説明

ハイブリッド産業車両

【課題】水浸入防止措置を簡素化したままバッテリの被水を抑制できるとともに、エンジン等の熱源によるバッテリの雰囲気温度上昇を回避することができるハイブリッド産業車両を提供する。
【解決手段】ハイブリッドフォークリフト11の車体12は、車体フレームFと、カウンタウェイトWとから構成されている。車体12内には、エンジン28、クラッチ29、モータジェネレータ30、走行用モータ26及び油圧ポンプ31が装備されている。そして、油圧ポンプ31は、エンジン28とモータジェネレータ30とで駆動されるように構成されている。走行用モータ26は、カウンタウェイトWに形成された収容凹部35に載置されているバッテリ36から電力が供給されて駆動するように構成されている。そして、バッテリ36は、カウンタウェイトWの中心Pよりも上方に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド産業車両に係り、詳しくはバッテリの配置に特徴を有するハイブリッドフォークリフト等のハイブリッド産業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、着座した運転者の足を支承する床面より下方まで広がるようにバッテリ収容部を設け、かつ該バッテリ収容部に収容されたバッテリの上端が床面よりも低い位置となるように設けられたバッテリフォークリフトが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平11−222390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、特許文献1に記載のバッテリフォークリフトのように床面の下にバッテリが配置されている場合、散水洗車されたときに床面は頻繁に被水するためバッテリ収容部に水が浸入しないように水浸入防止措置(例えば、バッテリ収容部の上部開口とバッテリフード及びトーボードとの間のシール)を行う必要がある。しかし、水浸入防止措置を行うと、バッテリ収容部内に外気を導入することが難しくなるため、バッテリの冷却を行うことが難しい。
【0004】
また、エンジン及びモータが組み合わされてなる駆動手段を用いるハイブリッド産業車両では、熱源であるエンジンが機台内に配置されるため、エンジン動作時には機台内の雰囲気温度が高くなる。そのため、バッテリが、床面下に配置される場合、エンジンに近いため、バッテリの雰囲気温度がエンジンの影響を受けバッテリを冷却する際には不利である。
【0005】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、水浸入防止措置を簡素化したままバッテリの被水を抑制できるとともに、エンジン等の熱源によるバッテリの雰囲気温度上昇を回避することができるハイブリッド産業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、エンジン及びモータを使用する構成の駆動手段を、荷役用又は走行用として使用し、前記モータに対する電力供給源としてバッテリを使用するハイブリッド産業車両において、前記バッテリはカウンタウェイトに配置され、前記カウンタウェイトの中心よりも上方に位置していることを要旨とする。
【0007】
この発明では、水が床面下に入り込んでも、バッテリは床面下に配置されていないためバッテリが被水することはない。そして、散水洗車されたときであっても、水はカウンタウェイトにはかかりにくく、水浸入防止措置を簡素化してもバッテリに支障はないため、バッテリを冷却することができる。
【0008】
また、バッテリは、床面下に配置される場合よりもエンジンから離れた箇所に配置されるため、バッテリの雰囲気温度が熱源であるエンジンの影響を受けて上昇することを回避できる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記バッテリの温度を検出するバッテリ温度検出手段と、ラジエタを通過した後の排熱風を外部に排出する排出通路と、前記排熱風を前記バッテリに導く導入通路と、前記導入通路に設けられるとともに、前記導入通路を閉鎖する閉状態と、前記導入通路を開放する開状態とに切り換わる開閉機構と、機台の作動に伴う前記バッテリ温度が、前記バッテリから前記機台の性能を発揮させるために必要な電力を得ることが可能な通常温度域の下限温度よりも低温であるか否かを判定し、その判定結果が肯定の場合には前記バッテリ温度を上昇させるべく前記排熱風を前記バッテリへ導くように前記開閉機構を閉状態から開状態へ制御する制御手段と、を備えたことを要旨とする。
【0010】
この発明では、制御手段は、バッテリ温度が通常温度域の下限温度よりも低温であると判定すると、開閉機構を閉状態から開状態に切り換えてラジエタを通過した排熱風がバッテリにあたるようにする。そして、排熱風によってバッテリを暖めることで、バッテリ温度を通常温度域の範囲内にまで上昇させることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記バッテリを冷却する冷却手段と、前記冷却手段を駆動する駆動手段とを備え、前記制御手段は、前記バッテリ温度が前記通常温度域の上限温度よりも高温であるか否かを判定し、その判定結果が肯定の場合には前記バッテリ温度を下降させるべく前記駆動手段を非駆動状態から駆動状態へ制御することを要旨とする。
【0012】
この発明では、制御手段は、バッテリ温度が通常温度域の上限温度よりも高温であると判定した場合、駆動手段を非駆動状態から駆動状態へ制御して冷却手段を動作させる。そして、冷却手段によって、バッテリ温度が通常温度域の範囲内に下降するまでバッテリを冷却することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、水浸入防止措置を簡素化したままバッテリの被水を抑制できるとともに、エンジン等の熱源によるバッテリの雰囲気温度上昇を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明をハイブリッド産業車両の一種であるハイブリッドフォークリフトに具体化した一実施形態を図1〜図4にしたがって説明する。なお、以下の説明において、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は、フォークリフトの運転者が車両前方(前進方向)を向いた状態を基準とした場合の「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」を示す。
【0015】
図1(a)に示すように、ハイブリッドフォークリフト(以下、「フォークリフト」と記載する。)11の車体12の前側にはマスト13が装備されている。マスト13には荷役用アタッチメントとなるフォーク14がリフトブラケットBを介して昇降可能に装備されるとともに、リフトシリンダ15の伸縮作動によりフォーク14がリフトブラケットBとともに昇降される。また、車体12には4本の支柱17が立設され、前側の支柱17はヘッドガード18と一体に形成されている。そして、支柱17及びヘッドガード18に囲まれた空間によって運転席19が構成されている。運転席19の前側下方には、座席20に着座した運転者の足を支承する床面としてのトーボード21が設けられている。
【0016】
一方、車体12の前側下部には駆動輪(前輪)22が設けられているとともに、車体12の後側下部には操舵輪(後輪)23が設けられている。駆動輪22は、車軸24に装備された図示しない差動装置及び図示しないギアを介して走行用モータ26により駆動される。操舵輪23は、ハンドルHの操作量に応じて操舵される。
【0017】
また、車体12は、車体フレームFと、車体フレームFの後部に締結固定されたカウンタウェイトWとから構成されている。車体フレームFは複数枚の厚板(鋼板)を溶接で一体化して構成されているとともに、カウンタウェイトWは鋳物製とされている。そして、車体12内には、エンジン28、クラッチ29、モータジェネレータ(発電電動機)30及び油圧ポンプ31が車体フレームFの後部に固定されて、フード32で覆われた状態で装備されている。
【0018】
本実施形態のフォークリフト11においてエンジン28は車体12の後方に配置されるとともに、クラッチ29を介してモータジェネレータ30が連結されている。また、モータジェネレータ30及びエンジン28の後方にはエンジン28の冷却水を冷却するラジエタ33及びラジエタ用冷却ファン34が設けられている。
【0019】
ラジエタ33はカウンタウェイトWに対して図示しない固定手段により固定されている。また、ラジエタ用冷却ファン34はラジエタ33を間に挟んでカウンタウェイトWの反対側に位置するように図示しない固定手段により車体フレームFに固定されている。そして、ラジエタ用冷却ファン34はラジエタ33と対向するように前後方向において隣接配置されるとともに、ラジエタ33に向けて冷却風を送風しラジエタ33内の冷却水を強制空冷するように構成されている。
【0020】
一方、図1(b)に示すように、カウンタウェイトWにはその上部に車体12の幅方向に延びるように形成された収容凹部35が形成されるとともに、収容凹部35には直方体状の電力供給源としてのバッテリ36が載置されている。なお、収容凹部35の外形は、バッテリ36の外形よりも若干大きい形状に形成されている。
【0021】
バッテリ36はその全体が上下方向におけるカウンタウェイトWの中心Pよりも上方に位置するとともに、その上部が収容凹部35よりも外側にでている。なお、カウンタウェイトWの中心Pとは、上下方向においてカウンタウェイトWの最下端からカウンタウェイトWの最上端までの領域の中央に対応する部位のことである。バッテリ36はその長手方向の幅H1がカウンタウェイトWの車幅方向の長さよりも短く、その短手方向の幅H2がカウンタウェイトWの前後方向の幅よりも短くなるように形成されている。バッテリ36はバッテリケース内に複数のバッテリセルが収容されることで構成されるとともに、例えばニッケル水素蓄電池が使用されている。なお、バッテリ36にはバッテリ36の表面温度を検出するバッテリ温度検出手段としての温度センサ37(図3参照)が取り付けられている。バッテリ36はフォークリフト11の走行動作や荷役動作のために必要に応じて適宜駆動電力を供給可能に構成されている。また、バッテリ36は、平面視略長方形状で下側に開口部が形成されたバッテリ保護用のカバー38によって覆われる。
【0022】
カバー38はその外縁がカウンタウェイトWの外縁に沿うような形状に形成されるとともに、カウンタウェイトWの上側に取り付けられている。そして、図1(a)に示すように、カバー38はカウンタウェイトWに対して脱着可能に構成されるとともに、カウンタウェイトWに取り付けられた状態では車体12の後部上側を形成している。カバー38はカウンタウェイトWに取り付けられた状態において、その上部がフード32と略同じ高さとなるように形成されている。そのため、カバー38がカウンタウェイトWに取り付けられた状態において、カバー38はフォークリフト11の後方下部を目視しようとした運転者の視界を遮らないように構成されている。また、図2(a)に示すように、カバー38には、カバー38の上部内面38aに冷却手段としてのバッテリ用冷却ファン39が取り付けられている。
【0023】
バッテリ用冷却ファン39は、駆動されると冷却風をバッテリ36に対して送風してバッテリ36を冷却するように構成されている。なお、バッテリ用冷却ファン39から送風された冷却風は、カバー38の長手方向の一側部に形成された矩形状の連通孔40から車外に排出される。
【0024】
カウンタウェイトWには、ラジエタ33を通過した排熱風を車外に排出する排出通路42と、排出通路42の途中で分岐して収容凹部35の底部まで延びる導入通路43とが設けられている。排出通路42は、ラジエタ33と向かい合う開口41aとカウンタウェイトWの後側に形成された開口41bとを連通するように構成されている。そして、排出通路42においては、ラジエタ33から外部に向かう排熱風が流れ、導入通路43においては、ラジエタ33からバッテリ36に向かう排熱風が流れる。図2(b)に示すように、導入通路43の収容凹部35側の開口部44は車幅方向の幅が収容凹部35の車幅方向の幅よりも小さく形成されている。そして、図2(a)に示すように、導入通路43には、その収容凹部35側の開口部44に、開口部44を塞ぐ閉状態と開口部44を開放する開状態とに切り換え可能な開閉機構45が設けられている。
【0025】
開閉機構45は、開口部44の平面視断面と略同じ形状で、なおかつ開口部44を閉塞可能な大きさの開閉板46と、開閉板46を回動可能に支持するヒンジ47と、開閉板46を図2(a)の矢視方向に回動駆動するアクチュエータ48(図3参照)とによって構成されている。そして、アクチュエータ48が駆動すると、開閉板46はヒンジ47を中心に下方に回動し、ラジエタ33からバッテリ36に向かう排熱風の流通を遮らない位置に移動する。
【0026】
次に、フォークリフト11の電気的構成について説明する。
図3に示すように、車体12内に搭載されるとともにフォークリフト11の荷役動作及び走行動作を制御する制御手段としての車両制御装置49には、制御動作を所定の手順で実行することができるCPU(中央処理装置)50と、RAM(ランダムアクセスメモリ)51と、ROM(読み出し専用メモリ)52とが設けられている。ROM52には、ハイブリッドフォークリフト11の走行や荷役等の各種動作を制御するための制御プログラムが記憶されている。
【0027】
また、車両制御装置49には、バッテリ36の表面温度を温度信号として出力する温度センサ37が電気的に接続されている。車両制御装置49は温度センサ37から入力された温度信号を演算してバッテリ温度を把握するように構成されている。ここで、図4に示すように、バッテリ36は、バッテリ温度が常温時に比べて低温又は高温であるときにバッテリ36の出力電力が小さくなるという特性を有している。すなわち、バッテリ温度が通常温度域内にあるとき、バッテリ36から所定の大きさ以上の出力電力を確保することができ、正常に車両動作を行うことができるような出力電力を確保できる。一方、バッテリ温度が通常温度域の下限温度よりも低い場合や通常温度域の上限温度よりも高い場合、バッテリ36の出力電力はバッテリ温度が通常温度域内であるときの出力に比べて、例えば10%以下にまで制限されるため、バッテリ36の出力電力は車両動作に支障が生じる程低下する。そして、バッテリ36は、バッテリ36の入力電力とバッテリ温度との関係においても、バッテリ36の出力電力とバッテリ温度との関係と同様の特性を有している。そのため、車両制御装置49は、通常温度域の下限温度を温度T1(例えば、0℃)として、温度センサ37からの検出結果に基づいてバッテリ温度が温度T1よりも低いと判定すると、バッテリ温度を上昇させるための制御を実行するように構成されている。また、車両制御装置49は、通常温度域の上限温度を温度T2(例えば、35℃〜45℃)として、温度センサ37からの検出結果に基づいてバッテリ温度が温度T2よりも高いと判定すると、バッテリ温度を下降させるための制御を実行するように構成されている。なお、通常温度域の下限温度をT1、通常温度域の上限温度をT2とした場合、通常温度域の範囲はT1〜T2となる。
【0028】
また、車両制御装置49には、開閉機構用のアクチュエータ48と、ラジエタ用冷却ファン34を駆動するアクチュエータ53と、バッテリ用冷却ファン39を駆動するアクチュエータ54と、走行用モータ26と、エンジン28と、モータジェネレータ30とが電気的に接続されている。車両制御装置49は、アクチュエータ48,53,54、エンジン28、モータジェネレータ30、走行用モータ26に対して制御指令を行い、予め定められた制御を行うように構成されている。なお、アクチュエータ53,54は、例えば、モータからなる。そして、アクチュエータ53,54は車両制御装置49から駆動指令が出力されると、それぞれラジエタ用冷却ファン34、バッテリ用冷却ファン39を駆動するように構成されている。アクチュエータ48は車両制御装置49から駆動指令が出力されると開閉板46を回動駆動するように構成されている。
【0029】
また、モータジェネレータ30は、車両制御装置49による制御指令によって、モータジェネレータ30をバッテリ(二次電池)36(図1(a)参照)に蓄電(充電)する発電モードと、バッテリ36から駆動電力を受けてモータとして油圧ポンプ31(図1(a)参照)を駆動するモータモードとの間で適宜切り換えられるように構成されている。
【0030】
そして、モータジェネレータ30が発電モードにある場合、エンジン28はモータジェネレータ30と油圧ポンプ31の駆動源となる。また、モータジェネレータ30が発電モードにある場合、バッテリ36は車両制御装置49からの制御指令によって蓄電可能な状態となっており、モータジェネレータ30で発電された電力を蓄電するように構成されている。一方、モータジェネレータ30がモータモードにある場合、モータジェネレータ30はモータとして機能し、バッテリ36から電力が供給されることで駆動する。なお、モータジェネレータ30がモータモードであるとき、車両制御装置49からの制御指令によってバッテリ36は電力を供給可能な状態になっている。そして、モータジェネレータ30がモータモードにある場合、エンジン28とモータジェネレータ30とが油圧ポンプ31の駆動源となる。但し、モータモードにおいてクラッチ29を切り、エンジン28ではなくモータジェネレータ30のみを油圧ポンプ31の駆動源とすることも可能である。なお、車両制御装置49によるモータジェネレータ30及びバッテリ36の切り換え制御は、いずれも図示しないインバータアッセンブリを介して行われる。また、クラッチ29の断接制御は、車両制御装置49からの制御指令によって行われる。本実施形態のフォークリフト11はバッテリ36から電力が供給されて走行用モータ26が駆動することで走行するとともに、モータジェネレータ30及びエンジン28で油圧ポンプ31を駆動することで荷役動作を行う。
【0031】
次に、このように構成されたハイブリッドフォークリフト11の作用について説明する。
図1(a)に示すフォークリフト11が散水洗車されるとき、トーボード21は頻繁に被水し、トーボード21下の機台内部に水が浸入することがある。しかし、バッテリ36はトーボード21下には配置されておらず、カウンタウェイトWの中心Pよりも上方に配置されているため、バッテリ36が被水することはない。
【0032】
また、フォークリフト11は寒冷地や冷蔵庫内で使用されることがある。そして、このような使用環境の中で、フォークリフト11の始動スイッチがオンされると、フォークリフト11の機台は作動する。そして、車両制御装置49は、始動時におけるバッテリ温度を検出し、そのバッテリ温度が温度T1よりも低いと判定した場合、車両制御装置49はエンジン28に制御指令を出力してエンジン28を運転状態(アイドリング状態)に制御するとともに、アクチュエータ53に駆動指令を出力しラジエタ用冷却ファン34を駆動する。また、同時に、車両制御装置49は、アクチュエータ48に駆動指令を出力し開閉機構45を開状態に切り換える。すると、ラジエタ33を通過した排熱風の一部が導入通路43を通ってバッテリ36を収容する収容凹部35にまで導かれ、バッテリ36は排熱風によって暖められる。車両制御装置49は、バッテリ温度を監視しており、バッテリ温度が通常温度域内にまで上昇したと判断すると、エンジン28の運転を停止するとともに、アクチュエータ53に対する駆動指令の出力を終了してラジエタ用冷却ファン34の駆動を停止する。また、同時に、車両制御装置49は、アクチュエータ48に対する駆動指令の出力を停止する。すると、開閉機構45は開閉板46によって収容凹部35側の開口部44を塞ぐ閉状態となり、バッテリ36に対する暖気を終了する。そして、開閉機構45が閉状態になっている間、全ての排熱風は排出通路42を通って外部に排出される。
【0033】
また、フォークリフト11の稼動時には、バッテリ36から走行用モータ26に電力を供給することで走行用モータ26を駆動して走行し、荷役作業時にはモータジェネレータ30及びエンジン28で油圧ポンプ31を駆動する。そして、エンジン28の運転中においては、エンジン28は熱源となるが、バッテリ36は、エンジン28と離れた箇所に配置されているため、エンジン28が駆動することでエンジン28周りの雰囲気温度が上昇しても、その影響を受けてバッテリ36の雰囲気温度が上昇することはない。
【0034】
また、バッテリ36を長時間稼動した場合や、フォークリフト11の周囲温度が高い場合にはバッテリ温度は高くなり、バッテリ温度が温度T2よりも高くなると、フォークリフト11の動作に支障が生じる。そのため、本実施形態の車両制御装置49は、バッテリ温度が温度T2よりも高くなったと判定すると、アクチュエータ54に駆動指令を出力しバッテリ用冷却ファン39を駆動させる。すると、バッテリ用冷却ファン39はバッテリ36に対して冷却風を送風して強制空冷し、冷却風はバッテリ36にあたった後、連通孔40から車外に排出される。車両制御装置49は、バッテリ温度を監視しており、バッテリ温度が温度T2よりも高い状態から通常温度域内にまで下降したと判断すると、アクチュエータ54に出力していた駆動指令を停止し、バッテリ36の冷却を終了する。
【0035】
この実施形態では、以下の効果を得ることができる。
(1)バッテリ36はカウンタウェイトWに形成された収容凹部35に載置され、カウンタウェイトWの中心Pよりも上方に位置している。したがって、フォークリフト11が散水洗車されるときであっても、バッテリ36に水がかかることを抑制できる。
【0036】
(2)カウンタウェイトWは、フォークリフト11の部位のうち、散水洗車を行うときであっても水がかかり難い箇所であるため、水浸入防止措置を簡素化したからといってバッテリ36が被水するような事態が起きることはない。
【0037】
(3)バッテリ36は、トーボード21に配置される場合に比べてエンジン28とは離れた箇所に配置されている。したがって、バッテリ36の雰囲気温度が、エンジン28の影響を受けて上昇することを回避できる。
【0038】
(4)バッテリ36には温度センサ37が取り付けられるとともに、カウンタウェイトWには、排出通路42及び導入通路43が形成されている。そして、導入通路43には、収容凹部35側の開口部44に開閉機構45が設けられている。したがって、バッテリ温度が通常温度領域の下限温度としての温度T1よりも低い場合には、排熱風によってバッテリ36を暖めてバッテリ温度を通常温度域内にまで上昇させることができる。そして、暖気開始時の温度が同じである場合、バッテリ36に対して繰り返し電流の出し入れを行う制御を実行することでバッテリ温度を上昇させる場合に比べて、バッテリ温度を通常温度域内にまで上昇させるのに要する時間を短縮することができる。
【0039】
(5)バッテリ温度が通常温度領域の下限温度としての温度T1よりも低い場合、ラジエタ33を通過した排熱風を利用してバッテリ36を暖気する。したがって、フォークリフト11に対してヒータ等の装置を新しく追加しなくとも、バッテリ36の暖気を行うことができる。
【0040】
(6)カバー38の上部内面38aには、バッテリ用冷却ファン39が設けられている。そして、車両制御装置49は、バッテリ温度が通常温度域の上限温度としての温度T2よりも高温であると判定した場合にアクチュエータ54に駆動指令を出力してバッテリ用冷却ファン39を駆動し、バッテリ温度が通常温度域内にあると判断した場合にアクチュエータ54に対する駆動指令の出力を停止する。したがって、バッテリ温度が通常温度域内に下降するまでバッテリ36を冷却することができる。
【0041】
(7)バッテリ36をカウンタウェイトWの代わりとして使用することができる。したがって、バッテリ36の重量分、カウンタウェイトW自体の重量を軽量化することができる。
【0042】
(8)カバー38は、カウンタウェイトWに取り付けられた状態であっても、フォークリフト11の後方下部を目視しようとした運転者の視界を遮らないように構成されている。したがって、バッテリ36をカウンタウェイトWの中心よりも上方に位置する状態で配置しても、フォークリフト11を後進させる場合における運転者によるフォークリフト11の後方の確認を阻害することはない。
【0043】
実施の形態は、前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ エンジン28を停止状態から運転状態に制御するタイミングは、バッテリ温度が温度T1(例えば、0℃)よりも低いと判定したときでなくともよい。例えば、機台の始動と同時に、エンジン28を始動させる制御を実行するように車両制御装置49の制御プログラムを設定してもよい。この場合、機台の作動中、エンジン28は常に運転状態になっているため、車両制御装置49は、バッテリ温度が通常温度領域の下限温度としての温度T1よりも低いと判定したときに開閉機構45を開状態にする制御を行えば、バッテリ36の暖気を行うことができる。また、車両制御装置49は、バッテリ温度が通常温度域内にまで上昇したと判定したときに開閉機構45を閉状態にする制御を行って、バッテリ36の暖気を終了することができる。
【0044】
○ ラジエタ33からバッテリ36に向かう排熱風の経路の途中に排気配管が存在するように構成してもよい。このような構成では、バッテリ36の暖気を行う場合に、排気配管とあたることで熱交換を行いより高温になった排熱風でバッテリ36を暖気することができるため、バッテリ36の暖気を効率的に行うことができる。
【0045】
○ カウンタウェイトWとは別の部材で排出通路42及び導入通路43を形成してもよい。例えば、排出通路42として用いられたカウンタウェイトWの連通孔及び導入通路43として用いられたカウンタウェイトWの連通孔にそれぞれ第1パイプ及び第2パイプを挿通し、第1パイプと第2パイプとを互いに連通した状態に構成する。そして、第1パイプ及び第2パイプの通路面積を、バッテリ36を暖気する際に必要な量の排熱風が流通可能な通路面積に設定することで、第1パイプによって排出通路42を構成するとともに第2パイプによって導入通路43を構成することができる。したがって、ラジエタ33を通過した排熱風を第2パイプを介してバッテリ36に導いて、バッテリ36を暖気することができる。なお、この場合、開閉機構45は、第2パイプの収容凹部35側の開口部に設ければよい。
【0046】
○ モータジェネレータ30を設ける代わりに、発電機と油圧ポンプ駆動用モータとを別々に設け、油圧ポンプ31をエンジン28及び油圧ポンプ駆動用モータで駆動する構成としてもよい。
【0047】
○ ハイブリッドフォークリフトに限らず、走行用の駆動手段と作業用の駆動手段とを備え、農業用、土木建設用、荷役用等に使用される車両である産業車両全般に適用してもよい。即ち、走行用の駆動手段をモータとし、作業用の駆動手段をエンジン及びモータとするハイブリッド産業車両に適用してもよい。
【0048】
○ バッテリ36はニッケル水素蓄電池に限らず、リチウムイオンバッテリやキャパシタ等の他の二次電池であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】(a)はフォークリフトの概略側面図、(b)はカウンタウェイトの概略斜視図。
【図2】(a)は、フォークリフトの部分模式側面図、(b)は(a)のA−A線模式側断面図。
【図3】フォークリフトの電気的構成を示すブロック図。
【図4】バッテリ温度とバッテリの出力電力との関係を示すグラフ。
【符号の説明】
【0050】
P…カウンタウェイトの中心、T…バッテリ温度、W…カウンタウェイト、11…ハイブリッド産業車両としてのハイブリッドフォークリフト、26…走行用モータ、28…エンジン、30…モータジェネレータ、33…ラジエタ、36…バッテリ、37…温度検出手段としての温度センサ、39…冷却手段としてのバッテリ用冷却ファン、42…排出通路、43…導入通路、45…開閉機構、49…車両制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン及びモータを使用する構成の駆動手段を、荷役用又は走行用として使用し、前記モータに対する電力供給源としてバッテリを使用するハイブリッド産業車両において、
前記バッテリはカウンタウェイトに配置され、前記カウンタウェイトの中心よりも上方に位置していることを特徴とするハイブリッド産業車両。
【請求項2】
前記バッテリの温度を検出するバッテリ温度検出手段と、
ラジエタを通過した後の排熱風を外部に排出する排出通路と、
前記排熱風を前記バッテリに導く導入通路と、
前記導入通路に設けられるとともに、前記導入通路を閉鎖する閉状態と、前記導入通路を開放する開状態とに切り換わる開閉機構と、
機台の作動に伴う前記バッテリ温度が、前記バッテリから前記機台の性能を発揮させるために必要な電力を得ることが可能な通常温度域の下限温度よりも低温であるか否かを判定し、その判定結果が肯定の場合には前記バッテリ温度を上昇させるべく前記排熱風を前記バッテリへ導くように前記開閉機構を閉状態から開状態へ制御する制御手段と、を備えた請求項1に記載のハイブリッド産業車両。
【請求項3】
前記バッテリを冷却する冷却手段と、
前記冷却手段を駆動する駆動手段とを備え、
前記制御手段は、前記バッテリ温度が前記通常温度域の上限温度よりも高温であるか否かを判定し、その判定結果が肯定の場合には前記バッテリ温度を下降させるべく前記駆動手段を非駆動状態から駆動状態へ制御する請求項2に記載のハイブリッド産業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−274651(P2009−274651A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129481(P2008−129481)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】