取得処理を終了し、上述したナビゲーション処理を実行する。
【0070】
また、サーバ記憶部14に所望の地図データがない場合(NO)、サーバ中央演算処理部10は、地図データ取得要求プログラムを実行して長距離通信RF部20を起動し、基地局装置BSに対して、送信部23によって長距離無線通信部で地図データ取得要求を送信する(ステップST7)。この後、長距離通信RF部20は、基地局装置BSとの間で長距離無線通信を確立し、地図データ取得要求に応じて基地局装置BSから送信された地図データを長距離通信RF部20が受信する(ステップST9)。この受信データはベースバンド部22によってダウンコンバートされた後、サーバ中央演算処理部10へ出力される。
【0071】
サーバ中央演算処理部10では、クライアントカーナビCNからの地図データ取得要求の内容に基づいて基地局装置BSから受信した地図データが、クライアントカーナビCNの要求を満たす十分なデータであるか否かを判定する(ステップST9)。ここで、十分なデータでない場合(NO)、サーバ中央演算処理部10は、ステップST7の処理に戻って、基地局装置BSに地図データ取得要求を再度送信し、地図データ取得処理を継続する(ステップST7)。
【0072】
一方、地図データが十分である場合(YES)、サーバ中央演算処理部10は、ステップST10の処理に進んで、近距離通信RF部21を起動し、要求元のクライアントカーナビCNに対して近距離無線通信で当該地図データ取得要求を送信し、サーバ機器SVの地図データ取得処理を終了する。また、クライアントカーナビCNにおいても、サーバ機器SVからの地図データを全て近距離無線通信で受信すると(ステップST11)、クライアントカーナビCNの地図データ取得処理を終了する。
【0073】
なお、上述の説明では、クライアントカーナビCNから要求した地図データを取得する処理について述べたが、地図データに加え、ナビゲーション処理に関するプログラムを要求して取得するようにしてもよい。また、サーバ中央演算処理部10が、クライアントカーナビCNから要求されたデータ及びプログラムから、次に要求されるであろうデータ及びプログラム(例えば、車輌位置やルートの進行方向から自車輌が到達するであろうと予測される地域の地図データ)を予測し、先行して基地局装置BSから長距離無線通信で取得してサーバ記憶部14へ格納するようにしてもよい。
【0074】
(2)マップマッチング処理
図8は、この発明のナビゲーションシステムによるマップマッチング(SMM)処理の流れを示すフローチャートである。先ず、クライアントカーナビCNのGPS受信部35が、GPS受信用アンテナ51を介してGPS衛星(不図示)から自車輌の位置情報を収集する(ステップST1a)。この車輌位置情報に基づいて、クライアント中央演算処理部30が、ナビゲーション処理に必要な地図を選択する。
【0075】
次に、クライアント中央演算処理部30は、選択した地図に関する地図データがディスクキャッシュ部34に存在するか否かを確認する(ステップST2a)。このとき、選択した地図データがディスクキャッシュ部34に存在しない場合(NO)、クライアント中央演算処理部30は、ステップST3aの処理に進み、上述した地図データ取得処理を実行する。
【0076】
また、選択した地図に関する地図データがディスクキャッシュ部34にある場合(YES)、クライアント中央演算処理部30は、SMM処理要求プログラムを実行してクライアント近距離通信部32を起動して(ステップST4a)、通信管理ファイルに基づいて決定したサーバ機器SVに対し、近距離無線通信で自車輌の位置情報及びSMM処理要求を送信する(ステップST5a)。
【0077】
サーバ機器SVの近距離通信RF部21は、クライアントカーナビCNから送信された車輌位置情報及びSMM処理要求を近距離無線通信で受信する(ステップST6a)。この受信情報は、ベースバンド部22によってダウンコンバートされてサーバ中央演算処理部10へ出力される。
【0078】
サーバ中央演算処理部10では、当該ダウンコンバートされた情報に基づいて、クライアントカーナビCNから送信された車輌位置に対応する地図データがサーバ記憶部14に存在するか否かを確認する(ステップST7a)。ここで、所望の地図データがない場合(NO)、サーバ中央演算処理部10は、地図データ取得要求プログラムを実行して近距離通信RF部21を起動し(ステップST8a)、位置情報送信元のクライアントカーナビCNに当該車輌位置に対応する地図データ取得要求を送信する(ステップST9a)。
【0079】
クライアントカーナビCNでは、クライアント近距離通信部32でサーバ機器SVから地図データ取得要求を受信すると(ステップST10a)、自車輌位置に対応する地図データをディスクキャッシュ部34から読み出し、近距離無線通信で返信する(ステップST11a)。サーバ機器SVの近距離通信RF部21は、クライアントカーナビCNから送信された地図データを受信すると(ステップST12a)、ベースバンド部22へ出力する。ベースバンド部22は、近距離通信RF部21から入力した上記地図データをダウンコンバート処理してディスクキャッシュ部34に格納する。
【0080】
ステップST7aで地図データが存在する場合(YES)、又はステップST12aでクライアントカーナビCNからの地図データ取得処理が完了すると、サーバ中央演算処理部10は、当該地図データを用いてクライアントカーナビCNからの車輌位置を基にマップマッチング処理(SMM)を実行する(ステップST13a)。このSMM結果は、近距離通信RF部21によって近距離無線通信でクライアントカーナビCNへ送信され(ステップST14a)、SMM処理を終了する。
【0081】
クライアントカーナビCNでは、クライアント近距離通信部32でサーバ機器SVからSMM結果を受信する(ステップST15a)。この後、クライアント中央演算処理部30は、このSMM結果に基づいて表示部36の表示画面上の地図データに自車輌の誘導表示を行い(ステップST16a)、クライアントカーナビCNによるSMM処理を終了する。
【0082】
なお、サーバ機器SVで複数のクライアントカーナビCNのSMM処理が行われた場合、クライアントカーナビCNは、自車輌位置のSMM処理結果だけでなく、他車輌位置のSMM結果も受信して自車輌とともに地図画面に表示するようにしてもよい。また、クライアントカーナビCNは、SMM処理要求と同様に、オーディオ/ビデオ圧縮データ及びデコード処理要求をサーバ機器SVへ送信し、デコード結果を受信することにより自車でのオーディオ/ビデオ再生を行うようにしてもよい。
【0083】
図9は、図5で構成例3とした路側設置のサーバ機器によるクライアントカーナビのマップマッチング(SMM)処理を説明するための図である。図9に示すように、サーバ機器SV−1cの近距離無線通信圏内(図9中で破線で囲んだ領域)にクライアントカーナビCN−2x,CN−2y,CN−2zが存在する場合、サーバ機器SV−1cは、上述のようにしてクライアントカーナビCN−2x,CN−2y,CN−2zの各々から自車位置情報を取得し、マップマッチング処理(SMM)を実施する。
【0084】
サーバ機器SVでは、マップマッチング処理が完了すると、全てのクライアントカーナビCN−2x,CN−2y,CN−2zのSMM処理結果をクライアントカーナビCN−2x,CN−2y,CN−2zのそれぞれに送信する。つまり、クライアントカーナビCN−2xは、自車の地図上の位置だけでなく、クライアントカーナビCN−2y,CN−2zの地図上の位置も把握することが可能となる。これにより、例えば狭い路地等に入り込んだ時に、自車の近傍の他車を把握でき、効率的でより安全な運転が可能である。
【0085】
(3)通信相手の選択処理
図10は、この発明のナビゲーションシステムによる通信相手の選択処理の流れを示すフローチャートである。先ず、サーバ機器SV及びクライアントカーナビCNは、近距離無線通信圏内に通信相手候補が発見されるまで検索を実行する(ステップST1b)。
近距離無線通信圏内に通信相手候補が検索されると、サーバ機器SV及びクライアントカーナビCNは、自身が保持する通信管理ファイルに基づいて通信相手候補が以前に検討した相手であるか否かを確認する(ステップST2b)。ここで、以前通信相手として適さないと判断した候補であれば(NO)、ステップST1bの処理に戻り、近距離無線通信圏内の検索を継続する。
【0086】
一方、通信管理ファイルにリストがなく、通信相手として一度も検討した候補でない場合(YES)、サーバ機器SV及びクライアントカーナビCNは、当該通信相手候補との間で通信を確立して自車位置、自車速度及び前述した特別ルート情報を交換する(ステップST3b)。なお、特別ルート情報とは、ユーザが設定している目的地と自車位置間のルート情報のうちの当面の走行軌跡を示す情報が挙げられる。また、ユーザが目的地を設定しておらず、ルートが不明な場合、自車輌の進行方向から判断した当面の走行予想軌跡を示す情報であってもよい。
【0087】
サーバ機器SV及びクライアントカーナビCNは、通信相手候補から取得した車輌位置、車輌速度、及び特別ルート情報から、目的の通信に適した通信相手候補であるか否かを検討する(ステップST4b)。例えば、通信相手候補を搭載する車輌が自車輌と同一の地域を走行しているとか、通信相手候補が自身と通信可能な通信状況であるか否かを検討する。
【0088】
サーバ機器SV及びクライアントカーナビCNは、自身が有する記憶部(サーバ記憶部14やディスクキャッシュ部34など)に、目的の通信に適しているか否かの検討結果を通信相手候補ごとにリスト登録する(ステップST5b)。
【0089】
次に、サーバ機器SV及びクライアントカーナビCNは、ステップST5bで作成したリストデータに基づいて、目的の通信に適した通信相手候補があるか否かを確認する(ステップST6b)。通信相手候補が目的の通信に適した相手である場合(YES)、サーバ機器SV及びクライアントカーナビCNは、通信相手の選択処理を終了して当該候補との通信処理に移行する。また、通信相手候補が目的の通信に適していない場合(NO)、ステップST1bの処理に戻って、通信相手の選択処理を継続する。
【0090】
図11は、図10中のステップST4bの処理の概要を説明するための図であり、自車位置、自車速度及び特別ルート情報に基づく、目的の通信に適した通信相手候補であるか否かの検討処理を示している。ここでは、図1に示す車輌600a,600b,600cに搭載される、サーバ機器SV−1a、クライアントカーナビCN−2a,CN−2b,CN−2cが通信相手を選択する場合を例に挙げる。
【0091】
また、車輌600aの特別ルート情報では、車輌600aのユーザが設定した目的地と車輌位置間のルート情報のうちの当面の走行軌跡としてルートAが規定される。このルートAは、交差点Xを右折し交差点Yに到達しそのまま直進するルートである。車輌600bの特別ルート情報ではルートBが規定されており、ルートBは、交差点Xを左折し交差点Yに到達し右折するルートである。さらに、車輌600cの特別ルート情報ではルートCが規定され、ルートCは、交差点Xを直進し交差点Zを右折するルートを示している。
【0092】
サーバ機器SV−1a及びクライアントカーナビCN−2a,CN−2b,CN−2cは、交差点Xに入る数十メートル手前で、各々の近距離無線通信圏3e,3f,3g内に通信相手候補を検出する。このとき、前述した図10の処理に従って、自車位置、自車速度及び特別ルート情報(ルートA,B,C)を互いに交換し、目的の通信に適した通信相手を検討する。
【0093】
例えば、車輌600aのクライアントカーナビCN−2aが、ある程度長時間の通信時間を確保する必要がある場合(例えば、地図データ検索のように長時間の通信を目的とする場合)、交差点Xですれ違う車輌600cのクライアントカーナビCN−2cよりも、交差点Xから交差点Yまで並走する車輌600bのクライアントカーナビCN−2bを通信相手として選択した方がよいため、当該クライアントカーナビCN−2bを目的とする通信に最適な通信相手とする。
【0094】
以上のように、この実施の形態1によれば、クライアントカーナビCNが、自身の近距離無線通信圏内にあり、かつ基地局装置BSが長距離無線通信圏内にあるサーバ機器SVに対して、自身の位置情報に対応する地図情報を基地局装置BSから取得するように近距離無線通信で要求し、当該要求に応じて取得された地図情報をサーバ機器SVから近距離無線通信で受信して、当該地図情報を用いたナビゲーション処理を実行する。このようにサーバ/クライアント構成とすることで通信負荷を分散でき、また近距離無線通信を利用することにより、長距離無線通信部の省略や長距離無線通信頻度の低減を実現したことから、装置構成の簡略化や電磁波ノイズの軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】この発明の実施の形態1によるナビゲーションシステムの構成例1を示す図である。
【図2】図1中の各車輌に保持される通信管理ファイルを示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1によるナビゲーションシステムの構成例2を示す図である。
【図4】図3中の各車輌に保持される通信管理ファイルを示す図である。
【図5】この発明の実施の形態1によるナビゲーションシステムの構成例3を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1によるナビゲーションシステムの構成を示すブロック図である。
【図7】この発明のナビゲーションシステムによる地図データ取得処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】この発明のナビゲーションシステムによるマップマッチング処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】路側設置のサーバ機器によるクライアントカーナビのマップマッチング処理を説明するための図である。
【図10】この発明のナビゲーションシステムによる通信相手の選択処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】図10中のステップST4bの処理の概要を説明するための図である。
【図12】従来の通信型ナビゲーションシステムの概要を示す図である。
【図13】従来の通信型ナビゲーションシステムの通信機能付カーナビの内部構成を示すブロック図である。
【図14】従来の通信機能付カーナビシステムによる地図取得処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0096】
SV,SV−1,SV−1a〜SV−1c サーバ機器(サーバ装置)、CN,CN−2a〜CN−2d,CN−2x,CN−2y,CN−2z クライアントカーナビ(クライアント装置)、3a〜3c 近距離無線通信圏、10 サーバ中央演算処理部、11 サーバ主記憶部、12 長距離及び近距離サーバ通信部、14 サーバ記憶部、20 長距離通信RF部(長距離無線通信手段)、21 近距離通信RF部(近距離無線通信手段)、22,42 ベースバンド部、23,25,40 送信部、24,26,41 受信部、30 クライアント中央演算処理部、31 クライアント主記憶部、32 クライアント近距離通信部(近距離無線通信手段)、34 ディスクキャッシュ部、35 GPS受信部、36 表示部、37 音声出力部、50 長距離無線通信用アンテナ、51 GPS受信用アンテナ、52a〜52d 近距離無線通信用アンテナ、200〜205,211〜216 通信管理ファイル、400 携帯機器、500 基地局装置(BS)、501 基地局中央演算処理部、502 基地局主記憶部、503 基地局通信部、504 基地局記憶部、600a〜600g 車輌、610a,610b 路側分離帯、611 中央分離帯、612a,612b 車線分離帯、613 建物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長距離無線通信手段及び近距離無線通信手段を有し、地図情報が格納された基地局装置との間で前記長距離無線通信手段による長距離無線通信を行うサーバ装置と、
自身の位置情報を取得する位置情報取得手段及び近距離無線通信手段を有するクライアント装置とを備えたナビゲーションシステムにおいて、
前記クライアント装置は、
自身の近距離無線通信圏内にあり、かつ前記基地局装置が長距離無線通信圏内にある前記サーバ装置に対して、自身の位置情報に対応する地図情報を前記基地局装置から取得するように前記近距離無線通信手段の近距離無線通信で要求し、
当該要求に応じて取得された地図情報を前記サーバ装置から近距離無線通信で受信して、当該地図情報を用いたナビゲーション処理を実行することを特徴とするナビゲーションシステム。
【請求項2】
サーバ装置及びクライアント装置を互いに異なる車輌に搭載したことを特徴とする請求項1記載のナビゲーションシステム。
【請求項3】
サーバ装置は、クライアント装置が搭載された車輌が走行する道路の路側に設置されたことを特徴とする請求項1記載のナビゲーションシステム。
【請求項4】
クライアント装置は、自身を搭載した車輌が停車した際に、近距離無線通信圏内に存在するサーバ装置を検索することを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載のナビゲーションシステム。
【請求項5】
クライアント装置は、車輌から取り外し可能な携帯端末装置であり、近距離無線通信手段の近距離無線通信を介さずに外部と通信を行う通信手段を備えたことを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載のナビゲーションシステム。
【請求項6】
クライアント装置は、近距離無線通信でサーバ装置に自身の位置情報及びこの位置に対応するマップマッチング処理を実行するよう要求し、当該要求に応じたマップマッチング処理結果を前記サーバ装置から近距離無線通信で受信して、当該処理結果を用いたナビゲーション処理を実行することを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載のナビゲーションシステム。
【請求項7】
複数のクライアント装置を備え、
前記クライアント装置は、自身以外の他のクライアント装置からの要求でサーバ装置が実行したマップマッチング処理結果を前記サーバ装置から近距離無線通信で受信し、当該マップマッチング処理結果を用いて、自身の位置とともに前記他のクライアント装置の位置を地図画面に表示することを特徴とする請求項6記載のナビゲーションシステム。
【請求項8】
クライアント装置は、サーバ装置に圧縮データのデコード処理を実行するよう要求し、当該要求に応じたデコード処理結果を前記サーバ装置から近距離無線通信で受信して、当該デコード処理結果を再生処理することを特徴とする請求項1から請求項7のうちのいずれか1項記載のナビゲーションシステム。
【請求項9】
複数のクライアント装置を備え、
前記クライアント装置は、自身の近距離無線通信圏内にサーバ装置が存在しない場合、基地局装置との間で長距離無線通信を実施しているサーバ装置が近距離無線通信圏内に存在する他のクライアント装置が、前記自身の近距離無線通信圏内にあれば、当該クライアント装置との近距離無線通信を介して間接的に前記サーバ装置と通信することを特徴とする請求項1から請求項8のうちのいずれか1項記載のナビゲーションシステム。
【請求項10】
クライアント装置間の近距離無線通信でナビゲーション処理に用いる情報を取得することを特徴とする請求項9記載のナビゲーションシステム。
【請求項11】
複数のサーバ装置及び複数のクライアント装置を備え、
前記サーバ装置及び前記クライアント装置は、近距離無線通信圏内に存在するサーバ装置及びクライアント装置との間で、自身が搭載された車輌の位置情報、当該車輌の走行速度及び当該車輌が走行すべきルートを示すルート情報を交換し、当該情報に基づいて自身と通信すべきサーバ装置及びクライアント装置を選択することを特徴とする請求項1から請求項10のうちのいずれか1項記載のナビゲーションシステム。
【請求項12】
サーバ装置及びクライアント装置は、ルート情報を交換するにあたり、当該ルート情報を暗号化することを特徴とする請求項11記載のナビゲーションシステム。
【請求項13】
サーバ装置は、
クライアント装置から地図情報の取得要求があると、自身が備えた記憶部に当該取得要求に対応する地図情報があるか否かを検索し、
前記記憶部に当該取得要求に対応する地図情報があれば、近距離無線通信で要求元のクライアント装置へ送信し、
前記記憶部に当該取得要求に対応する地図情報がない場合、長距離無線通信で基地局装置から当該地図情報を取得することを特徴とする請求項1から請求項12のうちのいずれか1項記載のナビゲーションシステム。
【請求項14】
サーバ装置は、クライアント装置から要求された地図情報から次に要求される地図情報を予測し、自身の記憶部に優先的に格納することを特徴とする請求項1から請求項13のうちのいずれか1項記載のナビゲーションシステム。
【請求項15】
サーバ装置は、近距離無線通信でクライアント装置から要求された情報処理を実行し、前記近距離無線通信で処理結果を前記クライアント装置へ提供することを特徴とする請求項1から請求項14のうちのいずれか1項記載のナビゲーションシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−133849(P2010−133849A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310902(P2008−310902)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】