説明

ナビゲーション装置および情報提供方法

【課題】利用者にとって煩わしさを低減した情報の提供を行うことができるナビゲーション装置および情報提供方法を提供する。
【解決手段】車両の走行地点にかかる情報提供を受けた過去の履歴と情報提供を受けてからの経過時間等から記憶定着度推定部36が記憶定着度を推定し、提示情報選択部37ではさらに提示部8を用いてドライバに質問を行い自由発話形式で回答させたり、選択肢数が2〜3択の質問を行って回答させることによりドライバがすでに知っている情報を高精度に推定して、記憶の定着度が高くドライバにとってすでに知っていると考えられる事柄については、提示する情報の量を少なくして、情報提示の際にドライバが煩わしいと感じることを低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者に効率よく情報提供を行うことができるナビゲーション装置および情報提供方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のドライバに対して、曲がるべき交差点をわかりやすく伝えることができるようにした車両用ナビゲーション装置として、例えば特開2006−023158号公報に記載されたものがある。
この車両用ナビゲーション装置は、案内交差点Xについて、「案内交差点Xとその手前の交差点Yとの距離が所定距離より短い」という条件と、「案内交差点Xへの進入可能車線、および手前交差点Yにおける進入可能車線が、案内経路によって制限される」という条件が共に満たされる場合、自車両がその手前の交差点Yに近づいたときに画像表示と音声表示とによって案内を行うものである。
【0003】
この画像表示は、案内交差点X、手前交差点Y、案内経路に沿った案内交差点Xおよび手前交差点Yへの進入道路、案内交差点Xおよび手前交差点Yへの進入可能車線の指定線、およびこの2つの交差点の強調表示を同時に画像表示するものである。
また音声表示とは、その案内交差点への進入可能車線の指定、およびその手前交差点への進入可能車線の指定を案内するものである。
【特許文献1】特開2006−023158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、交差点案内を分かりやすく音声で提示する場合であっても、例えば自宅周辺や通勤道路など、ドライバにして見れば記憶に定着している場所(土地)に対しても、不慣れな道を走行している場合と同じ音声案内を受けることを煩わしいと感じることがある。
【0005】
そこで本発明はこのような問題点に鑑み、利用者にとって煩わしさを低減した情報の提供を行うことができるナビゲーション装置および情報提供方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両の走行地点において情報提供を受けた過去の履歴と、情報提供を受けてからの経過時間とから利用者の案内すべき情報に対する記憶定着度を推定し、推定された記憶定着度に応じた情報提供を行うものとした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、利用者が記憶していると考えられる既知の情報を省略して提供することができ、利用者にとって煩わしいと感じることを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に本発明の実施の形態を実施例により説明する。
図1に、ナビゲーション装置の全体構成を示す。
ナビゲーション装置1は、利用者として例えば車両のドライバに対して、自車両の位置などに応じた経路誘導や、周囲の店舗情報などを提供するものである。
ナビゲーション装置1は、FM多重放送等で道路の渋滞や各種情報を提供するためのVICS情報データからなるVICS情報データベース(VICS情報DB)2と、各種情報にアクセスし、詳細情報の取得が可能なインターネットまたはそのための情報データベース(以下、インターネット3と呼ぶ)と、ドライバに有益な情報を運転時にも提供可能な情報提供サービスおよびそのための情報データベース(以下、情報センタ4と呼ぶ)と、衛星からのGPS(Global Positioning System)情報を受信して、自車の位置が地図上のどこにあるかを認識するGPS信号受信部5と、経路誘導等に使用される道路やドライバに提示する店舗情報等が記録された地図データベース(地図DB)6とを備える。
【0009】
またナビゲーション装置1は、自車の周囲の車外状況を視覚情報として取得するための車外用カメラ10と、自車の周囲の車外状況を聴覚情報として取得するための車外用マイク11と、例えば車速やエンジン回転数、シフトポジション、ステアリング角度、アクセルペダル開度、ブレーキペダル操作、ウインカーなどの車両データを取得するCAN信号取得部12と、ドライバや車内の他の乗員および状態を視覚情報として取得するための車内用カメラ13と、ドライバやその他車内の乗員および状態を聴覚情報として取得するための車内用マイク14と、ドライバの血圧、心拍、脈拍、皮膚電位、皮膚表面温度、脳波、脳血流などを測定しドライバの生体情報を取得するための生体センサ15と、ドライバの性別や年齢、運転歴、学歴(教養度)、家族構成、趣味・嗜好などの個人情報、個人プロファイルを取得するための個人情報データベース(個人情報DB)16とを備える。
生体センサ15は、車両側でドライバに接触するステアリングやシートベルト、シート表面・座面などに組み込まれ、心拍、脈拍、呼吸、血圧、体温などを取得する。また赤外線を使ったカメラで顔表面温度を計測したり脳血流を計測してもよい。
【0010】
さらにナビゲーション装置1は、GPS信号受信部5と地図データベース6の情報から自車位置を判定するための自車位置判定部20と、地図データベース6およびVICS情報データベース2から道路に関する情報を取得するための道路情報取得部21と、車外用カメラ10の映像を解析して画像認識するための映像解析認識部22と、車外用マイク11の音情報を解析して音源位置や種類などを認識するための音源解析認識部23と、車内用カメラ13の映像を解析して画像認識するための映像解析認識部24と、車内用マイク14の音声および音情報を解析して、内容を理解・認識するための音声解析認識部25とを備える。
【0011】
またナビゲーション装置1は、VICS情報データベース2、インターネット3、情報センタ4、地図データベース6などから各種情報を取得し、取得した情報などを選択しやすくするために整理する各種情報取得部30と、自車位置判定部20、道路情報取得部21、映像解析認識部22および音源解析認識部23からの情報をもとに、自車両の周囲環境を判定する周囲環境判定部31と、CAN信号取得部12で取得された情報にもとづいて自車の状態を判定する自車状態判定部32とを備える。
各種情報取得部30には、車両内にあるカーナビゲーション端末から携帯電話等を介して地図データベース6、VICS情報データベース2、インターネット3、情報センタ4などへ、アクセスして情報を取得することが可能となっている。
【0012】
さらにナビゲーション装置1は、生体センサ15、映像解析認識部24、音声解析認識部25からの信号にもとづいてドライバの状態を推定するドライバ状態判定部33と、音声解析認識部25から対話形式の質問に対する回答を取得し、正解、不正解を判定する回答判定部34と、周囲環境判定部31、自車状態判定部32、ドライバ状態判定部33からの信号をもとに、ドライバが感じている運転負荷を推定する運転負荷推定部35と、情報提示回数(頻度)と情報を取得してから現在までに経過した時間などから、ドライバが今まで提示された情報やこれから提供する情報に対して記憶がどの程度定着しているかなどを推定する記憶定着度推定部36と、後述する提示情報選択部37とを備える。
【0013】
またさらにナビゲーション装置1は、提示情報選択部37で選択された提供情報の提示部8として、提供情報を音声情報として提示するため、例えばTTS(Text to Speech)等の合成音声生成部とアンプ等の増幅器とスピーカーとからなる音声情報提示部40と、提供情報を視覚情報として提示するため、カーナビゲーション等の液晶ディスプレイ画面や、車両情報等を提示するための液晶画面などからなる視覚情報提示部41と、提供情報を触覚情報として提示するため、アクセルおよびブレーキペダル、ステアリングホイール、シフトノブ、シートベルト、シートなどのドライバが接触している部位を振動させることにより情報提示を行う触覚情報提示部42とを備える。
【0014】
提示情報選択部37は、各種情報取得部30からの情報より現在の走行地点においてドライバに提供すべき情報として、運転に必要あるいは有益な情報をその優先度から選択するとともに、提示部を利用した質問形式の対話からドライバ個人の記憶定着特性を判断する機能も備えて、この記憶定着特性と運転負荷推定部35および記憶定着度推定部36からの情報とに基づいて、上記のドライバに提供すべき情報について、その内容量や提示頻度などの情報量を決定する。そして、この決定した情報量で提示部8により情報提供する。
上述の自車位置判定部20、映像解析認識部22、音源解析認識部23、映像解析認識部24、音声解析認識部25、周囲環境判定部31、自車状態判定部32、ドライバ状態判定部33、回答判定部34、運転負荷推定部35、記憶定着度推定部36、提示情報選択部37はその一部または全部をCPUとして構成し、それぞれCPUの機能部分として構成することができる。
【0015】
次にナビゲーション装置1が情報提供を行う際の動作の概略について説明する。
図2は、ナビゲーション装置による音声の提示例を示す。
ナビゲーション装置による交差点部での経路誘導は、従来と同様に、自車の位置と交差点までの距離を計算し、ある決められた距離になった場合に自動的に進むべき方向を音声およびナビゲーション装置の液晶画面にてドライバに提示する。
図2の例では、自車両Xが案内すべき交差点である戸田交差点に近づくにつれて音声提示A1の「1km先、戸田交差点を左折です」、音声提示A2の「500m先、戸田交差点を左折です」、音声提示A3の「300m先、交差点を左折です」、音声提示A4の「左折です」の4段階の音声提示が行われる。
【0016】
ナビゲーション装置1は、さらに、案内すべき交差点までの距離が約2km先になった時点で、「次に左折する交差点名はなんですか?」といった対話形式で自由回答を求める音声提示S1を行う。
ナビゲーション装置1は、音声提示S1に対するドライバの回答が正解の場合は、道路および経路をよく知っていると判断し、戸田交差点の直前において音声提示A4の「左折です」のみを提示する。
一方、ドライバの回答が不正解の場合は、音声提示A2の「500m先、戸田交差点を左折です」、音声提示A3の「300m先、交差点を左折です」、音声提示A4の「左折です」の3段階、もしくは、音声提示A3の「300m先、交差点を左折です」、音声提示A4の「左折です」の2段階で提示する。
このように、ドライバが現在走行中の道路を知っているかどうかを判断して音声提示の内容や提示数を変更することにより、ドライバが感じる音声情報提供の煩わしさを低減することができる。
【0017】
次にナビゲーション装置1が情報提供を行う際の動作の詳細について説明する。
図3、図4に、ナビゲーション装置1における処理の流れを示す。
なお具体例として、図2に示すように自車両Xが戸田交差点近傍に位置し、ナビゲーション装置1が戸田交差点に関する情報提示を行う場合について説明する。
ステップ100において、自車状態判定部32が自車両が走行状態であるかどうかを判断する。
これは、CAN信号取得部12で取得された情報を用いて、車速が1km/h以上、サイドブレーキが作動していないなどの情報から判定する。
または、車内用カメラ13を使ってドライバの顔画像から、運転以外の動作をしていないことを確認してもよい。その他にも、シフトポジションやアクセルペダル開度など、自車が走行中であることがわかる信号を使って走行中であるかどうかを判定してもよい。
【0018】
自車状態判定部32によって、自車両が走行中でないと判定された場合にはステップ109へ進み、自車両が走行中であると判定された場合にはステップ101へ進む。
ステップ109では自車両が停車中であるから、ナビゲーション装置1は、ドライバに情報を提供する際に、自動車の運転時であればドライバにとって負担となる可能性が高い情報を提供したり、負担となる可能性の高い情報提供方法を用いる。
例えば運転操作に必要な情報以外の情報で、ドライバの思考に高負荷となる音声情報提供であったり、対話形式の情報提供方法などがある。
ステップ109での情報提供の後、ステップ100へ戻る。
【0019】
ステップ101において運転負荷推定部35は、周辺環境判定部31、自車状態判定部32、ドライバ状態判定部33からの情報を使い、ドライバの身体的な負荷および精神的な負荷を推定する。
具体的には、周辺環境判定部31から、周囲に他の車両が少ない、交差点がない、カーブになっていない、道幅が広い、見通しのわるいところがない、などの情報を得た場合には運転負荷推定部35は運転負荷が低いと推定する。
その逆に、周囲に他の車両が多いとか、混雑、交差点、急カーブ、道幅が狭い、見通しが悪いなどの情報を得た場合には運転負荷が高いと推定する。
【0020】
また運転負荷推定部35は、自車状態判定部32から、車速が低く加減速が少ない、各種操作が行われていないなどの情報を得た場合には運転負荷が低いと推定する。
その逆に、車速が高く加減速が多い、各種操作が行われている場合は運転負荷が高いと推定する。
さらに運転負荷推定部35は、映像解析認識部24や音声解析認識部25からのドライバの表情や音声の抑揚に関する情報、あるいは生体センサ15からの生体情報にもとづいてドライバ状態判定部33で判断されたドライバ状態より運転負荷を推定する。
【0021】
次にステップ102において提示情報選択部37は、各種情報取得部30からの情報より現在の運転に必要な情報、有益な情報を取得し、その優先度を判定して、提示する情報を1つ選択する。(ここでは、図2の戸田交差点に関する情報が選択されるものとする)
すなわち、各種情報取得部に取得された情報から、現在の自車位置情報(緯度、経度)を手がかりに検索し、その後、現在時間、ドライバの趣味・嗜好、年齢、職業、家族構成、最近の情報検索履歴、最近の車で移動した履歴などを使って、ドライバのヒット度を数値化して値の高い順番に並べる。
一方、運転状況に応じて情報の有益度が変化するため、それらについてもヒット度同様に数値化し、高い順番に並べる。
【0022】
次にステップ103において提示情報選択部37は、選択した情報を提示すべきかどうかを、その情報の優先度より判断する。
優先度は例えば有益度×ヒット度で算出することができる。
なお、さらに危険度や情報新鮮度などを加味して優先度を算出してもよい。
情報提示をする場合にはステップ104へ進み、情報提示を行わない場合にはステップ100へ戻る。
【0023】
ステップ104では記憶定着度推定部36は、その提示する情報に対するドライバの記憶定着度を推定する。
記憶定着度は、現在までに同じ情報を提示した回数と、提示されてからの時間経過にもとづいて基本値を算出することが可能である。
忘却曲線の数理モデルとしては、1950年ロンドンが提案したものがある。
R(t)=(R0(μR0-λ))/(μR0-λe-(R0-λ)t)
R(t):t秒後の保持量、R0:記憶する全量、μ:回復速度、λ:忘却速度
これは、エビングハウス氏の研究成果を定式化したもので、保持される記憶の量は、時間経過に伴い対数的に減少する。
【0024】
エビングハウス氏の無意味音節の記憶実験では、記憶して20分後には42%を忘却し、1時間後には56%を忘却。1日後には74%を忘却し、1週間後(7日間後)には77%を忘却。そして1ヶ月後(30日間後)には79%を忘却した。しかし、何度か同じ情報を繰り返し記憶(学習)することにより、記憶の急激な低下がやわらぎ、最終的には知識として定着するということがわかっていて、学習曲線と言われている。記憶の内容や再認のタイミングなどにも依存するが、だいたい5回〜10回程度の繰り返しで記憶が定着する。上記の保持率を用いれば、例えば80%以上を一年程度保持できる状態を“記憶定着”とすれば、そのような状態になるまで、適度なタイミングで再認を何回か繰り返す。そうすると、繰り返した回数によってμが減少およびλが上昇することで忘却曲線の低下が緩やかになり、記憶として定着すると言われている。
【0025】
また、記憶能力は人間の年齢や個人の資質、モチベーションなどによって変化することが知られている。そのため、個人情報データベース16の、年齢や性別、趣味・嗜好、学歴、運転歴などを上記の基本値に加味して記憶定着度を推定することもできる。これは、簡易的に重み関数として、例えば年齢が30歳までの重み関数=Age関数=1、31−45歳のAge関数=0.9、46−55歳のAge関数=0.75、55−65歳のAge関数=0.5、65歳以上のAge関数=0.3とする。
同様に、運転歴が1年未満は0.5、1−3年は0.8、3年以上は1とする。学歴で大学院卒=1、大学卒=0.9、高卒=0.8、中卒=0.7としたり、趣味・嗜好が記憶に有効な将棋や碁の場合は1で、運動ばかりでは0.8といったような補正係数を設けるとよい。これ以外にも、記憶と相関のある特性があれば、それを関数として追加すればよい。
【0026】
次に、ステップ105において提示情報選択部37は、提示を行う情報の記憶定着度が第2の所定値以上であるかどうかを判断する。
この場合の記憶定着度は、先ほどの記憶保持率を使ってもよい。その場合は、例えば記憶定着度の所定値=記憶保持率0.8以上としてもよい。
記憶定着度が第2の所定値以上であると判断される場合にはステップ110へ進み、第2の所定値未満であると判断される場合にはステップ106へ進む。
【0027】
さて、人の記憶定着特性は、複数回の対話結果によって、記憶定着しやすい人、しにくい人が弁別できるため、個人毎に記憶定着特性を推定し、それに応じた情報提供を行うことが可能となる。
そこで、ステップ110あるいは後述のステップ107からそれぞれ分岐する流れでは、知識レベルの異なる質問形式により個人ごとの記憶定着特性を判断して提示情報の量(情報提示の頻度、提示自体の有無)を選択する。
知識レベルは、一般的に長期記憶された量で定量化できる。上、中、下の3段階や、1〜5の5段階に分け、それらは記憶定着数で定義される。例えば、記憶定着数が50個以下の場合は下、51−200個は中、201個以上は上とする。
また、知識レベルは、記憶定着度推定部36を介した利用者の年齢、性別、趣味、嗜好、学歴、運転歴、家族構成、あるいは記憶定着度の推定結果や、後述する利用者に対する質問形式の対話における回答に応じても異らせることができる。段落[0025]で説明した通り、各変数に対する重み関数を追加すればよい。
【0028】
ステップ110において提示情報選択部37は、運転負荷推定部35で推定された運転負荷が第1の所定値未満であるかどうかを判断する。
運転負荷が第1の所定値未満である場合には、情報提供時に運転者にとって多少の負担は大丈夫であると判断してステップ111へ進む。
一方、運転負荷が第1の所定値以上である場合には、ステップ115へ進む。
【0029】
運転負荷が第1の所定値未満である場合、ステップ111において提示情報選択部37は、音声情報提示部40または視覚情報提示部41を併用して知識レベルが高い質問形式で自由発話形式の質問を行う。
具体的には、図2に示したように、ドライバに対し「次に左折する交差点名はなんですか?」といった質問S1を行い、ドライバからの自由発話による回答を待つ。
ステップ112において、質問に対する回答を車内用マイク14、音声解析認識部25で取得し、回答判定部34において質問に対する回答が正解であるかどうかを判定する。
回答が正解の場合は、提示情報選択部37は、ドライバは道路および経路をよく知っているとの判断を行い、ステップ113において提示する情報量を通常の20%と決定し、情報提示を行う。
【0030】
具体的には、図2に示すように、ドライバが「次に左折する交差点名はなんですか?」といった質問S1に対して「戸田交差点」といった回答D1を行い、回答判断部34が質問に対する回答が正解であると判断した場合、提示情報選択部37は、提示情報A4の「左折です」のみを運転者に提示する。
なお、提示する情報の量が通常の場合とは、ナビゲーション装置1がドライバにある情報提示を行う場合、当該情報に関してナビゲーション装置1が保有し、および取得可能であり、提示すべきであると考えられるすべての情報を指す。
例えば、図2に示す戸田交差点に関し、ドライバに通常の場合に提示すべきであると考えられる情報として、提示情報A1〜A4がある。
【0031】
一方、回答が不正解の場合にはステップ114において、提示する情報の量を60%と決定し、情報提示を行う。
具体的には、質問に対する回答が不正解の場合、図2に示すように、「300m先、交差点を左折です」という提示情報A3、「左折です」という提示情報A4の2段階の情報提示を行う。
ステップ113または、ステップ114での情報提示が終了すると、ステップ100へ戻り、上述の処理を繰り返す。
【0032】
ステップ110において運転負荷が第1の所定値未満でないと判断されると、ステップ115において提示情報選択部37は、運転負荷が第2の所定値以上であるかどうかを判断する。
運転負荷が第2の所定値以上である場合には、ステップ116へ進み、第2の所定値未満である場合には、ステップ120へ進む。
ステップ116において提示情報選択部37は、混雑した道路を運転している場合等で運転負荷が高いため、情報提供時にドライバに対し質問形式で選択肢が2択の質問を行う。
具体的には、「次に左折する交差点は戸田交差点ですか?、田村交差点ですか?」といった2択の質問を行う。
【0033】
この後ステップ117において回答判定部34は、質問に対するドライバの回答が正解であるかどうかを判断する。
回答が正解である場合にはステップ118へ進み、不正解である場合にはステップ119へ進む。
ステップ118において提示情報選択部37は、ドライバは道路および経路をよく知っているとの判断を行い、提示する情報の量を60%と決定し、情報提示を行う。
具体的には、質問に対する回答が不正解の場合、図2に示すように、提示情報A3、提示情報A4の2段階の情報提示を行う。
【0034】
回答が不正解の場合にはステップ119において提示情報選択部37は、道路および経路をドライバは知らないものと判断し、提示する情報の量を100%と決定し、情報提供を行う。
具体的には、図2に示すように、提示情報A1〜A4の4段階の情報提示を行う。
ステップ118または、ステップ119での情報提示が終了すると、ステップ100へ戻り、上述の処理を繰り返す。
【0035】
ステップ115において運転負荷が第2の所定値以上でないと判断されると、ステップ120において提示情報選択部37は、運転負荷が中程度であるため、情報提供時にドライバに対し質問形式で選択肢が3択の質問を行う。
具体的には、「次に左折する交差点は戸田交差点ですか?、田村交差点ですか?、酒井前田交差点ですか?」といった3択の質問を行う。
ステップ121において回答判定部34は、質問に対するドライバの回答が正解であるかどうかを判断する。
回答が正解である場合にはステップ122へ進み、不正解である場合にはステップ123へ進む。
【0036】
ステップ122において提示情報選択部37は、提示する情報の量を40%と決定し、情報提示を行う。
具体的には、図2に示すように、提示情報A3、A4の2段階の情報提示を行う。
回答が不正解の場合にはステップ123において提示情報選択部37は、提示する情報の量を80%と決定し、情報提供を行う。
具体的には、図2に示すように、提示情報A2〜A4の3段階の情報提示を行う。
ステップ122または、ステップ123での情報提示が終了すると、ステップ100へ戻り、上述の処理を繰り返す。
【0037】
ステップ105において記憶定着度が第2の所定値以上でないと判断された場合には、ステップ106において提示情報選択部37は、提示を行う情報の記憶定着度が第1の所定値未満であるかどうかを判断する。
第1の所定値未満である場合にはステップ124へ進み、そうでない場合にはステップ107へ進む。
ステップ124において提示情報選択部37は、情報提供時にドライバに対し質問形式で選択肢が2択の質問を行う。
ステップ124における質問の後、上述のステップ117〜119の処理を行う。
【0038】
一方、記憶定着度が第1の所定値未満でないと判断された場合、ステップ107において、運転負荷が第1の所定値未満であるかどうかを判断する。
運転負荷が第1の所定値未満である場合にはステップ125へ進み、そうでない場合にはステップ108へ進む。
ステップ125においては、運転負荷が低いと考えられるため、情報提供時にドライバに対し質問形式で選択肢が3択の質問を行う。
ステップ125における質問の後、上述のステップ121〜123の処理を行う。
ステップ108では、運転負荷が高いと考えられるため、情報提供時にドライバに対し質問形式で選択肢が2択の質問を行う。
ステップ108における質問の後、上述のステップ117〜119の処理を行う。
【0039】
以上のように、提示する情報の記憶定着度が第2の所定値以上であるか、第1の所定値未満であるか、または第1の所定値以上第2の所定値未満であるかの3段階に分け、第2の所定値以上である場合には、運転負荷に応じて質問形式で自由発話形式、選択肢数が3択、選択肢数が2択の質問を行い、第1の所定値未満である場合には質問形式で選択肢が2択の質問を行い、第1の所定値以上第2の所定値未満である場合には運転負荷に応じて選択肢が2択または選択肢が3択の質問を行う。
【0040】
提示情報選択部37は、質問に対する回答が正解であるかどうかに応じて提示する情報の量を増減させる。
これにより、例えばナビゲーション装置1が交差点の道案内を行う場合、質問に対するドライバの回答よりドライバが現在走行中の道路をよく知っていると判断されるときには、ドライバに対して提示する情報を少なくすることにより、ドライバが道案内を煩わしく感じることをなくすことができる。
【0041】
なお情報の提供時に、音声情報提示部40による音声情報だけでは窓を開けて走行中でよく聞こえない場合や、耳が遠い場合などもあるため、前述のようにナビゲーション表示用の液晶ディスプレイなどの視覚情報提示部41に音声情報と同じ内容で経路誘導情報を視覚的に提示するのが好ましい。さらには、触覚情報提示部42によりアクセルやステアリング、シート部の振動による触覚情報提供で注意喚起をしてもよい。
また、提供情報選択部37では選択された情報を提示するタイミングを最適化するため、例えば経路誘導の場合は、現在の自車位置と交差点の距離で判定したり、店舗情報の場合は、自車位置と店舗までの距離、現在時間と営業時間や混雑時間の情報などを利用してタイミングを決定すればよい。
【0042】
次に、ナビゲーション装置1が道路情報を提示する場合に提示される情報の具体的例について、図5を参照して説明する。
ここでは、自車両X1が走行している道路が駐車禁止となっていて、その先の左折道路が車両進入禁止となっている。
前述のフローチャートのステップ111において質問形式で自由発話形式の場合、ナビゲーション装置1はドライバに対して音声提示S2の「この道路の交通規制は何ですか?」と質問を行う。
【0043】
自由回答形式の質問に対してドライバが回答D2の「駐車禁止」と答え、回答が正解の場合は、この道路をよく知っていると判断し、ステップ113へ進んで、通常であれば提示を行う予定であった「進入禁止」道路などの各種道路情報の提供は行わない。
しかし、回答が不正解の場合は、この道路をあまりよく知らないと判断し、ステップ114において「この先、左折で進入できない道路があります」などの情報提供が行われる。
【0044】
フローチャートのステップ120やステップ125において質問形式で選択肢数が3択である場合は、「この道路の交通規制は、駐車禁止、駐停車禁止、50km/h制限のどれですか?」と質問を行う。
3択形式の質問の回答が正解の場合は、この道路をまあまあ知っていると判断し、ステップ122へ進んで、通常であれば情報提供を行う予定であった「進入禁止」の提供は行わない。その後の道路情報については、重要度を推定してその高いと判断されたものだけを提示する。例えば、時間制限で直進できない十字路などの情報を提示する。
しかし、回答が不正解の場合は、この道路をよく知らないと判断し、ステップ123において「この先、左折で進入できない道路があります」などの情報提供を行う。
【0045】
フローチャートのステップ116、ステップ124、ステップ108において質問形式で選択肢数が2択である場合は、「この道路の交通規制は、駐車禁止ですか?」との質問を行う。
2択形式の質問への回答が正解の場合は、この道路を多少は知っていると判断し、ステップ118において、通常であれば情報提供を行う予定であった「進入禁止」に関する情報の提供については「この先に道路規制あり」と概要のみの情報提供を行う。これは知らない人だけが気にすればよい情報となっている。
しかし、回答が不正解の場合は、この道路を全く知らないと判断し、ステップ119において、「この先、左折で進入できない道路があります」との情報提供を行い、さらに事細かな規制情報や注意情報(交通事故関連など)を提供する。
【0046】
次に、ナビゲーション装置1が自車両の周囲情報を提示する場合に、提示される情報の具体的例について、図6を参照して説明する。
ここでは、ナビゲーション装置1が自車両X2の周辺の情報を提供する際に自車両周辺のお店についてドライバが知っているかどうかを判断するため、自車の周辺にある店舗として例えば自動車用品を販売しているA自動車用品店について質問したものである。
なおこのA自動車用品店の情報入手先としては、利用者であるドライバが週末に自動車用品店に出かける趣味がある、または自動車好きという個人情報データベース16からの情報も各種情報取得部30へ取り込んで利用することができる。
【0047】
フローチャートのステップ111において質問形式で自由発話形式の場合、ナビゲーション装置1はドライバに対して音声提示S3の「この近くの自動車用品店は何ですか?」と質問を行う。
自由回答形式の質問に対してドライバが「A自動車用品店」と答え、回答が正解の場合は、この周辺の店舗のことをよく知っていると判断し、ステップ113において提示する情報の量を20%に減らし、通常であれば提示を行う予定であった「Aスーパー」や「Aレストラン」などは情報提供しない。
しかし、回答が不正解の場合は、この周辺の店舗のことをあまりよく知らないと判断し、ステップ114において「近くにAスーパーもあります」等、A自動車用品店の周辺にあり、かつ有名な店舗の情報のみ情報提供を行う。
【0048】
フローチャートのステップ120やステップ125において質問形式で選択肢数が3択である場合は、「この近くにある自動車用品店は、A自動車用品店、B自動車用品店、C自動車用品店のどれですか?」と質問を行う。
3択形式の質問への回答が正解の場合は、この周辺の店舗のことをまあまあ知っていると判断し、ステップ122において、通常であれば情報提供を行う予定であった「Aスーパー」等の情報提供は行わない。どうしても知らせたい情報、例えば個人の趣味や特性、履歴などから推定した情報のみを提供する。
しかし、回答が不正解である場合には、この周辺の店舗のことを全く知らないと判断し、ステップ123において「Aスーパー」や「Aレストラン」などの詳細情報を提供する。
【0049】
フローチャートのステップ116、ステップ124、ステップ108において質問形式で選択肢数が2択である場合は、「この近くにある自動車用品店はA自動車用品店ですか?」と質問する。
2択形式の質問への回答が正解の場合は、この道路をまあまあ知っていると判断し、図4のステップ118において「この近くに、類似のお店があります」という概要情報のみを提供する。よく知らない人でかつ興味を持っている人だけが気にして店舗を探すことになる。
しかし、回答が不正解の場合は、この周辺の店舗のことを全く知らないと判断し、ステップ119において「Aスーパー」や「Aレストラン」などの詳細情報を提供する。
【0050】
なお本実施例においては、ステップ104が本発明における記憶定着度推定手段を構成し、ステップ101、107、108、110、111、115、116、120、124、125が本発明における定着特性判断手段を構成している。またステップ100〜103、105、106、109、112、113、114、117、118、119、121、122、123が情報提供手段を構成している。
【0051】
本実施例は以上のように構成され、車両の走行地点において情報提供を受けた過去の履歴と情報提供を受けてからの経過時間とから、案内すべき情報に対するドライバの記憶定着度を推定し、推定された記憶定着度に応じて提示する情報の量を変化させるものとしたので、ドライバが記憶していると考えられる既知の情報を省略して提供することができ、ドライバにとって煩わしいと感じることを低減することができる。
これによりまた、省かれた情報の代わりに他の有益な情報をドライバに提供できるようになるため、情報提供効率を向上させることができる。
【0052】
さらに、上記記憶定着度に加えて、ドライバへの質問と回答による対話などを通して判別する個人別の記憶定着特性も加味して提示する情報の量を変化させるので、過去に提供された情報についての個人ごとの思い出し易さに対応させてきめ細かく既知情報と未知情報の判別ができる。
質問形式による記憶定着特性の判断を行う場合に、知識レベルの異なる複数選択肢の質問を行って回答させ、対話という違和感の少ない手段によってドライバが有する既知情報と未知情報を高精度に推定することができる。
【0053】
とくに、知識レベルは、年齢、性別、学歴、趣味、嗜好、運転歴、家族構成、ドライバに対する質問形式の対話に対する回答、記憶定着度の推定結果などの情報の1つまたは組み合わせに基づいて変化させることにより、ドライバが有する既知情報と未知情報の識別精度が一層向上する。
さらに、知識レベルの異なる複数選択肢は運転負荷に応じて選択することにより、自動車の運転操作への影響を少なくすることができる。そして、同じ情報内容に対していろいろな表現形式で情報提供が行われるため、ドライバにとっては飽きが少なく、いつも新鮮に感じる情報提供を行うことができる。
【0054】
なお、実施例では知識レベルの異なる質問として2択、3択の選択肢の質問を例示したが、選択肢数はこれらに限定されず、提示情報に応じて4択以上の選択肢を設定することができる。
また、利用者の記憶定着度および記憶定着特性に応じて提示する情報量の%量の数値も例示の値に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】ナビゲーション装置の全体構成を示す図である。
【図2】情報提示の例を示す図である。
【図3】情報提示処理の流れを示す図である。
【図4】情報提示処理の流れを示す図である。
【図5】情報提示の例を示す図である。
【図6】情報提示の例を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
1 ナビゲーション装置
2 VICS情報データベース
3 インターネット
4 情報センタ
5 GPS信号受信部
6 地図データベース
8 提示部
10 車外用カメラ
11 車外用マイク
12 CAN信号取得部
13 車内用カメラ
14 車内用マイク
15 生体センサ
16 個人情報データベース
20 自車位置判定部
21 道路情報取得部
22、24 映像解析認識部
23 音源解析認識部
25 音声解析認識部
30 各種情報取得部
31 周囲環境判定部
32 自車状態判定部
33 ドライバ状態判定部
34 回答判定部
35 運転負荷推定部
36 記憶定着度推定部
37 提示情報選択部
40 音声情報提示部
41 視覚情報提示部
42 触覚情報提示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行地点において情報提供を受けた過去の履歴と、前記情報提供を受けてからの経過時間とから利用者に案内すべき情報に対する記憶定着度を推定する記憶定着度推定手段と、
利用者に情報提供を行う情報提供手段とを備え、
該情報提供手段は、前記記憶定着度推定手段によって推定された記憶定着度に応じた情報提供を行うことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
さらに利用者個別の記憶定着特性を判断する定着特性判断手段を備え、
前記情報提供手段は、前記記憶定着度と記憶定着特性にもとづいて情報提供を行うことを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記定着特性判断手段は、利用者に対する質問形式の対話と、その回答にもとづいて記憶定着特性を判断することを特徴とする請求項2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記定着特性判断手段は、知識レベルの異なる質問形式の対話と、その回答にもとづいて記憶定着特性を判断することを特徴とする請求項3に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記知識レベルは、年齢、性別、学歴、運転歴、家族構成、利用者に対する質問形式の対話に対する回答、および記憶定着度の推定結果の少なくともいずれか1つにもとづいて変化させることを特徴とする請求項4に記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
前記知識レベルの異なる質問は、運転負荷に応じて選択することを特徴とする請求項4または5に記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
前記記憶定着度推定手段による記憶定着度の推定は、さらに年齢、性別、趣味・嗜好、学歴および運転歴に関する個人情報の少なくともいずれか1つを加味して推定することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載のナビゲーション装置。
【請求項8】
車両の走行地点において情報提供を受けた過去の履歴と、前記情報提供を受けてからの経過時間とから利用者の案内すべき情報に対する記憶定着度を推定し、記憶定着度に応じて情報提供を行うことを特徴とする情報提供方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−168773(P2009−168773A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10255(P2008−10255)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】